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ケミカル・サマーの実験室

#アルダワ魔法学園


●scene
 扉の隙間からかすかにもれる、春らしからぬ熱気。
 その先は、炎の罠が手をこまねく灼熱地獄か。
 はたまた、溶岩が流れる大洞窟か。
 学生たちは、緊張の面持ちで扉をひらく。
 扉をあけると――そこは、夏だった。

 巨大な立方体のかたちをした部屋の土壁や床のそこかしこに、色とりどりの熱帯植物が生い茂っている。
 奥の壁にあいた穴からは多量の水が流れ落ち、巨大な滝となっていた。
 流れた水は、床に刻まれた迷路のような窪みにたまって循環しており、部屋全体が流れるプールになっている。
 その上にそびえるのは、蒸気機関と実験器具を組み合わせて作られた、ふしぎなギミックの数々。
 壁から壁へ、空中に張り巡らされたガラス管の正体はウォータースライダー。一度入ると流され流され、真っ暗な壁の中を通り、最終的には滝の上から投げ出される。
 巨大なビーカー型のプールの中身は、泳げない人も浮かせてしまう魔法の水だ。その底にみえるスイッチをどうやって押すか、学生たちは頭を悩ませた。
 部屋の各所に隠されたスイッチを押すたび、水の流れが切り替わり、押す前とは別のところに流されてしまう。
 ハズレを引けば波が起き、みんな沈んでしまうこともあるが、波を乗りこなす者が現れはじめてからはすっかり娯楽と化していた。
 シャーレ型の浅いプールは周りから独立しており、なにも危険はない。
 ここにいる生徒たちも別にのんびり遊んでいるわけじゃない、なにか手がかりがないか探しているのだ。たぶん。
 床にシートを広げ、だらだらしている学生たちも、ちょっと休憩中なだけだ……たぶん。

 熱心に探索する生徒たちを、天井にさんさんと輝く人工太陽のガジェットが見守っている。
 一見、行き止まりにみえるこのトロピカルな空間。
 どこかに先へ進む仕掛けが隠れているはずなのだ。
 だから、そう、もっと遊……探索しなくては!

●warning
「罠だね」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)はそう断言した。
「僕も詳しくはわからないけど……この屋内プール型迷宮は、なんらかのオブリビオンが目的を持って作った『実験室』みたいだ」
 だが、発見以来アルダワの学生たちはすっかり浮かれており、『迷宮の攻略に行く』と言っては、日々ここで遊んでいる。気持ちはわからなくもないけど、と、鵜飼は軽くため息をついた。
「毎日勉強ばかりだと疲れるものね。でも何かあるといけないから、今日はきみたち『転校生』のみんなに、生徒たちの様子を見てきてもらいたいんだ。必要な道具は持ってきたかな?」
 何人かの『転校生』が、にこにことしながら水着を掲げてみせる。
「うん、元気がよくていいね。でも、気を抜いたらだめだよ。遊びに行くんじゃなくて、いちおう依頼で……ええと、聞いてる?」
 ゴムボートを膨らませ、クーラーボックスにアイスを入れている『転校生』たちを見て、鵜飼は若干困ったように笑う。
「あの……もう一度言うね、みんな。遊びに行くわけじゃないよ?」
 聞いてる聞いてる。ユーベルコードがあるから大丈夫。
 いいから早くテレポートさせてくれと、きらり光ったサングラスの奥の目が訴えている。
「……学級崩壊だ……」
 教員免許を取らなくてよかったと、グリモア猟兵は密かに思った。

 いついかなる時も迷宮には脅威が潜むことを生徒達に教えなくては……!
 というわけで。
 一足早い夏を冒険し尽くすのだ!


蜩ひかり
 蜩です。
 よろしくお願いいたします。

●概要
 お遊び要素強めなアドベンチャーシナリオです。
 存分に遊び、敵の罠に引っかかって下さい。
 事件に備え水着を着なかったり、警戒しておくのもありですが、あまりガチガチにならないほうが楽しめるかと思います。

●大まかなシナリオの進行
 【一章】巨大室内プール型迷宮で遊びつつ、事件に備えます。
 【二章】???(冒険です。なにかが起きます)
 【三章】ボスに勝利すれば成功です。

 一章で遊びすぎたからといって、二章で特別厳しい判定をしたりはしないので、気兼ねなくプレイングをお書きください。

●プレイングの送信
 各章の開始時に、導入として誰も出てこないシーンを追加します。
 送信はそれまでお待ちいただけますと幸いです。

●同行者/描写について
 今回は【書けるときに無理のない範囲で少しずつ書きます】。
 恐らくプレイングが流れますので、ご迷惑をおかけいたしますが、あらかじめご了承の上での参加と、再送のお願いを申し上げます。

 3名様以上の団体様は【今回は採用しません】。
 参加人数によってはプレイングをお返しする可能性もあります。
 各章のフラグメント投稿者の方は極力優先採用させていただきます。

 以上です。
 プレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『スプラッシュスリル満点!』

POW   :    遊びまくって罠に引っかかる

SPD   :    遊びながら生徒の安否を確認する

WIZ   :    遊ぶ振りをして周囲を警戒する

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●1
 迷宮の扉を開けたきみたちは、衝撃の光景を見た!
 人もドラゴニアンもケットシーも、警戒のけの字もなく入り乱れ、水着に着替えて流れるプールやスライダー、サーフィンを楽しんでいる……すべてアルダワの学生たちだろう。
 ヤシの木にハイビスカス、バナナやパイナップルが生い茂るその部屋の内部は、適度な気温と湿度が保たれ、さわやかな夏そのものの空間になっていた。
 ――グェッ、グェッ、グェッ!
 ……なにかと思えば、オオハシ型のガジェットが鳴く声だった。オブリビオンの罠だというが、ずいぶん手の込んだ罠だ。
 入ってきた扉以外の出口はなく、行き止まりに見えるが、この部屋のどこかに隠された仕掛けがあるのだろうか?
 きみたちはそれを探してもいいし、探さなくてもいい。
 そんなことより、とりあえず遊ぶのである!

●補足情報
・進行ペースと採用人数についてはマスコメに記載の通りです。
・OPや導入に記載されている内容以外にも『こんなギミックがあったらいいな』というアイデアがありましたら採用します。自由にお書きください。
・部屋の色々な場所に隠されているスイッチを押すと(基本は)『何か素敵な変化』が起きます。内容は指定しても、しなくてもOKです。
・水着は着ても着なくてもかまいません。
・まだ何も起きていないため、遊んでいる生徒たちを避難させるのは難しいです。
・参加者様全員が平和に遊んでいたとしても、そのうち何か起きてストーリーが進行します。
・ただプールサイドでだらだら過ごしたり、出店をひらいたりしてもOKです。日常フラグメント感覚で楽しく自由にどうぞ!
赤嶺・ふたば
(WIZ)
はぁ・・・ダイバー用の装備とかでも買っとけば良かったよまったく・・・。
とりあえず水着が無くても遊べるようなのでも探そうかな、もしかしたら探してる内に何か事件解決に役に立つのとか見つかるかもしれないし。
この案件が終わったらこんなもどかしい思いは二度とゴメンだし水着とついでにダイバー用の装備でも買うとでもするか。
(アドリブOKです)


満月・双葉
カエルのマスコットを召還し、水で喜んでいるフリをさせつつ警戒させます。
マスコット型でもカエルですから…水は好きですよね。

視力、暗視、聞き耳を使って注意しておき、また第六感、野生の勘にも頼りましょう。
いや、僕は水はきらぁー!(マスコットに後頭部飛びげりを食らって水に沈む)水のなかに何かないかきちんと…

アドリブ歓迎


赤星・緋色
えーと、水着に浮き輪にサングラスにビーチパラソル、ビーチチェアでしょ、あとはトロピカルなカクテル(ノンアル)とフルーツ……あとは何が必要だっけ?
よし、準備おっけー
私は真面目だから遊び要素ゼロで行くよ!

熱帯ってウイルスの宝庫だから感染症がないか調べるし
シャーレって培養に使うものだから水質が安全なものか調べるし、実際に泳いでみて安全かも調査するし
波を起こす装置が人を巻き込まないかスイッチ切り替えながらチェックするし

潜水の競技だと重りを掴んで規定距離を潜ってから浮かぶよ。コレを使えばスイッチも押せるよねたぶん
ウォータースライダーの暗闇は暗視持ちの私なら見えるよ。答えとか仕掛けがあるかは知らないけど



●2
「はあ……」
 キャッキャウフフと、学生たちの賑やかな声が響くプールサイド。まさに青春、夏まっさかり。
 そんな青春ロードのはしっこをとぼとぼと歩く、身長150センチにも満たない少女がひとりいた。
「はああ……………………」
 どこか自分に似た緑の髪の少女が、水着で元気に遊ぶ姿を見て、ひときわ大きなため息が出る。

 赤嶺・ふたば(銃と魔法が好きな傭兵魔術師・f15765)は、傭兵魔術師である。
 『美少女になりたい』と言う夢を叶えるために、借金してまで人体改造手術をしてしまった、ある意味ではとてもピュアな性格の新米猟兵であった。
 日々エステやコスメの高さにビビり、まだ水着も用意できていない27歳だ。せっかく理想の美少女になったのに――理想と現実をへだてる壁の高さに、ため息も出てしまう。
 だがしかし、夏本番まであと三か月少々ある。
 それまでに一攫千金すればいいのだ。
 この任務が終わったら、いったい何円お給料がもらえるのだろう……そんな皮算用をしながら、ふたばは水着がなくても遊べる方法をさがして、歩いていた。

 そして、同じころ。
「はあ……」
 満月・双葉(星のカケラ・f01681)もまた、プールサイドに体育座りをして、無表情にため息をついていた。
 偶然にも名前まで似ていたが、こちらは『ふたは』さんなので、みんな呼び間違えないように。
「生まれつき恵まれている人は、持たざる者の悲哀など理解できないでしょうね」
 双葉は双葉で、とても深刻な悩みを抱えていた。
 つめたい魔眼が銀縁眼鏡ごしに見つめるのは――目の前で遊ぶドラゴニアンの女性の胸元でたわわに揺れている、やわらかなふたつの果実。
 ――胸だ。
 要するに、胸である。双葉には胸が足りない。
 ジーンズにパーカーというラフな服装も手伝って、そのスレンダーな容貌は、一見すると中性的な少年にも見えかねない。それもすべて平らな胸のせい。ママの遺伝子のせいなのだ。

「あ……」
「……どうも」
 そんな気まずいふたばと双葉が、ばったり出会った。
「水着……着ないの? もしかして、持ってない仲間の人? だったら心強いなぁ……」
「……ある意味では正解ですね。僕は水は嫌いなので」
「えー泳がないの? じゃあ、これ使ってる?」
「うわっ!」
 『ざばー』というオノマトペをまといつつ、突然プールから出てきた赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)を見て、ふたばは腰を抜かしそうなほど驚いた。
「な、なんで擬音が実体化してるの……?」
「これ? 投影表示してるだけだよー、いわゆるホログラムってやつ」
 この緋色に関しては、清々しいほどにいっさいのデータがない。いつもノリと勢いでなんやかんや活動している、謎の非実在系イェーガーである。
 なんやかんやで面識がなくはない双葉は、無表情のまま、彼にかるく会釈をする。
「何かあるんですか?」
「えーと、ビーチパラソル、ビーチチェアでしょ、あとはトロピカルなノンアルカクテルに、フルーツ盛り合わせ……あとは何持ってきたんだっけ」
 どこからかぽいぽいと出てくる夏満喫アイテムの数々で、寂しいプールサイドがあっという間に豪華なサマーリゾートになってしまった。
「それじゃ! 私は真面目だから遊び要素ゼロで行くよ!」
 ぴこーんと星を出して、ぴゅーんと走っていった緋色は、シャーレ型の浅いプールの近くに座りこんだ。
「熱帯ってウィルスの宝庫だもんねー、特にシャーレって培養に使うものだから、水質が安全か調べないと」
 デジタルツールを使ってなんやかんやするのもそこそこに、中へ飛びこむ。
「実際に泳いでみて安全かも調査するしっ!」
 小学生くらいの子供たちに混ざって泳ぎつつ。
「あと、あそこにも行ってみないとね。答えとか仕掛けがあるかは知らないけど!」
 浮き輪を装備してウォータースライダーに飛びこみ、滝の上からざっばーんと排出されつつ。
 どう見てもフルパワーで楽しんでいる緋色の姿を、ふたばと双葉はビーチチェアの上からぼんやりと眺めた。フルーツ盛り合わせと、トロピカルなノンアルカクテルをつまみつつ。
 ……べつに、羨ましくなどない。たぶん。

「せめてこのカエルだけでも泳がせてやりましょうか……」
 双葉が【カエルの大捜索】で召喚したカエルのマスコットは、真ん中にパラソルがつけられたテーブルの上にぴょこんと飛び乗ると、もの言いたげな視線で主人を眺めた。
「え。なんですその目。いや、だから僕は水はきらぁー!」
「ああっ、双葉さん!」
 ばっしゃーん!!
 後頭部に飛び蹴りを食らって、カエルと共に流れるプールにに沈んでいった双葉を、ふたばはオロオロしながら見守る。
 流されかけた眼鏡をかけ直し、双葉はため息をついた。
「まったくもう……なんで毎回毎回蹴るんですか。ほら、とっととスイッチを探してください」
 その時……。
「潜水の競技だと、重りを掴んで規定距離を潜るんだよね。ほーい、ぽちっとな!」
 重りをかかえてビーカー型プールに飛びこんだ緋色が、水底のあやしいスイッチを押した。
「水のなかに何かないか、きちんと……ごぼっ!?」
 すると、プールに大きな波が起き、双葉だけがあらぬ方向へ流されていった。
 周囲では、波にゆられたアルダワの学生達が、きゃーきゃーと嬉しそうに騒いでいる。
 うまく波に乗ってその合間をただよいながら、心なしか楽しそうにすーいすいと泳ぐカエルを、双葉が表情筋の死んだ顔(元々だが)で見つめている。
「うーん、これも危険ってほどでもないかな。カエルさんそっちはよろしくねー」
 なんやかんや夏を満喫している緋色は、遊ぶふりをして監視をしている(らしい)カエルに手を振ると、また別のアトラクションへぴゅーんと飛んでいったのだった。

 ああ、猟兵稼業とは、かくも過酷なものなのか。
 自分、この案件が終わったら、出たお給料で借金返済して、水着とついでにダイバー用の装備も買うんだ――そんな死亡フラグっぽいものを立ててしまった、ふたばの運命やいかに。
 つづきは二章で!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

御剣・誉
アドリブ・絡みOK

あっれー?いつの間に夏になったんだ?
まぁそんなこと、どうでもいいか
オレも遊ぶぜ!だってここ夏だし!
夏を制する者が人生を制する!…違った?

水着姿にパーカーを羽織りウォータースライダーを遊び倒す
目的は『どれだけスピードを出せるか』
確か身体の接触面積が小さい方がスピード出るんだよな
さっきよりは速くなった気がするけど…
よしもう一回いくか

飽きたら浮き輪に乗って流れるプールでぷかぷか浮いてる
ていうか流されてる
こんな面白いのとこがあるなんてアルダワ魔法学園って最高じゃね!?

スイッチがあれば積極的に押す
躊躇?知らねぇー
あれ?なんだこのスイッチ
え?押しちゃダメだった?

えーヤダよオレ帰らねぇよ!


ユキ・スノーバー
夏を満喫しながら遊んでれば、事件を解決出来るって聞いて参上だよー!
何だかウクレレ鳴らしたくなる様な雰囲気だよね?
ぼく泳げないけど、こんなに水辺なんだから泳ぎの練習とか出来たら嬉しいなっ(本音)
あっ、でもちゃんとアルダワの学生さん達に何かあったら大変だから、周囲の警戒を忘れずなんだー(きょろきょろ)
泳ぎ疲れor泳ぐのが厳しければ、浮き輪に嵌ってゆうらりふらり。
可能ならスイッチ押しにチャレンジしたーい!
ギミックに法則性がありそうな気がするから、何か起こる度にメモをしておくね。
……え?濡れちゃう?
大丈夫!ちゃんと濡れても消えない油性マジックで書いてるから、万全なんだよー♪
平和ボケしないようにしなきゃ



●3
 世界が違っても、学生たるもの、元気よく寝て食べて遊ぶべし。学食からの出張で運営されている売店の前は、水着を着た人々でにぎわっている。
「あっれー? いつの間に夏になったんだ? まぁそんなこと、どうでもいいか!」
 ――だってここ、夏だし!
 水着の上にスタイリッシュなパーカーを羽織り、持ち前の社交性ですっかりアルダワの学生に溶けこんでいる少年は、実にさわやかな笑顔で焼きおにぎりを頬ばっていた。
 そう、細かい事は気にしないべし。
 それでこそ日本の男子高生だ、御剣・誉(異世界渡り・f11407)。
 夏の王子様と化した誉が、ラムネを飲みながらプールを眺めていると、なにか不思議なものが流れてきた。

「わああー」
 身長30センチ程度の、白くてまるくてちいさい生き物が、浮き輪にはまったままどんぶらこどんぶらこと流されていく。短い手足をぱたぱた振って、助けを求めているようだ。
「え、なんでこんな所にちっちゃいクマが……? いや、あの子猟兵じゃん!」
 誉は慌ててプールに飛びこむと、(>ω<)こんな顔で流されているテレビウムの子どもと、水底に沈んでいた防水メモ帳を救出した。どうやら、このつぶらな瞳のもこもこは、ユキ・スノーバー(しろくま・f06201)という名前らしい。
「ふー、助かったよー! あのね、こんなに水辺なんだから、ぼくも泳ぐ練習しようと思ってお水に入ってみたんだっ。でもね……」
 浮き輪の穴がユキの想像以上にテレビウムのボディにはまってしまい、抜けだせなくなっていたのだそうだ。やっぱりぼくが泳ぐのはきびしいのかなぁとしょんぼりするユキを見て、誉はばしんと自分の胸をたたく。
「そんなことないって! まずはあっちの浅いプールで練習しようぜ。オレも付き合うからさ!」
「いいのー? わーいっ! あっ、でも学生さん達に何かあったら大変だし、ちゃんと見張りながらねっ」
「……そ、そうだな!」
 その事はすっかり忘れかけていた、とは言えず。
 メモ帳に『ここは流れがはやくてあぶない!』と油性マジックで書きこんで、ユキはぽてぽてと元気に歩いていく。何か危険はないか、瞳をきらりん! とかがやかせて。
 身体はちいさくても、ユキはがんばる子なのだ。

 シャーレのプールなら、浅くて静かで練習にはもってこいだ。誉のお手本を見ながらばた足と息つぎの練習をしていたら、ユキの泳ぎもだんだんと上達してきた。
「見てー、こんなに進めたよー!」
「おー、上手い上手い!」
「プールってあったかくて楽しいねー♪」
 雪国生まれのユキにとって、水とはいつもつめたくて、凍っているものなのだろう。夏の水辺に親しみ、嬉しそうなユキを見ていると、役に立てて良かったなと思い、誉も笑顔になる。
 じゃあ次はアレ行ってみようぜと、誉はウォータースライダーへ続く階段を指さした。本日の大本命だ。
「わあああー! うーん……なんか違うんだよなぁ」
 まずは誉がやってみたが、いまひとつスピード感が物足りない。帰ってきた誉は、どきどきしているユキを浮き輪にはめ、スライダーへ送り出してみる。
「わああああー!?」
「ユキ君すげぇ……あ、そうだ!」
 ガラス管の中をものすごいスピードで流されていったユキが見え、大丈夫かちょっと心配になる。けれどその様子を目にしたおかげで、誉は以前どこかで聞いた豆知識を思い出した。
 身体の接触面積をなるべく小さくするとスピードが出る、んだった気がする。仰向けに寝そべり、今度はお尻を浮かせて――再チャレンジ!
「おお!? さっきと全然違うじゃん!」
 暗闇のなかを通り抜ければ、ガラス管ごしに見えるのは眼下にひろがるふしぎなジャングルと、そこで遊ぶたくさんの人々。
 その守るべき光景もほんの一瞬で過ぎ去って、ふたたびまっくらな闇が誉を包んだ。そのまま進んで進んで、終点に見えてきた光に向かって、勢いよく飛びこめば――!
「アルダワ魔法学園、最高ーーーーっ!」
 そう叫び、誉は滝の上から真下のプールへしぶきを上げてダイブする。浮き輪にはまり辺りをぷかぷか漂っていたユキが、着水の衝撃でゆうらりふらりと揺れる。
「誉さん誉さん、ここー! さっきお水の底になにか見えたんだよっ」
 水中から見えるユキの足がぱたぱた動いている。どうやら何かあると訴えたいようだと察した誉は、ユキの真下にあやしい窪みを見つけて、躊躇なく触ってみた。
 ……カチッ。
(あ、押しちゃダメなやつだったかな……)
 しかし、何も起こらないようだ。ほっとして、誉が水面に浮上してみれば――。

「すごーい! しゃぼん玉がいっぱい降ってきたよー!」
 天井から降りそそぐのは、きらきら七色にひかる、たくさんのちいさなしゃぼん玉。
 泡を追いかける学生たちに囲まれて、雪みたいだねぇと、ユキが嬉しそうににこにこ笑っている。
 雪山の上から眺める静かな景色も綺麗だけれど、ガラス管の中から見た夏のジャングルも、にぎやかで素敵だ。

 遊び疲れた誉も浮き輪につかまって、今度は二人でどんぶらこと、プールを流されてみる。
 行き先は運の向くまま。どこからか聴こえてくる心地良いウクレレの音色は、ビーストマスターの学生が奏でているらしかった。よく食べて、思いきり遊んだあとは、なんだか眠くなってしまう。
「はー、帰りたくねぇなぁ……」
 誉はおもわず本音をもらし、浮き輪に体をあずける。
 陽気にうたう鳥たちの声に耳を傾ければ、一足早い夏気分。
 夏を制する者こそが、人生を制するのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

長袖パーカーラッシュガードにハーフパンツの水着着こんで
すっかり夏を楽しむつもり
なんなら浮き輪も持ってきた
や、だって日焼けしたないし
ケド遊……調査は満喫したいし、ねぇ

自分よりよっぽど浮かれ足なたぬちゃんについていきスライダーへ
トンネル途中に仕掛けがあるかもネ、と送り出した後に自分も続いて……って無理!
コレ(楽しすぎて)調査所じゃないねもう一度行かなくちゃ!

放り出されてる最中、壁に仕掛けを見付け(た気がし)てたぬちゃん確認
あの仕掛けを押すには何処へ(遊びに)行けば……と次の目標ロックオン
しつつものんびり流されて

辿り着けたらぽちっとしてみましょーか


火狸・さつま
コノf03130と

狸っぽい色合いの狐姿にて参加
人語会話不可能
コノとは何となくで会話が成立します


ここ、ぬくい…!
目を輝かせ、プールサイドをとてとて
前脚でプールの水ちょいちょい触り
危険は、なさそう。と、振り返れば
コノ……乙女…?
暑く無いかと首傾げる

ボタン、ボタン…っとキョロキョロ探……
コノ…コノちゃん…!あ、あれ…!!!
相方の足元をつんつん
コノー!あれ、あれ行きたい!アレ滑ろう?!
はやくはやくとちらちら後ろ振り返り振り返り
わっくわくスライダーへと向かう
途中、ボタンあったら、押して良い?
と、思ってたものの、流されてゆくのに精一杯
滝の上ぽぉんと出れば万歳で喜んで
…滝の出っ張り岩に、ボタン見えたような?



●4
「わっ! タヌキ!」
「タヌキ……? キツネじゃないの?」
 ご主人に結んでもらったらしいリボンタイが首についているけれど、どこの子だろう。
 ふわもこの毛から四本足を突き出して、プールサイドをくんくんかぎ回る謎の獣が、にわかにアルダワの学生たちの注目を集めていた。
 形はキツネなのだが、色はどちらかというと、タヌキだ。実は犬ではないかという説も飛びだす。
 みじかい前脚をぴーんと伸ばし、水にじゃれては、とてとてと歩いていくタヌキツネ。すると、学生たちもぞろぞろその後を追っていく。
「かわいい~!」
 きらきら目をひからせて水とたわむれるその姿は、動物好きの生徒たちにすごくウケた。きゃあきゃあ言われていようが、タヌキツネはとりたてて気にすることもない。水に夢中なようだ。

「ココに居たの。ちょっとたぬちゃん、一人で先行っちゃダメじゃないのヨ」
 そのとき、小走りで駆けてきた青年がひょい、とタヌキツネを抱きあげた。
 きょとんとしているタヌキツネ――火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)を、生徒達が名残惜しげに見つめる。ゴメンねぇとゆるい笑みを振りまくコノハ・ライゼ(空々・f03130)のことを、ご主人様だと思ったのだろう。実際はまた別に飼い主がいるのだが。
「なぁに? ナニか言いたげじゃない、この服のコト?」
 人懐こいわんこのように、ぱたぱた尾を振っていたさつまは、こてんと頷く。
 くたっと左右に首をかしげるタヌキツネ。どうやら『ここはぬくいのに、そんな服で暑く無いの』と訊きたいようだ。
「暑そうなのはたぬちゃんもだと思うケド?」
 むくむくの毛をわしゃわしゃしつつ、コノハは、水面に映った自分の姿をあらためて眺めた。
 ハーフパンツの水着の上に、長袖パーカーのラッシュガードを羽織り、露出する部分にも日焼け止めを塗った。UVケアは完璧だ。
 ビビットカラーな虹色の浮き輪を小脇に抱えたその姿は、まるで――。
「……や、だって日焼けしたないし、ケド遊……調査は満喫したいし、ねぇ?」
 ――コノ……乙女?
 さつまは再び首をかしげる。
 だから準備にあんなに時間かかってたのか、とちょっと思う。

 ひとまず、この近くには危険はなさそうだ。あやしいボタンを探してタヌキツネはとことこ駆けていく。きょろきょろと動く好奇心旺盛な瞳は、なにやら行列ができている一角を見つけた。
 頭上をめぐるガラス管のなかから、悲鳴のような歓声が響いてくる。
 あれはもしかして――!
(コノ……コノちゃん……! あ、あれ……!!!)
 夏の新メニューの参考にでもしようかと、ジューススタンドのワゴンショップでトロピカルドリンクを頼んでいたコノハは 足元をつんつんつつかれて下を見た。
 さつまがもふもふ尻尾をちぎれんばかりに振って、ある一点をきらきらした目で見ている。
「そっか、ウォータースライダーやりたいのネ」
 こくこくこく、と猛スピードで頷くと、さつまはコノハの返事も待たずにトトトと駆けていった。
 はやくはやくっ。尻尾をふりふり、たまにうしろを振り返って。
 さっきは乙女と言われてしまったけど、自分よりよっほど楽しそうだ。
 あとで店の常連達に見せたら喜ぶかもしれない。看板狸の愛らしい様子を動画におさめつつ、コノハもにこにこと笑んであとを追う。
「トンネル途中に仕掛けがあるかもネ。はい、行ってらっしゃいな」
 背中を押されたさつまは、ぴょーんとガラス管に飛びこんだ。もふもふの毛はあっという間にぐっしょり濡れて、まるでモップ状態だ。
 ――あ、ボタン……!
 ころころ転がりながら流されていく最中、ガラス管の天井にボタンを発見するも、手足をわたわた動かすばかりが精いっぱいで押せない。
「あら、たぬちゃん……ってドコ行ったの? いるー?」
 ――ここ、ここ!
 後から来たコノハが追いついてきて、ふたりで一緒に暗闇の中を流されていく。
 高い滝の上からぽぉんと排出されて、さつまは思わず万歳のポーズ。
 コノハもつられて万歳しつつ、揃って仲良く下のプールにばしゃーんと落下した。

「……無理っ! コレ楽しすぎて調査どころじゃないね」
 コノハにしがみついて、プールから浮上したさつまもこくこくと頷く。浮き輪につかまり、のんびり流されて休憩しながら、(遊びの)作戦相談タイムだ。
「ねえ、上から見たトキ、あそこの壁にアヤしい穴見えなかった?」
 さつまはそれには気づかなかったようだが、かわりに滝の脇にある出っ張り岩を指さす。普通に滑っても手が届かなそうなそこには、確かにちいさなボタンらしきものがあった。
「んー、あの仕掛けどうやって押すのかねぇ。これはもう一度行かなくちゃダメね!」
 二人でこしょこしょ相談したら、名案をひらめいた。
 目標、ロックオン。一人と一匹は、ふたたびスライダーの列めがけて駆けだす。
 今度はコノハがさつまを抱えて出発だ。そして滝から投げ出される瞬間、コノハは先程の岩に向かってさつまを放り投げた。
「たぬちゃん、ぽちっとやっちゃって!」
 見事出っ張り岩に着地したさつまは、ぽちっとボタンを押す。
 するとピロリンと音が鳴り、コノハが言っていた壁の穴のすぐ下から、滑り台がのびてきたではないか。
 近くにいた学生たちがさっそく滑り台を登ろうとしているが、穴から流れ落ちる水のせいで、つるつる滑って転んでいる。あれにもチャレンジせねば――!
「行くヨ、たぬちゃん」
 穴のなかには、きっとまた新しい仕掛けがあるはず。狸と狐の気ままな大冒険は、まだまだ終わっちゃいないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

岡森・椛
去年の夏に買った赤い花柄のタンキニ水着
お気に入りを着ると楽しかった思い出も一緒に蘇る
今年は何色の水着を買おうかな?
そんな事も考えながら大喜びで夏の中に飛び込む
泳ぐ前の準備運動も忘れずに

ウォータースライダーに挑戦
真っ暗な中にもスイッチあるかも
それを探しながら…きゃああ!
周囲を見る余裕もないまま流されて落っこちて…
少し遅れてぐるぐる目を回したアウラも落っこちてきたよ
強敵だね
あっちのプールは凄い波だけど、科戸の風でモーゼ的に水を割り道を作って奥のスイッチ押しちゃおう
アウラ頑張って!
あ、水流に負けて押し流さ…きゃー

持参の保冷箱にはアイスと飲み物が冷えてる
時折休憩しながら遊…気合いを入れて探索を続けるね


ハーバニー・キーテセラ
むむむ~、水へ入るにはやはり水着ですよねぇ?
となるとぉ、これ(バニースーツ)は脱がねばですかぁ
いやはやぁ~、これは仕方ありませんよねぇ~
水の中で遊……探索するには仕方ありませんものねぇ?

水着に着替え……もとい、変装してぇ、場所に溶け込みましょ~

あのビーカー型のプール。あれは怪しいですよねぇ
水の流れが切り替わるスイッチだなんてぇ、何かあるって言っているようなもの~
これはもう、全部試してぇ、流れを楽し……確かめるしかぁ~
そぉ~、これはぁ、ビーカーの底にあるスイッチを押すためにぃ、必要なこと、必要なことなのですぅ~
全力で楽しんでいるように見えるのもぉ、偽装のためですからねぇ?
本当ですよぉ~?



●5
 扉を開ければ、そこにひろがる真夏の楽園が、楽しかった夏の思い出の数々を色あざやかに蘇らせる。
 持ってきた保冷箱を床に置き、どこから遊びにいこうかと、岡森・椛(秋望・f08841)はおおきな瞳をあちこちへ滑らせる。ふだんはよい子そのものの椛だが、今日はうきうきして、つい学級崩壊の片棒をかついでしまったのだった。
 そのとき、銀の髪からとがった耳を覗かせた女性が、椛の前を通っていった。
「あれ? ねえアウラ、今のって……」
 アウラも首を傾げている。
 気になって駆け寄ってみれば、やはり先日空の上で会ったハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)だった。ずいぶん印象が違ったので、一瞬迷ってしまったのだ。
「あららぁ~、見つかっちゃいましたかぁ。よくぞ変装を見破りましたね~」
「良かった、人違いだったらどうしようかと思った……今日はバニーさんじゃないんですね」
 そうなんですよぉと、ハーバニーは神妙な面持ちでうなずく。
 トレードマークであるバニースーツとヘアバンドを今は脱ぎ、水着にチェンジ。靴もサンダルに履き替えて、今日のハーバニーは水先案内人スタイルだ。
「変装……なんですか? 何だかスパイみたいでかっこいいですね!」
「ふふふ~。そうなんですぅ、これも場所に溶け込むためですからぁ。椛さんもぉ、赤い水着が可愛らしいですね~」
「えへへ。これ、お気に入りなの。嬉しいな」
 ハイビスカスを頭に飾ってもらい、ご機嫌なアウラと一緒にくるりと一回転してみせた椛を、ハーバニーは微笑ましげに眺めた。
 赤い花柄のタンキニは去年の夏に買ったものらしいが、彼女の桃色がかった白髪や赤い瞳によく似合っていて、お気に入りというのも頷ける。
「いやはやぁ~、これは仕方ありませんよねぇ~。水の中で遊……探索するには仕方ありませんものねぇ?」
「ですよね。遊……探索するためには水着を着ないと!」
 せっかくだし一緒に遊、いや、探索しよう。
 そう笑って頷きあった二人は、しっかり準備運動を終え、歩きだす。
 しかし、ひとつ驚いた事があった。
「むむむ~。もしかしてぇ、兎のままでも意外と溶け込めたでしょうかぁ」
 道中、カエルやシロクマや、タヌキ的なキツネが泳いでいるのを見かけ、ハーバニーは首をひねった。何せこれらの生き物は全て、仲間の猟兵だったのだから。

「……きゃああ!」
 暗闇の中に何かありそうだと構えてはいたものの、水の勢いに負けてそれ所ではない。
 ウォータースライダーの出口から下のプールへ、ばしゃーんと落下した椛の上に、へろへろになったアウラが落ちてきた。椛の手のひらに受け止められたアウラは、そのままばたんきゅーしてしまう。
「アウラ、目を回しちゃってる……強敵だったね」
 無理もない。軽いアウラは、まるで洗濯機に放りこまれたように、くるくる回りながら流されていた。
 さらに後から落ちてきたハーバニーはさすがに身軽なもので、くるりと宙返りをしながら着水する余裕のパフォーマンスを見せる。周りにいたアルダワの学生から、歓声と拍手が巻き起こった。
「ハーバニーさん、スイッチありましたか?」
「はぁ~い、暗くて見えづらかったですけどぉ、押してきましたよぉ~」
「……じゃあもしかして、あれって……」
 椛が指さした先を見れば、急に凄まじい波が起きはじめたせいで、次々とプールサイドに打ち上げられている学生たちの姿が見えた。
「むむむ~、あの怪しいビーカー型のプールのぉ、水が抜けたりしないかなぁ~と思ったのですがぁ。これはもう、他のスイッチも全部試してぇ、流れを楽し……波を止めるしかぁ~」
 ビーカー型のプールは他の猟兵も攻略していたが、まだ幾つかあるようだ。
 ハーバニーはそう言うと、辺りの草の根元に埋まっていたり、プールの底に隠されていたスイッチを、次々に野生の勘で見つけだし、押していった。
 しかし事態は一向に好転せず、二人もアウラも学生たちも、次々と切り替わる流れに巻きこまれて水路をぐるぐる回ってしまう。
「ええっとぉ。そぉ~、これはぁ、ビーカーの底にあるスイッチを押すためにぃ、必要な……必要なこと……なんですけど、流石にそろそろ止めたいですね」
 プールサイドに死屍累々と積み上がっていく学生たちを見て、だんだん真顔になってきたハーバニーは『土左衛門』というUDCアースの言葉を何となく思いだした。その時……。

「おい、あの波の向こうに新しいスイッチが見えるぞ!!」

 先ほど凄い波が起きていたプールの周りで、学生たちが騒いでいる。ハーバニーが暗闇の中のスイッチを押した時、一緒に現れていたのだろう。
 何か鍵があるはずだ。椛は、ふらふらしているアウラを励まし【科戸の風】を起こさせる。
「水を割り、道を作って、海を、波を、鎮めるの。アウラ、頑張って!」
 すると荒れたプールの水が左右に割れ、真ん中に道ができた。その向こうにあるスイッチめがけ、椛は走る。もうくたくたなアウラの力は、長くは持たない。
 奥のスイッチに手をのばす寸前、風の効力が切れ、椛の左右から水の壁がせまってきた。
(お願い、間に合って……!)
 水に押しつぶされそうになりながらも、椛は懸命に腕をのばし、指先でスイッチを押しこむ。
「……きゃー!」
 椛は波に流されていく。しかし、おかげでビーカーの中の水が抜けていることに、ハーバニーは気づいた。すかさず【兎跳】でぴょんとひとっ跳びし、底に見えていたスイッチを押す。
 ……無事、波はおさまったようだ。
 ほっとしている二人のもとへ、さらに天井から宝箱が落ちてきた。
 中を開ければ――そこに入っていたのは、記念写真。
 モーゼの如くプールの水を割る椛や、滝から華麗に飛び降りるハーバニー。その他、ここに至るまでのどたばたの数々が映っている。
「わあ、すごい! どういう仕掛けなのかな」
「うふふ~。全力で楽しんでますねぇ」
 偽装だから、とは言いつつも、ふたりともとてもいい笑顔。ときどき真剣な顔もある。
 椛が持ってきたアイスと飲み物を片手に、ひとやすみ入れつつ、ふたりは写真を眺めて笑った。
 大活躍したアウラは、テーブルの上に寝転んでちょっとお昼寝中だ。今年は何色の水着を買おうかとはずむ声を、夢うつつに聴いていただろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と共に

遊…?

いや、我らを誘うための罠やもしれん
極力肌を覆う物を選びはしたが
この防御の足りぬ衣服では…
師父よ待て、浮き具を着けられよ
万一の事故に備えねば

なにを優雅に笑っているんだ
原色の花が飾られた飲み物を渡しながら
師のボートの端で周囲を伺う
…やはり罠ではなかろうか、何故か眠気を誘われる
自ら頬を叩き振り払う
眠るのは好かん

あれを押せばいいのか、容易いことだ
必要とあらば【星の仔】を勢いよく投擲し底のスイッチを押させる
…虐げているわけではない
見えないが奴も喜んでいる

どこへ流される?
師が逸れぬよう流れに逆らい泳ぐ
成る程――これこそが罠か
面白い、これしきの波に遅れはとらぬ


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
水の遊戯場か
実験室というには随分と呑気だが
攻略を遅らせるのが目的か
遊ぶ場所を作りたかっただけやも知れん

…ってジジ、過保護が過ぎるぞ
沈まぬ水と云われたろう、浮き具は要らぬ
寧ろお前が逸れぬか心配だ
共を許す故、支度せよ
遊びではなく散策だ――間違えるなよ?
水着と上着を纏いゴムボートを拝借して

ああ…成程、これは面白い
流れるボートに揺られ
ジジ、喉が渇いた
何か飲み物を用意せよ
眠ければ舟の上、共に寝る事を許そう
等と笑い…ほう、お前には遊び耽っている様に見えるか
喉を潤わせ第六感が呼ぶボタンを示す
お前、扱いがあまりでは?と呆れる刹那
む、流れが…あ、ジジ
勝手に離れるでない!
これも敵の策略か!?



●6
 ビーカーの中に満たされた水は、一見して普通の透明な水に見える。
 どのような魔術が使われているのだろうかと、蒼玉の双眸に探求の灯をともしたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)が水をすくう。繊細な指からこぼれ落ちる水滴のきらめきを、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)はしばし、食い入るように見つめた。
「水の遊戯場か。実験室というには随分と呑気だが……攻略を遅らせるのが目的か? いや……」
 遊ぶ場所を作りたかっただけやも知れん、とのアルバの言葉を聞いたジャハルは、わからないといった風に眉を寄せ、かぶりを振る。
「いや、我らを誘うための罠やもしれん」
 真顔で断言されてしまった。相も変わらずの石頭よの、とアルバは心の中で思う。

 今のところ平和そのものだが、グリモア猟兵の予知はおおよそ絶対のはずである。顔にこそあまり出ないが、ジャハルの胸中は非常に落ち着かなかった。
 いざという時に師父を護れぬのでは護人失格だ。極力肌を覆う物を、と考え、サーフィン用のウェットスーツを着てきたジャハルだったが、やはりこれでも布の厚さが心もとない。
 ふと思った。ビキニアーマーは、こういう場面でこそ真価を発揮するのでは?
 いや、それでは鎧の重さで水に沈んで逆に危険か……。
 若干思考か脇道にそれつつも、ジャハルが悶々と考えている間に、アルバはすたすたと歩いて、流れるプールに向かってしまっている。
「師父よ待て、何処へ行く」
「散策に決まっておろう」
「散……、ならば浮き具を着けられよ。万一の事故に備えねば」
 進言されたアルバはため息をついた。よく言えば甲斐甲斐しく、悪く言えば過保護だ。
 この一帯は沈まぬ水と云われたであろう、そう言ってビーカーからプールへ流れ落ちる水を示すも、ジャハルはじっと見つめて無言の抗議をしてくる。どうせこうなると思って普通のプールには行かなかったのだが、見通しが甘かったようだ。
「寧ろお前が逸れぬか心配だ……」
「?」
 なぜ、という顔をしている。どんな人混みでも見失うわけがない、とでも思っているのだろうか。
 そんな健気な様子にふっと笑みをこぼし、アルバは貸しゴムボート置き場に目を向けた。
「共を許す故、支度せよ、ジジ。遊びではなく散策だ――間違えるなよ?」
 そう命令を下せば、さっとさしだされた上着を水着の上に羽織り、アルバはゴムボートを選ぶ。
 黒い竜を模した、仏頂面のボートと目があった。
「見よジジ。此奴なかなか愛らしい顔をしておる」
 どこが可愛いのだと、ジャハルは首をひねりたい気分だった。
 だが、にっこりと笑みを向けられては、抗議できる筈もなく。
 ジャハルはその黒い竜を抱え上げると、慎重に慎重に、師を流れるプールという大海へ送り出したのだった。

「ああ……成程、これは面白い」
 ゆったりボートに揺られ、流れていると、任務中なことばかりか時すら忘れてしまいそうだ。上機嫌な師の一方、流されていくアルバを追いかけるジャハルの方は気が気でない。
「ジジ、喉が渇いた。何か飲み物を用意せよ」
「……承知したが、俺が居ぬ間に落ちるな、師父」
 なにを優雅に笑っているんだと頭を抱えたくなる。ジャハルはダッシュでジューススタンドに向かった。
「いらっしゃいませ~! ただいま『眠りネズミのきまぐれスムージー』が一番人気ですよ! 『水兵にゃんこの夏色☆サイダー』や『マスク・ド・ブレイズの熱血トロピカルモヒート風』もオススメで」
「……一番早く出来るもので頼む」
 眠りネズミをイメージしたらしいオレンジとバナナベースのスムージーに、真っ青な原色の花が飾られたドリンクを受け取ったジャハルは、大急ぎでアルバのもとへ戻った。そーっとボートの端に乗りこみ、飲み物を渡す。
「うむ、御苦労」
 師がジュース等飲み、無防備に遊んでいる間にもなにかあったらいけない。そう思い、そのままボートに居座って警戒するも…………いつまで経っても、なにも起きない。
 ゆったりと揺られるうち、いつしか瞼が落ちかかり、ジャハルははっとして自らの頬を叩いた。任務中に眠りかかるとは、何たる事だ。
「師父、遊び過ぎに御注意召されよ。やはり罠ではなかろうか、何故か眠気を誘われる」
 大真面目に言われたアルバは思わず笑ってしまった。
 どうして眠くなるのか、わかっていないらしい。
「ほう、お前には遊び耽っている様に見えるか。散策と言った筈だが? 兎も角、今は危険もあるまいて。眠ければ舟の上、共に寝る事を許そう」
「眠るのは好かん」
 いつも気を張っている従者へ、たまには休めと言いたかったのだが、そういった命令に限ってあまり従ってはくれない。困った子だ。
 では眠気覚ましにあれでも押して来いと、アルバは水底にみえたボタンを指で示す。
「容易いことだ。ゆけ、ナジュム」
 そう言うと、ジャハルは召喚された【星の仔】を、ボールのようにぶん投げた。
 ……綺麗なフォームだ。どぱぁんと飛沫があがる。透明な蜥蜴であるその姿は見えないが、周りの学生も気配は感じるらしく、今なにか通ったと騒ぎたてている。
「お前、扱いがあまりでは?」
「……虐げているわけではない。奴も喜んでいる」
 本当だろうか。
 アルバが呆れていた刹那、大波が起きてボートがぽぉんと弾み、ジャハルが落ちた。ナジュムが問題のボタンを押したようだ。
「……あ、ジジ、勝手に離れるでない!」
 しかし、星の仔の悪戯はそれだけに留まらず。
 見つけたボタンを勝手に押しまくっているのか、次々に流れが切り替わって、二人はどんどん別方向へ流されていく。そうとは知らぬアルバは、流石に少々慌てた。
「これも敵の策略か!?」
「成る程――これこそが罠か。面白い、これしきの波に遅れはとらぬ」
 やっと出番だとばかりに生き生きと目をかがやかせたジャハルが、波に乗りながらこちらに向かってきている。
 これは下手に動かぬほうが良さそうだ。人工太陽の眩しさに目を細めながら、アルバは救助を待つ事にした。

「見ろよ。あれ、きっと凄いサーファーだぜ……!」
 ――あの水着と黒い肌のせいなのか。
 学生たちから多大な勘違いを受けている様子には、少々頭痛を覚えつつ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

栗花落・澪
夏輝君(f12219)と連携

うわぁすごい…!
なんで水が勝手に流れてるの?
あっちは本物の海みたい!
アルダワは魔法があるけど、UDCでも出来るの?

2年ほど前まで閉じ込められていた身で
解放後も旅や任務で海や湖に少し寄った程度だから
夏輝君の話に興味深々

とりあえず夏輝君に従いガジェットに乗りつつ
キョロキョロとスイッチ探し
なんかそういうゲームみたいで楽しい
ひゃっ!?
あははっ、水かかっちゃった

あっ、見つけた!
ハレン押してきて!

高めの位置に見つけたらUCを発動し
ハレンに代わりに押してもらう
ギミック判定お任せ

わっ、あっ、夏輝くーん!?
落ちたら慌てて飛びながら引っ張り上げに行きます

※オレンジと赤の海パンに黒い上着


小林・夏輝
澪(f03165)と連携

うおースゲェプールだ!
アルダワにもこんな罠あるんだな!

元UDCで学生やってた身だから遊びたい盛り
澪があんまり経験無いっつーんで
折角だし連れて来た!
UDCでもよく波のプールとか行ってたなー

澪、ちょっと水の勢い強いしこれ乗っとけ
UCで出した水上浮上可能な2人乗り用のなんかを
所謂サーフボード代わりにして
澪を前に座らせ俺が後ろから抱え込む形で操作する
澪はスイッチ探しよろしくな

大丈夫大丈夫!
波が来ても、しっかり乗りこなしてやっからさ♪
…流石に後ろ向きに流されたらヤベェけど(フラグ)
あ、落ちたら回収よろしくにゃ(更にフラグ)

※黒地に紺の海パンで参加
※ネタキャラなので扱い自由



●7
「うわぁすごい……!」
「うおースゲェ!!」
 迷宮の扉をあけた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)は、想像以上に大規模なプールを前にして、驚きと歓喜の声をほぼ同時にあげた。
 遠くから、学生たちの騒ぐ声が聞こえる。
 そちらへ視線を向けてみれば、次々切り替わる水の流れに身をまかせ、楽しそうに遊泳している人々の姿が見えた。
「なんで水が勝手に流れてるの?」
「そっか、澪は見たことないのか。これはなー、流れるプールっつってさ……なんでかは分かんないけど、勝手に流れるんだぜ☆」
「……夏輝君に聞いたのが間違いだったかな」
「ちょ、にゃんだよソレー!? 失礼なんですけど!」
 何、という目でむぅっとされれば、可愛らしさについ頬が緩みそうになるが、顔に出したら変態……いや、大変な事になるだろう。アルダワにもこんな罠あるんだなー等と、夏輝は口笛を吹いてごまかす。
「あっ、見て、あっちは本物の海みたい!」
 オレンジと赤の海パンの上に黒い上着を羽織って、波が押し寄せるプールに素足をひたしている『彼』の後ろ姿は、可憐な少女のようにしか見えない。今日もしっかり守らねばと、夏輝は人知れず決意する。
 ともかく、澪が嬉しそうでよかった、と思う。
 今日は澪が喜んでくれるかと思い、誘ってみたのだ。夏輝自身も黒地に紺の海パンを穿き、普通の学生に戻った気分で、プールに入る前の準備運動を始める。澪も見よう見まねで、隣に並んでゆっくり身体を動かしてみる。
「UDCアースでもよく波のプールとか行ってたなー」
「アルダワは魔法があるけど、UDCアースでも出来るの?」
「UDCアースには魔法はないけど、スゲェ技術がいっぱいあっからさ。あのウォータースライダーよりヤベェのも結構あるんだよん♪」
「そうなんだ。いつか行ってみたいなぁ……」
 澪の記憶のなかに、そのような景色はなかった。
 あるのは暗い、暗い思い出ばかりで――そんな日々に光がさしてから、まだほんの二年。水遊びといえば、海や湖に少し寄った程度だ。
 澪はにこにこと微笑んで、夏輝の話に耳を傾ける。
 きらきらした瞳で夏の想い出話をする夏輝が、とてもきらきらして見えた。

 とはいえ、心臓の弱い澪をいきなり水に入らせるのは不安だ。
 先にすこし泳いできた夏輝は、プールから上がって【ガジェットショータイム】を発動する。
「澪、ちょっと水の勢い強いしこれ乗っとけ」
 出てきたのは、水の上でも浮く特殊な二人乗り用ガジェット。
 しいて言えば水上バイクっぽい形状だが、先端にハンドルのついた操作盤と、龍のような狼のような動物の頭がついていた。
「変な形……」
「そ、そういう技なんだからしょうがねぇだろ!」
 だが、いま戦っている対象……すなわちプールには有効なはず。はずなのだ。
 とりあえず、夏輝に促されるまま、澪は前に搭乗する。その後ろに夏輝が乗りこみ、澪を後ろから抱え込む形でハンドルを握る。
「変な事しないでよ、夏輝君」
「しねぇって!! 俺が操作するから、澪はスイッチ探しよろしくな!」
 ――発進!
 夏輝がガジェットを起動すると、水上バイクは流れをものともせず、力強く走りだした。さすがに超徐行運転ではあるが、遊園地のアトラクションのようで、なかなか楽しい。
 澪も安心して進みながら、きょろきょろと周囲を見回し、スイッチを探す。なんだか宝探しゲームのようでわくわくしてきた。その時、不意にバイクが大きく揺れる。
「夏輝君、波がきてるよ!」
「大丈夫大丈夫! 任しとけって、乗りこなしてやっからさ♪」
 夏輝は転覆しないよう、ハンドルをうまく操作して波に乗る。水上バイクがあげた飛沫が顔にかかり、澪は思わず、
「ひゃっ!?」
 と声をあげる。
「あははっ、水かかっちゃった!」
 驚いた。でも、冷たくて気持ちいい。
 俺もー、と夏輝も笑って返す。澪がいい笑顔をしているのを見ると、こちらまで嬉しくなる。連れてきてよかった。

「あっ、スイッチ見つけた! ハレン押してきて!」
 金蓮花の精霊、ハレンが澪の手のひらからふわりと飛びたち、ヤシの木の上に隠されていたスイッチを押しにいく。
「あれってきっとレアなスイッチだよね。何が起きるのかなあ」
「ふっ、今のなっちゃんは何が来てもへっちゃらだぜ☆」
「……本当?」
「……流石に後ろ向きに流されたらヤベェけど。あ、あと落ちたら回収よろしくにゃ」
「そういうのフラグって言うんだよ、夏輝く……わっ!?」
 すこーーーーん!!!!
 ……すごい速度で飛んできたヤシの実が、夏輝の頭にクリティカルヒットした。
「そ、そんなアホな……」
「わっ、あっ、夏輝くーん!?」
 ばっしゃーん。
 見事にフラグを回収し、3メートルほど吹き飛びながら水に落ちた夏輝をひっぱり上げようと、澪は慌ててオラトリオの翼をはばたかせ、救助に走る。
 ぶくぶくと泡をふいて水底に沈んでいた夏輝に肩を貸し、なんとかプールサイドへたどり着いた。
「大丈夫……?」
「し、死ぬかと思った……」
 罠って危ない。とても危ない。
 澪に膝枕され、癒しの歌声を聴きながら、夏輝はそう思った――。



 その時だ。
『ぱんぱかぱーん! にっしっし、大当たりじゃよw』
 ――バタン!!
 少女の声が響くとともに、どこかでなにかが閉まる音がした。
 続いて、カチッとなにかがロックされたような音が、かすかに響く。
 部屋が静かになった。
 澪は嫌な予感がして、夏輝にこうたずねてみる。
「……夏輝君、もしかして何か変なスイッチ押した?」
「へっ? 変なっていうか、落ちた時に水底にちょっと色の違う床があったから、とりあえず押しちゃったんだけど……」
 ……もしかして、まずかったかにゃー?
 夏輝は引きつった笑顔を浮かべた。
 しかし、ある意味では、確かに大当たりともいえる。
 彼はいま、元凶のオブリビオンへと続く、たったひとつの道を見つけだしたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『あれトラップダンジョン』

POW   :    壁はぶち破るもの、床は掘り抜くもの。筋肉は全てを解決する。

SPD   :    罠回避!罠外し!当らなければどうということはない!

WIZ   :    仕掛けを見破れ、魔力を感じろ。頭脳の力で乗り越えろ。

👑11
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●8
「おい、出口が開かないぞ!!」
 アルダワの学生たちがどよめいている。出口――つまりは、皆が入ってきた扉だ。
 この部屋は行き止まりである。一か所しかない出入口がいま、オブリビオンの手によりロックされてしまったらしい。
 ここはもはや密室。生徒たちときみたちは、閉じこめられたのだ。
 けして任務を忘れていたわけでは(たぶん)ないきみたちは、何が起きるのかと身構える。
 すると、ウォータースライダーの出口になっていた滝から流れる水の量が、いきなり倍以上に増大した!
 それだけではない。壁や床にあいていたあらゆる穴から水が噴出し、太陽のガジェットは引っこんで、天井からものすごいスコールが降ってきた。
 ――部屋が浸水している。
 プールの各所にあった排水機能は止められているようだった。水はとめどなく流れ、やがてプールにおさまりきる量を超え、床の上を覆い始める。
 きみたちは気づいた。
 オブリビオンは、この閉ざされた空間に水を注ぎこみ、部屋を巨大な水槽へと変えようとしているのだ!

「皆、ヤシの木にしがみつくんだ!」
「泳げない人はゴムボートに避難して!」
 もはや半泣きの学生たちは、『転校生』の誘導に従って一時避難を開始する。みな、祈るような思いで脱出口を探すが、どこにもそれらしきものは見当たらない。
 まさか、こんな所で、このまま全員溺死してしまうのだろうか。
 水かさが部屋全体の半分ほどの高さに達し、そんな恐ろしい考えも頭をよぎり始めたとき――ごぼぼ、と音がして、水が抜け始めた。
「今度は何なの!?」
 水の底に、巨大な穴があいているのが見える。
 たまった水はすべて凄い力でそこへ吸い込まれてゆき、部屋にあったあらゆるものが、一緒に穴のなかへ呑みこまれていく。
 『転校生』、もちろん、きみたちもだ。
 きみたちは大きく息を吸い、呼吸をとめ、覚悟を決めて水流にのまれた――。

 ◇ ◇ ◇

 酸素は、意外と早く確保できた。
 きみたちと生徒たちは、すぐ下の階層に排出された。
 落ちてきた場所は、大きな滝がある部屋のようだ。その先につづくのは、陸がなく、急流が流れているのみの水路で、壁や天井には流木や蔦でジャングル風の装飾が施されている。
 そして、またオブリビオンらしき少女の声がした。
『いっしっし、ようこそモルモット諸君……ん~? 猟兵までかかったか、ご苦労ご苦労w 本日は≪技術の変態≫たる俺様が迷宮を改造して作った、超傑作☆トラップダンジョンの試運転にご招待じゃ。名付けて……当たったら即死亡、サンズリバー下り!』
 トラップダンジョン!?
 当たったら即死亡!?
 三途の川下りだって――!?
 聞き捨てならない言葉の数々に一同は絶句した。そして、オブリビオンは高らかに笑う。
『さぁて、何人が死なずに俺様のところまでたどり着いてくれるかのぅ? 楽しみじゃよ、いーっしっしっwww』

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●補足
・罠でした。
・要するに、デンジャラスでスリリングなライン下りのパートです。立ちふさがる即死級トラップをどうにかしながら、生きてゴール(ボスの部屋)を目指しましょう。
・近くを漂流していたグッズや、ユーベルコード等で出せるものに乗って、水路を下れます。お好きな乗り物をご指定ください。(一応飛行もOKです)
・「ラッキー、こんな所に〇〇が!」的なことを書けば、だいたいのものは拾えます。
・分岐は複雑ではなく、どの道を通ってもゴールはひとつです。
・皆さんが活躍すると、学生たちも罠への対処法を学習し、かわしてくれます。
・あえて罠に当たり、学生たちにダンジョンがいかに危険かを教えてあげてもいいです。その場合、何もしなければ受けたダメージがボス戦に引き継がれますが、やつあたりパワーで攻撃力は上がります。
・死亡判定は出ません。学生もあえて殺そうとしなければ死にません。
・状況は大変ではありますが、プレイングはお遊び感覚でOKです。自由にいろいろお試しください!


●罠の内容
天井……落石、振り子斧
壁……毒ガス、催眠ガス、飛びだす槍
水上……邪魔な岩、触ると麻痺する電気クラゲ
水中……機雷、サメ型ロボット、ワープゾーン

※すべてに気をつけるのは大変なので、『この罠ならこの技で対策できる!』というものをピンポイント狙いで書くといい感じです。


●プレイング期間について
プレイングは3/25(月)の朝8時31分~3/28(木)の午前中ぐらいまで受け付けます。
うっかり等もあると思うので、できる範囲で融通はします。
早く送れそうな方は、早めに送っていただけるとありがたいです。
ご都合があると思いますので、ご無理のない範囲で大丈夫ですが、もしお時間に余裕がございましたらご協力お願いいたします!

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なお、三章の執筆は四月に入ってからの予定です。
皆様の個性あふれるプレイングをお待ちしております!
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●3月28日(木) 追記

当方のスケジュールの変更により作業に遅れが出ているため、いったんプレイングを返金とし、4月1日(月)の8時31分から執筆と再送の受付を再開したいと思います。
参加者の皆様には、不忍・壱號(f06843)よりお知らせとお詫びのお手紙を送らせていただきました。
このたびは急な予定変更でご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございません。
こちらの都合での運営スケジュール変更となりますので、もしよろしければですが、再送をご検討ください。

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御剣・誉
やっぱり罠だったか!
そうだと思ったんだよなー
俺は最初から全部わかってたぜ!(キリッ
ん?
罠だろうと面白そうなものには乗っからないと勿体ないだろ?

どうしようかと辺りをきょろきょろ
ぷかぷか浮いてるクラゲを見て反射的に手を出して
お、おぉ…やっぱりビリビリきたか
危険だからコイツには触らない方がいいぜ!
え?今のは電力を確認しただけだから
好奇心に負けたとかじゃないぞ

麻痺が治ったら浮き輪に乗って
まったりしながらゆるーく進む
邪魔なものは【PRINCE of SWORD】で斬ればいいと軽いノリ
浮き輪の上でどうやって立つかは考えてない
ていうか何気に危ないから
サメ型ロボットはぶった斬りたいぜ
俺の邪魔!するな!よ!


岡森・椛
本物の罠だったの?!(がーん
急いでアウラと写真を掴み、流れてきた可愛い甚平鮫型浮輪に捕って川下り

変な色のガスが噴き出してる
アウラ、あなたの風で…
あれ、いない?

急流の勢いに負け水に落ち、鮫ロボに齧られそうになってたアウラを慌てて救助
は、早く妙なガスを清らかな風で吹き払って
邪魔な岩やクラゲは風の力で浮輪ごとジャンプ!

罠多すぎる…
そうだ!
超高速で水路を下ってしまえば…罠に掛かる前に罠を通り過ぎれば…(混乱中
アウラ、最大パワーの爆風をジェットエンジンみたいに使って加速しようよ
大丈夫、フラフラしてるけどやれば出来るよ
悲鳴を上げながら必死で障害物を避けゴールまで一直線

今回アウラをこき使い過…ううん大活躍!



●9
「本物の罠だったの?!」
「やっぱり罠だったか! そうだと思ったんだよなー」
 がーんとショックを受けている岡森・椛の隣で、御剣・誉は腕を組みうんうんと頷いていた。
「そうだ、アウラ……あ、いた!」
 滝からざばーと流れてきた精霊アウラは、先程宝箱から出てきた記念写真をしっかりと抱きしめている。アウラと写真が無事だったことに胸をなでおろしつつ、椛は誉にまっすぐな眼差しを向けた。
「誉さんは罠だって気づいてたのね。凄いなあ……私はしっかり遊んじゃいました」
「ああ、俺は最初から全部わかってたぜ!」
 きりっ。
 ……さわやかにハンサムフェイスを光らせているこの少年も、先程まで思いっきり夏を満喫していたとは知らない椛は、もう騙されないように気をつけようと素直に反省した。アウラが、そんな彼女の頭をよしよしと撫でる。

 とりあえず、なんとかここから脱出せねば。ひらべったいフォルムが可愛い甚平鮫の浮き輪を拾った椛は、水路の入り口をすこし覗いてみたものの。
「どうしよう、壁の花から変な色のガスが噴き出してる……」
 そこには、明らかに人体に有害そうな空間が広がっていた。
 どう見てもあからさまに危険なので、ある意味親切とも言えるが……椛がどうやって進もうかと考えていた、その時。
「よーし、それじゃ行くか!」
「ええ!?」
「ん? 罠だろうと面白そうなものには乗っからないと勿体ないだろ?」
 きりっ。
 なんという勇気の無駄遣いだろうか――誉が憶す事なくざばざばと水路に歩いていったので、椛は慌てて追いかけた。
 男子高生は細かい事など気にしない。彼らは怖いもの知らずなのである。
「どうしよう、このままじゃ誉さんが危ないよ! アウラ、あなたの風で……あれ、いない?」
 椛はきょろきょろと辺りを見回した。
 急流のなかに、不自然な水飛沫があがっている一角がある。まるで、何かが必死にもがいているような――。
「……きゃー! アウラー!!」
 その中に鮫型ロボットの背びれを見た椛は、辺りにあった木の枝を拾うと、大慌てで鮫をばしばし殴った。齧られかけていたアウラが、泣きながら椛の胸にとびこんでくる。
「うっかり落ちて流されちゃったのね。助かって良かったあ」
「お? こんな所にクラゲが……お、おおおお!?」
「……きゃー! 誉さーん!! きゃあああ!? し、痺れ……」
 一緒になってビリビリ痺れながらも、電気クラゲをばしばし殴って撃退した椛は、へろへろとその場に座りこんだ。出発前から罠が多すぎる。
「ありがと、助かった! っくー、やっぱりビリビリきたか。皆、危険だからコイツには触らない方がいいぜ!」
 きりっ。(三回目)
 ……さすがに椛も『大丈夫かなあこの人』と思い始めた。
「いや、今のは電力を確認しただけだから。好奇心に負けたとかじゃないぞ!」
 きりっ。(四回目)
 しかし、すっかり誉のコミュ力と顔の良さに騙されているアルダワの一般学生たちは『そうだったのか、さすが誉くんだぜ……』みたいな顔で納得している。
 ともあれ、二人のおかげで危険性は充分に伝わっただろう。

 ガスをアウラの風で吹き飛ばした椛は、甚平鮫に乗って急流を流されていく。
 もうクラゲには当たらない。風を吹かせ、浮き輪ごとジャンプしながらかわして進めば、まるでゲームのようだ。椛に楽しんでいる余裕はないのだが。
「きゃああ! ぶつかるー!!」
 着水した地点のすぐ先に岩があり、椛は本日何度目かの悲鳴をあげた。そんな乙女のピンチに颯爽と登場したのは――白馬の王子様、もとい、モフィンクスの浮き輪に乗った誉だった。
「っ!」
 水中から飛びだした鮫型ロボットが誉の腕を噛む。だが、好都合だ。彼の血を吸ったロングソードは真の姿を顕現させ、御伽話のなかから現れた美しい剣となる。
「誉さん、血が!」
「これくらいどうって事ないぜ。間に合ってくれよなっ!」
 振るわれた【PRINCE of SWORD】が間一髪、椛の目の前の岩を砕いた。安心した誉はしつこく腕に喰らいついている鮫を蹴飛ばし、引き剥がす。
「よしっ、後はお前だ! 俺の邪魔! するな! よ!!」
 そのまま横薙ぎ一閃。まっぷたつになった鮫型ロボットは水中に落下し、派手な爆発を起こす。
「きゃあぁぁ!!!」
「ふー、やっぱ人間その気になれば何でも出来るよな。それじゃ、お先に!」
 奇跡的なバランス感覚でモフィンクスの上に立ち、障害物を次々に切り裂きながら、爆発で得た推進力に乗ってすいすい進んでいく誉の背を椛は茫然と見送った。
 頼りになるのかならないのか、よくわからない王子様だ――もしかして、あれくらいテキトーに行った方が案外いいのだろうか。椛は混乱してきた。
「そうだ! 超高速で水路を下ってしまえば……罠に掛かる前に罠を通り過ぎれば……」
 ぐるぐるしている椛をアウラが不安そうに見あげている。
 ぴーん!
 椛は名案を思いついた。
「アウラ、最大パワーの爆風をジェットエンジンみたいに使って加速しようよ!」
 えっ?
 今なんて?
 ……という顔で目をぱちくりさせるアウラへ、椛は力強く言い放つ。
「大丈夫、フラフラしてるけどやれば出来るよ!」
 きりっ。
 …………完全に誉イズムが伝染している。
 しおしおと項垂れるアウラ……だがしかし、椛の頼みであればアウラは頑張るのだ。
 アウラもきりっと眉をつりあげた。こき使っているわけじゃない。大活躍なのだ。
 全力を注いだ【科戸の風】が水路に巻き起こった、その結果――。

「きゃあああああああああああああ!! ア、アウラ、やっぱり止めきゃああーーーーー!!!」
 風の力で半分水から浮かび上がった甚平鮫は、振り子斧をぎりぎりでかわし、機雷の爆風にあおられながら猛スピードで進む。
 図らずしも他の猟兵たちとトップ通過を争うことになった椛は、この先どんな絶叫マシーンでも体験できないだろう、極上のスリルを味わったのだった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

栗花落・澪
夏輝君(f12219)と連携

うぅー羽濡れた…乾くまでは上手く飛べそうにないや
常にぱさぱさと羽ばたかせる事で早く乾かそうとしつつ

ん、それじゃあ夏輝君
今回は前頼んだよ!

運転に集中する夏輝君の後ろで
罠が来るまではしっかりとしがみつく

落石は小さめのものは★Staff of Mariaを使用した【全力魔法】で
光の球体をぶつけ破壊
大岩は指定UCで狙い撃ち
残骸から自分と夏輝君を守るように【オーラ防御】の【範囲攻撃】で
バリアを張る事で対処

ふぇっ、ロケットランチャー!?
ひゃあっ…!

夏輝君の声掛けにしがみつき直し
身長差のお陰で熱風は来なかったけど
反動による揺れには少しびっくり
お、落ちないように気を付けなきゃね…


小林・夏輝
澪(f03165)と連携

澪きゅんの献身的な回復のおかげでなっちゃん元気100倍☆
つーわけで今回もUCで水上ボートとかなんかそんなん出すぜ!

澪こそ、ぜってー落ちんなよ?

声をかけてから全速前進
常に機体を安定させるよう意識したハンドル捌き

おっと前方に大岩発見です
ロケットランチャーを発射します
乗車中のお客様は反動による揺れにご注意下さい!

★カラクリバットを変形させグリップ側に★R−Lを装着し
精霊パワーで自動形成したロケットランチャーを
【クイックドロウ】で【援護射撃】

澪を爆風から【かばい】つつ遮るものの無くなった前方を見て悪戯な笑み

よっしゃ、この調子でどんどこ突っ走るぜー!

※基本ネタキャラなので扱い自由



●10
「うぅー羽濡れた……乾くまでは上手く飛べそうにないや」
 ぐっしょりと濡れた羽は重く、普段のように飛ぼうとしてもふらついてしまう。飛んで水路を進むのはむしろ危険そうだ。
 諦めて戻ってきた栗花落・澪は、水びたしになった上着のすそを絞りながら、仲間の猟兵たちに現状報告をする。
 入口をすこし覗いてきただけだが、そこらじゅうから不穏な気配が漂っていた。……構わずに行ってしまった勇者たちも一部いたが、まあ大丈夫だろう。おそらく。
「何があるかわからないし、僕達が先に行って、学生さん達には後からついてきてもらった方がいいよね。……ねえ夏輝君」
「分かってるって、任しとけ! 澪きゅんの献身的な回復のおかげでなっちゃん元気100倍☆ ……あだっ!」
「元気になってよかったけど、調子に乗らないでよ」
「ゴメンナサイ……っつーワケで、行くぜショータイム!」
 なぜか頭にヤシの実をくらう前よりも生き生きしている小林・夏輝は、澪にこつんとゲンコツされ、ぺろりと舌をだす。流れ着いた工具箱やガジェットを拾いつつ、彼はふたたび【ガジェットショータイム】を発動した。
 今度はモーターボート型のガジェットが召喚され、水路の入り口でゆらゆらと揺れる。先程のものよりも頑丈そうなつくりだが、わずかな操作ミスが命取りになりかねない。
 すこし不安そうな澪を勇気づけるように、ニカッと笑った夏輝は、操縦席に乗りこみ機能をチェックする。
「俺は運転に集中するからさ、澪は罠のほうよろしくな」
 普段はお調子者でおバカで、澪に頭があがらない夏輝だが、こういう時は頼もしい面がある。
「早くこっから出て、夏は一緒にプールとか海とか行こうぜ!」
 その笑顔を見てなんとなくほっとした澪は、濡れた羽をぱさぱさと羽ばたかせつつ、彼の後ろに乗りこんだ。こうして風にあてれば早く乾くだろう。
 ひとまわり大きな背中に腕を回し、ぎゅっと抱きつく。

「……ん。それじゃあ夏輝君、今回は前頼んだよ!」
 そのしぐさと声に、夏輝はちょっとだけ初恋の甘酸っぱさを思い出した。
 けれど、好きとかそうじゃないとか、男とか女とか、関係ない。
 守るのだ。澪は、大切なひとだから。
「澪こそ、ぜってー落ちんなよ? それじゃー、全速前進!」
 夏輝がエンジンをかける。

「わ……っ」
 出発進行の汽笛があがった。蒸気を吹きあげ、じょじょに加速しはじめたボートから振り落とされないよう、澪は夏輝の背にしっかりとしがみつく。
 罠があるなら、当たらなければいい。だんだんとスピードをあげながら、追ってくる鮫を振り切り、タイミングよく振り子斧をかわして、夏輝は勇猛果敢に水路を進む。
 スピードは出すし、機体も安定させる。
 できる。
 後ろに乗っている澪が、ハンドル捌きだけでは対処しきれない罠をきちんと処理してくれると、信頼しているからこそだ。
 すると、視界の上のほうでなにかが動いた。
 夏輝の想いに応えるように、澪は隠し持っていた聖なる杖を振るう。白い光が水路をあかるく照らし、飛んでいった光の球が落ちてきた小石を砕いた。だが、本命の攻撃はその直後にきた。
 ボートの上に大きな影が落ちる。
 ――大岩だ。くらったら穴があき、転覆してしまう。
「にゃああ!? 油断させといて沈めようってか、性格わりー!」
「わぁぁ、来ないでぇー! 香り高く舞い遊べ、【Orage de fleurs】!」
 二人できゃーきゃー絶叫しつつも、澪は急いで天井に人差し指を向ける。
 向日葵、朝顔、ハイビスカス。繊細な指先から巻き起こる夏色の花嵐が、大岩を砕いて急流に散った。だが、その美しさに目をむけている余裕などない。
 澪は高速で呪文を唱え、攻撃に使った魔力をすべて防御用に変換する。
 すると、舞い散った花たちがボートを包み、バリアとなって、澪と夏輝を岩の残骸から守った。
「さんきゅー澪きゅん! おっと、今度は前方に大岩発見です」
「ふぇぇ……まだあるの」
 まだまだ脅威は去らない。次に立ちふさがるのは、通路をふさぐ水上の大岩だ。激突したらボートが大破してしまう。
 夏輝は片手でハンドルを握ったまま、操縦席の脇に置いてあったバットを、もう片方の腕で拾いあげた。
 一見ふつうのバットだが、グリップ側にトリガー付きのパーツを装着すれば――?
「間もなくロケットランチャーを発射します。乗車中のお客様は反動による揺れにご注意下さい!」
「ふぇっ、ロケットランチャー!?」
 澪が驚きの声をあげる。
 精霊の魔力が内部に仕込まれたパーツを活性化させ、カラクリバットはロケットランチャーに早変わりした。夏輝は一瞬だけハンドルから手を離し、ロケットランチャーを肩にかつぎ上げる。
「発射!」
「ひゃあっ……!」
 轟音とともにボートが揺れ、澪は夏輝の身体に強くしがみつき直した。
 放たれたロケット弾はみごとに大岩へ命中し、爆発し、水路に破片と爆風を撒きちらす。
 驚いて目をつぶり、ちぢこまっていた澪だが、夏輝が盾になってくれたおかげで、こまかな破片も爆風もほとんど届かなかった。
 澪はおそるおそる目をあける。視界を遮る大岩は、もう跡形もなくなっていた。

 あっちー、いてー、と声をあげつつも、ひらけた水路を見て、夏輝は悪戯な少年の笑みをうかべた。かすり傷は男の勲章だ、これくらいは痛くない。
「よっしゃ、この調子でどんどこ突っ走るぜー!」
 邪魔な障害物を取りのぞいたことで、後続の仲間や生徒たちも突破しやすくなったろう。
「お、落ちないように気を付けなきゃね……」
 調子に乗ってスピードをあげはじめる様子には少々はらはらしながらも、澪は夏輝の背を支え続ける。
 土煙の晴れた水路の先に、あざやかな夏の花が流れていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スナッチ・ベット
【WIZ】

……どうしよう。
たしかトロピカルに木陰のハンモックでお昼寝してたはずなのに。
何がどうなって僕はワカメ(天然のトラップ)に絡まってるんだろう。
しかもサメっぽいのがこっち向かってるし。
マジどうしよう(※気付いたらピンチで焦っているけど表情筋が死滅しているので顔に出ない)
サメ映画だったら絶対死ぬやつだこれ。
ん?あれ?サメの額になにかポッチがあるんですけど。
『ON/OFF』ってひょっとして電源スイッチなんです?
そんなわかり易い場所に?
いやいや、これもトラップでポチッとしたら自爆するかも…。
だが。
そこにスイッチがあれば、ポチッとするもの。
それが猟兵というものだ!
ていっ!(勢い余って突き指した)


満月・双葉
全力魔法で物の命である耐性を見ます。
脆い所を見破れたら、そこをスナイパーを利用し銃で撃ち抜くか、ユーベルコードで…ぁぁ、ユーベルコードでした方がエンターテイメント感が溢れて良いですかね?綺麗に破壊していきましょう。
ワープゾーンはそこに引かれている魔力の穴を見破ってみます。
かなりの魔力を使いますので後で眠くなりますのでよろしくお願いします
まぁ、寝ぼけて暴れるだけですよきっと。

ガス系は、ラッキーこんな所にガスマスクが…とか運のいいことがなければ、オーラ防御で凌ぎましょう。

アドリブ歓迎
絡みご自由に


ユキ・スノーバー
モルモットじゃないよ!しろくまー!…ぼくのは自称だけど
お洒落に言っても不味いって判っちゃうネーミングはダメダメっ!

水路下りの漂流物、学生さんの分の補助してあげたいから、華吹雪で流れを一部塞き止めて確保しちゃうね。
浮き輪とか救命具とかあれば嬉しいけど、運良く引っかかってないかな…?
あえてサーフィンボート見つけたりは、しないよ?(参考にはするかもだけど)
厳しければ、装飾から流木や蔦を借りて、解けない様気を付けて簡素な船(いかだ)とか作るよ。
水上のクラゲが邪魔しそうなら、直接触れずに済むように吹雪でコーティングしてからサクッと退治するよー。
落石はポーンとアイスピックでホームランして学生さん守るよー!


赤星・緋色
ガラス器具のオブジェクト
水が降り注ぎ、ある程度したら引く
これらから導き出される答えは……食器洗い機!
それの応用でおっきな実験器具たちを洗う部屋だったんだね
あれ、でも洗剤がなかったような

えー、即死級トラップ満載のライン下り?
じゃあ私は最速クリアを目指すよ
ゴールまでの道筋が示せれば、後から来る人に有利になるし、無事に通り抜けることが出来るって勇気づけにもなるからね

こんな時役に立つユーベルコードがあるよ
ひっさつ、のりもの!
私には誰も追いつけないぜ!

サンズリバー?
六文銭があれば無事に通れるんでしょ?やっすーい

岩?
射撃で破壊すればよろしい(雑)解決ですな
電気クラゲ?
射撃で落とせばよろしい(雑)解決ですな



●11
 ――どうしよう。

 スナッチ・ベット(Vulpes et uva・f03519)は焦っていた。
 さっきまで南国ムードにひたってトロピカルなジュースなど飲みつつ、木陰のハンモックでうとうとお昼寝をしていたはずなのだが――人知れず流されていた彼はいま、迷宮に自生する謎の植物である急流ワカメに絡まって、水路の中に沈みかけていた。
「あの……」
 先程から、乗り物に乗って流れてくる猟兵に助けを求めてはいるのだが、皆川下りに夢中でスナッチに気づいてくれない。
「マジどうしよう」
 まず、何がどうして今こうなっているのか、誰か説明してほしい。
 スナッチは、チベットスナギツネそっくりな顔で天井を仰いだ。
 そして、まだ水路の入口にいるだろう仲間たちへ淡い希望を託した。一方、そこでは……。

 ◇ ◇ ◇

「ガラス器具のオブジェクト……水が降り注ぎ、ある程度したら引く。これらから導き出される答えは……」
 赤星・緋色の頭の上にぽんぴーん! と文字が浮かぶ。なぜか効果音つきで。
「食器洗い機!」
 テレレレッテレー!(正解っぽい擬音)
「それの応用でおっきな実験器具たちを洗う部屋だったんだね。あれ、でも洗剤がなかったような」
「食器洗い機ですか……確かにあれは大変な罠ですよ。便利そうに思えるじゃないですか。僕が使うと爆発して中の食器ごと粉微塵ですからね」
「うんうん、だよねー(雑な返事)」
 満月・双葉が、ずぶ濡れになった眼鏡をくいっとしながら、すました顔で何か言っている。
 いや、そんな意図はないのだが、このままでは二人のボケの圧力で事実がねじ曲げられてしまう。助けて。
『いっしっし、そんなモルモット諸君に嬉しいお知らせじゃよ。何を隠そう、俺様の発明品もよく爆発するのじゃw』
 残念、オブリビオンもボケだった。
 ――ちゅどーん!!
 水路のほうで、何かが爆発した音がした。

「えっ」
 ビビったのは、引き続きワカメに絡まっているスナッチである。
 なに、死ぬの? はやく助けてほしい。
 だが……。

「モルモットじゃないよ! ぼくはしろくまー! ……自称だけど」
 まさか、こっそり休暇を楽しみに来ていたエイリアンツアーズの社員が生死の境をさまよっているとは知らず、ユキ・スノーバーはみじかい手足をぱたぱたさせて怒っていた。
 モルモットなんてお洒落に言っても、要するに実験台。不味いって判っちゃうネーミングはダメダメなのだ。爆発音におびえる学生たちを励ましつつ、ユキはどうすればみんなが助かるのか考える。
「……そうだっ!」
 手に持ったアイスピックがきらりと光る。
 ぶんぶん振ればそこから冷気がたちのぼる。えいっと足元の水に打ち下ろすと、水が凍った。
 ユキの【華吹雪】でできた氷のダムは水の流れをせき止め、大きな漂流物をひっかけてくれる。
「あっ、きゅーめいどうい……っていうんだっけ? ぷかぷか浮かぶお洋服があったよー! 学生さんたち、つけてつけてっ! ボートも使って使ってー!」
 よいしょよいしょ、と大きなボートを引っぱってくるユキの愛らしい姿を見て、学生たちの緊張もすこし解れたようだ。
「あ、有難う……でも、私達がこれを使っちゃったら『転校生』さん達はどうするの?」
「私達? へーきへーき、ひみつ兵器的なやつがあるし! 当たったら即死亡とか言われちゃったらこれはもう最速クリアを目指すっきゃないよねー」
「ええ!?」
 暴走族のような発言をしつつ、平然と準備運動をしている緋色の姿に学生たちは驚きを隠せない。
「こんな時役に立つユーベルコードがあるよ。ひっさつ、のりもの!」
 緋色がぱちんと指を鳴らすと、ぼわーんと漫画的な煙が出て、中からおもちゃのような船のガジェットが現れた。
 その名も【何か乗って移動できる便利なヤツ】、のりもの。雑だ。
「じゃ、私は先に行ってるよ! しゅっぱーつ!」
 緋色が乗りこむと、のりものはぽっぽーと呑気な汽笛をあげ……適当な見た目とネーミングからはとても信じられない、超スピードで出航していった。
「どういう技術なんですかね……」
 双葉はそう言うが、大根で敵を殴り倒している人には言われたくない。
 一方、サーフボードで流れに乗れないか試していたユキは、さすがにこれでは無理かと思い、諦めた。
 手放したサーフボードが水路に流れていく。他になにか水に浮いて、安定感があるものは――。
「そうだ! 流れてきた木と、壁にくっついている木や蔦を使って、丈夫ないかだを作ったらいいんだよっ」
「やってみる価値はありますね。僕もこれ以上水に濡れたくないので……」
 双葉も、ユキと一緒にいかだの材料を集める事にした。そしてその頃、スナッチは……。

「どうしよう誰も来ない……しかもサメっぽいのがこっち向かってるし」
 仲間は今、せっせといかだを作っている最中だ。
 明らかにサメ的な三角形のヒレが近づいてきているのを見て、スナッチはもがいた。
 しかし、サメ映画的にはこんな時、もがけばもがくほどワカメは絡まる(いや、ワカメが絡まって動けなくなるというシチュエーションはB級サメ映画でもそうそう見ないとは思うが)。
 絶対死ぬやつだこれ。
 スナッチは焦っていた。表情はまったく変わらないが、焦っていた。
 そこに緋色の乗ったのりものがやってくる。気づいてくれ、緋色――!
「あの」
『ギャース!』
「ひゃっはー! 私には誰も追いつけないぜー! ん? 今なんか轢いた? まいっか!」
 ……緋色はスナッチに迫っていた鮫ロボを跳ね飛ばし、ぴゅーんと通過していった。
 ミニさんと名付けた蒸気ガトリングガンを手に、緋色はコースレコードめざして突き進んでいく。
「岩? 射撃で破壊すればよろしい!」
 ずだだだだだという音とともに属性弾が発射され、岩が大破した。
「電気クラゲ? 射撃で落とせばよろしい!」
 今度は水面に銃口を向け、発射。クラゲもなすすべなく水底へ沈んだ。
 とにかく数を撃てば当たるのだ。雑ではあるが、正しい。
「うむ、解決ですな」
 緋色はうんうんと頷きつつ、爽快な水飛沫をあげ、スピードの向こう側へ駆けていく――。
 とりあえず、スナッチの寿命は延びた。ちょっとだけ。

「学生さんたちはぼくらが守るんだよー!」
 その頃、いかだを完成させたユキと双葉も、ボートに乗った学生たちを先導しつつ水路を進んでいた。
「あっ、双葉さん、さっきすごい作戦があるって言ってたよねっ。なになにー?」
「ハードル上げないで下さい。魔法で物の命である耐性を見ます」
 双葉は、内に秘められた膨大な魔力を解放した。すると、繊細な虹色のきらめきが彼女の身体を覆いはじめ、魔力の鎧となった。
「本当に罠だらけですねこれ……そこ、ワープゾーンですよ」
 オブリビオンの魔力を感知しているのだろうか。双葉の眼には、罠の仕掛けてある位置がぼんやりと光って見えはじめた。舵をとってワープゾーンをかわし、魔力の穴を突いて銃弾を叩きこむ。
 魔力が拡散し、ワープゾーンが消え去った。さらに、水中に落ちているお宝まで視える。
「おやラッキー、こんな所にガスマスクが」
「すごーい! これでガスもこわくないんだよっ」
 ユキはるんるん気分でアイスピックを振り回した。
 吹雪がクラゲを凍らせ、アイスピックが落石を撃ち返す。
 ナイスヒット。かっきーんと音を立て、石が水路の奥へ飛んでいった。

『ギャピー!!』
「えっ……何?」
 そしてユキがホームランした石は、偶然にもスナッチを襲おうとしている鮫ロボに当たった。
 実にラッキーである。

「近づくと槍が飛びだす仕掛けですか。恐らくあそこがセンサーですね」
 兄が愛用していた銃を構え、双葉は壁の赤く光って見える部分を撃ち抜いた。
 ちいさな破裂音とともに煙があがり、装置は機能しなくなる。双葉とユキは協力して罠を破壊しつつ進んでいたが、既に壊れているものもかなりあった。
 先に行った緋色が、なんやかんやで処理してくれているのだろう――おかげで壁が穴だらけだったが。
「あれ? たいへんたいへんっ、水路に落ちてる人がいるよ!」
 そして、やっとスナッチに気づいたユキが、双葉の服をくいくいと引っ張る。
「わああっ、しかもサメに食べられちゃいそうなんだよー!」
 さんざん邪魔され、心なしかイライラしている鮫ロボは、スナッチのすぐ傍まで迫っていた――!

「え、やばいよねこれ。どうにかしないと……ん? あれ?」
 スナッチは見つけてしまった。鮫ロボの額に、なにかすごく目立つポッチがあるのを。
 あからさまに『ON/OFF』とか書いてある。
 普通に考えて、どう考えても……電源。
「……そんなわかり易い場所に?」
 スナッチは首をひねった。家電じゃあるまいし、正直罠としか思えない。
 だが。
 そこにスイッチがあれば、ポチッとするもの。
 それが猟兵というものだ――!

「あの人、何かまずいスイッチ押そうとしてません?」
 双葉には結果が視えていた。あのスイッチを押すと、たぶん鮫が爆発する。
「早く止めないと僕達も巻き添えですね。距離的に」
「ええー?! 双葉さん、はやく撃ってっ!」
「いえ、ここはあえてユーベルコードでした方がピンチをギリギリで切り抜けるエンターテイメント感が」
「なんでもいいよー! はやくはやくっ!」
「ていっ!」
「わぁぁー!!」
 いかだの上であわあわしていたユキは、スナッチがあやしいスイッチをポチっとするのを見て顔をおおった。

 ……。
 …………。
 しかし、何も起きない。
「……痛い……」
 スナッチがふるふる震えて指を押さえている。
 ……狙いを外して、勢いよく突き指したようだ。

 その直後、双葉の【美華呪】により放たれた虹色の薔薇が鮫ロボを包んだ。
 炎の薔薇はロボットの動力を吸いとって燃え、跡形もなく焼きつくす。なんとか爆発させずにすんだようだ。
「だいじょうぶ? あれっ、エイリアンツアーズの人?」
「えぇ、そうなんです。とんだツアーになっちゃいましたけど……」
 やっと二人に引き上げられたスナッチは、周りの空気をぱぁぁと輝かせ、なんとなく嬉しそうに見える。これで安泰……かと思えたが、その時、双葉が急にがくんと倒れた。
「……ここまで、ですか」
「どうしたんです?」
「言ってませんでしたっけ……耐性を見るとかなりの魔力を使いますので、後で眠くなるって。……まぁ、」
 ――寝ぼけて暴れるだけですよ、きっと。
 衝撃の一言を言い残し、双葉は寝落ちた。
 なんてことだ。味方が最強の罠だったかもしれない。
 だが、その時――。
「だ、大丈夫だよ、『転校生』さん!」
 後ろからついてきていた生徒たちが声をあげた。
「双葉さんやユキくんに頼りっきりじゃよくないよな。後は俺達も頑張るから!」
 ここまでの様子を見ていた彼らが、見よう見まねで罠の弱点を探し、破壊しようと試みている。
 双葉に比べると、ずいぶん頼りない力だが――その助力は大きい。

 ◇ ◇ ◇

「んー? なんか後ろのほうから悲鳴が聞こえるな」
 ぶっちぎりのハイスピードでほかの猟兵たちを追い抜いて進んでいた緋色は、はるか後方から響いてくる生徒たちの絶叫を聞いて、瞳をぱちくりさせた。
 まあ、なんとなく楽しそうなので大丈夫だろう。
 ゆく手に、階段のある小部屋が見えてきた。のりものは水を切って、ゴールに向けて爽快に進んでいる。
「ゴールまでの道筋が示せれば、後から来る人に有利になるし、無事に通り抜けることが出来るって勇気づけにもなるからね」
 不幸を呼ぶ過去を打ち砕き、皆で未来へ進めるように。
 緋色の掌から伸びた蔦と葉のホログラムが、コースの最後に門を作った。
 遠くから見ても目立つこの門は、ゴールのいい目印になるだろう。そして、先に辿り着いた者がいるという証明にもなる。
「サンズリバー? 六文銭があれば無事に通れるんでしょ? やっすーい!」
 験担ぎに六文銭のホログラムを貼りつけて。
 緋色は一番乗りで、ぴょんとその門をくぐる。

「あっ、ゴールだ!」
 暴力的な寝相を見せる双葉を押さえ、何とか終盤までやってきたユキ達のいかだは、その門をめがけ流れていく。
 緋色もほかの猟兵たちも、大勢の生徒を無事に連れてきた三人を、笑顔で出迎えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
コノf03130と

狸っぽい色合いの狐姿にて参加
人語会話不可能
コノとは何となくで会話成立します


おお…何という、急流、滑り
なんて、のんびりと構えているのは
しっかとコノにしがみついて
今、若干、楽してる
ああ……楽しかた、ありがと、コノちゃんの浮き輪さん…
流れゆくのを見送る

けれど
落石に気付けば
するりと抜け出しコノを踏み台にジャンプ
【粉砕】で砕け散らなかった場合も考え人の居ない方向へ
振り子斧は横っ腹を狙い、邪魔な岩も粉砕で砕く
機雷、サメ型ロボットへは雷火の範囲攻撃
オーラ防御で防ぎ
激痛耐性で凌ぐ
見切りにて危ないモノを見分け、排除
コノと、自分の身を優先

キャッチされる度に
ただいま!と片手上げて
ありがと、の眼差し


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

取り敢えずたぬちゃん肩に乗せ、持ってた浮き輪に乗(?)る
がコレは舵が取りにくいし水中ヤバそう
咄嗟に流れてきたサーフボード掴んで上手いコト移行
さよなら虹色マイ浮き輪

ボードで波と流れに乗りつつ障害物の排除はたぬちゃんに任せ
都度、彼を落とさないようキャッチ

比較的障害物が少ない、減った箇所で【彩雨】を展開
氷降らせ水面を凍らせたら今度は氷上をボードで滑走し
機雷とワープを封じるネ
水上の電気クラゲは届く前に【彩雨】で凍らせて落とすし
飛び出してきそうなサメロボットはたぬちゃんに任そう

水面と氷上を交互に滑って、ゴールまでこの勢いで行っちゃいましょ



●12
 自慢のもこもこ毛皮がびしょ濡れになってしまった。相変わらずのタヌキツネ姿な火狸・さつまは、ぷるぷる全身をふるわせ、身体を乾かそうとしている。
 急流に足元をすくわれたさつまが、ぺしょっと潰れて水路に流されかけているのを見つけ、コノハ・ライゼは急いで救出した。どこかに行かないよう、とりあえず肩に乗せておく。
「……たぬちゃん、重っ」
 さつまは嬉しそうだが、毛が水をたっぷり吸ったせいか、いつもより重たい。肩こりがちょっぴり心配になりつつ、コノハは水路の中を覗きこんだ。
「さっき浮き輪に乗っていった子がいたし、ひょっとしてコレでイケちゃったりする?」
 なんとか死守していたマイ浮き輪を示すコノハを見て、さつまも尻尾をふりふり賛成する。
 先に行った者たちの活躍で罠もある程度減っているようだし、思いきって行ってみてもよさそうだ。浮き輪につかまって出発したコノハの首に、さつまはしっかりとしがみつく。

 ――おお……何という、急流。

 顔にかかる水飛沫が気持ちいい。浮き輪はあっちへふらふら、こっちへふらふら流されて、コノハに乗っているさつまはのんびり川下り気分だ。
 だが、乗り物になっているコノハはかなりそれどころではなかった。
「痛っ!」
 さつまがどうしたコノちゃん、と言いたげに顔を覗きこんでくる。
「クラゲがかすったみたいネ……やっぱ水中ヤバそうよコレ、舵も取りにくいし」
 うっかり機雷に当たったりしたら、と思うとぞっとする。何か、他にいいものはないだろうか――そう思っていた時、タイミングよくサーフボードが流れてきた。
「やったわ。乗り換えるヨたぬちゃん」
 実はこのサーフボードは、今いかだを作っている他の猟兵が、乗るのを諦めて流したものだったりするのだが……コノハ達にとっては天の助けだったようだ。
 コノハは咄嗟にそれを掴み、うまくバランスをとって流れに乗る。主人を失った浮き輪は水路の向こうへ流され、消えていった。
「さよなら虹色マイ浮き輪……」
 ああ……楽しかた。
 ありがと、コノちゃんの浮き輪さん――さつまも若干瞳をうるませ、その鮮やかな姿を見送るのだった。

 コツを掴めば、ボードで急流を下るのはなかなか爽快だ。なにかが落ちてくる気配に気づいたさつまは、コノハの肩からぴょんとジャンプし、大きな落石めがけてもふもふしっぽを叩きつける。
 会心の一撃。脆いところを突かれた石は、こなごなに【粉砕】された。
 落ちてきたもふもふボディをしっかり抱きとめつつ、コノハは水の下に見えた機雷を避ける。
「きゃー、たぬちゃんすご~い! かしこ~い!」
「眼鏡のお兄さんもサーフィンうま~い!」
 後ろから響いた黄色い声を聞き、コノハは振り返った。
 先ほどプールで会った動物好きの生徒たちだった。どうやら、ボートに乗ってついてきていたようだ。
「ふふ、アリガトー。うちのコ可愛いでしょ?」
 尻尾をぶんぶんして応えるさつまの頭を撫でながら、コノハはへらりと笑う。
 完全に動物だと思っているらしい。たぬちゃんに負けないように頑張ろうねと、生徒たちも罠解除へやる気を出しているようだ。
 振り子斧も岩も、さつまの尻尾にはかなわない。つぎつぎに粉砕し、破片は人のいない壁際へ弾き飛ばしながら進む。
「結構障害物も片付いてきたんじゃねぇかしら。じゃ、そろそろアレいっとく?」
 肩の上で、さつまがこくんと頷く。
 青い狐目にうつるのは、コノハの掌に浮かびあがる、煌めく水晶のアメ――【彩雨】。
 ほのかな冷気を宿したしずくのような針が、ぽつぽつと雨音を奏でながら、足下で流れる急流へ降りそそぐ。
 地の底で降る万色の雨に宿るのは、雪よりもなおつめたい氷の魔力だ。たちまち水面は凍っていき、夏のジャングルは冬のスケートリンクに早変わりした。
「こんなトコかしらネ。たぬちゃん、落ちないようにしっかり掴まってなさいな」
 そう言うなり、コノハはボードごと氷の上に飛び乗った。
 サーフボードもこうなればスノーボードだ。機雷やワープゾーンも氷の下にあるため、まったく怖くない。
 すいすいとターンしながら槍やガスをかわしていくコノハに、さつまはぎゅっとしがみつく。
 氷の道が途切れれば、端からジャンプして着水し、今度はまた波に乗って水上を進む。その繰り返しだ。夏と冬を行ったり来たりしながら、さつまはなんとも表現し難いごきげんな鳴き声をあげる。
「なぁに? 楽しい?」
 タヌキツネはくぁ、と喉を鳴らす。
 水の上も氷の上も、かっこよく滑るコノちゃん――さっきは乙女だったのに、今度はイケメンだ。彼は、そういう不思議なひとだ。
「サメロボットがいるわね。たぬちゃん、お願い」
 さつまの尻尾がぴーんと立ち、こげ茶色の毛に文様が浮かび上がった。
 ぴょんと飛び上がり、さつまは尻尾を天井へ掲げる。尾の文様から迸った黒い稲光が、向かってきた鮫を打ちすえて、機能停止に追いこんだ。
 タヌキツネは空を飛べないけれど、落ちるのは怖くない。
 下を見れば、そこにはいつでも、母のようにあたたかく受け止めてくれるひとがいる。

 ――ただいま!

「おかえり、たぬちゃん」
 コノハの腕の中にぽふんと落下したさつまは、またいそいそと彼の肩にのぼった。
 嬉しそうにぴこんと上がる獣の前脚へ、ひとの掌をあわせて、『ありがと』の眼差しには『コチラこそ』で返す。
 夏から冬へ、冬から夏へ。狸から狐へ、狐から狸へ。
 連携して罠に対処しながら、一人と一匹は、かろやかに水路を滑走していく。
 その背中を追いながら、アルダワの学生たちも感じ取っていた――言葉を交わさなくても、ふたりの気持ちは通じ合っているのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハーバニー・キーテセラ
ボートとかもきっとある筈ですしぃ、それで急流下りと参りましょー
何人か乗れるようならぁ、学生さん達も載せてぇ、守りながらいきましょ~
え~、本日はぁ、ハーバニー観光をご利用くださいましてぇ、ありがとうございますぅ。なんて、ふふふ~
冗談めかしてぇ、少しは場の緊張をほぐせるといいですねぇ
大丈夫ですよぉ、誰も三途の川を渡らせませんからぁ

ボートの船頭に陣取ってぇ、罠の排除や回避に努めますぅ
岩とかは舵取りで対応ですよぉ
鮫さんでも来たらぁ、因幡の白兎よろしくぅ、兎跳で翻弄ですぅ
そしてぇ、頭を出して来たらハッキング(物理)
斜め45度からの一撃でぇ、暴走させてあげましょー
他の障害にぶつけられたら上々でしょうかぁ


ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と共に

罠だったではないか

そら見たことかと視線に秘め
師の切替は見事ながら
…同じでは?

師父、上で乗っていた小舟だ
黒豚号――これを使うしかあるまい
まさか、俺はこんなに弛んでおらぬ

何ということだ
師の提言で強化…狂化?した生徒達
痛ましい――否、一番弟子として遅れはとれぬ
師が落ちぬ様、さり気なく尾を帯代わりに
提言に頷き、船首に喚び出すは【餓竜顕現】
心なしか何時もより威勢がいい

さあ、盾となり飛べ、罠など薙ぎ払え
砕いてしまえばどうという事もないだろう
左右で生まれる結晶は美しく
宙を翔る船は心地好い
うむ、流石は師父の術か

ちらと後方の学生達を振り返り
…成程、青い春とはこういったものなのだろうか


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ふふん、甘いな
罠に掛ったと考えるでない
態々敵から我々を招き入れたのだ

でかしたぞ、ジジ
この黒竜号があれば大抵の危機は切り抜けられよう
…ん?何だその格好悪い名は
何となくお前に似ておるから竜だ竜

巻き込まれた学生は難儀でしたね
斯様な迷宮では死ぬに死に切れぬでしょう
…然し、貴人方は運が良い
この私が居るからには一人たりとも死ねると思わぬ事です
ふはは――罠なぞ恐るるに足らず、さあ進め!
【賢者の提言】を用い決死の川下りへ!

水中から襲い来る機雷や魚の機械は周囲の水を凍らせ阻止
ワープホールは凍らせた水でジャンプ台を作成、これを回避
ほれぼさっとするでない!
お前達も終焉を断ち切りたくば我に続け!


赤嶺・ふたば
(WIZ)(壁)
まずは罠を探知魔法で探知できないかやってみよう。そして注意深く調べてボルトを投げながら進んでみるとしようかな。それと罠が破壊可能なら魔法で破壊してみようっと。
あと罠の配置を端末に記録しておこう。きっと役に立ってくれるはず。



●13
「罠だったではないか」
 ジャハル・アルムリフは、上階の扉が閉ざされて以降、もう何度目かになる台詞をあらためて発した。
「……罠だったではないか」
 大事なことなので、もう一度。
 じっとりと刺さるその視線も、師父――アルバ・アルフライラの輝くどや顔を崩すには至らない。むしろ、一層自信満々にふふんと笑んでさえいるのはどうした事か。
「甘いな。罠に掛ったと考えるでない、態々敵から我々を招き入れたのだ」
 見事な切り替えの早さに、一瞬言いくるめられそうになったジャハルだったが。
「……同じでは?」
 しつこい追及にアルバは心の中で舌打ちする。
 まあ、これも己の身を案じるゆえと思えば、可愛いものか。

 無言の圧力を発するジャハルを見あげ、赤嶺・ふたばはある事を学んだ。少女の目線で見た不愛想な190センチの男性は、想像以上に大きくて怖いということだ。
「はあ……こんな事になっちゃうなんて。あの……あそこのお二人は大丈夫なんでしょうか?」
「うぅ~ん。たぶん大丈夫だとは思いますけどぉ、そろそろ止めてきましょうかぁ~」
 コントのようなやり取りを続ける師弟を、まぁまぁお二人ともぉ~となだめつつ、ハーバニー・キーテセラは流れ着いてきた大きめの白いボートを指し示す。
「私はぁ、まだ残っている学生さん達をあれに載せてぇ、守りながら進もうかなぁ~って思ってるんですけどぉ。お二人はどう思います~?」
「ふむ、良い案だと思います。其れなら私に策が」
「ほぉほぉ~……ふむふむぅ、それは素敵ですねぇ~」
 アルバとハーバニーが何やらこしょこしょと作戦会議をしている傍ら、先ほど他の猟兵が集めていた漂着物の整理整頓をしていたジャハルは、その中に見覚えのある黒い物を発見した。
「師父、上で乗っていた小舟だ」
 植物の残骸に埋もれながらも、しぶとく生き残っていた黒いゴムボートが、じとっとジャハルを見つめている。早く助けろと訴えるような仏頂面、間違いない。
 これは縁起がよさそうである。アルバはふふんと笑みを浮かべた。
「でかしたぞ、ジジ。この黒竜号があれば大抵の危機は切り抜けられよう」
「ああ。黒豚号――これを使うしかあるまい」
 師弟が言葉を発したのは、ほぼ同時であった。
 ……。
「……ん? 何だその格好悪い名は。何となくお前に似ておるから竜だ竜」
「まさか、俺はこんなに弛んでおらぬ。豚だろう」
「竜」
「豚」
 互いに一歩も譲らぬ二人。どちらだと思う、と視線を向けられたハーバニーとふたばは、速攻で返した。
「竜ですよ」
「うん、どちらかというと竜かな……」
「ふふん。それ見た事か」
「……馬鹿な」
 多数決により、名前は黒竜号に決定した。ジャハルはちょっとだけ不満そうであったという。

 ◇ ◇ ◇

 出発をためらっていたアルダワの若い学生たちは、天の助けとばかりにハーバニーの提案へ飛びついた。
 聞けばみな、遊んでばかりいてあまり成績が良くないほうらしく、こんなことになるならもっと真面目に鍛錬しておけばよかったと反省しているようだ。怖くてずっと泣きべそをかいている年少の子どもたちを、ふたばが励ましている。
 まだ未来ある学生たち。その旅路をここで終わらせることなど、案内人としての矜持が望むはずがない。
 ふたばと学生たちを白いボートに乗せたハーバニーは、アルバとジャハルが黒竜号に乗って先に行ったのを確認すると、自分もぴょこんとボートに飛び乗った。
 オールを器用にくるくる回し、今日は水先案内人として礼をひとつ。
「え~、本日はぁ、ハーバニー観光をご利用くださいましてぇ、ありがとうございますぅ」
「わはは。いいぞー転校生のお姉さん!」
「スリーサイズいくつー?」
「ふふふ~。それは秘密ですぅ。お触りも厳禁ですよぉ~?」
「「えぇ~!?」」
「ちょっとあんた達、失礼でしょ! ご、ごめんなさいお姉さん!」
 調子づきだした男子たちを、乗りあわせた少女がたしなめる。実はだいたいハーバニーと同年代ぐらいなのだが、大人びた容貌のせいか、そうとは全く思っていないようだ。
「なぁんて、少し場の空気が和んだところでぇ、白うさ号も出発進行ぉ~」
 くすくすと笑いが起きる。その輪に穏やかなまなざしを送ると、ハーバニーはゆったりと船を漕ぎだした。

 この空気なら、おちついて話を聞いてもらえそうだ。生徒たちと一緒に白うさ号に乗ったふたばは、壁の罠に注意をくばりつつ、やるべきことをやさしく説明してあげる。
「まずは罠を探知魔法で探知できないかやってみましょう。探知した罠の配置を、この端末に記録しながら進みますからね」
 見た目は幼い少女とはいえ、ふたばも実力確かな『転校生』のひとりだ。学生たちは真剣にアドバイスを聞き、実践する。
「私、あそこの壁が怪しいと思うの」
「それなら……えいっ!」
 ふたばがボルトを投げつけてみると、そこから槍が飛びだしてきた。当たりだ。続けて銃から魔法弾を放ち、爆発によって破壊してみせる。
「こうやって罠を壊しながら……うわっ!」
 なにかにぶつかり、船体が大きく揺れた。
 おそらく、集まってきた鮫ロボットだろう。水からのぞく尾びれを見て、学生たちはパニックになって悲鳴をあげる。
 一度急流の流れに乗った船は、簡単には止めることができない。ハーバニーも船頭として、追っ手を振りはらうように舵をとるが、相手はなかなかしつこいようだ。
「巻き込まれた学生の皆様方は難儀でしたね。斯様な迷宮では死ぬに死に切れぬでしょう」
 前方から、アルバの慈悲深げな声が聴こえてくる。
 ――然し、貴人方は運が良い。
「この私が居るからには一人たりとも死ねると思わぬ事です」
 アルバが呪文を唱えると、とたんに鮫が周囲の水ごと凍りつき、停止した。凍りついた鮫を粉砕すると、尊大なる魔術師は腰が引けている学生たちを一喝する。
「ほれぼさっとするでない! お前達も終焉を断ち切りたくば我に続け!」
「お、おおおー!!」
 圧倒的な魔力を見せつけられた学生たちは、ビビった……もとい、【賢者の提言】に感化されたらしい。
 とりあえず、といった感じで放ってみた炎の矢や風の刃が鋭く飛んで、落ちてくる石を見事に打ち砕く。
「す、すごい……これが俺の魔法!?」
「できました、先生!」
「うむ、やれば出来るではないか。褒めてつかわす」
 賢者の提言の効果と火事場の馬鹿力が重なり、普段よりずっと強い威力を出すことができた落第生たちは、自信を持ったようだ。彼らは人が変わったように魔法を乱れ撃ち、ふたばのアドバイス通りに罠を探知して、破壊していく。
「うおおおお!! すげぇぜ俺たち!!」
「何ということだ……痛ましい」
 強化……いや、もはや狂化といってもいい。効果が切れたあとのことが若干心配になりつつも、ジャハルも師の目配せにうなずき、手をあわせる。
 わかっている。一番弟子として、遅れはとれぬ。
「映せ」
 静かに唱えれば、黒竜号の船首に巨大な半人の竜が出現した。
 【餓竜顕現】――眼球の抜けたまなこは虚ろで、金属質の鱗がつめたい輝きを放っている。そのおそるべき姿には、どこか師の使役する亡霊たちに似た面影があった。
「さあ、盾となり飛べ、罠など薙ぎ払え。砕いてしまえばどうという事もないだろう」
 命を受けた餓竜は、黒竜号の頭を蹴って飛びたつ。
 ジャハルが腕を振るえば、餓竜も合わせて黒剣を振るい、前方に立ちふさがる岩を力技で一刀両断した。岩の破片をその身で受け止めて、どんどん来いとばかりにまた剣を構えなおす。
 ……なぜだろう。
 お世辞にも愛らしいとはいえない使い魔なのだが、今日は心なしか威勢がいいというか、愉快げに見える。
 ……まさか、この竜まで師の言葉に影響されてしまったのだろうか。
 ジャハルに少しだけ、また心配事が増えた。

 旅もそろそろ終盤だ。誰かが目印として作ったらしい、ホログラムのゴールゲートが見えてきた。
 ハーバニーの白うさ号はジャハルが砕いた岩の隙間を巧みにすりぬけ、未来へ歩みはじめた学生たちを明日へと送り出すべく進む。
「あっ……そこ、黒竜号の前方の、少し光ってるところ。ワープホールです!」
 ふたばの持っていた端末が、打ちこんだデータから罠の位置を予測したようだ。
「むむむ~。ゴールの直前にワープなんてぇ、とっても意地悪ですねぇ~」
「問題ない、任せよ」
 アルバはそう言うなり、氷の魔法を唱えて、ワープホールの手前に氷のジャンプ台を作った。
 急流に流され、勢いよくジャンプ台に乗りあげた黒竜号と白うさ号は、翼が生えたように宙を翔ける。
 対空中にさらに吹雪を振りまき、アルバが周囲の罠を氷漬けにする。すると学生たちが魔法で追撃し、それを破壊した。いい連携だ。
「や……やった!」
 端末片手に、ふたばも白うさ号から身を乗りだして喜ぶ。
 このデータは、きっと迷宮攻略の役に立つだろう。あとで学生たちのために残しておこう。
 最高に興が乗ってきたアルバは船の上で立ちあがると、ゴールを指さし、高笑いをあげ始めた。
「ふはは――罠なぞ恐るるに足らず、さあ進め!」
「座れ、師父。餓鬼でもあるまいに」
 間違って落ちぬようにと、ジャハルは尾をからみつかせて師を着席させ、帯代わりにして押さえつけておく。ここに新たな弟子たちの誕生を見たアルバは、それでも愉快そうににこにこしている。
 左右で生まれる氷の華。砕けて光を散らす結晶は涼やかで、澄んだ宝石のように美しい。
 先ほど黒竜号が見事に飛んだとき、ジャハルもまた、不思議な心地良さを感じたのも事実だ。
 流石は師父の術か――その口元が、ほんのわずかながらに弧をえがく。

『にっしっし、面白いことをするのう、モルモット共。ご褒美にパワーアップした鮫ちゃんを追加投入してやるのじゃよw』
 だが、脅威はまだ残っているようだ。ここにきて、新型の鮫型ロボットが追加投入された。
 流れに逆らい、ゴールの方向から迫ってくる鮫たちに向け、学生たちは魔法を発射する。
「なっ!?」
 ――だが、新型の鮫には魔法を反射するバリアが搭載されているようだ。跳ね返ってきた魔法を、ふたばが魔法弾でなんとか相殺する。
「どうしましょう、あれ……」
「大丈夫ですよぉ。ハーバニー観光は、安心安全が売りですのでぇ~……誰も三途の川を渡らせませんから」
 『猟兵』のハーバニーが、秘めた決意を垣間見せるのは一瞬。すぐにいつもの『案内人』に戻った彼女は、営業用の笑顔でのんびりお願いをする。
「……あのぉ、ちょっとだけぇ、舵取りをお願いしてもいいですかぁ~?」
「えっ、えっ」
 オールを預けられたふたばは慌てる。ハーバニーは不安そうな学生たちにウインクをしてみせると――みずから鮫の群れの中に飛びこんでいった。
「お、お姉さん、危ない!」
「と、思いますよねぇ~。ところがぁ、平気なんですぅ。はぁ~い、【兎跳】ぃ~」
 ハーバニーは鮫の頭を踏みつけてジャンプする。落下してくるハーバニーに喰らいつこうとした鮫は、空中ジャンプでひらりと身をかわされ、そのまま壁に激突した。
 故障し、ぷかぷか水路に浮いている鮫を見て、ハーバニーは空中で器用に肩をすくめてみせる。
「あららぁ~。魔法への耐性を強化したら、物理に弱くなってしまいましたねぇ~。それならぁ~……」
 ハーバニーは、太ももに括りつけた愛銃ヴォーパルをすちゃりと構えると――。
「ハッキングです~」
 飛びだしてきた鮫の頭を、斜め45度からごっつんと力強く殴りつけた。
 ……ハッキング(物理)だ。
 だがその一撃は効果的だったようで、殴られた鮫は変な煙を出しながら、めちゃくちゃな軌道で泳ぎはじめた。ハーバニーが鮫を誘導しているあいだに、なんとか罠をかわしきった黒竜号と白うさ号は、無事ゴールにたどり着く。

 皆の、学生たちの、再会を喜びあう声が、水路に残されたハーバニーの耳に届いた。
 鮫を弄び、怒りを買った因幡の白兎は、皮をはがれてみじめな姿になってしまう。
 だが――。

「勿論、私も川は渡りませんので」
 ハーバニーは密かにそう言い残すと、鮫の頭を踏みつけて三途の川から逃げ切り、仲間たちが待つゴールをくぐった。
 その直後、暴走していた鮫が大爆発を起こし、ほかの鮫を巻きこんで一網打尽にする。
「ふぅ~、間一髪でしたねぇ~。皆さぁん、全員お揃いですかぁ~?」
 いちおう数えてみたが、本当に誰も脱落することなくここまで来れたようだ。
「はーい!!!」
 ハーバニーののんびりした呼びかけに、猟兵たちと生徒たちが元気よくこたえた。
 『転校生』たちの活躍を間近で見た学生らの顔は、入口で不安そうにしていた時とはまるで違う。目がかがやいている。

「すげー! おれも『転校生』さんたちみたいになりたい!」
「ねぇねぇ、『転校生』ってふだんはどんな事やってるの?」
「ボス倒したら皆で一緒に打ち上げ行こうぜ!」
「ちょっとやめてよ、それ死亡フラグじゃん!」

 元気な学生たちにもみくちゃにされながら、ジャハルは思った。
 確か、青い春とはこういったものだったろうか――彼にしては珍しく、その感想は間違ってはいなかったろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『アストネージュ・トーマスライト・ヒラーガ』

POW   :    にっしっし、俺様こそ一番の技術の変態じゃよw
いま戦っている対象に有効な【妖しい発明品】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    いっしっし、ようこそ俺様のラボへ。歓迎しようw
戦闘用の、自身と同じ強さの【自立行動型実験器具】と【敵と同数の防衛ゴーレム】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    爆発☆オチ
【暴走した発明品の自身も巻き込む自爆】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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※プレイングの受付開始は4/8(月)8時31分からを予定しております。それまでに導入を追加しますので、少々お待ちいただければ幸いです。
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●14
 川下りの終点となる小部屋――その先にあったのは、あやしいガジェットと実験器具で埋めつくされた、工場のような部屋だった。
 壁一面を埋めるのは、モニターのついたテレビ型ガジェット。映像は荒いが、先のプール型迷宮や、罠だらけの急流が映っている。
「ううーむw鮫ちゃんはもうちょいと改良したほうが良さそうじゃの。表面を硬い鉱石でコーティングして……いや、むしろ衝撃を吸収する素材に……む?」
 その片隅で、何やらあやしい発明品をがちゃがちゃ弄りながらブツブツ言っている、一見可愛らしいツインテールの少女――彼女こそが元凶なのだろう。
 背後からの殺気に気づいたらしい少女は、キャスター付の椅子に飛び乗って、不敵な笑みをうかべた。
「俺様の発明した変態的トラップダンジョンを抜けてきよったか、モルモット共w脱落者なしとは予想外じゃが、上ではずいぶんと楽しそうに遊んでおったのうwww にっしっし……じゃが、ここまで俺様の計画通りじゃw にーっしっしっしwwwwww」
 椅子に乗ってくるくる回転しながら、少女は特徴的かつ狂気的な笑い声をあげた。
 迷宮内に遊べるスポットを作って人を集め、まとめて下層へ叩き落とし、己の発明品の実験台として使う。
 それこそが、少女の計画の全容であったらしい。
 竜巻でも起きそうな回転速度で回りながら、狂気の発明家は言った。
「いっしっし、ようこそ俺様のラボへ。歓迎しようw 改めて……俺様こそがこの地下迷宮いちの大発明家☆人呼んで技術の変態、アストネージュ・トーマスライト・ヒラーガ様じゃよwwwおまいらの弱点はまるっとお見通しじゃ。さあ行け、俺様のガジェットちゃんw」
 ヒラーガがぱちんと指を鳴らす。
 すると、部屋のあちこちから蒸気がたちのぼり、奇妙な発明品やゴーレム達が起動しはじめた。
 あやしいガジェット達が猟兵を取り囲む――!

「危ない、『転校生』さん!」
「ぐおっ!?」
 その時、誰かの放った魔法がヒラーガの椅子に命中し、ヒラーガは派手に転んだ。
 アルダワの生徒たちだ。
 ここまできみたちの活躍を見ていた彼らは、きみたちの行動を真似し、微力ではあるが戦闘を手助けしてくれるだろう。
 ――ちゅどーん☆
 吹き飛んでいった椅子が壁に当たり、爆発した。
 しかし、ヒラーガはいっそう狂気的に笑うのだった。
「うぇひひ……にしっ……いっしっしっっwwいいぞいいぞ、俺様のモルモット共! 猟兵と凡人共の化学反応……面白い! ま、せいぜい足掻くのじゃなw 万一俺様に勝てたら出口を教えてやってもいいぞwww」

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●特別ルール
【生徒たちとの連携】
 継続参加される方は、この章での戦闘中、学園の生徒たちから『二章でのプレイング内容に応じた戦闘支援効果』を得ることができます。
 生徒たちの行動内容は指定しても、こちらにお任せでも構いません。
 お任せの方は特にプレイングに記載しなくても大丈夫ですが、『支援はいらない』という方のみ一言いただければ幸いです。
 この戦闘で生徒が死亡することはありません。

【ヒラーガの技】
 ヒラーガはここまでの皆さんの様子をモニタリングしていたため『何となく皆さんに有効そうな妖しい発明品』をぶつけてきます(なお、最終的にはだいたい爆発します)。
 何か弱点や苦手なものなど、プレイングでこっそり教えていただけましたら参考にします。

【前章からの継続効果】
▼『岡森・椛さん』『御剣・誉さん』『スナッチ・ベットさん』の3名は、二章で罠にかかった怒り(など)をオブリビオンにぶつける事でいつもより強めの火力が出せます。
▼『満月・双葉さん』は寝たまま戦闘しても、起きてもいいです。
▼『アルバ・アルフライラさん』のユーベルコードによる一部生徒たちの強化効果はまだ続いています。

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プレイングの受付開始は4/8(月)8時31分からです。
期限内に書ききれず失効した場合、同じ文章で再送信いただけますと喜びます。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
プレイングお待ちしております!
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と

まっど…菜園…奴は農婦なのか

見回せば闘志に燃える生徒達
自分の身を守れるならば心強い、が
…弟子は俺一人で充分だ

*弱点、苦手
本・理論や式で気が遠くなり
師の不興・眠気を怖れる


師の雷により爆破される兵器の姿に、呆然と
…師父よ、問うていいか
実は、それほどまでに、毛嫌いして――
それ以上は続けられず聞こえず
奥歯を噛み締めてヒラーガを睨む

あの飲み物か、乗り心地か
いずれにせよ師の不興は我が不徳の致すところ
――せめて目に敵う一撃をもって
今だけ認めてやる
弟弟子達よ、共に参れ

生徒達の援護射撃を受け、攻撃を撥ねのけ
【竜墜】で研究道具ごとの破壊を狙う
笑い声が煩い
畑に帰れ

…満足いただけたろうか


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
こってこてのマッドサイエンティスト…
斯様なキャラは今時流行らんだろ…は?菜園?
…いやはや然し中々良い面構えではないか
ジジも弟弟子共には負けていられんぞ?
今やお前達には恐れる物はない
日常に帰りたくば武器を取れ!

ふふん、至高の魔術師たる私に弱点なぞある訳が――
其処まで言って固まる
目の前には
それはもう見事なマッチョの
従者型兵器
目にも留らぬ高速詠唱と慈悲すら与えぬ全力の【雷神の瞋恚】で粉々にしてくれる
マッチョのジジなぞ解釈違いにも程があろう…!
我が従者を愚弄した罪、死を以ってしても生温いな?

…は?毛嫌い?
ジジ、お前は何を言っている?
マッチョなお前は確かに嫌だが…って聞いておらんな



 奇妙な笑い声をあげるヒラーガを眺めるアルバ・アルフライラの表情は、渋かった。
 もの言う花もかくやのかんばせを曇らせるその想いは、怒りでも、悲しみでもない。
 そう。
「こってこてのマッドサイエンティスト……斯様なキャラは今時流行らんだろ……」
 ――美の神ことアルバ師匠は、キャラ作りにも厳しかった――。

●15
 師匠は知っている。
 美しい器に強い属性と高潔な魂が宿りし時、最強の美形が錬成されると。
 だがしかし、オブリビオンは過去からきた怪物。様式美的美少女にもまた、世界を滅ぼす影響力があるのだ。
『いっしっし、おまいもこってこての腹黒美少年おじさんじゃろがw』
「あぁん? そう言う貴様こそよもや実年齢はババァとかではあるまいな」
 バチバチバチ。
 本題とはわりと無関係な火花が散っていた。
 一方、アルバの横でその会話を聞いていたジャハル・アルムリフは――。
「まっど……菜園……」
「は? 菜園?」
 ジャハルの瞳がきらりんと輝く。
 アルバもピンときた。これは、また変な知識が弟子の脳内で変な化学反応を起こした時の顔だと。
「成程。奴は農婦なのか」
 ……。
 生真面目天然男子のジャハル君には、マッドサイエンティストという属性はちょっと難しかったようだ。いつも師匠のご飯を作っている彼ならではの発想、かもしれない。
「……いやはや、然し中々良い面構えではないか」
 師匠もツッコミを投げた。
 そう言われ、ジャハルが後ろを振り返ると、元・落第生たちが闘志に燃える瞳でふたりの背を見ていた。アルバも彼らを満足そうに眺め、手にした仕込み杖を高く掲げてみせる。
「今やお前達には恐れる物はない。日常に帰りたくば武器を取れ!」
 ――おおーっ!
 ある者は剣を、ある者は杖を手に取り、二人に続こうと意気込んでいる。
「ジジも弟弟子共には負けていられんぞ?」
「……弟子は俺一人で充分だ」
 ふいと背を向け、黒き竜は今日も星の賢者をかばうように立つ。
 だから、すこしへそを曲げた様子も可愛くて仕方がないといった風に細められた師のまなざしを、彼は知ることがないのだった。

『いーっしししモルモットが大量じゃあぁww れっつごー俺様のガジェットちゃん☆』
 ヒラーガの命令に応じ、動きだした自立歩行型ガジェットに肉体派の生徒たちが群がっていく。
 果敢に剣や槌をふるい、厚い装甲をへこませていく姿は頼もしいものの、先の熱狂を脳裏に描いたジャハルはふと彼らが心配になった。
「悪いが俺は師父を護るに手一杯ゆえ、自分の身は自分で守れ」
「ったりめーっすよ! ジジのアニキに迷惑はかけないんで、一緒に戦わして下さいっ!」
 ドラゴニアンの少年から尊敬のまなざしで見られた。
 恐らく、ジジが本名だと勘違いされている。
 それに――アニキ、とは。
 血の繋がりはない筈だが、と首をひねりつつ、負けてはいられない。自分なら――こんなもの、武器などなくとも十分だ。拳ひとつでガジェットに穴を開けたジャハルに、生徒達はますます尊敬の眼をむける。
『今じゃ。ポチっとなw』
 ヒラーガが手にした機械のスイッチを押す。すると、ガジェットから退屈な機械音声の授業が流れはじめ、丸い虫のようなものが出てきた。
『……線分PQノ長サヲ求メヨ……』
「お、お前は……直線X上を移動する点P!」
 動く点P――それは、見ただけで数学が苦手な者を発狂させる災魔である。
 落第生たちとジャハルは、突然すごい眠気に襲われはじめた。
 ジャハルは、自分一人が暗闇の底に突き落とされていくような、恐怖を伴った悪寒をおぼえた。
 己の腕を噛み、何とか目覚めようと試みるも、数式と奇怪な図形のホログラムが意識を遠のかせていく。
「動…………? なぜ点が動いている、師父……」
「奴が動く理由を考えてはいかん! ええい点の分際でちょこまかと動くでないわ鬱陶しい」
 アルバが落雷で地道に点Pを退治している間に、ヒラーガが黒い布に覆われた巨大なガジェットを運んできた。
『いっしっし。この短時間でこれを仕上げる俺様の変態的技術にびっくり仰天せいw』
「ふふん、何であろうが構わぬ。至高の魔術師たる私に弱点なぞある訳が――」
 そう、自信満々に言ってのけたアルバだったが……布の下から出てきたものを見て、硬直した。
 燦然と黒光りする約2メートルの巨体。肩幅は腰幅の5倍ほどあり、小高い丘のように盛り上がった三角筋や大胸筋の圧で、服の布がはち切れかかっている。
 それはもう、見事なマッチョの――ジャハルロボだった。

『師父ヨ……』
 シュコーシュコーと蒸気の汗を噴き、メカジャハル君(仮)は動いた。

「ぬ……ぬおおおお! 来るでない、マッチョのジジなぞ解釈違いにも程があろう!」
 あまりの恐怖にどん引きするアルバを、メカジャハル君が心なしか悲しげに見つめたのもつかの間。仕込み杖から先程とは比べ物にならない威力の凄まじい雷が飛び、メカジャハル君は一瞬のうちに葬り去られた。
 美過激派で知られる師匠だが、実はジジ過激派でもある。解釈違いへの怒りは【雷神の瞋恚】にも匹敵するのだ。
「……む」
 そして幸か不幸か、もたらされた雷鳴で本物のジャハルが起きた。
 目覚めたジャハルが見たものは――自分を模したと思われる、兵器。
 そして、それを鬼の形相で爆破する師の姿。
 衝撃であった。
「……師父よ、問うていいか」
「く……まだ吐き気がするわ。死を以ってしても生温い……!」
 杖を握る手が怒りに震えている。
 死――!
 ジャハルは愕然とした。
「そう、か。実は、それほどまでに、毛嫌いして――」
「……は? 毛嫌い?」
 アルバはぎょっとしてジャハルのほうを見た。
 従者は歯を食いしばり、小刻みに震えながらヒラーガを睨んでいる。今どんなすれ違いが起きたのか、アルバはだいたい悟った。
「待て、ジジよ。何を言っている? あの様なぽんこつに我が従者を愚弄されたとなればそりゃ怒るであろ」
「……この償いは、せめて目に敵う一撃をもって……」
「ジジっ!」
 駄目だ、聞こえてない。傷心のジャハルは、ヒラーガに向かって一直線に飛んでいった。

 ジャハルは考えていた。
 一番早く出来る飲み物を渡したのがまずかっただろうか。
 それとも、黒豚号の乗り心地が原因か。
 やはり自分が乗り物になるべきだった――いずれにせよ、師の不興は己の不徳だ。

「げ、元気出してください……っ」
 感化されやすい落第生たちはこの悲劇に涙していた。こんな己の為に、涙してくれるというのか――ジャハルの心がちょっと動いた。
「……今だけ認めてやる。弟弟子達よ、共に参れ」
「はいっ!」
『いっしっし、仲間割れかの? そんなんで俺様が倒せると思うてかw』
 ヒラーガの数学ガジェットが、また不可解な図形を発射する構えを見せた。だが、生徒達が強化された魔法弾で射出口を狙い撃ち、敵の攻撃を妨害する。
「もう数学なんか怖くねえ……アニキ、今のうちにやっちゃって下さい!」
 ジャハルの拳に宿る呪詛めいた感情の数々が、ひとの腕を、忌まわしき竜のそれへと変貌させていく。己の不甲斐なさへの怒り、理解しがたい概念と煩い敵の笑い声への苛立ち。そして何より――忠を尽くしてきた師に嫌われてしまった、その嘆きが。
 宿る。
「畑に帰れ」
 ――【竜墜】。
 宿した思いのぶんだけ、その単純な殴打は重くなる。
 数学ガジェットに大きな穴があき、生徒達は一瞬で退却した。
 だが、ジャハルはまだショックが抜けきっていないのか、茫然と立ち尽くしている。
 満足、いただけたものか――いま彼の胸を満たしているのは、唯々、それだけだ。
「ア、アニキ、危な……!」
『にっしっし。爆発じゃ☆』
 ――閃光が走る。
 ヒラーガとジャハルを巻きこみ、数学ガジェットは爆発した。

「……どうにか間に合ったか」
 ジャハルは無傷だった。アルバが咄嗟に張った氷の結界が、彼を爆発から守ったのだ。
 肩を撫でおろしつつ、アルバはジャハルの隣に並び、その背を叩く。悪夢のような肉鎧に覆われていないことには若干、安堵した。
「ジジよ、見事な一撃であったぞ。あのな、マッチョなお前は確かに嫌だが……これ、ジジよ。聞いておるのか」
「……」
「ほ、ほら、帰ったら今夜は特別に高級な肉を焼く事を許そうではないか!」
「………………」
 ぜんぜん聞こえていないようだ。
「全く――」
 アルバは頭を抱えた。憎く思っている訳がないのだが、見ていて解らないのか。この従者に不徳があるとすれば、恐らくはそこ。そういう所だろう。
 焦げながらも何故か満足げなヒラーガが、他の仲間と戦う姿を、ジャハルはぼんやりと眺めている。後でどうフォローしようかと、真剣に悩むアルバであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

栗花落・澪
【犬兎】で連携

なんというか…うん、楽しそうでなによりだね
夏輝君気が合うんじゃない?

支援方針:夏輝君に準拠

羽もどうにか乾いたし
こっから本気出すよ!

ガジェット達は雷の【全力魔法】で動きを止めたり
【オーラ防御しながら】先に起爆させこっちへの被害を最小限に留めつつ
その隙に【空中戦】でヒラーガに接近
背中にぴょんっと抱きついて
衣服から香る花の香りで【誘惑】しながら【催眠歌唱】で思考力を奪う

敵のUC発動の兆候が見えたら
【破魔】を宿した【指定UC+範囲攻撃】で
召還された物ごとまとめてヒラーガさんに攻撃

<弱点>

ぴゃああぁぁうにょうにょはいやあぁぁ!

触手および手足の無いうにょうにょした生物が苦手
夏輝君を盾にします


小林・夏輝
【犬兎】で連携

えー、俺ここまで馬鹿じゃねぇよ
勉強は無理だけど

方針:俺も澪も火力タイプじゃねぇから
隙を突いた攻撃で確実に耐久削ってもらえると嬉しいかな

★バット+R-Lのロケランによる【クイックドロウ+援護射撃】
衝撃や爆煙での足止めや視界妨害
澪が起爆させたガジェットは爆発前に【吹き飛ばし】巻き込み防止

周囲に固定可能な場所があれば
★改造腕時計のワイヤーを引っ掛け
敵の間を【ダッシュ+スライディング】で移動し張り巡らせ
逃走防止

澪の催眠後【UC】に先攻させ
バットを元に戻して手頃なガジェットにフルスイング
ヒラーガに激突させる【気絶攻撃】

弱点:特には…しいて言うなら学校のテスト?
赤点常習犯だぜ☆

※扱い自由継続



●16
『いーしっしっしっww 爆ぜた、爆ぜたwww』
 自身の発明品が起こした爆発に巻きこまれ、ぷすぷすと煙をあげながらも何故か満足げなヒラーガを、栗花落・澪と小林・夏輝はちょっと遠巻きに見ていた。
『技術の変態たる俺様もたまには失敗するぞい。だが、失敗は成功の母じゃw 今のデータを元にガジェットちゃんを更に改良して、と……』
 ヒラーガはあやしいガジェットをいじるのに夢中になっている。正直、あまり関わりたくない。
「なんというか……うん、楽しそうでなによりだね。夏輝君気が合うんじゃない?」
「えー、俺ここまで馬鹿じゃねぇよ。勉強は無理だけど」
 背中の羽をぱたぱたと動かしている澪へ、夏輝はぶーっとふくれっ面を返す。水路を全速前進してきた甲斐もあったのだろうか、濡れた羽はもうすっかり乾いている。
「よーし、こっから本気出すよ!」
 やわらかな白い翼が魔力を帯びてはばたき、澪の小柄な身体を空中へ浮かびあがらせた。夏輝も先程使った改造ロケットランチャーを構え、二人とも臨戦態勢に入る。
 すると、ヒラーガがカラクリバットに食いついた。
『ほっほーう、バット型のガジェットとはのぅ。面白いではないか、見せてみぃw』
「でっしょー!? スゲェんだよこれ。ココにこのR-Lをつけるとさ、後は精霊の魔力で自動的に組み立てが……」
「ちょっと夏輝君、何やってるの!?」
 腐ってもガジェットを愛する者同士。何やら盛り上がっている様子に、やっぱり気が合うんじゃん、と澪は呆れ顔を見せる。
 だが――。
「って油断させといてからのクイックドロウだニャー☆」
『に゛ゃあああ!?』
 カラクリバットが火を噴いた。視界をさえぎる煙幕弾が炸裂し、白い煙が辺りを包む。
『いっしっし……やってくれたな。行け、俺様のガジェットちゃんw』
「こういう装置ってきっと雷には弱いよね。僕の魔法で……」
 向かってくるフラスコ型ガジェットに向け、澪は詠唱をはじめる。ガジェットに一発雷を落とすと、フラスコはあっけなくひび割れた。その中を満たしていた緑の液体が染みだし、床の上にひろがっていく。
「薬……?」
 澪は床を見た。
 薬ではない。ねばねばした半固体状のゲルが、床の上でもぞもぞと蠢いている。
 生命体。いや、これは――スライムだ。澪は停止した。
 そのうにょうにょしたボディから伸びてくるのは……零の天敵、触手。

「ぴゃああぁぁうにょうにょはいやあぁぁ!」
 さすがアルダワ、触手のメッカ。1匹見たら30匹はいる。
 触手愛好会やらあきらさんやらその他の描写できないメモリーが脳裏をよぎり、羞恥で赤面した澪は少女のような悲鳴をあげて逃げだした。
 いや、逃げちゃ駄目だ。もう、触手なんかには絶対負けない――!(フラグ)
 その決意をこめ。
「ごめんね夏輝君!」
 どんっ。
 澪は、夏輝を生贄に捧げた――。

「……はにゃああああ!? え、俺っ!? 誰得なんだよ!!」
 誰得かといえば、健全な中学生男子が好きな人得である。需要はけっこう高い。
 思春期少年の身体に禍々しい緑の触手がからみつく。必死の抵抗もむなしく、オブリビオンの毒牙が、海パンの中に隠されたバットへ忍び寄り……!?
「いやこれそういう依頼じゃないから!! だよね! えっ!?」
『ううむハズレか……残念じゃ。そっちの少女少年は刺激に敏感そうな顔をしとったのにのう……おバカキャラにはやはりこれじゃなw』
 ヒラーガは、先ほど他の猟兵へ放っていた数学ガジェット(修理済)を再起動し、触手にからまっている夏輝に向けて例のアレを放った。
「何、この虫みてーなちっちゃいの」
『……線分PQノ長サヲ求メヨ……』
 直線X上を移動する点P――それは、見ただけで数学が苦手な者を発狂させる災魔である。
 そのはずである。
「……線分PQ?」
 だが、夏輝は動く点Pを見ても、ケロリとしていた。
『何じゃと!? ま、まさかおまい……バカすぎて問題の意味すらわからん層か!』
 そう、赤点常習犯の夏輝には、動く点P問題の恐ろしさがわからなかったのだ――!
「ふッ……よくわかんねーけど、勉強できなくて良かったぜ! 『赤点のナツ』と呼ばれたなっちゃんをナメんなよ☆」
「えええ……」
 澪は再び呆れた。だが、夏輝のおバカのおかげで助かってしまったのも事実だ。
「夏輝さん、今助けますっ!」
 ヒラーガが驚愕している隙をつき、アルダワの学生たちが急ごしらえの銃型ガジェットを使って、夏輝を絡めとる触手を狙い撃つ。触手から解放された夏輝は、ただちに安全な範囲まで逃れた。
「ふぇぇ、怖かったぁ……あんな迷惑なおもちゃ、今度こそ壊さなきゃ!」
 澪の翼が白く輝いた。すかさず、全力魔法で放たれた天使の裁きが、数学ガジェットとスライムを襲う。
 真っ白な稲光に撃ちすえられたガジェット達は、ぴたりと動きを止めた。
 そして、変な風にカタカタ震えはじめる。
「夏輝君、これ爆発するよ!」
「ああ、任しとけ!」
 澪が散った魔力を収束させてバリアを展開するあいだに、夏輝はガジェットの足元に向けてロケット弾を放った。
 下からの爆風にあおられたガジェットが、浮き上がって飛んでいく。その先には、実戦データの収集に夢中になっているヒラーガの姿があった。
『にーっししし……しっ? これは俺様のガジェ……』
 ――ちゅどーん☆

「澪、伏せろっ!」
 夏輝は澪に覆いかぶさるようにして、彼をかばう。
 爆発の熱によってスライムは蒸発し、数学ガジェットも今度は原型を残さないほどに大破した。展開しておいたバリアが、爆風や飛んできた破片の大部分を弾き、味方側への被害はなんとか最小限にとどまる。
「……夏輝君、」
 ありがと、と言おうとした澪は、肌にふれるねちょっとした感触に気づいて顔をしかめた。
「……うわっ、ちょっとべとべとしてる……気持ち悪いから早くどいてよ」
「澪きゅんひどっ!! 仕方ねーだろ!?」
 スライムでねちょねちょの夏輝をその場に残し、白い翼をはばたかせた澪はヒラーガのほうへ飛んでいく。煤まみれになったヒラーガは、無防備にゲホゲホむせていた。
 その背に忍び寄った澪は、ぴょんっとかわいく抱きついて、彼女を驚かせる。
『ひょえっ!?』
「ふふふー、捕まえたっ。お返しだよ!」
 耳元で囁くように歌われる子守歌と、黒い上着からただよう甘い花の香りが、ヒラーガの五感を侵食していく。澪のやわらかな腕に抱かれれば、誰でも天上にのぼったような心地となり、清らかな赤子にかえったように瞼をおとす。
『ふにゃぁああ……いひっ、いしし……』
「今だ! いっけー【バトルキャラクターズ】!」
 夢心地のヒラーガに襲いかかるのは、UDCで人気の野球ゲームから飛びだした二頭身の選手たち。
 彼らがバットやボールでポカポカ殴りかかっても、魅了されたヒラーガは、母親にあまえる幼児のように澪へすり寄って安眠している。
 夏輝はカラクリバットに装着したR-Lを取り外した。
「澪、よけろっ!」
「ぴゃぁあぁぁっ!」
 球体型のガジェットめがけ、フルスイング。爽快な音をたてて飛んだガジェットは、ヒラーガの顔面を直撃した。
『ふぎゃっ!? ヒ、ヒヨコとお星様が見えるぅぅ……ww』
 グロッキー状態のヒラーガは、ふらつきながらもゴーレムと実験器具を召喚し、二人を襲わせようとする。踏み潰そうと迫る巨体の間をダッシュとスライディングで駆け抜けながら、夏輝は改造腕時計のボタンを押した。
 中に仕込まれたフック付きワイヤーを、床に転がったガジェットに引っかけ、張り巡らせる。
「これで逆転満塁サヨナラホームランだぜ!」
 ガジェットの銃を構えた生徒たちが、ヒラーガを囲んだ。
 夏輝のカラクリバットを真似て作られた銃から飛ぶのは、澪が放っていた光の球だ。二人の
力を合わせて生まれたその攻撃は、ヒラーガを守ろうと立ち塞がるゴーレム達の装甲を削っていく。
『にっしっし、やるではないかw さて、データも取れた事じゃし、かくなる上は逃げるが勝……ふぎゃっ!?』
 復活し、その場から逃れようとしたヒラーガの足元をすくったのは、先程夏輝が張っておいたワイヤーだった。
 澪は、転倒したヒラーガを部屋の上空から見下ろす。
 聖なる光を全身に纏い、慈愛の微笑みをうかべたその姿は、天使そのものだ。

「全てのものに光あれ――」
 【Fiat lux】。魔なるもののみを浄化する優しい光が、等しく降り、皆を包みこむ。
 あたたかな輝きに抱かれるようにして、ゴーレム達は静かに消滅していく。
 そして、悶え苦しむ邪悪な科学者のみが、そこに残されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

※弱点:濡れたぬちゃん(重い)
(色々お任せします)

レジャー施設だけ作って満足しとけばいいモノを……
そうね、万一で生き残れたら
浮き輪の恨みは忘れてあげてもイイヨ

肩の相方をガッと掴むなり全力投狸
同時に『高速詠唱』で【月焔】展開
最大数で四方より撃ち込み目眩ましにする

研究ってンなら色々披露してあげないとねぇ
役立つ事はないだろうケド!

相方の攻撃が当たればすかさず、今度は一つに合わせた焔を撃ち込み
『2回攻撃』で再び複数の焔撒いて攪乱するヨ
敵から飛んでくるのが発明品だってンなら全部焔で撃ち落とし
捌き切れなければ『オーラ防御』で凌ぐ

応援貰えたら調子に乗って派手に焔撒き散らしちゃお


火狸・さつま
コノf03130と

狸っぽい色合いの狐姿にて参加
人語会話不可能
コノとは意思疎通出来る

※弱点:コノちゃん
コノのお手製オヤツにすぐ釣られる
コノが呼べば駆け寄る習性がある(飼い主ではない、母の様な悪友である)


浮き輪さん、生き別れて、しまった、けども
レジャーも、急流滑りも、楽しかた
ね?とコノの肩の上で御機嫌


コノを加速装置に敵へと突っ込み空中回転
しっぽあたっく!
見切りにて攻撃躱しつつ
雷火で範囲攻撃


敵味方の動き見切り
敵の邪魔を、味方へは援護を
発明品は雷火の範囲攻撃で撃ち落とし
しっぽあたっくで蹴散らす
コノが躱しきれぬ時はかばう
オーラ防御で防ぎ
激痛耐性で凌ぐ

声援に応えて、コノちゃんの焔に合わせて雷火を撒き散らす



●17
『な、何故じゃ? 悪寒で体が動かん……!』
「なんでって……どう見ても邪悪ってカンジだものネェ。レジャー施設だけ作って満足しとけばいいモノを……」
 仲間が放った浄化の光を受けたヒラーガは、破魔の力で清められた身体から煙をあげ、悶え苦しんでいた。
 その隙を見て、生徒たちと一緒にマイ浮き輪の姿を探してみたものの、どこにも見当たらない。しっとりと湿った火狸・さつまを肩の上に乗せたままのコノハ・ライゼは、ちょっぴり残念そうにため息をつく。
「……何たぬちゃん、励ましてくれてんの?」
 さつまがコノハのあざやかな髪を撫でる。生き別れてしまった浮き輪さんのことは、確かに悲しいけども。
 ――レジャーも、急流滑りも、楽しかた。ね?
 もふもふしっぽを左右にふりふりし、心なしかごきげん顔のタヌキツネ。その可愛らしい様子を見ていたら、コノハもまあいいかと思えてきた。
「……そうね。ヒラーガちゃんだっけ? アンタ、万一で生き残れたら、浮き輪の恨みは忘れてあげてもイイヨ――」
『にっしっし。俺様復活じゃ☆』
 ばっしゃーん。
 ……と、新たに現れたお掃除ガジェットが、頭のバケツに入った水をコノハにぶちまけた。
「!!」
 せっかく乾きかけていたさつまのもふ毛が、またぐっしょりと濡れてしまった。重たい。
「ちょ、ちょっとたぬちゃん、肩の上でブルブルするのは……」
 ぶるぶるぶるぶる。
 水飛沫がコノハの顔を直撃する。
「……前言撤回ネ。やっぱアイツ許さねぇ」
 コノハは肩の上の濡れタヌキをガッと掴んだ。

 濡れたぬちゃんの重さが細身の身体にのしかかる。コノハの肩がぎしぎしと悲鳴をあげる一方、投げられるさつまは両手でバンザイをして、なんだか嬉しそうだ。
「……行くヨたぬちゃん……っ、全力投狸!」
 砲丸のようにぶんっと投げられ加速したさつまは、自力で器用にくるくる宙返りしながら、ヒラーガへ突っこんでいく。間髪入れず、コノハは高速で魔術の詠唱を開始した。
 先の水路で氷の雨を降らせたその指に、静かに灯るのは【月焔】。月のひかりを思わせる冷たき月白の炎は次々にコノハの指を離れ、人魂のように彼の周囲をただよう。
 その数、実に三十三個。
 見かけはひとらしくとも、彼の本性が狐であることを思わせる、美しくも不気味な炎だ。
「寒いんデショ? なら暖めてあげる」
 コノハの周囲を回っていた三十三の炎がいっせいに飛び、ヒラーガを囲んだ。
『あちっ! あちちち……』
 包囲完了までほんの一瞬。ちいさな炎はヒラーガにぶつかっては、花火のように弾けて目をくらませる。白のなかに忍ぶ茶色は、大本命のたぬちゃん弾だ。
 たっぷりと水を吸いこんで、凶器と化したもふもふしっぽがくるんと一回転。
 ――【しっぽあたっく】!
『いっしっし。何かと思えばタヌキの尾など恐るるに足ら……ふぎゃっ!!』
 びたーんと濡れ尻尾を叩きつけられたヒラーガは、予想をはるかに上回る衝撃でふっとんで、壁にぶつかった。更に黒い雷の追撃が襲い、ヒラーガはさつまよりも真っ黒焦げになってしまう。
『な、なぜじゃ!? まさかその攻撃もユーベルコードだとでもいうのか!』
 大、成功。
 ぴょこんと跳ねて喜ぶタヌキツネ。ユーベルコードは理論では計算できないものなのだ。
「たぬちゃんのもふもふ、スゴいでしょ? 研究ってンなら色々披露してあげないとねぇ。役立つ事はないだろうケド!」
『ぐぬぬ……だが、俺様は技術の変態! そのタヌキの弱点はとうに見切っておるわ、にっしっしw』
「え?」
 アレには……見覚えがある、ような。
 黒い布に覆われたガジェットが運ばれてきて、コノハはなんとなく嫌な予感をおぼえた。
「ちょっと。ソレってまさか……」
 ヒラーガはどや顔で黒い布を取り払った。

『タヌチャーン、オヤツよォー』
 薄氷の瞳、紫雲に染めた髪。
 眼鏡が中性的な美貌を引き立て……てはいない。
 顔はへのへのもへじだし、体型は寸胴なドラム缶のようだったが――。
『いっしっし……完璧であろう。さっき思いついて作った新作! 自立歩行型猟兵ロボシリーズ第二弾、メカコノハ君じゃ!』
 まあ、だいたいコノハであった。まさかのメカコノハ君出動である。

「マジ??オレの声出てンじゃん」
 見た目はともかく、声の再現度はかなりのレベルである。一瞬だけ感心してしまったコノハだったが……。
「でも雑! 技術者ならもっと造形美へのこだわりも持ちなさいヨ、アンタ!」
『いっしっし……見た目より性能が大事じゃw いでよ、お手製オヤツ!』
 メカコノハ君がチーズケーキを取りだし、床に置いた。
(コノ、呼んだ??)
 コノハの声がしたのできょろきょろしていたさつまは、ケーキを見つけてくんくん匂いをかぐ。
 おいしそうだ。もしかすると、コノちゃんがご褒美をくれたのかもしれない。
「あ、たぬちゃん、ソレは口に入れちゃ……!」
 ぱくり。
 思わず口に入れてみた、タヌキツネだったが。
「!!!!!」(訳:これ、コノちゃんの味、違う……!)
 ぱこーんと皿ごと尻尾でふっとばされたケーキは、ヒラーガの顔面に激突した。
 口の中がヒリヒリするの、気のせいだろうか。さつまはぷるぷる震える。
『いっしっし、激辛ブートジョロキア入りケーキじゃw 食べたら無事でいられるわけが……』
「???」
 持っててよかった激痛耐性。さつまはちょっとピリっとしただけで済んだ。
「こらー! たぬちゃんをいじめないでよ!!」
 代わりに激怒したのは動物大好き、たぬちゃんファンクラブの生徒たちである。
 みな相棒の犬や小鳥を操り、コノハとさつまにも負けないコンビネーションでヒラーガを追い立てる。
 そして、メカコノハ君に気づいたさつまは……。

(……ぜんっぜん、ダメ! コノちゃんはもっと、別嬪さん、だ!)
 ……その出来栄えに、コノハ以上にご立腹だった。
 
「っつーか、あれマイ浮き輪じゃねーか!」
 しかも。見つからないと思ったら、コノハの浮き輪はメカコノハ君の一部に組み込まれていた。
「ホント腹立つわァ……たぬちゃん、とっととアイツらやっちゃおう」
 コノハの言葉にこくこくと頷き、さつまも戦る気満々だ。お掃除ロボとメカコノハ君が、掃除用具と危険なおやつを手に迫ってくる。
 メカコノハ君が飛ばしてくる彩雨を模したキャンディは、見た目こそ綺麗だが、口に入れば何が起こるかわからない。
 コノハはふたたび高速で月焔を展開し、そのひとつひとつに炎をぶつけ、溶かしていった。余った炎はお掃除ロボへの目くらましに使い、攻撃を避ける助けとする。
 さつまはモップやはたきが飛んでくる軌道を見切り、落雷でつぎつぎに雨を溶かしていった。
『やるのぅw いっしっし……だがこれはどうかね?』
 甘い香りがただよう中、お掃除ロボの放つ強酸性の洗剤が二人に向けて噴霧された。巻きこまれたコノハの焔が、いくつか消える。
「これはかわしきれないわね……オーラ防御よ、たぬちゃん」
 さつまが再びコノハの肩に乗る。力を合わせて結界を張り、身体を溶解させる霧を防御する。だが、洗剤の霧は結界すらもだんだんと溶かしてしまう。
 ――コノちゃん、俺が、守るっ……!
 さつまは思い切って、結界の外に飛びだした。
 お掃除ロボの手に装着されたスプレーをしっぽあたっくで弾き飛ばし、無力化する。
 皮膚が、口が、身体のなかがにぶく痛む。自慢の毛並みもすこし乱れてしまったが、大丈夫だ。あとで毛づくろいすればいい。それより、コノちゃんのほうが大事だ。

 ご主人さまではないけれど。
 お母さんみたいで、一緒にいると楽しい、ちょっと悪いともだち。
 確かな友情で結ばれた一人と一匹の姿は、アルダワで学ぶ獣使いたちに勇気を与える。

「ブッチ、行くよっ!」
「ピーコも頑張って!」
 それぞれの相棒の名を呼びながら、ガジェットに立ち向かう生徒たち。その姿を微笑ましく見守りながら、コノハは再度三十三個まで増やした炎をひとつに合わせた。
「たぬちゃーん、飼い主さん、そんな奴やっつけてー!」
 まだ勘違いされているようだけど、せっかくの声援には応えねば。
「そンじゃ、派手に撒き散らしちゃいまショ」
 そうして生まれた巨大な焔は、さながら月そのものであった。
 冷たい炎がガジェットたちを包んで燃え、更にさつまの放った雷がその上に落ちる。
 刹那、黒と白の火花がきらきらと散って――ガジェットはヒラーガを巻きこみながら、派手に爆発した。
 本日一番の大花火。生徒たちと動物たちも、しばしその残滓の美しさに魅入る。
「さよならメカコノハ君……そしておかえり、たぬちゃん」
 嬉しそうに駆けよってきたさつまを、コノハは抱き上げてわしゃわしゃ撫でる。
 その身体には、回収された虹色浮き輪がすっぽりはまっていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

岡森・椛
アウラ…力を使い過ぎて萎んだ風船みたいになってる…
貴女の罠でアウラがこんな事に…!
働かせたのは私だけど

ぎゅっと抱きしめ涙して、悲憤する
アウラの仇は必ず取るよ
でもごめんもうちょっと活躍して

【鎌鼬】でラボ内の発明品を旋風として操る
貴女のご自慢の品もアウラの力で私の武器になるの
こんな化学反応、予想してなかったよね?
ラボ内のガジェットや敵の大事そうな物もどんどん破壊する
えいえい!
喚かれてもスルー
大量に草生やしながら喋ると聞き取りにくいよ!

生徒さん達も頼もしい
敵の油断や隙は見逃さずに皆に伝える
今がチャンスだよ!
力合わせ攻撃

苦手な物は難しい数式
化学とかも実はさっぱり
アウラも弱点
アウラに何かあれば必死になる


満月・双葉
(寝ぼけたまま死んだ姉を召喚し、押し付けてサボろうとしてどつかれて起きる)
…眠いのに……何ですか…僕の安眠の邪魔をするのは貴方ですか…あすとねー…長い、面倒くさい。もう変態で…良いですね…変態。
僕の弱点は知っていてもこっちのは知らないでしょう。(姉を指さし)
後…僕の弱点は眠いと大暴れすることです
武器による殴りつけで気絶攻撃を放ちます
虹色の残像を見せる早業と暗殺の要領を用いてダッシュで動き回りフェイントを掛けて翻弄し懐に入り込み、逃げ足も利用して素早く離脱します

眠くても本能で、視力、暗視、聞き耳、第六感、野生の勘を用いて敵の攻撃を見切り、見きれないものは盾受け、武器受け、オーラ防御で防ぎます


赤嶺・ふたば
可愛い女の子はついコレを使いたくなっちゃうんだよね、メタモルボディだ!ジンジャーブレッドマンにでも変えてやろう。
とにかく彼女本人を執拗に攻撃してゴーレムや実験品の操作、呼び出しを妨害する戦法でやってみよう。ゴーレムは基本的に無視。スキが出来たらフルファイアで一気に決める
(アドリブ、絡みOKです)
(実験品でジンジャーブレッドマンに変えられて生徒に助けて貰う展開を希望したいです)



●18
 仲間の猟兵たちがヒラーガと激闘を繰り広げていた、その頃……。

「アウラ……力を使い過ぎて萎んだ風船みたいになってる……」
 風を吹かせたら自分が飛んでいきそうだ。普段の可愛らしさは見る影もなく、おばあちゃんのようにしわしわになってしまった精霊アウラ。大事な友達をぎゅっと抱きしめ、岡森・椛は涙を流していた。
「貴女の罠でアウラがこんな事に……! 絶対許さない!」
 椛は涙に濡れた瞳でヒラーガをキッとにらんだ。
『いや、おまいがこき使ったせいじゃろ』
 オブリビオンも思わずつっこんだ。
 その事実は華麗にスルーし、椛はひとり悲嘆に暮れ続けるのだった。

「うーん……あと五分……いや五時間……いっそ五日」
 そして、罠を回避するために魔力を放出した満月・双葉は、まだ寝ていた。
 しかし、たびたび轟く爆発音が耳ざわりで安眠できない。不快感で寝がえりを打ちながら、双葉は【死した片割れ】こと、双子の姉を召喚する。寝たままで。
「……あと……よろしく……」
 現れたのは、長い黒髪と白いワンピースが特徴的な、双葉と同じ虹色の翼を持つ美しい娘だ。
 銀のフルートを携えた彼女は、眠りに伏す妹を、穏やかな笑みで見下ろすと――。
 がんっっっ!!!
「痛っ」
 ……あまりに容赦なく、フルートで妹の頭を強打した。さすがの双葉も目が覚め、のろのろと起き上がる。
「……眠いのに……何ですか……僕の安眠の邪魔をするのは貴方ですか……」
 双葉は眠たげな瞳でヒラーガをキッとにらんだ。
『いや、今のはそいつじゃろ! 後ろの後ろの! 後……』
 姉を指さしていたヒラーガは、ひッと息を呑んで黙った。
 お姉ちゃんは、何かしらといった風ににこにこしている。
 だがよく見ると、双葉以上にすごく目が死んでて、寿命が削れるほどに怖かった――。

「二人とも、しっかりしてくれ……! 戦闘はもう始まっているぞ!」
 そんな中、両手に銃を構えて傭兵モードに入った赤嶺・ふたばは、射撃で敵の行動を妨害しつつ、泣いている椛と寝ぼけ気味な双葉をなんとか戦闘に引き戻そうと頑張っていた。
 ふたばの言葉で正気に戻った椛は涙をぬぐい、よろよろと立ち上がる。
「うん、そうだよね、しっかりしなきゃ……アウラの仇は必ず取るよ。でもごめんもうちょっと活躍して」
 腕に抱きかかえられたままのアウラが、ぷるぷるしながら手を振って返事をする。
 駄目だ、あんまり正気ではなかった。
 そして寝起きの双葉も、ガジェットを支えにしてよろよろと立つ。
「仕方……ありませんね。もう少し働くとしますか……で、誰でしたっけ?」
『にっしっし、寝ていたおまいのためにもう一度言ってやろう。人呼んで技術の変態、アストネージュ・トーマスライト・ヒラーガ様じゃよw』
「あすとねー……長い、面倒くさい。もう変態で……良いですね……変態」
『うむ、まあ良しw』
 いいのかよ。
 このグループはみんなあんまり正気ではなかった。ヒラーガも含めて。

「と、とにかく、女の子達を傷つけさせる訳にはいかないな。いいだろう、自分がやってやる!」
 ふたばがヒラーガに向けて銃を乱射する。防御用ガジェットで弾丸をかわしながら、ヒラーガはにししと笑う。
『ふむ、威勢のいいことじゃw ならこいつをプレゼントじゃよ。行け、クッキービースト1号ww』
「クッキービースト1号だって……!?」
 クッキービースト1号と呼ばれた、オーブンレンジによく似たガジェットは、身体に生えた腕から謎の液体を噴射した。
 本能的に危険を感知した双葉は、寝起きとは思えない素早さでそれをかわし、椛もアウラの風で液体を散らす。
 攻撃を浴びてしまったふたばは――自らの肉体がどろどろに液化していくのを感じた。
「何だって!? う、うわぁぁぁ」
 液化したふたばがレンジガジェットの中に吸いこまれてしまった。
 しばらくして、チーンと音がする。
 中から出てきたのは――。

「はぁ……せっかく理想の女の子になったのに、ジンジャーブレッドマンに変えられてしまった……」
 人間サイズのジンジャーブレッドマンと化して、にっこり笑っている、ふたばだった。

「何で!?」
「……まだ寝ぼけてるんですかね。悪夢です」
 あまりの超展開に椛は驚愕し、双葉は自ら壁に頭をぶつけ始めた。無表情で。
『にっしっし、先ほど浴びせたのは人体をクッキー生地に変える薬。おまい、ズバリ可愛い女の子を無力なぬいぐるみやクッキーに変身させるのが趣味じゃろう!』
「ど、どうしてそれを……!」
 ジンジャーブレッドマン化したままうろたえるふたば、心なしかちょっと嬉しそうだ。個人的にはそういうの嫌いじゃないです。
『そしてそこの赤い小娘! いっしっし、何でと聞かれたら教えてやらねばのぅ……クッキーがクッキーたる所以、メイラード反応についてじゃ!』
「メイラード反応!?」

 ※メイラード反応(アミノカルボニル反応)とは?
 アミノ化合物に含まれる窒素原子が還元糖のカルボニル基に含まれる炭素原子に攻撃し非酵素的に結合する事に始まり、最終的には褐色物質メラノイジンが生成される。これはクッキー生地をオーブンで加熱することにより進行する化学反応である。

「ううっ、何を言われてるのか全然わからな……い……」
 要するに『クッキーをこんがり焼くとめっちゃいい匂いする』って話なのだが。
 実は数式や化学やさっぱりな椛は、アウラと一緒にばたんきゅーした。
 勉強が弱点の猟兵、これで三人目。学級崩壊もするわけだ。
『いっしっし、一気に二人倒してやったわw 残りの一人も……』
「僕がどうしました?」
 ぶんっ。
 双葉のふるった大根が、ヒラーガのすぐ脇を通過する。
 さらに、聴いているだけで正気を奪われそうな歪んだフルートの音が、ヒラーガの聴覚を蝕んでいく。双葉の姉が演奏するフルートの音だった。その口許は相変わらず微笑んでいるが――目が怖い。
『そ、そいつは……こ、これ、演奏をやめんかい!w』
「僕の弱点は知っていてもこっちのは知らないでしょう」
 姉を指さし、双葉は言う。
 確かに、姉のほうは初見だし……それ以上にこのお姉さんの弱点とか、正直ちょっと想像ができないです。姉、霊体なのに、すごい強キャラオーラを出している。
『いっしっし、だがおまいを倒せばその姉も消滅……』
「僕の弱点は眠いと大暴れすることです」
『そんな理不尽なぁー!?』
 眠くて不機嫌な双葉は超高速移動でヒラーガの背後をとった。
 がんっっ。
 父の部屋から持ってきた馬の置物(鈍器)が、ヒラーガの後頭部にクリーンヒットした。
 これは気絶攻撃。だが、地球なら立派な殺人事件だ。
 実質無敵モードに入った双葉が大暴れしている間に、アルダワの学生達はジンジャーブレッドマン化したふたばを元に戻そうと、知恵を出しあって頑張っていた。
「これって呪いの類かな……?」
「だったらあのポーションが効くかも」
 その背にヒラーガのレンジガジェットが迫る。だが、生徒達はひるまない。
「来るよ! 皆でふたばさんを守ろう!」
 双葉のように敵の弱点をしっかり見極め、ふたばのように注意深く。クッキー状態のふたばを庇いながら、レンジガジェットに立ち向かう姿を、椛も頼もしく思う。
「ヒラーガさんが気絶している今がチャンスだよ!」
「はいっ! 確かガジェットには雷が効いてたはず……!」
 椛と生徒が力を合わせて生まれた風と雷が吹き荒れ、レンジガジェットを横転させた。気絶から目覚めたヒラーガは、横たわってジタバタ動いているレンジガジェットを見て、てぺぺろと笑う。
「にっしっし。爆発☆じゃw」
 ――ちゅどーん!

「迷惑な変態ですね……なんでも爆発させるって点では僕も人の事言えませんけど」
 爆発慣れしているのか、双葉は妙に冷静な対応を見せた。彼女のオーラ防御で自爆を凌ぎ、猟兵たちがほっとしたのもつかの間。
 ロボットアーム型ガジェットがのびてきて、まだぐったりしているアウラを椛の腕からさらった。
「アウラ!」
『いっしっし……こいつを返してほしくば、姉の霊をひっこめて、そこのジンジャーブレッドマンを倒すんじゃのw』
「ふたばさんを……!? そんな事できないよ!」
 大切なアウラを人質にとって、仲間を攻撃させようとするなんて、なんと卑怯な敵なのか――その時、椛のヒラーガに対する怒りが頂点に達した。
「お願い、アウラ! 力を貸して!」
 椛の声を効いたアウラは、顔をあげた。

 ぐぐっと力を振り絞ると、その瞳に輝きが戻り、しおれていた身体もぴかぴかになる。
 アウラの身体から翠の光が飛び、ラボ内のガジェットに乗り移った。
 すると、なんということだろう。
 ヒラーガのガジェットが、次々につむじ風になって、跡形もなく消えてゆく。

『いひぃ!?wwwww ちょ、おまっ、俺様の発明品に何しとるんじゃww』
「貴女のご自慢の品もアウラの力で私の武器になるの。こんな化学反応、予想してなかったよね?」
 形勢逆転。
 きりりと微笑んでみせた椛は、つむじ風を操ってえいえいっと他のガジェットにぶつけ、いかにも手の込んだ造りのガジェットばかりを狙ってどんどん破壊していく。
『こ、これ、やめんかwww俺様の傑作じゃぞwwwww』
「えっ、何か言った? 大量に草生やしながら喋ると聞き取りにくいよ!」
 椛を止めようとあたふたするヒラーガの隙をつき、双葉は捕らえられていたアウラを救出した。
「このどさくさに紛れていただいていきます」
『あっこら、おまいもやめんかい!w』
 ヒラーガは慌ててロボットアームを振りかざすも、その攻撃は虹色の残像をかすめるに留まる。
 足音ひとつ立てず、身軽にステップを踏む双葉をとらえるには、ヒラーガ本体の戦闘能力は心もとない。虹の光を散らしながらの高速移動についていけず、息切れしだしたオブリビオンの攻撃は空を斬りつづける。
 彼女の背後には、冷ややかに微笑みつづける姉が寄り添っていた。まるで死神のように。
『はァ……はァ……』
「もうギブアップですか? ならこの大根で――」
 と思わせてから一歩踏み出し、掌に忍ばせた拳銃を心臓の上に突きつける。
 蒸気でしめった地下に、かわいた銃声が響いた。

『がはっ……!』
 懐に入りこまれ、至近距離から胸を撃たれたヒラーガは、さすがに応えたのか胸を押さえてうずくまる。
 背後に人の気配を感じた双葉は、すばやく離脱する。
 そこには、学生たちのポーションで呪いを解除され、復活したふたばが立っていた。
「その通り。可愛い女の子にはついコレを使いたくなっちゃうんだよね、【メタモルボディ】だ!」
 【フルファイア】による射撃と魔法が炸裂し、地面に着弾するたび小さな爆発が起きる。
 一斉掃射のなかに紛れさせた特殊な魔法弾が、爆発から逃れようとするヒラーガの脚に命中した。
 すると――。
『な、何じゃとぉぉ!?』
「やっとその姿になったね。さあ、一緒に楽しもうじゃないか……って、自分はもう元に戻っちゃったか」
 ヒラーガの姿が、ツインテールを生やしたジンジャーブレッドマンの女の子に変わった。
 【メタモルボディ】。それこそは、敵をふたばの好きな姿に変身させる魔法。
 双葉の頭の上に乗っていたアウラが、椛のところへ帰ってくる。
 意趣返しも完了したところで、必殺の一撃だ。
 椛の周りに風が集まってくる。

「ただのつむじ風じゃないよ。この風には特別な力が篭っているから……アウラの風だから!」
 ――【鎌鼬】。

 三人と、生徒達と、それからアウラと。敵すら巻きこんだ化学反応で、突風が吹いた。
 津波のように押し寄せていった旋風が、ジンジャーブレッドマン化したヒラーガの肉体を粉砕する。
 ある意味本望、ともいえるのだろうか。
 旋風化が解けたガジェットが、その上に降り注ぎ――狂気の発明家は、己が作った発明品の山に埋もれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハーバニー・キーテセラ
面白可笑しな発明は大歓迎ですがぁ、傍迷惑な発明はノーサンキューですよぉ
そんな発明品はぁ、全部纏めてゴミ箱へご案内ですぅ

ということでぇ、巨大兎さんを召喚&合身
このスーパーな兎さんによいしょと乗ってぇ、いざぁ、突撃ぃ~
もふもふだからと油断は大敵ですよぉ
猛スピードからの突進、侮ることなかれぇ
勿論、それだけでなくぅ、動き回るスーパーな兎さんの背中からぁ、私もバンバン撃っていきますからねぇ
発明品や実験器具やゴーレム、片っ端から砕き、穿って、皆さんが駆け抜ける黒幕への道を作り出しますよぉ

機動力が命ですのでぇ、それを削いがれるのは弱点になり得るかもですねぇ
トリモチとかぁ、ネバネバされないように要注意ですよぉ


赤星・緋色
上では十分楽しく遊ばせてもらったよ!
にっしっし(棒)
そうそう、ここまで私の計画通りだしね!
にーっしっしっし(棒)

ふっふー
こんなこともあろうかと、一番の技は今まで見せてないのだ
いくよガジェット🌸ショウターイムッ!

今回ご紹介する商品は
魔導蒸気で網をぶっ飛ばす、ネットランチャー!
技能の範囲攻撃と属性攻撃雷で命中した相手の動きを抑えながら更に痺れさせるよ
雑に本体を狙って適当に連続発射!
本体じゃないのに当たってもいいしね
あ、器具とゴーレムだけ捕まった時は学生さん達は本体攻撃しちゃって
動けないはずだし、それで解除されるから

そうそう、バーチャルキャラの私から一つだけ注意があるよ
セリフに草をはやしちゃダメ!


御剣・誉
うわーなんか変なヤツが出てきた!
これ絶対にお友達だとは思われたくないな

…おっと
なんだこれは?
ガジェットを勝手に弄って遊びだす
これは?これは?これは?
息つく間もなくポチポチと押せるボタンは全部押す
爆発に巻き込まれてもケロリとした顔

はっ!?
こ、これは…!!??!?
何かよくわからない不細工なガジェットにガシッと心を掴まれ
愛おしそうに撫でてみたり
なぁ、オマエ動く?
やっべー、これオレにくれないかな!?
面白そうにガジェットを弄りまわし
爆発したら激怒
怒りを全てヒラーガにぶつける所存
そういえばさっきのクラゲもオマエの仕業じゃん!
あの恨みも忘れてないぜ!
(今思い出した
剣を振るうオレの姿、ちょっとカッコイイかも!



●19
 ここまでの展開を説明しよう。
 他の猟兵の技によって、無力なジンジャーブレッドマンと化したヒラーガは、自らが作ったガジェットの山に埋もれて身動きがとれなくなっていた――。

「うぅ~ん、反応がありませんねぇ。そもそもぉ、この状態でまだ生きてるんでしょうかぁ~?」
 ハーバニー・キーテセラは注意深くその山に近づき、様子を見てみる。クッキー化した身体がこの重量に耐えられるとは考え難く、勝敗は決したかに思えたが。
「倒したかな? ここまで私の計画通りだね! にーっしっしっし(棒)」
 赤星・緋色は仁王立ちをしながらにっしっしと笑った。ヒラーガがジンジャーブレッドマンになるという超展開をも割とあっさり受け入れるグリモア猟兵たち、さすがと言ったところか。
 その一人である御剣・誉もまた、ガジェットの山に近づいてきた。誉は注意深く、銃のようなガジェットを手に取ると――。
「……おっと、なんだこのスイッチ?」
 ぽちっ。
 ハーバニーは誉を二度見した。
 全然注意深くなかった。男子高生は好奇心旺盛なのだ。
 ぱぁんという音とともに、銃の中から鳩型ガジェットと紙吹雪が飛びだす。
『くるっくー』
「おおっすげぇ、これ手品で使えるヤツだ! このプロペラついてるのは?」
 ぽちっ。
「うわっポケット扇風機じゃん! 記念にもらっとこ。これは? あとこれは?」
 ぽちっ。
 ぽちぽちぽちぽち。
「ふふふ~、色々ありますねぇ。兎が飛び出す魔法のシルクハット……なぁんて、ないでしょうかぁ~」
 ハーバニーは営業スマイルを浮かべたまま、すすっと誉から遠ざかった。
「これは? ん?なんか今バチッて音」
 ――ちゅどーん☆
 
「うむ、こうしてアルダワの平和は守られたのであった。これにて一件落着!」
 いよぉ~っ、ポン!
『待て待て待てぇーいwwwにっしっし、技術の変態たる俺様の生命力をなめるなw』
「あ、生きてた。私バーチャルキャラだから知ってるよ、ギャグ補正ってやつだね」
 緋色が時代劇的なオノマトペを繰り出しながら幕を締めに入っていた時、爆発に巻きこまれて焦げたヒラーガが、ガジェットの下から這いだしてきた。どうやら、味方のユーベルコードによるジンジャーブレッドマン化の効果が切れたらしい。
「どもども。上では十分楽しく遊ばせてもらったよ! にっしっし(棒)」
『その笑い……すっかり俺様に魅了されているようじゃの。まぁ仕方あるまい、にっしっしw』
 どう考えてもバカにされているが、技術の変態は相変わらず自信過剰であった。
 そして……。
「うわーなんか変なヤツが出てきた! これ絶対にお友達だとは思われたくないな」
『ちょ、なんでおまいは無事なのじゃww』
 同じ爆発に巻き込まれたはずの誉は、なぜかケロリとしていた。
 いや、さすがにちょっと血が出たり煤を浴びたりはしていたが、ふわっとエアリーなヘアスタイルは保たれたままだし、きれいに顔を避けてかっこよく流血している。
「そっか! 私バーチャルキャラだから知ってるよ、イケメン補正ってやつだね」
 ギャグとイケメンは紙一重。
 緋色の解説を聞いたハーバニーは、もしかして誉もギャグキャラなんだろうかと思ったとか、思わなかったとか。

 ◇ ◇ ◇

「気を取り直してぇ。面白可笑しな発明は大歓迎ですがぁ、傍迷惑な発明はノーサンキューですよぉ。そんな発明品はぁ、全部纏めてゴミ箱へご案内ですぅ」
 ハーバニーが示したガジェットボックスにスポットライトが当たる。ドラムロールが鳴った後、そこから飛びだしてきたのは、3メートルあるスーパーにもっふもふな巨大兎だった。
『おおお!? にっししし……これは面白いw ガジェット化のためにぜひともデータを収集せねばの……ぉ、お、お……!?』
「失礼しまぁす。兎さん、今日もよろしくお願いしますねぇ~」
 巨大兎が返事代わりにぴょこんと跳ねるだけで、地響きとともに部屋が揺れる。
 ヒラーガがふらつく中、ハーバニーは自慢の跳躍力で兎の背にひらりと飛び乗った。もふもふな毛に優しくつつまれて、座り心地も抜群だ。
 これぞ兎と兎の【擬獣合身】。つまるところ、乗っただけなのだが。
「もふもふだからと油断は大敵ですよぉ。いざぁ、突撃ぃ~」
 ハーバニーが敵を指さす。
 乗っただけ、だがそれが強いのだ。
『にっしっし、単純な攻撃は食らわんぞい。ゴーレム共、俺様を守……ぐふっ!?w』
 合体により後ろ足の瞬発力を強化された巨大兎は、ヒラーガが防衛ゴーレムを召喚するよりも速く彼女本体に突進し、派手に吹き飛ばした。
 跳躍からのボディプレスで脆い実験器具たちをつぎつぎに踏み潰し、大暴れするスーパー兎さん。姿ばかりは可愛らしくとも、その動きは野生。
「兎さぁん、それは食べてもおいしくありませんよぉ~」
 前歯でがじがじと齧られ、土の身体を削りとられては、ゴーレム達もたまったものではない。猟兵たちに破壊され、残り少なくなってきたガジェットの影に隠れながら、ヒラーガはなんとか対抗策を探そうとする。
『いっしっし……ならばその機動力を奪ってくれようw』
 新たに放たれた自立行動型フラスコを、ハーバニーの兎はこれまで通りに踏み潰した。しかし、その中に入っていたのは――トリモチ。
「きゃああ~。これは困りましたぁ、兎さんがネバネバですよぉ」
 トリモチから脱出しようと飛び跳ねる兎のまわりを、ゴーレムと実験器具たちが囲んだ。だが、そこに赤いインラインスケートでシャーッと滑りこんできたのは、緋色。
「ふっふー。こんなこともあろうかと、一番の技は今まで見せてないのだ。いくよガジェット🌸ショウターイムッ!」
 緋色もハーバニー同様に、地面に置かれたガジェットボックスを指さした。
「今回ご紹介する商品は、魔導蒸気で網をぶっ飛ばす、ネットランチャー!」
 ぱんぱかぱーんという擬音とともにネットランチャーが飛びだして、くるくる回転しながら緋色の手におさまる。
「どこに隠れたんだろー。あそこかな? それともこっちかな?」
 緋色が雑に連発したネットは、ハーバニーを取り囲むゴーレムと実験器具たちを次々に取り押さえていく。
 ゴーレムたちがもがいてそれを取り払おうとすればするほど網は絡み、さらに電撃が走って身体を痺れさせる。ヒラーガの手下たちが行動不可能に陥っている間に、立ち上がったのはアルダワの学生たちだ。
「ハーバニーさん、今助けます!」
「学生の皆さん……わぁぁ~、有難うございますぅ~」
 ここまで運んできてくれたハーバニーを、今度は自分達が助けようと、白うさ号に乗っていた学生たちが魔法でトリモチを燃やし、取り除こうとする。
 ハーバニーは彼らの真心と勇気にありったけの笑顔を返すと、自らもいったん背中から降り、兎の救出作戦に加わった。
「あ、学生さん達、もうひとつお願いしていいかなー。ヒラーガを見つけたら攻撃しちゃって。動けないはずだし、そうすればゴーレムと実験器具も解除されるはずだから」
「おおっ、そうなんですね。わかりました!」
『ひぃっ!?w』
 緋色の意外に的確な指示を受け、学生たちが隠れているヒラーガを探し始めた。
「こっちかな?」
「いや、あっちじゃない?」
 ずだだだだだだ。
 緋色直伝の(?)雑な射撃があちこちに放たれ、ラボの床に積み重なっているガジェットの山を崩していく。
『な、なんなんじゃあいつは……データがなさすぎて弱点がわからん!』
 雑なようでいて、実は本当に計算づくであるのか……すべては謎である。
 ヒラーガがどうにか緋色の弱点を解明しようと必死になっていた、その時――。

「あっ、こんなところに技術の変態だ!」
『……ギャッ! いっしっし、何じゃおまいかw』
 ぶっちぎりのマイペースさを発揮し、まだおもしろガジェット探しに夢中になっていた誉が、ガジェットの影からひょっこり顔を出した。ヒラーガにとって幸か不幸か、戦闘そっちのけでガジェットの山をごそごそ漁っているが。
「いやー色々あっておもしろいなー。はっ!? こ、これは……!!??!?」
 そして、誉はガジェットの山からあるものを発見する。
 妙にキリッとした顔の、眉毛と目鼻立ちがやたら濃い――豚の貯金箱。
「うわ、何これすっげー!」
 ブサイクなのかハンサムなのかよくわからないそのガジェットにガシッと心を掴まれた誉は、きらきらした瞳でキリッとした豚を見つめる。
 キリッ。
 キリッと誉を見つめ返した(ように見えなくもない)豚を、誉はかわいいなあと撫でた。
『いっしっし、それに目をつけるとは。おまい中々見所があるのw』
「なぁ、こいつ動く?」
『にっしっし。コインを入れてみぃw』
 上機嫌なヒラーガに言われたとおり、誉が持っていた十円玉を入れると、ブサイクな豚はまるで生き物のようにトコトコ走りだした。顔は微妙だが、動くとなかなか愛嬌がある。
 後をついてくる豚をいとおしそうに抱き上げて、誉は頬ずりをする。
「やっべー、こいつオレにくれないかな!? エリンギも遊び相手ができてきっと喜ぶぜ。そうだな、オマエの名前は……カルビだ!」
 誉がカルビを高い高いしながら言った、その直後――。

 ――ちゅどーん!!

「……カルビー!!」
 カルビは――爆発した。
 それが、ヒラーガの発明品としての運命だった。
 突然訪れた悲しい別れに誉は愕然とし、カルビだったものの残骸を抱きかかえながら膝をつく。
『げほっ……』
 そして、ヒラーガが爆発に巻きこまれて負傷したため、緋色に捕まっていたゴーレムと実験器具が消滅した。誉、ラッキーボーイである。
「そこにいたんですねぇ~。はぁ~い、兎さん復活ですぅ~」
『ひぃっ!?』
 ガジェットの山を飛び越え、兎に乗ったハーバニーが上から降ってきた。
 生徒達の救出作業によりトリモチから逃れた兎だが、まだ脚の裏がべとべとしていて不快らしい。
 後ろ足で床をがしがし蹴り、どしんどしんと跳ねながら暴れ、ガジェットの山を片っ端から砕き、ひっくり返してめちゃくちゃに崩していく。機嫌の悪い兎は怖いのだ。
『お、俺様の叡智の山がぁー!?w』
「兎は野山を元気に駆け回るものですからぁ~」
 ハーバニーはのほほんと言い返しながら、太股のホルダーから愛銃ヴォーパルを引き抜く。
 倒れてくる瓦礫から逃げ回るヒラーガを射撃し、隠れる場所のない所まで追いこんだ。
 兎が導くのは黒幕への道。
 ならば、そこを駆け抜けるのは、王子様の役目だ。

「オマエ……よくもカルビを!」
 カルビの敵討ちに燃える誉は、爆発で流れた血を代償に【PRINCE of SWORD】を発動していた。仲間(?)の死を背負った御伽噺の剣は、普段よりもいっそう神聖な輝きを宿している。
 恐れを知らぬ少年が掲げるそれは、まさに勇者の剣だった。
 きらめく刃を手に、誉はヒラーガめがけて一直線に駆ける。
『はぁぁ!? 知らぬわww ちゅうかおまい、俺様の発明品をくすねておいてよくぞ……』
 ヒラーガは、誉が振り回す剣をガジェットの盾でかわおうとするが、ハーバニーと緋色、それに生徒達の援護射撃が四方から飛び身体に穴をあけていく。
 そして、怒りに燃える誉は、今急にあることを思い出した。
「そういえばさっきのクラゲもオマエの仕業じゃん! あの恨みも忘れてないぜ!」
 その勢いを乗せ、誉は全力で剣を突き出した。
 剣が盾にぶつかる。けれどその切っ先はヒラーガの盾を貫き、叩き割って、切れ味するどい剣先を見事に敵の胸へ食いこませる。
 華麗なその剣技は、ただの無邪気な高校生の業とはとても思えない。そこに隠された秘密にはまだ、彼自身すら気づいていないのだけれど。
「さすが誉くん、カッコイイぜ!」
「だろ!?」
 きりっ。
 盛り上がる生徒達へ、誉は例のキリッを返した。
『な、何なんじゃ。あやつもこやつも訳わからん奴すぎて弱点がわからぬぅぅwww』
「私? だってどこにもいないもん、弱点なんかないよー」
 てぺへろ、と星を飛ばしながら緋色はウインクをする。
「閻魔様はなんでもお見通しだそうですからぁ、聞いてみたらいかがですかぁ? それではお客様ぁ、三途の川ツアーに行ってらっしゃいませぇ~。あ、お一人様でぇ」
 ――ドカッ!
 ハーバニーの兎がヒラーガを蹴り飛ばす。死出の旅は、そろそろ最終地点。
「それでは、ここまでの案内は……」
「御剣・誉と!」
「赤星・緋色でした!」
 きりっ。
「あぁ~、私の決め台詞ですよぉ。それでは。ハーバニー・キーテセラでした」

 ◇ ◇ ◇

 そして最後に緋色は、くるっと振り向いて、どこかの誰かに向かって言った。
「そうそう、バーチャルキャラの私から一つだけ注意があるよ。セリフに草をはやしちゃダメ!」
 ――きりっ☆
『おまいはさっきセリフに絵文字入れてたじゃろうがぁぁ!ww』
「えー🌸なんのことかなー🌸」
 ――グリモア猟兵のみんなからのお知らせ。第六猟兵は、とっても自由なゲームです!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
【SPD】
【エイリアンツアーズ】
迷宮の戦闘痕を辿って皆の元へ。
スナさん、お迎えにあがりましたー🐙✨(チャリで来たのノリで乗り付け)
あっ、ユキくんも合流してたんだね!一緒帰ろっ♪

エイツアクルー3人組でGlanzに【騎乗】したら
猛【ダッシュ】でラボを駆け回って翻弄するよ。
【操縦】テクならオレも負けないぞっ☆彡
【地形の利用】を念頭に、FMXの如く操る芝刈りバイク。
唸るワカメと華吹雪。
エイツアの本気を魅せてあげるよ!ひゃっはー✨

Krakeで【援護射撃】をしつつ
射程範囲に入ったらヒラーガちゃんを狙撃。
残念、モルモットじゃなくて🐙でした!
君の眸の色…近くで見たらとても綺麗だね。

※絡み&アドリブ歓迎!


ユキ・スノーバー
【エイリアンツアーズ】
笑い方真似したら喉痛めそうな人だー!言ったからには出口ちゃんと教えてもらうからねっ。
パウルさんとスナッチさんとで連携して頑張るよー!
って囲まれてる?!弱点?まってこの子達火炎放射とかしてくるの…?
適度を通り越した熱さは嫌ーっ!(目が渦巻きとか×印だったり、汗マーク浮かべたりあわわ)
パウルさんのバイクに慌てて乗り込んで隠れんぼして
運転任せちゃう分、ぼくは華吹雪で相殺しちゃうぞー!
スナッチさんのワカメだって、相殺で出来たお水で元気になるもん(多分)
……それにしても凄い沢山あるね(ぽかん)わかめパワーってパワフるんるん?
それにしても、バイクでびゅーん!ってするのきもちいーっ!


スナッチ・ベット
【WIZ】
エイリアンツアーズの2人と

新しいツアー先探し(※バカンス)のはずが
ワカメに絡まって猟兵の皆にスルーされサメに襲われかけて
なんかタコくんもいるし
酷すぎてどこからツッコんだらいいかわからないけど
オブリビオンが♂だったら
「あ、マジもんの変態だ」とわりかしドン引き
ユキくんは(色んな意味で)危ないから僕たちの間に身を隠してね
皆で変態さんをギャフンと言わせよう
そこな学生さん達も、このワカメをお使いなさい
これはね、こう使うんだ
「イヤッハーー!!!」(ガイストと一緒に振り回す)
え、このワカメ変態さんのトラップじゃなかったの?
まあいいや、アルダワの神秘・急流ワカメの瑞々しさに恐怖しろ
僕もこわかったです



●20
 ――『新しいツアー先を探してくる』。
 そう言ったきり、なかなか帰ってこない同僚スナッチ・ベットを心配してやってきた【エイリアンツアーズ】グリモア支部の管理人ことパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は、現場を見て驚愕した。
「何があったんだろ……?」
 迷宮の内部はプールのような施設だと聞いていたが、木々はへし折れ、実験器具は割れ、めちゃくちゃに荒らされて見る影もない。誰もいない部屋の中央には巨大な穴があいており、覗くと下層が見えた。
「はわわわ……大変~っ🐙💦 もしかして、皆この下に落ちちゃったとか?💦💦 こうしちゃいられない……行くよ、Glanz!」
 パウルは相棒の宇宙バイク、Glanzに騎乗すると、思い切って穴の中に飛びこんだのだった。

 ◇ ◇ ◇

『ふぎゃっ!』
 ここまで猟兵達の攻撃を受け続け――大半は自爆による負傷の気もするが――満身創痍のヒラーガは、巨大な兎に蹴飛ばされ、ボールのように床をはずんで転がってきた。
 ちょうどそこに立っていたのは、ユキ・スノーバーと件のスナッチだった。愛用のアイスピックを手にしたユキは、つぶらな瞳をきらきらきらーんと輝かせる。
「あ、笑い方真似したら喉痛めそうな人だー! そろそろ負けーって認めてもいいんじゃない? 言ったからには出口ちゃんと教えてもらうからねっ」
『いっしっしっし……この俺様が負けるわけがなかろうw まだ披露していない発明もあるしのう。にししっw』
「うわっ。まだあるの。ところで……君って男?」
 ちなみに、スナッチの唐突なこの発言だが、以前別の事件でこのオブリビオンと対峙した猟兵が『あいつは男の娘だった』と証言したという都市伝説が原因の可能性がある。名推理。
 果たして真実は――!?
 ヒラーガの性別の謎を追い求め、我々はグリモアベースへ向かった。
 で。
『にっしっし……そいつはご想像にお任せじゃよw』
 グリモア猟兵的に調査結果をお答えすると、そんな公式設定は(多分)ないし確認もしようがないとしか言えないのだが、ヒラーガの答えを聞いたスナッチは♂かもしれないと判定したらしい。
 『あ、技術のっていうか、これマジもんの変態だ』と、ドン引きしていた。
 彼の背景さんが。

 閑話休題。
『気になっとったんじゃが、そこのちっこいのはどういうシステムで動いておるのじゃ? いっしっし、ぜひとも捕まえて解体せねばのう……! にーっしししww』
 ヒラーガがユキにマッドな興味を向ける。すると、新たな妖しい発明品たちが召喚され、二人をぐるりと取り囲んだ。
「たしかに顔はテレビだけどっ、ぼくはガジェットでもないー! しろくまなのー! ……って囲まれてる?!」
「え、もしかしてガチなやつがきちゃった?」
 スナッチは相変わらずの乾いた目で発明品を見た。
 手が火炎放射器と一体化した、ロボット型のガジェット――今まで出てきた珍妙な発明品たちに比べると、かなり実用性が高そうだった。ガチだ。
「まって、この子達……」
 汗マークを浮かべておびえるユキに向け、火炎放射器ロボが反則的なまでに普通の炎を放ってきた。
「わーっ! まってまって、適度を通り越した熱さは嫌ーっ!」
「え、どうしよう普通に強い。このままじゃ命の恩人のユキくんが!」
 なんとか直撃は避けたものの、ユキのもこもこコートに火がついてしまった。パニックで目がぐるぐるになっているユキを、スナッチは(あまりそうは見えないが)必死で助けようとする。
「ユキくん、こんな時こそワカメを使うんだ」
「ええっ。持ってきてたのー?!」
 濡れたワカメでばしばし叩かれるユキ。ピンチなのだが、かなりシュールな光景だった。
 【サモニング・ガイスト】で召喚した古代の戦士が、槍を振るって二人の盾となり戦うも、炎の渦に囲まれた二人は中から脱出する術をなくし、うろたえる。
 まさに絶体絶命。
 こんな時、アイツがいてくれたら――!

「お待たせしました、🐙参上っ!✨」
「パウルさんだっ!?」
『なっ……この期に及んで新手の猟兵じゃと!?』

 【ゴッドスピードライド】で急流を駆け抜け、絶好のタイミングでラボに乱入してきたパウルは、勢いのままGlanzと共に跳ねた。
 炎の渦を飛びこえ、閉じ込められた二人を救出すると、火炎放射器ロボが反応する間も与えず離脱する。
 Glanzで来た! とばかりに握り拳を掲げ、笑ってみせたパウルの姿に、スナッチは驚きの声をあげる。
「タコくん……? え、なんでここに」
「スナさんのお迎えにあがりましたー🐙✨ 遅いから心配してたんだよっ。何があったの?」
「いや……バカンス、じゃなかった、新しいツアー先探しのはずが、ワカメに絡まって猟兵の皆にスルーされサメに襲われかけて……」
「Σ何その壮絶エピソード!? 災難だったんだねぇ……」
 ボス戦に入ってみれば仲間を模したマッチョロボが出てくるわ、敵も味方もジンジャーブレッドマンになるわで、酷すぎてどこからツッコんだらいいのかわからない。スナッチは遠い目をした。
「こわかったよー! ぼく燃えちゃうかと思ったっ」
「あっ、ユキくんも合流してたんだね! よしよし一緒帰ろっ♪」
「危ないから僕たちの間に身を隠してね。皆で変態さんをギャフンと言わせよう」
「はーい!」
 パウルはよいしょよいしょとGlanzによじ登ろうとしているユキを抱え上げ、後ろに置いた。スナッチも一番後ろに騎乗する。ユキはよほど怖かったのか、パウルの上着をつかみ、二人の真ん中に隠れるように埋もれてしまった。
『いっしっし、良い乗り物じゃのw だが3人も乗せて平気かね?』
「大丈夫☆彡 前にやった事あるしっ!」
 エイツアクルー3人組を乗せ、Glanzが再発進する。
 追い詰められているにもかかわらず、ヒラーガは興奮してにたにたと笑っていた。
『にっしっしっし……面白いのう、実に面白いwww おまいらを倒して、そのちっこいのも乗り物も俺様が変態的に改造してやろうw』

 火炎放射器ロボが、逃げるGlanzに向けて炎を噴射してくる。パウルはラボに積み重なったガジェットの残骸を、精密なハンドル捌きと体重移動によって避け、時には強引に弾き飛ばして疾駆した。
「メカの操縦テクならオレも負けないぞっ☆彡」
『おのれ、モルモットがちょろちょろと……だが隅に追いやれば逃げられまいw』
 ヒラーガはロボを操り、パウル達を部屋の角に追いつめようとする。だが、壁などたいした敵ではない。
「大丈夫っ、これもやった事あるから✨ スナさん、ユキくん、しっかり掴まってて!」
『なっ!?』
 Glanzの馬力にまかせて壁を駆けのぼったパウルは、そのまま壁面をつたって進み、包囲から逃れる。けれど、ゆく手には炎の海が広がっていた。
 やけになったヒラーガが無茶苦茶に炎を乱射しているためか。おまけに、火がついたガジェットの残骸があちこちで爆ぜ、ラボは灼熱地獄と化している。
『いっしっし……どうせもう俺様のガジェットちゃんはほとんどスクラップになってしまったしのw うっしっし、発明は爆発じゃあああwww』
「うわやっぱ変態だ」
「このままじゃ🐙焼きになっちゃう💦」
「こんな時にワカメさえ使えれば……!」
 スナッチは熱気ですっかり乾燥してしまった急流ワカメを握りしめ、ぷるぷるする。
「そうだっ! さっきはびっくりして使うの忘れてたけど、ぼくに任せてー! えいえいっ!」
 ユキがアイスピックを振ると、【華吹雪】が吹き荒れ、燃えさかる炎とぶつかった。
 炎にふれた雪は溶け、きよらかな水となり、辺りの空気を冷やすとともに火炎を相殺して水蒸気となる。水を得た魚、ならぬワカメは息を吹き返し、みるみるうちに広がってきた。
「そこな学生さん達。このワカメをお使いなさい」
「お、俺達が、このワカメを……!?」
 Glanzに乗ったまま消火活動を行いながら、スナッチは爆発から逃げ回っている学生たちに冷凍されたワカメを投げ渡す。
「……凄い沢山あるね」
 社員用ユニフォームのポケットからどんどんワカメが出てくるのを見て、ユキはどういう仕組みなんだろうと目をハテナマークにする。ワカメを配布された生徒達が戸惑っているのを見たスナッチは、ガイストにもワカメを投げ渡した。
「これはね、こう使うんだ……イヤッハーー!!!」
 スナッチは、鞭のようにワカメを振り回し、火炎放射器ロボへ突進した。

『うっしっし。何かと思えば、俺様のガジェットちゃんにそんな攻撃が通用するわけが……』
 ヒラーガは知らない。この急流ワカメが、どれほど恐ろしい代物であるかを。
 それは、まさに自然の脅威。
 地球のワカメとは一線を画した耐久力を誇り、ひとたび絡まったものを捕らえて離さず、ゆっくりゆっくり血を吸いとっていくとんでもなく怖い海藻(?)だったのだ――!
 まさかそこまでピンチだったとは知らず、ノリノリでワカメを振り回しているスナッチは、ゴッドスピードライドの勢いを乗せ、ワカメをロボへびたーんと叩きつけた。
 元気なワカメの攻撃力に負けた火炎放射器ロボが仰向けにすっ転ぶ。
『そ……そんなバカなwwwww なんなんじゃそのワカメはぁ!』
「え、このワカメ変態さんのトラップじゃなかったの? まあいいや、アルダワの神秘・急流ワカメの瑞々しさに恐怖しろ。ついでに突き指の恨みもくらえー!」
 実は、ワカメを振り回している今も、地味にすごく指が痛い。
 僕もこわかったです――楽しいバカンスを台無しにされ、ひどい目に遭ったスナッチの恨みがガイストに宿った。
 その時、ガイストの手にしたワカメが、怨念の蒼い炎を纏うゴーストワカメへと進化を遂げ、更なる破壊力を得た。今が攻め時だと、パウルもKrakeを装着した触手をひろげる。
「いっけー芝刈りバイク! エイツアの本気を魅せてあげるよ! ひゃっはー✨」
 ――ワカメとタコと華吹雪が、アルダワの地に呻る。

 ユキの吹かせる猛吹雪が放たれた炎を打ち消し、火炎放射器ロボたちの足元を凍りつかせた。
 動けないロボにパウルが弾丸を撃ちこみ、耐久が脆くなったところでゴーストワカメの一撃が火炎放射器を本体から切り落とす。
「ワカメってこう使うんだ……えーいっ!」
 更に、飛んできたガジェットの破片を学生たちがワカメで打ち返し、ヒラーガ本体へぶつけていく。
『いてっ! いてててて……こ、こら、やめんかモルモット共www』
「残念、モルモットじゃなくて🐙でした!」
「だからぼくはしろくまー!」
「あ、狐です。コンコン」
 三人は息ぴったりにそう返す。
「それにしても、バイクでびゅーん! ってするのきもちいーっ!」
「でしょー!? 嬉しいな、今度はお外で乗せてあげるねっ✨✨」
 すっかり涼しくなった部屋の空気を全身で感じながら、ユキはにっこり。
 相棒をほめられてにっこり笑顔のパウルを後ろから眺め、スナッチもうんうんと頷いた。
 クルー達を乗せ、ちいさな宇宙船となったGlanzの旅も、じきに終点らしい。
 ほっとしたような、すこし残念なような、ふしぎな気分だ。
 もうあんな目に遭うのは二度とごめんだが、ある意味ここでしか出来ない体験ができた……ような、気もする。

「よくもユキくんをいじめたな、変態!!」
「ワカメをくらえー!」
『痛い痛い痛いwwwwww だからなんなんじゃそのワカメは!?』
「うーん、わかめパワーってパワフるんるん? ……わっ!」
 ユキに助けられた生徒達にワカメでばしばし袋叩きにされ、悶え転がっているヒラーガを見ながら、ユキはきょとんとする。パウルがKrakeの照準をヒラーガへ合わせたのを見て、スナッチはそっとユキに目隠しをした。
「ところで、君の眸の色……近くで見たらとても綺麗だね」
『ひぇっ?!』
 パウルがそう言ってにっこり微笑んだ瞬間――ヒラーガの胸の中で、ときめきがちゅどーんした。
『お、俺様、そんなこと言われたの初めてじゃw』
 まだ男の娘説を疑っているスナッチは乾いた目をしている。
「可愛い子がそんなに草を生やしたらダメだよ✨ オレが刈り取ってあげるっ!」
 ばきゅーん☆彡
 恋の弾丸がヒラーガを撃ち抜いた。物理的に。
 そのままGlanzにはねられたヒラーガは、ワカメで縛られた火炎放射器ロボたちに激突する。
 衝撃でロボたちが連鎖爆発を起こし、技術の変態は黒焦げになって、倒れた。
『い、いっしっしっ……俺様が倒れてもアストネージュ・トーマスライト・ヒラーガは不滅よw これでも……くら、え……』
 ヒラーガが、取りだしたリモコンのスイッチをぽちっと押す。
 すると、部屋の奥に新しい道が開いたと同時に――ラボが地震のようにぐらぐらと揺れはじめた。
 ユキはバイクから落ちないように、パウルの背へしがみつく。
「わ、わーっ。揺れてる揺れてる! なにしたの!?」
『にっしっし……これは最終秘密兵器、緊急脱出用ボタンじゃ。このラボは約三分後に爆発するぞw』
「え。やっぱり今回そういうオチなんだ?」
「はわわわわ……みんな、逃げろーっ💦💦」

 ◇ ◇ ◇

 猟兵たちと生徒たちは全速力で階段を駆け上がり、地上を目指す。
 やがて、遠くで凄い爆発音が聞こえた。
 エイリアンツアーズのプランで三途の川ツアーへ出発したヒラーガは、骸の海へ流れ着くだろう。
 衝撃で崩れゆく道を走って、走って、走って――土埃まみれになりながら、どうにか最初の部屋へ戻ってきた猟兵たちは、そこにまた水が湧きはじめているのを目にした。
 ヒラーガに魔改造されてしまったこの迷宮だが、いずれ元の姿を取り戻すのかもしれない。
 とはいえ、今回の事件で、学生たちも相当懲りたらしい。
「……汗、流してく?」
 誰かがそう問い、みな苦笑しながら首をふる。場はどこか朗らかな笑いにつつまれていた。

 罠と迷宮とオブリビオンと。
 ふしぎな化学反応で生まれた、ちょっと迷惑な想い出と、確かな成長を胸に抱いて。
 『転校生』も、生徒たちも――いまは共に、学園に帰還するとしようか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月17日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蒼汁之人・ごにゃーぽさんです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト