●
幸福は爛れ、腐り落ちていく事が常となった、この闇の世界。
けれど、幸福な未来の可能性というものは、この先、一点の希望さえ無い訳では無い。
猟兵。
そう、彼等が存在する限り。その僅かな可能性を掴み、引き出す事が出来るのだ。
不幸が、誰彼の傍で次の犠牲者を狙っているような村にも、四方の季節は流れている。
時節は春となった。
昔は満開の桜並木の下で、盛大な宴を開催していた村であったが、今では静まり返り、人が住んでいる環境とは思えぬ程に錆び付いている。
ダークセイヴァーという世界の色を考えれば、在り来たりで、よくある村である。
しかし、未だ希望を捨てぬ若者たちが、密に桜を愛でる宴の準備を行っていた。
それは状況への抗いと、未来への希望を込めた宴。
けれど。
「そんな――」
キティ・エウアンゲリオン(戦花・f16319)は、己の視界を疑った。
美酒や御馳走がサクラの下で振る舞われていたはずが、張り付くような血の色が散乱し、肉塊が土に塗れ、叫び声が鳴り響いていた。
後天的に吸血鬼として蘇った者たちの群れが、波のように村を破壊し、そしてその中央で――。
「チッ、シケた村だな。なんの収穫もねぇ」
鮮血よりも紅い色に染まっている髪が、炎の中で揺れていた。
炎はサクラを飲み込み、咲き誇っていた薄い石竹色の村を、暗く、そして濁った灰色へと変えていく。
●
「ひとつの村が、滅びを迎えようとしている。それの対処を願います」
集まった猟兵たちに、キティはそう告げた。
祭りが始まるその一瞬手前で、悲劇は起こるのだと。
偶然か、それとも必然的な運命か。
まるで自然現象だと言わんばかりに発生した血と肉を喰らう吸血鬼の群れは、村を飲み込む。まずはその対処を行って欲しい。
勿論村には、一般人が住んでいる。
数は少ないが、少ないからこそ、滅ぶまでの時間はきっと短い事だろう。一人でも多く救う事も必要になってくるのかもしれない。
そして最後にキティは付け足すように言うのだ。
「紅い髪の男に気を付けてください。
詳細な情報が少なくて申し訳ありませんが、もしかしたらイレギュラーにもう一体、敵が来るかもしれないから」
羽鳴ゆい
4度目まして、羽鳴ゆいです。
お久しぶりです。
この度も、シリアスな依頼となります。
初回は救出&集団戦ですが、二章では純戦、三章では日常パートを予定しております。
1章目に関しての描写は、プレイングをみて、戦闘中心か救出中心か考えます。
どうぞ、お気軽にお付き合い下さい。
●村の規模
そんなに大きくはありません。
●一般人
30人前後です。
現在は花見の準備を行っている為、半数は屋外に、半数は屋内です。
子供と高齢者は少なく、18~30歳あたりの人間が多いです。
●敵(第1章)
猟兵が召喚されたのと同時に、発生するものとします。
●その他
第2章以降の情報はリプレイ中で流します。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『レッサーヴァンパイア』
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POW : 血統暴走
【血に飢えて狂乱した姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ブラッドサッカー
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【レッサーヴァンパイア】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : サモンブラッドバッド
レベル×5体の、小型の戦闘用【吸血蝙蝠】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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星蝕・焉夜
【POW】
「久方振りの依頼が吸血鬼相手か……
村に被害が出る前に叩き潰すとしようか……」
片刃の大剣、Mimicryに自身の鮮血を纏わせながら
さらに巨大な剣へと変貌させて
「ミミック、出番だ……叩き潰せ……」
戦闘狂の人格へと変化し
赤い短髪に左右の瞳の色も黄色と蒼へと変化して
『ーーーーー!!』
雄叫びを上げつつ地形を利用し第六感や見切りで接近しつつ
手に鮮血で取り込んだMimicryを
器用に振り回して急所や死角からの奇襲を行う
明確な敵を叩き斬り潰し壊すまで戦い続ける
焉夜は冷静な人格
ミミックは喋れない好戦的なバーサーカー
アドリブ等歓迎です
●
猟兵たちが転移した瞬間に、戦闘は始まる。
今だ少しばかりの幸せな活気が残る村だが、じわりと不穏が足音を寄せ。
一瞬の静けさ―――。
そして、誰かが叫び声をあげた瞬間に、村は騒然へとひっくり返った。
状況が読み込めぬまま、周囲の恐怖の雰囲気に飲み込まれていく正常。誰も彼もが混乱に陥ったのは。
そう、猟兵たちが構えるその先で、深紅の瞳を狂気的に血走らせた怨敵が牙を剥いて、疾く、獣の如く迫りくるからである。
絶望の波を目の前に、しかし猟兵は一歩たりとも引かない。
「久方振りの依頼が吸血鬼相手か……、村に被害が出る前に叩き潰すとしようか……」
混乱の渦の中であったが、その声色がはっきりと響いた。
星蝕・焉夜(終焉よりランタンを燃やす者・f00030)は、正義の味方としては程遠いような肉塊を片手に軽々と持っている。
何も知らぬ一般人がそれを見れば、一歩、いや二歩三歩と引いてしまうものだが。明らかに異常なのは吸血鬼の群れのほうだ。それに相対する形で立っている存在がいるとすれば猟兵以外の何者でもない。
暗黙下で一般人たちは、それを当たり前のように認識していた。状況が生み出した頭の回転か、それともこの世界だからこそ英雄が目立つのか、どちらの理由かわからないが。
吸血鬼の狙いは一般人の逃げる背中よりも、本能的に近い場所にいた焉夜に定まった。
グロテスクで醜悪な波が焉夜を螺旋のように取り囲んだとき、焉夜はMimicryと呼ばれた剣に、自身の鮮血を纏わせながら、
「ミミック、出番だ……叩き潰せ……」
独り言のように呟いたのをトリガーにして髪の色、そして目の色を変えて豹変する。
『―――――!!』
言葉は無い。
だがそれは咆哮だ。
音は無くとも、地響きが彼を歓迎している。
対して、唸り声をあげていた吸血鬼が伸びた五指の禍爪を振り払えば――しかし、焉夜の影を斬っただけだ。
刹那の合間に吸血鬼の背後を取った、無音の焉夜……いや、今はミミックと呼ぶべきだろう。
大いなる暴力(パンドラ)の蓋を開けた吸血鬼は焦りの顔色を見せ振り返ったときには、自身の首が空中へ斬り飛ばされたのだ。
血の雨が僅かに降る。
その一滴を頬に付着させたミミックの舌が、大事そうに掬いあげて舐め取った。
成功
🔵🔵🔴
シルフィア・ルーデルハルト
「…吸血鬼、ですか…まぁ得意分野と言いますかなんといいますか…」
てこてこと歩いてくる。まるで怯えなどないように
ヴァンパイアが増えて襲い掛かってきた場合
「お姉さん、お願いします」
右手の包帯の上に赤い魔法陣が浮かび上がり、目を包帯で覆った背中に12枚羽が生えた女性が現れる
『ひとまず薙ぎ払いますね?まぁ手加減はしますので』
羽で作った竜巻で相手を吹き飛ばす
「…さて、浄化のお時間です…我が神よ、この哀れなる怪物に救済を、あなたの罪を聖なる油でかき消そう、あなたの魂をこの聖水で浄化しよう。”その魂に安らぎを”」
その頭に、聖水をゆっくりとかける
すると吸血鬼は土くれへと還るのであった
インディゴ・クロワッサン
アドリブ・共闘歓迎
「はいはーい お花見の準備中に失礼しますよーっと」
軽やかに愛用の黒剣を振り回して、敵を【なぎ払い】ってから、ちょっとだけ【救助活動】。
僕らの戦ってる姿を見て、少しは【鼓舞】されたりしない?
「皆さん大丈夫ですかー? ちょーっと室内で待機してて下さいねー」
声かけしてる最中に襲われたら応戦に切り換えるよ
「もー…せっかちは嫌われるよ?」
ま、僕は元々キミ達が嫌いだけどね。
【カウンター】で迎撃してから【傷口をえぐる】ようにサムライブレイド:藍染三日月で【2回攻撃】。
UC:黒薔薇の舞 を使って黒剣を黒薔薇の花弁に変えて更に追撃だー!
●
四つん這いで獣のように進行する吸血鬼が、一般人の女を壁際まで追い詰め――ニタァと笑った。
あと一歩だ。手前に吸血鬼が出れば、長く伸びた爪を持つ手が女の身体を固定し、その首を噛み千切っていたに違いない。
しかしそんな未来は訪れなかった。ニタァと笑った表情、その笑みが、真っ二つに割れるのだ。
「はいはーい お花見の準備中に失礼しますよーっと」
黒剣に着いた血を振り払えば、同時に今の今まで元気であった吸血鬼は両断されて倒れる。
大量の血の上に平然と立っていたのは、女のように長く伸ばした髪に顔を隠している男であった。
「ひ、ひぁ……」
「あ、大丈夫だよ。僕たちは、味方のほうだからね」
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は軽く笑みを落とせば、地べたにペタリと座り込んだ一般人の女が、少しばかりの安堵の表情を浮かべた。
「あ、ありが、ありがとう」
「いーえ、どういたしまして。屋内にいてよ、そっちのほうが僕らもやりやすいからねえ」
――焉夜の先行に続く、猟兵。
シルフィア・ルーデルハルト(血を求める”強欲”な聖女・f00898)はインディゴの言葉に応じてパタパタと逃げていく女の背中を目の端で認めながら、焦点は敵へと当てていた。
「……吸血鬼、ですか……まぁ得意分野と言いますかなんといいますか」
人形のように感情が動かず――いや、恐れというものをよく知っているからこそ、この程度のものに動じていないかのように、シルフィアは絶望を迎えんとしている村を平然と歩いていく。
敵から見れば、ネギをしょったカモであるようにも見えよう。光輝く聖女を堕とし込むのは得意な吸血鬼たちだ。
牙を剥いた吸血鬼がシルフィアを狙い、その群れは彼女を囲む。
右も左も、前方も後方さえ血生臭い者どもに包囲された訳だが、シルフィアの表情が、それでもだ、それでも大きく動くことは無かった。
一瞬、インディゴは助けにいくべきか悩んだのだが――。
「大丈夫そうかな」
「はい、大丈夫です。お姉さん、お願いします」
淡く光る魔法陣が右手の包帯の上に浮かんだ。すれば、目を包帯で覆った十二枚羽の女性がふわりと顕れた。
『ひとまず薙ぎ払いますね? まぁ手加減はしますので』
シルフィアがこくんと頷けば、六対の羽が大きく羽ばたいた。
轟く振動、圧迫感のような衝撃に紛れ、羽の嵐はシルフィアを囲んでいた敵たちを薙ぎ払ったのだ。
「お、やるねえ。じゃあ僕も」
嵐にインディゴは飛び込んだ。細かい修正を効かせながら、嵐はインディゴを避けるように操作されつつ。
嵐だけでは取り逃がした吸血鬼を、インディゴの剣は貫いた。
「……さて、浄化のお時間です。我が神よ、この哀れなる怪物に救済を、あなたの罪を聖なる油でかき消そう、あなたの魂をこの聖水で浄化しよう。”その魂に安らぎを”」
シルフィアの言霊が飛び交う中、インディゴは逃げ惑う一般人へ手を振った。
「皆さん大丈夫ですかー? ちょーっと室内で待機してて下さいねー……――っと!」
切り裂かんと引き出された腕を寸前でかわしながら、インディゴの唇は少しばかり楽し気に口端が上を向く。瞳は楽しそうに煌めくが、その奥には闇色の……煌めきとは反対の感情を宿しながら。声色は、それに比例して低く響く。
「もー……せっかちは嫌われるよ?」
――ま、僕は元々キミ達が嫌いだけどね。
斬、斬、斬斬斬!!
一刀振り切れば吸血鬼の断末魔が、二刀切り裂けば吸血鬼の表情が凍り付いた。
「浄化の時間です。救済を、その悪辣な魂に――」
「どうかなあ、馬鹿は死んでも治らないっていう言葉がサムライエンパイアにはあるらしいけど?」
幾重にも重なる斬撃の嵐に、シルフィアの嵐が支援をする。完璧に取られた連携に、吸血鬼の津波は徐々に削られていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハン・サム
花は良いね。季節を彩り、華やかさと香りで人を楽しませる。少しボクの美しさに似ているね?つまりボクの美しさを楽しむ人々を害していると言っても過言ではないね。それは美しくない行為だよヴァンパイアガールズ。キミたちを1人残らず美しくしてあげよう。ボクはいつものように意識せず舞台演劇のような手振りでヴァンパイアガールズ達の前に躍り出るよ。そしてガールズに美しすぎるボクの流し目を送る。ゆったりと歩みながら優しく流し目していくよ。ガールズ、人を害しても良いことなんてないさ。ボクをご覧。そして幸せになると良いのさ。おやすみガールズ。君達が美しいボクの夢を見れますように。悲しみと慈しみの表情でガールズを見るよ
須藤・莉亜
「んー、ヴァンパイアのなり損ないって感じ?血の味はどんなかなぁ。」
期待は出来なそうかな?
敵さんの蝙蝠は大鎌の【なぎ払い】【範囲攻撃】【衝撃波】で斬り払いつつ、敵さんの固まってるところに突っ込もう。
ある程度、敵さんの密集しているとこに入り込めたら、暴食蝙蝠のUCを使う。敵さんを霧で覆ってから、僕は無数の蝙蝠に姿を変えて、霧の中の敵さんを片っ端から【吸血】して【生命力吸収】をしよう。
「うーん、いまいち?ワンコインのワインっぽい?」
あ、一応一般人の方に向かってるのを優先的に狙おうかな。
今川・貞俊
なるべく大仰に吸血鬼たちに語りかけ、衆目を自分に集めることで一般人たちへの注目を避けるように試みよう。
その上で、一般人に損害が出そうであれば、サコイキネシスと念動力でそれを防ごう。
「なぜこんなことをするんです!そんな私利私欲で、そんな人を傷つけるやり方で!そんなんで、あなたたちは満たされるって言うのか!!」
叫び、問いかけ、訴えよう。
大人しくするならば良し。
しないようなら、「敵」と判断するしかない。
僕は戦うことは好きじゃない。
けど、やらなきゃいけないことを見失っても居ない。
だから、2回攻撃を主軸に切り結ぼう。
「そうやって他人を傷つけて、そうやって他人を蹴落として!それであんた達は満足なのかよ!」
グウェンドリン・グレンジャー
……ハナミ、邪魔する、の、よくない。
実際、無粋。
【POW】
私、は……戦うしか、出来ない……から、頑張って、戦って、惹き付ける。
一般人、救助、他の人……に、任せた。
それに、私……の、戦い方、村の人が、見たら、怖く……思うかも。
【空中戦】で、高度、取りつつ、複数いる、はず、の、レッサーヴァンパイア……全部、射程、入る……場所【第六感】で、滑り込む。
射程内、敵、全て、目掛けて……Feather Rain。
【属性攻撃】で闇属性、【生命力吸収】と【盗み攻撃】もUCに乗せる。
目には目、闇には闇。生命力を、盗んで、やる……!
アドリブ、改変歓迎
●
荒れ狂う闇に抗い猟兵は歩を進め武器を構える。一般人は涙を落とす暇も無く、ただ己の命を長らえる為に走った。
戦闘は、時間と共に激化を極めていた。
数居る猟兵たちの中でも、今川・貞俊(スペースノイド・f09177)は一般人の救出に奔走する。
その足を止める事は出来ない。
「こっちです! あなたたちの相手は、そっちじゃない!!」
貞俊の腕は悲しい程短く、まるで天の星に手を伸ばしても届かないのと同じで、漆黒の瞳の中で今、ひとつの命が消えたのを目撃した。
歯奥を噛む。舐めてもいないのに、血の味がした。
貞俊の故郷の世界でも、日常的に繰り返されている命のやり取りではあるが――たとえそれが貞俊の記憶にとって乏しいものであっても――受け止める事など出来ようか。
「……ハナミ、邪魔する、の、よくない」
「一般人は僕が。援護をおねがいします」
「……わかった。殲滅しちゃっても、……いいよね」
「全然問題ないですね」
実際、花見を汚す事とは無粋である。その常識が伝わらない相手――だからこそ吸血鬼は厄介だ。
一般人の救出を貞俊に任せ、グウェンドリン・グレンジャー(人間のグールドライバー × 化身忍者)は、戦場を風の如く駆けた。……いやこの場合は、低空を滑っていると言った方がいいのかもしれないが。
直ぐにグウェンドリンは、直角に曲がり、上空へと舞う。
腰から生えた疑似的な翼は、どちらの軍配の破滅の予兆であろうか。
ぽつ……ぽつ、と、誰に向けてでも無いような言葉だが、グウェンドリンは、
「皆、下がって。この、羽根……は、当たる、と……痛い」
と警告を発しながら、翼に秘めた力を解放する。
まるで天からの落雷にも似ている。しかし、その雷撃は純粋な闇を孕んでいる。
地上を抉る勢いで放たれるグウェンドリンの攻撃の中、油断した吸血鬼の合間を縫って貞俊は駆けていた。
「なぜこんなことをするんです! そんな私利私欲で、そんな人を傷つけるやり方で! そんなんで、あなたたちは満たされるって言うのか!!」
少年の訴えが響く――そんな中。
戦場の中央で一人物思いにふけている青年がいた。
背を通過していく少年を目の端で見つめてから、瞼を閉じる。
名は、ハン・サム(人間の美形・f09438)。
その名の通りそれ以上でも以下でも無い。ハンサムという言葉を絵に描けば、彼となる。
此の世の産んだ奇跡(バグ)か、それとも神々の悪戯か。美形以外の何者でも無い男性が、どこからか取り出した一輪の薔薇に、キスを落とした。
「花は良いね」
まるでここだけティータイムのゆったり時間。
見上げれば桜の花が揺れていた。春という季節を際立たせる花の木だ。華やかさと香りで人を楽しませる……はずの。
「少しボクの美しさに似ているね? つまりボクの美しさを楽しむ人々を害していると言っても過言ではないね」
恐ろしい程に湾曲した解釈の暴力が発生しようとしている。
モニターか何かで戦場の行方を追っているであろう、この戦場へと猟兵をグリモア猟兵が、思わず画面を殴り倒そうかと思った程に、この男、口から出る台詞が極まっている。
話を戻し。
薔薇と桜の僅かな花の香りに混ざるのは、血臭だ。
勿論この戦場、猟兵が手の行き届かず落としてしまった一般人の命は、複数存在する。
その尊い命の名残と、敵が笑うたびに口から漏れ出る犠牲者の鮮血が、血臭となってハンサムの鼻を燻るのだ――それは、悲しいほどに美しくない。
「ヴァンパイアガールズ。キミたちを1人残らず美しくしてあげよう」
登場に尺を使い過ぎたハンサムであった。
「んー、ヴァンパイアのなり損ないって感じ? 血の味はどんなかなぁ」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、咥えた煙草を燻らせながら、とろんと眠たげな瞳で状況を整理していた。
彼が期待するのは、煙草や酒、そして美男美女の血よりも憂鬱を吹き飛ばしてくれるような死線だろうが、血走った瞳で爪を振りかぶる吸血鬼の一撃を寸前でかわした莉亜はため息をつくばかり。
ともあれ数が暴力の敵だ。
たった一匹が、莉亜のお気に召さないハズレであった可能性はある。
そんな珍しいプラス思考に花を咲かせつつ、莉亜は迫りくる死の波に自ら飛び込み衝撃波で敵を薙ぎ払う。一斉に勢いに任せて倒れていく雑踏。
されど、感じ取った手応えは――。
「うーん、いまいち? ワンコインのワインっぽい?」
――期待外れだ。
いくら数で来ようが、束になっても莉亜の飢えを埋めるには程遠く。芳醇で甘美な美酒と比べるのも勿体無いのだ。
だが――少しでも己の喉を潤せるのなら、どうだ。
莉亜の身体が無数の小間切れのように千切れたかと思えば、蝙蝠の姿に代わり飛んでゆく。
一体の吸血鬼が足を滑らせて転んだ。即座に顔を上げ、背後を見た瞬間。蝙蝠の群れが足先から頭のてっぺんまで一気に吸血鬼を包んだ。
断末魔の声をあげる暇も無く、その翼は敵たちの切り裂き、その牙は血を貪るのだ。
「じゃ、ボクもやろうかな。美しく――ね」
まるで舞台演劇のように、ハンサムは躍り出た。
普段光なんて刺さないこの世界――のはずでしたが、闇色の空から僅かに降り注いだ月、または太陽のスポットライトを浴びる――此処はハンサムの支配する舞台上。
そして吸血鬼(ガールズたち)に流し目(キラキラ)を送る。
吸血鬼たちは動じない。
ゆったりと歩みながら優しく流し目していくハンサム。
吸血鬼たちは動じない。
歩みを止めターンをしてから流し目をしたハンサム。
吸血鬼たちの頬が少しだけ赤くなった。
「ガールズ、人を害しても良いことなんてないさ。ボクをご覧。そして幸せになると良いのさ」
美しいハンサムの夢を見れますように――そんな呪いにも似たきらきらを受けた吸血鬼たちは、一斉に心臓のあたりを抑えて倒れていった。
「目標……補足、……Feather Rain」
ハンサムが倒した吸血鬼たちに降り注ぐ、トドメのグウェンドリン。素敵な夢の中、破滅の雨は降り注ぐ。
「そうやって他人を傷つけて、そうやって他人を蹴落として! それであんた達は満足なのかよ!」
こだまするように響き続けている貞俊の声が、一段と大きく聞こえた。
繰り返す叫び、吸血鬼の心に訴える言の葉。されどそれは吸血鬼たちの耳を滑り、受け止められない。
戦う事が好きではない一四歳の少年には重い戦場であっただろうか。しかしその漆黒の瞳は、全て闇に心を売っている訳では無い。
輝き続ける正義の純粋さが、遂には吸血鬼たちを敵と認めた。
拳を握りしめる。
「もう誰も殺させやしない!!」
やらねばならぬ最優先事項を見失う事はない。
「次……攻撃対象、……あっち」
「仕方ないなあー、そろそろ味に、飽きそうなんだけど」
それに応えたのは莉亜とグウェンドリンである。
叫び声が上がった、手を伸ばして助けを求める声があった。貞俊の瞳が、髪の毛が一瞬静電気を発生させた。
一般人を狙う吸血鬼にサイコキネシスで動かされた物置のようなものが倒れ、動きを一瞬封じる。駆けてきた一般人の女性を受け止めた貞俊。
そして。
「……Fire」
「その血肉、貰うね」
霧が覆う、破滅の雨が―――戦場を絶対包囲する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ヴェル・ラルフ
──この世界にも、桜が咲く場所があったんだ。
秘かな楽しみを邪魔するなんて、無粋だな。
武器は愛用のナイフ。
たくさんいるみたいだし、消耗しないように動きは最小限に。
[暗殺][傷口をえぐる][敵を盾にする]
一般人のヒトはもう逃げてくれてるといいけど…
下手したら、敵に取り込まれかねないものね。ちゃんと[かばう]よ。
理性を失った獣なんて、向かってくるばかりだろ。
避けるときは[残像]を残す。つられてくれるかな?
がら空きになった頭上から【陽炎空転脚】
叩き割ってあげる。
ヒトのささやかな幸せを壊そうとするとこ、ほんと、軽蔑するよ。
★アドリブ・連携歓迎
ナーシャ・シャワーズ
ふうん、吸血鬼か。
私はそういう趣味の悪い祭りってのは私は好きじゃないんでね。
せっかくの桜の色を変えるような真似はしてほしくないんだ。
さって、と。だがまあやりあう前にちょっと一服。
とはいっても、この煙管は見た目だけでタバコは吸えんのだがね。
そもそも私はあの煙が嫌いなんだ。だから、こいつはハッカ味。
吸血鬼ってのも難儀なもんだね。
理性を失うってのは戦いの場においてもっともやっちゃならん事だぜ。
私だって意味もなくのんびりしてたわけじゃないんだ。
余裕を見せると同時にこっちも力をためていたのさ。
だってお前さん方、早く動くものを追うんだろう?
ゆーっくり近づいて……そらよ、っと。
さ、のんびり片付けていこうか。
●
さあさ始めよう、血を血で洗う戦闘を。
少しずつ近づいてきた。ざりざり音をたて近づいてきた。
其は来る、一歩ずつ来る、鬼が来る。
――この世界にも、桜が咲く場所があったんだな。
ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)の燃えるような髪が冷たい風に揺れた。
本来なら、今頃なら、きっと桜の木の下で楽しい時間が流れていたであろうが……それを想うと、自然とヴェルの拳に力が入っていた。
「その桜の花見を汚すのが、吸血鬼?」
煙管型のアイテムを指で弄ぶナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)は、気怠そうな表情でいた。
視界に入ったヴェルが、
「無粋だよね」
と吸血鬼たちへの怒りを込めながらも、味方相手には微笑んでいた。が。
「って、わああああ! どうして戦場で呑気に喫煙するのかな!!?」
上空からナーシャへ飛び込んできた吸血鬼を蹴り飛ばしたヴェルは、驚愕の色を表情に加えた。
「煙草の煙は嫌いなんだ。だからこれは喫煙では無く、ハッカの飴を舐めているものと等しい」
「どっちでも同じようなものだよ! 早く舐め終わってね!?」
「あと5分」
「その5分で全部倒しちゃうかもよ?」
そんな一幕がありながら、ナーシャとヴェルは背中合わせで戦場を舞う。
ヴェルの愛用のナイフは、よく切れた。暗殺の要領で淑やかに戦場を縫って移動し、唸り声をあげて進行する吸血鬼の喉を掻き切る。
流れ出した吸血鬼の血が、一瞬だけ其の場に赤い雨を巻き起こした。
しかしその雨を、ヴェルは浴びない。相手の鮮血さえ避けて、己の身体は汚さないのだ。
上手くヴェルが立ちまわっているからこそ、ナーシャはナーシャらしく余裕で力をため込むことができた。
戦場に対してそぐわない行動を取ると力をため込むことが出来るという奇異な能力を持っているナーシャだからこそ、その余暇を楽しむ為の喫煙も彼女にとっては戦闘行動である。
「せっかくの桜の色を変えるような真似はしてほしくないんだ」
「やっとスイッチが入ったのかい?」
「ああ、そのまま囮でいてくれ。奴らは早く動くものが好物だ」
「任せて!」
ヴェルの足は地面を駆け、壁を蹴り、屋根を翔ける。
追う吸血鬼は雑に壁や天井を掴みながら、紅色の軌跡を追っていくのだがヴェルの残像を掴んでばかりだ。
「理性を失った獣なんて、向かってくるばかりだね」
「単純な思考の生き物で助かるもんだがね、理性を失うってのは戦いの場においてもっともやっちゃならん事だぜ」
暗黙下で息が合っていた二人――スイッチが入ったナーシャの手に、煙管では無く特殊な銃が収まった。
迷わず狙いを定め、躊躇いなくトリガーを引く。一度、二度と続けナーシャの指が奏でる銃声は止まらない。
重なる銃声、駆けるヴェルの足。
最早血の香りなんて嗅ぎ慣れてしまったのだが――吸血鬼の屍はヴェルの足跡のように重なっていく。
ナーシャの攻撃に気づいた吸血鬼が、進行方向を大きく変えて、ヴェルからナーシャへ向かった。動物のように四つ足が如く駆け寄ってくる敵に、されどナーシャは動じない。
「ま、こちらはかなりのんびりさせてもらったがな。そら、チェックメイトだ」
ナーシャは再び煙管を噛む。ヴェルの動きに気づけないとは随分と可哀想なことで――とナーシャは再び燻らせているその上空。
跳躍したヴェルが炎を纏っていた。吸血鬼より疾く動いたヴェルはナーシャと吸血鬼の間に身体を挟み込み。
「ヒトのささやかな幸せを壊そうとするとこ、ほんと、軽蔑するよ」
向かってくる吸血鬼の爪と、ヴェルの脚が交差する――爪が肉体を抉る前に炎を纏いし蹴撃が、吸血鬼の胴体をくの字に曲げて吹き飛ばした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フラウロス・ハウレス
……また貴様らか、下等吸血鬼。
貴様らのような雑魚では話にならんのだがな。
まぁ良い、端くれとは言え吸血鬼なのだ。一片残らず消し去ってくれよう!
黒爪を伸ばし、右の五爪で薙ぎ払った後に顔に左の五爪を突き刺し、『吸血』と『生命力吸収』を行なった後、『怪力』で粉砕する。
「……フン、やはり不味い。吸血鬼の血など元より美味なものでもないが、貴様らはそれに輪をかけて不味いな」
そのまま残った敵の中央まで斬り進み、【ブラッディストーム】で一網打尽にしてくれよう!
「飽きた。妾を楽しませることも出来ぬなら、疾く消し飛ぶが良い!ブラッディストーム!!」
フン……下らんな。
して、「イレギュラー」とやら。
貴様は高みの見物か?
聖護院・カプラ
吸血鬼のオブリビオン……人の営みを永遠に損なうその行い、改めさせねばなりません。
祭りを望んでいた人々の祈りを聞き、ここに聖護院カプラが『大願成就』を為しに参りました。
『血統暴走』したオブリビオンを『存在感』に比例した徳パワーでいなした後に、飛翔して村の人々の救助に回りましょう。
見つけやすい屋外の方々を助けて連れ、屋内の方々の場所の案内をお願いした方がスムーズでしょうか。
見ずしらずの私よりも、同じ村の人間に声をかけてもらったほうが警戒心も解きやすいでしょうしね。
村で1番大きな建物に彼ら、彼女らを集めたなら入り口で守護を務めるつもりです。
仁科・恭介
※アドリブ、共闘歓迎
【携帯食料】を食みつつ吸血鬼に視線を向ける。
「血染めの桜など美しくはない。そのような桜にさせるものか」
マフラーを隠し【目立たない】ように村の構造と吸血鬼の動きを観察し把握する。
「指揮を執るやつがいるならこんな感じでくるかねぇ」【失せ物探し】【学習力】
マフラーを巻き直してスイッチを入れる。
口からは憚る声が漏られるが頭は冷静だ。
全身の細胞を活性化。両足のカモシカも良好。行ける。
吸血鬼の行動を予測後【ダッシュ】で急行し、【残像】で誘って心臓の鼓動を止めるよう刺す。
【吸血】本能による血の探索の邪魔になるため、できるだけ血は流さない。
「何度嗅いでも嫌な匂いだ。さっさと終わらせるか」
●
ざり、ざり、一歩ずつ。近寄ってきた。
楽しそうな戦闘音に吊られて、少しずつ――。
「……また貴様らか、下等吸血鬼」
フラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)の眉間にシワが寄る。
フラウロスに取って吸血鬼とは食物連鎖の下に位置する存在だ。それでいて、滅ぼすべき敵。
数が大幅に減ってきて、初めて敵にも焦りの表情を見せていた。下等だ――例え、味方が窮地であれど、フラウロスならばそんな情けない表情は一切しないだろう。
「怯えた方が負けだの。だが良い!! 妾を前にしてその反応、当然の事である!!」
凛と威厳を放つフラウロスを前に、吸血鬼たちは一歩引いた。引いたが、しかし、唸りながらその牙を、爪を剥き出して迫ってきた。
それを片手の黒爪ひとつで薙ぎ払う。そこに、7歳という少女のあどけない微笑みは無かった。
この戦場の範囲は聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)が主に避難活動を行っていた。
フラウロスもそうだが、仁科・恭介(観察する人・f14065)と共に攻勢と避難のバランスは良く取れている。
神々しい煌めきを放つカプラは、この光の刺さない戦場ではよく栄えた。
神として崇められている存在であるからという事もあるのだろうが、特にカプラのような身体はこの世界では珍しいものだ。一般人たちの目を引き――時には両手を合わせてくる一般人もいたり――彼等はカプラを信仰するように避難のため進行していく。
「聞き分けのいい人たちでよかった」
そんな安堵を呟きながら、しかし本当の意味での安堵はまだ遠い。
カプラの神々しさに吊られてくるのは、一般人だけではない。血走る目でその信仰を切り裂こうとする吸血鬼たちも共に釣れるのだ。
「血染めの桜など美しくはない。そのような桜にさせるものか」
恭介は携帯食料を食みながら、カプラに集る敵へ帯刀していた刀を居合を真似――、一閃。
マフラーの奥に表情を隠した恭介の瞳が、カプラと交差する。
「ああ、すみません。背後を任せても宜しいでしょうか?」
「任せておきな。にしても、あのお嬢ちゃんは張り切ってるな」
「誰がお嬢ちゃんだと?」
恭介の声に反応したフラウロスが、捕らえた吸血鬼を片足で踏んで動きを止めている。
「……フン、やはり不味い。吸血鬼の血など元より美味なものでもないが、貴様らはそれに輪をかけて不味いな」
片手を上げ、その拳を振り下ろすフラウロス。吸血鬼の身体が弾け、その血が少女の頬をいやらしく濡らしたが、それを舌で舐める事は無かった。
「吸血鬼のオブリビオン……人の営みを永遠に損なうその行い、改めさせねばなりません」
大願成就を為しに。翼を広げ飛翔したカプラ。圧倒的な存在感を味方にし、一般人の目は釘付けであった。
避難場所、敵がいない場所、味方の情勢を天空より把握し、指示を出し人々を救済する姿は神なるものと違い無く。ここは大宇宙では無いとカプラは理解しているが、そこで生きる命の重さは皆等しい。
己が存在が今在る場所の、報われぬ子羊たちの心に「柱」を築ければカプラの大願成就も成されたと同様である。
マフラーを巻き直した恭介。
「ほう? 今度はお前が相手か?」
一際巨体の吸血鬼がニタァと笑い、恭介を見つめていた。一般人を何人か殺しているのか、その口はまだ温かい血を滴らせている。
嗅ぎ慣れた血の香りが恭介の鼻についた。同時に苛立ちさえ覚える程。
「指揮をとっているのはお前か? いや、そんな理性が無ぇやつが統率なんか出来る訳ねぇな」
そう、これは吸血鬼たちが何か意図などがあって村を襲ったわけでは無い。ただの食欲という渇望に流されて、流れ着いただけの不幸な話なのだ。
ならば、此処にまた近づいてくる足音はなんであろうか。イレギュラーとは、なんだ。
しかしそれを考える前に、吸血鬼の膨れ上がって肥大している右腕がハンマーのように恭介へ飛んできた。ぶつかった――と思われたときには、恭介の残像が消えていく。
恐らくこの戦場が残った吸血鬼を葬る最後の戦場であろう。
それを察したカプラは急いで一般人たちへ避難の伝達を早めた。逃げる方向は此処以外の何処かである。
カプラの神々しさが人々の心と命を救う時、恭介は吸血鬼の背後へと回っていた。同時に、フラウロスは小型の吸血鬼たちに取り囲まれていたが、口に含んだ血を租借して味わってから吐き捨てた。
「飽きた。妾を楽しませることも出来ぬなら、疾く消し飛ぶが良い!」
――フラウロスは両腕を横に開き、力を解放する。
「何度嗅いでも嫌な匂いだ。さっさと終わらせるか」
――恭介は身体能力を爆発的に向上させた状態で刹那の速度で刀を振るう。
「ブラッディストーム!!」
「これで、終わりだ!!」
地割れのように世界が揺れた。
嵐の衝撃と、爆風のような刀の斬撃。そして――。
「祭りすンならよ、俺様を通してからにしろや」
村の入口付近に居たカプラが一早く気づいた。赤色の髪を揺らし、あらゆる剣を携えた鬼がゆらりゆらりと迫るのを。
嵐に切り裂かれた肉塊の雨の中、フラウロスは薄く笑う。
「フン……下らんな。して、イレギュラーとやらは貴様か?」
――だったら、どうするよ。
この戦場最大の敵は、ふらりと――避けようがない交通事故のように現れ、鋭利な刃物の切っ先を猟兵たちへと向けたのである。
大成功
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第2章 ボス戦
『鮮血鬼アルバ』
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POW : 斬殺剣鬼
【本来の力】に覚醒して【斬殺剣鬼】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 億戦錬磨
【数多の戦闘経験から】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 斬天
レベル×5本の【斬】属性の【斬撃波】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●
――武器を持て、武具を纏え、力を解放しろ。
彼奴の手前、お堅い事情や世界の事情も関係無い。
その瞳に睨まれたら戦わなければならない。
更なる力、更なる敵手を探し、貪り、切り裂く、ただそれだけの為の敵は。
今、この戦場に唐突に咲いた。
どうやら剣鬼は、その瞳に映ったもの全てを敵とし狙ってくるようだ。
此処には吸血鬼は淘汰され、残ったのは猟兵と一般人のみ。
一般人は剣鬼の存在を感じてか、避難した場所や屋内から出てくる気配は無い。
桜の花散るこの戦場で、剣鬼の欲望を満たすのは猟兵だ。
いや、彼の欲望を満たす為では無い。一つの安寧をつかみ取る為、猟兵たちの戦闘は終盤へと相成る。
星蝕・焉夜
【POW】
「吸血鬼を倒したと思ったら、また別の敵が来た様だな……
一般人が狙われないのなら戦いに専念出来そうだ……」
大型片刃のMimicryではなく
今度は黒い羽の大型両刃のTwilightを構え鮮血を纏わせながら
『ミミックの代わりに私が出よう
あの者は純粋に戦うのを望んでいそうだ』
「うむ、任せるぞ『黄昏』……」
人格を変えまた髪を宵闇と純白の長髪
瞳を金色・赤色のオッドアイへと変貌させて
『任された
全てを公平に裁き平和を願おう』
再び地形を利用し相手の攻撃を第六感や見切りつつ
衝撃波や薙ぎ払いで隙を作る様に攻撃し
死角から急所を狙う様に斬り裂く
アドリブなど歓迎です
黄昏は誠実で調和を求める者
須藤・莉亜
「なんか強そうなのが来たねぇ。」
血の味も期待できるかな?
伝承顕現【首なし騎士】を使い、デュラハンに変身して戦う。
高速移動で一気に懐に飛び込んで大鎌で攻撃。それはたぶん躱されると思うから、大鎌での攻撃はフェイントにして、本命の悪魔の見えざる手で【鎧砕き】を乗せた【2回攻撃】。
その後は、高速移動で動き回りながら、大鎌での【衝撃波】や悪魔の見えざる手での死角からの攻撃で【傷口をえぐる】感じで。
左手に持った自分の首での【吸血】と【生命力吸収】も狙っとこうかな。
敵さんの攻撃は【第六感】【見切り】での回避と【武器受け】で防いでいく。
「良いね、ちっと楽しくなってきたよ。」
剣鬼さんはどう?死ぬ前に楽しめてる?
フラウロス・ハウレス
ほう……貴様、中々愉快なカタチをしているな。
何故こちらに迷い込んだのか知らぬが、貴様のような異物を認めるわけにはゆかぬのでな。
良かろう、相手をしてやる。愉しませてもらおうか!
黒爪を刃状に長く伸ばし、彼奴の刃と両の爪で斬り結ぶ。
「クク、中々やるようだな。威勢の良さは伊達ではないということか!」
攻撃を受けることを物ともせず、『捨て身の一撃』で斬りかかる。
受けた攻撃は『生命力吸収』と『吸血』で敵から補えば良い。
このまま斬り合うのも悪くはないが、このまま遊び続けるわけにもいかないのでな。
【アースシェイカー】と【ブラッディ・インパクト】で剣か腕の1本でも頂こうか!
「さぁて……本気で行くぞ。受けてみよ!」
●
冷たい夜空の下、咲く仇花。
常に闇が覆うこの世界であるが、剣鬼の赤髪は存在感を示すには十分な程であった。
一般人は皆怯えて、物音と人の音(と)を途絶えさせ、戦場に残るのは吸血鬼共の佳境が終わりを告げた肉塊と――猟兵。
血生臭さだけが鼻を擦るのだが、しかし血臭は吸血鬼たちのものだけではない。
眼前の剣鬼――彼が持つ刃たちから、隠せぬ血臭がするのだ。
焉夜は知らぬ顔など出来なかった。彼も誰彼の鮮血を取り込む種族だからこそ、多種の血臭がこびりついた刃が飲み込んだ今日までの犠牲を思うと、ゾっとする。
「どれくらい殺って来た?」
「知らねェよ、一々数えてられるか」
焉夜の瞳が細く細く、相手を捕らえるかのように形を変えた。
「なんか強そうなのが来たねえ」
莉亜は口の端を舐めた。今までの相手よりも、遥かに血の味が濃そうな相手だ。
「これは、期待していいのかな」
「期待どころか、腹ァいっぱいにしてやるよ」
秒よりも早い時間であった。莉亜は剣鬼の背後に回る。手を引けば剣鬼の首を地面に落とすことは出来た。
しかし切ったのは虚空。
どうせ外れる――じゃないと面白くは無い。
莉亜はそれを理解しながらも攻撃に出たのだ。武器同士が交差しかけて弾かれる、その一瞬、剣鬼は笑っていたのを莉亜は見た。
沈黙を続け、新たな敵を品定めしていたフラウロスは動く。
「良かろう、相手をしてやる。愉しませてもらおうか!」
剣鬼がどうしてこの場にいるのか。そんな理由なんて野暮だ。
フラウロスは剣鬼へ言いたい事を全て集めて中指を立てた。その腕が漆黒の刃と形を変えて、駆け出す、呵々と笑う剣鬼と斬り合いが生じた。
二度、三度、一瞬の余所見は絶対に許される刃の交差。金切り音を立て、地面を抉り、砂埃を立てながらフラウロスは興じた。
「クク、中々やるようだな。威勢の良さは伊達ではないということか!」
「ハッ!! シケた村かと思ったら、骨がある奴らが居たとはなァ!!」
フラウロスを背後から飛び越えるように焉夜が躍り出た。
「テメェはどうだ!?」
一閃された一撃。
剣鬼の刃は確かに焉夜を捕らえた。舞う鮮血、その一粒一粒がスローモーションで弾けるとき、焉夜の片目は赤色へ、もう片方は金色へと変わる。
「多重人格か――面白い!! 問おう、優男。テメェ等の中に俺様を楽しませてくれる奴はどいつだ!!」
「――私だ」
純白の長髪は、発光したようにその場で強調されていた。焉夜の中に眠る一人――黄昏と呼ばれた者が今は主人格である。
数秒で行われた脳内会議の末、出現した黄昏は言う。
「任された。全てを公平に裁き平和を願おう」
空気に殴られるような風が起きた。それは黄昏の起こした一閃の余波。まともに受けた剣鬼は中空で回転しながら、新しい玩具を見つけたような瞳をしている。
「浮気はよくないね」
首無しの騎士(デュラハン)として動く莉亜の声が、どこからともなく響いた。
剣鬼を味わうのは己だと、黄昏と剣鬼の間にねじ込むように、しかし高速で莉亜は剣鬼の正面から勝負を仕掛ける。
「テメェの速度は見飽きたぞコラァ!!」
「どうかなー」
A地点からB地点へ瞬間移動するが如く、剣鬼の正面鼻先すれすれまで近づいた莉亜――そして消えたかと思えば、剣鬼の死角から出現。
大鎌を下から上へ捩じ上げるように振れば、油断した剣鬼の背中を割いた。
「んだァ、その動きはよぉ……」
「お気に召した?」
左手で持たれている莉亜の頭部と剣鬼の視界が合う。その時には剣鬼の複数ある刃が莉亜の瞬足を縫い留めるように――その身体を切り裂いた。まるでカウンターだ。
だが攻撃する動作をすれば、剣鬼の足は必ず止まる。
剣鬼の左右、フラウロスと黄昏が挟み撃ちとして位置取り、鋏のように黄昏の刃とフラウロスの黒爪が交差する。
確かな手応えはあった――だがギリギリのラインで剣鬼も肉は裂かれまいと回避行動を行っている。
「誠実さのカケラも、調和のカケラも無いような男だね、キミは」
「さぁて……本気で行くぞ。受けてみよ!」
「良いね、ちっと楽しくなってきたよ」
三人はそれぞれ力を溜め、次なる、そして更なる力の攻撃へと移る。
「命を削る戦い、悪かねえ。だからよお、クライマックスはまだ早ぇんじゃねえか!!」
――その攻撃の果ては。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
UC対象:アルバ
【目立たない】ようアルバと周囲の障害物を観察(【学習力】)
「敵味方見境なくか。ならそのテンションを使わせてもらう。全力でくるなら全力で答えるのが礼儀!」
マフラーを巻きなおし【携帯食料】を口に放り込む。強者を求めるテンションに細胞を呼応させる。
腕が複数あるとは言え、視認できる目は二つ、頭は一つ。
なら、その反応速度を超えればよい。
【残像】で相手の攻撃を誘い死角から斬る。
反撃は【残像】で干し肉を残し斬らせて挑発。
躱されるのを見越し【目立たない】よう足元に折れた柱などの障害物を置き行動を制限。
ある程度相手に慣れさせた所でUCを両足に乗せて速度を上げ【ダッシュ】で急襲
ヴェル・ラルフ
★アドリブ・連携歓迎
戦うことに狂った鬼、ね。
桜の美しさにも心動かされないなんて…勿体無いなぁ。
SPD
さて、血統覚醒…忌まわしい姿で戦おう。僕の姿は、己の醜さを映す鏡だと思いなよ。ふふ、お互い、赤髪だしね?
愛刀「暮れの鈴」で剣戟の音を響かせよう
随分沢山の武器を持ってるけど…2つの目で追えるのかな?フェンシングのようにステップを踏みながら剣先を繰り出す
[フェイント][早業][串刺し]
回避させることが目的。
敵の注意が散漫になったら、目を剣で狙ってから、すかさず地に手をつき、黒炎纏う脚で【残照回転脚】
避けないでね?
桜が燃えなかったかだけが心配だなぁ。
ナーシャ・シャワーズ
たった一人で乗り込んでくるたぁ
よほど自分の力に自信があると見える。
だがまあ、オブリビオンとして私の前に立ったからには
お前さん、無事に帰る事は出来はせんぜ。
ふむ、確かにかなりの経験を積んできたようだ。
それじゃあ、ひとつ試してみようか!
この、ソウル・ガンと似た武器と戦った事はあるかな!
こいつはまっすぐ飛ぶだけじゃあない。
お前さんの魂を追い続ける……その心が枯れ果てるまでな。
こいつを避け続けるのは大したもんだが
私一人を相手にしてるわけじゃないんだぜ。
気付かなかったか?
攻撃を避け続ける事で誘導されていたことに。
私は一匹狼を気取るつもりはないんでね。
吸血鬼は杭を打たれてその身を灰と化すがいいさ。
今川・貞俊
僕は戦うのは嫌いだ。
戦いが怖いわけじゃない。
戦いは、味方でも、敵でも、傷つけば悲しみが広がるだけだから。
「あなたにだって悲しむ人はいるだろうに、なぜそんなに簡単に人を殺せるんです!?」
剣鬼に問おう。
鬼に対しては無意味な問いだろうけど。
ただ、戦いに流される大人の割り切り方になんて納得できないから。
「傷つけあうだけじゃ、いつか必ず悲しみが返ってくるだけだって何でわからないんだ!このわからずやー!」
剣をとめないなら戦うしかない。
2回攻撃で攻撃しつつ、念動力で敵の行動の邪魔でもしよう。
味方が戦いやすいように。
サポートに徹するのが一番だろうから。
機動兵器はあくまで奥の手。
力だけで制したら、剣鬼と同じだ。
●
――衝撃が奔る。砂煙が舞う。
その砂煙を薙ぎ払うように、ヴェルは身を乗り出して戦闘体勢へ移った。
戦う事に狂った鬼を目の前に、ヴェルの瞳は剣鬼と同じ赤色の瞳へと染まっていく。同じ戦う者として、同じ髪の色を持つ者として、同じ命のやり取りをする戦場へと堕ちていた。
しかしヴェルと剣鬼が違うのは、桜という花が綺麗と思えるかどうかである。
今、剣鬼が舞う桜の花びらを尽く切り伏せながら、ヴェルの身体を切り裂かんと動いている。真っ二つに裂かれた花弁が、ヴェルの頬をそっと撫で落ちていった。
「綺麗だと思わない? 桜」
「綺麗だと思うぜ。――お前らの血を吸った後の桜はなァ!!」
剣鬼の咆哮に、ヴェルは動じなかった。それを証明するように、剣鬼の攻撃を寸前でかわしたのだ。
敵たる刃の一本は、吸血鬼の躯を綺麗に裂いた。それを恭介は見逃さない。
「敵味方見境なくか。ならそのテンションを使わせてもらう。全力でくるなら全力で答えるのが礼儀!」
マフラーを巻きなおし、携帯食料を口に放り込む。
さっきも吸血鬼との戦闘で使ったものだ。恭介の身体は悲鳴を上げるように軋み、しかしその力は完全に発揮していた。
剣鬼は頭をこてんと横に向けた。
「……ドーピングかぁ?」
「種も仕掛けもある。だがな、アルバ。アンタを満足させる為の技だ、しっかり喰らえ」
「面白ェ!!」
剣鬼が切り裂いたのは恭介の残像。しかし腕が四本とある鬼の一本を防いだ所で油断は出来ない。死角から現れた恭介、だが背中に回った大剣が恭介の攻撃を弾いたのだ。
一筋縄ではいかないと、恭介は理解している。だが恭介のユーベルコードは剣鬼に届いていた。恭介の攻撃を受け止めた反動で、剣鬼の体勢バランスは揺れたのだ。
「やるな。っつーか、さっきから死角を狙う奴ばかりだな、オイ!」
「そうかいそうかい。なら、正面からどうかな」
ナーシャの銃声が響く。剣鬼の肩口を抉った弾丸。
「飛び道具使う奴もいるのか」
「この戦場じゃ希少価値の絶滅危惧種さ」
抉れた。とは言え。
剣鬼は眉ひとつ動かさなかった。ナーシャとしては、それがきっと奴の自信の表れなのだろうと再確認できる材料だ。
そもそもだ。この戦場に興味本位で乗り込んで来る者がいれば、相当な物好きか、己が力を確信している者であろう。
味方であったのなら。
違う場面で出会えたなら。
頼れる(?)味方にもなったかもしれない。
が。オブリビオンとしてナーシャの目の前に居るからには、ただで帰す訳にはいかないし、帰すつもりも毛頭無く。
「ふむ、確かにかなりの経験を積んできたようだ。それじゃあ、ひとつ試してみようか!」
ナーシャは剣鬼へ狙いを定める。
「この、ソウル・ガンと似た武器と戦った事はあるかな!」
「何が来ようが斬り伏せる!!」
弾丸は放たれた。本来のものなら正面切ってのストレートで剣鬼へぶつかるはずだ。故に剣鬼は切った。だが空ぶった。何故なら、弾が剣技を避けたからだ。
「はあ?!」
剣鬼は跳躍する。ヴェルが、恭介が攻撃をしてきたのを回避する為に。
しかしナーシャの弾丸は跳躍した剣鬼を追った。追って、そして胸元を貫通した。
「その弾丸は――」
おっと、と。ナーシャは口を押えた。技のネタバレは己が力を明かすのと同様だ。
そうして戦闘は激化を極めていた。しかし、貞俊は両手の拳を握りしめていた。
戦うのは、嫌いだ。戦いが、怖いわけでは無い。
では何故足を動かさないのか。
それは。戦いは味方でも、敵でも、傷つけば悲しみが広がるだけだから――。
「あなたにだって悲しむ人はいるだろうに、なぜそんなに簡単に人を殺せるんです!?」
それは貞俊の抵抗にも似た訴えであった。ただ、剣鬼がたった一四歳の少年の叫びを真摯に受け止めるような敵では無いとは知れている。
貞俊の瞳に剣鬼の姿が映っていた。ただ、ただ、素直にその姿を映していた。
ナーシャの弾丸を斬り、ヴェルの炎を避け、恭介の剣と剣の擦れ合いに火花が散った。
しかし貞俊は戦場から切り離されているように、剣鬼からの反応は無い。諦めかけたその時、剣鬼は口を開いた。
「じゃあ教えてやろう、青二才。そうだ、この俺様にも、尻を乗っける主君てやつぁいるぜ?」
「なら!」
「だが今はその鎖から離れた一匹の鬼よ。この剣が、身体が、魂が、力を求めて止まない。
つまり俺様は、今俺様だけの為に戦いを欲する!! それ以外の誰かの事だと? 知ったことじゃあ無ェ!!」
「傷つけあうだけじゃ、いつか必ず悲しみが返ってくるだけだって何でわからないんだ! このわからずやー!」
貞俊の叫びに再び戦闘は繰り返される。
貞俊目掛けて飛んできた刃を、ナーシャは撃ち落とす。カウンターだ。
「何度も打ったら流石に目がなれるかね? 慣れさせるつもりは、無いけどねえ」
再び弾丸は放たれた、肉体よりも魂を殺す弾丸を。
「避け続けるかい? それも大したことだけどねーぇ?」
「チッ」
確かに剣鬼はナーシャのしつこい弾丸に対しては防御に徹する他無かった。上手く前衛たるヴェルと恭介が立ちまわっている為だ。
しかし時間を稼がれるのは剣鬼にとって最大の不利であった。何故なら剣鬼もまた、恭介と同じく己の力の限界を回せば回す程、己の体力を削られるからだ。
そうで無くとも、攻勢好きな剣鬼の手が防御に回されるのは、苛立ちを覚えるものだろうが。
斬った、切った、切っている。剣鬼の吐く息が荒くなりつつある。
「どうした、疲れたか?」
恭介の残像はただの干し肉となり地面へと転がった。
「うるせえ、安い挑発には乗らねえよ――!」
流れは猟兵の方へ向きつつあった。恭介が転がっていたバールを剣鬼の足元に忍ばせ、それを剣鬼が踏む。
さっきと同じだが、バランスを崩した剣鬼の身体。見逃さないヴェルは剣鬼の懐へと身体を捩じ込む。
「キミに合わせて剣戟の音を響かせよう」
それは凶器の二重奏(デュオ)。フェンシングの要領だ、回避されるのを考えていたがヴェルのそれは容易く剣鬼の瞳を貫いた。
「ぁぐっ!!」
ほぼ同時であった。ヴェルの攻撃の合間、剣鬼はナーシャの弾丸の回避に左半身を使っていた。右手はバランスを崩したのに対応し埋まっている。
故に。
ヴェルは愛刀を即座に納刀し、天地逆転、頭を下に足を上に、手で地を掴み足を回す。
「吹き飛んじゃえ」
回転する勢いそのままに、ヴェルの両脚は炎の竜巻の如く剣鬼の身体を吹き飛ばして――そして。
「いくぞ!!」
恭介の呼び声が響く、猟兵は武器を再度握り直した。
「誠実さのカケラも、調和のカケラも無いような男だね、キミは」
「さぁて……本気で行くぞ。受けてみよ!」
「良いね、ちっと楽しくなってきたよ」
焉夜、莉亜、フラウロスの攻撃が此処で混ざる。機動兵器を隣に、貞俊は息をのんだ。
これで決まらなかったら、その機動平気は貞俊の心の奥底――己の信じているものを全て破壊して、剣鬼をいたぶっていた所だろう。
だがいつだって、少年の夢は護られるものだ。
誰だって傷つけたくない、傷つきたくない。そんな貞俊の納得出来ないものを壊さぬように。
六重奏の攻撃が剣鬼の身体を叩きつけた――。
――いい気になるなよ。
今日の所は引いてやる。だがなオマエラのような骨がある奴ァこの世界にいるたァ嬉しいねェ。
必ずだ、次は必ず――貴様らを超えてやるからな。覚えていろ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 日常
『失われた祭事の復活』
|
POW : 櫓を建てる、祭りの資材を運ぶなど
SPD : 祭りの準備をする、料理を作るなど
WIZ : 祭りの企画をする、出し物を考えるなど
|
●
「……なんとかなった、かな?」
そんな間抜けた声が出た、この世界に猟兵を送ったグリモア猟兵であるキティ。
滅びを回避した村は、今だ血臭はすれど復興に向けて人々は動き出した。
残った猟兵たちは、この村の勇者だとか救世主だとか持ち上げられている。
そして何より、中止しかけた花見の準備はこれからだ――。
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「ドーピングって言われたか…あいつのテンションが悪いんだが…」
祭りの準備をするという事で手伝いをする。
流石に血の跡で祭りをするのも気が引けると思うので、桜付近の戦闘で飛び散った血を汲んできた水で洗い流し、ついでに大鍋を借りて鍋を作ろう。
沈んだ気分も上がるように、山まで食材を捕ってくるかな。
沢山食べられるように味は薄く、下ごしらえは怠らず臭みは抜いて。
野草とか茸もたっぷり入れよう。
「この村では鍋に何いれるの?じゃ、それを少し入れてくれるかな」
村人と話しながら鍋を作り、出来上がったら村人に振舞い他の猟兵もねぎらう。
「これ喰ったらまた次の依頼か。でもこの瞬間はほんとによいね」
●
戦闘が終わり、暫くの時間が流れていたこの村。
静けさを取り戻し、異変が消えた村人たちが少しずつ顔を出し始めた。
中には犠牲を思って無く者たちがいた。
中には再び訪れた安寧に心落ち着かせる者たちがいた。
中には猟兵たちを勇者だと称える者たちがいた。
そんな中。
「ドーピングって言われたか……あいつのテンションが悪いんだが」
恭介は村人から渡された水を片手に、遠くを見つめていた。思えば己がユーベルコードにそのように言われるのは初めてであったか。
恭介の瞳には復興や片付けをせんと動く村人たちの姿が見えた。
この世界では争いは日常の一コマでもある。中には、手際よく片付けを始めようとする姿に、ある意味恭介は悲しい感心が心のなかに疼いている。
「手伝おう」
村人にそう言った。
「あ、花見の準備もありますし、休んでくださっていても……」
「いや、手伝う」
「ありがとうございます……!」
村人とそんな会話をしながら、恭介は水を入れた桶を持てば、飛び散った血を流し始める。痛々しい戦闘の傷跡ではあるが、こうして水を撒けば桜の花びらと一緒に流れていく。
そうだ。あとで大鍋に料理を作って村人たちに振る舞おう。
沈んだ気分も上がる様に、山で食材を獲ってくるのありだ。
暫くして。
大鍋に下ごしらえした食材をいれながら、人々が集まってくる。村の女たちは恭介の料理を手伝ってくれるようだった。
「この村では鍋に何いれるの? じゃ、それを少し入れてくれるかな」
村人たちと会話をしながら、少しずつ打ち解けていく姿があった。村の雰囲気も少しずつ溶かされていくように、笑顔が増えていく。
「これ喰ったらまた次の依頼か。でもこの瞬間はほんとによいね」
成功
🔵🔵🔴
星蝕・焉夜
【POW】
「……なんとかなったみたいだな……ひとまずはこれで安心か……
花見の準備か、ここまで来たのなら手伝うとするか……
出し物を考えたりするのは苦手だから、資材運搬の方を手伝うとしよう……」
木材や必要な物を運んだり
櫓を建てるのを手伝う
「足りない物があれば用意して持ってくるとするか……」
櫓を建てながら周囲の人が怪我しないかも確認を怠らない
「折角の祭り事だ……
怪我人がいない方が楽しいだろう……」
準備中にキティ(f16319)を見かける事があれば声をかけるか
「キティか……お疲れ様だ……
キティの予知が無ければ祭りどころか被害が大きくなっていただろうな……」
キティに感謝しつつ準備を続ける
アドリブなど歓迎
●
一際賑わう鍋会場とは、また別の場所。
「……なんとかなったみたいだな……ひとまずはこれで安心か……」
焉夜は沈静化し、そして片付けを始めている男たちが目に入った。
「花見の準備か、ここまで来たのなら手伝うとするか……。出し物を考えたりするのは苦手だから、資材運搬の方を手伝うとしよう……」
焉夜は家が半壊し、木材が積み重なるようになっているのを見て少しばかり息を吐いた。どうやらこれを運ぶのだが、量は多い、一日では無理そうだが。
しかし周囲を見れば村人たちは慣れたように運び出している。焉夜は負けじと木材を両脇に抱えて、村の中心広場へと運んだ。
恐らくその木材は使えるか使えないか判別してから、使えれば何かの材料に、使えなかったら燃やすのだろう。
「足りない物があれば用意して持ってくるとするか……」
また別の作業、櫓を建てつつ、焉夜は周囲の村人たちが何か事故や怪我が発生しないか逐一確認している。
「折角の祭り事だ……。怪我人がいない方が楽しいだろう……」
「焉夜さま、こんばんは。お疲れ様です! 復興中ですか、お手伝いします」
ふと後ろからキティ・エウアンゲリオンが話しかけてきた。彼女はこの戦闘を予知し、ここまで猟兵を飛ばしたグリモア猟兵である。
「キティか……お疲れ様だ……。キティの予知が無ければ祭りどころか被害が大きくなっていただろうな……」
「あはは、こちらとしても、事件がしっかり片付いたようで良かったです。焉夜さまの活躍も、しっかり見てましたよ」
ドヤ顔で言い張るキティに、焉夜は笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
ナーシャ・シャワーズ
そうだったな、ここは花見の準備中だったんだった。
ダークセイヴァーって世界でそういう気概があるやつらってのは悪くない。
どんな状況でも心は、魂は屈しない……
それがなけりゃあたとえ力があったとしても
ヴァンパイアの支配を打ち破ることはできんだろうよ。
どっちが欠けてもダメなんだ。今回はお前さん方、運がよかったね。
とはいえ、私は大人数でギャーギャー騒ぐのはあまり好かん。
準備が済んだら私はお先に失礼させてもらうよ。
しかし遠くで、花や祭りの様子を見ながら一杯やるのは悪くない。
まだまだ闇は深く、光は遠いが……
いつか何かにおびえることなく花見ができる、
そんな世界に乾杯ってやつだ。その日までせいぜい頑張んなよ。
●
ふと、ナーシャは空を見上げた。
いつもと変わらない黒い黒い天空が、のったりと流れているだけであったが、先程よりはいくらか明るく見える。
その空に、花弁が舞っていた。黒い風景を彩るように、淡く光るような桜の花弁がふわりふわりと。
「そうだったな、ここは花見の準備中だったんだった」
思えば、そういう未来があった。
暗い影を落とす世界だが、それでも一握りの人間たちは強く逞しく、それこそ、絶望に負けぬように生きている。
だから人々で桜を、季節を、愛でようとしているのであった。
「どんな状況でも心は、魂は屈しない……。それがなけりゃあたとえ力があったとしても」
――ヴァンパイアの支配を打ち破ることはできんだろうよ。
そのアンバランスな均衡で保たれている安寧を想えば、他の世界よりも崖の切っ先にある世界であることは知れよう。
だが、村人たちは解らないが、猟兵がいる。そして希望を捨てぬ村人がいる。そのどちらかが欠けてもいけないとナーシャは説いた。
「今回はお前さん方、運がよかったね」
もしかしたら次の悲劇には、猟兵は来ないかもしれない。予知が、されないかもしれない。そんな不幸が多い。だがこの村は、その僅かな運を味方にしたのだ。
村人のひとり――顔を上げた少年が、「?」という顔をし、ナーシャは微笑みを返す。
祭りが始まろうとしている村。
その喧噪は、ナーシャの心にはフィットしないものであったが――……。
――しかし遠くで、その祭りと桜を見ながら一杯やるのは悪くは無い。
遠い遠い、未来の話かもしれないが。いつか、この世界がオブリビオンたちの存在に怯えずに桜を愛でることが出来るのなら、どれほど幸せな事だろうか。
「そんな世界に乾杯ってやつだ。その日までせいぜい頑張んなよ」
限りない限りない可能性の未来(ひとつ)に対して、ナーシャは持っていた酒を掲げた。
――花落散る 完。
大成功
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