●久方の光のどけき春の日に
会津藩のはずれにある、ある田舎でのことである。
大きな荷物を背負った旅人風の男達が、古い地図を頼りに野山に分け入っていった。
彼らの目当ては天然の山桜。江戸は上野だの飛鳥山だのの混み具合に辟易し、知る人ぞ知る名所で一足遅い花見と洒落込もうという心算である。
酒と肴で重くなったかごを背負ってえっちらおっちら。足が棒になりそうなほど歩き通し、男達はついに桜の木の下へ辿り着いたのだった。
ござを広げひとしきり酒を飲み交わすと男達は山桜の枝を見上げ、ほぅ、と溜息をついた。
八重咲きの薄紅は満開。夢うつつのほろ酔い気分ではらはらと舞う花びらを眺めていると、学のない自分でも『もののあはれ』というものを理解したような心持にさせられる。
――それにしても。いくらなんでも、派手に散りすぎでないかい?
不思議に思った男は、視界を埋めんばかりの花びらの向こうに目を凝らした。
するとそこには、ぴよぴよと鳴きながら懸命に桜の枝を揺らす小鳥の群れがいたのだ。
●
「桜の枝に戯れる可愛らしい小鳥。これがオブリビオンでなければ最高だったんだけどなぁ」
クロード・キノフロニカ(物語嗜好症・f09789)は、溜息をつきながら予知の概要を説明した。
「サムライエンパイアの会津という土地で、悪戯者の小鳥型オブリビオンが桜の花を散らしてしまおうとする光景を見たよ。お花見に来た一般人が何らかの事件に巻き込まれてしまう前に、このオブリビオン達を追い払ってほしいんだ」
小鳥型オブリビオンの行動意図や目的は不明。現状は人に危害を加えたりはしていないようだが、いずれ牙を向かないとも限らない。
「現場は田舎の山奥。現場には既に花見客が何人かいるから、まずはなるべく迅速に人払いをしてほしい」
花見客は既にかなり酔いが回っており、中には支えてやらないと歩けない者や完全に眠り込んでしまっている者もいるだろう。
また、花見客の中にはかなり強情な者もいるようだ。説得で何とかできない場合は力ずくで退いてもらう必要もあるかもしれない。
「それと……ひとつ気になることがある」
難しい顔でクロードが続ける。
「この小鳥たちの行動が、いくら考えても不自然すぎるんだ。ただ花を散らすだけだなんて、意図も目的も分からなすぎる。
もしかしたら、何らかの黒幕が潜んでいるかもしれない。
気を付けて、と言い添え、クロードは猟兵達を送り出した。
椿初兎
椿初兎です。
こちらではすっかり桜も散ってしまいましたが、北のほうではまだ見ごろなのでしょうか。
●第一章について
花見客は全部で5人。
みんな酔っ払いです。酔い具合は会話できる程度~泥酔状態までさまざま。
はるばる江戸から行脚してきただけあって、ただ避難を呼びかけるだけの言葉にはあまり積極的に応じようとしてくれないでしょう。
皆様のプレイングをお待ちしております。
よろしくお願いします。
第1章 冒険
『花見と酔っ払いとオブリビオン』
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POW : 大声で避難を指示する。暴れる人を力技で取り押さえる
SPD : 素早く片づけをして避難順路を作る。暴れる人を手早く取り押さえる
WIZ : 的確な指示でうまく人の波をコントロールする。交渉により移動してもらう
👑11
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カチュア・バグースノウ
まーったくしょうがないわねー
WIZでほろ酔いの酔っ払いを撃退…じゃない、避難させようかしら!
お酒を持って酔っ払いに声をかけるわ
ね、おっさ…じゃない、おじさま、あたしとゆっくり向こうで飲まない?
あっちの方が花が綺麗だったわよ
酔っ払いと言ったらおっさんだけど、女性も考えられるわね
女性だったら、一緒に飲むわよ!って強引に連れてくわ
ほら、ね、二人っきりでいいことしましょ?(とかなんとか言って)
全力でボディタッチして腕を絡めて
(ダディだと思えば恥ずかしくない)
(ま、でも顔が赤くなってたらそれっぽいかもね)
一杯飲んだら一緒に行ってくれる?
だって、おじさまったら…素敵なんだもの
アドリブ、絡み歓迎
リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー…これ、が、酔っ払い、さ、ん…
(こういう大人にならないようにしようという決意の瞳)
・行動
ん、おー…僕だって、はえあるお狐様。
【誘惑】と【言いくるめ】そして【救助活動】で少しはお役にたてる、はず!
出来れば、お話しがまだ出来そうな人に声をかけよう
「ん、今から、ここ、は、戦場、に、なるん、だ、って……
危ない、か、ら、移動、して、欲しい、ん、だ」
と説明しつつ、魅惑の尻尾をゆらゆらしてみるね
「ん、おーそれ、にほら、他の、場所、のほう、がもっと、散ってな、い桜も、みれ、る、よ」
避難誘導してる人達の方へ、支えてあげながら誘導するよ
もしも無理そうなあ、狐乃雨でえいやーってしてみるね!
●
うららかな陽光は暖かく、吹き抜ける風はわずかに冷たく。
絶好の花見日和を楽しむように昼間から酒を飲み交わす大人たちの姿が、年若いリュヌ・ミミティック(妖狐の竜騎士・f02038)には奇異に映ったようで。
「ん、おー……これ、が、酔っ払い、さ、ん……」
こういう大人にはならないようにしようと、リュヌは固く心に誓うのであった。
一方、そんな酔っ払い達に臆することなく、カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は宴席へと近付いていく。
「まーったくしょうがないわねー」
なんてぼやきながら、酒瓶片手に宴席へ近付いていった。
「おっ、嬢ちゃんもここで花見かい? いやぁお目が高いっ!」
「ええ、本当に素敵ね。こんな名所を知ってるなんて流石だわ」
上機嫌な酔っ払いをおだてて良い気分にさせつつ、カチュアはそっと距離を詰めしなを作った。
「ね、おっさ……じゃない、おじさま、あたしとゆっくり向こうで飲まない?」
酔っ払いの赤ら顔が更に赤く染まる。
最高の花見酒を楽しんでいたら花のように可憐な美女が気さくに絡んできたのだ。ご機嫌にならないはずがない。
「でも俺はこの山桜を目当てにここまで来たわけで……」
だが男にも意地がある。せっかく見つけたこの名所、おいそれと退いてしまうのは惜しすぎる。
誘惑と意地の間で揺れる男の前に、魅惑のふわふわ尻尾を揺らしリュヌが歩み寄る。
「ん、他の、場所、のほう、がもっと、いっぱ、いの桜も、みれ、る、よ」
それは夢か幻か。リュヌが指し示す枝葉の向こうに透けて見えるのは、一面の桜並木だった。
「なんだこりゃ。たまげたなぁ」
つられて指の先を見遣った他の酔っ払いも、狐につままれたような顔で向こう側の桜に見惚れていた。
「ん、それに、ね。今から、ここ、は、戦場、に、なるん、だ、って……。危ない、か、ら、移動、して、欲しい、ん、だ」
「あら物騒。巻き込まれる前に、二人であっちに行っちゃいましょ?」
少し強引に誘うように、白い頬を桜色に染めたカチュアが腕を絡める。
「なんだ、喧嘩でもおっ始めんのか? 桜は散らさないようにしろよー」
カチュアに手を引かれる男を追うように、酔っ払いがもう一人桜並木へと歩いていった。
「ん。乱暴、なこと、する必要なく、て、よかった」
酔っ払いたちの背中を見送りながら、リュヌがほっと胸をなで下ろす。
彼らの行く先の桜は夢でも幻でもない。一本桜に目を奪われた男達がその奥の桜並木に気付かなかった、ただそれだけの話だったのだ。
一方その頃、カチュアは。
(ダディだと思えば恥ずかしくない……恥ずかしくない……)
色仕掛けじみたことをしてみたものの、恋愛事に疎い身ではどうしてもドギマギしてしまう。
内心を悟られまいと笑顔を作りながら、桜並木へと歩みを進めるのだった。
大成功
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清川・シャル
【P】
Amanecer(催眠術、鼓舞、誘惑使用)を召喚
あー、マイクテステス。
酔っ払いさん方~。今すぐここを離れて避難しないと命の保証はありません。いいですね、警告しました!
子供の声だからと甘く見ないでくださいね。
いきます。
言う事聞かない子は実力行使っ
櫻鬼でジェットのダッシュをかけます
ねぇ、合気道ってご存知です?
相手の力を使って技かけるんですよね。
暴れるところを関節技(関節外れない程度に)かけて、殺気でもどうでしょ?
可憐ながら羅刹ちゃんなので腕力気をつけなきゃですね?
さ、危険なのが分かったらとっとと逃げてください。
…危険なのはシャルじゃないです。(ぷく
目面・真
【SPD】
まだ現れてもいないオブリビオンのために逃げなければならないのは釈然としないとは思うが、怪我人を出さないための措置だ。悪く思うな。
まずは屋台や傘など、お花見の設備をどけて避難誘導路を作る。
安全な場所は、あっちか。では、その方角に向けて人が通れる道を作るぞ。
酔客が駄々をこねるようなら仕方がナイ、痛くない程度に捕まえて運んでやろう。
酔って楽しんでいるところに水を差して申し訳ナイが、まだ仏さんになりたくはナイだろう?
ならば安全な場所に逃げてくれ。危険な相手なんだ。見かけはカワイイが、な。
●
現場に残った酔っ払いは、全部であと3人。
たかが3人と侮ることなかれ。
「あぁ? ンだてめーら、俺を騙そうったってそうはいかねーぞ?」
「そうだそうだー! 武断政治はんたーい!」
「うーん、もう食べられないよ……むにゃむにゃ」
と、この通り、3人ともかなり酔いが回った様子。
まともに話を出来る状態ではなさそうだ。
ぐでんぐでんになり管を巻く酔っ払い達の耳に、突如として耳をつんざくような大声が鳴り響いた。
「あー、マイクテステス。警報警報ー! 皆さん今すぐここから避難してくださーい!」
爆音の元は清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)。召喚した大量のスピーカーから響かせるように、シャルはインカムマイクに向けて大声を張り上げた。
「酔っ払いさん方~。今すぐここを離れて避難しないと命の保証はありません。いいですね、警告しました!」
緊急性を伝えるように強めの口調で言い切る。さも当たり前のように不穏な言葉が付け加えられたような気がするが、きっと気のせいだろう。
「まだ起こってもいない事件のために逃げなければならないのは釈然としないとは思うが、怪我人を出さないための措置だ。悪く思うな」
目面・真(機動兵器のマジメちゃん・f02854)もまた、名前に違わぬ真面目な態度で酔っ払いに語り掛ける。
シャルがスピーカー群を召喚している間に、足元に転がる酒瓶やら肴の皿やらは隅の方へ片付けておいた。足元がおぼつかない泥酔者でも、これなら躓く心配はないだろう。
「っせーよクソガキ! 俺は退かねーぞ! この桜は俺のだからな!」
子供のように駄々をこねる酔っ払いが逆上した様子でシャルに殴りかかろうとする。
が、気付けば酔っ払いはシャルを見上げる格好で動きを抑えられていた。
「ねぇ、合気道ってご存知です?」
にこりと可憐に微笑みながら、軽く捻るように力をかける。その瞳に宿る殺気に、酔っ払いが思わず息を呑んだ。
「あだだだだ! ごめんなさいぃぃぃ!」
その様子を見て青ざめるもう一人の酔っ払いに、真が落ち着いた声音で語り掛ける。
「酔って楽しんでいるところに水を差して申し訳ナイが、まだ仏さんになりたくはナイだろう? ならば安全な場所に逃げてくれ」
「は、はいぃぃぃ!!」
酔っ払い達が抵抗する気力を失くしたことを察すると、シャルは関節を極めていた腕を緩めた。
「さ、危険なのが分かったらとっとと逃げてください」
「危険な相手なんだ。見かけはカワイイが、な」
二人の警告を聞くまでもなく、酔っ払いたちは覚束ない足取りで一目散に駆け出した。
「……ひどいです。危険なのはシャルじゃないです」
「あ、いや、シャルくんのことを言ったわけではなくて、その」
……ともあれ。
残る酔っ払いは完全に寝こけた泥酔者1名。
彼の処置は、こういった場面に長けた適任者に任せるとしよう。
大成功
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コルチェ・ウーパニャン
コルチェ、ぐでんぐでんの人を狙いまーす!
シールを貼って『酔い』を歩けるくらいまで割引!
ほろ酔いのお客さんへ、お家に帰ってー、ってご案内!
髪の毛はぴかぴか、困ったときの緑色。
ほら見て! コルチェこんなに困ってるでしょ!
おじさんがぐでんぐでんだからコルチェすっごいこまりんぼだよ!! 閉店へいてーん! 帰って帰って!
帰ってもらえないなら…ヤだけど、
いったんシールをぺりって剥がして、ぐでんぐでんに戻します。
もうお花見できる体調じゃないんだよ。
楽しい気分でおうちにかえろ?
帰ってもらえたら嬉しい気持ちの黄色!
お花は来年、また咲くよ。
それが人とお花のお約束!
……そのお花を、どうして散らしちゃうんだろう?
●
「もーう、仕方ない人だなぁ」
騒音にも喧嘩騒ぎにも動じずぐっすり寝ている酔っ払いを見下ろし、コルチェ・ウーパニャン(ミレナリィドールのブラスターガンナー・f00698)は頬を膨らませながらどこからともなく赤いシールを取り出した。
「割引シールで『酔い』を20%ほどオフ! これで意識も戻るかな?」
酔っ払いの汗ばんだ額に割引シールを貼ると、みるみるうちに顔の赤みが引いていった。
「目は覚めた? もう、こんなに酔っぱらっちゃって!」
酔っ払いは目を覚ますと、目の前の光景に驚いたようにぱちくりと瞬きをした。
髪に緑色の光を纏った女が、困ったような表情で自分を見上げている。
「おじさんがぐでんぐでんだからコルチェすっごいこまりんぼだよ!! 閉店へいてーん! 帰って帰って!」
痛む頭をぶんぶんと振り、改めてコルチェと名乗った女を見る。どうやら、自分を心配して声をかけてくれたようだ。
「もっと割引が必要かな?」
頬に手が伸ばされ、小さな札のようなものをぺたりと貼られる。
その途端、すっと意識がはっきりとしたような気がする。
「ほら、もうお花見できる体調じゃないんだよ? わかる? 楽しい気分でおうちにかえろ?」
コルチェに言われ、一瞬前の気持ち悪さをふっと思い出す。確かに、自分はもう宿で休むべきなのかもしれない。
「お花は来年、また咲くよ。それが人とお花のお約束!」
確かに、言われてみればそうなのかもしれない。男はふらつく足取りで宿場町への道を引き返すことにした。
「お元気で! そのシールはおうちに着くまで剥がしちゃダメだよ!」
避難が完了し、コルチェは満足げに髪を黄色く輝かせた。
「これで心置きなくオブリビオン退治に専念できるね! ……ねぇ、どうしてお花を散らしちゃうの?」
遥か頭上、激しく降り出した花嵐の向こうに問いかける。
そこには、グリモア猟兵が予知で見たという小鳥が既に飛来していたのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『まっしろピヨすけ』
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POW : 超もふもふもーど
全身を【膨らませてめちゃくちゃモフモフな状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : もふもふあたっく
【もふもふ体当たり】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : もふもふソルジャーズ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【ミニまっしろピヨすけ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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●花嵐
不意に、風もないのに花びらがはらはらと散り急ぎ始める。
来たか、と猟兵達は構え、樹上を見上げた。
そこには数羽の真っ白い小鳥が鎮座し、ただただ枝を掴み花を散らすべく揺すっていたのだ。
猟兵達の立てた物音に気付いた小鳥が、樹の下へ視線を向けた。
花見客とも違う様子に警戒の色を強めた小鳥たちは、猟兵達に向けて一斉降下を開始する。
可愛らしい見た目に似合わぬ闘気を瞳に秘め、こちらを睨む小鳥たち。
その様子を見る限り、どうやら穏便な手段を選ぶという選択肢はとれそうにない。
「ぴーーーーっ!!」
けたたましい鳴き声が響き渡り、戦が始まった。
コルチェ・ウーパニャン
ええっすごっかわっ……うわー!!
どうしよどうしよ! そんなに怒らなくたって……!
うわーん話し合おうよー!
あっでもコルチェ鳥さんの言葉わかんなかったー!!
仕方ないからシールトリックでもう一回『割引』!
ピヨすけさんたちの数を減らせないかな?
合体されたあとでも、数字の数は減らせると思うんだけど……
あーんほんとに、意図も目的も分からなすぎるよう!
そういう子にあんまりイジワル、したくないんだけどなー!!
割り引いた後はピカリブラスターでキュンキュン攻撃!
どうだどうだっ!散らされたらお花さんだって辛いんだよ!
ピカリブラスターのキュンキュンが嫌なら言い訳してみせなさーい!
あっでもコルチェ、鳥さんの言葉が(略)
目面・真
罪悪感を感じるが、倒さねばならないようだな。
鎧装を装着して、油断なく対処しようか。
数が多いな。しかも一羽は小さい。
こういう相手は大太刀を振り回すのではなく、小回りの利く鉄扇で一羽ずつ叩き伏せよう。
オマエ達も操られているのであろうが、悪く思うな。
相手が散開するようなら、絶対零度の爆轟で、まとめて凍らせよう。
いかに身動きが取れないとは言え、凍らせて叩き割ってしまえば、倒せない相手ではあるまい。
●
急降下してきた鳥たちを見上げ、コルチェ・ウーパニャン(ミレナリィドールのブラスターガンナー・f00698)は髪を黄色に緑にぴかぴか点滅。
「ええっすごっかわっ……うわー!!」
まんまるもふもふの姿はとても可愛らしく、しかし怒りに任せた突撃は食らえば相応に痛そうだ。
「どうしよどうしよ! うわーん話し合おうよー!」
穏便に解決したいが、残念なことにコルチェには鳥語は分からない。
話し合いでなんとかするわけにはいかなそうだ。
いっぽう、目面・真(機動兵器のマジメちゃん・f02854)は、どこか割り切れない気持ちを抱えながらも冷静に鉄扇を構えた。
「罪悪感を感じるが、倒さねばならないようだな」
可愛らしさに惑わされないようにと決意を込め、真は兜でその表情を隠す。
目の前にいるのはあくまでオブリビオン。油断なく対処しなければ。
『ぴーーーーっ!!』
一番槍を務めていたのは、額に「壱」と書かれた鳥の群れであった。
鳥たちは猟兵達の前に降り立つと、息の合った動きで散開し猟兵達を包囲しようとする。
「一羽一羽は小さいが……流石に数が多いな」
想定以上に厄介そうだと、真は小さく呟く。
尤も、このような事態を想定していない真ではなかった。
ただひたすらに体当たりを仕掛ける鳥を扇ぐように受け流し、鉄扇を翻しながら無防備な背を打ち付けていく。
「オマエ達も操られているのであろうが、悪く思うな」
せめて一瞬で終わるようにと、真は一撃一撃を正確に叩き込んでいくのだった。
一番槍部隊は残り10羽。
残った鳥たちはまるで大きな一個体に見せかけようとするかのようにぎゅうぎゅうと寄り集まって羽毛を膨らませた。
「うわっ、何これかわ……って、ほんとに一つになったー!?」
そのファンシーな仕草にコルチェが歓声を上げたのも束の間。みるみるうちに羽毛の境目が消えてゆき、群れだったものは額に「拾」と書かれた大きな鳥へと変化した。ちなみに大きくなってもフォルムは小鳥のままである。
「ピィィィィ!!!」
こちらを威嚇するように、大きな鳥が鳴き声を上げる。鳴き声も小鳥のままであった。
「あーんほんとに、意図も目的も分からなすぎるよう!」
困惑しながら、コルチェが鳥めがけて割引シールを飛ばす。
シールが命中すると、ぽふんと弾けるようなエフェクトと共に鳥の大きさが一回りほど小さくなった。額の数字は「八」。一見困り顔に見えるが、依然として闘志は失っていないようだ。
「あんまりイジワルしたくないんだけど……お花を散らす子にはキュンキュン攻撃だよ!」
コルチェが手にしたピカリブラスターの引き金を引く。
避け切れないと判断した鳥が羽毛を膨らませ防御体制に入る一瞬前、弾丸状の冷気がふわふわの巨体を捉えた。
真が横合いから放った、絶対零度の爆轟であった。
「この隙に叩き割る!」
凍り付いた鳥に真が閉じた鉄扇を叩きつける。
「どうだどうだっ! 散らされたらお花さんだって辛いんだよ!」
追い打ちをかけるようにコルチェがピカリブラスターを放つと、耐えきれなくなった鳥の身体が粉々に砕け散った。
その様子はリアルな血肉ではなく、まるでダイヤモンドダストのような光の粒の舞であった。
「……鳥さんの言葉が分かれば、言い訳くらい聞いてあげたかったなー……」
コルチェが呟くが、感傷に浸っている間にも鳥はどんどんこちらへ向かっている。
仲間の援護に回るべく、二人は再び武器を構えるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー魅惑の、も、ふもふー!
・行動
僕の尻尾と、もふもふ、どっちが魅惑の、もふもふかなーって思いつつ、きちんと、戦う、よー!
もふもふあたっくが怖いし、まずは狐乃火焔で攻撃だ―!
一体なら一体だけ、それ以外なら数は多めに
攻撃範囲内にどうしても入ってしまうのなら、敵の数が多い場合は狐乃火焔も織り交ぜつつ、ダフィットと猫憑き季月で攻撃するよ!
「ん、おー、ダフィット、猫憑き季月、がんば、ろ、ねー!」
それ以外でも、もふもふした後とかはダフィットか猫憑き季月で攻撃するね
◆超もふもふもーど時
皆に危険や自身に危険がない場合のみ、もふもふしようと試みます
解除されたら攻撃に移行
アドリブ&絡み大歓迎
清川・シャル
ふむ。もふもふで可愛いですけどね
とりあえずやる事やりますか
Amanecerを召喚
鳥よけのモスキート音出しておきますね
ついでに熱光線で攻撃
ぐーちゃんΩでの射撃を
(一斉発射、クイックドロウ、早業、毒使い、衝撃波、吹き飛ばし、目潰し、範囲攻撃、マヒ攻撃)
近距離になればそーちゃんで叩き潰しましょう
(なぎ払い、2回攻撃、呪詛)
ある程度叩いたらチェーンソーモードに切り替えて振り回しておきますね
ほら、私鬼ですし?
無敵モードへの対策はUC発動
凍らせればなんとかなるかな
叩き割ります
ん、黒幕が居そう?
第六感で探ってみますか…?
敵攻撃には見切りカウンターで対応しますね
●
撃破された鳥たちの仇を討つように飛び込んできたのは、ビーチボール大ほどの大ぶりなまんまる鳥の群れ。
「ん、おー魅惑の、も、ふもふー!」
意外に鋭い嘴の一撃をかわしながらも、リュヌ・ミミティック(妖狐の竜騎士・f02038)は無邪気に歓声を上げた。
少々緊張感に欠けるような気もするが、それも仕方のないこと。
「鳥よけのモスキート音、効いてるみたいですね」
清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)の召喚したスピーカーから放たれるモスキート音を嫌がり、群れのほとんどが地上へ侵攻することを躊躇うように空中に立ち往生していたのだ。
耳障りなノイズに耐え猟兵達の元に降り立った勇気ある鳥の数は、わずか3匹のみだったのだ。
「んー、僕の尻尾と、もふもふ、どっちが魅惑の、もふもふかなー」
そんなわけで多少緊張感には欠けるリュヌだが、闘気むき出しの鳥を見ると指先に灯る狐火とともにその瞳に真剣な色を宿す。
「ん、まずは、狐乃火焔で、まとめて攻撃しちゃ、う、よー!」
手の中に発生した火の玉がゆるりと解れ、22個の狐火となる。
リュヌの手から離れた炎は輪舞を踊るように散開し、鳥たちの側へ寄り添うように飛んでいった。
「ぴぃ!?」
狐火から逃げるように不規則に飛び回る鳥たち。だが、その必死の闘争は爆風と轟音に遮られたのだった。
「ぐーちゃんΩ、一斉発射です」
シャルが構えるピンクのグレネードランチャーから放たれた砲弾が、鳥たちめがけて炸裂したのだ。
爆風に煽られボールのように吹き飛ぶ鳥たち。
一瞬の後、天から降り注いだ何かが鳥たちの身体を覆う。
「えっ、何で……あー、そういうことですか」
降り注いだモノの正体は、先程まで空で右往左往していた鳥たち。
グレネード弾の爆音にモスキート音がかき消された隙を突いて、仲間の元へ駆けつけたのだ。
「ん、おー、もふもふが、もっともふもふになってい、く!」
寄り集まった鳥が合体し、リュヌたちの身長をゆうに追い越す大鳥へと変身したのだった。
『ピィ! ピィィ!!』
起こったようにどしんと地面を踏み鳴らすビッグ鳥。
だがリュヌは臆することなく――羽毛に顔を埋めるように、鳥に飛びついた。
「ん、おー……ビッグもふもふ……」
つい顔を埋め、もふもふを堪能してしまう。柔らかくふわふわとした感触につい気が緩みそうになるが、戦闘を放棄したわけでは勿論なく。
「ん、おー、ダフィット、猫憑き季月、やっちゃ、えー!」
リュヌの呼び声に応じ、仔竜と猫人形が鳥めがけて襲い掛かる。
慌てて逃げようとする鳥だが、リュヌに翼を押さえつけられバランスを崩してしまう。
ダフィットと猫憑き季月の攻撃がクリティカルヒットしたタイミングで、シャルが叫ぶ。
「リュヌさん、離れてください。危ないですよ!」
慌ててリュヌが離れると、ふわふわだった羽毛が見る間に氷漬けになっていく。
「血まで凍る林檎、お味はいかがです?」
笑みを浮かべながら、ピンクの金棒を叩き込む。
「そーちゃん、チェーンソーモードです」
金棒の先が回転し、棘はすべてを切り裂く刃となる。
「可愛い鳥さんですけど、敵は敵ですもんね。やっちゃいましょう」
金棒が叩き込まれ、棘が鳥の身体を抉る。
破砕された鳥は羽ひとつ残すことなく、風に吹かれるようにふわりと消えていった。
「雪みたいな消え方。季節外れもいいとこです」
その消え方に、シャルは何故だかわずかな違和感を覚えたのだった。
大成功
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アニカ・エドフェルト
もふもふ、気持ちよさそう、ですが、
心を、鬼にしませんとっ
とはいえ、相手が小さいと、〈グラップル〉が、使いづらくて、困ってしまい、ます…?
うまく合体、してくれるといい、ですが…
合体、してくれたなら、〈グラップル〉で掴んで、〈怪力〉〈ジャンプ〉、あと翼の力で、不規則な、動きから、地面に叩きつけ、ます。
春の、乱気流に、ご案内、ですっ
(【転投天使】演出)
(合体されないor前述の後分裂して来たら)
って、ひゃああっ!?
く、くすぐったい、ですっ!?
(もふもふに埋まった)
う、く、り、猟兵の、力、な、なめないで、くださいっ
(回し蹴りの要領で〈なぎ払い〉を試みる)
…ふぅ、危なかった、です…
(アドリブ行動台詞歓迎)
●
「わぁ……もふもふ、気持ちよさそう、ですっ」
アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は目の前で寄り集まる鳥たちに一瞬目を奪われた後、ぶんぶんと首を振った。
「って、どんなに可愛くても、敵さん、なのでした。心を、鬼にしませんとっ」
小鳥のような姿をしているとはいえ、相手は倒すべきオブリビオン。そう決心を固めると、アニカは地面を強く踏みしめ鳥の群れへ飛び掛かった。
アニカの得意とする戦法は、小さな身体で相手の懐に潜り込む組み付き技主体の格闘スタイルである。
対して敵は小さく素早く数の多い小鳥たち。あまり得意な相手ではない。
やりにくさを感じながらも一羽一羽の隙をついて一生懸命掴みかかろうとするが、
「きゃあっ!?」
ひらりと避けられ、アニカはそのまま地面へ転がってしまう。
鳥たちが追撃を加えるべくアニカに集まってきた。
「ひゃああっ!? く、くすぐったい、ですっ!?」
彼女の組み付き攻撃を真似ているのだろうか――まるで押しくらまんじゅうでもするように、鳥たちがアニカを囲みぎゅうぎゅうと寄り集まる。
正直、痛くはない。むしろ羽毛の暖かさが花冷えの風吹く気候に心地良く、危うく戦意喪失しそうになるが――
「う、く、り、猟兵の、力、な、なめないで、くださいっ」
力を振り絞りなんとか身体を起こすと、回し蹴りをするように脚で鳥たちを払った。
この戦況を優位と判断したか。
鳥たちはもふもふと寄り集まり、アニカめがけて重いとどめの一撃を繰り出そうと巨大な鳥へ変身した。
「その隙を待っていました、ですっ」
だが、それこそがアニカの好機。
「春の、乱気流に、ご案内、ですっ」
鳥の腹部に力いっぱい組み付くと翼をはためかせ高く高く上昇。桜の枝が間近に見えるくらいの高度で急速に方向転換すると、そのまま地面めがけて鳥を投げ落とした。
大きな鳥は地面に墜落しながら分裂し、小さな小さな小鳥がぼたん雪のように地面へと降り注いだ。
アニカが地面へと舞い降りた頃には、既に鳥のいた痕跡すら消え失せていたのだった。
成功
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第3章 ボス戦
『雪熟女』
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POW : 妖艶なる氷の吐息
【口】から【『はふぅ』と悩ましげな、絶対零度の吐息】を放ち、【魅了と氷結】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 心惑わす魅惑の吹雪
【おみ足を魅せる等して肌から冷気を集める事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【髪を色っぽく乱す程の猛吹雪】で攻撃する。
WIZ : 遭難者様ご案内
小さな【吹雪の中に現れる雪の宿】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【対象が望む幸せな世界の幻】で、いつでも外に出られる。
👑11
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すぅ、と一陣。うららかな陽光に似合わぬ冷たい風が、桜の花びらを巻き上げながら一同の側を通り抜ける。
不思議に思った猟兵達が風上に目を向けると、雪のように白い肌の女がそこに佇んでいた。
「……貴方たちも、春の味方をするのね」
女は吐き捨てると、足元に散る花びらを恨めし気に踏みにじる。
「ここまで来れば、冬の居場所があると思っていたのに。あぁ憎い。この花が憎い。腹いせに散らしてやろうと思ったのに」
踏みつけた地面から霜が広がり、辺りの地面がぴしりと凍る。
「この花も、貴方たちも。私のいるべき季節を否定するなら、みぃんな私の敵よ」
身勝手な言い分と共に全身に冷気を纏わせる女。
その瞳の色は、冷たい狂気の色に染まっていた。
コルチェ・ウーパニャン
えーっ、そんなあ!!
ピヨすけさん達、そんなことのためにあんなに頑張ってたの!?
冬の前に秋があるから、冬を耐えられるのに。
冬の後に春があるから、冬を楽しく過ごせるのに!
でも…えーっ、どうしよ!
敵の攻撃を、ユーベルコードで跳ね返しちゃえるかな?
使う技はまだ見てないけど、足元の霜が多分、ヒントになると思うの
……お宿…は…ちょっぴりステキだけど、
コルチェは春が大好きだよ!
雪熟女さんは素敵な春が想像できないんじゃない?
そんな人になんか、コルチェ騙されないもん!
桜とぽかぽかのお日様がキラキラの世界が、コルチェのいたい世界です!
吹雪なんかキライ!お宿には行かないよ!
コルチェには帰りたいおうちがあるんだもん!
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あまりにも身勝手すぎる雪女の言い分に一同が呆気に取られる中、ひとり素直に抗議の声を挙げる者がいた。
「えーっ、そんなあ!! ピヨすけさん達、そんなことのためにあんなに頑張ってたの!?」
コルチェ・ウーパニャン(ミレナリィドールのブラスターガンナー・f00698)であった。
コルチェには雪女の気持ちは理解できない。が、ただの八つ当たりのためだけに召喚されたのであろう小鳥たちが儚く散っていく姿を思い出すと、胸が痛くてたまらない。
「冬の前に秋があるから、冬を耐えられるのに。冬の後に春があるから、冬を楽しく過ごせるのに!」
やっと訪れた春を守りたい気持ちと、身勝手さへの憤りを胸に、コルチェは雪女の前へ立ちはだかったのだった。
「永遠の冬の素晴らしさが分からないなんて、可哀想なお嬢さん。いいわ、教えてあげる」
誘うような妖艶な笑みを浮かべ雪女が足元の霜をもう一度踏みしめると、地面いっぱいへと霜模様が広がる。
鏡面のように厚く凍り付いた床面へ雪女が吹雪混じりの吐息を吹きかけると、そこに現れたのは暖かな火の灯る宿の幻像。
「ふふ、遠慮しないで入って頂戴? 充分におもてなしさせてもらうわ」
「わぁ、ステキなお宿……だけど……」
鏡像の世界を現実に呼び起こすように、冷たい風がコルチェを襲う。
足先から全身へじわりと広がるような冷気に侵され、つい幻へと手を伸ばしてしまいそうになる、けれど。
「コルチェは春が大好きだよ!」
冷気を振り払うように、コルチェが足を踏み鳴らす。
「あなたは素敵な春が想像できないんじゃない? そんな人になんか、コルチェ騙されないもん!」
鏡像の世界がひび割れ、氷の破片となり飛び散る。
「桜とぽかぽかのお日様がキラキラの世界が、コルチェのいたい世界です!」
跳ね上がった氷の粒が陽の光を受け、プリズムのように虹色の輝きを放ちながら宙を舞う。
桜と青空と虹の煌めき。それは春の陽光がもたらした美であった。
「なんてこと……これが、貴女の愛する春……」
見惚れたように動きを止める雪女。だが、邪念を振り払うように首を振り声を荒げる。
「駄目! 私は冬をもたらす者。春を知ってはいけない。いけないのよ……っ!」
再び冷気を纏い、猟兵達を排除しようと周囲に雪を舞わせる。
その様子は、まるで自らの視界を雪で閉ざそうとしているかのようであった。
大成功
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雷陣・通
おいおい?
そりゃあねえだろ?
冬に木々や海が休まり、春に芽吹き、夏に茂って、秋に実るじゃん?
っていうか、薄着だな姉ちゃん?
暑がりか?
『紫電の空手』で攻撃回数を増やし、二回攻撃とフェイント残像を組み合わせて左右から攻撃するぜ。
攻撃が来たら『前羽の構え』で防御
耐えて耐えてカウンターのタイミングを見切ったら
先制攻撃で殺気の乗せた残像をフェイントに真っ正面から攻撃だ!
行くぜ『正中線五段突き』
腹!
胃!
鳩尾!
ストマック!
水月!
(みんな同じ場所)
連続腹パン攻撃だ!
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心を閉ざすように自らの視界を吹雪で覆う雪女。
「うるさい! この世界に冬以外の季節なんて不要。春なんて、来なければいいのよ!」
そんな雪女に言い返すように、雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)が一歩踏み出す。
「おいおい? そりゃあねえだろ? 冬に木々や海が休まり、春に芽吹き、夏に茂って、秋に実るじゃん?」
四季ある国で生まれた通にとって、雪女の考えは信じがたい。信じがたいが、現に今雪女がこの景色を壊そうとしているのは変わりない。
愚かな考えを止めるべく、通は雪女へと駆けた。
「ああ、嗚呼。可愛い坊や、共に永遠の冬を生きる気はないかしら?」
甘く誘う言葉と共に、雪女の唇から吐息が漏れる。
吐き出された絶対零度の風がふわりと大きくなり、冷気の塊となり通を包み込もうとする。
「うわ、冷たいっ!」
その冷気をまるで物質を掴むかのように両の掌で止めると、風向きを逸らすように受け流した。
「ふふ、この肌に触れてみたくはない? 同じ体温、同じ冷たさの中で」
「っていうか、薄着だな姉ちゃん? 暑がりか?」
艶やかに悩ましく吐き出される誘惑の言葉も、今の通には通じない。
やがて雪女の攻撃が冷気頼りの遠距離攻撃のみと見切ると、通は雪女に近接すべく地面を蹴った。
「あらあらぁ。飛んで火に入るなんとやら……え?」
雪女も負けじと冷気を投げるが、通には当たらない。
それもそのはず――彼女が狙ったのはただの残像。本物の通は既に、懐へと潜り込んでいたのだ。
「いくぜ!」
身体に紫電を纏わせ、まっすぐ正中へ拳を突き出す。
「腹! 胃! 鳩尾! ストマック! 水月!」
怒涛の五段突きが決まり、膝をつく雪女。
「っ……負けない……負けないんだからぁ……」
痛みにうずくまりながら恨めし気に呟く雪女の目は、未だ春への怨恨を失ってはいない様子であった。
大成功
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ハロ・シエラ
遅れましたが、助太刀に参りました。
なるほど、相手は雪女。
初めて戦うタイプですが……炎には弱そうですね。
私はまず炎の【属性攻撃】を行います。
燃え盛るレイピアは、少しは敵を怯ませる事ができるでしょうか。
積極的に【先制攻撃】を仕掛けたい所ですが、相手の吹雪は大分射程が長い様子。
ユーベルコードで私が起こす炎を吹雪にぶつけます。
どちらが強いか分かりませんが、水蒸気も立ってめくらましにはなるでしょう。
私の力さえ及ぶならば吹雪を炎で切り裂きながら近付いて、間合いに入れば後は炎を纏った剣で貫くのみ。
時が来れば雪も霜も消えるのが自然の摂理。
あなたには悪いですが、力の限り溶かさせて頂きます。
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「遅れましたが、助太刀に参りました」
体勢を立て直した雪女の前に、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が立つ。
「あらあらぁ、貴女みたいな子供が助太刀だなんて。舐められたものねぇ」
雪女が悩まし気に溜息をつき、自らを覆う冷気を再び膨らませ始めた。
「なるほど、雪女ですか。ならば……これでどうでしょう!」
叫ぶと同時に、炎を纏わせたレイピアを振り抜く。
燃え盛る一閃が白く煙る冷気を切り裂き、雪女の頬を掠めた。
「なかなかやるじゃない。なら、こんなのはどうかしらぁ?」
白い脚を晒け出し雪女が爪先で何やら呪紋めいたものを地面に書きつけると、雪混じりのつむじ風のようなものが現れる。
つむじ風はみるみるうちに大きくなり、二人を覆うほどの吹雪となった。
「くっ……」
「ふふ、これでもまだ動けるかしらぁ?」
次々と軌道を変える雪がハロめがけて吹き付け、身体の自由を奪うように纏わりつく。
強風に髪を乱しながら、吹雪の勢いを更に強めるように雪女が天へ手をかざす。
「っ……まだ……負けません!」
鈍る身体に鞭打つように、かじかむ手に力を込める。
レイピアに宿った炎が次第に大きくなり、魂すら焼き尽くさんばかりの豪炎と化す。
「力の限り溶かさせて頂きます!」
この場を覆う小さな冬を空間ごと切り裂くように、ハロは炎の剣を振るった。
霧散した雪は水蒸気となり、辺りを熱気混じりの薄靄へと塗り替える。
「時が来れば、雪も霜も消えるのが自然の摂理です……!」
靄に隠れ雪女に近接したハロが、背後からその背を貫く。
急所へは命中しなかったもののその威力は非常に大きいものであったと、焼け焦げる匂いだけが告げていた。
大成功
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目面・真
そんなに冬の居場所が欲しいか?
それなら、オマエにふさわしい場所を提供してやろう。
冬さえも生ぬるく感じる、絶対零度の虚空をね。
間合いを取って遠距離戦をするか、接近して斬り合うか、悩むところだが。
相手の出方を窺おうか。アームドフォートの砲撃で攻撃を仕掛けてみる。
電脳ゴーグルで、用意しておいた宇宙空間の画像をフィールドに展開。
こんな使い方をするのは初めてだが、突然のコトに怯むのではないかな?
接近してくるようなら大太刀の斬撃で対処する。
絶対零度の寒さだけなら、宇宙服でも耐えられるだろう。
隙を伺って絶対零度の爆轟で凍らせてやる。
オマエの身勝手さも、宇宙空間の絶対零度を前にして通用するかな?
悔いるがイイ。
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「どう……して……どうしてアナタ達は、私の邪魔をするのよ……!」
金切り声を上げる雪女を、目面・真(機動兵器のマジメちゃん・f02854)は冷ややかな目で見下す。
「そんなに冬の居場所が欲しいか? それなら、オマエにふさわしい場所を提供してやろう」
アームドフォートの砲身にエネルギーを込め、敵との間合いを推し量る。
「嗚呼、邪魔よ……!」
苛立ちをぶつけるような叫びと共に、雪女の唇から全てを凍り付かせるような冷気が吐き出された。
「なるほど。それなら……!」
襲い来る冷気をバックステップでかわしながら、真は電脳ゴーグルの出力を切り替えた。
宇宙空間の映像が白く煙る靄のスクリーンに写し出され、プラネタリウムのように雪女の視界を包み込む。
突然現れた暗く果てしないイメージは、雪女に混乱を与えるには充分すぎるほどであった。
「オマエの身勝手さも、宇宙空間の絶対零度を前にして通用するかな?」
目の前の冷気を振り払い視界を取り戻した雪女の至近距離まで、真が迫る。
「悔いるがイイ」
ゼロ距離から雪女めがけて放たれる、絶対零度の爆轟。
地球上のそれとは性質の違う圧倒的な凍気に押され、雪女は防御姿勢をとるのがやっとであった。
成功
🔵🔵🔴
アレクシア・アークライト
春が憎い。
桜の花が憎い。
だから、下僕を使って桜の花を散らす。
……。
えっと、何の解決にもなっていないわよね?
本当にただの嫌がらせ、八つ当たりってこと?
――分かったわ。さては貴方、馬鹿ね。
これ以上行動がエスカレートする前に倒させて貰うわよ。
・吹雪が仲間や桜に及ぶときは、力場で防御。
・UCで超高温の火炎を纏って敵の攻撃を中和しつつ、念動力で加速して接近。
・打撃で防御を崩し、掌底で火炎を直接叩き込む。
もし彼女が本気を出していたら、桜並木どころか村すらも滅んでいたかもしれない。
こんな嫌がらせ程度で済んだのは、不幸中の幸いかもしれないわね。
散った桜、私の力(時間操作)で戻せるかもしれないけど、無粋よね。
清川・シャル
今を受け入れないと、不変な未来なんて無いですよ。
命芽吹く春は大事です。
シャルが大好きな桜も咲くから
年増オバサマには引っ込んでもらいましょうね?
【P】
遠距離から狙います
Amanecerで音波の衝撃波で聴覚破壊を狙います
あとは熱光線での目潰しと串刺しを一斉発射
立て続けにぐーちゃんΩでの攻撃です
(クイックドロウ、早業、傷口をえぐる、吹き飛ばし、範囲攻撃、マヒ攻撃、毒使い
敵攻撃対策
吐息は…届かなければ良くないです?
修羅櫻でのUC
(なぎ払い、恐怖を与える、2回攻撃、残像
属性攻撃で斬りながら風魔法での疾風斬撃
桜舞い散る中でお休みなさい
さて、春…来ましたね?
あったかい春、心もあったかです。
悪くないでしょう?
天杜・理生
アドリブ、共闘歓迎。
ふっ……はは。
見た目の割に随分と子供じみたことを言うじゃないか。
これを笑わずにどうしろと?
誘惑の言葉には挑発と誘惑で返してやろうか
そんなことを言うくせに、口だけかい?
この僕を誘うつもりならもっとその身体も使って誘ってみろよ。
雪の宿にはなるべく触れないよう気をつけるつもりだ。
隙を見て距離を詰め
雪熟女から生命力吸収することで消耗は抑えつつ
自らの血を遠呂智に与えブラッド・ガイスト
傷口を抉りながら大蛇の如き姿に変じた遠呂智に捕食させよう
随分と唆る姿になったじゃないか。
しかし、被害妄想も甚だしいとはこのことかい?
大体なァ、四季を楽しむことも知らねェガキが駄々こねてんじゃねェよ。
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春が憎い。桜の花が憎い。
だから、下僕を使って桜の花を散らす。
「ふっ……はは」
あまりに我侭な言い分に、天杜・理生(ダンピールのグールドライバー・f05895)は思わず笑い声を零した。
「……えっと、何の解決にもなっていないわよね?」
アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)もまた、呆れた様子で雪女を見ていた。
「……うるさいうるさいうるさいっ!! なんで! みんな私の邪魔をするのよ!」
自棄になったように声を荒げる雪女を冷ややかに光る鬼の瞳で見つめながら、清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)がグレネードランチャーの『ぐーちゃん』に擲弾を装填する。
「さて。ワガママな年増オバサマには引っ込んでもらいましょうね?」
シャルの言葉を皮切りに、最後の戦いが始まった。
「こうなったら、力づくでも冬の虜に……!」
「分かったわ。さては貴女、馬鹿ね」
咄嗟に展開した力場で冷気の塊を散らしながら、アレクシアは雪女の言葉を一蹴する。
「今を受け入れないと、不変な未来なんて無いですよ!」
スピーカーからの大音響に気持ちを乗せ、熱を帯びた音波と共にシャルが叫ぶ。
「……っ……強情、なのねぇ……」
怯みながらも悩ましく溜め息を漏らす雪女の死角から、理生が鞭を伸ばす。
「それしか芸がないのかい? この僕を誘うつもりならもっとその身体も使って誘ってみろよ」
挑発するような口ぶりで鞭を絡めると、蛇が喉を鳴らすようにうねり冷気が呑み込まれる。
「理生、もうちょっと抑えてて!」
隙をつくように、炎を纏ったアレクシアが雪女に急接近。火炎弾よろしく熱い拳を叩き込むと、流れるような所作で燃える掌底で急所を打ち付けた。
「あぁ、熱い……恨めしい……っ!」
「二人とも、ちょっと離れててください。危ないですよ」
声とともに響く爆音に雪女が顔を上げた頃には、既に数発の擲弾が迫っていた。
「きゃ……!」
咄嗟に冷気を展開し防御するも焼け石に水。爆炎と水蒸気に煙る視界に紛れ、シャルの刀が迫る。
「命芽吹く春は大事です。シャルが大好きな桜も咲くから」
風を纏わせ瞬速の斬撃を奔らせれば、乱れ髪に花嵐が舞い散る。
「随分と唆る姿になったじゃないか。遠呂智もそう思うだろ?」
薄笑みを浮かべ理生が自らの血を吸わせると、大蛇の如き姿と化した鞭が舌舐めずりをするように震えた。
「四季なんて……春、なんて……っ」
最後の言葉が、雪女の身ごと大蛇に呑み込まれた。
「しかし……最後まで被害妄想甚だしいヤツだったな」
春風が、猟兵たちの頬を撫でた。
「あったかい春、心もあったかです」
悪くないでしょう、と問いかけるようにシャルは桜を見上げる。
最期まで春を想うことができなかった雪女が、せめて安らかに眠れるようにと。
「ったく……四季を楽しむことも知らねェガキが駄々こねてんじゃねェよってな」
「まぁでもこんな嫌がらせ程度で済んだのは、不幸中の幸いかもしれないわね」
理生とアレクシアもまた、春風に吹かれゆるやかに舞い散る桜を見上げる。
東北の短い春を噛みしめるように、一行はうららかな陽に照らされる桜をしばし愉しんだのだった。
大成功
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