決戦、宿場町防衛戦線!~刀の記憶、慰霊に願いて~
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ここはサムライエンパイア。江戸情緒あふれるこの場所では、泰平の時を刻んでいる。
しかし、それはここ最近の事。
大きな戦がいくつも行われ、その痕跡は今なお、いたる所に見受けられる。
此度の舞台である宿場町。度重なる戦が落ち着いた今、どうなったかと言えば、かつての様相は見る影もなく、観光地として栄え、賑わいを見せている。
宿場町を訪れる者は、多くの戦死者を悼む者もあれば、平安な世の続くことを願う者もあった。
今日も観光客が多く訪れ、まるでおもちゃ箱をひっくり返したように人がごった返している。
「おい、あれはなんだ?」
観光客が声をあげた。
一人が指差す方には、人影がひとつ、ふたつ。突如現れ、やがてその数はどんどん増えていき、やがて大群となって現れた。
着物を着崩し、手には刀。眼は焦点が定まらず、ふらふらと歩む姿。さながら亡者のような佇まいに、気づいた観光客が様子を伺っている。
田畑や雑木林から突如湧いて出た大群に対し、観光客たちは離れた場所から、なんだなんだと騒ぎ立てている。
「ヤドリガミっぽいがあんなに集まってどうしようってんだ。田畑や雑木林の方でわらわらと」
「おい、あれ女の人があんなところに」
観光客が賑わい立つ中、そのうちの一人が女性の姿を見つけ、心配そうな声をあげる。
その心配をよそに、妖艶な女性は、口元に笑みを湛えつつ、ヤドリガミらに命令を下した。
「……さぁ、その刀剣に血を浴びせよ!!」
合図を待たず、飛び出したヤドリガミたちによって、宿場の町がかつてのように三度血に染まっていくのだった。
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「みなさん、事件デス!!」
鬼気迫る勢いのモッチ・モチ(ボス専門バスター・f09023)が予知を得て、駆け込んできた。
「場所はサムライエンパイア、情緒あふれる宿場町デス。ヤドリガミが大挙として現れて、観光客たちを襲うという予知をみなさんで食い止めて欲しいんデス」
「転移すると、まだヤドリガミたちが観光客を襲う前でしょう。急いで駆けつけ、観光客が襲われる前に食い止めてくだサイ。観光客はすぐに避難しますので、被害は出ないと思いマスガ」
「親玉も潜んでいると思われマスが、ヤドリガミをまずは優先でお願いしマス。ワタシの勘がそうした方が良いと言っていマスので」
「戦闘後は慰霊祭が行われる予定デス。この地は多くの人が眠っている場所デス。どうか供養していかれてはいかがでしょうか」
モッチは微笑みの中にやさしさと悼みとをにじませた表情を浮かべると、転移を開始するのだった。
オノマトP
オノマトPです。よろしくお願いします。
今回は、七転十五起マスターとのコラボ依頼となっています。
集団戦、ボス戦、慰霊祭という三章構成です。
敵を打ち倒し、観光地として賑わうかつての姿に戻してあげてください。
戦闘後は、慰霊祭となります。灯篭流しの形式となりますので、どうぞそちらのほうもご参加いただければと思います。
ではどうぞよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『模倣刀『偽村雨』』
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POW : 雹刃突
【呼び起こした寒気】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 怨呪流血斬
自身に【過去の被害者の怨念】をまとい、高速移動と【止血し難くなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 氷輪布陣
【氷柱】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を凍らせて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
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観光客多めの宿場町。少し離れた場所に田畑や雑木林を望むことができる。
そこに突如現れたるヤドリガミの団体さん。
オブリビオン、つまり過去存在である彼らは、過去に囚われたまま、今に蘇った存在。
「キヒヒ……血ィ……、血だぁ
…………、血が欲しいィ……」
「斬らせろ……、首だ、首を置いていけェ……」
物騒な台詞を吐きつつ、ぞろぞろと宿場町に近付いてくる。
(シャッ……チキッ)
手にした刀を鞘から抜き放つと、強く握った際の鍔鳴りが乾いた空気によく通った。
「皆殺しだァ……、皆、殺し、だァ……!」
隊列などない。バラバラの配置、されど目的地を同じとする軍勢が歩みを進める。
(ザッ!!)
「……ッ!」
足が地面にこすれる音をさせつつ、土埃をあげて現れた猟兵たち。それに気づいたヤドリガミたちが一層、狂気に満ちた雰囲気を醸し出す。
両者、互いににらみ合い。
そして、張り詰める空気。
いざ、合戦の時!
宴・段三郎
……来おったか、これもまた宿業かの。
【目的】
全、偽村雨の救出と鍛刀
偽村雨たちを一振りの妖刀へと鍛刀する
【行動】
可哀想に…またかような急造の姿でヤドリガミになったようじゃな
で、あるならば
刀鍛冶の儂が救う他なかろう
怨嗟、憎恨、呪いの詰まった…立派な一振りの妖刀への?
今回使う妖刀は『化生炉』
儂の大事な鍛治道具じゃ
まずは【範囲攻撃】、【吹き飛ばし】、【気絶攻撃】を用いて敵の力を削ぎ落とす
攻撃に関しては【残像】で回避
大体の偽村雨が弱ってきたらユーベルコード【屍山血河】で全ての偽村雨を一振りの極悪な妖刀へと鍛刀する。
『…無象鍛刀』
できた妖刀は次の闘いにでも使うかの。もしできたらじゃが。
号はmsにお任せ
『血ィ……』
模擬刀『偽村雨』、それがヤドリガミたちの本体である。
合戦場で、己が身を振るった持ち主の魂がそうさせるのだろうか、彼らは総じて血に飢えていた。
「……来おったか、これもまた宿業かの」
宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)は、田畑を見渡せる場所に降り立つと、刀たちを思って憂いた。
「可哀想に……またかような急造の姿でヤドリガミになったようじゃな」
オブリビオンという形で過去から蘇った、血に飢えたヤドリガミたちに目をやりつつ、段三郎は帯刀していた妖刀が一振りを鞘から引き抜いた。大太刀の妖刀、号を『化生炉』といった。
『敵ィ……血ィ……ッ!』
ヤドリガミの集団が段三郎を察知すると、斬りかからんと詰め寄ってくる。
キィーンと空気が冷えていくのを感じる。これもヤドリガミが用いた力によるものだろうか。空気から熱が奪われ、霧が薄くあたりを包む。
「小細工を……」
段三郎は、手にした大太刀を、その小さな体躯で操ると横薙ぎに振るう。
(ブワン…ッ!!)
火炉と大槌の役割を持つ大太刀が、音を立てて振るわれると、熱気とともに、近寄る敵を纏めて吹き飛ばす。
『グァ
……!?』
「刀鍛冶の儂が救う他なかろう。怨嗟、憎恨、呪いの詰まった……立派な一振りの妖刀への?」
段三郎が薙ぎ振るう幾太刀もの斬撃が、ヤドリガミたちの接近を許すことはなく、一見不相応にも見える大きな刀を体重移動を駆使し、巧みに振るう。
『グォ……オオ……』
大太刀の重い連撃に手傷を負うヤドリガミたち。
「頃合いかの」
段三郎は、ユーベルコード【屍山血河】を用いて、偽村雨を一振りの妖刀にせんとする。
「……無象鍛刀」
段三郎は鍛刀せんと、妖刀『化生炉』でもって周囲のヤドリガミを鍛え始めた。
易々と。軽々に。異様さを孕みながら。
集まる。
周囲から、さらにその周りからもヤドリガミが集まる。
『…………』
無言。
集まりが加速する。
蒐集が際限なく速さを増す。
不気味。
無言となったヤドリガミたちがむしろ自分から走りこんでくる勢いで。
まだ終わらない。
火炉と大槌の妖刀でもって、鍛え続ける。
まだ終わらない。
一度に何本の刀を鍛えたのか。
ぞくぞくと集まるオブリビオンの群れ。
集まる様はまるで無限に沸くバグのように。
まだ終わらない。
まだ終わらない。
まだ終わらない。
段三郎の周囲、50メートルから完全にオブリビオンの影はなくなった。
(号『動かじの超斬馬刀』ーー巨大な斬馬刀。怨嗟、憎恨、そして何よりもオブリビオンの「染み出した過去で世界を埋め尽くす」という呪いが込められた呪刀)
成功
🔵🔵🔴
アト・タウィル
ふむ、妖刀達の辻斬りといったところですか
なかなか困ったものです
では私は、手元のフルートで皆さんを支援していきましょう
凶刃へ、人の狂気を見せつけてあげましょうか
……聞いた人には、少し夢見の悪い光景が重なるでしょうが、それは目をつぶってもらいましょう
氷柱が当たっても気にせずに、演奏を続けます
その程度で止められると思わないでくださいね?
朧・紅
表人格のお嬢様が《紅》
裏人格の殺人鬼が《朧》
武器はロープと刃だけのギロチン刃
自身の血で赤く染め蛇のように自由に動かします
紅は挨拶代りにギロチン刃を打ち込んで足止めするです
ストーップなのです!これ以上近寄ると…危険だぜェ?
瞬きすればその瞳には殺人鬼の狂気の嗤い
朧とスイッチして楽しく暴れさせてもらうゼ
攻撃は【第六感】で回避
血が流れればすべて武器へ注ぎ強化
【範囲攻撃】で数を減らす
避ける脳のある奴らにャ
複数のギロチン刃を雑多に打ち込み回避させ
敵の意識から外れたタイミングで打ち込んだギロチン刃のロープを【ロープワーク】で四肢に絡ませ拘束
手持ちの刃で全員綺麗に首を削ぐぜェ
さァ次はドイツだァ?
アドリブ歓迎
「ふむ、妖刀達の辻斬りといったところですか。なかなか困ったものです」
アト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)は、戦場を見渡しながら、眼前のヤドリガミたちの振舞いに感想を漏らす。
『血ィ……、足りぬ……』
田畑や雑木林の方から、宿場町の方へと歩みを進める軍勢は、判断力を有している風には見えない。
「ふふ……まるで凶刃ですね。凶刃には、人の狂気を見せつけてあげましょうか」
アトは、奇妙に捻じれた横笛(フルート)を手にすると、口元まで運び、構える。閉じられた双眸がゆっくりと開かれると、吐き出された息が、捻じれた空洞を通って音色へと変換されていく。
(~~~~♪♪)
明るい曲調。しかし、どこか不安定で、どこか心をかき乱す旋律。耳に届く者に、本能に語り掛けるかのような狂気と捻転の調べが、猟兵達に実力以上の力を引き出させた。
「……聞いた人には、少し夢見の悪い光景が重なるでしょうが、それは目をつぶってもらいましょう」
『くたばれェ……!』
ヤドリガミによって氷柱が降り注ぐ中、アトはなおも演奏を続ける。
降り注ぐ氷柱は、やがてアトの移動範囲を狭めていく。
足元は氷が張り、つるつると滑り、移動が困難となっていく。
それでもアトは演奏をやめない。捻じれた【狂気の行進曲(インサニティ・マーチ)】による支援しつつ、敵を見据える。
たとえ困難な状況でも、易々と止まりはしない。
深く深く、淀みなく淀んでいるかのように深い、その漆黒の瞳を真っ直ぐに向け、その笛の名が如く、「門番(Guardian of the Gate)」のように後方にて支援を続けるのだった。
紅「ストーップなのです!これ以上近寄ると……」
(ヒュ……パキンッ!!……ズシャ!!)
『ッ
……!?』
朧「……危険だぜェ?」
近付こうとするヤドリガミに向かって、何者かによってギロチンの刃が投げられた。それは、アトのまわりに突き刺さる氷柱の一本を叩き割ると、勢いが殺されることなく、そのまま貫通し、ヤドリガミの足元に突き刺さった。
正面の氷柱がなくなったことにより、アトの視界が開ける。何者かとアトが視線を上げると、ギロチンを投擲した持ち主、朧・紅(朧と紅・f01176)と視線が交錯する。
多重人格者である彼女は、《紅》と《朧》の人格がひとつの体に入っており、表と裏のように入れ替わる。
--動きやすくなった、ありがとう。
--お安い御用なのです。
アトと紅。二人の視線が交わったのは一瞬のことだったが、互いにそんな会話をしたように感じた。
共感を得た者に影響を与えるアトのユーベルコードが、目を合わせたことで強く相手に効果が出たのだろうか。
殺人鬼である朧は、いつもよりもさらに気分良く狂気の嗤う。
朧「っひヒ」
敵陣の中に走りこむと、防御など捨てて、攻め入った。
ロープ端を手に、ギロチン刃を操れば、たちまち戦場を血に染めた。複数のヤドリガミの部位が分かれ、そしてそれは二度と戻ることのない別れとなって散りゆく。
手数の多い敵の斬撃に、傷を受けたとしても、朧は愉し気に嗤う。
手傷を受けた場所から流れる血液を親指で掬い取ると、手にするロープにズビッと一筆書きのように塗り付けた。血で強化されたギロチンは、さらに凶悪にその切れ味を増していく。
朧「今、バラしてやんよ…真っ赤に咲け!」
複製された複数の斬首刃(ギロチン)が次々と敵を襲う。【紅朧月(クレナイオボロヅキ)】。
朧「避ける脳のある奴らにャ……」
朧は、避けられた刃に付随するロープを蛇のように操ると、敵の意識の外から襲わせ、四肢を縛り上げた。
『何っ……!? グゥ……ッ』
朧は手持ちの刃を構えると、息を止めて駆ける。
朧「ッ!!」
敵の中を身を低くし縫うように動く。一瞬に過ぎ去る風が如く。
(ザシュ
……!!)
『ガハッ……ッ!?』
殺人鬼が通ったあとには、転がる髑髏(しゃれこうべ)、そして、立ったまま曼珠沙華(ひがんばな)のように首から血を噴く、亡骸のみだった。
朧「さァ次はドイツだァ?」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月舘・夜彦
八刀丸殿(f00181)と参加
同じヤドリガミとして人を襲うのは嘆かわしいものですね……
同胞の暴挙を止めるのも同じ者の務めでもありましょう
八刀丸殿と共に戦うのは初めてですが剣士として興味がございます
お手並み拝見と致しましょう
駆け出し、先制攻撃にて抜刀術『風斬』
攻撃力優先併せ2回攻撃、ただし攻撃が躱され易い場合は命中率優先
敵からの攻撃は残像・見切りより躱して斬り返し
八刀丸殿が狙われている際は間に入り、武器受けにて防御
氷柱は武器落としより斬り払い対処を
奴の呪いは厄介ですが、元よりこの身は仮初
血が止まらぬだけで此の手が鈍るはずも無し
私も、負けてはいられませんからね
百地・八刀丸
月舘・夜彦(f01521)殿と共に
大量虐殺のう。刀は確かに人斬り用のモノではあるが……
弱きをただ斬り伏せるに使うとは、刀が泣きよるぞ
刀とは強き敵、己が仇を討ち、そして守る為、救う為に振るう魂の形よ
夜彦殿には思うところもござろう。共に戦わせて貰おう
さて、ワシはこの両脇にある白鞘の小太刀二刀を使おうか
多数を相手にするなればこれが最も適しておる
年寄りの冷や水と侮るなよ。この数多の残像、攻防一体の疾さの剣よ
夜彦殿の攻撃から逃れた者を追撃する形を取り、数を確実に減らそうではないか
寒気などはその場に留まらねば良い。動き続ければ身体も温まろうよ
背中は任せい夜彦殿。御主の二之太刀、この八刀丸が引き受けたわ
月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)自身も竜胆(リンドウ)の簪(かんざし)のヤドリガミであり、敵のオブリビオンたちを目にし、その姿や振る舞いを憂いた。
「同じヤドリガミとして人を襲うのは嘆かわしいものですね……」
それを聞いた百地・八刀丸(またの名を七刃斎・f00181)は頷きながら同意する。
「刀は確かに人斬り用のモノではあるが……、弱きをただ斬り伏せるに使うとは、刀が泣きよるぞ」
やれやれと顔を横に振りながら、八刀丸は腰の刀に手を置く。愛刀を同じようにはせぬと思いながら。
その横で夜彦は、凛々しくも力強いその瞳で敵を見据えたながら、口を開いた。
「同胞の暴挙を止めるのも同じ者の務めでもありましょう」
彼の覚悟に八刀丸も大きく頷く。
「刀とは強き敵、己が仇を討ち、そして守る為、救う為に振るう魂の形よ。夜彦殿、共に戦わせて貰おう」
八刀丸が夜彦の肩に手を乗せ、そう告げる。
夜彦も、心強い味方を得て、これから赴く戦場への活力が一層湧きあがった。
「八刀丸殿と共に戦うのは初めてですが剣士として興味がございます。お手並み拝見と致しましょう」
(ダッ!)
二人は地を蹴り、共に颯爽と前に出る。わざわざ息を合わせようとする必要もない。二人には、心に武士道という共通の精神を宿しているのだから。
「「いざ!! 尋常に!!」」
ヤドリガミたちが宿場町に接近する中、まず先制で攻撃を試みるのは夜彦だった。
(チキッ!)
月光を思わせる曇りなき刃を鞘走らせる。【抜刀術『風斬』】。
敵の動きが遅く見えるほどの抜刀で、敵を斬り伏せると、敵が一太刀入れようとする時には、夜彦はすでに二太刀入れ終わっているほどの速さだった。
八刀丸は、寄る敵を二刀の白鞘の小太刀でもって、捌き、斬り、振るう。
その巨躯にそぐわぬ疾さでもって、敵を翻弄すれば、敵はいともたやすく倒れていく。
「年寄りの冷や水と侮るなよ」
攻防一体の隙の無い動きで、敵は次々と減らしていく。
『グゥ……、まだだ……』
ヤドリガミが斬撃のほかに冷気による攻撃を加えてきた。
「寒気などはその場に留まらねば良い。動き続ければ身体も温まろうよ」
夜彦の背後に迫る敵に八刀丸が、間髪入れずに刀を振るう。
『ッ!!』
「背中は任せい夜彦殿。御主の二之太刀、この八刀丸が引き受けたわ」
その直後、複数の敵を相手にする中で、生まれた死角から、ヤドリガミが一太刀入れようと八刀丸に斬りかかった。
(キンッ!)
金属同士が衝突する小気味よい音が弾けた。
夜彦が敵と八刀丸の間に割って入り、鍔迫り合う。
(ザシュ!)
『グァ……ッ!』
すかさず、八刀丸が敵の胴を斬り抜ける。
「私も、負けてはいられませんからね」
互いに背中を合わせ、呼吸を整えると、信頼という名の武器を存分に発揮し、二人は止まることなく戦場をひた走るのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティモシー・レンツ
ヤドリガミってオブリビオンになるの……?
もしかして僕も、本体の占いカード……じゃなかった水晶が壊されると、オブリビオンになる……?
あと、死相が見えた気がするけど、オブリビオンだからある意味もう死んでるよね……。
色々と疑問は残るけど、戦闘が……一般人の安全確保が優先だよね!
トリニティ・エンハンスで自己強化しつつ、剣で斬るよ!
……UDCに呪文あったよね、確か「炎マシマシ氷少なめ」?
冷気対策に炎の魔力をぶつけつつ、その分水の魔力は減らして、風の魔力は……増減なしでいいよね?
戦闘での相性見つつ、水から風に割り振ったり、炎全力にしたり、調整はしてみる。
倒したオブリビオンから、刀の借りパクはできるかな?
「ヤドリガミってオブリビオンになるの……? もしかして僕も、本体の占いカード……じゃなかった水晶が壊されると、オブリビオンになる……?」
ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)はヤドリガミである。好奇心が強く質問が次から次へと沸いてくる。
彼の質問に答えるなら、オブリビオンは過去存在なので、ヤドリガミもオブリビオンになることはある。また、彼の水晶が壊された場合だが、猟兵がオブリビオンになるかどうかは前例がなく、不明だ。しかし、オブリビオンとなる可能性はある、かもしれない。
「あと、死相が見えた気がするけど、オブリビオンだからある意味もう死んでるよね……」
得意の占いを披露しようとしたが、失敗に終わってしまった。残念だが仕方ない。
そう、お察しの通りだ。彼、ティモシー・レンツは、”ポンコツ”なのである。
「色々と疑問は残るけど、戦闘が……一般人の安全確保が優先だよね!」
本来の本分を思い出したレンツ。
そう、猟兵はオブリビオンを倒し、人々と世界の未来を守る。それが一番大事だ。
レンツは精霊属性を宿したルーンソードを手にすると、自身に魔力を込め強化を試みる。
魔力が最高潮に高まったところで、そう! 起動句を詠唱だ!
「ええっと……炎マシマシ氷少なめ!」
こってりとした呪文を唱えつつ、だが、しっかり効果は得られたようだ。彼の周りに炎の魔力がたっぷりと包み、水の魔力は少なめで、風の魔力は並盛となって覆っている。心なしか彼を覆う魔力もどこかこってりしてそうな気がする。
戦闘はと言えば、彼はポンコツだが、しっかり有利な属性で戦えている。まったくの戦闘の素人という訳ではないようだ。彼をあなどってはならない。彼のようなタイプを人は、時に「隠し玉」とか「奥の手」と言ったり言わなかったりするのだ。
『ぐわあああああああ!?』
ヤドリガミの断末魔が戦場に響いた。
属性を駆使して戦った成果だろう。無事敵を撃破することができた。
「そういえば、倒したオブリビオンから、刀の借りパクはできるかな?」
レンツは転がっている刀に手を拾い上げた。
使い勝手の良さそうな、使い込まれた日本刀だ。
これは良い手土産ができたとご機嫌のレンツ。
刀を手に、歩き出そうとした時だ。
彼は忘れていた。ヤドリガミというのは本体が器物であり、人体は何度でも生み出すことができるということを。
『(ガシッと手を掴む音)かぁえぇせぇ~~~~……』
「うわああああああああああああ
!?!?」
成功
🔵🔵🔴
逢坂・理彦
刀のヤドリガミか…知り合いにヤドリガミさんが多いからちょっと複雑だけど…だからこそ止めないとね。
避難が無事済んでたらいいんだけど避難が間に合わなくて襲われている人がいたら【かばう】よ。
薙刀で斬り込み【なぎ払い】に【破魔】の力をのせる。
積極的に【武器落とし】を狙っていくよ。
【聞き耳】でしっかり音を聞きつつ攻撃はしっかりかわしていこう。
数も多いから【破魔】の力を込めてUC【墨染桜・桜吹雪】で一気に攻撃。
アドリブ連携歓迎です。
鹿村・トーゴ
おいおい
戦場の折れ刀が怨霊にでも操られてんのか?
いくら因縁ある土地だからって宿場町で惨劇なんかやらかすなよ
慰霊祭やろうって時にさぁ…
お前らの為かもしれねーってのに
町の連中でもし逃げ遅れたやつらがいたら時間稼ぎして逃がすよ/かばう
連中は氷使いか?
援護射撃的に、余裕があればサイキックブラストで封じて確実に仕留めてくが
次から次へと相手が来るなら降魔化身法で力を引き上げて一気に散らす気で行くぜ
まーオレの相手出来る範囲だけど
血を代償にミサキの幽鬼を呼ぶ
…敵さんとやってる事似てるようでヤな気もすっけどな!
まーオレも所詮鬼の子
暴れてイイならお言葉に甘えて、ってな
あ、建物はなるべく気ィつけるし
水心子・静柄
こんなに刀のヤドリガミを集めるなんて凄いわね。数打ち品かしら?それともあの妖艶な女が錬成カミヤドリみたいな事をやっているのかしらね?まぁどうでもいいけど。
刀は人を斬るもの…だけど無抵抗な相手を殺す為なら刀である必要はないわ、鈍器で十分よ。こんな事に使われて産みの親(刀匠)は嘆いているわ。それとも嬉々としている外道なのかしらね?何にしても私の親からしたら許せない行為ね。
さて居合の構えで間合いを測りつつ待ちの構えとみせかけるど奇をてらって射合で居合の間合いの外の相手を一斉攻撃するわよ。問答無用で全てを叩き壊してやるわ!
逢坂・理彦(妖狐の妖剣士・f01492)、鹿村・トーゴ(鄙村の忍者見習い・f14519)、水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)の三名は、観光客がまだいる宿場町付近で、警戒を強めていた。
「刀のヤドリガミか……、知り合いにヤドリガミさんが多いからちょっと複雑だけど……、だからこそ止めないとね」
そう言いながら、理彦はもふもふの尻尾を揺らしながら呟く。複雑な気持ちで迷いが生じることがあってはならない。絶対に止める、理彦はそう決意を強めた。
観光客も見境なく敵に狙われている。避難が無事済んでいたらいいが、避難が間に合っていなかった場合は、かばってでも止めるつもりだ。
同じく観光客を気遣っていたトーゴも声に出す。
「町の連中でもし逃げ遅れたやつらがいたら時間稼ぎして逃がすよ」
トーゴも、町の人たちのことを思い、意気込みを新たにしていた。
「いくら因縁ある土地だからって宿場町で惨劇なんかやらかすなよ。慰霊祭やろうって時にさぁ……、お前らの為かもしれねーってのに」
ヤドリガミたちの行動に悲しさの混じった声を漏らしながら、トーゴは拳を強く握りこんだ。
その横で、静柄は別の感想を漏らしていた。
「こんなに刀のヤドリガミを集めるなんて凄いわね。数打ち品かしら? それともあの妖艶な女が錬成カミヤドリみたいな事をやっているのかしらね? まぁどうでもいいけど」
目の前にいるヤドリガミたちの品定めをしながら、静柄は、無抵抗な相手を斬ろうとする刀のヤドリガミに憤りを感じる。脇差のヤドリガミである静柄とオブリビオンたちには、同じ刀という共通点がある。ゆえに許せない。
三名はそれぞれの想いを胸に、臨戦態勢に入った。それぞれ武器を抜くと身構え、敵と対峙する。
敵は多数。
油断すればすぐに囲まれ不利となるだろう。
「うわああああああああああ!?」
「「「!?」」」
後方から聞こえた男の叫び声に3人が驚き振り返った。見ると、逃げ遅れた人が今にもヤドリガミに襲われそうになっている。
『寄越せ……、その首寄越せ……』
ヤドリガミは低い声で唱えるように呟きながら、手にする日本刀を振り上げ、
振り下ろした。
(キン!)
小気味よい鉄がぶつかる金属音が響く。理彦が割って入り、薙刀で受け、トーゴが【降魔化身法】で自身を強化し、素早く観光客を下がらせる。二人の体は咄嗟に動いていた。
隙だらけとなっているヤドリガミの脇腹に、静柄の居合が、いや、【射合(いあい)】が放たれる。
『ぐふぁ!?』
攻撃を受けたヤドリガミは塵と消えていく。
「危ないところだった。早く避難した方がいい」
「は、はい!」
理彦の言葉に観光客はすぐさま安全なところへと離れていった。
観光客の安全を確認すると、3人は向き直る。敵は猟兵達の活躍でそう多くはないと思われる。
血を代償にミサキの幽鬼を降ろしつつ、トーゴが口を開いた。
「敵さんとやってる事似てるようでヤな気もすっけど、まーオレも所詮鬼の子。暴れてイイならお言葉に甘えて、ってな」
一気に前に走りだす。
それを見た理彦も、薙刀の形状を桜の花びらへと変化させ、数の不利を補うべく、ユーベルコード【墨染桜・桜吹雪(スミゾメザクラ・サクラフブキ)】を放つ。
近付いてくる敵の接近を許すまいとするのは静柄。すぐさま構えをとる。
「問答無用で全てを叩き壊してやるわ!」
広い範囲に射合の放ち、敵を屠る。
『グワアアアアアアア!?』
宿場町にヤドリガミの断末魔が、冷えた空気に遠く、遠く、響くのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『辻斬り『花簪のおりょう』』
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POW : 血染め狂い
【妖刀・血染め雲による斬撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 紅時雨
自身が装備する【自分の本体である妖刀】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 奥義・鬼血解放
自身に【妖刀が吸ってきた鬼の血の呪詛】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
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「やはり、一山幾らの模造刀では一般人はおろか猟兵たちも斬れないのだな」
聞き入ってしまいそうなほどよく通る声。甘美で妖艶な色を孕んだその声は、どこか闇をも抱いているように聞こえる。
手にする太刀からは、禍々しい負の力が、猟兵達にはありありと感じられる。
「ふふふ、やはり隠し切れぬか。ならば名乗ろう。妾は妖刀・血染め雲のヤドリガミ、辻斬り『花簪のおりょう』である」
鞘に舌を這わせ、艶めかしくこちらを見やるおりょう。まるで猟兵達を品定めするかのように、舐めまわすかのように視線を送ってくる。
「妾の本体は、鬼の血を啜ってきた妖刀。この刀身に血を浴びせる事こそ至上の命題である。まずは貴様等の血で我が本体を血で濡らすとしよう!」
刀身を鞘走らせると、白刃が姿を現す。
ここで止めなければ、おりょうは観光客へと標的を移すだろう。
それだけはさせない。
猟兵達は戦場へと躍り出た。
宴・段三郎
妖刀が血を欲するのは道理。
妖刀が怨嗟、憎恨、呪いを含むのもまた道理。
別におんしに罪はない。
故におんしは救わねばならない
【目的】
敵妖刀のお手入れと拵え作り
【行動】
この妖刀、ふむ、可哀想にのう…
まずはお手入れをしよう。
我が妖刀、『断切線香-小糸-』と『極楽』を用いての。
まずは二刀流で【吹き飛ばし】、【気絶攻撃】を用いて敵の力を削ぎ落とし、『極楽』をもってお手入れをしようかの。
鬼の血を、少しでも拭うためにの
そして妖刀『戎』の【生命力吸収】でおんしの業を貰い受け、
最後は妖刀『化生炉』でユーベルコード【地国炉開闢】を発動しようかの
「妖刀が血を欲するのは道理」
『ふふふ、そうね、血が欲しいわ、あなたの血とっても美味しそう』
「妖刀が怨嗟、憎恨、呪いを含むのもまた道理」
『そうね、あまりに存外に扱われた憎しみは消えることはないわね』
「別におんしに罪はない」
『それは私も同感ね』
「故におんしは救わねばならない」
「そうね、”あなたの血を見れば”、救われるかもしれないわね」
一連のやり取りの後、互いに相容れぬと悟るや、段三郎は〈手入れ〉をせんと前に出た。
妖刀『断切線香-小糸-』と『極楽』を抜き、左右の手で構える。
『ふふふ、二本で足りるのかしら』
【紅時雨】。おりょうは、自身の本体である妖刀を複製、それらを空中に漂わせた。本数は不明瞭、かなりの数がある。
段三郎は敵の攻撃が集中しないよう、移動しながら雨のように刺さる妖刀の雨を時には回避し、時には刀ではじき返す。複製は本物に比べて脆いのか、打ち弾いたそばから、砕けて散っていく。
(キンキンッ!)
打ちあわされる刀と刀。響く金属音が冷えた空気によく通った。
複製の数が減れば当然の攻撃の手がゆるむ。すぐさま段三郎は敵の懐に入り込むと、妖刀『戎』を手に、おりょうとの鍔競り合いへと持ち込んだ。
『ぐっ、力が……っ』
「おんしの業を貰い受ける」
妖刀から妖刀へ、生命力が移りゆくのを感じ、おりょうが危機感を覚え、後ろへと飛びのいた。若干の焦りの顔。刀と鍛冶師、相性の差が出たか。
段三郎は追撃の手を緩めず、さらに【地国炉開闢(チノクニホドノカイビャク)】を放つ。
妖刀『化生炉』から、刀を鍛えんとする意思のあるかのように炎が放射され、凄まじい熱量が辺り一帯を支配する。
おりょうがさらに距離を取ろうとするも追いつかず、着物は焼け焦げ、左半身を焼く結果となった。
『接近戦は分が悪そうね……っ』
おりょうは、体に受けた傷をたちまち、ヤドリガミの特性で体を作り替えて治すも、ダメージは引き継いでいるらしく、顔は険しく歪んだまま、憎ましく段三郎を睨んだ。
「鬼の血、さらに拭わねばな」
段三郎は、拵え作りに勤(いそ)しまんと、携えたる妖刀を手に鍛冶師の腕を振るうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ティモシー・レンツ
刀を相手にカードで勝てる気はしないし、しょうがないからトリニティ・エンハンスで自己強化して斬ろうかな……(石と紙と刃物の三すくみを思い浮かべてる)
あと、サムライエンパイアにも呪文はあったはずだし。
えっと、たしか……ジュゲムジュゲム、五劫の擦り切れ、(長いのでプレイング省略します)長久命の長助!
……って、切った張ったが終わって間合い外れてから唱え終わっちゃったよ……。(呪文関係なしに自己強化してても自覚なし)
しょうがないから、もう1回詠唱を……炎マシマシ風硬め!(UDCの呪文に戻った)
オブリビオンである「辻斬り『花簪のおりょう』」と、猟兵達の戦いは激化の一途を辿っていた。
剣戟の打(ぶ)ち合う甲高い音が、幾度も、幾度も繰り返し聞こえてくる。
レンツは、敵との距離を取り、一計を案じていた。
「刀を相手にカードで勝てる気はしないし、しょうがないからトリニティ・エンハンスで自己強化して斬ろうかな……」
脳内で、じゃんけんの三竦(さんすく)みを想像しながら、刃物→紙の力関係に気分が落ちる。
「そうそう。あと、サムライエンパイアにも呪文はあったはずだし」
集団戦闘時には、UDCアースの呪文を用いたが、サムライエンパイアで用いられる呪文にも興味があった。そう、彼はポンコツと思われがちだが、好奇心旺盛なのだ。
「えっと、たしか……ジュゲムジュゲム、五劫の擦り切れ、海砂利水魚、の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助!」
すごい記憶力を発揮し、落語で有名な寿限無の登場人物である子供の名前を、全部言い切ったレンツ。ポンコツとあなどるなかれ、彼はできる子なのだ。
「……って、切った張ったが終わって間合い外れてから唱え終わっちゃったよ……」
呪文を唱えている間に、敵との距離がすっかり開いてしまっていた。
しかし、彼は気づかない。自己強化のユーベルコードなので射程は必要ないということに。しかも、本人の気付かぬうちに、すでに自己強化も完了しているということに。
「しょうがないから、もう1回詠唱を……炎マシマシ風硬め!」
彼は同じ轍は踏まない。再度唱えた呪文は、先ほどの反省を活かし、こってり系の短い呪文に変更していた。
『いたな、猟兵……、お前の血を私の妖刀に吸わせてもらおうか』
「!?!?」
素早く距離を詰めていたおりょうに、レンツは慌てふためき、声にならない悲鳴をあげた。彼にとって意図しない突然の接近であった。
おりょうはすぐさま妖刀『血染め雲』による斬撃を繰り出すが、強化されたレンツの動きを捉えることは出来ず、刀が空を切る。
レンツは慌ててしまって反撃することは出来ず、避けるので精いっぱい。しかし、それは味方への攻撃が止んでいることと同義。実際、時間稼ぎにもなるし、おりょうの隙を作ることにも繋がる。戦況にいい効果をもたらしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
逢坂・理彦
あれが親玉か。
意図的に人の多い場所を選んだようだから質が悪いね。
配下にヤドリガミを使ったのも正直気に食わない。ちゃんと懲らしめておかないとね。
【破魔】の力をこめて【なぎ払い】
【フェイント】を交えたり【殺気】を放ち敵の動きを見る。
【聞き耳】でしっかり音を聞きつつ【第六感】で攻撃を回避。
刀の数を増やしたら【破魔】をこめUC【狐火・椿】で刀を攻撃して落とす。
アドリブ連携歓迎です。
『血が足りぬな。まだまだ吸い足りぬ。刀は乾ききっておるわ』
おりょうが、血を求めて刀を振るう。ゆらり、ゆらりと、妖しく艶やかに。
「あれが親玉か」
理彦はおりょうを見るは、苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「意図的に人の多い場所を選んだようだから質が悪いね。血を求めてのことだろうが。配下にヤドリガミを使ったのも正直気に食わない」
理彦の脳裏に、仲間のヤドリガミたちの顔が思い浮かぶ。気のいい彼ら彼女らと、同じ括りで考えること自体憚(はばか)られた。それ程の嫌悪を抱く敵だった。
「ちゃんと懲らしめておかないとね」
理彦は抜刀しつつ、おりょうとの距離を詰めるべく、飛ぶように駆ける。
先手必勝。理彦は力を籠めつつ接近し、打刀・蒼丸で斬りかかった。
「あら、かわいい狐さん。ごめんなさい、油揚げは持ってないの」
おりょうは、鬼の血の力を開放し、素早く攻撃を躱しつつ、そう軽口を叩く。
「狐さんにこれは避けられるかしら?」
続け様に、おりょうが理彦に斬撃による衝撃波を見舞う。
斬撃が鋭く空気を裂き飛来する。
(びゅっ!)
「…ッ!」
息もつかせぬ攻防。
理彦は音で斬撃との距離を測り、持ち前のスキルでもって、回避。
尻尾の毛を少し、削られたような気もしたが怪我はしていない。
「あ……」
尻尾のもふもふに傷がついたことに、言いようのない感情が胸中を支配する。
それは敵意となり、おりょうへと向けられた。
(ボッ……ッ)
【狐火・椿】、彼の気持ちと呼応するかのように、火力が上がり、無数の狐火を生んだ。
「ぽとり、ぽとりと椿のように」
はらり、はらりと散った尻尾の毛の無念も乗せて、おりょうに狐火を放つ。
鬼の血の力で高速移動を行うも、手数により逃げ場を失ったおりょうは、次第に追い詰められていく。
刀で受け、かわし、避けていたが、それも限界がきた。
『ぐっ、あっつっ、きゃあああ!?』
焼かれるダメージに悲鳴をあげつつ、おりょうは、猟兵達から距離をとり、体勢を立て直す。
田畑広がる光景の中、硝煙の薫りが漂う。
猟兵達に優勢のまま、戦いは苛烈を極めていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朧・紅
朧のみで行動
へェ?同じ能力たァ奇遇じゃねェか。いいぜ、俺と殺ろうぜェ?
紅朧月で真っ向からガチ勝負するぜェ!
全ての妖刀にギロチン刃をぶつけ続けてねじ伏せる
個数足りなけりゃロープで絡め!
それでも足りなきゃ避けりゃイイ!
っラァ!遅せェぞ!
操るすべての刃は精密に刀の一点を穿ち負荷をかけておくぜ
その妖刀は…「てめェ」なんだろォ?
仮に撃ち負けその身が刻まれたとしても心躍る強敵に嗤いが止まらねェ
クッソ楽しいじゃねェか
もッとだ、もっと楽しませやがれ!
田畑と雑木林が望む宿場町。冷気吹きすさぶ中、見合うはヤドリガミと殺人鬼。
『なかなかどうして、猟兵というのは手強い連中ね。これならどう?』
おりょうがそういうと、彼女の本体である妖刀を構えた。そのまま妖力を高め始めると、彼女の周囲にどす黒いオーラで纏われていく。
『ハッ!』
気合を込めた発声が合図となり、彼女の背後に何本もの刀、それも彼女本体である妖刀の複製が現れた。抜き身の刀が妖しく光りを放ち、空中で留まっている。
「へェ? 同じ能力たァ奇遇じゃねェか。いいぜ、俺と殺ろうぜェ?」
【紅朧月】。朧は宣言通り、背後に無数に出現させる。刀……、いいや、刃を。それも特徴的な形状の、そう、あれは斬首刑に使われるギロチンの刃。
ギラリと鈍く陽光を受け煌めく刃は、今か今かと空中で停止している。持ち主の気質が乗り移ったかのように、刃自体に斬り刻みたい衝動でもあるのだろうか、ギチギチとかすかに振動している。
『同系統の力。ふっ面白い。相手になりましょう』
おりょうが念じると、刀の切っ先が一斉に真っ直ぐ正面に向く。
朧が念じると、ギロチンの刃の切っ先が一斉に真っ直ぐ正面に向く。
『ッ!!』「ッ!!」
放たれる両者の刀と刃。
それぞれが意思を持っているかのようにバラバラに動き、バラバラに敵を狙う。
いたる所で、キンキンと金属音が鳴り響き、火花を散らす。
均衡をはじめに破ったのは朧だった。全ての妖刀に刃をぶつけてねじ伏せる。
「っラァ!! 遅せェぞ!!」
本数では劣る。が、斬首刃に括られたロープで妖刀の柄を絡めとり、朧に向かい飛来する刃は野生を思わせる動きで回避する。そうすることで埋めた本数の差。それはやがて如実に結果として現れる。
『ぐぅ、貴様、本体にっ!?』
次々とおりょうを狙うギロチンを、妖刀で受けるも、朧は正確に同じ場所を立て続けに狙っていた。ただ一点。繰り返し受ける負荷に、おりょうもたじろぐ。
「その妖刀は…「てめェ」なんだろォ? なら、やべェよなァ?」
おりょうの攻撃が全く通っていない訳ではない。朧の頬を、服を、脚を、おりょうの刀が斬りつけている。が、朧に怯む様子は微塵もなく、むしろ昂ぶり、狂気が増していく。
「クッソ楽しいじゃねェか、もッとだ、もっと楽しませやがれ!」
『グッ……ッ!?』
愉し気に躍る刃の舞い。陽気とも陰気とも取れる嗤い声。
鮮血とともに刀傷をその身に刻みながら、打ち当たる金属音を響かせる。
戦場で踊る殺人鬼はもう止まらない。
大成功
🔵🔵🔵
百地・八刀丸
月舘・夜彦(f01521)殿と共に
これはまた妖しいとの言葉が言い得て妙よのう
しかし老いたる身体には少々過ぎたモノ
もう40年も若ければ反応も違ったやもな、かっはっは!
……こほん。大丈夫よ、夜彦殿。戯言じゃ、言うなれば
剣を持つ者ならば女も子供も立派な剣士。気負いはせぬ
ちと手強そうだ。夜彦殿、気を付けられませい
腰の大太刀にてお相手致そう
正眼に構えるは基本にして極意の剣、気に入って頂けるか
相手との間合いに注意せねばな
動きを見切り、虚実を混ぜ、地形を利用し、黙して覚悟を決めようぞ
夜彦殿が鍔となるのであればワシは刃と相成ろう
二刀は一刀となり、二手は一手と仕る
夜彦殿の作りし機を活かし、剣の道を悟る一太刀よッ
月舘・夜彦
八刀丸殿(f00181)と参加
親玉もヤドリガミの剣士でしたか
それよりも簪……いえ、奴の本体は刀でしたね
離れていてもあの刀から禍々しい気を感じます
相手は女性ですが油断は出来ませんね
攻撃は主に2回攻撃を重視
敵からの攻撃は残像・見切りより躱して斬り返し
躱し切れない攻撃は武器受けにて対処
妖刀の複製の時には八刀丸殿に接近して抜刀術『八重辻』
この技はこの場から動く事は出来ませんが、奴の刀を受け止められる
今は私が凌ぎ、攻撃を終えた隙に八刀丸殿は奴へ向かってください
……先程で冷えた御体も、そろそろ温まってきた頃でしょう?
『ほんと元気だこと』
着物のあちこちに斬られたあとを残しながら、おりょうは猟兵達との距離を取り、ため息交じりにそう言った。
体に傷はひとつもない。それはヤドリガミがどんなに傷を負っても、本体が無事であれば、何度でも再生できるからだ。服も再生できるだろうに、そうしないのは……趣味?
はだけた着物に斬り跡が合わされば、それはもう何とも色気のある恰好である。
「これはまた妖しいとの言葉が言い得て妙よのう」
おりょうの風体を見て、八刀丸がそう感想を漏らす。
「しかし老いたる身体には少々過ぎたモノ。もう40年も若ければ反応も違ったやもな、かっはっは!」
すでに四捨五入すれば70となる八刀丸。剛毅にそんな感想を口にする。その肉体は年不相応に隆々としており、そんな冗談もどこまでが本気なのか疑わしく思われてくるところである。
その冗談を、分かってか知らずか、夜彦が声をかける。
「八刀丸殿?」
「……こほん。大丈夫よ、夜彦殿。戯言じゃ、言うなれば」
すでに長年、相棒をしていたかのような、そんな冗談を交わしつつも、警戒を緩めはしていない。
八刀丸が手にする大太刀を肩に担ぎながら、出方を思案する。
「剣を持つ者ならば女も子供も立派な剣士。気負いはせぬ。ちと手強そうだ。夜彦殿、気を付けられませい」
「ええ、相手は女性ですが油断は出来ませんね」
『良い心構えね。ならば、相まみえましょうか』
三者に間に見えぬ火花が爆ぜる。
最初に動いたのは、おりょう。妖刀・血染め雲を構えると、猟兵二人に向かい駆けだした。白刃が血を求め、妖力を増すのを感じる。
はじめの標的となったのは、八刀丸、年齢で選んだのかもしれない。が、真意を語るものはいない。
『はぁ!!』
険しい顔で、おりょうが気合と共に、横振りに刀を振るう。
それに対し、八刀丸は正眼に大太刀を構えを取る。体の正中線を大太刀で重ね、いかなる攻撃にも対処できる基本にして極意の型。
八刀丸は、相手との距離に気を配りつつ、前に出ると見せかけ、半身で後ろに下がった。先程まで己がいた場所を敵の刃が通過する。おりょうの目には残像を斬ったように見えたことだろう。
『なっ……!』
おりょうは崩れた体勢を踏みとどめると、返す刀で対象を夜彦に変えた。
「こちらにくるか。ならば……その太刀筋……全て、返そう」
夜彦もこれを見切りにて躱し、カウンターの斬撃を浴びせる。上段から斬り降ろされた刀が、即座に下段からの斬り上げに転じ、瞬時に二度の攻撃を繰り出す。
夜彦の刀が、おりょうの肩、それと腹に刀傷を負わせた。
『ぐぁ
……!?』
しかし、敵もヤドリガミ。斬られたことに驚きはすれど、平気な顔で夜彦の斬り終わりの隙を狙い、片手で刀を振り下ろした。
『たぁ!!』
(キンッ!)
斬り終わりの動作を納刀に繋げていた夜彦、鞘に納めた刀を再度抜刀し、瞬時に敵の刃を受け止める。
【抜刀術『八重辻』(バットウジュツヤエツジ)】。
「八刀丸殿!!」
「心得たッ!!夜彦殿が鍔となるのであればワシは刃と相成ろう。二刀は一刀となり、二手は一手と仕る」
おりょうの攻撃の後隙を、八刀丸が逃すはずもない。敵の懐に潜り込むと胴を斬りこみ、走り抜ける。
『ぐわああああああっ!?』
腹を裂かれて、悲鳴をあげるおりょう。
八刀丸は剛毅に笑い、血振りの所作を行う。
「効いたであろう? 夜彦殿の作りし機を活かし、剣の道を悟る一太刀よッ!」
かくして二人の剣士の連携が、敵を窮地へと追い込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水心子・静柄
あら?堕ちた刀なのに思いの外礼儀正しいのね、吃驚したわ。私は水心子作、銘は静柄よ。まぁ人を斬るのは刀の性分として仕方ないのかもしれないけど、本来刀に血を啜る機能はないんだからあなたにだけ備わったのか、それとも血を啜っていると勘違いしているだけなのかもね。とりあえず同じ刀のヤドリガミとして評判を落とされたら堪らないからさっさと壊れて頂戴。
同じ刀のヤドリガミだから戦い方は同じなのよね…ただユーベルコードの違いで斬り結ぶのはこっちが不利だけど。だから相手の斬撃は勘で避けて、刃の部分以外を居合で斬るわ!
何度、この戦闘で体を作り治しただろうか。猟兵達との戦闘は彼女の予想を超えたものとなっていた。
『正直、これほどとは思いませんでした。このおりょう、敬服せねばならないようね』
おりょうが踏み荒らされた田畑を軽々と移動しながら、感想を漏らす。田畑での移動に適さない履物に見えて、まるで気にしている様子もなく、自然と戦闘を行っている。
静柄は意外そうな顔をおりょうに向けると、肩をすくめてみせる。
「あら?堕ちた刀なのに思いの外礼儀正しいのね、吃驚したわ。私は水心子作、銘は静柄よ」
オブリビオンになって、狂気に触れるでも意識を暴走させるでもなく、自我を持ち、ただただ血を求める存在となったヤドリガミを見て、静柄は思ったことを口にした。自身と同じヤドリガミという共通点を見出しながら。
『そうね、シンプルゆえに、かしらね。……違うかしら? まあいいわ。血の渇望さえ満たされれば、なんだっていい』
「まぁ人を斬るのは刀の性分として仕方ないのかもしれないけど」
本来、刀に血を啜る機能はなく、そのように執拗に血を啜りたいと求めるヤドリガミは、どうにも歪み、壊れ、異質なものとなってしまっているように思えた。
その異質さは、おりょうの勘違いから来るものなのか、それは判断するには材料が足りないが、同じヤドリガミである静柄は、評判を落とされたくないとする誇りと、同質とされたくないという自負があった。
『私の邪魔立てをするなら容赦はしない。相手が誰であろうとも』
戦闘は前触れもなく開始された。
おりょうが間合いを詰めつつ、妖刀による斬撃を繰り出す。刀による切れ味に加え、ユーベルコードによる効果が合わさり、その殺傷能力は凄まじいものとなっている。
それをすでに察知していた静柄は、一定の間合いを維持しつつ、本体である脇差に手を添えた。
脇差と妖刀。長さに差があり、攻撃範囲でいえば、おりょうに分がある。それは百も承知していた静柄は、居合一閃、相手の攻撃を回避しつつの『後の先』、つまりカウンターを仕掛けた。
(ザシュッ!!)
鈍い肉を裂くような音が、鼓膜に届く。
おりょうの妖刀が、静柄の肩を、静柄の脇差が、おりょうの横腹に斬りつける。
『なかなか良い動きね』
「言いたくはないけどあなたもね」
双方、初手は痛み分けという形となり、後方に跳ねるように間合いを取った。いや、痛みはないので痛み分けというのはいささか語弊があるだろうか。
痛み分け。しかし、横腹を斬られ、バランスを取りにくそうにしているおりょうを見るに、どちらかといえば静柄の方に軍配があがる結果になったとも取れる。
脇差という、いわば懐刀にあたる刀。静柄にとって、敵の本体を狙わず、バランスを崩すような攻撃手段を選んだことは実に、”らしい”。
バランスを崩したおりょうに、他の猟兵達の追撃が加わるのもそう先の話ではないだろう。
静柄は、すぐさま納刀すると、敵への警戒を強めるのだった。
成功
🔵🔵🔴
アト・タウィル
ふふ、妖刀の親玉ですね
それではあなたには、手下たちとの踊りを踊っていてもらいましょう
フルートを吹き、楽し気な曲を吹き上げます
それに合わせ、配下だった刀のヤドリガミ達をUC【狂気の操り人形】で操って、襲い掛からせましょう
ふふ……好きなだけ、斬り合ってください
数で圧しますが、力量はあちらが上でしょうし、こちらまで来るかもしれません
その時は、私自身を囮として使いましょう
私を斬りつけたタイミングで言ってあげましょう
ふふ、後ろががら空きですよ、と
鹿村・トーゴ
妖艶、かー
血に酔った目付きで余計そう見えんのかね
鬼の血を啜って…っておっかねー(羽織のフードで角を隠してみた
田舎もんだから言霊とか謂れとか迷信深いンだ
刀銘からして直接オレに妙な害は無さそうだがよ
降魔化身法で強化
長得物は持ってないんで暗殺/地形利用/忍び足で接近
サイキックブラストで動きを封じクナイで斬り付ける
てのが理想だが…
距離が届かない時は手裏剣の投擲
>妖刀の斬撃や奥義には激痛耐性で耐え至近距離で攻撃
>妖当の複製に武器受けを活用して出来る限り弾く
もしこれが拾えるなら盗みでこの戦場限りの武器に
人の姿を得たら人斬り以外にも楽しみ有りそうなもんだけど
アンタは血の味なしじゃ張り合いなかったんだよなー
●
「妖艶、かー」
おりょうをその赤い瞳で見つつ、離れた場所からトーゴは呟いた。
「血に酔った目付きで余計そう見えんのかね。鬼の血を啜って……」
人の血よりも好物だったらどうしよう。そんな想像がトーゴに浮かぶ。
鬼の血。実際にどんな作用があるかは不明だが、色々な言い伝えや伝承となっているものも多く聞く。中には、鬼の血を口にしたものに、大きな力が与えられる。そう言った類の言い伝えも……。
「……って、おっかねー」
トーゴは羽織のフードで角を隠しつつ、体を小さくし、見つかりにくくなるように努めた。大丈夫、向こうはまだこちらを察知した様子はない。
女性は鬼よりも怖い。そんな言葉が彼の脳裏に過(よ)ぎる。
「さて、どうやって近づくかな。オレは長得物は持ってないからなー。近付くしかないが……」
トーゴは自身を降魔化身法で強化しつつ、クナイを手に取り、どう攻め込むかを考えるのだった。
●
「ふふ、妖刀の親玉ですね。それではあなたには、手下たちとの踊りを踊っていてもらいましょう」
離れた場所で戦況を伺っていたアトが、絶妙なタイミングで笛の音を響かせた。
(~♪~♪~~~♪)
横笛(フルート)の楽し気な旋律に敵も味方も、驚きの表情を見せ、アトの方に振り返る。戦場という場にそぐわぬ楽し気な音は、しかして、狂気で強力で驚嘆とも言える能力を有していた。
【狂気の操り人形(クレイジー・パペット)】。笛の音が、倒れたヤドリガミ達を再び呼び起こす。ぐったりと、全身の力が抜けたような形で立ち上がったヤドリガミ達は、糸で吊るされた操り人形のような振る舞いをしている。
「(それでは、彼らに襲い掛からせましょうか)」
アトの横笛の音が、サビに突入する。すると、先ほどまでぐったりしていたヤドリガミ達が生前の動きを思い出したかのように起立し、刀を抜いたかと思えば、おりょうに襲い掛かった。
『なっ?! 私の邪魔をするなんて、何を考えている!!』
意図せぬ相手からの攻撃に、焦りの色を見せるおりょう。だが、ヤドリガミ達との力の差は歴然。時間稼ぎくらいにしかならないだろう。
操っているのが、このフルートの旋律だと、おりょうに気付かれれば、すぐさまこちらに攻撃の矛先を変更し、向かってくるはずである。
もし、そういう展開になったとしても、自分自身を囮として使うことで、味方に有利な状況を作る。それが戦況をより有利にする。アトはそう考えていた。
●
「これは……」
どこからともなく聞こえる笛の旋律に、トーゴはキョロキョロと見回す。すると、すぐに味方の猟兵であるアトの姿を探し当てることができた。
「味方の援護か。あれは…………そうか、ヤドリガミ達を操るユーベルコードか。そういうことなら、この状況、利用するしかないな」
トーゴはヤドリガミ達の中を身を低くして走り抜ける。もちろん、おりょうに向かって。
降魔化身法で強化された走力で、普段の何倍も速く敵陣の中を駆け抜ける。
速い。
風よりも速く接近すると、そこはもうおりょうの目と鼻の先。おりょうはこちらに気付いていない。まだヤドリガミ達の相手をしている。
トーゴは迷わず懐に飛び込んだ。
『え……!? ぼうや、いつの間にっ!?』
即座におりょうは、複製の刀を自身の周りに展開、近付くもの全てを遠ざけようとするかのように、放射状に射出した。
「くっ!」
おりょうの反撃に、トーゴは腕輪で受けるべく、防御体勢を取る。
(キンキキンッ!)
3枚は撃ち落とすも、防御をすり抜けた刃が、トーゴの皮膚を数か所、かすめ斬っていく。
トーゴの背後からも操作された複製刀が飛来してくる。それに気づくことなく、トーゴは拳を握り、攻撃態勢へと転じる。
相打ち、いや、ヤドリガミであるおりょうは本体が無事なら何度でも再生する。
万事休す……!!
(ザシュ!)
肉を裂く鈍い音がトーゴの鼓膜をゆすった。
(ザシュザシュザシュ!!)
刺さる音は一回では終わらず、続け様に数回繰り返された。
『くっ……!』
焦りの顔をするおりょう。なぜか。それもそのはずである。
刃が刺さったのは、”ヤドリガミの体”だったのだから。
捻じれた横笛によって動かされたマリオネットが、アトの意思の元、トーゴを守るように割って入ったのだった。
「うおおおおおおおお!!」
気合一拳。
楽し気な旋律が風に乗って聞こえる中、トーゴは握った拳を全力でおりょうの本体である妖刀に叩きつけた。
化身法により強化された拳が、体重の乗った突きを何倍もの威力にし、妖刀に伝わった。
(ぴきっ…………ガキンッ!!)
『キャアアアアアアアアアア
!?!?!?』
凄まじい断末魔が楽し気な旋律や風の音と混じり合い、遠くへと運んでいく。
それはもう、天上にも届くかと言わんばかりの凄まじさである。
長い断末魔の後、おりょうは簪や妖刀もろとも、煤(すす)のように散りゆき、風に乗って躯の海へと消えていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『燈す日』
|
POW : 少し大きめの骨組みで灯篭を作って燈す。
SPD : 華やかな形をした灯篭を作って燈す。
WIZ : 高く浮かびやすい灯篭を作って燈す。
|
猟兵達の活躍により、宿場町は被害者を出すことなく、無事、戦いを終わらせることができた。
「刀たちも、武士の無念から蘇って襲ってきたに違いねぇ。しっかり、慰霊祭で弔ってやるべぇ」
宿場町に立ち寄り、避難していた観光客の一人がそう口にすると、その意見に賛同する者が多く現れた。
「そうだな、オラも心を込めて慰霊させていただこうかな」
「ちょうど、慰霊祭では灯篭流しを行うそうだ。みんな参加するべ。灯篭に文字を書いて流したり、絵を描いて慰霊の気持ちを込めたりと、そういう作法らしいべ」
観光客、宿場町の人々、そして猟兵たち。
多くの人が集まる中、慰霊祭がとり行われるのだった。
逢坂・理彦
慰霊祭か…俺も祈らせてもらおうか。
今回倒すことになったヤドリガミの刀も。
戦で死んだ武士のことも…。
あとついでで悪いけれど俺の故郷のことも祈らせてほしい。
確かに生きていた存在のための鎮魂。
最近はね友達にヤドリガミの人が増えたから。ちゃんとしたヤドリガミになれていたなら何処かで言葉を交わすこともあったんじゃないか、なんて思うよ。
先人に捧げる祈りだって大事だ。
故郷に対しての祈りは…俺なんかが祈ってもいいのか悩むところだけれど鎮魂はしてあげたいからね。
灯籠には分かりやすく【鎮魂】と。
アドリブ連携歓迎です。
慰霊祭。亡くなられた人の魂の安寧を祈って行われる祭儀である。
宿場町の側にある河原に、テントが設けられ、灯篭が配られたり、筆や画材が置かれてたりしている。
「慰霊祭か……俺も祈らせてもらおうか」
理彦はテントに訪れ、配布された灯篭を受け取る。板や竹ひご、和紙といった材料で作られた灯篭は、簡易的な作りである。それでもしっかりと丁寧に作られており、作り手の気持ちも込められているように感じた。
理彦は筆を取りつつ、灯篭に祈りを込めて文字をしたためる。
今回の戦闘で戦ったヤドリガミの刀のことも祈りたい。ここで以前あった戦で亡くなった武士のことも。そして、理彦の心にはあともうひとつ、祈りたいことがあった。
「あとついでで悪いけれど俺の故郷のことも……」
一筆一筆、一画一画に思いを込める。
ヤドリガミーーヤドリガミの知り合いも増えてきた折に参加した今回の依頼。オブリビオンとなったヤドリガミの刀。彼女とも、時、場所が違えば、どこかで言葉を交わすこともあったのではないだろうか。そう考えずにはいられなくなる。
過去の戦で亡くなった武士たちーー心安らかにと、そう願う。恨みや怨念を残し、もしかしたら、今回の事件のようなことが、また発生しないとも限らない。先人たちへの祈りも、深く、深く気持ちを込める。
故郷へ向けてーー迷いもある。自分なんかが祈っていいのだろうかと。しかし、それでも自分の「故郷に鎮魂を祈りたい」という気持ちを大事にしたい。
灯篭に「鎮魂」の二文字を書き込むと、理彦は心がすっと静かになるのを感じた。
懐から箱を取り出し、中から煙草を引き出しそうとして、理彦は思い直して中に戻した。代わりに、煙草ではなく灯篭に火を灯す。
「………………」
何も言わず、川に灯篭を流し、見送る。他の人たちの灯篭も流されていき、薄ぼんやりとした灯篭の灯が川を彩る。それらが織りなす光景はとても神秘的であった。
「………………」
理彦は何も語らず、じっと見送る。ヤドリガミ、先人たち、そして故郷への鎮魂を祈りつつ。
いつまでも。
いつまでも。
大成功
🔵🔵🔵
ティモシー・レンツ
灯籠ってあれでしょ、死ぬ間際に見える総集編。
……あれ、総集編を流しちゃって大丈夫?
……あー、総集編じゃなくて提灯を流すのかー(色々勘違い)
とりあえず、見よう見まねだけど提灯作って(POW判定)、鎮魂のために絵を描いて流そうかな……。
(提灯と灯籠の定義が入り乱れつつ、普通の灯籠と絵心のないナニカができた)
……これで妖刀の人もこき使われてた日本刀の人も、成仏できるといいんだけど。
(絵心がない自覚もないものの、オブリビオンを描いたらしい)
……提灯作りすぎたかな、余った分は一回戻ってグリモア猟兵におすそ分けすればいいのかな……。
河原で、皆、思い思いの灯篭を流し、慰霊を行っている。流れる灯篭には火が灯され、ゆっくりと流れる姿は神秘的で美しくもある。文字だったり、歌だったり、絵が描かれていたりと、灯篭の姿は多種多様だ。
「灯籠ってあれでしょ、死ぬ間際に見える総集編。……あれ、総集編を流しちゃって大丈夫?」
灯篭を流す人たちは、色んな思いを込めて灯篭を流している。多種多様だ。
「……あー、総集編じゃなくて提灯を流すのかー」
……多種多様だ。
レンツは、テントに向かうと、その一角に設けられた、灯篭手作りスペースを発見。
灯篭手作りスペースには、小さな子供からお年寄りまで、灯篭作りに夢中になっていた。用意されたものに和紙を張り、竹ひごで補強したりと、思い思いの灯篭を作ることができる。
「とりあえず、見よう見まねだけど提灯作って、鎮魂のために絵を描いて流そうかな……」
飲み屋の前によく吊るされている赤い提灯に、「鎮魂」と文字の書かれた物が出来上がるのではないかと危惧されたが、そこは、係りの人が作り方を説明してくれたのだろう、無事、灯篭が出来上がった。不出来であるものの、大事なのは形ではなく、気持ちである。個性あふれるレンツにしか作れない灯篭は、それはそれで味があるというものだ。
「……これで妖刀の人もこき使われてた日本刀の人も、成仏できるといいんだけど」
躯の海へ帰っていったオブリビオンたちが、また染み出して来ない事を祈りつつ、レンツは筆を動かす。
「うん、よく描けた!」
本人、納得の出来栄えの絵は、今回戦った妖刀と日本刀のヤドリガミを描いたものと思われる。断言できないのは、その絵が独特の感性で描かれており、断言するのが難しいためである。
「なかなか、よく描けたんじゃないかな、オブリビオン」
うん、オブリビオンで間違いなさそうだ。
レンツは、出来上がった灯篭を祈りを込めて川に流す。不出来な形、しかし、込められた真っ直ぐで純粋無垢なその気持ちは、きっと叶うに違いない。
「……提灯作りすぎたかな、余った分は一回戻ってグリモア猟兵におすそ分けすればいいのかな……」
今回、予知を行ったグリモア猟兵も、さすがに灯篭のお土産を「提灯おすそ分けにどうぞ」と手渡されることまでは、予知できなかったことだろう。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
町人や客に被害が無かったって聞いてホッとしたぜ
慰霊祭、やるって言ってたもんな
お、灯篭作るんだな
オレもちょっとばかし供養させてもらおっかな
SPD
って言ってもそんな大層に凝ったものは出来ねーが
おがらで縦の骨を作って裂いた竹ひご廻して簡単に枠を
和紙を重ね切りの要領で鋏入れて手毬とか花状の模様を切り抜く
で、ちょっと薄めの障子紙を重ねて透かしの灯篭の出来上がり
ちょっと空いてる場所から火を入れて流す
戦場の武士はぜんぜん知らねー昔の人だが…
あとあのおりょうって妖刀の魂だか霊もな
宿場町からのお祈りが届くといいねェ
(お経とか聞こえてくると自分も無言で手を合わせて
あ~
オレも経文の一つくらい覚えといたらよかったなァ
宿場町にも、観光客や住人にも、猟兵達の活躍により被害は全く出なかった。
「町人や客に被害が無かったって聞いてホッとしたぜ」
トーゴは、胸を撫でおろしながら、河原の方へと歩を進める。目的はもちろん、この町の祭事に参加するためだ。
「慰霊祭、やるって言ってたもんな」
河原にある会場へと向けて歩を進めると、多くの観光客らとすれ違う。参加者も多いのだろう。それほど人の集まるイベントということのようだ。
会場に着くと、受付テントに立ち寄り、案内を受ける。灯篭流しの意味合いや、灯篭の作り方などをざっと教えてもらえる。サムライエンパイアに詳しくない猟兵にも優しい親切設計だ。
「……と、言うように、灯篭流しは慰霊の意を込めて灯篭を川に流し、魂をあの世へと送る習わしの事です。あちらで灯篭の自作体験コーナーもございますので、いかがでしょうか?」
着物姿の案内係のお姉さんが、親切丁寧に案内してくれる。
「お、灯篭作れるんだな」
トーゴは自作体験できるスペースへと移動すると、そこにはすでに何名かの参加者が、思い思いに灯篭を自作していた。大きいのや小さいの、文字が入っているものや絵が描かれたもの。色んな灯篭が見受けられる。
トーゴは、おがらで縦の骨を形成し、裂いた竹ひごを用いて大まかな枠を作る。張り付ける和紙には、張り付ける前に一工夫。鋏を入れて、模様を切り抜く。折ってから模様を切れば、たちまち同じ模様が複数生まれた。手毬や花の模様を綺麗にあしらうと、灯篭に貼り付ける。風が入って中の火が消えぬよう、薄めの障子紙で穴を塞げば、灯篭の完成である。
中に火を灯すと、彼の思惑通り、手毬や花の模様が綺麗に透けて浮かび上がった。
横で見ていた女の子も、トーゴの手元を見ていたのだろう。重ね切りで複数の同じ模様を作る方法にトライしている。
「お、ここは、もっとこうすると上手くいくぜ。そうそう、上手い上手い」
少し手ほどきをしてから、女の子の様子を微笑ましく見送る。少女はと言えば、トーゴと鸚鵡(オウム)のユキエに手を振って見送っていた。
手を振り返すと、トーゴは灯篭を流すため川へと向かう。
河原に立つと、冷ややかではあるものの、風はなく、寒いというほどではなかった。
「オレもちょっとばかし供養させてもらおっかな」
トーゴは空いてる場所を見つけると、そこから火を灯した灯篭を川へと流す。
色んな祈りを込めた。ここで昔、命を落とした戦場の武士、おりょうという妖刀の魂、それらに祈りを込めて、無言で手を合わせる。
先程、灯篭を作っていた女の子も、隣に来ると灯篭を流し、トーゴに並んで手を合わせた。
どこで覚えたのだろう。少女はぶつぶつと念仏を唱えている。
「(あ~、オレも経文の一つも覚えといたらよかったなァ)」
祈りは形でなく、心で祈るもの。気持ちが何より大事であるならば、きっとトーゴの祈りも無事届くことだろう。
川上は薄暗く、川下は暗い。夕と夜の間を灯篭の灯がゆらゆらと、そしていくつも流れていく。先人たちの魂を乗せ、安らかに送り届けることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
アト・タウィル
慰霊祭ですね、それでは作法にのっとってやらせてもらいましょうか
……無理矢理操ったりしてた私がやるのも、少し気が引けますが、まぁ問題ないでしょう
さて、それでは暴れていた刀たちを弔いましょう
灯篭に銘を書いて、流していきましょう
さて……あとは、鎮魂の曲を吹きましょうか
ふふ、安心してください
さすがにここで、悪夢を見せるような曲を流すことはしませんよ
「慰霊祭ですね、それでは作法にのっとってやらせてもらいましょうか」
アトは、受付テントで灯篭を受け取ると、中に灯を燈した。
薄ぼんやりと明るく光る灯篭を眺めながら、アトは今日の戦いのことを思い返していた。
(……無理矢理操ったりしてた私がやるのも、少し気が引けますが、まぁ問題ないでしょう)
今回の戦い、日本刀のヤドリガミたちを笛で音で操ったアト。それでも慰霊の気持ちがあるのは確かなので、参加する資格は十分にあるだろう。
灯篭を流すため、アトは河原へと進む。
多くの参加者がおり、河原から帰ってきた人、これから河原へ向かう人。それらが舗装された砂利道を行きかっている。
「さて、それでは暴れていた刀たちを弔いましょう」
河原に着くと、アトは早速、筆で刀の銘を灯篭に記していく。一画一画書く度に、今日の戦いを思い起しながら。
「さて……あとは、鎮魂の曲を吹きましょうか」
(~♪~♪~~~♪)
捻じれた横笛(フルート)が旋律を奏でる。涼やかな河原に流れる灯篭たちを、鎮魂の曲が安らかに見送る。
他の猟兵が、悪夢を見せれらるのではと身構える中、アトは演奏の手を止めることなく、ふふっと頬を緩ませた。
彼女の瞳を覗き見れば、その深みのある瞳に、猟兵の不安は益々増すのだった。
(安心してください。さすがにここで、悪夢を見せるような曲を流すことはしませんよ)
そう心で唱えながら、口で伝えることはせず、アトの奏でる鎮魂歌(レクイエム)は、風に乗って川下へと、灯篭を見送るかのように流れていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年04月15日
宿敵
『辻斬り『花簪のおりょう』』
を撃破!
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