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――ルテアの元にプレゼントが届いた。
どこかで出会った誰かだろうか。
考えていると、ルテアの肩から青い羽をぴょこりと出して、興味津々にキルシュが姿を現す。
プレゼントが気になるようで、傍へとちょこんと舞い降りると。
「あ……」
声をかける前にリボンを思い切り引いて袋を開けてしまった。
視界には日差しを受けて、温かな銀色の光が円を描くのが見えた。
――銀製のベル、だろうか。
片手に納まるそれは、細やかな意匠が施されたベルのようだった。
草で編んだリボンが結ばれており、ベルトに取り付けることもできるだろう。
繊細な彫細工はキルシュの羽に似たもので、彼女もそれに気づいてか、指でなぞって楽し気な視線を注いでいる。
「どんな音が聞こえるんだろうね」
声をかけるとキルシュが早くと言うように、ベルを指さす姿に小さな笑いが零れる。
眉を下げ、ベルを揺らすと……疑問を抱くようにベルをもう一度みた。
……音が聞こえてこない。
訝しげに中を覗くと、琥珀色の瞳に青い光が逃げるように零れ出て、ルテアは思わず瞬いた。
光はすぐに納まって、中がぼんやりと光って見える。
どうやら、ベルを鳴らすための振子が入っていないようだった。
でも、それだけではなくて。
ベルの中は淡い光で満たされていて、それが青い蝶の形を成したと思えば、ルテアの目の前を通り過ぎて周囲を飛び回っていく。
最初に驚きはしたものの、光る小さな蝶達を見る視線には親しみが籠る。
形を持つ前の小さな精霊だろう……そう検討をつけながら目で追うと。
自分とキルシュを囲うように飛んで、やがて散り散りに消えていった。
「驚いたね……」
大丈夫かい、と声をかけようと彼女の方を見て気づく。
「もしかして、キルシュには聞こえているのかい?」
ベルに乗ってブランコのように揺らして遊んでいるように見えたが、閉じた瞼はベルの音を聞き入っているように穏やかで。
ご機嫌な様子のキルシュは、目を開けてルテアを見ると、コクリと頷き首を傾げた。
聞こえていないことが不思議なように。
妖精には聞こえる音色、か。
キルシュの表情を見ると、心地の良い音なのは確かで。
聞こえない音色を楽しむ彼女につられて、ルテアも穏やかに目を閉じる。
温かな朝の光は、見守るように二人に降り注いだ。
Feebelle
小精霊を呼ぶハンドベル。妖精のみに聞こえる音に惹き群れて、光と共に零れる囁き
成功
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