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――ちゅりり、ちゅりりり♪
小さな洋食店『しまふらい』では看板娘でもある可愛らしいシマエナガの歌声が店内BGMがわりに流れている。今日もご機嫌の囀りだ。
そこへ差すドアベルの音に「いらっしゃいませー!」と即反応するのは歌っていた当鳥、島江・なが(f42700)だ。
ながをちらりと見遣りそのまま奥にいる志摩夫婦に向けて軽く会釈をした客人は、通い慣れているのか、ながの案内を待つことなく隅っこの席へと向かった。
「若葉さーん! 待ってたですよー!」
翼を広げて店内を飛んでいくなが。
客人が予約席の札を退け、今にも着席しようとしていたテーブルの端に着地する。
待ってた、と告げたながの言葉に思わず動きを止める鵯村・若葉(f42715)。表情こそは静かに見つめるものだが、目は僅かに据えられ怪訝そう。
「若葉さん、今日はお早いですねぇ? お仕事、早く終わったんですかぁー?」
何となく探り探りの気配を醸し出すながに、若葉はやや警戒する。
「……ええ、珍しく仕事が早く片付いて定時に帰れたので……」
夕食の時間としては早くなってしまうがゆっくりするのも良いだろう。そう思っての来店だった。鞄と上着を荷物置き場に置くも、ながはやや仁王立ちでテーブルに立っている。注文を取る気はないらしい。
「なが、今日はお休みなんです!」
「そうですか」
「なが、今日はお祭りに行くんですよ! 楽しみにしてたんです! 若葉さんも一緒にお祭りいきましょー!」
「いえ、お断りします」
着席しながらさらっと告げる若葉。ながは『ガアァン』という顔になり「なっ、なんでですかぁ!」と若葉に詰め寄った。
(「……ゆっくりしたいと思っていたのに、祭り? あんな騒がしい場に?」)
祭りの喧騒を想像するだけで萎える。通勤時に嫌でもまみえる都会の往来だけで充分だ。
壁際にあるメニュー表を取りながら若葉は素っ気ない対応を続ける。
「人も多いし行きたくありません。……アムレットさんを誘ってみては?」
仲が良いでしょう? そんなニュアンスを込めて促してみれば、ふふん、とテーブル上のシマエナガは胸を張った。
「もうお誘いしてありますよぅ! 一緒にいきましょーって! グラースさん、このあと来るですよ」
「……もう誘っているんですね。なら、自分が居なくても大丈夫でしょう?」
若葉の言葉にながは「ううー」と呻く。
「やっぱり……。断られるとは思ってましたけどぉ
……、……でもぉ、若葉さん、居た方がいいですよぉ」
「以前、獣人戦線でアムレットさんと屋台で食事していたでしょう? それとそう変わりません」
「変わりますぅー! ながとグラースさんの二人っきりで、目的地に辿り着けると思ってるんですか???」
…………。
とんでもない脅迫だ。
ここに行くですよぉ、とながはお祭りのチラシをテーブルに広げている。若葉が視線を落とせば何駅か先の場所であった。
(「アムレットさんが居るのだから大丈夫だろうに――いや、しかし彼女は異世界の……」)
そう考えている最中に再びドアベルの音――入店してきたのはグラース・アムレット。若葉と同じように店の夫婦へと会釈をし、軽く店内を見回してこちらに気付く。
「こんにちは、ながさん、若葉さん」
「グラースさん! いらっしゃいませー!」
歓迎するかのようにながは翼を広げた。自然、彼女の足は若葉の着くテーブルに向く。そして、
「親分、僕もいるよ」
グラースの後に続いて入店してきたのは檍原・颯汰だった。
「ほぇ、颯汰さんもいるですね! 颯汰さんも一緒に行くです?」
ながが期待の目で見れば頷きが返ってくる。わぁい! と彼女は喜んだ。
「こんにちは、若葉さん」
二人がテーブルに寄ってきたので若葉も挨拶にと立つ。
「アムレットさん、それに檍原さんも。お疲れ様です。――檍原さんも一緒ならそちらの世界とこちらの世界は似ていますし、島江さんもより安心して行けますね」
では、皆さん楽しんできてください。
流れるようにそう言おうとしたら、ふわふわな二対の翼がぱしっと若葉の手首を挟んだ。
じっと若葉を見つめ、そしてグラース、颯汰へと視線を送るなが。
「ええと、若葉さんも一緒にお祭りに行きませんか? 最近忙しかったから、気分転換も必要かと思いまして……。戦場から日常へ戻るにも、何か特別な休暇を挟むと良いと聞いたことがあるような無いような」
「ほらぁ! グラースさんもこう言ってます! なが達、帝都櫻大戰頑張りましたし! たまには息抜き必要ですよ! ねっ!?」
女子陣の説得を受けて、若葉は思案気な雰囲気だ。
手首を挟む翼を見遣る。空を羽撃つ力強い翼は、今は柔らかな日常を映すように。
(「……彼女はいつもしっかりしているから忘れがちですが、まだ幼い。少しは、甘やかすのも必要でしょうか
……?」)
「……断るなら、なが、ここで大泣きしますですよ」
とんでもない脅迫だ(二回目)。
「まあ、戦場で強張った心身を解すには良い機会じゃない? ……あと、僕が案内するにも二対一はちょっと……」
言葉後半颯汰が濁せば、えっ、どういうこと。みたいな表情になるながとグラース。
彼の懸念は理解できる、と若葉は心の中で頷いた。好奇心のままにふらり迷子になりそうな二人だ。
「島江さん、大泣きする必要はありません」
若葉は両翼からそっと手首を抜く。そのまま指先でながの頭を撫ぜた。
ちらりと志摩夫婦の居る方へ意識を向ければ、何だかにこにこと見守られている様子。
「……息抜きが必要なのも確かでしょう。一緒に行きましょう……」
軽い溜息と共に出された了承に、三人は「やったぁ」と喜びあった。
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「寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!」
「甘酒は如何ですか」
「参拝される方はこちらへ!」
神社の境外にまで伸びた屋台通りを見て、夕暮れのなか輝く数多の提灯を見て、そして賑やかな人々の往来を見て、ながは「わぁぁ!」と歓喜の声を上げて目を輝かせた。
「すごいです! これがお祭りなんですねぇ」
雑踏を抜けてくる祭囃子は軽快な音で、ながの囀りも「ちゅりちゅり」とリズミカル。
「東京はいつも人が多いですけど、お祭りにはぎゅぎゅっと人がいっぱいいるです」
はぐれないように気を付けないとですねぇ……。
続いたながの神妙な言葉に頷いたのは、彼女を抱っこして歩むグラースだ。
「夜になると人も多くなってきそうですし、人波に流されないようにしなくてはいけませんね」
「ですです。まんがいち迷子になったら連絡ですねい」
「待ち合わせするとしたら、あの提灯が連なる櫓の下とかいいかもね」
たくさんの提灯が並び輝く櫓を指差す颯汰。
「ではそれで。混雑してくるとスマートフォンの電波も飛び難いでしょうから。――島江さん、アムレットさん、どの屋台から覗いていきますか?」
「お祭りの食べ物を食べてみたいですねい! グラースさん、どれから食べていきましょー?? いろんな食べ物がありますよっ」
「そうですねぇ、定番の……あっ、シェアしやすいたこ焼きはどうでしょう?」
と言いながら近くの屋台へとグラースが向かって行けば、自動的にながも運ばれていく仕様だ。
「聞いておきながらコッチの答えを待たずに行ったね……」
「我々はすぐそこの屋台で飲み物を買って向かいましょうか……」
まあ目的地(たこ焼き屋)は分かっているので、ある意味信頼があるからこその行動だろう。持ち運びしやすいようにペットボトル飲料を買って二人を追う。
丁度たこ焼きを受け取っていたグラースが振り返りつつ、にっこり笑った。
「あっ若葉さん、颯汰さん、ロシアンたこ焼きを買ってみましたよ!」
「なんで??? 『定番』はどこに行ったの?」
ピリッと辛いキムチとチーズが入っているらしい。颯汰が呆れたように突っ込んだ。
屋台通りを横に外れた境外の路上には飲食スペースが設置されていて、そこで食べようという話になればさらに焼きとうもろこし、じゃがバター、たこせんと買い込んでゆくグラースとなが。
「甘味は食べ歩くとして、まずはこれで!」
「……では自分はキムチーズ入りのたこ焼きを頂きましょう」
「若葉さん、どれか分かるですか? どうやって分かるですか?」
ながはたこ焼きを見ながら、これかな? これかな? と左右に首を傾げ不思議そうに訊ねている。愛らしい鳥の動きにふと和む若葉。
「……気配で何となくですね」
そう言って若葉が爪楊枝を持つと、グラースがたこ焼きをスススと遠ざけた。
「若葉さん。優しいのも結構ですが、若葉さんの取り順は一番最後にしましょう」
「……分かりました」
「普通のたこ焼きにしてればよかったのに~。チーズ入りならそう辛くはないと思うけど……」
若葉と颯汰の気遣いを笑顔で封殺したグラースが「じゃあ私はこのたこ焼きで」と一つ取り、お次はなが。
ながは取り皿に転がるたこ焼きを啄んではふはふと食べる。
「まだあちあちですねぇ。はふっ……! おとーとぶん達も火傷に気を付けるですよぉ」
ながの言葉に「はぁ」とか「うん」とか、やや気の無い返事をする弟分二人。
「えへへえ、前にもこんな感じでごはん食べましたねぇ」
春のピクニック、獣人戦線での屋台ごはん、色んなご飯を共に食べて来たことを思い出しながらながはニコニコと嬉しそうに食べている。
屋台通りの喧騒が少し遠く感じるこの飲食スペースも、それはそれで結構な賑わいだが、不思議と落ち着きを齎す場所だ。
キムチーズ入りのたこ焼きを食べながら、卓を囲む面々や周囲の気配を意識する若葉。
(「……祭り会場に入った時は、想像以上に騒がしくて少し耳が痛いくらいでしたが――」)
けれど、以前遠巻きに見た時よりも不快ではないように思えた。
それを少しだけ不思議に思いながら――楽しそうに喋っているながとグラースから、颯汰へと視線を移した。
「そういえば檍原さんは、こういった祭りは……」
参加したことが? というニュアンスをきちんと受け取ったのだろう。颯汰は「んー……」とたこせんを食べながら何かを思い出そうとしている表情に。
「あんまり覚えてないけど、『子供だった』頃は小さな祭りによく参加してた気がするかなぁ」
「そうですか。きっと自治体で催すものでしょう。……こういった場所に訪れるのは、自分も幼い頃以来……かもしれません」
若葉と颯汰の会話にちゅり、とながが注目する。
「小さいのお祭りもあるですか?」
「ええ、規模それぞれですが。本当に小さなものは事前に祭り用の券を買って、それと品々を交換したりもするのですよ」
電車の切符みたいな色とりどりの祭り券の存在を説明する若葉。
「町の神社に御神輿担いで行ったりもしてたね」
「ほええ、いろんなお祭りがあるんですねぇ! なが、行ってみたいですよぉ!」
颯汰の言葉にも目を輝かせてながが言う。
「では、次は――来年の夏かしら? どこか商店街のお祭りに遊びに行ってみましょうか」
ちょっとだけ先の約束。グラースの言葉に、元気に返事をするながだった。
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「おかあさん、わたあめ買ってぇー」
軽い食事を終えて祭りの喧騒へ戻った四人。
ふわふわのわたあめやパンパンに膨らんだキャラクターの袋を持っている子供が多くなってきて、強請る子たちの声にながが注目する。
今は颯汰の頭の上に乗せてもらっていた。
「わたあめってもふもふですよねぇ。どう作るんでしょう……?」
「あ。僕もそれ気になるなぁ」
「颯汰さんも知らないんですねぇ」
二人の不思議そうな声に、周囲を見る若葉とグラース。
「わたあめ屋さん……あっ、あそこにありますね」
「わたあめはあの機械で作るんです」
指差したグラースや説明をする若葉に先導されて屋台へと向かう。
高速回転する機械から出てくるフワフワとした細長い綿のようなものを、割り箸でくるくると絡めとる屋台主の手際。興味津々にながと颯汰が覗き込む。
「ザラメ糖というものを熱して液体にし、それを空気に触れさせて冷やすことであのようになると聞いたことがあります」
「ほええ、普通のお砂糖使うんじゃないんですねい……」
若葉に教えられながら、実演されるわたあめ作りを眺めるなが。教師と教え子のような二人の微笑ましいやり取りに、顔を見合わせたのはグラースと颯汰だ。その口元は笑んでいる。
「私のいた国ではわたあめの日がありましたね」
よく買いにいってました。とグラースが代金を払い、わたあめを受け取った。
「ふふ、当然ですがながさんより大きいですね。さ、食べていきましょう」
わぁい、と颯汰の頭から降りてわたあめを啄むながの様子は無邪気で可愛らしい。
口の中ですぐに溶けていくふわふわはとても甘い。
「屋台ご飯とわたあめ、他に何か気になるものはある?」
「なが、ゲームみたいなやつも見てみたいです。あっ、射的がありますよぉ!」
颯汰の問いにぴしっと翼で示すながの先に、射的屋さん。
小さな置物や駒を銃で狙って撃つ、定番の遊び屋台だ。
「ちょっとこの銃はなが、上手く使える気がしませんねぇ。皆さん、挑戦するです?」
「折角だからやっていきましょうか」
「射的……昔挑んだ時は全くと言っていいほど当てられなかったのですが」
率先して射的銃を取るグラースと、何やら色々言いながら手にする若葉。
「組織で訓練した今なら、多少は当てられる気がします。……アムレットさんほど銃の扱いに慣れているわけでもありませんが」
「あら、でもこれはコツがいりそうですよ? 若葉さんはどれを狙います?」
「…………色んな意味で現職の二人がなんか言ってる。僕は、銃はあまり扱ったことがないからなぁ。親分、目がいいでしょ。スコープ役してよ」
二人をスルーしつつ、ながを肩に乗せた颯汰が言う。
応援するつもりだったながは嬉しそうに「はいですよ!」と応え、じゅりりっと気合を入れる声。
若葉は賽子型のキャラメルパックを三つ。グラースは動物キャラクターのキーホルダーを四つ。
二人は見事にコルク弾でテンポよく当てての快挙だ。
そして、なが&颯汰ペアは大きめのぬいぐるみの急所(?)に当てて転がした。
「的は大きいけど、大物仕留めました!」
「わあ、すごいですね!」
喜ぶながとグラースの声は弾んでいる。
景品を受け取った若葉とグラースはそれぞれに配っていった。
「キャラメルも懐かしいものですね。今日を思い出しながら、少しずつ食べていきます」
「ありがとう、若葉さん、グラースさん」
キャラメルもキーホルダーも、今日を想起するものになりそうだ。
「ありがとうございますですよ~♪」
いろんな景品が取れてほくほく気分のながは上機嫌。
「……そういえばお祭りの射的って難しいって聞いたことあるんですけど、皆さん上手ですねえ……やっぱり猟兵だからでしょうか?」
ながの言葉に三人、顔を見合わせた。
「影響はあるでしょうね」
「まあ、それも実力のうちですよ」
こくり頷く若葉と、にっこり微笑むグラース。
「僕は親分がいないと取れなかったからなぁ~」
「なが、役に立ったです?」
「立った立った。ぬいぐるみ、記念にしまふらいさんちで飾ってよ」
「えへへぇ! 颯汰さんとながの獲物を見せびらかしちゃいましょー」
きっとながの大好きな志摩夫婦も喜んでくれることだろう。
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境外から境内へと入り、神社にお参りをした四人は帰路となる道へ。
こちらにも食べ物屋台は並びつつ、持ち帰りのお土産や雑貨の屋台が多いことに気付く。
「あれ? あの屋台、キラキラしてますよぅ。あれなんでしょう!?」
若葉に抱えられたながは、彼の腕をぱしぱしと叩く。
「あれは……くじの屋台ですね。まだあるんですね。……あれは当たら、いた、いんですが」
――当たらないからと、やったことはありませんでした。と告げるつもりの言葉はグラースに腕を摘ままれた際の痛みに遮られた。油断しているところに二の腕をぎゅむっとやられた。
その間にもながは若葉の腕をぱしぱし。
「くじ引きですかー……! これならながにも出来そうですよ……! ね! ね!?」
キラキラとしたつぶらな瞳で若葉を見上げ、そして颯汰とグラースと。順番に見ていくなが。
「…………、ええ、はい……皆で、引きましょうか。お金は自分が出しますので……」
「でもさっき若葉さんが当たら、痛いっ!?」
今度はグラースの肘鉄が颯汰の腹に入った。
「檍原さん
…………」
「ながさん、若葉さんが奢ってくれるそうですよ。どれを引きましょう? 紐を引っ張るのと、くじ紙と――たまご型のくじもあるんですね」
何だかガチャみたいだ。
色んなくじ屋さんがあって目移りしてしまう。
けれどもながは既に、とある屋台に惹かれているらしい。
「ほぇ、若葉さんがお金出してくれるです? いいんですか? なが、あの最初のキラキラしたくじ屋さんがいーです!」
いっぱい景品ありましたよ! と、なが。
選んだくじ紙を趾で押さえ、嘴でぺりりと剥がしていくその動きは、ドキドキしているのかちょっぴり慎重。
「……ほぇ。何か絵が描いてありますよぉ」
「ええと、この絵の景品棚は――ビーズセットですって!」
花の形の透明箱にきらきらビーズがたくさん詰まったビーズセット。
嘴でビーズを摘まみ、テグスに通していけそうだ。
「わあわあ。なが、ブレスレットを作ってグラースさんにプレゼントするですよー! 若葉さんにも、颯汰さんにも、ストラップを作るです」
ふんすふんすとながはやる気だ。
「楽しみにしてますね!」
そう言ったグラースが当てたのは手乗りぬいぐるみ。
颯汰が当てたのは鳥の形の笛だ。
どうやらはずれのないくじ屋さんのようで、この屋台を選んだながは皆にちょっとした幸運を運んでくる。
ながは、にこにこ笑顔で屋台主にお礼を告げた。
歩みは緩やかな帰路のものへ――少しずつ祭りの騒がしさが遠ざかる。
少し寂しさも感じる瞬間だが、今は帰路の歩みも軽かった。
しまふらいへのお土産をたくさん手にして。
自分へのお土産も手にして。
お喋りの合間に、明るく賑やかな夜道に囀るながの声。
颯汰の笛が合いの手のように時折吹かれている。
――くじ引きで若葉が引き当てたものは、夜空に似たスーパーボールだった。
明らかにハズレ枠だけれども――その普通さが、今は。
(「悪くない……」)
――とも思えて。
猟兵仲間と歩む帰路は穏やかなものだった。
ながが今日の出来事をひとつひとつ、振り返り、話しながら。
そして言う。
「アポカリプスヘルでは、こういう平和なにぎやかさは少なかったから
……。……なが、いま、とってもたのしーです!」
えへへと嬉しそうにはにかむ声。
「グラースさん、颯汰さん、若葉さん、ありがとうございますですよー! またお祭りいきましょーね! ねっ!」
約束を強請るながの声は愛らしく、そして少しだけ、何処か必死さを感じさせる。
「ええ、新年にお出かけするのもいいですね」
「あっちこっち賑やかそうだよね」
にこやかなグラースと颯汰の言葉。
若葉は……、すべてに応えられる保証は、若葉には掲示できないけれど。
「……そうですね。自分は都合が付けば、ですね……」
それが今の彼に出来る、精一杯の約束。
きっとながも理解しているのだろう。
「えへへ」
彼女はにこやかに笑って。
「またお誘いするですよぉ」
だから、またながと一緒にお出かけしてくださいね。
そう言って、仄かな約束を。
一緒に祭りに行く未来を、夢みた。
成功
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