フロム・ケオス・ティル・ダンプ
カツ、コツ、カツ、コツ――ハイヒールの音も高らかに、グリモアの光から歩き出したシャルロッテ・ヴェイロンはサングラスを外した。その姿はまるで、ハリウッドスター!
「今日は撮影日和ですね」
「オヌシなんでそんな格好しておるの??」
送迎を担当させられたムルヘルベルが呆れた。
「撮影に使うのであるか? その衣装」
「これはわたしの自前ですよ。ファンに気付かれたら大変ですから」
「オヌシいつの間に国民的スタアになったのだ??」
その時! 大量の悪魔の群れが物凄いスピードで集まってきた!
「「「サインください!」」」
「グワーッ!?」
哀れ、ムルヘルベルは猟兵並のパワーで蹴っ飛ばされ場外へ!
「慌てないでください。ちゃんと全員サインしてあげますよ」
シャルロッテは落ち着き払ってサインペンの蓋を外した。ストリートには、彼女の肖像画めいた看板が連なっている――。
●
なんだろうこれ悪い夢かな? まあデビルキングワールド自体がそうとも言える。
「……どうウホ? 気に入ってもらえたウホか?」
デビウッド。
シャルロッテを招聘した張本人のボノボさんは、デスクに座り両手で台形を作っていた。
「もし気に食わないところがあるなら、なんでも言ってほしいウホ。お前の……いや、あなたの望むように書き直しを」
「ダメですね」
シャルロッテは新作映画の台本を、ゴミ箱に放り捨てた!
「ま、まさか全ボツウホ!? 何が悪かったウホ、出番が少ないウホ!? あるいはギャラウホか!?」
さしものボノボさんも慌てる!
「ええ、当然です。ですがわたしが気に食わないのは、出番だとか報酬だなんてちゃちな話ではありません」
シャルロッテは足を組み替えた(ここで往年の某サスペンス映画のオマージュめいたカットが入る)。
「いつからボノボさんはこんな腑抜けた脚本で妥協するようになったんですか?」
「……!!」
ボノボは稲妻に打たれたような衝撃を味わった。
「より素っ頓狂で、より伏線を投げ捨てた、よりケオスな映画! それがあなたの理想の映画だったんじゃないんですか!?」
「ウ、ウホォーッ!?」
ダン! シャルロッテはデスクに片足を乗せた!(踏み台つき)
「あなたはヒット作を飛ばして堕落しましたね。そのままのあなたなら――」
「……面白いウホ」
ボノボの両目に火がついた!
「その挑戦状受け取ったウホ! こき使うから覚悟しろウホ!」
「そうこなくちゃ面白くないですねぇ……!」
狂気! 映画製作には狂気が必要不可欠! どっかの映画でも言っていた!
二人は悪魔的笑みを浮かべ、やがて哄笑した――!
え? そもそも何が起きてんのかって?
とある仕事でとんでもねえクソ映画(※デビルキングワールドではこれが褒め言葉だし実際売れる)を撮影したボノボさんというこのゴリラの悪魔(女性)が、シャルロッテを見込んで当て書きで新作映画を用意したのである。
だがその脚本は投げ捨てられ、そしてさらなる狂った撮影が――始まった!
●
ここはデビルキングワールドにある、邪リリリリ学園。まるで高校のような若い生徒たちが通っているが、実際は巧妙に実年齢をボカされた
シャルロット遊べんやつにありがちな都合のいい学び舎だ。
「やあ、急に呼び出して……話って、何かな?」
夕暮れの見える校舎裏、キラキラと輝くようなイケメン男子生徒が微笑む。校内でも一二を争う人気者で、親衛隊を名乗る女ども(よく夢女をいじめる)も結成されているぐらいだ。
「ごめん、忙しいのに」
出迎えたのはやはりキラキラした美少女悪魔。グラビアとかバンバン売り出している新進気鋭のアイドルだが演技は微妙! もともと黒髪じゃないのに何故か似合わないショッキングピンク(ツインテ)のカツラを被っている! 何故だ!
「あのね。実は私――」
美少女が頬を赤らめ告白しようとした、その時!
「「「アバー」」」
「グワーッ!?」
突然ゾンビの群れが出現! 男子生徒はあっという間に呑まれ全身をマルカジリだ!
「アイエエエ!?」
「「「アバー」」」
ゾンビの群れはそのまま美少女にも襲いかかる! だがすぐには噛まない! なぜかその場で身体のあちこちを掴んで持ち上げ、これ絶対実用不可能だろって感じのでけえリボンとかついた制服をビリビリに破り捨ててしまうのだ!
「い、嫌ぁっ!!」
あられもない姿で身を捩る美少女! その胸は豊満である。だが肝心のところは出ない!(全年齢向けなので)
「「「アバー」」」
「イヤァー! 誰か、助けてぇ!」
甲高い悲鳴が響く。おお、救いはないのか!?
……するとその時! グオオンギャルギャルギャル!
「イヤーッ!」
「「「アバーッ
!?」」」
エンジン音とともに血飛沫! ゾンビの群れをゴア抹殺し華麗に現れたのは、何故かハロウィン用のチア姿のシャルロッテだ!
「チアリーディングゾンビハンター・AliceCV! 見参!」
シャルロッテはカメラ目線で魔法少女めいたウィンクをキメ、さらにチェーンソーを振り回す!
「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」
血飛沫! 断末魔! 飛び散る肉と骨! まるでデビルツキジだ! ナムアミダブツ!
「「「イヤーッ!」」」
するとその時! さらに並木の影から、上階の窓から、貯水槽から、果てはフェンスの向こうや自動販売機の中からニンジャが出現! バック転や側転を連続し入り乱れる!
「アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」
美少女悪魔は失禁……はしない! 入り乱れるニンジャ! ゾンビ!
「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」
血飛沫! スリケン! ヌンチャク! カタナ! チェーンソー! まるでネギトロサラダボウルだ! ……するとその時!
『我々ハエイリアンダ。デビルケンタウリカラ、コノ惑星ヲ侵略ニ来タ』
空の彼方よりUFO飛来! トラクタービームの中から現れるタコ型エイリアン!
「アイエエエ!? エイリアンナンデ!?」
「面白くなってきたですね! ここはみんなで踊って撃退ですよ!」
「「「ハイヨロコンデー!」」」
ニンジャたちはバック転で位置につき、何故かゾンビの群れも例のダンスを踊る! メインダンサーのシャルロッテはキラキラした変身バンクで魔法少女に! 美少女も踊る! きわどい格好のままなのでサービスカットが入る! バンクでもだ! シャルロッテの胸は平坦だった。
「喰らえ! マジカルケオスビィーム!」
『『『ウッギャアアアアーッ
!!』』』
UFO爆発四散! エイリアン抹殺! そして世界は救われた、HAIL TO THE DEVIL……!
「カァーット!」
ボノボさんは立ち上がった!
「完璧ウホ! これで賞総なめは間違いなしウホーッ!」
これでほんとに大賞取っちゃうんだから、デビルキングワールドは恐ろしい!
成功
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