7
ゆめとりそうのものがたり

#UDCアース


●わたしがきえても
 家では父さんと母さんがいつもケンカばかり。
 学校でもひとりぼっち。いじめられこそしてないけれど、何もかもがつまんない。
 居場所がないって、こういうことを言うんだろう。
 ――そんな思いが積もりに積もって、ある日わたしは家出した。

 行くあてなんてどこにもない、ただ街中をさまよい歩いた。
 声をかけられた気がしたけれど、めんどくさかったから無視した。
 けれど「ソイツ」はしつこく食い下がってきたものだから、ちょっとだけ。
 ――そう、ちょっとだけなら、話を聞いてやってもいいかなって思った。

●かわりはいない
「皆、お集まり頂き有難う。時間だ、説明を始めさせて頂く」
 自身の本体でもある重厚な作りの懐中時計の蓋をパチンと閉じて、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が顔を上げる。

「今回俺が予知したのはUDCアースのとある都市で発生する連続誘拐事件だ、分かっているのは『狙われるのは家出少女』であるという事のみ。家庭環境、誘拐される場所、時間、全てがバラバラでな。共通点を見出すとするならば、先に述べた『家出少女である』というただ一点に絞られる」
 UDCアースと言えば邪神教団が跳梁跋扈する世界、今回は家出少女を生贄に何か良からぬことを企んでいると見て、ほぼ間違いないだろうとニコは続ける。

「皆にはまず『誰が家出少女を拐かしているのか』を調査して頂きたく思う。首尾良く首謀者……十中八九邪教の輩だとは思うが、其奴の目星が付いたら、何としてもひっ捕まえて儀式を阻止して欲しい。だが……」
 ここまで朗々と説明を続けてきたニコがおもむろに言葉を詰まらせる。何事であろうか。
「……邪神復活の儀式を阻止出来たとしても、不完全な形でいずれにせよ邪神は召喚されるだろう。こう、形状し難い、悍ましいモノが少しだけ見えたのだが……」
 毎度毎度皆には苦労を掛けるが、と言いながら軽く片手で顔を覆うニコ。余程のモノを視てしまったのだろうか。

「……諸々の誹りは、皆が時間厳守で無事に帰還したら甘んじて受けよう。故にどうか、無事の帰還を祈っている。よろしく頼んだ」
 非常に苦々しい顔をしたまま、片手で虹色の星型のグリモアを起動させるニコ。

 果たして、猟兵たちを待ち受けるモノとは――!?


かやぬま
 こんにちは、初めまして、かやぬまと申します。
 シリアスっぽい依頼だと思いましたか? まっこと申し訳ねえ……コレほぼほぼギャグ依頼になりそうなんだ……(トップ画像見れば分かるよバカ!)。

 第1章では邪神復活の詳細を明らかにすべく色々調査をしていただきまして、
 第2章では判明した邪神復活儀式の阻止をお願い致します。
 第3章ではいよいよ不完全ながら復活した邪神との対決です。

 各章、思うがままにプレイングを書いて、かやぬまめに叩きつけてやって下さい。
 頑張って打ち返します! よろしくお願い致します!
166




第1章 冒険 『人知れずに消える者』

POW   :    しらみつぶしに聞き込みをして目撃者を探すなど、足で情報を集める

SPD   :    被害者に関わりのありそうな人物、団体に当たりをつけて調査を行い、情報を集める

WIZ   :    被害者に似た境遇を装い、接触してくる人物から情報を集める

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
六道銭・千里
まぁ同年代として、こういうんは見逃せんわなぁ

とは言うたもののあんまり良い方法が思いつかんから
足で探させてもらおうか

家出少女やったら夜やったら見つけやすいやろうか?
平日夜にうろついとる同年代位の少女にUDCの影鰐…影を召喚して後をつけさせる
で、俺自身は目立たん恰好でもう一人見つけて後を追跡するわ

悟られんよう注意やな…
うん、ほら…通報とか怖いやん…完全に今、俺の方が不審者やん


真守・有栖
家出少女。
諸国行脚の孤狼たる私のことね!

ふらりと街を彷徨い歩き囮になるわ。
ふふん。この麗狼たる私こそ贄に相応しき乙女。
すーぐに首謀者とやらも釣れてしまうわ。全く、私の美狼たるや!
それにそこらの家出娘と一緒にしないで欲しいわ。なんせ、そもそも家がないもの!

えぇ、帰る家なんて……ぐすっ

何よ?さっきからこそこそと……え?話が聞きたいですって?

……いいわ。ちょっとだけよ。


(数時間後)


ひっく……でねっ……それで追い出されて……って、待ちなさいよ話はまだ終わってないわよ!?
何よ巣もない狼は連れてけないっての!?

……泣くわよ。
このまま逃さず、みっともなく泣き吠えてやるわよ!?

……私を連れてくこと。いいわね?


ノイジー・ハムズ
家出少女が誘拐されちゃうんですね!
私もある意味家出少女です! そして可愛い!
わあ、囮としては完璧な人選ですね☆

探す当てもありませんから、とりあえず街をうろうろします!
路地裏とかも楽しいですよね! 稀に人の闇が見えたりします☆

おっとっと、ワクワクな表情だと家出少女感がないですね!
神妙に、神妙に! キリッ!

呼び止められたら、間に合ってます。キリッ! って神妙に言います☆
しつこくきたら、少しだけなら…という感じで話を聞きます!
怪しまれないよう一度拒否する私、賢い☆

私の可憐で可愛いオーラが強すぎて、家出少女を演じるのは結構大変ですね!
うまく行けばそのまま誘拐されます! きゃー☆

※アレンジ歓迎です!



●よるのとばりがおりて
 夜も更けたとある月曜日の繁華街はネオンサインも眩しく、いまだ眠りにつく気配を見せない。そんな街中のとある路地裏から、一人の少年が表通りの様子をそっと窺っていた。
(……まぁ同年代として、こういうんは見逃せんわなぁ)
 少年の名は六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)、『家出少女やったら、夜やったら見つけやすいやろうか?』という推測の元にこの時間帯を狙ってやってきたのだ。
(平日夜にうろついとる同年代位の女子がおったら、その子に【隠形】でUDCの「影鰐」を召喚して後つけさせ……ってえええええ!!!??)
 冷静に行動の予定を整理していた千里が、途中で強制的に思考を遮られた。何故か。

「家出少女。諸国行脚の孤狼たる私のことね!」
 ふらりと夜の街を彷徨い歩き、自ら囮となっている真守・有栖(月喰の巫女・f15177)の姿を見つけてしまったからだ。何たる無防備! 当たり前か、隙だらけじゃなきゃ囮じゃないもんね!

(しゃ、しゃあない。とりあえず「影鰐」、頼むで……!)
 千里自身も別の少女を見つけて自力で追跡する予定だったため、急いで「影鰐」に有栖の後を追わせる。一方の有栖はそうとも知らず夜の街を行く。
「ふふん。この麗狼たる私こそ贄に相応しき乙女。すーぐに首謀者とやらも釣れてしまうわ。全く、私の美狼たるや!」
 何たる自信! でも実際カワイイヤッターだから理解はできる! ほら実際すれ違うメンズがことごとく振り返ってますよ有栖さん!

「それにそこらの家出娘と一緒にしないで欲しいわ。なんせ、そもそも家がないもの」
 待って。ちょっと待って。今ちょっとすごい可哀想な台詞が聞こえませんでしたか。
「えぇ、帰る家なんて……ぐすっ」
 言ってて自分で泣けてくることって往々にしてありますよね、今の有栖さんも多分ソレなのでは。往来の真ん中で思わず立ち止まり、鼻をすすり出してしまった。

(何やて? 挙動不審すぎてむしろ声かけられんかも知れへん? も、もう少しだけ様子見てみてやってや……)
 一方でもう一人ターゲットになりそうな少女を物色(としか言いようがなかったから仕方がない)していた千里は、一時切り離していた影鰐からの報告を受けつつ調査継続の指示を出す。あの少女――猟兵同士だとは一目で分かったが――からは、何かを得られそうな予感がしたのだ。
(何にせよ、悟られんよう注意やな……うん、ほら……通報とか怖いやん……)
 完全に今、俺の方が不審者やん……? そんな切ないことを考えながら千里は地道に調査を続ける。そんな彼の背後に迫る影(ちっちゃい)がひとつ。

「路地裏って楽しいですよね! 稀に人の闇が見えたりします☆」
(ぎゃあ!?)
 突然背後から声をかけられて、しかし辛うじて声を上げるのは堪えた千里。えらい。振り返るとそこには可憐なフェアリーの少女――ノイジー・ハムズ(あたまもかるい・f14307)が中空にとどまりながら千里を悪戯っぽい瞳で見つめていた。
「探す当てもありませんでしたから、とりあえず街をうろうろしてたんですが、さっそく囮捜査をしていたとは……」
「な、なりゆきやけども、そういうことになっとる」
 周囲に気取られてはいないだろうか。影鰐の首尾は。諸々を気にしながらノイジーに返す千里。まだ心臓がばくばく言っている気がする。

「それにしても、家出少女が誘拐されちゃうんですね! 私もある意味家出少女です! そして可愛い!」
「お、おう……」
 せやなとしか言いようがなかった。影鰐に追わせている有栖とはまた違った方向性の愛らしさを持ったノイジーである。
「わあ、囮としては完璧な人選ですね☆ というわけで、私行ってきてもいいですか!?」
「わ、わーったわーった、頼むから声は小さく頼むわ!」
 こうして、千里が探していたもう一人の囮候補は、千里の元に自ら飛び込んできたのだった。

 一方の有栖はというと、しばし周囲の人々から遠巻きにされた末、遂に自分の横からコソコソとやって来る一人の男の気配を感じ取るとすかさず顔を上げた。
「何よ? さっきからコソコソと……ぐすっ」
「い、いや、君、どうしたのかなーって思ってさ」
「えっ? 話が聞きたいですって?」
 涙ぐんでいた有栖の顔が途端にパッと輝く。まるで「その言葉を待っていた」と言わんばかりに。有栖はガッシと男の腕を掴むと、とても神妙な面持ちで、言った。

「……いいわ、ちょっとだけよ」

 千里のアドバイスで、有栖とはあえて反対側の方向へ向かったノイジーは、思わず内心のワクワク感が表に出てしまいそうになるのを懸命に堪えていた。
(おっとっと、ワクワクな表情だと家出少女感がないですね! 神妙に、神妙に! キリッ!)
 いっそ悲壮な感じにさえ見える表情を作ると、夜の街を行くノイジー。その後を必死に追うのは夜に溶け込み街に馴染む、目立たない格好を心掛けた千里だ。何せ一歩間違えば自分が不審者待ったなし、必死にもなるというもの。

(……お、かかったか……?)

 ノイジーにごくごく自然な動きで近付くと、声をかける人影があった。ジャケットにジーンズといった出で立ちの、若干カジュアルな格好の青年だった。
「お姉さん、お姉さ……」
「間に合ってます!(キリッ)」
「まあまあ、こんな時間にどうしたの? 行くアテはあるの? 困ってるならお兄さん相談に乗るよ?」
「……ううーん、確かに困ってはいますので、少しだけなら……」
 ここで最初から二つ返事で青年の話に応じていたら、むしろ怪しまれていた可能性がある。よって、敢えて一度目はお断りの姿勢を見せたのはノイジーの計画通りであったのだ。賢い☆

(私の可憐で可愛いオーラが強すぎて、家出少女を演じるのは結構大変ですね!)
 謎の青年と会話を交わしながら、後方に控える千里をチラリと振り返ると、首尾良く行きそうだとウインクひとつ。ここはひとつ思い切ってノイジーに一任することにした千里は、再び影鰐と意識を同化させる。すると――!

(何やあの二人、まだ話しとるんか!?)

 千里とノイジーが行動を起こしていた時間は軽く一時間は越えている。しかし、有栖は男にいまだ滔々と涙ぐみながら身の上話を続けているではないか! どんだけ超大作なの!?
「ひっく……でねっ……それで追い出されて……って、待ちなさいよ話はまだ終わってないわよ!? 何よ巣もない狼は連れてけないっての!?」
 遂にアッこれはヤベーやつだわと判断されてしまった有栖から徐々に男が半笑いで距離を取り始めたのを、しかし有栖は見逃さずにがっしり男の両肩に手を置くと、がっくんがっくん前後に振り始めた。お客様! お手柔らかに!

「……泣くわよ」
「……えっ?」
 男を前後に振るのをようやく止めたと思いきや、今度は脅しにかかる有栖。
「このまま逃さず、みっともなく泣き吠えてやるわよ!?」
「そそそそれはこっちが悪者にしか見えないんで止めて下さい!?」
 それを聞いた有栖は、おもむろに男の耳元に顔を近づけると、言った。

「……私を連れてくこと。いいわね?」

 ――そして千里は確認する。別々の箇所で声を掛けられそれぞれ男に連れて行かれた有栖とノイジーの向かった先は、同一の場所であるということを。

 ちなみに、千里は幸いにして不審者として通報されることなく任務を遂行できたことを、あわせてご報告しておく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ロダ・アイアゲート
顔を覆うくらい何とも言えないものを視たのですね…
毎度苦労が多いですね、ニコさん
それにしても家出少女が狙われる…ですか
家出をするということは、家に居たくない、居られない理由があるのでしょうね

さて、共通点以外はバラバラということですから、家出少女に扮するのが一番早いのでしょうが…(少女と言えない年齢に一度考えつつも腹を括るしかないと)
家庭環境であれば、『造った主に置いて行かれた』という自分の境遇を活かせるでしょうか(噓ってわけでもないですし、無表情なのでボロが出る確率も抑えられるでしょうからね)

まぁ、ニコさんが視た敵の正体がいささか気になりますが、それはそれ
対面した時の楽しみに取っておきましょう


満月・双葉
【WIZ】
家出少女を拐かしそれで儀式でもするんでしょうか。
はっ、ろりこんな邪心邪神

何しろ僕は素で家出少女ですから
演技の必要もないんですよ
えーっと………路地裏でうんこ座りでもしてればいいですか(最近読んだ漫画の知識)

捜索には第六感や野生の勘も生かして行います
なんか怪しそうとか、意外と当たるんですよ、ぇぇ。
接触してきた人とはコミュ力を生かして話してみます

ママなんか嫌いです
ママ怖いです
二度と家なんて帰りません、あんな白髪ババァのいるところ何ぞ………
(強烈な寒気を感じますけど風邪でも引きましたかねっ)

カエルのマスコットを召喚しておき、自分の入り込めなさそうな所に潜入させてみたりもします。

アドリブ歓迎



●ひとにはいろんなじじょうってものが
(家出少女を拐かしそれで儀式でもするんでしょうか。……はっ、ろりこんな邪心邪神)
 いっけなーい、邪心邪神☆ っていう感じでしょうか。違いますかすみません満月・双葉(星のカケラ・f01681)さん。ちなみに双葉さんは素で家出少女なので演技の必要もないという強キャラです。それにしても今回ナチュラルボーン家出少女率高いですね!?

「えーっと……路地裏でう○こ座りでもしてればいいですか」
 いけません双葉さん! うら若き乙女がそんな単語を伏せずにプレイングに書いては! 思わずこっちであれこれしちゃったじゃないですか! 最近読んだ漫画の知識? その漫画の発行日はいつですか!

 ともあれ双葉が「何となくこの辺が怪しい」と睨んだ路地で体育座りで膝を抱えていると、狙い通り声をかけてくるスーツ姿の男が一人。チラリと目線だけを上げる双葉。
「君、どうしたの? 一人? 親御さんが心配しているんじゃないのかい?」
 親。その言葉に双葉が反応した。
「……ママなんか嫌いです。ママ怖いです。二度と家なんて帰りません、あんな白髪ババァのいるところなんぞ……」
「? どうかしたかい!?」
 始めは純粋に、家には決して帰らないという話をしていただけだった。だが「ママ」への罵倒に己の言葉が及んだ途端に、強烈な寒気を感じてそれ以上言葉を紡ぐことができなくなってしまったのだ。風邪でも引きましたかね!

「……私の名刺を渡しておこう、行くあてが無ければいつでも来なさい」
 そういうとスーツの男は胸元から名刺ケースを取り出すと、その中から一枚上質な紙でできた名刺を双葉に差し出す。思わず両手で受け取る双葉。

(即誘拐、には及びませんでしたか……しかし、手がかりは得られましたね)
 あとはただでは帰さぬとばかりに発動させた【カエルの大捜索】で召喚したカエルのマスコットに、スーツ姿の男の後を追わせる双葉。名刺に目を落とすと

『オリオン企画 専務 ○○・○』

 と書かれていた。
「会社名だけでは事業内容が分かりませんね……惜しいことをしました」
 ちなみに後で判明するのだが、カエルのマスコットがたどり着いた先は、他の猟兵が実際連れて行かれた場所と同じであったという。

 同時刻、別の通りにて。ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)もまた自らを囮にして成果を得ようとやって来ていた。街行く人々を建物の壁にもたれかかりながら眺めることしばし、ロダは今回の事件を予知したグリモア猟兵の様子を思い出していた。
(顔を覆うくらい何とも言えないものを視たのですね……毎度苦労が多いですね、ニコさん)
 実地で危険に臨む猟兵の苦労に比べれば、という所ではあるが、ロダ自身も同じグリモア猟兵、そこは思う所があったのだろう。

(それにしても家出少女が狙われる……ですか。家出をするということは、家に居たくない、居られない理由があるのでしょうね)
 ゆっくりとした動作で体重を預けていた壁から身体を離す。見回してみると平日の夜だというのに実に様々な人々が往来を行き交っている。パッと見た感じでは、ターゲットになりそうな年代の少女はこの辺りにはいないようだった。
 ならば好都合――自身が少女とはやや言い難い年齢であることに一度沈思黙考するも、ここは腹を括るしかないと、ロダは自ら家出少女に扮することを決意した。

 これはもちろん演技だが、街中を頼りなさげに、とぼとぼと歩いてみせる。さも行くあてもないかのごとく。そうすることしばし、遂にその時は来た。

「君、一人? 良かったら一緒にお茶でもどう?」
 待って。これもしかして予定とは違うヤツじゃない? ただのナンパじゃない!?
 これにはさすがのロダも困惑する。どうしたものか。適当にあしらうか、それともこういう切り口の犯人とみなして乗ってみるか。
「……私は、家出した身で……」
「何だって、そりゃ大変だ! でもどうしてそんなことに?」
 男はやけに食いついてくる。これは「当たり」かも知れない。
「……親に……置き去りにされて……今の家は親戚の家でしたが……」
 訥々と語ってみせるロダの表情は淡々としていた。一方、話を聞いている怪しい男の方は見る見るうちに涙目になっていった。どうしたことだろう。

「……君! これを黙って受け取ってくれ!!」
「えっ」
「辛いこともたくさんあるかも知れない、けれど、少なくともこんな所に一人でいちゃあいけない。漫喫なり何なりに今日は一晩泊まって、明日になったら家に帰るんだ」
 そう、男がロダに握らせたのは数枚のお札であった。いいね? と言い含めるようにして男は去っていってしまった。お金を返す暇もなく、ただ呆然と男の背中を見送るしかなかったロダは、仕方がないと一旦懐にお金をしまうと推測を巡らせる。

 今の男はただのナンパ師か、それとも組織のメンバーではあるがイマイチ仕事の手際が悪いのか。恐らくはどちらかだ。幸い男の人相はしっかりと覚えている、後で他の猟兵たちと合流した時に情報を突き合わせれば、おのずと見えてくるものもあるだろう。

「……敵の正体が、楽しみになってきましたね……」
 ロダは人知れずそう呟くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

狭筵・桜人
◼️WIZ

被害者は全員家出少女?
なるほどなるほど、まあ見ててくださいよ。

薄暗い夜道をあてもなく一人彷徨います。
フードを目深に被って、俯きがちに。
これどう見ても家出ですよ、家出。
少女?じゃあスカートはいていきます。はい少女。
私ってなぜだか外見がぼんやりしてますし?
線の細い美少年ってことにするのでセーフでーす!
はい【言いくるめ】!

接触してきた相手には無口な少女を装って
話を聞きながら【情報収集】。

情報を聞き出し終えたらフードを取ってネタバラシ。
この格好ですか?
ンッフフ、流行ってるんですよ。こういうの。

その場では捕まえずにあえて泳がせて。
影の追跡者の召喚で同行を探ります。
……にしてもスースーしますね。


五百雀・斗真
うーん…。どうやって家出した女の子の誘拐を調査しよう
被害者に似た境遇を装うのはどうだろう…?って思ったけれど
ぱっと思い浮かんだのが、自分が家出少女になるっていう…
そんな案しか出てこなくて、すぐに首を横にぶんぶん振った
流石に僕がそれをやるのは無理があるよ…無理、無理…。
改めて考え直そう、そうしよう

どちらかという、やたら女の子に言い寄っている人物を探して
明らかに不審な人を発見したら【影の追跡者の召喚】を使用して
五感を共有した状態でこっそり追跡した方が良さそうだね
何か女の子に怪しいことをしそうな素振りに気付いたら
間に割って入って助けたいけれど…上手くいくかな…
襲い掛かってきたらスプレーかけよう



●おもいとどまったひととふみきっちゃったひと
(うーん……どうやって家出した女の子の誘拐を調査しよう)
 夜の街の片隅で、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は思案していた。
(被害者に似た境遇を装うのはどうだろう……? って思ったけれど、ぱっと思い浮かんだのが、自分が家出少女になるっていう……)
 考えども考えどもそんな案しか出てこなくて、斗真はすぐに首を横にぶんぶん振った。要するに女装でしょう? そんなの、できるわけないよ!
(流石に僕がそれをやるのは無理があるよ……無理、無理……)
 改めて考え直そう、そうしよう。そう思って顔を正面に向けたその時だった。

「被害者は全員家出少女? なるほどなるほど、まあ見ててくださいよ」
「えっ」
 斗真の目の前には、フードを目深にかぶった線の細い美少女――の姿をした狭筵・桜人(不実の標・f15055)が不敵に笑いながら立っていた。穿いているスカートはかなり丈が短くて攻めている。斗真があれだけ逡巡した末に選択しなかった手段――そう、女装を! 堂々と! しているではありませんか!!
 じゃあ、と早速斗真に背を向けて街中へと溶け込んでいこうとする桜人に、斗真があわてて声をかける。

「も、もしも怪しい人を見つけたら、僕が【影の追跡者の召喚】を発動させてこっそり追跡するから……」
「おや、ご心配どうもですよ。私も同じく【影の追跡者の召喚】の使用を考えてはいましたが、いざとなったらそちらにお任せしましょう」
「何か怪しいことをしそうな素振りがあったら、僕が間に入って助けたい……けれど」
「まあ、ご無理はなさらず。そこは上手くやりますよ」
 そう言って手をひらひらさせると、桜人は今度こそ人の流れの中に紛れていった。それを見送りながら斗真は思う。

「……いざとなったら、スプレーかけちゃおう」

 大通りを歩くことしばし、手応えがないことを悟った桜人は、行動場所を薄暗い夜道に変更する。あてもなく一人彷徨う姿は堂に入っていた。フードを目深にかぶって俯きがちに歩いていると、反対側から一人の男性が明らかに自分に向かって歩いてくるのが分かった。
 ほとんどすれ違う瞬間、声がかけられる。
「……君、こんな時間に、どうしてこんな所に?」
 ――来た。桜人は内心でニヤリとしながらも、設定上「無口な少女」ということで、すぐさまの返答を控える。
「……」
「……もしかして、帰る家がないのかな?」
「……」
 無言を貫きながらも、ひとつ頷いてみせる。そうじゃい! どっからどう見ても家出少女じゃろがい! 上はフードしっかり被ってる割に下は攻めた丈のスカートとかけしからん家出少女の典型じゃろがーい!!

「……私たちは、君のような行き場のない女の子たちを『保護』している者でね。この先行くあてがないのならば、一緒にどうかな?」
 明らかに怪しい誘いではあるが、恐らく本当の家出少女たちにとっては甘い声であったに違いない。しかし桜人はそれさえも情報のひとつとしてのみ捉え、少しだけ顔を上げると、遂に重い口を開く。
「……あなたたち、誰なんです……?」
「私たちは……アイドル事務所の者なのだ」

(えっ)

 突拍子もない答えに、桜人は内心で思わずツッコミを入れる。今『アイドル事務所』って言った? 確かにまっとうではないスカウトもいるけれど、今回の事件に関わってくるヤツ?
 しかしツッコんでいる場合ではない、敵の素性は知れた。これ以上『演技』を続ける必要はないと見て、桜人はフードを外して男に己の素顔を見せた。
「! ……君は……」
「この格好ですか? ンッフフ、流行ってるんですよ。こういうの」
 確かに流行ってるかも知れないですね。男の娘さんって結構猟兵の中でもいらっしゃいますしね。大丈夫、僕は理解あるよ! えっそういう話じゃない!? ゴメーン!

「……も、もしかしたら、いわゆる『男の娘』枠で採用されるかも知れないが……申し訳ない、私の一存では決められない。そうだ、この名刺を渡そう。行くあてが無ければ、いつでも来るといい」
 そう言って男が桜人に手渡したのは――「オリオン企画」と書かれた名刺。そうしてそそくさとその場を去っていった男に向けて放たれたのは、桜人と、陰で様子を見守り続けていた斗真の【影の追跡者】。

「ぶ、無事で良かった……」
「ああしてわざと泳がせて、動向を探る。完璧でしょう?」
 心底安堵する斗真に、桜人が笑いかける。そしてスカートの裾をつまんで言った。

「……にしても、スースーしますね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『甘い誘惑』

POW   :    街を歩き回ってスカウトマンを探し出す

SPD   :    家出少女としてスカウトされる

WIZ   :    監視カメラや聞き込みでスカウトマンを特定する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ざっきょびるってべんりなぶたいですね
 大通りから少しだけ離れたところに、その雑居ビルはあった。
 猟兵たちが実際に連れてこられたり、あるいは影の追跡者で突き止めたりした結果判明したこのビルの中に「アイドル事務所 オリオン企画」が入っていたのだ。

 だが、猟兵たちが突入した時には事務所はもぬけのから。
 何とあまりにも小さな事務所――いや、邪教を奉じる組織であるがゆえに、社長を始め社員一同全員で家出少女のスカウトに奔走しなければならなかったのだ!
 しかし、これ以上の暗躍を許すわけにはいかない。街中に居るスカウトマンたちを見つけ出し、今度こそその悪行を白状させて阻止しなければ!

 舞台は第1章から一日が過ぎた火曜日の夜。
 猟兵たちの大捜査線が展開される……!!

●特殊ルールです!
 第1章でスカウトマンに連れていかれることに「成功」した真守・有栖(月喰の巫女・f15177)さんとノイジー・ハムズ(あたまもかるい・f14307)さんのお二人が今回の第2章に参加される場合は、行動に
「既に連れ去られ、雑居ビルの別室に監禁されている家出少女を救出する」
 ことを選択肢に追加することができます。
 もちろん、道中やっぱりスカウトマンから逃れて普通に改めてスカウトマンを探し出してとっちめる行動を取っても大丈夫です。
 お二人のご参加自体が強制ではないので、あくまでお話の整合性を取るための措置としてとらえて頂ければ幸いです。

 それでは、よろしくお願い致します!!
満月・双葉
人気のない邪神なのですね…ベルクシュタインさんの反応もあれでしたし…
潜華で姿を消した状態で羽を使って飛び立ち空からさっきの変態を探してみましょう。見つけたら姿を消したまま物陰に潜み武器を投げつけたり暗殺の要領で騙し討ちしてボッコボコに…
見つからなければ、第六感と野生の勘を生かしてまだスカウトされていない家出少女を探し出し、ユーベルコードを発動した状態で見張り、声をかけられて連れていかれる所を後をつけて、その後は武器で死なない程度にボッコボコにしてみましょうか…家出少女をではなくスカウトマンの方を。

…さっきから寒気が止まらないんですけど、風邪の季節ですね?(と言いながらスタントマンに八つ当たり)


六道銭・千里
1章と同じく目立たん恰好をして
家出少女の振りしとる猟兵を追って行動やな
二日続けては…流石に不審者言い訳できそうにないよなぁ………(溜息)

声をかけられたん見たら
冥銭術でこっそり回り込んで、他の猟兵と挟み撃ちにして逃げられんような状況にもっていこうか

ちょっと面白そうな話しとるなぁ、兄ちゃん(姉ちゃん)もうちょっと詳しい話そこで聞かせてもらおうか?

少女騙くらかして邪神の贄にしようとしとるんや。まぁ別に遠慮はいらんよな?



●ひゃっはーすかうとまんがりだー
 猟兵たちが行動を開始してから、二日目の夜が来た。敵はまさかのアイドル事務所と判明して一時動揺が走ったものの、所詮その肩書も恐らくは隠れ蓑であろう。スカウトマンに扮すればお目当ての贄に接近しやすいと踏んだが故に違いない。

(それにしても、人気のない邪神なのですね……ベルクシュタインさんの反応もあれでしたし……)
 満月・双葉(星のカケラ・f01681)は、グリモアベースで予知を伝えられた時の様子を思い出す。グリモア猟兵は、間違いなく片手で顔を覆って嘆く仕草をしていた。そして、崇め奉る対象の少なさ(=組織の規模の小ささ)。邪神そのものの求心力に何らかの問題があるのだろう、双葉はそう推測した。

 双葉がさて、と一歩踏み出そうとした時、偶然にも六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)と鉢合わせた。千里の格好はごくごく地味で目立たないものではあるが、時と場合によっては不審者待ったなしの可能性も孕んでいるという絶妙に際どいものであった。
「お、っと。すまんな、あんたもしかして今日も家出少女の振りするんか?」
 であれば後を追わせてもらおうと思っている旨を双葉に伝える千里だが、予想とは異なる答えが返ってきた。
「いえ、今日は姿を消した状態で空を飛び、上空から昨日私に声をかけた変態を主に探してみようと思っています」
「さよか、俺もその気になれば姿は消せるんや、そしたらお互い見つけたら上手いこと挟み撃ちにしたろか」
「わかりました、まだスカウトされていない家出少女もいるでしょう。声をかけられて連れていかれる所を挟撃して」

 ここで二人は一旦沈黙し、互いの顔を見た。先に不敵に笑んだのは千里の方だった。

「……少女騙くらかして邪神の贄にしようとしとるんや、まぁ別に遠慮はいらんよな?」
「話が早くて助かります。では、そのように」

 かくして双葉と千里は上空と地上とで手分けして、スカウトマンを捜索することとなった。双葉は地を蹴ると同時にユーベルコード【潜華(センカ)】で自身の姿を透明にし、背中の虹色の翼をはばたかせて舞い上がる。一方の千里はまだ姿を隠すことはせずに生身を晒したまま、不審者呼ばわりと背中合わせの捜索を開始する。自身の姿を透明にするユーベルコードは、なべて体力を消耗する。そう乱発できるものでもないのだ。

(昨日僕が声を掛けられたのは……この辺りです)
 飛び立つ直前に双葉が言い残した地点を重点的に見張るべく、千里が路地裏に潜み様子をうかがっていると――。
(……あれは……)
 昨日双葉に声をかけて名刺を渡していったスーツ姿の男が、所在なげにしていた少女に何やら声をかけているではないか! 千里が頑張って耳をそばだててみると。

「……人? 親御さんが……配して……」

(……ビンゴやな)
 確信した千里がここで遂に【冥銭術・陰(メイセンジュツ・イン)】を発動させ、姿を完全に街並みの中に溶け込ませた。このまま泳がせれば本拠地の雑居ビルに移動することだろう。その途中には人気のない細い路地がある――。
 ごくごく普通の少女なら、甘い言葉に乗せられてしまうのも無理はない。スーツ姿というきちんとした身なりをした相手に対しては尚更かも知れない。少女は男の思惑通り、雑居ビルへの道を進み出した。

 ――程良く泳がせた、そう判断したのは件の路地裏に来た時であった。
「……衣食住、全てを保証しよう。君には素質がある、光り輝く原石のような――」
「ちょっと面白そうな話しとるなぁ、兄ちゃん、もうちょっと詳しい話そこで聞かせてもらおうか?」
「なっ……!? 何だ君は! 一体どこから……!?」
 話に夢中になっていたのか、スーツ姿の男は千里がユーベルコードを解除して正面に姿を現したことにも気付かなかったようだ。
「昨日はどうもお世話になりました、変態さん。今夜はその娘がターゲットですか?」
「き、君は……!!」
 背後から聞こえてきた声にハッと振り返る男の視界には、名刺を指先に挟みひらひらさせる双葉の姿があった。

「へ、変態さん、って……」
「ちっ、違うんだお嬢さん!」
「なぁにが違うんだか、……嬢ちゃん、危ないからちぃと下がっててや」
 千里が思わず後ずさった少女を自分の背後にかばうように呼び寄せると、狙い通りの挟撃陣形が完成する。
「……家出少女ばかりを狙ってスカウトする『アイドル事務所』なんて、大概ロクなものじゃありません。死なない程度にボッコボコにしても許されますよね?」
「なっ、ま、待ちなさい! 話せば分かる! 私たちは崇高な目的のために――」
「その物言いが既にうさんくさいんやっつうの、自覚ないんか?」
 見るも禍々しい大根――そう、大根である――を取り出しつつジリジリ距離を詰める双葉に、退路を断つ千里。

 その晩、路地裏に男の情けない悲鳴が響いたとか何とか。都会は物騒で怖いですね!

(……さっきから寒気が止まらないんですけど、風邪の季節ですかね?)
 スカウトマンを文字通りボッコボコにしながら双葉はふと思う。どちらかというと花粉の季節ですかね……。

 一方で千里は危うく毒牙にかかる寸前だった少女を街の方へと帰していた。終電にはギリギリ間に合う時間だとそっと諭して。
(……不審者判定されんで、ほんまに良かったわぁ……)
 二日連続街中をコソコソと嗅ぎ回っては、さすがにどこかでアウトになるかと思っていたが、今回は運が味方をしてくれたようだ。良かったですね!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

狭筵・桜人
昨晩出会ったスカウトマンに会いに行きましょう。
UCの足跡を辿り、追跡が切れていたら昨晩の現場周辺を探します。

スカート?まさか。
今日は普通の格好です。だって股下冷えるし。
トイレ近くなりません?

男を見つけたら明るく声をかけます。
またお会いしましたねえ!
あれ、今日はスカートじゃなくて残念でした?
いやあ昨日のは初回無料サービスなので以降は有料なんですよ。
視線が重なれば【催眠術】で人気のない場所へ誘導。

ほんと脅迫とか暴力って苦手なんですよねえ、私。
あなたたちの目的と仲間の連絡先と黒幕の居場所を
さっさとゲロってくれると嬉しいなって!

UDCで拘束しながら優しく交渉。
【情報収集】後は記憶消去銃で処理しまーす。


五百雀・斗真
女装をして頑張ってくれた人(桜人君)に感謝し
【影の追跡者】を途切らせないようにしつつスカウトマンの追跡を続行
念の為コートのフードを被って、こっそりこっそり…
どこか人気のない道に入ったら
UDCの大田さんの触手で手足を絡めとって捕まえたい

成功したら、スカウトマンに女の子達の居場所や本当の目的を確認
でも多分…すぐ話してくれなさそうだし
言わない場合はこちらも考えがあります、と伝えよう

エッ…。いやいや痛いことはしません
笑い声が響かないようにハンカチで口を塞いで、触手でくすぐるだけです
大田さん、よろしくね(GOサインでコチョコチョ攻撃

話してくれる気になりました?
ダメですか…ならもう一度ですね

アドリブ歓迎



●ゆーでぃーしーのむげんのかのうせい
 夜の街の片隅に、コートのフードを被ってコソコソする人影がもう一人。新しい不審者志望者かな? いいえ、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)さんです。
(「影の追跡者」の効果はまだ続いてる……昨日の女装をして頑張ってくれた人に感謝しないと)
 路地裏に隠れながら昨晩発動させたユーベルコードがいまだに昨日接触してきた男――スカウトマンの一人の居場所を示している手応えを感じながら、斗真は「昨日の人」の雄姿を思い出していた。
 自分が躊躇して成し得なかった女装たる大仕事を、事もなげにやってのけた「昨日の人」。あの人の頑張りに報いるためにも、何としてもこのままスカウトマンを捕まえて――。

「おや、五百雀さんも追跡中ですか」
「わあっ!?」
 突然の背後からの声に、思わず声を出してしまう斗真。しまったと思いながら声の方を振り返れば、そこには「昨日の人」こと狭筵・桜人(不実の標・f15055)の姿があった。今日は――普通の格好をしている。
「す、すみません大声出しちゃって……あれ、今日はスカートではないんですね」
「スカート? まさか。今日は普通の格好です。股下冷えるし。トイレ近くなりません?」
「えっ、いや、僕、スカートを履いたことなくって……」
 同意を求められても残念ながら答えられず、むしろ斗真の方がそういうものなのかと納得させられる結果となる。

「まあそれはさておき、そちらも首尾良く行っているようで何よりです。こちらの追跡者も順調に追い続けていますよ」
 二人が同じくするターゲットは、どんどんこちらに近づいてくる。ここは昨晩スカウトマンと桜人が接触した現場の近くである、恐らくは常よりこの付近を担当として家出少女に声をかけているのだろう。

「狭筵さん、僕はこのまま追跡を続行しようと思うんです。どこか人気のない道に入ったら、UDCの「大田さん」の触手で絡めとって……ってあーっ狭筵さん!?」
「やあ、またお会いしましたねえ!」
「! ……君は」
 あくまで慎重に事を進めようと丁寧に自分の考えを桜人に伝えていた矢先、その桜人がおもむろに路地裏から飛び出していくや昨日のスカウトマンに自分から向かっていって明るく声をかけたものだから、斗真は本日二度目の驚愕に見舞われた。桜人は一瞬だけ振り向くとまあ見ていて下さいよと言わんばかりに不敵に笑う。

「あれ、今日はスカートじゃなくて残念でした?」
「いや、残念というか、今日も会えるとは思わなくて……」
「そうでしたか、それは偶然でしたねえ」
「……いや、残念と言えば残念かも知れない。昨日事務所に帰った際、上に『男の娘枠はアリか』と確認をしてみたのだ。そうしたら、まずは面接からと――」
「ははは、いやあ昨日のは初回無料サービスなので以降は有料なんですよ」
「待ってくれ、逆に『金さえ出せばまたあの格好をしてくれる』のかい!?」
 目線を泳がせていたスカウトマンが突如桜人の女装の可能性に食いついた瞬間を、桜人は半ば呆れつつも見逃さなかった。視線が重なるタイミングを見計らっていたのだ。全てはこのスカウトマンを「催眠術」に陥れ、人気のない場所へと誘導するために。
「あ……あれ……」
「色々と真剣に考えてくれたことについてだけは感謝しますよ。さあ、一緒にいい所へ行きましょうねえ」
 先導する桜人の後を唯々諾々と着いていくスカウトマンの挙動を見て、物陰から様子を見守っていた斗真も慌てて後に続く。そうして二人の猟兵とスカウトマンは、いよいよそう簡単には誰も来そうにないビルとビルの間にやってきた。

 桜人が「催眠術」を解除すると、スカウトマンは何が起こったかを理解しかねて思わず周囲を見回す。動かせるのは首だけだったから。そして自らの身体に起きている「ある異変」に気付き、戦慄した。
 触手だ。触手がスカウトマンの手足を拘束している。斗真の良き相棒であるUDCこと「大田さん」である。身体から伸ばした「大田さん」に拘束の維持を指示すると、斗真はスカウトマンに向かって問いかけた。

「……あなた達の正体は掴みました、『保護』した女の子達の居場所と、本当の目的を正直に話して下さい」
 敵性存在ではあっても年上とあらば敬語を使う出来た青年の斗真くん。一方の桜人くんはマイペースを崩さないぞ!
「ほんと、脅迫とか暴力って苦手なんですよねえ、私。あなたたちの目的と仲間の連絡先と黒幕の居場所をさっさとゲロってくれると嬉しいなって!」
 しかも桜人も「大田さん」だけの拘束で不足なようであればと、いつでも自身のUDCを追加して拘束を二重にできるように、その姿をわざとチラつかせているではないか。
「お前たち……! くっ、事務所のため、組織のため、私一人が屈する訳には……!」
(多分、すぐ話してはくれなさそうだと思ったけれど、やっぱりか)
 徹底抗戦の姿勢を示すスカウトマンの姿を見て、ある程度予想はしていたけれどと斗真が息をつく。

「……言わない場合はこちらも考えがあります」
「おや、やっちゃいますか? 五百雀さん」
「ひ……ッ」
 わざと煽るような口調で合いの手を入れる桜人の言葉も相まって、思わず恐怖の形相で顔を歪めるスカウトマンに、しかし斗真は違います違いますと両手を振る。
「エッ……いやいや痛いことはしません。笑い声が響かないようにハンカチで口を塞いで、触手でくすぐるだけです」
 あくまで人の良さそうな笑顔のまま斗真はハンカチをUDCの「大田さん」に渡すと、GOサインを出す。

「大田さん、よろしくね」
「~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!」
「おやおや、これはまたエグいですねえ。楽になりたければいつでも吐いて、どうぞ」
「…………、…………!!!!」
「大田さん、一旦ストップで」
 にゅるり。散々触手により蹂躙されたスカウトマンが、口からハンカチを外されて白状する機会を与えられる。が、スカウトマンは荒い息をするばかりで、いまだ口を割る気配は見せない。
「話してくれる気になりました? ダメですか……ならもう一度ですね」
「むがっ……!!」

 ――数時間後(スカウトマンはよく頑張ったと思います)、遂に二人のUDCエージェントの前に色々な意味で屈したスカウトマンは、洗いざらい白状した上で桜人の「記憶消去銃」で事件に関する一切の記憶を文字通り消去させられ、その場に打ち捨てられたという。

「女の子たちはあの雑居ビルの別室に捕まっていて、仲間の連絡先はこのスマホ内のSNSグループに全てまとめてある、と。肝心の邪神は――」
「幸か不幸か、まだ復活していないようだね。彼の言葉を信じるならだけど」
 優れた情報収集能力で得た情報の整理をする桜人と、大活躍だった「大田さん」を収納する斗真。二人の視線は『アイドル事務所』の入る雑居ビルのある方角に向けられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーゴ・メルフィード
敵のアジトは見つかったようじゃの……
だが、決戦時にスカウトマンに合流される恐れは避けたいのじゃ
ニコどのが顔を覆ってしまうほどの惨状……とても気になりますのじゃ(キリッ)

【POW】シェフアンド暴力
とにかく歩き回って、スカウトマンを探しますぞい!
スカウトマンを見つけ次第、一気にばんっと距離を詰め、
本日のお薦めシチューをたんと召し上がって貰いますのじゃ!

え、おかわりが欲しいのですじゃ?
熱々シチューも、激辛も、まだまだたくさんありますのじゃー

他の猟兵の方から連絡があれば、すぐに加勢に回るのじゃ!
皆で取り囲んだら、きっと早く一網打尽にできるはずなのじゃ!

アドリブ大歓迎、煮るなり焼くなり好きにするのじゃー


ミルヒ・フェアトラーク
アドリブ・連携歓迎

アイドル事務所が家出少女をスカウトしてる?
これは由々しき事態です
邪神とアイドルを一緒にされてはかないません
この案件ミルヒが絶対阻止してみせまっす!
そしてバシッと活躍してイメージアップも目指すのです

えっと…まずそのスカウトマンを見つけないとダメなんだよね
なにか「パフォーマンス」してたら現れるかな?
怪しいスカウトがあったら「時間稼ぎ」しなきゃ
きっと他の猟兵さん達も探してるよね

あっ、上手く釣れたかな?
一応アイドルの見習いみたいなもので
ミルヒの家?…はネットの世界ですけど…
えぇっ!?ネットカフェ難民じゃないですよ
それはちょっと誤解です

それじゃ、みんなと詳しいお話聞かせて貰いましょうか



●のりといきおいってだいじですよね
 グリモア猟兵は、事件が進行している途中からでも新規に志願してくれた猟兵を事件の舞台へと転送することができる。そうして今回新たに送り込まれた刺客――いや、この表現だとこちらが悪者のようなので止めよう――頼もしい助っ人の名は、ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)という。

(敵のアジトは見つかったようじゃの……。だが、決戦時にスカウトマンに合流されるおそれは避けたいのじゃ)
 キリッと降り立った世界の様子を一通り見やるユーゴの姿は、いわゆるシャーマンズゴーストと呼ばれる種族だ。猟兵が持つ力の一環として特にそれが多大なる影響を与えるということはないのだが、どちらかというとユーゴのコックさんスタイルの方が色々と興味をそそるものがあるかも知れない。
 そんなユーゴは、他数名の猟兵も気にしていたことに思いを馳せる。

(ニコどのが顔を覆ってしまうほどの惨状……とても気になるますのじゃ)

 キリッ。今ユーゴさんキリッてした。見間違いじゃないですって! あと助力をしてくれる猟兵さんからこんなに心配されるグリモア猟兵なんてそうそう見かけないから、予知の時は気をしっかりもつように後で伝えときますんで! ホントすみません!

 もう一人、今度は可愛い助っ人の登場だ。ミルク色をベースにパステルブルーの差し色が愛らしいカラーリングで「構成」されたバーチャルキャラクター、ミルヒ・フェアトラーク(目指せ!本契約☆・f15000)もまた、今回の事件を聞きつけて駆けつけた立派な猟兵である。
「アイドル事務所が家出少女をスカウトしてる? これは由々しき事態です」
 邪神とアイドルを一緒にされてはかないません、いやまったくおっしゃる通りです。
「この案件、ミルヒが絶対阻止してみせまっす! そしてバシッと活躍してイメージアップも目指すのです」
 いいですね、そういう上昇志向だいすきです。頑張っていきましょう!

「シェフアンド暴力」
 今何と? 聞き慣れない上に物騒な単語が耳に入ってきた気がしたのですが!
「とにかく歩き回って、スカウトマンを探しますぞい!」
 ……空耳だったらしい。ユーゴは徹底して足を使っての捜索を行うことにしたようだ。一方のミルヒはというと。
(えっと……まずそのスカウトマンを見つけないとダメなんだよね)
 夜の街を行き交う人々は忙しないもので、いざこちらから目当ての人物を探そうとするとなかなかどうして難しいものである。
(そうだ、なにかパフォーマンスしてたら現れるかな?)
 今までの囮のパターンはいかにもな「家出少女」を装ったものが多かったが、相手がアイドル事務所だと判明した今となっては誘引する手法も増えるというもの。
 その点「企業向けバーチャルアイドル(のサンプル)」であるミルヒにとって、路上でちょっとしたパフォーマンスを、それこそゲリラライブのように行うなど朝飯前のことであった。

 ネオンサインを照明代わりに、即興でひとつ歌って踊ってを繰り広げたミルヒの周りにはあっという間に人だかりができる。そんな人の輪を割ってミルヒの前にまろび出てくる一人の男の姿があった。
「きゃっ!」
 ミルヒは驚いた声を上げるが、内心では狙い通り上手く釣れたといたずらっぽく笑んでみせる。他の猟兵もやって来るかも知れない、ここは時間を稼いでおくに限る。

「き、君っ! もう、どこかの事務所に所属してる!?」
「い、一応アイドルの見習いみたいなもので……まだ正式な所属は」
「そうか、ならうちの事務所にどうだい!? 何なら今から一緒に君の家に行って、親御さんに……」
「ミルヒの家? ……はネットの世界ですけど……」
「ネカフェ難民なのかい!? 何て不憫な!」
「えぇっ!? ネットカフェ難民じゃないですよ、それはちょっと誤解です」
 話がことごとく噛み合わない。この男、スカウトマンに向いていないタイプなのではなかろうか。これにはミルヒさんも思わず苦笑い。早く誰か援軍に来てくれないかなあと思っていた、その時。

「本日のお薦めシチューをたんと召し上がって貰いますのじゃ!」
「ギャーーーーーーーーーーッ!!!」

 騒ぎを聞きつけたユーゴが猛ダッシュでやってきて、人だかりを蹴散らして、スカウトマンのお口目がけてご自慢のユーベルコード【本日のシェフのお薦めシチュー(ヒッサツ・シチュー)】を叩き込んだのだ!
 美味しい! でも熱い、熱すぎる! でも美味しい! あまりのことにもんどり打って転げ回るスカウトマンの様子を見たユーゴは大鍋を高々と掲げて告げる。

「え、おかわりが欲しいのですじゃ?」
「……!!!」

 舌(どころか多分口の中のあちらこちら)を火傷したと思われるスカウトマンは、言葉を上手く発することができない。なのでユーゴはユーゴなりに、察することにした。
「熱々シチューも、激辛も、まだまだたくさんありますのじゃー」
「激辛ですか!? それってもうカレーなんじゃないですか!?」
 思わずツッコむミルヒ。程々の温度になったらちょっと食べてみたいかもと思いつつ。
 そして、今スカウトマンが最も必要としているものは――水であった。

 事の顛末としては、ユーゴにたらふく様々なご自慢のシチューを堪能させられたスカウトマンは、気の毒に思ったミルヒが自腹で自動販売機で購入した水を与えられ、一切合財を白状することとなった。

「家出少女をアイドルに仕立て上げて……邪神召喚のいけにえに……!?」
「それは捨て置けないのじゃ! アイドル事務所に急ぐのですじゃー!」

 満腹で動けなくなったスカウトマンをその場に残し、ユーゴとミルヒもまた、雑居ビルへと急ぐ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロダ・アイアゲート
小さな事務所故仕方ないのでしょうけれど…
誰か一人くらい残っていても良かったのでは?
セキュリティ的に無人って…
それに一応事務所なのでしょう
来客対応とかどうするんですか、これ(などどうでもいい事をブツブツ)

雑居ビルですから、他にも会社が入っていると思いますし、まずは近場から聞き込みしてみましょう
スカウトマンの特徴やこの事務所で何か怪しいことを見たり聞いたりしたか、ビルの管理人に監視カメラを見せてもらうのも手ですね

(外へ探しに行こうとして)
そういえば以前何かの刑事もので見ましたが、『犯人は現場に戻ってくる』とありましたね…
ということはここで待っていれば入れ違いにならずに遭遇できるのでは?

アドリブ歓迎


ノイジー・ハムズ
見張りがいたら、お花を摘み(※トイレ)に行きたいです!と、呼び寄せて愛の頭突き!
安心して下さい、みねうちです☆
誰もいないなら純粋にドアを破☆壊!

監禁はレギュレーション違反!
健全な家出のため、少女達を開放します!

●捜索
鍵部屋なら、一応声をかけます
密室でお約束のアレをやるので、ドアから離れて下さい☆

疑似英雄! 攻撃強化!
3、2、1でドアに体当りします!
無理なら剣で鍵のあたりを破壊します!

はい、自力での家出失敗です。今回は諦めて家に帰りましょう!
無事に帰るまでが家出ですよ☆

家出は、自分で鍵を破壊できるくらい強くなってからをオススメします!

●暇なら
邪神に関係しそうな物を私の美的センスでアレンジします


真守・有栖
なるほど。あいどるとは巫女たる者。
私にぴったりじゃないの!
九兵衛(すかうと)も見る目があるわね。褒めてあげるわ!

ところで。この娘たちが私の同僚となるの?
家出少女たちを眺めて、不満げにほっぺをぷくぅ。

ちょっと九兵衛!大事な儀式(らいぶ)をこんな娘たちで行うつもり!?
巫女(あいどる)の何たるやも分かってないじゃない!駄目よ、駄目。却下!返してきなさい!

巫女とは神(すぽんさー)あってこそ。
無茶苦茶な要求に涙を呑んで応え。神社(じむしょ)の圧に従い。信者(ふぁん)は増えれど一向に恵まれない……それでも私のように清らかな!心を持ち続ける無垢なる者が巫女たりえるのよ!

え?訳が分からない?


感じなさいよ!!!



●じみちなちょうさとあらいだし
「小さな事務所故仕方ないのでしょうけれど……」
 ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)が、本当に誰一人として存在しないアイドル事務所の寂しい部屋をぐるりと一周りすると、言った。
「……誰か一人くらい残っていても良かったのでは?」
 セキュリティ的に無人って……それに一応事務所なのでしょう、来客対応とかどうするんですか、これ……。そう独りごちるロダは完全に普通にこの事務所の心配をしている。優しい。

「それはそうと、雑居ビルですから。他にも会社が入っていると思いますし、まずは近場から聞き込みしてみましょう」
 そう言うとロダは一旦事務所を後にして、一階玄関ロビー前にある管理人室へと向かった。ここも不在だと困るなと思いつつガラス戸を覗き込むと、中年の男性と目が合った。どうやらこの男性が管理人らしい。

「……失礼、このビルに入っている「オリオン企画」というアイドル事務所について伺いたいのですが」
「ああ、最近入った人たちだねぇ」
「最近……ですか。スカウトマンの方も当然いらっしゃると思うのですが、その……何か、怪しいと思われる点などは見受けられましたか?」
 こういうことはいっそ直球で聞いた方が良い。そう判断して思い切って踏み込むロダは、返ってきた返答に息を呑む。
「怪しいっていうか……オリオンさん、ワンフロアしか借りてないはずなのに、女の子を連れてきてもそれっきりなんだよねぇ……。レッスンとかあるだろうに、どこでやってるんだか」
「……管理人さん、緊急事態かも知れません。最近一週間の防犯ビデオを見せていただいても?」
 ロダは決して表情を崩さないが、それが逆に圧となったのか。管理人の男は言われるがままに録画テープをロダに開示することにして、準備を始めた。

●ひみつのおへやで
 昨晩の調査の段階で、結果的に囮として敵のアジトに潜入することに成功した二人の猟兵――真守・有栖(月喰の巫女・f15177)とノイジー・ハムズ(あたまもかるい・f14307)は、事務所とは別のフロアに案内され――突如部屋に放り込まれると、言ってしまえば監禁されたのだった。
 事務所が無人な代わりにこちらの部屋には見張りの男が中に一人、外に一人。有栖とノイジーがそれぞれ部屋を見回してみると、今までスカウトという名目で連れて来られたであろう家出少女たちが複数、不安に駆られた表情で膝を抱えていた。

「これで十分な数のアイドル候補生が集まったな……恐らく儀式は近々行われる、その時こそ、我らが至高の神が……」
「……なるほど。あいどるとは巫女たる者。私にぴったりじゃないの! 九兵衛(すかうと)も見る目があるわね。褒めてあげるわ!」
「九兵衛!?」
 それはもしかして人間ではなく見た目はマスコットだけど中身は邪悪なアレのことでは……いやなんでもないです。とにかく、見張りの男が聞いてもいないのに企みの核心に触れようとした時、有栖が突然その見張りの男の頭をナデナデした。ご褒美かな?

「ところで。この娘たちが私の同僚となるの?」
 有栖さん、家出少女たちを眺めて、不満げにほっぺをぷくぅ。
「あ、ああ、かつて魔法紳士に憧れた我らが神に足りなかったのは「女子力」……それを年頃の少女の弾けるエナジーで」
「ちょっと九兵衛! 大事な儀式(らいぶ)をこんな娘たちで行うつもり!? 巫女(あいどる)の何たるやも分かってないじゃない! 駄目よ、駄目。却下! 返してきなさい!」
「待て待て待て待て、人をそんな拾ってきた犬猫みたいに」
 九兵衛さん、そういう問題じゃない。でも言われていることは正しい。ここに来ればアイドルになれると少しでも思った家出少女たちをこのように無碍に扱っては、成功する儀式だって失敗するだろう。……あれ?

「巫女とは神(すぽんさー)あってこそ。無茶苦茶な要求に涙を呑んで応え。神社(じむしょ)の圧に従い。信者(ふぁん)は増えれど一向に恵まれない……」
 片手を豊満な胸に当て、もう片方の手は天に差し伸べ切々と語る有栖。最後はカッと目を見開き九兵衛(※スカウトマン兼見張りのことです)を見据え、言い放った。
「――それでも私のように清らかな! 心を持ち続ける無垢なる者が巫女たりえるのよ!!」

「……」
「え? 訳が分からない? ――感じなさいよ!!!」

 ドントシンク……フィール……。
 見張りの男のみならず、拐われてきていた家出少女たちまでもが呆然としていた。

「はいはーい、私、お花を摘みに行きたいです!」
 そこで響いたのはノイジーの、いわゆる『お手洗いに行きたい』コールだった。その声にようやく我に返った見張りの男は、仕方がないなとばかりにノイジーを外の見張りに引き渡すべく近付く――その時!
「ぐえっ!!」
 男のみぞおち付近に、ノイジーの渾身の頭突きが炸裂した! これユーベルコードじゃなくて!? 見張りの人気絶してますけど!? ドサリと音を立てて倒れましたよ!
「安心して下さい、みねうちです☆」
 そう言っててへぺろするノイジー、恐ろしい子……! くるりと振り返り家出少女たちを見ると、力強く宣言した。
「監禁はレギュレーション違反! 健全な家出のため、あなた達を解放します!」
 少し離れたところでは、別の意味で少女たちを解放したいと考える有栖がうんうんと頷いている。ところで「健全な家出」って結構なパワーワードですよね……。

 ノイジーが部屋のドアノブを確認する。丸い、人間が手で握って回して開けるタイプだ。少女たちが逃げずにここに留まっている理由は、外にも見張りがいるからというだけではないらしい。
「鍵がかかってるんですね?」
「……(こくり)」
 家出少女たちが首肯する。ならばとノイジーは少女たちに声をかけた。
「はい、じゃあ密室でお約束のアレをやるので、ドアから離れて下さい☆」
 もはや言われるがままに後ずさる家出少女たち。ついでに有栖もちょっと下がる。

「【擬似英雄(プラシーボ・ヒーロー)】! 攻撃強化! 3、2、1!」
 ノイジーが凛々しい声でユーベルコードを発動させると、突如ノイジーの全身が湧き上がるピンクのオーラに包まれ、愛らしいツインテールも天を衝くかのごとく上を向く。戦闘力が測れるゴーグル的ななんかがあったら測定不能で壊れていたであろう状態のままにノイジーは、ドア目がけて体当たりを敢行する!

 バタアァァァァァァン!!!

 ドアがちょっぴりひしゃげて、蝶番ごと外れて外側にぶっ倒れた。外にいた見張りの男が下敷きになっている気配がするが、構ってはいられない。スーパーなんちゃら状態のノイジーが振り返ると、家出少女たちに向けて声をかけた。
「はい、自力での家出失敗です。今回は諦めて家に帰りましょう!」
 その声に突き動かされるように、次々と立ち上がる家出少女たち。
「無事に帰るまでが家出ですよ☆ あと、家出は『自分で鍵を破壊できるくらい強くなってから』をオススメします」
「は……はい……」
 半ば呆然としながら、しかししっかりとした足取りで次々と部屋を出ていく少女たち。すれ違いざまに一礼したり、ありがとうございましたと声をかける者もいた。

「ふう、こんな所かしらね!」
 汗を拭う仕草をする有栖をよそに、元の姿に戻ったノイジーが何やら部屋を物色している。
(邪神に関係しそうな物があれば、私の美的センスで劇的ビフォーアフターしてあげようと思ったんですが……)
 儀式はこの部屋で執り行われるのではなかったのか、不思議とそれらしき物品は、一切見つからなかった。

●ときが、みちる
 ロダは管理人室で、地道に防犯ビデオの録画データを閲覧していた。確かにスカウトマンと思われる男に伴われて少女が数名、ビルに入っていく姿が確認できた。だが――管理人の男の言う通り、外出をする形跡がない。まさか、手遅れだったか。嫌な予感がして飛び出そうとする己を、しかしロダは辛うじて制した。

(そういえば、以前何かの刑事モノで見ましたが『犯人は現場に戻ってくる』とありましたね……)

「……管理人さん。恐れ入りますが、しばらくここで人を待たせて頂いても?」
「……おや、彼らは『失敗』したのか。残念だ、実に残念だ」
「……管理人、さん?」
 突如様子がおかしくなった管理人の男から、身の危険を察知し即座に距離を取るロダ。同時に、上の階から十数名の少女たちが一斉に雑居ビルから逃げ出していくのを見る。

「……ただ『少女である』ということだけで、その素質を持つ。私が欲して止まなかったものを……」

 ロダは踵を返すと、管理人室から飛び出し、そのまま雑居ビルの外に出た。
 振り返るとビルの入口には、筋骨隆々という表現がふさわしい男が立っていた。
 ――ただし、金髪のツインテールに、魔法少女のような出で立ちをして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『大変態魔法少女騎士』ダンディーニ』

POW   :    可愛らしい呪文(野太い声で)
単純で重い【魔法】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ライドオンステッキ
【ステッキに跨り絶叫しながらの突撃】による素早い一撃を放つ。また、【服をパージして褌一丁になる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    レッツ!メイクアアァァァァップ!!
いま戦っている対象に有効な【魔法少女化洗脳光を放ち、新しい衣服と武器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●じゃしん「きょうふのへんたいきし」
 猟兵たちが続々と雑居ビルの前に集結するのと、不完全ながら復活した「邪神」が対峙したのは、夜も更けた頃のことであった。
 本来ならば正式な儀式を経て復活するべき存在であった「邪神」は、最も親和性の高い存在とみなした雑居ビルの管理人の身体を依代にしてしまったのだ。

「私は……全ての人類を魔法少女にする……そのためなら、どんな犠牲をも厭わぬ……!」

 なにいってだこいつ。
 いやちょっと待って欲しい。一応顕現しちゃったモノなんで、ひとつ退治していってはもらえないだろうか。みんなでボコれば管理人さんの身体は多分無事に戻るから!

 という訳なので、この恐怖の変態騎士をどうにかしてやって下さい!
 一応前世では人々に夢と希望を与える魔法少女に憧れていたそうなんで!
 今はちょっとヤベーやつ枠行っちゃいましたけど!! よろしくお願いします!!
満月・双葉
何言ってんだこの紳士
魔法少女か騎士かどっちかにしろよ
全人類の中にはオスもいるぞ
そもそも親和性の高い雑居ビルの管理人も如何なものか
僕はボケキャラなんだぞ、ツッコミしちゃったじゃないかっ邪神こっわ!

基本は地形の利用を行い死角からの騙し討ちを行いたいですが、無理でしたらば虹色の残存を残す早業で動き回り翻弄していきます
武器の投擲を中心に、ユーベルコードで2回攻撃を放ってみましょうか…大根くらえ(いみちがう)

敵の攻撃は第六感、野生の勘、視力、暗視、聞き耳を利用し見切る
見切れないものはオーラ防御、盾受け、武器受けで防ぐ
ダメージは激痛体制で気合いで我慢する
ママにぶん投げられるのに比べたらふふん…寒っ



●ぞくせいもりすぎなんだよ!
 猟兵たちの前に遂に顕現した(してしまった)邪神――その名も「『大変態魔法少女騎士』ダンディーニ」。生前こそ崇高な……崇高な? まあそういうことにしておいて欲しい、理想の元に戦いそして殉じたのであろうが、今となっては恐るべき地獄からの使者である。お前も魔法少女にしてやろうか、そんな目つきで猟兵たちを睨めつける。

 そこでド直球ストレートに『何言ってんだこの紳士』とツッコミを入れたのは満月・双葉(星のカケラ・f01681)である。やったぜ。双葉さんならやってくれると信じてた!
「魔法少女か騎士かどっちかにしろよ、全人類の中にはオスもいるぞ」
 眉根をひそめながら双葉の冷静でキレのあるツッコミが刺さる。
『全人類の半分はオスであることは百も承知よ……その上で、私と道を同じくしてもらうのだ……!』
 しかしダンディーニも負けじと言い返す。しかも。
『魔法少女も騎士も、人々を守るという崇高な理想を掲げるものであることには変わりはない。よって、同じものとみなしてくれて良いぞ』
 律儀に定義づけてきやがった……! 予知をしたグリモア猟兵と同じように、片手で顔を覆い何とも言えない感情を表現する双葉。

(そもそも親和性の高い雑居ビルの管理人も如何なものか……)
 普通もっとこう、ビルやマンションの管理人さんって、穏やかな感じの人が多くないですか? 少なくとも眼前で威風堂々とする、筋骨隆々とした人って滅多にいなくないですか? それともこれが運命の導きってヤツなんですか!?
「僕はボケキャラなんだぞ、ツッコミしちゃったじゃないかっ邪神こっわ!」
 ボケキャラさえもツッコミに回らせる程の、ツッコミどころの塊。確かに怖い。ていうか双葉さんボケキャラだったんですか、ちょっと驚きです。

『私の夢と、理想を阻むというのならば受けて立とう……! 魔法少女に試練はつきもの、どこからでもかかってくるが良い!』
 そう言って魔法のステッキ(なんだろうなあ……多分……)を油断なく構えると、ダンディーニは大地に力強く足を踏み下ろして猟兵たちの攻撃に備える。
 それを見た双葉は思案する、可能ならば路地の電柱や塀などを利用した死角からの騙し討ちを主軸として攻撃を仕掛けたかったのだが、その場合は他の猟兵との連携が必須となる。しかし、現場に最速で駆けつけたのが双葉である以上、別のプランを発動させなければならない。
「……わかりました、ならばひと勝負と参りましょう」
 言うなり双葉は、おもむろに地を蹴って動き出す。ダンディーニにその動きを捉えられないよう、地面だけでなく時に壁を蹴るなど三次元的な動きを、その翼の虹色の残像が残るほどの素早さでこなしてみせる。

『素早さが武器、ということか……ムッ!』
 自身の周囲を激しく動き回られ、なかなか見切ることが出来ずにいたダンディーニが手にしていた魔法のステッキ(なんだよなあ、これ)で反射的に何かを叩き落とす。
 それは、馬の置物だった。言うまでもなく双葉が投げたものであり、それをいなしたダンディーニのステッキもまた無傷であった。地獄のような光景であった。
「残念でした、その馬はフェイクです……大根喰らえ」
『もがっ!』
 ダブルミーニングかな? 馬の置物を投擲した勢いで身体をひねると、双葉は勢いよく手にした大根をダンディーニの口の中に突っ込んだ。

 そのまま大根を手放しても良かったのだが、何となく気が引けたので双葉はある程度ダメージを与えたことを確認した上でグイッと大根を引き抜いてやる。
『ま、魔法少女に大根を喰らわせるとは……さしずめ今回はギャグ回ということか、ならばっ!』
 お前の存在そのものがいつだってギャグだよ、と追撃のツッコミを入れたくなるのをグッとこらえながら双葉が身構える。

『ぴぴるるぴっぴ、おおきなかぶ~~~~』

 野太い声で、魔法の呪文らしき言葉を発した。えっ何今のと双葉が思う間もなく、ダンディーニが手にしていたステッキが巨大なかぶに変わっていた上に、それで無造作に、殴られた。
「……っ!!!」
 見切る間も無かったのは不覚だったが、とっさにかざした大根とそれにまとわせたオーラの防御障壁のおかげで、かろうじて身体へのダメージは最小限にとどめられた。それでも大根を通じてビリビリと通じてくる痛みは、それでも「激痛耐性」の技能のおかげで軽減されているのかと思うと、本来の威力にゾッとなる。
「ふ、ふふ、ママにぶん投げられるのに比べたら……ふふん……うう寒っ」
 双葉最大のウィークポイントであろう「ママ」のことを考えると、それだけで寒気が走るのはもはや仕様なのか。いつかどうにかなるといいですね! ところで双葉さん、攻撃を受け止めた衝撃で足元にごっついヒビが入ってます!

『魔法少女たるもの、ギャグ回にも対応できなくてはな……』
「魔法少女を名乗るのならば、口調まで徹底して少女少女して欲しかったですね……」
 あっまたツッコんじゃった。双葉はしびれる手をぶらぶら振りながら、思わずそう口走った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真守・有栖
ちょっと!……なかなかに可愛いじゃないの。
さすがに私の美狼っぷりにはちょーっと劣るけれども!

引き締まった身体。
つるつやなお肌。
愛らしい衣装。

見事なものよ。褒めてあげるわ!

けれども。
刀の柄に手を掛け、じぃーっと一点を見つめ。がるる、と唸り。

……その髭が気に食わないわ。

じり、と間合いを詰め。疾駆。
愛らしい声で放つ魔法をゆらりと【残像】を残して回避。

『剣刃一閃』

抜き打ちで、くるんとしたお髭を綺麗に剃り落としてやるわ!

うん!やっぱり、貴女にお髭は似合わないわ。これで文句なしに立派な乙女ね!

夢であり、理想なんでしょ?魔法少女とやらが(表題回収)
なら、中途半端は駄目よ!やるならとことん貫くべし!いいわね?


狭筵・桜人
邪神?これですか?フーン……
UDCに任せまーす。
ハイハイごはんの時間ですよー。出てきてくださーい。
おいさっさと出ろ。

敵に肉薄せんとする勇敢な猟兵の方々を支援すべく
UCを命中重視で、【捨て身の一撃】による拘束と【時間稼ぎ】。
私?私は後方で見切りとかなんとかして身の安全を守ってます。

とまあこんな風にUDCを嗾ければ
触手に絡まれた女装おっさんの図が出来るわけですが。
わざと?いやいや事故ですって!

でもまあせっかくなので
スマホのカメラで記念撮影して、と……

いやあ女装しておっさん拘束しておっさん拘束して……
誰かにこの疲れを分けてあげたいですねえ。
ニコさんスマホ持ってますかね。
あとで写真送ってあげますね!


六道銭・千里
邪神…邪神なぁ……邪神?
いやまぁ、あれやな…黒いダンディな髭と金髪は合ってへんから染め直した方がええんちゃうか?

とりあえず、勝手に人類を魔法少女にするんはええけど
その為に犠牲を厭わへんっちゅうんやったら止めさせてもらおうか?


とりあえず、俺は冥銭の爆撃による味方への攻撃の阻害と足止め
件、注意をこっちにそらす役割で
大技は他の猟兵に任せた

近づかれたら銭貫文棒で対処
そのまま受けたら力で押し切られそうやから受け流すことを意識してな【武器受け】







俺に有効な衣装か…赤い三角帽子にマントな衣装とかかな?(チラリ)



●まほうしょうじょかいぜんけいかく
「邪神? これですか? フーン……」
 まるで品定めでもするかのごとくダンディーニを上から下まで一通り眺める狭筵・桜人(不実の標・f15055)。そうして出した結論は。
「UDCに任せまーす。ハイハイごはんの時間ですよー。出てきてくださーい」
 コレあくまで個人の感想なんですけど、UDCエージェントの皆さんって、結構UDC使いが荒かったりしませんかね!? 大丈夫!?

「邪神……邪神なぁ……邪神? いやまぁ、あれやな……」
 何か言いたげな六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)の隣には、目をキラキラさせた真守・有栖(月喰の巫女・f15177)の姿。
「ちょっと! ……なかなかに可愛いじゃないの。さすがに私の美狼っぷりにはちょーっと劣るけれども!」
(あれ可愛いんか!?)
 思わず有栖の顔を凝視する千里をよそに、今度はダンディーニが返す。
『敵からの賛辞とは恐れ入る、素直な心は魔法少女には欠かせないものだ』
 ダンディーニ、ニッコニコである。そこへ有栖の追撃が入る!
「引き締まった身体。つるつやなお肌。愛らしい衣装。……見事なものよ。褒めてあげるわ!」
(そら確かに前向きな見方すればそうなるやろけど!)
 掌をビシリとやっていわゆる定番のツッコミのポーズを取りそうになる千里。ダンディーニは単純な性格なのだろうか、ひどく上機嫌で指で髭をくるりくるりと弄っている。
『それはそれは、お褒めにあずかり恐悦至極。日々鍛錬した甲斐があったというもの』

「けれども」
 おもむろに有栖が佩いていた刀の柄に手をかけ、ダンディーニのとある一点を見つめる。がるる、と唸り声が漏れるのを、傍にいた千里は聞き逃さなかった。
「……その髭が気に食わないわ」
「そ、それやわ! 俺もそれ思てたんや! 黒いダンディな髭と金髪は、合ってへんから染め直した方がええんちゃうか?」
 ようやく意見が一致した。――この時は、そう思われた。

 千里と有栖のやり取りを横目に、敵の姿を目にして主の命であってもさすがにアレはとイヤイヤをするUDCに対し、遂に凄みを利かせることとなった桜人。
「おいさっさと出ろ。【名もなき異形(ディスポーザブル・クリーチャー)】」
 ユーベルコードの発動は、絶対的なUDCの行使と同義である。特に命中率を重視して行動するよう指示され行使された桜人のUDCは、遂に抵抗をあきらめ触手の姿をあらわにして、千里や有栖との会話に気を取られていたダンディーニを横から絡め取ることに見事成功した。
『なっ、何……!? これは、魔法少女の典型的なピンチの図……!?』
「とまあこんな風にUDCをけしかければ、触手に絡まれた女装おっさんの図が出来るわけですが」
『女装おっさんではない、魔法少女であるぞ! くっ……こんな触手なんかに……』
「うわその台詞気持ち悪いですやめて下さい」
 わざと? いやいや事故ですって!
(でもまあせっかくなので、スマホのカメラで記念撮影して、と……)

 カシャッ。カシャッ。
 響き渡るスマホカメラ独特のやけに大きなシャッター音。
『ああっ……こんな痴態を写真に収められるなどと知れては……!』
「あっ皆さん、私は後方で身の安全を守ってますので、UDCが拘束している今のうちにあんなことやそんなことなど、色々どうぞ」
 一通りのアングルを撮り終えてひと仕事終えた男の顔をした桜人が、ダンディーニの意思などお構いなしに勝手にその身柄を提供する。なんたる鬼畜の所業よ!

「あー……とりあえず、勝手に人類を魔法少女にするんはええけど。その為に犠牲を厭わへんっちゅうんやったら、止めさせてもらおうか?」
 頭をかきながら千里がチラリと傍の有栖を見る。じり、と間合いを詰め、いつでも疾駆できるように構えている有栖に向けて、千里は指に挟んだ霊符を見せる。

 それで十分だった。
 先に動いたのは千里、ざっと百枚は軽く超える枚数の霊符を放つ【霊符弾・三式(レイフダン・サンシキ)】を発動させると、いまだ拘束が解けぬダンディーニ目がけて一斉にけしかける。
『ふぬっ、ぬおおおおおおおっ!!!』
 ことここに至っていよいよ生命の危機を感じたのか、恐るべき怪力で右腕に絡みついていたUDCの触手を振り払ったダンディーニは、そのままの勢いで襲いかかってきた霊符が急所に命中するのを防ぐべく、自由になった右腕をかざして受け止める。

 だが、その隙が出来ただけで十分だった。
『やるではないか、術者よ! その技、魔法少女になるに相応しいっ!!』
「じゃかましいわ、誰がなるか!」
 攻撃してきた千里を狙い、恐るべき「魔法少女化洗脳光」を浴びせようと右腕をブォンと払い受け止めた霊符を打ち捨てた。万一の事態に備え心の準備をする千里は思う。
(俺に有効な衣装か……『赤い三角帽子にマントな衣装』とかかな……?)
 チラリと彼方の空の方を見ながら、今頃もせっせと援軍の送り込みや退去転送などに余念がないであろうグリモア猟兵の秘密の姿を想像する。貴様ッ、何故その姿について知っているッ!! 後でグリモアベースまで来なさい!!
 ――それはさておき、ダンディーニの意識が完全に千里に向いていたその時。

 ひゅんっ。

 残像を残す程の速さでダンディーニに肉薄した有栖が、抜き打ちの【剣刃一閃】を放ち――ダンディーニのくるんとしたお髭を綺麗に剃り落としてみせたのだ。
 ちん、と刀を収めた有栖がくるりと振り返り、ダンディーニの顔を改めて確認すると、ぱあっと花が咲いたような声音で嬉しそうに言った。
「うん! やっぱり、貴女にお髭は似合わないわ。これで文句なしに立派な乙女ね!」
「ちょ、ちょい待った、何も剃り落とすまではせえへんでも……!?」
 そこで異を唱えたのが千里だ。髭はあっても良かった派閥だった模様。しかし有栖は構わず続ける。

「夢であり、理想なんでしょ? 魔法少女とやらが!」
 おおっとここでタイトルの回収をやってのける有栖さん! お気遣いありがとうございます! お見事です!
「――なら、中途半端は駄目よ! やるならとことん貫くべし! いいわね!?」
『私の……夢と理想……』
「せ、せやなぁ……まぁ髭の件は置いといても、せめてその、口調も徹底してみたらどないやろか……?」
『……口調、を……』
「そうですねぇ、どうせなら口調も乙女にしてみては? 今のおっさんはどちらかというと騎士寄りですから、もっと徹底して魔法少女になるんですよ」
 桜人は、完全に安全圏を確保しているからと言いたい放題である。だが、これらの提案が、髭を剃り落とされたダンディーニには地味に響いてしまったようだ。

『……わかったわ……私は今ここから、真の魔法少女を目指してみせる……!』
 待って。ちょっと待って。せっかく不完全な状態で復活させた邪神を完全体に近づけようとしてどうするの!? 声は結局野太いまんまだから色々悪化してるよ!!

(いやあ、女装しておっさん拘束しておっさん拘束して……誰かにこの疲れを分けてあげたいですねえ)
 そろそろいいだろう、とUDCによる触手拘束をそっと解いた桜人は、スマホのカメラロールを改めて確認しながら思う。
(ニコさんスマホ持ってますかね。あとで写真送ってあげますね!)

 ――後日、グリモア猟兵のスマホには『お土産』と称され半ば強制的に例の画像が余すことなく転送されたそうな。お心遣い痛み入ります……(白目)。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノイジー・ハムズ
わあ! 何処と無く、私と衣装が似ています! かわいい!

出会い方が違っていれば…わたしの、最高の友達になれたかもしれません!
ですがあなたはオブリビオン! 奇跡も魔法もないんです☆

●戦闘
相手が魔法少女おじさんなので、私も魔法少女チックに戦います☆
トライデント・フォーク!

魔法少女チックに、闇属性に闇属性を更に付与しちゃいます!【属性攻撃】
急所にフォークを刺したら管理人さんが死んでしまいそうなので、お尻狙いにしておきます
私、優しくて強い!

●オリオン企画の皆へ
魔法少女おじさんは属性が多すぎるので、いずれ解釈違いで血で血を洗う内部抗争に発展しますよ!
今後は素直に、かわいいノイジーちゃんを崇めてくださいね☆



●おぶりびおんって、ほんとばか
 猟兵たちが続々と現場に到着してダンディーニと死闘(?)を繰り広げている頃、ノイジー・ハムズ(あたまもかるい・f14307)はそのちっちゃな身体を活かしてこっそりと雑居ビルに再潜入を果たし、オリオン事務所の室内にやって来ていた。
「社長さんの机は……多分これですね! 配置的に多分、きっとそうです!」
 そう確信してビターンと何か紙のようなものを叩きつけるノイジー。手紙だ。フェアリーである彼女が人間宛てに読めるサイズの手紙をしたためるのは大仕事だったろう。ともあれ、ひと仕事終えた顔でノイジーはいよいよ戦場へと飛んでいくのであった。

 髭がなくなり、口調が乙女チックにシフトチェンジしたダンディーニと対面するなり、ノイジーは思わず声を上げた。
「わあ! 何処と無く、私と衣装が似ています! かわいい!」
『まあ! そういう貴女は魔法少女を導く妖精の役がとても似合いそうっ!』
 両手を組み合わせると右の頬に当て、嬉しそうに応えるダンディーニ。声は野太い。そんなダンディーニに動じることなくノイジーは悲しげに言い放った。
「出会い方が違っていれば……わたしの、最高の友達になれたかもしれません! ですがあなたはオブリビオン! 奇跡も魔法もないんです☆」
『確かに私はオブリビオン……でも、何度繰り返してでも、必ず貴女を魔法少女にしてみせる……!』

 あかんこれ以上はいけない。レッツバトルですノイジーさん!
「相手が魔法少女おじさんなので、私も魔法少女チックに戦います☆」
 そう言うなりノイジーが取り出したのは――なんというか、いかにも闇属性という感じの禍々しい巨大なフォークであった。それを! どうする! つもりですか!!
「魔法少女チックに、闇属性に闇属性を更に付与しちゃいます!」
 大丈夫? ノイジーさんのソ○ル○ェム、濁りきってません?? 対するダンディーニの目には巨大な禍々しいフォークばかりが良く見える。そのフォークを抱えながらノイジーは素早くダンディーニの背後に回り込むと、おもむろにダンディーニの臀部目がけて巨大な闇のフォークをグサグサと突き立てた!

『イヤアアアアアアアアア痛ッ、いったーーーーーーーーーーーい!!!』
「急所にフォークを刺したら管理人さんが死んでしまいそうなので☆」
 私、優しくて強い! ピースサインを横にして目元に当てるあざといポーズを取るノイジーと、早速痛がり方も乙女になっているダンディーニ。魔法少女の戦いは……かくも熾烈なものなのか……。

●はいけい、おりおんきかくのみなさま
『魔法少女おじさんは属性が多すぎるので、いずれ解釈違いで血で血を洗う内部抗争に発展しますよ! 今後は素直に、かわいいノイジーちゃんを崇めてくださいね☆』

 ――後に邪神の支配下から解放された元・オリオン企画のスカウトマンたちが目にすることとなる手紙の内容を、ここに公開する。

 ノイジーちゃん、恐ろしい子……!!

成功 🔵​🔵​🔴​

ロダ・アイアゲート
(相手の姿に遠くの空を見て)
…なるほど、ニコさんが言葉を濁した理由はこれですか
変態紳士は深夜枠が相場だと思いますよ

UCで洗脳光を相殺しつつ、銃身で殴る
正反対の属性の攻撃…この場合『超冷静ビーム』とかでしょうか(どこから出るんだ…)
魔法少女…憧れは確かにありますし、なれるものなら…
ですが私は少女ではありませんからね
それにあの変態紳士の洗脳はちょっと…受けたら私も変態になってしまいそうな気が…
【2回攻撃】【早業】【先制攻撃】【オーラ防御】【かばう】使用

管理人さんに怪我をさせてしまった場合は、先日のナンパ師から頂いたお金をお見舞金としましょう
私が使うよりはずっといいでしょうから

アドリブ・共闘歓迎


五百雀・斗真
WIZ

…すごい格好の人がでてきた
ニコさんはこの姿を見て、顔を覆ってたのかな
いや、短いスカートが翻った時に何か見えてしまったのかも…
と…とにかく管理人さんを元に戻さないと

レッツ!メイクアアァァァァップ!!って
言葉からして嫌な予感しかしない
大田さんタスケテ(冷や汗
必死に大田さんの触手でガードしてもらうけれど
防ぐことが出来ず、新しい衣服と武器が召喚されたら
あまりのことにズザザザザザッと後ずさる

僕にこんなかわいい服、似合わないですってば
目を覚まして下さいという気持ちをめいっぱい込めて
【グラフィティスプラッシュ】で戦う
ちょ、大田さん…。
スマホで勝手に撮影しようとしないで
めっ…!(触手をむぎゅっと掴む



●おきづかいおそれいります……
 ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)と五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)の二人は、それぞれ思い思いに遠くの空や眼前の敵などを見つつ、だいたい同じようなことに思いを馳せていた。

(……なるほど、ニコさんが言葉を濁した理由はこれですか)
 ロダは今回の事件を予知したグリモア猟兵が、邪神の正体についてはあえて言及を避けた理由を身をもって知り、ああこれは仕方がないですねと内心で結論づける。ロダ自身グリモア猟兵であり、その点理解は深い。
「変態紳士は深夜枠が相場だと思いますよ」
『そんなぁ! 日曜日の朝じゃないとワタシの活躍が世界中に広まらないじゃなぁい!』
「口調の調整を施したようですが、控えめに言って気持ち悪いです。あと深夜枠のアニメを侮ってはいけません、意外な影響力があるものですよ」
 ロダさん容赦無さすぎィ! でも言っていることには何一つ間違いがない! お前のようなニチアサ枠魔法少女がいるかと遂に正面切ってツッコんだ瞬間であった。

「……すごい格好の人がでてきた」
 一方、呆然とダンディーニを見つめる斗真もまた事件の説明を受けた時のことを思い出す。
(ニコさんはこの姿を見て、顔を覆ってたのかな。いや、短いスカートが翻った時に何か見えてしまったのかも……)
『そこのアナタ! ワタシに魅入っちゃってるようだけど、アナタなら分かってくれるってことかしらァん!?』
 野太い声で理解を求められた斗真は半ば強制的に思考の海から引きずり出される格好となる。勝手に理解者に仕立て上げられてはたまらない、たまったものではない。
「と……とにかく管理人さんを元に戻さないと」
『管理人……? ああ、このボディの。彼は喜んで自らワタシに身体を差し出したの。心配はいらないわぁ(はあと)』
(いやいやいや嘘だ、絶対嘘だソレ)
 UDCアースという世界では、人間がそれ以外のモノにホイホイ身体を乗っ取られるのだ。アッ、その点斗真くんと大田さんの関係は良好だそうですよ! 良いことです!

『二人とも素質がありそうで嬉しいわぁ、魔法少女は色違いの仲間が必要なのっ! さぁ、変身よっ!!』
 口調が変わると自然と仕草にまで反映されるものなのだろうか、クネッと身体を一捻りさせたダンディーニは、おもむろに例の魔法のステッキをロダと斗真の二人に向けると、何とハート型をしたビーム状の光線を放ったではないか!

『レッツ!メイクアアァァァァップ!!』

「来ましたね、魔法少女化洗脳光……」
「あの叫びからして嫌な予感しかしない! 大田さんタスケテ!」
 ロダが蒸気ガトリングガン「Aiming at a shot」を構え、斗真が必死に服の裾から薄墨色をしたUDCである「大田さん」の触手を出してそれぞれ備える。
 自分に向けて放たれた洗脳光を避けるでもなく、むしろガトリングガンの銃身を向けるロダ。しっかと前を見据えて、発動させるのは【Ubelcode03:Reflection(ユーベルコードゼロサン・ハンシャ)】。
(正反対の属性の攻撃……この場合『超冷静ビーム』とかでしょうか)
 でもそれどこから出るんだ、とセルフツッコミを内心で行いつつも、ユーベルコードが示した答えはまさに『超冷静ビーム』であった。蒸気銃から放たれた『超冷静ビーム』は、恐怖の魔法少女化洗脳光と激しくぶつかり合い、しばしバチバチと押し合いを繰り広げた後――相殺されて双方が消滅した。

「魔法少女……憧れは確かにありますし、なれるものなら……」
 ガシャン、と蒸気銃を地面に向けながら独りごちるロダに、いかなる地獄耳かそれを聞きつけたダンディーニが両手をグッとしながら声をかけてきた。
『その気持ちがあるなら、何故! 何故拒むの、アナタならなれるわ、立派な魔法少女に――!』
「……ですが私は少女ではありませんからね」
『そんなの……そんなの、それこそワタシの力で……っ』
 切々と訴えてくるダンディーニに、ロダは正直な気持ちを伝える。
「それに、変態紳士の洗脳はちょっと……受けたら私も変態になってしまいそうな気が……」
『変態ですってぇ!? ひっどぉい!!』
 顔を覆うダンディーニ。顔を覆いたいのはこっちですという顔をするロダ。今ならかのグリモア猟兵の気持ちがよく分かるというものである。

『アンタったら見なさいよ、アッチの子の素直さったら!!』
「な……っ!?」
 思わず振り返ったロダが見たものは――大田さんの奮闘むなしく魔法少女化洗脳光を浴びてしまい、黒地に橙がアクセントになっているかわいらしい衣装を身にまとってしまった斗真の姿であった。
(み、見られた……!)
 あまりのことにズザザザザザッとすごい勢いで後ずさる斗真。申し訳なさそうに目線を変態紳士の方へと戻すロダ。

「う、うう……僕にこんなかわいい服、似合わないですってば! 目を覚まして下さい……!」
 攻めた丈の短いだが、フリル盛り盛りなので言うほど動いても中身は見えない。そんな感じのスカートの衣装を着させられた斗真は、それでもやはり抵抗があるので片手でスカートの前をぐいぐい下へと引っ張りながら、もう片方の手でえいっえいっと【グラフィティスプラッシュ】を発動させ、ダンディーニ目がけて塗料を吹きかける。

『あン、だめっ、ワタシはピンク担当って決めてるの! 他の色はお断りよン!』
「ううっ、なかなか当たらない……って、ちょ、大田さん……!」
 普段とは色々な意味で勝手が違う戦闘で、なかなか狙いが定まらないで四苦八苦する斗真をさらにアクシデントが襲う。何と味方である大田さん(念の為申し上げておきますと斗真くんが宿しているUDCのお名前です)が、勝手にスマホを持ち出して、宿主の晴れ姿(?)を記念に撮影しようとしているではないか!
「大田さん、めっ……!」
 ついに斗真は触手をむぎゅっと掴むと、無理やり止めさせた。今「めっ」って言いましたよね!? むっちゃ萌えませんか!? アッすみません何でもないです!!

『お絵描きに触手とか、アナタもそれなりに属性が盛り盛りねぇ』
「ご自身を棚上げにして、何をおっしゃいますか」
『おごぉっ!!?』
 斗真と大田さんのやり取りをあらあらウフフ的なポーズで余裕ぶって見ていたダンディーニの後頭部を、目にも留まらぬ早業で一気に後背を取ったロダが蒸気銃の銃身で思い切り殴りつけたのだ。さすがにとっさの悲鳴は乙女チックにはできなかったようだ。
「おかわりもありますよ」
『おぶっっ!!』
 私の攻撃は二回あるぞと言わんばかりにもう一撃を喰らわせるロダ。前につんのめった形になったダンディーニの背中に銃床を垂直に叩き込むと、変態紳士はビターンと地面にその分厚い体躯を這わせた。
 攻撃を受けた影響だろうか、斗真の変身も解けて大田さんの野望は間一髪のところで阻止される。
 
 地に伏したままピクピクとするダンディーニを見下ろしつつ、ロダは思案していた。
(もし管理人さんが怪我をしてしまっていた場合は、先日のナンパ師から頂いたお金をお見舞金としましょう……私が使うよりはずっといいでしょうから)
 そうは言いますがロダさん、既にダンディーニは臀部に相当なダメージを受けていてですね……決してロダさんお一人の責任という訳では……。

 そこからちょっと離れたところでは、改めて大田さんに「めっ」をする、ちょっとおこな斗真くんの姿がありました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーゴ・メルフィード
此れが邪神!
うむ、何といいますか、凄いものを見てしまったのじゃ…
(おもむろに空を仰ぎ、片手で顔を覆う)

【WIZ】頑張って味方の支援に徹しますのじゃ!
皆のSAM値がゴリゴリっと削られる気がするので、
ケーキ職人さんをお呼びするのじゃ!先生お願いしますのじゃ!

可能でしたら、味方には回復する春スイーツを
敵にはカロリー爆増のクリームパイをお見舞いするのじゃ!

顔面にパイが当たったらとってもホラーじゃの…
わしも涙目ですじゃ、ごめんなさいなのですじゃー

洗脳光を放たれたら、わしはシェフであり猟兵だと、
己に強く暗示をかけますのじゃ!(キリッ)
わしは料理人、わしはマンゴー少女、あれ??

アドリブ大歓迎なのですじゃ!


ミルヒ・フェアトラーク
アドリブ・連携歓迎

あのどっからどう見ても変態なおじさんが邪神な魔法少女(?)でビルの管理人さん!?
ミルヒにはまだまだ理解不能な世界がいっぱいです…

アイドルも魔法少女も夢と希望がつまっていないとダメなんです!
あんな魔法少女(?)は認めません
早く元の姿に戻ってくださーいっ!

【エレクトロレギオン】発動します
機械兵器を召喚!照準は変態魔法少女(?)おじさん
容赦はしません!80機で全方面から攻撃!
でも猟兵さんには当てないように注意しなくっちゃね

叫び声にはビクッとしつつ
ミルヒは仲間になんてなりませんからねー!?
確かにミルヒもツインテールだけどお揃いなんかじゃありませーんっ!!
アイドルだけでまにあってまっす



●ゆめとりそうのゆくえ
 まるで轢かれたカエルか何かのように地面にべっちゃりと倒れ伏していたダンディーニが、最後の力を振り絞って立ち上がる。可愛い衣装がホコリまみれだが、パンパンと乙女な仕草でそれを払うと、たくましい二本の足でしっかと大地を踏みしめる。

『ワタシは……地獄の底から這い上がってきた大変態魔法少女騎士、ダンディーニ……。胸に抱いた夢と理想は果てしなくっ、決して、屈するワケには行かないの……っ!』

 そう強く宣言した相手は、眼前に立ちはだかる猟兵たち――ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)とミルヒ・フェアトラーク(目指せ!本契約☆・f15000)であった。そびえ立つ岩のごとく雄々しくたくましい体躯で、しかしポーズはあくまで乙女チックに魔法のステッキを構え、魔法少女としか言いようのないきゃるんとした衣装を身にまとう、しかしその名もダンディーニを前にして、ユーゴとミルヒはそれぞれに頭を抱えていた。

(此れが邪神! うむ、何といいますか、凄いものを見てしまったのじゃ……)
 そんな思いと共にユーゴはおもむろに空を仰ぎ、片手で顔を覆う。ユーゴもまたグリモア猟兵にして、どうしてもこういう反応になってしまうのだろうか。そろそろグリモア猟兵は見てしまった予知で被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求しても良い頃なのかも知れないですね……いや、実際現場に出向く猟兵さんたちの方がずっと大変なんですけど……。

(あのどっからどう見ても変態なおじさんが邪神な魔法少女(?)でビルの管理人さん!? ミルヒにはまだまだ理解不能な世界がいっぱいです……)
 本業、バーチャルアイドル。猟兵稼業は修行の一環として取り組んでいるミルヒが知る世界は確かにまだまだ狭いのかも知れない。でも、この状況はさすがにね! 想像できないよね! ごめんね変なモノ見せちゃって!

「アイドルも魔法少女も夢と希望がつまっていないとダメなんです! あんな魔法少女(?)は認めません、早く元の姿に戻ってくださーいっ!」
『夢も……希望も……ワタシの胸の中にあるっ……! ワタシはワタシの理想のために、負けるワケには、行かないっ……!』
「うむ、心意気だけはよいのじゃ! じゃが、なぜそこまで『全人類を魔法少女にすること』にこだわるのじゃ……?」
 凛々しく言い放ち臨戦態勢に入るミルヒに対抗するダンディーニ、そしてふと素朴な疑問を提示するユーゴ。おっとここで何かしんみりする感じのBGMが!(各自ご用意下さい)

『イイわ、教えてあげる……ワタシが生きた時代は、それこそ人と魔物が戦いに明け暮れる殺伐とした世界だったの。最初はワタシも普通の騎士だった……でも、ある日見てしまったの。暗雲を光で照らすように天から舞い降りた、一人の少女の姿を……』
 ヤバい、これ絶対長話になるヤツだとユーゴとミルヒが顔を見合わせるのも構わず、ダンディーニの回想は続く。
『彼女の戦い方は、殺す戦いではなく改心させて浄化する戦いだったのよ。尊かったわ……今でも目を閉じれば思い出せる……。それからワタシも、そんな戦い方で世界を救う存在になりたいと思うようになった。でも、最後までそれはかなわなかった』
「……ど、どうしてですか……?」
 思わず聞き返すミルヒ。ユーゴも息を呑みつつ答えを待つ。
『――裏切りよ。信頼していたお友達に、背中からグサリ。理由は、今でもわからないまま。……でもいいの、そんなコトは。大事なのは今、すべての人々があの少女のように、魔法少女になれば! この世界は! 救われるんだから!!』

 生前のダンディーニが見たという「魔法少女」とは、いわゆる「神隠し」で世界を転移した猟兵である可能性も否めない。背中から刺された理由は、同僚の奇行を見かねた末のものだったかも知れない。事情は色々と察するが、それでもダンディーニの夢と理想を押し通させる訳には行かないことは改めてハッキリした。

「……残念ですじゃ、これ以上は皆のSAN値に関わる気がするので……ケーキ職人さんをお呼びするのじゃ!」
 首をひと振りしたユーゴは、決心したように右手のフォークを高々と掲げると【サモニング・パティシエ】を発動させた。
「先生、お願いしますのじゃ!」
 その声に呼応するように現れた今回のパティシエさんは、バリバリの洋菓子職人であった。希代のスイーツ職人の霊(洋菓子)は不思議な力であっという間にまずミルヒの前にスッ……と「抹茶といちごのティラミス」を差し出した。
「わ、わぁ……緑とピンクの色合いが素敵です! ありがとうございます!」
 ちなみに味方が食べると体力が回復するミラクルフードである。
 次いでこれまた不思議な力でクリームパイを生み出したパティシエさんは、これでも喰らえと言わんばかりにそれをダンディーニ目がけて――投擲した。

 べちゃっ。

 ミルヒに供せられた抹茶といちごのティラミスに思わず見入っていたダンディーニ、完全に無防備だった顔面にクリームパイをクリーンヒットさせられてしまった。
(そのクリームパイは当たるとカロリーが爆増するのじゃ……ごめんなさいなのですじゃ……)
 パイがずるりと顔から落ちて、危惧していた通りのホラーな絵面が現れると、色々な意味で思わず涙目になるユーゴ。一方で、ふるふると身体を震わせるダンディーニ。

『ペロッ……これは、カロリーマシマシの味……! まともに食べていたら危ないところだったわっ! これはきっちりお礼をしてあげなきゃね☆』
「ギャーーーーーーッ!!?」
 クリームをひと拭いしただけの壮絶な顔をしたダンディーニに、思わず悪寒を感じ悲鳴をあげてしまうユーゴ。そして放たれる「魔法少女化洗脳光」!

『レッツ!メイクアアァァァァップ!!』
「み、ミルヒは仲間になんてなりませんからねー!?」
 野太いシャウトにビクッとしつつ、毅然と言い放つミルヒはかろうじて洗脳光を身をよじって回避する。しかしその直後にハッとなる。
(待って、後ろにはユーゴさんが……!)
 振り返ると、そこには洗脳光をガッツリ浴びてしまったユーゴさんの姿が。
「わしは料理人、わしはマンゴー少女……あれ???」
 シェフの姿はシャーマンズゴーストの体型に合わせたフリフリの黄色系魔法少女服に変貌し、しかし意識では「わしはシェフであり猟兵だ」と必死に己に強い暗示をかけるユーゴがそこには立っていた。すごい絵面だった。

『ウフフ……黄色担当ゲットね! 次はアナタを青担当の魔法少女にして、ひとまずピンクと青と黄色のセットを完成させるわっ! みなぎってきたっ!!』
「た、確かにミルヒもツインテールだけど、お揃いなんかじゃありませーんっ!! アイドルだけでまにあってまっす!!」
『そ、そこね……髪型が被るのはいけないわ! アナタの髪型は良い感じに変更してアゲルから安心なさいっ』
「そういう! 問題じゃ! なーいっ!!」
 近い将来の展望が見えたばかりになまじ張り切ってしまったダンディーニに対抗できる最後の希望となったミルヒは【エレクトロレギオン】を発動させ、機械兵器たちを大量に召喚する。その数実に80機、数の暴力である。

「照準は変態魔法少女(?)おじさん! 容赦はしません! 全機、全方面から攻撃っ!!」
 一撃で消滅こそすれ、強さはそこそこな機械兵器たち。それらが瞬時にダンディーニを取り囲むと、一斉にそれぞれの武装を一斉に開放し、遂にダンディーニの分厚い体躯を撃ち抜いたのだ。
『これは……魔法少女が、必殺技を発動する時の……何故か敵が無抵抗になるムーブ……そう……』
 魔法少女然とした衣装もボロボロになり、その場に膝をつくダンディーニは何かを悟ったようにつぶやく。

『ワタシが……悪役だったのね……』

 そして前のめりにズシイィィン……と音を立てて倒れると、キラキラと光を放ちながら徐々に消滅していった。

「アイドルになるのだって大変なんです、魔法少女になるなんてきっともっと大変ですよ! これに懲りたら、二度と復活なんてしないでくださいね!」
 最後の方の戦いぶりがほぼほぼ魔法少女だったことに気づかず、あくまでアイドル志望の少女ミルヒはダンディーニがいた場所に向けて念を押すように言う。

「ハッ、わしは……わしはシェフで……シェフで合っておりますですじゃー!!」
 自分の姿がしっかり普段通りのシェフスタイルに戻っていることに喜びを隠せないユーゴも、ダンディーニがいた場所を見やるとふとつぶやく。
「人を幸せにする手段はひとつだけではないのですじゃ……わしは、食で人を幸せにするシェフなのですじゃよ……」

 人を幸せにする方法は、それこそ人の数だけ存在する。戦うなり、守るなり、アイドルするなり、料理するなり、様々だ。それぞれが、夢と理想のために、日々を生きる。それは、誰かから強制されるものではなく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月01日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト