小さな魔女と護りのぬいぐるみ
●小さな魔女のお話
昔々のそのまた昔、この村は魔物の襲撃に遭っていました。
ご先祖様からの村を守るため、みんなは力を合わせて魔物を追い払ってきましたが、一週間が過ぎても、一か月がたっても、一年たっても、一向に襲撃が止む気配はありませんでした。
ある日、そんな村に冒険者の一行が訪れました。
群竜大陸を目指しているという彼らは、村の状況を聞くと自分たちの目的よりも先にこの村を助けようとしました。
一人は襲い掛かる魔物を次々と打ち倒し。
一人は群れの長と思わしき大物の魔物を打ち取りました。
一人は計算高い罠で魔物を纏めて捕らえると。
一人が魔法で群れを焼き払いました。
一人は魔物の嫌う香を作ると村の周辺に撒きました。
しかしそれでも襲撃が止むことはなかったのです。
困り果てた冒険者たちでしたが、原因を調べていた最後の一人、小さな少女がこう言いました。
『……わたしに、考えがあるの。手伝って』
少女は仲間たちに何かを囁き、ちょうど村で見ごろを迎えていた花の木から枝を一本手折ると村から離れた場所にある廃城へと向かいました。
しばらくして冒険者たちが帰ってくると、魔物たちの気配はどこにもなくなっていました。
長い間続いた襲撃がぴたりとやんだのです。
『……わたしの友達がこの村を守ってくれる。だから、もう大丈夫』
少女が言いました。その証拠に少女がずっと抱えていたぬいぐるみの姿はどこにもありません。
感謝したみんなは少女のぬいぐるみによく似たぬいぐるみを作ると少女に与え、彼女を小さな魔女として称えました。
そしていつかの再開を願い、冒険者たちの旅路を見送ったのでした。
●勇者の伝説の残る村へ
「──というお話があるのですよ」
ずらーっと物語を語ったフルール・トゥインクル(導きの翠・f06876)は一息ついて水を口にする。なおここまでの語りはほぼ一息であった。
「皆さんは前に調べてもらった勇者の伝説を覚えていますですか?」
彼女が言うのは以前に猟兵達が調査した勇者の伝説のことだ。湖に沈んだ願いの込められた石碑の話である。
その石碑を刻んだ勇者たちに関連していると思われる話が見つかり、それが先に語って聞かせたものだという。
六人の群竜大陸を目指す冒険者たちが魔物から襲撃に遭い続けている村に立ち寄り、一人の少女の機転で助けられた話。これはその少女への感謝を忘れないために語り継がれているようだ。
「今回は語られる内容もある程度わかってますですし、この物語を追ってほしいのです」
以前の勇者に関連していると思われるが、似ているだけでもしかしたら全然関係のない話かもしれない。もしくは立ち寄ったのをネタにしてでっち上げられたかもしれない。そしてもしかしたら本当にあった話かもしれない。
伝説を解き明かすことは将来的な群竜大陸に関する予知の精度にもかかわってくる。
だからお願いしたいのだとフルールは頭を下げる。
「それにただ追うだけではないのですよ。なにしろ、これからお送りする村はお花真っ盛りなのですから!」
曰く、村は今ちょうど花見の季節で村のあちこちに植えられた桜が見ごろを迎えているらしい。なので花見をしながら村人たちと交流を深めて伝説を追う手がかりを得てほしいとのことだった。
もちろん花見にぴったりの料理も振る舞われているそうなので、そちらを楽しむのもありだろう。
ただし、羽目は外しすぎないように!とフルールは念を押すと転送の準備に取り掛かる。
「……あ、そうなのです」
猟兵達を送り出す寸前、ふと思い出したように口が開かれた。
「なぜか村人さん達、黒猫のぬいぐるみにいろんな服を着せて楽しんでるみたいなのですよね。そいういうのが好きな方も楽しめるかもです」
そんな助言(?)めいたことを言いながら、彼女は猟兵達を送り出したのだった。
心音マリ
お久しぶりです、心音マリでございます。
今回もまたアックス&ウィザーズで勇者の伝説を追っていただく内容となっております。
前作の『探し求めるは勇者の伝説、沈んでしまった願い事』の話がちらっと出ておりますが一切知らずとも全く問題ない内容となっております。
さて、1章ではお花見を楽しみながら情報を集めていただきます。
花より団子な方のためにお料理も用意させていただいております。
またオープニングにもあります通り村人たちはそれぞれ『黒猫のぬいぐるみ』を持っています。ただ服装だけが個々に違っており、自分なりの黒猫ちゃんファッションを楽しんでいるようです。
それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『桜で一杯、花見で二杯』
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POW : みんなで一緒にご飯を食べよう
SPD : 桜を見て優雅に過ごそう
WIZ : 歌や躍りで楽しもう
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ノネ・ェメ
【UC】 今日もどこかで任務の話してる……お花真っ盛り――ぴくり。 花見にぴったりの料理――ぴくり。 ぬいぐるみにいろんな服――いてきま!! 【SPD】
まず料理はキープ。 振舞われてる全品を一口くらいずつ制覇の方向で。 出店ならちゃんと買い、大ボリュームのしかなければそれを頂き。 村を挙げてのお祭り感あるし、居合わせた人と美味しいものシェアしたり、いいお花見にしたいな。
それと、ぬいぐるみ。 これもお店とかはある? それとも一人ずつ特別に作られたもの? 用意してもらえるかなぁ黒猫……一番の楽しみはその着せ替えだったから。
ぇ? 真っ先にキープした料理も食べ途中の口はそれより歌え? えへ。
●花より団子?団子よりぬいぐるみ!
村の中央に存在する広場から村の入り口に至るまで綺麗な桃色の花が咲き、あちらこちらから楽しげな声と音楽と、いい匂いが漂ってくる。
「これは、すごい」
そんな村に真っ先に転移しやってきたのはノネ・ェメ(ο・f15208)である。
さてさてそんな彼女の目的というのは──。
「これと、それと、あれと、全部1つずつください」
「え、いいけど持てるかい?」
「大丈夫、持ちます」
料理の制覇であった。何せ彼女、グリモアベースで話を聞いたときからぴくぴく反応していたのだから。それよりも心を動かす内容もあったが、今は料理だ。
出店から無料で振る舞われている桜餅まで綺麗に確保すると、桜の木の下のベンチを1つ料理と共に占領して桜を眺めながら舌鼓を打ち始めた。
具材によって華やかな色をしたおにぎりに巻き寿司、桜の葉を用いて香りをつけられたお肉と桜の花びら状にカットされた野菜の入ったサラダ。他にもお祭りの定番とばかりの串焼肉やミニケーキなどのデザートまで。一気に制覇を目指して食べていれば村人の目を引くというもの。
「わぁ、すごい!いっぱい食べるんだね!」
集まってきたのは村の子供たちだ。それぞれの手にはグリモア猟兵の言っていた通り黒猫のぬいぐるみが抱えられている。それを見たノネの目が輝いた。
「そのぬいぐるみどうしたの? お店とかはある? それとも一人ずつ特別に作られたもの?」
らんらんと目を輝かせ、矢継ぎ早に飛ぶ質問に最初は戸惑ったような顔をする子供たちだったが、ノネが団子を差し出すとパッと顔を輝かせて頬張る。お礼にキャンディーを差し出しながら子供たちは彼女の質問に答えてくれた。
「このぬいぐるみはね、俺が生まれた時に母さんからもらったんだよ」
答えた男の子の持つ黒猫は鎧のような服と剣を持っている。戦士風の服装だろうか。
「私のお母さんがお店やってるよ!服も一緒に作ってくれるの!」
こちらに答えたのは女の子。手に持つ黒猫はなるほど、つくりの細かいドレスを着ている。
「そうそう、だから特別とは違うよ。でもすっと一緒にいるから最初の子が一番大切。怪我しちゃっても治してもらえるからね。あ、でもお洋服はお母さんに作ってもらったりして他の子は持ってない服を作ってもらうことが多いんだよ」
最初に答えたのとは違う男の子が答える。黒猫の服は白いエプロンに白い帽子とフライパンらしきものを持っている。
「そっか、用意してもらえるかなぁ黒猫……一番の楽しみはその着せ替えだったから」
「用意できるよ!」
思わず、といった風にノネの口から出た言葉にドレスを着た黒猫を持つ女の子が嬉しそうに声を上げる。
「欲しい人には旅人さんでもあげるのがこの村の習わしなの!」
「それが小さな魔女さんへの感謝の想いを届けることにもなるって父さん言ってた!」
「お団子のお礼もあるし、すぐにもらってくるね!」
わぁっと楽しそうにノネを置いて子供たちは駆けだすと、しばらくして戻ってきた。
ノネに手渡された黒猫のぬいぐるみは桜の花びらの飾りを片耳につけ、淡いピンクのドレスを着ていた。そして片手には串に刺さった団子と思われるものを持っている。
子供たちがノネの印象から服とアクセサリーを選んでくれたようだった。
お礼もそこそこにぎゅうともらったぬいぐるみを抱きしめる。ぬいぐるみは日差しを受けて温かく太陽の香りがした。
大成功
🔵🔵🔵
四季乃・瑠璃
緋瑪「故郷へ帰る事を願ったあの6人のお話なんだね」
瑠璃「石碑で会った時は光でよくわからなかったけど…少女ってどの人だったんだろう…」
緋瑪「その子のぬいぐるみが今も村を守ってるのかな?」
頂くだけじゃ悪いから、とUDCアースから持ってきた食材や調味料等を村の人達に提供。
お花見を楽しみながらで村の人達とご飯食べて交流し、勇者の伝説について話を聞いたりするよ【コミュ力、情報収集】
満開の桜の下で美味しい料理を堪能しつつ、黒猫のぬいぐるみとか勇者の伝説についてとかしっかり聞き出すよ
瑠璃「緋瑪、私のマイデスソース知らない?」
緋瑪「え、まさか…」
(提供した調味料に瑠璃のマイデスソースが混入)
※アドリブ等歓迎
●花と団子と交流と
もぐもぐとサンドイッチを片手に村人の中を歩く2つの影があった。藍色のポニーテルを揺らし、桜を見上げているのが四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)そして桜よりもサンドイッチに気が向いているのが瑠璃の別人格である緋瑪だ。
二人は配られていた桜餅などを貰ったのち、頂くだけでは悪いからとUDCアースから持ち込んだ食材と調味料を村へと渡したのだ。だが、見慣れないものだったために逆に大いに喜ばれさらにいろんな料理を貰って今に至る。
「石碑で会った時は光でよくわからなかったけど……少女ってどの人だったんだろう……」
瑠璃も緋瑪も石碑を刻んだ勇者の伝説を追い、その存在にも遭遇している。しかしながら思い返せども、見たのは六人の人型の光であり大小はあっても特定するには至らない。
「その子のぬいぐるみが今も村を守ってるのかな?」
しかしそんなに長い間残り続けるものなのだろうか、と緋瑪が首をかしげる。石碑といった岩ならともかく布と綿でできたようなぬいぐるみがどれほど長く残るのだろうか。
「どうだろう、魔法とかあるからね」
考えていても始まらない。瑠璃は桜から視線を戻し、情報を集めるために村人へと声をかけるのだ。
「え、廃城が?」
「あぁそうだ。話にある廃城なら実在するぞ」
「じゃあぬいぐるもあって、話は本当ってことなのかな?」
「いや、ぬいぐるみがあるかどうかまではわからない」
二人が話しているのは串焼き肉を作っている出店の男性だった。机の上には頭にターバンを巻いた黒猫のぬいぐるみがちょこんと座っている。
「何せ、その廃城には近づいてはいけないって言われてるからな。確かめてみようなんて人もいなかったし」
その言葉に瑠璃と緋瑪は顔を見合わせた。廃城を調べることができれば伝説を追えるに違いないのだ。
「ちなみ何で近づいていけないのかな?魔物いっぱいとか!?」
「……なんで若干嬉しそうなの……」
瑠璃のため息を気にすることなく緋瑪は強い相手がいるかもと目を輝かせている。男性は二人の様子を楽しそうに見ていた。おそらくジョークか冒険者ならでばの言葉だと思ったのだろう。
「残念だかそっちのお嬢ちゃんの予想とは違うな。なんでも罠がいっぱい仕掛けられているらしい。だから入ってはいけないんだとさ」
「なんだ、罠かー」
明らかに落胆した緋瑪を置いて、瑠璃はお礼替わりに串焼き肉を1本買うと次の話を聞くために出店を後にする。
いや、後にしようとした。
「あれ?緋瑪、私のマイデスソース知らない?」
串焼き肉にかけようと思ったのだろう。ごそごそ探すものの目当てのものは見つからない。
「え、まさか……」
緋瑪の脳裏に最初に提供した食料と調味料が浮かぶ。まさか、まさかとは思うがあの調味料の中に、まさか……。
──かっらっっ
!!!!!!!
──かぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁぁ
!!!!!!!
突如広場の方から悲鳴が聞こえてきた。なんだか口から火を吐いている人が見える気もする。緋瑪の予感は悲しいかな当たってしまったようだ。
「やっぱり!」
その後事態の収拾に努めることとなった二人であったが、花見の余興として何とか丸く収まったようである。ついでに瑠璃の大切なデスソースも3分の1ほど使われていたが無事に手元に戻ってきたとか。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
湖の街の勇者に関するお話と聞き興味を引かれ参加
新しい場所での景色や出会い、交流、新しい物語を楽しみにしています
黒猫に擬態した[メルクリウス]連れ歩く
【機能強化『学習、感覚、奉仕】
ひとます村を見て回り”情報収集。知識”の蓄積更新
”コミュ力、誘惑”
旅人としてお花見に参加させて頂きましょう
やっぱり話題はぬいぐるみについてですね
連れている黒猫をきっかけにすれば話題も振り易いでしょう
こだわりの点等聞きつつ、由来についても教えて貰います
”撮影、アート、パフォーマンス、歌唱”【記録再現】
あまり語るのは得意ではありませんが、流れによっては、再現映像混ぜつつ湖の街での話をしても良いかもしれません
絡みアドリブ歓迎
●友として、忘れぬ証として
「おや、旅人さんかい?可愛い子を連れているね」
村を見て回っていた月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)は声をかけられて振り返った。肩には黒猫が乗っており、村人はこの猫が気になったのだろう。
黒猫の正体はスライムなのであるが今はすっかり黒猫に擬態し、ユイの肩の上でのんびりと欠伸をしていたりする。
「ありがとうございます。メルクリウスというんですよ」
柔らかく微笑んでユイは声をかけてきた村人へと目を向ける。腕の中にはやはり黒猫のぬいぐるみがおり、ユイを見つめるかのようにビー玉のような瞳を向けていた。
「あなたの連れているぬいぐるみもかわいいですね」
「ありがとう!何せ最近服を新しくしてね。ほら、この桜柄のリボン、良く似合っているだろう?」
村人は嬉しそうに語りながらぬいぐるみを見せ、満面の笑みを浮かべる。
ぬいぐるみには両耳に桜柄の可愛らしいリボンが付けられ、お揃いのワンピースを着ていた。手にはその辺りで拾ったのを付けたのだろうか、桜の花が咲いた小さな枝を持っている。
「はい、まさにお花見に似合う服装ですね。私も楽しませてもらってます」
「そうだろうそうだろう!この村の桜は古くからあってね。ほら見たかい?広場の桜を。あれが一番古くて大きな桜さ。この村の桜はみんな広場の桜から増やされて植えられたんだよ」
「もちろん見てきましたよ。とてもきれいでした。それにしても、この村の皆さんはぬいぐるみが大好きなのですね」
「ああ、もちろんさ」
ユイの言葉を聞いた村人は慈しむようにぬいぐるみを撫でる。
この村の話を知っているかどうか確認してから村人は言う。
「このぬいぐるみはね、小さな魔女が持っていたというぬいぐるみを模しているんだよ。ほら、話にもあるだろう?ぬいぐるみを置いてきてしまった彼女に感謝の証としてよく似たぬいぐるみを作って与えたって」
ユイは頷く。グリモア猟兵に語ってもらった話はしっかりと保存されている。ぬいぐるみとしか描写されていなかったが、どうやら黒猫のぬいぐるみを持っていたということらしい。
「村としては彼女へ感謝を忘れないために、そして村を守るために置いていかれた彼女の本当の友達が寂しくないようにという願いを込めて全員がぬいぐるみを持つようになったんだ」
「なるほど、そんな由来が……」
「そう、そして村を訪れる旅人さんにも欲しい人には渡すことにしてるんだよ。何故だかわかるかい?」
「え。えぇ……と……」
突然投げかけられた疑問に小さく首をかしげて、該当しそうな記録がないか検索。しかし、これといった回答が出ず、ただ聞いた話に合わせて一つの答えを導いた。
「再開を願って、ですか?」
「お、話をよく覚えてるんだね。それもあるけど、それよりももっと大事なことさ。小さな魔女に『忘れてないよ』と私たちの感謝の気持ちがぬいぐるみに乗せていつか届くといい、そう考えているからなんだ」
「それなら、お力になれるかもしれません」
「どういうことだい?」
感謝を届けることを願う村人に、ユイは微笑む。何せ彼女は関わっていると思われる勇者の故郷を知っているのだから。もし同一人物ならばぬいぐるみを石碑の元へ届けるのもよいかもしれない。
簡単な再現映像(見せた時は内容よりも先に映像というものに驚かれたものだが)と共にかつて追った伝説の話をすれば、村人は喜んで新しい黒猫のぬいぐるみをユイへと渡してくれた。
いつか寄ることがあれば届けてほしい、と。
暖かな日差しの中でそう託される頃、ユイの肩の上のメルクリウスはすっかり眠りについていたとか。
成功
🔵🔵🔴
榎・うさみっち
桜だ~♪花見だ~♪
舞い散る花弁に合わせるようにくるくる飛び回りきゃっきゃとはしゃぐ
料理も制覇する勢いで食べてやるぜ!
お、この桜のケーキうめぇうめぇ!
サムライエンパイアで食べた桜スイーツを思い出すな~
黒猫ぬいぐるみの話題で村人とも交流するぜ!
そのとんがり帽子の魔法使いファッションいけてるじゃん!
実は俺も、『うさみっちゆたんぽ』っていう
俺そっくりのぬいぐるみ型ゆたんぽを持っててな
黒猫ぬいぐるみの衣装をゆたんぽに着せる服の参考にさせてもらうのだ
いっそ猫耳バージョンの『ねこみっちゆたんぽ』もありかも?
お近づきの印にこのゆたんぽプレゼント!
お湯を入れてベッドに入れると朝までぬくぬくだぜ!
※アドリブ大歓迎
●ぬいぐるみ的ファッション交流
「桜だ~♪花見だ~♪」
広場にある大きな桜の木の下でくるくると飛び回る小さな影があった。
桜と同じ桃色の髪にうさ耳……うさ耳なのだろうか、たれうさ耳かな?を揺らしてきゃっきゃとはしゃぐのは榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)というフェアリーである。
なんだか謎な存在な気がしないでもないが、フェアリーなことには間違いない。
「お、この桜のケーキうめぇうめぇ!」
「よう妖精さん。いい食べっぷりだねぇ」
小さい身体ながら料理を制覇せんとばかりの食べっぷりにケーキを渡した村人は何ともおかしそうに笑う。
うさみっちの勢いと口の周りについてるケーキの欠片がほほえましかったのだろう。
「ありがとな!そのとんがり帽子の魔法使いファッションいけてるじゃん!」
お返し、とばかりに村人の持っているぬいぐるみに目を付けて褒める。村人も嬉しそうだ。
「いいだろう?小さな魔女のぬいぐるみにあやかって魔女らしいファッションなんだ。手作りだから同じものはないぞ」
「手作りかぁ、やるじゃん。実は俺も、『うさみっちゆたんぽ』っていう俺そっくりのぬいぐるみ型ゆたんぽを持っててな」
ここで取り出したるはその名前まんまの『うさみっちゆたんぽ』だ。桃色たれウサ耳付きの少年がジト目で見ているぬいぐるみ型のゆたんぽである。たれウサ耳といいジト目といいうさみっちにそっくりだ。
「おう……まるでそのままみたいにそっくりだな」
「だろ!せっかくだからゆたんぽに着せる服の参考にしようと思ってな!その帽子どうやって作ってるんだ?」
「これはだなー……」
しばし衣装作りの話に花が咲く二人であった。
この間もうさみっちの頭の中では魔法使いバージョンの『まほみっちゆたんぽ』やら猫耳バージョンの『ねこみっちゆたんぽ』やら、新しいゆたんぽのデザインが浮かんでは消える。後で絵に起こしておこうと頭の片隅にとどめながら話が弾んだとか。
「いやー、参考になったぜ。ありがとな!」
「いやいやこちらこそ、服の作り方までここまで語れるのは楽しかったよ」
「いい話も聞けたし、お近づきの印にこのゆたんぽプレゼント!お湯を入れてベッドに入れると朝までぬくぬくだぜ!」
数十分後、満足に話し終えた村人に対しじゃーんじゃじゃーん、とうさみっちは先ほど取り出したゆたんぽをそのままプレゼント。
村人はかなり喜び黒猫の友達にするといっていたので、もしかすると村の中でウサ耳の少年風なぬいぐるみが新しく作られるかもしれなかった。
成功
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第2章 冒険
『廃城に隠された秘密を追え』
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POW : 魔物を掃討。探索に集中できるように露払いといこう
SPD : 侵入者を撃退する罠等は今も生きている。トラップや開錠を試みる
WIZ : ○○がどこにあるか地図などを使って怪しい場所、隠し通路などがないか探してみる
👑11
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●廃城へ
話を聞き終え花見を楽しんだ猟兵達は、村で聞いた話の中に登場するという廃城へと向かうことにした。
村を離れ、少し茂った森を抜ける。危険そうな風景に対し、魔物のような気配は一切ない。
しばらく歩き続けて日が少し傾き始めたころ、その廃城は猟兵達の前に姿を現した。
あちこちが崩れ、蔦や木が茂っているが何とか正面に見える入り口から中に入れそうだ。だが、先ほどまで感じなかった魔物の気配を感じる。この廃城を住処にしている魔物でもいるのだろうか?
さらには足元には古い矢やロープの切れ端、少し目線を遠くにやれば穴が開いている部分もあり、覗き込めば落ちてそのまま命を落としたのであろう魔物の骨と思わしきものがある。
話に聞いた罠だろうか。入口のは作動しきっているようだが、奥はどうかわからない。魔物も罠も警戒する必要があるだろう。
猟兵達の間で意識を共有すると伝説を追うために彼らは廃城の中へと足を踏み入れた。
リリスフィア・スターライト
村人たちの話から聞いた襲撃の止まなかった魔物たちに、
それを止めた少女の機転と気になる事ばかりだし
今ここで解き明かしてみたいよね。
探索用にロープや明かりなどの準備は怠らずにだね。
廃城内の地図と見比べながら罠や魔物たちが
特に多い場所を中心に調査するようにかな。
もしかしたら魔物たちが廃城にいる
何かがそこにあるのかもしれないし。
可能なら他の猟兵達とも協力して探索を進めるよ。
罠の危険があったり戦いになる場合は
エレクトロレギオンを呼び出して先に進ませたり迎撃に向かわせるね。
「お花見はとても楽しかったかな」
「伝説の謎、実に興味深いよね」
四季乃・瑠璃
【ダブル】で分身
瑠璃が【ハッキング、高速詠唱、全力魔法、情報収集】で廃城に魔力を流してアクセス。罠の大まかな位置や建物の構造、隠し部屋等を抜き出しつつ、魔力関係の罠や隠蔽等の仕掛けを乗っ取る。
緋瑪はアクセス中の瑠璃の護衛。
アクセス終了後は二人して【範囲攻撃、鎧砕き、早業】接触式ジェノサイドボムで、アクセス時に確認した罠や道中の魔物を物理的に粉砕しつつ廃城の奧、特に魔力が感じられた場所へ進む。
緋瑪「この廃城に今もぬいぐるみの子がいるのかな」
瑠璃「まだ現存しているなら多分…」
緋瑪「もし可能なら、あの石碑に連れて行って、再会させてあげたいな」
瑠璃「そうだね…再会できると良いな」
※アドリブ等歓迎
●廃城の中へ
「うわぁ……」
用意していた明かりを片手に内部へと入ったリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は驚きの声を漏らした。
それはそうだろう、明かりに照らされた先に見えたのは無数の骨。そのどれもが矢や槍といった罠の餌食となったのだろう、骨の隣に転がっているそれらの破片が何があったのかを物語っている。
「なんというか、死体の山だね」
入り口の壁を触り、廃城への魔力によるアクセスポイントを探りながら四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)が言う。全く動じてないように見えるのは彼女のマイペースさ故かそれともどこかしらの常識が壊れているのか。
「でも死体じゃ殺せないよ!」
オルタナティブ・ダブルにより顕現している瑠璃の別人格である緋瑪は少々不満顔だ。先の村ではデスソースで振り回されたし甘味か戦闘でもなければやってられないのだろう。
そんな仲良さげな二人を見ながら同じ多重人格者であるリリスフィアはくすりと笑みを漏らした。
「スケルトンとかいるし、もしかしたらその死体起き上がってくるかもしれないよ?」
「そういうこと。だから調べてる間任せるね、緋瑪」
「はいはーい、任せてって。瑠璃には指一本触れさせないから!」
緋瑪の言葉に頷くと瑠璃は廃城の壁に触れ、自身の魔力を流し始める。城そのものに魔力を通してアクセスし、調査と秘められた仕掛けにハッキングを仕掛けようという魂胆だ。
しかしあちこちが崩れたとは言え土地自体は広い。故に集中と時間を必要とするため別人格である緋瑪とリリスフィアが護衛として瑠璃を護るように布陣していた。
(それにしても……気になることばかりだな)
魔物の気配を警戒しながらリリスフィアは思考を巡らせる。
何故か襲撃の止まなかった魔物たちの話と平和だった先ほどの村。
それを止めたという少女の機転にその方法。
そして今まで感じなかった魔物の気配を感じるこの廃城。
依頼という話を抜きにしても、興味を惹かれ全てを解き明かしてみたいと思うのは自然だろう。
(例えば魔物のリーダーとか、魔物を引き付ける何かがある、とか……?)
リリスフィアの頭の中にはいくつか理由が浮かびはするものの、どれも推測の域は出ない。
「終わったよ」
瑠璃の声に思考を止め、リリスフィアは顔を上げる。
汗をぬぐう瑠璃の手にはアクセスして調べたであろう廃城の大まかな地図が握られていた。
「お疲れ、どうだった?」
「うーん、それなんだけどね……」
少々困惑しながら記した地図を見せて瑠璃は語る。
彼女が感じ取ったのは大まかに分けて3種類。
1つは魔法が用いられた罠の存在。これは魔法のみの罠はハッキングし無力化に成功していたが物理的なものと組み合わされているものもあり、それは無力化できなかったため地図に記されていた。
もう1つは魔物の存在。城の奥、中心へ向かうほどその数を増しているようであった。しかしながら弱っている気配と興奮しているかのように猛っている気配もあったようだ。
最後の1つは城のちょうど中心部から強い魔力の気配。探っている最中、時間が経てば経つほどその魔力を増しているようにも感じたという。
「中心部から魔力?」
「と、いうことはそちらを目指して進むのがよさそう、かな?」
二人の言葉に頷くと、地図を片手に城の奥へと歩む。
「伝説の謎、実に興味深いよね」
「ね、この廃城に今もぬいぐるみの子がいるのかな?」
「まだ現存しているなら多分……」(でもぬいぐるみってそんなに長く残ってるものなのかな……?)
「もし可能なら、あの石碑に連れて行って、再会させてあげたいな」
「あの石碑って?」
「ああ、話に出てきた人達が残したっていう石碑を探したことがあってね──」
感知しきれなかった罠がある可能性も踏まえ、話をしながらも三人の歩みは慎重だ。
確実にわかっている罠はリリスフィアの召喚した機械兵器が身代わりになったり、瑠璃と緋瑪の持つジェノサイドボムで破壊しながら進むことで安全に進むことができた。
ボムなどの大きな音がしても魔物の寄ってくる気配はない。
「さっきから思ってたんだけど……」
罠を壊しながら緋瑪が言葉を発する。罠への知識もあり、さらに瑠璃とは異なり殺すことに快楽を感じるその性格から気にかかることがあったのだ。
「緋瑪?どうしたの?」
「いや、なんというか……」
言い出したものの確証がないのか歯切れ悪く緋瑪は続ける。
「これ、人に対する罠ではない気がするんだよね」
「どういうこと?人でないのなら……まさか魔物に対する罠?」
リリスフィアの言葉に緋瑪は頷いた。
やけに間隔のあいた槍の罠はまるで大型のモンスターを狙うかのよう。
足元の細い紐とそれに繋がれた人でも足首にしか当たらないような弓矢の罠は小型のモンスターを狙うかのよう。
天井付近にスイッチがあり、作動すれば天井から通路の半分ほどまでを魔法で焼き払う仕掛けだったそれは空を飛ぶモンスターを狙うかのようで。
仕掛けの位置が、大きさがほぼ同じ人間を相手にするにはいくらなんでもまばら過ぎると緋瑪は語る。
廃城に残された罠は魔物狙いの罠かもしれない、その言葉の意味を考えながらも真相を探りに奥へと、中心部へと進むのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
榎・うさみっち
うげー罠だらけのダンジョンってやつかー
でもこんだけ罠があって厳重ってことは、奥には何かすげーもんがあるに違いない!
例えば少女の残した物とか無いかな、日記とか?
お城だけあって広いしそこかしこに穴も空いてるし適当に進んでると迷いそうだな
うさみっちスケブセットを使ってマッピングしながら進んでいくぜ!
通路や壁に目印としてうさぎマークを描いていったり
進む際には【かくせいのうさみっちスピリッツ】で増やした
「さむらいっちゆたんぽ」を俺の前方と後方に配置
怪しげなものがあったらまずさむらいっちに先行させて確かめさせる
罠があったらまずこいつらが犠牲になってくれるってわけだ
魔物に会った場合もさむらいっちの刀で斬る!
ノネ・ェメ
ノネってVR的な存在らしいから、潜入捜査向いてそう。 物音とか気配とか、無さそうでしょ? あるのかな。 まず自分の事が解ってないけど……ともかく、そーっとそーっと。
少し城内を進めたら、手ごろな所で留まって、音聴く事に集中してみよ。【UC、追跡、聞き耳】 罠もあるかもしれないんだし、へんに音たてて気づかれる前に、魔物の音を聴き取れれば。 動きはなくても、呼吸や鼓動があればすぐ、だいたいの位置や数はわかると思うから。
わかった事は他の猟兵さんに伝えてまわろかな。 歴戦の皆さんよりノネがうろつく方があれかな。 やめとこかな( 罠の予備動作の音でも回避できそうではあるけど。【早業】
絡み等は歓迎です
●とてとて走る
自分自身のことを全て理解し、それを有効に活用できる人というのは多くはない。しかし彼女はその中でもより一層自分のことがわかってなかった。
「なんだかいけそな気がする。やめた方がいいかな?」
とんとんとんと先に猟兵が抜けた地点を軽々と駆け、ノネ・ェメ(ο・f15208)は自分がどこまでできるのかと首をかしげていた。
「ほら、ノネってVR的な存在らしいから、潜入捜査向いてそう。物音とか気配とか、無さそうでしょ?」
「いやー、それはなんか違うんじゃねぇの?」
くるくる回ってみせるノネを見て、スケッチブック(かわいいうさぎデザイン入りのものだ!)を片手に榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は微妙な顔をした。正確にはジト目をそのままノネに向けた。
彼の持つスケッチブックには今まで通ってきた道が丁寧にマッピングされている。
「そか、ならそーっとそーっと行こ」
「お前わりと愉快だなー」
「そっくりなぬいぐるみがいっぱいふよふよしてるのも愉快だと思う」
ふわふわとうさみっちの前後に浮かぶうさみっちゆたんぽ……ではなく、着物姿に刀を持っているさむらいっちゆたんぽを見てノネは神妙な顔で頷く。
どことなくマイペースさのある少女と総計32個にもなるゆたんぽを浮かべたフェアリーのペアでは愉快という点に関してならどっちもどっちといえた。が、それを突っ込める人はここにはおらず。
うさみっちがマッピング兼先行偵察、ノネが索敵と役割を分担しながら先へと進む。
「しっかしでもこんだけ罠があって厳重ってことは、奥には何かすげーもんがあるに違いないな!」
先行させたさむらいっちゆたんぽが突如動き出した壁に潰されるのを見ながらその様子は楽し気に。潰されたゆたんぽが化けて出そうな気がするのは気のせいだろうか。
話によればぬいぐるみらしいが他にもあるかもしれない、日記とか装備とか。拾って売ったら金になるだろうか、などと思考が広がる。
「すごいもの……ぬいぐるみ?ぁ、罠止めたよ」
ガチンと音がして動く壁との隙間に石を挟み込んでノネは罠を停止させる。
―― óʊp(ə)n híɚ ――
そのまま耳を澄ませ音源を把握。
まずは自分と隣にいるうさみっち。広がって少し大きな爆発音、これは他の猟兵だ。興奮したような魔物の呼吸は離れてる、遭遇はしなさそう。よくよく聞けば弱ったような呼吸もあちこちからする。さらに広がって──。
「……っ!?」
「どうしたんだ?魔物が来そうなら俺のさむらいっちゆたんぽの刀が火を噴くぜ!」
ぶんぶんとさむらいっちゆたんぽ(先ほど潰された分はすぐに複製して元の数に戻している)の刀を振らせて見せるがノネは首を横に振った。
「違う……中央の方からぶんぶんぶんぶんうるさい音がする」
不快そうに耳を両手で塞ぐ。聞こえた音は虫の大群が奏でる不快な羽音、より詳細に聞けばあまり良い気分のものではない。
「中央なぁ。行ってみるか!」
「同意、何かありそだし」
きゅっきゅっきゅと壁にうさぎマークを描き、加えて中央へ向かうようなマークを描き加えると二人は再度歩き出した。
──カチッ!
「ぁ、何か踏んだ」
「お前何s……ぴゃあああああああああ
!!!!!」
飛んでいるうさみっちwithさむらいっちゆたんぽズが気づかなかった床のスイッチを踏み抜き、飛んできた矢。聴覚が優れ動きも素早いノネは軽々避けると、矢はうさみっちの数センチ隣を通過して壁に刺さったのであった。
二人の愉快なやり取りはもうちょっと続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月宮・ユイ
伝承は間違いなく本物みたいね
廃城…かなりボロボロだけど、まだ活きてる罠があるのかしら
それに魔物がいるのなら、どうして廃城だけに留まっているのかも気になるわね
魔物も襲ってこないならまずは下手に荒らさず情報収集に専念しましょ
<機能強化『知、力、技』>
”視力、暗視、聞き耳、第六感、罠使い”
感覚強化、罠や地形、環境、敵”見切り、情報収集。知識”の蓄積更新利用
<人形劇団>
折角なので村で見たぬいぐるみ参考に人間大の黒猫ぬいぐるみの兵隊召喚
護衛役も残しつつ6匹1チームで探索開始(其々、盾、魔法、探索役と役割分担出来る様生成)
共有同調した感覚で情報収集統括、罠解除等安全確保しながら道を進む
連携アドリブ歓迎
●黒猫調査団、出発!
「伝承は間違いなく本物みたいね」
廃城を前にして月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)は一人呟く。話に出た通りの城。
一歩足を踏み入れれば発動した罠であったり被害に遭ったであろう魔物の骨が散らばる。
まだ生きている罠があるのか、疑問にも思うが耳をすませばわずかな爆発音や他の猟兵と思わしき悲鳴のような声も聞こえる。未作動の罠があると考えるのが正確だろう。
「それにしても……どうして何もないような廃城に魔物がいるのかしら?」
村から移動してくる間に通った森は自然の恵みがあり魔物も生きやすそうに思える。それなのにここにとどまる理由は何か。調べる必要がある。
──共鳴・保管庫接続正常、能力強化。
調べるためにまずは自身の能力を高めておく必要があるだろう。ユーベルコードを用いて保管庫へ接続、選択は能力強化、必要な能力を推測後にピックアップ。
──情報読取蓄積更新…各技能へと限界値まで反映継続、最適化…機能強化。
ピックアップした能力をこれまでの情報も用いて最新へと更新、反映させればもはやユイは様々な技能に卓越している。調査には困るまい。
そして一人では行けるところは限られている。それならば手足を増やせばいいのだ。
「いざ、開演…」
共鳴体生成術『人形劇団』により人間サイズの黒猫ぬいぐるみが次々生み出されていく。その見た目は盾を持つもの、とんがり帽子をかぶったもの、バンダナを巻きロープを持つものと様々。
後は6匹1チームに振り分け先行させれば、ぬいぐるみたちが見る情報を集めるだけだ。
「こちらの通路は他の猟兵が通過済み、左へ」
分かれ道ではウサギのマークや爆発の痕跡などを見つけては痕跡のない通路を選び。罠は場所がわかれば解除するのは今の彼女の技術ならば容易だ。
「……これは……」
そして黒猫ぬいぐるみの一団はあるものを見つけた。それは弱り切った魔物の群れである。
戦う意志がないほどに弱り切り、後は死を待つばかりといった風でもあった。
ぬいぐるみたちが見ている目の前でふいに魔物の一体が立ち上がると、よたよたと歩き壁に向かってぶつかると倒れ、息絶えた。
壁には傷や血の跡があり、これまでも何度もタックルなど体をぶつけたのが容易にうかがえる。
「この先に魔物を引き付ける何かが……?」
ぬいぐるみに命じ、壁を調べさせる。盾を持ったぬいぐるみがまだ生きている魔物を警戒する中、調査役のバンダナを巻いたぬいぐるみが壁を調べようと腕を伸ばして壁に触れた。
──ガラガラッ!
ダメージが蓄積していたのだろうか、壁の一部が壊れ、崩れ落ちる。
そして壁に開いた穴から吹き込むさわやかな風と緑の香りに──桜の花びら。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『毒牙虫』
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POW : 針付き鎌
【毒針】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 針付き鋏
【毒針付きの鋏】が命中した対象を切断する。
WIZ : 1匹いれば
【忌避】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【30匹の仲間】から、高命中力の【攻撃】を飛ばす。
👑11
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●廃城に花開く桜の木
廃城の中心部に次々と猟兵達がたどり着く。
そこで彼らが見たのは村で見たのとは比べ物にならないほど大きく美しい花を咲かせた桜の木だった。
あれを! 桜の花から根本へと視線を動かした猟兵の一人が声を上げる。指さす方を見ればそこには幹に包まれて魔法陣と黒猫のぬいぐるみが1体置かれていた。
見つけたと駆け寄ろうとする猟兵達だったが、遮るように現れた小さな少女の姿に足を止める。
『……ダメ、触らないで。壊れちゃう』
何人かの猟兵にはその声に聞き覚えがあった。先の伝説を追った依頼で蝙蝠を倒したことに感謝していた声と同じだ。
君が勇者なのかと、魔女なのかと問おうとする前に少女は怯えたようにしゃがみ込みその姿が消えていく。
『……あぁ、でも、もう。壊されちゃう。せっかくみんなが守ってくれてたのに……』
すうっと少女の姿が消えると同時、猟兵達の耳に羽音が届いた。音の方角を見やれば全身から針を生やした大型の虫が次から次へと桜の木を目掛けて飛んできていた。
詳しいことはわからないがこのまま放置すればこの綺麗な桜はあの虫にボロボロにされることは間違いないだろう。
少女の言うことも気にかかるがまずは目前の敵を排するべきだろうと猟兵達は自身の武器を手に取った。
ノネ・ェメ
回避はしやすいけど、数も数なら音もすごいよね。 【UC】で羽音を遮れば忌避感も抑えられるかな。 って、だいじょばないのは猟兵の人たちより桜の木? 虫だって傷つけたくない、でも桜が傷つけられては。 あの子困ってた。 UCは桜の耐久性も上げれない? それかヘイトをノネに向ける音楽には? もしどれも出来なかったら。 たとえ何も出来なかったとしても、傷つけ合う事だけは……
【苦戦する程UC効果上昇+無意識に真の姿になりかけつつ最大限の止めて!!を込めてロングシャウト「歌唱」「祈り」。
オブリビオンの心には響かずとも防衛本能的な何所かへ直に訴え威嚇、拠点防御的な奇跡を「時間稼ぎ」程度でも起こせたら。。】
●奏でる音にプローディギウムの名を
―― ɑːnsɑ́ːmbl mɪ́ksɪŋ ――
あぁ……耳に入ってくる不快な羽音に溜息をついてノネ・ェメ(ο・f15208)は自身のユーベルコードを起動した。彼女の背後に小さなピアノが現れ、羽音をかき消すように優しいメロディを奏で始める。
ピアノだけでは全てとはいかずとも耳に届く音は何もしないよりよっぽどいい。だが、忘れてはいけない、肝心の毒牙虫たちは桜の木を目掛けて飛んで生きていることを。
「猟兵の人たちはだいじょぶだと思うけど」
このままでは毒牙虫を止めることは叶わない。何かをしなければ背後で花開く桜の木は無事では済まないだろう。
「ノネは……虫だって傷つけたくない」
他の猟兵からしたら眉を顰められるかもしれない、しかしこれがノネの本音だ。普通の街に生まれ育ち、ヴォーカリストで、戦闘などとは無縁の生き方をしていた、そんな彼女だからこそ生まれる想い。
「でも──」
目の前に桜の花びらがひとひら過ぎてゆく。脳裏に先ほど見た少女の姿が浮かぶ。桜を傷つけられ壊されることを恐れ怯える少女の姿。それを見て見ぬ振りも優しい彼女にはできない。
だから、ノネは息を吸う。
めいっぱいの想いを、祈りを、止めてほしいと意志を込めて、叫んだ。
──Aaaaaaa!!!──
長い長いシャウト。ピアノの音が追走する。あぁ、でも毒牙虫の動きは止まらない。ピアノの隣にバイオリンが新たに現れた。
「それなら桜を……!」
方向性を変え、再び叫ぶ。それでも効果があるようには見えない。ただ桜は美しくその花を咲かせるだけだ。バイオリンの隣にフルートが現れる。
ノネは諦めない。桜へと向いている意思を自分へ向けられないか、3種になった楽器を用いて試す。しかし音以外の何かに惹かれているのだろう、音楽変えても見向きもされない。フルートの隣にトランペットが現れた。
「……っ、ノネには何も……それでも、それでも傷つけ合う事だけは……」
効果が上がらないことに唇を噛む。その姿がノイズのようにブレているのにノネ自身気づかない。ノイズの向こう側にあるのはノネの持つ真なる姿。
完全に変わらずとも本来持ち得る力はノネの想いを増幅させ、力を与えるのだ。
──やめてっ!!!──
3回目のシャウト。現れた楽器の追走にまるで桜が合わせるかのように揺れ、音が広がるのに合わせて花びらが吹き渡る。
『──
!!??』
初めて毒牙虫の動きが止まった。込められた想いに何かを揺さぶられたのか、戸惑うように周囲を見回し、仲間へ鋏を振り上げ混乱した様子を見せる。
「やった?」
動きが止まったことに安堵の溜息が一つ。混乱が治まればすぐにまた動き出すのだろうがそれでもかまわない。
桜の木へ到達するまでの時間稼ぎができれば、歴戦の猟兵達が、仲間たちが、きっと──!
成功
🔵🔵🔴
リリスフィア・スターライト
もしかして余計なことをしてしまったのかもしれないけれど、
だからこそ確実にあの毒牙虫は撃破しないとだね。
強気な人格のリリスと交代して桜の木に被害が出る前に撃退するよ。
他の猟兵達との連携は積極的にだね。
毒牙虫の間合いである30cm以内に踏み込まれる
前に長剣によるリーチを生かして間合いの外から
華炎連斬を叩きこむつもりだよ。
複数体相手でも炎と斬撃でまとめて薙ぎ払ってあげるね。
「毒針攻撃には気を付けてね」(本人)
「質の悪い虫は焼き払ってあげるわよ」(リリス)
●駆ける桃色の炎
混乱し動きを止めた毒牙虫へ駆ける影があった。その影はリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)であり金色の髪をきらめかせ毒牙虫との距離を詰める。
「もしかして余計なことをしてしまったのかもしれないけれど……」
思い浮かぶのは道中で壊した罠のことだ。ここに至るまでの罠は安全のために全て破壊、もしくは作動させきってしまった。その結果毒牙虫の侵入を許してしまったと思えば余計なことをしてしまった感じはする。
しかし罠を見てきたからこそこうも思うのだ。『自分たちが来なくても近いうちに罠は突破されたのではないか』と。
現に別の猟兵は壁に穴を開けてここに駆けつけている。今回は猟兵であったが、もしかすれば魔物が壁を壊して突破していた可能性もあったのだ。
だが、どちらにしてもやることは変わらない。桜の木を護り、毒牙虫を撃破する。それだけだ。
「毒針攻撃には気を付けてね」
接敵する直前、リリスフィアの口からアドバイスが飛び出る。しかし彼女の周囲には誰もいない。それはそうだろう、言葉を向けた存在は自分の中にいるのだから。
「わかってるわ。大丈夫、質の悪い虫は焼き払ってあげるわよ」
瞬き一つの間にリリスフィアの姿は変貌していた。
先ほどまできらめいていた金髪は桃色の長髪に、自信に満ちた表情で魔剣の感触を確かめるように振るう姿。彼女はリリスフィアの別人格であり、名をリリスという。リリスフィアの剣士へと憧れる心が生み出した人格だ。
「ぽやぽや止まってるなんていい度胸ね!この距離なら外さない!」
一閃。毒牙虫の鋏がすっぱり切り落とされ、乾いた音と共に地面に落ちた。
『──
!!!!』
羽音をたて、毒牙虫の視線が一斉にリリスへと向かう。混乱こそしていたが振るわれた刃に彼女を敵として認識し、対抗しようと思うのは当然のことだ。
だが、もう遅い。
「焼き払い斬り裂いてあげるわ!」
リリスへと殺到しようとした毒牙虫たちであったが、突如として鋏を切り落とされた毒牙虫を中心に、爆炎。その身を焼かれ地面を転がりやがて動かなくなる。
かろうじて爆炎を避けた毒牙虫も距離を意識した立ち回りをするリリスへ鎌を届かせることができず、代わりに振るわれた刃の餌食となった。
焼け焦げた毒牙虫の隣に二つに切り裂かれた毒牙虫が転がり落ちる。
「さぁ、次に焼かれたいのは誰?」
切り裂いた際についた毒液を魔剣を振ることで振り払うと、変わらぬ笑みを浮かべたまま再び毒牙虫の群れの中へとその身を躍らせた。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
折角美しい桜の木だというのに無粋な乱入者ね
<機能強化『力、知、技』>
”早業、先制攻撃”
即座に戦闘態勢に移行、機能強化・黒猫ぬいぐるみ兵団維持
”視力、暗視、聞き耳、第六感”
周辺環境と敵”見切り、情報収集。知識”の蓄積更新利用
”高速詠唱、2回攻撃”<人形劇団>
”医術、スナイパー”兵団追加:盾、弓、治療兵
”拠点防御”
他の仲間達とも協力し桜の木を護る様に周囲を囲む
数増えすぎる度合体、数調整しつつ強化も重ね防御厚く
共有同調通し”オーラ防御”を全体へ。身や盾で”かばう様盾受け”
色々仕掛けがあるようね
みんな…協力している存在も?
村の為にも何かが壊れてしまうなら、直すのに協力できないかしら
連携アドリブ歓迎
榎・うさみっち
うおっ!こんなすげー桜の木があったなんて!
廃城に咲く桜の木だなんて神秘的な光景だなぁ
って見とれるのはあとだー!
【かくせいのうさみっちスピリッツ】で
今度は「まほみっちゆたんぽ。」を複製
村人と交流したあとに早速作った新作だぜ!
あの毒針やばそうだからなるべく距離を取りつつ
氷や炎の【属性攻撃】で攻撃
でも時には杖で直接殴る!
ゆたんぽの何体かは円陣で桜の木を背にして守る
この魔方陣とぬいぐるみに強烈に魔物を引きつけるような
魔法がかかっていて村を守っていてくれてたのかな
俺が前に行った依頼でも似たような魔法陣見たことあるぜ
でもこのままだとまた村に魔物が来るようになっちゃうかも
もっと頑丈な壁に作り直しておく…?
●ぬいぐるみたちの共演
「うおっ!こんなすげー桜の木があったなんて!」
村にあったものよりはるかに大きく美しい桜に体をのけぞらせるようにして榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は見上げていた。
「廃城に咲く桜の木だなんて神秘的な光景だなぁ」
「同意はするけど見とれるのは後ね」
人間サイズ黒猫ぬいぐるみ兵団を連れたままの月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)が未だ集まってくる毒牙虫を示して言う。
くるんと空中で一回転してユイと視線の高さを合わせ、現実を見たうさみっちは肩をすくめた。
「しょーがねーなぁ、やってやるぜ」
「ええ、無粋な乱入者の退治と行きましょう」
ユイの宣言に合わせるように黒猫ぬいぐるみたちがそれぞれの武器を片手に前へと飛び出した。
毒牙虫は群れで行動している。群れの一部は混乱していた間に燃やされ斬られていたがあくまで一部だ。まだ数はいる。
眼前の存在は小さい妖精と小柄な人、群れの力をもってすれば飲み込むことなど容易い。容易い、はずだった。
突如として大量のぬいぐるみが出現しなければ。
「いざ、開演……」
高速かつ術式再利用による経路短縮によりユイは黒猫ぬいぐるみ兵を34体ずつ2度、合わせて68体のぬいぐるみたちを生成召喚。それぞれが武器を持ち、先ほどまでいなかった弓を持つもの、救急箱を持つ者もいる。治療兵なのだろう。
「よっしゃー!命が宿ったゆたんぽの本気!喰らえー!!」
うさみっちは探索の際にも使ったユーベルコードでうさみっちゆたんぽを複製。先ほどとは違い今度のゆたんぽは三角帽子をかぶりローブを着て杖を持っている。新作のゆたんぽ、名を『まほみっちゆたんぽ』という。もちろん杖から魔法もでる!それが33体、生み出されふわりと浮かぶ。
つまりは二人合わせて100体以上のぬいぐるみが召喚されたのだ。
黒猫ぬいぐるみたちは盾を持つものを最前列にして桜を守るように布陣。その後ろには弓を持つものがいて毒牙虫を狙って射撃を繰り返す。
まほみっちゆたんぽ達もうさみっちの指示のもと、杖から炎や氷を放ち毒牙虫を打ち落とす。
「はっはっは、いい感じだな!」
「と、いいながらも油断大敵ですよ」
接近を許し、鋏の餌食となりかけていたまほみっちゆたんぽを盾を持った黒猫が割って入り護る。
「ひゃー、怖い怖い。やるじゃん」
仕返しとばかりに集まってきたまほみっちゆたんぽが毒牙虫を囲んで杖で叩く!殴る!杖に属性を宿さず殴っているので完全に物理で殴っている!
毒牙虫はすぐに動かなくなり、満足したのかまほみっちゆたんぽたちはまた元の布陣へ。
「北部地点の防衛強化。4体合体、体格が大きい方が有利と判断、反映」
その間もユイは傷ついたぬいぐるみを合体させ強化すると同時に今までの戦闘で得た情報を用いて最適な行動がとれるように見た目に更新を加えていく。
少しばかり大きくなった盾持ちの黒猫が飛び掛かってきた毒牙虫を盾で殴り飛ばしていた。
二人とぬいぐるみの活躍により桜の木の防衛は完璧になったといえるだろう。後はこのまま押し切り毒牙虫を殲滅するだけだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
四季乃・瑠璃
緋瑪「それは壊させないよ!」
瑠璃「絶対に守ってみせる!」
UCの効果で分身&能力・武装強化
【範囲攻撃、鎧砕き、鎧無視】接触式ジェノサイドボムで敵の甲殻ごと粉砕して爆殺。
更に大鎌の機巧を利用した高速機動で敵をどんどん叩き落としていくよ。
戦闘後は【ハッキング、全力魔法】でぬいぐるみと魔法陣にアクセスし、自分達の魔力も加えて補強。
更に城の罠も【罠使い】で補強して帰るよ
緋瑪「多分、このぬいぐるみと魔法陣が村を守ってるんだよね」
瑠璃「そして、この桜がぬいぐるみを守ってるのかな…?」
緋瑪「ぬいぐるみはここに置いたままが良さそうだね」
瑠璃「魔女の子との再会は、もうできてたみたいだしね」
※アドリブ等歓迎
月宮・ユイ
さて、護りは十分そうね
これだけ妨害しても引く様子はなしか…
呼び寄せられただけなのかもしれないけれど殲滅するわ
<機能強化『力、知、技』><人形劇団>
強化と”情報収集”継続。人形の術式維持は一時〔マキナ〕に委託
”高速詠唱、早業、2回/範囲攻撃”<不死鳥>
選別の炎で出来た鳥を飛ばす。適宜合体させ数の調整や強化を
”医術”味方には癒し修復する治癒再生の炎
敵には”生命力吸収、吸血の呪詛”も込めた破壊の炎とし滅し喰らい力とする
ひとまず敵は’毒牙虫’を指定
荒れた周囲を”掃除”片付け
崩した壁もUC応用し瓦礫滅し喰らい再生
落ち着いたら今度こそお話できないかしら
引き続き、連携アドリブ歓迎
※二度目ですので余裕があれば
●爆炎、殲滅する者たち
守りが完璧になったのならば、倒すのは彼女たちの仕事だ。
ポイッと毒牙虫の群れの中に丸い何かが投げ込まれ、一瞬の間をおいて爆発。
爆風で数匹が地に落ち、さらには周囲の毒牙虫を吹き飛ばし、他の毒牙虫との追突事故を起こす。追突事故だけならともかく、あちらこちらでは強靭な鋏が追突の拍子に別の仲間の体を貫き新たな死体となって落下している。
「それは壊させないよ!」
「絶対に守ってみせる!」
爆発物の正体、それは四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)とその別人格である緋瑪から放たれたジェノサイドボムである。
普段の分身ではなく殺人姫の覚醒による分身は彼女の命を削るが、代わりに莫大な力をオーラとして二人に与える。
二人に気づいた毒牙虫が鋏を振り上げ飛び掛かる、が小さな爆発音と共に目標としていた姿は掻き消える。
「ざーんねんでした!」
「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃」
「「さぁ、わたし達の殺戮を始めよう」」
声は毒牙虫の左右から。心地よいハモりと共に今度は先ほどよりも大きな爆発音。煙が晴れれば毒牙虫の姿はもうそこには残ってはいない。
さて、瑠璃と緋瑪がその身をオーラで纏い、爆発を用いた推進力で縦横無尽に駆けまわっている頃。桜の守りを固めていた月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)も殲滅へと行動を起こす。
「黒猫ぬいぐるみ兵団の術式維持、および権限の一部をマキナへ委託」
先ほどまで指示を出していた兵団の維持を自身の持つシステムへ任せると、新たな戦力を召喚しにかかる。
術式を起動、概念を制御──敵対対象として毒牙虫を選択。
「舞え……」
宣言と共に炎が舞う。それだけではない、炎はひとりでに形を成し、鳥の姿へと形を変える。
そして鳥と化した炎は敵と設定された毒牙虫を狙い、飛び掛かる。
炎は炎である。形を成していてもあくまで概念でしかない。故に忌避といった感情とは一番無縁な存在であった。
ユイの指示のもと、鳥は一匹になっているものや少数の群れを狙い次々と襲う。自身である炎で毒牙虫を包み、焼き尽くし、その命を喰らう。
ふと鳥となった炎の隣をボムが掠めた。毒牙虫に着弾、爆発。
爆風で吹き消されそうなそれは一時的に形を崩すもののすぐに形を戻し再び獲物を探して舞う。
機動力を生かした範囲殲滅が二人に狩り逃した個別を狙う炎、守られた桜の木を相手にして毒牙虫が全て地に落ちるのにさほど時間はかからなかった。
そして殲滅を終え猟兵達がそれぞれに息を吐くと同時。
──夕日が現れた。
突如としてオレンジ色の光が猟兵達に降り注ぐ。見上げた先には桜の木。
いつの間にやら桃色の花びらは夕日色に染まり、魔力を放ちながら花びらが舞う。
そして魔力のなせる業なのか、猟兵達は見た。過去と思わしきこの場所と、そこに立つ6人の姿を。
●過ぎ去りし記憶の欠片
5人のそれぞれ容姿の違う人を前にして少女が話している。
『つまりモンスターが集まってくる原因は桜だって?』
大剣を背負った青年が言う。
『なるほど、魔力をため込み放出する性質を持つのか』
くいっと眼鏡を動かして別の青年が言う。
『まぁ魔力さっぱりの脳筋のお前にはわからんだろうけどな』
『なんだとー!?』
『はいはい、喧嘩しないししてる場合じゃないでしょ』
諫めるようにハープを持った女性が割って入る。
『でも桜が原因ならみんな燃やしちゃえば解決だったんじゃないの?』
指先に炎を生み出しながら先の3人と比べると小柄な少年が言う。
『そう簡単に行く問題でもないってことさ』
少年の頭に手を乗せて、最後の一人が苦笑いを浮かべた。
『……うん。わたしはあのきれいな景色を、護りたいから』
だから、と魔法陣の上に少女は持っていた黒猫のぬいぐるみを置いた。
魔法陣が強く輝いたかと思うと魔法陣の後ろ側に植えられていた一本の桜の枝がみるみる成長し大きな木へと育っていく。
『……これで大丈夫のはず。意思が残り続けてる限り、この木を護ってくれる。この木が無事なら、村も無事』
『それはいいんだけどさ、俺たちこっからどうやって出るんだ?道中トラップしかないぞ?』
『『『『あっ
!?』』』』
大剣の青年の言葉に少女以外の4人がハモり、一拍置いておかしそうに吹き出した。
そうして目の前の景色は薄れていく──。
●護りの意思
『……わたしはあの時わたしがここに残したわたしの意思』
景色が消えてもなお、少女はそこに残って猟兵達を見つめていた。
『……だから、あなたたちが探しているものとは少し違うかもしれない』
でも、良いのだと、皆が来てくれてうれしいと少女は微笑む。
「桜がぬいぐるみを守っていて」
「ぬいぐるみと魔法陣が村を守っていると思ったけど」
「「もしかして、逆?」」
ぽんぽんとスカートをはたき、オーラではなく普段のように分身した瑠璃と緋瑪が首をかしげてみせる。瑠璃の片手は魔法陣へと向けられ、魔力を込めながら長い間に綻びたであろう部分を補強していく。
『……逆、というのは正しくないかも。みんながみんな、村を護ってるから』
「では、壊れるというのは?何か恐れていたようにも見えたけど」
こちらはユイだ。黒猫ぬいぐるみと炎の鳥に指示を出して、自身が入ってくる時に壊した壁を修復していた。手の空いた黒猫ぬいぐるみは戦闘で荒れた桜の木の周囲を箒片手に掃除している。
別の場所でも猟兵達が思い思いに壁など壊れかけた部分を補強していた。
『……それはね、もういいの』
「どういうこと?せっかく瑠璃が補強してるのに壊れてもいいってことじゃないよね?」
「……もう、壊れなくなった、とか?」
少女は緋瑪の言葉に首を横に振るとユイの言葉に微笑んで頷いた。
『……うん、みんなが連れてきてくれたから、護りたいって意思を』
いつの間にか少女の手には黒猫のぬいぐるみが抱かれていた。それはユイが村から渡されたものだ。他にもぬいぐるみ型の湯たんぽが1つ浮いている。
『……意志がある限り、護りは永遠。みんなが壊しちゃった罠も魔法が直してくれる』
代わりにこのぬいぐるみもらうね、と少女は言い、何か言う間もなくその姿を消した。同時に魔法陣の中にぬいぐるみが増える。
「案外、意思って一番強い魔法なのかもね」
魔法陣の修復をしていた瑠璃が肩をすくめる。何せ少女が消えたと同時に修復していた部分も含め魔法陣が描かれてすぐと思われるぐらい綺麗に描き直されていたのだから。
「でもだとしたら安心だね!」
だってこの場に集った猟兵達は村を、桜を想い、護ろうとしたのだから。
自分たちの意思がここに残るなら桜の綺麗なあの村の平和も守られるだろう。
「そうですね。壊れる前に協力できてよかった」
ユイは頷くと掃除と修復の役割を終えたものから消していく。片付けは終わり、後は戻るだけだ。
「ところで戻る時って罠は……」
「……まずいかもしれないね」
「直し切られる前に脱出しましょう」
"直してくれる"という言葉を思い出し、慌てて廃城から出ていく猟兵達。
直りかけた罠による悲鳴がいくらか起こる中、やわらかな魔力を放つオレンジ色の桜の木の下で、3つのぬいぐるみは仲良く手をつないで花見を楽しんでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴