エリエスデール 歌い継ぐ花
咲き誇るその色を教えておくれ
エリエスデール 愛すべき花
風と遊ぶその香を教えておくれ
エリエスデール 追い続ける花
根下ろすその地を教えておくれ――
とある森の裾野にある、小さな村の酒場。流れの吟遊詩人が曲を歌い上げ、リュートを下ろしにこやかに微笑めば、仕事終わりの男たちがめいめいに喝采を上げた。手招きで呼ばれた卓に詩人が足を運び、進められるがままに杯を煽れば、改めて歌への称賛が贈られる。
「いやー良い歌だったなぁ!しかし、よっぽどきれいなんだろうなぁその…えり、える…なんだっけ?」
「エリエスデール…私の一族が旅をしながら、ずっと歌い継いできた花ですよ。」
吟遊詩人――オズワルド・ワーズワースは、遡れないほど昔から吟遊詩人の家系だったらしい。皆生涯を旅人として生き、そしてまたエリエスデールという花を歌い継いできたそうだ。しかしこの花、その在り方も伝え方も些か変わっており、当代ごとに樹木だったり野原だったり、白かったり赤かったり、てんでバラバラな咲き方をする上に、どこにあるかは己の足で見つけるべし、と場所も秘匿されている。伝えられるのは唯、その花の美しさのみ――というのだ。
「従って私が今歌えるのは、先代たちの花歌か、先ほどの空白の歌だけ。なので方々で探してはいるのですが、私はとんと運が無いようで…。三十を超えて未だ見つけられず、今では半ば商人の様な生き様でして。」
しょぼん、と目に見えて肩を落とし、オズワルドが手慰みにリュートをポロロンとならせば、ジョッキを空にした巨躯の男がそういえば、と切り出した。
「この森の奥の方に、今時期えらくキレーな花が咲いてるって話は聞いたことがあるがなぁ…。他ではお目にかかったことがないような。」
「ほ、本当ですか!!?」
ガタッ、と椅子を蹴倒す勢いで立ち上がり、前のめりになるオズワルド。
「それはその、どのあたりなんでしょうか?近いですか…!?」
「それがよぉ、実は俺らも困ってんだ。そろそろ雪も解けたから、その場所近くの木を採りに行こうとしたら、隣村の奴らからやめとけって言われてな。それが何でも、
――ちっこい妖精と、何でも喰っちまう妙な天使が居ついちまったらしいんだと。」
●歌い継がれるその先に
「《アックス&ウィザーズで、オブリビオンの活動を予知いたしました。》」
グリモアベースの一角、幾人か集まった猟兵たちを前に、セラフィム・ヴェリヨン(Trisagion・f12222)が硬質な電子音声で予知の内容を告げていく。
「《目指す場所はとある地方の森…と呼ぶには些か広い場所ですわね。何方かと言えば樹々の多い草原、のような印象です。見晴らしも足場もさほど悪くないので、戦うには易い場所でしょう。そこに花と星を繰る妖精と、翼の生えた人型のオブリビオンが巣食っているようです。これを撃破していただくのが今回の依頼内容ですわ。》」
本来はそういう、単純な討伐の依頼だったのですが…と、いったところで音声を途切れさせ、セラフィムが再度メモを書き綴った。
「《実は今回、馬車に乗った一般人の同行者がおりますの。なんでも、森の先にある幻の花を見に行きたいという、詩人の方らしく。》」
討伐後ではだめなのか、と再三村人たちが諭したそうだが、何が何でも今すぐ行くと聞かないらしく、妥協案として護衛を手配することとなり、そこに猟兵を派遣する手はずとなったのだ。
「《すでに共をする旨を承諾しておりますので、同伴は問題ないでしょう。ただ一般人ですので、オブリビオンと相対した時には配慮をお願いいたします。特に奥に控えた翼持つもの――暴食のフィーラとは。》」
同族さえも喰らったと言う逸話を持つフィーラはとかく何でも食べるが、やはり美味しそうなものには目がないらしい。馬車の積荷の食料や、馨しいエリエスデールの花と実は、彼女にとってはとても魅力的だろう。そのあたりはひとつ、戦闘にも工夫が欲しい所。
「《ちなみに馬車に積まれているのは、幻の花――エリエスデールを愛でながらのお茶会。そのための食材だそうで。》」
詩人として旅をしながら、様々なものも売り歩いてもいるらしく、今回は馬車に積んだ簡易の石窯を使って、焼き立てのパンをご馳走してくれるそうだ。バケット、黒パン、デニッシュなどはもちろん、特に草花の噂を追い求めただけあって、ハーブを一緒に焼きこんだパンは格別のおいしさ。加えて一つ前の村ではちょうど乳製品が名産だったようで、チーズやバターも豊富に用意されている。バジルを焼きこんだバケットに、とろり溶けたラクレットをたっぷり乗せて頬張ったり、いちじくとクルミの黒パンに蜂蜜バターを乗せるのもおすすめだ。さらに今回は花茶――湯を注ぐと花開く、特別な茶葉も用意があるそうだ。そこへ砂糖漬けの花々を合わせれば、たちまちカップの内は花畑になるだろう。
「《幻の花を愛でながらのお茶会――労働の後にはぴったりですわね。どうぞ恙なく成功させて楽しまれますよう、微力ながら祈っております。》」
スカートを抓んでお辞儀をしながら、セラフィムがグリモアを呼び寄せた。
吾妻くるる
こんにちは、吾妻くるるです。
今回は剣と魔法の世界で
幻の花を追う話をお届けします。
●基本説明
構成:戦闘&エリエスデールの噂話+ボス戦&馬車と花の防衛+花を愛でるお茶会
戦闘:判定【普通】
●エリエスデールについて
エリエスデールは幻の花…つまり皆様のプレイング次第でどんな姿かが決まります!
ですので、1章では戦闘に加えて【エリエスデールはどんな花か】をお書き下さい。但しあくまで幻の花なので、「見たことがある!」「自分は知ってる!」といった確定的なものでは無く、「風の噂で聞いた」「こんな風だったら」という噂話や想像の体でお願いします。
情報は【美しい花が咲く】【良い香りがする】【食べられる実がなる】以上3点。
おひとり様につき特徴は【1つ】まで。面白い特徴も歓迎です。生物や環境に大きなマイナス影響があるもの以外、出来る限り採用します。
×「樹に白い花が咲いて、赤い実がなるらしい!」→どれか1つのみ採用
×「有毒な実で食べると死んでしまう。」→不採用or除去可能に改変
○「綺麗な水辺にしか咲かない。」→OK
なお条件が被った場合は、以下のように派生する予定です。
例:「赤い花だと聞いた」「青い花びらが美しい」
→「つぼみは赤く、開くごとに紫から青へと変化する」
●第1章は「花と星の妖精戦」
数は多いですが、個体の強さはそれほどではありません。猟兵であれば十分に倒せます。囲まれないように留意すれば、詩人との会話や花についての話に文字数を振っても大丈夫です。
●第2章は「『暴食』のフィーラ戦」
ボス&馬車と花の防衛戦。ここでは【オズワルドの大怪我及び死亡】【エリエスデールの消失】が依頼の失敗と直結しています。フィーラはそのままだとエリエスデールか、馬車の積荷ごとオズワルドを食べようとします。ただ殴りかかるだけではそれらを食べて回復しようとするため、まずは彼女の興味を引く対応が必要となります。食べ物で釣る、コードや技能、言葉での誘引、何でも構いません。オズワルドと花に被害が及ばないよう立ち回ってください。
●第3章は「エリエスデールの花茶会」
焼き立てのハーブパンと砂糖漬けの花、バターやチーズ、花茶がふるまわれます。エリエスデールを愛でながら、のんびりとお過ごしください。こちらのみ、お声掛けあればセラフィム(f12222)が顔を出します。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『花と星の妖精』
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POW : 花を操る
自身が装備する【色とりどりの花】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD : 森の恵み
【食べると幻覚が見えるキノコ】【硬く巨大なきのみ】【どっしりと実った果実】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 星詠み
【占い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【様々な結果】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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オズワルドと合流し、村を出てから数刻のこと。天気は晴れやかで、道も険しくなく、木漏れ日の中をのんびりと歩いていれば気分はちょっとしたピクニックのようだ。
「いや、申し訳ありません。無理を言ったことは承知なのですが、どうしても先延ばしにしたくなくて。」
同行する猟兵達へ謝りながら馬車の手綱を握るのは、予知で言われていた詩人――オズワルドだ。慣れた手つきで馬に樹々や岩を避けさせつつも、やはり噂に聞いたオブリビオンは気になるのか、時折周囲を確認する様子が見て取れる。それでも恐れたような様子は顔に出さず、話しかけられればにこやかに、時にはおどけながらも応えて見せる。おかげで、道行は和やかな雰囲気に包まれていた。
そうしてしばらく森を進んでいけば、唐突に。空からふわりと――花が、ふってきた。
『来たよ 来たよ ニンゲンだ』
『来たね 来たね ニンゲンだ』
『このさきの 花につられて きたのかな?』
『ボクたちの 星にさそわれ きたのかな?』
『なんにしたって』
『なんであっても』
『この先には いけないよ』
『もう先には いけないよ』
『『――みんなみんな ここでおわり だよ――』』
くすくす、ふわふわ
――馬車の道行きを塞ぐように、花と星をまとう妖精たちがあらわれた。
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プレイングの受付は【3/16 8:30以降】より開始いたします。
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グァーネッツォ・リトゥルスムィス
死ぬ程危ないってわかってても、夢は掴み取りたい物だよな
無謀と分かりつつも覚悟して突き進むオズワルドを放って置けないぜ
オレ達が必ずお前の命を守り通してやるぜ!
商竜印の竜騎士装備を攻撃力重視で発動させ、
妖精が花を念力で動かす前にダッシュで駆けこんで
なぎ払いつつ吹き飛ばして少しでも妖精の数を減らす、
生き残ってもオズワルドと馬車との距離を離しておきたいぜ
花を飛ばしてきても馬車や森に被害を与えない様に
竜の力を宿した装備から炎と雷を組み合わせた火花で迎撃するぜ
延焼しない様に氷の冷気で消火も忘れずに
にしても幻の花か、歌い継いで追い続ける程なんだ、
『どんな闇夜でも淡く光って道標になってくれる』かもしれないな
天翳・緋雨
【アドリブ・他猟兵との連携歓迎です】
・緋雨の心境
今回が猟兵としての初仕事。危険な妖精だね。気負わずに、傷を負わない様に立ち回っていく。
・花の伝承
夜に煌めく様な花を咲かせる。そんな花なら素敵だな。
・対『花と星の妖精』
ユーベルコード【陽炎】による短距離転移を軸に囲まれない様に注意して各個撃破を狙う。見切り・残像・パフォーマンス・ジャンプ・空中戦などを駆使して舞うように、そして立体的に立ち回る。
攻撃はサイコキャノンから発現したサイキックの刃で。短距離転移で回避した直後や立体機動でこちらを見失った瞬間を狙い澄まして。
※他の猟兵と連携を取れるなら回避重視で幻惑しつつアタッカーを活かす動きをしたい。
――くすくす。きゃはは。
いっそう楽し気な笑い声と共に、くるり、ふわりと舞う妖精たち。花を撒き、星を煌めかせ、空を泳ぐ姿は、ただそれだけならば絵本の一ページの様な可愛らしさだ。しかし、彼らはオブリビオン。そしてすでに猟兵達へ、そしてオズワルドへ向けて確かにこういったのだ。
――みんな、ここでおわりだ、と。
「危険な妖精だね。」
馬車を守るように背にして、天翳・緋雨(f12072)が一歩前へと歩み出る。妖精の見た目に惑わされないよう、言葉にして認識を改めながら。彼にとっては今回が猟兵としての初仕事。気負わずに、傷を負わない様に立ち回っていかなければ。――そう頭ではわかっていても、いざ敵を前にすると知らず知らずのうちに手に力が入ってしまう。その様子を察したのだろうか、緋雨の腰を軽くパンッ、と叩きながらグァーネッツォ・リトゥルスムィス(f05124)が横に並び立った。
「ダイジョーブ!皆でかかればこれくらい、敵じゃないぜ。」
大らかに堂々と。真っ直ぐな言葉を投げかけながら、グァーネッツォが明るく笑う。
「にしても幻の花、か。歌い継いで追い続ける程なんだ。『どんな闇夜でも淡く光って道標になってくれる』かもしれないな。お前はどう思う?」
「…奇遇だね、ボクも夜に煌めく様な花を咲かせる。そんな花なら素敵だなって思ってたんだ。」
妖精たちの動きをけん制しながらも、そんな他愛無い会話を交わせば、徐々に場に慣れて視界が広がっていく感覚が持てた。――大丈夫、これならやれる。
「すみません、私が無理を押したばかりに…。皆様に不利を敷いて――」
「でも、死ぬ程危ないってわかってても、掴み取りたい夢なんだろ。」
肩を落とすオズワルドの言葉尻を、グァーネッツォがさらう。無謀と分かりつつも覚悟をもって突き進むというのなら、それを放っては置けない。ならば――
「心配すんな、オレ達が必ず、お前の命を守り通してやるぜ!」
全ての不安を吹き飛ばすような高らかな宣誓と共に、眼前の敵へと駆け抜けていく。その姿を目に、緋雨も道行を後押しするように臨戦態勢へと入った。
『なあに アナタ 遊んでくれるの?』
『なんだ キミが 遊んでくれるの?』
走り寄る姿に舞うのをやめて、妖精たちが周囲に花を呼び寄せ始める。赤、青、黄――色とりどりのそれらはまるで刃の鋭さで、小さな指の振るうままに疾く飛ぼうとする。しかし。
「これめちゃくちゃ高いけど、その分性能は折り紙つきだぜ!」
その叫びと共に、駆けるグァーネッツォの身を瞬時に覆うのは炎渦巻く手袋、氷を刻むマフラー、そして雷迸る履物。その全てに商竜の加護を宿したフルセットだ。(※レンタル契約中) 攻撃力に加護を割り当て全力でなぎ払えば、花諸共に妖精たちが吹き飛んでいく。その凄まじい勢いに飲まれて数体がそのまま消し飛んでいくが、未だ残る敵数は多い。攻撃を免れた妖精たちは勢いに恐れをなし、御しやすいと思ったのかオズワルドの馬車へと視線を向ける。更には花でダメなら、とでもいうつもりか。今度はきのこや木の実、果実が現れ、狙いを定める。――しかしその動きは既に、数舜前から読まれていた。
「サード・アイ起動…。予測演算開始…!」
詠唱と共に緋雨の額に開かれる第三の瞳。展開するのは目にも止まらぬ速さの短距離転移。力を込めた足にレガリアシューズが応えれば颯と飛び、大気に残像を刻みながら空を舞う。前後左右に留まらない、上下も加えた立体的な動きで、呼び出された端から森の実りを砕き、更には召喚主の妖精までもサイキックの刃で掻き消していく。
グァーネッツォの力迸る全力攻撃、緋雨の針に糸通す立体的な間隙。
上げた攻撃力の儘に大多数を減らし、取り零しを後方から絡めとる。
この連携を前には妖精たちも馬車へミリとも近づけず、いたずらにその数を減らしていくばかりだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
終夜・嵐吾
綾華君(f01194)と
エリエスデールの花じゃって
わしはそれみたことないから楽しみ
綾華君はどんな花じゃと思う?
わしはのー……虹の下で咲く、とか?
まぁそれはロマンチックじゃなーと思う雰囲気で。滝の近くとかでな、常に水の落ちる場所の近くに咲いとったりせんかなーと
何にせよ、楽しみじゃ。詩人殿も、そうなんじゃろ?
しかし、その前に
あの妖精らは放っておいてはだめじゃな
では、背中は任せたんよ、綾華君……うん、綾華君と呼ぶのも、なんぞ他人行儀のようよな。茶会の頃までに愛称を考えておこうかの!
戦闘は手数増やすべく狐火で
ちょっと燃やしてぴゃっと去ってくれれば幸いじゃが引いてくれんのなら最後まで相手しよう
浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と
俺もみたことない、どんな花なんだろうな
おー成程ネ。確かにそりゃ綺麗
じゃあ俺はその虹を映しとるような虹色をしてる
なんて予想しとこ。だって幻の花なんでしょ
そこらにあるような色じゃつまんねーじゃん?
そうっすネ。見た目は可愛くても
悪さすんならお仕置きしてやんないと
はぁい、任されました
よろしくお願いしますと信頼を寄せつつ
あんたの背中もちゃんと守んネと微笑い
愛称?俺は呼ぶのは専ら名前なんだケド
呼ばれんのは嬉しいんで楽しみにしときマス
は、やっぱ考えることは同じ?
すっかり馴染んできたな、この連携
攻撃を避けるというよりは相殺
或いはカウンターを狙って、鬼火を
嗚呼、俺らで燃やし尽くしてやろ
「エリエスデールの花じゃって。わしはそれみたことないから楽しみ。綾華君はどんな花じゃと思う?」
「俺もみたことないから、わかんないネ。でも楽しみなのはそうかも。」
終夜・嵐吾(灰青・f05366)の軽快な問いに、首をかしげながらも浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)が応える。嵐吾さんはどう思う?と問い返せば、暫し悩んだのちに。
「わしはのー……虹の下で咲く、とか?」
紡がれるのはロマンチックな言の葉の綾。それはそれとして、滝の近くや、常に水の落ちる場所の近くに咲いていたならば、それは虹の下と表するにふさわしいだろう。
「おー成程ネ。確かにそりゃ綺麗。じゃあ俺はその虹を映しとるような虹色をしてる
なんて予想しとこ。」
なんせ幻の花と言われる花なのだ。そこらにあるような色ではつまらない。とびきり珍しく、そして美しくあってほしい、そう思うのも人情だろう。
「それも良いのう!何にせよ、見るのが楽しみじゃ。詩人殿も、そうなんじゃろ?」
「ええもちろん。なんせこんな無謀を働くほどですから。」
冗談交じり、苦笑交じり。しかし追い続けた花に込めた想いだけは、間違いなくありったけのものであると。取り囲む妖精たちを目の端に、笑いそうになる足を誤魔化しながらも応えるオズワルド。
「そうじゃの、無謀の一端…あの妖精らは放っておいてはだめじゃな。」
「そうっすネ。見た目は可愛くても、悪さすんならお仕置きしてやんないと。」
頷き一つで手の内に、嵐吾が招くは燃ゆる狐火。ぽ、ぽ、ぽ、と群れる相手の数に合わせ炎を増やせば、やっぱ考えることは同じ?と、綾華もユーベルコードを呼び起こす。招かれるは同じく火――しかしこちらは緋色の鬼火。
狐と鬼。
交じり合わずも隣り合い、すっかり馴染んできた連携を感じながら、どちらともなく互いに背を向け合う。
「では、背中は任せたんよ、綾華君。」
「はぁい、任されました。」
あんたの背中もちゃんと守んネ、と。寄せた信頼を示すように微笑んで返した――のだが。耳に届いたはずの嵐吾は、なぜか悩まし気な表情を浮かべていた。
「……うん、綾華君と呼ぶのも、なんぞ他人行儀のようよな。」
すでに数度背中を預けた仲。せっかくならば何か特別な呼び名が欲しいような、と。眉根を寄せた原因はそのことのようで。茶会の頃までに愛称を考えておこうかの!と一転笑えば、なんだ、と綾華もつられて笑う。
「愛称?俺は呼ぶのは専ら名前なんだケド。」
けれど、呼ばれるというなら嬉しいもの。じゃあ楽しみにしときマス、と返したならば、改めてふたりが狐火を、鬼火を手繰る。
『火 火 それは キライよ』
『炎 炎 それは ダメだよ』
『『 だから ミンナ 消しちゃおう 消しちゃおう ――』』
星を占い妖精が、呼ぶは雨雲、水の精。火を消さんとするその様子に、怯えはあっても退散するような様子はなく。――ならば。
炎を恐れて去れば幸い、されど引かねば最後まで。
――嗚呼、俺らで燃やし尽くしてやろ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
微笑本・ウサ氏
小生、考査せり
花が見つかりに難いのは咲くのが夜故でなかろうか
花を摘み取る者は暗くなる前に帰る故に
( '-' )г📱
スマホで情報収集いとおかし
デールは谷、エリエスは別の国(世界)で髪の毛が蛇の復讐の女神たち
1輪ではなく群衆で咲くか蛇が居る所か蛇の様な葉か花弁であろうか?
拙者の様な童に護られるのは疑問であろがオズ氏は馬車に居るでござるよ?
草タイプの毒対策に口元をPM2.5マスクで覆う
回避活動
野生の勘見切り残像カウンター串刺し
キノコをもった奴が相手ならバトキャラを使わざるを得ない !
アクライザー
→←↙↓↘→+Pコマンド入力×3
オレンジ道着の男
赤い鉢巻の小娘
👺の仮面
範囲攻撃
親子お覇ロー波
「小生、考査せり。」
6歳児、微笑本・ウサ氏(the freedom~歩く悪巫山戯~・f01154)は考える。
「花が見つかりに難いのは咲くのが夜故でなかろうか。花を摘み取る者は暗くなる前に帰る故に。」
なるほど、一理ある。更に情報を得るべく
( '-' )г📱 スチャッ
と、取り出したるは小型電子機器。
「スマホで情報収集いとおかし。」
この世界ではとんと見かけない検索技術により、画面上にはいくつかの有力(?)情報がヒットした。
《デールは谷、エリエスは別の国(世界)で髪の毛が蛇の復讐の女神たち》
「1輪ではなく群衆で咲くか蛇が居る所か蛇の様な葉か花弁であろうか?」
そんな考察を呟きながら、何某かの板に滔々と話しかける少年――実際には細部が違えど、オズワルドにはそうとしか見えず、思わず身を乗り出して大丈夫かと問いかけた所で。
「拙者の様な童に護られるのは疑問であろがオズ氏は馬車に居るでござるよ?」
委細承知、皆まで言うなとばかりにウサ氏が制止を掛けた。違う、そうじゃない。
『あなたも ここで あそびましょ』
『ボクらと もりで あそびましょ』
そしていつの間にか間合いを詰めていた妖精が呼んだキノコを前に、カッと目を見開く。
「キノコをもった奴が相手ならバトキャラを使わざるを得ない !」
謎の理論。しかし信じて行動すれば結果が伴うのもそれはそれでまた事実。お得意の武器、(神☆マリア転生アクマでも見てるライザー略して)アクライザーを構え、神仏魔英ゲームのキャラを次々と召喚。更に目にも止まらぬ速さで叩き込まれる→←↙↓↘→+P コマンド入力×3!
1入力目でオレンジ道着の男の豪快な拳が決まり
2入力目に赤い鉢巻の小娘が石板をも砕く一蹴を見せ
3入力目は👺の仮面が不思議な妖術を解き放ち
――K.O!
相対した妖精たちは憐れ、骸の海へと還っていった。
成功
🔵🔵🔴
アンバー・バルヴェニー
【氷雫森・レインさんと同行】
【WIZ】
あら、貴女の翅音はまるで水の波紋のようね、妖精(レイン)さん。
よろしければ詩人さんと一緒にお話相手になってくださらない?
わたくし、幻の花や未知のものに大変興味がありますの。
エリエスデールかどうかは解らないのですけれど。
わたくしも幻の花と呼ばれる花の噂は知っていてよ。
なんでも嗅いだ人にとって一番癒される香りがする花だとか。
レインさんも何かご存知?
あらあら、悪戯好きな妖精さん達がいらしたわね。
困ったこと。
詩人さんと【手をつなぎ】、手を引いて【見切り】で囲まれないように気をつけつつ立ち回りますわ。
傷ついた方がいたら【シンフォニック・キュア】で癒しますわね。
氷雫森・レイン
アンバー(f01030)と
終わり?それなら私が教えてあげるわ
全ての命を終わらせる冬ってやつをね
手首の祈雨から光の弓を展開して氷雨を発動
「安心なさい、2度と春も目覚めも来ないから」
戦闘は程々に
私あのケットシーの子がどうしても気になるの
同種ではなくとも妖精の仲間って聞くものね
「あの、初めまして。私はレイン。貴女はケットシー…よね?」
お話してみたいわ
ちょっと緊張する
仲良くなれるかしら…?
ああ詩人にはちょっと怒ってるのよ
危ないって言われて何で来るの
お説教でもしようかしら
(※男には若干厳しいというか当たりが強いタイプ)
エリエスデール…金色の蜜があるんじゃなかった?
取り囲んでいた妖精の一陣を切り抜け、改めて歩を進める馬車一行。日はそろそろ真上に登ろうかという頃合いだが、目星での距離は今でようやく半分というところ。村人に印してもらった地図を片手にオズワルドが方向を見定める中、護衛の1人である氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は、どことなくそわそわとしていた。ちらりと覗き見るような視線の先には、柔らかな毛並みをしたケットシーの少女の姿がうかがえる。
――私、あのケットシーの子がどうしても気になるの
――同種ではなくとも妖精の仲間って聞くものね
知識では知っていても、出会うとなればまた違うもの。気になるのならば声を、とタイミングをうかがっていたら――
「あら、貴女の翅音はまるで水の波紋のようね、妖精さん。」
踏ん切りをつけるより早く、蜻蛉の如き薄翅の搏きを見つめながら、アンバー・バルヴェニー(歌う琥珀嬢・f01030)が、ころころと歌うように声をかけた。
「あの、ありがとう…それと初めまして。私はレイン。貴女はケットシー…よね?」
「ええそうよ、初めまして。わたくしはアンバー。よろしくね。」
そう言って微笑む姿は、太陽の様な瞳の色によく似ていて。レインの瞳にとてもまぶしく映った。
「そうだ、よろしければ詩人さんと一緒に、お話相手になってくださらない?」
にこりと問われれば、跳ねる鼓動を押し隠すように頷いて。
「いいわ。私、詩人にはちょっと言いたいことがあるの。」
きりり、と顔を引き締め、詩人の居る馬車前へと連れ立っていった。
「危ないって言われて何で来るの…!」
邂逅一閃、レインが鼻先でぴしゃりと叱りつければ、オズワルドがお手上げとばかりに苦笑を浮かべ、すみません、と呟く。そんなふたりの様子に微笑みながらもまぁまぁ、とやわらかにアンバーが場を宥めれば、気になっていた話を切り出す。
「わたくし、幻の花や未知のものに大変興味がありますの。」
「なんと、同好の士がいるとは嬉しいですね!未知との出会いは旅の醍醐味ですから。」
「ええ、ええ。ですからわたくしも、幻の花と呼ばれる花の噂は知っていてよ。なんでも嗅いだ人にとって一番癒される香りがする花だとか。レインさんも何かご存知?」
「エリエスデール…かは私もわからないけど。金色の蜜花の話は聞いたわ。」
「どちらも興味深い話ですね…!ぜひともその噂の花が、この先のエリエスデールであってほしいです。」
その言い回しに、ふとレインが気になって訊ねた。
「あらあなた、確信があるのね。この先の花がエリエスデールだって。」
「あ、その…いえ。あくまでそうならいいな、ということですよ。」
今まで朗々と話していたオズワルドがその問いかけには、ふと言葉を濁して視線を逸らす。その様子にますます気になって、質問を重ねようとした瞬間。
『また来た また来た ニンゲンだ』
『まだ来る まだ来る ニンゲンめ』
『『 こんどこそ みぃんな おわりにしよう―― 』』
くすくすと声が響くのは、森奥に未だ控えていた妖精たち。
「あらあら、悪戯好きな妖精さん達がまだいらしたわね。困ったこと。」
穏やかな物言いながら、オズワルドの手を握り、なすべき警戒を成すアンバー。
「終わり?それなら私が教えてあげるわ。全ての命を終わらせる冬ってやつをね。」
手首に光るロザリオから光の弓を展開し構えるレイン。
出会い、名乗り、言葉を交わした2人の少女が
――今、共に戦いの火ぶたを切ろうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
幻の花エリエスデール……なんて素敵なのでしょう。
噂では「風にそよぐと鈴のように繊細で美しい音色を奏でる」と聞きました。
わたくしも是非見てみたいですね。
あの妖精さんたち、見た目はかわいらしいですが、
その言葉には何か不穏で禍々しいものを感じます。
小さくてもやはりオブリビオン、油断はなりません。
オズワルドさんも、皆さんも、必ずお守りします!
敵の攻撃が飛んできたら【奇しき薔薇の聖母】を発動。
仲間たちの身を守るように花びらと茨を展開し、敵の攻撃を弾き飛ばします。
仲間に傷ついた方がいれば、【生まれながらの光】で高速治療を。
※アドリブ、絡み歓迎
「幻の花エリエスデール……なんて素敵なのでしょう。」
長く語り継がれた花の在り様か、それともその幻と言われる儚さに魅せられたか。雪の様に真白の髪に、美しく蒼い花を咲かせたヘルガ・リープフラウ(f03378)が、うっとりと微笑んだ。その言葉が耳に届いたのか、オズワルドが馬車からひょいと顔を出して声をかける。
「そのように評して頂けると、冥利に尽きるというものですね。一族みな喜びましょう。私も早くこの目にしたいものです。」
「私が聞いた噂では、風にそよぐと鈴のように繊細で美しい音色を奏でるそうですわ。わたくしも是非見てみたいですね。」
頷き合い、笑い合い。一見和やかに見える様子も、しかしふとその周囲へと視線を移せば――未だ残る、妖精たちの姿が見て取れた。
『いかせない これ以上 森はボクらのものだもの』
『ひきかえせ これ以上 森はキミらにわたさない』
踏み入ったころに比べれば、うんとその数を減らしたのが流石に気に障るのか。おどけた様子は鳴りを潜め、言葉には明確な棘が混じり、不穏さと禍々しさをにじませる。
どれほど稚くふるまっていても、どれほど可愛らしい見目をしていても。彼らはやはりオブリビオン。油断をすればそれは、命に係わる事態となる。――けれど。
「オズワルドさんも、皆さんも、必ずお守りします!」
そう高らかに告げ、馬車を背にヘルガが凛と前へ踏み出す。
1歩――真白の髪にふわりとヴェールを纏い。
2歩――はらりと花びらを零す薔薇を咲かせ。
3歩――その身を聖母に相応しい姿へと変え。
翳す手より放つ茨が、吐き出す言葉の棘ごと妖精たちをからめとった。
大成功
🔵🔵🔵
フィン・クランケット
幻の花…私も一度はお目に掛かってみたいものですねぇ(ほわ)
ああ、そういえば、旅の途中で似た様な噂を聞いたことがあったような~?
私が聞いたのは、えぇと、そうそう!
【食べた時にハート型の種が入ってたら】すごくラッキー!とか
…何か別のとこで聞いた情報が混じってる気がしないでもないですがっ
ともあれ、お花見つかるといいですねぇ、オズワルドさん(にへ)
その前に、まずは道を通してもらいましょうっ
妖精さんたちには申し訳ありませんが、こっちの妖精さんたちに頑張ってもらって、攻撃です!
オズワルドさんが狙われると困るので、彼から距離を取って敵の妖精さんを陽動しながら攻撃しますねぇ
ほーらほーら、こっちですよぉ~!
「幻の花…私も一度はお目に掛かってみたいものですねぇ。」
花の姿を想像でもしてるのだろうか。ほわん、と夢見心地な笑みでフィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)がつぶやいた。珍しいもの、実をつける花、と目指す花の情報を整理すれば、思い当たる節が一つ。
「ああ、そういえば、旅の途中で似た様な噂を聞いたことがあったような~?」
さてしかし、その出どころはどこだったか。勇者の伝説を追って駆けつけた露店か、はたまたもふもふを追いかけて駆け下りた地下迷宮だったか。そもそも内容は…?
暫く悩んだ後にぴこん!とアホ毛を立たせて、そうそう、と語りだしたのは。
「食べた時にハート型の種が入ってたらすごくラッキー!とか。」
ふむ、なんだかフォーチュンクッキーや袋菓子のオマケ話に似ているような気もするが、それは置いておくとして。聞き役のオズワルドもそれは面白そうですねぇ、とうんうん頷いている。
「ともあれ、お花見つかるといいですねぇ、オズワルドさん。」
安心させるべくか、この先の成功を願ってか。詩人へ、にへ、とやわい笑みを向けてから、フィンが前へと足を踏み出す。
「その為にも、まずは道を通してもらいましょうっ!」
猟兵たちの活躍により、残る妖精たちの数は3体。それでも囲まれれば馬車はひとたまりもないだろうと、フィンが初めにとる行動は――陽動。
「ほーらほーら、こっちですよぉ~!」
ユーベルコードで呼び出した氷柱を鼻先にけしかけ、馬車から離れる様に走って見せれば、挑発に乗って妖精たちが翻る蜜柑色を追う。
『きえちゃえ きえちゃえ どれも ゼンブ!』
『しんじゃえ しんじゃえ みんな スベテ!』
ふり絞る様なささやきと共に招かれる占いの結果は、石礫。数を持ってうち砕こうというのか、しかし。
「さぁ、妖精は妖精でも、こっちは私の味方ですよ。――お願いしますね!」
相対して招かれる氷柱は、妖精と礫の数よりも遥かに多く――。
――蒼天を埋め尽くすように、キラキラと煌めいていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『暴食』のフィーラ』
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POW : あらぁ〜、食べて良いんですかぁ〜?やったー!
自身の【何かを食べたい欲望】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : わたし〜、おなかが空きましたぁ〜
自身の身体部位ひとつを【口のみが存在する伸縮自在】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : いただきまぁ〜す♪
【隠し持つ調味料】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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――これはまだ、猟兵たちの知らない物語。
伏せられた物語、その断章。
あの日。エリエスデール足り得る花の噂に出会った夜の酒場。
たっぷりと奢られたエールの酔いを醒ますべく、月明かりの元で夜風にあたっていたら、唐突にマントの裾を引っ張られるような感覚に襲われた。どこかに引っ掛けたかな、と詩人が振り返ると、其処に在ったのは釘でも木のささくれでもなく、裾を引く小さな手と、むくれた顔の子供。
――確かこの顔は、酒場を営む夫婦の一人娘ではなかったか。
幼い子にもっと話して、とせがまれるのは生業柄慣れてはいるが、このぷっくりと膨らんだ頬は、どうにも別の話を聞きに来たようには見えない。
「なんだいお嬢さん、何か私に御用かな?」
「…おじさんのさっきの話、うそでしょ。」
おじさん、との呼称に微妙な葛藤を覚えつつも、一先ず彼女の言葉の意味を探ってみる。酒場ではエリエスデールの歌に加えて、盗賊団の大捕り物や、ドラゴンとの大戦やら大昔の勇者の話も歌って聞かせたが、どれも嘘というわけではない。多少華やかさを出す為、“盛り”はしたが、実際に行き会ったり昔から語り継がれた由緒正しい話ばかりである。
「嘘をついた覚えはないけどなぁ…どれのことだい?」
「エリエスデールってお花の話。」
――その言葉に、どきりと心臓が跳ねた。
「だってユイ、咲き方の変わる花なんて、見たことないもん。ユイがお庭に埋めたお花、毎年毎年ちゃんと同じところに芽が出て、葉っぱが伸びて、一緒の花が咲くよ?樹になったり、お花の形が変わったり、そんなことしないもん!」
彼女には、嘘の話で人を喜ばせよう――などというのは、正義に悖る行為だったようだ。恐らく大人たちにも同じように疑問に思った人はいても、酒の肴は美味ければいい、とわざわざ指摘する者はいなかった。幼さゆえの糾弾、世を知らぬが故の指摘、その問いに詩人が告げたのは――自白だった。
「君は頭のいい子なんだねぇ…。」
そっと頭を撫でながら、詩人が少女へ笑いかける。その表情は、悪事を暴かれたにしてはひどくやさしく、そしてどこか、とびきりの悪戯を披露する少年のようにも見えた。
「そうだよ。本当はね、“エリエスデール”なんて花は、無いんだよ――」
――これはまだ、猟兵たちの知らない物語。
伏せられた物語、その欠片。
真意を知るのは、暴食の天使を超えた先で。
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妖精たちを打ち砕き、馬車を囲む一行はより奥へ奥へと突き進む。一部樹々が密集していたり、川を挟んで通り抜けるに時間がかかったりしたが、怪我も被害もなく順調といえる道行だった。そろそろ夕刻も近づいたころ、まばらだった樹々がその数をより減らし、ぽっかりと開いた空間が現れた。崖沿いに流れる川、爽やかに耳を打つ小さな水音は、どこかに滝があることを悟らせる。そして足元を豊かに茂る青々とした草に、色とりどりの花。よもやこのどれかがエリエスデールか、そう思いそうなものだが、それはすぐに違うと分かった。視線を少し上げた、その先に。
――1本の、大樹が見えた。
まだ少し距離があるはずなのに、それでも目を引くのは、その樹がぼうっ、と柔らかな光を帯びて見えるからだろうか。足元の花々も可愛らしく、また香り良いものの、大樹の方から吹き抜けてくる風はいっそう素晴らしい芳香を伝えてくる。
そうか、きっと、あれが――
「あれあれぇ~、みなさんもぉ、あの樹に用事があるんですかぁ~?」
唐突に、間延びた声が浴びせかけられる。猟兵の中の誰のものでもない、その甘ったるい声の主を探せば、そこには――白い翼を携えた女性が立っていた。
「この花も美味しいんですけどぉ~、あっちのはもぉっと良い香りがしますよねぇ~。わたしぃ、どうしても食べてみたいんですよぉ~。」
にこにこと足元の花を引きちぎり、喋る合間にもあーん、とその小さな口に放り込む。ぺろりと指を舐め、幸せそうに微笑んだかと思えば、今度はぱっと驚いた様な表情を浮かべた。
「あれあれぇ~、でもそっちの荷馬車もとぉっても美味しそうな匂いがしますねぇ~。」
くんくん、と鼻を引くつかせオズワルドの乗る馬車を見遣る。
「困ったわぁ、あっちの樹も気になるし、馬車の荷物もいい匂い。ああそれに…あなたたちも、とぉっても美味しそう。それなら…そうね、そうよ。…みぃんな、食べてしまえばいいだけの話よねぇ~?」
とっておきのことを思いついたように、ぱん、と手を打って。
――『暴食』のフィーラが、楽し気に舌なめずりをした。
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プレイングの受付は【3/25 8:30以降】より開始いたします。
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グァーネッツォ・リトゥルスムィス
普通に戦ったらオレらよりもご馳走らしいオズワルドやエリエスデールを狙っちまう
ここは賭けに出てみるか
「あの樹も馬車も、とっておきの菓子も全部オレの物だ!」
裸の王様を騙す悪徳商人の如く、馬鹿には見えず匂わずの菓子を
懐から出しおいしく食す演技をするぜ
「お前みたいな味音痴にはわからないよな。でも一口食えばこの香ばしさがわかるかもしれないぞ」
演技による挑発と誘惑で馬車にも大樹にも遠くなる様に誘き寄せと時間稼ぎをするぜ
敵のUCの発動条件である不利な行動、背を向けたり急に脱力したり等変な行動しても警戒を続けて、
敵の攻撃を迎え撃つ様に超極級拍手で攻撃するぞ
戦闘の合間でも菓子の演技で敵の冷静さを少しでも削るぞ
「パッと見は普通の女の子なのにな。」
グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)が相対した暴食に、そんな感想を零す。確かに有翼種が存在する世界なら、その姿を特異にとらえるものはいないだろう。しかし彼女を特異たらしめるのは、その異常なまでの食欲。普通に戦ったら猟兵達よりも、匂いにつられて馬車の荷物やエリエスデールを優先する。ならば。
――ここは賭けに出てみるか。
そう算段をつけて、スゥ、と大きく息を吸い込んだ。
「あの樹も馬車も、とっておきの菓子も全部オレの物だ!」
唐突に、よく通る大きな声でグァーネッツォが叫んだ。
「とっておきのお菓子ぃ、そんなものがあるんですかぁ~?」
驚きながらも、聞こえた単語にとたん目を輝かせ、フィーラがふらふらと歩み寄ってくる。――それはまるで、裸の王様を騙す悪徳商人の如く。馬鹿には見えずとでもいうのか、匂わずの菓子を懐から出すしぐさを見せつけながら、美味しそうに頬張って見せる。
「ほーら、ここにあるぜ!」
「ええ~~見えないし匂いもしないんですけどぉ~~。本当にあるのぉ?」
どーしよっかなぁ、とすぐに食いついてこないのは訝しんでいるからか、はたまた自身の能力を上げるつもりだからか。ならばもう一押し、とグァーネッツォが畳みかける。
「あーでもお前みたいな岩も草も食べちまう味音痴にはわからないかもな。でも一口食えばこの香ばしさがわかるかもしれないぞ。」
一歩、二歩。あるはずもない菓子を見せびらかすよう、ほれほれ、と手に掲げて。フィーラの視線を誘いながら、三歩、四歩。少しずつ確実に馬車と大樹から距離を離す。
「~~~もうぅじれったいですぅぅ、我慢なんかやーめたぁ、今すぐ――あなたごといただきますぅ~!」
開けた口は小さく、迫る速度も常人のそれ。しかし何故か、その気になれば骨も残さず喰らい尽すのだろうと理解できる――それは互いが猟兵であり、オブリビオンだからなのか。ぱたぱたと走り寄る距離を見つめながら。
まだだ、まだ。あと少し。
…32、31、30――かかった!
正確に間合いを読み、踏み込んだ瞬間にグァーネッツォが両手を打ち鳴らす!動作にすればそれは唯の拍手、しかし鍛え抜かれたバーバリアンの身体能力、そして音にも迫る速さで至近距離から繰り出されるそれは、衝撃波を伴って――フィーラの全身に大打撃を喰らわせた。
「―――きゃんっっ!!!」
「残念だったな。お前には何もかもがもったいないから、なぁんにもあげないぜ。」
ぱくぱく、ごくり。見えない菓子を最後まで食べきる動きを見せつけ、おまけに持っていた手をしれっと舐めるまでして。グァーネッツォがにやり、と笑って見せた。
大成功
🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
綾華君(f01194)と
ああいうの肉食女子っていうんかの。
そうじゃ、荷はわしらがあとで楽しむもの。ちょっと分けて、くらいならまだしも全部もっていきそうななれとは楽しい茶会はできそうにないの。
さくっと、倒してしまおう。
綾華君と息を合わせ戦闘を。
そんなに腹がすいとるなら、わしの狐火ならいくらでも。
食べ物ではない?食べれる、大丈夫じゃ!
口が伸び、る……ものすごい光景をみておるような……
これはホラーではひぇっ(しっぽ下がり気味)
しかし、綾華君が作ってくれたチャンスを不意にはせんよ。
全部燃やしてしまお。狐火を一つにあわせて、暴食へ。
おなかいっぱいに、してあげよ。少々熱いじゃろうがな。
浮世・綾華
嵐吾さん(灰青・f05366)と
此処にはお前に食わせるもんなんて
唯のひとつもありゃしねえよ
常に嵐吾さんとの連携を意識しながら行動
――そうそう狐火は食いもんだ
あっつあつで刺激的ってやつ?
いや、俺はいらねえケドな
調味料は春曙で吹き飛ばし
口を封じるなら咎力封じの猿轡が丁度いい
封じ込めることが叶ったら黒鍵刀で敵へ向かい
迫る攻撃があればカウンターを狙う
封じることが叶わなければフェイントで交わしつつ
地形の利用で伸びる口を木にぐるぐると巻き付けるように動いて
絡まったところを嵐吾さんに任せる
良く食う女の子は可愛いケド
お前のは度を越えすぎだからな?
おなかいっぱいにさせてやるなんて
嵐吾さんやっさしー
「ああいうの肉食女子っていうんかの。」
尻尾をふさふさと揺らしながら、終夜・嵐吾(灰青・f05366)が訝しげな顔でフィーラに視線を送る。その言葉は詰まるところ、恋愛ごとに積極的な、という意味合いな気がするが、こちらの女子は色恋沙汰では済まないだろう――好きだと告げた口で、頭から相手をぺろり、が関の山だ。
「どーだか。でも肉だろうが何だろうが、此処にはあいつに食わせるもんなんて、唯のひとつもありゃしねえよ。」
じろりと睨めつけて返す浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)に、そうじゃの、と嵐吾がからりと笑い、先に受けた攻撃で尻もちをついているフィーラへ声をかけた。
「おぉいお嬢さん、そこな荷はな、わしらがあとで楽しむものなんじゃ。ちょっと分けて、くらいなら――」
「こぉんなにお腹が減ってるのに、ちょっとだなんてぜっ!たい!やーですぅぅ~~!」
言い切るより早く、フィーラが駄々っ子のように手足をばたつかせながら拒否を述べる。もとより相手はオブリビオン、果たすべき目的は討伐。仮に少しでいい、といったところで運命は変わらない。けれど、無理と突き付けられた一瞬、ほんの僅かに尻尾が垂れたのを、綾華だけは見ていた。
「…やれ、分け合う余裕のないなれとは楽しい茶会はできそうにないの。さくっと、倒してしまおう。」
切り替えは疾風の如く。瞬く間に二人が背を合わせ、呼吸を合わせ、得物を構えて敵を見遣る。その射竦める様な双の眼光は――場の空気を凛、と張りつめさせた。
「なんですかぁ、あなた達もいじわるするつもりですかぁ~。わたし、ごはんがたべたいだけなのにぃ…!!」
明確な敵意を前に、フィーラがようやくのろのろと腰を上げて向き直る。細い手でおなかをさすれば、よほど減っているのだろうかきゅるる、と切なげな音を鳴らす。
「そんなに腹がすいとるなら、わしの狐火ならいくらでも。」
そういってくるりと手を回せば、ぽう、とこの世ならざる火が嵐吾の周りに浮かぶ。ゆらゆらと揺れる様子は美しく、食せると嘯かれても信じてしまいたい蠱惑さではあるが――
「ええ~、火なんか食べたらあつそうじゃないですかぁ~。ほんとうにたべれるんですかぁ?」
幽玄のものとはいえ、さすがに火とあっては少し訝しんだようで、フィーラの食いつきは悪い。それならば、と今度は綾華が言の葉を添える。
「そうそう狐火は食いもんだ。あっつあつで刺激的ってやつ?」
ま、俺はいらねえケドな、とは胸に秘めてそろりと相棒に目くばせをする。ピン、と来たのか嵐吾がウインク一つ、手ごろな狐火をひとつふわりと飛ばせば、その勢いのままに綾華が自らの口へと招き入れ――
――ぱくん、と飲み込んでしまった。
いや、傍目には完全に火を飲み込んだようにしか見えなかっただろう。仕掛けのタネは、そう見えるタイミングで嵐吾が火を消したに過ぎない。だが咀嚼する振りと、ぺろりと唇を舐めて見せつけてやれば、フィーラがごくりと生唾を飲むのが分かった。
「へぇ~、本当にたべれるんですねぇ~?…なら、こうしたらもっとおいしいんじゃないかしらぁ…その火も、あなたたちもぉ!」
我慢も限界、と言わんばかりに、フィーラが懐に隠し持っていた調味料入りの硝子瓶を投げつける。当たれば追撃必須の不意打ち、しかし炎を食そう――などと思った時点で、すでにその思考は双蜘の編んだ巣の内。元より迎撃する積りで半歩前に出ていた綾華が腕を振るえば、舞い踊るかのように紫雲が立ち込め、瓶をやすやすと跳ね返す。更にその厄介な大食いの口を封じようと、呼び寄せるのはユーベルコード、その猿轡。初撃を封された驚きで固まっていたフィーラは迫りくる轡を、続けざまに手枷とロープの拘束もあっさりと喰らってしまう。ならばこのまま止めを、と黒鍵刀を手に疾く攻めだせば――未だ光を失わないフィーラの瞳と視線が合う。
――まずい、これは。
予感は正しく、拘束を逃れた指一つを捕食器官へと変化させ、ずるりと伸ばして食いついてきた。回避一辺、素早い身のこなしで半身を逸らせば、先まで体があった空間を異形の頭部が横切る。
「口が伸び、る……ものすごい光景をみておるような……これはホラーでは。」
戦闘を見守っていた嵐吾が尻尾をだだ下げにしながらひぇっ、と悲鳴をあげる。しかし今は怯える時ではない。異形の口が伸びてはいるが、拘束はじゅうぶん生きている。ならばせっかく綾華が生んだこのチャンスを逃すわけにはいかない。脅しと騙しに使った狐火を全て手繰り寄せ、空へと向けた掌へ収束させていく。
火、焔、――炎。
もはや見上げなければ全容の見えない狐火、その塊は――天に座す太陽の如し。
「おなかいっぱいに、してあげよ。少々熱いじゃろうがな。」
嵐吾さんやっさしー、と掛けられる声をも飲み込んで、凡そ急ごしらえの歪な口には収まりきらないだろう“御馳走”を放り込み――
――全部ぜんぶ、燃やしてしまお。
女は、炎に包まれた。
大成功
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ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・他の人との絡み、アドリブ歓迎
わたくしと同じオラトリオの翼……いいえ、これはオブリビオン!
それも、かなり危険な……。
おとなしく食べられてなどやるものですか!
この美しい自然も、人々も、必ずお守りします!
「第六感」で敵の動きを察知し、「見切り」「オーラ防御」で回避。
敵が攻撃を放った隙をついて【鈴蘭の嵐】で反撃します。
傷ついた人がいれば、「祈り」と「優しさ」を込めて【生まれながらの光】や【シンフォニック・キュア】で回復を。
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・他者との絡み、アドリブ歓迎
見た目に似合わず、随分と食い意地の張ったオブリビオンだ。
ヘルガにも、仲間たちにも、指一本触れさせん。
これ以上貴様に世界を食い荒らされてなるものか。
地獄の焔に焼かれ、おとなしく骸の海に帰るがいい!
同行する仲間が狙われたら、「勇気」と「覚悟」を胸に「かばう」と同時に【無敵城塞】発動。
仲間の安全確保後【無敵城塞】を解除、反撃。
【獄狼の軍団】の「2回攻撃」で敵の逃げ道を塞ぎ、噛み付き攻撃を受けたら「激痛耐性」で耐えつつ口内に【ブレイズフレイム】の炎を流し込み「カウンター」。
極力周辺の花や木々に延焼しないよう、敵の上半身を狙い焼き尽くす。
「わたくしと同じオラトリオの翼……いいえ、これはオブリビオン!」
フィーラの背に白く生える翼。度重なる攻撃で羽が折れ、あちこちが焼け焦げてはいるが、その姿は確かにヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)と同じ種族、オラトリオに近い印象を受ける。しかし異形の口を伸ばし、生々しい火傷の滲む体でなお――おなかがすきましたぁ、と間の抜けた声を上げる姿は、どうあっても生き物として正しくない。そう、猟兵たちの本能に訴えかける。
「見た目に似合わず、随分と食い意地の張ったオブリビオンだ。」
だが例え見目が似ていようと、ヘルガとは比べるべくもない、と。ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が冷徹な目を向ける。
「ヘルガにも、仲間たちにも、指一本触れさせん。…これ以上、貴様に世界を食い荒らされてなるものか。」
「ええ、おとなしく食べられてなどやるものですか!この美しい自然も、人々も、必ずお守りします!」
姫と聖騎士が互いに思いを一つにして、眼前の敵へと向き合った。
「あらあらあらぁ、あなたたちも戦うんですかぁ~?でもわたしぃ、いじめられるし怪我はするしでもうもうお腹が大ピンチなんですよぉ~。」
かまってられませぇん、と構える二人をぷいっと無視し、ぼろぼろの翼をそれでも羽搏かせて荷物の方へと向かおうとする。荷馬車に陣取るオズワルドがヒッ、と息を飲み、強張った腕の儘に手綱を引きかけた、その瞬間。
「――させるかっ!!」
ヴォルフガングが駆け出した。手にした巨大な剣を一閃、フィーラと荷馬車の間に割り込み無理やりに視線を奪う。再三食事の邪魔をされ苛立ったのか、それとも身体能力を上げる“我慢”行動のつもりか。フィーラがあっさり方向を変えて、ヴォルフガングへ適当に拾った小石を投げつける。ただの小娘の投石ならば払うだけで済むが、度重なる食の延期が“不利な行動”と取られたのか、それは鋭く速く、まるで弾丸のように襲い掛かった。
「うおおお…!!」
荷馬車やオズワルド――そして何よりヘルガには一撃たりとも通すまいと、全身で攻撃を受け止めるヴォルフガング。だがその覚悟の防衛は功を奏し、一切の被害を出すことなく小石を落としきった。
「ヴォルフガング…!」
悲鳴にも見たヘルガの声と共に放たれるのは、ひらりと舞い散る鈴蘭の花びらたち。援護と目くらまし、そして攻撃も兼ねた美しい嵐。その全ての花弁をフィーラへと差し向けているうちに、ヴォルフガングへと駆け寄る。
「大丈夫ですか…怪我は!?」
「ああ、問題ない。それよりお前に傷がなくてよかった。」
盾となり庇い、援護を以て駆けつけて。案ずるのは互いに互いの事ばかり。しかし思いは同じと分かれば、もう一度敵へ向かい合うに容易い。
「見ていてくれ、俺が戦っているところを。」
「見守っています、いつでも、あなたの事を。」
支え合い、手を取り合い、ふたり立ち上がって嵐の渦中へと叫ぶ。
「――忌まわしき魍魎共よ、己があるべき場所へと還れ!」
詠唱と共に、招かれるのは地獄の番犬。
獄狼の軍団――ケルベロス・レギオン。
地獄の炎を纏った狼犬の群れが、幾重にも呼び出されて暴食の天使を取り囲み、その鋭い牙を剥く。
「さぁ…地獄の焔に焼かれ、おとなしく骸の海に帰るがいい!」
――捕食者と被食者が、今この時をもって反転した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『森のお茶会』
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POW : 紅茶や珈琲といった飲み物を楽しむ。
SPD : お茶菓子を楽しむ。
WIZ : 動物達と触れ合う。
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「――本当は、“エリエスデール”なんて単一の花は、無いんですよ。」
ようやくと危機は去り、大樹目指して馬車を動かすオズワルドが、訥々と語りだす。それは伏せられた話、酒場の少女との話の続き、過去と今の交わる瞬間。
「エリエスデール、というのは遥か昔の言葉で、“我が愛しの花君”というそうです。私たちの一族は旅をして、歌を歌って、そうして生きていく中で、自らが一番美しいと思う花を見つけ――その花を“エリエスデール”と呼び、初めて自らの言葉で歌を紡ぐのです。それがこの花の来歴、そして“一代ごとに姿が違う”という噂の所以です。」
確かにそれは、酒場の少女が指摘したような“嘘”には当たらないかもしれない。だが、なぜそのように正直に語らなかったのか、と誰かが問えば、苦笑を浮かべて続きを述べる。
「…だいたいね、皆師匠付きのころにエリエスデールを見つけるのがほとんどなんですよ。父なんて9歳の時に見つけたんですから。それなのに私ときたら、30を超えても歌えるのは代々伝わる歌ばかり。もうこれは花唄いの看板を下ろそうか――なんて悩んでたくらいなもんですから。」
これ!と決めてしまえない、うじうじとした心境を話すのがどうにも気恥ずかしく、“幻とも呼ばれる花はかくも見つけにくく、運悪く出会えてないだけ”という体裁を繕いたかった…というのが実のところらしい。
――だから、本当は。
今回の噂に飛びついたのも、半ばやけっぱちのようなものだったのだ。
いつだって探し求めても、辿り着けば枯れていたり場所が違ったり。出会えても胸を打つには何かが足りなかったり。そうして長らく悩んでるうちに、諦めることばかりが得意になって。だから、もう、出会えても出会えなくても、これで終わりにしてしまおう、だなんて。
「…そう、思ってたんですけれど、ね。」
ガタン、と音を鳴らしてオズワルドが馬車を止める。その目線の先にあるのは――
――美しい花の咲く、大樹だった。
辿り着いた時刻が見せる、夕暮れと宵闇の境目。その夜側に聳える大樹の花は、ほのかな光を伴って咲き、風が舞うたびしゃらり、と鈴のように涼やかな音を伴ってその花弁を落とす。拾い上げればそれは雪の様に真白く見えるが、角度を変えるたびに淡く虹色の燐光を放った。また花ごと落ちたものを掬い取れば、真中からは金色に輝く蜜がのぞき、鼻を寄せれば思わず頬を緩ます香りがこぼれた。
見上げた花と葉の間には、更にきらりと輝く何かが見える――あれは、果実だろうか。片手で包めるほどの大きさの実はともすればガラスか水晶のように煌めき、まるで工芸品のようだ。リスの仕業か、齧られ落ちた実を拾えば、かたい殻の内には柔らかく瑞々しい白い果肉がのぞき、真ん中には可愛らしくハートの形をした紅い種が眠っていた。
傍に流れる滝は豊かな水量を誇り、落ち行く赤い太陽の光を浴びれば、花の放つに似た大きな虹を浮かべる。更には落ちた花とその蜜、更には果実をもたっぷりと蕩かした岩場の水は、ほんのり香りと甘さを含んだ天然の果実花水となっている。
――その美しく、夢から切り取ったような風景を前に。
「ああ、ようやく会えた…。」
これまでの憂いを全て吐き出すように、深く長く息を吐いて、オズワルドが静かに涙を浮かべる。
「これが私の、“エリエスデール”です。」
それはやけから出た言葉でも、諦めから来る嘆息でもなくて。心からの――喜びの、言葉だった。
――ひとしきり花を見上げ、涙を拭ったオズワルドが、さぁさ!と声を上げて猟兵達へと向き直る。
「さてもうれしい“エリエスデール”との出会い。これは祝わなければいけませんとも。…ええ、ええ!皆様へのねぎらいとお礼もかねて、今日は大盤振る舞いです。どうぞ、目いっぱい召し上がってくださいませ!」
馬車の荷をほどけば、そこに並ぶのは香ばしい香りを放つパンの数々。コーンブレッド、ライ麦パン、バケットにマフィン。中でもドライフルーツとくるみを焼きこんだ黒パンはおすすめの出来だ。油紙にくるんだチーズも数多く、カマンベール、ブルーチーズ、ゴーダ、ラクレット。仕上げはミルク感たっぷりの新鮮なバターと蜂蜜。そのままパンと合わせて食べても良し、馬車の簡易窯で焼けばとろりと蕩けたチーズやじゅわりと沁みるバター、パリッと焼けたパンとのマリアージュが楽しめるだろう。
もう一つふるまわれるのは、花茶だ。桂花、茉莉花、蓮に菊。中には青い薔薇を咲かせる薔薇茶も含まれるらしいが、どの花が咲くかは飲んでみてのお楽しみ。硝子の茶器の中、緩やかに花開く様子は、エリエスデールにも劣らぬ美しさを見せてくれるだろう。
大樹の元、滝の傍はなだらかな草原で、どこで寝転んでも心地が良さそうだ。大樹は洞も多く、慣れたものなら登るに易く、草原も探せば落ちた花や実が容易に見つかる。5枚の花弁を湛えた花は、口を当てれば芳醇な蜜が甘く舌をとろかせ、ナイフを入れればパカリと割れる殻の内、白く瑞々しい果実は甘くほのかに酸っぱく、運が良ければハートの種が見つかるかもしれない。岩場の水も、杯で掬って飲めばたちまち爽やかに喉を潤すだろう。
――さぁ、エリエスデールを愛でましょう。楽しい茶会のはじまり、はじまり。
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プレイングの受付は【4/6 8:30以降】より開始いたします。
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浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と
一片掴まえて陽光に透かし
嵐吾さんみてみて、ほら虹色
茶を二人分用意
さぁて、何の花が咲くかねえ
蓮。ほんのり薄紅がかって綺麗だ
俺のは――菊?
確かに。思えば一緒に出かけて
のんびりすることってあんまなかったな
釜焼きのパンの香りを楽しみつつ
とろけたチーズごとぱくり
うま、これ葡萄酒とかにぜってえ合うじゃん
あ、お酒好きデス?
今度飲みにも行きましょ
宅飲みもいっすネ、うちでもいーし
――嵐吾さんの家ってエンパイア?
ああ、渾名
仲良しってのはうれしーな
俺、結構嵐吾さんになついてるし?
なんて軽口をながら一生懸命考えてくれる様子を見守り
呼ばれればはぁいとへらへら
俺もそのうち呼び方考えてみよっかな
終夜・嵐吾
綾華君(f01194)と
ほんとじゃ、虹色じゃ
淡く輝く、一度見たら忘れられんなぁ、これは
共に透かして見てみれば眩しいほどの輝きに少し瞳眇めて
茶の花は……蓮かの。こうして花開くのを眺めるのも楽しいもんじゃ。綾華君のは?
そちらも見ごたえがある。こうしてゆっくりするの、ええの!
チーズと葡萄酒は鉄板じゃからの
酒はもちろん好きじゃな。良い店探しとこ。だらだらするなら
宅飲みでもええぞ、うちはUDCの、喫茶の二階じゃ
さてさて考えとったんよ
ずぅっと綾華君呼ぶんもなんかの!
仲良き相手は特別な呼び方したいわし
そんなわけで…あーや…あやっち…と顔見つつ呼んでみる
うぅん、なんぞしっくりこんの…あや君
うん、これじゃな!
はらり、ひらりと舞い落ちる白。ともすれば透けそうに薄く柔いその一片を掴まえて、陽光に透かして見れば朱の瞳に七つの色がよぎる。
「嵐吾さんみてみて、ほら虹色。」
浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)が楽しげな声で呼びかけながら、捉えた一片を終夜・嵐吾(灰青・f05366)に手渡す。そしてまねる様に日に透かせば、眩しいほどの輝きに少し瞳を眇めて。
「ほんとじゃ、虹色じゃ。淡く輝く…一度見たら忘れられんなぁ、これは。」
噂に聞いて膨らませた期待より美しく、二人の瞳をきらきらと彩って。網膜に色ごと、この瞬間を焼き付けていく。
そうして大樹に咲く花を存分に愛でたのなら、今度は茶器に咲く花をも愛でようか、と。綾華が貰ってきた花茶を手渡し、選んだ二つに湯を注ぐ。
「こうして花開くのを眺めるのも、楽しいもんじゃ。」
開く前は唯の茶色の塊。どの様に、どんな花が咲き、どれ程の香りを届けてくれるのか…待つ数分をそうして思い思い楽しむのも、このお茶の魅力。そしてようやく固く閉じられた茶葉が開いて見えた色彩は――
「わしの花は……蓮かの。綾華君のは?」
「俺のは――菊?」
嵐吾の茶器を染めるのは、蓮の薄紅。幾重にも重なり、花弁の先から中心にかけてうっすらとグラデーションを成すのは美しく、瑞々しくも甘やかな香りも豊かに広がる。綾華の茶器に咲かすのは、菊の黄橙。蓮よりもさらに多層な重なりを見せ、まるで太陽のように明るい色彩と、少し苦みを感じさせながらも爽やかに鼻を抜ける香りが心地よい。
「蓮。ほんのり薄紅がかって綺麗だ。」
「そちらも見ごたえがある。なによりこうしてゆっくりするの、ええの!」
確かに――一緒に出かけて、のんびりすることがあまりなかったな、と思い返せば、またこの時間が楽しく思えてくる。そして開いた茶に合わせるのは、釜焼きのパンにたっぷりと乗せたとろとろのチーズ。焼き立ての香ばしさと、チーズのほんのり甘い香りを楽しみながら、今にも蕩け落ちそうなところをせーの、でぱくりと頬張る。
「…うま、これ葡萄酒とかにぜってえ合うじゃん。あ、お酒好きデス?」
「チーズと葡萄酒は鉄板じゃからの。それに酒はもちろん、好きじゃな。良い店探しとくか…それか宅飲みでもええぞ。」
「宅飲み、いっすネ。うちでもいーし――嵐吾さんの家ってエンパイア?」
「いやいや、うちはUDCの、喫茶の二階じゃ。」
そうして互いに新しい約束を取り付けながら、嵐吾がそういえば綾華君は…と、呼びかけて言葉をのむ。
「そうじゃ、考えとったんよ。ずぅっと綾華君呼ぶんもなんかの!」
せっかく仲良くなった相手は特別な呼び方をしたい、といわれれば、うれしーな、と綾華が笑う。そんなわけで、と前置いて。
「あーや…あやっち……あやっぺ?」
顔を見つつあれこれと呼んでみる嵐吾。綾華は呼ばれる度にへらりと笑ってみるが、なんぞしっくりこんの、と首をかしげながらうんうんと唸る。さらに三つ四つと案を重ねて、最後に口にしたのは。
「…あや君。…うん、これじゃな!」
ようやく納得がいったのか、今日一番の笑みを見せて嵐吾が頷く。それが嬉しくて、はぁい、と返事を返す綾華もいっとう朗らかに見えた。特別な名で呼ばれるのがこうも嬉しいなら、俺もそのうち呼び方考えてみよっかな――なんて思えるから。
それなら次は。
新しい呼び名を聞くために。親しく呼ぶ名を見つけるために。
さぁ――また一緒に、どこへ足を運ぼうか。
大成功
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ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・他の人との絡み、アドリブ歓迎
なんて美しく幻想的な光景……。
エリエスデールとは「それぞれの人の心に咲く、最も美しい花」
そしてこれがオズワルドさんの「エリエスデール」……
私が風の噂に聞き夢見た花も正にこれでした。
本当に不思議なこともあるものですね。
さあ、危険も去ったことですし、お茶の時間といたしましょう。
ヴォルフと二人、大樹の陰に腰掛け、
フルーツとくるみのパンには甘い蜂蜜を乗せて。
とろけるような味わいのチーズも、ふわりと香りの広がる花茶も、
本当に美味しいわ。
ヴォルフ、あなたと出会い、猟兵として共に旅立って、
私は広い世界を知ることができました。
これからもずっと……。
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・他者との絡み、アドリブ歓迎
【POW】
あのオブリビオンがあのまま暴れていたら、この美しい光景も、全て奴に食い荒らされていたのだな。
皆が無事で、そしてここの花や木々を守りきることが出来て本当によかった。
そうだな、戦闘後でちょうど腹も減ったところだ。
遠慮なくいただこう。
エリエスデール、“我が愛しの花君”か……
俺にとってのそれはきっと……ヘルガ、お前だ。
いつも俺の傍で優しく微笑み、癒し、支えてくれる暖かな光。
この広い数多の世界にただ一人だけの、かけがえのない存在。
俺には美しい花を称える歌は歌えないけれど、命の限りお前を守り続けると誓おう。
「なんて美しく幻想的な光景……。」
舞い落ちながら、虹色のきらめきを返す花。硝子のように輝く果実。そして心を落ち着ける柔らかな香り――どれをとっても美しく、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)がほう、と思わずため息をつく。
「本当に、美しい光景だ。もしあのオブリビオンがあのまま暴れていたら、全て奴に食い荒らされていたのだな。」
先の戦いを振り返りながら、並び立つヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)も同じ景色を堪能する。そして改めて、誰一人欠けることなく、花や木々を守りきることが出来てよかったと、平穏たるこの情景のありがたみをかみしめた。
「さあ、危険も去ったことですし、お茶の時間といたしましょう。」
「そうだな、戦闘後でちょうど腹も減ったところだ。遠慮なくいただこう。」
ヘルガとヴォルフガングで二人、大樹の陰に腰掛けてさっそくとお茶のセットを広げていく。選んだのはフルーツとくるみのパンに、合わせるための甘い蜂蜜。とろけるような味わいのチーズに、ふわりと香りの広がる花茶も2人分。同じメニューを分け合って食べれば、不思議と味わいが増すようで。
「本当に美味しいわ。」
そう微笑みながら茶器に頬を寄せるヘルガを見て、ヴォルフガングもまた眼差しを柔らかく緩めていく。
「エリエスデールとは「それぞれの人の心に咲く、最も美しい花」。そしてこれがオズワルドさんの「エリエスデール
」……。」
花ごと落ちた1つを手にとってくるりと回せば、花弁同士がぶつかりしゃらら、と涼やかな音が鳴る。ヘルガが聞いた通りの、鈴にも似た涼やかな音だ。
「私が風の噂に聞き夢見た花も正にこれでした。本当に不思議なこともあるものですね。」
「そしてエリエスデールの意味は、“我が愛しの花君”か……。」
ヘルガが手にする花を見ながら、ヴォルフがふと思う。詩人が歌い継ぐ、かつての意味を残す言葉。もしそれを、自らが名づけるとするならば。
「俺にとってのそれはきっと……ヘルガ、お前だ。」
――いつも俺の傍で優しく微笑み、癒し、支えてくれる暖かな光。
――この広い数多の世界にただ一人だけの、かけがえのない存在。
俺には美しい花を称える歌は歌えないけれど、それでも。
「…この命ある限り、お前を守り続けると誓おう。」
それは、騎士が捧げる最上の誓い。何にも代えがたい、唯一無二の献上。ただひたむきに向けられる信頼に、ヘルガも胸に秘めたる想いを言の葉にする。
「ヴォルフ、あなたと出会い、猟兵として共に旅立って、私は広い世界を知ることができました。」
――あなたにとっての私が、無二であるというのなら。
――私にとってのあなたも、誰にも代えられない唯一だから。
だから、叶うのなら。
――これからもずっと……。
大成功
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グァーネッツォ・リトゥルスムィス
食べてから動くのは億劫だから先に花や実を草原から探したり
岩場の水を汲んでおくか
戦闘だけじゃなくて食べる演技して余計にお腹空いた
エリエスデールの恵みもオズワルドの奢りも頂くぜ♪
花の蜜や果実も、オズワルドが焼いてくれたパンやチーズ、花茶も全部満遍なく食べちゃうぞ
全部違って、でも全部おいしい♪
でも一人で食べても味気ないだろう
みんなと頑張って辿り着いて、みんなと一緒にいるからこんなにおいしいんだ♪
オレは戦士だから相棒たる得物は妥協なんて出来ない
この竜骨斧も、槍になれるドラゴンのファンも、数ある得物の中で選んだ最高の相棒だ
職業が違うが、オズワルド、吟遊詩人として最高の選択をしてきたと誇っていいと思うぜ!
天翳・緋雨
【アドリブ・他猟兵との絡みOKです】
願いを叶えたオズワルドに祝福を。きっと彼の歌にも良い転機になるね。
そしてその手伝いが出来た仲間と良いひと時を過ごせたらいいな。
冒険譚や心掛けを耳にする機会がありそうなら聞いて置いて今後の参考にしよう。
エリエスデールはホントに綺麗だからいつか離れ離れになってしまった姉の璃闇にも見せてあげたい。
(撮影して保存しておく)
甘いものは大好きなのでお茶菓子は全て堪能するし、もし余興が必要ならばスカイダンサーとしてのパフォーマンスも役に立つかもしれない。
(パフォーマンスや空中戦辺りを活用し、重力を意識させない立ち回りは出来ると思う)
あ。お片付けもちゃんとしないとね?
「戦闘もだけど、食べる演技したら余計にお腹空いた…エリエスデールの恵みもオズワルドの奢りも頂くぜ♪」
たっぷりと用意された荷馬車の食料に、たわわに実るエリエスデールの果実。更に岩場に蓄えられた天然の果実水を前に、グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)が目を輝かせてぺろりと唇を舐める。並んで大樹を見上げる天翳・緋雨(第三の瞳を持つ少年・f12072)もその目に虹色の光を映しながら、取り出したスマホを構えて写真を撮る。この美しい景色を、綺麗な花を、いつか離れ離れになってしまった姉――璃闇にも見せてあげたい。そう願いながら角度を変え、構図を取っていると、グァーネッツォがひょいとスマホ越しにのぞきこんできた。
「な、食べ始めてから動くのは億劫だから、先に食べ物と飲み物をめいっぱい積んどこうぜ!」
告げられる提案に、それがいいね、と同意を返しながら。花と共に、少女の嬉し気な笑顔もパシャリ、と記録に残していく。
こんがりと焼いたバケットに、内をとろとろになるまで温めた丸いカマンベール。花茶はグァーネッツォに桂花、緋雨に茉莉花が当たり、それぞれに華やかな香りと姿を魅せている。更にエリエスデールの花から拝借した黄金に輝く花蜜と、硝子の殻から割り出した白く瑞々しい果実。どれもこれも皿一杯に用意してから、敷いた毛織物の上に座って。せっかくだから、と招いたオズワルドも含めた3人で、御馳走を前に――いただきます!と声をそろえた。
「んん~、焼き立てのパンにとろっとろのチーズとか最強だなっ!」
「間違いないね。エリエスデールの果実もすごくおいしいよ。甘みがすごく濃くて、でも不思議と後味はさっぱりしてる…これならいくらでも食べれちゃいそうだ。」
「でもこんな御馳走だって、一人で食べてたら味気ないだろうな。…みんなと頑張って辿り着いて、みんなと一緒にいるからこんなにおいしいんだ♪」
「本当に、その通りですねぇ…。」
果実を頬張りながら、しみじみとした声を出すのはオズワルド。
「たどり着くまでにずいぶん時間がかかったのは、まだ少し気恥ずかしいのですが。それでも、だからこそ、今こうして皆様と、此処にいられると思えば――」
まだ少し弱気の見える話を切るように、唐突にグァーネッツォが――ドン、と。自らの得物である巨大な斧を置いて見せた。
「オレは戦士だから、相棒たる得物は妥協なんて出来ない。この竜骨斧も、槍になれるドラゴンのファンも、数ある得物の中で選んだ最高の相棒だ。」
そういっておかれた斧を今一度見れば、刻まれた傷、握りこまれた手の跡、良く研がれた刃に、放つ言葉の芯が感じられた。
「職業が違うが、オズワルド…吟遊詩人として、最高の選択をしてきたと誇っていいと思うぜ!」
ニッ、と歯を見せて笑う顔は、太陽のように明るくて。今までの道行きを想い思わずまた溢れそうになった涙をこらえて、オズワルドがありがとうございます、と笑い返す。
「オズワルド、ボクからもキミに祝福を。きっとキミの歌の良い転機になるね。――さぁ、おなかいっぱい食べた後は、余興なんてどう?ボクが踊るから、せっかくだから歌ってよ!」
緋雨が立ち上がって促せば、オズワルドも喜んで!とリュートを構えて。まだエリエスデールの歌は歌えないまでも、いつもより弾んだ音色に合わせて。重力を感じさせない、ふわりと飛ぶように舞い踊る緋雨を見つめながら、パンを頬張るグァーネッツォがいいぞ!と拍手を送る。
拍手と、踊りと、リュートと。
――虹色に輝く花びら舞う中で、楽しい宴は続いていく。
大成功
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マリアドール・シュシュ
【花緑】
アドリブ大歓迎
素敵なお茶会が開かれてると聞いたのよ!
…アンバー!久しぶりね(駆け寄りハグ
ええ、以前依頼でマリアを奮い立たせてくれたお姉様なのよ!
あなたは…旅館で女将さんと一緒にいる妖精さんね?(軽く自己紹介
マリアもお茶会に混ぜてもらえて光栄なのよ!(花弁のドレスを抓み軽くお辞儀
花茶はどれにしようかしら
迷うのだわ(お任せ
まぁ!こんなお茶は初めて見たのよ
綺麗な花の世界
花や果実には頬綻ばせ
食べあいっこしたいのよ!
レインには一口サイズに切って渡すわ
ふふっ美味しい
こうして誰かと会話してるから尚更楽しいのだわ!(宝石が煌く
エリエスデールってなぁに?(首傾げ
まぁ!マリアと同じ瞳の色をしているのかしら
氷雫森・レイン
【花緑】(計3名)
もう1度くらいあの詩人に文句をとも思ったけど…あんな顔されたらもう何も言えないじゃない
いいわ、美味しい物で手打ちにしてあげる
アンバー、何がいい?私が持ってk…
「あら。貴女達知り合い、なの?」
花の涯で見た事がある…話したことはないけれど
「旅館のお客様だったわね。私はレインよ」
特に拒む理由も無いし一緒にお茶会しましょう
花茶と、果物が好きだからドライフルーツ入りの黒パンとマフィン
食べきれないと困るし千切って食べたいけど私そんなに力は…2人に頼んでみようかしら
マリアにはエリエスデールの話も
若干愚痴っぽくなるけど…あの男の所為よ
まぁいいわ、貴女達に会えたもの
アンバー・バルヴェニー
【花縁】
詩人さんのエリエスデールが見つけられて本当に良かったわ。
さて、折角だしお茶会を楽しみましょう、レインさん……あら!?
マリア!!
(ハグされたらハグを返し)
まぁまぁ嬉しいわ!
こんな素敵な場所で再会出来るなんて。
それにレインさんとも縁があるのね。
花が結んだ素晴らしい縁を祝してお茶で乾杯しましょう。
わたくしは薔薇茶を頂きますわ。
それに黒パンとカマンベールチーズに蜂蜜を垂らして……ふふ、こんなにかけたらお行儀が悪いわね。でも今日は特別。
2人のお茶も良い香り……2杯目は2人が飲んでいるお茶を頂こうかしら。
エリエスデールがもたらしてくれた素敵な縁と時間に感謝してお茶会を楽しむわ。
「詩人さんのエリエスデールが見つけられて、本当に良かったわ。」
ひらりと頬を撫でる花びらを掬い、アンバー・バルヴェニー(歌う琥珀嬢・f01030)が嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「…ま、もう1度くらいあの詩人に文句をとも思ったけど…あんな顔されたら、もう何も言えないじゃない。」
並ぶ笑みも相まって、氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は嘆息交じりに首を振る。その様子にいっそうくすくすと笑って、アンバーがさぁ、と手を広げてみせた。
「折角こうしてたどり着けたんですもの。お茶会を楽しみましょう、レインさん。」
「…そうね、いいわ。美味しい物で手打ちにしてあげましょ。アンバー、何がいい?私が持って…。」
と、言いかけた所でふと、近づいてくる人の気配に気が付いて振り返る。それはエリエスデールの花に似てきらきらと光を零し、輝かんばかりの笑みで足音軽く駆けつけて――
「…アンバー!久しぶりね!」
「あら!?…マリア!!」
名を呼ばれれば、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)がぎゅっ!と思い切り抱きつき、アンバーもそれに嬉しそうにハグを返した。唐突な出会いに思わずぱちくりと目を瞬かせながら、レインがそろりと声をかける。
「あら。貴女達知り合い、なの?」
「ええ、アンバーはね、以前依頼でマリアを奮い立たせてくれたお姉様なのよ!あなたは…旅館で女将さんと一緒にいる妖精さんね?」
「旅館のお客様だったわね。私はレインよ。」
互いによく見れば、見覚えのある顔と気づき、改めて挨拶を交わす。
「素敵なお茶会が開かれてると聞いたのよ!そしたらこんな素敵な出会いも待ってたなんて…!」
「本当に!これはぜひとも、花が結んだ素晴らしい縁を祝して乾杯しましょう。」
トントンとまとまる話に、特に拒む理由も無いわね、と頷いてレインが今度こそ茶会の準備のためとひらり、馬車へ舞い飛んでいく。
せっかくの出会いを彩る茶と菓子は、どこまでも華やかに甘やかに。
ドライフルーツたっぷりの黒パンに、カマンベールチーズ。蜂蜜とバターも抜かりなく。集めた花と、硝子の様にきらめく果実も添えれば、3人分の歓声が明るく響く。馨しくも美しい花茶の開く様子には、柔らかな溜息も零れるほど。
「どれもこれも綺麗でおいしいわ…それに、こうして誰かと会話してるから尚更楽しいのだわ!」
小さく切った果実をレインへと取り分けて、残りを口にしながらマリアドールが喜々として告げる。アンバーもその言葉に頷きながら、手に取ったパンにチーズと蜂蜜を乗せる。特に蜂蜜をたっぷりと、零れんばかりに垂らせばふふ、と笑って。
「こんなにかけたらお行儀が悪いわね。」
でも今日はエリエスデールと会えた特別な日だから、と口元に運ぶ顔は楽し気に。
「そういえば、そのエリエスデールってなぁに?」
と、パンを頬張りながら訊ねるのはマリアドール。
「ああそうか、貴女は知らないのよね。いいわ、聞かせてあげる。」
きっと若干愚痴っぽくなるけど、それはあの詩人の所為よ、なんてきっちりと前置いて。レインが今までの事を語りだす。――でも本当は、もう口で言うほどには怒ってもいないのだ。だってこうして、アンバーに、マリアドールに、出会うことができたのだから。
だから、今は。
エリエスデールがもたらしてくれた、素敵な縁と時間に感謝して。
それぞれのお茶会の時間は、続いていく。
――森をこえてその奥に。
花咲くその名は、“エリエスデール”。
やがて長く継がれる花と歌の、今日が初めの――しあわせな、一日。
大成功
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