ハロウィンデートを一緒に
「おー、賑わってるな」
「楽しそうなの♪」
ハロウィンのその日に日野・尚人(f01298)とシェイミー・ソルラフィス(f00895)がやってきたのは、アックス&ウィザーズのとある街。
聞き慣れないけど楽し気な音楽があちらこちらから響いてきて、店に家に外灯や花壇、木々や道にも華やかな飾りが施されている。飲食店だけでなく屋台も並び、美味しそうな香りが漂っていた。
「にーちゃ、一緒に見て回ろう? 色んな出し物が一杯なの♪」
街の雰囲気にわくわくを募らせて、シェイミーは尚人の腕を引く。
その様子に尚人も嬉しそうに笑いながら足を進め。
ふと目に入るのは、シェイミーの仮装。いわゆる踊り子の衣装。
胸はホルターネックのように布で覆われているけれど、結い上げた髪の下でうなじから首筋、肩から胸元は白い肌が眩しく。華やかに煌めく装飾品も、お腹や腰を隠せてはいない。スカートのような長い布は、すらりとした美脚を隠す気がなく、薄くふわふわひらりと、歩く度に艶やかな太腿までが見えてしまうから。
ついつい尚人の視線は、肌に釘付けになってしまって。
「にーちゃ?」
きょとんとして首を傾げるシェイミーに、ようやく我に返ると。
「い、いや! その服、可愛いな、って……」
「うん。クォタトゥクルが選んでくれたの♪
『この後面白くなりそうだから着てみろ』って」
シェイミーが挙げた名は、少女と融合している魔剣の銘。その存在も知る尚人は、普段と違う、シェイミーが自分からは選ばないような衣装に納得して。
(「クォタトゥクル~っ! 俺で楽しんでるだろ!」)
心の中で魔剣に叫ぶ。
当然そんなものは魔剣にもシェイミーにも届かないわけで。
「にーちゃ、目を逸らしてどうしたの? やっぱりこれ、似合ってないの?」
「そ、そんなことないぞ! うん、可愛い可愛い!」
自身の魅力に気付いていない純真なシェイミーゆえに、目を逸らすことすら許されず。
「何? クォタトゥクル? 『その内慣れるだろうから心配するな』?
……そうなの? にーちゃ?」
(「どう答えろって言うんだよ……」)
魔剣がにやにや笑ってそうな気がする中で、尚人はどうにか気持ちを落ち着かせた。
「ほ、ほら。せっかくのお祭りなんだから、楽しもうぜ」
「うん。にーちゃと楽しむの♪」
ぎこちない笑みに返ってくるのは、心の底から楽しそうで嬉しそうな笑顔。
シェイミーに見えないところでため息をついた尚人は。
「……ん?」
ふと、視線を感じた気がして振り返った。
しかし見えるのは、ハロウィンに盛り上がる街の景色だけ。特に気になるようなものは何も目に映らないから。気のせいかと思いながらも尚人はきょろきょろ辺りを見回し。
「にーちゃ、これ見て。綺麗なの♪」
「ああ、今行くぜ」
シェイミーに呼ばれて、踵を返した。
「ふう。危なかったわ」
「ポーラちゃん顔に張り付かないで。見えない見えない」
その時。ポーラリア・ベル(f06947)とアイシャ・ソルラフィス(f06524)は建物の陰に身を潜めていた。
尚人が感じた視線の正体はこの2人。慌てて隠れたそこから、そっと顔を出して。
「……なんでボクはポーラちゃんと一緒に、尚くんとシェイのデートを、スネークさんしてるんだろう……?」
今更ながらにアイシャが呟く。
「シェイを探していただけなのに、何故かポーラちゃんに掴まって……」
「だって、なおなおとしぇいしぇいが秘密の動きをしてるのだもの。
これはつけて狙わないとと思ったのよ」
当然のように答えたポーラリアは、くるくるとアイシャの周囲を飛び回ってから、アイシャの服のポケットに飛び込んで。そこから顔を出して改めて2人を覗き見る。
「しぇいしぇい、ポーラの服みたいなの着てる! 踊るのかしら踊るのかしら?」
「シェイにはまだあんな服装は早いような……
でももう14歳だし、そんな事もないのかな?」
やっぱり目が向くのは、普段と違い過ぎるシェイミーの大人っぽい服装にで。
「でもってなんで尚くんは鼻の下が伸びてるんだろ~ね~」
「きゃー。なおなおのえっち~」
「ポーラちゃん? ポケットの中では静かにね」
ひそひそ声を交わしながら、尚人とシェイミーの後を追っていく。
2人はいろいろ寄り道しながらゆっくりと、お祭り騒ぎな街を進んでいくから。
「むぅ。尚くんとシェイ、楽しそう」
しっかり自分達も合間でお菓子やら飴やらを買って手に入れながらも、アイシャは2人の笑顔に口を尖らせる。
「2人っきりじゃなく、ボクとポーラちゃんも誘ってくれたらよかったのに」
いつもなら誘ってくれてるのに、と不満を露わにしながらも。楽しそうな2人の姿に、割り込んでいくこともできず。
(「2人だけで
お出かけしたかったのかな?」)
「むぅ……」
それはそれで複雑なアイシャはまた口を尖らせた。
「あ、なおなおとしぇいしぇいが踊り出したわ。
良いなーたのしそう。音楽はここまで聞こえるし、ポーラも踊り出しそうだわ」
一方のポーラリアは呑気にはしゃいでいて。
「ポーラちゃん!? ポケットの中では静かにね!? 踊らないでね!?
尚くんがきょろきょろしてるからね!?」
「まかせてあいあい。見つからないように踊るから」
「だから踊っちゃダメ! 静かに!」
自由奔放なフェアリーに、アイシャだけがあわあわするけれど。
(「尚くんとシェイはともかく、クォタトゥクルには絶対に尾行がばれてる気がする」)
たぶん面白そうだからって放置されてるんだろうなー、なんて思うところもあり。
割と楽しく、尚人とシェイミーの行動をなぞるかのように、追いかけていく。
食べて踊って歌って笑って。2人と2人がそれぞれにお祭りを楽しむ中で。
シェイミーが気付いて足を止めたのは、何だか暗い顔をしている男達の前。
声をかけ、しばし話を聞いたシェイミーは、尚人に何かを提案したようで。
男が指差した方向――街の外へとシェイミーと尚人は向かっていった。
「どこ行くんだろ?」
「ついていってみよう!」
当然追いかけるアイシャとポーラリア。
家の数が少なくなり、街の入り口を出て、まだまだ進めば。
「森に入っちゃった」
「秘密のあれやこれやかしら。それとも、季節外れの肝試しかしら。
……怖くないよね? あいあい」
「全然大丈夫だけど」
「先行して安全な道探しておこ。フェアリーは旅の導き手ですのでー」
いつの間にか、ポーラリアの片手には小さいカンテラが火を灯していて。ゆらゆら揺れながら森の中へ分け入っていく。
「あっ! ちょっと待ってポーラちゃん!
森の中は、エルフで精霊術師のボクの専売特許なんだから!」
アイシャも慌てて、ちょっと張り合いながら、ポーラリアの後を追った。
「クォタトゥクル? 何かみつけた?
『ちゃんと着いて来てるから大丈夫』? よく分からないけど大丈夫ならよかったの」
鬱葱とした森の中を、シェイミーはどんどん進んでいた。
街の人から聞いたのは、近くの森に現れた魔物の話。
街にまで襲いに来たら大変だし、不安で祭りを楽しめていない人達も可愛そうだし、と引き受けた魔物退治だけれども。
「今日はクォタトゥクルの誕生日なの♪
たーくさんの御馳走、食べさせてあげるからね♪」
シェイミーには、もう1つの理由があって。むしろそちらが本命とばかりに、暗い森を明るい笑顔で歩いていく。
でも、下草や生い茂る木々の枝葉に衣装の端が引っかかってしまい。
「そういえばこの衣装のまま来ちゃったの」
ちょっと困り気味なシェイミーの頭を、尚人がぽんっと軽く叩いた。
「でも、また祭りに戻るには、いいか」
「そうなの。サクッと倒してお祭りを楽しむの♪」
にっと笑う尚人にシェイミーも笑顔を零し、2人で楽し気に笑い合う。
そこに、魔物が現れた。
ハロウィンっぽく南瓜頭をした不気味な魔物は、しかし数こそ多いが大した相手ではなかったから。少し動きにくい仮装のままでも2人は苦戦することなく。斬って撃って、次々とその数を減らしていく。
むしろ尚人が困ったのは。
(「いろいろ見えそうなんだよなぁ」)
シェイミーの際どい衣装にで。シェイミーが剣を振るい、身を翻す度に、見てはいけないところに目を奪われそうになってしまっていた。
そんな尚人の戦いも、実際の戦いも、だがすぐに終わりが見えてくる。
しかし南瓜頭の最後の一撃が、シェイミーの首の近くを掠めると。そこで結ばれていた布がはらりとはだけ落ちた。
「取れちゃったの」
「!!」
一気に増えた肌色に、咄嗟に後ろを向く尚人。見たいけど見ちゃダメだとぎゅっと目を瞑っていたけれども。
「にーちゃ、これ結んで欲しいの」
「!?」
1人では着直せなかったシェイミーからの純真なお願いに尚人は息を呑む。
この場には尚人しかいないから直せるのは尚人だけだけれども、シェイミーの無防備な白いうなじが向けられていて、結び直そうとする手が艶やかな肌に触れてしまったりもするから、その先の柔らかな胸とかがすっごく気になってしまったりとかで……
ぐるぐると理性と欲望とを混じり合わせながら、尚人は手を伸ばし。
意を決して、解けた布を結び直した、ところで。
がさがさっ!
「!?」
「まだ魔物なの?」
揺れる茂みに尚人は布を、シェイミーは魔剣の柄を握りしめた。
しかし。
「……え、待った方が良いのクォタトゥクル?」
きょとんとシェイミーが首を傾げたところで。
「やっぱりバレてる……」
「あっ、見つかっちゃった!?」
「あれ、ねーちゃと妖精さんだ。どうしてこんな所に居るの?」
「あーちゃんとポーラ?」
現れたアイシャとポーラリアに、シェイミーと尚人は目を瞬かせた。
でも、魔剣からは動揺の気配は何も伝わってこなかったから。
「もしかしてクォタトゥクル、ずっとねーちゃと妖精さんが付いてきたの知ってたの?」
「えっ!?」
むー、と不貞腐れた顔を見せるシェイミーに、尚人は驚きの声を上げる。
あはははと誤魔化すように笑うポーラリアは、その矛先を変えようと。
「それでー、2人は森でその格好で何してたの?」
「何、って……」
問いかけに、尚人はハッとする。シェイミーの服を握っているこの状況が、見様によっては、服を脱がそうとしているところにも見えることに気付いて。
「こ、これは別に疚しい事をしてる訳じゃなくて……」
「え? なんで尚くん、慌ててるの?
あやしいな~? なんで慌ててるのかな~?
どうして尚くんはシェイの服を掴んでるのかな~?」
「いや、だから、違……っ」
にやにや揶揄うアイシャにさらに慌ててしまえば、もうやましい事をしていたようにしか見えなくなってしまうのだけれども。
そんな事に気付かず、シェイミーは素直にアイシャの問いに答えた。
「にーちゃと一緒に魔物狩ってご飯だったの♪」
「そ、そう! 人助けの魔物退治! ホントだって!」
「ふ~ん?」
さらにじーっと尚人を見つめるアイシャ。もう冷や汗しかない尚人。
あはははとポーラリアがくるんと宙返りして。シェイミーが首を傾げるから。
「そういうあーちゃん達は何してたんだよ!?」
尚人は話を変えようと、必死に問いかけた。
充分揶揄えたと判断したか、アイシャはあっさりと矛を引いて。
「うん、ポーラちゃんと2人で一緒にシェイを探してたんだよね~!
お誕生日おめでとうって言いたいのに、どこに行っちゃったんだろうって」
シェイミーは、目を瞬かせてから、ぽんっと手を打った。
「そう言えば私も誕生日なの♪」
融合している魔剣が誕生日なら、シェイミーも同じ日が誕生日。
それにようやく気付いたらしいシェイミーに、尚人は苦笑して。
「シェイの誕生日を俺なりに祝ってやろうと思って、さ?」
2人だけで出かけた理由を明かしながら。
「でも、夜には家で誕生日パーティーをする予定だったろ?
あーちゃんとポーラはその時でも……」
「うん。でもやっぱり早くお祝いしたくて」
「なおなおだけじゃないのよー♪」
同じ思いだったことを確認して、笑い合う。
その笑顔の中でシェイミーは、本当に幸せそうに目を細めて。
「皆に祝ってもらえてうれしいの♪ また一緒に、ずーっと暮らしていこうなの♪」
「へへ♪ そうだな♪」
尚人は頷き、シェイミーを、アイシャを、ポーラリアを、順に見つめた。
「4人一緒に……
家族だからな♪」
成功
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