●巷で噂のアニメーション
「なぁ、『ザニーユ・モアのカートゥーン劇場』って知ってるか?」
「はぁ? なんだそれ?」
ある都市の一画、ファストフード店のカウンターにて。
茶ネズミのキマイラが聞き返すと、隣に座る灰色ネコのキマイラが端末を取り出した。彼は動画サイトを開き、ある動画の再生ボタンを押した。
陽気な音楽とともにアニメーションが流れる。主線は太く、色の配置は原色に近い。俗にカートゥーンと呼ばれる類いのものだ。
ジャンルはコメディ。青いキャップを被ったネズミの少年がキマイラにパイを投げつけたり、突然現れた消火栓にホースを繋いで水をぶち撒けたりしている。主人公らしき少年も被害を受けるキマイラたちも激しく躍動し、まるで生きているかのようだ。
「普段観るアニメとは感じが違うなぁ……にしても、動きはいいな」
「だろ? これが個人チャンネルでタダ見できるんだよ。凄くないか?」
「まぁ……ん、なんかライブ配信やってるぞ」
「マジか! 観てみようぜ!」
表示をタッチし、ページを移す。
生配信のその画面でもカートゥーンが放送されていた。アニメの自主上映。そう推し量れたが、同時に感じ取ったのは確かな違和感だった。
「おい、この背景……俺らの街に似てね?」
「ホントだなー。もしかしたらモデルにしたのかも――」
店の壁が破壊される音により、呑気な発言が遮られる。
二人は咄嗟に振り向いた。店の外を埋め尽くしているのは、茹で上がったイカに似た怪人の群れだ。イカの体長は標準的なキマイラの身長を越えている。巨体を生かして住民たちの退路を次々と塞いでは墨を噴出し、キマイラたちを真っ黒に染めていく。
一体のイカの背にテレビカメラを抱えた人影があった。その姿はカートゥーンの主人公であるネズミの少年に瓜二つだった。
「ゲソフレイム……君らって最高のイタズラ仕掛け人だよ! そのまま街の人をイカスミでベトベトにしちゃえ!」
「任せるでゲソーッ!」
指示の後、カメラを灰ネコと茶ネズミのキマイラたちへと向ける。レンズ越しに見た彼らの外見は、さながらカートゥーンのキャラクターのようだった。
「ザニーユ・モアのイタズラ生放送スペシャル、まだまだ続くよ! 笑いたいならチャンネルはそのままで!」
上機嫌でカメラの向こうへ語りかけてから、ザニーユは目の前に突然ぶら下がった紐を引っ張った。
瞬間、逃げ出そうとしたキマイラたちの頭上に巨大な金床が落下する。圧し潰されてアニメみたくペラペラになった彼らを眺め、ザニーユは歯を覗かせて笑った。
●グリモアベース
「……私も他人のこと言えるタイプじゃないですけど、イタズラにしてはやりすぎですよね」
木鳩・基(完成途上・f01075)はやれやれと肩を竦め、集結した猟兵たちに向き直る。
「キマイラフューチャーで起こる事件の予知です。『ザニーユ・モア』を筆頭にした怪人集団が街にイタズラを仕掛けるみたいですね。住人が被害に晒される前に怪人たちを倒してください」
言いつつ手帳から取り出したのはスクリーンショットのコピーだ。
切り取られているのは動画チャンネルのプロフィール画像。キャップと笑顔マークのプリントシャツを着用し、ザニーユがにやりと笑みをつくっている。頭にはネズミの耳があった。
「典型的なやんちゃ系イタズラ小僧ですね。映像をカートゥーン風に変換するカメラを持っていて、あちこちでイタズラを仕掛けては動画を撮ってるらしいです。それがまさか現実の出来事と視聴者は思わないでしょうし、チャンネルはそこそこ人気っぽいですよ」
今回の街の襲撃は彼の主導で行われるようだ。最も彼はイタズラ生放送をしたいだけのようだが、多くの人々が被害を受ける時点で見過ごしてはおけない。
今度は手帳を開き、彼女は猟兵たちにページを示す。
十本のうち二本の足で松明を掲げたイカが描かれ、それは真っ赤に塗られていた。
「それで、協力している怪人軍団がこの『ゲソフレイム』たち。……ザニーユからすれば、イカスミでベトベトにできるのが魅力的だったんでしょうね。でも、戦闘になると火を武器にもしてくるみたいです」
大将であるザニーユを叩くためには、まずゲソフレイムを攻略せねばならない。
油を活用した火吹き攻撃の他、形態を変化させて火炎放射器を操る危険な技も持ち合わせている。見た目は冗談のような怪人だが、正面戦闘では厄介な相手になる可能性もあるだろう。
そこまで話して、基は話題をザニーユに戻す。
「ザニーユが使う道具がちょっと変わってまして。受けるダメージは大きくないんですが、なんかこう……変な状態にされるというか。それこそマンガみたいな」
例えば金床を落っことす技であれば骨が折れるのではなく、体全体が紙のように薄っぺらにされてしまう。他にも様々なコミカルな武器を多用してこちらを混乱に陥れるに違いない。
あくまで遊びということか。基は眉を顰め、呆れを映したようなため息をついた。
「ま、命目当てのオブリビオンと比べると可愛げはありますが、迷惑は迷惑ですからね。イタズラにも程度があるってことを知らしめて、ザニーユを反省させてやってください。よろしくお願いします!」
彼女は猟兵に微笑みかけ、転送の用意を始めた。
堀戸珈琲
どうも、堀戸珈琲です。
海外アニメの専用チャンネルに登録しようか悩む今日この頃です。
●最終目標
『ザニーユ・モア』の討伐。
●第一章について
『ゲソフレイム』との集団戦です。
戦闘開始直前からザニーユのカメラは回っているので、何かアピールがあればどうぞ。
●全体の進行について
集団戦、ボス戦、日常と進みます。
日常では生放送でパフォーマンスに挑むことができます。グリモア猟兵である木鳩・基の参加は可能ですので、何かありましたらプレイングにお書きください。
キマイラフューチャーのコミカルかつスタイリッシュな感じを戦闘描写に反映できたらなと考えています。
冒頭文の投稿後にプレイングを送信していただけると助かります。
●その他
ザニーユ・モア戦にて、スラップスティック攻撃の種類を指定することができます。希望がありましたらプレイングにそれとなくお書きください。
それでは、みなさまのプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『ゲソフレイム』
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POW : 汚物は消毒でゲソーッ!
【松明に油を吹き付け発射した火炎放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【油の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 俺色に染めてやるでゲソーッ!
レベル分の1秒で【ベタベタするイカスミ】を発射できる。
WIZ : 見るがいい、これが俺の変身ゲソーッ!
対象の攻撃を軽減する【激情体】に変身しつつ、【右腕に装備された火炎放射器】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●イカスミ・メラメラ・パニック
巨大なイカの群れが大挙し、街を墨で覆い尽くしていく。
「全員真っ黒にしてやるでゲソーッ!」
「いいねぇ! その調子だよ!」
けらけらとザニーユが煽て、ゲソフレイムはさらに勢いを増した。
「スミを吐くだけでこんなに褒められるなんて……イカ冥利に尽きるでゲソーッ!」
逃げ遅れたキマイラへイカスミが噴かれた。
しかし、黒い線状の液は届く前に断ち切られる。
一人の猟兵が颯爽とキマイラの盾になったのだ。
「おおっと、ここで猟兵の登場! さてさて、どんな面白展開になることやら!」
弾力あるゲソフレイムの背を利用し、ザニーユはボヨンと建物の屋上へ。観客を煽り立てながらもカメラは階下を映す。
「ゲソフレイム、炎解禁だ!」
「やってやるでゲソーッ!」
ゲソフレイムは取り出した松明に火を灯す。燃え盛る炎はレンズを通してより原色に寄った。
「オレたちはただのイカじゃないでゲソ! メラメラのチリチリにしてやるでゲソーッ!」
アンジェリカ・ヘインズビー
お仕事です、頑張りましょう。
…イカスミはかかりたくないですね、
火炎放射はハンマーで[武器受け]、イカスミは【スカイステッパー】で跳びまわってかわします。
接近できたらゲソフレイムに【ハンマークラッシャー】を叩き付けましょう。
「伸しイカにしてあげます」
(ゲソフレイムがハンマーで潰れた拍子にイカスミを吹き出し、避けようが無く全身イカスミで真っ黒になります。)
【アドリブ歓迎】
イルビノ・リィシャ
やあい、やいやい。イカさんめー! みんな困ってるでしょっ。
正義の味方、イルビノマンが相手だあ!
ええと、イカさんは木の棒に火を点けたみたいだね。
何の変哲もない木の棒に、簡単に火を点けられるなんてすごい! 私も頑張らなくちゃ。
大きな斧の柄をぎゅっと握ってー。
火に触るときっと熱いから、お友達は封印。今日は私だけの力でなんとかしよう。
イカさんからの攻撃は【野生の勘】で避けられると信じて、【グランドクラッシャー】でぶん殴る! 【怪力】の【捨て身の一撃】、食らえでゲソーッ!
●イカスミ・メラメラ・パニック・Part1
出鱈目にイカスミがぶちまけられた都市。点々と黒を垂らして逃げるキマイラたち。
度を越えたイタズラに街は既にパニック状態だ。
「やあい、やいやい! イカさんめー! みんな困ってるでしょっ!」
拾い物の斧の刃先を向け、威勢よくイルビノ・リィシャ(がおがお、どかーん!・f15688)が叫ぶ。自身の背丈より大きなイカを前にしても決して怯みはしない。敵意を示し、狼の耳はぴんと立っていた。
「なんでこういうことするかなぁ! いますぐにやめなよっ!」
「イヤでゲソ! 邪魔するならお前らもベトベトにしてやるでゲソーッ!」
「仕方ないですね。……お仕事です、頑張りましょう」
自分を含めた仲間に呼びかけるようにアンジェリカ・ヘインズビー(寡黙でサイボーグなバーバリアン少女・f11144)が呟く。
手のひらで小さな槌を握る。それに魔力を流し込んでから、手首のスナップを利かせて空に投げた。
鎚は一瞬でぐんと伸び、全体が巨大化する。落下して戻ってきた槌の柄を両手でしっかりと握って、アンジェリカは槌の頭を下ろした。その全長は彼女の背を優に超えている。
双方、戦う準備は整った。
「正義の味方、イルビノマンが相手だあ!」
明るい一声とともにイルビノが先陣を切る。
「望むところでゲソーッ!」
「う、うわぁっ!?」
即座にゲソフレイムたちは陣を組み、一斉に火を吹いた。直感ですかさず跳び退いたからよかったものの、イルビノのいた地点にまで炎が及んでいた。
視線の焦点はゲソフレイムの持つ松明へ。何の変哲もない木の棒に簡単に火をつけられる時点で驚嘆していたが、芸当はそれに収まらないようだ。
「あぶなかった……。火も飛ばせるなんて、イカさんたちすごいね!」
「へっ!? い、いや、それほどでもないでゲソ……」
目に見えて照れるゲソフレイムをよそに、イルビノは大きな斧の柄をぎゅっと握り締める。
「私も頑張らなくっちゃ!」
「……え?」
硬い道路を蹴る。炎の残るそこを踏めば足裏に熱が伝わる。
火に触るときっと熱いから、お友達は封印。一旦は私だけの力でなんとかしよう。そんな考えを心に潜める。
油断して構えを解いた敵との距離を一瞬で詰めると、彼女は斧を高々と振り上げた。
「ぶおんっ!」
元気な風切り音とともに、ゲソフレイムの群れが弾け飛ぶ。
「ゲソーーッ!?」
大きく跳ね上がるイカの影が宙に上がった。
「この調子でいくよ!」
「おのれーッ! 小癪なヤツでゲソーッ!」
嬉々として斧を握り直したイルビノへ火炎放射が迫る。熱を感知したときにはもう遅い。肌が焼ける感覚を前に、イルビノは目を瞑った。
「させません」
差し込むように炎とイルビノの間に槌が挟まれる。空中から降り立つと、アンジェリカは槌の頭を重ねるように持ち直した。放出される炎に対して足を開いて立ち、その勢いが弱まるのを待つ。
ゲソフレイムが油を口に含んだ瞬間、アンジェリカはイルビノの体を掴むと虚空を踏んで空へ躍り出た。慌てるイルビノを怪力でしっかり抱え、アンジェリカは敵群から遠のいた。
「一旦下がって空から仕掛けましょう」
「な、なるほど……それじゃ、任せたよ!」
イルビノの腕が腰に巻き付く。彼女はアンジェリカより背が高いが、機械が組み込まれたアンジェリカのパワーには影響しない。埋め込み式補助装置の振動を感じ取ってから、脚を深く折り曲げる。再び、アンジェリカは空中を跳躍した。
「そこにいても狙えるでゲソーッ!」
うるさい声へ向けば、ゲソフレイムたちと視線が合った。
「イカスミでベタベタにして撃ち落とすでゲソーッ!」
一体の号令の後に、大量のイカスミが発射される。斜め上へと吐き出されても勢いは衰えず、まっすぐにアンジェリカとイルビノを狙撃しようとしていた。
「……イカスミはかかりたくないですね」
撃ち落とされるとかとは別に、単純に服を汚したくない。少しむっとした顔をした。
「揺れます。しっかりと掴まっていてください」
「わ、わかった!」
イルビノの返答を聞き、アンジェリカは虚空にて踏み込んだ。接近するイカスミを前方移動も兼ねて横へ跳んで躱す。軽々とした回避を続け、表情は無機質なまま変わらない。
気が付けば、アンジェリカたちはゲソフレイムの頭上を陣取っていた。
「よーし、いくよー!」
自らイルビノが手を放し、斧を構えて爆弾さながらに降下。勇猛果敢に飛び込んでいけば自然と両手に力は入る。
「食らえでゲソーッ!」
痛烈な打撃が敵群に穴を空ける。衝撃を受け、ゲソフレイムの一群が吹っ飛ばされた。
「む、無茶苦茶しやがるでゲソーッ!?」
「まだ終わっていませんよ」
悲鳴めいた叫びにアンジェリカが答える。退避済みの敵に空を蹴って間合いを詰め、槌の頭を天に掲げた。
「伸しイカにしてあげます」
「ゲ――」
静かな宣言と同時に衝撃が一体のゲソフレイムを直撃する。その衝撃は波紋状に広がり、またイカが打ち上がった。
潰された拍子にゲソフレイムは墨を吐いた。イカスミはアンジェリカを掠め、上空へと放たれる。
彼女はふうと息を吐き、ぐるぐる目になって気絶したゲソフレイムを見下ろした。
「……なんとか、かけられずに済みましたか」
直後、上に吐き出されたイカスミが彼女に降りかかる。ザーッと全身真っ黒にされ、わなわなと震えが起こる。
「あ、えっと……大丈夫?」
「……もう!」
イルビノが覗き込むと、アンジェリカは目に涙を溜めていた。
成功
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ネリー・マティス
かーとぅーん?ああー!あのよく動くやつ!おもしろいよねー!現実のようすがカートゥーンになるなんて、ちょっと面白いかも……じゃなくって!はやくやめさせないと!
イカさんたちが炎を吐いてきたら、【マキ割り斬】で炎をぶった切るよ!その光景は神話に語られる海割りのごとし!
そのまま正面から突っ込んでいって、【怪力】を乗せた横方向の【マキ割り斬】連発!イカさんたちをイカリングにしちゃうよ!
どう?どう?わたしのパワフルさ撮れたかな?
●イカスミ・メラメラ・パニック・Part2
「かーとぅーん? ……ああー! あのよく動くやつ! おもしろいよねー!」
パチンと手を合わせる音がやけに大きかった。
ザニーユのカメラに無邪気に手を振り、ネリー・マティス(大きな少女・f15923)は微笑んだ。極太の腕が振るわれると、ただそれだけで風が起こった。
「現実のようすがカートゥーンになるなんて、ちょっと面白いかも……」
どんな感じで映っているのか気になり、照れ笑いに頬が緩む。筋骨隆々な肉体と童顔の組み合わせは、カメラの向こうには誇張だと思われそうだ。だが、れっきとした現実だ。
しばらくしてネリーは我に返る。
「……じゃなくって! はやくやめさせないと!」
つま先の方向をゲソフレイムたちに向け、大斧を広い肩に担ぎ上げる。重量があるだろうそれを掲げたとき、使ったのは腕一本だけだった。
一歩足を繰り出せば振動。音を発生させながらネリーは接敵する。幅のある足を振り上げる姿は、さながらマンガで描写される巨大ロボットの進行を思わせた。
ゲソフレイムたちは目の間にしわを寄せる。
「殴られたら一溜りもなさそうでゲソ……! なら、寄らせなければいい話でゲソーッ!」
列を組み、積み上がる。一斉に油を吹けば、炎の壁がネリーの前に立ちはだかった。
「それはどうかなあっ!」
自信を示すかのように口の端を上げる。
勢いは殺さず、ネリーは火炎の前で踏み切った。地面にヒビが入る。そうして跳び上がって、肩に担いだ斧を天へ仰ぐ。
「ぱっかーんとやっちゃうよー!」
上身の筋肉が躍動する。落下する速度も加算して躊躇なく斧を振り下ろせば、空気がぱっきりと左右に割れる。火炎も分裂し、ゲソフレイムへの道が開く。
硬いものだろうが実体のないものだろうがかち割ってしまう『マキ割り斬』。その光景は神話に語られる海割りの如し。カメラの向こうには虚構だと思われそうだ。だが、れっきとした現実だ。
「なっ、えっ、ゲ、ゲソーッ!?」
「さーてイカさんたち、覚悟はいいかなー?」
あまりの出来事に目を点にする敵を無視して進み、正面から突っ込んでいく。
彼女は斧を腰元で構えると、片脚を踏み出して膝を曲げた。
「イカリングにしちゃうよっ!」
力の籠ったスイングが直撃する。それから同じ方向の攻撃が繰り返された。半円を描くように振るわれた斧は幾多もの敵に命中し、スパスパとゲソフレイムたちを輪切りにしていった。
敵を一掃して無音になったその場から、ネリーはザニーユのカメラに振り返った。
「どう? どう? わたしのパワフルさ撮れたかな?」
片手でつくったピースサインを突き出し、ぺろりとお茶目に舌を出す。もう一方の手ではその腕の力だけで大斧を支えていた。
成功
🔵🔵🔴
マックス・アーキボルト
放火に墨の撒き散らし、市民への危害―動画アカウント凍結間違いなしだねコレは!退治させてもらう!
相手のイカスミを【加速魔法式・防性】で回避だ。地面の墨も見切りをつけて、ダッシュ、ジャンプでかわそう!
水の【属性攻撃】、魔力を冷水に変えて敵に発射、消火と水洗いも同時に行うよ!火炎耐性もついてるから、炎もへっちゃらさ!
視聴者への呼びかけも忘れずに。世界知識でカートゥーンは多少知ってる、だから―
「カートゥーンアニメの最後は反省からの教訓がお約束なんだよね。視聴者の皆も、ザニーユが反省する場面をお見逃しなく!」
ロワ・イグ
か、かわいいっ
ザニーユさんのスクショを見て思わず
まだ子供に見えるザニーユさんは悪いことを知らないのかもしれません
しっかり叱ってあげないとっ
街に移動すると墨だらけ
全部真っ黒にしたらみんな一緒に見えちゃうでしょー!兎に角止めなさーい!
ゲソ達を挑発して引き付けます
ちょっとちょっと!だからって燃やしたらみんななくなっちゃうでしょ!?
慌ててサイキックオーラを散開させて炎を受け止めていきます
その間ペンギンを描いて、墨を滑ってもらい仲間に攻撃するゲソを妨害してもらいます
炎でいっぱいになったら、空に浮かんで鈴蘭の嵐で炎花を操りゲソ達を焼いていきます
美味しそうな匂いがするかも
昔よくお世話になりました(両手合わせ
楠瀬・亜夜
ふむ、ここがキマイラフューチャーですか
噂通りに奇抜な場所…ふふふ、なんだかワクワクしますね
ともあれ世界を乱す者を捨て置く訳にはいきませんね
悪戯といえ罪は罪、さぁ裁きの時間です
(ふふ…決まった…既にカメラは回っているならば
つまり私のカリスマっぷりを披露するチャンス!)
ふざけたような攻撃ですが中々に厄介…
加えて炎を使うとなると近距離は避けたい所ですね
まず【knife vision】によるナイフの雨で攻撃を仕掛け
撃ち漏らした敵を【クイックドロウ】を駆使した銃撃で撃破します
墨攻撃に備えこちらも素早く動き回りながら対応していきましょう
この際には地面の墨にも注意が必要ですね
さぁ、のしイカにしてさしあげます
●イカスミ・メラメラ・パニック・Part3
混沌とする未来都市。最先端を往くデザインの建造物群は愉快な色で飾られている。その全てが今、イカスミで均一に塗り潰されていた。
「ふむ、ここがキマイラフューチャーですか。噂通りに奇抜な場所……ふふふ、なんだかワクワクしますね」
口許に微笑を浮かべ、楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)は周囲を見上げた。初めて訪れた世界の景色をしかと目に焼き付ける。
「ともあれ、世界を乱す者を捨て置くわけにはいきませんね」
ざっと一巡させてから、視線は群れるイカの怪人たちへ。
「悪戯といえ罪は罪、さぁ裁きの時間です」
着崩した外套のポケットに手を入れ、ただ殺気を向ける。
一連の立ち振る舞いを終え、亜夜は目だけを動かしてザニーユのカメラを見た。
(ふふ……決まった……!)
表情は崩さず、心の中で歓喜に悶える。
既にカメラは回っているならば、つまりはこのカリスマっぷりを披露するチャンス。有効活用しない手はない。
クールに決める亜夜を映し、ザニーユは渋い顔をした。
「イタズラ生放送なのに猟兵が目立ってるじゃん! ゲソフレイム! もっと頑張れよー!」
わーっと文句を飛ばし、その場で地団太を踏んだ。
「か、かわいいっ……!」
実物のザニーユを遠く眺め、ロワ・イグ(駆ける和み星・f15270)が思わず口にした。開きっぱなしになりかけた口を手で覆い、しばし見惚れる。グリモアベースでスクリーンショットを見たときから思っていたことだが、やはり可愛いものは可愛い。
外見からするとザニーユはまだ子どもだ。何が悪いのかをよく知っていないのかもしれない。その分、しっかり叱ってやらねば。使命感じみたものを抱き、ロワは手をぎゅっと握った。
左腕に取り付けたアームキャノンを確かめ、マックス・アーキボルト("ブラス・ハート"マクスウェル・f10252)もザニーユを見やる。蒸気式マシンのランプには淡い緑の光が灯った。
「放火に墨の撒き散らし、市民への危害――動画アカウント凍結間違いなしだねコレは!
退治させてもらう!」
瞼は薄く閉じ、半ば呆れていた。既にイタズラの度を越えている。事の真相がキマイラたちに知れ渡ったら炎上間違いなしだろう。
その辺は世界の住民に任せよう。今は本人たちを実力行使で止めに入る必要がある。
蹴散らすべき相手に視線を移し、唇を一文字に結ぶ。
マックスの視線を遮って、ロワがイカスミを吐いて回るゲソたちの前に飛び出した。腰に手を添え、ビシッと人差し指を相手に突きつける。
「全部真っ黒にしたらみんな一緒に見えちゃうでしょー! 兎に角止めなさーい!」
「頼まれても止めないでゲソ! この街は俺たち色に染めてやるんでゲソーッ!」
「ダメなものはダメっ! こんなにカラフルな街なのに!」
頬を膨らませ主張を繰り返す。声を張り、腕を大きく振り、できるだけ多くの敵の注意を引き付ける。
「しつこいでゲソ! それ以上騒ぐと……こうでゲソーッ!」
ゲソフレイムは油を含み、一斉に火を吹いた。
放たれた灼熱にロワは目を丸くする。けれど、次の一手は素早かった。
慌てて全身にサイキックエナジーを巡らせ、オーラのヴェールを分散。光は絶えることなく炎を受け止め続ける。
「ちょっとちょっと! だからって燃やしたらみんななくなっちゃうでしょ!?」
防御を維持したまま、ロワはマックスと亜夜にアイコンタクトを計った。
行動の意図を理解すると二人は駆け出した。
回り込みながら、亜夜は敵の行動を反芻する。
「ふざけたような攻撃ですが、中々に厄介……加えて炎を使うとなると、近距離は避けたいところですね」
行動制限に適したイカスミと単純だが危険な松明の火。近距離で強力な技がない限りは遠距離から攻撃を重ねていく方が無難だろう。
それを踏まえ、ホルスターから拳銃を抜き取ってから目を瞑る。彼女の周囲に細身の銀のナイフが二十数本出現したのは直後のこと。中空で金属が冷たく光った。
「さぁ、伸しイカにしてさしあげます」
脚は止めない。短く呟くと、ナイフは急加速してゲソフレイムたちに降り注ぐ。
「ゲソーッ!?」
火吹き攻撃に夢中だった敵が跳び上がった。念力で自在に動くナイフの雨は着弾と離脱を繰り返し、赤い体表に着実に傷を残す。
「あそこでゲソーッ!」
動き回る亜夜を捉えようと敵は墨を吐き散らす。
「残念。そんなに簡単にはいきませんよ」
黒液の放出軌道を読み、亜夜は身軽に跳び退いた。地面に撒き散らされたイカスミを警戒しつつ、墨を吐いた一体へ照準を合わせて即座に数回トリガーを引く。放たれた弾丸が真っ赤な体に穴を空けた。
「ちょこまかと……早く押さえるでゲソーッ!」
亜夜にも手間取り、意識が分散する。
横殴りに急噴射された水流が迫っているとは、直前になるまで知覚できなかった。
「ゲ――!?」
凍えるような冷水がゲソフレイムを押し流す。敵が水流の来た方向に目をやれば、アームキャノンを構えたマックスの姿があった。
「よし、成功した!」
左腕のキャノンを軽くもたげ、独りほくそ笑む。
「おのれーッ! お前も真っ黒にしてやるでゲソーッ!」
「悪いけど、シンプルにお断りさせてもらうよ!」
イカスミを認識すると、彼は加速魔法を発動する。蒸気式グリーブの靴底から魔力を推進材として噴出。世界を置いてけぼりにするスピードで駆ければ、相対的に世界はスローに映るものだ。回避行動を取るには余裕が有り余った。
勢いを保って地面を駆ける。地面がイカスミ濡れになった区画を捉えると一気に加速し、見切りをつけて跳躍する。
「ど、どこ行ったでゲソッ!?」
「こっちだよ!」
アームキャノンを突き出し、マックスは魔力を装填する。一定値まで溜まってから、彼はキャノンから冷えた水流を撃ち出した。火も墨も押し流し、捻りを交えて水流は迫る。急流を切り取ったかのように食らいかかって、敵を根こそぎ掻っ攫う。また何体かが空へ打ち上げられた。
「ここまで手も足もでないとは――かくなる上は、でゲソーッ!」
生き残りのゲソフレイムたちがぷっくりと膨れ上がる。
「見るがいい、これが俺の変身ゲソーッ!」
真っ赤なボディはさらに赤く。激情体に変化し、一番右の足には火炎放射器が現れた。具体的には不明だが、強大な何かを得たような気がする。
「ふっふっふっ……これでより打たれ強くなったでゲソ! さぁ、この火炎放射器の威力を――!」
言いかけたところで、ゲソフレイムは雷に打たれたかのように痺れを起こした。
すぐそばでは、我関せずといった様子でペンギンが脇を通り抜ける。
「よくわかんないけど、私のアートで痺れさせちゃうよっ!」
ロワは次々とオーラの大筆でペンギンを描いていく。創り出されたアート群は独りでに動き出して墨の上を滑り、一直線にゲソたちを目指す。圧倒的な速度で命中し、最初の一体と同様にビリビリと硬直させた。
「さーて、仕上げにかかるよーっ!」
抱える大筆は柄の先端から鈴蘭の花弁に変わる。花弁を操り、オーラヴェールで受け止めた炎を通して炎花に。その火を意のままに、動けなくなったゲソフレイムを取り囲むように配置した。
パチパチ、炎が弾ける。こうなると打たれ強さとかはもう関係ない。ゲソフレイムたちが炙られ、香ばしい風が辺りに漂う。美味しそうな匂いが鼻許をくすぐるうちに、なぜだかロワは両手を合わせていた。
「昔、よくお世話になりました……」
「なっ!? その一番物騒なポーズを止めるでゲソーッ!?」
「……伸しイカというより、焼きイカができそうですね」
苦笑いを零し、亜夜はナイフを乱舞させる。多重に拘束された相手を追い詰めていった。
自らが武器にしていた炎で焼かれ、ゲソフレイムはお手上げ状態だ。
「ゲソーッ! もう炎はこりごりでゲソーッ!」
テンプレートじみた悲鳴を聞き、マックスはため息を吐く。カートゥーンについては多少知っている。こんな展開は定番中の定番だ。
ザニーユのカメラを探すと、彼は視聴者に呼びかけた。
「そう、カートゥーンアニメの最後は反省からの教訓がお約束なんだよね。視聴者の皆も、ザニーユが反省する場面をお見逃しなく!」
バシッと決めて、マックスは第一幕を締め括った。
成功
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第2章 ボス戦
『ザニーユ・モア』
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POW : ぺちゃんこになっちゃえ!
【対象の頭上】から【対象のレベルの二乗tの重さの金床】を放ち、【ぺちゃんこにする事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : スラップスティックショータイム!
いま戦っている対象に有効な【コミカルな結果を引き起こす道具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : もっと笑わせる為に!
戦闘力のない【カートゥーン風に変換されるテレビカメラ】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【出演者の滑稽な姿を見た視聴者の笑い】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
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●ドタバタ・ペラペラ・パニック
ゲソフレイムが全て倒され、ザニーユは苛立ちを露わにする。
「つまんないの! ……こうなったら、主役が出るしかないね!」
高い建物から身を乗り出す。ピョン、ヒューンと独特なサウンドを鳴らしてザニーユはカメラを抱えて地上に降り立った。
彼はどこからともなくプロペラを取り出す。それをカメラにくっつけてやるとプロペラが回り、原理不明のまま空に浮かんだ。
見上げてニヤリと口角を上げ、指を鳴らす。同様の機構を持ったカメラが何台も、彼の背後から現れては飛び去っていく。
「こういうお話はボクとしてはあんまり面白くないんだよね。カメラの向こうのみんなをもっと笑わせるためにも、イタズラに引っ掛かってもらわないと!」
半丈ズボンのポケットに手を突っ込む。がさごそと漁って数秒後、ポケットの体積を遥かに超えた数々のアイテムが両手に握られていた。パイ皿、ゴム付きホーン、水鉄砲、巨大U字磁石、バカでかい木槌、バナナの皮――他にもいろいろ。どうやら真面目にやる気はないらしい。
それらをまたポケットにしまい、ザニーユはキシシッと笑った。
「ザニーユ・モアのイタズラ生放送スペシャル、ここからが本番だよ!」
彼は冗談めかしてファイティングポーズを取った。
アンジェリカ・ヘインズビー
…子供の遊びに付き合うつもりはありません、ハンマーを使ってアイテムを破壊していきます。(わざとらしく逃げ出すザニーユ)
…待ちなさい!(何故か道路上に場違いなレンガの壁と木のドアがある)
何故こんな所に建物が…この中に逃げたのでしょうか?
(ドアを開けようとした途端、凄まじい勢いで開きドアと壁に挟まれる。
衝撃で壊れたドアが前に倒れると、そこにはドアの形にぺちゃんこになった涙目のアンジェリカが。
その後奥から出てきたザニーユはアンジェリカの言葉を無視して、アンジェリカをドアに見立ててこれまた乱暴に閉める。
視聴者の笑いが獲れてご満悦なザニーユが礼を言って去ると、実はハリボテだった壁とアンジェリカが倒れる)
●ドタバタ・ペラペラ・パニック・Part1
猟兵を正面に捉え、ザニーユはまた両のポケットを探った。
「さーて、まずはコイツから! 食らえーっ!」
真っ白なパイ皿がまっすぐ猟兵たちに投げられる。それも大量に。止まることなくザニーユはぐるぐると腕を振り回していた。
だが、パイが猟兵に届くことはない。到達前に砕かれてしまうからだ。
ハンマーが横薙ぎに振るわれ、また一つ皿が砕ける。
クリームで汚れたハンマーの頭を地面に擦りながら、アンジェリカは前を睨む。
「……子供の遊びに付き合うつもりはありません」
送る視線を柔らげはしない。彼の仲間に真っ黒にされた恨みもある。ハンマーの頭を下げるとずどんという音がした。
アンジェリカの仏頂面に、ザニーユは苦笑いで返す。
「……そっかぁ。あー、うん、じゃあこうしよう」
彼はくるりと背中を見せた。
「じゃあね!」
「……待ちなさい!」
砂埃を立てて逃げ出すザニーユ。そんな彼を追うため、アンジェリカは駆け出した。
角を曲がって先を眺める。相手が素早いために一度見逃したが、遠くには行っていないはず。
何か手掛かりは――。
そう思っていたところで、道路上に影があるのが分かった。
「何故こんなところに建物が……」
ぽつんと佇むレンガの壁。木のドア以外に飾りっ気はない。
間違いなく場違いだ。怪しい。
おそるおそる接近する。攻撃は来ない。
「この中に逃げたのでしょうか?」
ドアに近づいて、アンジェリカはドアノブを掴んだ。
――キィ。
「へ?」
アンジェリカがきょとんと疑問符を浮かべる最中、ドアは内側から凄まじい勢いで開く。
――バンッ!
「よし、来てないね!」
キョロキョロとザニーユが外を確認。同時に木のドアが壁に打ち付けられた衝撃で粉々になり、その裏側が露わになる。
そこには、ちょうどドアと同じ形に潰された、ペラペラのアンジェリカが貼り付いていた。
「来てますよぉ!」
「うわっ!? どうしたの!?」
「あなたのせいでしょう!? もうっ、元に戻してください!」
涙ながらにうわーんと文句を言うが、ザニーユは一向に構いはしない。
「じゃ、そういうことで……ごめんね!」
「待って――いったぁっ!?」
ザニーユはドア型アンジェリカを本来のドアに見立て、これまた乱雑に閉じた。
数秒後、レンガの横を通ってザニーユが現れる。視聴者の笑いが取れたからか、顔はにやついていた。
「ご協力ありがとう、いいコントだったと思うよ! それじゃ、ボクはそろそろ行くね!」
「ちょっと! まだ何も解決してな――」
ザニーユが去った後、アンジェリカを巻き込んでレンガの壁が前に倒れる。バッターン、と大音が街に響いた。
パラパラと土煙が上がる中、ふっくら感を取り戻したアンジェリカがレンガの山から這い出る。後ろの道路に建物なんかない。実はハリボテだったというオチだ。
「やられましたね……待ちなさーい!」
完全にレンガから転がり出て、彼女は再び走り出す。
成功
🔵🔵🔴
ネリー・マティス
もー!すばしっこい!あっちにこっちに逃げ回るネズミさんを飛び込み【ベアハッグ】で捕まえるよ!「つーかまーえたっ!」そして締め付けで攻撃だー!
……ほへ?(いつの間にかネリーの口にホースが咥えられている)
むぅーーーっ!?(ザニーユが空気入れを動かすと、ネリーの体全体がまるまると膨らんでいく。やがて手首足首頭のみ出たまんまるに)
むぷっ!?(ザニーユが小さな針を取り出す)
むーっ!むーっ!(ちくっ)むぴゅーーーっ!?ぴしゅるるるるる……(あっちこっち飛び回り、ペラペラになってひらひら落ちてくる)
(アドリブ歓迎・こういうアニメ的なやられが好きなので遠慮なくお願いします)
●ドタバタ・ペラペラ・パニック・Part2
巨腕が振るわれるも、身を屈めてザニーユは躱す。何度も何度も繰り返し、鍛え抜かれた体の持ち主であるネリーも疲労の色を見せていた。
「もー! すばしっこい!」
むっと片頬を膨らませる。その巨躯からではむしろ相性の悪い相手だろう。
手こずっているのを見て、ザニーユはあっかんべぇをして煽り立てる。
「悔しかったら捕まえてごらんよ、巨人さん!」
「むー! 言ってくれたなー!」
べーっと舌を出すザニーユに狙いを定める。
全力で地面を蹴って中空に出れば、ネリーの影がすっぽりとザニーユに被さった。
「えっ?」
その場で固まる彼に対し、ネリーはがばりと両脇を開く。胸板と腕でザニーユを包囲。まさしく袋のネズミな状況へ陥らせると、腕を交差させて脇を閉めた。
「つーかまーえたっ!」
口の端に笑みを零し、抱きつきによってザニーユを拘束する。胸の中で暴れるが、彼は一行に逃げ出せそうにはない。
「このまま攻撃だーっ!」
脇をより強く閉め、ザニーユに圧をかけていく。
「い、痛い痛い痛い!? 笑えない格闘技は嫌いなんだよーっ!」
「ふふーん……それじゃさっきの、謝ってくれない?」
「わ、分かった分かった! ごめんな――」
気を良くし、力を入れたままネリーはにこりと一瞬瞼を閉じた。
しかし、残りの「さい」が聞こえてこない。中途半端に切るのも変に思い、彼女はぱちくりと目を開く。
いつの間にか、ネリーの口に水色のゴムホースが咥えられていた。
「……ほへ?」
慌てて首を下に向ける。なぜかホースは外れない。それに、胸の中のザニーユも居なくなっている。
「こっちだよ」
「ほっひ?」
声のした方を見る。少し離れた位置にザニーユが立っている。傍らには空気入れが置かれ、そこにはホースも取り付けられていた。そのホースを辿って視線を動かす。ホースはそのままネリーの口許に繋がっていた。
「むーっ!?」
「フーセン作戦、スタートだ!」
――シュコシュコシュコシュコ。
黙々とザニーユが空気入れのハンドルを押し込むと、はっきりと目に見える形で空気がホースを移動する。
「むぅーーーっ!?」
――ぷくっぷくっぷくっ。
空気が入るとネリーの体も膨らむ。しばらくしないうちに体全体がまんまるになり、ネリーは宙に浮かんだ。
最後には手と足の先と頭のみが出て、本当にボールか風船のように丸くなってしまった。
「よし!」
ザニーユの意気込みが聞こえた。彼が取り出したのは、小さな針だった。手で耳を塞ぎ、ザニーユが近寄ってくる。
「むぷっ!? むーっ! むーっ!」
驚いてネリーがじたばた手足を振ってみても、ちょっと体が揺れるだけだ。
――ちくっ。
――パァン!
「むぴゅーーーっ!?」
空気をぴゅーっと吐いてネリーは空の彼方へ飛んでいく。キマイラフューチャーの上空をあっちこっちへ飛び回り、その度にザニーユが首を動かした。
「ぴしゅるるるるる……」
やがて空気が抜けてペラペラになったネリーがザニーユの足元にひらひらと落ちてくる。きちんと地面に着いたのを確認し、ザニーユは歯を覗かせて笑った。
「うん、作戦成功だ。……じゃあね!」
ぴゅんっとザニーユは逃げ出した。
直後にボンっと音を立て、元に戻ったネリーが立ち上がる。
「くそーっ……。待てーっ!」
ずしんずしんと音を響かせ、ネリーはまた彼を追い始めた。
成功
🔵🔵🔴
イルビノ・リィシャ
ほわー。君ってすっごく高く跳べるんだね、私一人じゃ危なかったかも。ありがとう!
助けてくれた女の子にお礼を言うね。私より小さいのに落ち着いててかっこいいなあ。
Tallyhoo! ボス戦だーっ!
そういえば“イタズラ”って木鳩さん──も言ってたけど、なんだっけ。なんとなく、だっけ。ううん、私やっぱり楽しくないや、ごめんね。
ボス戦といえば格好いい音楽! お友達と一緒に奏でちゃおう。
【おともだち、召喚!】画面の前のみんなもご一緒に。私もお友達の上で笛をぴゅうぴゅーう。攻撃されたら【野生の勘】を使ってお友達と協力して避けるよ!
*笛を吹かせると不気味で不快な音楽(?)が出来上がる*
ザニーユも一緒に歌おうよ!
●ドタバタ・ペラペラ・パニック・Part3
現在、ザニーユは撹乱するように逃げ回っている。そのため各々で分担して追跡しているが、未だイルビノの前には現れていなかった。
それでもふわふわと考え事をしながら、彼女は道路を進む。
「ほわー……あの子、すっごく高く跳んでたなぁ。私一人じゃ危なかったかも……」
私より小さいのに落ち着いててかっこよかったなぁ、と漠然とした思いが浮かぶ。負けないように頑張らないと。心でそう唱え、イルビノは頷いた。
「なんにしても、いろいろ終わったらお礼を言わなくちゃ――」
呟きながらぼんやりと前を見る。
他の猟兵に追われてきたらしいザニーユと正面から鉢合わせていた。
「猟兵――次のターゲット見っけ!」
ニヒヒと笑みをつくるザニーユにイルビノはうーんと首を傾げる。
それを怪訝にザニーユが眺めると、彼女から純粋な質問が投げかけられた。
「そういえば『イタズラ』って、なんでやってるんだっけ? グリモア猟兵さんも言ってたけど、なんだっけ。なんとなくで、だっけ?」
ザニーユはそんなことかと言わんばかりに笑いで返す。
「ボクが面白いと思ってるからやってるのさ。それで画面の向こうの皆に笑ってもらうんだ。どう? 楽しいでしょ?」
返答を聞き、イルビノはふるふると首を横に振った。
「ううん、私やっぱり楽しくないや。ごめんね」
どうしてもそれが楽しいことだとは思えない。他の人に迷惑を掛けて生まれた笑いは特に。
しばらく俯き、それからイルビノは彼に呼びかけた。
「だからさ、皆が笑えることをやらない?」
片手には友達から貰った笛が握られていた。
ぱっと明るい表情が顔に浮かばせ、指で輪をつくって高い音を鳴らす。
「Tallyhoo! さぁいこう! 『おともだち』、召喚!」
イルビノの隣でつむじ風に似た突風が舞う。ぐるぐるとした白い渦が晴れると、そこには体長三メートルほどの大きな狼が佇んでいた。脚を曲げて座った狼にイルビノはすぐさま飛び乗った。
「お友達と一緒に格好いい音楽を奏でちゃおう! 画面の前の皆もご一緒に!」
取り囲むカメラの一つに向かって人差し指を立てる。半ば番組をジャックしつつあった。
いざ笛に息を吹き込もうとした瞬間、自動車のクラクションに似た音がそれを妨害する。音の発生源はザニーユのゴム付きホーンだった。
「それはボクのやりたいことじゃないんだよ!」
「来るよ! お願い!」
攻撃の気配を察知してイルビノは大狼に頼み込んだ。
連続してザニーユはホーンのゴムを摘まむ。音が発生し、可視化された音波がイルビノたち目がけて飛んだ。
狼は跳躍を繰り返し、的確に音波を回避していく。
クラクション音が領域を占める中、イルビノは大きく声を張った。
「ねぇ、ザニーユも一緒に歌おうよ!」
イルビノの弾ける笑顔に、一瞬だがザニーユの動きが止まる。
ようやく、イルビノの唇が笛に触れた。
「いくよー!」
息が吹き込まれると同時に破壊的な不協和音が場を支配した。どことなく不穏でかつ心を抉るような、そんな不気味で不快な音楽だ。
「ぎゃああああ!? このままじゃ本当に耳がやられる……本当に退散だっ!」
「あっ、待ってよザニーユ!」
耳を押さえて逃げ出す彼を、イルビノは狼に乗ったまま追いかけた。
成功
🔵🔵🔴
楠瀬・亜夜
(ふふ……バッチリキメてしまった……!)
っと、真打のご登場ですか
随分とふざけた武装のようですがこれもれっきとした依頼です
容赦などしませんよ、たっぷりとお仕置きを受けて頂きましょう!
多用な種類の道具を持つ者を相手にするのであれば……
迅速な接近戦で一撃離脱を心掛け道具を使われたとしても
すぐに回避できるようにすべきですね
【血統覚醒】による高速な動きで翻弄してさしあげましょう
(せっかくのカメラです、カッコイイ所を披露しないと……!)
バナナの皮を踏んで滑る……?
そんな古典的な罠にカリスマは動じません、多分……
追い打ちの金床……?
ふふ、まさかそんな……
※ギャグアドリブお任せします
ロワ・イグ
ふぅ、これで放送はめでたーれっ?!
大きなスパナが降ってきて目に星を浮かべながらたんこぶが膨れます
こんのぉー…待ちなさーいっ!
追いかけっこを始めます。楽しいかも
はぁはぁ…どうしてこんなことしたの?
折角面白くて凄い発想なのに、もったいないよ
私初めてザニーユくん見たとき、すっごく眩しいなーって思ったんだよ?
でも、こんな危ないことしてるって知って、安心して見てられなくなっちゃった
カメラの向こうの人達は笑ってくれてるのに
ザニーユくんの前で笑ってる人、少ないよ
そんなのって、寂しい、好きな人達だって悲しくなっちゃう…
眩しくって、好きだったから、思うの
趣味の会う人と一緒に放送を楽しも!そっちの方が皆楽しいよ!
マックス・アーキボルト
人に一方的なイタズラを仕掛けるだけじゃなく、少しは自分が痛い目にあわなくちゃね!
【極魔導式"魔砲楽団、大合奏"】発動。どんな道具を出そうったって、アームキャノンで【武器落とし】、打ち落とす!
他の人と協力して、【援護射撃】も欠かさないようにしたいね。
※アドリブ、アレンジ大歓迎です
●ドタバタ・ペラペラ・パニック・Part4
亜夜の口許には自然と笑みが零れる。カメラを通して見た観衆からは、なんともミステリアスな微笑に映っただろう。ただし、実情は異なる。
(ふふ……バッチリキメてしまった……!)
先ほどの活躍を反芻し、独りにやついていただけだ。
だが、切り替えていかねばなるまい。亜夜は感情を押し殺して街を眺めた。
「それにしても出てこないな……。どこに行ったんだ?」
同様に警戒心を散りばめ、マックスが呟く。
戦闘開始直後より、ザニーユは猟兵にちょっかいをかけては逃げ出すというパターンを何度も重ねている。そのために分散して捜索しているが、こちらの班の前に現れる気配はない。
神出鬼没というには相手がお茶ら気過ぎているかとぼんやり考えつつ、マックスはあちこちへ視線を飛ばす。
「ザニーユくん、もしかしてもう逃げちゃったのかな?」
ふとした予想を唱えたのはロワだった。
もしそれが事実だとするなら、脅威自体はこの街からは居なくなっている。ひとまずは解決したのだろうか。
「だとしたら、これで放送はめでたしめでた――」
言葉を言い切ろうとした直前、大きなスパナが回転と放物線状の軌道を伴って彼女の頭に直撃した。
「――れっ?!」
目には星が浮かび、当たった箇所はぷくーっと丸いたんこぶが膨れ上がる。
咄嗟にマックスはスパナが投げられた方を見やった。
「エンドロールには早いよ。……まだまだイタズラが足りてないからね!」
にぃっとしたり顔でザニーユが笑っていた。片手で口許を隠しつつ、もう片方の手で巨大な工具箱をポケットに収納しようとしている。
ザニーユの姿を認識し、マックスは安堵の息を漏らす。
「逃げてないみたいで良かったよ。僕たちも『君の反省』っていうオチをつけられてないんだ」
アームキャノンの銃口を向ければ、その蒸気機械には熱を籠もった。
一方でひらりひらりと亜夜も前へ歩み出る。
「おおっと、真打のご登場ですか」
仕舞われようとしている工具箱を目の端で捉えながら、ポップな世界ではむしろ目立つ古風な槍を取り回す。
「随分とふざけた武装のようですが、これもれっきとした依頼です」
亜夜はゆっくりと目を閉じた。
「容赦などしませんよ。……たっぷりとお仕置きを受けて頂きましょう!」
開眼。その瞳は紅を帯び、吸血鬼の血統を証明するものとなっていた。
真紅の瞳を揺らし、敵意を向ける。肉薄のための一歩を彼女は踏み締めようとした。
――つるん。
「へっ?」
何かで脚が滑り、踏み出した一歩は大きく上へ。一時宙に浮き、バランスを崩して体は一気に後ろへと倒れた。
視界にバナナの皮と滅茶苦茶ニヤニヤしたザニーユの顔が映る。直後、後頭部を痛烈な衝撃が襲った。
「こ、こんな古典的な罠にカリスマは動じません……!」
即座に立ち上がろうと腰を上げる。
追い打ちをかけるように、ヒューンとコミカルな落下音で金床が降りかかった。
「え……?」
呆然としているうちに金床は無慈悲にも彼女を下敷きにする。衝撃が走った後、金床以外に立体物の姿は見えない。
「あ、亜夜さん!?」
「大丈夫……ではないね。早く助けないと」
慌ててロワとマックスが駆け寄り、金床を退かす。
ペラペラでぺちゃんこになった亜夜が目を点にしていた。
「私のカリスマが……」
「よーし、またまた大成功!」
「こんのぉー……待ちなさーいっ!」
その場から逃げたザニーユをロワが追いかけていく。
ザニーユが繰り出してくる道具を躱してロワは走り続ける。スリルがあって楽しいかもと思っていたが、次第に息も上がってきた。
「はぁはぁ……ねぇザニーユくん、どうしてこんなことしたの? 折角面白くて凄い発想なのに、もったいないよ」
無意識のうちにロワが問いかける。ザニーユはぴたりと足を止め、振り返った。
それを捉え、ロワは続けて言葉を差し込む。
「私初めてザニーユくん見たとき、すっごく眩しいなーって思ったんだよ? でも、こんな危ないことしてるって知って、安心して見てられなくなっちゃった……」
彼女のいう眩しいとは、良い顔をしているという意味。生き生きとした表情を見るためなら日常の世話焼きを厭わないほど、彼女はそうした顔が好きだ。
もう一度顔を見やる。彼の目はあちらこちらに泳いでいた。
「カメラの向こうの人達は笑ってくれてるかもしれないけど、ザニーユくんの前で笑ってる人、少ないよ。そんなのって、寂しい。好きな人達だって悲しくなっちゃう……」
他人にイタズラを仕掛けたとして、ザニーユのそれは笑って許容できる度合いを越えている。あまりにも独りよがりで、寂しい笑いだ。人を傷つけて笑っていたのが事実だと知れば悲しむ人も出るだろう。
真摯な顔つきでロワは呼びかけた。
「皆が笑えることをやろうよ。ザニーユくんの押し付けじゃない、別の面白いこと!」
突かれてザニーユは黙り込む。ロワは期待しながら言葉を待った。
しばらくして、彼はポケットから銃身が極太い水鉄砲を取り出した。そこに常時見せていたにやついた笑みはなく、口許は苦しそうに歪んでいた。
「うるさい……! ボクが楽しかったらそれでいいんだよ!」
銃口をロワへ向ける。ロワも奥歯を噛むと、全身にサイキックエナジーを纏わせた。
水流が放たれるその一歩手前、水鉄砲は魔力の弾丸により簡単に破壊された。
「人に一方的なイタズラを仕掛けるだけじゃなく、少しは自分が痛い目にあわなくちゃね!」
アームキャノンが排熱を吐く。遅れて駆けつけたマックスがザニーユを睨むと、魔力炉心『マキナ・エンジン』は爆発的に能力を向上させる。
「マキナエンジン出力全開ッ! アームキャノン複写――魔力ライン、オールセットッ!」
絶叫の後、アームキャノンが宙に展開される。数にしておよそ二十。キャノンは翼のようにマックスの背に位置し、全てがザニーユを狙っていた。
「さて、名誉挽回とさせてもらいましょうか」
次いで亜夜が前線に飛び出す。元の姿を取り戻しており、適当なカメラを探すと微笑んでみせた。さっきのを取り消すためにも、カメラの前でカッコいいところは披露しておきたい。
アピールを済ませ、亜夜は接敵する。地面を蹴って中空へ跳び、槍を構えた。
「また来たんだね! だったらこうだ!」
虚空から垂れ下がる紐を引っ張って金床を頭上に落とす。同時にバカでかいハンマーを手にしたザニーユは彼女を迎え撃たんとそれを振り上げた。
亜夜は空中でひらりと身を逸らせて両の攻撃を華麗に避け、逆に振りの隙を突いて懐へ飛び込んだ。吸血鬼に由来する高速の動きだった。
「テンドン、でしたっけ。そういうセオリーは守りませんから」
槍の穂の面を顔に叩きつけ、即座に離脱する。
吹っ飛ばされ、ザニーユは再びハンマーを手に向かっていこうとした。
「させないよ!」
マックスがすかさず魔力弾を発射する。的確なスナイプによりハンマーを取り落とし、再び何か道具を漁る。はっとして視線を上げればそこには亜夜が迫っており、突き攻撃を受けた。
身を起こし、ザニーユは思う。キマイラフューチャーの住人に仕掛けても、ここまでやり返されることはなかった。戦闘という異質なものではあるが、初めて対等に仕掛け合いをして、これまでのイタズラとは違う感覚がどこかにあった。少なくとも、独りではなかった。
「ザニーユくん! ……この感じ、分かったかな?」
継続して呼びかけ続けながら、サイキックエナジーを纏ったロワが突っ込んだ。ぼーっと立ち尽くしていた彼は避けず、全身をエナジーが駆け巡る。ザニーユは痺れて動けなくなった。
「反省の用意はできていますか?」
立て続けに亜夜が連撃を仕掛ける。最中、彼女は後方を一瞥した。
複写した砲塔を含む全てのキャノンに魔力を供給し、マックスは真正面から狙いを確定させる。圧縮すればより高威力だが数で十分補えられる。瞳と同色の光が彼を包み、一つの炉のように輝いていた。
この状態での最大値に達したことを把握すると、彼は目を薄く閉じた。
「マキナエンジン出力全開ッ! エネルギー充填完了ッ!」
叫び、亜夜が射線から退く。ザニーユは依然動けない。
「発射ッ!」
淡い緑の光線が全砲口から放たれた。マックスの持つアームキャノンを軸とし、光線群は標的に直進する。一時、その光の色に街の景色が染まった。
「ごめんなさーい!」
爆音とともにコミカルな爆発が命中地点で起こる。灰色の煙が立ち込める中、黒く焦げたザニーユが漫然としたスピードで吹っ飛ばされていった。
空の彼方に飛んでいく彼に、ロワは手で拡声器に似た形をつくって呼びかけた。
眩しくって、好きだったから、思うこと。
「趣味の会う人と一緒に放送を楽しも! そっちの方が皆楽しいよ!」
声が彼に届いたのかは結局分からない。ただ、彼は口許ににやりとした笑みを浮かべた。
そのまま猟兵たちから見えなくなるくらいまで吹っ飛ぶと、キランと星みたいな輝きが空で生じる。オブリビオンとして彼が一旦死亡したのかは定かではないが、少なくともこの街に混乱は訪れないはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『ドキドキ生放送チャレンジ!』
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POW : 運動や武芸など、体を張ったパフォーマンスでアピール
SPD : 器用さや素早さを活かしたパフォーマンスでアピール
WIZ : 知識や独創的な個性を活かしたパフォーマンスでアピール
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●ナマホーソー・ドキドキ・パニック
混乱の原因が倒されても、猟兵たちのある種の災難は続く。
「ザニーユのチャンネルに出てたのって猟兵じゃない!?」
「わー、マジだマジ! 皆早く来なよー!」
一息ついて転移を待っていると、あっという間に住人たちに取り囲まれてしまった。まぁ、それはまだよくある話。
何人かのキマイラたちはテレビカメラを抱えていた。よく見れば、それはザニーユが所持していたものに一致している。そう、ザニーユのチャンネルでの生放送ななぜか続いているのだ。ただ画面を覗かせてもらったところ、カートゥーン化の効力は切れているらしい。
「猟兵が生放送で何かやってくれたら面白いのになぁ」
「えっ、猟兵が何か見せてくれるの!?」
「皆ー、猟兵さんたちが何かパフォーマンスしてくれるんだってさー!」
伝言ゲーム形式で厄介な方向に話が進む。
期待の眼差しでキマイラたちがこっちを見ている……。とにかく何かやらないと帰してくれなさそうだ。
ネリー・マティス
パフォーマンス!?えーっと、えーっと……そうだ!
ネリーだよ!ネズミさんが残していったでっかい金床で重量挙げするよ!
わたしの【怪力】にかかれば……ぬぬぬ……とりゃーーー!やったー!ふふふーどんどん撮ってー!
…………あ、れ……?(少しずつ潰れていく)ふぎゅんっ!?(一気に縦方向にぺしゃんこに
)…………(しばらくして……)きゅう~……ぴよぴよ……(微妙に厚みを取り戻し、もっちり潰れて人の足元程度の身長になったネリーがふらふら出てくる)……はっ!?(姿勢を低くしてしっかりネリーの姿を映すカメラ、レンズ越しに自分の姿を確認)うわーーーっ!?なにこれーっ!?(短い足をちょこちょこ動かしあわあわ駆け回る)
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・Part1
「パフォーマンス!? えーっと、えーっと……」
ネリーは困惑した面持ちできょろきょろと辺りを見回す。何か使えそうなものはないかと必死に目を細くして探っていた矢先、道路上に巨大な金属の塊を発見する。ザニーユが落下させた金床だ。
「……そうだ!」
ぱあっと顔を明るくすると、ネリーは人を分けさせて金床に近づいていく。
ネリーを越える高さのそれの隣に立ち、軽く一瞥する。向けられているだろうカメラを適当に選び、大きく息を吸い込んだ。
「ネリーだよ! ネズミさんが残していったでっかい金床で重量挙げするよ!」
堂々宣言し、ネリーは腰を落とす。金床の脚を形作るくびれた部分に手をやり、握り潰さんばかりの力で挟む。
「えーーーいっ!」
勢いのままに体を動かし、金床は彼女の上へ。
金床の重量が彼女に降りかかり、一度押し潰されそうになった。
「ぬぬぬ……」
堪えるしかない。ぐっと両足で踏み込んだ。ひたすらに意識を統一し、力のイメージを頭の先に持っていく。
そのイメージが自身の内側で最大まで達すると、自然と口先に気合は現れていた。
「……とりゃーーー!」
ネリーが叫ぶ。
同時に金床を掴んだ腕が空へ伸び切り、金床が完全に持ち上がった。
「やったー! ふふふー、どんどん撮ってー!」
子供らしいはしゃいだ笑みが浮かぶ。人々の歓声と拍手、携帯端末のシャッター音がわんさか聞こえてきた。
「ちょっときつかったけど、楽勝だったねー!」
調子に乗った瞬間、手の力が緩む。
「…………あ、れ……?」
体勢を立て直そうとするも時すでに遅し。
「ふぎゅん!?」
一気に縦方向にぺちゃんと潰れ、後には金床だけが残る。
しばらくざわざわと彼女を案ずる声が溢れる中、ちんまりとした手が金床と地面の隙間から伸びる。
「きゅう~……ぴよぴよ……」
頭上に星を浮かべ、もっちり潰れて人の足元程度の身長になったネリーがふらふらと這い出した。
微妙な厚みだけなった彼女もしっかりカメラは撮り続ける。寄りで映してくるカメラを見返せば、レンズに反射した自分の姿が目に入る。
「はっ!? うわーーーっ!? なにこれーっ!?」
整理がつかなくなり、ネリーは短い足をちょこちょこ動かしあわあわ駆け回った。
一連を目撃していたキマイラたちはたちまち噴き出した。
「猟兵さんおもしろーい!」
「そんなこと言ってないで、早く元に戻してよーーっ!?」
なお金床の効果はすぐに切れたが、ネリーはしばらくキマイラフューチャーの面白話として共有されたそうだ。
成功
🔵🔵🔴
マックス・アーキボルト
ここで撤収…はできないよね、白けさせちゃうし。
WIZ
【ミレナリオ・リフレクション】発動。さっき見たザニーユの道具を対象に、あのコミカル表現を再現した魔法の立体映像をバックにして、【ダンス】でも踊ってみようかな?
情報収集と学習力で同じ効果とまではいかなくても、見た目ぐらいは真似っこできるからね。
ロワさんとの話を聞いてて、人を楽しませたいって気持ち、彼にもあったんだね。…この放送を含めた彼のチャンネルぐらいは、皆で楽しめるものにしなくっちゃね!
「よし!映像に負けないくらい、ノリよく行こう!」
※アドリブ、アレンジ歓迎です
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・Part2
騒ぎ立てるキマイラたちを前に、マックスは苦い顔をした。
「ここで撤収……はできないよね、白けさせちゃうし」
数秒ほど思案する。この世界の住人にウケがいいのは何かとあれこれ考えているうちに、ザニーユが披露した道具の数々が頭に滑り込んできた。
「これで行こう。……皆、ちょっとどいて!」
声を張れば、視線の先にいるキマイラたちが脇へ寄った。軽く頷き、マックスは左腕のアームキャノンを構える。魔力が先端に集中し、やがて緑の弾丸として放たれた。
着弾と同時に魔法が展開される。マンガ的な誇張された道具や独特なオノマトペが宙を横切った。ザニーユの技を再現した魔法の立体映像だ。
「同じ効果とまではいかなくても、見た目ぐらいは真似っこできるからね」
戦闘中に収集した情報とマックスの学習能力を基としたそれに触れることはできない。まぁ攻撃性より外観を重視した方が今回に限っては有意だろう。
カートゥーン調のコミカル表現が空間を占める。驚嘆する声を発した観客たちは興奮に沸き立ち、熱気は事が始まる前以上に高まっていく。
ヘッドセットを装着。耳が程よく抑圧されるのを感じつつ、周囲のキマイラにスピーカー類を用意させる。どすんと置かれた機材にワイヤレスで自身の蒸気音楽機器を接続すると、マックスは『再生』に当たる操作を行った。
早拍子なジャズ風のナンバーが場を馳せる。気品ある雰囲気を纏いながらもその音楽はどこか愉快で、カートゥーンの表現に似合っているように思えた。
「よし! 映像に負けないくらい、ノリよく行こう!」
イントロが終わると同時にマックスは映像の前へ飛び出した。音に合わせて軽快に踊れば、次第に観客も空気感に飲まれて揺れる。ノリの良いオーディエンスを前にし、マックスの口角は上がる。
ザニーユにも人を楽しませたいという気持ちはあった。なら、せめて――。
「……この放送を含めた彼のチャンネルぐらいは、皆で楽しめるものにしなくっちゃね!」
ポップな描写を背にする彼の思いは少し硬い。
機敏かつダイナミックなダンスを繰り広げ、マックスはまたステップを踏んだ。
成功
🔵🔵🔴
アンジェリカ・ヘインズビー
カメラ…生放送…まって、待ってください、私がやられてたのも映ってましたよね!それ見てた人達の前で芸するんですか!?
(…いえ、むしろこれはマヌケなイメージを払拭するチャンスでしょうか…)
…力強さをアピールして汚名挽回です。
レンガを高く縦に積みあげてその前に立ちます。
そして[ジャンプ]、更に【スカイステッパー】でレンガより高く飛び上がり縦に1回転、そのまま【足技】で攻撃力重視のかかと落としをレンガに放ち破壊します。
「全力です」
<歓声があがった場合、内心満更でもない>
…ふふ。(そういえば、あの子が金床を落としていた筈)ダメ押しです、金床を持ち上げて力強さをアピールです![怪力]
【アドリブ歓迎】
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・Part3
次々とパフォーマンスを披露する猟兵たちを眺め、アンジェリカは腕を組んで一考する。はっと何かに気付くと、彼女は一気に顔を赤くした。わなわなと震え、誰かに説明を求めるかのように言葉を零す。
「カメラ……生放送……まって、待ってください、私がやられてたのも映ってましたよね!? それ見てた人達の前で芸するんですか!?」
彼女視点で、それは紛うことなき事実だ。もう二度とカメラの前に姿を晒したくない、そういった思いに駆られたが、同じくして真逆の考えが頭に浮かんだ。
マヌケなイメージを払拭するチャンスでは。それならそれで、むしろやらない理由がない。
「……力強さをアピールして汚名挽回です」
挙手してカメラと観客の視線をこちらに引き寄せる。ザニーユにしてやられたハリボテの近くに移動すると、残骸からレンガを縦に積み上げていく。
キマイラたちにも協力してもらい、彼女の前には今やその背丈を上回る壁が現れた。騒めきが場を埋めていく中、アンジェリカはすうっと息を吐く。それから彼女は助走分の距離を取った。
目標を睨み、地面を蹴って飛び出した。ある地点で踏み切り、大きく中空へも跳び上がる。それでも壁には遠く及ばなかった。
しかし、彼女の知ったことではない。アンジェリカは虚空を蹴り、より上空へと飛躍する。まるで存在する壁があるかのように淡々と動作を重ねているうちに、彼女はレンガの壁なんかよりも遥か上を行っていた。
ぱたりと足を止める。体を傾けると、重力に従って頭から落ちていく。観客からは悲鳴に似た声も上がるが、依然として彼女は表情を変えない。
空中で縦に一回転。恐れることなく軽々とこなし、突き出された右足に回転の勢いが乗る。踵はちょうど壁の真上に位置していた。
「全力です」
攻撃力を意識した踵落としがレンガ壁を破る。見事真っ二つに分割されたそれを見て、観客たちは割れんばかりの歓声をアンジェリカに送る。拍手や口笛も混ざり、しばらくは止みそうにない。
「……ふふ」
素っ気ない振りで誤魔化すが、内心満更でもなかった。
そういえば、あの子が金床を落としていたはず。
「……ここでダメ押しも悪くないですね」
にやりと口許を緩め、アンジェリカは走り出す。その後金床も怪力で持ち上げたことで、彼女のイメージは完全に回復したはずだ。
大成功
🔵🔵🔵
イルビノ・リィシャ
ようしっ。じゃあ私はお友達と一緒に技を披露しちゃおうかな。
POWを生かして、お友達の大狼と子狼を呼んでフリスビーだっ。
犬より鼻が長くて格好いいでしょ? お耳ももっふもふなんだよ!
子狼には斧の上をジャーンプ! 大狼には斧を投げるから、取ってこーいっ!
今日は上手にできるかな? みんな、頑張れーっ。
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・Part4
イルビノは上機嫌に体を揺らす。何をしようかなとぼんやり考え、思いついた瞬間に狼の耳がピンと立った。
「ようしっ。じゃあ私はお友達と一緒に技を披露しちゃおうかな。……みんなー、出ておいでー!」
戦ってくれた大狼が寄り添う中、彼女はどこかへと声を呼びかける。するとどこからともなく小さな子供の狼が現れた。狼たちははぁはぁと息継ぎをしてイルビノに駆け寄り、彼女もしゃがみ込んでわしゃわしゃと撫でる。
柔らかな毛が彼女の手を包む。額を合わせて狼の頬から顎にかけてを撫で回す。嬉しそうな鳴き声が聞こえれば、イルビノもにひーっと微笑んだ。
カメラが寄っていることに気づき、彼女は狼の顎の下をくすぐりつつそちらを見た。
「犬より鼻が長くて格好いいでしょ? お耳ももっふもふなんだよ!」
イルビノは区切りをつけて立ち上がり、斧を手に取った。
「今日は上手にできるかな? まずはジャンプから!」
子狼の前に斧を横にして構える。もちろん刃は下だ。持つ位置を狼の背丈より高く設定してやると、狼たちは尻尾を振って合図を待った。
「いっけーっ! みんなー、頑張れーっ!」
一匹が駆け出し、子狼はひょいっと飛び越える。斧をちょっとずつ高く持ち直して跳ばせた後続の狼たちも成功し、そのたびに歓声と拍手が起こる。
「次はフリスビーだよっ。上手くいったらみんなで褒めてあげようねっ!」
斧の柄を握り、大狼と視線を合わせる。誰もいない空間に狙いを定め、斧を持った手を思い切り後ろへ引いた。
腰の回転を活かし、イルビノは勢いをつけて斧をぶん投げる。斧は中空でくるくる回って放り出された。
「取ってこーいっ!」
元気よく声を張ると同時に大狼が地を駆ける。風を突っ切って颯爽と疾走し、大狼はゆったりした速度で飛ぶ斧をあっさりと追い抜かす。そのまま柄の部分を正確に見極めて跳ぶ。空中で木柄を噛み締め、大狼は華麗に着地を決めた。
「すごーいっ! みんなっ、お友達に拍手!」
いの一番にイルビノが狼に飛びつき、大きくて逞しい顔を抱きつくようにして撫でる。狼は嫌がる素振りは見せず、やはりどこか嬉しそうだ。
彼女に促されたこともあり、観客はそんな彼女らに盛大な拍手喝采を送ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
楠瀬・亜夜
やられ方まで賑やかな方でしたね……
ともあれこれで今回の騒動は一段落する筈
……パフォーマンス?ふぅ……仕方ないですね
いいでしょう、我が技を御見せしましょう
という訳でナイフ捌きを魅せつけるチャンスです
風船を複数空に飛ばし、複数のナイフを投げ同時に割る余興や
UCを利用し大量のナイフをスタイリッシュに投げつけ
空き缶を粉砕するといったパフォーマンスで盛り上げてみましょう
ふふふ……これもカリスマの嗜みの一環……
え?ペラペラ?ぺちゃんこ?なんの事です?
は?知りませんけど?知りません
知らないってば……あ?
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・Part5
戦いの結末を反芻し、亜夜は落ち着いて瞼を瞑る。
「やられ方まで賑やかな方でしたね……。ともあれ、これで今回の騒動は一段落するはず」
ゆっくりと視界に光を入れる。集まった観客は猟兵に何かしらの演舞を求めているようだ。
「……パフォーマンス? ふぅ……仕方ないですね」
クールな雰囲気を崩さず、やれやれと肩を竦める。
「いいでしょう、我が技を御見せしましょう」
ナイフ捌きで魅了するチャンスの到来に密かに心を躍らせる。だが、表面上はあくまで『要求されたからやっている』というスタンスを保つ。だって、そっちの方がカッコいいし。
まず、亜夜は無作為にキマイラを数人選び、また群衆に膨らんだ風船を用意してもらった。その風船をキマイラに握らせると、彼女は同一のタイミングで手放すよう指示を出した。
キマイラたちは顔を見合わせ、せーので風船を放す。
ふわりと色彩が宙に浮かんだ瞬間、亜夜の手許が銀色に輝いた。複数本のナイフを僅かだけ握り、ばらばらに浮上する風船へ投擲する。
刃は狂うことなく中り、パンという乾いた破裂音と歓声を聞く。
「ほんの余興ですよ」
素っ気なく切り捨て、亜夜はまた観客から一人を選んだ。
次に亜夜がキマイラに持たせたのは空き缶だった。自分はそれらに対して背を向け、適当に高く放り投げるよう言った。しばらくの間を置き、キマイラはいよいよ腕を振り上げて缶を宙に投げ飛ばした。
「盛り上がるのはここからです」
気配の察知。それは造作もないことだ。
同時に亜夜はユーベルコードを展開する。手持ちのナイフが複製され、回る空き缶を包囲するように配置。その奇術は夢か現か幻か。キマイラから言えるのは、どれとも判断がつかぬ神技であるということだけだ。
一斉に缶をナイフが貫き、粉砕する。金属の刃と欠片が地面で冷たい音を立てた。
亜夜は何も発さず、自身の髪を指で梳かした。
「ふふふ……これもカリスマの嗜みの一環――」
「ペラペラぺちゃんこ猟兵さん、すっげーなー!」
静寂を破って爆弾を放り込んできたキマイラに亜夜の視線が刺さる。
「え? ペラペラ? ぺちゃんこ? なんの事です?」
「いやいやいや、しっかり金床で潰されてたじゃんか」
「は? 知りませんけど? 知りません」
「うっそ、目が点になってたくね?」
「知らないってば」
「あ、わかった。イメージがどうこう――」
「……あ?」
表情を変えずに凄む。キマイラは一気に押し黙った。
くるりと視線を転換し、彼女は群衆に問うた。
「さて、次は何が見たいですか?」
無理やり元の流れに戻し、イメージの引き戻しを図る演舞を続行した。
成功
🔵🔵🔴
ロワ・イグ
わわっどうしよ、ザニーユくんのチャンネルを見ていた人達なんだよね
折角みていてくれてたんだから、チャンネルのゲストになっちゃお
皆のパフォーマンスにペイントでエフェクトを合わせたり文字で感謝を伝えたりします
皆楽しんでくれたかなー?皆の笑顔が一番の活動力になるよー!
最後にスタッフロールを入れようと思います
ゲソや皆を描いて可愛らしく戦ってゲソが逃げていったり
ザニーユくんを描いていっぱいの道具を披露してカメラに笑って見せたり
宙に描いた文字をスクロールさせてゲストに皆の名前をいれてみたり
チャンネルを観てくれた人皆に、最後まで楽しんでほしいな
そんな想いを込めて、デフォルメした皆で囲ってスペシャルサンクスしよ
●ナマホーソー・ドキドキ・パニック・PartFinal
虹色の飛沫が玉となって猟兵たちを彩る。
個性を輝かせる彼らの後方、ロワはオーラによって大筆を操っていた。電撃に似た光が群衆に囲まれたその中を巡る。伴って筆は縦横無尽にがら空きの空間を撫でつけた。
「折角チャンネルを見てくれてたんだし、ゲストともども目一杯楽しまないとね!」
そう零しつつ、パフォーマンスをやり遂げる猟兵たちを飾っていく。パワフルなら赤、スピーディなら青、クレバーなら緑。雰囲気により色を選択し、動きにエフェクトを合わせる。成功はもちろん、失敗してもできるだけ笑い合う。『眩しさ』の溢れる景色に、不思議とロワの表情は緩む。
冷めさせることなく猟兵がきっちり決め続けていると、生放送の時間枠はあと僅かになっていた。そろそろ締めが必要だ。
大筆を担いだロワが前に躍り出た。
「放送のラストっていったらスタッフロールだよね。……今から入れていくよ!」
大筆を再度操作し、空に真っ赤な線を引く。だんだんとその線はイカの形状を取り、仕舞いには火を吹く。――ゲソフレイムだ。
向かいには猟兵たちを描く。デフォルメされたキャラクターたちは可愛らしく戦い、やがてゲソは慌てて退散していった。
ロワは絵に指で触れ、液晶画面をスワイプするようになぞって弾く。絵が上方にスクロールする。空いたスペースに灰色の塗料で曲線を描いてやれば、あっという間にザニーユの完成だ。絵の彼は道具を自慢気に掲げ、カメラを向いてにやりと笑った。
またしても絵をスクロールさせ、今度は一緒に戦った猟兵たちの名前を刻む。浮かんだ文字を少しばかり移動させると、残りの放送時間が一分もないという情報が耳に入った。
「急がなきゃ!」
チャンネルを観てくれた人たち皆に、最後まで楽しんでほしい。本当にギリギリまで詰め込みたい。
健気な想いは娯楽に変わり、画面の向こうへ笑顔を届ける。
ロワは「おーい」と上空に向けて声を飛ばす。ぞろぞろと集まってきたのは猟兵や敵を模したデフォルメキャラたちの絵。カーテンコールのように横一列に並んだ。
「皆、楽しんでくれたかなー? 皆の笑顔が一番の活動力になるよー!」
そう、どんなに素晴らしい芸でも観客がいなければ成立はしない。
それを再認識し、ロワは自ら筆を握って文字を書く。
「スペシャルサンクスはこのチャンネルを見てくれた皆! 今日はこれでおしまいだけど、どうもありがとう!」
ロワと一緒にキャラたちがお辞儀をし、カートゥーン仕立てのドタバタ劇は幕を閉じた。
成功
🔵🔵🔴
最終結果:成功
完成日:2019年04月10日
宿敵
『ザニーユ・モア』
を撃破!
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