【学園異聞】メリーさんにおまかせ
●もしもし、私メリーさん
『アイツ授業中もチラチラこっち見てマジキモイ』
『親に付けられた家庭教師がマジうざい。お前の趣味の話とかどうでもいいから』
『あーかったるい。陰キャメタボ君辺り自殺でもして学校休みにしてくんないかな』
本名を隠したネット上でのやり取り。
掲示板やSNSは学生から社会人まで様々な人が当然のように利用している。
日常の呟き、趣味語り、時には相談、場所を問わずに交流が可能な便利なツール。
そして、中には不穏な発言も多々見られる。
その最もたるものが殺害予告だ。
殆どが冗談半分や鬱憤を晴らす為だけの八つ当たり等で、実行に移されるケースは少ない。
誰だって一時の感情で人生を棒に振りたくはないのだから当然だ。
だが、もしもそれを代行してくれる者がいたら?
「ふふっ。ねぇ、今どこにいると思う?」
見返りも代償も何も必要ない。
ただ、殺したい相手を教えるだけ。
「今ね、アナタの後ろにいるの♪」
長いプラチナブロンドを靡かせ、白いドレスがフワリ。
少女は遊び相手を待ちながら赤い舞台で踊っている。
●
「お前ら、メリーさんって知ってるか」
集まった猟兵の中でも、UDCアース出身の者が何名か知っていると答えた。
「そうか、俺は知らん。知らんが、どうも今回はそいつがUDCアースに出現しているようだ。後、どうでもいいが“メリーさん”までが名前らしい。よく分からんがな」
木詞・真央(Unregelmäßig・f10513)の言葉に猟兵達の反応は様々。
意欲的で何よりな事だと真央は説明を続ける。
「次にメリーさんが襲う場所は分かっているが、その対象までは絞れていない。そこで、お前らにはその対象、つまりメリーさんを誘き出すための囮になってもらう」
一般人に被害を出さない為、そのためならばと頷く猟兵は多い。
出現場所が分かっているなら対処もしやすいと考え出す者もいるだろう。
「異論は無いようだな。それじゃ、お前らにはメリーさんが現れる私立逢見高等学校の新入生、又は転校生として潜入してもらう。学生服を着てな」
その言葉にピタリと場の空気が固まった。
「猟兵の力が働くとはいえ、どこまで通用するかは分からない。万全を期す為にもなるべく違和感は消しておいた方がいいだろう。ちなみに制服は紺のブレザーだ。こっちで支給するが、着こなしは自由で構わない」
戸惑う猟兵達を無視して説明は続く。
メリーさんが狙うのは逢見高校の学生が利用する、掲示板やSNSで名前の上がる人間からタグのお台を無視した人間まで幅広い。
現代ではメールのやり取りよりSNSが増えた為か、メリーさんもそれに合わせているようだ。
そして、特に狙われるのは多くの注目を集めている人間、つまりは妬み恨みの多い相手だ。
「囮になるため、お前らにはなるべく目立つ行動をしてもらう。アピール方法は各々に任せるが、手っ取り早いのは部活での活躍だな」
バレないようにユーベルコードを使えば楽勝だろう、と。
突然現れてポジションや話題をかっさらえば当然それをよく思わない人間もいる。
そういった相手に注目されろというのが第一目標。
「次に噂の否定、今回だとメリーさんの否定をしてもらう」
なぜなら、噂がある限りオブリビオンの発生が止まらないから。
今回のメリーさんを倒しても、噂が残っている限り再びこの学校にメリーさんが現れてしまうかもしれない。
「ま、所詮は噂。新しい噂が流れれば古い噂は忘れ去られるだろう」
突拍子もない話、出鱈目な話、面白おかしい話、もしくは自らの体験談。
生徒が興味を持つ話であれば何でもいいのだという。
「ああ、言い忘れてた。今回の事件、同じ都市で同時多発しているそうだ。理由は知らんが、大方浮かれた学生の多い時期だからとか、そんなとこだろう」
説明を終えた真央は大きく欠伸をする。
春の陽気に誘われるように、浮かれた心の隙間に入り込むように。
語り騙られ、噂は現実を侵食していく。
学生を賑わす現代の怪談――学園異聞。
天路
今回は紫芋MS、苅間望MS、遊津MSとの連動シナリオです。
それぞれ別々の学校、噂が舞台となっています。
お好みのシナリオをお選び下さい。
●シナリオ補足
『1章 冒険 怨嗟の連鎖』
学園潜入パートです。
POW、SPD、WIZの選択肢は参考程度に留めてください。
学校は春休みですが部活動をしている生徒や図書室で勉強している生徒がいます。
『2章 集団戦 噂語り』
POW、SPD、WIZの選択肢は参考程度に留めてください。
直接的な戦闘ではありません。
目には目を、噂には噂を。
『3章 ボス戦 『都市伝説』メリーさんの電話』
詳細は断章にて。
第1章 冒険
『怨嗟の連鎖』
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POW : チェーンメールを受け取った人への聞き込み
SPD : SNS上での情報収集
WIZ : メールの発信源を辿る
👑11
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●
私立逢見高等学校。
勉学、部活共に力を入れており、それは新入生に対しても例外ではない。
春休みである現在でも図書館は解放され、ページをめくる音だけが静寂に混ざる。
窓の外に意識を向ければ校庭から響く、部活に勤しむ生徒達の声。
特別教室棟からは吹奏楽部の演奏も漏れ聞こえていた。
そして、休憩時間。
学生達はとりとめのない会話に盛り上がる。
最近の話題を占めているのはもっぱら“メリーさんの電話”の噂。
世間を賑わせる通り魔事件は全てメリーさんの仕業なのではないか。
春休みで浮足立つ学生達の足元をすくうように、噂は病のように蔓延する。
ジワジワと心に巣食い、やがてはその存在を呼び寄せるだろう。
そんな逢見高校に、下ろしたての制服に身を包んだ新入生と転校生が現れた。
男子は紺色のブレザーにチェックのネクタイ、細いチェックの入った濃紺のパンツ。
女子は首元にリボン、同様のブレザーにスカート。
違和感が無いことに違和感しかない集団がそこにいた。
……猟兵達だった。
八坂・操
【SPD】
メリーちゃんを知ってる身としちゃ、別人だと分かってても、何かほっとけないよねー♪
という訳で、【影の煩い】で女子高生な操ちゃんカモーン! これで成人の壁を飛び越えてレッツ潜入だ♪
あ、操ちゃん自身は流石にキツいから『目立たない』よう隠れてるね♪
囮として目立つなら、バスケ部辺りが良いかな? 体育会系は年功序列に煩いから、パっと出の転入生が目立てば、叩き易いでしょ♪
「初めまして、せーんぱい♪ 転入生の操ちゃんでーす☆ 仮入部参加させて下さーい♪」
後は派手に目立つだけ♪
『忍び足』で近付き、『だまし討ち』の要領でボールを奪い、『フェイント』で死守して『投擲』!
「ヒヒヒッ、操ちゃんったら天才!」
●
「メリーちゃんを知ってる身としちゃ、別人だと分かってても、何かほっとけないよねー♪」
どこか上機嫌に、いいや平常通りに、八坂・操(怪異・f04936)は体育館の裏へとやってきた。
それもその筈、操は事件を解決しに来たというよりは友達に会いに来た、という感覚の方が強いからだ。
操が言ったようにメリーさんは操自身にとって馴染み深いもの。
友達と表現したように、気軽に話し相手に出来る相手みたいなもの。
それが操の知るメリーさんでありメリーちゃん。
「さてさて、まずはお着替えを済ませちゃおっか♪」
鼻歌混じりで喚び出したのは女子高生な操……のドッペルゲンガー。
ドッペルゲンガーの操は逢見高校の制服に身を包み、スカートをはためかせながら「あはっ♪」と笑みを浮かべている。
「これで成人の壁を飛び越えて♪」
「レッツ潜入だ♪」
二人の操は当然のような息の合いようでハイタッチを交わす。
体育館裏で目立たないよう隠れる操は大きく手を振って送り出し、ドッペルゲンガーの操もまた大きく手を振って体育館へと繰り出した。
「初めまして、せーんぱい♪ 転入生の操ちゃんでーす☆ 仮入部参加させて下さーい♪」
扉を開け放つや第一声からどこまでもハイテンションに操が言い放つ。
その声に丁度コートで練習をしていたバスケ部は皆が皆、操に注目した。
「あー……皆は練習を続けていてくれ」
そう言って一人の女生徒が操へと近づいてくる。
恐らくキャプテンなのだろう、女生徒の指示に他の部員は声を揃えて返事をして練習を再開した。
「操、と言ったかな。仮入部は喜んで歓迎するが、うちはそれなりに成績を残しているチームだ。相応の実力がなければ申し訳ないが試合に出ることは出来ないぞ?」
「なるほどなるほどー? じゃ、実力があればいいってことですねー♪」
「それはそうだが――」
そこまで聞けばもう十分。
試合形式で練習をしているのも都合がいい。
後は派手に目立つだけ。
「もーらい♪」
音もなくコートへ入り、不意打ちにボールを奪い去る。
突然の乱入者に困惑する部員を余所に軽くドリブルをする操。
感覚を掴んだのか、そのままゴールを目掛けて走り出す。
未だ状況を掴めていない部員だが、勝手なことをするなと操の前に何人かが立ち塞がる。
簡単には抜けられないその布陣を、フェイントを合わせた素早い動きを以てスルリと抜き去っていく。
「ミスディレクション!?」
「バカ! ただ動きが早いだけよ!」
あっさり抜かれたという事実だけが明確に頭に刻まれる。
これは生意気なルーキーの挑戦なんだという空気が伝染する。
笑みを絶やさず、長い黒髪と制服をはためかせ、長身から繰り出される軽快な動き。
それなりに実力があると自負しているからこそ、操の行動はバスケ部に刺さった。
拘束するのではなくボールを取り返そうと次から次へと部員が操へと挑む。
だが、その全てを捌き切った操はついにゴールへとシュートを叩き込んだ。
「ヒヒヒッ、操ちゃんったら天才!」
ゴールが決まった事を操は無邪気に喜ぶ。
その姿は部員達を尚更屈辱的な思いにさせる。
「じゃ、これからよろしくお願いしますねー♪」
勝手にやってきては輪を乱し、実力差を見せつけ、ふらりと帰っていく。
その行為は、バスケ部員の反感を買うには十分過ぎた。
「メリーちゃん来るかなー♪」
体育館裏でヒヒヒと笑う声に、クスクスと楽しげな笑い声が重なった。
そんな気がするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
御伽・柳
使用UC:【痃癖】
行動:【WIZ】
高校……卒業してそろそろ3年になるのですけれど、まさか再び制服を着ることになるとは
手っ取り早くUCで警戒心を解かせて【情報収集】をしますか
女性は噂好きですよね、適当に適度な人数の女性の集団に話を聞きましょう
すいません、今の話、俺に詳しく話してくれませんか?
話してくれますよね?メリーさんの電話について、知っていることを
あなた達が知っていること、あなた達より詳しい人の事、全て隠さず口に出してください
話を聞き終わったら今の会話の記憶を植え付けた眷属を食わせてUCを解除して、次の人に話を聞きに行きますね
●
まさか再び制服に着る事になるとは。
3年振りになるのか、なんて考えながら御伽・柳(灰色の渇望・f12986)は支給された制服を着て校舎へと。
まだ3年、されど3年。
外見に然程変化もなく、現役の学生とも遜色はないだろう。
それでも自分の制服姿に多少の居心地の悪さを覚えながら、校舎の中を徘徊する。
「できれば噂好きの女性がいてくれば、っと」
春休みとあって校舎の中に学生の姿は見当たらない。
だが、生徒が全くいないという訳でもなく、春休みでも部活動が活発なこの学校では普段より少ないだけで。
「ねえねえ、メリーさんの話し聞いた?」
「例の噂? アンタそういう噂好きねぇ」
「いやいやマジなんだって! さっき先輩に聞いたんだって!」
部活の休憩時間になれば生徒と遭遇するのは容易だった。
少女達も同じ様に制服姿で、近くの自販機で買ったのかそれぞれ缶ジュースを手にしていた。
柳の姿に気づいているのか、気づいていないのか。
少女達は雑談を続けたまま柳には見向きもしていない。
話し好きそうな少女達を見つけた柳は丁度いい、と躊躇うこと無くユーベルコードを発動させた。
「少しお借りします」
柳の視線が少女達を捉えると、柳の影が次第に形を変えていく。
ソレは影で、UDCで、化物で。
這い出てきたソレは、少女の頭をいとも簡単に食い千切る。
脳漿も、血も、何一つ零すこと無く少女を食らい、食し、蝕す。
全ては一瞬の出来事。瞬き一つする間に全ては終わっている。
気がつけば少女達の側にいた柳に、しかし彼女達は驚くこともなく。
「すいません、今の話、俺に詳しく話してくれませんか?」
そう話しかけてくる突然の人物を、まるで知人の様に、先輩の様に、クラスメイトの様に。
そうするのが当然と言った態度で受け入れる。
「話してくれますよね? メリーさんの電話について、知っていることを」
あなた達が知っていること、あなた達より詳しい人の事、全て隠さず口に出して下さい。
柳の洗いざらい答えろという命令ですら、そうするのが当然かのように少女達は口を開く。
最近になって急に“メリーさん”の噂が広まり始めたこと。
犯人不明の通り魔殺人は全てメリーさんが行っていること。
掲示板やSNSで“注目”を浴びている人が狙われる傾向にあること。
そして、噂の出処が不明なこと。
噂なのだから当然と言えば当然だが、誰に聞いても誰かに聞いた、としか答えが返ってこないという。
「なるほど。協力ありがとうございます」
用を終えると柳は少女達に背を向けて歩き出す。
それに合わせて少女達の“影”に放った眷属を呼び戻し、ソレをUDCが食らい飲み干す。
少女達に今の一連の会話に関する記憶はなく、柳はただ自分達の前を通り過ぎただけ。
それだけであり、途切れた会話が再開される。
記憶が無いのを確認した柳は、さて次の人を探しますか、と足取り軽く。
柳が後に噂となるのは、そう遠くない。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
転入生として潜入。
【魅了の魔眼】と【誘惑17】で学校中の人気男子や一部女子を虜にし、ちやほやされる超人気転入生として派手に動くわ。今まで校内で人気のあった子とか、間違いなく面白く思わない子が出るでしょうね♪
潜入後は新聞部や情報通の子を魅了してメリーさんの情報について情報収集。更にその子達に逆にそのメリーさんの噂は嘘だったっていう噂を広めたり、記事を書くようにする様命じるわ。わたし自身も【催眠術】で声に催眠の魔力を付与し、噂を信じないように周囲に言い含めたりもしておくわ。
ちなみに、自分でも【催眠術】でやるけど、UDCに事件後に魔眼による魅了のアフターケアに記憶処理を依頼しておくわ
※アドリブ等歓迎
●
「フレミア様ー! あの、俺の活躍見てくれていましたか!」
「ええ、見ていたわ。エースと呼ばれるだけはあるのね」
「フレミアさん! これ、さっき調理部で作ったクッキーなんだけど、よかったら!」
「ありがとう。とても美味しそうね」
中庭のベンチに軽い人だかりが出来ていた。
部活のユニフォームを着ている者や制服姿の者。
男女問わずに集まるその中央、ベンチに腰掛けているのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)だ。
他の生徒と同じブレザーの制服姿だが、フレミアの佇まいには気品があり、同じ制服姿でありながら一際目立っていた。
何より目を引くのはフレミアの容姿にあるだろう。
自分達より幼い筈のフレミアは、人ならざる妖艶な魅力を身に纏い、それに当てられた生徒達は自然とフレミアの虜となっていた。
まさしく幼艶なる魔性の姫君と下僕。
「フレミアー!」
「フレミアちゃんー!」
生徒達の中心で笑みを浮かべるフレミアは次々に投げかけられる言葉に一つ一つ返しつつ、とある人物を探す。
部活で活躍する生徒や女子人気の高い男子。
わざわざそんな相手を選んだのは囮として自らに注目を集める為だが、目的はもう一つある。
そんな中で、ようやく目的の人物を見つけたのか、フレミアの視線が一人の生徒に向けられた。
その生徒は他の生徒同様フレミアの魅力に囚われていたが、フレミアの瞳に、魔性に、完全に堕ちた。
心臓を鷲掴みにされたようにドクンと大きく脈打ち、視界にフレミアしか映らなくなる。
「あなた、所属は?」
「……新聞部の、二年です」
気づけば生徒はフレミアの前まで歩み出ていた。
その視線はフレミアの瞳から離せないでいる。
そう、フレミアの放った視線は魅了の魔眼。
ただ誘惑しただけに留まらず、自らに隷属させる強制力すら持ち合わせた力だ。
一介の学生に抗うすべなど無く、身も心も全てはフレミアへと差し出される。
「わたし、まだこの学校に来たばかりなの。この学校のこと、色々教えてくれない?」
「……はい」
隷属化した生徒の様子に疑問を持つものはいない。
なぜならこの場にいる生徒は皆、フレミアに誘惑された生徒なのだから。
故にフレミアの情報収集は滞りなく遂行された。
メリーさんの噂の出処は不明。
しかし、ある時期を堺に急速に学校内に噂は広まり始めた。
「メリーさんは、妬みや恨みを好み、相手を殺す。スマホの着信が鳴り、画面に少女の姿が写り、次の瞬間には……」
「それがメリーさんの手法なのね。ありがとう、参考になったわ。さて、あなた達」
「……?」
「今後、メリーさんの噂を広めることを禁ずるわ。これは根も葉もない噂よ」
立ち上がったフレミアは、周囲の生徒達を軽く見上げながら、その声に催眠の魔力を上乗せして語りかける。
この噂に信憑性はない。メリーさんの存在は確認されていない。
一般人であればこの言葉だけでフレミアに誘導されただろう。
――一般人であれば。
「フレミアさんの言葉でも、なあ?」
「メリーさんはいるものねぇ?」
困惑する生徒に、フレミアも眉を顰めた。
誘惑は通じた、魔眼も通った。
しかし、噂を否定した催眠が通じないのは何故か?
答えは単純、噂を広める存在の力が働いているから。
噂好きな何かはただ否定するだけでは受け入れない。
「ま、情報を得られただけでよしとするわ」
生徒達に掛けられた誘惑と魔眼はフレミアによって解かれた。
フレミアと話していた記憶は確かに残っていない。
だが、春の陽気に誘われて夢でも見ていたのだろうか。
一部の生徒達だけが噂していた。
幼くも妖艶な吸血姫が制服に身を包み、自分達の学友として過ごしていた等と。
大成功
🔵🔵🔵
空飛・空牙
メリーさんって、あれだろ?
自分を捨てた相手にゴミ捨て場から電話かけて徐々に近づいて来る奴
……これもう別の都市伝説じゃね?
何はともあれ
とりあえず目立てばいいんだろ?
野球部にでも乱入するか
事前に【サポート・スピリット】使用
ばれないよう風の精霊を空で待機させておく
バッティングでは
豪快に打ち上げたフライを精霊の風に運ばせてホームランに
守備では
打たれたボールをこれまた精霊の風で自分の所に運ばせてアウトに
ピッチングなら
投げたボールを風で反らして空振りさせる
全部
「今日もついてるな」
で、けらけら笑って済ませるな
何か言われても
「自然現象はどうしようもねぇだろ?」
で誤魔化そう
…にしても
学生服とか何年ぶりだろうな…
●
私メリーさん。今あなたの後ろにいるの。
「……ってやつだったよな、確か」
空飛・空牙(蒼天疾駆の自由人・f04480)はグラウンドに向かいながら事前の説明を思い返していた。
噂されている“メリーさん”が自分の知っている都市伝説と同じならば、今回の怪異は腑に落ちない。
本来であれば狙う相手は自分を捨てた相手であり、繰り返し電話をして徐々に距離を縮めていくというもの。
それが本来のメリーさんであり、そして今回のメリーさんでもあった。
噂は噂、何はともあれ最初の目的を達成しよう。
「そんじゃ、頼んだぜー」
喚び出した風の精霊をグラウンドの上空で待機させて準備は完了。
練習に励む野球部に声をかけた。
「部活体験に来ましたーってな」
その言葉に何名かが空牙に顔を向けたが、すぐに練習に集中しだした。
代わりに投球練習していた部員の一人がやってきて。
「転校生かな? 野球部へようこそ」
「ども。早速で悪いんだが、俺の実力見てもらっていいか?」
「えっ、構わないけど……君、ポジションは?」
話が早くて助かる。
制服の上着を腰に巻き、シャツを腕まくりする。
ニヤリと笑みを浮かべ、空牙は自信満々に言い放った。
「全部だ」
カキーン、と空高くにボールが打ち上げられる。
高さは申し分ないが勢いが足りない。
誰が見ても平凡な外野フライに、センターが落下地点目指して走る。
口ほどにもない、と笑う部員もいるが、空牙はそれを悔しがるでもなく落ち込むでもなく、笑っていた。
センターが走る。
まだ走る。
まだまだ走る。
ようやく足を止めた所で、平凡な外野フライだったボールはフェンスを軽々と超えた。
「今日もついてるな」
呆然とする野球部一同の中で、空牙だけがけらけらと笑っている。
その様子にムキになったピッチャーがもう一球勝負を申し込んだが結果は同じ。
空牙の表情は崩れること無く、楽々とホームランを打ってのける。
突如現れた転校生、空牙の快進撃はそれだけに終わらない。
守備練習をさせれば何故かボールは空牙のグラブに吸い込まれる様にバウンドしたり落下したり。
ピッチングをさせれば自由自在な変化球に誰一人ヒットを打てない。
流石に疑問を持った部員が文句を言ってきたが。
「自然現象はどうしようもねぇだろ?」
なんて言う空牙に返す言葉がなかった。
野球部の新星は瞬く間に注目を浴びることとなる。
尚、当人は久しぶりの学生服を気にしていた。
成功
🔵🔵🔴
寧宮・澪
◎
はー……学生さんになって、囮……。
できるでしょかー……。
まあ切り替えてー……。
目立てば、いいとー……。
あ、学生服ってこんななんですかー……初めて着ます……みんなおそろいって不思議ですねー……。
じゃ、謳い、ましょー……。
【鼓舞】、【祈り】、【破魔】の想いのっけて【歌唱】ー……合唱部の見学でも、他の部活でもどこでも、歌える、かとー……。
ちょっぴり【催眠術】と【誘惑】で、見た目やスタイルが目立つようにー……。
うーん……ちゃんと気を引け、ますかね……ふつーですし……まあ、やるだけ、やりますー……。
一応、自作自演で……SNSで、噂広げて、【おびき寄せ】ましょー……転校生が、すごいってー……。
●
支給された制服の袖に腕を通し、鏡に映る見慣れない姿の自分に首を傾げる。
これが学生服で、皆お揃いの格好。
不思議ですねー、なんて寧宮・澪(澪標・f04690)はマイペースに。
更衣室を後に澪が向かうは合唱部の部室。
その際に、すれ違う男子生徒の視線が澪に注がれていた事に、澪は気づかない。
「ここが、合唱部ー……? でしょうかー……」
「そうだけど、貴女は?」
「私は、転校生でー……部活の、見学にとー……?」
「ああ、そういうこと。それならどうぞ中に」
すんなりと澪を招き入れたこの場所は合唱部の部室。
部室の中では女子生徒達が休憩、というよりはだらけていた。
顧問がいないためか、春休み中のためか。
真面目に部活に入れ込んでいる生徒はおらず、澪はまたも首を傾げる事に。
「誰も、歌わないのでー……?」
「んー? 休憩終わったらねー」
澪の問いに、近くにいた女生徒が投げやりに返した。
こちらを見ることすらせず、手元のスマートフォンを弄ったまま。
「こら! 折角見学に来てくれてるのに! そもそも休憩時間はもう終わってるのに」
「ちょっとくらいいーじゃん。先生もいないしのんびりしよーよー」
「先生がいなくても転校生がいるでしょ! 活動してるとこ見せないと見学にならないじゃない!」
「これだって活動の一つだって」
部長と女生徒の口論は続く。
初めは澪を、規律を、と口にしていた部長だったが、次第に内容は不満へと。
適当にあしらっていた女生徒も段々と頭にきたのか不機嫌に。
蚊帳の外へと置かれていた澪は、それでも慌てることはなく。
眠たげな瞳を瞼が閉ざし、代わりに口が開かれた。
「――――」
密室の部室に澪の声が響き渡る。
二人の口論は止まり、澪が謳う旋律に心を奪われていた。
部室に渦巻きつつあった険悪な空気は払われ、不思議と鼓舞される音色は鬱屈とした気持ちを持ち上げて、これ以上争う気持ちになれなくなっていた。
澪が謳い終わると二人は互いに非を認めて謝り合っていた。
「喧嘩は、ダメですよー……?」
いつものほわほわとした口調に、口論していた二人は謝罪して。
部活動を再開するのかと思いきやそんな事もなく。
「ね、ね、貴女綺麗な歌声してたわね。何か賞を貰ったりしてない?」
「先輩綺麗だけど、メイクどうしてるの? 彼氏とかいる?」
澪の歌唱一つですっかりと惹きつけられてしまった女生徒二人。
そんな二人を皮切りに他の部員達も澪の周りにと集まりだす。
それもその筈、澪はただ歌唱したのではなく、その声にわずかばかりの魔力を乗せて催眠術を施していた。
加えて持ち前のスタイルの良さもあり、女生徒であろうとすっかり誘惑されてしまっているのだ。
尤も、全員という訳ではなかったが、それこそ澪の目論見通り。
ほわほわとしていながら、打算的に行動を起こし、見事に注目を集めることに成功した。
目立つことに成功した澪は暫くしてから合唱部を後にして。
自らの端末からこの学校の生徒が利用しているSNSに噂を拡散した。
“合唱部に来た転校生がすごい”と。
成功
🔵🔵🔴
立花・乖梨
学生という立場"クラス"の記録は無いのですが――折角です、制服を頂いて突入しましょう。小柄な身体なのできっと違和感無く着こなsあっ、これブレザーさんキツ……。
※アドリブ歓迎ですです!
UC【七天六花】から「私」は、<嫉妬―聡明毒舌な私>と動きますです。
<私>は放送部として。
チェーンメールを受け取った人間への注意喚起を兼ねて放送室に来るよう『呪詛』『衝撃波』を使い、伝播洗脳…大袈裟ですね。
※嫉妬は頭良いけど口が悪いです。
「私」は新聞部として、部の皆さんを持ち前のノリで連れてって大スクープ狙いです!放送部さんと連携して噂の在処を聞いてみましょう。沢山来て貰えると良いですねですね!
●
「あっ、これブレザーさんキツ……」
他の猟兵と入れ替わりに女子更衣室で制服と奮闘する少女、立花・乖梨(bye-stader・f05235)の姿がそこにはあった。
学生という記録は私達の中には無いが、折角だから潜入してみよう。
そう息巻いて支給された制服を受け取ったはいいが、サイズを間違えていたのか少々キツかったようだ。
それでも何とか着替えを終えて鏡で確認するが、やはりサイズが小さいようで体のラインが出てしまっていた。
ブレザーなのでそこまで目立ちはしないが、男子生徒は意識してしまうかもしれない。
それに気づいているのか、乖梨は制服の着こなしに小さく「よし」と呟いて。
次いでユーベルコードを発動させた。
放送部では今日の放送についてのミーティングが行われていた。
春休みと言っても部活動が盛んな逢見高校では多くの生徒が登校している。
その為、こうして放送部も部活動をしているのだが、連日放送するネタが尽きかけていた。
ミーティングが煮詰まってきた、そんな時だ。
「皆さん、チェーンメールの噂、知らないんですか?」
視線を集めるその言葉の発信源は立花・乖梨だった。
転入生として入部した、というていで今までミーティングの様子を伺っていたのだが。
部の空気や人柄を大まかに把握したのか、次の行動へと移った。
「立花さん、だったね。その噂というのは具体的にどんなものなんだい?」
「部長さん、春休みだからといって気が抜けすぎていませんか。そんなんじゃこの情報社会で生きていけませんよ」
新入りでありながら挑発的な言葉を使う乖梨に、部長と呼ばれた男は言い返せずにいた。
乖梨の言葉に心当たりがあるのか、気が弱いのか、それは知る所ではないが今は関係ない。
「噂というのは、当然メリーさんについてです。それくらいは皆さんも聞き及んでいますよね?」
「それは、まあ……」
「簡単に言うと、このメールを後何人かに送らなければメリーさんに狙われる、という類です」
合点が行ったのか、部員達は頷いて納得した様子だった。
その反応を見た乖梨もまた、この状況に内心で納得していた。
メリーさんの噂に関しては憶測でしかなかったが、周りの様子からメリーさんがそういう手口を取る事はあり得る、と。
「では、注意喚起も兼ねて今日の放送はチェーンメールについて<私>が行いますね。今時こんな手口に引っ掛かる人がそうはいないと思いますが。ああ、むしろ今の時代だからこそ知らずに、という愚かな可能性はありますね」
そうしてミーティングは終わり、放送が行われた。
呪詛を携えた言葉は、常より生徒の耳に届く程に響き、その足を放送室へと向けさせる。
電波洗脳ならぬ伝播洗脳だった。
「皆さん、今の放送を聞きましたか? 聞きましたよね。口が悪かったのは気にしないでいいです。そんなことより特ダネです、です。これはもう新聞部総出で行くしかないですよ。巷を騒がせているメリーさんについて進展があるかもしれません。さあ、行きましょう、ですです」
捲し立てるように新聞部員に告げては放送室へと向かわせる。
戸惑う部員も、さあさあ!と背中を押して。
今日入部したばかりの立花・乖梨。
そんな彼女に促されるがままに放送室へ向かう放送部。
小柄な体のどこからそのエネルギーは沸いてくるんだ、なんて軽口も混ざりながら。
それでもやはり新聞部というべきか。
新しい情報を得られると士気が上がっていた。
男子部員はどちらかと言うと前を歩く乖梨の姿に気がいっていたが、本人は露知らず。
「学校を騒がせているメリーさん、「私」達も気になります、です。噂の在処なんかも聞いてみましょう。知ることが出来たら大スクープ校内掲示板一面間違いなしです」
乖離した乖梨達による扇動で放送室にはチェーンメールを受け取った生徒達が集まっていた。
被害者が多いのは問題だったが、作戦結果は上々に終わり乖梨達は満足気だ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『噂語り』
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POW : 自分ソックリの妖怪『ドッペルゲンガー』の噂
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使ってきた猟兵のコピーを生み出し、操り】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 学校の七不思議『動く模型』の噂
戦闘用の、自身と同じ強さの【動く骨格模型】と【動く人体模型】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : 予言をする妖怪『くだん』の噂
対象のユーベルコードに対し【使ってくるユーベルコードを言い当てる言葉】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
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噂語りとは直接戦闘は行いません。
“メリーさん”の噂より生徒の興味を惹く噂を流すのが2章の成功条件です。
又、1章と同じ時間軸という指定も可能です。
その際はプレイングにその旨を記載下さい。
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●噂語り
“あの事件メリーさんがやったんだって”
“あの子、メリーさんに殺されたらしいよ”
“購買の唐揚げ半額だってよ!”
“妬み恨みを買うとメリーさんに殺されちゃうんだって”
校内を歩く生徒は噂する。
始まりは誰だったか。
これは誰に聞いたのか。
その存在を誰も知らず、誰も気にしない。
噂は一人歩きを始め、今では形を得てしまっている。
メリーさんは実在する。
オリジナルとは異なる無邪気な殺人衝動に駆られる少女メリーさん。
それこそが実態の無い噂の本質。
空想、妄想、幻想には決まりも際限もない。
原典と異なろうとそれは本物に違いないのだ。
そう、そんな噂を形にしてしまうのが噂語りの力。
だから塗り替えてしまおう。
噂は虚構でいい、噂はバカバカしくていい、噂は噂なんだと。
青春に血生臭い噂は必要ない。
噂語りの洗脳から生徒達を解放すべく。
さあ、噂を騙ろう――。
八坂・操
◎【SPD】
そーそー、血生臭い噂話を一笑して、自分が馬鹿を見るのはスクリーンの中だけで十分だよね♪
だから明るい噂話でもばら撒こっか♪ 他人を落とさず、自分を上げられるよーなヤツをね☆
という訳で、やって来ました新聞部♪ 【影の煩い】に『変装』させて、無口の幽霊部員っぽく『目立たない』ようにしながら忍び込んで、号外の新聞を捏造しよっと♪
『噂の転入生達の共通点は長髪にあり?』って見出しで、『能力を高める為に長髪で願掛けをしている』みたいな内容をちょいちょいっとね♪
操ちゃんは言わずもがな、他に囮役してる皆も髪は長めだったしねー♪
……他人と比較した所で、結局は自分の問題だ。なら自身を高めた方が有意義だ。
●
噂を楽しむのは結構。
学校七不思議なんて定番だし、怪談話で盛り上がるのも大いに結構だ。
だが、その結果怪談に殺されてしまうなんてのはフィクションだけでいいんだ。
「自分が馬鹿を見るのはスクリーンの中だけで十分だよね♪」
ヒヒヒッと変わった笑い声が廊下に響く。
ホラーも、パニックも、スプラッターも映画だから楽しめる。
噂だって同じで、何より――。
「という訳で、やって来ました新聞部♪」
テンションのままにドアを開け放って颯爽と現れる制服姿の操。
と、普段の彼女なら登場していただろうが今回は違った。
制服姿なのは変わらないが、目立つ黒い長髪が無くなっている。
ショートヘアにマスクをし、片目だけ覗かせる髪型は健在で。
如何にも大人しそうと思わせる少女の姿へと変装した八坂・操の影だ。
静かにそっと戸を開けて中の様子を窺うと、そこはもぬけの殻。
「おやー? 操ちゃんが折角変装してきたのにお留守かな?」
おやおやーなんて言いながら大袈裟に首を傾げては部室を見渡して。
本当に誰もいないと分かればそれはそれで好都合と部室の物色を始めた。
程なくして一台のPCに電源が入っている事に気づく。
「みーつけた♪」
探していたのは生徒に号外を知らせる方法。
掲示板に張り出すよりも効率的に知らせるには、直接手元に届ければいい。
UDCアースの一般的な高校生であれば誰もが持っているスマートフォンに。
「そうだねー他の皆も動いてるみたいだし、見出しは『噂の転入生達の共通点は長髪にあり?』とか☆ 他にも『能力を高める為に長髪で願掛けをしている』なんてのもいいかな♪」
部活動で現在学校にいる生徒達の間には既に転入生の噂は広がりつつあるだろう。
ならばそれに便乗して転入生に関する新しい噂を流せば食いつく生徒も多いハズ。
そこに目をつけた操は早速転入生の噂を打ち込んでいく。
「操ちゃんは言わずもがな、他に囮役してる皆も髪は長めだったしねー♪」
漆黒、黒、金と色は違えど囮役の女性陣は誰もが長髪だった。
腰丈以上もある髪は珍しく、噂の信憑性を上げてより注目を買うことになるだろう。
「ふんふふーん♪ 何だか楽しくなってきちゃった☆」
あれも、これも、あんなことから、そんなことまで。
楽しげに記事を書き上げて。
ポチ、と新聞部のアカウントでSNSに号外として投稿した。
――他人と比較した所で、結局は自分の問題だ。なら自身を高めた方が有意義だ。
血生臭い噂なんて一笑してしまおう。
ヒヒヒッと変わった笑い声を響かせながら八坂・操は廊下を闊歩する。
「メリーちゃんまーだかな♪」
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
◎
1章と同じ時間軸。メリーさんの噂を否定できなかった代替として、新聞部や虜にした生徒達へ下記の噂を広める様に【催眠術】で命じるわ。
「幸せを運ぶ少女の噂。長期の休みにのみ校内に現れる赤い瞳の少女。その少女を見掛けた人には幸運が訪れ、カップルで少女に会えると末永く幸せになるという噂」
人って恋愛とか幸福に弱いからね。それに、他人事ならともかく、自身にも不利益が出る噂なら、それよりは自分達に利益を齎す噂の方が優先されるのも、信じたくなるのも当然じゃない?
魅了を解いた後、わたしの事もその噂の少女と思ってくれれば好都合だしね。
後は運気がほんの少し上がる加護くらいは掛けてあげようかしらね♪
※アドリブ等歓迎
●
休憩中の生徒達が集まる中庭。
その中庭に生徒達が集まる一角の中央で、フレミア・レイブラッドは考え込んでいた。
魔眼で虜にした生徒にも直接メリーさんの噂を否定することは叶わなかった。
それはつまり、別の超常的な力が働いている事を意味している。
ならばその代替案、噂を上書きしてしまうのはどうだろうか。
「ねえ、こんな話を聞いたことはない?」
フレミアの言葉に生徒達は注目する。
「なになに、聞かせて!」
「どんな話ですか?」
周囲が興味を持っている事を確認したフレミアは言葉を続ける。
「幸せを運ぶ少女の噂。長期の休みにのみ校内に現れる赤い瞳の少女。その少女を見掛けた人には幸運が訪れ、カップルで少女に会えると末永く幸せになれるという噂」
気まぐれに妖艶な少女の噂。
それは、こんな風に人を集める魅力を持っているのかもしれない。
なんて冗談めかして話すフレミアの言葉は生徒達に自然と受け入れられていく。
中には相変わらずフレミアの魅了に堕ちて全てを肯定しているものもいたが、それはさておき。
「そこのあなた。もしその少女がいたとしたらどうする?」
「え、わ、私ですか……?」
フレミアの視線の先にいたのは人だかりの少し奥で、遠巻きに見ていた少女だった。
こちらにおいで、という仕草におずおずと人だかりから一歩前へと出て。
「もしもでいいの。私がその噂の少女だったとして、あなたに幸運が訪れるとして……そうなったら何を望む?」
「その……私、好きな人がいるんです。この恋を成就させてとはいいません。少しでも私を見てもらえるようになったら、いいなって……あ、いえ、何でもないです。私なんかがそんな」
言ってから恥ずかしくなったのか、少女は慌てて誤魔化そうとするが、それをフレミアが制した。
楽しげに笑みを浮かべるフレミアの、じっと見つめる赤い瞳から目を逸らせずに。
「幸運というのは、笑顔にこそやってくるものよ。もっと自信を持つといいわ。きっと幸せを運ぶ少女も、笑顔で楽しそうにしているあなたになら、幸せを運んでくれる筈よ」
人は恋愛や幸福に弱いもの。
不穏な噂よりも自分達に利益を齎す噂の方が優先されるだろう。
それは青春を謳歌する学生達だって例外ではない。
自信満々に言い放つフレミアの言葉を、語った噂を。
その通りかも知れない。本当にいるのかも知れない。
気づけば生徒達の間で交わされる話題は幸せを運ぶ少女についてに移り変わっていた。
「フレミアさん……ありがとう。私、頑張ってみる」
「フフ、頑張りなさい。応援してるわ」
生徒達に噂が浸透したのを確認してから、パチンと合図をする。
「その少女は千変万化・変幻自在な吸血姫。今は学生として、学友にほんの少し加護を掛けてあげるわ♪」
魅了が解けて放心状態だった生徒達はやがてハッと我に返る。
皆一様に何故ここにいるか不思議に思っていた。
グラウンドに、部室に、図書室に。
休憩を終えて元の場所へ戻る生徒達は楽しげにこんな話をしていた。
幸せを運ぶ赤い瞳の少女を見た、と。
大成功
🔵🔵🔵
寧宮・澪
◎
さて、噂の払拭、ですかー……。
『謎の転入生はかっこいい』、
『優れてる転校生は、実は学園の平和を守る何か?』、
『謎の転校生は謎の組織所属じゃないかな』、
『怪異と戦う組織があるらしい』、みたいな、ちゅーに病をくすぐりそうな情報、噂をー……SNSや、裏サイトに、流しましょー……。
【ハッキング】、【情報収集】、で、優勢になるよう情報操作……【催眠術】を利用して、印象強くなる、ようにー……。
メリーさんの噂以外でも、平和話題、そんな感じで広めます、ねー……。
ついでに……たまに放送室ジャックしてー……お昼の番組で、【催眠術】、詩にのせてー……使いつつ、噂を広げましょうね……詩も謳います、よー……。
●
「風が、気持ちいい、ですねー……」
生徒の立ち入りが禁止されている屋上で、澪はのんびり日向ぼっこ。
という訳でもなく、きちんと目的があってこの場所にやってきていた。
「さて、噂の払拭、ですかー……」
次の目的を口に出して確認する。
合唱部で注目を浴びることは成功した。
その際に自分を疎む目で見ていた部員がいたのも確認済みだ。
よって、次はこれ以上事件が拡大しないための動きが必要だった。
「情報操作、いきましょー……」
壁に背を預けてスチャッと電脳ゴーグルを装着する。
意識は自然と電脳世界へと移り、頬を撫でる風の感覚すら消え失せる。
これこそが澪にとってのもう一つの現実。
展開した電脳世界を渡り歩き、瞬く間にこの学校の使うSNSや掲示板を探し当てる。
生徒達の間では転入生の話が主で、他には赤い瞳の少女の話やドッペルゲンガーの噂も見られた。
(お手伝い、しましょうー……)
恐らくこれらは他の猟兵が流した噂だろう。
そう判断した澪はすぐさま噂の拡散を始めた。
『謎の転入生はかっこいい』
『優れてる転入生は、実は学園の平和を守る何か?』
『赤い瞳の少女はとても可愛いらしい』
『ドッペルゲンガーも可愛い』
『💪( 'ω' 💪)』
『謎の転入生は謎の組織所属じゃないかな』
『怪異と戦う組織があるらしい』
SNSに、掲示板に投稿された澪の発言は瞬く間に拡散されていく。
その発言を受けてか、転入生の正体を予想する大喜利が始まったり、何でもない噂が書き込まれたり。
中にはキツイ言葉で噂を否定する者もいたが、澪の情報操作によって自然と話題は転換されていく。
ただの生徒が彼女に情報戦で勝つことは出来ない。
情報が順調に拡散されていく推移を見守りながら、並行してもう一つのシステムをハックする。
「お昼の時間、ですよー……」
放送室ジャック。
昼を告げるチャイムの後に、ほわほわとした声がスピーカーから響き渡る。
今日はこの曲ですよー、なんて言いながら自ら詩を謳う。
スマホを手にしていなくても、これで全ての生徒の耳に声を届けることが出来る。
詩を通して、噂を。
昼休憩を終えて、改めてSNSを確認するもそこでメリーさんの噂をしているものは殆ど見られなかった。
占めているのは4つの噂。
“長髪の転入生”、“赤い瞳の少女”、“7人のドッペルゲンガー”の3つ。
そして『放送室のセイレーン』だった。
大成功
🔵🔵🔵
立花・乖梨
急ぎましょう、殺意に飲まれたメリーさんが来る前に…
言葉遊びに嘘騙りは得意な方です。
【一章と同じ時間軸】で。
※引き続きアドリブ歓迎ですですっ!
◆UC「七天六花」は継続。
既に2人の私は視認されていますですし、切欠はそこから。
*ドッペルゲンガーの噂を逆に利用。
この学園に立花・乖梨は"7人"居る――なんて如何でしょう?
いや、強ち間違いでは無いのですけれど――。
(7人どころか12人になっちゃったりしそうですねぃ。けれど、同じ人間がそんなにいたらびっくりされそうなので問題無いでしょう、でしょう。)
メリーさんよりも身近な謎は、興味を惹かれますでしょうかね?
*1人は気弱なので、出てこないのです。
●
「急ぎましょう、殺意に飲まれたメリーさんが来る前に……」
第一の目的は達成した。
メリーさんに関する情報はある程度収集できたし、他の猟兵も動いている。
ならば次の目的を達成するべく動こうか。
大まかな流れを思い描き、立花・乖梨は行動を再開した。
ニヤリとした笑みを携えて。
(幸い言葉遊びに嘘騙りは得意な方です)
「皆さん、ドッペルゲンガーの噂について聞いたことはありますか?」
新聞部の部室に戻ってきてすぐに乖梨が切り出した。
噂を集める部なだけあってか、部員は皆知っていると答えた。
「実はですね、この学園には立花・乖梨は“7人”居る、と小耳に挟みまして」
「立花・乖梨って……君がかい?」
「ですです。その立花・乖梨ですよ」
突然の告白に部長も他の部員も苦笑いを浮かべていた。
それもそうだろう。いくら面白いネタを求めているとはいえ、信憑性のないネタは記事にしにくい。
だが、そんな空気の中で一人の青い顔をした男子部員がおずおずと手を上げた。
「あの、立花さん……立花さんって、姉妹とかいます?」
「いいえ、「私」に姉妹はいません」
「じゃあ、放送部に知り合いは……?」
「いませんね。転入してきたばかりなので知り合いは皆さんだけです」
「そう、ですか……」
淡々とした受け答えをする乖梨の言葉は、冗談を言っている様には思えなかった。
その反応で他の部員も何か察したのだろう。
もしかして? まさか?
部室内にそんなひそひそ話が広まり始めた。
(7人いるというのは強ち間違いでは無いのですけれど――)
それどころか12人になってしまったり、なんて言ってしまうと流石に信憑性が薄れてしまうか。
周りの様子を伺いながらニコリと笑い。
「気になりますね。興味を惹かれますね。どうでしょう、次の記事の見出しとしてインパクトありませんか? 何せ、「私」達は話題の転校生ですからねぃ」
自分自身すらネタにするその姿勢はまさに新聞部。
そんな風に受け止められたのか、新聞部の次の議題はドッペルゲンガーへと移り変わっていた。
大成功
🔵🔵🔵
御伽・柳
使用UC:【痃癖】
さて困ったな……俺はUDCの力を利用できる以外は普通の人間なので、いい噂を流せる方法があまり浮かばないんですよね……
……ならば、そうですね、引き続き【痃癖】を使って話を聞いて回りましょう
記憶の食べ方を少し雑に、誰かと話したという事だけは残すようにします
『噂話をしていると、いつの間にか誰も顔を思い出せない誰かが会話に混ざっている』
とか、そんな感じの噂になってくれれば良いのですけれど
あとは、可能ならばメリーさんの噂に関する知識……記憶は念入りにUDCに食わせましょう
他の噂が際立つように、同僚達が流した新しい噂にもっと目が向くように
●
「ねぇ聞いた? 何か転入生達が色んな部活で活躍してる話」
「別にうちじゃそこまで珍しくないでしょ。スポーツ推薦で入ってくる人は多いし」
「そうじゃなくて、運動部以外でも何だか面白い事になってるみたいなの」
「へぇ、それは気になりますね。でも、今目立つのは不味いんじゃないですか。ほら、例の通り魔の」
「ああ、あの……あれ、何だっけ?」
「何って……んん? 転入生の話よね?」
「え? ああ、そうそう転入生。その転入生がね――」
渡り廊下を歩きながら、柳は今しがたすれ違った生徒達の話を思い返す。
(俺以外の人は上手く噂話を流しているようですね。俺も何か噂を流すべきなんだろうが……)
肝心のその噂が思いつかない。
自分には人に話して面白い話しも経験も持ち合わせていない。
かと言ってこのままメリーさんが現れるまでフラフラとほっつき歩いている訳にもいかず。
自分にできる範囲で同僚達のサポートに回ることにした。
結果、内に宿すUDCに先程の様に生徒の記憶を食べさせているのだ。
「放送室のセイレーンって誰なんだろうな」
「ああ、それって例の転入生って噂ですよ。とても美人だって噂です」
「お、マジで? めっちゃ歌が上手かったから合唱部とか吹奏楽部かな」
「あ、美人の噂で思い出したけどさ、例の通り魔も可愛いって噂だぞ」
「通り魔って……誰だっけ」
「は? ほら、さっきも言ってたじゃん。……えーと、あれだよあれ」
「赤い瞳の少女。出会うと幸運を運んでくれる、とか」
「あ、あー、それだ」
「その子を見たって奴がいるらしいな。何かお嬢様っぽいらしい」
通りがかった生徒に話しかけてまた一つご馳走様。
メリーさんに関わる記憶は念入りに、自分に関わる記憶は大雑把に。
そうすることで『噂話をしていると、いつの間にか誰も顔を思い出せない誰かが会話に混ざっている』なんて噂も流れて、メリーさん以外の噂話に興味を持ってもらえれば、という作戦だ。
そうしてる間にも生徒達を通して他の猟兵の噂話が耳に入ってくる。
バスケ部に現れたルーキーや野球部の新星、7人のドッペルゲンガー。
同僚に対して妬ましいという気持ちは無いが、才のある人は羨ましいな、と心の隅で思わなくもなかった。
「人を呪わば穴二つ。負の感情で動いたって、ろくな事にはならない」
それは自分に言ったのか、メリーさんの噂に踊らされる生徒に言ったのか。
ポツリと零れた言葉は誰にも届かない。
今は記憶を食らい、食らい、食らいつくそう。
最後には、怪異すらも……。
そんな柳の行動についた噂話は“顔の無い男子高校生”だった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『都市伝説』メリーさんの電話』
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POW : キミの背後のメリーさん
【背後からの斬撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【致命的ダメージを与える素早い二撃目の斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 【フレーム間妨害UC】メリーさんの電話
【冒険・集団戦を含めて、自分に対して好奇心】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【電話機(この電話機は対象の周囲に現れる)】から、高命中力の【対象を追跡して、ナイフで攻撃する少女人形】を飛ばす。
WIZ : メリーさんは何処かな?
レベル×5体の、小型の戦闘用【ナイフを持った、自分と瓜二つの精巧な人形】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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情報収集によるプラス判定
・POW、SPD判定にボーナス
・特定ユーベルコードの不意打ち回避
●SPD【フレーム間妨害UC】メリーさんの電話
好奇心=メリーさんに関する情報収集を行った という扱いとします。
携帯電話、スマホからも出現して不意打ちを行ってきます。
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●『都市伝説』メリーさんの電話
あと数刻もすれば、時刻はやがて逢魔時へと差し掛かる。
部活に励んでいた生徒達も帰り支度をし、昼とは一転して静けさを増していた。
そんな逢見高校の屋上に何名かの学生服を着た猟兵が現れた。
誰と示し合わせたわけでもなく、何となくここに来るのではないかという予感。
「フフフ、アハハッ」
無邪気な笑い声に一行が視線を向けると、そこには一人の少女がいた。
プラチナブロンドを靡かせる、白いドレスの少女。
その絵に描いたような姿は、一目で少女がメリーさんだと理解させられた。
メリーさんもまた、対象が人間ではなく猟兵だということを理解した。
でも、だから、それが、どうしたというのだろうか。
彼らは私と遊んでくれる。
彼女は簡単に壊れたりしない。
殺してくれと言われたから殺す。
殺してみたいから背後から斬り殺す。
メリーさんとの殺戮遊戯が幕を開けた。
フレミア・レイブラッド
この子がメリーさんね。
可愛らしいけど、眷属にはなってくれそうにないわね…。
仕方ない。このまま貴女の遊びに付き合ってあげる♪
自身に【念動力】で不可視の防御膜を張り、攻撃を防ぎつつ【見切り、第六感、残像】で回避。
更に背後からの攻撃を逆手に取り、【念動力】で網を張り巡らす等の罠を仕掛ける。
また、戦闘用人形も念動力の網で空間に固定し、一気に薙ぎ払って消滅させるわ。
戦闘は【怪力、早業、串刺し、鎧砕き、2回攻撃】の魔槍による連続攻撃。
最後は全魔力を集中した【神槍グングニル】で一気に消し飛ばしてあげるわ♪
楽しかったかしら?骸の海に還る前の最後の遊び…名残惜しいけどそろそろ終わりにしましょう。
※アドリブ等歓迎
八坂・操
◎【SPD】
やっほーメリーちゃん♪ 何時になく殺気立ってるね☆
うんうん、皆から頼まれたらなら仕方ないよね♪ 誰かに仇成すその在り方までは変えられないからね♪
……だから、ここで一切合切終わらせるよ。
ま、操ちゃん自身はまだ出て行かないけどね♪ 対峙して啖呵を切ったのは【影の煩い】の操ちゃんなのでしたー☆
ドスを片手に特攻! 不意打ちによる返り討ち! どうあがいても一般人はメリーさんに敵わない!
……そう、謎の転校生はメリーちゃんに殺されて、全ては振り出しに戻る。
『忍び足』で『目立たない』よう一足飛びで近付き、操ちゃんごと『串刺し』貫手で『だまし討ち』だ。
「きゃあ、じぶんごろし」
「ヒヒヒッ、ごめんね♪」
寧宮・澪
◎
こんばんはー、メリーさんー……。
楽しく遊びたい、のはいいですがー……壊しちゃうのはめーですよー。
壊されるのも、嫌なのでー……大人しく帰ってください ねー……。
UC【霞草の舞風】、使用ー……。
そっくりなお人形さんがいても、メリーさんも、全部【範囲攻撃】、で巻き込んでー……。
巻き込めない位置の子は、スマホ取り出して、【おびき寄せ】てみましょー……。
可愛いお嬢さん、ですがー……少々、残忍ですねー。
……お友達、欲しかったのはいいんですが、うーん。
過激な、友愛表現ですねー……。
ちょっと難しいので、彼岸にお帰りください、ねー……。
手向けの、お花はー……差し上げ、ますのでー……。
御伽・柳
◎
行動【WIZ】
使用UC【過食癖】
使用アイテム【閃光手榴弾】
さて、ようやく黒幕が出ましたか
今回は満足いくまで食えただろ、ならその分しっかりと働け
……すっかりメリーさん本人と戦う時の事を忘れていたのですけれど
これ、俺自身の噂の広げ方的に他の猟兵の皆さんの方にメリーさんは向かうのでは
ならそれを利用させてもらいましょうか
人形に感情はない、ならば動かしている本体を縛るしかない
相手がこちらを向いていない間、あるいはこちらに注意を向けた瞬間に【閃光手榴弾】を使います
それともこういうものには【激痛耐性】でそのナイフを受け止めた方が案外驚くんだろうか
まあいい、ほらデザートがそこにあるぞ、遠慮なく喰らい尽くせ
●
「やっほーメリーちゃん♪ 何時になく殺気立ってるね☆」
「やっほー長髪の転入生ちゃん♪ バスケ部に頼まれたから殺すね☆」
軽い調子で挨拶する操に、同じ調子で返すメリーさん。
友達と話すかのようにフランクに、そして無邪気な笑顔のままに手にしたナイフを突き出してくる。
少女らしからぬ跳躍力で一気に距離を詰めたメリーさん。
そのナイフはひらりと躱す制服を切り裂く。
「やーんメリーちゃんったら過激☆ うんうん、皆から頼まれたら仕方ないよね♪ 誰かに仇成すその在り方までは変えられないからね♪」
「そうなのー。皆困ってるからね、ここで死んでね長髪ちゃん♪」
「キャー☆ 操ちゃんピーンチ♪」
なんてやり取りを屋上の影から覗く八坂操の本体。
対峙しているのは影の煩いで生まれたドッペルゲンガー。
「ヒヒッ、楽しそうだね♪」
おいかけっこを楽しむ子供のように、メリーさんは殺しを行おうとしている。
その楽しそうな様子を盗み見ながら口角を釣り上げて笑みを浮かべる。
(……だから、ここで一切合切終わらせるよ)
ナイフを片手においかけっこを楽しむメリーさんの前に、一つの影が割って入る。
「貴女がメリーさんね」
「あら、赤い瞳の少女さん。貴女も一緒に遊びたいの?」
「ええ、そうね。でもその前に、私の眷属になるつもりはない?」
「ない♪」
「そ。じゃ、このまま貴女の遊びに付き合ってあげる♪」
可愛い眷属が増やせるチャンスだったのに。
口惜しそうにしつつも、駄目で元々。
こうなる展開は予想済みだったフレミアは真紅の魔槍を振るいメリーさんに距離を置かせた。
「フフフ。ねぇ、赤い瞳の少女さん。私達にも幸福をちょうだい?」
「私達……?」
疑問が口に出たその時。
背後に現れた殺気に、フレミアは咄嗟にその場から飛び退いた。
「フフ、私メリーさん」
「今貴女の後ろにいるの」
視界に映る二人のメリーさん。
しかし聞こえてきた言葉はその二人だけではなく、背後からも。
とった! そう確信したメリーさんのナイフはフレミアの背中を貫いた。
「来ると分かっていれば躱すのは造作もないわ」
「え? あれ?」
貫いた筈のフレミアはそこにはおらず、代わりに念動力で編まれた網がメリーさんの腕に絡みついて拘束していた。
傷どころか汚れ一つないフレミアが背後に立ち、身の丈以上ある大きな魔槍でその首を刎ねてのける。
「幸福を頂戴、と言ったわね。いいわ、貴女にも与えてあげる」
屋上を吹き抜ける風に髪を靡かせて。
不敵に微笑み細められる赤い瞳が、携える槍の切っ先がメリーさんを刺す。
どこまでも気品ある所作にフレミアの態度は揺るがない。
「その寂しさ、私が埋めてあげるわ。来なさい」
幼艶な吸血姫の誘いに、メリーさんは、メリーさん達は。
無邪気な笑みと殺意を以て襲いかかった。
「こんばんはー、メリーさんー……」
「こんばんは、放送室のセイレーンさん」
交わる金属が火花を散らす背後。
穏やかで、緩やかで、ほわほわとしたいつも通りの調子の澪と、それにつられたかスカートを摘み丁寧に挨拶を返すメリーさん。
「楽しく遊びたい、のはいいですがー……壊しちゃうのはめーですよー」
「勝手に壊れちゃうんだもの。私のせいじゃないよー?」
首を傾げてほわほわ。
外見は可愛いお嬢さん。
しかしその行いは無邪気ではあるものの少々残忍が過ぎた。
(……お友達、欲しかったのはいいんですが、うーん)
平和的な解決方法があれば、と。
「セイレーンさんは簡単に壊れないでね!」
「壊されるのも、嫌なのでー……大人しく帰ってください、ねー……」
セイレーンは決して優しい存在ではない。
その声に惑わされたが最後、彼岸まで送られている事だろう。
澪が取ったのは優しく送り出す謳ではなく、魔法による排除。
彼女の周囲にヒラリヒラリと白く小さな花びらが舞い始める。
それは風に乗り彼女の周囲を舞い、その数を増やしていく。
「綺麗な花弁ね。でも――!」
本体が隙きだらけ。
ナイフを手にしたメリーさんの一人が、澪へとナイフを突き出した。
一人くらいなら逸らせる。
そう思ってその場から動かない澪とメリーさんの間に一人の影が割って入った。
その影は、御伽・柳は何の躊躇もなく右手を突き出されたナイフへと差し出し、その手に深々と突き刺させた。
ナイフに貫かれた右手に鋭い痛みが走る。
ズキズキと疼く痛みは止むことはなく、熱を持った痛みは増す一方。
でも、だから、ああ、それが?
背後から「あらー……」と気の抜けた声が聞こえてこようと構わない。
柳という男は生身でありながら、痛みを痛みと認識しながら、それでも表情一つ変えずにメリーさんを見据え。
「さて、ようやく黒幕が出ましたか」
「貴方は……ああ、顔の無い男子高校生ね。悪いけど、今貴方と遊ぶ気はないの」
「でしょうね。俺も遊ぶつもりはないです。鬼ごっこもかくれんぼももう終わりだ」
更に深く、ナイフを突き進ませ、そのままメリーさんの手を握った。
「鬼を捕まえる遊びは泥警でしたか、警泥でしたか。ま、どちらでもいいですけど……貴女が本体ですね」
「え、どうして」
「分かったのか。簡単ですよ。人形に感情はない」
どれだけ精巧に作り上げた人形でも、どれだけ本人とそっくりでも、どこまでいっても人形は人形。
それが等身大の人形で本物の様に笑っていたとしても、それは命令に従っているだけ。
「俺の行動で驚きに目を見開いていたのは貴女だけでした」
「……へー、ビックリ。大して注目されてないから大したことないと思ってたのに」
「噂なんて当てにならないものですから」
自分の存在を消していた為か、メリーさんの人形達は柳の存在を気にも留めていなかった。
他の猟兵達にも気にも留められていなかったのは思うところが無いわけでもなかったが。
お蔭で誰にも気づかれること無くメリーさんの本体を見つけ出すことに成功したのだ。
「でも、私を捕まえてもいくらでもメリーさんは――」
「ほらデザートがそこにあるぞ、遠慮なく喰らい尽くせ」
メリーさんが行動するより早く、柳はUDCに命令を下した。
今回は満足いくまで食えただろ、ならその分しっかりと働け。
と、内に住まうUDCをけしかければ、柳の影からソレが姿を表した。
影の塊からズルリズルリと触手が枝分かれ、鎌首をもたげる蛇のように蠢く。
「ヒッ――!」
短い悲鳴を上げて柳の拘束から逃げ出そうとするが、その手から逃げられない。
ナイフに刺された痛みは今も引いていない。
溢れ出る血がそれを証明している。
それでも涼しい顔で、冷たい眼差しで、淡々と仕事をこなす。
そして、逃げることの出来ないメリーさんの体をソレがツマミグイした。
人形を食べた。味がしなくて美味しくない。
指を食べた。骨と皮ばかりだが悪くない。
腕を食べた。程よく肉がついていてとても美味しい。
肩を食べた。こちらも食べごたえがあり美味しい。
美味しい、美味しい、美味しい……。
「……気持ち悪いッ」
「ごもっともです」
真紅の軌跡がメリーさんを蹂躙する。
どれだけナイフを振ろうと、どれだけ不意を突こうと、フレミアには触れられない。
どれだけ群がろうと全てギリギリで躱されては首を刎ねられている。
真紅の軌跡が過ぎた後にはメリーさんが倒れているのみ。
対象的に澪は一人もメリーさんを寄せ付けていない。
澪の周囲を舞っていたかすみ草の花びらが全てを包み込む。
一人の仲間外れを出すこと無く、全て包んでは切り刻んでいく。
花の香に誘われた人形達は何を感じることもなく、ただただ虚ろに散りゆく。
メリーさんの人形達は遊び疲れた子供のように夢へと還った。
残すは柳が対峙する本体のメリーさんだけ。
右腕を食べられ、既に満身創痍なのは見て取れる。
「フフフ、次は何をして遊ぼっか」
それでもメリーさんは止まらない。
止まらないのなら仕方がない。
「メリーちゃんお覚悟ー☆」
今までどこに隠れていたのか、柳の背後から姿を表してはドスを片手に特攻。
が、いくら弱っていようと相手はオブリビオン。
一般人で生身の操はあっさり返り討ちにされて誰もが言葉を失った。
突然の出来事にメリーさんも驚いていた。
その困惑は、静かに忍び寄る存在を完全に見失っていた。
「私操ちゃん♪ 今ね、操ちゃんの後ろにいるのー☆」
それは驚く暇もない一瞬の出来事だった。
ナイフに切り裂かれ、倒れようとしていた操の体から腕が生え、自らの腹部すらも貫いていたのだ。
「きゃあ、じぶんごろし」
「ヒヒヒッ、ごめんね♪」
腹部を穿つ痛みに、そして何より操の行動にメリーさんは二の句が継げないでいた。
ドッペルゲンガーに出会うと殺される。
メリーさんが思い出していたのはそんな噂。
それは噂だったが、今はこうして現実に起こっている。
「楽しかったかしら? 骸の海に還る前の最後の遊び……名残惜しいけどそろそろ終わりにしましょう」
そして現実に起こっている噂はもう一つ。
トドメを刺すべくフレミアの魔力は魔槍に注ぎ込まれていた。
圧縮された魔力が魔槍を駆け巡り、周囲に魔力が迸っていた。
正しく必殺の一撃。
幕引きを前に、メリーさんは無邪気に笑った。
赤い瞳の少女は私にも幸せを運んでくれたのだと。
「わたし、メリーさん。今――」
放たれた魔槍グングニルに貫かれ、メリーさんの存在は霧散した。
周囲を舞うかすみ草の花びらに誘われ、骸の海へと還っていく。
「メリーちゃーんまったねー♪」
大きく手を振る操に見送られ、逢見高校に取り巻いていた怪異は全て消え去った。
●『都市伝説』メリーさんにおまかせ
メリーさんはゴミ捨て場に捨てられていた。
どうしてこんなとこにいるんだろう。
どうしてもっと遊んでくれないんだろう。
どうして、あたしを、捨てたのだろう。
悲しくて、寂しくて、寂しくて、メリーさんは少女に会いに行った。
今ゴミ捨て場にいるの。
今タバコ屋の角にいるの。
今貴女の家の前にいるの。
「あたしメリーさん。今、あなたの後ろにいるの」
その先の記憶はない。
記憶はないけど、私はもっと遊びたかった。
だから、皆の“お願い”を叶えて遊んでもらっていた。
“お願い”を叶えたら皆が喜んでくれた。
でも、すぐに壊れちゃうのだけが残念だった。
次は誰の元へと行こうかな?
大成功
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