プルンプ・マッスル・ファッド・ブーム
大胸筋が膨らみ、上腕二頭筋が盛り上がる。六つに割れた腹筋がゼリーめいて震え、太ももが縄じみて太くなる。
毛筆で『マッスル・オブ・筋肉ぷるるん祭り』と書かれた横断幕が下がる簡易ステージに立ち、逞しい肉体を見せびらかす二人の男。片や目元を黒いマスクで覆い、片や頭部がアルパカだ。ステージ下にひしめく観客達が口々に声援を飛ばす。
「ワーオ! マッチョメーン!」
「思わず抱いてほしくなる鳩胸―!」
「スーパーマッスルプリーン!」
白い歯を見せて笑った二人のマッチョは各々マッスルポーズを取り筋肉を魅せる。観覧席から掲げられたスマートフォン、そして立ち見席の奥に設置されたカメラに爽やかな笑顔で目線を合わせた。スポットライトに当てられ歯が光る。直後!
『アピールタイム、終――――了―――――――ッ!』
KANKANKANKANG! ゴングの音が鳴り響き、ステージ上にアルパカヘッドにほぼ全裸、胸元に蝶ネクタイを着けた筋骨隆々の男が登る。マイクを手にした蝶ネクタイアルパカヘッドはニカッとした笑顔で声を張り上げた。
『時間となったので、これより投票タイムに入りますッ! お手元のスマホを使ってぇぇぇぇぇぇぇっ……』
司会アルパカが上半身を後ろにひねる。ライトを浴びた彼の肌が光沢を煌めかせた。腰だめに腕を引いた司会は勢いよく人差し指を突き出した。
『はじめぇッ!』
観客達がそろってスマホをスワイプしていく。ポーズを取っていた二人の背後、ステージ壁に埋め込まれた二枚のディスプレイに表示された数字が物凄い速度でカウントアップ。数値上昇は徐々にスピードを落として落ち着き……マスクマン425。マッスルアルパカ573!
『出ましたッ! アルパカマッスルブラザーズ兄者の勝利だァァァアアアアッ!』
勝利したマッスルアルパカは大胸筋を強調するマッスルポーズ!
「皆に感謝ッ!」
歯を見せて笑う彼に惜しみない歓声が降りかかる。悔し泣きするマスクマンの肩を叩いた司会アルパカは観客席に向かって叫んだ。
『マッスル・オブ・筋肉ぷるるん祭りは挑戦者を募集しているッ! この筋肉に打ち勝つ猛者は……君かもしれないッ! 次週をお楽しみに! それではみんな! 今日もナイスぷるるん筋肉を魅せつけてくれた二人に、拍手ーッ!』
ギャラリーが発する口笛と喝采。観客席に手を振り投げキスするマッスルアルパカ司会が映った画面をフェードアウトさせ、シーカー・ワンダーは困り顔で首を傾げた。
「……というわけでね、怪人がまーそのー……なんかやってるんです。はい」
後ろ頭を掻きつつ、彼は解説をし始めた。
時にキマイラフューチャーの一角で、量産怪人アルパカマッスルブラザーズが妙な活動をしているようだ。
曰く、マッスル・オブ・筋肉ぷるるん祭り。アルパカマッスルブラザーズと挑戦者の、どちらの筋肉がよりぷるるんとしているかを競う企画とのことで、キマイラフューチャーの住人達の間で軽いブームとなっている。
アルパカマッスルブラザーズは、このブームを通じてキマイラフューチャーの住民達を旧人類の支持者に変えようと企んでいるようだ。これで支持されるかどうかはまぁさておき、こうした企みは放置できない。そういうわけで、対処をお願いしたいのだ。
第一幕。マッスル・オブ・筋肉ぷるるん祭りをどうにかすること。祭りに乗り込み、とにかくマッスルキマイラを打ち負かすのが良いだろう。もちろん筋肉で勝負するのが望ましいが、それ以外のものでも良い。具体的に言うと、筋肉以外のぷるるんとしたものを持ち込み、説得詭弁口車を弄してアルパカの筋肉と勝負させるとかでも良い。アルパカが納得さえすれば大体なんとかなる。
第二幕では、祭りに敗れた兄弟の仇とばかりに他のアルパカマッスルブラザーズが戦いを挑む。彼らの戦法は大体プロレスラーのそれ。乗り込む猟兵の人数や戦法にも寄るが、基本的にリングに変化したステージが戦場と化す。ちなみに、第一幕第二幕共にキマイラフューチャー全域にLIVE放送されており、観客もノリノリだ。恐らく避難勧告は受け入れないので、なんとか観客に被害を出さないようにしてほしい。
そして第三幕は不明。何が起こるかはアルパカマッスルブラザーズを倒した後に明らかになる。
「まぁ、うん。……頑張ってくださいね!」
鹿崎シーカー
(親愛なる猟兵の皆さんへ。皆さんの中にはアドリブ・連携を私の裁量に任せるという人がいるかもしれない。そういう人は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると、私がとても助かります。ただし、これはお願いであって強制ではない。これの有る無しでプレイングを弾くとか判定に補正かけるとかそういうことは無いのでごあんしんください)
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 冒険
『ぷるるん祭り』
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POW : 力の限りぷるる~ん
SPD : 技の限りぷるる~ん
WIZ : 知の限りぷるる~ん
👑11
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草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎
一人称ワタシ
二人称キミ・アナタ
三人称年上「さん」付け、同年代以下は「くん・ちゃん」付け
確かに筋肉は良いよね!
私もプロレスラーとして毎日鍛えてるから、よくわかるよ!
だけど……筋肉だけが人体の魅力の全てじゃない、ってところも魅せてあげるね!
プロレスラーには「筋力」だけじゃなく、「打たれ強さ」も必要
身体の「硬さ」と「柔らかさ」を兼ね備えなきゃいけないんだよ
そう、それが……プロレスの世界に入って15年、磨き上げたこの身体!
格闘に必要な筋肉の上に、女性らしい体つきを併せ持つ私の肉体が
ぷるぷるを超えた「ゆっさゆっさ」の魅力で、観衆の皆さんを虜にして魅せるね!
グァンデ・アォ
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》
あ、あの水ようかんなヒトたち、旅団とかで会ったことがあるよ!
よーし、それじゃ、応援して盛り上げちゃおう!
サポートAIになって、ラップで観客をアゲていくよー!
《口調変更》
Say YO!(YO!) Say YO!(YO!) YO! YO! YO-KAN!!
(アルパカマッスルを指して)水も滴るイイ男? NO,NO! 今じゃしがないブ男!
その鍛えられた筋肉! でもその程度じゃ貧弱!
ドキドキの予感! 現れたは羊羹!
It's a 水羊羹の晴れ舞台! 実にIt's so funな揺れじゃない?
YO! YO! YO! YO!……
ノイシュ・ユコスティア
呼び方:僕、君、彼ら、名前を呼び捨て
【SPD】で行動
「男は筋肉がすべてじゃないと思い知らせてやらないと。」
自分の体格は引き締まった細身。
マッチョとアルパカって何の関係が…
司会アルパカに
「僕は筋肉で勝負するつもりはない。
これから見せるものは君の筋肉よりぷるるんだろうね。」
と挑発。
ステージに、20cmくらいのマッチョマンを型どったゼリー(食用)を持ち込む。
「見てくれ!この筋肉。
こんなぷるるん、見たことがあるかい?
しかも、これは食用だからね。」
ゼリーを揺らしたり触ったりして、ぷるるんをアピール。
時間が許すなら、ステージ上でゼリー彫刻を実行。
細かい作業は得意なので簡単なものならすぐに作れるよ。
リエアリア・アークス
あれ?なんで私こんな所に?え、あ…はい…その、ガンバリマス…
【WIZ】
私が持っていく物は…そう、スライムです!!
見てください!!この弾力!!この揺れ具合!!そしてこの…素晴らしきプルプルを!!鍛え抜かれただけの筋肉が、このプルプルに勝てるとお思いで!?
え?筋肉がないって?ふっ…笑わせてくれます
(付けている手袋を取り外し)
筋肉なら、ここにある!!(ババーンと力こぶを作ります。:貧弱)
鍛え抜かれた筋肉には程遠い?はっ…笑止千万。乙女の筋肉なめるなかれ!!そして見よ!!この、スライムと乙女筋肉の…夢のコラボレーションを!!
(腕にスライム塗る)
さぁ、文句があるなら…かかってこいやぁー!!
アドリブ大歓迎
スノウ・パタタ
チーム【水まんじゅう】です!
わいわいして、楽しそうだったから来ましたーなの!
ちょこちょこ走ってきては、物珍しさにキョロキョロ。
ふわー、いっぱいだねえー!
まっちょーには程遠い、いっそ行く場所を間違えたかのようなブラックタールが、タイミングを合わせてぽんっと人型を止め水まんじゅう体に変化。
つやつや、少し動けばぷるるっと震えて並んで揃ってぷにっぷに。
ブラックタールはね、すごーく伸びるのよー。
バウンドボディでびょんびょんとあちこち自在に飛んで跳ねて、何の目的で来たかは本人も分かっていない様で、取り敢えず楽しげにぽよんと跳ねては着地の反動でぷるるん。
皆がたのしそーだったら、それで良いと思うのよー!
雛月・朔
チーム【水まんじゅう】
一人称:私。二:あなた。三:彼、彼女。呼び方:男女共に名前+さん。
UC:水まんじゅうのヤドリガミ
【SPD】
◆心情
ブラックタールの方々との交流を経て、なんやかんやで身に着けたこの『水まんじゅう』の体を生かす機会がついに来ましたねっ…!ぷるぷるなら負けません!
◆対決
会場入りの時点でUCで1mの水まんじゅうに変化。
ぷるぷるぴょんぴょん飛び跳ねながら移動。ヤドリガミがどうやったら水まんじゅうになったかですって?それはUCの神秘が成せる技とだけ…。
『ご覧ください、この思わず触りたくなるほどのぷるぷるボディ。柔らかく、損なわずぷるぷるしっぱなしの水まんじゅうです』(謎のアピール)
メテオラ・エルダーナ
なんだか呼ばれたような気がしたけど、なんで呼ばれたんでしょうね!
とにかくこの…よくわからない企画をなんとかしましょう!
ぷるるん…大胸筋……胸…
…この方向性はナシで。
筋肉って言ったって、上半身に限るわけじゃないでしょう!
全身の肉体美を見せてこそ本物!よく知りませんが!
それなら私は『脚』で勝負します!
【ダッシュ】と【水泳】で鍛えた自慢の脚、
ボディビルは分からないので、ストレッチとか新体操とか、
そういう方向性で見せていきましょう!
キマイラフューチャー某所。一面暗黒の世界に、爽やかな声音が響く。
『筋肉とはァ、動物が持つ運動器官でありィ、収縮により力を発生させる生命活動に欠かせないものである!』
FLASH!
『そしてこの筋肉は鍛えることにより強靭になり、肉体を健康にし、成長ホルモンの分泌を促進しィ、何より戦闘力とBeautiful bodyを与えてくれるッ!』
FLASH! FLASH、FLASH!
『この番組はァ、Excellent Muscle自慢の者達が、我々アルパカマッスルブラザーズにボディビューティフルで挑む一代企画ゥ!』
閃光が闇を切り拓き、特設ステージを照らし出す。その中央に立ったアルパカヘッドのマッチョマンは、白い歯を見せマイクに叫んだ!
『マッスルゥ―――――――オブッ! 筋肉、ぷるる―――――んまァ――――――つりィ――――――――ッ!』
『YEAHHHHHHHHHHHHHH!』
観客達が快哉を上げ、シャッター音が連打で炸裂。ヒーロー変身じみたマッスルポーズを決めたアルパカ司会は、その体勢のまま喋り始める。
『さぁさぁ今日も始まりましたァ、マッスル・オブ・筋肉ぷるるんMATSURIィ! 硬すぎず、柔すぎず、脂肪と筋線維の黄金比が織りなすぷるるんマッスルがシノギを削るぞォ! Heyギャラリー! カメラはバッチリ? 画面の前のBOYS&GIRLS、ポップコーンは持ってるか? ドリンクはもちろん、プロテインだよなァ?』
観客席から笑いが起こる。アルパカ司会はカメラ目線で白い歯を見せた笑み。
『よぉうし、準備は万端みたいだなぁ! それでは早速紹介しよう。今日も魅せるかBeautiful Muscle! アルパカマッスルブラザァ――――――ズ、AーNIJA―――――――ッ!』
司会が壁際に手を差し伸べた瞬間、二条のスモークが壁の前で交叉する。過激な入場音と共に開いた壁から現れたのは、王冠と赤いマントを羽織ったアルパカマッスル怪人である! 堂々とステージ前まで歩いて来た怪人は、マントを脱ぎ捨て大胸筋を強調するマッスルポーズ! ぷるるんと揺れる胸の筋肉! 怪人は歯を見せて客席を見た。
「どうも、ANIJAですッ!」
『FOOOOOOOOOO!』
観客席からさらなる歓声。司会はANIJAの大胸筋をノックする。
『センキューANIJA! 今日も良い筋肉してるぜェ!』
「君もな弟者よ! ……それで? 今日は誰が、俺の筋肉と対決してくれるんだい?」
ANIJAが観客席に背中を向け、上腕二頭筋をアピール。司会は不敵な笑顔で立てた人差し指を振る。
『チッチッチ。それがな、ANIJA。今日は! 千客万来だァ! ANIJAに挑みたいって言うデアデビルがァ、なんと六人も来てるんだァッ!』
観客席にどよめきが走る。横向き片膝立ちで脇腹の筋肉を披露しながら、ANIJAは言った。
「ほおう!? それは楽しみだ! 弟者よ、早速紹介してくれたまえ!」
『任せてくれよ! ではチャレンジャーの登場だ。エントリーナンバー一番! ステージに降り立つ漆黒の天使、リエアリア・アークスちゃんだァ――――――ッ!』
壁際でスモーククロス! 再度開いた壁の奥に居たのは、困惑顔のリエアリア・アークス(黒き癒し手・f15123)!
(え? 何? なにこの状況!? なんで私こんなところに居るの!?)
『さあ挑戦者よ! どうぞこちらへ!』
「え? え、あ、はぁ……」
煮え切らない返事をしつつ、リエアリアがステージの前までやってくる。客席から微かな囁き。
「おいおい、あれがチャレンジャーか? ひょろいけど……」
「筋肉なさそうだよなぁ。深窓の令嬢的な」
「ぶっちゃけタイプだわ」
ざわめく客席。そちらを余所に、司会はマイクをリエアリアに差し出した。
『さあ、六人の挑戦者達の先鋒として出てきてもらったが、どうだい! 今の気持ちを!』
「え、あ、はい、その…………ガンバリマス
…………」
(なんかよくわかんないけど引けない雰囲気! ここまでやって何もありませんは許されないだろうし……ええいままよっ!)
内心で悲鳴を上げ、リエアリアは手を振り上げる! その手の平には……スライム!
「私が持ってきた物は……そう、スライムです! 見てください! この弾力、この揺れ具合! そしてこの……素晴らしきプルプルを! 鍛え抜かれただけの筋肉が、このプルプルに勝てるとお思いで!?」
リエアリアの視線がANIJAに飛んだ。ANIJAは余裕の表情。
「はっはっは! 確かにぷるぷるしているなぁ。だが、それだけで俺の筋肉を超えられるかな? 筋肉も無い、そのぷるるんでッ!」
「筋肉がないって? ふっ……笑わせてくれます」
リエアリアは手袋を外し、腕をまくった。そのまま片腕を折り曲げる!
「筋肉なら……ここにあるッ!」
リエアリアの二の腕がふるふると揺れる。ANIJAは背筋を強調するポーズを取って言い放った。
「ほほう、多少はぷるるんしてるようだが……それでは足りない!」
「はっ……笑止千万。乙女の筋肉なめるなかれ! そして見よ。このスライムと乙女筋肉の……夢のコラボレーションをーっ!」
腕にスライムを打ちつけるリエアリア! 肌の上にのったスライムが震え、ステージライトを反射する。リエアリアは観客席に振り向いた。
「さぁ、文句があるなら……かかってこいやぁー!」
だが白けた。無音で沈黙する客席を前に、両手で顔を覆ってうずくまるリエアリアの真横で司会アルパカが豪快に笑う!
『HAHAHAHAHAHA! OKナイスガッツだ少女! だが安心して欲しい。投票タイムは全員が終わってから行う! アピールタイムも別途に取るぞ! まだまだしょげるにゃー早い! では次のブレイブだ! エントリーナンバー二番、可憐な魔法少女の子猫ちゃん、メテオラ・エルダーナァ―――――――ッ!』
スモークを受けて開く壁から、メテオラ・エルダーナ(まほうつかいキャット・f05337)が進み出る。ローブをはためかせながらやって来たメテオラに、司会はマイクの先を突き出す。
『これまた可愛らしい挑戦者が来たもんだ! メテオラちゃん、意気込みの程を聞かせてくれ!』
「なんだか呼ばれたような気がしたけど、なんで呼ばれたんでしょうね! ともかく頑張ります!」
(ぷるるん……大胸筋……胸……)
メテオラの視線がANIJAに向いた。両手を頭の後ろで組み、背を反らす彼。その胸が大きく揺れるのを見、メテオラは
(……ナシで!)
「筋肉って言ったって、上半身に限るわけじゃないでしょう! 全身の肉体美を見せてこそ本物! それなら私は脚で勝負しますッ!」
紫の布が翻り、メテオラの脚部がさらされる。優美な曲線を描く太ももを目にした、AINIJAの顔が驚きに染まる。
「これは……見事だっ! スイミングによって鍛えられたしなやかな大腿筋膜張筋、大腿直筋、大臀筋! まだまだ成長途上だが、未来を感じるキューティーレッグだ! これが我が筋肉とどう張り合うのか……んんーッ! 上腕三頭筋が鳴るねえッ!」
ANIJAは両腕を斜め下に突き出し、緩く曲げた。盛り上がる力こぶを見せつける彼の隣で、司会者が叫ぶ!
『期待の勇士がそろって来たぞぉー……! ではエントリーナンバー三番! ここで来るぞ大一番! 金に煌めくベルトのバックル、それはまさしくチャンプの証! 草剪ぃ――――ひかりぃ―――――っ!』
三度噴出するスモークを突っ切り、草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)がステージ前に滑り込む。司会の手からマイクを取ったひかりは、ANIJAを指差しながら不敵に告げた。
「確かに筋肉は良いよね! 私もプロレスラーとして毎日鍛えてるから、よくわかるよ! だけど……筋肉だけが人体の魅力の全てじゃない、ってところも魅せてあげる! そう、これが……」
ひかりがすっと両手を上げた。直後、その腕を腰だめに引き絞る!
「プロレスの世界に入って十五年間、磨き上げたこの身体っ!」
腕を引き絞った勢いで巨乳が波打ち、観客席から驚きの声。ANIJAもまた驚きの顔!
「素晴らしい……文句なく鍛え上げられた筋肉。それはまさしく、たゆまぬ修練によって生み出されたもの! これは……ストレートな強敵が出て来たものだ!」
『オーケーセンキュー! どんどん行くぜ、エントリーナンバー四番! 風と共にやって来た。絶対王者に風雲急を告げる男、ノイシュ・ユコスティア―――――――ッ!』
開いた壁の奥から四角い物体が走り出て来た。怪訝そうな顔をする観客達。一瞬たじろぐ司会を余所に姿を現したノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は、四角の上に乗った銀のドームに手を添えた。
「僕は筋肉で勝負するつもりはない。これから見せるものは君の筋肉よりぷるるんだろうね」
『お? なんだって……?』
訝しげな司会を横目で見やり、ノイシュはドームを持つ手に力を込める。
「男は筋肉がすべてじゃないと思い知らせるっ! 僕のアピールは……これだっ!」
ドームが開かれ、その場の面々に衝撃が走った。彼らが見据える先、ドームの下にあったのは……ボディビルダーを模ったゼリー!
『なッ……ゼリーの、マッチョマンだってええええええッ!?』
「見てくれ! この筋肉! こんなぷるるん、見たことがあるかい? しかも、これは……食用だからね」
ノイシュが皿を揺らすたび、ぷるんぷるんとゼリーが震える。観客達が感嘆。
「ワオ……アーティスティック……」
「なんて腕前だ。筋肉を全て、ゼリー彫刻で再現している……これが筋肉美なのか……」
「食用マッスル……新しい……」
観客達はざわめき、囁き合う。その声を流れ出すポップミュージックが切り裂いた。ズッズッダンズッズズッズダン! ズッズッダンズッズズッズダンダン! ステージ奥から飛来したグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)はコマめいて回転しながら上昇し、中空でリズムを取り出した。
「Say YO! YO! Say YO! YO! YO・YO、YO-KAN! 水も、滴るイイ男? NO! 今じゃ、ただの、しがないブ男! その鍛え上げられた、KIN-NIKU! でもその程度じゃ、HIN-JAKU! 上にはさらにあるぜ上! まだまだぷるるんするぜコレ! Enter Gelatin Plump Storm! このステージに起こすぜ嵐! C'mon Baby Challengers! エントリナンバFive&Six、DJグァンデが呼ぶ流れ! YEAHHHHHHHH!」
グァンデが歌い切ると共に、どこからともなくドラムロールの音が響いた。同時に滑り出してくる、巨大な銀色のドーム。その上に着地したグァンデは、全身で拍を取る。
「3、2、1、Let's GO!」
ドームを引っ張って上昇するグァンデ! 開かれるドームの下から光があふれ出し、司会、ANIJA、観客達が目を剥いた。
『これは……!』
「これは……これはァァァッ!」
現れたのは、直径一メートル水まんじゅう。そしてその上に乗ったスノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)! スノウの宝石の目が周囲を見回して輝く。
「ふわー、人いっぱいだねえー!」
『み、水まんじゅうだアアアアアアアアアアアアアアッ!』
『ええええええええええええええええええええええええええ!?』
客席からも驚愕が飛ぶ。グァンデは大音声を押し返すラップ!
「ドキドキの予感! 現れたは羊羹! It's a 水羊羹の晴れ舞台! 実にIt's so funな揺れじゃない!? YO、YO、YO、YO、YOYOYOYO、Say YO―――――――ッ!」
『な、なんてこった! ゼラチン三連続……いや四連続! 上のベビーフェイスはエントリーナンバー五番、スノウ・パタタちゃん! ということは、その下の巨大水羊羹は……エントリーナンバー六番、雛月・朔君かァ―――――――ッ!?』
「はい! ご紹介に預かりました、雛月・朔です!」
朔が巨大水まんじゅうめいた体でぴょんぴょん跳ねる。光沢ある体がぷるぷると揺れ、上に乗ったスノウがぷるんぷるんと連続バウンド。朔はスノウを跳ねさせながら言い放った。
「ご覧ください、この思わず触りたくなるほどのぷるぷるボディ! 柔らかく、損なわず、ぷるぷるしっぱなしの水まんじゅうです!」
宙に飛んだスノウはぎゅっと体を収縮させて水まんじゅう形態に。そのまま朔の隣に着地し、一緒にぷるぷる震え始めた。おののく司会の顔が引きつる。
『は、波乱だ……波乱のステージだ! なんというバラエティ! ANIJAのぷるぷるに対抗するための最強の刺客が、今此処に勢ぞろいしたぁーッ!』
司会の声が少し上擦る。
『この勝負の行く末、一体どうなる! それではアピールタイム……スタートですッ!』
すぐにマッスルポーズを取るANIJA。筋肉をぷるるんと揺らしつつポーズをチェンジ。ライトに照らされた筋肉を余すことなく披露する。観客席に動揺が広がる。
「なんだこりゃあ……どうなっちまうんだ!」
「どうにもなるもんか。キングが負けるなんて、そんなこと……!」
「い、いや、見ろ!」
観客の一人がステージの上を指差した。その先には、縦にみょーんと伸びたスノウ!
「ブラックタールはね、すごーく伸びるのよー!」
スノウの体がパチンと戻ってぷるぷる震える。そのまま飛び跳ね、ステージの上を縦横無尽にバウンドする彼女の下で、ノイシュは背後の巨大ゼリーに二刀流の刃を振るった。撒き散らされるゼリーの欠片。それらの中から現れたのは、等身大マッチョマンのゼリー彫刻! さらにその隣では、ひかりが胸を揺らしながらポーズを切り替え筋肉を見せつけていく。
「おっぱいダブルブル、ゼリーマッチョダブルブル、水羊羹ダブルブルのロイヤルストレートぷるぷるだ! ダブルブルのトリプルプルでぷるぷるが三乗倍されて百倍になってるんだッ! ぷるぷるがアルパカマッスルの比じゃねえぐらい震えてやがるッ!」
「なんだと!? だ、だが確かに……」
観客の目がANIJAに移る。後頭部で手を合わせ、全身の筋肉をぷるぷるさせるANIJAの顔は、疲労していた。
「ANIJAも全身のぷるぷるで勝負してるが、ぷるぷるが追いついてねえ! オンリーワンぷるるんよりチャレンジぷるるんの方がゼラチン百グラム分上手だ! これは……あるのか!? キング・オブ・ぷるるんの初黒星が! まるで白い肌のホクロみてーについちまうと言うのかァ―――――ッ!?」
「地震だ……ぷるぷるゼラチンアースクエイクが、キングの玉座を揺らしているッ! まさかの展開だ!」
「あれはもうただのぷるるんじゃねえ……玉座をクラッシュするゼリー、キングクラッシュゼリーズだぁぁぁぁぁぁぁッ!」
客席から飛ぶキングクラッシュコール。グァンデは歓声を余所にひかりの背後に回り込み、四つん這いで落ち込むリエアリアに呼びかけた。
「……あの、やらなくていいの? アピール」
「いいんです……もう帰りたい……」
「リエアリアさん」
ぷるぷるしながら朔が言う。
「まだ勝負は終わっていません。あの怪人はまだあきらめていない……一人で駄目でも、私達の力を合わせれば、あの怪人にもきっと勝てます!」
「あ、はい……」
『アピールタイム終了――――――ッ!』
KANKANKANKANG! ゴングの音が鳴り響く。司会は汗だくになり、焦った表情で口を開く。
『なんてこった……番組史上初の、壮絶なぷるるん対決ッ……! 神話に聞く弾力の最終戦争、ぷるマゲドンを見ているような気分だった……何より、ANIJAの疲弊した姿なんて初めてだ! では投票タイムに入ります! お手元のスマホより、投票するんだーッ!』
司会に圧され、観客達が自分のスマホを操作する。ANIJAは肩で息を繰り返しながら、猟兵達に首を巡らす。
「ハァ、ハァ……まさか本気を出すことになろうとは……なんという、恐るべきぷるるん力ッ……!」
朔がANIJAに向き直り、体を揺らして答えた。
「ふふっ。ブラックタールの方々との交流を経て、なんやかんやで身に着けたこの水まんじゅうの体を生かすまたとない機会……ぷるぷるならあなたには負けません!」
「とにかくこの……よくわからない企画をなんとかします! まずは一勝! ここでそのよくわからない無敗伝説に引導を渡して差し上げます!」
それぞれのディスプレイが浮き上がり、高速でカウントアップを開始していく。順に止まっていくディスプレイ。参加猟兵達のディスプレイに、135、212、599、487、621、585。そしてアルパカANIJA……345! ANIJAが血反吐を吐いて仰向けに倒れた。
『ANIJAあああああああっ!』
司会が悲鳴を上げてANIJAに駆け寄り、抱き上げる。
『ANIJA! しっかりしてくれ! ANIJA!』
「おお、弟者よ……情けない姿を……さらしてしまったな……ゴハッ!」
『もう喋るな! 担架を! 誰か担架をぉーッ!』
ANIJAが司会の腕を強くつかんだ。
「いいのだ、弟者よ……最後に、素晴らしい者達と出会えた……我が筋肉に……一片の……悔いなし
…………」
『ANIJAAAAAAAAAAAAAAAッ!』
絶叫するアルパカ司会。観客と猟兵達がうっすら涙し、スノウが不思議そうに首を傾げる。辺りを見回したリエアリアは、困惑顔で呟いた。
「……なにこれ。ねえ、なにこれ」
ノイシュがリエアリアの肩を叩く。
「何も言うな、リエアリア。経緯はどうあれ、彼もまた、一人の戦う男だったんだ……」
「いや、そうじゃなくてね……」
言い募りかけた直後、アルパカ司会が立ち上がる。彼は猟兵達に背を向けたまま、静かに語り始めた。
『挑戦者達よ。我らがANIJAを破ったこと、ひとまずは賞賛してやろう。見事なぷるるんであった。だがッ!』
勢いよく振り返った司会の目に、大粒の涙!
『ANIJAをやられて黙っていられるほど、我々は大人しくないッ! そうだな!? 兄弟達よ――――――ッ!』
雄々しい雄叫びと共に、ステージにジャンプしてくる複数の人影! 次々に着地したそれらは、アルパカマッスルブラザーズの群れ! 朔はぷるぷるしながらも、冷静に司会へ呼びかけた。
「勝負は既につきました。これ以上の戦いは、彼の……あなた方のお兄さんの死に様の侮辱に他なりません。大人しく投降してください」
『違うな。ANIJAは負けた。本人も納得しているのだから、それでいい。だから、これは次なる戦いだ。これは! オレ達の戦いだァッ!』
マイクを右手に、司会は左拳を突き上げる!
『ただいまより新企画を始動する! 題して……大乱闘・ぷるるんレスリングッ!』
観客が湧き、スタンディングオベーションが空気を震わす。アルパカマッスルブラザーズは並び立ち、一斉に身構えた。
『さあ構えろ! これよりオレ達はチャレンジャーだ。ANIJAに及ばずとも、ぷるるん筋肉を使って戦う、ファイターとなるッ!』
「どうやら、彼らは本気のようですね」
ノイシュが大弓を取り出し、矢を番えて引き絞る。ひかりがファイティングポーズを構え、メテオラは手に光の剣を呼び出した。
「ならば、僕らも全力で応えねば!」
「よし来たッ! ワタシだって手加減しないわ。レスリングの絶対女王が、レスリングから退いてたまるもんですか!」
「新たな企画を用意してくるなら、また打ち砕くのみです! さあ行きますよ! 第二ラウンド、開始ですっ!」
雄叫びを上げるアルパカマッスルブラザーズ。リエアリアは小さく零した。
「ねえ、だからあの…………なにこれ?」
大成功
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第2章 集団戦
『量産怪人アルパカマッスルブラザーズ』
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POW : ポージング
自身の【逞しい肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : ポージング
自身の【躍動する肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : ポージング
自身の【洗練された肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎
私も伊達に女帝を名乗ってないよ!
その強さを知らしめる為、アルパカマッスル達の前に胸を張って立ち塞がるよ
とはいえ多数の強靭な筋肉が繰り出す攻撃を受ければ
流石の私も苦戦は免れないかも
そうして巨大なバストを揺らすようにダウンを喫しても
「効いてない」と立ち上がるのが“女帝”の嗜み
その姿を魅せつけることで、敵手は脅威に、観客は熱狂に飲み込まれるの
ここからは“私の時間”の始まり
ドロップキックで豪快に蹴り飛ばし
豊かすぎる肢体でコブラツイストに締め上げ
トドメは必殺の“アテナ・パニッシャー”!
最期にこの私に沈めてもらえることを、光栄に思って3カウントを聞くといいよ!
リエアリア・アークス
はい、どうも…リエアリアです…。何がどうしてこんな事になったんでしょうか。…誰か…教えてください…というか…帰りたい…。
え?だめ?…分かりました…あの人?達、マットに沈めてきます…
POWにはPOWで。
ひょろいとか筋肉なさそうとか言われましたが…見せてあげましょう…私の力を…私の…女子力(物理)を!!
アルパカマッスルブラザーズ!!貴方達を、マットに沈めてあげます!!
【怪力】【ダッシュ】【2回攻撃】を使用して攻撃。
私的に、普通のパンチとかでは面白みがないと思います(手をベキべキ鳴らしながら)
なので、観客の方達も楽しめるようにプロレスの大技?でも使うと良いかもですね。
その他、アドリブ大・歓・迎
スノウ・パタタ
【水まんじゅう】で参加です!
丸っとしたまま臨戦態勢。
心情●とちゅーで言う事を変えちゃうのは、しんよー、ないないになるのよ。負けるは嫌だよう、やだやだ、ってしているの、んん…正々堂々頑張りきったお兄さんと気持ちが、違うんだねえ…(こどもの率直な感想)
戦闘●WIZ・香水瓶の魔法
誘い込む様にちまちまぷるぷる近寄り、振りかぶられたら後ろに避ける振りをしつつ反動付けてびよんとバウンド。アルパカさんに体当たりしたら体内のインクをポンポン!
防御行動●あー!掴んだらせーれーさんが驚いちゃうのよー!(体の中の属性精霊を綴じた宝石【DROPS】(武器)に触られると、彼女達が怒って雷を飛ばしたり火を飛ばしたり)
グァンデ・アォ
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》
いやっふー!、テンションアゲアゲできて気持ちいー!
それじゃ今度は、実況アナウンスだ!
グァンデが、放送席よりお伝えしておりまーす!
《口調変更》
おおっとー!アルパカマッスル、ここでグラウンドに持ち込みました!
ぬめり光るワセリンと汗。まるで悪魔の舌なめずり。
癒しのモフモフを忘れ、マッスルに落ちた四肢が、●●選手を捕らえて離さない!
アルパカよ、お前は草食系ではなかったのか。毛玉ならぬケダモノの悪意が今、●●選手に食らいつき咀嚼しております!!
雛月・朔
チーム【水まんじゅう】
UC:『水まんじゅうのヤドリガミ』で最初から1mの水まんじゅうの身体まま。【SPD】
◆心情
あのままでは引き下がれないわけですね、いいでしょう。こちらも全力でお相手します。(シリアス顔の水まんじゅう)
私達猟兵も頑張り所ですね!、新王者側が早々に負けてしまってはANIJAさんと観客の皆さんに顔向けできませんもの。
◆戦闘
相手のレスリングスタイルに合わせてこちらも体当たりで肉弾戦を正面から仕掛けます。ひたすら水まんじゅうが跳ねて、飛び、アルパカの顔や腹めがけて突進。
仮に私が捕えられても素手で引きちぎったりは出来ないでしょう。ぷるぷるで伸縮自在なこの身体、そうそう負けません!
メテオラ・エルダーナ
…なんかものすごく腑に落ちないのでとりあえずボコボコにしましょう!!!
覚悟
!!!!!(ヤケ気味に)
いいでしょう、その勝負乗ってやります!
魔法剣を投げ捨て、格闘戦の構えです!
挨拶代わりに【ダッシュ】からのドロップキックで、
さっき見せられなかった脚力を見せつけましょう!
「知りませんよ点数のことなんか!!!」
盛り上がりに欠ける?
それなら炎の【属性攻撃】を腕に纏わせ、
灼熱のラリアットで派手に攻めましょう!
とどめは『グラビティ・ストライク』の力を借りたボディプレスです!
※忘れてましたがアドリブ・連携歓迎です
特設ステージ下で、ANIJAが担架で運ばれていく。それを遠目にしたスノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)は、ステージの上でめいめいにマッスルポーズを取って威嚇するアルパカマッスルブラザーズに視線を向けた。直径1メートル水まんじゅう姿の雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)の上で、ぷにぷにと上下する。
「むー……。とちゅーで言う事を変えちゃうのは、しんよー、ないないになるのよ。負けるは嫌だよう、やだやだ、ってしているの、んん……正々堂々頑張りきったお兄さんと気持ちが、違うんだねえ……」
「いえ、そうではありませんよ、スノウさん」
風に吹かれ、ぷるぷると表面を震わせながら朔。
「彼らは、兄弟の負けを認めています。しかし、そのままでは引き下がれないのです」
『その通りだァッ!』
マイクをハウリングさせ、司会アルパカが叫ぶ。
『ANIJAは負けてしまった。それは仕方ない! 物凄く認めたくないが、それでは笑って逝ったANIJAに顔向け出来ん! しかしそれではこちらの収まりがつかん! よってッ!』
居並ぶブラザーズが全員ファイティングポーズ!
『殴る! 我々アルパカマッスルリトルブラザーズの筋肉で殴るッ! だが殴り返すのも有りだ。ANIJAならきっとこう言うだろう。美しい筋肉に挑むなら美しい筋肉をぶつけよ。そしてギャラリーを盛り上げよ、と!』
上腕二頭筋を誇示するマッスルポーズを取り、観客席に白い歯を見せて笑う。客席からは歓声!
「いいぞー! 第二ラウンドだぁーっ!」
「延長戦だーっ! あ、充電15%しかねえし!」
「うち充電器持ってるよー! あとむこうの壁叩いたら電池出てくる!」
「やりますねえ!」
「負けんじゃねーぞーっ!」
多数の野次を飛ばす観客達。お祭りめいた騒々しさを聞き流し、リエアリア・アークス(黒き癒し手・f15123)は虚ろな瞳で虚空を眺めた。
「何がどうしてこんな事になったんでしょうか……誰か、誰か……教えてください……というか……」
両手で顔を覆い、リエアリアはその場にうずくまる。そんな彼女の傍にグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)が飛んできた。
「帰りたい……」
「いやーあのー、一応オブリビオン案件ですし、このまま帰っちゃうのはちょっと。それにほら」
グァンデがリエアリアの腕を突っつき、指の隙間から覗く藍色の目に客席の方を指し示す。湧き上がる観客達からリエアリアにエール!
「黒いお姉ちゃーん! 頑張ってーっ!」
「ドンマーイ! まだ逆転の目はあるってーっ!」
「好きです! 付き合ってください!」
「華奢な女の子も可愛いと思うよーっ!」
リエアリアがグァンデを見る。グァンデは発光パーツを点滅させつつ言った。
「なんかもう盛り上がっちゃってるし、ポイント・オブ・ノーリターンは過ぎちゃってるというか……」
「………………………」
沈黙。リエアリアは居心地悪げに身を揺するグァンデをじっと見つめていたが、やがて小さく溜め息を吐いて立ち上がった。軽く肩を回しつつ、虚ろな瞳で司会アルパカを照準する。
「……分かりました。あの人……人? 達、マットに沈めてきます……」
『ほう、やる気になったかブラックガール!』
「私達もやる気ですよ」
朔と共に前へ出るメテオラ・エルダーナ(まほうつかいキャット・f05337)と草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)。輝く魔法剣を投げ捨てたメテオラの隣で、ひかりは首を回して右拳を左手に打ちつけた。
「私だって、伊達に女王を名乗っちゃいない。そのぷるぷる筋肉にたっぷり教え込んであげる!」
「格闘戦ですよね! いいでしょう。その勝負、乗ってやります! あとなんかものすごく腑に落ちないのでとりあえずボコボコにしますよ! 覚悟ッ!」
「こちらも全力でお相手します。私達猟兵も頑張り所ですね! 新王者側が早々に負けてしまっては、ANIJAさんと観客の皆さんに顔向けできませんもの!」
『良く言ったぞチャンプ達よッ! では一応番組企画なのでルールを説明するッ!』
司会アルパカが人差し指を立てて突き出す。
『まず、武器は肉体のみ。いいな! 剣とか銃とかは駄目だ! そういうんじゃないからな! あくまでANIJAを下したぷるぷるを駆使して戦うがいい。こちらもそうする。次に、リングアウトは敗北。リング外の地面に着いた時点で失格だ。それ以降の参戦は禁ずる。そして最後ッ!』
ぐっと拳を握り、司会アルパカはぷるぷる胸筋を叩いた。他のブラザーズもそれにならい、ひかりとメテオラも従う。司会アルパカは大声で叫ぶ!
『我々はッ! スポーツマンシップに則り! 己の肉体をフル活用して戦うことをここに誓いますッ! はい復唱ッ!』
『我々はッ! スポーツマンシップに則り! 己の肉体をフル活用して戦うことをここに誓いますッ!』
直後、ステージの壁が弾け飛び、床が広く拡張される。四隅から生えて来たポールからリングワイヤーが放たれ、広大な正方形のフィールドをリングに変えた。司会アルパカはグァンデを指差す。
『ようし! ではそこのドローン! 実況を任せるぞ! 今から司会を廃業し、一人のファイターとして立つが故にッ!』
空中に放られるマイク。素早く飛翔したグァンデは機体下部を左右に開き、マイクを捕まえて格納。そのままリングの上空へ上がり、エキサイトした声を張る。
『いやっふー! では放送席よりお伝えして参りまーす! 実況解説はわたくし、グァンデ・アオが責任を持って引き継がせて頂きます! 皆様、どうぞよろしくお願いします!』
『YEAHHHHHHHHHHHHHH!』
観客達は一斉に拍手! 司会アルパカは首をゴキゴキと鳴らし、半身で身構えた。
「さて、これで心置きなく戦える。これは番組企画にしてANIJAの仇討ち……牛筋より硬い我らの兄弟愛、その身に刻み込んでくれる。そして視聴率を取り、マッスル・オブ・筋肉ぷるるん祭りをキマイラフューチャーに流行らせる!」
おのおのの構えを取るアルパカマッスルブラザーズ。メテオラはぐっと膝を曲げて前傾姿勢!
「そうそう思い通りにはさせませんよ。知りませんよ点数のことなんか! 脚力を見せつけてやります!」
『おおっとー! ここで勝負をグラウンドに持ち込んだアルパカマッスルブラザーズ、そして筋肉ANIJAを下した猟兵達が睨み合う! ぬめり光るワセリンと汗はまるで悪魔の舌なめずりだ! これより始まるのはぷるぷる筋肉対ぷるぷる筋肉With水まんじゅうのガチンコ勝負! 筋収縮の高まりを感じる中、いよいよゴングです! それでは観客の皆さん、一緒にご唱和下さい! せぇーのっ!』
『いーち! にぃーっ! さーん! DAAAAAAAAAAAAAAAッ!』
KA-NG! ゴングが鳴ると共にメテオラが飛び出し司会アルパカにドロップキック! メテオラは腹筋に突き刺さった両脚を蹴って宙返り、同時に低姿勢ダッシュで距離を詰めたリエアリアが肉迫していく!
「ひょろいとか筋肉なさそうとか言われましたが……見せてあげましょう! 私の力を……私の女子力をッ! てぇぇぇいッ!」
加速からの右ボディブローが司会アルパカの腹筋に命中! 左のジャンプアッパーでアルパカの顎を跳ね上げ、リエアリアは追撃の空中回転蹴りで司会アルパカを吹き飛ばした。降り注ぐグァンデの実況!
『決まったぁーっ! スタートからの手痛い一撃! しかしリエアリアの両サイドをアルパカが挟むーッ!』
リエアリアの左右を挟む二体のアルパカが、ダッシュショルダータックル! 蹴りを繰り出し空中で回るリエアリア狙いの挟み撃ち。リエアリアの足元に滑り込んだ朔が彼女の両足を受け止める!
「リエアリアさんっ! 跳んでくださいっ!」
「はいっ……!」
BOUND! リエアリアが垂直に飛び、朔がショルダータックル挟撃を食らう。挟み潰された朔はしかし弾力でアルパカ二匹を跳ね返し、着地からの低空ジャンプタックルで向かってくる別の一人に体当たり! ノックバックしたアルパカは再度体当たりを仕掛ける朔を抱きとめ、その体を左右に引っ張る。思い切り伸びる水まんじゅう!
「ぐぬぬぬぬッ……! なんというぷるぷる質感!」
「伸縮自在のこの体、そうそう負けません!」
一方別方面! 複数人のアルパカマッスルブラザーズがひかりに突撃! 助走の勢いをつけ、全員で殴りかかる!
「おおおおおおおッ!」
「かかっておいでッ!」
啖呵を切ったひかりは素早く状態を動かして繰り出されるラッシュを次々と回避! 身を沈めて前後に開脚し足払いをかけ、全員まとめて転倒させる。ひかりは転んだ一人の両足をつかんでジャイアントスイング! 転んだブラザーズをまとめて薙ぎ払う!
「うおおおおおりゃあああああああああああああッ!」
「ぐぬおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
竜巻めいて回転するひかりと振り回されるアルパカマッスル。そのまま勢いをつけて投げ飛ばし、遠くに居たアルパカ三人をまとめて吹き飛ばす! ひかりに突っ込んでいく別の一体に、スノウが近づく。
「待ってほしいのよーっ!」
「むッ!」
ぴょんぴょんと跳ねながらスノウが接近。そちらを振り向いたアルパカはラリアットの要領でスノウにフック! 軽くのけ反ったスノウは拳に向かって勢いよくジャンプした。拳とスノウが正面衝突した瞬間、スノウの体がインクを噴いた! SPLAAASH! まき散らされたインクの飛沫がアルパカの目に当たる。よろめき目を擦るアルパカ!
「ぐおおおおおおッ! 目潰しかッ!?」
「そこですっ!」
高速縦回転したリエアリアのかかと落としが目潰しされたアルパカの脳天に命中! グァンデはテンションアップする客達に混ざって実況解説!
『さあさあリングはカオスな状況! 筋肉! インク! 水まんじゅう! 全てが混ざり暴れ回るこの戦場で……おおっと!? アルパカの一角がなんかおかしいッ!』
アルパカ一人前に、二人がその後ろに立った。前衛アルパカが後ろに伸ばした両手を、後衛の二人がそれぞれつかみ、さらに後衛二人の残った腕が交叉して前衛の両肩をつかむ。三人の上に跳ぶ司会アルパカ!
『こ、これは! 一体何をすると言うのか!? ま、まさか騎馬戦……否ッ!』
司会アルパカが交叉した後衛の腕にまたがり着地! グァンデが叫ぶ!
『アルパカ戦だァ―――――――ッ!』
WOOOOOOOOOOOO!? 司会アルパカは上擦った声を上げる観客達に笑いかけ、ブラザーズと交戦する猟兵達を見下ろした。
「やはり流石だ。ANIJAを倒したぷるるんは伊達ではないということか。だが負けはせん。行くぞッ! 勝つのは我々だァッ!」
鬨の声を上げた足場アルパカが同時に屈み、ジェットスタート! 狙いは右腕に炎をまとわせラリアットを振り回すメテオラだ! 突撃に気づいた彼女が目を見開く!
「んなっ
……!?」
「食らえ! アルパカ・マッスル・チャリオットォォォッ!」
筋肉を震わせながらのダッシュがメテオラを跳ね飛ばした。宙を舞う彼女に飛びかかった別のアルパカが、バレー選手めいてメテオラをスパイク! 撃ち下ろされた彼女はプルプル腹筋に弾かれた朔に激突した。激しく波打ちながら朔は困惑!
「メテオラさん!?」
「ごめんさっ……うわっ!?」
跳ね起きたメテオラは朔を抱えて横っ飛びしアルパカチャリオット回避! アルパカ戦はそのままメテオラと朔の周囲をダッシュ旋回。朔は油断なくアルパカ戦を視線で追う。
「なるほど……ツープラトン、いえクワトロプラトンといったところですか!」
「ええそうです! 正直何がどうなったらそうなるのかと聞きたいですけどっ!」
『な、なんという事でしょう! まさかのここで筋肉合体! リングを駆けるアルパカタウロス完成ですッ! これをどう突破する、猟兵達!』
前衛アルパカのストンプを後転してかわしたメテオラに抱えられたまま、朔は叫んだ。
「メテオラさん! 投げてください!」
「ツープラトンですね。行きますよっ!」
メテオラは炎まとう右腕に朔を乗せ、ラリアットを振り抜いた! 引火した朔は向かってくる司会アルパカめがけて接近。司会アルパカのクロスガードにぶつかった。振動するアルパカ前腕部と水まんじゅう!
「無駄だッ! スピード! パワー! ぷるぷる筋肉! これらが合わさったアルパカ・マッスル・チャリオットに隙は無いッ!」
司会アルパカが腕を開いて朔を跳ね返す。弾丸じみて飛んだ朔はリング端のワイヤーにぶつかり、番えられた矢のようにワイヤーを引き絞った。その上にスノウがぴょんと飛び乗る!
「行きますよっ!」
「はいなのー! はっしゃーっ!」
SHOT! 放たれた朔がアルパカ戦めがけて飛翔し、スノウが司会アルパカに跳躍! 司会アルパカのチョップ迎撃がスノウに食い込むと同時に水風船めいてインクが爆発! アルパカ戦の目を塞ぐ。一拍遅れて朔が司会アルパカの顔にぶつかる!
「ぬぅおおおおおおおっ! 目がッ!?」
「むきゅっ!」
マットにぶつかりバウンドしたスノウをリエアリアがキャッチ。リエアリアはジャンプし、アルパカ戦前衛の頭を蹴って二段ジャンプから飛び膝蹴り!
「そこですっ!」
司会アルパカの顎下にSMAAASH! 思い切りノックバックした司会アルパカの口から血が弧を描く。
『決まったァーッ! あれは伝説のプロレス技、シャイニング・ウィザード! 敵味方に大ダメージを与えて来た技が今ッ! アルパカ戦の騎手を討つ! それはまるで騎馬兵を打ち倒す重装歩兵! 女子力物理の面目躍如ーッ! そこからさらにぃ……!』
膝蹴りの勢いを利用し、リエアリアは一回転からの回し蹴りを繰り出した。司会アルパカの側頭部にヒット!
『追撃もクリーンヒットだァーッ! だ、だが倒れない! アルパカ戦倒れない! それどころかリエアリア選手の足を捕らえた! 何をする気なのかァーッ!?』
「良いキックだった! 今のは痛かったぞおおおおおおおおおおおおおおッ!」
司会アルパカはリエアリアを頭上で振り回す! 首を振ってインクを振り張ったアルパカ戦はいななきを上げ、再びリングを走り始める。遠心力で吹き飛ばされるスノウ!
『なんということだァーッ! 癒しのモフモフを忘れ、マッスルに落ちた四肢が、リエアリア選手とひかり選手を捕らえて離さないッ! アルパカよ、お前は草食系ではなかったのか! 毛玉ならぬケダモノの回転圧力が今ッ! リエアリア選手に食らいつき咀嚼しております! その姿まさしく獲物にかぶりついた肉食動物! そのまま走っていくのはリングの隅っこ! ま、まさか……まさかとは思うがッ!』
「反てぇぇぇぇぇぇんッ!」
司会アルパカの号令を受け、アルパカ戦が対角線上のポールに振り向く。そこには二人のアルパカブラザーズ。片方がもう片方の足をつかみ、バットめいて持ち上げた。そのまま予告ホームランの構え! アルパカ戦はリエアリアを振り回す速度をさらに上げていく! リエアリアから思わず悲鳴!
「ぐぇぇぇぇぇっ! 吐くっ……出るっ……! お、下ろしてくださぃっ
…………!」
「行くぞおおおおおおおおおおおおッ!」
「来ぉぉぉいッ!」
バッターアルパカが気勢を張り上げ、司会アルパカがリエアリアを投擲! バッターアルパカはバットアルパカを振りかぶり!
『打ったァ――――――――ッ!? そして、ピッチャー返された女王をアルパカタウロスが殴り返す! な、なんと、アルパカバッターがまた打ち返し、アルパカタウロスが殴り返す! なんたることでしょう! ここにとまらぬ永久機関、筋肉ラリーの爆誕だァーッ! ピッチャーキャッチャー夫婦役とは言いますが! もはやこれはピッチャーとバッターがデキているッ! 小指が赤い筋線維で繋がったアルパカップルだとでも言うのでしょうか! ラリーが続く! ラリーが続くッ! あーっと! しかし間に割り込んだひかり選手がリエアリア選手を受け止めラリーを中断……いや違うッ!』
「リエアリアちゃん、しっかり!」
「あうぅぅぅ……なんでこんな目に……帰りたい……」
リエアリアを助け起こすひかりの背後に別のバッターアルパカが迫る! アルパカバットのフルスイングがひかりの背中を打ち据え、そのままアルパカ戦とラリーしていたバッターアルパカへ飛翔した。バッターアルパカが咆哮!
「ウゥオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「ぐっ……!」
ひかりは歯を食いしばってリエアリアを放り上げ、体を丸めてアルパカバッティングを防御! 接地したアルパカバットの腹筋がぷるんぷるんと波紋を広げ、ひかりをアルパカ戦に打ち飛ばす! グァンデが客席で絶叫!
『地獄の筋肉ラリー再開ィィィ! あっと、他のアルパカマッスル達もマッスルバッティング体勢! あ、ああーっ! 果敢にも突撃した朔選手打ち返された! 反対側に割り込むバッター! 朔選手もラリーの餌食だ! メテオラ選手、片方のバッターへ炎のラリアット、だがさらにさらに別のアルパカバッターに迎撃されラリーに巻き込まれてしまう! ここが筋肉バッティングセンター! アウトは無し! チェンジも無し! ホームランには決してならない! 決して終わらぬ筋肉地獄の一丁目! 上腕二頭筋で作り出されたメビウスの輪! 攻撃完封の悪夢、嵌め殺しマッスルナイトメアだァーッ!』
ひかりが飛来しては殴り返す司会アルパカ。彼は拳を振るいながら雄叫びを上げる。
「オオオオオオオオオオオオオオッ! どうしたどうしたァ! このままではギャラリーが暇してしまうッ! こんなものか!? ANIJAを倒した、あるいは倒さんとしたぷるぷるはッ! その程度なのかァーッ!」
一方その頃、リングの淵に落下したリエアリア。うつ伏せになり、口元を押さえた彼女は顔を青くして呟く。
「おぇっ……め、目が回る……気持ち悪い……」
空いた片手を使ってリングロープまで這いずっていく。端に辿り着き、ロープをつかんだ彼女の耳に
「たすけてなのよー! 落ちたらめっ、なのー!」
「……?」
視線を下に向けると、リングの枠にくっついたスノウ。マッスルバッティングを盗み見たリエアリアはロープを離し、スノウをすくい上げた。そして、ひかりを打ち返したアルパカバッターに向かってスノウを放つ! スノウはリングを転がったのち、ぴょんぴょんと跳ねて距離を詰めていく。
「人でやきゅーしたら、だめだめなのよー!」
アルパカバッター、スノウをチラ見。そしてぎょっと目を見開いた。
(奴は確か……殴ったら爆発する奴!)
ひかりを打ち返し、アルパカバットがバッターに耳打ち。
(どうする! 打ち返しては爆発してしまうぞ! それに今ラリーを止めては……!)
(わかっているさ! 落ち着け……打ち返すのは駄目だ。ラリーを止めるのも! となればやることはひとつ!)
SMASH! ひかりを打ち返した瞬間、アルパカバッターは素早くスノウに向き直り、アルパカバットを突き出した。アルパカバットは両手を伸ばしてスノウをつかむ!
「やったぞ! このままリングアウトにするんだァーッ!」
「応とも! 次のバッティングと一緒に投げ捨てて…………捨てて
…………?」
アルパカバットがスノウを見やる。彼女をつかんだ両手指の隙間から、無数の妖精めいた影があふれる。もがくスノウの体内でバチバチと雷光がほとばしった。
「あーっ! だめなのよーっ! 掴んだらせーれーさんが驚いちゃうのよー!」
「…………え?」
閃光。次の瞬間、スノウの体から激しい電撃とプロミネンスが噴き出した! ZGRAAAK! ZGRAAAK! ZGRAAAAAAAK! リング中を吹き荒れる炎と雷、そして暴風! 妖精めいた幻影が荒れ狂い、稲妻がアルパカバッターズを打ち据え炎がリングを火の海にする! アルパカ達の混乱の声!
「ぐわああああああああああッ!」
「な、なんだ!? 何が起こっている!?」
「肉体フル活用って言ったじゃないですかーッ!?」
『こ、これは一体!? これは天の怒りか、それとも恵か!? 凄まじい災害がリング状に吹き荒れたーッ! メビウスマッスルを断ち切る雷霆! アルパカステーキ重点の炎! そして輝くスノウ選手! 状況打開だUltra Snow!』
『High!』
KADOOOOOOM! 一際強い稲光が噴出し、リングの上を塗り潰す! 防御態勢を取っていた司会アルパカの耳は、遠ざかる雷鳴の中から響くひかりの声を聞いていた。
「助かったわ、スノウちゃん。如何に女王とはいえ、動けなければ何も出来ないもの」
立ち上がったひかりは肩を回し、司会アルパカに向き直った。周囲にはダウンしながらも起き上がろうとするアルパカバッターズ。そちらは気にせず、ひかりは真っ直ぐ司会を見据える!
「けど、これで動ける! 反撃開始よっ!」
司会はアルパカ戦状態のまま身構える。その目には闘志!
「かかって来いィィィッ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
同時に飛び出す司会とひかり! ひかりは突進をステップ回避して騎馬の横合いにタックルをかます。大きく揺らぐアルパカ戦は踏みとどまり、タックル反撃! 弾かれたひかりに向き直って再度突進でぶっ飛ばし、前衛アルパカの前蹴りがひかりの腹に突き刺さる! ひかりは床をバウンドしながらもバク宙復帰。揺れるバストに観客の目が集まった。
「効かないわッ!」
そして始まるひかりコール! ひかりはアルパカ戦の突進に対し、正面からタックルで挑む! そして激突! 一歩も引かない押し合いの中、ひかりは力をみなぎらせる。
「私を倒したければ、その百倍の威力を持って来なさいッ!」
「百倍か! ならばッ!」
アルパカ戦がバックジャンプし、ひかりが勢い余ってつんのめる。グァンデの発光体が興奮めいて瞬いた。
『な、何をしているアルパカ戦! ここに来て騎馬を解き……肩車四人分だと!? 奇天烈な技を繰り出し続けたアルパカマッスルブラザーズ! ここに来て見せる技はッ! 見せる技はなんとッ! 多段ロケット方式ジャ―――――――ンプッ! 飛び立つ姿、アポロ計画! 空飛ぶ筋肉が司会者を! 空の彼方へ連れて行く! そこから高速縦回転……からのっ! 飛び蹴りだぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 体勢を崩したひかり選手に隕石の如き一撃――――――っ!』
「これが百倍だッ! アルパカ・アルティメット・キィィィィィィィィィック!」
急降下してくる司会アルパカを見上げた朔は、体当たりでダウンしたアルパカブラザーズをリングの外に叩き出す。二人、三人、四人! 周りを一層した彼は、黒焦げになったアルパカバッティングコンビをつつくスノウを呼んだ。
「スノウさんっ! まだ炎は出せますか!」
スノウが不思議そうに振り返る。
「んえ? 出せるのよ? ……何かする、なの?」
朔は激しくぷるぷるしながら言い放った。
「私も! 飛びますッ! 力を貸してください!」
「……???」
きょとんと首を傾げるような仕草のスノウ。
「もはや無駄よッ! この一撃を耐える術無し! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「それはどうでしょうか!」
ぷるぷる震えながら朔がぴょんと跳ぶ。その斜め下に居たスノウが真っ赤に光った。吹き出す大量の火の粉!
「せーれーさん! ふぁいあ、なのっ!」
CABOOOOOM! 放たれた爆炎が朔を空へ連れて行く! そのままアルパカの急降下飛び蹴りの真正面へ!
「砕けよ、水まんじゅううううううううううううううッ!」
「砕けませんとも! 水まんじゅうですからっ!」
二者が空中で衝突し、空気が激震! 円盤状に潰れた朔の体に凄まじい波紋が広がり、ぶるぶると震える。アルパカは蹴り足を折り曲げ、追い込んでいく!
「ぬううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「はああああああああああああああああっ!」
震える水まんじゅう、足の筋肉、そしてアルパカの肉体。アルパカは体中の筋肉は激しく蹴り飛ばされ、落ちゆく朔はリングの外へ! 司会アルパカは加速!
「残念だったなァーッ! まずは一人だッ!」
「目的は……あなたの攻撃を防ぎきることではありません……ほんの少し、ほんの少し時間稼ぎが出来れば良かったんです!」
「なんだと
……!?」
「メテオラさんっ! 今です!」
目の色を変えたアルパカが上空を仰ぐ。彼より遥か高みのメテオラは頭上に夜空めいた色合いの大型結晶を生成。メテオラは両腕を広げ、ボディプレスの構え!
「高高度からの攻撃というのは……こうやってやるんですっ! 必殺! 滅殺! 圧さぁぁぁぁぁぁぁつっ!」
メテオラの背中に結晶が落ち、高速垂直落下する! 凄まじい速度で落ちるその軌道上には司会アルパカ!
「なんだとおおおおおおおおおおおおおッ!?」
ボディプレスが命中し、そのまま地面まで墜落! CRAAAASH!
『なんという威力だーッ! リングが凹み、クレーターとなってしまったッ! メテオラ選手のフライングボディプレスがアルパカを地に叩き潰す! だが反動でメテオラ選手はバウンドしている! アルパカの方もだ! そこへ行くのは……女王ひかり選手ーっ!』
「決めるよ! ここからは私の時間の始まり! どりゃあああああああっ!」
助走をつけた跳躍からの弾丸じみたドロップキック! 宙を舞うアルパカの背にひかりの足裏がめり込み、吹き飛ぶ! リングロープに激突し跳ね返って来たアルパカを受けとめたひかりは、右足を相手の左足に絡め、両腕をアルパカの首に回した。そのまま
「ぐああああああああああああッ!」
『コブラツイストーッ! いや、もはやこれはアナコンダ! 蛇の女王がアルパカを食らい、締め上げている超光景! 無慈悲なる女王の極めでアルパカに自然界の掟を叩き込み、放り上げる! ここでひかり選手体をひねって回転! 一回、二回、三回、四回! 出るのか! フィニッシュホールドがァーッ!』
「最期にこの私に沈めてもらえることを、光栄に思って3カウントを聞くといいよ! 必殺!」
大きく振りかぶった右腕が、浮き上がったアルパカの首に叩き込まれた! そのまま地面に……振り下ろす!
「アテナ・パニッシャ―――――――――ッ!」
SMAAAAAASH! リングに衝撃が走り、大竜巻が噴き上がる! 暴風はリングロープを千切って四隅のポールを吹き飛ばし、リングの上に残っていたアルパカ達を場外へ叩き出した。観客の髪を滅茶苦茶に撫でた風が止んだ時、アルパカはリングにめり込む形で倒れ伏していた。
「ガッ、グッ、グォッ
…………!」
血の泡を吐いて呻く司会。グァンデは慌てて実況再開!
『ダ……ダウーンッ! 司会者、ダウンしてしまったァーッ! ここに来てついに司会者が倒れました! さぁ運命の……スリーカウントが刻まれますッ! せぇーのっ!』
『スリーッ!』
「ぐ、ぐうううううッ! ま、まだだ……」
うつ伏せになった司会アルパカは腕を突く。
『ツーッ!』
「まだ、立たねばッ! ならぬと言うのにィィィイイイイイッ!」
体を押し上げる腕は震え、足腰が立たぬ!
『ワーンッ!』
「クソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
司会アルパカがマットを殴りつけた直後、KANKANKANKANKANKANG! ゴングの音が鳴り響いた。
『終――――――――了――――――――ッ! 熾烈な戦い、筋肉の死闘を制したのはッ! 猟兵達だァ――――――――ッ!』
WAAAAAAAAAAAAAA! 盛大に騒ぐ観客達がクラッカーをパンパンと鳴らす。司会アルパカの体から力が抜け、マットに沈んだ。
「見事……だったッ……。ANIJAを倒したその力……認める他、無いようだ……」
アルパカを見下ろすひかりの下に、朔とスノウが寄ってくる。
「あなた方も、凄まじい筋肉量でした。あのANIJAさんの兄弟なだけはあります」
「そうね。アナタ達のコンビネーションも良かったわ。ワタシ達じゃなかったら負けていたかも」
「まっちょーさん、これで満足したの? もうわがまま言ったりしない?」
「ああ……もはや、何も言えまい……完敗だ」
リング端。起き上がったメテオラは司会アルパカ達を遠目にリエアリアを助け起こす。顔面蒼白のリエアリアは口元を押さえ、軽くえずいた。
「あの、大丈夫ですか?」
「ちょっと、収まって来ました……うっぷ……」
「もう少しだけ耐えてください。良いところなので」
「帰り、たい……帰って……寝てたい……」
その時、リングの上で起き上がるアルパカが一体。悔しげな表情で歯噛みする彼の目には、狂熱!
「み、認めるかッ……認めるもんかよッ……!」
アルパカ司会者が顔を上げた。立ち上がった別のアルパカの手には、ボタンがついた四角い装地!
「末弟! 貴様、一体何をするつもりだ! 勝負はもうついたのだ! 我々の筋肉にはプロテインとコラーゲンが足りなかった、ただそれだけの事なのだ! 彼女達を祝福せねばならんのだァーッ!」
「済まねえ兄貴……」
スイッチを握りしめる末弟の手が激しく震える。
「けど、けど……こればっかりは譲れねえッ! 兄貴の夢を! ぷるぷる筋肉を流行らせたいと鍛錬に励んだANIJAの想いを! ここで打ち砕かれるわけには行かねえんだぁぁぁぁぁあああッ!」
振り上げた手で、末弟はボタンを押し込む。直後、周囲に地鳴りが響き始めた。どよめく観客達。グァンデは困惑しつつ実況を続行!
『一体何が! 地震か? これは地震なのか!?
………………あ、待って。なんか今嫌な予感した。なんか前にもこんなことあった気がする。え、ちょっと待って? 嘘だよね? ね?』
実況を聞き、メテオラの顔もまた引きつる。リエアリアの背を撫でる手も速まる。
「……この展開、なんか覚えある気がする。あ、待ってください吐かないで! ここでやるのはマズいので!」
「うぷっ! ゆ、揺れる……お腹、ひっくり返るっ……」
「起動しろ、最終兵器! 俺達兄弟の想いを乗せてええええええッ!」
大成功
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第3章 ボス戦
『マルチプル・アースムーバー』
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POW : タイヘン キケンデスノデ チカヅカナイデクダサイ
【放り投げた瓦礫や、ドリルの一撃など】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を瓦礫の山に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : シャリョウガ トオリマス ゴチュウイクダサイ
【ブルドーザー形態による猛烈突進攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ゴメイワクヲ オカケシテオリマス
【排気マフラー】から【環境に厳しい有害物質たっぷりの黒煙】を放ち、【強烈な粘膜刺激と視界の悪化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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グァンデ・アォ
《NG無し。何でもします!》
うーわー、やっぱりーッ!
何か既視感あると思ったら、またコイツだぁ!!
これは……この世界で何かが起こってる!?
というわけで、まずは敵を問いただしてみるよ!
このあらい……じゃない、工事を発注したのは誰だぁっ!!
発注者が明らかになるなら、仲間のみんなに、「【暗黒面】という仮面のオブリビオン集団がいるらしい」というウワサを喧伝するよ!
そして、ヘルメットに変化して、誰かと一緒に戦うんだ!
《口調変更》
サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします
飛行能力、各種の謎技術、そしてサイキックエナジーで中の人を強化し、そのサポートを。
遠慮なく私を、使い尽くしてください。
草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎
特にグァンデくんはウチの団体にも出入りしてる顔馴染みなので、何かあれば手助けに吝かは無いよ!
それにしても、筋肉(?)勝負、プロレス(?)勝負ときて
最後が金属の塊とは……ANIKIたちが「彼」を止めようとした気持ちがわかるよ
ちょっと手段選ばなさすぎだよね!
ともあれ、そんな相手にこそ
私自身は私の闘い方を貫いて魅せるよ!
鍛え上げた筋肉美と女性美で真っ向勝負!
とはいえ……さすがの私も生身の肉体で鉄の塊と叩き合うのは苦しいねぇ
チョップを撃てば手が痛いし
ドロップキックは跳ね返される
もう少し、あと少し速く踏み込む力があれば
必殺のアテナ・パニッシャーで一撃を……!
リエアリア・アークス
ぐふぅ…すっごい揺れるぅぅぅ…。と言うか…何ですか、あのロボ?は…。
もう筋肉関係ないと思うんですけど…。気にしたら負け?そうですか…。
しょうがないので…最後にもうひと頑張り、して来ます。
【POW】
攻撃面では【怪力】【力溜め】【衝撃波】でガンガン攻撃していきます。
必殺の治癒パンチを…全力で打ち込みます!!
防御と支援面では【オーラ防御】【医術】【救命活動】を活用して皆さんの負ったダメージを少しでも癒していきます。だって私「治癒魔法使い」ですから!!(自称)
その他、アドリブ等大・歓・迎!!
グァンデさんの行動に注目!!一緒に行動したり援護出来そうな時は全力で!!
フロース・ウェスペルティリオ
【水まんじゅう】アドリブ歓迎
客席で皆さんの勇姿を見物していたのだけど、なんだか凄い事になってるねぇ
信念に則り、勝者に臆せず挑んだ新企画(集団戦)は素晴らしかったけど……
うん、流石にぷるぷるを謳っておいてノーぷるぷる出すのはダメだよねぇ
さて、ウチは今までずっとステージに上がって無かったので末弟さんにはノーマークだろうし、ステージ上で頑張って来た皆さんをこっそり援護するよ
液状になって、目立たないよう静かに機体の下へ移動
自身の粘度を上げて、素早い動きを封じようか
面積の大きな足は元より、左右のキャタピラの間や軸等も狙い目かな?
ふふ、ウチは時間稼ぎが出来ればそれでいいよ
さぁ、真打の出番だよ、頑張ってねぇ
スノウ・パタタ
【水まんじゅう】であたっく、なのよー!みんなで、めー!します!
攻撃●【香水瓶の魔法】WIZ
ぷよっと機体に飛び付いてインクをポンポン!
瓦礫へも塗料を上塗りし属性へ干渉、ドリルの隙間に小石や砂の付いた木の根を絡めて噛ませ、回転率を落とします。
こんくり、から生えてくる植物はね、にょきにょきで強いのよー!
…とと、せーれーさんおちついてね、みんなで戦ってるから怒るして、巻き込んだらめーなのよー。帰ったらあそぼーね。
ふよふよと跳ねて敵の視線の撹乱と、インクの拡散。援護と敵の妨害を重点に。
煙が向かって来たら風の精霊魔法で流れを返しちゃうのよ!もくもく、宝物汚れるのやーなの!
アレンジ・共闘おまかせ
雛月・朔
チーム【水まんじゅう】
UC:『水まんじゅうのヤドリガミ』で最初から1mの水まんじゅうの身体まま。
武器:『ヤドリガミの念動力』SPD
◆心情
プライドを捨ててきましたか…。かわいそうに、そんなことをしてはANIJAさんも浮かばれないでしょう…。せめて末弟アルパカの行いを我々の手で完膚なきまでに破壊して、その愚かな選択ごと消し去ってさしあげましょう。
◆戦闘
先ほどのステージでは相手に合わせて肉弾戦を挑みましたが、実はこの身体でも扱える武器がありました。そう『念動力』です。
本体を直接破壊は出来ないかもしれませんが、排気口を潰したり破片の軌道を逸らしたりするくらいは出来るはずです!これで仲間を援護します!
四宮・かごめ
(しゅたっと着地)助っ人忍者参上。途中参加なので先行した猟兵達に追従して動くでござる。
なんだかすごい所に迷い込んでしまったでござる。熱気に包まれた会場、興奮に湧くキマイラ達、そして既視感のある敵、何がご迷惑をおかけしますでござるか。また排気口に苦無突っ込むでござる。
むっ、アナウンスの声に聞き覚えが。そこでうろちょろしているのはヒーローマスクのグァンデどの。(フレンドを呼ぶボタンで)それがしを導いてくれたに違いない。キマイラフューチャーの平和を守るために、今こそこの身体をグァンデどのに明け渡すのでござる。にんにん。
『アドリブOK何してもOK』
メテオラ・エルダーナ
こないだ倒したばっかりじゃないですか!!!
再生怪人にしたって、いくらなんでも早すぎませんか!?
…いや、そんな事はどうだっていいです!
私の前に立ちふさがるなら、何度でも壊すのみ!
華々しい舞台でヒーローショーの再演といきましょう!
【範囲攻撃】最大の『虚空剣』で、周囲一帯全てを虚無領域にし、
【ダッシュ】の機動力で敵の死角から切り込みます!
死角からなら、瓦礫や突進では対応しきれないはず!
排気ガスは風の【属性攻撃】で一気に振り払いましょう!
「その技はもう通用しません!」
グァンデさん(f10200)、今回も力を借りますよ!
最後の一撃は全身全霊の合体攻撃です!
※アドリブ・連携歓迎
地鳴りと共に二つに分かたれるリング。その間に空いた四角い穴から黄色い重機めいた巨影がせり上がって来た。長方形のボディに、ショベルとドリルを備えた両腕。コックピットじみた頭部のガラス奥に光球のような単眼を輝かせる機影を見上げ、グァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)とメテオラ・エルダーナ(まほうつかいキャット・f05337)は悲鳴じみて叫ぶ!
「う―――――わ―――――やっぱりーッ! 何か既視感あると思ったら、またコイツだぁ――――――――――っ!」
「コレこないだ倒したばっかりじゃないですか! 再生怪人にしたっていくらなんでも早すぎませんか!?」
メテオラに肩を借りたリエアリア・アークス(黒き癒し手・f15123)が青い顔で口元を押さえつつ、グァンデを見やった。
「ぐっふぅ……すっごい揺れるぅぅぅ……と言うか何ですか、あのロボは……お知り合いで?」
「あれはマルチプル・アースムーバー! 土木作業に特化した働くオブリビオンにして、最近この世界の造形師によって48分の1スケールのフィギュアが作り出されたやつ! どうしてこんなところに!」
「ハァーッハッハッハッハッハッハッハ!」
マルチプル・アースムーバーの頭頂部、仁王立ちした末弟アルパカが声高に笑う。ハーフリングにたたずむ猟兵達を見下し、大仰に両腕を開いてみせた。揺れる上腕二頭筋!
「どうだ! これが俺達マッスルのリーサルウェポン! 縁の下の力持ちたる最強の兵器よ!」
末弟にグァンデが叫び返す。
「何が俺達のリーサルウェポンだ! コイツをどこでゲットした!? いやそれ以前に、このあらい……じゃない、工事を受注したのは誰だぁっ!」
「フン! 冥土の土産に教えてやろう。ステージもこいつも、ANIJAがパトロンからもらって来た物だ。名前までは聞いていないが……仮面を被った、おかしな男だったらしい。ストリートボディビルダー時代のANIJAにスカウトをかけ、ステージと兵器をタダでくれたと言っていた」
「仮面
……!?」
驚愕を漏らすグァンデ。一方末弟はアースムーバーの頭を踏みしめる。
「さて、聞きたいことはそれだけか? では殺戮の時間だ! 今の話は手土産だ。ANIJAをコケにし、願いを踏み躙った罪ッ! 死を以って償ってもらうとしようかァァァァッ!」
アースムーバーの排気筒が黒煙を噴き出し、エンジンの振動を響かせ始めた。草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)は拳を固めて肩を回し、雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)がスノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)を乗せたまま青白い光をまとって浮き上がる。
「グァンデくんと何か因縁あるみたいだけど……それにしても、筋肉勝負、プロレス勝負ときて最後が金属の塊とはね。ANIKI達が彼を止めようとした気持ちがわかるよ。ちょっと手段選ばなさすぎだよね!」
「兄弟がプライドを捨ててしまっては、ANIJAさんも浮かばれないでしょう。せめて我々の手で完膚なきまでに破壊して、これ以上愚行を重ねないようにしなければ!」
「みんなでめー、しちゃうのよーっ!」
アースムーバーのモノアイがレッドランプめいて点滅し、警告音を発する。BEEP! BEEP! BEEP! 甲高いサイレンと共にアースムーバーは両腕を高速で回し、猟兵達を睨み下ろした! アルパカ末弟は頭部を滑り下りてシャッターじみて開いたアースムーバーの胸部に収まる。閉じゆくシャッターの奥で、末弟は吠えた。
「行くぞッ! マルチ! ぷるるん! ア―――――スムーバァ―――――――――――――――ッ! ANIJAの仇を討てぇぇぇぇぇぇッ!」
『タイヘン、プルルンヲ、オカケシテオリマス』
ハーフリングにシャベルが振り下ろされ、CRAAAAASH! 宙を舞う無数の瓦礫の中、朔と一緒に浮き上がったスノウの体が虹色の光を放った。次の瞬間、彼女は全方向にインクを散布し瓦礫を極彩色で染め上げる!
「がれき、ぬったのよー!」
「了解しました。では皆さんを援護します!」
朔を包む光が強まり、瓦礫全てに朔と同じ光がまとわりついた。流星群めいてアースムーバーに撃ち出される瓦礫のラッシュ! アースムーバーはこれを両腕のブンブンパンチで砕き落とし相殺していく。その間に空中で足をバタつかせるグァンデを、どこからか飛んできた人影がキャッチ。彼を小脇に抱えた四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)は華麗に一回転して着地した。
「グァンデどの! 四宮・かごめ、招集に応じ参上したでござる!」
「助かるぅー! それじゃ……自立行動モードを終了し、攻性ユニット支援モードに移行します」
グァンデは発光体に無数の文字列が流し、両足を格納して機体下部を左右に開く。収まっていたマイクを吐き出し、ヘルメット状になってかごめの頭に被さった。かごめの両耳にヘッドホンめいた機械が装着され、目元にバイザーが降りる。
「ユニット素体と接続しました。素体名、四宮・かごめ。戦術級攻性機能がアンロックされます」
かごめの体をサファイアブルーの光が包む! 両腕にマシンガントレット、両足に大型の機械具足が装備され、胴体を守るアーマーの首元にはペールブルーのマフラーが巻き付いた。背面、肩甲骨付近に装備されたジェット機構が蒼光の粒子を噴射し、サファイアブルーの光を吹き飛ばす! 銀青の機械装甲を身に着けたかごめはクラウチングスタートじみた体勢を取り、爪先で地面を抉るように引っかく。
「サポートAI、大人のグァンデです。よろしくお願いします。遠慮なく、私を使い尽くしてください」
「承知。いざ参るッ!」
かごめが勢いよく飛び出した直後、アースムーバーがショベルで瓦礫を薙ぎ払う! そして引き続き滞空する朔とスノウにドリルアームを突きつけた。ドリルが高速回転!
『終わりかァ! ならまずはお前らからだ水まんじゅう! あんこぶちまけろおおおおおおッ!』
SHOOOOOT! パイルバンカーじみて射出されるドリルが二人に突っ込んだその時、スノウの両目が翡翠色に瞬いた。
「せーれーさん! でばん、なのっ!」
ドリルアームの根元が翡翠色の光を噴き出し、ドリルパイルを太い木の根が螺旋状に駆け上がる! 命中寸前、先端にまで達した木の根がドリルをブロック。さらに根っこはアースムーバーの左腕全体を覆い尽くした。アースムーバーからノイズ!
『ガガッ……ドリルニ、イジョウアリ』
『何ィ!?』
「こんくり、から生えてくる植物はね、にょきにょきで強いのよー! ……とと、せーれーさんおちついてね、みんなで戦ってるから怒るして、巻き込んだらめーなのよー。帰ったらあそぼーね」
スノウが集る妖精めいた幻影スノウに言い聞かせると同時、アースムーバーを空から眩い光が照らした。メテオラは白い光の剣を大上段に振り上げ、刃を一気に膨張させる。天突く巨大な閃光の剣!
「本命はこっちです! 最大魔力解放ッ!」
『チィッ! レフトアームパージ!』
アースムーバーから左腕が離れて地に落ちる。両脚を縮め、バックジャンプした巨体はしかし仰向けに落下! その脚部と背面キャタピラに絡みついた粘度の高い黒液の一部、大きな黒いヴェールに包まれた部分がアースムーバーの視界に入り、フロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)の上半身を形作った。
「こんにちは。客席で皆さんの勇姿を見物していたわ。信念に則り、勝者に臆せず挑んだ新企画は素晴らしかったけど……うん、流石にぷるぷるを謳っておいてノーぷるぷる出すのはダメだよねぇ。そういうわけで、助太刀させてもらうわ」
『ふ、伏兵だとッ……!』
動揺に声を震わせる末弟。そこへメテオラは巨大な光剣を振りかぶる!
「必殺ッ! 虚空剣ッ!」
SLAAAAASH! 横一文字の白い軌跡が走り、空間に黒い亀裂が広がった。亀裂は一瞬で爆発し周囲を暗黒の世界にリペイント。奈落めいた暗闇に落ちていくアースムーバーの右腕に、流星じみて急降下したひかりがしがみつく。
「つかまえたッ! 投げるわよ、リエアリアちゃん!」
ひかりは身をひねり、アースムーバーを振り回す! SPIN、SPIN、SPIN! 四回転目で真上に投擲! アースムーバーが飛んでいく先には、右手を握って左手で口元を押さえたリエアリア。彼女の右拳に青黒い光が収束していく!
「うーっ……振り回されて揺らされて、次は落とされるんですか……。うぐっ、流石に、吐きそうっ……」
ごくっと喉を鳴らしたリエアリアは左手を離し、右拳を引き絞った。迫り来る黄色い機体。
「もう、ひと、がん、ばりっ……せぇあああああッ!」
SMASH、BOOOOOM! 青黒の光が爆轟となり、アースムーバーを殴り落とした。リエアリアは両拳に再度青黒い光を溜め込み、ラッシュと共に連打で撃ち出す! BBBBBBBBBBOOOOOOM! 青黒い光の衝撃波がアースムーバーを連続で打ち据え、落下速度を底上げしていく。繰り出される衝撃波の合間を縫って走る青銀の光。かごめにくっついたグァンデはマシンガントレットを光らせた!
「サイキック苦無を生成します」
ガントレットの手の平から青白いエネルギー光があふれ出し、大型苦無の形に凝固する。苦無をひとつずつ握った両手を交叉し、かごめは排気筒に狙いを定める!
『ランボウハ、ヤメテクダサイ。ランボウハ、ヤメテクダサイ。タイヘン、プルルンヲ、オカケシテオリマス』
「なーにがぷるるんをおかけしますでござるか。その排気口にコレ突っ込んでやるでござるッ!」
コマめいた横一回転からのエネルギー苦無投射! 二本の苦無は複雑な軌道を描いて闇を切り裂き、排気筒めがけて一直線に飛翔する。コックピットに搭乗した末弟は剥き出した歯を軋ませつつ、手元のレバーを押し込んだ! 排気筒が激しく震え、BFOOOOOOOM! 噴き出した黒煙がアースムーバーを飲み込み、暗黒の中に機体を隠す。もくもくと範囲を広げる煙は衝撃波とサイコ苦無を共に吸収。リエアリアは両腕を引き絞った直後、顔から血の気を失い背中を折った。
「ぐっ、無理っ……」
手で口を塞ぐリエアリアの下に朔が滑り込み、彼女を支える。その傍を突破して落ちるスノウは、一気に膨れ上がり肉迫してくる煙を宝石の両目に映し出した。翡翠色の輝きをまとう黒まんじゅうボディ! グァンデは真上のスノウを見、かごめの肩についたジェット装置を起動する。
「安全圏へ退避します」
光の粒子を噴射して急上昇するかごめと、彼女を追いかける排気煙! かごめが入れ違うのと共に、スノウは全身から閃光を放つ!
「もくもく、宝物汚れるの、や――――なのっ!」
刹那、スノウがエメラルド色の暴風壁が放射し、黒煙の壁と正面衝突した! BLOWWWWWWW! 嵐じみたサウンドが虚無の空間に響き、黒煙の表面が荒波めいて激しく波打つ。一方アースムーバーを包んだ黒煙を挟み下側、ひかりは軽く折り曲げた腕を振りかぶった。
「メテオラちゃん! 腕貸すよっ!」
「お借りしますっ!」
メテオラが腕に飛び乗り、ひかりは即座に腕を振るってメテオラを射出した。彼女の剣が引く光の筋が白から緑に変化する!
「その技はもう通用しません! こうして、こうですっ!」
一回転から緑に変じた剣で横薙ぎ一閃! 吹き出した突風が黒煙の結界に突っ込んで押し流し、スノウの暴風壁と一緒に挟み潰す! 風の斬撃がスノウの暴風壁に衝突して消え、黒煙が跡形も無く吹き散らされた。アースムーバーの姿無し! メテオラが目を見開き、スノウがきょとんと呟いた。
「嘘、なんでいないんですか!?」
「あれれ? かくれんぼーさん、なの?」
虚無空間を見回す二人の上空、リエアリアを乗せたままの朔はかごめに小さく耳打ちをする。朔はかごめが頷くと共に彼女から離れ、声を張り上げた。
「フロースさん! どこにいますか!? 返事をしてください!」
すぐさま周囲に目を光らせるかごめ。するとグァンデのバイザー越し、真横の暗闇の一部分で色とりどりの波紋を確認! グァンデが暗闇をスキャンし、こちらに背を向けたアースムーバーの姿を浮き彫りにした。
「スキャン完了。見つけました」
「そこでござるかッ!」
アースムーバーに突き出したかごめの両手の平が光輝き、エネルギー苦無をマシンガンめいてぶっ放す! 次の瞬間、アースムーバーはかごめ達に背を向けた状態で闇から飛び出し、背中でエネルギー苦無を弾き返しながら接近! 排気筒からジェット噴射じみて黒煙を噴き出し、一気に距離を詰めていく!
『サガリマス。ゴチュウイクダサイ。サガリマス。ゴチュウイクダサイ』
「危ない! かごめさんっ!」
朔が体を一層光らせると同時にアースムーバーの機体も青白く光った。僅かに減速、しかし止まらぬ! アースムーバーはバック飛行しながらショベルの腕を裏拳めいて繰り出した! 巨大な一撃がかごめの側頭部に命中、グァンデヘルム側面が砕ける!
「ぐぁっ
……!?」
「本体損傷。インターフェースに異常あり。リカバリーモードに入ります……」
アースムーバーは回転しながらかごめをグァンデごと真下に叩き落とし、さらにスピン! 朔はリエアリアを光でくるんだ。
「すみません、リエアリアさん!」
「え、ちょっ……」
リエアリアが垂直に吹き飛ばされた直後、朔にショベル裏拳が直撃した! ぷるぷるの体が激しく波打ちながらぺしゃんこになり、虚無空間の底へ殴り落とす。真下にいたスノウは慌てて体をぷにぷにと動かした。
「わわわっ!? せーれーさんせーれーさん! 受け止めるのよ!」
BLOW! スノウが放出した風がかごめと朔に吹きつけ、落下の勢いを削いでいく。だがその上空、仰向けの体勢を取ったアースムーバーのマシンアイがさらに上を飛ぶリエアリアを睨み、黒煙を噴射! BFOOOOOOM!
「……っ!」
即座に身を丸めたリエアリアを青黒いオーラのドームが包み込み、直後に黒煙に呑み込まれた。背中から垂直落下するアースムーバー! 背面からのフライングボディプレスだ! キャタピラと脚部に絡み付いていたフロースが上半身を形成。両手に黒い炎をまとわせた。
「おおっと、これは流石に不味いかな……すまないけど、ちょっと耐えてねぇ……!」
下に突き出したフロースの両手から黒炎のコウモリが大量に飛翔! 群れを成し、スノウ、かごめ&グァンデ、朔を捕らえて奈落の底へ押し流していく。炎コウモリ達の進行方向で、メテオラは空間に白光の剣を突き刺した!
「虚空剣! 虚無空間を一時解除しますっ!」
CRACK! 剣の切っ先から空間に白いヒビ割れが入り、周囲の暗闇が垂れ幕を引き上げるように掻き消える。引き剥がされた闇の下には元いたキマイラフューチャー上空の景色! 一番下に居たひかりがマッスル祭りステージ跡に着地し、一拍遅れて回転しながら落ちて来たメテオラが着地。ひかりは空を仰ぎ、散り散りになる炎コウモリの群れから飛び出たかごめ、朔、スノウをキャッチして足元に下ろした。
「みんな、ちょっと伏せてて。立ったら頭ぶつけちゃうかも」
腕を回し、仰ぎ見るは落下してくるアースムーバー! 落ちてくるそれに両手をかざし……THOOOOOM! アスファルト陥没! 残っていた観客達が息を呑む。ひかりは潰されかけながらも、アースムーバーを受け止めていた!
「FOOOOOOO!?」
「え、何!? どうなったの!?」
「なんか知らねえけどすげえぞ姉ちゃん!」
「女王様ーッ!」
滝じみて冷や汗をかきつつも、不敵な笑みを浮かべるひかり。彼女はブチブチと音を立てる四肢にむち打ち、アースムーバーを持ち上げた!
「はああああああああああっ! これがッ! 女王の! 底力ぁッ!」
観客から拍手喝采! 彼らを前にしたひかりはアースムーバーを真横に投げた! 無人の道路に投げ出されたアースムーバーは放物線を描いてハードランディング。ショベルの腕を背泳ぎめいて回し、地面を押して起き上がらんとする機体の背中、キャタピラに取りついたままのフロースが黒液のアンカーを複数伸ばして地面に打ち込む。アースムーバーを斜め45度で復帰阻止!
「悪いねえ。ふふ、ウチは時間稼ぎが出来ればそれでいいからさ」
『ランボウハ、ヤメテクダサイ。ランボウハ、ヤメテクダサイ』
なおも起き上がろうとするアースムーバーを引き留め、フロースのアンカーがミチミチと軋む。他方、地面に平べったく伸びた朔は力なく震えながら問うた。
「ぐぅぅ……グァンデさん、かごめさん、ご無事ですか……?」
朔の傍、うつ伏せに倒れたかごめの頭で、グァンデがひび割れた発光体を明滅させる。
「ひとまず、継戦は可能です。可能ですが……この通り、痛打をもらってしまったので……」
「不覚でござる……よもや、グァンデどのの力添えを頂きながら、一撃もらって立てぬとはッ……!」
小鹿めいて身を震わせながら四つん這いになるかごめ。グァンデは小さく機械音を響かせながら、発光体に無数の文字列を走らせた。
「かくなる上は……奥の手を使います。サイキックリンク! 素体名、雛月・朔を外部接続します」
朔の表面にも無数の文字列が走り始める。直後、アースムーバーのコックピットで末弟アルパカが咆哮しながらレバーを押し込む!
「立ち上がれぇアースムーバーッ! ANIJA達の仇を討つぞおおおおおおおおおおッ!」
ショベルが地面を強く押しのけ、フロースアンカーが突っ張って細まった。そして……SPLIT! アンカーの一本が千切れ、二本、三本と切れていく。フロースは残ったアンカーを張りつめさせつつ、低くぼやいた。
「んー……この辺が限界か。ごめんねみんな」
SPLIT! 最後のアンカーが切れアースムーバー体勢復帰し黒煙を噴いた! スノウを肩に乗せたメテオラは竜巻をまとった剣を振りかぶる!
「その攻撃は、もう効かないってッ!」
「かくれんぼも、めーっ! なのよー!」
スノウが発した風がメテオラの腕を伝って剣に流入。彼女は巨大化した竜巻を、迫る黒煙に打ちつけた! BOOOOOM! 一瞬拮抗した竜巻は黒煙を押し返し、吹き飛ばす! 跳ね返された黒煙をもろに浴びるアースムーバーの目前にスノウが飛び込み、インクをぶちまけ視界をふさいだ。その時、闇雲にショベルアームを振り回すアースムーバーの前方斜め上に、青白い光に包まれたかごめがハイジャンプ! その右手にはエネルギー苦無が一本。潰れた朔の上に乗ったグァンデが光った。
「視界リンク良好、サイキック苦無生成OK。投擲及び軌道修正をお願いします」
「了解です……! 念動で人体を操るのは初めてですが……行きますっ!」
朔を包む光が強まり、かごめが苦無持つ手を引き絞って投擲! 流星めいて宙を斜めに突っ切ったエネルギーの刃はアースムーバーの排気筒に直撃して爆発! 爆風に吹かれたスノウを、キャタピラから分離をして跳んだフロースが抱きとめる。フロースの視線はアースムーバーの背後、光剣を下段に構えたメテオラに向く!
「はい、どうぞ」
「これで気兼ねなく撃てます! でりゃあああああああああッ!」
SLAAASH! 閃光をまとった斬り上げがアースムーバーの背面に命中し、巨体を浮かび上がらせる! かごめの視界越しにそれを見たグァンデの、発光体の輝きが増した。
「セカンドプランを実行します。サイコキネシス、リインフォースメント!」
「何度もすみません、リエアリアさん……これで最後ですので!」
朔が呟いた次の瞬間、浮遊するアースムーバーに向かって垂直落下する青黒の影! 藍色の瞳をぐるぐる回したリエアリアは真っ白になった顔で呻きを上げる。
「うぅぅぅぅぅっ……もしかして、これが泥酔した時の感覚なんでしょうか……。船酔いと車酔いを併発した状態で絶叫マシーンフルコースしたような……おえっ。でも、これで最後……これで最後……!」
拳を握り、青黒いオーラの旋風でコーティング。真下に見えるアースムーバーめがけて頭から一直線に突っ込んでいく!
「必殺! 鉄・拳・制・裁ッ!」
SMASH! アースムーバーの胸部にリエアリアが激突し、巨体を背中から地面に叩き伏せる! 巨体の上で軽くバウンドし、念力でひかりの足元に引っ張り寄せられた彼女に、グァンデは言った。
「申し訳ありません。最後とは言いましたが、治療だけお願いします」
「あとで……うぷっ! 酔い止め代とか、請求させてもらいます……!」
リエアリアはひかりのふくらはぎに触れ、青黒のオーラを流し込む。全身にオーラを巡らせたひかりは、グァンデをつかんで駆け出した。グァンデを被って声を張る!
「ありがとうリエアリアちゃん! グァンデくん、速度お願い! とにかく早く踏み込む速度!」
「承りました。素体リンク!」
ひかりの目元を半分ほど欠けたバイザーが覆い、両腕と両脚に機械アーマーを形成。さらに両肩と両腰にバイクのマフラーめいたパーツを生み出し、背中にはエンジン状の物体を装備した。エンジンとマフラーが激しくいななく!
「装着完了。スピードスタイル」
「オッケー! 決めるわよ!」
DRRRNG! エンジン音が響き、ひかりの姿が掻き消える! 一瞬でアースムーバーの胸の上まで移動した彼女は、マシンガントレットを装備した右腕を振りかぶった!
「3カウントの時間よ! アテナ・バニッシャーッ!」
CRAAASH! 拳でアースムーバーの胸部装甲を突き破り、アルパカ末弟を引きずり出して後ろに放る。フロースの粘液で地面に接着されたアースムーバーはもがき、ショベルを振り回してひかりの背中を殴打し弾いた! ひかりの頭からグァンデが外れ、空中に投げ出される。くるくると回転する彼を……跳躍したメテオラがつかんだ!
「グァンデさん、今回も力を借りますよっ!」
「了解しました。力になります」
メテオラがグァンデを被ると同時に、両腕を銀青の装甲が覆った。メテオラの両手に現れた、星めいた輝きを持つ結晶がサファイアブルーの光を浴びて戦槌に変化! 真下のアースムーバーめがけて振り上げ、渾身の力で振り下ろす!
「必殺! 滅殺! 圧さぁぁぁぁぁぁつっ!」
SMAAAAASH! 振り下ろされた鉄槌が地面もろとも機体を砕き、アースムーバーを地の底まで叩き落とす! たちまち見えなくなった機影は縦穴の暗がりの奥で大爆発し、火柱を地上から空へと噴き上げた。うつ伏せに倒れた末弟アルパカが、愕然とした表情で火柱を見上げる。
「そんな……馬鹿な。最終兵器が……ANIJAの、仇が……!」
呟く彼の首根っこがつかまれ、引っ立てられる。末弟を立たせた司会アルパカは腕を回して殴りかかる!
「この、ド愚弟がァァァッ!」
SMASH!
「ぐへッ!」
殴り飛ばされた末弟アルパカが尻餅をつく。その頭に拳骨を落とし、司会アルパカは怒鳴り散らした。
「この大馬鹿者め! 宣誓を破り、あろうことか身勝手な反撃に及ぶとは! ANIJAはそんなことをして喜ぶ男だったか! 己のためにプライドを捨てろと、どんな手でも使って復讐してくれと、そんなことを言う男だったかァ――――――ッ!」
「ぐッ……」
末弟アルパカは歯噛み。地についた両手を握りしめ、司会アルパカに叫び返す。
「だが兄貴、これでいいのかよ! 俺達には筋肉しかねえんだ! 機械は使えねえわ、絵心もねえわ、それ以前に絵筆握った時点で折れちまうわ! 俺達はこれでしか生きていけねえんだ! そのためにANIJAは辛いストリートボディビルダー生活を送って……!」
「わかっとるわァ! そんなことはッ!」
司会アルパカは肩を落とした。力なく首を振り、言い聞かせるように言う。
「しかし、負けたのだ。認めねばなるまい。我々は、負けてしまった。勝てば官軍、負ければ賊軍。それがルールなのだ……」
末弟が押し黙り、うつむく。彼の隣を抜けた司会アルパカは、リエアリアのオーラを浴びて立ち直った猟兵達の前に立ち、多数のブラザーズを背に頭を下げた。
「このたびは大変な迷惑をかけた。改めて、健闘と勝利を称えよう……と、思ったが」
少し顔を上げ、リエアリアを見る司会アルパカ。彼女は球状に戻った朔にもたれ、ぐったりとしていた。
「……それどころではないようだな」
「同情するなら……うぇっ。 ……この体調を、今すぐどうにかしてほしいです……」
「すまん、無理。我ら、文無しだし」
司会アルパカは咳払い。
「ンンッ! このような形となってしまったが、ともあれANIJAは満足して逝った。我々も負けた。末弟も負けた。もはや、何も言えることは無い。敗者は潔く去ろう。今はそれだけが、我々にできる誠意の示し方だと思っているからだ。それとも、そちらから何かあるか」
「ひとつ、いいですか?」
メテオラに抱えられたグァンデが口を挟んだ。
「あれを贈ったのは、仮面のオブリビオンと言っていました。そのオブリビオン……もしや、暗黒面と名乗っていたのでは?」
司会アルパカは答えず、ブーメランパンツに手を突っ込んでカードを取り出す。黒地のそれを、グァンデに手渡した。
「……名刺?」
「ANIJAがもらったものだ。そこに書かれている以上の事は知らん。……申し訳ないのだがな。これでいいか?」
「じゃ、ワタシから」
朔と一緒にひかりが進み出、司会アルパカの手を強く握った。きょとんとするアルパカに、ひかりは不敵な笑顔で告げる。
「じゃあね。今度は、最初からリングの上で戦うとしましょう!」
「ANIJAさんに、どうぞよろしく」
アルパカはひかりと朔、握手を順に見、緩く頷く。やがて握っていた手を離すと、座り込む末弟アルパカを肩に担いだ。
「縁があれば、また会おう。ではさらばだ諸君! コングラチュレーションッ!」
司会アルパカは白い歯を見せて笑い、身をひるがえしてブラザーズと走り去っていった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年03月30日
宿敵
『マルチプル・アースムーバー』
を撃破!
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