廃墟探索はハプニングと共に

榛原・七月
元サーヴァントであるウイングキャットの「クロ」と一緒に廃墟となったショッピングモールを探索中、ゾンビ(たぶんどっかの復活したかなんかした野良眷属)の群れに襲われて撃退する七月のハロウィンノベル(一応)をお願いします。
できればサイキックハーツでマスターしてた方にお願いしたいです。
流れとしては、曲がりなりにも配信者としてスマホ一本で(だって配信機材重いじゃん)、ショッピングモールの廃墟を探索する生配信やっていたところ、ふと服屋の試着室開けたらそこには服試着中のゾンビが!
一瞬、「ハロウィンの仮装かな?」と思うも、唸り声を上げて襲い掛かって来たことで本物と知る七月。おまけにつられた様に、「どこに潜んでいたの?」と思うくらいの大群でゾンビが襲い掛かってきて大ピンチ! でもこれ、配信者としては撮れ高高いの撮れるんじゃね? と思い、あえてスマホのカメラは止めないまま急遽内容を変更して「元武蔵坂学園の灼滅者がゾンビと戦ってみた」として配信続行! カメラを止めるな!
カメラONにしたままのスマホはクロの首にかけ、その後はもう、ユーベルコード使いまくりの無双でゾンビを一掃してショッピングモールから脱出。
七月の持ってるユーベルコードからお好きなものを、どれでもいくつでも使わせてください。「ユーベルコードを披露する」なんでね! いくつ使っても大丈夫です! たぶん!
使うユーベルコードはお任せしますが、例えば【無限油地獄】を階段やエスカレーターに撒いて追ってくるゾンビを滑らせるとかは絵面的に面白いかな? と思いました(一例です。使わなくても構いません)。
注意点として、ウイングキャットも世界観的には喋るようになったということになってますが、クロは喋りません。クロ使うユーベルコードいっぱいありますけど、どれ使っても喋りません。基本おとなしく、たまに鳴く程度です。
ゾンビを一掃し、廃ショッピングモールから出た後動画を確認して愕然。ブレブレのぐるぐるで何映ってるか全然分からん
……!(【パイ投げ・奥義】とか使った場合は、画面クリームまみれになってるかもしれないです)
「……やっぱりカメラは、止めてよかったかも」と肩を落とすところで〆。
アドリブOKです。
納品後、「七月の廃墟探訪」のタグを付けていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
カツ、カツと塗装の剥がれたコンクリートと薄く散らばったガラス片を踏み締め歩む音が、深夜、誰もいない広い空間に静かに響く。
ここは、廃墟化したショッピングモール。照明は消えて暗く、割れていないガラスが見つからない程の、そこそこの年季を感じさせる場所ではあるのだが───なぜこんな場所にいるのかというと。
「生配信、
開始。 ……今日は、ショッピングモールの廃墟を探索する。」
スマホを操作し、ひとつ呟いて───そう、七月は曲がりなりにも配信者だ。その身とスマホを持ってどこへでも……という訳でもないが、廃墟探索を主とした動画群と静かな語りによって固定のファンも多い配信者である。
という訳で歩むショッピングモール。その傍には黒猫───いや、翼の生えたウィングキャットのクロと共に。
廃墟となった経緯も、廃墟となる前の活気ある姿も知らないが───この薄暗さと静けさは七月にとって心地よく。
歩くたびに目に入るのは、店だったものの姿と当時の風景の一欠片。ボロボロになったポスターや倒れた電灯から、想像するのも難くない。
でも、それをするのは七月じゃない。そんなものは視聴者が勝手にすればいい。
ふと、七月の目にまだ状態のマシな服屋の姿が映る。流石に商品などは置いていないものの、扉や商品棚などがそのまま残っており、画としてとっておくのも悪くないかとふらりと立ち寄った。
軋む扉を強引に開き、埃舞う店内をゆっくりと進む。服が汚れるがそれは仕方ない。
多少写りも気にしつつ、店内を巡り───店の奥、試着室と閉められたカーテンを目にすると、慣れた思考を重ねていく。
これは、開けておいた方がいいな。
それも、できるだけ視聴者の好奇心を煽るように。
人の気配は感じない。試着室だとはいえ、廃墟ならばお色気シーンにもならないはず。
「まさか、ね。」
若干のデジャヴを感じつつスマホを構え、勢いよくカーテンを開け放つと───!
そこには、肌が爛れ、口は半開きに開かれ、目の焦点の合っていない人型、スマホのライトのみに照らされた醜悪なモンスター───まさしく、ゾンビがいたのだった。
「えっ……と。ハロウィンの仮装かな?」
『ヴヴヴウア゛ア……!』
「え、もしかして本物?」
ゾンビ。そう、ゾンビ。見ようと思えばリアルゾンビを見られる立場ではあるものの、不意打ちで、それに原因を自ら踏み抜く形で見ることはそう多くはない。
そもそも、何かいるとすら思ってなかった。精々割れた鏡が散らばっている程度だと思っていた七月にこのジャンプスケア。悲鳴こそあげぬものの内心では心臓が跳ねる。
それに、気配すら感じさせなかった先程までとは一転、七月に襲い掛かろうと試着室を飛び出そうとしているではないか。
慌ててバックステップで距離を取り、一旦服屋から出てみると……
『『『『ヴヴヴァアア゛
……!!』』』』
「いや……どこに潜んでいたの?」
七月の視界を埋め尽くす、程ではないがどこを向いても視界にそれが映り込む程のゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。
さながらその光景は安っぽいゾンビパニック系の映画のようで。
スマホ止めないと……まったく、ゾンビパニック映画かよ……ん? だったら……これ、配信者としては撮れ高高いの取れるんじゃね?
……そうと決まれば急遽内容変更だ! 撮れ高は待ってくれないのだから!
題して「元武蔵坂学園の灼滅者がゾンビと戦ってみた!」
安直かな? いや、このくらいの方がシンプルでいいでしょ。
スマホでの撮影を止めようとした指がぴた、と止まり、その口元には弧がひとつ。
「クロ、撮影頼んだよ。」
返事は返ってこなかった。いつもの事だ。
クロの首にスマホを掛けて、軽く伸びをすれば、七月の目付きは悪戯好きの黒猫の瞳のように。
いや、それは比喩ではない。音も無く黒猫へとその姿を変え、ゾンビの間をするすると駆けていく。鈍重なゾンビには捉えることなど出来はしない。
意図して間を縫うように、錯乱させつつ駆け抜ける。その口元には長く伸びる一本の糸が咥えられ、こんなルートを移動したならば───
「みんなまとめて、転んじゃえ。」
少し離れ、瞬時に人化して全力で糸を引っ張ったならば。
この糸はゾンビ程度に切られることはない。むしろ、柔らかい腐肉であればこちらから切断できるほどに固い鋼の糸。
ゾンビの貧弱な脚に強い力が加わり、一斉に跳ねるように転び出す。さらに、それでも近寄ってこようとするゾンビが雪崩となって手を伸ばしても、七月に一歩及ばない。
「何がそこまでさせるのやら………食欲?」
嘲笑うかのように軽く跳ね、背後からくるゾンビの頭を踏みつけて跳躍する。
そして瓦礫を掴んで建物伝いに二階へ登ると、そこにもゾンビの群れがウジャウジャと。
一階にもゾンビ、二階にもゾンビ。このショッピングモールを覆い尽くすだけの量がいるのだろうか?
「いくらなんでも多すぎない?」
ここまでくると流石に面倒が勝つが、それでも脱出する為、もとい良い画をゲットするために七月はゾンビの群れを蹴散らし走り抜ける。
階段に油を撒けば、ゾンビは面白いように転げ落ちていく。
簡易なトラップでも、誘導するまでもなく次々と引っかかっていく。
知能など殆ど存在しないゾンビに対して、日頃から磨いたイタズラの数々が通じないハズもない。
人が、黒猫が、闇の中を駆け抜けていく。
追いかけてくる動きの鈍いゾンビなど、格好の的でしかないのだ。
七月は走り抜ける。夜が明けるまで。
こんなに楽しいアソビの時間、楽しまないのは勿体無いだろう?
七月は砂埃に塗れ、返り血に濡れ、肩で息をしつつショッピングモンスターの屋根で夜明けを眺めている。
モール内のゾンビは全滅、七月にたった一つの怪我もない。
「はあ、はあ、流石に疲れた……じゃあ、配信は終了で……」
クロからスマホを受け取り、どんな具合だったのかと内容を軽く確認すると───驚愕の表情を浮かべた。
しかしそれはすぐに落胆へと変化する。
「ブレブレのぐるぐるで何映ってるか全然分からん……!」
途中までは良かった。だが、クロにスマホを預けてからは、ピントは合ってないわ動きが激しくて画面酔いしそうになるわ、挙げ句の果てにはそもそも七月を映していない画が多すぎる……!
気持ち悪いゾンビしか映ってない動画なんて誰が見るんだよ……と、肩を落とす。
「……やっぱりカメラは、止めてよかったかも。」
太陽の光が薄く斜めから差し込んでくる明け方、疲労と後悔が混じったため息と共に、七月はトボトボと帰路に着くのであった。
成功
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