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シングルベル

#UDCアース


●ある女子高生同士のチャット
 >ねぇ、知ってる?
                                   ――なに?
 >隣町の駅前のマンションの話。
                           ――あ~、聞いたことある。
                          ――縁結びに効くとかだっけ。
 >そうそう。
 >空き部屋のノートに名前を書くと両想いになれるってヤツ。
                        ――そんで?それがどうかしたの。
 >今ね、そのマンションに来てるの。
                        ――は、マジで?ちょっとウケる。


「年の瀬、クリスマスを一人身で過ごしたくないというのは……やはり切実な願いなのでしょうか。」
 ここはグリモアベース、猟兵たちが集い、新たな可能性を紡ぐ場所。会議室に集った貴方たち猟兵を前に、ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)は問いを投げかける。

 手渡された資料に視線を落とすと、そこには雑誌の切り抜きやSNS、ホームページのスクリーンショットがまとめられていた。
 見出しには「必見!クリスマス前に彼氏をGetする10の方法」や「もうさみしいのはイヤっ」「ホワイトクリスマスのデートコース ベスト30」などの文字が躍る。どうやら雑誌の恋愛特集ページを切り抜いてきたようだ。そこに「キューピッドのノート」という単語が多くあることに、あなたは気が付く。

 あなたたちが一通り資料を読んだことを確認して、ジョルジュは説明を続ける。
「今回の予知の舞台はUDCアースは現代日本。都市伝説を悪用して、オブリビオンが復活しようとしています。お渡しした資料にある「キューピッドのノート」これがオブリビオン復活のための祭具となるようです。若い男女が片思いする、その行き場のない想いを怨念と変え、邪神はそれを糧としてUDCアースに顕現しようとしています」
 ジョルジュの話を聞く限りでは、どうやらこの噂は十代の女性を中心に首都圏で広まっているらしい。おそらくはこの何処かに「キューピッドのノート」が置かれた空きマンションがあるのだろう。

 ――ですが、と続けて。
「あいにくとこの噂話、おしゃべり好きな女性の間を回るうちに内容がかなり変わっているらしく……正確な都市伝説の内容は分かっていません。まずは現地で調査を行い、具体的な「キューピッドのノート」の実態を確認してください。その途中で、もし、都市伝説を広める者の存在が確認できたのならば……それも止めてください。もちろん未然に邪神の復活を阻止できればそれが一番良いのですが、万一邪神が復活した場合にはそれの討伐もお願いします」

「お願い事ばかりで心苦しいのですが、あなたたちが頼りです」
 そう最後に告げて、グリモア猟兵は異界への門を開き、貴方たちを誘う。


かもねぎ
 こんにちは、かもねぎです。恋人と過ごすクリスマスは憧れるひとも多いでしょう。
 その弱みに付け込んで邪神が復活しようとしています。背後には、邪神の復活を手引きする何者かの影も見えかくれしています。

 時期的に少し遅くなりましたが、年を越さないぐらいまでに完結できれば明るい新年を迎えられるのではないでしょうか。皆さんのご参加、お待ちいたしております。
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第1章 冒険 『友達の友達曰く』

POW   :    被害者周辺の人間に聞き込み。コミュニケーション

SPD   :    噂のマンション付近の現場検証、情報収集

WIZ   :    魔術、呪術的な観点からの情報収集

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●クリスマスが今年もやって来る
 ジョルジュが開いたゲートを抜けて転移した先は、東京・原宿、竹下通り。一時ほどの人混みは無いものの、今なお若者の文化発信中心として絶大な影響力を持つこの地は、世界がオブリビオンの脅威に晒されているUDCアースに於いても活気にあふれていた。

 その入口。

 クリスマスの時節を映してかサンタクロースとトナカイを模したバルーンアートが飾られた「TAKESHITA STREET」の看板の前に猟兵たちは立っていた。
花菱・真紀
都市伝説大好きな俺としては調べないわけにはいかないよな。
『友達の友達から聞いたんだけど』って都市伝説的には定番のやつだよな。

とりあえずネットで【情報収集】したあと女子高生に声をかけてみるか…俺の都市伝説知識と【コミュ力】で興味持ってもらえるといいんだけど…

恋人とか俺も欲しいにきまってるだろ?
(ニコリと笑うも目は笑っていない)


アインス・ツヴェルフ
俺には恋人とかクリスマスとかもよくわかんないけどさー
でも一人は寂しいっていうのは分かるぞ!
UDCエージェントとしてもこの事件は放置できないしね
って事アインス君出動開始!

【POW】ジョシコーセーってよくファーストフードとかに集まっておしゃべりしてるよね
って事でファーストフード店に赴く
聞き耳を立ててキューピットノートに関する話が聞こえたら
「あ、それ俺も知ってる!実は俺もそれに興味あるんだよね。詳しく教えてくれないかなぁ」と人懐こい笑顔で接触を図る
ひとしきり聞いた後はありがとうと笑顔で言った後に
記憶消去銃でその話をしてくれた人達の記憶を消す


月隠・三日月
恋愛成就のまじない、ね。どこの世界でも、女の子はそういうのが好きなのかな。

私はこの世界にもUDCにも詳しくはないから、女子高校生が集まっていそうな場所に赴いて、噂話をしている女の子たちに聞き込みをするよ。
噂話の内容はかなり形を変えているとグリモア猟兵の彼も言っていたし、元の噂話がどんな内容だったか調べたいね。『どんな噂話を聞いたか』と『その噂話を誰から聞いたのか』を訊いてみるよ。
男の私が一人でいる女の子に急に話しかけたら警戒されてしまうだろうから、大勢で集まっている女の子たちに話しかけるよ。『私もそういうおまじないが好きなんだけど、男友達とだとそういう話できなくてね』と理由付けもしてみようか。



●「彼女が欲しい」と彼も言った
 先ずは手近なところからと、一行は手分けして情報収集に当たっては噂の出どころを確かめる。ファストフード店に入って今後の方針を確認しながら、花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)は手にしたスマートフォンを繰って手早くいくつかのSNSをピックアップし、場の猟兵に共有する。すると、そこには【キューピッド成就報告part4】【勇気出して告白する!】と言ったスレッドがあることが見て取れた。

「首都圏近郊の女子高生が中心って予知では言っていたけど」
 どうやら、「キューピッドのノート」に関する体験報告はその中でもある特定の地域にある学校に通う女子の間で話題にのぼることが多いらしい。

「あれ、その制服ってあそこの彼女らが着てるのと一緒じゃない?」
 花菱が示した画面を見て店内をぐるりと見渡すと、アインス・ツヴェルフ(サイキッカー・f00671)は周囲に気取られぬような何気ない仕草で、店内奥の座席に座っている数名の女子高生を指し示す。
 確かに彼女らが着ている制服は、学校案内にあるそのものとうり二つ。間違いなく都市伝説の中心となっている高校の生徒に相違ないと猟兵たちは確信する。

 耳を聳ててみれば、まさに彼女らは雑誌を広げながら「キューピッドのノート」の話題に花を咲かせているようだ。
「聞いた?B組の佳穂もキューピッドにお願いしたんだって」
「マジで?それでそれで??」
「恥ずかしがって細かい事は教えてくれなかったけど、あの顔は上手くいったね」
「「キャーッ!!」」
「やっぱ、マジモンなんだぁ」
 などと箸が転んでもおかしい年ごろの娘が複数、ましてや恋バナである。
 特に注意深く聞き耳を立てるまでもなく、彼女らが話す内容は猟兵たちに容易に知れた。騒がしいファストフード店の一角であるから、彼女らが取り立ててうるさいということも無く、逆にその喧騒は猟兵たちが目立たずに事を為すのに好都合だった。

 ならば、と席を立ったのは月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)。サムライエンパイア出身の羅刹である彼は、黒曜石の角を持った戦士の一族の出とは言え、一方で優しい心を持った妹思いの青年だ。
 美しい黒髪をポニーテールに結わえた柔和な表情の青年が「ちょっといいかな」と声を掛けて来れば、心ならずとも色めき立つのは自然なこと。
 キューピッドの話をしていたのかな?と三日月が前置きして。
「私もオマジナイが好きなんだけど、男友達相手だとそういう話もできなくてね」
 そう話しかければ、話し相手が出来たとばかりに女子高生の一団は件のおまじないについて知りうる限りを話し始める。

 ――そこへ、「都市伝説って言った?面白そうな話をしているな」と個性的なファッションに身を包んだ花菱が調子よく持前のコミュ力を活かして話に混じり、「あ、それ俺も知ってる!実は俺もそれに興味あるんだよね。詳しく教えてくれないかなぁ」と人懐っこい笑顔を向ければ話は自然と弾み……
 ほどなくして、「キューピッドのノート」の舞台となったマンションの場所、それと実際におまじないを試した佳穂という少女の連絡先を猟兵たちは知ることになる。

「ところでお兄さんたち、結構カッコイイね。急いでないならちょっと遊ぼうよ」
 気を許したのか、そう誘いを掛ける少女たちであったが。

「ごめんね、それは出来ないんだ」
 UDCはまだこの世界では一般的には知られていない。それであれば、この世界の住民と猟兵の接触も最小限に、可能であれば痕跡を残さず。
「ありがとう、助かったよ」
 残ることは無いと思いながらも、感謝と笑顔を置き土産にアインスは手にした記憶消去銃のトリガーを引いた。

「ちょっと勿体なかった、かな」
 名残惜し気にそうつぶやいたのは誰だったか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



「おかしいな……」
 原宿を後にした猟兵たちは、女子高生たちに聞き取った情報をもとに「佳穂」というおまじないを実際に試した少女との待ち合わせ場所に居た。
 だが。約束の時刻を五分、十分……一時間と過ぎてもそれと思しき姿は現れない。

「――まさか?」
 すでに邪神の毒牙に落ちてしまったのか、とは誰もが言葉にしなかったが。内心の不安を押し殺して、猟兵たちはもう一つの手がかり……ノートがあるというマンションへ向かった。
楠瀬・亜夜
「数ある都市伝説の影にもこういった邪神の影がある……」
「そう思うとなかなかゾッとする話ですね」

【SPD】まずは現場検証、という訳でノートの実物を
確認しにマンションへと向かう。
扉が施錠してあれば【鍵開け】でピッキング

室内に入ってノートを一通り見てみる、そして
部屋内部になにか儀式などの痕跡がないかを確認

「こういった類は部屋自体がなにかしらの術式……」
「という事がありますが今回はどうでしょうか?」

後はマンション周辺で技能【情報収集】を駆使し軽く聞き込み

「すみません、ここらへんで怪しい人物など……」
「失礼……私はオカルト雑誌の記者をやっていまして(大嘘)」


白峰・慎矢
クリスマスは宗教的な行事だって聞いてたんだけど…街の様子を見ると恋人たちが愛を語らうイベントみたいだなー。こんな状況だと、確かに一人は寂しいって思っちゃうよね。

俺もクリスマス前に恋人が欲しくて、キューピッドのノートを使いたいっていう体で、マンションに出入りしてる若者に話を聞いてみよう。俺も同年代だろうし、共感を得られれば話をしやすくなるよね。
「やっぱりクリスマスに一人ってのは寂しいよね。俺もキューピッドのノートの噂を聞いてここまで来ちゃったんだ」
ノートのある場所とか縁結びのやり方とか、基本的なことを確認しよう。後は、都市伝説の情報源とか聞ければ、それを広めている奴の事も分かるかな?


熱海・靖久
■心境
十代女性が狙われている、のか…
(僕の娘は大丈夫かな、と被害や娘の恋愛事情に内心ドキドキのパパ)
邪神の復活なんてとんでもないよね、僕も解決に向かうよ。

■行動
噂のマンション付近で、キューピッドノートの噂について聞く。
(でも、僕が聞くのはおかしいだろうし…)
【オルタナティブ・ダブル】を使用し、別人格の『春』を呼び出し、
聞き込みをお願いする。
「春、僕はこの辺りの空き部屋を調べるから、何かわかったら教えて」
「へいへい、靖久」
手をヒラヒラとさせながら、その辺にいる女性にヘラヘラと声をかける春の姿に
(なんだか、懐かしいね)
懐かしんでる場合じゃない、必死に探さないと…!

※アドリブ、他の方との絡み大歓迎


瓜生・コウ
グリモアベースからの転移つーても、オレはコードネームUDCアースの出身で、ちょっと前までこのあたりに住んでたんだけどな。

まあ、あんまり出歩く性質じゃなかったが、それでも土地勘はある。年齢も近いし、女生徒たち相手に情報収集をするのがいいだろう。
影の追跡者のカラスを飛ばして、明らかに「キューピッドのノート」目当てに来てそうな女生徒(よその学区の制服を着ている、など)に目星をつけて…そうだな、クレープでも奢りながらがいいか…別にオレが食べたいんじゃねえぞ。

それに、もしかしたら、事件に関わっちまった知り合いもいるかもしれないしな…。


鬼ヶ島・エレナ
「恋する女を獲物にするとは許せねえぜ……。
馬に蹴られちまえってところだがマンションに馬はいねえ。
かわりにオレがバイクで轢いてやるからな!」

【SPD】
騎乗スキルで原付バイクに乗って、バイク便のバイトの振りをして
マンションの近くで情報収集するぜ。
それで近隣住民に、
「なんだかこの近くのマンションの空き家にラブレターを送ると
叶うとか、変なウワサあるんですよ。
でも住所が曖昧で間違ってたりして……。
でも仕事だから放り投げるわけにも行かないんです。
何か知りませんか?」
みたいな感じで、通りすがりの住民に「キューピッドのノート」
絡みの情報が無いか聞き出してみようと思う。




 時期外れの暖かい空気が流れ込み、しとしとと雨が降っていた。
 首都圏から電車で30分程。ベッドタウンという名が街の全てを表している、そんな近郊の衛星都市から更に歩いて数分。駅前にスーパーマーケットとパチンコ店、コンビニがある以外は商店らしいものも見当たらず、夕暮れ更けて帰宅ラッシュも過ぎた時分であれば表の人通りも疎らであった。

「この辺りならオレに土地勘があるぜ」
 そう確りと請け合ったのは瓜生・コウ(森の魔女・f07693)。UDCアースの出身である彼女は、元々同じ沿線に住んでいた。その所以あってこの辺りの地理には明るい。彼女の案内で猟兵たちは迷わず目的のマンションにたどり着く。

 十数年前には流行りの「アーバンライフ」として売り出したであろうそのマンションは、植え込みの躑躅も丁寧に刈り整えられて一見する限りはよもや邪神の復活に向けた儀式が行われているとは見えなかった。
 やや広めに設えられたエントランスには来客用のソファが一式取り揃えられ、その奥にインターフォンと電子錠、そしてエレベーターが設置されていた。来客はインターフォンで訪問先を呼び出すことで自動的にエレベーターが訪問先へ案内される仕組みとなっているようだった。また、非常階段はこちら側からは施錠されており、これを使って上層階へ上るのは難しい。


「こうしている間にも邪神は復活に近づいているのかな、不安だね」
 熱海・靖久(多重人格者のスカイダンサー・f06809)は娘を持つ親として被害にあった女性や、よもや自分の娘は大丈夫かとあれこれと気を回す。
 とにかく、この場は情報が足りない。猟兵たちは手分けをして「マンションの何号室が現場なのか」「キューピッドのノートの具体的なおまじない方法」に関する手がかりを探し求めるのであった。
「春、僕はこの辺りの空き部屋を調べるから、何かわかったら教えて」
「へいへい、靖久」
 熱海のユーベルコ―ド【オルタナティブ・ダブル】が発動すると、その輪郭がぐにゃりと大きく歪む。やがてその揺らぎが収まった後には、熱海とうり二つの姿が二つ。一つは熱海自身であるが、もう一方は「春」と名乗る別人格が支配する。
 「春」は髪を撫でつけて服装も若く見えるように着崩すと、駅前へ取って返し女性へと声を掛ける。

「熱海さん……いや、「春」さんだったっけ。そっちが駅前で聞き込みをしてくれるなら、俺はマンションに出入りする人に話を聞こうかな」
 白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)は全く寸分違わぬ容姿の二人に分かれた熱海の姿に若干驚きながら、そう声を掛ける。
 彼自身はヤドリガミであるが、弟のように可愛がっている家族がいるからこそ、独り身の寂しさは共感できるものがあったのだろう。歳の頃は高校生に見える彼であれば、マンションを出入りする少女へ話しかける姿も自然と堂に入ったものになる。
「やっぱりクリスマスに一人ってのは寂しいよね。俺もキューピッドのノートの噂を聞いてここまで来ちゃったんだ」
 そう話しかける姿は、まさにクリスマスを前に藁にもすがる心持ちで「キューピッドのノート」の噂を追ってきた男子高校生のものであった。

 そうして聞き込みをすることしばらくして。
 ほぼ同時に熱海と白峰は「マンションの502号室は空き部屋であるはずだが、時折、住人ではない学生や若い女性が出入りしている」という話を聞きつける。


 楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)は聞き込みの対象を女子高生から更に広げ、主婦らしき女性や駅前の店の店員、駅員へ声を掛けていた。
「すみません、ここらへんで怪しい人物など……」
「失礼……私はオカルト雑誌の記者をやっていまして」
 長く伸びた銀髪と藍色の瞳、ロングコートといったいで立ちは彼女が語るオカルトじみた話しに、なるほどと思わせる説得力を与えていた。

「そう言えば……ここ数カ月ぐらい、赤のボールペンを買っていく女子高生が多いんですよね。この辺りの高校の制服じゃない子が多いんですけど、なんなんでしょうか」
 そんな情報が得られたのは、コンビニの店員に何気なく話を振ったその時だった。


 鬼ヶ島・エレナ(地獄番長・f09126)は一本気な女性である。
 彼女は憤っていた。
「恋する女を獲物にするとは許せねえぜ……。馬に蹴られちまえってところだがマンションに馬はいねえ。かわりにオレがバイクで轢いてやるからな!」
 気色ばんで気合をひとつ入れると愛用の原付バイクに跨り、バイク便のバイトを装って周辺の住民に聞き込みを続ける。

 そうしてバイクの機動力を活かして走り回ること数刻、やがてエレナはマンションの持ち主を名乗る老婆に行き当たる。
「なんだかこの近くのマンションの部屋にラブレターを送ると、叶うとか変な噂があるんですよ。でもさっきインターフォンを鳴らしてみたんですけど、誰も出なくて。着払いで頼まれてるから突き返す訳にもいかなくて……どうしたらいいですか?」
 困り切った表情を演技で浮かべ、UDC組織が手筈を回して調達した偽のバイク便の身分証を見せると、老婆は事情に納得したのか大きく頷いてこう告げる。
「あらあら、こんな雨の中大変ねぇ。ちょっと待ってて、いま着いていってあげるから」

 かくして、老婆を伴ってエレナはマンションへ戻り、空き部屋へ荷物を置くことに。もちろんその隙を見て老婆が電子錠を操作する手元を覗き見て、暗証番号を覚えることは忘れない。


「部屋番号が分かったのなら、ちょっと様子をみてみるか」
 コウはそう言って宵闇に紛れて漆黒の鴉を一羽、マンションの裏手から飛び立たせる。それは彼女のユーベルコ―ド【影の追跡者】。彼女の意のままにヒラリと鴉はマンションの五階まで舞い上がると窓越しに502号室の様子を伺う。五感を鴉と共有したコウの瞼の裏には、厚くぴったりと閉ざされたカーテンの裏に動く明かりが見えた。

「……誰か、いる」

 ――ずっとこの辺りで自分達が聞き込みをしていたのに?
 ――儀式に関係しそうな女性の姿は無かったはず……。
 訝る声が上がるのは無理もない事。そんな中で。

「犯人が、邪神復活の儀式をしているんじゃないか?」
 誰かがそう呟いた。


 エレナが覗き見た暗証番号を電子錠に入力すると、ポーンとチャイムが鳴ってエレベーターが扉を開く。猟兵たちは頷き合ってエレベーターへ乗り込むと、熱海と白峰が得た情報に従って五階へと向かう。

 再度、チャイムが鳴って扉が開くとそこはマンションの中層、五階フロア。廊下には人通りもなく、強くなった雨足がバタバタと壁面を煩く打っている。目的の502号室はエレベーターの左手、マンションの裏手に面した部屋であった。
 そろりと近づき、ドア越しに気配を窺うがさすがに鉄製のドア越しでは物音は聞こえず。ゆっくりとドアノブを下ろすが、そこは当然と言うべきか、鍵がかかっているようだった。

「ここは私に任せて」
 一同に告げると、亜夜は持前の手先の器用さを活かして苦もなくドアの鍵をピッキングで開けてしまう。最後に「カチャリ」と僅かな音を立て、ドアが薄く開くと猟兵たちは意を決して室内に滑り込む。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『この恨み、晴らさでおくべきか』

POW   :    当事者を見付け次第、力尽くで食い止める

SPD   :    呪具を盗んだり魔法陣を破壊するなど、邪神復活の妨害工作を行う

WIZ   :    当事者を説得することで、邪神復活の儀式を中止させる

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 室内は異様な熱気で包まれていた。
 部屋の間取りは2LDK、入って右手にはバス・トイレと思われる扉があり、左手には洋間が二部屋。正面奥にLDKがあり、明かりはそこから漏れていた。

 他の部屋に人気が無い事を確認して、最後にリビングルームへ猟兵たちは突入する。

 ――果たしてそこには。明々と燃える無数の蝋燭の灯に照らされて、一心不乱に「何か」に包丁を突き立てる若い女性の姿。
 そしてその隣にはページ一面が赤い文字で埋め尽くされた、ノートが。
花菱・真紀
とりあえず部屋番号分かったけど早速儀式中か…なんとかしてとめねーとな。
呪具を盗む…この場合はキューピッドのノートが関係してるんだろうなそれを奪えるようにしてみよう。
オルタナティブ・ダブルで別人格・有祈を召喚。
邪魔されそうになったらそっちの対処たのむぜ。
後は儀式が成功しないように【時間稼ぎ】だ。


アインス・ツヴェルフ
【SPD】部屋に突入したら素早く現状を確認する
女性が包丁を突き立てている「何か」が人でない事を祈る

もし人だったら流石のアインスも緊迫した表情になり
「な、なんて事を…!」と驚愕はするものの
その彼女の行為を止めるのに一番効果的なものは…と考えを巡らせ、咄嗟に傍らにあったノートを奪う
(仮に「何か」が人でなくてもノートは奪う)
「やめろ!やめないとこのノートを破くぞ!」
そう言いつつノートに書かれている内容にも素早く目を通し確認する

彼女がノートを奪いに来たら他の猟兵に「何か」の奪取、もしくは介抱を託す
自分は彼女が正気に戻るように「目を覚ませ!自分が何してたのか分かるのか!」と声をかけつつ抑える


鬼ヶ島・エレナ
「くっ、遅かったか……!
止めろ、コレは恋を叶えるような優しいおまじないじゃねえ!
……って言いたいけどまずは儀式を止めねえと……!」

【SPD】呪具を盗む

1.まずはノートを奪うことを最優先だ。
佳穂の確保は他の仲間に任せて、女の子の隣のノートを狙う。
もし誰かと行動がバッティングするようならば佳穂とノートの間に
割って入り、仲間のノート奪取を補助する。

2.【オルタナティブ・ダブル】を使って二人がかりで
他の部屋を確認する。
ノート奪取の成功失敗にかかわらず他に儀式に
必要そうなものが無いか、あるが既に現れたオブリビオンが
いないかを確認する。
もしそれらがあれば大声で他の猟兵達に知らせる。


月隠・三日月
WIZ:当事者を説得するよ

赤い文字で埋め尽くされたノート……赤のボールペンを買っていく女子高校生が多いという話と合わせて考えると、あれが『キューピットのノート』なのだろうね

あの「何か」に包丁を突き立てている女性は怪しいなんてものではないけれど、まずは話しかけてみよう
「こんにちは。あなたは、ここで何をしているのかな? 刃物をそんな風に扱ったら、手を切ってしまうよ」
彼女にできる限り近づいて、彼女の話を聞く姿勢を見せるよ。必要なら両手を挙げよう
こんなことをするのに、理由が無いとは思えないからね
彼女の話を聞いた上で、『こんなことは、やめないか』と訊いてみれば、彼女も儀式をやめてくれるかもしれない


瓜生・コウ
儀式を中断されると不味いとか、そういうケースもあるようだが、まあ止めるべきなんだろうな。

何か起こるようならその時考えるとして、必要なのは明らかに常軌を逸したこの女性への対処か。
相手を安心させるように落ち着いた、低めの声で(意識しないイケボ)…

「落ち着いて、ゆっくりと包丁から手を放してこっちへ来るんだ」

可能なら現場を保存したいし「何か」起こるかもしれないから近くに来てもらいたい。
オレは説得の類は得意じゃない、起こるかもしれないことからの保護を優先しよう。
女性は後ろに回すかいっそ肩抱いてやりつつ(無意識なイケメンムーヴ)、銃は抜かないがいつでも抜き撃ちできる体勢で「何か」に目を向け、確認しよう。


熱海・靖久
■心境
あの女性は…噂によって来た人じゃなさそうだね。
色々話を聞いてみたいな。
(オルタナティブ・ダブルを発動し)
「『春』、彼女が逃げないように出口を守ってほしいな」
「あいよ、靖久。ケケケ」

■説得
…随分、熱心だね。
それにキューピッドノートという可愛い響きに似合わずおどろおどろしい光景だ。

君の目的は何なのかな?
僕らで協力は…できなさそう、だね(肩をすくめ)

男女の片想いの感情は決して怨念ではないよ。
他の人の愛情を歪めてはならないし、
本当にその想いが糧になるのかな?
さぁ、その物騒なものは捨てるんだ。
何があったかわからないけれど、邪神なんかに頼ってはいけないよ、ね(父親の顔で)

※アドリブ、絡み大歓迎です!


白峰・慎矢
…そういえばおまじないが成功した子と待ち合わせしてたんだよね。成功しちゃったら邪心復活の糧にはならない?まさか、その女性が包丁を突き立ててるものって…。

女性のことは皆に任せて、俺は儀式の妨害工作をしようかな。
この蝋燭は結構怪しいな…お風呂場で水を持ってきて、全部消しちゃおうか。部屋が暗くなっちゃったら電気をつけた方がいいかな?蝋燭の下とか、隠れた場所に魔法陣とかないか探してみて、もし見つけたらついでに破壊しておこう。時間があったら他の部屋も探せるといいね。


楠瀬・亜夜
「これが儀式……想像はしていましたが、なかなかの狂気……」
「儀式の呪具はやはりあのノートでしょうか?」

【SPD】
一心不乱な状態を利用して
女性に気が付かれないように速やかに接近し
ノートの奪取を試みる。

この際に他の猟兵が説得を試みるのであれば
説得を終えるまでいつでもノートを奪えるように
待機しておく。

「ノートをお預かりしたい所ですが――どうも正気には見えませんね」

この時点でほかの猟兵の行動の妨げにならないのであれば
視界確保の為に電気の点灯を試みる。

「流石に蝋燭の灯りだけでは状況が読めません……ね」




 グジュ、グジュ、グサッ……ズブリ。
 耳を覆いたくなるような粘液質の水音が絶え間なく、部屋に響く。
 改めて確認するまでもなく、水音の主は、部屋の中央でフローリングに座り込み、繰り返し何度も何度も手にした包丁を「何か」……赤い、紅の雫が滴るモノに深々と突き立てる女性に相違なかった。
 季節を考えれば薄着に過ぎるネグリジェを一枚纏ったきりの姿で、だが、髪を振り乱して作業に没頭する彼女の額には玉の汗が陽炎の揺らめきを照り返していた。

(――贄が足りぬ。汝の願いの為、供物を我に捧げよ)
 その声はどこから聞こえたか。

 すぐにでも女性を止めに駆け寄りたい衝動をぐっと唾と共に喉の奥に飲みこみ、三日月は、極力穏やかな口調で彼女へ話しかける。
「こんにちは。あなたは、ここで何をしているのかな?刃物をそんな風に扱ったら、手を切ってしまうよ」
 両手を挙げて掌を見せて「危害を与えるつもりはない」と意思表示しながら、ゆっくりとフローリングの扉をあけ放ち、一歩、また一歩と彼女へ近づいていく。
 部屋の中に足を踏み入れると、熱気や水音に加えて饐えたようなアンモニアの臭いと、すすり泣く若い女性の声が聞こえた。それは、リビングに面して備えられたキッチンカウンターの奥。蝋燭の光が届かない影から漏れてくるようだ。

 もう一歩。もう一歩近づければ伸ばした手が彼女に触れるかというところで。「それ以上、来ないで」と。これまで侵入者である三日月に何の反応も見せなかった彼女が短く、そう呟く。手にした包丁は止まらない。

「何のために、ここで、こんなことを?」
 再度問いかけた三日月の声に、女性は面倒そうな心持ちを隠そうともせず、振り返る。


 猟兵たちは、息を潜めて事の成り行きを見守っていた。あるものは自身の現身を呼び起こして外廊下へ続くドアを確保し、またあるものは腰に下げた熱戦銃に手を遣りながら抜き撃ちの体勢を崩さぬまま。

 そして先行する三日月が問いかける声に、女性が緩慢に向き直ったその刹那。

「今だ!」

 猟兵たちはそれぞれの役目を胸に抱き、一糸乱れぬ連携でリビングへ突入する。


 女性の対応も気には掛かったがそれは味方に任せ、先ずは儀式を止めることが肝要とばかりに一足飛びに飛び込んだ白峰は、他の猟兵たちよりも一歩先んじて鯉口を切った。

「俺は儀式を止める。皆は女性を!」

 脇に差したサムライブレイドの刀身がキラリ――と煌めくと、剣刃一閃。
 部屋を煌々と照らしていたロウソクは余すことなくその芯を断ち切られ、わずかな白煙をたなびかせてふっと灯が消える。そこに残されたのは、音のない闇。

 不意の暗転に戸惑う女性の動揺を横目でチラと見据えながら、月明りを照らし返しては刃が再度舞う。ざりざりと耳障りな音を立ててフローリングが木っ端散らして切り裂かれると、淡く薄紫色に光を放つ魔法陣が、ぼぅ、と焔上げて消える。

 カチリ、と鍔に鞘打ち付けて。
 若き剣豪は達人の業を殺気と共にその身に納め、ふぅ、と吐息を漏らす。


 白峰が生み出した闇に乗じて、真紀とエレナは滑るように駆ける。

「止めろ……コレは恋を叶えるような優しいおまじないじゃねえ!」
 そう絞り出すように、喉の奥から叫んだエレナの脳裏にあったのは、同じ年ごろの女性として恋する乙女心に感じ入るものがあったか、それともそんな気持ちを踏みにじるオビリビオンへの烈火の如き怒りだったか。

 猟犬たちの足音に気付き、暗闇の中で咄嗟に傍らのノートに伸ばす女性の手を遮り、エレナはそのまま身体ごと女性を押さえつける。それは仲間を信じ、チームプレイに徹したエレナの機転だった。ノートを求めて伸ばした女性の手は、だが、エレナの身体に押されて大きく傾ぎ……虚しく空を切る。

 その一瞬の隙を逃さず、真紀がノートを拾い上げる。
 視界の効かぬ闇の中で一瞬の攻防があり、そして終わった。

 ――パチリ。
 亜矢がリビングの照明を点け、やわらかな暖色の蛍光灯の光が部屋を照らしたのはちょうどその時だった。


「これが儀式……想像はしていましたが、なかなかの狂気……」
 改めて明かりに照らされた部屋の様子を見て、亜矢は戦慄する。そこには悍ましいと形容する他にない光景が広がっていた。

 がらんとしたリビングルームには調度らしいものは全くなく、ただ、外からの視線を遮るためだろうか。二重にかけた厚いカーテンが窓に垂れている。

 床に視線を転じると、部屋いっぱいに大きく紅で描かれた五芒星。そしてそれを囲むように蝋燭が配されている。
 ――その、中央。ぺたりと座り込んだ女性が衝いた手の隣には。
 年若い男性のものと思しき……胴体が、柘榴のように色鮮やかな肉をぱっくりと開いていた。

「話が通じる相手ならば良いのですが、これは正気の沙汰とも見えませんね……」
 油断なく辺りを見回して、思わず内心が亜矢の口をついてこぼれる。

 その横で、改めて突きつけられた事態の重さに「な、なんて事を……!」とアインスは驚愕する。思い至らなかった訳ではない。寧ろ、覚悟は決めていたはずだった。その上で尚、この部屋の有り様は惨たらしいものだった。


「ぐっ……うえぇぇ……」
 白日の下に曝け出された残酷な現実と錆びた鉄、そして鼻と目を刺す臭気に耐えかねて、誰かがおもわず嗚咽を漏らす。


 凄惨な部屋の有様を前にして、もう一人の花菱――有祈<アキ>は冷静だった。
「あんたが、「キューピッドのノート」の噂を流していたのか?」
 ゆっくりと丁寧に言い含めるように言葉を切りながら、呆然と座り込んだままの女性に語り掛ける。それは儀式が完遂しないようにと咄嗟に判断しての行動だった。

 話しかけながらその姿を見れば、女性は歳の頃は二十代半ば。栗色に染めた髪を流行りのスタイルにウェーブさせ、品の良い小花柄のリボンがあしらわれたバレッタで留めた姿は、なるほど流行に耳ざとい今時の若者といった風体であった。

 が、その口元を彩るのは艶やかなルージュではなく……野蛮な深紅の雫。
 ぽたりと、一滴、熟成した赤ワインにも似たその雫がフローリングに滲みを作る。

「おい、聞いているのか?」
 ただただ惚けたように虚空を見つめる女性の姿に、有祈がもう一度問いかける。

「落ち着いて、ゆっくりと包丁から手を放してこっちへ来るんだ」
 オブリビオンの調査のためにも、現場はこれ以上荒らしたくない。だから。
 危害は与えない。どうか落ち着いて欲しいと、コウもそう呼びかける。

 ――贄が足りぬ。汝の願いの為、供物を我に捧げよ。
「誰か、何か言ったか?」と猟兵たちが耳を疑ったと同時に。

「か゛え゛し゛て゛っ゛!」
「わ゛た゛し゛の゛ノ゛ー゛ト゛、か゛え゛し゛て゛え゛!!」
 ぐるりと白目を剥いて、女性は人が変わったように低い声で慟哭すると跳ね起きざまにノートを手にした真紀へ跳びかかる。


「目を覚ませ!自分が何してるのか分かってるのか!!」
 細腕とは思えぬほどの力強さで掴みかかる女性を両腕で抑えながら、アインスは必死に彼女に呼びかける。
 それは、この期に及んで彼女をも救いたいと想うアインスの心からの願い故に。鬼気迫る表情で喚き散らす女性を宥め、なんとか落ち着かせようと繰り返し、正気を取り戻せと語り掛ける。
 「創られた命」であり普段はどことなく斜に構えたところも見えかくれするアインスであるが、親代わりの猟兵からはしっかりと人の心を受け継いでいる。
 そう感情を露にして、女性を説得しようと試みる彼の声が届いたか、壁に押さえつけられて頭を振り乱していた女性ではあったが次第に落ち着きを取り戻す。


 熱海はこの任務に、並々ならぬ熱意を以って臨んでいた。それは、彼自身がまた娘を持つ親であったから。わが子を想う父親の気持ちに共感できるからこそ、若い女性が犠牲になるのは許せるものではなかった。
 ――それは、この事件の主犯と思しき眼前の女性に対しても等しく向けられる。

「君の目的は何なのかな?僕らに協力できることはないかな」

 声が届いているのか、俯いたままの女性に歩み寄って熱海は尚も続ける。

「男女の片想いの感情は決して怨念ではないよ。他の人の愛情を歪めてはならないし……果たして気持ちを歪めて愛を手に入れたとして、本当にその想いは糧になるのかな?さぁ、その物騒なものは捨てるんだ。何があったかわからないけれど、邪神なんかに頼ってはいけないよ」
 ね、だから包丁を渡すんだと熱海は続けて、女性に手を伸ばす。

「――贄が足りぬ。汝の願いの為、供物を我に捧げよ!」
 三度、声が聞こえた。それは、女性自身の胴から。薄い布地の奥に、本来ならあり得ざる、「口」が見えた。


「待て、様子が……おかしい。気をつけろ!」
 異変を目ざとく察知したエレナが、鋭く叫んで危険を猟兵たちに伝える。

「オイオイ、冗談は止してくれよ。さすがのオレもオブリビオンは勘弁願いたいな」
 ぎょっと跳び退り、咄嗟に抜き打ちの体勢を取ると、コウはそう嘯く。
 距離を取った猟兵たちの目の前で、ぞわりとひと際大きく身震いして、女性はオブリビオンに姿を変えた。
「――残念だな、もう少しアンタと話しがしたかったがしょうがない。仕事だからな」
 熱線がジッと空気を灼き、オブリビオンが猟兵たちを敵と認めて奇声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『牙で喰らうもの』

POW   :    飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
熱海・靖久
残念ながら、もう言葉も通じなさそうだね…君がなりたかったものは、これなの?
もっと話を聞きたかったよ。
こんなものに取り憑かれる前に
(悲しそうな表情で)

■戦闘
軽やかなステップで前衛に立ち、
蹴りと拳の【2回攻撃】を
「こんなものに変身する気持ち、僕にはさっぱり理解出来ないよ」
もっと早く、阻止できる道があったのじゃないか、と思ってしまう

灰燼拳で至近距離から攻撃を。
仲間が攻撃されたら【かばい】
「近寄らせないよ」と【吹き飛ばし】を
「これ以上、悲しい人は増やしたくないんだ」
それに、純粋な気持ちでノートに名を書いた人の想いを踏みにじっているようなものだ、と
やるせなさを力に変えて、灰燼拳を振るう

※アドリブ大歓迎


瓜生・コウ
ちっ、手遅れだったか?

こうなっちまったら仕方ねえ、相手が飛び掛かるより早く抜き撃つぜ、先手必勝、狙いはどてっ腹の口!
激昂してこっちに飛び掛かってくれば合わせて零距離からの射撃だ。

逃げようとするようなら…すったもんだの間に仕掛けは済ませてある、魔術で一時的に作りだしたトラバサミでどうだ。
怯ませて詠唱の時間が取れればこいつが本命、オレの魔導書『無銘祭祀書』に記された『オグン・ソードの呪詛』を喰らえ!

『ねるがるす りむがんと おぐん そーど なうぐりふ!』


月隠・三日月
『汝の願いの為、供物を我に捧げよ』か。『汝』があの女性と考えると、今はUDCが女性に取り憑いている状態、ということかな。このオブリビオンを倒すことで、引き剥がせればよいのだけれどね

【降魔化身法】を発動して、甲冑を纏うよ。何の防御も無しに噛みつかれたら大事だからね
敵の攻撃が味方に向いたら、可能な限り味方をかばうように立ち回るよ。鎧を着ている私なら、多少噛みつかれたところで致命傷にはならないだろうから
敵の攻撃を防御しつつ、隙を見て《妖刀》で攻撃しよう

私はあまり戦闘を得意とはしていないのだけれど、こうなった以上仕方が無い。このユーベルコードは消耗が馬鹿にならないから、できるだけ早く決着を付けたいね


鬼ヶ島・エレナ
「こうなっちまったからには、本気で戦うっきゃねえな……!
犠牲になっちまった誰かのためにも、キューピッドのノートのウワサは
ここで行き止まりにしてもらうぜ!」

相手が逃げられないように玄関へのルートを塞ぎつつ
地獄の木刀(鉄塊剣)で攻撃する。
部屋が狭いので味方どうしでぶつかったりしないよう、
あまり立ち位置は変えない。
攻撃が来たら避けることよりも木刀で受けて防ぐ。

技能「鎧砕き」で手の防御力を削り、敵が消耗してきたら
ユーベルコード「ロッコクスラッシュ」で攻撃する。


白峰・慎矢
少なくとも二人のかけがえのない命を犠牲にしておいて、更に犠牲を求めるのか…ふざけた話だよね。

向こうは近接戦闘が得意そうだから、遠距離から攻めようかな。「錬成カミヤドリ」で弓を作って、敵の攻撃を妨害するように、多方向から絶え間なく攻撃しよう。隙ができれば弓で一斉攻撃しよう。
「そんなに欲しいなら、これでも喰らいなよ!」
室内でこっちは数が多いから、仲間の皆には当てないよう注意を払わないといけないな。
敵の攻撃は「残像」を使ったり、刀で受けたりして防ごう。
余裕があれば攻撃されそうになった人を助けるとか、皆と連携して攻めたいところだね。


アインス・ツヴェルフ
間に合わなかった…!

悔しい思いを奥歯で噛み締め戦闘態勢に移行
サイコブレードを手にし、サイキックエナジーで刃を形成

もう、こうなったら元に戻せないのかな…
恋愛っていう感情…
やっぱり俺にはまだわかんないけど、
こんな儀式に頼ってしまうくらい真剣なものなんだよね
そんな気持ちを利用するオブリビオン…絶対に許さない!


サイキックブラストで敵の動きを一時止め、
その間に形成したサイコランスを放つ

トドメが必要ならサイコブレードで貫く

助かったら嬉しいし助からなかったら涙を流して悲しむ
アインスにはまだ感情を取り繕う術は持ち合わせてないから


花菱・真紀
【SPD】
とりあえず。その大きなお口はチャックしてもらおうか?
噛みつかれちゃタダじゃ済まないからな。
大きな口を作る予兆を見せたら即座に行動。
【バトルキャラクターズ】使用。技能【先制攻撃】で優位にたたせてもらう。

恋のおまじないもいきすぎたらただの呪いだからな。
儀式にたどり着いたのも偶然じゃないのかもな…。

アドリブ可


楠瀬・亜夜
「……ッ1間に合いませんでしたか」

(異形の怪物……もう何度も目にしたのに一向に
慣れる気配はない)
(この狂気は雨だれが岩を穿つように少しづつ私を侵していくのだろう)

【先制攻撃】で【咎力封じ】を使用し
敵のユーベルコード封じを狙う。
それと同時に敵の動きの阻害をする。

「こうなっては仕方ありません、迎え撃たせて頂きます」

戦場の狭さを考慮して味方の攻撃の阻害をしないよう
味方の射線などを気にしつつ行動する。

自分の直線状に味方がいる場合はナイフで応戦し
いない場合は拳銃で応戦する。

「こうなった原因は……全て終わらせた後で調べてみましょう」



●口を開く奈落
 ――まだだ。まだ足りない。もっと、モット、MOTTO。
 ぽっかりと空いた胴体の闇の中に傍らの赤い何かを無造作に押し込んで、ぐちゃぐちゃと味わうように咀嚼して。
 一刻前までヒトだった、「彼女」は猟兵たちに向き直る。

『うぬ等が次の贄か』
 ぞろりと――艶やかだった栗色の髪が束となって抜け落ち、ネグリジェは大きく盛り上がった肉の容積に耐え切れずにビリリと裂ける。乱杭のように無造作に生えそろった牙の奥から長い舌がべろりと紅を舐めとって、どす黒く染まった瞳が昏く光る。

 果たして目の前の異形はオブリビオンなのか、人なのか。
 疑問を胸に押し殺しながら、猟兵たちは迫りくる異形に立ち向かう。


 アインス・ツヴェルフ(サイキッカー・f00671)が、楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)が「間に合わなかったか?」と歯噛みする。
 ――オブリビオンの脅威を侮っていたわけではない。猟兵としての責任感が無かったわけではない。だが、どこかで、アインスは興味に突き動かされるがままにこの「オマジナイ」を追っている自分を感じていた。それは、創られた命であるが故に恋愛感情を理解することが出来ぬ、彼の探求心と言うべきなのだろうか。
 その彼が……このオブリビオンだけは決して許すことはできないと。ヒトとして、他人(ヒト)を愛する気持ちは誰にも冒させはしないと、魂の叫びを炎と燃やしてサイキックエナジーを刃へと研ぎ澄ます。

 亜夜もまた、好奇心に駆られてこの任務に臨んだ者だった。
 彼女は、幼少の頃の記憶がない。……というよりも、「ここ数年以外の記憶がない」のだ。そんな亜夜が自身の記憶を取り戻すための方法として選んだのが、猟兵として任務に就き、数多の世界を旅すること。その中で、少しなりと自分を取り戻したいと……そう願っていた。
 だが。幾たびもの修羅場を潜り抜けてきた彼女をして、眼前のこのオブリビオンはその心を蝕むような狂気を放っていた。思わず目を背けたくなる衝動を飲みこみ、亜夜は呟きと共に先手を打つ。
「こうなっては仕方ないですね。迎え撃ちますよ……まずは私が仕掛けます。皆は続いてください」
 それは仲間に向けた呼びかけか、それとも、自分を律するための暗示だったのか。凛とした藍色の瞳に意思の光を宿し、怜悧な仮面を被って彼女は抜撃ち気味に【咎力封じ】を放つ。

 部屋は狭く、乱戦になれば味方への誤射の危険性も増す。であれば、動きは迷わず最小限の動きで素早く。オブリビオンの動きを封じるべく放たれた拘束具は、狙い違わずその頭部に絡みつき、まさに瓜生・コウ(森の魔女・f07693)へ噛みつこうとがばりと開いた顎を締め付けようと――。


「遅いぜ!オレから目を外したのは拙かったな」
 『牙で喰らうもの』がアインスと亜夜に向き直ったその寸隙を衝いて、コウは先手必勝とばかりにオブリビオンの懐に滑り込む。気配を殺して忍び寄る彼女の狙いは、ゼロ距離からの呪詛の攻撃。その彼女が取り出すのは【レプリカクラフト】で作り出した無数のトラバサミ。魔力で作り出されたそのレプリカは、贋作と言えど、しかし凶悪な歯で以って敵の肉を確実に噛み千切る。

『うぬ……小癪なゴミ虫どもよ。我に捧げられし供物の分際で楯突くとは――』
 地の底から響くような声でふしゅるると唸り、苦悶するオブリビオンは、それでもしかしコウの動きを察知して咄嗟に牙を剥いて懐に入り込んだ猟兵をそのまま飲みこもうとする。
 ――あわや、邪神の毒牙にコウが掛かろうとしたその時。

「おいおい危ねぇな?その大きなお口は、チャックしてもらおうか」
 花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)が自身の能力【バトルキャラクターズ】で生み出した電脳世界の格闘家が、目にも留まらぬ早業でオブリビオンに肉薄し、その脚を払う。巨体がその重心を支える先を失って、ぐらりと傾ぎ……そこに亜矢が放ったロープが輪を作ってその頤を固く戒める。

 機先を制して『牙で喰らうもの』の動きを封じたファインプレイをきっかけにして、邪神の力の一端、その名を冠する血潮滴る顎が力を封じられる。

「どうだい、俺のとっておきは?」
 オカルトも嫌いじゃないが……デジタルも捨てたもんじゃないだろ?と真紀はそう嘯いて、眼鏡のフレーム越しに怪異を観察する。


「ここから先は通行止めだぜ。通りたかったら、オレを倒していくんだな。もっとも、てめぇにやられるオレじゃねえけどな!」
 啖呵を切って鬼ヶ島・エレナ(地獄番長・f09126)は手にした木刀をまっすぐに『牙で喰らうもの』へ向ける。茨城の女番長としての顏を持つ彼女は、義に厚く、それ故にこれまで「キューピッドのノート」の犠牲となった誰かを想って憤る。

 「環境が人を作る」という言葉がある。それはエレナにとっても当てはまるのかも、知れなかった。元はインドア派で、アニメ・マンガの聖地「秋葉原」や「池袋」乙女ロードを徘徊することを好んでいたエレナは、本来ケンカなどをするような女性ではない。
 だが、「番長」としての役割を与えられ、それを全うするうちに。彼女は猟兵としても一流の手練れとなった。その彼女が、入り乱れる敵味方の隙間を縫って鋭く小手を払う。
 バシイィィッッと小気味よく木刀がオブリビオンの手首を打ち、その肉が抉れる。
 度重なるエレナの攻撃で、その筋は断ち切られ、動きは次第に鈍くなっていく。

「食らえ、オレの魂のこもった一撃を!」
 乾坤一擲、そう叫ぶとエレナは上段から木刀を――スパンッっと振り抜く。
 彼女の必殺技【ロッコクスラッシュ】がオブリビオンの左手を、その手首の先から断ち切った。


 ――GYAAAAA!
 ブチブチと筋を断たれ、骨をその断面から覗かせ、黒い墨のような血を噴き出して『牙で喰らうもの』が慟哭する。猟兵たちの連携攻撃を受け、得意とする牙での攻撃を封じられて、オブリビオンは余裕を失いつつあった。
『贄を、贄を、我に贄を!絶望を、恐怖を、阿鼻叫喚の嘆きを寄こせ!!』
 そう叫ぶと、残された右手が大きく風船のように膨れ、バチンと弾ける。その後には、肩口から新たな口が供物を求めて舌なめずりをするのであった。

「本性を現したね。「汝の願いの為」というのは建前で、結局は自分が供物を欲しかっただけということかな」
 月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)はその様子を見据えつつ陰陽符を手に真言を唱えると、【降魔化身法】を発動し甲冑をその身に纏う。
 ――私は戦うことは得意じゃないけれど、だからと言って負ける気は毛頭ないと……そう決意を血に刻んで怒気を露にした黒い影に立ち向かう。その背には二の矢を継がんとする白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)の視線を背負って。

「この技は……消耗が激しいからね。私が奴の牙を受け止める。その隙に、白峰さん。よろしく頼むよ」
 そう声を掛けると三日月は妖刀を抜き、ばらりずんと袈裟懸けに新たに生み出された右肩の顎を斬り上げる。悪鬼羅刹と化した三日月の刀の冴えは、ストンと一刀の下に敵を切り捨てる。

「多くの掛け替えのない命を奪っておいて……まだ更に奪おうというのかい?」
 巫山戯るなと、静かな怒りをその赤い瞳に宿して白峰は弓を構える。神器である弓に宿ったヤドリガミである彼は、自身の本体を無数に複製してはその矢尻に敵を討つ意思を乗せる……それは正に「魔を祓う矢」。
 目を細めて狙いを定めると、鏑を取って番い、よっぴいてひょうと放つ。

「そんなに食べ足りないなら、これでも喰らいなよ!」
 三日月が生み出した一瞬を衝いて、四方八方から白峰の放った矢がオブリビオンに向かう。ぴゅうと矢羽が風を裂くと、『牙で喰らうもの』の両腿に深々と矢は突き刺さり、その動きを止める。狭い室内であればこそ、相手から目が届かぬ死角も畢竟多くなる。
 残像を生み出し、敵を攪乱しつつ放ったその矢はまた、次の一手への布石。


 脚に矢を受けて膝を突く邪神の傍らに佇み、熱海・靖久(多重人格者のスカイダンサー・f06809)は語り掛ける。
「もう、僕たちの言葉は君には……届かないのかな。君が願いを込めて、なりたかったものはこんな――こんな醜悪なものなの?」
 顔をくしゃくしゃに歪め、熱海は静かに言の葉を継ぐ。それは邪神ではなく、姿の見えない女性へ向けて。まだ、貴女はそこにいるのか――と。

「僕にも大切な家族がいるから、愛する人を想う気持ちは分かる。でも」
 それでも。こんなものに取り憑かれる気持ちはやっぱり理解できないと、続けて。

 左手首からはポタリと闇を垂らし、右肩の口は大きく切り裂かれて。頭部の口はいまだにきつく封じられたまま……オブリビオンは満身創痍だが、まだ身を現に残していた。

「これ以上、悲しい人は増やさせない」
 だから。
 これで、御仕舞い。
 ポンと掌を優しく「彼女」の肩に置き、靖久は【灰燼拳】を振るう。


『仕舞いとぬかすか』
 笑止とばかりに『牙で喰らうもの』は猟兵たちを嗤う。
 そもそもが実態のない「オマジナイ」から生まれたオブリビオン。ここで討たれたとしても「キューピッドのノート」が人々の記憶から消え去らぬ限り、やがてまた自身は蘇ると……そう、残酷な事実を邪神は突きつける。
 受けた傷は深く、その端々からタールのようなどろりとしたものが零れ落ちている。如何に邪神が虚勢を張ろうとも、いずれこの身は朽ちることは確実のように思われた。それでもなお、オブリビオンは猟兵を嘲る。

 それを、アインスは冷たく突き放す。
「言いたいことはそれで終わりか?」
 淡々と最後通牒を突きつけると、その悪意に満ちた醜悪な口を閉じよとばかりに手にした【サイコブレード】を振るって邪神に止めを刺す。


 ――ゴトリ。
 重い音がして、フローリングの床に、首が落ちる。

 悪夢のようなオマジナイはその儀式の担い手を失い、蓄えられた魔力も次第に雲散霧消して消えていく。真紀がその手に拾い上げたノートからも、オブリビオンの邪気は祓われていく。パチ……パチと蛍光灯が明滅して、今やただの薄紫色の模様となり果てた魔法陣を照らし出す。
 先ほどまでの様子が嘘のように、部屋には静寂が訪れる。

「終わった……のか?」
 誰かが呟く。

 ふと、ぐるりを見渡すといまや襤褸切れ同然となったネグリジェを胴に絡みつかせた女性が部屋の片隅に倒れている。あちこちに細かい傷はあるものの、見たところ五体満足のまま、穏やかにその胸が上下している。

 そこへ。
「……あの、どなたか、いるのですか?」
 そう声を掛けられて、猟兵たちはキッチンの片隅――冷蔵庫の影に縛られた少女が転がされていることに気が付く。ずいぶんと長い間ここに居たのだろうか。荒れた髪や肌が、饐えた臭いが監禁された少女の待遇を物語っていた。その横には淡く光りを放つスマートフォンが一つ。画面には、数時間前に猟兵たちが送ったメッセージが通知を残していた。

「無事で、好かった」
 また別の誰かが哭いた。

●エピローグ
「結局、「キューピッドのノート」って何だったんだろうな」
 無銘祭祀書を繰りながら、コウは一人ごちる。あの後、女性らを助け出して事情を聴いたが、結局予知にあった以上の事は分からなかった。
 監禁されていた少女――佳穂はおろか、儀式を執り行っていた女性すらも『牙で喰らうもの』や「キューピッドのノート」がなぜああした形で復活したのかその理由となりそうなものは持っていなかったのだ。旧き神々について書かれた魔導書であれば、何等かの手がかりを得られるかとも期待していたが有力な情報は見当たらず。

「都市伝説、だからな。いつの間にか噂になり、噂が実体を呼んで形となり、その実……何も確たるものは無い」
 それこそが「オマジナイ」の真実だろうと、そう真紀は推察する。過去の残滓たるオブリビオンが「キューピッドのノート」の形を取ったということは、そう言った悲恋が、もしかするとあったのかもしれない。

 答えは、無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月29日


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🔒
#UDCアース


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト