イマジナリー・ラヴァーは嘘から真か
●恋人
それはなんとも信じがたい一言から始まった。
時はクリスマス。
ケルベロスディバイド世界は常に宇宙からの侵略者であるデウスエクスの脅威に晒されている。
侵略者の魔の手から地球を守るべくケルベロスや猟兵に覚醒した者たちは日夜戦い続けているのである。
この湾岸の決戦都市とて、それは変わらない。
が、常に戦い続けることなど人間にはできようはずもない。
そして、日常を忘れることもでいないのだ。
そう、時はクリスマス。
二度目であるが大切なことなので二度言わせてもらおう。
クリスマスと言えば、イメージするのは子供らであればサンタクロースであろう。
プレゼントにご馳走。
朝目覚めれば枕元にプレゼント。
喜ばしいことが目白押しのイベントだ。
それは歳を重ねても同様である。
家族と過ごすイベントでもあるし、寒さ厳しい季節にあって、ぬくもりというものはどうしても人間が肉の体躯を持つが故に避け得ぬ寂しさを呼び起こすものであった。
いつだってそうだが、人間は他者と己とを比べて、その差異に心を曇らせる生き物である。
自分が持っているものを他者が持っていないと喜びを見出すし、自分が持っていないものを他者がもっていると妬みをこじらせる。
それは仕方のないことでもあった。
それ故に、持てるものと持たざるものはいがみ合うのだ。
時として、それは焦燥を生み出すものでもあった。
クリスマスに恋人と過ごす予定のないものは、それこそ人生の敗北者である、と自他ともに認識してしまう。
全てがそうだとは言わないが、多くの人間にとって恋人という存在は必要不可欠なるものであったのだ。
「いやぁ~……ほんっと~ね?」
この湾岸の決戦都市の責任者でもある亜麻色の髪の女性、『エイル』博士は独り身である。
まあ、研究と襲来するデウスエクスへの対処に追われているので、当然と言えば当然であるが独身である。
クリスマスの予定なぞ、復興した決戦都市を祝うパーティを台無しにしたデウスエクスの襲来から仕切り直すようにして再び催されたケルベロスと猟兵を労う本祭に塗りつぶされていた。
仕方ない。
うん、仕方ない。
恋人がいないからじゃあない。業務がね。人類を守るための大切な仕事がね。あるからね。恋人がいなくってもまあ、仕方ないのだ。むしろ誇るべきである。
そんな『エイル』博士の心中はどのようなものであったかを伺い知ることのできるものはいなかったが、しかし、ステラ・フォーサイス(帰ってきた嵐を呼ぶ風雲ガール・f40844)は、これって完璧に絡み上戸ってやつじゃあないのかなって思った。
「いやぁ、大変だね、うん」
肩を組まれて逃げられないようにしているところからして、『エイル』博士はプロだった。
すっかり出来上がっている。
なのに力強い。
こちらはこれでも猟兵でもあるのだ。
なのに力強くて振りほどけない。
「そうさ、大変なのさ。だからいい年して、なんて言うやつはグーパンチしちゃうぞ! あははっ! おっと……これじゃあ、ジークリット君の後塵を拝することなってしまったのも仕方ないかっ! あはははっ!」
「ジークがどうしたの?」
ステラは首を傾げる。
彼女はケルチューバーとして、ジーク……即ち、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)とPR動画などのコラボを企画したりしていることでも有名である。
当然、そんなジークリットの名前を『エイル』博士から聞けば、どうしたことかと興味を持つものであった。
「彼女、この間なんて言ったと思う? ねえ、なんて言ったと思う?!」
「いや、だからさ、それを知りたいんだけど」
「デートの約束があるって言ったんだよ! この私に! はちゃめちゃ忙しくて大変な私にさぁ!」
デート。
ステラはその言葉に耳を疑った。
デート?
それって、あれか? 逢瀬のこと? 逢引? ひき肉のことじゃあなくって?
「くぅ~彼氏が出来たのなら、それはそうと言ってくれればいいのにさ! 匂わせるみたいに、デートって言ったんだよ、彼女は!!」
その言葉にステラは吹き出した。
いや、だが違う。
それは絶対にない、とステラは心中で言い切った。
なぜなら、あの筋肉ゴリラには、そんな甲斐性はない。加えて、ジークリットの望みは高望みが過ぎるのだ。
そんな存在がポッと現れ、更に言えば、己が知り得ないところで進展があるなんて到底思えなかったからだ。
だが、どうしてそんな風に……そう、ジークリットに恋人が出来た、と『エイル』博士が誤解したのかということは理解できる。
どうせ、デウスエクスが引き起こした事件を穏便に終わらせるために方便として洒落た言い回しをジークリットがしたのだろう。
それを額面通り受け取ってしまった『エイル』博士が、先程の言葉を発したのだ。
否定しよう、とステラが思い立った時、がちゃん、とグラスが床に落ちる音が響いた。
そこにいたのは、変装用ホログラムスキンによって令嬢然とした姿になったヴィルトルート・ヘンシェル(機械兵お嬢様・f40812)だった。
給仕のものたちがお怪我は、とかなんとか寄ってくる。
が、彼女は『エイル』博士の言葉に驚愕していた。
顔面蒼白だと言ってもいい。
腕は震え、唇は戦慄いている。
まるで恐ろしい怨霊の声を聞いたかのような、そんな表情だった。
「も、もし……い、今の発言は、真でございましょうか? ほ、本当にジークリット嬢に、か、彼氏が!?」
それはあまりの衝撃に動揺した言葉であった。
だが、彼女が驚いているのはジークリットに恋人が出来た、という事実よりも、彼女の恋人になったという男性の身を案じてのことだった。
「そうみたい」
ステラは咄嗟に、肯定した。
否定する材料は自分の中にたっぷりあるが、ヴィルトルートの態度に思わず蓋を閉じたのだ。
だって、そのほうが絶対面白い。
「な、なんという命知らず……し、失礼。もの好きがいたものですわ」
正直が過ぎる。
いや、もの好きって言っている時点で、もう相当失礼だと思うのだが、それに気がつけていないのがヴィルトルートの動揺の深さを示しているようだった。
「すんごいマッチョなのかもしれないよ~」
酔っ払っている『エイル』博士の言葉にヴィルトルートは頷いた。
「そうですわね。あの脳筋全開な狼ゴリラっぷりに腕っぷしで負けるようでは到底務まるわけがありませんわ。それか、体が鋼鉄で出来ていないと、抱きしめただけで体が爆散してしまいますわ」
どんなだ、と思わないでもない。
が、それがあながち冗談でもないのがジークリットという猟兵の腕力であった。
「爆散……ちょっとしたスプラッタだね」
「ちょっとどころじゃないでしょ」
「血に染まるクリスマス……はっ! もしや、さんタクロース衣装の赤は、鮮血の赤……なのでは!?」
むちゃくちゃ言うな、とステラは思った。
「恐ろしいな……」
そんな話に花が咲けば、当然周囲にいた猟兵たちの耳にも届くというものである。
「ムハハハッ! あの女傑に男が出来たと!」
テーブルに供されていたクリスマスディナーを片っ端から喰らっていた飛・曉虎(大力無双の暴れん坊神将・f36077)は、口周りを七面鳥の丸焼きの油に塗れさせながら、豪快に笑い飛ばしていた。
彼女は、ジークリットとの面識がある。
一度、ケルチューバーの企画と称して一戦交えているのだ。
だが、それはやらせ感バリバリのものであり、互いに遠慮があったことは否めない。
「あやつの力量……底が知れぬのよな。そんなあやつの男……」
「ほう、ようやくお眼鏡に叶う男が現れたというのか」
威龍(遊侠江湖・f32683)は曉虎の言葉に関心を示す。いや、感心したと言ってもいい。
ジークリットの実力は彼も知っている。
また、彼女が己の婿に求める条件というものも承知しているのだ。
彼女を打ち負かすほどの実力者であること。
だが、世界を見回しても彼女を打ち倒せるだけの力を持ち得たものというのは稀であるし、また互いに思い合うことができる、ともなれば、さらに狭まるものであったことだろう。
であれば、彼が思うのは唯一つ。
「余程、血湧き肉躍る果たし合いだったのだろうな」
「果たし合い?」
ステラは、その言葉に首を傾げる。
想像してみる。
何故か、採掘場の跡地にて刃を交えるジークリットと黒い影の男。
剣戟の音が響き渡り、周囲には爆発の痕が刻まれている。それがこの果たし合いの激しさを物語るものであったのは言うまでもないだろう。
苛烈な戦い。
『ハァ、ハァ……此処まで私を追い詰めるとはな』
『無論、我が剣を受けてなお立ってくる者がいようとは』
『気に入った、とは言え……私も限界のようだ……』
膝から崩れるジークリット。だが、それは黒い影の男も同様だった。
互いに抱きとめるように支え合う二人。
見つめる瞳が揺れている。
至近距離。
先程まで剣戟を繰り返し、火花散る中にこそ相手を見据えていた瞳が、揺れに揺れている。
吐息がかかるほどの距離。
少しでも動けば唇同士が触れる距離に合って見つめ合う二人は……。
ぶはっ!
ステラは思わず想像してしまったが、これはないな、と頭を振る。
そんな彼女の想像劇とは裏腹に威龍はしきりに頷く。
「やはり果たし合いの末に生まれた愛なのだろうな。殴り愛。巡り合い。うむ。やはり、圧倒的強者なのだろう。それならば、一つ己も拳を交えたいものだ」
「兄者! それはなんとも……強き者なのだろうな!」
彼の言葉に想像を掻き立てられたのだろう、曉虎の体が全身総毛立つようだった。
未だ見ぬ強者。
それは兄者と呼ぶ威龍と曉虎にとっては飽くなき強者を求める性。
同様に彼女にも宿っているのだ。
であればこそ、それは本能と呼ぶにふさわしいものであった。
もしも、仮に、だ。
ジークリットの恋人(仮性)ならば、もしかしたら、威龍よりもおっかない男なのではないかと思ったのだ。
ぶるぶるぶるり。
身が震える。
いや、これは恐れではない。武者震いなのだ。
見事にから回っている。
なぜなら、そもそもそんなものは存在していないからだ。
だが、ヴィルトルートを始め、この場にいる者たちは皆、ジークリットの恋人(仮性)がいると信じて疑っていない。
むしろ、話題の中心であるジークリットがいないのを良いことに、各々が勝手に恋人像を構築していっているのだ。
「いやさ、腕がなるわ」
「まて、まずは兄たる己からだ。手合わせというものは」
「であるのならば、我輩からが筋というもの! 兄者を先に出すものがあろうか」
「お前は加減を知らぬ。だが、ややもすれば、お前でも歯が立たぬかもしれぬ。いらぬ怪我をする必要はないのではないか?」
「ならん! 我輩からだ!」
ステラは、そんな二人の脳筋全開の会話に笑いを噛み殺す。
どんどん出来上がっていく謎の強者像。
仮にいたとして、それはもう本当に猟兵の領域に収まる者なのだろうか?
あまりに粗野である。
だが、さらにもう一組、この話題に参入してくる者たちがいた。
「そんなわけないアル!」
「こら、飛燕。興味があるからって性急が過ぎるわ」
二人の会話に割って入ったのは、蒋・飛燕(武蔵境駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』・f43981)であった。
彼女に共するライドキャリバーである蒋・ジュディ(赤兎バニーは誰でしょう・f45088)は突然会話に割って入った飛燕をたしなめるように告げる。
「でもだってだって! そうじゃないアルヨ、恋人同士ってのは!」
「ほう、どういうことだ?」
威龍は飛燕の言葉に首を傾げる。
ライドキャリバーである鋼鉄の体躯、そのライトが申し訳無さそうに明滅するのを彼は手で制した。
気にするな、とでも言うかのようであった。
また事実、威龍は飛燕の言葉に不快感を示したわけではなかった。。
むしろ、興味深げでもあったのだ。
ステラは笑いを堪えていた。
なんだか、どんどん自分が意図せずしても話題が転がっていっているように思えてならなかったのだ。
これは傑作である。
「いいアルか! 女傑とは言えど、身は女性アル! そんな女性の片意地はった心と体をほぐすのはいつだって、優しさアル!」
飛燕は言い切っていた。
まるで自分が体験したように語っているし、己もそうであると言わんばかりの態度であった。
態度だけは恋愛経験豊富そうな立ち振舞であったし、実際自信満々に見えてならなかったのだ。
「優しさは雪が止めるように自分が女であることを実感してく暖かさアル! どれだけ自分を強く律するのだとしても、体の方は燃え上がっているアル!」
「燃え上がっているだと!? なるほど、炎の使い手、ということか!」
「フレイムランチャーかもしれませんわよ」
また好き勝手なことを、とヴィルトルートと曉虎の言葉にステラは笑う。
でもまあ、仮にジークリットの心が意地に固まっているというのならば、フレイムランチャーでもない限りは解けないだろうな、とも思ったのだ。
「張り詰めた糸はいつか切れるものある! そのピンと張り詰めた糸は、必ず体を傷つけるものアル! 弱った心に、優しさはしみるアル!」
ほわんほわんほわん。
ステラはまた想像する。
『……くっ、私としたことが、風邪に倒れるなど』
『いいから、まずは体をゆっくり休めることが大切だよ』
『貴様のような軟弱な男に心配されるいわれなど……ゴホッ、ゴホッ!』
『ほら、日頃から無理していたから。体が訴えているんだよ。さ、まずはゆっくり眠って。食事が出来るようになったら、食べるのも忘れないようにね』
『うう……こんな情けない姿を見られるとは』
『情けなくなんかないよ。それは君がいつも頑張っている証拠だし、僕も知っている。だから、偶には体を休めて欲しいっていうことなのかもしれない』
その言葉にジークリットは風邪による熱ではない、別の熱に顔を赤らめた。
強くあらねばならない。
そうでなければならない。
これまでジークリットはそう育てられてきた。
恥じることなどない。
懸命に生きてきたし、それこそが己の進むべき道だとも彼女は思っていた。
例え、己に敵う男がいなくとも、と邁進すべき道は定めていれば何も揺らぐことはないと思っていたのだ。
だが、今目の前の男は己を認めたのだ。
他の誰にも認められずとも良いと思っていた己の人生を優しく照らしたのだ。
まるでそれは陽光のようだった。
『だから、しっかり休んでね。じゃあ僕はこれで……』
去ろうとする彼の腕をジークリットは咄嗟に取っていた。
『あ……』
思ったより弱々しい声が自分でも出た、と思えたことだろう。
こんな甘えた女のような声が出るとは思ってもいなかったのだ。
だからこそ、一度決壊してしまった想いは止まらない。とめどなく溢れ続ける想いにジークリットは衝動的に従ってしまっていたのだ。
引き込まれる男の体。
自分とは違う、固い感触。
その重みに、今自分は溺れたいとすら思って……。
「とかそんなっ感じアル!」
飛燕の言葉にジュディはヘッドライトを明滅させてハンドルを左右に振った。
「それは飛燕がいつも呼んでいる少女漫画の内容でしょう」
「んなっ!」
「なんだ、その男は。もっとガツンと行かんのか。ガツンと」
曉虎はブンブンと拳を振っている。
ガツンの意味が絶対違うな、とステラは思った。
「だって、漢女から乙女に目覚めていくなら、これしかないアル! そう変えた彼氏が絶対いるアル! ああ見えて、気の強い女騎士は推しに弱いって相場が決まっているアル! 絶対そうアル!」
「案外年下かもしれないわね?」
「と、年下!? そ、それは案外、アリかもしれないアル! 強いからこそ、弱いものにほだされてしまう、そういうの! あり! アル!」
ジュディの言葉一つで、飛燕は目頭を熱くしていた。
瞳は潤み、存在しないジークリットと年下の優しい男性とのラブロマンスを幻視しているようだった。
ジュディは、ちょっと煽っただけでこれなんだから、と呆れ半分であった。
しかしまあ、飛燕の乙女心というものは、面白いものだ。
後から後からありもしない設定が生えてくる。
「確かに押しには弱そうだよね」
ステラはお腹が痛かった。
主に笑いをこらえるために腹筋に力を込めすぎている、という意味であるが。
「ジュディの言う通り、年下ってのは合ってるのかもしれないね」
「ほ、本当アルか!?」
「年下のデートって何処に行くのかしら。単純に趣味が合わないと、どっちかが退屈しちゃう。そんなドライブって嫌よ」
好き勝手に煽る。
それはどうもジュディにもわかっているようだったが、ステラは構わなかった。
楽しければオールオッケーというやつである。
「だがしかし、強さは必須条件なのだろう。いや、前提条件か」
威龍の言葉に曉虎は頷く。
「ムハハッ! 男は女を組み敷いてこそであるからな! 押しに弱いのであれば、それはやはり捨てられぬ条件であろうよ! むしろ! そうでなくては我輩が困る!」
なんで困るんだよ、と思わないでもない。
余程、ジークリットの恋人との手合わせが楽しみなのかもしれなかった。
「まあ、デートというだけで結局私も追求する暇がなかったんだがね」
『エイル』博士はグラスを煽って頷く。
あの時は問い詰めるより早く、颯爽とパーティ会場から走り去ってしまっていた。
「そうなの?」
「ああ、ライドキャリバーでね。風のよう、に……ん?」
そこで彼女は気がついた。
ライドキャリバー。
デート。
これからデート。
ライドキャリバー。
いくつかの符号が噛み合う。
「まさか」
『エイル』博士が何事かに気がついた顔をした。
そう、デート、ライドキャリバー。
点と点が繋がった瞬間だった。
そして、あまりにもタイミングよく、パーティ会場にジークリットが現れる。
その隣りにいたのは、人型形態に変形した真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)だった。
ジークリットの全力ハグを受けても壊れない鋼の肉体。
手合わせを行えるほどの強さ。
年下の優しい男性。
何でも言うこと聞いてくれそう。
「坊やも一緒ね」
ジュディの言葉に『エイル』博士は、その明晰なる頭脳を輝かせた。だが酔っぱらいである。アルコールに冒された脳が正しい答えを導き出せるとは思えないが、しかして時に酒の力は突飛な解を導き出すものだ。
「き、キミかー!! ジークリットの恋人は!!」
指差す『エイル』博士の言葉にシルバーブリットは、目を丸くする。
「えっ!? な、なになに!? なんで?!」
「そうか、そうなのか! キミが……!」
勝手に納得する『エイル』博士。
その声に周囲にいた猟兵達も、その各々の思惑とは裏腹に納得していく。
「ふふ、坊やが狼騎士様の恋人だって、みんなそう思っているのよ」
「なんで!?」
困惑するシルバーブリット。
当然、ジークリットもだ。
「ステラ、これは一体どういう……」
この中で唯一真実を知り得ているステラはお腹を抑えてうずくまっていた。
腹痛か? と心配するジークリットをよそに、ステラは笑いを堪えて涙目になりながら言うのだ。
「お、おめでとう、ジーク、ぶ、っ、アハハハッ! おかしい!」
ステラは堪えきれずに笑い飛ばす。
そこで漸く面々は気がついた。
今まで己たちがしきりに語っていたことは、いずれもがあらぬ誤解――即ち、ジークリットが発した些細な言葉を端に発し、引き金を引いた荒唐無稽な浮名話であったのだと。
そして、当の本人であるジークリットと巻き込み事故にあったシルバーブリットだけが、呆然としている他ない中、笑い声だけが響き渡っていた――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴