パーガトリーの篝火
光射さぬ常夜の世界にあって、夜の闇とは絶望の象徴であり、其処に一切の安らぎも慈悲も存在しない。そして、時に――闇を照らしてくれる篝火でさえも、更に闇を濃いものとし、絶望をより深める存在となって人々を苛むのだ。
――ああ、篝火が燃えている。けれど、それを手にするものはおぞましき亡者たちだった。恐怖も痛みも感じない彼らは、ただ静かに主の命に従い、夜の世界を彷徨い続けている。
ゆらゆらと揺れる灯りの先に聳えるのは、不吉な空気を孕んだ領主の館。しかも圧政を敷き人々を虐げている彼の領主は、嘗て人類を裏切りヴァンパイアに従った、異端の騎士であったのだ――これを絶望と言わずして何と言おう。
『業火卿』の二つ名を持つこのオブリビオンは、戯れに亡者を操り、村を焼き払っては闇夜を焦がす炎に魅入るのだと言う。時に、生きたまま人々を篝火へと変え、狂乱する様を愉しんで――その骸もまた、新たな亡者として使役し、永遠の牢獄へと繋ぎ止めるのだ。
(「ああ、業火卿の亡者どものお出ましだ」)
(「全て、全て燃やされる。せめて一思いに、灰になるまで……痛みを感じる前に焼き尽くしてくれ」)
(「否だ、亡者の仲間入りをするのだけは……否だ!」)
――そして今宵も、篝火が燃えていた。
ダークセイヴァー。其処は夜と闇に覆われ、甦りしヴァンパイアが君臨する絶望の世界。
「そう……今回お前達に向かって貰うのは、彼の地で虐げられている人々が暮らす、或る村になる」
苦悶に満ちた表情で告げる、シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)は、彼の村を支配するオブリビオンを倒し、人々を解放して欲しいのだと猟兵たちに訴えた。
「村の領主館に居を構えているオブリビオンは、嘗てヴァンパイアに従った異端の騎士……『業火卿』と名乗る者だ」
彼は配下の亡者どもを率い、戯れに村を――其処に住む人々を焼き払い、その光景を館から見下ろすことを悦びとしているらしい。悪趣味なことだ、とシーヴァルドは眉間を抑えつつ、しかし好機が巡ってきたのだと言った。
「今回、大規模な焼き討ちの為に、配下の殆どが館から出払っているのだ。普段なら厳しいが、警備の手薄となった今なら、館を強襲することも可能だ」
――しかし、その全てが居なくなった訳では無いので、先ずはこの残った配下を片付けてから領主の元へ向かうことになるだろう。
「配下は、篝火を持つ亡者どもだ。篝火からの炎で辺りを燃焼させる他、篝火の影を操っての回避……更に、新たなる亡者を生み出す能力も持ち合わせているようだな」
集団戦となるので注意を払いつつ、配下を片付けて『業火卿』の元へ――しかし、長年彼に虐げられてきた人々の抱える傷は深い。
「出来れば……無事に戦いが終わったら、村人たちを訪問して元気づけてくれると嬉しい。闇に負けぬ希望の光を、人々の心に灯して欲しいのだ」
闇に閉ざされた世界に、癒しの光を――それもまた、猟兵の役目なのだろうとシーヴァルドは言って。彼は高らかに、出撃の合図を猟兵たちに送る。
「永遠の夜は未だ明けずとも、俺たちは血を流す事を躊躇いはしない……絶望の篝火を、希望の光へと変える為に、いざ常夜の世界へ赴かん!」
柚烏
柚烏と申します。この度『第六猟兵』のマスターとして活動することになりました。これからどうぞよろしくお願いします。
今回のシナリオは、ダークセイヴァーに君臨するオブリビオンの領主を討伐し、人々に希望を与えるというものです。先ずはその第一歩として、領主館を強襲し内部に残った配下『篝火を持つ亡者』たちを倒すことになります。
初めてのシナリオと言うこともありまして、プレイングの受け付けはゆっくり行おうと思いますので、じっくり行動を考えてみてくださいね。それではよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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イア・エエングラ
あらあら、綺麗、ね。炎を分けて、あげるのね
篝火の姿を借りた姿なら、多少能力も落ちるかしら
倒れたひとにはあんまり近づかない方が宜しい、かな
近寄る人がいたら、起きてくるよ、て教えとこうねぇ
あんまり沢山倒れてるとこにはいかないように
ひとっつずつ地獄の炎は消しましょな
応じるときにはリザレクトオブリビオンでお相手しよね
影の少ない路を、なるべく誰かとご一緒しよな
一対多数は避けたいもの、なるべく数は、減らしたいもの
冷たい炎は、お嫌いかしら
奥へ行く路を探しましょうね、多数がいるようなら視界の良い路を
僕ら彼らの手の内だもの、周りには重々気を付けようねぇ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
異端の騎士は大概気に入らんが、中でも虐殺をはたらく連中は格別だな。
さっさと片付けて、これ以上、望まぬ亡者が増えぬようにしてやろう。……望みの死に方を願う不毛は、生を乞うより哀れで、見ていられん。
さて、亡者どもが「死体が残らない方法」でなければ倒せないのは百も承知である。
炎で燃やすのが確実であろうから、私は主に足止めだな。【呪詛】でも振りまいていれば、それなりの効果はあろう。
うまくやれば、【ドラゴニアン・チェイン】の爆破なり、鎖で繋いだ亡者を振り回して篝火を引火させるなり、数も減らせるやもしれん。
鎖で繋いだ亡者を盾にすれば重宝するかもな……元が無辜の人間だけあって、気は進まんが、仕方あるまい。
クレム・クラウベル
灯火は、明日への導きであるべきだ
……火に怯える夜など終わりにしよう
魔を、闇を祓うなら本分。必ず為そう
見切ろうと言うならこちらもそれを見切る迄
【絶望の福音】で篝火の影を見極め、触れぬように立ち回る
余裕があれば他の味方にも呼びかけ攻撃をかわされぬように支援
出自の世界ならば影と踊るのも慣れたもの
そう簡単に見切らせはしない
隙を見て【ジャッジメント・クルセイド】での反撃も狙う
篝火の扱いは達者な様だが、こちらの光はどうだ
強い光ならば、一時的だが厄介な影を払う事も叶うだろうか
常闇の中と言えど
亡者の為の世界などではない
過去は過去へ還れ
今を、未来を奪い食い荒らすことなど――許すものか
――絶望の篝火が村を呑み込もうとする、その前に。常闇の世界に降り立った猟兵たちは、異端の騎士が待ち受ける館へと突入を開始した。
「異端の騎士は大概気に入らんが、中でも虐殺をはたらく連中は格別だな」
早速集まって来た亡者の群れに、ふんと鼻を鳴らしつつ――ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は、黒槍に変じた蛇竜を従え果敢に斬り込んでいく。
「ああ……灯火は、明日への導きであるべきだ。……火に怯える夜など、今宵で終わりにしよう」
魔を、闇を祓うなら本分だと頷くクレム・クラウベル(ヴェスペラ・f03413)は、篝火の作り出す影を見極め、巧みな身のこなしで回避しつつ反撃を叩き込んでいた。
「影と踊るのも慣れたもの。そう簡単に見切らせはしない」
そう、見切ろうと言うなら此方もそれを見切る迄のこと。向こうが影を通して行動を予測し、回避を行うと言うのなら――此方は、数瞬先の未来を覗き見て対抗してみせる。先の先を見通すクレムの能力は、亡者たちにとって正に、絶望の福音となって襲い掛かったのだ。
「あらあら、綺麗、ね。炎を分けて、あげるのね」
――と、篝火の下に横たわる亡者の亡骸へ、微睡むように言葉を掛けたのはイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)。ひとっつずつ、地獄の炎は消しましょな――そう言ってうっとり笑いながら、美しきクリスタリアンの青年は、その身に見合わぬおぞましき死霊を召喚し、ひとつひとつ亡骸を塵へと変えていった。
「あら、そこ、起きてくるよ」
「……む?!」
見れば、イアの指差した先――ニルズヘッグの足元に横たわっていた亡者が、もぞもぞと動き始めている。既に倒したのだと思っていたが、どうやら新たなる亡者として蘇ろうとしているらしい。
「はい。冷たい炎は、お嫌いかしら」
しかし、その様子にも顔色一つ変えずに、イアは死霊を使役すると、炎を以って亡者を再度葬っていった。
「死体が残らない方法でなければ倒せないとは判っていたが、なかなかに面倒だな」
――戦闘力は落ちるのが救いとは言え、やはり燃やすのが確実なのだろうか。が、其処で諦めないのがニルズヘッグがニルズヘッグたる所以である。
「……元が無辜の人間だけあって気は進まんが、仕方あるまい」
ニルズヘッグの操る竜気が亡者に叩きつけられ、オーラの鎖がふたりを繋ぐと――何と、そのまま彼は亡者を振り回し、周囲の敵群を蹴散らし始めたのだ。
「一対多数は避けたいもの、とは思ってたけどねぇ」
「ふむ、このまま篝火を引火させても好し、亡者を盾にするのも好しだな」
そんな豪快極まるニルズヘッグの戦いっぷりに、イアはほぅと溜息を零して。尚も縋りついてくる亡者へはクレムが、天からの光を放って神罰を与えていった。
「常闇の中と言えど、亡者の為の世界などではない。過去は過去へ還れ」
「そうだな……さっさと片付けて、これ以上、望まぬ亡者が増えぬようにしてやろう」
――望みの死に方を願う不毛は、生を乞うより哀れで見ていられん。しみじみと呟くニルズヘッグだったが、クレムの反応は素っ気ないものだった。幾ら祈っても神など助けてはくれないのにな――聖職者とは思えぬその言葉に、けれどニルズヘッグは不敵な笑みを浮かべて頭上を仰ぐ。
「だがな、誰がなんと言おうと、世界は愛と希望に満ちているのだよ」
「……お前、色々と変わってる奴だな」
気が付けば周囲に居た亡者は全滅しており、奥へ行く路を見つけたらしいイアが、此方へ向かって手招きをしていた。
「さあさ、行きましょ。僕ら彼らの手の内だもの、周りには重々気を付けようねぇ」
――そして顔を見合わせたクレムとニルズヘッグは、ひとつ頷いてから館の奥へと駆け出していく。
(「そうだ、奴等――オブリビオンに、今を、未来を奪い食い荒らすことなど――許すものか」)
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
POW
業火卿、ですか
無辜の民を虐げる、あなたたちをこそ地獄の業火は焼き尽くすのです
【トリニティ・エンハンス】で聖槍に炎の魔力を纏わせ、攻撃力を強化
【属性攻撃】によりその火力を更に増大させる
我が炎は不浄を焼き尽くす聖なる炎――!
館に真正面から突貫
亡者どもを【怪力】によって聖槍を縦横無尽に【なぎ払い】、
炎熱を帯びた【衝撃波】でまとめて吹き飛ばす
放たれた炎に対しては、聖槍(【武器受け】)に纏った炎で相殺する
ニコ・ベルクシュタイン
俺達猟兵が来たからには、此れ以上の狼藉は許さぬ。
景気付けだ、手始めに配下から蹴散らしてくれよう。
共に戦う味方との立ち位置に常に気を配り
誰かが複数の敵に包囲されてしまったりせぬように心掛ける
敵への攻撃は【花冠の幻】を使用
攻撃範囲にあたる半径14mを意識しつつ
大小二振りの双剣を虹色の薔薇の花弁に変えて
可能な限り多くの敵を巻き込めるような立ち位置を取り、発動させる
多少ならば敵陣の真っ只中に飛び込む事も厭わず、
但し退路は可能な限り確保しておく
味方の足を引っ張る訳には行かぬ故に
夢は虹色、現は鈍色。なればこそ此処に奇跡の花を紡ぐものなり。
忌まわしき篝火よ、虹色の輝きの前に疾く掻き消えるが良い。
ラスベルト・ロスローリエン
業火卿とは大仰な名前だね。
人を、人の住まう地を焼く火か――故郷を焼いた竜の炎を思い出す。
感傷だけれど、それだけに見過ごせないな。
【WIZ】
集団戦なら僕もある程度は前に出て、可能な限りの敵を半径15mの射程内に収めるよ。
奴らの仲間入りせぬよう、篝火から飛ぶ炎は【見切り】で回避しよう。
敵を捕捉したら“永久の白緑”から樹霊を【高速詠唱】で呼び覚まし《落命花》を【全力魔法】で使用。
この魔法ならば混戦の中で仲間への誤射を心配する事も無いからね。
不浄なる炎では決して焼けぬ花があると知るがよい。
『仮初の死から解き放ってあげよう……僕から送る手向けの花だ』
さあ、宵闇を焦がす業火も今宵限りとしようか。
タロ・トリオンフィ
篝火は人の智慧により生み出され、人の営みを照らすもの
人の心を折り、その身を害する為のものではない筈だから
灯火の照らす先に、
亡者の怨念ではなく、生者の歩める道を
集団戦なら僕は支援の方が得意だよ
仲間に倒れる者が出ないよう、『XIX』のタロットで回復にあたろう
多少ある火炎耐性も、自身が斃されない為に役立つだろうか
一応、自身でも照明の用意があるほうが良いかな?
開閉可能なランタンでも備えておこう
相手の増援にも気を配るよ
館内のあちこちから駆けつけるだろうし、
状況によっては焼き討ちに出払った者の幾らかが気付いて戻るかもしれない
第六感は働く方だから、罠や挟み撃ちの気配があれば仲間に伝えよう
「俺達猟兵が来たからには、此れ以上の狼藉は許さぬ」
亡者たちの掲げる篝火が、悪夢めいた影をゆらゆらと形作る中――ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は確固たる口調でそう告げると、纏う双剣を無数の薔薇の花弁に変えて、迫る亡者の群れへと解き放った。
「景気付けだ、手始めに配下から蹴散らしてくれよう」
――その虹色の輝きが触れた先から、亡者の肉体は灰と化し崩れ落ちて行って。館に突入してからの時間を冷静に計測していたニコは、多少ならば強引に突っ切っても大丈夫かと思案する。
「分かりました。なら私が先陣を切り、迅速に殲滅を図ると致しましょう」
そんな敵陣へと飛び込む覚悟を見せたニコへ、直ぐさま同意してみせたのは銀髪の少女だった。具足の音も軽やかに、黄金の穂先を持つ槍を手にするその姿は、一見すると修道女のものなのだが――。
「館の主……業火卿、ですか」
眼鏡の奥の瞳に鋭い光を宿した彼女――オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は聖槍に炎の魔力を纏わせると、風を切って通路を駆け抜け、そのまま亡者の群れを一息に薙ぎ払った。
「無辜の民を虐げる、あなたたちをこそ地獄の業火は焼き尽くすのです」
あくまで淑やかな物腰を崩さぬが、その口ぶりは有無を言わせぬ苛烈なもの――さながら、異端の騎士を告発する異端審問官かな、とラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)は呟き紫煙を燻らせる。
「まあ、業火卿とは大仰な名前だね。人を、人の住まう地を焼く火か――」
その時、ラスベルトの脳裏に過ぎったのは、自身の故郷を焼いた竜の炎だったのか。三角帽子の鍔を押さえて、静かに息を吐き出した後――彼は、精霊の宿りし若木の杖を掲げ、高速詠唱を開始した。
(「感傷だけれど、それだけに見過ごせないな」)
――やがて、大いなる嵐の前に全ての草木は空しく枯れ、花は風に散るものならん。大地に再び命芽吹くその時まで――紡がれる言霊に導かれるように、ラスベルトの杖が無数の花弁へと変わる。その名も無き白花の欠片ははらはらと、亡者の群れへ降り注ぎその身を浄化させていった。
「仮初の死から解き放ってあげよう……僕から送る手向けの花だ」
(「篝火は人の智慧により生み出され、人の営みを照らすもの。人の心を折り、その身を害する為のものではない筈だから」)
そして、果敢に突破口を切り開く仲間たちを、後方から支援するのはタロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)だ。倒れぬものが出ないよう戦場に気を配る彼は、ル・ソレイユ――遍く命の象徴たる『太陽』のカードを翳し、何時でも動けるように見構える。
「……それと、向こうの増援にも気を配っておかないと。館内のあちこちから駆けつけて来るだろうし、それに」
――状況によっては焼き討ちに出払った者の幾らかが気付いて戻るかもしれない、と続けるタロの言葉に、ふぅむとラスベルトが感心したように頷いた。
「確かにね。否、先に『業火卿』の方が気づいて、配下を呼び戻しているかも知れない――ね?」
その時視界を掠めた篝火の炎を、ひょいと見切って躱したラスベルトに、思わず拍手をしてしまうタロ。どうやら退路の方はニコが確保してくれているとのことだが、用心するに越したことは無いだろう。
(「そう……灯火の照らす先には、亡者の怨念ではなく、生者の歩める道を」)
幸い、自分は第六感が働く方だ。罠や挟み撃ちの気配を察知したら直ぐに伝えて、戦いに集中する皆の助けとなろう。そう――己の依り代であるタロットカードのように。
「我が炎は不浄を焼き尽くす聖なる炎――!」
人間離れした怪力でオリヴィアが聖槍を振るうと、炎熱を帯びた衝撃波が辺りに吹き荒れ、通路を塞ぐ亡者たちを纏めて吹き飛ばしていく。辛うじてその火刑を逃れた亡者たちも、ニコとラスベルトが舞わせる花弁に絡め取られ、瞬く間にその身を塵へと変えていった。
「……夢は虹色、現は鈍色。なればこそ此処に奇跡の花を紡ぐものなり。忌まわしき篝火よ、虹色の輝きの前に疾く掻き消えるが良い」
――そして、不浄なる炎では決して焼けぬ花があると知るがよい。ふたりの詠唱が調和し、白花と虹薔薇の花弁が螺旋を描いて吹き荒れた後、其処に立つ者はもはや生者のみだ。
「さあ、宵闇を焦がす業火も今宵限りとしようか」
そう――ラスベルトのその言葉通り、猟兵たちの息吹は今まさに、業火をかき消そうと迫りつつあったのだった。
大成功
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第2章 ボス戦
『異端の騎士』
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POW : ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
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己の支配する村を一望出来る館のバルコニーで、異端の騎士――『業火卿』は静かにその時を待っていた。
館を強襲した侵入者どもはどうやら、配下の亡者たちを次々に屠っていったらしい。もう直にここへやって来るだろう――しかしそれを思えば、彼の心は不思議と沸き立ち、血が滾るのだ。
「此の世界は、天国などでは無い。が――地獄と呼ぶにも生温い」
何故なら、此の地に生きるひとびとは、あと一歩の所で希望に縋りついているから。絶望に塗り潰され、自ら死を選ぶ迄でも無く――辛うじて、生きている。生かされているのだ。
「ああ、そうだ――天国にも地獄にも行けないものが、辛苦を味わい続ける場所。清めの火でその身を灼かれる煉獄――パーガトリーだ」
くくっ、と喉の奥を鳴らして嗤う業火卿の、その漆黒の甲冑の隙間からは微かに、焼け爛れた皮膚が覗いていて。彼は狂おしげに――そして愛おしげに、此処へやって来るであろう猟兵たちに囁く。
「ああ、懐かしいな。異端と呼ばれ、この身を灼かれたあの日の記憶――お前達はそれをもう一度、俺に味わわせてくれるのか?」
ラスベルト・ロスローリエン
この世界が煉獄と言うなら……君も何かを悔悟しているのかい?
喩え悔悟があろうと、業火に焼かれた人達の魂の救いにはならないけれどね。
【WIZ】
古木の杖――“翠緑の追想”を振りかざし【高速詠唱】で《古森の手枷》へと変化させる。
【全力魔法】で唱える封魔の枝で、業火卿の剣を絡め取り鮮血の薔薇を封じよう。
少々負担のある魔法だが……永い命にはこうした使い道もあるのさ。
焼け爛れた皮膚に気付けば痛ましくは思うが、この戒めを解くつもりはない。
そう、どれだけ傷つこうとも。
醒めない悪夢はこれで終いにしようじゃないか。
その魂が世界のどこへと還るのか、如何なる書も記さぬ事だろうけれど。
『願わくば、君の魂に憐れみを』
タロ・トリオンフィ
御機嫌よう、業火卿――
不躾ながら勝手にお邪魔しているよ
裏向きのまま一枚カードを引いて投げ渡す
ワンドの王、逆位置
…いざ、絶望の篝火に幕引きを。
相手に軍馬の召喚と強化に、自身の武装強化の能力があるなら
此方も相応に
仲間達、特に接近戦を行う者を中心に、「Ⅷ」のタロットで強化を行うよ
最前衛より少し下がって、相手の動きを見ながら
攻撃参加の際は、前衛仲間の攻撃動作の隙を埋められるよう、
敢えて仲間の攻撃直後タイミングを意識
撃破が成れば、最早篝火は絶望を運ばない
清めの炎に灼かれたなら、
「業火卿」では無くなった只の貴方には弔いを――
歪んだ過去の存在が、今度こそ正しく眠りにつくように
オリヴィア・ローゼンタール
POW
歪んだ愉悦に魅入られた騎士よ
聖なる炎の光で照らされた世界に、貴様の蔓延る場所はなし
魂の一片すら残さず焼き尽くします
【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を宿し攻撃力を増大し、
騎士の殺戮喰血態による強化に対抗
真正面から駆け込み(【ダッシュ】)、騎士の攻撃を自身に惹き付ける
絶大な【怪力】で神速の刺突、頑強な甲冑で身を包もうとそれごと穿つ(【鎧砕き】)
剣撃は槍で受け流し(【見切り】【武器受け】【オーラ防御】)、
ガントレットによる殴打(【鎧砕き】【グラップル】)で反撃(【カウンター】)する
槍が振るえないほどの至近戦になったら、間合いを保つためにグリーブで蹴り飛ばす(【踏みつけ】)
青ざめた月の光が差し込む広間へ、タロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)は悠然と足を踏み入れた。その、音もなく翻る純白のローブを追いかけるように――異端の騎士『業火卿』は、バルコニーを背に振り返り、ゆっくりと侵入者たちを睥睨する。
「此処まで乗り込んでくるとは。……随分と気概のある者たちのようだ」
「御機嫌よう、業火卿――不躾ながら勝手にお邪魔しているよ」
篝火の亡者たちとの戦いを制し、最上階まで辿り着いたタロたち猟兵には、何ら気負う所は無い。ただ自分の為すべきことを為すまでだと――業火卿の威圧も受け流し、タロは裏向きのまま一枚のカードを手繰ると、それをそのまま投げ渡した。
「ワンドの王、逆位置……いざ、絶望の篝火に幕引きを」
「……粋な真似を」
漆黒の剣でカードを一閃した業火卿へ、その時、間髪入れずに飛び出したのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)だ。破邪の聖槍に炎の魔力を纏わせた彼女は、その力を破壊へと転化させて、騎士の猛攻に対抗しようとする。
「歪んだ愉悦に魅入られた騎士よ、聖なる炎の光で照らされた世界に、貴様の蔓延る場所はなし――魂の一片すら残さず焼き尽くします」
一息で距離を詰めたオリヴィアは、そのまま真正面で業火卿の攻撃を惹きつけようとするが――漆黒の甲冑の下で騎士は、にやりと不気味な笑みを浮かべ、気迫に満ちた声で少女の迂闊さを罵った。
「驕るなよ小娘。仲間の盾になるのであれば、魔力の使い方を考えるべきだったな。尤も、その炎すら未だ生温いものだが――!」
――そう、敵を惹きつけるリスクを負い、相手の殺戮喰血態に対抗しようと言うのなら、守りの方を考えるべきだったのかも知れない。何故なら、相手の持つ能力は――。
「――っ、あぁ……ッ!」
業火卿の振るう黒剣が、オリヴィアの脇腹を貫き――溢れる彼女の血潮を糧に、武装の封印が解かれていく。更に切れ味を増した刃が、貪欲に血を啜ろうと不吉に煌めくが、其処に絡まったのは封魔の枝。それは、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)の持つ古木の杖が、邪なる者を戒めようと変じた枷だった。
「少々負担のある魔法だが……永い命にはこうした使い道もあるのさ」
寿命を削ると言う代償を払いつつも、ラスベルトは飄々とした態度を崩さぬまま、剣を封じられた業火卿へと問う。
「ねえ、この世界が煉獄と言うなら……君も何かを悔悟しているのかい?」
――喩え悔悟があろうと、業火に焼かれた人達の魂の救いにはならないけれど。そっと呟いたラスベルトの視線の先では、タロの引いたラ・フォルス――強固なる信念に拠る『力』のカードが輝き、皆の戦う力を増強してくれていた。
「ありがとう、これでもう少し抑えて置ける筈だ。……ああ、どれだけ傷つこうとも、僕はこの戒めを解くつもりはないよ」
業火卿の甲冑から僅かに窺える、彼の焼け爛れた皮膚を見れば痛ましくは思うが――ラスベルトの生み出した古森の手枷は鮮血の薔薇を封じ込め、逆にじわじわと騎士の肉体を侵食していく。
「そう、醒めない悪夢はこれで終いにしようじゃないか」
(「撃破が成れば、最早篝火は絶望を運ばない」)
祈るタロの援護を受け、力を取り戻したオリヴィアの槍が、騎士の甲冑ごと打ち砕かんと唸りを上げて。その穂先で揺らめく炎に、僅かの間魅せられながら――タロは、歪んだ過去の存在が、今度こそ正しく眠りにつくようにと願わずにはいられなかった。
「清めの炎に灼かれたなら、『業火卿』では無くなった只の貴方には弔いを――」
――その魂が世界のどこへと還るのか、如何なる書も記さぬ事だろうけれど。ラスベルトもまた、炎の犠牲者であった異端の騎士へ、心の中で祈りを捧げる。
(「願わくば、君の魂に憐れみを」)
成功
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クレム・クラウベル
…業火卿、か。大層な名を語る
だが容易く焼き尽くされる気はない
灼かれ祓われるべきはそちらの方
この世界を煉獄になどさせるものか
突入次第素早く戦闘場所の地形を確認
動き回るだろう相手に対し、遮蔽物や死角を取れる場所を活用し
他者との打ち合いの中で生じる隙などと組み合わせ
的確に10秒、【千里眼射ち】で甲冑の隙間を狙い射抜く
一射ごとに移動し次の機を伺う
前に出る者が多いなら【援護射撃】で気を引く、隙を作る等も
天国には遠くとも、地獄である必要もない
辛うじてでも、縋り付くようにどうにかでも、生きているならそれに意味がある
いいや、意味がなくとも生きてそれを探す
それが人と言うものだ
…だからこれ以上、奪わせはしない
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
業火卿……とは、また大層な呼び名だな。――お望み通り焼き尽くしてやろう。ただし、今度は滲み出る魂すら残さんぞ!
時間をかけて良い相手ではあるまい。他の連中もいることだ、短期決戦で臨む。
【呪纏】を使えば多少なり寿命は削れるが、ま、奴を火刑に処すと思えば、くれてやるのも悪くはない。
黒炎は遠距離で使用する。距離が近いのであれば槍で【串刺し】にしてやった方がいいだろう。
移動速度が上がっているのだから、軍馬の攻撃も騎士の攻撃も、見切るのは可能であろう。それでも、あまり近寄りたくはない相手だな。
この世のあらゆる辛苦は、この私が全て焼いてやる。安心して地獄に落ちろ、外道めが。
イア・エエングラ
ご一緒なら、心強いねぇ
とてもお強いし大きいからね
これだけ蹴散らしても囲われないなら他も奮戦したかしら
すれ違ってはいないよだからお互い辿り着いて挟撃の形になれば良いけれど
何方が味方で何処にいるか、きちんと気を付けておきましょね
お待たせして、しまったかしら
僕ら火を消しに来たのよ
――朝はあんまり明るいから、篝火もご用は、ないでしょう?
リザレクトオブリビオンで招きながら
あんまり固まっていない方が得策かしら
怖いお馬さんがいるなら先に帰って、欲しいねぇ
黒糸威を降らせて着実に、傷口抉っていきましょな
地獄からいらした騎士様が、還る場所など灰だけだもの
さあ火の粉と踊りましょう、どちらかが果てるまで
朝がくるまで
業火卿とは、また大層な名だ――知らず零れた呟きは、綺麗にふたつ重なっていて。ふと、クレム・クラウベル(ヴェスペラ・f03413)が隣を見れば、其処には不敵な笑みを浮かべるニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)が居た。
「……だが、容易く焼き尽くされる気はない。灼かれ祓われるべきはそちらの方だ」
「――ああ、お望み通り焼き尽くしてやろう。ただし、今度は滲み出る魂すら残さんぞ!」
互いに頷き、ふたりは異端の騎士を討ち取るべく戦場を駆けていく。クレムが素早く周囲の地形を確認して動く中で、ニルズヘッグは短期決戦で臨もうと、己が身に呪詛を纏い始めた。
「まぁ。ご一緒なら、心強いねぇ。とてもお強いし大きいからね」
そんな中、決戦の地で仲間たちと挟撃の形を取れたことに安堵しつつ、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は水底から手招くようにしてそっと、禁呪を紡いで死霊を召喚する。
(「時間をかけて良い相手ではあるまい。多少なり寿命は削れるが――」)
溜め込んだ呪詛を自身の力へと転化する、忌み子たる異能を行使しながらも、ニルズヘッグの表情は清々しいほどに晴れやかだ。高速移動を駆使し、一気に業火卿の元へと迫った所で、彼は竜槍を構えて串刺しにしようと力を籠めた。
「ま、貴様を火刑に処すと思えば、くれてやるのも悪くはないか」
「……く……ッ!」
怖れを知らぬ勇猛さで攻め立てるニルズヘッグの勢いに、業火卿が次第に押されていく。漆黒の軍馬に跨り、勢いを取り戻そうとする彼だったが――其処へ、死角からクレムの放つ必中の矢が襲い掛かった。
「この世界を煉獄になどさせるものか。天国には遠くとも、地獄である必要もない……辛うじてでも、縋り付くようにどうにかでも、生きているならそれに意味がある」
「くく……勇ましいことだ。ならば仮初めの希望を与えた後に、惨たらしい死で以って葬ってやろう」
――あと、十秒。次の一射の機を窺うクレムに、業火卿の生み出した血色の薔薇が襲い掛かる。しかしそれは寸での所で、イアの死霊から滲む黒槍に迎撃され、儚く霧散していった。
「お待たせして、しまったかしら。僕ら火を消しに来たのよ」
――朝はあんまり明るいから、篝火もご用は、ないでしょう? そう言って優雅に一礼するイアに続き、消耗しつつあるニルズヘッグもまた、呪いの力を黒炎に変えて騎士へと解き放つ。
「この世のあらゆる辛苦は、この私が全て焼いてやる。安心して地獄に落ちろ、外道めが」
ああ、そうだ。例え仮初めのものだと言われようと、希望を抱いて生きているのなら、其処に意味がある――いいや、意味がなくとも生きてそれを探す、それが。
「……それが人と言うものだ。……だからこれ以上、奪わせはしない」
軍馬と共に突進してくる業火卿の、その甲冑の僅かな隙間を狙ったクレムの矢が、遂にその肉体を捉えて。更に落馬しかけた彼の元へ、イアの黒糸威が容赦なく追い打ちをかける。
「地獄からいらした騎士様が、還る場所など灰だけだもの。さあ火の粉と踊りましょう、どちらかが果てるまで」
――そう、朝がくるまで。イアのその言葉通り、絶望の世界の夜明けは、ゆっくりと迫りつつあった。
成功
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ヴァロ・タハティ
※喋らせないでください※
ボクは
皆みたいにたたかえる訳じゃないから……
なるべく【目立たない】ように柱の影にきゅっと身を隠して
後ろから仲間をささえるね
傷付く姿をみるのはつらいけど
皆の血が、敵の武器になってる……?
それなら、ボクにまかせて
傷はちゃあんとなおすから!
いたくたってくるしくたって
ぼろぼろ涙が止まらなくったって
ボク達はまけない
ううん、まけさせないよ!
鞄から取り出すのは、一番大きな魔導鉱石
一生懸命魔力をねりあげて【Ihume】を発動
傷付いた仲間が多いなら
どれだけ疲れたって、たくさんの仲間を癒すよ
ボク、信じてるんだ
こうやって信じることが、希望なんだって
ミハル・バルジライ
業火の記憶を思い返したいのなら、聴罪師の真似事くらいはしてやろう。
赦しを与えてはやれんがな。
他の猟兵達との連携は極力密に。
手強いと解っていて隙を曝け出す程傲慢ではない。
敵の挙動へは警戒怠らず、前動作等の傾向から使用する技を見極めるよう努めて。
範囲攻撃の予兆があれば味方への注意喚起と共に被害を減じるべく距離を空けるよう試みる。
また業火卿本来の名や主人たる吸血鬼の素性を問い掛ける等
集中力を妨げ付け入る隙を広げる為の工夫も随時。
攻撃に際してはフェイントを交え咎力封じを以て。
此処は既に刑場、鎖さす枷は煉獄に貴様ひとりを捉え置く為と思い知るが良い。
泉宮・瑠碧
燦(f04448)と組んで行く
ヴァンパイアだけが悪いとも思わないし
裏切る者もあるだろう
それだけで異端とも思わない
炎に清めがある事も認めよう
…君のは過ぎたる炎だが
過ぎた炎は清めよりもただの破壊だ
主は業火卿の動きを見て精霊祈眼
花が舞えば風の精霊に願い
業火卿付近の花びらの軌道も乱せれば
(燦が通る一瞬でも良い、どうか彼女を守って)
業火卿へは氷か水の精霊へ願う
全力魔法も使用
(炎に苦しんだ者へ、また同じ苦しみを与える事も無い
…でも、
それとも、業火卿は自分が清められたいのだろうか…)
生還したなら燦のハイタッチには応えるが…
君はもう少し、自身の傷も考えてくれ
…傷があれば後で治そう
自分へ攻撃が来るなら見切り使用
四王天・燦
瑠碧(f04280)と業火卿を獲りに行く。
「ぱーがとりー?修羅界みてーなものか…てめーは畜生以下だがな」
盗賊もびびる悪趣味だ。地獄界行きじゃ生温いぜ
(視えた…降り散る修羅花の間隙!)
ローゼスは瑠碧が落としてくれるに任せ多少の被弾覚悟で突っ切る。
アタシはSPDで勝負…お馬様召還に対し符術『力場の生成』で戦う。
ばら撒いた符を空間に固定してジャンプの足場に使う術だ。
蹂躙される前に見切って残像を残して跳び、あわよくば馬に飛び乗る。
ダガーで2回攻撃を活かして滅多刺しにしてやる。
「焼かれたいとは困った変態領主様だ…来世は畜生となって焼鳥にされてろ」
無茶から生還したら瑠碧と軽くハイタッチして戦闘継続だぜ
館の広間に漂うのは、薔薇の芳香を思わせる酷く甘ったるい血の匂いだった。それは、異端の騎士と猟兵たちが繰り広げる死闘――その過程で流れ落ちたものなのか、或いは嘗ての犠牲者たちの流したものが今もなお、悲嘆を訴え続けているからなのか。
「……どちらにせよ、此処は死の気配が強すぎる、か」
幽鬼の如き相貌をほんの少し陰らせて、ミハル・バルジライ(柩・f07027)は拷問具を手に業火卿へと向き直る。吹き付ける夜風が、ミハルの艶やかな黒髪を揺らす中――騎士は軍馬を駆って、彼の元へと突撃をかけて来た。
「業火の記憶を思い返したいのなら、聴罪師の真似事くらいはしてやろう。……赦しを与えてはやれんがな」
氷の刃を思わせる、冷ややかな声が広間に響き渡ると同時、ミハルは先ず軍馬の勢いを削ぐべく拘束具を展開させる。その荒縄が馬の足に絡み付いた所で、四王天・燦(月夜の翼・f04448)が動いた。
「ぱーがとりー? 修羅界みてーなものか……てめーは畜生以下だがな。盗賊もびびる悪趣味だ。地獄界行きじゃ生温いぜ」
そうして八重歯を煌めかせてにやりと笑い、身軽な動作で突っ切っていく燦を援護するように、精霊たちに働きかけるのは泉宮・瑠碧(月白・f04280)だ。
「……ヴァンパイアだけが悪いとも思わないし、裏切る者もあるだろう。それだけで異端とも思わない、でも」
燦の行く手に立ち上る血薔薇の渦――花弁の舞いを静かに見つめる瑠碧は、その軌道を乱してくれるよう風の精霊へと祈る。
(「燦が通る一瞬でも良い、どうか彼女を守って」)
(「視えた……降り散る修羅花の間隙!」)
と、多少の被弾覚悟で突っ切ろうとした燦は、自分の身体が思った程に傷を負っていないことに気づいて、一瞬はっとした表情を見せた。
「――あ、お前……っ」
その時、柱の陰にきゅっと身を隠したのは、ちみっとしたシャーマンズゴーストで――その首から下げている鉱石ランプがきらきら光っているのを見た燦は、彼が今まで頑張って仲間たちを癒してくれていたことを知り、小さく頷いて駆け出していく。
(「ボクは、皆みたいにたたかえる訳じゃないから……」)
――傷つく姿を見るのはつらいけど、後ろから仲間を支えてみせる、とヴァロ・タハティ(キセキ・f05764)はフードの奥の瞳を輝かせた。皆の流す血が、向こうの武器になってしまうと言うのなら、ボクにまかせて。傷はちゃあんとなおすから――己の体力を削りながらも、懸命に治療を続けるヴァロだったが、立て続けに行使した力の所為で、立っているのも覚束なくなっているようだ。
(「――あ」)
しかし、運悪く業火卿の花嵐は、ヴァロの直ぐ近くまで迫っていて。躱す体力も尽きかけていた彼は、ただ茫然とそれを見ていることしか出来なかったのだが――其処へ瑠碧の願いを聞き届けた風の精霊が、ありったけの突風を放って薔薇の花弁を散らした。
「炎に清めがある事も認めよう。……君のは過ぎたる炎だが、過ぎた炎は清めよりもただの破壊だ」
ちいさなヴァロをその背で庇うようにして、瑠碧は毅然と業火卿へ立ち向かう。そんな中、ミハルが感情を窺わせないまなざしで『今の内に』と合図を送り――その瞳の裡に秘められた彼のやさしさに、ヴァロは思わず涙を零しそうになった。
(「……うん、いたくたってくるしくたって。ぼろぼろ涙が止まらなくったって。ボク達はまけない……ううん、まけさせないよ!」)
――傷付いた仲間が多いなら、どれだけ疲れたって、たくさんの仲間を癒すよ。轡を嵌め、軍馬の動きを完全に封じたミハルへ力強く頷いて、ヴァロは一番大きな魔導鉱石を取り出し魔力を練り上げる。
「手強いと解っていて、隙を曝け出す程傲慢ではない――が、業火卿、貴殿は如何か? 異端の烙印を押された、その本来の名は?」
動揺を誘おうと問いを投げかけるミハルだが、それ位のことで集中を乱すほど、向こうも愚かでは無いらしい。しかしその間にも、符術を操る燦が巧みな空中戦を仕掛け、一方の瑠碧は全力で水の精霊を業火卿へとぶつけていった。
(「炎に苦しんだ者へ、また同じ苦しみを与える事も無い……でも、それとも、業火卿は自分が清められたいのだろうか……」)
――否、感傷に浸っている暇は無いと、瑠碧はかぶりを振る。そうして幾度となく吹き荒れる薔薇の花弁を相殺し、隙を突き拘束を強めていったミハルの助力もあって、異端の騎士のいのちはもはや風前の灯となっていた。
「此処は既に刑場、鎖さす枷は煉獄に貴様ひとりを捉え置く為と思い知るが良い」
冷然とミハルが告げる中、力場を生成した燦がばらまいた符を蹴って幾度も跳躍を繰り返す。残像を残すようにして見切り、飛び降りたのは死角に当たる鎧の継ぎ目――其処で、やぶれかぶれに突き出された黒剣が燦の肌を掠めるが、血を啜らせはしないと、ヴァロの癒しの力が降り注いだ。
(「ボク、信じてるんだ。こうやって信じることが、希望なんだって」)
「焼かれたいとは困った変態領主様だ……っ!」
風の加護を与えられた短剣を構える燦は、継ぎ目に狙いを定めて滅多刺しを加えていく。そうして素早い連撃を立て続けに繰り返した直後、異端の騎士の肉体は突如ちからを失って――乾いた音を立てて地面に転がった甲冑は、空気に溶けるようにして、瞬く間に塵へと変わっていった。
「……来世は畜生となって焼鳥にされてろ」
――そうして勝利のハイタッチを交わす燦と瑠碧だったが、瑠碧はと言えば、無茶な相棒に忠告せずにはいられなかった。
「君はもう少し、自身の傷も考えてくれ……」
成功
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第3章 日常
『闇に閉ざされた世界に、癒しの光を……』
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POW : 力仕事を手伝ったり、勇壮な英雄談を語る。
SPD : 破壊させた施設を修復したり、軽妙な話術や曲芸で楽しませる。
WIZ : 怪我や病気を癒したり、美しい歌や芸術で感動させる。
👑11
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――かくして、猟兵たちの活躍によって異端の騎士『業火卿』は討ち果たされ、村を呑み込もうとする篝火は静かに掻き消えていった。
そして、常夜の世界にも夜明けが訪れる。眩い陽光に祝福されずとも、領主の暴虐に苦しんでいたひとびとにとっては、新たな始まり――希望を掴む第一歩となるだろう。
――或る者は言った。天国には遠くとも、地獄である必要もない。辛うじてでも、縋り付くようにどうにかでも、生きているならそれに意味があるのだ、と。
――そして、或る者はこう言って笑った。誰がなんと言おうと、世界は愛と希望に満ちている、と。
天国でも地獄でもない場所――それは、そう悪いものでは無くて。案外生きるには丁度いい場所なのかも知れない。
――これは、闇に閉ざされた世界に齎された、ちいさな、けれど確かな輝きを持った、癒しの光の物語。
泉宮・瑠碧
燦(f04448)と一緒に人々へ
シンフォニック・キュアを
デバイスを開放して風の精霊を纏いながら歌唱で歌う
全ての人が共感するのは難しいだろうが
少しでも多くの人が心身癒される様に
…オブリビオンも含め、亡くなった者が安らかに眠れる様に
心の中の希望を棄てないで
そう想いを込めて
光と希望を望む歌を
暗い世界は本当に暗いだろうか
苦しい日々は本当に苦しいだけだろうか
希望という名の心の光ひとつ
それだけでも世界はきっと優しくなる…
ユーベルコードの歌を終えると同時に
続きで通常の歌唱を
燦の踊りに合わせる様にテンポを変えて歌う
…素直じゃないな、君も
拗ねるだろうから、言わないが
四王天・燦
瑠碧(f04280)と癒しにいくぜ
治療とか心得ねーし、ここは一つ楽しませるためにSPDで踊ってみるか。
こう見えて実家は神社なんだ。狐の羽織を羽織って舞おう。
瑠碧の歌唱に合わせ、鎮魂と癒しを願い祈りを篭めて舞う。
―焼け爛れた心の傷もいつか癒えると願って
「瑠碧、曲調もうちょいアゲアゲで頼む」
しんみりし過ぎてもいけねーや。
舞いから踊りにシフト。
アークウィンドと刀を抜いて派手な剣舞のはじまりだ。
―心に剣を。絶望に抗えと願って
「絶望の劫火は消えた。次はお前らが希望の炎を胸に宿して生きろ。恐れるな、死んだ連中の分まで熱く生きろ。以上!」
照れくさいからこれ以上コメントしねーぞ。
何だよ瑠碧…その目ー(むすっ)
東雲・咲夜
ああ、ほんまによかった…
これでもう、誰かが傷つくことはないんやね
うちは何もできひんかったけど、まだ間に合う、かな?
脅威が去ったとはいえ、人々の心には火傷のように、重い痛みが宿ってしまったと思うの
思い出したり、怖くなったり、この先もきっと…
せやけどね、笑うと元気が出てくるんよ
辛い時こそ…
うち、籠いっぱいに手作りのクッキーを焼いてきたの。甘くてええ香りでしょう
旬の苺を練りこんだのやけど、気に入ってくれはったら嬉しいなぁ
それとね、うちこの世界のお歌を覚えてきたんよ
小さなお花が一生懸命咲く様を謳った曲
一緒に歌ってくれはる?
哀しさを包み込むように、優しくやわらかく歌いながら
お菓子と笑顔を配って回ります
その日、村へ向けてゆらゆらと歩みを進めていた、亡者たちの篝火がふつりと消えた。業火の恐怖に怯えていたひとびとは、やがてひとりふたりと――閉じこもっていた家屋から、そろそろと外の様子を窺う。
――やがて彼らは知ったのだ。明けぬ夜の世界に夜明けが訪れていたことを。そして――未だ見ぬ暁の光のように、奇跡の歌があたたかく村を包み込んでいたことを。
(「全ての人が共感するのは難しいだろうが、少しでも多くの人が心身癒される様に……」)
拡声器のデバイスを解放した泉宮・瑠碧(月白・f04280)は、ひとびとの負った傷を癒すべく歌声を響かせた。辺りを優雅に舞うのは、彼女が纏う風の精霊か――激闘の末に討ち果たしたオブリビオンも含め、亡くなった者が安らかに眠れる様にと祈りながら、優しい歌がひとびとを祝福していく。
(「心の中の希望を棄てないで……そう想いを込めて、僕は歌うよ」)
――それは、光と希望を望む歌。神秘の歌い手たる瑠碧に世界は従い、ひとびとの心に広がる暗雲を――その肉体が負った火傷の痕を、淡雪が溶けるように掻き消していった。
『これは、奇跡が起きたのか
……?!』
あちこちで傷が癒えたと感嘆の声が上がり、活気を取り戻したひとびとが外へ飛び出し、やがてその視線は村の広場へ向けられる。と、其処では妖狐の少女が快活な仕草で、心浮き立つような舞を披露していたのだった。
(「治療とか心得ねーし、ここは一つ楽しませるために、身軽さを活かして踊ってみるか」)
こう見えて実家は神社なんだ、とちいさな胸を張る四王天・燦(月夜の翼・f04448)は、瑠碧の歌唱に合わせて華麗に舞う。透き通る狐の羽織はまるで、風の精霊を従えているようにも見えて――鎮魂と癒しを願いながら、燦は祈りを篭めて真剣に舞踏を続けたのだった。
「瑠碧、曲調もうちょいアゲアゲで頼む」
――が、しんみりし過ぎてもいけないと言うもの。突然のリクエストにも相棒は直ぐに対応してくれて――舞から踊りへと変化させていった燦は、短剣と刀の二刀を操って、派手な剣舞で村人たちを鼓舞していく。
(「――心に剣を。絶望に抗えよ。焼け爛れた心の傷もいつか癒えるから」)
「ああ、ほんまによかった……。これでもう、誰かが傷つくことはないんやね」
次第に活気を取り戻していく村を見渡した、東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)は、そっと胸を撫で下ろして澄んだ藍眸を潤ませる。
(「うちは何もできひんかったけど、まだ間に合う、かな?」)
――そう、脅威が去ったとはいえ、人々の心には火傷のように、重い痛みが宿ってしまった筈。不意に今までの惨劇を思い出したり、怖くなったり――この先もきっと、苦しみに悩まされることが出てくるだろう。
「せやけどね、笑うと元気が出てくるんよ。辛い時こそ……」
ぽつり呟く咲夜の手元には、籠いっぱいに詰め込まれた手作りクッキーが、香ばしい匂いを漂わせている。その美味しそうな香りに釣れられたのか、おずおずと子供たちが近づいてきて――咲夜はしゃがんで彼らと目線を合わせると、はんなりと微笑んだ。
「これ、旬の苺を練りこんだのやけど、気に入ってくれはったら嬉しいなぁ」
「……えっと、貰っても、いいの?」
今まで誰かに施しを受けたことも無かったのだろう。申し訳なさそうに俯く子供たちへ、勿論と咲夜は頷いて。彼らが幸福であるようにと願いながら、そっと歌を口ずさむ。
「それとね、うちこの世界のお歌を覚えてきたんよ。小さなお花が一生懸命咲く様を謳った曲。……一緒に歌ってくれはる?」
――それは花を愛する母より授けられた、自身の名を表すかのように。哀しさを包み込む、優しく柔らかな咲夜の歌声に、瑠碧の調べも調和していき――広場に集まったひとびとの間には、いつしか笑顔の花が咲いていた。
(「暗い世界は本当に暗いだろうか。苦しい日々は本当に苦しいだけだろうか」)
――否、と瑠碧はかぶりを振る。希望という名の心の光ひとつがあれば――それだけでも、世界はきっと優しくなる筈だ。
「絶望の劫火は消えた。次はお前らが希望の炎を胸に宿して生きろ。恐れるな、死んだ連中の分まで熱く生きろ。以上!」
やがて、華麗に剣舞を終えた燦はびしっと村人たちに激励を贈ると、後は照れくさいとばかりにそそくさと広場を去っていく。
(「……素直じゃないな、君も」)
拗ねるだろうから、それを敢えて口にしなかった瑠碧であったが――その視線の意味するところに、燦は気付いたらしい。
「何だよ瑠碧…その目ー!」
大成功
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タロ・トリオンフィ
願わくば、その闇は安らぎを齎すものでありますよう
陽の光の温かさを知らずとも
繋ぐ手の温もりの確かさを知っている
――そんな世界だといい
『XIX』、太陽のカードは生命力を象徴する
陽光を知らない人達に通じるよう、これは命を示すカードだと伝え、癒そう
僕のカードに興味があるひとがいれば占うよ、本業だからね
明るく楽しい結果が出ると良いのだけれど
どんな引きでも、結果を伝える時は希望が持てるような表現を心掛けて
ひとがいて、日常があり、交わされる言葉があり、明日がある
それはあたりまえで、だけど此処の人々にとっては、やっと手にしたものだから
天国には遠くとも――
ミハル・バルジライ
惨虐に踏み躙られようとも前を向き続けた人々の忍耐に喝采を。
【SPD】
家屋等の修復や清掃、周辺環境の回復に努める。
特別な技術は持たないが割合に器用な方だという自負はある。
村人の中に大工や職人がいれば是非共に、教わり乍ら。
調度品や細工物の修繕もあれば引き受けよう、建物を直すより得手かも知れん。
子供達と関わる際は、叶う場合は膝を折り目線を合わせて。
……抑も此の風体では寄ってもこない気がするな。
生憎と話術や手品のような芸事には不才でな、肩車くらいならしてやれるのだが。
辛い経験を得た者だけが歩める道もあるだろう。
異端の篝火を退けた希望の灯を心に抱く者達ならば、如何な険峻をも乗り越えていけると信じている。
ラスベルト・ロスローリエン
暴威の炎が焼くのは身体だけじゃない、心をも炙り消えぬ傷を残すものだからね。
村人達を篝火の呪縛から解き放ってやらないと。
【WIZ】
銀細工の水筒を取り出し、エルフ秘蔵の果実水“四季の雫”を村人達に振舞う。
一口飲めば【勇気】が心の奥底から湧いてくるだろう?それはきっと明日を生きる為の支えとなる筈だ。
なに、幾ら注いでも水が途切れないじゃないかって?
『……それは勿論、僕の魔法さ』
煙草好きの者がいたら“浮酔草”をお裾分けして【コミュ力】で共に一服しよう。
パイプの紫煙で妖精の姿や幻獣を形作れば子供達も喜ぶだろうか。
さて……そろそろ三角帽子を目深にかぶって戻るとするかな。
天の国と地の獄の狭間に伸びた旅の路に。
オリヴィア・ローゼンタール
POW
これでまた一つ、邪悪の圧制から解放することができました
彼らに宿った希望という炎
今はまだ小さな灯火ですが、いつか闇の支配を焼き払う真なる業火となるでしょう
腕力には自信があります
廃材を片付けたり、材木を切り出したりするお手伝いをしましょう(【怪力】)
亡者や業火卿と勇猛に戦った皆さんの武勇伝を語り、村の皆さんを勇気付けましょう(【鼓舞】)
作業がひと段落すれば、【料理】を振る舞って明日への活力とします
村人たちを癒し、元気づける者たちが居る一方で、被害を受けた村の復興を手伝う者たちも居た。度重なる領主の暴虐に対し、焼き討ちにあった建物などは修復や撤去もされずに、そのまま捨て置かれていたらしい。
(「……先ずは、惨虐に踏み躙られようとも前を向き続けた、人々の忍耐に喝采を送るべきだろうな」)
その殆どが灰燼に帰した家屋の連なり――その中に在る、黒墨と化した柱を見つめてミハル・バルジライ(柩・f07027)は思う。出来るならば自分は、家屋等の修復や清掃――周辺環境の回復に努めよう。
「と、なれば……それなりに技術を要するか」
――そんな訳で、職人を生業とする村人に教えを乞いつつ、ミハルは生来の器用さで率先して修復作業を行っていった。
「どうせ、修理したってまた焼かれるだけだって思っていたけど、このままじゃ駄目だよな……」
「ああ……あの兄さんだって、見ず知らずの俺たちの為に、頑張ってくれてるんだ。俺たちがただ黙って見ている訳にはいかないだろうさ……!」
と――黙々と真剣に作業を行うミハルの姿に、次第に村人たちも覇気を取り戻していって。ひとり、またひとりと作業に加わる者が現れる中で、溜まっていく廃材を片付けていくのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)だ。
(「これでまた一つ、邪悪の圧制から人々を解放することが出来ましたね」)
――ひとつの戦いを経て、彼らに宿った希望という炎。今はまだ小さな灯火に過ぎないけれど、いつかそれは闇の支配を焼き払う、真なる業火となるだろう。
「そう、勇敢に戦った皆さんの武勇伝も語ってみるのも良いですね……っと」
そうして焼け落ちた家屋の残骸を、オリヴィアは持ち前の怪力で纏めて担ぎ上げ、楽々と廃棄場へ運んでいく。そんな彼女の様子を見たひとびとの間からは、やがて拍手と喝采がさざ波のように沸き起こっていった。
「すごいな姉ちゃん、細っこい身体つきなのに凄い力持ちだなあ!」
「あらあら本当に、器量も良いし働き者だし……うちの息子の嫁に来てくれないかい」
いつしか村人たちに囲まれ、熱烈な歓迎を受けるオリヴィアは恥ずかしそうに俯いてしまって。そんな中、作業に疲れた者たちへは、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が銀細工の水筒を取り出し、エルフ秘蔵の果実水――『四季の雫』を振舞う。
「一口飲めば、勇気が心の奥底から湧いてくるだろう? それはきっと、明日を生きる為の支えとなる筈だ」
――なに、幾ら注いでも水が途切れないじゃないかって? 興味津々と言った様子で、己の水筒を見つめる子供たちへ、ラスベルトはそっとウインクをして囁いた。
「……それは勿論、僕の魔法さ」
(「願わくば、その闇は安らぎを齎すものでありますよう」)
――この世界のひとびとは、陽光溢れる大地を知らない。だから、太陽と言われても上手く理解が出来ないだろうと、タロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)は思ったけれど。それでも、ル・ソレイユ――太陽のカードを手繰り、彼らに伝えたいと願う。
「これは……太陽。命を示す、あたたかなカードだよ」
陽の光の温かさを知らずとも、繋ぐ手の温もりの確かさを知っている――そんな世界だといい。そんなタロの願いが届いたのか、翳りを見せていたひとびとの顔に安らぎのいろが混ざり、彼らは奇跡を齎したタロットカードに興味を持ち始めたようだ。
他にどんなカードがあるの、どうやって使うの――瞬く間に質問責めに遭うタロは、本業だし占うよと穏やかに微笑んで、広場の一角を借りて即席の占い屋を開店した。
「……明るく楽しい結果が出ると良いのだけれど。でも未来は誰にも分からないし、僕はカードが暗示するものを、上手く汲み取って言葉に替えるだけだからね」
それでも――どんな引きでも、結果を伝える時は希望が持てるような表現を心掛けると言うのが、タロの信念だ。占い屋に行列が出来始める中で、広場ではオリヴィアが料理の腕を振るって炊き出しを行い、一方のラスベルトはパイプに詰めた浮酔草を燻らせ、仕事後の一服を村人たちと共に楽しんでいるようだ。
(「暴威の炎が焼くのは身体だけじゃない、心をも炙り消えぬ傷を残すものだからね。……村人達を篝火の呪縛から解き放ってやらないと」)
――復興に臨む際、ラスベルトが言っていたことを思い返しつつ辺りを見遣れば、子供たちとのやり取りにミハルが苦戦していた。どうやら、壊れた玩具を直して欲しいと頼みに来たようなのだが――闇を纏うミハルの精緻な美貌に、ヴァンパイアの雰囲気を重ねてしまったのか、あと一歩が踏み出せずにいるらしい。
と、其処へラスベルトが歩み寄り、パイプの紫煙を器用に操って妖精や幻獣の姿を形作っていく。わぁ、と歓声を上げる子供たちは緊張が解けたようで、ミハルも吐息をひとつ零し、肩車をしたりして彼らと仲良くなっていった。
(「ひとがいて、日常があり、交わされる言葉があり、明日がある。それはあたりまえで、だけど此処の人々にとっては、やっと手にしたものだから」)
例え、天国には遠くとも――活気を取り戻していく村の様子を眺めて、タロは希望の光になれたのだろうかと自問する。そして、元気な子供たちに髪を引っ張られつつも、ミハルは思うのだ。
(「辛い経験を得た者だけが歩める道もあるだろう。異端の篝火を退けた希望の灯を心に抱く者達ならば、如何な険峻をも乗り越えていけると信じている」)
――やがて聞こえてくる喧騒を背に、三角帽子を目深に被ったラスベルトは、ゆっくりと村を後にする。
「さて……そろそろ戻るとするかな。天の国と地の獄の狭間に伸びた旅の路に」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ふはは、快勝だ!
しかしまだ仕事が終わったわけではないな。村人を安堵させるまでが、猟兵の本分である。
とはいえ、癒しの術はめっぽう苦手だ。その辺りは他の連中に任せて、私は村人と話でもしているとしよう。
気になる連中がいるようであれば、仲間たちの活劇譚でも聞かせてやるかなァ!
子供らには飴でもやるとしよう。いつか、こういう嗜好品が珍しくない世界を作らねばならんなァ。
ま、復興なり何なり、焦らず前向きにやるがいい。命あれば、世界はいつか必ず輝くものだ。
貴様らが諦めん限り、我々はいかなる窮地にも手を貸そう。
人を燃す炎などなくて丁度だが、心にくべる篝火は、煉獄などと呼ばれる世界にこそ必要だろうよ。
イア・エエングラ
はて、煉獄の扉も閉じられた
お疲れの人はおやすみよう
今はその眠りを妨げるものもないかしら
お怪我の人はきちんと休んで、いらしてね
篝火消した英雄譚で彼らを迎えるのに混じっても良いけれど。
そっと去る彼らに拍手するのも良いけれど。
ヴェールのよに長い裾曳きひそりと曲がり角にて
僕は静かに歌っていましょ
おともは踊るお人形、細い声は響く福音にはならないけれど
眠くなるまで眠るまで子守歌にいたしましょうな
どうかもう泣かないでね次に灯すのはあなただもの
篝火の灰はきっとよくよく芽を育てるよ
檻はないのだもの好きに歩いて行けるかな
ねえきみの火は燃え尽き消えたかしら
それともその地獄へと連れ帰ったかしら
僕はまだこちらに居るねぇ
クレム・クラウベル
【SPD】
癒やしや力仕事はあまり得手ではない。修復を中心に手伝おう
……聖職者らしい話の一つでも出来れば良かったが
そちらは不出来なものでな
傷跡全てが綺麗に直るものではない
物も……人も
だが晒されたままの傷は見えない傷を深めるもの
建物や施設を直すのも重要な事だ。抜かりなく行おう
癒やしの術こそ今は持ち合わせがないが
包帯を巻いたり等、怪我の処置は少し覚えがある
そちらでも役立てそうなら手を貸そう
陽が射さずとも朝は来るし、明日は訪れる
未来へ歩むその命が
その心の内がせめて光を持てる様に
……例え神様が、いなくとも
生きねば幸も不幸も在りはしないんだ
生きているから笑えるし、何かを愛せる
それは何よりもきっと、尊いこと
「ふはは、快勝だ!」
意気揚々と凱旋したニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は、仲間たちの奮闘で復興の道を歩み出した村の様子を見て、呵々と大笑をする。通りのあちこちから聞こえてくるのは、建物を修復していく木槌の音で――それに混じって子供たちのはしゃぐ声や、猟兵たちに教えて貰ったのだろう、優しい歌を口ずさむ声も響いていた。
「しかし、まだ仕事が終わったわけではないな。村人を安堵させるまでが、猟兵の本分である」
――とはいえ、癒しの術はめっぽう苦手なニルズヘッグである。その辺りは他の者たちに任せるとして、彼は村人たちの輪に入り、積極的に交流を行うことにした。
「……ああ、気になる連中がいるようであれば、仲間たちの活劇譚でも聞かせてやるかなァ!」
――更に、ニルズヘッグの出で立ちに興味を惹かれた子供たちも集まってくると、彼は常備している飴玉を取り出して、ひとりひとりに配っていく。
「あめ……だま? 初めて見た。お菓子、なの?」
「うむ、こうして口に入れて転がしてやればな、甘い味が一杯に広がるのだ」
わああ、と其々に味の違う飴を口にする子供たちと一緒に、暫し甘いひと時を楽しみながら――いつか、こういう嗜好品が珍しくない世界を作らねば、とニルズヘッグは決意をして。一方でクレム・クラウベル(ヴェスペラ・f03413)は、修復作業の手伝いに追われていた。
(「……聖職者らしい話の一つでも出来れば良かったが、そちらは不出来なものでな」)
とは言え、口数少なくも黙々と働くクレムの様子は、村人たちの信頼を得るには充分だったようで――彼の仕事振りを見た者たちは、良かったらこっちも手伝ってくれないかと、ひっきりなしに誘いをかけているようだ。
「傷跡全てが綺麗に直るものではない。物も……人も。だが、晒されたままの傷は見えない傷を深めるものだ」
――癒しの術に長けている訳では無いが、怪我の処置くらいなら出来るだろう。傷を負った者を消毒し、包帯を巻いていくクレムの隣では、ニルズヘッグがひとびとを鼓舞しようと自信に満ちた声で語り掛けていた。
「ま、復興なり何なり、焦らず前向きにやるがいい。命あれば、世界はいつか必ず輝くものだ。……貴様らが諦めん限り、我々はいかなる窮地にも手を貸そう」
「ああ、陽が射さずとも朝は来るし、明日は訪れる。未来へ歩むその命が、その心の内がせめて光を持てる様に――俺も、出来る事をする」
ちょっぴり棘が消えた様子でクレムもそう告げると、おお――とニルズヘッグが大仰に頷いている。そう言えば彼とは、何だかんだで良く行動を共にしてきたが、これも神様のお導きと言う奴だろうか。否、腐れ縁と言った方が良いのかもしれない。
「……が、例え神様が、いなくとも。生きねば幸も不幸も在りはしないんだ」
――生きているから笑えるし、何かを愛せる。それは何よりもきっと、尊いことだとクレムは思う。そうだなと相槌を打つニルズヘッグは、改めて活気を取り戻していく村を見渡し――やがてしみじみと呟いたのだった。
「そう……人を燃す炎などなくて丁度だが、心にくべる篝火は、煉獄などと呼ばれる世界にこそ必要だろうよ」
――はて、煉獄の扉も閉じられた。お疲れの人はおやすみよう、今はその眠りを妨げるものもないかしら。
そして――ヴェールのように長い裾を曳きながら、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は、ひそりと曲がり角に佇んで静かに歌をうたっていた。
絶望の篝火を消した英雄譚で、ひとびとの輪に混じっても良かったけれど――彼はお供の人形を携えて、密やかに子守歌をうたうことを選んだのだ。
(「細い声は響く福音にはならないけれど、眠くなるまで眠るまで子守歌にいたしましょうな」)
イアの十指に結んだ糸が揺れると、昏き泡沫の子――アルラツの娘が微睡むようにして踊り、その指先は夢の世界へ向けてそっと手招きをする。
「……どうかもう泣かないでね、次に灯すのはあなただもの。篝火の灰は、きっとよくよく芽を育てるよ」
――もう檻はないのだもの、好きに歩いて行けるかな。人形と共に夢を見ながら、ねえとイアは空へ向かって問いかける。
「きみの火は燃え尽き消えたかしら。それともその地獄へと連れ帰ったかしら」
僕はまだこちらに居るねぇ、と微笑んで告げた相手は、骸の海へと還っていった異端の騎士だったのだろう。ねえともう一度、夢見るような瞳でイアは呟く。
「天国でも、地獄でも無い場所……それは煉獄と言うよりも、きっと」
――僕らが今生きている、この世界のことだから。
大成功
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