小さな光を守るため
『「疫病楽団」とは一体、何なのでございましょう』
グリモアベースの片隅で、女性型ウォーマシン「星天」が静かに首を傾げる。
予知に聞いた音の羅列に、彼女の持つデータベースでは既存の音楽との類似性が見つからなかったようで、どう処理すればいいか悩んでいるようだった。星天の再現した音を聞かされた猟兵たちは、一様に眉をひそめて耳を塞いだ。
『……どうやら、評判はよろしくないようでございますね』
星天は、存在しない喉を咳払いで整えるような仕草を取ると、改めて予知の内容を語り始める。
『今回受信しましたのは、ダークセイヴァー世界のものと思われる予知でございます。この世界に存在するいくつもの集落を、皆様猟兵の方々の手によって吸血鬼から解放してきたのでございますが……解放されたのち、再び脅威に晒されようとする村がございます』
倒しても倒しても、オブリビオンは過去から無限に湧き出してくる。例え一度は平和が訪れようとも、それが恒久のものだという保証は、どうやら全くないらしい。
『吸血鬼に隷属し、搾取されていたのも今は過去。村に住む人々は、ようやく訪れた平和を強く噛みしめているのです。……悲しみを知る彼らに、もう悲劇は必要ないでしょう。皆様には、村の人々に気付かれる事なく、近く襲い来る「疫病楽団」に対抗して頂きたいのです』
不治の疫病を撒き散らすという、オブリビオンの群れ。そのターゲットにされたのは、ようやく小さな光を得た人々だった。
『日常を取り戻しつつある村人をそれとなく手伝いつつ、防備を固めるなり、村から離れるよう誘導するなり、もしくは別の手段を用いて頂いても構いません』
大事なのは、何かが起こっている事を村人に知られない事だ。
彼らにかつての恐怖を思い出させる訳にはいかない。今一度、心が暗闇に囚われてしまえば、今度解放されたとしても、何処かでいずれ奪われるのだろうという呪縛から逃れる事が出来なくなってしまう。
『……そうなってしまえば恐らく、彼らは耐えられません。脆くも繋ぎ止められようとしていた心は、二度と元には戻らないでしょう』
彼らを守ってあげて下さい。星天はそう言うと、猟兵たちに深く頭を下げた。
灰々
三本目のダークセイヴァー世界となりました、灰々(はいばい)と申します。
それでは、ご参加お待ちしております。
第1章 日常
『すくわれたものたち』
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POW : 収穫や畑の手入れなど男衆の仕事を手伝う
SPD : 糸紡ぎや洗濯など女衆の仕事を手伝う
WIZ : 己の持ちうる知識を子供たちへ教える
👑5
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ジャック・オズガルド
POW。収穫や畑仕事を手伝う過程で要所要所にナイトビジョン付きの監視カメラ、敵味方を識別するスナイプタレットを配置する。カメラから得られた情報を共有することで味方との連携もしやすくなるだろう。なお、隠密作戦とのことなのでタレットにはサプレッサーを装着する。夜戦に備えてこちらもナイトビジョンを装備、ロングレンジでの戦闘を想定して高倍率スコープ、サプレッサー装備のライフルを用意する。カメラで敵性存在が確認され次第武装し、高所から迎え撃つ。
シャルロット・クリスティア
POW
それでは、畑仕事や荷運び等の手伝いと行きましょうか。
あぁ、女子の身だからって気にしなくて大丈夫です。
昔、故郷の農村ではよく手伝わされてましたので。体力は自信ありますよ。
勿論、外回りの仕事を選んだのには理由があります。
手伝いの傍らあちこち歩き回って、村の地形、立地を頭に叩き込んでいきます。
外から敵が来るのであればどこからか、隠れる場所は何処があるか、罠を張るなら何処が良いか、内に潜んでいる場合は何処が怪しいか……。
【地形の利用】【罠使い】等の知識を総動員して、照らし合わせていくとしましょう。
……人々が力を尽くして、掴み取った平穏です。
これ以上、理不尽なことで奪わせるわけにはいきません……!
うら寂れた寒村、そう表現するのが最もしっくりくる。そんな村だった。
並ぶのはボロ家ばかりで、空の暗さも相まって暗澹たる雰囲気が漂う。ほんの少し前まで吸血鬼に支配されていたという絶望が、そこかしこにこびり付いていた。
しかし住まう人々の表情には、もはや暗さはない。心を覆う闇が晴れ、目の奥には小さな光がしっかりと息づいている。
「済まないが、寝床を貸して貰えないだろうか」
ジャック・オズガルド含む猟兵たちは、たまたま訪れた旅人を装って村へと入る。
村人は、猟兵たちを見るなり喜色を顔に浮かばせた。どうやら、村を開放してくれた英雄たちの面影を何処かに見たようだ。
彼らは歓迎ムードで、温かく猟兵たちを迎え入れてくれた。
「ええ、ええ、構いませんよ。何もない村ですが、どうぞ滞在していって下さい」
「ありがとうございます、助かります!」
シャルロット・クリスティアは笑みを浮かべて、快活に大きく頭を下げた。
猟兵たちは借り受けた納屋に荷物を置くと、早速と行動を開始した。
ジャックとシャルロットは畑へ向かう。見たところ、村は丁度収穫の時期を迎えているらしい。麦のようなこがねの穂が村を囲むように頭を垂れている。
「襲撃の方角は……おおよそあちらの方か」
「起伏はあまりないようですが、丘の稜線が気になりますね」
「そうだな、出来る限り高所に陣取りたいが」
向かう傍ら二人は、何気なさを装いつつ周辺の地形を把握して回る。敵の進軍経路、遮蔽物。少しでも迎撃に向いた地形を選別できれば、それだけ被害を減らす事が出来る。
しかし、ただ見ているだけでは村人に怪しまれかねない。
「よろしければお手伝いしまーす!」
シャルロットが元気にそう声を掛ければ、畑仕事に勤しんでいた村人たちが稲穂の中から顔を出す。
「いやいや、旅人さんにそんな頼むのは申し訳ないよ」
「気にしないでくれ。暇を持て余していてな、体を動かしたい気分なんだ」
「そうですよ、泊めて頂くんですからこれくらいはしないと!」
そんな二人の言葉に負けて、村人は遠慮がちながらいくつかの力仕事をこちらに回してくれた。
「昔、故郷の農村でよく手伝わされてましたので、体力には自信があるんですよ」
「あれぇ、小さくても旅人さんだねぇ」
勇んでいくつもの木箱を積み上げて持つシャルロットに、稲を刈り込んでいた老婆は、驚きと共に納得の声を上げた。
二人の猟兵は農作業を手伝いつつ、防衛体制を整えていく。
ジャックは荷運びで入り込んだ納屋の梁に飛び乗ると、屋根板の腐食に目を付ける。
「……見通せるな」
小さな穴を覗き込めば、遠く丘の上まで一直線に視線が通る。ジャックは持参した監視カメラを、そこに設置する事にした。
近く作付けする畑を耕し、使い古した木箱を片づけ、斧と鍬で切り株を掘り起こす。猟兵たちの力を以てすれば作業は滞りなく進み、瞬く間に本日分の作業が目処へと近づく。
効率よく作業を進めれば、信頼され始めたのか次第に村人たちの注意もこちらから逸れていった。
「あの辺り、藪の中に設置できそうです。あちらの建物は……空き家のようですね。二階の窓から狙撃しちゃいましょう」
シャルロットが立地を見て、ジャックがタレットやカメラを置いていく。現代的な機械は村の中で異質だったが、そもそも周囲が暗い事もあって、僅かな偽装で十分に人々から隠す事ができそうだった。
「……よし、設置完了だ」
サプレッサーと高倍率スコープを備えたスナイプタレットを手早く設置し、ジャックは音も無く空き家を出る。
「これだけ置けば、死角をつかれることもないだろう」
村のあちこちに仕掛けた監視カメラの映像をチェックしながら、ジャックは息をついた。
「平穏、そのものですね」
村を見渡し、シャルロットは呟いた。
「ああ。静かで、しかし生きる気力に満ちている」
「人々が力を尽くして、掴み取った平穏です。これ以上、理不尽なことで奪わせるわけにはいきません……!」
ジャックが頷く。
やがて響く奇妙な音色に抗うべく、二人は強く拳を握った。
成功
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八重森・晃
行動:WIZ
子供たちに知識を教えてあげようかなと思うよ、びっちり書き込まれた手帳から技能≪世界知識≫を使用、子供たち一人ひとりの様子を見ながらいろんなお話をしよう、虫が好きな男の子にはいろんな虫の話を、花が好きな女の子には花言葉や、近くに咲いている花の見分け方を、料理が知りたい子には有るもので作れるレシピを、英雄譚が好きな子にはこれまで行ってきた冒険から、彼らが好きそうな話をしよう。幸いにしてハッピーエンドの冒険譚だってそこそこ持ち合わせがあるんだ。まあ登場する魔法使いが私だなんて言ったら、多分嘘だって笑われてしまうのだろうけど。まあ実際彼らとそこまで離れてないかもしれないしなあ、私。
メガ・ホーン
疫病楽団……ねぇ。なんともけったいな名前だぜ。しかも、星天ちゃんが再現してくれたその音楽はあんまり心地よくねぇしよ……あんなかわい子ちゃんからあんな音が出るのもびっくりしたけどな。
ともあれ、まずは村の人たちを元気づけないとな。俺にできること……これしかねぇな。疫病楽団とは違う、俺なりの音楽を子供達に教えよう。何か一つでも娯楽があれば、暗い気持ちも晴れるもんさ。
そう難しいことはしないさ、何か音が出るものさえあればいい。口笛でも鼻歌でもいい。「パフォーマンス」「楽器演奏」を俺自身で実演しながら、音を楽しむことを子供たちに、それを見守る大人たちに伝えていこう。
小さな小さな音楽会の始まりだ。
満月・双葉
医術の知識を、子供たちに教えておきましょう。
自らの足で歩けば怪我も病気もするもの。
その時正しい対処を知っておけば冷静に対応することができましょうし、知識不足を悪に付け込まれることも無いでしょう。
薬草のタネなど育てられますか。
まぁ、うちで余っていますからどうぞ。
そうだ、器用そうな子供がいたら手品など教えてみましょう。
笑顔につながる驚きを。
疫病楽団・・・不穏ですね。
まぁ、オブリビオンですから当然ですか。
そして先の猟兵達が村の防備を整える傍ら、三人の猟兵は村の子供達を広場に集めていた。
集めるに当たって中核を為したのは、メガ・ホーンの奏でる音楽だ。娯楽に乏しい世界において、意味のある音の連なりは村人達の聴覚を捕らえ、言い知れぬポジティブな感情を湧き上がらせる。
「さあ、音を楽しもうぜ!」
奏でるは鼓舞するような軽快なナンバー。陰鬱な雰囲気を打ち消す、希望に溢れた一曲だ。演奏しながら村の中を行けば、子供のみならず列を作って、人々は村はずれの広場に入っていった。
そして曲を背景に、八重森・晃は広場の木陰にゆっくりと腰を下ろす。懐から取り出したのは、びっしりと書き込まれた一冊の手帳だ。開けば様々な知識が溢れ、晃は静かに語り始める。
「これは、本当にあったお話なんだけどね」
まず手始めに、ハッピーエンドの冒険譚。魔法使いが沢山の仲間達と共に、色々な世界を旅する物語だ。まず興味を持って貰うには、分かりやすいものが一番だろう。声に惹かれ、子供達がふらふらと彼女の周りに集まり出した。
しかし音楽や物語に耳を傾ける子供達の中に、転んで怪我をした女の子がいた。音に集中するあまり、足下に注意が行っていなかったようだ。
膝を擦りむき、女の子は一気に目を潤ませる。
「おや、これはいけませんね」
それに気付いた満月・双葉は、優しく女の子に手当を施した。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「……あ、ありがとう」
「いえいえ、当然の事をしたまでです」
頭を下げる女の子に手を振って、双葉は思い立った。
「子供達だけだったとしても、冷静に動けて損はありませんね」
持ちうる医術の知識を彼らに教えるのも、いいかもしれない。
●
「口笛でも鼻歌でも、音が出るなら全部楽器だ。音楽ってのは、場所を選びやしないもんさ」
メガは、グリモアベースで聞かされた、疫病楽団の音を思い出していた。あんな、人を不安にさせるようなものは音楽とは言わない。音楽というのは、人々を元気づけるためにあるものだ。
集まった子供達に向け、メガは自身の体を用いて簡単な音楽を実演する。演奏に親しみのない彼らにもノれるような、分かりやすく、なおかつ楽しいものを。
それは子供達だけではなく、見守る大人達にも向けて。ひいては村全体に。
「さあ、音を出してみな。それが音楽だ」
小さな小さな音楽会が始まった。
子供達は拙いながらも、メガの演奏に合わせて口笛を吹き、手を叩く。大人達もそれを見ているうちに知らず知らず、全身でリズムを取っていた。
「いいねぇ、最高だぜ!」
メガの音楽が、広場に明るく響き渡る。それは聞くものの耳から全身に染みこみ、暗い気持ちを晴らしていった。
「めでたし、めでたし」
一つの物語を語り終え、晃は子供達の反応を伺った。
キラキラと輝くいくつもの瞳が、こちらを見つめている。どうやらお気に召したらしい。晃は小さく胸を撫で下ろすと、次に何を語るべきかを手帳に目を落として考える。
「ねえねえ、それ何が書いてあるの?」
「うん、これにはね……」
それから晃は、物語のみならず、男の子には虫の話を、女の子には花の話を、料理が好きなら手軽なレシピを。身振り手振りも交えて話す。
稀少な虫の生態に、男の子は興奮の声を上げた。花々に込められた言葉の数々に、女の子はほうと溜息をついた。近場で採れる食材で、如何に美味しいものが作れるかという知識は、生活に直結する大事なものだ。
そうした話が一段落すると、子供達はまた冒険譚を聞きたがる。
「それじゃあ、これは魔法使いが、大きな建物の沢山ある世界に行ったときの話なんだけど……」
晃の語る臨場感たっぷりの物語に、子供達は聞き入った。
少し年上の子供達は、双葉の前に集まった。
ある程度の科学に基づく医術の知識。それは、この村にいてはそう簡単に手に入らないものだ。実用性に富んだ話を勤勉に、彼らは望んでいた。
「正しい対処を知っておけば、冷静に対応する事が出来るはずです」
双葉は、この村で生活する限り起こりうる様々な怪我や疾病に対しての知識を、子供達に教えていった。実践も交えての知識の数々に、手探りながらも彼らは懸命にそれを頭に叩き込んでいく。
「皆さん、筋がいいですね」
伊達に暗い世界で生き抜いてきたわけではない。子供とはいえ、彼らの器用さには目を見張るものがあった。
そこで双葉は、医術を教える傍ら、少し彼らを驚かせてみる事にした。
「ここにコインがあるのですが……おや、どこに行ったのでしょう?」
簡単な手品を双葉は披露する。
それはまさしく魔法だった。ただ笑顔を引き出す魔法。驚きはすぐに、歓声へと変わった。
「では、やり方を教えます。おうちの方などを、楽しく驚かせてやりましょう」
●
広場に溢れるのは音楽と知識。
娯楽も少ないこの村で、これに惹かれないものはいなかった。多くの人々がここに集まり、仕事をほっぽり出す村人までいるようだ。
人々の顔に満ちるのは笑顔。絶望を払った先にある、無垢な姿。これを曇らせる訳にはいかないのだと、猟兵達は想いを新たにする。
村の防備は整い、村人を集める事も出来た。彼らを守るためには、もう一手が必要だろう。
成功
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ノイシュ・ユコスティア
【SPD】で行動する。
村に入る前に、周辺を探索。
近くに景色がいい場所がないか探す。
見つけたら、村からの方角を覚えておく。
なるべく早い時間に村に到着。
旅団から持ってきた旬の食材、狩りで得た肉を持っていく。
作業している女性に声をかける。
人見知りだけどがんばるよ。
「僕は旅の者だよ。
この村で一休みさせてほしいんだ。」
洗濯などを手伝う。
男だけど、こういう仕事のほうが慣れているんだ。
キッチンを借りて旬の食材で料理。
世間話をする。
「近くに景色がいい所を見つけたんだ。
家族や村のみんなを誘ってキャンプなんてどうかな?」
女性が話に乗ってくれるように、一緒にランチを作る。
その場所の途中まで誘導し、走って村に戻る。
ノイシュ・ユコスティアは、一足早く村を訪れていた。
その目的は周辺探索。景色のいい場所を探して、ノイシュは襲撃地点から村を挟んで反対側に位置する丘を登る。
「うん、あの辺りがいいかな」
丘の上から眺めれば、眼下に川が流れていた。
ノイシュは村へと戻り、行動を開始する。周囲に目をやって、働いている女性を見つけると、
「あの、こんにちは」
極力驚かせる事のないよう声を掛けた。
「あら、どちら様でしょう?」
ノイシュを見て、きょとんと目をぱちくりさせる女性。
「僕は旅の者だよ。この村で一休みさせてほしいんだ」
元来の人見知りが顔をもたげるが、何とか飲み込み、ノイシュは穏やかな微笑みと共にそう言った。
ノイシュは、女性が家族と住む家に間借りする事になった。そのお礼として、彼は家事仕事を手伝う。
「男だけど、こういう仕事の方が慣れてるんだ」
洗濯に掃除、庭の手入れ。ノイシュは器用にそれらをこなす。
一通り終われば次は料理だ。
「キッチン、借りてもいいかな」
「ええ、構いませんよ。えっと、汚いところですが」
ノイシュの働きに女性は感謝し、快く頷いてくれた。
女性の手伝いもあって、下ごしらえは順調に進む。それと同時に、ノイシュは頑張って世間話にも花を咲かせた。村の生活や、趣味や興味のある事についてなど。
暗い世界の中であっても、女性は生きる気力を持っていた。明日の希望を口にして、未来の自分に思いを馳せる。
「……よし、こんなものかな」
ノイシュは改めて、本題を口にする。
「近くに景色がいい所を見つけたんだ。家族や村の皆を誘って、キャンプなんてどうかな?」
村を離れさせる。それが、ノイシュの背負う任務だ。
豪華な料理を前に目を輝かせていた女性は、ノイシュの言葉に一も二もなく頷いた。
数人と共に、ノイシュは丘を行く。そして川に向かう途中。
「あ、ごめん。ちょっと忘れ物しちゃったみたい。皆は先に行って準備しておいて」
ノイシュは踵を返して、駆け足に村へと戻る。
これで、彼らを戦いに巻き込んでしまう事はないだろう。丘の向こうであれば村の様子は見えず、音も臭いも、届かないはずだ。
ノイシュは、女性の目に秘められた力強い光を思い出す。
「……守らなくちゃね」
想いを新たに、地面を蹴った。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼から人々を救っても、日常は続いて行く。
ある意味、吸血鬼を倒すより日常を護り抜く方が難しい…かも。
…それに気付かれずに避難させるなんて器用な真似、
私にできるとは思わないし…今回は少しばかり強引な方法でいこう。
…事前に村の代表者に礼儀作法に則り挨拶に向かい、
私の魔法で畑の作物を育む“光の雨”を降らす等と伝えておき、
自身の生命力を吸収して魔力を溜め【限定解放・血の教義】を発動
村に眠りをもたらす呪詛を宿した“闇”属性の“霧”を放つ
…これで少なくとも、全て終わるまで起きる事は無い。
後は掌に刻んだ【常夜の鍵】で村人を城内の寝所に転送し、
事が終わった後、魔法に失敗したと謝罪すれば良い…かな?
「……村長さん、こんにちは」
リーヴァルディ・カーライルは、外套を脱いで深く頭を下げる。
堂に入ったその態度は、村を纏める壮年の男性に感銘を受けさせたらしい。かつて旅人に受けた恩義を思い出したのか、彼はすぐに破顔し猟兵達を受け入れてくれた。
リーヴァルディは話をする。内容は、村の内情について。
「……作物の栄養が、足りてないみたいだけど」
「元々、この辺りの土地は痩せていてね」
村長は疲れたように笑みを浮かべた。
「……私は、魔法使い。色々な事が出来る」
リーヴァルディは提案した。自分の魔法で”光の雨”を降らし、作物を育む事が出来るが、と。
「それは、そんな事が可能なら願ってもないですが」
「可能。失敗しても、損はない」
僅かな訝しみ。それも当然の反応だろう。
村長はしばらくの間逡巡し、
「それでは、お願いできますか」
「……ん。分かった」
結局、旅人への信頼感が勝ったらしく、リーヴァルディに懇願するような目を向けた。
リーヴァルディは、儀式の場所として村の外れにある広場を指定した。そこは他の猟兵達が、子供やその親を集めている場所だ。
「……一度、農作業を止めさせて」
「ええ、分かりました」
村長は、広場に流れる音楽や、そこに広がる子供達の笑顔を眩しそうに眺めると、男衆に指示を飛ばす。
やがて畑仕事を中断した一団が、魔法を見るべく広場に集まった。彼らは今から何が起こるのか、興味津々にリーヴァルディ達猟兵を見つめる。
「……限定開放」
そしてリーヴァルディは、頃合いを見て力を解き放った。
頃合いとは、村に人がいなくなった事。住人全員が、村から離れた事を意味する合図が、他の猟兵から届いた。
村人達を自然に避難させるような器用な真似は、リーヴァルディには出来そうもない。だから、多少強引な手を使っても、例え嘘をつく事になっても、リーヴァルディは彼らの日常を守る事に決めた。――命に代えられるものなど、何処にもないのだから。
「おお、霧が」
やがて広場や辺り一帯を、霧が包み込む。それは闇属性であり、呪詛を含んだものだったが、村人がそれに気付く事はない。
「……これで少なくとも、全て終わるまで起きる事は無い」
それを認識する前に、彼らの意識は闇へと落ちていった。
「……開け、常世の門」
リーヴァルディは、掌に刻んだ【常夜の鍵】を発動する。それは血の魔法陣。紅く輝くそれで村人に触れると、吸い込まれるように彼らの体は別の空間へと転移していった。
リーヴァルディは息をつき、広場を見る。先ほどまであった喧噪は、もうどこにも見当たらなかった。
成功
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第2章 集団戦
『女騎士の躯』
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POW : おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 死して尚衰えぬ技の冴え
【錆びて穢れた騎士剣による渾身の斬撃】が命中した対象を切断する。
WIZ : 不撓不屈の闘志の顕現
自身に【死して尚潰えぬ闘志が可視化したオーラ】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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その音は、どこからともなく聞こえてきた。
狂ったような音の饗宴。でたらめに跳ねる無数の音が、まるで洪水のように溢れ出す。
いつから鳴っていたのか、どこから鳴っているのか。猟兵達が周囲を見渡すも、音の正体を見つける事は出来なかった。
――だが代わりに、ボコボコと地面を割って現れる死者の群れを見た。
死者が吼える。
命をくれと。
ジャック・オズガルド
来やがったか...。あらかじめ準備していた兵装に着替えて、シャルロットと協力して取り付けたタレットを起動する。タレットは敵味方識別機能があるが、村人が紛れ込む事はないだろうし仲間には既にタレットのことは伝えてある。誤射の心配はない。空き家の二階の窓に陣取り、サプレッサー機関銃を展開、迫って来る奴等を片端から薙ぎ払う。風速も安定しているし、機関銃の予備バレル、弾薬も大量に用意できた。...絶好のコンディションだ。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。まさか地下からやって来るなんて…。
いずれにせよ、全て終わったら地中を調べないと駄目そう…。
…どうせだから、調査のついでに嘘を現実に変えておこうかな…?
…まぁ、今は彼女達の相手をする方が先決ね。
貴女達がどんな存在で、どんな過去があったとしても…。
この世界に灯った小さな光を消すというなら容赦はしない。
事前に防具を改造し存在感を消す“忍び足の呪詛”を付与し、
“血の翼”を展開し空中戦を行いながら敵陣に突撃する
第六感が感じた敵の気合いや殺気を、魔力を溜めた両目に映し、
動きを先読みする残像を暗視して見切り、攻撃を回避しつつUCを発動
傷口を抉り生命力を吸収する魔刃の連撃(2回攻撃)で敵陣をなぎ払う
もぞもぞと蠢く大地から、泥にまみれた腕が突き出す。青白く、血の気のない手が地面を掴み、持ち上げられた体が勢いよく飛び出した。
錆びた穢れた剣を手に提げて、かつての誇り高き騎士が叫びを上げる。
「来やがったか……」
「……ん。まさか地下からやってくるなんて」
ジャック・オズガルドは素早く、村中に設置した監視カメラの映像を確認する。暗視機能に映し出された村内に、死者達の姿は見られなかった。
「今のところ正面からのみだ」
それを聞いて、リーヴァルディ・カーライルは血の翼を展開した。
血色に輝く双翼が広がるが、死者達がそれに気付いた素振りはない。防具に施した忍び足の呪詛、これが敵の目を欺いていた。
「まだ距離があるな。俺が遠距離から奴らの気を引く、頃合いを見て仕掛けてやってくれ」
「……了解。任せて」
ジャックは空き家の二階に陣取って、設置したスナイプタレットを起動すると共に自身はサプレッサー機関銃を展開、スコープを覗き込む。
ふらふらと、頼りない足取りで死者がこちらに向かってくる。しかしその数は、見る間に増えているようだった。次から次へと地面から這い出し、ジャックの視界を埋めていく。
「早めにやった方が良さそうだな」
最終的にどれだけの数になるのか。悪い予想をしてみれば、後手に回ることは避けた方が良さそうだ。
ジャックは息を止め、機関銃の引き金を引いた。
気の抜けるような軽い空気の擦過音。それが響き渡る前に、先頭を歩く死者の頭が綺麗に弾け飛んでいた。
それが合図。死者の群れが一斉に顔を上げる。
それまでの糸が切れたような動きが一変し、まるで獰猛な獣のように、可視化されたオーラを纏って身も低く駆け出した。
――耳を裂くような叫びが、狂った音楽と混ざって響く。
「さあ、こっちだ」
タレットが火を噴き、次々に死者を撃つ。同じくジャックは機関銃から、雨のような弾丸を眼下に向けて叩き込んでいった。
「風速は安定、弾薬は十分。……絶好のコンディションだ」
迫り来る死者の群れに、ジャックは一定のラインを越えさせない。やがて後続の死者が先んじた個体に追いつき出すと、村の手前で団子状態に移行し始める。
「こんなもんでどうだ、リーヴァルディ」
「……ん、いい感じ」
一体何処にそんなスペースがあったのか。あれだけの量が地面に埋まっていたなどと、とても思えなかった。
「……全て終わったら、地中を調べないと駄目そう」
互いに食い合うような勢いで集まりだした死者を前にそんなことを考えていると、リーヴァルディの背後から銃声が上がり、死者が次々と赤く弾け飛んでいく。
「……まぁ、今は彼女達の相手をする方が先決ね」
リーヴァルディは血の翼をはためかせると、一息に上空へと舞い上がる。
狙うは敵の側面。急降下から、大鎌を構えて敵陣に突撃していった。
「……その命脈を絶つ」
素早く駆ける群れの中に赤い翼膜が翻り、同時に手にした鎌が双剣へと形を変える。
リーヴァルディは流れるように剣を振るった。その剣身から放たれる無数の魔刃が死者を斬り裂き、噴き出した濁り腐った血が周囲を染めていく。
そして死者達の爛れた眼球がリーヴァルディを見る。その奥で、死して消えぬ闘志が渦巻いた。
無数の死者達が猛り狂って斬撃を繰り出す。殺気の籠もったその攻撃を、リーヴァルディは両目に溜めた魔力で先読みするように見切ってひらりと躱し、そして躱し様、傷口を抉るように魔刃の連撃を叩き込む。
「……この世界に灯った小さな光を、消すというなら容赦はしない」
薙ぎ払うように大きく振るわれた双剣が、次々に死者を切り捨てていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メガ・ホーン
村人達は安全な所に避難してもらったみたいだな。これで安心して戦える……楽しい音楽ブリキロボが破壊者になるのは見せたくないからな。
戦闘回路ロック解除、行くぜ!
今鳴り響いてるおかしな音は耳障りだし、仲間に悪い影響が出てもいけねぇ。【サウンド・オブ・パワー】で中和を試みながら戦うぜ。
敵群に対しては胸の「大砲」で攻撃するぜ。接近戦を挑む仲間に注意しないといけないけど、「衝撃波」「吹き飛ばし」「2回攻撃」も加味してぶっ飛ばしていくぜ。仲間が肉薄したら「衝撃波」「吹き飛ばし」は使わず「スナイパー」に切り替えて狙い撃ちだ。
俺自身の防御は「オーラ防御」で耐え凌ごう。
さあ、けったいな音楽の主、早く出てこい!
シャルロット・クリスティア
どこに潜んでいたかと思えば……!
幸い、皆さんのおかげで人的被害は最小限に抑えられそうですが……だからと言って好きにさせるわけにはいきません。
モグラたたき、始めさせていただきますよ……!
事前調査で見つけた狙撃ポイントからの【スナイプ】で皆さんの【援護射撃】に徹します。
使用するのは迅雷弾、雷【属性】の高速弾です。飛びますよ。
【視力】を凝らして、他の猟兵のマークが無い敵、攻撃態勢に入っている敵を優先して狙いましょう。
一発必中で行きます。流れ弾で村に被害が出るなど笑えませんからね。
「どこに潜んでいたかと思えば……!」
事前調査で見つけておいた狙撃ポイントへと走りながら、シャルロット・クリスティアは次々に這い出す死者を睨み付ける。
いつから地面の下にいたのか、それとも、突然そこに現れたのか。
「村人達の避難が間に合って良かったぜ……楽しい音楽ブリキロボが破壊者になるのは、見せたくないからな」
メガ・ホーンは、シャルロットとは別の見晴らしがいいポイントへと向かう。
その間にもメガの意識を引きつけるのは、この耳障りな、狂気を感じる音楽だ。いや、それはもう音楽とは言えない。雑音というのも生ぬるい。
毒だ。
耳から空気を通して感染する猛毒を想起させた。
「悪い影響が出てもいけねぇな」
機械である自分はともかく、生身の仲間にこの音は本当に毒となり得るかもしれない。メガは少しでも音を掻き消すべく、鼓舞するような楽曲を全身の音響装置から再生した。
「それじゃあ戦闘回路ロック解除、行くぜ!」
メガは胸部の大砲を、村入口に集まる敵の群れへと向ける。接近戦を仕掛ける味方の動きを見て、少し離れた地点の敵へ、照準を合わせると共に砲弾を撃ち出した。
熱い心が弾となり、死者の群れへと着弾する。炸裂し撒き散らされた衝撃波が大きく敵を吹き飛ばし、群れの中に一時空白を作り出す。
「どんどん行くぜ!」
メガは止まる事なく、次々と砲弾を撃ち出した。
爆発音が鳴り響く。それに併せて死者の体が弾けるように、大きく宙を舞った。
味方が近くに来たときは瞬時にモードを切り替えて、攻撃範囲を絞った狙撃。砲弾とはいえ正確に、味方の死角にいるような敵を悉く打ち据えていった。
「どうやら、こっちには来られないようだな」
遠距離からの複数の弾幕が功を奏したのだろう。敵の動きが如何に素早くとも、接近される前に撃ち落とせば関係ない。
「さあ、けったいな音楽の主、早く出てこい!」
不快な音を立てる余裕もなくなるようにと、メガは更に攻撃を激しくしていった。
「……うん、これならより集中できそう」
離れても届く、心の奮える音楽を耳に。シャルロットはルーンの刻まれたライフルを構えた。
村の入り口に集結しつつある死者達は、他の猟兵の攻撃によってそこに釘付けにされている。しかし数が多い。近く飽和し、溢れ出した敵が村に殺到するだろう。
「モグラたたき、始めさせていただきますよ……!」
村人は退避したといっても、それは避けなければならない。
シャルロットは雷属性を付与した高速弾を装填し、前衛の味方の手が届かない個体を狙って引き金を引いた。
電磁加速された超高速の弾丸が、甲高い発砲音を置き去りに死者の頭部に突き刺さる。
一発必中。流れ弾が火事を引き起こすなどもってのほかだ。シャルロットの狙撃が、次々と外す事なく死者を貫いていった。
腐った脳髄を撒き散らし、幾体もの死者が倒れていく中、敵はキョロキョロと、咆哮を放ちながら攻撃の出所を探し始める。剣を振り上げ、威嚇するように辺りを睥睨し、しかし何も見つけられず困惑したように更に吼えた。
そんな無防備な頭部を、迅雷弾が容易く撃ち抜く。
「そちらの刃は、届きませんよ……!」
どうやら敵の目は、シャルロットほどには良くないらしい。いくら獣の如き身体能力を持っていても、場所が割れなければたかだか百メートル先でさえ安全圏。
見えない攻撃主を探すのを諦め、前衛の味方を狙おうとした死者の手首を吹き飛ばし、衝撃に動きの止まった頭を撃つ。
流れるような狙撃の連続に、敵の動きは更に制限されていった。
成功
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ノイシュ・ユコスティア
メリナ・ローズベル(f13268)と二人で戦う。
武器はロングボウ。
戦闘開始と共に、背中に大きな鷹の翼が生え真の姿になる。
「死者達を村に行かせない!
ここで食い止めよう!」
先制攻撃を狙う。
メリナと協力して、敵を挟み撃ちする。
敵と距離を取りつつ、ユーベルコードを使用して攻撃する。
敵が攻撃してきたら、翼を利用して上空によける。
「うん…、あまり見ていたくない敵だね…。」
メリナが狙われたら、敵との間に割って入り敵の注意をこちらに向ける。
逃走する敵は最優先で攻撃。
「この死者達の他に、楽団を指揮している者がいるはずなんだ。
一体どこにいるんだ?」
技能:援護射撃、スナイパー、2回攻撃、ダッシュ
メリナ・ローズベル
【ノイシュ・ユコスティア(f12684)】と参加
彼のことは呼び捨て
「何?これ
ものすごく不快な音ね」
「臭いと思ったら、アンデッドなの?
気持ち悪いわ」
でも、ノイシュがいてくれるなら…きっと大丈夫
ノイシュと敵を挟み撃ちにするように立つ
アンデッドって、炎に弱いイメージがあるわ
ノイシュが攻撃した敵か、自分の一番近くにいる敵を【ウィザードミサイル】で攻撃
「燃えて!私の視界から消えて!」
一体でも、逃がさないように見張るわ
敵の攻撃に対しては、【オーラ防御】でバラの花びらを舞わせて身を守る
敵とは一定の距離を保つようにする
性格はツンデレ
すべて倒したら「怖かったー」と涙目になる
アドリブ歓迎
死者の生命力、というと聞こえは妙だが、事実その血の気がない体は異常な耐久力を有していた。
頭を吹き飛ばされ、体を半ば両断されながらも完全に動きを止める個体は少なく、這いずるような格好で確実に村への距離を詰めつつあった。
「死者達を村へは行かせない! ここで食い止めよう!」
ロングボウを手に、ノイシュ・ユコスティアは声を上げる。そして背に生やした鷹の翼を羽ばたかせて、
「行こう、メリナ!」
「ええ、ノイシュ」
メリナ・ローズベルと共に大きく飛び出した。
「臭いと思ったら、アンデッドなの? 気持ち悪いわ」
腐り濁った体液を撒き散らし、吼えながら溢れる死者達を目の前にメリナは眉をひそめる。それでも――空を行くノイシュの背中を追えば、きっと大丈夫だと思えるのだから不思議なものだ。
ノイシュとメリナは敵の群れを挟み込むよう位置を取り、武器を構えた。
「うん……あまり見ていたくない敵だね……」
ノイシュは矢を番え、敵が他の猟兵の攻撃に気を取られている内に先制攻撃を行う。
構える矢は複数。風の精霊の加護を受け、渦巻く大気の中に矢を放つ。
「矢よ、雨となり敵を貫け!」
放たれた無数の矢は複雑に軌道を変え、過たず敵の頭上へと降り注いだ。
「燃えて! 私の視界から消えて!」
追ってメリナが、ウィザードミサイルを発動させた。魔力で象られた大量の矢が、炎を上げて殺到する。
ノイシュの射った矢が突き立ち、しかし倒れない敵を、横合いから殴りつけるように魔力が炸裂。撒き散らされた高温が死者を焼く。
「炎に弱いイメージがあるけど……」
メリナの予想通りか、炎を受けた敵は苦悶の叫びを上げて更なる延焼を避けるように大きく飛び退った。
「畳み掛けよう!」
ノイシュが一気呵成に矢を放つ。矢は次々と敵を貫き、銃撃によって大きく損傷を受けていた敵の群れに追撃を仕掛けていく。
「……全く、燃やしても嫌な臭いね」
しかし、焦げた臭いはまだマシだ。メリナは続けて魔法を紡ぎ、追加の矢を作り出す。
暗闇を照らしながら浮遊する矢の束に命令し、ノイシュの攻撃した敵を重点的に燃やし、とどめを刺す。
死者達が吼えた。もはや遠くの敵への攻撃は諦めたらしく、近くに陣取る二人へとぐるりと眼球を回す。
剣を手に、獣のような速度で死者が迫る。
「っ、まだこんなに動けるんだ!」
片腕が取れ、内臓をこぼしながらもその手にした騎士剣は鋭くノイシュを狙った。
咄嗟に翼を動かし、上空へと逃れたノイシュを追って別の個体が大きく跳ねる。
「ノイシュ!」
それが空中で剣を振る前に、メリナの矢がそれを撃ち落とした。
「メリナ、後ろ!」
だが狙われているのはノイシュだけではない。意識が逸れたメリナに向けて、彼女の背後から無数の死者が迫り来る。
ノイシュは矢を射かけながら、速度を上げてメリナと敵の間に降り立った。
「メリナ、離れて!」
そのままぶつかるように死者の列に飛び込みながら、ノイシュが叫んだ。
「この、ノイシュから離れなさい!」
メリナは一度距離を取り、反転して一気に魔力を解放した。
次々に炎の矢が群れに飛び込む。それは器用にノイシュを避けて、死者へと突き刺さり燃やしていった。
――やがて、動く死者の数が減っていく。
逃げる個体はない。それだけの知性が残っていないのか、死に体のまま力なく剣を振り上げて、そして額に矢を受け沈んでいく。
「……ふう、なんとかなったみたいだね」
矢も残りが少ない。それでももう大丈夫だろうという所までこぎ着けて、ノイシュは汗を拭った。
「こ、怖かったー」
対してメリナは、張っていた緊張の糸が切れたのだろう、堪えていた感情が溢れ出すように涙が零れそうになっていた。
「あれ、どうしたのメリナ」
「う、ううん! 何でもないわ!」
メリナは慌てて、気付かれぬよう涙を拭い、何事もなかったかのように胸を張った。
「それにしても、この音楽を指揮する者がいるはずなんだけど、一体どこにいるんだ?」
「……それらしいものは、見当たらないようだけれど」
猟兵達は多くの死者を倒した。辺りは死屍累々、濁った血で大地は赤黒く染まっている。
しかし、狂ったような音は止まない。
むしろ先ほどよりも大きく、激しく。より狂気的に響き渡る。
「……そんな」
辺りを見渡していたノイシュの視線が、ある一点で止まった。その先には。
――無数の死者が、群れをなしてこちらへ向かってきていた。
「え、ええっ? まだあんなにいるの!」
メリナが涙目で叫ぶ。あれだけの数を倒したというのに、まだ終わりではないというのか。
「メリナ、一度引こう」
「わ、分かったわ!」
二人は踵を返し、他の猟兵達と合流するべく村へと戻っていった。
成功
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第3章 集団戦
『首無しの天馬』
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POW : 突進
【高速移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突進】で攻撃する。
SPD : 幽鬼の馬車
自身の身長の2倍の【馬車】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ : 飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
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音が変わった。鳴り響く曲調が変化し、より激しく甲高いものへと。
ただしそれは、狂った音がより狂った音になっただけだ。問題は、かなりを倒したと思っていた死者が、まだあれほど残っていたという事だろう。
とはいえ一度は倒した敵。もはや新鮮味もなく、淡々と仕留めていけばいい。
――そう、思った時だ。
音楽が変わるに合わせ、死者達の体が不自然に揺れた。
まるで人形を操る人形師が、突然狂気に染まったかのように。それまでは辛うじて人間の動きを保っていた死者達が、何もかもかなぐり捨ててぐにゃりと激しく蠢いた。
そして。
その姿が、突如大きく変化した。
嘶きが上がる。蹄が鳴る。
死者達の姿はもうどこにもなく、そこには今すぐにでも空を駆けんと翼を上下する、首のない天馬の群れがいた。
膨れ上がった気配が、圧力を伴って叩きつけられる。――先ほどの死者達とは比べものにならない大きな力を、猟兵達は感じ取っていた。
メガ・ホーン
【WIZ】
首無しの天馬……てめぇか、この狂った音の主はよ。さあ、このけったいなコンサートの幕を下ろしてやるぜ、俺達の魂のビートでな!
空を飛んでる敵に大砲をブチ込むのは初めてじゃねぇが、ちょっと工夫がいりそうだな。と、なると…だ。
まずは「逃げ場」を削っていくのがいいだろうから…天馬へ向けて「衝撃波」「吹き飛ばし」「マヒ攻撃」つきの砲撃を「2回攻撃」で撃ち込んでいくぜ。
注意するのは天馬自体よりも、あいつの周りの空間を「余波」で埋めていくようにすること。下手に飛べば爆発する空気の渦に巻き込まれる、という寸法だ。
これで逃げ場を少しでもつぶす。
そしてあいつの音は俺の演奏でかき消してやるぜ。
リーヴァルディ・カーライル
今度は防具を改造して“誘惑の呪詛”を付与
精霊に好かれる存在感を放ち、彼らを引き付ける
…光の精霊、生命の精。私の声に耳を傾けて…。
生命を冒す病魔に、光による裁きを…。
第六感が殺気を感じたら回避か、大鎌で受け流し防御するよう心掛け、
吸血鬼化してUCを二重発動(2回攻撃)
…悪いけど、この後の予定が詰まっている。
お呼びでない団体客とは、ここでお別れよ…。
光の力を使う反動で傷口を抉るような痛みに気合いで耐え、
空中戦を行う敵陣を暗視を頼りに見切り、
敵の生命力を吸収する“光の奔流”でなぎ払う
…その後、生命力を溜めた“光の雲”を形成し、
戦闘後に雨を降らせる準備をした後、
起きた村人達に礼儀作法に則り謝罪をしよう
「首なしの天馬……てめぇか、この狂った音の主はよ」
メガ・ホーンが正面を見据える。
異様な音の鳴り響く中を、天馬の群れが砂煙を上げてこちらへ向かっていた。
蹄の音が消える。強く羽ばたく翼の生み出した力が、重力を断ち切ったらしい。
「さあ、このけったいなコンサートの幕を下ろしてやるぜ、俺達の魂のビートでな!」
メガは続けて勇壮な応援曲を演奏する。人を傷つけるような音を、音楽とは言わない。
掻き消してやると息巻いて、メガの音は鳴り響く。
鼓舞するような音楽を背に受けて、リーヴァルディ・カーライルは空中で呟いた。
「……悪いけど、この後の予定が詰まっている」
空中を跳ねるように向かってくる天馬に向けて、防具に誘惑の呪詛を刻みつけた。精霊に好かれる存在感が、首のない彼らをも無意識に引き寄せる。
「……光の精霊、生命の精、私の声に耳を傾けて」
リーヴァルディへと、光の力が集い始める。
天馬の群れが彼女へと向かった。一斉に前足を上げ、どこからか嘶き速度を上げる。
リーヴァルディは大鎌を構えてそれを迎え撃つ。振り下ろされる蹄を刃の側面で受け流し、叩きつけられる巨体を柄で押しのけるように距離を取る。
リーヴァルディへと殺到する天馬と彼女の間を、砲弾が勢いよく通り抜けた。続いていくつもの砲音が上がり、驚く天馬の逃げ場を潰すように衝撃波が撒き散らされた。
「飛んでる奴に大砲ブチ込むのは、初めてじゃねえんだぜ!」
熱い心の砲弾が、空間を埋めるように大気を強く掻き乱して余波を生んでいく。
逃げればそれをまともに受ける。前に出ればリーヴァルディの鎌が待つ。
天馬の群れに一瞬の動揺。どう動けば最適なのか、迷うような仕草。
「お呼びでない団体客とは、ここでお別れよ……」
ダンピールの力を解放したリーヴァルディは、天馬から距離を取ると共に、光を生み出していた。
メガの作り出した天馬集まる空間の狭間に向けて、強烈に閃く奔流を叩きつける。
「光による、裁きを……」
リーヴァルディが僅かに眉をひそめる。光の力を、それも威力を二重に上乗せした反動だ。傷口を抉るような痛みがリーヴァルディを貫いて、しかし強く意思を保つ事でそれに絶えながら、リーヴァルディは光を操り天馬の群れを薙ぎ払った。
天馬の体が黒い煙を上げて、瞬時に焼けただれていく。暴れるような悲鳴を上げて、天馬が何とか逃れようと翼を必死な様子で上下させた。
「逃がすわけねえだろ!」
しかしメガの砲撃が、天馬の逃走を阻んだ。
空中で障壁を作り出す空気の波が、天馬を群れの中へと押し戻す。更には麻痺のおまけ付きで、逃げようとした個体は防御もままならず光の中で焼かれていった。
●そして全てが終わり……
リーヴァルディは避難させた村人達を元の広場に戻すと、眠りの呪詛を解除した。
「……こうするしかなかったの、ごめんなさい」
真摯に頭を下げるリーヴァルディに、村人達は困惑したように周囲を見渡す。
戦闘の跡に、オブリビオンの死骸が転がる。狂った音は止んでいたが、それでも猟兵達が戦いを繰り広げたのだと察するには十分だった。
「頭を上げて下さい」
村長が代表して、リーヴァルディに声を掛ける。
謝る必要はない。助けてくれてありがとう。村長が口にすると、村人達も同じく頭を下げた。
「そんじゃ、ショーの開始だぜ!」
メガが明るい音楽を奏でる。空に浮かんだ光の雲を背に、穂並みが黄金に輝いていた。
リーヴァルディが生命力を溜めて作った雲が瞬いて、雨が降り注ぐ。痩せた土地を潤し、作物の成長を促す恵みの雨だ。
――村民達の表情は明るい。光の雨に照らされて、活気溢れる音楽を耳に、そして、これからの希望に満ち溢れて。
救われた小さな光は、守られたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八重森・晃
【WIZ】
毎度おなじみ第二形態かあ、またずいぶん面倒だねえ。
行かせないよ、あの子たちには指一本触れさせないから
情はそのまま覚悟に、そして≪祈り≫変えて、決して恐怖に足が竦まない
ように、自分を鼓舞するよ。
行動:≪二回行動≫するよ、まずユーベルコード≪踊れ致死の舞≫を使用、意図的に回避可能なように弾丸を打ち込んで、●飛翔を無駄に消費させる、もちろん回数分使わせた後に弾丸が残ってたら、余剰の弾丸は直接当てるよ。二度めは『大烏』による残った全魔力を使った魔法弾≪属性攻撃・光≫による攻撃。≪全力魔法≫、これで確実に仕留めるつもりの攻撃。
天馬の群れが地面を蹴る。
一足飛びにこちらへ向かう群れに向けて、八重森・晃は、二丁の拳銃を構えた。
「行かせないよ」
フリントロック式の銃に魔力を込めて、晃は引き金を引く。百五十を越える弾丸の雨が空間を引き裂いた。
弾は刹那に天馬へと殺到……するも、その横合いを抜けていく。しかし次の瞬間、
「いらっしゃい」
弾丸は軌道を変え、半円を描いて背後から天馬を襲った。
嘶きが上がる。それに驚いた天馬が一斉に進路を変える。
「逃がさないよ」
弾丸がそれを追った。しかしその精度は緩く、天馬達の動きに追いつけていない。
――だが、それは晃の狙い通りだ。
「さあ、どれだけ飛び続けられるのかな」
真っ直ぐ飛ばれてしまえば、ほんの数秒で敵は村に達するだろう。
力を削ぐ必要があった。
「あの子達には、指一本触れさせないから」
物語を、知識を、目を輝かせて聞いてくれたあの子達の居場所を、絶対に奪わせはしない。
恐怖が足首を掴もうと迫るも、抱いた情を覚悟に、そして祈りに変えて。晃は強く地面を踏みしめた。
撃ち切った拳銃を素早く仕舞うと共に、流れるようにロッドを取り出す。マスケット銃を模した、魔術特化の装備だ。
晃は、残った魔力の全てをロッドに込めた。射程の限界を超え、次々に消滅していく弾丸から天馬達が逃れる前に。
ロッドの先で、光の魔力が渦を巻く。
「これで確実に、仕留めるよ」
そして大きな光弾が、天馬の群れへ向かって放たれた。
弾丸に気を取られていた群れは、真正面から迫る光弾に自分から飛び込んでいく。
炸裂。
辺りを染める閃光が撒き散らされて、天馬の悲鳴が木霊する。追いすがった弾丸が追い打ちとばかりに光の中へと飛び込んで、更にダメージを与えていった。
バラバラと、焼け焦げた天馬が落ちていく。それを見ながら、魔力を使い切った晃は大きく息をついた。
成功
🔵🔵🔴
ノイシュ・ユコスティア
武器はロングボウ。
「村人達のためにも、早く戦いを終わりにしたい…!」
真の姿になり、背中に大きな鷹の翼が生える。
敵に囲まれるリスクがあるため、最初は空中戦は避ける。
敵から遠くに布陣し、距離を取りつつユーベルコードで攻撃。
村を背にして戦う。
矢の残り本数に注意しながら、1体ずつ確実に狙う。
「今回も長期戦は必須だろうね…。」
倒せそうな敵から攻撃。
村の方に向かう敵がいたら回り込んで攻撃し、阻止する。
敵が1体になったら翼で飛行し、真っ向勝負を挑む。
「この1擊で終わらせる!」
戦闘後、
「あの人達は無事だったかな?」
気になりつつも、村には戻らずに去る。
技能:援護射撃、スナイパー、2回攻撃、ダッシュ、空中戦
ジャック・オズガルド
(イザリィとランダを剣に変え、相手の攻撃を掻い潜り手数で攻める。敵を踏み台にして飛び上がって鉛玉を浴びせるのも余裕があるなら考えよう。)
ランダ「あの駄馬のどれかに乗って暴れまわってやるのはどうだい?」イザリィ「やるなら味方の妨害にならない程度にね。...ここを乗り切れば作戦は成功よ。」ジャック「...ああ、だが組織の管理下にあるからといってクリーチャーであるお前らを信用したわけじゃあないからな。」イザリィ「ええ、心得てるわ...。妹も、ね」ランダ「ハッ
...。」
戦場を染める大きな光を横目に、ジャック・オズガルドが地を駆ける。
天馬の群れは、二度の光を浴び数を減らしながらも着実に村へと迫っている。だが先の猟兵により飛翔を封じられ、その動きは地上に限ったものになっていた。
今のうちだ。ジャックは二本の剣を両手に構え、振りかぶると共に大きく地面を蹴って飛び出した。
天馬が吼え、前足を振り上げる。鉄槌の如く振り下ろされる蹄を躱し、ジャックはすれ違い様に無数の連撃を叩き込んだ。
「この駄馬のどれかに乗って、暴れ回ってやるってのはどうだい?」
「やるなら味方の妨害にならない程度にね。……ここを乗り切れば作戦は成功よ」
肉を斬り裂き血に染まる剣から声がする。二本の剣の正体はクリーチャーであり、それらは意思を持っていた。
「……ああ、だが組織の管理下にあるからといって、お前らを信用したわけじゃないからな」
手数に任せて天馬に攻撃を仕掛けながら、ジャックは釘を刺す。
ノイシュ・ユコスティアが狙うのは、確実に倒せそうな敵だ。
遠くから戦場を広く観察し、味方の討ち漏らした個体にとどめを刺す。矢の数にも限りがある以上、考えて戦う必要があった。
「それでも村人達のために、早く戦いを終わらせないと……!」
彼らが無事であったとしても、戦闘が長引けば地形が荒れる。生活の制限されたこの世界で、それがどんな影響を及ぼすのか見当も付かない。
ノイシュは弓を引き絞り、風の精霊の加護を込めて矢を放つ。
「矢よ、雨となり敵を貫け!」
複数の敵を視界に収め放たれたいくつもの矢は、大きく弧を描いて敵陣に降り注いだ。
ジャックの攻撃により手傷を負った天馬が、堪らず痙攣しながら地面に倒れる。
「援護、感謝する!」
矢は敵の隊列を乱し、そこに大きな隙を生む。
ジャックは咄嗟にアサルトライフルを構え、目の前で倒れた敵の腹に爪先を叩き込む。それを基点に跳び上がって、引き金を引いた。
そのまま弾丸を正面の個体に叩き込むと、空中で身を捻って横からの突進を躱す。
だが次の瞬間、突進してきた天馬の背後に、突如として巨大な箱状のものが現れた。
「馬車だと……?」
四つの車輪を狂ったように回し、天馬に追従する馬車がジャックを襲う。
「おお、あれに乗るのは楽しそうじゃないか?」
「楽しんでる余裕なんてあるのかしら」
ジャックは空中でライフルを投げ捨て、会話する剣を目の前で交差させる。
直後に衝撃。莫大な重量がジャックの体を吹き飛ばす。
「くっ、重いな」
何とか着地。痺れる腕に鞭打って、ジャックは再び双剣を構えた。
迫る天馬の胸元に剣を叩き込み、次いで襲う馬車をも斬り付けた。堅い木の感触。木片が散らばる。
だが牽引する天馬が倒れると、馬車もまた陽炎のように消えていった。
「なるほど、本体を倒せば」
ジャックは別の天馬の前に躍り出て、剣を振りかぶった。
あの馬車は危険だ。あれが村に到達すれば、容易く家屋を薙ぎ払うだろう。
「そんなことはさせないよ!」
ノイシュは流れるように矢を放つ。その一射は過たず、車輪の軸を射貫いていった。
巨大な車輪が本体から外れ、回転しながら弾け飛ぶ。車体は大きくバランスを崩し、他の天馬を巻き込みながら地響きを立てて横転した。
「これで……!」
馬車の弱点は分かりやすく、また出現したとしても問題ない。
ノイシュは再度弓を構えながら、滑るように丘を下った。馬車を躱し、回り込むように駆ける天馬を正面から打ち据える。
首元に一本、足の付け根に一本。天馬がぐらりと大きく揺れる。
敵が進路をこちらに変えた。
筋肉の塊のような前足を蹴って、途轍もない加速を以てノイシュに迫る。同時に、その背後に幻影のように馬車が浮かび上がった。
「正面からじゃ狙いにくいかな……」
鷹の翼を羽ばたかせ、ノイシュは天馬の突進を飛び越える。追って別の生き物のように跳ねた馬車がノイシュを狙うも、退きながら速度を殺し、側面を蹴りつけ距離を取る。
「この一撃で終わらせる!」
そして空中で姿勢を変えて、ノイシュは馬車の車輪を撃ち抜いた。
着地と同時に荒れ地に足を取られ、地面を滑る馬車が天馬を挽き潰す。
そんな光景に背を向けて、ノイシュは息をついた。
●
天馬の群れを退けて、猟兵達は暗闇の中で村を見た。
どうやら被害はないらしい。あとは村人を元の場所に帰せば依頼は完了だ。遠く避難させた村人も、問題なく日常生活に戻るだろう。
「なんだ、会わないのか?」
「うん、僕はもう去る事にするよ」
ジャックの言葉を背に、ノイシュは村に背を向けた。
成功
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