大きいのから、中くらいのもの、小さめのものに手のひらサイズ。
まあるかったり、ちょっとノッポだったり、逆にずんぐり太っちょだったり。
ずらりと沢山並ぶのは、そう――たくさんの南瓜!
そして、ころんとした様々な大きさの南瓜を見つめるのは、おばけさんたち……!?
でも、そんなおばけさんたちの姿にも、驚く人はここには誰もいない。
だって何せ今日は、みんなおばけなハロウィンなのだから!
いや、ハロウィンなのだから仮装……ではあるのだけれど。
見目はとてもキュートなメリーさんの、黒電話とテディベアが……ふよふよ宙に浮かんでいます!?
その光景はある意味ホラーであり、現にメリーさんの仮装をしている彼女――百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)が住んでいるところも、どう見ても三階建てである建物の存在しないはずの四階だという、これまたホラーな感じであるというし。
実際に小道具の黒電話が浮いているのも、テディベアのリアムを媒介に呼び出した善霊さん達にお願いして、両手を自由に仕えるようにお願いしたからであって……ホラーな心霊現象といって、正しいのである。
そしてそんな智夢の、3階建てアパートの4階のおうちに遊びに行ったこともあって、普段から遊んでもらってもいるから。
彼女に懐くように一緒にやって来たのは、ひらり色づいた葉っぱのようなスカートを靡かせた、秋の夕暮れの妖精さん。
そんな妖精さんこと、シゥ・フリージア(純真無垢な野生姫・f03749)は、きょろりと巡らせる瞳をキラキラ。
「はろいんだー! かぼちゃいっぱい、すごいすごい!」
そう……だってハロウィンは、ニンゲンのおまつり。
森で動物達のみんなとすごしてた時は、無かったものだから。
元々動物と暮らしていて人間社会への馴染みが薄いシゥにとって、いつもと違ったハロウィンの光景は、物珍しいものでいっぱい。
そして、はろいん! とはしゃぐ彼に。
「シゥさん、はろいんじゃなくて、ハロウィンですよ」
「はろい……い……?」
「ウィ……言ってみてください」
基本人見知りで話すのが苦手なのだけれど、でも相手がシゥならば、幼子を相手しているような気軽さもほんの少しだけあるから。
智夢はゆっくりと優しく、そう教えてあげて促せば。
ぱちりと瞬きつつも頑張って、真似っこしてみるシゥ。
「はろい……うぃ……うぃん! うぃーん!」
そして――うぃんうぃん!! って。
うぃん、と言えるようになれば、何だかすごく嬉しくなって。
今日もサングラスと特攻服がワイルドなぴよちゃん隊長と一緒に、智夢の周りをくるくるぱたぱた、飛び回っちゃう。
それから、ちょこんと頭の上に座ってみた彼の様子を見守りつつも、ほわりと。
無邪気に喜ぶその姿に微笑ましくなる智夢であった。
そして今回、ふたりがハロウィンのお祭り感でいっぱいな、この場で体験するのは。
(「ジャックオランタン……シゥさんが作りたいと言うので来ましたが」)
そう――ハロウィンといえばな、ジャックオランタン作り!
だから、たくさんの南瓜がここには用意されてあるわけなのだけれど。
智夢はうきうきしている彼と、周囲の南瓜たちを、順にそっと見つめてから。
小さく首を傾けつつも、ふと思う。
(「シゥさんでも出来るサイズの南瓜って……あるんでしょうか……」)
何せ彼はフェアリー、小さな体にぴったりなサイズのものが、果たしてあるのだろうかと。
けれど、少しシゥには大きめだけれど、手のひらサイズの南瓜だったら大丈夫そうで。
智夢もひとつ、スタンダードなかたちの普通サイズのものを選んでから。
「シゥさん、お互い作りたいデザインを南瓜に描いてみましょうか。それから順番に、一緒に作りましょう」
「かぼちゃ、おえかき? うん、する! チムおしえて!」
作り方を確認しつつ、早速ふたりで一緒に、作業を始めてみることに。
そんな智夢が南瓜に描いてみるジャックオランタンの顔は、無難によくあるデザインのものにしてみて。
「チムの描くおかお、とってもかっこいい」
……むむ、よし、シゥもがんばるぞ、と。
シゥも気合十分、南瓜にお顔を描き描き!
おめめに、お鼻に、お口に――頑張って一生懸命、描いてみたのだけれど。
画力が皆無な故に……まるで2、3歳児の落書き並みのふにゃふにゃな、ジャックオランタンが爆誕!?
それから顔を描き終われば、今度は南瓜の底を切り取る作業。
智夢が危ない道具を持って、シゥはその手を支えてお手伝い。
(「それなら、妖精さんサイズでもきっと楽しめると思うから」)
智夢はそう彼と一緒に共同作業をしつつも、ふたつの南瓜の底を確りと切り取って。
切り取った部分から種を引き出した後、次は南瓜の中身をくり抜く作業。
身体が小さなシゥにとっては大変だろうから、全部一緒にでもいいのだけれど。
「くり抜くのは……お一人でも出来そうですか? 少し力仕事になりそうですけど……」
でも智夢は、こうも思うから――出来そうな事はちゃんと自分でやらせてあげたい、って。
そして訊ねられれば、こくりと張り切って頷いて返して。
「くり抜くは、スプーンでやればいい? シゥできる、ひとりでもだいじょぶ!」
ぎゅっとしっかり、やっぱりちょっぴり大き目なスプーンを、気合十分抱きしめつつも。
全身使って――よいしょ、よいしょ!
ぐりぐり、南瓜の中身をスプーンでくり抜いていくシゥ。
その作業はちょっと疲れるけれど、でも休むことなく、よいしょよいしょ!
だって……とってもたのしい! って、心はずっとうきうきなのだから。
それから中身を綺麗に取り終われば、またふたりで慎重に。
今度は描いた線に沿って、顔を切り取れば――ジャックオランタンの完成!
普通サイズのスタンダードなジャックオランタンと、小さいサイズのある意味愛敬のあるジャックオランタン、ふたつを並べて。
中に、燃える危険のないLEDライトを灯して入れてみれば。
「! かぼちゃ、ぴかぴか! チム見て、きれい!」
「シゥさんのも、私のも……ジャックオランタン、上手にできましたね」
「じゃくおらん、とってもかっこかわいいおかお!」
灯りがともったおばけ南瓜に、シゥはぱあっと笑顔ではしゃぐけれど。
「シゥさん、ジャックオランタン、ですよ」
智夢にそうまた教えて貰えば、ちょっぴり考えてから。
「じゃっく、お……らんたん?」
「そうです、上手に言えましたね」
「じゃっく、おらんたん!」
作るのも、名前を言うのも、とっても上手にできました!
それから、仲良く並んで灯るジャックオランタンを作り終えれば。
残っているのは、取り出した南瓜の中身。
そんなくり抜いた南瓜だって、しっかりと全部使いたいから。
智夢はこんな提案をしつつもシゥへと訊ねてみる。
「あとは、中身で何か作りましょうか。南瓜スープと南瓜プリン、どっちがいいですか?」
そしてそう訊かれれば、彼が選ぶのはもちろん。
「シゥ、プリンがいい! あまいがスキ!」
甘くてぷるんとした、南瓜プリンです!
というわけで、次は南瓜プリン作りをふたりでやってみることに。
いや、野生児ゆえに、野性的で動物的な料理しか知らなかったシゥだが。
智夢に教えて貰って、彼女のおかげで調味料の使い方は覚えたし。
オーブンをあたためておく際も、もうむやみにいろんなボタンを押したり触ったりはしません、ええ。
好奇心からボタン押しまくったり妙な使い方しまくって、レンジは爆発させた事があるという過去が、実はあるから。
というわけで、人並みに料理が出来る智夢のお手伝いをシゥはしつつ。
レンジであたためた南瓜を一緒に潰して、裏ごしして、滑らかにして。
材料を入れてじっくり混ぜ混ぜ、プリン生地を作って、オーブンにイン。
規定の温度と時間、きっちりと焼き上げれば――南瓜プリンも完成!
というわけで、ジャックオランタンと南瓜プリン、どちらもばっちり出来上がって。
準備が出来たら一緒に、いただきます!
沢山頑張って南瓜の中身をいっぱいくりぬいたから、南瓜味がとても濃厚で。
その美味しさに思わずにこにこ、瞳をキラキラさせながらも。
シゥはふと、ほわりと灯りをともした、ふたつの南瓜おばけをじいと見つめてみて。
(「シゥの作ったじゃっくおらんたん、チムのよりかっこよくないけど」)
……でもだいじなおもいでなったから、って。
智夢へと目を向ければ、今の気持ちをこう彼女へと告げる。
「シゥ、またチムとおでかけしたい!」
だって、こんなにわくわくで嬉しいって、思うから。
そしてそんなシゥの言葉に、智夢もこくりと頷いて返して。
「ふふ、そうですね。またどこか行きましょう」
ジャックオランタンたちが仲良く見守るように並んで灯る中。
そうふたりで、わくわく楽しみな約束を。
成功
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