裏切り者の護る街~地下に眠る遺物
●陰謀は後ろ暗い所で蠢く
「あー、やっぱり汚ねぇなあ……これでもちっとはマシなのは分かるんだがよぉ」
そんなコトをぼやきつつ、『ヴォイドファング』はデッキブラシを申し訳程度に持ちつつ、身に纏ったスーツのバイザー越しから下水道の様相を眺めていた。
下水道掃除と言えば単純に聞こえそうだが、どのような危険物が眠っているか分からない。故に、ヒーロー達の仕事として充てがわれている街も多いのだ。
「しかし、な……本当にあるワケねーよな、旧軍の施設とか……」
ヒーローとなり、同志となった嘗てのライバルからの情報が脳裏に過る。だが、それを確証付ける物が眼前に現れてしまった。
――大量の、軍勢。それも嘗ての軍の『量産物』達。
「まず、流石にこの大群を俺一人でなんとか、すんのは――!?」
地下で人知れず、一人のヒーローが姿を消した。
それを境にこの街の平穏は決壊することとなる。……地下に眠っていた遺物によって。
●裏切り者が護る街
「なァ、裏切り者が護る街って言われて、どういうイメージを思い浮かべる?」
そう話を切り出すのは霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)。
「裏切り者ってのは『ヴィランから見た』裏切り者って意味な?そー、元ヴィランのヒーローの事を『裏切り者』って見る節もある程度あるらしくて。それが不思議な通称として通ってる街があるのさ。それでもヒーローになったそいつを認めるようになった人物は多いし、その辺りは時間かけて頑張った功績って奴だァ」
話を戻そうってばかりにクロトは鯛焼きとお茶を配り始める。全員が一息ついた頃、クロトは漸く今回の予知について語り出す。
「今回はその元ヴィランのヒーロー……『ヴォイドファング』っつー奴なんだが、旧知のヒーローの一人に教えられた情報を元に下水道の掃除をしてたらしいんだ」
ヒーローが下水道掃除……?と苦笑いする猟兵達を他所にクロトは話を続ける。ヒーローは華やかなコトだけが仕事では無い。このように地下深くで暗躍しかねない芽を摘み取るのも仕事なのだから。
「で、……よりによってその情報が『大当たり』だった、って訳だァ。その下水道は『世界大戦』時代に設計されてた旧軍の施設が隠されてたんだ――後はもう分かるなァ?」
クロトが暗に示す。その旧軍の施設で『オブリビオン』の大群が復活しているのだと。
「此の儘だと『ヴォイドファング』の野郎も殺されちまうし、最悪『地上にオブリビオンが流出』するってとんでもない事態に発展しちまう。ソレだけは避けなくちゃならねェ。つーわけで今回は手伝いに乗じてその旧軍施設由来のオブリビオンを撃滅してきて欲しいって訳だァ」
クロトが言うには下水道掃除の人手として参加する『ついで』に地下を探索。発生源たる旧施設近辺には既にオブリビオンが徘徊している、とのコトらしい。到達次第オブリビオンを一人残らず『掃除』すれば今回の依頼は完了するらしい。
「ま、『ヴォイドファング』も俺ら程じゃねーにしろユーベルコードが使える。ちょっとした戦力にはなってくれるだろーが過信はすンなよ」
それでも、猟兵達は無事に帰ってくるだろうと、クロトは確信を持って送り出すのだった。
逢坂灰斗
元ヴィランとか不良がヒーローとして街を護ってるのとか好きなんです。
逢坂灰斗です。
今回はヒーローと一緒に下水道『掃除』を行っていただきます。討滅戦です。
下水道捜索後、『集団戦』が『2回』発生します。
【MSより】
登場するNPCの軽い設定も乗せておきますが、参考にするかはお任せします。
●『ヴォイドファング』
パワードスーツにバイザー装備の白兵戦主体ヒーロー。
元ヴィランだが、現在は気のイイお兄ちゃんで有名。
突然中空を爪のような衝撃波で斬り裂く事が出来る事からヒーローに転換した際、付けられた。
使用するユーベルコードはアーチャーの物に近い。
(※本名は現状特に判明しません)
なお、チームや団体で参加される方は迷子防止の為【一緒に参加される相手】か【一緒に参加するグループ名】を必ずご記述ください。
では、お目に止まりましたら、宜しくお願いします。
第1章 日常
『ヒーローと一緒に下水道掃除!』
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POW : 下水道掃除なら任せとけ!パワーで片付けるぜ!
SPD : 下水道掃除なんか速さでさっさと終わらせる!
WIZ : 下水道掃除なら頭を使って効率的に済ませましょう。
👑11
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死之宮・謡
掃除?掃除ってなんだ…こr、違うか…如何する…全く解らん…何時も部下任せだったからねぇ…まぁ良いか…知らなくても問題ないし(駄目人間)
んー【流血の支配者】発動…塵は、血に変えて流しちゃえば良いよねぇ?
え?事件だと間違えられるから血を流しちゃ不味いだろって?…流石に事前に言っておくよ…
●その『掃除』はこの後にあるんで……
死之宮・謡(狂魔王・f13193)には、1つ問題があった。彼女はあくまで主人側の立場の人間である。
彼女が『掃除』が得意なのは言うまでもないのだが、今回は普通の掃除である。当然、まともな手段を知らなくても問題ないとすら感じている状況であるのだ。
そんな彼女が取った手段は――
「塵ハ、血ニ変エテ流シチャエバ良イヨネェ?」
……触れた無機物を血液に変換して『操作』するユーベルコードだった。その光景に困惑したヴォイドファングは半ば青ざめた表情で謡に問いかける。
「お、おい……変に事件だと思われたらどーすんだよ……」
「流石ニ……事前ニ断ッテオイタワヨ?『ソウイウノ使ウカラ、安心シテ此方ニ任セロ』ッテ……」
元ヴィランの青年は、頭を抱えていた。確かに一理あるんだけどさぁと言いたげな顔で。
「いや、下水道だし尋常じゃない量の血液流す訳じゃないから別にいいんだけどさあ……」
……彼の半ば呆れた声が地下空間に響いたものの、細かな塵を流すという意味では非常に手間が省けていた、というのは事実として記しておこう。
成功
🔵🔵🔴
鬼竜・京弌朧
掃除か……。なるほど。
そんなに得意ではないが任せておけ。
少なくとも、人を使うのは得意だ。使うのは人ではなく……こいつらだがな!
【クロスオーバーディスク】セット! 【虚構デッキ】セット!
さあ、フィクションによって語られし者たちよ、私と一緒に、掃除をしてもらおうか! UC【バトルキャラクターズ】発動! モンスターカード『虚皇の造兵』を量産する! 皇に使えし絡繰りの兵よ。俺と一緒に満足するまで掃除をしてもらうぞ? さあ、この掃除道具を使え。もちろん、俺も一緒にやるさ。さっさと終わらせるぞ!
可能なら他の猟兵と協力し、さらにスピードを上げよう。
アドリブ・絡み歓迎!
カーニンヒェン・ボーゲン
この世界は、少しばかりジジイめには眩しく感じてしまうのですが…。
成長目覚ましい彼らの力となれるのならば、
老骨とはいえ損はさせぬと願いましょう。
単純作業であれば、数が理になる事もありましょう。
広さによって数は調整する事とし、【UC:手足たち】を召喚してさくさく進めて参りましょう。
二・三列で横並びの隊列を組み、デッキブラシを並べて行進ですな。
このジジイも加わりますぞ。なに、楽しくなってしまいました。
…このような場所に、脅威となる遺物が紛れているなどと…。
平和とは実に儚いもの、信じたくないものです。
時に、ヴォイドファングどのとも会話の期を持てると嬉しいですな。
今の生活や先輩どののとこなど、些細でも。
●掃除は数だよ、兄貴!!
「掃除か……。なるほど。そんなに得意ではないが任せておけ。少なくとも、人を使うのは得意だ」
そう豪語するのは鬼竜・京弌朧(失われた満足を求めて・f08357)。だが彼が構えたのはどう考えても『デッキ』。
「使うのは人ではなく……こいつらだがな!――さあ、フィクションによって語られし者たちよ、私と一緒に、掃除をしてもらおうか!」
カードを華麗にセットしていくと、ホログラフが実体化していくように、彼が『虚皇の造兵』と呼ぶ存在達が次々に姿を現していく。
その様子を見て、眩しさに目を細めるような顔をしながらも、穏やかに老執事が微笑む。
「ふふ、数が理になるならば。此方も負けてはおりませぬ」
カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)が呼び出すのもまた、数の理を象徴するような存在。
気付いたら50人近い掃除の軍勢が構成されていたのである。
「さぁ、俺達と満足するまで掃除して貰おうか!!」
京弌朧が掛け声を上げると共に、軍勢は高々と掃除道具を掲げる。そうして、広い下水道にまたたく間に掃除軍勢が広がっていった。
「いやぁ、なんつーかアンタら無茶苦茶だよな……下水道広しとはいえこんだけいたら作業速度って問題じゃねーもん……」
2人の猟兵の手によって突如人海戦術が繰り広げられたのだ。手伝って貰っているとはいえ、ヴォイドファング自身も呆然とせざるを得ない。
「なに、これだけ居りますと混ざっているジジイめも楽しくなって参ります」
「数は正義だからな、満足するしかないクオリティまで仕上げて終わらせてやるさ」
陣頭指揮を2人の猟兵が取ることにより、広範囲の清掃がまたたく間に終わっていく。
「――しかし、このような場所に、脅威となる遺物が紛れているなどと……。平和とは実に儚いもの、信じたくないものです」
「ああ、それか……俺はヒーローになってから教わった話だから仕方ねぇんだが、割と地下に『埋もれてる』嘗ての遺構とか、結構多いらしいのさ。だからこうしてヒーローが下水道掃除をしてるのも、あんまり珍しくねーんだ」
老執事の呟きに青年が答えを返す。『大戦』の爪痕は表面上では癒えている様に見えても、埋もれるように残されている、というのだ。
(……と考えると、何処にもオブリビオンや危険物の発生する土壌は存在しうる、と言うのか。確かにこれは一般市民にさせられない仕事だな)
近くで聞いていた京弌朧もヒーローの隠れた役割に見えるこの世界の事実に思案する。であれば、この後に待ち受ける『掃除』もしっかり完遂しなければならない。
「……ところで、ヴォイドファング殿は今はどうやってお過ごしになられているのですか?ヒーローにも『素顔』というものはありましょう」
「えっ、今それ聞く!?」
突如ボーゲンに日常に関して振られ、青年はびっくりしたかのような声をあげる。
「ほう、俺も気になるな。是非聞かせてくれないか」
「え、えー……最近は――」
大軍勢による掃除は地下空間に賑やかな声を響かせていた。……この先に待つ杞憂を忘れさせる程に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マディソン・マクナマス
何で人力で下水道清掃してんだよこの街……高圧洗浄車とかバキューム車とか、ヒーローズアースにはねぇのかよぉ……!
「文明の利器に過度に依存すると、人は堕落するんじゃよマディソン」
さっきまで徹夜で飲んでた所為でだるくてしかたねぇが、自称神の幻覚に邪魔されながら真面目に掃除するわ。
「そうじゃぞマディソン、この下水道にはさっきお前さんが吐いた胃の中身も流れとるんじゃぞ」
余計気分悪くなること言うんじゃねぇよ神様。
楽して片付く仕事なんざねぇ。
地道に真面目に一つ一つこなしていくしかねぇのさ。そりゃ殺し合いでも3K仕事でも変わらねぇ。
「真面目に仕事をこなしたマディソンには20天国行きポイントを進呈するんじゃよ」
●痛みとは乱痴気騒ぎのようなもの
「何で人力で下水道清掃してんだよこの街……高圧洗浄車とかバキューム車とか、ヒーローズアースにはねぇのかよぉ……!」
地下にマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)の哀しい慟哭が響き渡る。正直に言えば文明レベル的にはあってもおかしくはないのだが、如何せんどんな危険が待ち受けているか分からない『地下』に、ヒーロー無しで入るのは無謀という他ないのだ。
『文明の利器に過度に依存すると、人は堕落するんじゃよマディソン』
……あの、なんか変なオッサンがいません?
「さっきまで徹夜呑みしてたからだるくて仕方ねぇ……」
集合時間の数刻前に、どこかの観光名所の石像のようなことになっていたレベルで推して知るべし、と言わんばかりの反動が彼を襲っているのだが、そんな最中をさっきから妨害(?)する影が1つ。
『そうじゃぞマディソン、この下水道にはさっきお前さんが吐いた胃の中身も流れとるんじゃぞ』
「だーっっしゃあああああああ!?うるせえなこの自称神ィ!?余計に気持ち悪くなりそうな事言うんじゃねぇよ!?」
……自称:神のオッサンの幻影(しかもユーベルコード)だった。
「楽して片付く仕事なんざねぇ。地道に真面目に一つ一つこなしていくしかねぇのさ。そりゃ殺し合いでも3K仕事でも変わらねぇ」
楽に終わる仕事があるとするなら、それは力量を得るまでに『苦労』をしたから楽が出来ているのだ。どんな仕事にもそれは通ずる理論であり、その信条の元にマディソンは黙々と清掃を続けるのだが――
『真面目に仕事をこなしたマディソンには20天国行きポイントを進呈するんじゃよ』
自称神、これ一応『協力してくれる』って書いてある筈なんだが、そんな素振りは一切なく、煽られ続ける本人は酔いの苦しみに耐えながら掃除を続けていった。
そんな一連の様子を遠巻きに見ていたヴォイドファングは、おずおずと近づいてきて、水筒を差し出してきた。
「……水、飲むか?」
成功
🔵🔵🔴
ミスティ・ミッドナイト
●SPD
元はヴィランとのことでしたが、心を入れ替えたのならば手は出しません。
…お行儀よくしているのなら、ですが。
それに、街の清掃とは良い心掛けです。私もお手伝いさせて頂きますね。
オブリビオンの掃除も大切ですが、真の意味での掃除も大切ですからね。…手を抜くことは許しませんよ。
作業服、ゴム手袋・長靴、O2メーター…。
「え?業者?」と思われる程の重装備で挑みます。
どこからか取り出した高圧洗浄機にて、手早く隅々まで【掃除】致しましょう。
下水の中など掃除する機会なんて中々ありませんからね…。
貴重な経験です…!(大興奮)
ぬめりが取れていくと同時に、心の穢れも取れていくような…
そんな気がしませんか
…!(?)
●どちらにも全力投球
「元はヴィランとのことでしたが、心を入れ替えたのならば手は出しません。……お行儀よくしているのなら、ですが」
「いや、行儀よくしてなきゃもっと色んな奴にシバかれるんで……間に合ってる…」
ミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)の見定めるような目に、ヴォイドファングは思わず萎縮しそうになりながらも掃除を再開したが――
……ミスティの姿は業者ばりの重武装だった。形から入るタイプと言うべきなのか、真相は分からないが、とかく掃除に関して手を抜く事は彼女自身もしたくないようで。
「どちらの掃除も重要です。……手を抜いてしまっては回り回って大きな事態に繋がりますから」
自前(?)かもしれない高圧清浄機を何処からともなく取り出すと、本当に業者なんじゃないのか、という手捌きでテキパキと作業が進んでいく。
「下水の中など掃除する機会なんて中々ありませんからね……。貴重な経験です……!」
なんか、変な方向にエンジンが入ったのか、物凄く鼻息荒く大興奮しているバーテンダーさん。
「ぬめりが取れていくと同時に、心の穢れも取れていくような……そんな気がしませんか……!」
その様子を見て、おっかなびっくり自分の仕事を続けていたヴォイドファングは思わず手を止めた。
「なんかこう、そういう風な感じで達成感得るタイプなんだな、アンタ……」
ミスティの光り輝くような瞳に、半ば遠い目をしながら青年が呟いたと言う。
成功
🔵🔵🔴
三千院・操
【WIZ】
はえー、一人で下水掃除ってえら! めっちゃえら! さっすがヒーロー!
サインくださいサイン! あっ、今はそういう場合じゃないっけ。
ともかく! このままだと格好いいヒーローがひとりいなくなっちゃうらしいから、がんばるぞー!
よろしくね!『ヴォイドファング』!
【謎を喰らう触手の群れ】を応用して触手を召喚!
今回召喚する触手はタコっぽいやつ! 吸盤に掃除用具をひっつけて広範囲をお掃除させるよ!
おれ? おれはー……どうしよっかな! 後ろでみてる!
掃除しろって言われたらする!
てか元々ヴィランなのに今はヒーローって超かっこいいね!
ねね! なんでヴィランやめようと思ったの?
気になる! おしえて!
●お掃除タコタコ
「はえー、一人で下水掃除ってえら! めっちゃえら! さっすがヒーロー!サインくださいサイン!」
なんだかノリがヒーローショーの観客として来ていた少年のようなことになっていた三千院・操(ネクロフォーミュラ・f12510)だが、誰かに咎められるように、そんな場合じゃないんだっけ、と引き下がっていく。
……気を取り直して。掃除の時間だ。
「よーし、タコ触手なら掃除ぐらいできそーだよね、来い!」
その喚び声と共に、操の近くへわらわらと触手が蠢くように顕現する。その触手の一本一本に器用に掃除用具を持たせ、複数の腕を扱いこなすように、術士は掃除をさせ始めていた。
……が、気づけば当人の手元には用具はなく。所在なさげな眼差しとなり。
「おれはー……どうしよっかな! 後ろでみてる!」
「……はい、お前の分のブラシ」
青年は操にも『掃除しなさい』という眼差しを向けていた。……なんだか内側の魔導書にも似たようなことを言われそうな気もしたが。
「てか元々ヴィランなのに今はヒーローって超かっこいいね!」
「そんなもんかあ?割と世間には意外と居るぞ。少数派だとは思うけどな」
褒められて悪い気はしなさそうだが、それでも彼は元ヴィランという肩書は売りにはしたくない、とばかりの態度を取ろうとする。
「ねね! なんでヴィランやめようと思ったの?気になる! おしえて!」
操があまりに無邪気に聞いてくるものだから、青年も良心にかかるものがあったのか、数瞬悩んだ後。
「あんま、陽気に話すことでもねーんだが……」
ぽりぽりと頭を掻くように、ヴォイドファングは静かに語りだした。
「ああ、うん……整理をつけたくなることがあったんだ」
「……決着を付けたくて。その時に今回情報をくれた奴に負けたのさ」
――その時、ヴィランとしての人生を『断ち切れる』気がして、あいつの言葉通りに生きてみたくなったんだ。と、彼は虚空に向かって呟いた。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「パワードスーツタイプのヒーロー!
かっこいいですねっ!」
私もパワードスーツを装着して戦うことのある電脳魔術士。
パワードスーツと聞いて機械オタク……こほん、乙女心がときめきます。きゅん。
「これは下水道掃除をお手伝いして、ぜひお近づきになりましょう!」
【ビルドロボット】で小型宇宙戦艦が変形したパワードスーツを装着!
下水の掃除をしつつ『偵察用ドローン群』でオブリビオンを探します。
「このパワードスーツは宇宙戦闘用。下水の臭いも気になりません!」
オブリビオンが現れたら、荷電粒子砲……は下水では使えないので、ロボットアームによる格闘戦をしかけましょう!
パワードスーツヒーローの活躍を近くで見られて感激です!
ヴィゼア・パズル
相当の覚悟と勇気…同時に力の要る行為だ。認められる事にも頷けるな。
微力ながら、助太刀しよう。
事前に当該下水道の地図を役所にてコピー
【動物会話】を使用しねぐらとする動物達に聞き込みを行う
「この辺りにオブビリオン…不審な生き物を見なかったか?」
「どの辺りだろう。可能なら場所も教えてくれると嬉しいな」
【聞き耳】や【地形の利用】も併用し、拠点にしやすい場所の目星も付けよう
「ありがとう、助かった…これは礼だ」
お礼には細切れ肉か果物を進呈。風の刃でカットしようか
行き止まりや危険な通路なども可能であれば訪ねてマッピングしておこう。
敵に出会えば【カウンター】からの【連続攻撃】だな
●『掃除』の下準備
「パワードスーツタイプのヒーロー!かっこいいですねっ!」
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)はヴォイドファングの身に纏うパワードスーツに目を輝かせていた。そりゃそうだ。彼女は機械オタ……げふん。
彼女はそんな乙女心のトキメキが止まらないままに、素直な心境を吐露していた。
「これは下水道掃除をお手伝いして、ぜひお近づきになりましょう!」
……こういう動機から始まる仲、というのはありかもしれない。
そうと決まれば善は急げ、なのか。彼女は自らもパワードスーツを身に纏った。宇宙戦闘を元々想定していたスーツだ。下水程度では怯みもしない。
「ふふふ、下水道掃除はどんと来い、です。パワードスーツの実力、見せてあげますよ!」
一方で掃除の最中にもヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)は別の情報のやり取りを行っていた。人間だけではこの世界には目が届かない。必要なのは、此処に住む者たちの目。彼の周辺には掃除から一旦逃げてきたかのようにネズミ達が集まっていた。
「ふむふむ、……ありがとう、助かった……これは礼だ」
謝礼の食料をささやかながら彼らに渡すと、事前に手元に用意していた地図へと眼差しを移した。
「成程、此処の周辺に行こうとした動物は帰ってこなくなる……、のか。不審な『ニンゲン』もこの辺りで見た、と」
生き物でなく、彼らは『ニンゲン』だと、断定していた。地下を巣窟とする人間……?猫剣士は思索を巡らせる。
そうしていると、近くにパワードスーツを纏ったアイが掃除の最中ながら歩み寄ってきた。彼女もまた、掃除と同時に偵察巡回を行っていたのだ。
「……アイ。そちらの反応は?」
「ええ、今ドローンを偵察に回してますが――」
アイが手元に下水道のマップを映し出しながら、各ドローンの巡回範囲を見渡していると……
――その時、とある箇所でドローンが撃墜された。
「……ヴィゼアさん、あの子達が言ってた場所って、まさか『この辺り』じゃありませんか?」
彼女がケットシーの剣士の手元の地図に、自らの電脳地図の画像を重ねる。そう、そこは下水で営みを広げる『彼ら』が警告を放った『近寄ってはならない場所』。
「……どうやら、当たりのようだな。急いで向かおうか」
「そうですね、まだオブリビオンが散らばらない内に――!」
掃除を終えた猟兵達とヴォイドファングは2人の声掛けと同時にその地帯へと向かっていく。
――今度は、過去の遺物の『掃除』の時間だ。
成功
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第2章 集団戦
『アーミーメン』
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POW : アーミースタンバトン
【伸縮する警棒型スタンガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ラバーミューテーション
自身の身体部位ひとつを【伸縮自在のゴム】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : プロトデバイス
自身の装備武器に【アメリカ陸軍が開発した試作強化装置】を搭載し、破壊力を増加する。
👑11
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●大戦の遺構を護る者たち
向かった猟兵達が見たもの。それは――
時代錯誤と言わんばかりの、旧米陸軍の量産型強化兵士『アーミーメン』達の姿だった!!
彼らは猟兵達を視界に入れるや否や、臨戦態勢に移行した。
「――機密を漏らさせてはならない、侵入者を排除せよ!!」
そう、彼らの中では大戦はまだ『終わっていない』のだ!!
オブリビオンと化しても尚護ろうとする旧軍の遺構――恐らくは碌でもない施設だろうと、ヴォイドファングは告げる。
「なにせ、話だと研究を凍結されたから拠点ごと放棄されて『なかったこと』にされた施設、だぜ?嫌な予感しか、しねぇ!!」
過去の負の遺産が現在を蝕むのなら――急ぎ、彼らを撃滅せねば!!
死之宮・謡
ふーん…出てきたねぇ…
…【黒金の雷】着装…
さて、此奴等が相手か…所詮はまだ消化試合か…まぁ良い…敵対者は殺す。その大前提からは逃れられん…万が一も無いように徹底的にやらせてもらう
(「呪詛」を武器に「怪力」を自身に有効化し「二回攻撃」で「なぎ払い」を使う。)
そこまで戦闘技術を披露する必要はあるまい…膂力任せに呪いを乗せた槍で相手を薙ぎ払えば良いだろう…
さぁ、始めようか…足搔くな、面倒だ…大人しく死ね…早急に死ね…
●強者でなくとも
死之宮・謡(狂魔王・f13193)は地下空間の中で歩みを進めながら黒金の鎧を纏い始めていた。待っていた戦場の筈ではあるが、その顔には喜びは無い。
「サテ、此奴等ガ相手カ……所詮ハマダ消化試合……」
彼女が求めるのは強者、その一点に過ぎない。このようなタダの群れに、彼女の喜びが満たされるには程遠い。
「マァ良イ……敵対者ハ殺ス」
敵対した以上、その大前提からは逃れられない。万が一も無いように徹底的にやるのが死之宮・謡という魔王だ。
群がる過去の残骸達が此方の手の内を解析しようとも、彼女は平静だ。
「ナニ、オ前達如キニ戦闘技術ナド見セハシナイ……」
強化武装を携えた一団をつまらない、とばかりに謡は見下すように『力任せ』の一撃を放った。紫電の呪詛を纏った一槍が地下空間を斬り裂いていく。
――斬撃と共に放たれた電流が、言の葉を紡ぐように、蝕み、這い回り。
「足搔クナ、面倒ダ……大人シク死ネ……早急ニ死ネ……」
当時の試作装置諸共、アーミーメンは塵へと還っていった。
大成功
🔵🔵🔵
アイ・リスパー
「現れましたね、下水に巣くうオブリビオン!
何を守っているのか知りませんがヴォイドファングさん(のパワードスーツ)を傷付けようとするなら許しませんっ!」
引き続き【ビルドロボット】でパワードスーツを装着した姿で敵を捕捉します。
この狭い下水道では、大型荷電粒子砲は使えませんね。
ならば、先日手に入れた新兵器を使うとしましょう!
荷電粒子砲の出力を収束してプラズマ状の刃にしたプラズマブレードを構えて敵と対峙します。
「格闘プログラム起動、敵を殲滅します!」
パワードスーツの制御コンピューターに指示を送り戦闘を開始します。
マスタースレーブ方式になってないのは、私が運動音痴なこととは一切関係ありませんからねっ!
●光刃の閃き
「現れましたね、下水に巣くうオブリビオン!」
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は下水掃除モードから本業の戦闘モードへ切り替えながら、パワードスーツにてアーミーメン達と相対していた。
「何を守っているのか知りませんがヴォイドファングさんを傷付けようとするなら許しませんっ!」
……言ってることは格好いいのだが、哀しいことに本音は『パワードスーツ』が傷付けられるという事を許さない、ということらしい。其処ら辺はやっぱり機械オタ……げふん。
けれども、彼女の武装はこのような狭い場所で振り回すには非常に『危険』な代物である。アイ自身もその事は承知しており、今回は先日入手した新武装を携えていた。
「出力収束――プラズマブレード展開!!格闘プログラム起動、敵を殲滅します!」
スタニングバトンの精確性重視のモードであろうと、彼女の駆け抜ける一閃を止めるには至らない。
アーミーメン達が最後に見たモノは、残された光の道筋と、既に通り抜けたアイの姿だった、という。
成功
🔵🔵🔴
カーニンヒェン・ボーゲン
召喚していたUC:手足たちを連結させて、五体ほどに数を絞ります。
刃と銃器の両方を使用して伸縮自在な敵影に対応。
相手の数は多いですが、攻撃を広げすぎずに通路正面の個体から狙いをつけます。
相手の動きに連携が見られるかや、部隊長の有無を確認したい。
情報は共有し、周囲の方々と連携して対処を試みます。
ヴォイドファングどのも頼りにしておりますよ。
今はお一人ではないのです。実践は何よりの経験。
存分にお力を発揮してくだされ、ヒーローどの。
ジジイめはサポートにより、皆さまが100%の働きができるように努めます。
情報は正しく齎されており、おそらくヴォイドファングどのの嫌な予感も当たりです。
気を抜いてはおれません。
●今は一人ではないのだから
(ふむ、部隊長は存在はし、一応は連携もしていますが……何故か1つの命令に固辞して動いている気配が致しますね。それが仮想の『総隊長』のように機能している)
やはりこの街に刻まれた『過去』から彼らもやってきたのだろうと、カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)は彼なりに推察を立てる。
であるならば、此処を退く訳にも、通す訳にも行かない――。先程までは清掃の人手として命令を与えていた『手足たち』を纏め上げ、数を絞るように『統合』する。
「――恐らく敵はその柔軟性を活かして対処してくるでしょう。攻撃を広げ過ぎず、武装は『両面』で。皆様のご助力になれるよう立ち回りましょうか」
老執事の観察は的確であり、味方を援護するのを重点としながらも、敵に猶予を与える事は最小限に抑えていた。その中でも彼は今回共闘している一人のヒーローの事も忘れずに眼差しを向けていた。
「――ヴォイドファング殿も頼りにしておりますよ」
交戦中ながらも突如呼ばれたヴォイドファングは視線と時々向けてきている。それを見てボーゲンは言葉を続ける。
「今はお一人ではないのです。実践は何よりの経験。存分にお力を発揮してくだされ、ヒーロー殿」
その言葉に、数瞬口をパクパクさせたかのように戸惑ったが、彼は仕方ねぇか、とばかりに腹をくくる。
「んなこと言って……アンタらの方が強いんだろ?……けどまぁ、期待されんならやるしかねぇ」
ヴォイドファングが比較的大規模な集団の方へ目を向けると、言葉と共にそれは行使された。
「――駆けろ、ファング!!」
突如虚空を『見えない獣』が駆け抜けるように集団に傷を付けていく。猟兵とは違い明確な決定打は与えられない者の、彼のユーベルコードは『視認する複数人』を相手取れる力らしい。
一瞬でも態勢が崩れるのならば、倒せなくとも有効打にはなり得る。そのまま無防備なアーミーメンを『手足たち』が刈り取り、反撃を抑えることで、事は進んでいた。
他の猟兵達の戦いを見て、目を細めるボーゲンは同時に現在の状況を見てこの先を見据え始める。
(――情報は正しく齎されており、おそらくは……ヴォイドファング殿の嫌な予感も『当たり』です)
彼が教えられた情報は一体どこが大元の出処かは不明だが、こうして『軍に関わる』過去のオブリビオンが現出している以上、彼の嫌な予感も外れる期待も出来ないのだ。老執事はタイを引き締めるが如く、身構えた。
「……気を抜いてはおれません」
成功
🔵🔵🔴
鬼竜・京弌朧
集団には集団だ! 【バトルキャラクターズ】発動!
カードセット!
虚皇の魔術師レベル4を4体と、虚皇の近衛兵レベル5を1体特殊召喚!
「全てのモンスターで攻撃を行う!」
俺は相手の攻撃に当たらないようにSEN-皇にのって立ち回りながら、可能な限り敵に攻撃行動を行う。運転技術はばっちりだ。
だがこちらから積極的に攻撃しすぎてもゴムの力で逃げられてしまう可能性があるので、基本的にはカウンターを狙っていこう。
●盤面の指揮官
地下の空洞を、本来ならば不釣り合いなエンジン音が響き渡る。
アーミーメン達は思わず身構えたがその車体の上には威風堂々たる影が1つ。
「――俺は『虚皇の魔術師レベル4』を4体、更に『虚皇の近衛兵レベル5』を特殊召喚!! 我が命に応じ結合し、新たなる姿にて再臨せよ、虚皇の造兵達よ!!」
鬼竜・京弌朧(失われた満足を求めて・f08357)が駆る大型二輪の車体に並走するように、足並みを乱さずに付いてきていた造兵の集団が中空にてホログラム映像同士が溶け合うように混ざり合い、新たな姿となりて再び追随してゆく。
「敵個体は少数、機動攻撃による制圧を仕掛けろ!!」
のたうつ波のように軍兵の群れが衝突せんと京弌朧の下へ迫るが……
「確かに戦いは数だ。だからこそ集団には集団だ。けれども――」
まるで、予め伏せていた策に掛かったかとばかりに笑う羅刹の決闘者。
すぐさま主の前方に踊り出た近衛兵が青色の波を撃ち落とすように剣を振るう最中に、4体となった魔術師が同時に詠唱を紡ぎ終えれば――
「相手の脅威を全て確認せずに殴り込むのは愚策と思わないか?」
アーミーメンの『波』に向けて四重に『虚』へと導く重なった魔術が放たれた。
終わった筈の『過去』に執着し続けるものが、現代に過去をなぞろうとしているのならば。……遺構の性質を考えれば、長時間放置出来るものではない。
「このまま引き剥がすぞ!!急いで問題の遺構へ向かってくれ!!」
成功
🔵🔵🔴
マディソン・マクナマス
数は多いが飛び道具はなし、身体はゴム質ね……了解了解。
ならお望み通り、戦争の時間だぜ。
閉所での戦闘なら慣れたもんさ。
接敵するまでに【罠使い】でUCによるトリップワイヤーを仕掛け、簡易爆弾トラップで敵を迎撃。爆風で敵の足が鈍った所に対UDC軽機関銃で制圧射撃、敵を寄せ付けねぇように弾幕を張る。
固まって向かってくるマヌケ共には、蒸気爆発手榴弾をプレゼントだ。
さっき水くれた兄ちゃん、いい奴そうだったなぁ。
戦場じゃいつ自分か相手が死んで借りを返せなくなるかわからねぇからな。【恩返し】にあの兄ちゃんがやられてねぇか気にしとくか。
ヤバそうなら10mmサブマシンガンで【援護射撃】してやっかね。
●それが望みと言うならば
「数は多いが飛び道具はなし、身体はゴム質ね……了解了解。……ならお望み通り、戦争の時間だぜ」
味方との交戦状況を事前に視察しながらも、マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)は一人、策を構築しながらも呟く。
この猫は、タダの二日酔いの酔っぱらいでも、酒臭すぎるダメ人間でもない。
――戦場に生きた『傭兵』なのだ。
策を構築し終え、ふらりと、相手の視界に入るように。わざと開けた位置に立った猫傭兵は、そうとも知らずに此方へと殺到してくるオブリビオンの群れを見遣り、にやりと笑った。
「おおっと、予測通り此方に来なすったな。残念だが閉所での戦闘は慣れたもんでね――」
そう、『予想通り』アーミーメンの一人がトリップワイヤーを引っ掛けた。
「迂闊に近寄ると『KABOOM』、って奴さ」
その瞬間、簡易で仕込んだ――と、本人は主張するワイヤー連動式簡易爆弾が連鎖を起こし、眼前のみを見ていた旧軍の残滓が爆撃の中に呑まれていく。
その上、一度視界を塞がれてしまえば、スタン警棒を振っている暇などある筈も無く……。
「お前ら、『過去の』とはいえ、一応軍人だろ?こんな醜態晒すマヌケにゃコイツがお似合いさ」
爆風が晴れていく最中、一つの『物』が転がっていく。カランカランカラン……と、乾いた音を立てて転がっていったソレが止まった瞬間。
――追撃とばかりに『蒸気爆発手榴弾』が炸裂した。
手練の構築した罠により、一集団を壊滅させられたアーミーメン達の間を怒号が駆け巡る。
「無策に近寄る馬鹿がいるか!!向こうの罠には近寄るな、近場の相手から崩せ!!」
怒号の最中、向こうにすこーし見覚えのある顔をマディソンは視界に収める。
「おおっと、あの兄ちゃんは水くれた良い奴そうなのじゃねぇか」
――戦場では、いつ自分か相手が死んで借りを返せなくなるか分からない。ならば、ケットシーがやることは、ただ一つ。
興味が自分から逸れたと悟った瞬間、抜かれたのは数々の銃器。制圧するように、援護するように。自分が受けた恩を返すように。
……殺させないとばかりの弾幕が、地下空間を飛び交い始めた。
成功
🔵🔵🔴
三千院・操
そっかそっか! なるほどね~、ライバルの言葉がきみを変えたってわけ!
いいじゃ~ん。アツい絆、ってやつだね!!
……でもね、過去を『断ち切る』ことはできない。過去ってのはずっと自分に着いてくるものだ。
だから、現在を生きるおれたちはそれを『飲み込む』んだ。『飲み込んで』、その上で未来に進む。
『断ち切る』ってのはさ、即ち過去の否定でしょ? 過去の否定は自分の否定だ。それに、いつまでも『断ち切る』ことに拘ってたら、どっかで死んじゃうよ。
――ま、そうならないためにおれたちがいるんだけどね!
おまえらの攻撃なんて三手先まで読めてんだよ! そら来い、『ひび割れた主神(ベルフェゴール)』!!
(呪詛+高速詠唱)
●断ち切る事と飲み込む事
「そっかそっか! なるほどね~、ライバルの言葉がきみを変えたってわけ!いいじゃ~ん。アツい絆、ってやつだね!!」
戦闘は猟兵有利に進んでいるとは言え、『ヴォイドファング』とさっきの話の続きをしているのは三千院・操(ヨルムンガンド・f12510)ぐらいかも知れない。
「んじゃねーと、辞める理由なんてそんなに大安売りしてねぇからな。一回抱えた信念を曲げるっつーのは相当覚悟が居るしな」
それでも、『断ち切り』たかったのだ、と彼は語るが、操はそれは違う、とも言う。
「……でもね、過去を『断ち切る』ことはできない。過去ってのはずっと自分に着いてくるものだ」
ヴィランだった、という過去は捨てることは実際不可能だった。その過去は間違いなく『彼』の後ろに付いてきている。
「だから、現在を生きるおれたちはそれを『飲み込む』んだ。『飲み込んで』、その上で未来に進む」
「『断ち切る』ってのはさ、即ち過去の否定でしょ? 過去の否定は自分の否定だ。それに、いつまでも『断ち切る』ことに拘ってたら、――どっかで死んじゃうよ」
それでも、彼は『断ち切る』事に何か執心しているようにも思えた。ヴィランだった過去だけではない。もっと根強い何かを、断ち切ろうとしたがっているようにも感じたが、それでも、それは『死』に繋がるのだと。死霊術師の彼は答えた。
「だけど、よ……此処は敵地だぜ、こんな風に喋ってたらさ」
大丈夫な訳がない。身構えている彼とは違い、呑気に構えている(少なくとも外見からはそう見えた)操は油断していると、狙いやすいとでも捉えられるのは必然であり。
――操に、ゴム化したアーミーメンの一撃が殺到した。
「おい! 幾ら何でも俺と喋ってる暇なんて無かったんじゃ――」
「だいじょーぶだって、」
完全なる脱力のまま相手の攻撃を受けた操を、心配するかのような『ヴォイドファング』に平気だと、そう応える。だって、
「――おまえらの攻撃なんて三手先まで読めてんだよ!」
受けた衝撃をも、全てを『術式』のリソースに転化する召喚術式。
避けることも、受けることも、跳ね返すことも『拒否』する怠惰より生まれるそれは――
【ひび割れた主神(ベルフェゴール)】。
「……めんどくさいよね、代わりにやっちゃってよ」
それは気怠げに。座す洋式トイレの如き台座からも『立ち上がろう』ともせずに。片腕をまるで『コバエ』でも叩き潰すかのように振り翳した。
……『ヴォイドファング』が唖然とする中、アーミーメンという『コバエ』の群れはぷちり、と小気味よく音でも立てたかと思わん程にあっさりと殲滅されたのである。
彼は、そのようなことがあっても、操の言った言葉が頭を駆け巡っていた。
「――飲み込めたなら、どんなに楽だったろうな」
その呟きは、果たして操本人には聞こえていただろうか。
大成功
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ミスティ・ミッドナイト
世界大戦時代の遺物ですか。
(気づけばいつものスーツ姿に着替えている)
この世界は昔、強化人間の開発が行われていたと聞いたことがあります。
隠蔽された研究施設があっても不思議ではありませんね…。
ここで発砲すると跳弾する可能性がありますし、特殊警棒(装備)を用いた近接格闘術(UC)で対抗します。
命中率を重視し【武器落とし】で相手の警棒を狙います。
ヴォイドファングさんは白兵戦主体と聞いております。
互いの【戦闘知識】を活かして、連携攻撃を仕掛けるのも良いでしょう。
止めには頭部をハンドガンで【零距離射撃】。
一体ずつ。確実に。
彼らの中で戦争が終わっていないというのなら、私達の手で終わらせて差し上げます。
●纏うは夜霧
(――世界大戦時代の遺物ですか)
ミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)は掃除業者のような身のこなしから一転、平時のバーテンダーの如き服装へと身を包んでいた。
(この世界は昔、強化人間の開発が行われていたと聞いたことがあります。隠蔽された研究施設があっても不思議ではありませんね……)
『ユーベルコード』を使える人間、というのは兵器にも近い。それを『人工的』に造り上げた強化人間の開発施設など、この世界ならばあっても不思議ではないだろう。そのような『過去』が現出してはならないと、彼女は戦地へ舞い踊った。『彼ら』の戦争を、終わらせるが為に。
跳弾を警戒し、二人で白兵戦を仕掛けることで確実に『落としていく』手法を取ったミスティ。元よりヴォイドファングが白兵戦に関しての連携ならば、それなりに可能な程度の技量は持ち合わせていたのも功を奏した。
夜霧を纏うように、『ただの人間』として、丁寧に取り零さぬように。一人の女が瀟洒に戦場を舞う。
「――貴方達の中で戦争が終わっていないというのなら、私達の手で終わらせて差し上げます」
完全なる至近距離ならば、跳弾の危険性も無い。それを示す様に頭部へ据えられたハンドガンの引き金が引かれた瞬間。
乾いた銃声が、過去から這い出ようとする『戦争』の一端を、終わらせた。
「……さて、これで護衛のオブリビオンは全てのようですね」
表の『掃除』を終え、地下空間は元の静寂を取り戻した――筈だった。
……ごぽごぽと、水の音と、『機械の装着音』が、する。
「下水道の流れる音……ではないですね、これは――」
遺構が『稼動』しているのだろうか?脳裏に危険な研究の存在を過ぎらせるミスティの先を取るように、青年は一人斥候のように前に出ていった。
「と、この先に例の遺構があるって言われてる。俺は先に行くぜ?」
駆け出すヴォイドファングだったが、その後、程無くして、絶句したまま『立ち止まっていた』。……彼が、見たものは――。
成功
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第3章 集団戦
『機械鎧『ドミニオン』の着用兵士』
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POW : シフト:ペネトレイトランス
技能名「【鎧砕き】【串刺し】【怪力】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : シフト:クイックスタン
技能名「【早業】【先制攻撃】【マヒ攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : シフト:カウンタースペル
技能名「【呪詛】【ハッキング】【カウンター】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
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●着用者の『生産』工場
「……おい、こんな発想、あって、たまるかよ!」
遺構の内部を見た、ヴォイドファングの顔は蒼白となっていた。
そこは、大量の人間が培養され、完成すると同時に機械鎧『ドミニオン』の装着の素体として、『装備』させられる事を繰り返していた。
その、施設の機械のみが、『過去』を繰り返さんと、稼動を続けていたのだ。
猟兵達の前で、培養装置から排出された男が、自我に目覚める前にその紫のような機械装甲を『装着』された。ぐちゃり、と肉が潰れるような音とともに、その兵士は『完成』する。
人間を人間ではなく『部品』としてのみ見ていたその機械鎧は、闇に葬られた筈の物だ。此処だけは、世界大戦の時で『止まったまま』、過去を繰り返している。
『――侵入者を発見しました。緊急量産と迎撃モードに移行します』
もはや、研究者達の手を離れ、外道の『機械鎧』を吐き出し続けるのみとなったこの遺構。……少なくともこの『過去』は、表に出させては、いけない。
【MSより補足】
・この章では、着用兵士達と戦闘しながら施設を『機能停止』させてください。
・培養されている人間達はオブリビオンではありませんが、機械鎧を装着された場合、完全にオブリビオンとなります
・機械鎧の装着と生産ラインを破壊できれば、別に培養人間達は放置しても構いません
・相変わらず『ヴォイドファング』は邪魔にならない程度に参加します
マディソン・マクナマス
こんなもん、別に大したことじゃねぇ。過去のどんな王朝や国家にだって、後ろ暗い秘密の一つや二つはあったさ。
だが、今はそいつを乗り越えて、この国はこのクソ施設があった頃より良くなってる。
国も人も、変われるんだよ。
――昔悪党だった男に、俺は水を貰った事もあるんだからな。
幾ら先制攻撃ったって、射程外からは先制できねぇだろ。
近寄られる前に、UC【精密乱射】を使う。対UDC軽機関銃で味方の後ろから弾幕を張って【援護射撃】をカマすぜ。
弾幕の流れ弾とありったけの蒸気手榴弾で、敵を巻き込みながら施設をぶっ壊す。
ここは何一つ未来には必要ねぇ場所だ。他の奴が気にしねぇなら、培養人間も含めて全部灰燼にしてやらぁ。
死之宮・謡
ふむ…中々合理的なシステムだな…人道という観点を無視すれば極めて効率が良く、成果も望める…面白いな…が、これも今回の仕事の内だ、スマナイが全員死んでもらうぞ
施設破壊は他の面子に任せ、奴らの撃滅を…いや、纏めて壊しつくすか…」【黒金は血に嗤う】…さァ、始めヨウか…
「呪詛・怪力・生命力吸収・鎧砕き・なぎ払い・オーラ防御」を使用した状態で只管暴れまわります。最初に建てた方針は、暴走を見越して、大雑把に建てたものです
●過去の歯車
「フム……中々合理的ナ『システム』ダナ……人道トイウ観点を無視スレバ極メテ効率ガ良ク、成果モ望メル……面白イナ」
人道を無視し、効率のみに走った『遺構』の姿を見て、死之宮・謡(狂魔王・f13193)は関心を示す。上に立つ者として、論理は分かるのであろう。ただ、『世界大戦』中は人道を無視しなければならぬ程に追い詰められていた事も事実なのだ。
だからこそ、マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)は下らないとばかりに、繰り返す過去の一端として、此処を見る。
「だがなこんなもん、別に大したことじゃねぇ。過去のどんな王朝や国家にだって、後ろ暗い秘密の一つや二つはあったさ」
歴史は繰り返す、とはいう。光には影がある。影からは逃れられない以上、このような暗部は、どの世界であろうと、どの時代であろうと、存在し得る。
「だが、今はそいつを乗り越えて、この国はこのクソ施設があった頃より良くなってる。国も人も、変われるんだよ」
マディソンは、青くなって立ち尽くしたその青年をぽふ、と気付けのように叩く。
「――昔悪党だった男に、俺は水を貰った事もあるんだからな。……そうだろ?」
『ヴォイドファング』は、口を開いた。其処に居たのは悪党ではなく、一人のヒーロー。
「……此処を、終わらせよう。俺に出来ることなんざ限界があるが……」
「ま、俺達に任せろ。無理はすんなよ。兄ちゃん」
「奴ラハ私ガ叩キ潰ソウ。此処ノ『破壊』ハ任セルワネ?」
「おーけー。んじゃあ矢面は任せた」
「クレグレモ、巻キ込マレテクレルナヨ……?」
黒金の鎧騎士の後方にて、猫傭兵は牽制を始める。如何に先制攻撃をしようとも、届かないのならば意味がないし、先に抑えられたならば有利なのは此方だ。
「奴ラノ撃滅ヲ…イヤ、纏メテ壊シツクスカ……」
突如迸る好戦的な殺意と同時に、黒鎧は突撃する。
『対重装甲モードを起動します、シフト:ペネトレイト――』
無機質なシステム音を寸断する程に、黒鎧の魔王の暴威は吹き荒れる。
直撃を受け、鎧の下の素体の素顔が顕になった時、その男らしき顔の表情は、自我があるかどうかは判断はしづらかったものの、まるで解放を受け入れるかのような、穏やかな表情だった、という。
(――全部は、潰さねェ方が良いな、『排出済み』の個体はどうしようもねぇけど)
援護射撃の最中でも、マディソンはまだ『兵器』でない『彼ら』を見遣り、蒸気手榴弾のピンを引き抜く。いっそ此処事潰してしまった方が自我に目覚めても居ない彼らの為とも思えたが、猟兵達の全員がそれに肯を唱える道理も無かった。
装着工程が急ピッチで進められようとしているソレを見遣り、榴弾を投げつけた猫傭兵は、それが振動と爆発に彩られながら灰に還っていく様を、一瞬だけ目を伏せた後に、視界から外していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カーニンヒェン・ボーゲン
…我々は皆、今を過去に換えて未来を得ます。
ずっと考えていました。オブリビオンと、何が違うのか。
確信しました。『遺物』とは、よく言ったものだ。
しかし此度の干渉で、ヴォイドファングどのには余計に酷な状況を突きつけたやも…。
我々とて初めから強かったのではありませんが、望まぬ苦汁を舐める事はないのです。
お任せくださって、良いのですよ?
オブリビオンと化した者らは葬るしか、ないのですな…。
UC:剣刃一閃にて、せめて苦痛のないままに眠って頂きたい。
また、地形を利用し、ロープワークと残像を駆使する事で
ドミニオン兵を避けて先に施設の破壊を優先します。
今は意思を伴わずとも、いつか彼らが幸せを得られる道を探さねば。
●老執事の選択
(……我々は皆、今を過去に換えて未来を得ます。ずっと考えていました。オブリビオンと、何が違うのか)
カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)は考え続けていた。そもそも、猟兵もオブリビオンと一歩間違えば『似たような』もの。では、何が違うのか、と。
『過去』が、過去のままに、今を犯すのであれば、正しく捨て置かねばならない。
(――確信しました。『遺物』とは、よく言ったものだ)
けれど、このような酷を、近くに居る一般人(ヴォイドファング)は、受け入れるには、少々、手荒が過ぎる。彼とて全てが清廉とは言い難いが、望まぬモノを見せる必要は無いのだから。
「我々とて初めから強かったのではありませんが、望まぬ苦汁を舐める事はないのです。お任せくださって、良いのですよ?」
気遣うような言葉を、『ヴォイドファング』は制した。自分も、この場に居なければならない、と。
「いや、俺も見届けなきゃ、なんねぇんだよ。こいつらを。過去を呑み込まなきゃいけねぇってんなら、見なかったことにすんのは、ヒーローとしちゃ、『間違ってる』んだろ?」
彼のまだ立とうとする意志を感じ取った執事もまた、戦地へと歩みを進める。……このような『遺物』を、断ち切る為に。
必要以上の交戦を避ける形で立ち回るボーゲンではあるが、それでも、機械鎧の兵士は追い縋ってくる。機密を壊されるわけにも、漏らされる訳にも行かぬと。
その姿に哀悼を示すかのように。一撃が閃く。穿つような一撃よりも、疾く。
「……オブリビオンと化した者らは葬るしか、ないのですな。ならばせめて、苦痛なきよう」
痛みは、存在し得ただろうか。鎧ごと、兵士が斬り裂かれ。外せぬ鎧を『外した』その素顔は、やはり装置の中で揺蕩うように瞼を閉じる『彼ら』と同じ物。道具として彼らが消耗され続けるという『選択』は消さねばならない。
攻勢を潜り抜け、老執事の一閃が向かったのは、その元凶たる施設であった。
(自動生産ラインの寸断自体はなされております、でしたら――)
老執事が一閃を閃かせると、培養装置のガラスが割れ、まだ『兵器』でない『彼ら』が強制排出される。纏うことでオブリビオンが『完成』するのであれば、まだ人間である彼らは救う手立てが存在する。
まだ、意思に目覚めぬ彼らのうちの一人を抱えたボーゲンは一人ごちるように、その開かれぬ瞼を見遣った。
「――今は意思を伴わずとも、いつか彼らが幸せを得られる道を探さねば」
『遺物』が生み出した命だが、彼らとて今を歩く権利は有る筈だと。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「この設備だけは放置できません!」
兵器になるためだけに産み出される素体。
それはまるで、研究所で兵器として生み出された私自身を見ているようで冷静でいられません。
熱くなった頭で【チューリングの神託機械】を起動。
【ビルドロボット】でパワードスーツとして纏っている小型宇宙戦艦の制御コンピューターの演算能力も加えて、全力で施設をハッキングします!
ですが、ハッキングに集中するあまり敵の動きへの注意が散漫になっていました。
ペネトレイトランスがパワードスーツの装甲に叩き込まれ……
「そんなっ、この装甲が抜かれるなんて
……!?」
装甲を貫通した攻撃に腹部を貫かれ、痛みに耐えながら反撃の荷電粒子砲を放ちます。
●人工の命故に
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は歯噛みする。自らの過去を脳裏に過ぎらせるが如き、生まれながらにして『兵器』となることを宿命付けられた命達の揺蕩い。それは、彼女に覚悟の咆哮を上げさせるに十分だった。
「――この設備だけは放置できません!」
パワードスーツも本来の領分は制御コンピューターによる『演算』。ならば、アイの本領を発揮するには十分。
「施設も機械であるなら、此方のものです――」
電子の魔術師の手腕が閃く。遺物レベルの機械であれば、赤子のようなもの。
「装着工程強制停止、成体済み素体を『全排出』します!!」
量産工程そのものに待ったをかける介入は非常に効果的だった。素体であっても、『鎧を纏わせなければ』オブリビオンでは無い。高速演算により、半壊した施設はアイの支配下に落ち、量産を再始動させても、此方の手数には間に合わないだろう。
だが、妨害を悟らぬ程、向こうの兵士も甘くはなく、ハッキングに集中していた
「――装甲が!?まさか、装甲貫通モード、ですか……ッ!!」
痛みが、文字通り刺さるかのように、彼女へと伝播する。けれど、この痛みは、意志無きまま兵器として『変生』した瞬間に背負う、彼らの痛みに比べれば――
「この程度ッ!!」
反撃に転ずるように光が収束する。紫電と共に収束したソレが敵を、施設の一角を、還すのに時間は要らなかった。
大成功
🔵🔵🔵
三千院・操
まぁどちらでもいいさ! おれはきみとは今日ここで袖が振りあっただけの他人だ!
飲み込もうと切り捨てようと、おれにはなんの関係もない。
──だけど、そんなふうに『こうできていれば』『ああしていれば』だなんて言うのはとってもヒーローらしくないね!
きみは『ヒーロー』なんだろ? だったら前を向けよ、しゃんとしろ。そんなに"弱そう"だったら、おれが食べちゃうよ?
こんなふうにね!
【ねじれた巨舌】で頭を海蛇に変え、全身に反撃の呪詛をまといながら相手を食らう!
早業? マヒ攻撃? 先制攻撃? ハハ! いかにも"強そう"だ! いい餌になってくれよ? なァ!
おれは強い奴がすきなんだ!
サイン、あとで貰うからね!
ミスティ・ミッドナイト
戦争というものは、往々にして人の倫理観を麻痺させるものです。
とはいえ、これは見るに耐えませんね。
【地形の利用】【破壊工作】で施設の破壊を狙います。
【情報収集】により、電源部、制御盤といったデリケートな箇所に梱包爆弾を仕掛けます。
地下ですし最悪の場合、街の地盤が崩れるかもしれません。
その可能性を考慮し、重要箇所をピンポイントで破壊していきたいですね。
手の届かないところはグレネードランチャー(UC)で狙います。
着用兵士は、槍を使った近接攻撃主体のようです。
ショットガンの【範囲攻撃】で離れて迎撃していきましょう。
生産ラインを破壊してしまえば、後は掃討戦になるだけです。
手早く仕上げましょう。
●『過去』を呑み込む終焉
「まぁどちらでもいいさ! おれはきみとは今日ここで袖が振りあっただけの他人だ!飲み込もうと切り捨てようと、おれにはなんの関係もない」
そういった運命で、あっただけ、とあっさりと告げる三千院・操(ヨルムンガンド・f12510)は、それでも。とヴォイドファングへと顔を向ける。
「──だけど、そんなふうに『こうできていれば』『ああしていれば』だなんて言うのはとってもヒーローらしくないね!」
「……悩み続けるのはらしくないってか?」
そそ、と言わんばかりに操は言葉を紡ぐ。戦地でも、その陽気さは崩れない。
「きみは『ヒーロー』なんだろ? だったら前を向けよ、しゃんとしろ。そんなに"弱そう"だったら、おれが食べちゃうよ?」
会話の最中を強襲しようと一人の兵士が素早く槍を差し向けたが、彼の笑顔は崩れなかった。
「こんなふうに、ね!」
頭部を変じさせ、ばくりと兵士の1人を飲み込んだ操に向けられたのは驚愕の視線だったが、それはそのまま、鋭い眼差しへと変わる。
「おれは強い奴がすきなんだ!サイン、あとで貰うからね!」
操の無邪気な微笑みを見て腹を決めたであろう、彼の顔は真っ直ぐであった。
「……おうよ、だがまずは此処の掃除を終わらせねぇとな」
その言葉に応じるようにミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)は自らの得物を構えた。
「ええ、サイン会は『彼ら』と一緒に此処を抜けてからにしましょう――」
鋭い眼差しが一瞬だけ閉じ、再び眼を開いた彼女は構造を見切る。
(――地上部分の崩落に影響しそうな『柱』には被害は向かっていないようですね、ならば、私は解体に徹するまで)
操達に前は任せた、とばかりにミスティは『仕上げ』に移る。
再稼働から『素体』が成体に至るまではどんなに短く見積もっても高速で立て直せる程ではない。ならばあとは重要部分のみを撃ち貫くのみ。
「『彼ら』のまだ見ぬご兄弟には申し訳ありませんが――これ以上稼働させる訳には参りませんから」
培養装置の中核たる部分に、グレネードランチャーが叩き込まれる。
既に回収されきった成体達の影もないそれは、役目からようやっと解放されたかのように、ガラスの花弁を散らせながら、爆発していった。
「おし、あれでもうあの物騒な鎧共は増えねぇ……ならよ!」
先手を取ってくるならば、届かぬ距離から纏めて先を封じれば良いのだと。ミスティが此方の支援に戻るまでの繋ぎくらいにはなるだろうと。ヴォイドファングは集団へと眼差しを向けた。
「――駆けろ、ファング!!」
虚空の爪が、残党達を駆け巡っていく。その後を追う様に、海蛇の如き頭部の術士が先を取られる前に、堪能していく。
「ハハ! いかにも"強そう"だ! いい餌になってくれよ? なァ!」
ばきり、ばきりと、機械が咀嚼されていく音が無情に響き渡り、更に女傭兵の支援射撃が加勢に加わっていく。
「チェック、と言った所でしょうか。終わりですよ、この『戦争』も」
――最後の1人が、操の顎に呑まれた時、全ては終わった。
「――しっかし、すげぇ掃除になっちまったもんだ」
『遺構』の残骸を、彼は、見つめている。傍らにはこの施設で生産されていた『彼ら』も数人、まだ目は覚まさないものの、確かに息をしていた。
「アンタ達にきっと、俺もこいつらも救われたんだ。きっとそれだけは事実だ。……こんな話、与太話として流して、『真実』を飲み込むのは俺達だけできっと良い筈だから、さ」
素体の一人を肩に背負うと、彼は猟兵達に礼を告げるように眼差しを向ける。
「地上に帰ろうか。俺も向き合う事が増えちまったみたいだしな」
――裏切り者が護る街は、静かに驚異から逃れた。真実は、この場に集った者たちの中でのみ、『呑み込まれる』であろう。
成功
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