ティラノ監督「おいイェーガー!野球しようぜ!」
●本日快晴、野球日和
「打てー!かっ飛ばせ!」
「投球練習がしてぇんだ、受けてくれねえか」
「おう、いいぜ」
キマイラフューチャーの草野球チーム 【なんかとってもイェーガーズ】の練習は本日も絶好調である。
キマイラらしく回しているカメラの前で、監督キマイラの【コアラッコ】は自慢のチームの出来栄えに満足げに腕を組んだ。
……ふと、グラウンドの入り口が騒がしい事に気づいて振り替えると、そこにはもう一人……百戦錬磨の野球監督。
「おいイェーガー!野球しようぜ!」
●猟兵とは野球と見つけたり
「みなさん、事件っす!」
陽気なグリモア猟兵、モルツクルス・ゼーレヴェックスの大声がグリモアベースに響き渡る。……ところでグリモアベースのベースってまさかベースボールから来ているのでは?関係ないっすかそうっすか。
「事件が起こるのはキマイラフューチャー!今回は野球チームがオブリビオン野球チームに試合を申し込まれるんすよ!」
ただのキマイラ野球チームと常識破りのオブリビオン野球チームでは実力差は歴然であり、突風が砂を吹き飛ばすがごとく負けるだろう。
そして、圧倒的な試合の様子が全世界に向けて配信される事になる!その結果オブリビオン野球チーム【マッスル☆ザウルス】の人気はうなぎ登り!スポンサーがついてグッズが次々と売れて有力選手は移籍し契約金もガッポリ!
勝って勝って勝ちまくるザウルスによって最終的にキマイラフューチャーの野球文化は衰退していく事であろう……。
「みなさん猟兵は今!この瞬間から野球選手っす!相手がどんな汚い手を使おうが正々堂々と野球でぶち破ってキマイラフューチャーの未来を守るっす!」
……転移の時点で一回の裏、表の攻撃でかなり大差つけられてるっすけど、些細な問題っすよね。……と、モルツクルスは小声で付け足した。
「えー……しかしながら連中も猟兵が強敵なのは分かってるっすからね。試合参加を応援団と監督が妨害してくるっす!」
応援団と監督をボッコボコにしなければ、試合参加は叶わないだろう。
「え!?野球なんかやったことない!?自分もっす!!大丈夫!!なんとかなるっす!!!」
影帽子
どーも、影帽子と申します。まずはここまで読んでいただきありがとうございます。ようこそ。
第一章、猟兵の試合参加を阻もうと筋骨逞しい応援団が立ちはだかります。倒しましょう。
第二章、猟兵の試合参加を阻もうと全身鱗まみれの野球監督が挑んできます。ぶっ飛ばしましょう。
第三章、九回で乱入して野球します。表で守備、裏で攻撃、お好きな方ないし両方に参加できます。特殊です。
第三章では全てが野球になります。
例えば「自慢の剣を抜いてオブリビオンに斬りかかるぜ!」というプレイングを頂いたら「バッターボックスに入り、自慢の剣でバッティング、真っ二つになった球が客席に突き刺さり二点ゲット」という風に描写します。野球プレイングやとんちきプレイングを推奨します。
よろしければ参加のほどを。
第1章 集団戦
『量産怪人アルパカマッスルブラザーズ』
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POW : ポージング
自身の【逞しい肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : ポージング
自身の【躍動する肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : ポージング
自身の【洗練された肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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「L☆O☆V☆E!!ラブリー!ティラノ!!」
「おっせーおせおせ打て打てティラノ!!」
猟兵達が転送されると、そこには地獄が展開されていた。
「……ん?おう、見ろよ。猟兵だぜ」
「おっ!来やがったか。試合の邪魔はさせねえぜ」
野球ユニフォームメガホン、ソフトドリンクやアルコールドリンク、球場名物のソーセージを装備した筋肉オブリビオン軍団は、野球をキメた脳ミソ特有の躊躇のなさで襲い掛かってきた!!
ヒバゴン・シルバーバック
アドリブアレンジ絡み可。使用はSPD
「難しい問題でウホ」
ゴリラ型ロボットのヒバゴン・シルバーバックは悩んだ。オブリビオンは過去の存在である。
つまり過去のスター選手の集まりに今の球団が勝てないというのが良くない。草野球ならまだしもこれがプロリーグにまで事が及ぶとなれば、現代野球の敗北になりかねない。
「反則が有ったとはいえ反則も試合の要素ウホ」
ヒバゴンは悩んだ。スポーツマンシップとは反則文化である。それを今更罰して良いのだろうか。しかしヒバゴンは猟兵である。依頼は拒まない。
「考えるなウホ。今はただ仕事をするウホ」
彼は愛車のレース用カートに乗り、何かを跳ね飛ばしながら試合会場へと急ぐのであった。
ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
まずは売店に球場名物のお弁当やジェット風船を買わないと…。(パンフレット見つつ)
わたしの邪魔するの?迷惑行為で出禁になっても良いんだね?【恐怖を与える10】
武器の零刀(未完)をナイフに変貌
基本、【迷彩10】と【目立たない10】を使い【ダッシュ10】で接近してから【暗殺100】
またポージングで隙があれば風船を発射して毒付き【毒使い10】ジェット風船攻撃
時間の関係上でユニフォームに着替えないと行けないので【Last memory】で攻撃
反撃時は【武器受け5】と【残像10】で回避
応援団曰く野球の観客席での応援はみんなでポージング…と…。(パンフレットにメモメモ)
夜神・静流
「邪魔です。それと暑苦しい」
冷たく言い放ち、残像・早業・先制攻撃・衝撃波技能を使用して一ノ太刀・隼で攻撃します。
「寄らば斬ります。大人しく席に戻りなさい」
無力化した後はビールとソーセージとみかん氷を強奪して一杯やった後に、スタジアムへと乗り込みましょう。
ちなみに野球については未経験。
「なに、ルールは知っています。後はやりながら覚えますとも」
シャルロッテ・ライン
・単独行動禁止
・アドリブ歓迎
UCを使用し、動画撮影用ドローンを召喚して、敵の筋肉軍団が因縁をつけてくるところから撮影し、配信する。
「ああっと、見てください、この野蛮な姿。助っ人にきた猟兵たちを試合に参加させまいと邪魔をするティラノのファンたちの傍若無人な振る舞い。こんな横暴が許されていいのでしょうかっ!?」
と、動画を配信しながらティラノチームの評判を下げるように実況する。
「こんな妨害をするということは、ティラノたちは自分たちより弱い相手ばかりを狙っていたと白状するようなものです! そんなチームを誰が応援したいでしょうか?」
敵チームの評判を下げ、猟兵の助っ人を正当化するように持っていく。
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
浮遊大陸パラミタ、プロ野球チーム蒼空ワルキューレ、なにもかもが懐かしい。これでも中継ぎ投手としてそこそこ活躍してたんだぜ?
見るがいい、あの頃の決め球ごにゃーぽボール三号を。『魔球』属性攻撃でランダムに球種が変化する魔球さ。これを攻撃に転用すれば受けること困難な防御無視攻撃になるのさ。
さーらーに、シリアスブレイカーのギャグ補正とコミカルフィールドで股間を強襲するおまけ付き。これぞ、即席奥義双球粉砕破☆男性のみが持つという二つの至宝を粉砕する悪夢の奥義、男性であるならばその構えを見ただけで恐怖を与える事が可能さ。
止めに、スキルマスター「蒼汁」で悶絶する程に凄まじい味を魂に刻む呪詛を与えよう
紅葉谷・えり
マッスル☆ザウルスって何なのよ!私アイドルなんだけど!?歌ったり!?踊ったり!?楽器弾いたりするのよ!?白球は追いかけないわよ!
もうだいたい私こういうお仕事に縁があるって察してきてるんだけど!
あと野球もよくわかんないわよ!チアとかマネージャーとかウグイス嬢とかそーいう類の位置がいいわよ!試合とかどーでもいいから寄るなーっ!いやーっ!!
も、もう突っ込むのも疲れたからマイクスタンドで引っぱたくわ…!【捨て身の一撃】を組み合わせた『グラウンドクラッシャー』で変態たちの頭をホームランしてやるわ…!うぉーっ!アイドルなめんじゃないわよーっ!!
やけくそよ!強振で場外までカキーンってしてやるわ!おらーっ!!
●激写!
シャルロッテ・ラインが球場付近に転移したとき、付近のキマイラは思わず彼女を二度見した。
『着てない……いや、全裸よりアブナイのでは?』
「……てい!」
周囲の民衆に困惑と魅了を振り撒きながら、シャルロッテはUCを発動する。【グッドナイス・ブレイヴァー】は動画撮影用のドローンを召喚し、自身や味方を優位にする力。
シャルロッテの思惑に従って、レンズの瞳を持つ郡勢は大空へと飛び立った。
●ヒバゴン・シルバーバックの激走
「難しい問題でウホ」
「なんだこの……なに、ゴリラ?」
「よく見ろよ鉄で出来てんだろ。こういうのはロボだよロボ」
「……なんでロボ?」
困惑しながら筋肉を誇示するアルパカ応援団の前でゴリラ型ロボット猟兵、ヒバゴン・シルバーバックは悩んでいた。
――スポーツのルールに則って戦いを挑んできたのであれば、オブリビオンという化外の存在であれ尊重されるべきなのでは?
オブリビオンは過去の存在である。つまり今回のこの一件、過去のスター選手たちが結集して現代野球に戦いを挑んで来たのでは?……そして、敗北は予知された……。
「おい、ゴリラ動かねえぞ」
「ロボだって。ゴリラロボ」
「どっちでもいいっつの」
ダブルバイセップス。……ポージングを続けながらもアルパカ達はヒバゴンに注目する。
ヒバゴンは悩む……そもそも今を生きるキマイラ相手に超常のオブリビオンは存在そのものが反則だというのは正論だろうが……。
「反則が有ったとはいえ反則も試合の要素ウホ」
「うお、しゃべった」
「さっきもしゃべってたろ」
ヒバゴンは悩んだ。スポーツマンシップとは反則文化であるとも言える……偏った考えだろうか?
否、それは一つの真実。ならばこの反則を今更、罰して良いものか。
……しかしヒバゴンは猟兵である。依頼は拒まないプロフェッショナル。
「考えるなウホ。今はただ仕事をするウホ」
「……なんだ!?」
「ゴリラだ!?ロボだ!?……いや、車だ!!」
ヒバゴンは愛車のレース用カートに飛び乗った。……精神的スイッチを入れて0.5秒以下でベルセルクと化したゴリラロボは、エンジンを吹かす。目指すは内部、ダイヤのなか!
「うおぉ!?ゴリラを止めろ!!」
「いや、ロ……」
ロケットスタート。
「ボーーー
!!??」
何かを跳ね飛ばしたな。その程度の感慨とともに試合会場へと急ぐ。アルパカはゴリラロボを見た。しかし、ゴリラロボはアルパカを見ていなかったのだ。
●ハルピュイア・フォスターの入場
「まずは売店に行って球場名物のお弁当やジェット風船を買わないと……」
赤と青の瞳を持つ美貌の少女、ハルピュイア・フォスターはパンフレット見つつ、球場周辺をうろついていた。……まずは形から入るというやつだろうか。
「そこな少女よ!」
「猟兵だな!悪いがここを通すわけには!いかぁん!!」
「……ふーん」
求めるアイテムをだいたい調達し終えたハルピュイアがいよいよ入場しようとしたとき、マッスルアルパカ応援団の精鋭達がポージングを決めながら立ち塞がる。……縄のような筋肉がうねる。
「……わたしの邪魔するの?迷惑行為で出禁になっても良いんだね?大体、あなた達こそ応援団?」
「ぐぅ!?なにを!!」
「そ、それは……しかし応援といえばポージング!!」
傲岸不遜の脳味噌筋肉は生半可な批判を弾き返す暑苦しい精神力を備えているが、ハルピュイアの神秘的な瞳を見ながら言葉を聞くと、不思議と心に恐怖が湧く。
「……だが!」
「おう!マッスル勝利のためならばぁ!」
「……仕方ないね」
手の内で、彼女の宝物たる零刀(未完)がナイフに変貌する。……それと同時か、あるいは少し早く、ハルピュイアの姿は宙へと霞んだ。
「どこだ!?……ぐぅ!?」
狼狽し叫ぶカピバラの脇腹に突き立てられる毒付きの刃。正面からの鮮やかな【暗殺】である。
さらにポージングで周囲を警戒するカピバラ達に何処からともなくジェット風船が飛ぶ。
「ぬうっ毒風船か!!」
味方の犠牲の上でのラット・スプレットにより素早く対処するも、過剰とも言える対処が隙を生む。
「あんまり時間かけてらんないから」
「……ぬう、不覚」
【Last memory】正に暗殺の為にある驚異のUCによって、反撃の糸口すらつかめずオブリビオン達は地に臥した。
「着替えるところ、見つけないと」
悠々と入場を果たしながら、ハルピュイアは新事実をパンフレットに書き込んだ。
『応援団曰く野球の観客席での応援はみんなでポージング』……と。
●夜神・静流の一閃
「邪魔です。それと暑苦しい」
「ぐぅわーーー!?」
「あ、相方ーーー!?」
青い空、白い雲、赤い鮮血。時々きらめく刃の銀。……そして吹き飛ぶアルパカの茶。
瞬時に様々な色を見せた空の下で猟兵とオブリビオン応援団が対峙する。
開口一番、冷たい言葉と太刀筋で一体のアルパカを斬りつけた挙げ句吹き飛ばした夜神・静流は刃に血糊が乗っていないことを素早く確かめ、残ったアルパカ達に告げる。
「寄らば斬ります。大人しく席に戻りなさい」
「な、なにをーーー!?」
「もう斬ってんじゃねえか!!」
至極まっとうに聞こえる抗議にも、静流は涼しい顔でどこ吹く風である。
「ぬう、顔に似合わず卑怯な女め!」
「誉め言葉ですね。魔の者へ向ける慈悲も礼儀も持ち合わせてはいません」
――ようは勝てば良いのです。真顔で断言する静流に、むしろオブリビオンの方がたじろぐ始末。
「ええい、スポーツマンシップの欠片もないやつ!」
「本当に野球やる気があるのか!?」
わめき散らすアルパカどもに、静流は刃を振りかぶって答えた。
「なに、ルールは知っています……後はやりながら覚えますとも」
「……ぎゃーーー!?ナイススイング!!」
無慈悲にして目にも留まらぬ退魔剣士に対して、多少数が勝るだけのアルパカブラザーズはいいように翻弄され、次々に斬り伏せられた。
「忠告通り、退けばいいものを」
アルパカ達には、もう必要ない食料を当然の権利として強奪した静流はスタジアムへと乗り込む。脂っこいソーセージをさっとビールで流し、みかん氷を胃に落として鋭気を補充した彼女は、いざ生涯初の野球に挑む。
●蒼汁之人・ごにゃーぽさんの理不尽
「空気が変わったんです」
その時の様子を後日、現場にいたアルパカさん(0.9才)はこう語る。
「なんというか、あいつは野球選手とか猟兵とかそんなもんじゃない……もっと恐ろしいモノの片鱗を味わいましたよ……」
さて、そんな化け物の戯れ言はさておき時計の針を元に戻そう。
浮遊大陸パラミタ、プロ野球チーム蒼空ワルキューレ、なにもかもが懐かしい……。
球場を目指すごにゃーぽさんの胸中を満たすのは感慨である……あるったらある。
「止まれぃ猟兵め!」
「貴様には野球よりこの筋肉がお似合いだ!」
サイドチェスト。……筋肉を見せつけるポージングをとりながら、アルパカブラザーズがごにゃーぽさんへと迫る
「へぇ……面白い、これでも中継ぎ投手としてそこそこ活躍してたんだぜ?」
「ぬうっ」
よもや野球経験者か。……と、アルパカと筋肉はピクピク震えて警戒を強めた。……余計に先に進ませる訳にはいかない!
「見るがいい、あの頃の決め球ごにゃーぽボール三号を!」
ごにゃーぽさん、振りかぶって、投げました!
アルパカブラザーズは引き延ばされた体感時間の中で、場の空気になんか、こう、ギャグっぽい恐怖を感じとったが、時すでにお寿司。
『魔球』とは一般に、分かっていても対処の難しい変化球を指す言葉である。……なるほどそれは魔球ではあるだろう。
一見して拍子抜けするようなボールに、アルパカブラザーズは素早く反応。……が、しかし、捕らえようと振るわれる筋肉質な腕を嘲笑うように、ごにゃーぽさんボール三号は軌道を変える。場に漂うカオスを推進力に変え、無防備なアルパカ☆股間を急襲。
「はぁう……」
「大丈夫か……っはぁう……」
前屈みにうずくまるアルパカが一匹、アルパカが二匹……アルパカがたくさん。
ボールが♂の二つのボールを次々破壊するこの光景はさながら悪夢そのもの。……そして悪夢はクライマックスを迎えるのだ。ごにゃーぽさんがろくに身動きのとれないアルパカ達へとヒタヒタと近づいて――
「……ごにゃーぽ☆」
再び時計の針を進め……後にアルパカはこう語る。
「なにか」を飲まされたようだ、と。そして、それはなにかと問いただすと――瞬く間に茶色い顔を目に見えて「蒼く」して錯乱するのだ。……それは恐怖の形相で。
●シャルロッテ・ラインは見た!ナースアイドル猟兵、紅葉谷・えりの死闘!
「……うーん、この映像はちょっと使えないねー。ここをこう、編集して……」
「ちょっと、さっきからなに言ってんの?」
「えっと……」
シャルロッテは、ナース姿の紅葉谷・えりに自身の秘策を説明する。UCによる動画撮影用ドローンを召喚して、敵の筋肉軍団が因縁をつけてくるところから撮影し、配信する。
そうすることでキマイラフューチャーの人々の【マッスル☆ザウルス】への評判を悪くしてやろうという印象操作を試みているのだ。
「……よさそうな作戦じゃない?」
「それがね……これみてよ」
「……わあ」
シャルロッテのドローン拾って来た映像では、猟兵が強すぎて8割方アルパカの方がひどい目にあっている。……編集を頑張らなければとても使えないだろう。
「……だから、えりさんには期待してるね」
「……ってなんでよ!?私アイドルなんだけど!?歌ったり!?踊ったり!?楽器弾いたりするのよ!?白球は追いかけるのが仕事じゃないのよ!?」
「うん、だから……期待してるね」
「のおぉーーー!!」
えりは叫ぶ。ここが日頃の鬱憤を発散するチャンスだとばかりに吠えたてる。
「そもそも、マッスル☆ザウルスって何なのよ!だいたい私こういうお仕事に縁があるって察してきてるんだけど!あと野球もよくわかんないわよ!チアとかマネージャーとかウグイス嬢とかそーいう類の位置がいいわよ!試合とかどーでもいいわーっ!いやーっ!!」
「えりさん、あの、そんなに叫ぶと……」
「……え?」
我に返ったえりの耳に、重々しい筋肉質な足音が複数、聞こえてくる。
「いたぞ!!」
「こっちだ!!」
「ぎゃーーー!?見つかったーーー!?」
「向かってるんだから早いか遅いかだと思うな。ボク、カメラ回すねー」
まるで緊張感を感じさせない声と共に、ドローンが周囲で撮影ポジションを探る。そのレンズの先で筋骨隆々のアルパカ達が、アイドル猟兵に凄み始めた。
「見つけたぞ!猟兵め!」
「断じて貴様らを試合には出させん!あまりにも危険だ!」
「散っていった仲間達の仇を討ってやる」
映像観てたらちょっと気持ちが分かるような気がしなくもないシャルロッテは、しかしチャンスなのでリアルタイムで実況を入れ始める。
「ああっと、見てください、この野蛮な姿。助っ人にきた猟兵たちを試合に参加させまいと邪魔をするティラノのファンたちの傍若無人な振る舞い。こんな横暴が許されていいのでしょうかっ!?」
「な、なにを!?」
「おい、カメラ止めろ」
実情はどうあれ複数のマッスルブラザーズがえりを囲む絵面は犯罪的だ。
「……っていうか服着なさいよ!着て着なさいよ!」
「なぜだ」
「そう、この肉体美こそ士気向上の秘訣……」
「ぎゃーーー!?ぎゃーーー!?」
「こんな妨害をするということは、ティラノたちは自分たちより弱い相手ばかりを狙っていたと白状するようなものです! そんなチームを誰が応援したいでしょうか?」
アドミナル・アンド・サイ。
雄々しきポージングを交え、心底疑問とばかりにアルパカ達はえりに迫る。……重ねて、犯罪的である。そして実況は続いていく。
「よ、寄るなー!突っ込むのも疲れるわーーー!!」
「ぐわぁーーー!?」
混沌とした状況についに、えりがキレた。何かが潰れるような鈍い音と共に一体のアルパカが倒れふす。……マイクスタンドは休まず振るわれた。
「うぉーっ!アイドルなめんじゃないわよーっ!!もう、やけくそよ!おらー!!」
「えりさん、右のやつに注意だよー」
身体能力に任せた危なっかしいえりの戦闘を、シャルロッテの俯瞰視点の助言が補う。
最後のアルパカの頭がホームランされたのは、ほんの少し後の話し。……無論、動画の後半部分は使い物にならないのであった。
成功
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第2章 ボス戦
『ティラノサウルス怪人』
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POW : ザウルスモード
【巨大なティラノザウルス】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ティラノクロー
【鋭く長い爪】による素早い一撃を放つ。また、【装甲をパージする】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 学説バリエーション
対象の攻撃を軽減する【羽毛モード】に変身しつつ、【体から生えた鋭く尖った針のような羽毛】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●参上!ティラノ監督!
「くっくっく……応援団がやられたようだな……」
ぶっちゃけアイツら、結構強い……などと呟きながらティラノ監督はベンチを後にする。……チームの勝利のため、最大限の努力を尽くす……それが監督というものなのだ。
「……もう、中盤も終わる……もうちょい……もうちょい時間を稼いでどうにか逃げ切りだ」
ぶつぶつと呟きながら、ティラノ監督は猟兵達を迎え討つ!!
紅葉谷・えり
はぁ…はぁ…そうよね、応援団がいるなら応援される側もいるのよね。ここからよ…えりは絶対にギャグキャラ路線に堕ちないわ…!なんか仲間の為に時間を稼ぐかっこいい感じのやつが出てきたけどさせるもんですか…!
【歌唱】と【楽器演奏】を組み合わせた『サウンド・オブ・パワー』よ!ベースボーラーな感じのソングで仲間を野球野郎にパワーアップさせるわ!アイテム〈ラブリーギター〉をじゃんじゃかかき鳴らすのよ!
んーと……曲名はラブリースプリットフィンガードファストびゃっ!(噛んだ)…ボール!
へいへいばったーびびってるぅ♪
へいへいぴっちゃーびびってるぅ♪
りーりーりーりー♪ばっちこーい? って感じね!
みんなも歌ってー!!
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
シルハシラレル、これ単体だと本名はあまりの危険性から本能で理解を拒まれるので、シリアスブレイカーの概念改変で無理矢理理解したことにしてしまうよ。
まぁ、コミカルフィールドの影響でシルハシラレルの向こう側も“ “からごにゃーぽ神☆ごずなり様のオカマバーに変質してしまってるわけだが。どちらにせよSAN値直葬案件なので問題なし。
空間からかーっぺされた監督はキスマークと蛍光ピンクの蒼汁(アジュール)にまみれていることだろう。くく、そのような姿でボスの体裁を保てるのかい?
トラウマへの追撃にこちら側でもごにゃーぽ神☆ごずなり様に御光臨頂き恐怖を与えるとしよう。
夜神・静流
『何事も暴力で解決するのが一番だ』
悪霊・魔物・妖怪およびオブリビオンが相手の時限定ではありますが、このような素晴らしい言葉がございます。
それに従って、手っ取り早くいきましょう。
早業・ジャンプ・怪力・先制攻撃・鎧砕き技能を使用し、五ノ太刀・穿で攻撃します。
思いっきり跳躍しつつ体重と霊力を乗せて、両手持ちでの全力振り下ろし。相手ベンチごとティラノ監督を粉砕するくらいの勢いで。
「この技、単体物理特化なので……退魔師として仕事をする時にはあまり出番が無いのですよね」
辛いです、物理攻撃が好きだから。
「なので久しぶりに使えて満足しました」
うーんこの畜生。
アドリブ・絡み歓迎。
●紅葉谷・えりの絶唱
「はぁ…はぁ…そうよね、応援団がいるなら応援される側もいるのよね」
「そう!俺こそマッスル☆ザウルスが指揮官!ティラノ監督その人よ!」
立ちはだかる鱗を纏った影。ティラノ監督はえりの腰がひけた様子にくみし易しとみてか強気に鉤爪を掲げて見せつつ、一歩前に出る。
「ひっ……さ、させない!」
「むっ
……!?」
だが、えりとて生半可な気持ちでここに立っているのではない。世のため人のため、そしてギャグキャラ路線に堕ちぬため……。
鼓舞の力を込めて、可愛らしいピンクのギター〈ラブリーギター〉をかき鳴らしはじめた。
「んーと……曲名はラブリースプリットフィンガードファストびゃっ!……噛んでないし!……ラブリースプリットフィンガーボール!」
『サウンド・オブ・パワー』
超常の音楽が場を支配する。……心に直接響いて心を奮い立たせる、そんな曲だ。
「へいへいばったーびびってるぅ♪」HEY!HEY!
球場での依頼と聞いてたら今日までしっかり練習してきた成果か、すべらかに、高らかに。
「へいへいぴっちゃーびびってるぅ♪」HEY!HEY!
妨害しようとする恐竜監督を、他のイェーガーが押し留める……もっと聴いていたいから!
「りーりーりーりー♪ばっちこーい?」ばっちこーい!
「みんなも歌ってー!!」
●夜神・静流の暴力
『何事も暴力で解決するのが一番だ』
そんな素晴らしい言葉がある。
「つまり、そういうことですね……へいへい、監督びびってる」
「そりゃびびる!なんだそのバット!人でも斬る気!?」
「いえ、貴方を斬る気ですが」
「びびるわ!」
場に流れる、野球を楽しみたいという明るくポップな歌。静流はこれに強く高揚し、共感し……眼前の障害は手っ取り早く切り伏せるべしという結論に至った。
「ぬぅう小癪な小娘め!」
無論、ティラノ監督とてやられてばかりではない。邪魔なユニフォームを脱ぎ去ることで身軽になり、繰り出される刃に鋭く長い爪で対応する。
疾く、そして鋭く、狭い廊下を縦横無尽に駆け回り、四方八方から突き込まれる連撃に巨体で反応している。
「ならば……」
刹那、静流は音を越えた。
跳躍――有らん限りの体重に霊力を載せて、両手持ちからの渾身の振り下ろし。
【五ノ太刀・穿】
連撃に慣れた意識の先を制する一撃は見事、強靭な鱗の防御を切り裂いた。歌と張り合わんばかり、恐竜の苦痛の悲鳴が響く。
「この技、単体物理特化なので……退魔師として仕事をする時にはあまり出番が無いのですよね」
残心、納刀。
「なので久しぶりに使えて満足しました」
「り……理不尽」
速さ、そして力。確かに理不尽といえる力ではあるが……そこを評価して言ったわけではないのはもちろんである。
●蒼汁之人・ごにゃーぽさんの……なにこれ……なに?
「監督びびってる♪へいへい♪」
「……ふざけた女め!」
受けたダメージを恐竜回復力で急速に癒しながら、ティラノ監督は眼前の女に憤る。……なにせ意味が分からない。
他の猟兵とて、この世界では異質ではあるが、ごにゃーぽさんという存在は、なんというか――
「じゃあ、名乗ろうか。……相互理解は大事だからねぇ」
「あ、いいっす」
本能的恐怖に一歩後退、ティラノ監督。
『いいんだね!ごにゃーぽ☆ボクの名前は ・ だよ♪』
「……話を聞けよ!……え」
それを「理解」してしまった瞬間、ティラノ監督は空間に「食われた」
え、あいつどこ行っちゃったの?
誰かが言ったそんな言葉に、ごにゃーぽさんは笑って嗤って答える。
「とってもいい場所さ。危険なんて、ないない。……ほら、無事に還ったみたい」
かーーー……っぺ!!
空間から吐き捨てられるように放り出されるティラノ監督。その全身はキスマークと謎の蛍光ピンクの蒼汁(?)に塗れている。……特上の恐怖を味わったといわんばかりの憔悴具合。此方での数秒が、彼方では如何程か……。
「くく、そのように震えて、寂しいと見える。……ごずなり☆出張サービスで英気を養ってもら……」
「やめっ……やめろーーー!!」
もしも恐竜が本気で怖がったらこんな表情をする、という見本を猟兵達におおいに見せつけながら、ティラノ監督はむしろ世界を護るため、襲いかかってきた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヒバゴン・シルバーバック
アドリブアレンジ絡み可能。使用はSPD
試合に参戦しようとする猟兵たちの前に立ち塞がるのはティラノサウルス怪人監督!
「監督が試合中にベンチから出たらいかんでしょ」
立ちはだかる人影にカートを停車したヒバゴンだったが思わず素でツッコミを入れてしまう。
「ともかく一人でやって来たことを後悔するウホな」
ヒバゴンはカートを降りるとUCで分身した。そして
「りーりーりーりー」
野球選手が若い頃に発する鳴き声を上げて怪人監督を挟む!じりじりと走り出しそうな雰囲気を出しながら!
これは盗塁のための威嚇行動である。時にスポーツは選手に新たな生態を付与するとのだ。
「タッチして見ろウホ〜」
頑張れヒバゴン、試合場はすぐそこだ!
シャルロッテ・ライン
・単独行動禁止
・アドリブ歓迎
今回も撮影用ドローンで監督との戦いを撮影するよー。
「ああっと、チームに合流しようとする猟兵を邪魔するために監督が出てきました!球場内で乱闘はわかりますが、場外で乱闘とは、もはや監督の風上にも置けません!」
「監督なら正々堂々、野球で勝負しましょうよー」
敵チーム下げを頑張るよ。
ちなみに敵がザウルスモードを使ったら、アップを撮影するという理由で敵周囲にドローンを飛ばして注意を引く。むしろ攻撃してほしい。ドローンが破壊されたら、
「撮影されたらマズイのでしょう、自分の不正を無かったことにしようと必死です!」
キマイラフューチャーで撮影を妨害する行為はマイナスだしね。
ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
ぁ監督さんだ…サイン下さい…。(ボール渡そうとしつつ)
後チームの状態など取材風に質問
武器の零刀(未完)をナイフに変貌
基本、【迷彩10】と【目立たない10】を使い【ダッシュ10】で接近してから【暗殺100】
隙があれば【Lost memory】でユーベルコード封じ(弱点Pow;理性を失う)
ついでに自軍選手情報を持ってれば【盗み5】で情報入手
試合中でも監督はファンサービスの場外乱闘っと新たにパンフレットにメモメモ
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
あっれー?なんかボクが世界を滅ぼす側の扱いをされてるぞ、誠に遺憾である。
まぁ、襲いかかってこられたなら迎撃だよ☆野生の勘で動きを見切り、呪詛で監督に不運を呼び寄せ、捨て身の一撃で飛び込むように神風幻影で即席奥義双球粉砕破再び☆なお、今回は連撃なので苦しみはより長く♪いやー、不運不運☆
まぁ、流石に哀れなので蒼汁くっきんぐ♪でいーとみぃと鳴きながら念動力で飛び回り自ら喰われに飛び込むいーとみぃスターゲイザーパイを召喚してご馳走しよう。味覚の英国面をどうぞ♪
あ、そうそう、地の文様の分もあるから、さぁ召し上がれ☆いやいや、遠慮なぞせずに、ほら。ボクは光の陣営、正義の味方だと思い知っていただかないとね☆
●ヒバゴン・シルバーバックの挑発
「ぐおぉ!行かせはせん!行かせはせんぞ!」
散々な目に逢わされながら、立ち塞がるティラノ監督に、ヒバゴンからの冷静なツッコミが飛ぶ。いくら猟兵達を進ませないためとはいえ。
「監督が試合中にベンチから出たらいかんでしょ」
「そろそろトリプルゲームになりそうなほど勝っている。問題ない!貴様等さえここで足止めしていれば勝てるのだ!」
ティラノ監督を見据えてカートを停車したヒバゴンが、少しばかり動揺する……3桁……どんだけ負けてるんだ。
「……ともかく一人でやって来たことを後悔するウホな……こっちは二人ウホ」
ヒバゴンはカートを降りるとUCを発動する。
『ふっふっふ、こんなときはふたプーだ』
呟くヒバゴンの声は被って聴こえた。もう一人のヒバゴンが現れ、素早く動き出す。
お互いにやることは目配せすらなく通じている。
「「りーりーりーりー♪りーりーりーりー♪」」
前門のヒバゴン、後門のゴリラロボ。ナースアイドル猟兵えりが歌うメロディに合わせ、二人のヒバゴンが絶唱する。
それは野球選手が若い頃に発する鳴き声!
「むうっ……盗塁狙いか!」
囲まれた怪人監督は思わず唸る。じりじりと走り出しそうな雰囲気を醸し出すヒバゴン二人の目論みはこちらをすり抜けることにある。
「「タッチして見ろウホ〜」」
「……しゃらくさい!こっちが本物だ!」
常識的に考えて、自分の後ろ、つまり奥側にいるやつが本物……というティラノ監督の判断は、しかしヒバゴンには通じない。
「盗塁成功ウホなー」
「なんだと!?……ぐ!?はなせ!」
「捕まえたウホ」
もう一人のヒバゴンがUCの限界から消える頃、本物ヒバゴンはとうに廊下の奥へと去っていた。……頑張れヒバゴン!逆転は君にかかってる!
●シャルロッテ・ラインの報道
「猟兵どもめぇ!……理性が飛ぶから、使いたくはなかったが……」
いよいよ追い込まれたティラノ監督、ここに来て切り札の投入を決意する。「GYAOOOOOOO!!!」
ザウルスモード。巨大化によって本来のティラノサウルスの姿を取り戻し、超攻撃力と超防御力を得るUC。
「ああっと、チームに合流しようとする猟兵を邪魔するために監督が出てきました!球場内で乱闘はわかりますが、場外で乱闘とは、もはや監督の風上にも置けません!」
そんな史上最大級の暴力に、シャルロッテ・ラインは動画と実況、報道の力で対抗す。メディアとは、まことに暴力である。
「GUUGYAOOO!!!」
叩く、潰す。
本人も言っていた通りこの姿のティラノサウルスは理性的な判断が難しく、素早いものや向かってくるものを無差別に破壊していく。
「……もはや乱闘というより大破壊です!監督なら正々堂々、野球で勝負しましょうよー」
破壊されるとは分かりつつ、次々とドローンを繰り出すシャルロッテ。……そうして徐々に誘導していく。
敵チーム下げを頑張るよ。
「おそらく、奥にはよほど撮影されたらマズイ事実があるのでしょう、自分の不正を無かったことにしようと必死なのです!」
ドローンで視線を誘導し、ティラノサウルスの死角を悠々と、あえてゆっくりすり抜けるシャルロッテ。……ほんの少し冷や汗を浮かべながらも見事、奥へと進むことに成功する。
「……彼が隠していることはなんなのか!?これから確かめてみましょう!」
シャルロッテは邁進する。……いい画が撮れた。
●ハルピュイア・フォスターの取材
「お……俺は一体……むう、巨大化していたのか」
シャルロッテとドローン、つまり目標を見失ったことでザウルスモードが解け、ティラノ監督は理性を取り戻す。
「ぁ監督さんだ……サイン下さい……」
そこにすかさずハルピュイアがボールを差し出してサインを強請る。
「もちろん、いいとも。貸しなさい」
紳士的にボールにサインを施すティラノ監督。
流石に疑いそうな場面ではあるが、暗殺の専門家たるハルピュイアはあまりに『無害』過ぎた。
そして彼にその透徹した瞳を向け、ハルピュイアは取材を開始した。
「マッスル☆サウルスの選手達って、どんな風なの?……強い?」
「ティ、ラ、ノ……おお、よくぞ聞いてくれた!」
一番、ファーストアルパカ、脚が速い。
二番、ライトアルパカ、絶対ヒット。
三番、サードアルパカ、筋肉美しい。
四番、キャッチャーアルパカ、冷静。
五番、センターアルパカ、当てたら飛ぶ。
六番、セカンドアルパカ、器用。
七番、レフトアルパカ、守備が上手い。
八番、ショートアルパカ、ムードメーカー。
九番、ピッチャーアルパカ、万能投手
「まあ、万が一、猟兵が乗り込んでしまっても普通の野球ならば勝機はある……しかし連中には何をしでかすか分からん怖さがあるからな。……はい、ボール」
「ん、ありがとうね、色々」
「いいとも」
優しい世界。ハルピュイアはパンフレットに新事実を『試合中でも監督はファンサービスの場外乱闘』っと書き込んだ。
「ところで、さっきの変身だけど……良くないね」
「……うん?」
ハルピュイアの手の中で、瞬く間に零刀(未完)がナイフに変貌した――
「理性がなくなっちゃ……なにも分からないでしょう」
その言葉を聞いた途端、ティラノ監督の意識はボヤけ……気がつくと、彼は全身から血を流して朦朧とする自分を発見する。
無論、先刻までいた熱心なファンの少女は影も形も無いのであった。
●蒼汁之人・ごにゃーぽさんの逆襲
「滅べぃ!世界の敵!」
オブリビオンらしからぬ事を叫びながら、ごにゃーぽさんへと躍りかかるティラノ監督。
すっかり心的外傷後ストレス障害(ようはトラウマ)にかかっているので後先考えず爪を振る。
「あっれー?なんかボクが世界を滅ぼす側の扱いをされてるぞ」
ごにゃーぽさん曰く、誠に遺憾である。
遺憾であるからして丁寧に迎撃せねばなるまい。
ごにゃーぽさんは驚異的な勘を発揮して先読みして爪攻撃を紙一重で回避。
「……ぬ!?」
……不運にも、先程の変身で自分壊した壁の瓦礫に足を取られ、ティラノ監督は態勢を崩す。
ごにゃーぽさんはそれを見逃さず飛び込むと――。
「これで決める!真!神・風・特・攻!!」
「ぐあーーー!?」
残像すら伴う神速の連撃による、安心と信頼の股間破壊。
「ぐ、ぐうぅ……」
「あれ、双球破壊したのにあんまり苦しんでない」
「ぐ……ぐ……爬虫類は半陰茎だ……玉などない!」
股間破壊敗れたり。
「……わあお盲点☆じゃあどうして苦しんでるの?」
「普通に物理的に痛えんだよ!」
痛くて動けないことには変わらない。……致命的な隙だ。
「今だ、蒼汁ぅー☆くっきんぐ♪」
『スターゲイザーパイ』召喚という冒涜的な技をもってティラノ監督は介錯される。
「いーとみぃ」
「いーとみぃ」
「いーとみぃ……」
「やめろ!やめてくれーーー!ぎゃー!」
自ら喰われに行くスターゲイザーパイに埋もれ、ティラノ監督は正気を喪った。……そう、後は滅亡あるのみだ。
そしてそろそろこの依頼を書き上げてしまおう。……液晶が音をたてている。何かつるつるした巨大なものが体をぶつけているかのような音を。
しかし液晶を押し破ったところでわたしを見つけられはしない。
いや、そんな!あのパイは何だ!地の文に!地の文に!
成功
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第3章 日常
『イェ-ガー!野球しようぜー!』
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POW : 豪快なフルスイングでホームラン、豪速球を見せつけて力で圧倒する
SPD : 華麗なバッティングに俊足巧打、正確無比なコントロールで相手を翻弄する
WIZ : 職人芸とも呼べる堅実な守備、七色の変化球で三振の山を築く
👑5
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「100対0……9回の表……これが諸君が立ち向かうべき現実である」
名将コアラッコは重々しく告げる。守備、そして攻撃。どちらも怪物的にこなさなくては逆転はない。
――だが。
「猟兵諸君、助力はありがたいが、そう、折角の機会だ。野球を楽しんでくれたまえ」
今までの猟兵達の活躍で、世界を席巻するマッスル☆サウルスの野望は既に潰えたとみていい。だから、楽しく。
『イェ-ガー!野球しようぜー!』
紅葉谷・えり
ついにアイドルとして!チアリーダーとして応援枠に……やだー!選択肢三つとも選手枠じゃないのー!やだー!!人手が足りないからってバーチャルアイドルまで借り出すなんてどこの弱小校よ!将棋部とかから借りてきなさいよ!!ライトにおいとけばなんとかなるわよ!!
ファンの皆から予定調和のようにバットやグローブの差し入れをされる気がするわ!ユーベルコードで!コンサート以外でも応援するのねあなたたち!野球アイドルとか何が良いのよ!答えなさいよ!
い、いいわよ…ガッキンガッキン打ってさっさと101対100で終わらせるわよ…!ファンの声援に応えてこそアイドルだものね…!うぉーっ!!速球変化球なんぼのもんじゃーっ!!
ヒバゴン・シルバーバック
アドリブアレンジ絡み可能使用はSPD
「コールドが無いとはいえ、逆によく試合を続けたものウホ」
いつのまにかユニフォームに着替えたヒバゴンは選手交代でバッターボックスへと入る。
「ここは出塁請負人のヒバゴンに任せるウホ」
約三メートルに加えてたっぷりした横幅、身を乗り出す構えが完全にストライクゾーンを塞いでいることから付いた異名である。
「安心するウホ、ヒバゴンはちゃんと打つウホ!」
宣言通りにヒットを打つと、彼は猛烈な速さでダッシュした。鋼の巨体に似合わぬ俊足でただのヒットが二塁打や三塁打になる。守備に回ればその機動力で
フェンスも軽々登る。
「MVPは頂きウホ!」
野球という名のジャングルに鉄の大猿が飛ぶ!
シャルロッテ・ライン
さて、動画撮影はこれまで。最後は助っ人として頑張るよ。
「頼む! ユニフォームを着てくれ!」
と、監督さん以下、選手一同からお願いされたのでユニフォームを着るよ。そうだよね、選手になるんだからユニフォーム着ないとね(わかってない)
で、ピッチャーとして守備に入るよー。
「そーれ、分身魔球~」
使用するのはUC「聖炎の矢」。レベル×5本の魔法の矢を放つUCだけど、今回は投げた球がレベル×5の弾に分身して飛んでいくものになるんだよー。
「どれが本物か、わからないでしょ~」
そうやって空振り三振をとっていくよー。
他にピッチャーの人がいたら、打者1人に抑え1人、って感じでお願いします~。
・アドリブ歓迎
夜神・静流
「この回で334点取れば問題ありません。勝ちましょう」
真の姿を解放。
ポジションは外野手。見切り・視力・残像・ダッシュ・ジャンプ・空中戦技能を使用し、華麗な守備を見せます。ホームランボールは背中の翼で空を飛んでキャッチ。
更に三ノ秘剣・千鳥を応用したレーザービーム(物理)でランナーを刺す(物理)
「地元ではサムライエンパイアのイチローと呼ばれた事もある」
攻撃では一ノ秘剣・八雲による八連撃を使用。技能は早業・怪力・カウンター。
ボールを十六等分にしてスタンドに叩き込みます。
※今更ですがこの静流はネタ依頼で頭のネジが何本か外れています。普段は割と真面目な子です。
アドリブ・絡み歓迎。
ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
楽しく野球をしようっと
一番危険人物は四番キャッチャーのアルパカだね…冷静な人は経験上いつも危ない…。
野球ボールを【念動力10】で操作して攻守で頑張ろう
でも取り難い時はフック付きワイヤーにナイフ装着して【投擲10】しボールに刺して捕獲
死球って良い響きです…打者を暗殺しても問題ないって良いルール…。
パンフレットに本塁打による得点の取り合いの事を空中戦って書いてあったので【空中戦10】でわたしも打てるかな?
あとホームインした人数で得点が入るならホームベース上で【残像10】使ってもいいよ…ね
名将コアラッコのサインも貰っとこ…。(新しいボールがないのでティラノ監督サイン入りボールに)
エイミ・メルシエ
ふふん。野球ができるとの噂を聞いて飛んできました、キマフュのヒーロー、エイミちゃんです! そう、ヒーローですから、遅れてやってくるものなのです。
わたしは案外イケてるバッターですからね、過去の依頼では鳥でホームランしたり弾丸を打ち返したりしてきました! (※事実です)
素振りもじゅーぶん。というわけで、必殺・ハニーディッパースイング、やっちゃいますよ!
というわけで打つ側で。
UC『ホームラン☆ディッパー』にて、飛んでくるボールをばびゅーんと打ち返してやります!
ボールになら毒入っても大丈夫ですし、思いっきり、ぶんぶんと!
あ、パワーもある方ですので、ご心配なく!この武器とかかなり重いので!(振り回し)
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
懐かしきかなパラミタってこれは第1章でやったな。
左投げのアンダースロー。変化球で翻弄する技巧派投手。アンダー故に球速は出ないが、すべて同じフォーム同じ振りで投げる為に非常に読み難いと評判だったとも。
高速、スロー、縦、マッスラ等の各種スライダーで翻弄。
そこに中速でフワリと浮くライズ(正体はツーシームジャイロ)や仕切り直しのリセット用に変則イーファスピッチ(山なりのスローと高高度強襲型の投げ上げ二種)やクロスファイアが混ざる。
そして、決め球ごにゃーぽ☆三号、正体は特殊な握りでランダムに球種が変化するイレギュラーチェンジ、ナックル等の無回転系とはまた違ったランダム変化をとくと御覧あれ☆
主・役
蒼汁の人にキャッチャー頼まれた。スライダーとイーファスはいいとして、ライズはどうなってんだ?アンダーでジャイロ投げると落ちる機会がなくなって結果的に浮かぶ、と。なるほど。
問題はごにゃーぽ☆ボール三号ことイレギュラーチェンジか。フワリと浮いて沈む、チェンジアップ、シンカー、まじで球種がランダムなのな、シックスセンスの勘で補給するしかないな。
打者としては盗塁王を目指そう。シックスセンス、盗み攻撃、ダッシュ、スライディングでじゃんじゃん盗塁していくよ。ホームスティールもお手の物、見切り、盗み攻撃、ジャンプ、パフォーマンスでタッチを回避してベースにインだよ☆
●しまっていこう
「プレイボーイ!……オゥ、ノゥ、プレイボール!」
審判コールが鳴り響き、試合再開だ。
イェーガーズのメンバーがほとんどイェーガーに入れ替わったこの試合を仕切る審判の名は【ミスター・アバランテ】適当さに定評のあるゴリラとチンパンジーとオランウータンのキマイラだ!
名将コアラッコが指名した先発投手(中継ぎ)はシャルロッテ・ライン。ほぼ全員嘆願によってそのわがままボディを窮屈そうにユニフォームに押し込めてマウンドに上がる。
「うーん、ところどころキツイ……けど選手になるんだからユニフォーム着ないとね」
公序良俗とか小さいことはシャルロッテには関係はないが、これもチームのためだ。
慣れない衣装を纏った肢体をゆらりとくねらせるシャルロッテの視線の先で、比較的スレンダーなアルパカが構えた。
ハルピュイアが獲得した情報をコアラッコ監督の証言で裏付けしたところ、脚が速いタイプのアルパカで間違いない。
……手練れのバッターを前に、しかしシャルロッテは軽やかに笑う。
「そーれ、分身魔球~」
……ピッチャー振りかぶって……投げました!
燃える炎を纏ったボールは空中で別れる。幾つもの火の玉となったその異色の投球に、スレンダーアルパカは手が出ない。
「スットラィー……ック!」
変幻自在の分身魔球が、キャッチャーミットに突き刺さる。
「いい球を放るな……ナイスピッチ!」
難しい捕球を難なくこなした彼女の名は主・役。呼ばれて飛び出たスーパーキャッチャーである。得意のシックスセンスの勘は、見分けがつかない魔球の捕球すら可能とする。
頼もしい助っ人に、シャルロッテは大船に乗ったつもりで憂いなく分身魔球を振り回す……しかし、敵もさるもの。
鈍い金属音が響き、白球が前へと転がる……臆せず振るったバットが偶然に当たりを擦り、ゴロをファースト方向へ転がす……俊足アルパカには、これで十分だとスタートを切る。
出塁して見せると意気込むアルパカの目前で、驚愕の光景が繰り広げられる。……一塁を守るハルピュイア・フォスター、彼女が素早く投げたナイフがゴロ球に命中。取り付けられたフックとワイヤーによって、球はハルピュイアの手の内へ。
「死球って良い響きです……打者を暗殺しても問題ないって良いルール……ふと、思っただけですが」
「ワーンナアゥト!!」
そんなん有りかと抗議の声が上がるが、適当に定評のある審判は「アリじゃね?」とサラリと流す。
流れ流され試合は続く、二番、確実に当てるアルパカがバッターボックスへ。キャッチャーはピッチャーへ「思い切り投げろ」とサイン。シャルロッテは素直に頷くと、キュッと唇を引き結び、思い切り投げる。
「うおぉーーー!!」
気合いの声とともにバット一閃、アルパカがヒット性の打球を飛ばす。ボールは鋭く低い軌道で一、二塁間を抜け、アルパカは次塁を目指そうと――
「地元ではサムライエンパイアのイチローと呼ばれた事もある」
真の姿を解放した白き外野手、夜神・静流が背中の翼を大きく広げて空中機動。獲物を狩る鷹のように打球をキャッチすると、素早く二塁へレーザー(物理)を飛ばした。白い軌跡を描き、見事セカンドのグローブに収まる。……アルパカは一塁へ帰還。
「せーーーぇーーーッフ」
ワンアウト、ランナー、一塁。しかしシャルロッテは動じる事なく次のバッターへと力一杯、魔球を投げる。
「だって、知ってるよー」
ここまで、チームメイト達を一番観てきたのは間違いなく、シャルロッテ。筋肉達磨の三番バッターアルパカが、強引な扇風機スイングで炎を揺らがせることで魔球を破り、大きく放物線を描いて飛ぶ打球を見ても、その心に宿った確信は揺るがない。
「アルパカさん、あなた達も大概ですけど――」
視線の向こう、フェンスを猿もかくやという軽やかさで登る大柄な影……あれはなんだ!?ゴリラだ!ロボだ!……いや、ゴリラロボだ!
「MVPは頂きウホ!」
野球という名のジャングルに鉄の大猿が飛ぶ!その手のなかには客席に入り損ねた白い球。
――ボク達には及ばないねー。
にっこり笑って、帽子をなおす。……さあ、選手交代だ。
四番バッター、冷静アルパカ。
イェーガーを相手に万が一があるとすればコイツだろう。身体能力一つ抜け出ているうえ、揺るがぬ精神力の持ち主だ。……名将コアラッコ、これを受けて。
「ピッチャー交代だ」
温存を考えずシャルロッテに思い切り投げさせたのは、この策が有ってこそ。……マウンドに上がるは異次元の投手。
「懐かしきかなパラミタ……ってこれは第1章でやったな」
蒼汁之人・ごにゃーぽさんの登場だ。
――肩は暖まってるか?
――もちろんさ♪
実をいうと、役を呼んだ張本人はごにゃーぽさんその人。……このバッテリーには経験がある。
「……」
冷静アルパカが、無言でバッターボックスに入る。……ルーティーンを黙々とこなし、バットを構える堂にいったその振る舞いに、しかし、恐れをなすごにゃーぽさんではない。
ピッチャー振りかぶって……投げました!
左投げのアンダースロー……冷静アルパカは冷静に、この程度なら、先程のような捕球の余地なくバックスクリーンに叩き込めるとバットを引いて……大きく変化したので素早く手を出した。
「ファウルぅ!!」
咄嗟に弾く。……なるほどこの投手もまた恐ろしい。冷静アルパカは冷静に、最上級だった敵への評価を上方修正して最上位に位置付けた。
「ファウルぅ!!」
「ファーウル!!」
「あ、ファウル」
積み重なるファウルの山、冷静アルパカは凌いで凌ぐ。
変化球で翻弄する技巧派投手。アンダー故に球速は出ないが、すべて同じフォーム同じ振りで投げる技術……ゆえに。
「非常に読み難いと評判だったとも」
「いいぞ蒼汁之人、そのまま」
高速、スローという緩急、縦、マッスラ等の各種スライダーでコースの変化。……十球。
そこに慣れたと思いきや中速でフワリと浮くライズ(正体はツーシームジャイロ)や仕切り直しのリセット用に変則イーファスピッチ(山なりのスローと高高度強襲型の投げ上げ二種)やクロスファイアが混ざる。……二十球。
役としては、ここに至るまでに撃ち取れていて然るべき内容だったが、アルパカは依然としてそこに立っている。……ここで決める。
――来るか。
冷静アルパカは冷静に悟った。キャッチャーとしての経験とバッターとしての勘が敵捕手の組み立てを見切ったと告げる。
確信を宿したバットは、イメージの中の投球をしかと捉え……空を切る。――イレギュラーチェンジ。
「……ットーライ!!バッター……アウゥっ!!」
「……」
冷静アルパカは冷静にベンチに帰る……前に、一つ、役に訊ねた。
「……なぜだ」
「なぜって……ああ、別に読み勝った訳じゃなくて。まじで分かんなかっただけだよ」
言って笑う役につられてマウンドを見ると、そこには、これまた笑顔の一流投手。
「ふっふっふ……ごにゃーぽ☆」
スリーアウト、チェンジ。
●サヨナラを目指して
100-0
「この回で334点取れば問題ありません。勝ちましょう」
一番バッター、静流はそう言ってバットならぬ刀を構える。真の姿を解放したその佇まいは清廉そのものの白き天使といった風情だが、今この瞬間に限り熱き血潮の野球プレイヤーである。
対するは万能ピッチャーアルパカ。そして、冷静アルパカのバッテリー。
「……」
冷静アルパカは分かっていた。334点、あながち無理とも思えない。……油断すればこの大差もひっくり返されるだろう。
猟兵を相手に様子見で甘いところに放るほど愚かな事もない。冷静アルパカは全力投球ストレートを外角低め一杯のクサイところに投げるようサイン。万能ピッチャーアルパカは頷くと、間髪入れずに投球モーションに入る。……阿吽の呼吸。
投げられたボールはミリ単位でストライクゾーンぎりぎりの素晴らしいもの……惜しむらくは。
「……遅い」
そう惜しむらくは、バッターが静流であった事である。
【一ノ秘剣・八雲】
風を纏う八連秘打法によってボールはセンター方向、上空へ真っ直ぐ飛ぶ。飛んで……
空中で美しく十六分割され、勢い衰えずそのままスタンドに飛び込んだ。
100-16
……ボール球から入るべきだった。冷静アルパカは冷静にそう後悔し、ダイヤを回る静流を見送った。
「コールドが無いとはいえ、逆によく試合を続けたものウホ」
一番早くグラウンドに辿り着き、誰より早くユニフォームを着た男、ヒバゴン・シルバーバックは選手交代でバッターボックスへと入る。
「ここは出塁請負人のヒバゴンに任せるウホ……必ず続いてみせるウホ」
野球の打順において最も大切なのは二番バッターであるという説がある……一番がホームラン打って帰った後でもきっとそうだ。
「……」
冷静アルパカは冷静に、横目でヒバゴンを観察する。……デカイ。
約三メートルに加えてたっぷりした横幅、身を乗り出す構えが完全にストライクゾーンを塞いでいる。
「安心するウホ、ヒバゴンはちゃんと打つウホ!」
この巨体である、打つだけで済むものだろうか。典型的な飛ばし屋の気配。
冷静アルパカ、今度は無難にボールからいこうかと思うも……生半可なボールでは届きそうな巨体。
「……」
ならばと、ど真ん中から内角低めに逃げる変化球を指示。この位置ならばむしろ巨体が邪魔になるはず……。
万能ピッチャーアルパカは頷くと、ゆったりとした動作で球を投げた。
「ウホーーー!!」
「!?」
ヒバゴンはその球を、踏み出してコンパクトに、強引に打った。……変化する前を叩きことで打ち頃の投球へと変わる。
そして、ヒバゴンは猛烈な速さでダッシュを開始した。茶色の風と思えるほどの俊足で、まごつく野手が立ち直る僅かな時間で三塁まで進んでいた。
「ランニングホームランはならず……仕事はした……けどまだまだここからだウホ」
MVPを虎視眈々と狙う三塁上のゴリラロボであった。
ハルピュイア曰く。
「本塁打による得点の取り合いの事を空中戦って書いてる」
持ち込みのパンフレットを指差しての発言に、コアラッコは困惑した。……何を言っているのだろうこのコは?
「飛ぶのは得意……だから打てるかな」
「何を言っているのだろう、このコは?」
困惑を深めるコアラッコを見て、ハルピュイアに電流走る。
「ぁ監督さん……サイン下さい……」
「えっと、今……いや、わかった。書いておくから、バッターボックスに行ってほしい」
「……うん」
コクコクと頷いて、バッターボックスへと向かうハルピュイア。……その後ろ姿を見送ってボールへと視線を落とすと『マッスル☆ティラノ』の文字。
思わず苦笑して、そのサインに並ぶように『イェーガー☆コアラッコ』と書き上げると、カキン、という金属音。
「……打ったか」
あらゆる意味で不思議な少女がふわふわと、一塁へと飛んで行くのが見えた。
満を持して四番バッター様の登場である。
「やだー!ついにアイドルとして!あわよくばチアガールとして!応援とかで活躍できると思ったのに!選手出場とか、やだー!」
嘆いて、荒れるアイドル。
「だいたい、人手が足りないからってバーチャルアイドルまで借り出すなんてどこの弱小校よ!将棋部とかから借りてきなさいよ!!ライトにおいとけばなんとかなるわよ!!」
キィーーー!!……美しき高音を上げて憤るアイドル。
「しかも!なぜか四番!花形バッター!なんで!?バカなの!?歌うの!?」
この超人野球においてもやはり幾らかは打順というものは大切で、実際ランナーが一、三塁にいる。
プレッシャーと理不尽に挫けそうなアイドル……そこに、ドタドタと複数人の足音。
「なによ……こんな時に……さては監督ね。……こうなったら直接、ギャフンと言わせて……」
やけっぱちになったえりは、扉を開け放ち――
――なんだかんだ、打席に立っているのである。
「……まったく」
『もみじん!もみじん!やっぱもみじんだー!』
『えりちーが野球とか、まさかと思ったけど、来てよかったぜ!』
『ユニフォーム可愛い!もみじん!こっち向いて!』
『頑張って!応援してるよ!』
「コンサート以外でも応援に来てくれるのね……野球アイドルとか何が良いのよ!」
声を張って叫びながら、ファンからの差し入れのバットを構える。……対峙するは万能ピッチャーアルパカ。……どこに投げてくるか分からない?
――上等だ、どこに来ようと打つのみ。
「い、いいわよ…ガッキンガッキン打ってさっさと101対100で終わらせるわよ…!ファンの声援に応えてこそアイドルだものね…!うぉーっ!!速球変化球なんぼのもんじゃーっ!!」
それでも震える体を鼓舞するように大声。……そんな様子を見てとり、脅すつもりでアルパカバッテリーはデッドボールすれすれに最速ストレートを選択。
「うおりゃーーー!!!」
普段のえりなら、あるいはそれで討ち取れたかもしれない。……だが、今、この瞬間のえりは、無敵だった。
真っ向から立ち向かうようにして振ったバットが真芯でボールを捉える。溢れる気合いが乗り移った打球は飛翔するようにして……ファンのもとへ一直線のホームラン。
『うぉおーーー!!』
「……ありがとうね!」
客席から歓声をくれるファンに笑顔を返す。……先行する猟兵がホームベースを踏むとき分身して点数を嵩ましするのを見て、ひきつる笑顔ではあったが、それでも、そう、ファンに望まれるのならば、アイドルは無敵なのだ。
試合は続く。打って、打って、また打って、盗んで走って、また盗み。
ガンガン追い上げるイェーガーズ……その快進撃が、怪しくなった。……一つ、フライが上がり、もう一つ、今度はゴロ。
そこまでが上手くいきすぎていたと言えるが、アルパカ側が格上への対処に慣れたのが大きい……無数のミスの積み重なってようやくのアウト二つ……なにしろ、大半が素人なのだ。
100-99
ランナー、一塁。名将コアラッコ、これを受けて。
「代打、エイミ・メルシエ」
「ふふん。野球ができるとの噂を聞いて飛んできました、キマフュのヒーロー、エイミちゃんです! そう、ヒーローですから、遅れてやってくるものなのです!」
野球というスポーツの魅力に惹かれてか、遅れてやって来た救世主。……無論、こちらにとってもピンチのこの場面、未知数の新戦力投入はいかがなものかという意見もあった。しかし!
「わたしは案外イケてるバッターですからね、過去の依頼では鳥でホームランしたり弾丸を打ち返したりしてきました! 」
ブンブンと素振りをして有能さをアピールするエイミ。イェーガーズとって未知数ということはむこうにとっても未知数ということ。
「そしてなにより――」
代打、冷静アルパカにとっては意外な言葉ではなかった。……なにしろここで試合が決まるのだ。
ゴリラロボか?サムライか?アイドルか?アサシンか?盗塁捕手か?蒼汁か?さっき脱いでたあの女か?
「よろしくお願いしまーっす!」
……誰でもなかった。茶色の瞳、ピンクの髪、日焼けの見当たらない色白の肌 。およそ野球と縁があるようには見えないが、猟兵だと本能が告げている。十分な未知の脅威だ……そして、なにより――
「よーし必殺・ハニーディッパースイング、やっちゃいますよ!」
なにより――すごく、楽しそうだ。相手にとって不足なし。
身の丈ほど大きなバット。……先ずボール球から。……いや、ここは……しかし。冷静アルパカは、冷静に気づく。
「野球は……楽しい、な」
「……はい!」
小細工はやめだ。ど真ん中、ストレート。コースを隠す気もない。堂々とミットを構える。……マウンド上の相方は、今までで一番時間をかけて、じっくり味わうようにして頷くと、投球フォームに入った。
ピッチャー振りかぶって――投げました。
入魂の一球に、入魂の一打が答える。フルスイングされたハニーディッパーから、打球が鋭く放たれる。……ぐんぐんと、空中で加速するようにして飛んだ野球ボールは、瞬きの後、バックスクリーン貫いた。
100-101
「ゲームセット」
球場を包む甘い毒と、苦い敗北を噛み締めて、アルパカ達は満足そうに、骸の海へと……彼等のホームへと還っていく。
こうして、一つの試合が終わりを告げた。……しかし!イェーガー達の野球はまだ始まったばかりである!進めイェーガー!戦えイェーガー!
大成功
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