ドラッグヤクザ・ブッコロタイム
「ちょっとヤクザ連中シメて事務所の土地も更地に変えて地上げして来る奴ァいねぇか?」
未丘・柘良(
天眼・f36659)は集まった猟兵達にそんな事を呼びかけた。
何なのそのIt's暴力なお誘い。
簡単に説明すると。
サイバーザナドゥでは既知の通りだが……メガコーポは『骸の海』を生物に投入する事で人為的にオブリビオンに変え、その尖兵として使役する悪事を行っている。死んだ所でオブリビオンと化した者はその時点で過去となっており、骸の海から幾らでも
復活出来るので都合の良い消耗品だ。
そして、近年メガコーポは『骸の海を大量混入させたドラッグ』を市井にばら撒く事で、それを用いたヤク中の一般人をオブリビオン化させて配下に変えると言う真似を行っているのだと言う。
「末端の売人をシメた所でトカゲのシッポ切りやられるからな。ちまちま潰すだけじゃテメェらも飽きるだろ?」
柘良は煙管に口を付け、大きく紫煙を吐き出してから悪い笑みを浮かべて告げる。
「だから、工場ごと潰そうぜ。売人仕切ってるのはヤクザだ。ある組の事務所の地下に当たりがあったしな」
そんな訳でと柘良はしれっと言うのだ。カチコミかけてヤクザシメて事務所ごと工場を更地にしてこいと。
地上げ部分は、多分この雀鬼のお兄さんが嬉々としてやるんじゃないかなぁ、と。
「そのヤクザ――
毛無組って言うんだけどよ。あ、組長は地毛だ」
無駄な情報をぶっ込みながらも柘良は説明する。事務所の周辺には非オブリビオンのチンピラやヤクザがウロウロしており、無防備に事務所に向かおうとしても確実に呼び止められるだろう、
「切り抜け方はテメェらの好きにして構わねぇ。一応ただのスジモンだから優しくしてやってくれや」
どういう意味で優しくしろと言うのはさておき。無論、筋と礼儀を通せば組長の元や事務所に案内してくれるかもしれないし。ソデノシタなども有効かもしれないし。
「どの道、組長んトコについたらカチコミタイムなんだがな」
恐らく先生!と呼ばれて出て来るであろう用心棒のヤクザ達は全員メガコーポから派遣されてきたオブリビオンである。全部容赦無く
殲滅すれば、工場への地下通路が開かれる。
「ドラッグ工場にゃ管理者がいる。まぁソイツも使い捨ての尖兵なんだけど……な?」
そこで柘良は僅かに顔を歪め、深々と煙管の煙を吸い込んで言い放つ。
「元々は俺様の身内でな……似てるかもだが、遠慮無く殺ってきてくれや」
研究者らしい格好をした管理者は、全ての薬物の出荷と証拠隠滅まで足留めの為にその命を捨てるつもりで猟兵達を相手に対峙する事だろう。それがメガコーポにオブリビオンに変えられた者の末路なのだから。
「最悪、其処に有るドラッグをキメてかかってくるだろうな。頭のネジがすっ飛ぶ代わりに集中力や運動神経がマシマシになるみたいでな――ユーベルコードの威力も反応速度も増してくるだろう」
ついでに――と相手の特性を柘良はもう一言二言告げてから、嗚呼と思い出した様に。
「テメェらもそのドラッグをキメたら多分一時的なパワーアップは可能だろうぜ。ま、骸の海入りだ……
肉体と
精神が汚染に耐えられる自信あんなら試す事を俺様は止めねぇ」
ただし、オブリビオンになってはくれるなよ――そう冗談を含みつつ。柘良はグリモアの転移の光を描いた。
天宮朱那
天宮です。
柘良がトップに立った時に告知していたシナリオフレームを今更ながら。
ゆっくり進行になるかと思いますが、参加いただけると幸いです。
一章はヤクザ事務所への道のり。周辺には下っ端チンピラがウロウロして、事務所に近付く者がいれば絡んできます。ぶちのめして丁寧に案内させるなり、言葉で言いくるめて連れていかせるなり。女性であれば色仕掛けなども通用するかも知れません。
二章は事務所で毛無組組長とご対面。組長や若頭は一般人ですが、ドラッグ工場が目当てだと気が付くと先生お願いします!とオブリビオンの集団が現れるので撃破してください。
三章は組長達が観念して地下へ通じる扉を開きますので、そこから潜って工場に行き、待ち構えている工場管理者であるオブリビオンと対決、撃破と同時に工場の破壊を。戦闘しながら工場の設備を攻撃しても構いません。
また、三章のみですが自分でドラッグを使用しての一時パワーアップが可能です。が、肉体と精神にダメージも加わりますので使用する場合はその辺りもご注意下さい(プレイングボーナス入ります)。
複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載を(二人組まで)。
技能の『』【】等のカッコ書きは不要。使い方無き技能名のみ羅列は描写がシンプルになります。
オーバーロードはご自由に。採用不採用に変化は無いのでご了承を。
各章、断章追記予定。
人数集まり次第進んで行くつもりです。
マスターページやTwitter(@Amamiya_syuna)、タグなどでも随時告知をします。
適度に人数集まったら〆切目安の告知予定。宜しくお願いします。
第1章 冒険
『「そこのお前、止まれ!」』
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POW : ●『強引に押し通る』
SPD : ●『賄賂や口八丁で懐柔する』
WIZ : ●『礼儀が大事なので、丁寧に挨拶をしてみる』
👑7
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サイバーザナドゥの雑多でネオン溢れる街並みから少し離れれば、そこは灯りも少ないスラムの一歩手前。
まともな市民ならまずは近付く筈も無い薄汚れた雑居ビル立ち並ぶ通り。ヒビ割れたアスファルトは、その周辺に行政の手が余り届いていない事を意味するだろうか。
「…………」
「……おい、ありゃあなんだ」
路地から突き刺さる様に視線が向けられる。姿を見せるのは明らかにチンピラ風情と言った所か。
値踏みする様にジロジロと不躾に見つめる彼らはやがて少しづつ猟兵達に近付いて来る。
恐らくその臭い口から問われる言葉は決まっている。
――この先は毛無組の縄張りだ。何か用でもあるのか、と。
グルナ・エタンセル
えぇ、オジサン、上司とスジモンがちゃんと怖いタイプなんだけど。
ま、いっか。
潰れちゃうんだもんね、報復とか怖くない怖くない。
今日は、カンパニーマンらしく振る舞おうか。
あちらの企業から派遣された営業マンなんですけどーって、鞄の中身をちらつかせる。
中身は当然、小麦粉に片栗粉だよ。
空気読まないボンクラを装って、せめて受付までいって名刺置いてこないと怒られちゃうんで、って突き進もう。
一応、UCの保険も掛けてるから、そのまま通して貰えると嬉しいね。
どーしても駄目なら峰打ちさせてもらうかな。
骨折のひとつやふたつ、ヤクザなら泣いちゃ駄目だよ。
さっさと仕事を終えちゃおう。
オジサンが一番怖いのは、休日出勤だし。
路地から現れた、明らかにチンピラでございと言う男達の知性を感じさせぬ姿にグルナ・エタンセル(soldat・f36653)は心の中で盛大な溜息をついていた。
(「えぇ……オジサン、上司とスジモンがちゃんと怖いタイプなんだけど」)
「おいオッサン、この先どこに行こうってんだ」
「この辺りは毛無組のシマだ。用が無いならさっさと回れ右して帰りな」
凄みを利かせながら、ガンつけて睨み付けてくるは法無き世界の無法者達。
下手なことを答えたら許さねえぞとチラチラとナイフを出してはこれ見よがしにその刃を出し入れする。拳でしか話し合いが出来そうになさそうな連中ではある。
(「……ま、いっか。潰れちゃうんだもんね、報復とか怖くない怖くない」)
レッツポジティブ思考。あとから何かされる心配は無い筈だ。『今』さえ無傷で切り抜ければ。
「えっと……あちらの企業から派遣されてきた営業マンなんですけどー……」
カンパニーマンらしく。営業スマイルを口に浮かべながら、グルナはその手に合った鞄を胸元の高さまで持ち上げた。
「此方をサンプルでお持ちしなくちゃならないもので。通して頂けませんかねぇ」
「……そいつを開けて見せてみろ。ゆっくりだ。下手な真似すんじゃねぇぞ」
ナイフの先でチンピラの一人が示し促す。へいへいとグルナは鞄を地面に下ろし、ゆっくりと彼らにその中身が見える様に開いてみせる。
「粉か」
「ええ、とびっきりの」
きっと
薬と誤認してくれただろう。生憎だがこれは小麦粉に片栗粉。これだってこの世界じゃとびっきりの高級品だ。
「じゃあ俺達が代わりに預かるから置いて帰れ」
「えー、それは勘弁して下さいよ。せめて受付まで行って渡して……名刺も置いて受取りのサインも頂かなきゃ」
「チッ」
あからさまな舌打ちをするチンピラ。この連中だと誰も来なかったと言い張って横取りすらしかねない。
「それじゃ行かせて頂きますね」
「あ、ちょっと待て」
「はい?」
強引に突き進もうとしたグルナを男の一人が引き留めようと手を伸ばす。そこに思い切り振り返った彼の鞄は
偶然にもにも、そいつの鳩尾に強打した。
「うごぉっ!?」
「うわ、済みません。でも……」
やはり彼は笑顔で首を傾げて告げるのだ。男達のプライドをくすぐる言葉を。
「さすが毛無組の兄さん達だなぁ。痛みにお強いし心が広い。いやぁ俺だったら泣いちゃうし怒っちゃうかも」
そうまで言われては怒りに任せてそのままボコる事も出来ないのか。一番の兄貴分と思われる男が止せと手で弟分達を制止した。
「今のは急に呼び止めたせいで起きた事故だ、仕方ねぇ。ところで……おい、ちょっと軽くジャンプしろ」
「――え」
何か古典的なアレを言われてる気がするんだが?とグルナは引き攣った笑みを固まらせた。
「いいから、飛べ」
「は、はい」
二、三回。その場で跳ねるとコインの擦れる音が軽く響いた。
「ここだな」
「あっ
……!?」
グルナの懐に有無を言わさず突っ込まれた手。取り出されたのは小さく穴の空きそうな小銭入れ。
その中身を確認し、男は舌打ちを重ねてから顎でグルナに行けと示す。
「シケてやがるぜ……ほら、さっさと行きな」
「は、はぃぃ」
結局カツアゲされた気がするけど、これも無謀の代償だと思えば安いものなんだろうか。
「さっさと仕事を終えちゃおう」
このオジサンが一番怖いと思うのは、今夜の夕食代を奪われる事よりも休日出勤――なのだから。
成功
🔵🔵🔴
建依・莉々
「むぅ〜! わたし、手加減って苦手。あ、でもさいばーなんだから、強く叩いてもへーきだよね♪」
しんぷる・いず・べすと! 出会ったチンピラを"ちょっと強め"に痛めつけ、道案内してもらいます。義体だから、動けなくても口はきけるでしょ? 虫か蛙みたいに引きずり振り回し、事務所までご案内です♪
途中で口もきけなくなったり(やっちゃった、てへ♪)しても大丈夫! ぱっと見、義体ナシの子供がノコノコ歩いていたら、次の道案内が向こうから寄ってきてくれます・・・よね? ・・・来なかったら、追っかけよう♪ 手近なモノぶつけて捕まえよう♪
騒ぎが大きくなったらチンピラに化けて抜け出し、やり直し♪ 遅れちゃダメだもんね♪
どこか薄暗く湿った空気の流れる裏通り。そこにいる連中もまた湿気った安煙草を吹かし、そこを通過する余所者の存在を監視しては追い返し――時に所持金銭を巻き上げるという簡単な仕事に就いている。
そう、普段なら実に『簡単な』仕事なのだ。ましてやこんな少女の見た目をした相手など、ちょっと脅してやれば涙を流して懇願するのをどこぞに高く売りつけるだけなのだと言うのに。
「あいたたたぁぁぁっっ!?」
「むぅ……? わたし、手加減って苦手」
建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)がやった事と言えば、自分に汚い手を伸ばしてきたチンピラの腕を下から掴み上げ、軽くグイッと捻ってやっただけ。腕の義体と生身の肩の接合部分がバチバチ音を立て、接続された神経の痛みに男は悲鳴を上げる。
「あ、でもさいばーなんだから、強く叩いてもへーきだよね♪」
もう片方の手の平で、チンピラの胸を小突く。優しく、しかしちょっと強めに。ユーベルコードで付与された剛力では、それでも男の身を一瞬宙に浮かせ、そのまま地面にどおっと落下させるだけの威力を放っていた。
「これぞ、しんぷる・いず・べすと! さて、義体だから動けなくても口はきけるでしょ?」
「――――」
「あれ……? ――やっちゃった♪」
潰れたカエルの様に地面に這いつくばったチンピラの髪を掴んで顔を上げさせたものの、意識を手放しているのであれば流石に案内はすぐには無理そうだ。叩き起こそうとしたらうっかり永遠の眠りに就きかねない。
てへぺろしつつ、そのチンピラはそのまま捨て置いて莉々は再び先を進む。生憎とコイツと一緒に居た連中は莉々が腕掴んで男を飛ばした時点で蜘蛛の子を散らす様に逃げたが。ここらを彷徨いているチンピラ全てではないだろうし。
ほぉら、こうしてぱっと見義体も無さそうな子供がノコノコと無防備に歩いていれば、欲にまみれた目付きをした輩が向こうから勝手にやって来るではないか。
「ね、逃げないで事務所まで案内してくれるだけで良いのよ」
次の道案内はもっと上手に痛めつけて、ちゃんと意識は残してやった。逃げようとしたのはその辺にあった瓦礫を投げつけて道を塞げばすぐに追いつけたから。
「ひ、ひぃぃぃ……バケモノめ……」
「ジャンクパーツまみれで殆どポンコツメカな方よりは生物的だと思うの」
ズルズルと虫かカエルの様に振り回し引きずって。そのまま肩に担いで案内させながら莉々は男の罵倒に平然と反論し。
「で、こっちで良いのよね。おや……」
見ると事務所の手前には
拳銃を手にしている先程逃げたチンピラ達。流石に顔も割れているし武装されては相手取るのも厄介だから。
「お、お前無事だったんだな」
「ああ、あの女はあっちに回った」
「そうか、よし、テメェら向かうぞ」
案内役はその辺りに捨て置き、代わりにその男に化けた莉々はチンピラ達の目を欺きながら。目と鼻の先にある事務所を見据えて小さくほくそ笑むのであった。
成功
🔵🔵🔴
六道・橘
身内に「値踏みされるから見た目大事」と助言されたけど面倒だからいつものセーラー服よ
髪を掻く前に対話開始
ええっと
「道に迷ってしまったの。組長のおじい様に会いに来いと言われて」
演技は下手
矛盾をつかれ絡まれる、体にさわられかける、他、揉めたら即座に抜刀し斬る
優しくしろってグリモア猟兵が言ってたから殺さないわ
手首を斬り飛ばす手前まで刃を入れ止める(優しい)
「ここって手足がなくなっても機械でなんとかなるんでしょ?完全に斬っていいかしら?」
他から襲いかかられたら即座に斬り返す
3分の1殺しぐらいにしておくわね(優しい)
さぁ案内して頂戴、足は無事だからできるわよね?
最初からこうすれば良かったわ
※アドリブ大歓迎
『値踏みされるから見た目は大事』
――そんな助言を身内より受けた気もするが。それより何より六道・橘(
逸脱の熱情・f22796)の脳裏に存在する思考の天秤は思い切り『面倒』に傾いて床に着いていた。
故に、彼女の服装はいつもと同じセーラー服。このサイバー味溢るる世界の薄汚い裏通りには到底似遣わぬレトロ感。しかも五体満足で全て生身を有した若い女。裏世界で有れば上物だと取引されても可笑しくない逸品。
気が付けば、路地から姿を現したチンピラ風情の男どもが橘の前に後ろに囲む様に立ち塞がり、薄汚い視線で値踏みする様に頭の先から爪先までジロジロと見つめるのだ。
「ええっと……」
周りの輩を軽く見つめ回し、橘は首を傾げて告げる。
「道に迷ってしまったの。組長のおじい様に、会いに来いと言われて」
そこまで言い、どこか落ち着かぬ様に垂れる髪を耳にかけ、相手の反応を覗うも。
「そんな話、聞いちゃいねぇな。それにウチの
組長が
子供拵えてたなんて初耳だ」
「愛人に孕ませるくらいはしてるだろ。認知もしねぇだろうがな」
ゲラゲラと下卑た笑い声が聞こえる。まぁ碌でもない連中と言うのはどこの世界でも変わらない。
「そうよ、その愛人の子がわたしの母。ねぇ、おじい様に一目お会いしたいの」
更に重ねる嘘はお世辞にも上手とは言えなくて。小悪党共は薄い嗤いを浮かべてからジリジリと橘に距離を近づけた。
「見え見えの嘘はよしな嬢ちゃん。どうせ
組長にそう言って脅して金でも巻き上げる腹積リなんだろ?」
「…………」
睨む目を睨み返しながら、橘は髪に触れていた指先をそのまま掻き毟り。はぁっと一つ溜息ついた。
「巻き上げる? 残念だけど、わたし、別にお金が目的じゃあないわ」
「まぁいいや。若い女は金になる。相手が悪かったな」
男共は薄汚い袖に覆われた機械腕を橘に伸ばした。彼女の細腕を掴み、そのまま連れ去ろうとしたのだが。
――
斬ッ。
次の瞬間、その腕が肘の手前より斬り落とされ、バチバチと行き場を失った電気が音を立てていた。
「優しくしろって
天眼の雀鬼が言ってたから殺さないわ」
日本刀をいつの間にか手にしていた橘は冷ややかに、しかしどこか楽しそうな薄ら笑みを浮かべてそう告げる。
返す刃でもう一人。こっちの男が伸ばした腕は明らかに生身だったから、その手首の骨を半分ほど斬った感覚が刃越しに伝わった所で引いてやる。切り飛ばして掌を野良犬に食わせなかっただけでも充分優しさに溢れている。
「ここって手足がなくなっても機械でなんとかなるんでしょ? ねぇ、完全に斬っていいかしら?」
「て、てめぇ、この野郎……!」
「
組長の
命獲りに来やがったな!?」
ドスを抜いて襲い掛かるチンピラ達。しかし殺しの腕で橘に敵うべくもない。
向かって来る攻撃はただがむしゃらに刃を振り回すだけの素人の動き。冷静に受け止め薙ぎ払い、即座に斬り返せば腕を脇腹を肩をと致命傷には決して至らぬ箇所を刃が容赦無く裂いた。
「3分の1殺しぐらいにしておくわね」
これも優しさ。殺しはしない。彼らとて所詮は一般人。オブリビオンやメガコーポに利用されている事にすら気付かないただの小悪党、許してやれ――と言う意味らしいから。ヤクザな世界に身を置いた代償としては充分だ。
「さぁ案内して頂戴、足は無事だからできるわよね?」
「ひ、ひぃぃ……」
抜き身の刀を持ったまま、橘は男共を促した。怯えながら、彼らは橘を組の事務所へと案内する。
「最初からこうすれば良かったわ」
乱れた髪を空いた手で整えながら、女は肩を竦めてただそう呟いた。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
あらまあ、更地にして地上げだなんて随分物騒ねぇ?まあ生かしておいても良いことなさそうだしやるけど。
正面突破もやる気になれば多分できるけれど…ちょっと効率悪いわねぇ。
マンを核にして●忙殺・写身を起動…連れていくのは言いくるめと誘惑の二体でいいかしらぁ?
ペラ回しは遣り手役の言いくるめに任せてあたしは護衛役。糸目を多少マシにして髪色と髪型変えれば元が同じでも意外とバレないのよねぇ。
名目としては組長なり幹部なりに
情婦のお届け…要は
出張娼婦ねぇ。
余った分身はどこか離れたところでテキトーに悪目立ちして注目を集めつつ三下連中をおびき寄せてもらいましょ。
「あらまあ、更地にして地上げだなんて」
随分物騒ねぇ?とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はクスクス笑いながら首を傾げた。口では怖い怖いとうそぶきながらも、そのくらい大した恐ろしいとも思っていない――そんな口振りだ。
「まあ生かしておいても良いことなさそうだし、やるけどねぇ」
流石に非オブリビオンくらいは見逃してやってくれや、と――苦笑いと共にそんな言葉が、もっと物騒な事を曰う女の背中にかけられた。
さて、正面突破もその気になれば恐らく出来るとティオレンシアは思うも、少々効率は悪い。
ましてやただのチンピラ風情とは言え、無駄に殺めるのも酷であろう。
「
マンを核にして……連れて行くのは『言いくるめ』と『誘惑』の二体でいいかしらぁ?」
忙殺・写身起動――描いた
魔術文字より生み出された九体の幻影はティオレンシアの分身として同じ見目を有して現れる。
「さて、服装はこうして……あなたはもうちょっと目を見開いて」
その内二体の分身の服装を整え、髪を結い直し、それぞれ違った化粧を施して。
言いくるめ、は引っ詰め髪にキツメに見えるメイクでまるで遣り手の営業レディの如く。
誘惑は頑張って見開いた目を更にアイラインやシャドウをバリバリ入れる事でお目々ぱっちりに、髪も降ろして魅惑的に胸の谷間も強調して見せて。
そして本体であるティオレンシア自身はいつも通りの三つ編みにサングラス、そしてスーツと護衛風。
二体の分身と共に薄汚い裏通りを堂々と彼女は進む。三人の女の姿が目立たぬ訳も無く、路地から姿を見せたヤクザ者がゾロゾロと彼女達を取り囲んだ。
「おい、お前達どこに行くんだ。この先は――」
「毛無組の事務所、なんでしょお? 勿論知ってるわ」
問いに応えるのは『言いくるめ』の役目、男共をぐるりと見回した上で分身はふてぶてしく笑みを浮かべたまま告げる。
「会社から組長さんや幹部さんに
情婦のお届けを頼まれてるのよ」
と『誘惑』に視線を向ければ、その強調された胸元や色気をこれ見よがしにアピールし。男共が思わず唾飲み込む音が聞こえた気がした。
「要は――
出張娼婦ねぇ。『会社』からのサプライズだから聞いてないでしょうけど」
「しかし
親父や
若頭はお前達が来る事を知らねぇんなら……」
「摘まみ食いは良くないわよぉ。贈り物が届いたかどうかきっと確認は入るでしょうし」
「チッ……」
流石に後からバレるかも知れない真似をする程の度胸は持ち合わせていないらしい。行け、とそのチンピラ集団の頭が顎で促した所で、後ろから何やら叫び声が聞こえて来た。
「兄貴!! 向こうで何やら暴れてる女共がいるって!!」
「なんだって? おい、野郎共行くぞ!!」
と慌ててティオレンシア達をその場に残してチンピラ共は応援に駆け出していく。
「ふふ、三下連中なんてチョロいものねぇ」
残り七体の分身達が離れた場所で軽く一暴れして悪目立ちしてくれている……その結果がこうも見えるとは。ティオレンシアは思わずクスクスと笑みを浮かべ、事務所に向かって歩き出す。
今は自分達に注目する暇など無いだろう。他の猟兵達にも随分と手酷く痛めつけられてもいるようだし。
さて、この後は楽しいカチコミタイムの始まりだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『刺青スレイブ・量産型Y』
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POW : 刺青仁義
【刺青 】に封じた【唐獅子牡丹】と合体し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる。ただし解除時にダメージを全て受ける。
SPD : ヤクザ殺法
自身の【刺青 】が輝く間、【ドスソード】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : サイバー流・毒突き
【刺青に封じたサイバードラゴンの力 】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【データ破損】の状態異常を与える。
👑11
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「な、なんだ貴様らは」
事務所の一番奥に踏ん反り返って座していたのは組長か。突然入って来た見知らぬ者達――猟兵を前にし不機嫌そうな声を上げ、葉巻を灰皿に押しつけると立ち上がり睨み付けた。
そこに駆け込んできたのは血塗れのチンピラを引き連れたスーツ姿の男。
「
組長、大変だ! うちを目指して得体の知れない連中が……!」
――とまで言ってその幹部らしき男は、既に襲撃者が組事務所に到達している事に気が付いた。
「遅かったか……! コイツらただモンじゃあねぇ! 俺達の手には負えないぜ!!」
「そうなると、派遣して頂いている用心棒の先生にお願いしなきゃあ行けないな」
組長は机の上にあるボタンをポチッと一つ押せば。横の壁が襖の様に展開し、その奥には大勢の刺青スレイブ・量産型
Yがドスを手に進み出てきた。
『ッケンナコラー!』
『スッゾコラー!!』
「先生方、お願いしやす!! こいつら全員ブッコロしておくんなせぇ!」
若頭は組長の側に駆け寄り、奥の壁際にて警護の構え。
残存チンピラ達は出口を塞ぎ、猟兵達を逃がさずに返り討ちにする所存らしい。
「望みは儂の命か?
取引商品か? それとも……いや、うちの組に手を出したって事はメガコーポに手を出したも同然だって事を身体で解らせなきゃあならんなぁ」
強がりを言う組長であったが、彼や若頭は知らない。解らされるのは自分達であると。
そして目的は
商品の工場そのものであるのだと。
建依・莉々
「化術の醍醐味ってヤツ? これ、案外楽しいかも♪ それじゃあ組長さんのお部屋目指して、れっつごー♪」
チンピラに化けてみたら、あっさり扉の中に入れた♪ 表は騒ぎになってるし、じゃあこの隙にどんどん奥に進もー♪ 偉そうなチンピラを順番に伸して化けて奥に進んで、最後に化けるのは何かな? お膝の猫ちゃんかな?
組長さん、さっさと開けてくれればいいんだけど、そうはいかないよねー。先生って結構丈夫みたいだから、長く遊べるよね♪ 猫パンチで壊れるまで叩いて遊ぼう♪ 事務所とどっちが丈夫かな?
「ねぇ、くみちょー、事務所が潰れる前に開けたほうがよくない? ん? いっそ事務所潰して工場探したほうがいいのかな?」
――毛無組組長が猟兵達と対峙して量産型Yの群れを呼び出す、その少し前に遡る。
「化術の醍醐味ってヤツ? これ、案外楽しいかも♪」
るんるんと誰にも咎められる事も無く組事務所に入るは、さっき建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)にボコボコにされた案内役チンピラ……に化けた莉々本人。
どろんバケラーの本領発揮とばかりに姿を変えて見たところ、あまりにもあっさりと扉の中に通してもらえる。セキュリティ部分はヤクザどもの目視と面識によるチェックのみ。サイバーな世界においてX線も生体認証的なものも無いのはザルにも程がある。
「それじゃあ組長さんのお部屋目指してれっつごー♪ って結構狭い?」
雑居ビルみたいな建物は如何にも事務所感溢れてて無機質。途中で化ける対象を三下から変えるべく、もう少し立場のありそうなスーツ姿の男を軽く伸して入れ替わる。更に誰にも咎められぬままに向かった先、組長室から飛び出てきたそれと目が合った莉々はどこか楽しそうに笑みを浮かべていた。
「にゃーん」
「よーしよし、危ないしイイコだから逃げるんじゃないぞ」
抱きかかえたふわふわの黒猫をなだめすかしながら組長はメガコーポから派遣された刺青スレイブ達を頼もしげに見つめていた。どうやらこの期に及んでもこのオヤジは自分達の勝利を疑わないらしい。
(「――組長さん、さっさと工場への道を開けてくれればいいんだけど、そうはいかないよねー」)
にゃんこ姿のまま、莉々は思案する。このまま抱かれて工場まで連れてって貰うのは無理っぽい。
出て来た『先生』とやらもまぁまぁ結構丈夫そうな所を見ると――。
(「長く遊べる、よね♪」)
するっ。黒猫姿の莉々は組長の手から液体の様に抜け出すと、タタッと刺青ヤクザの方にまっしぐら。
「ちょ、クロちゃん危ない……!」
『ネコ、チャン……?』
『カワイッゾコラー!!』
――クローンでもネコは可愛く思えるらしい。が、その中身は莉々である。放つ攻撃は可愛くない。
「んー、にゃーお!」
自分に肉球スタンプをてしっと貼り付けた上で、黒猫の左フックが炸裂する。
どごぉっっ!! ネコの手から繰り出されたとは思えない一撃が量産型ヤクザを吹き飛ばした。
「クロ、ちゃん……?」
あっけに取られている組長を尻目に、莉々は怪力より繰り出される肉球パンチを次々と刺青スレイブ達に放ってぶっ飛ばし、同時に事務室そのものの壁やら床やらも破砕していく。
『スッゾコラァァ!!』
「あらら、やっぱり簡単には壊れないか。ねぇ、事務所とあなたがたと、どっちが丈夫かな?」
刺青仁義で無敵状態になっている量産型ヤクザ達を見ながら莉々はネコの尻尾をくゆらせ。振り返ってみれば、ネコの大暴れに腰を抜かしていた組長が見えたので首を傾げて問いかけた。
「ねぇ、くみちょー、事務所が潰れる前に工場への道を開けたほうがよくない?」
「ひ、ひぃぃ、クロちゃんが喋った
……??」
「ん? いっそ事務所潰して工場探したほうがいいのかな?」
己の愛猫だと思ってビビリ散らかしている組長を見て、もう少しこの場が落ち着かねばダメか――と莉々は再び量産型ヤクザ達に遊んで貰いに飛び込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
六道・橘
台詞を喋りながら既に斬りかかる
敵が前口上中でも構わない
あらあなた達、いい刺青ね。オブリビオンなら手加減はなし
自滅狙いは性に合わないから真っ向から同じ技でイかせてもらうわね
一つ目は自分の肩口を自刃、勢いの儘に硝子灰皿を叩き割り血と硝子で目眩まし、血も派手に燃やしちゃいましょ
しゃがんで足元をぐりる斬り上へと斬りあがる
複数巻き込み薙ぎ払い
九回斬ったら即座にまたUC起動、初手は自刃
「寿命を削ると叱られるの。其方の技もそうよね?」
敵を盾にできたら「寿命が延びて良かったじゃないの」とほくそ笑み即座に盾ごと斬ってきた奴を串刺し
「伸びた寿命に意味なんてなかったわねぇ」
倒れそうな肩を踏み台に更なる敵へ飛びかかる
『ッケンナコ――アバーッ!?』
刺青スレイブ達のドスソードが振るわれるよりも早く、竜の鱗纏った腕が切断されて宙を待った。
「あらあなた達、いい刺青ね?」
六道・橘(
逸脱の熱情・f22796)の手にはヤクザ共のドスよりも長く、切れ味も更に勝る刃。相手を殺すと言う実用性において、脅し半分の工場量産ドスとは段違い。無論、吸ってきた血の量も。
『テメェ、コノ……!』
「オブリビオンなら手加減は無しよ」
向こうが何かを言おうが構わない。前口上の挨拶も辞世の句も必要無い。だって彼らにそんな権利も価値は無いのだから。
改めて手にした刃を己に向けて軽く、すっと引く。右の肩口に走る痛みと流れる血。力には代償が伴うのは当たり前の事だと認識しつつ。自刃により生じた血を敵に飛ばし、テーブルの上にあった重い硝子の灰皿でその辺のヤクザの頭蓋を陥没させながら叩き割るとその硝子片をも敵陣にぶちまけて目眩まし――いや、そもそも刺されば目も潰れよう。
『ッロスゾ、オラァ!!』
それでも刺青スレイブ共はドスを手に橘に向かって来る。余りにも単調ながら、その攻撃の手数は多い。数撃、刀で受け流したところで彼女は身を屈め、大柄なヤクザの股下をスライディングでくぐり抜けながらも片足を切り飛ばし、低い姿勢でそのまま手近に見えた数本の足を纏めて薙ぎ払えば、次々と長身達が身を崩す。
「もっとその刺青を見せていただける?」
と上に切りあがり、刃をすれ違い様に放てば、器用にも刺青の牡丹花だけが血と共に飛んで床に咲いた。
九回目の刃を放ったところで再び己の身に刃を走らせ、橘は薄らと痛みを消し飛ばす様に笑みを浮かべる。
「寿命を削ると叱られるの。其方の技もそうよね?」
『シルカオラァァァ!!』
相手の技が同じ系統なのを知りながら、橘はそう問いかける。殺人鬼の技とヤクザの技、裏に闇に生きる者の技術と言う共通点。味方への攻撃か己の寿命かを秤にかける
業。
斬りかかってきたヤクザに向けて、足を切り飛ばした個体を突き出せばその腹部に思い切りドスが刺さる。だがヤクザ共は仲間を刺した事すら躊躇わず、再び橘に向かって刃を向ける為に引き抜こうとしているも。
「寿命が延びて良かったじゃない」
そうほくそ笑みながら、橘は即座に盾ごと串刺しにする。あっさり事切れた二体を打ち棄てながら、ふふっと皮肉げに言葉手向けた。
「残念、伸びた寿命に意味なんてなかったわねぇ」
――いや、恐らくこの連中は己の命を何とも思っておらぬだろう。使い潰されるだけの量産体。寿命減衰を防ぐ為に互いを攻撃しあう素振りが最初から見えないのはそもそも寿命まで生きる事が無いが故。
そう言えば、
雀鬼が言っていた。この世界のオブリビオンは『骸の海から幾らでも
復活出来る都合の良い消耗品』だ――と。
「まるで人形を倒してる気分ね。つまらないわ」
そんな事を呟いて。橘は倒した敵を踏み台にして残りのクローンヤクザ達に飛び掛かった。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
あらまバレちゃった。正直なトコ別に隠す気もさほどなかったしねぇ。
まあ
命も
商品も別に興味ないし、なんならあたしは(流石に一人でじゃないけれど)メガコーポ一つ実質潰した経験あるのよねぇ。
量産型とはいえ、この数に集られるととちょぉっと面倒ねぇ。ってことで、寄せないように数を頼りにしましょうか。
黙殺・目録より黙殺と黙殺・妨害を展開、合わせて黙殺・砲列を同時起動。ご自慢の
短刀も近寄れないんじゃ宝の持ち腐れよねぇ?
敵味方の識別はできるんだし、属性攻撃やら状態異常やらドカ盛りの三重弾幕による空間制圧で文字通り「圧し潰して」やるわぁ。
「あらまバレちゃった」
かけていたサングラスを外しながら、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はフフッと小さく笑って奥で強がる組長を見つめ、そして肩を竦めた。
「正直なトコ別に隠す気もさほどなかったしねぇ」
「儂に……うちの組に手を出して只で済むと思うのか
……!?」
「まあ、あなたの
命もそっちの
商品も別に興味ないし」
「何……? じゃあ何の為に……」
目的が知れぬ恐怖に身を竦ませながら組長の男は問う。答える義理は無いが、一応一般人だ――殺める必要も無い訳だしとティオレンシアは細い目をますます細めながら告げた。
「なんならあたしは――メガコーポ一つ実質潰した経験あるのよねぇ」
「はぁ!?」
流石に一人でじゃないけれど、と言う言葉は飲み込んだ。一人であれ複数であれ、この世界で容易では無い事を成したと言う発言は、そもそも何かの冗談と思われてもまぁ仕方が無いだろう。
「
虚仮威しを……先生方、頼みます!!」
『『スッゾコラー
!!!』』
先生と呼ばれる割りには知性や自我に乏しそうではあるが、見目はまさにヤクザそのものの刺青スレイブ達。量産型とは言えども、流石にこの数に集られると……と女は肩を竦めてぼやく。
「ちょぉっと面倒ねぇ」
正直ちょっとどころでも無い気はするけれど、とティオレンシアは手にペンを、いや、その形をした鉱物生命体ゴールドシーンを持つと、魔術文字を宙に描きながら声を掛けた。
「お願いねぇ、ゴールドシーン」
描き出す文字は
黙殺・目録により籠められたユーベルコードを発動する。
一つは――
黙殺。
千をゆうに超える魔力の矢と刃が魔力文字より幾何学模様を描きながら放たれ、敵の接近をまず許さない。
もう一つは――
妨害。
魔術文字より放たれるは多種多様数多の弾幕。炸裂し貫通するレーザーが弾丸が刺青スレイブの接近を拒む様にどかどかと容赦無く降り注ぎ畳み掛け。
更に一つは――
砲列。
本来であればこの系統、他のユーベルコードとの同時使用はこれを基軸とする使い手が多い気もするけど……成功率高める効果を二の次にするであればこうなるのだろうか。弾幕表現も尽きる勢い。
そんな訳で三重弾幕が雨霰と降り注げばヤクザどものご自慢の
短刀だって近寄れない。
「宝の持ち腐れよねぇ?」
ほぼ一方的に空間を制圧するティオレンシアの攻撃はヤクザだけではく事務所の壁から建物からをもすっ飛ばす勢いで。気が付けば彼女の前方――組長のいる側とは真逆の入口側は文字通り圧し潰され、既に更地寸前と化していたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
グルナ・エタンセル
やれやれ、サインは受領できそうにない――もう演技はいいって?
組長さんには悪いけど、今日でこの事務所は終わりだってさ。
メガコーポが後ろ盾なのが運の尽き。
骨の骨までしゃぶられるのは君達みたいだよ。
唐獅子牡丹かぁ、もうヤクザなんだかわからないね。
相手の攻撃すれ違い様にでも、電極端子を貼り付けて、レーザーの鎖で拘束を狙おう。
動きを極力制限して、時間切れまで粘らせて貰うのが狙いだよ。
拘束を成立させるため、鮫剣くんにがぶがぶっと噛みついてもらうわけだけど。
無効化されても諦めず粘り強く……これくらいしか、オジサンに出来ることはないからね。
オジサン怪我には慣れてるからね。
最後に大怪我するのは、どっちかな。
「やれやれ……これは」
目の前に広がる光景にグルナ・エタンセル(soldat・f36653)は本気で肩を竦め、小さく口笛一つ。
既に開始していた他の猟兵達の大暴れの結果、そこそこの数がいた先生こと刺青スレイブ達は見るも無惨に斬られ弾幕に圧し潰され、終いには組事務所の半分が綺麗にすっ飛んでいた。
「サインは受領できそうにない――嗚呼、もう演技はいいって?」
頭を掻き毟りながら、一歩二歩とグルナは前に進む。最早不要となった粉はひとまずその辺りの傾いた机の上に。帰りに回収して翌朝のパンケーキの材料くらいには出来る筈だ。
「さて、組長さんには悪いけど……今日でこの事務所も終わりだってさ」
「ひ、ひぃ……」
「メガコーポが後ろ盾なのが運の尽き。骨の骨までしゃぶられるのは君達みたいだよ」
そう告げるグルナを遮る様に、組長と若頭二人の前に壁の様に立ち塞がるのはどうにか生き残り稼働可能な量産型ヤクザ達の長身。どうやら使い捨てだけあって命を惜しまず、ただただ任務を――組長を守るのが彼らの役目らしい。
「き、貴様等の目的はなんだ? まさか本気でメガコーポを潰しに……」
「いやぁ、流石に潰すなんて一朝一夕じゃあ無理でしょ。でも邪魔は出来る」
へらっとグルナは笑って、人差し指で床を示す。この下……地下にある物が目的なのだと。
「工場。
薬の出所を潰せばそれなりの嫌がらせにはなるよね」
『ッケンナー!!』
『ッコロス!!!』
メガコーポの尖兵だけあって、刺青スレイブ達はその工場の守護者として派遣されて来ている事が明確となった瞬間。グルナの言葉を理解したらしく、その唐獅子牡丹の力を解放して無敵モードに入りながらドスを手に襲い掛かってきた。
「唐獅子牡丹かぁ、もうヤクザだか何だかわからないね」
獣の様に襲い来るヤクザ達の攻撃をのらりくらりとかわしながら、グルナはそいっと電極端子を貼り付けた。そんな事にも気付かずにヤクザ達が次々と彼目掛けて斬り付けてくるのを最小限の動きで回避し、グルナは脱ぎ捨てたコートを敵の視界塞ぐ様に投げつけて背中に隠していた鮫剣を抜いて刃を受け止め流す。
「どれ、もう少し大人しくして頂けないものか」
レーザーの鎖が貼り付けた端子とグルナの手元を結ぶ。引き寄せながら巧みに動く事で鎖はヤクザ達の動きを阻害し、鮫剣の鋸の如き刃がヤクザ達の手足にこれでもかと食らい付き引き裂くも、ぱっと見、血も出なければ傷も見えず。
『テメェゴルァ!!!』
「無効化するかぁ、やっぱり。まぁ粘り強く――このくらいしか出来ることはないからね」
怪我には慣れている。時折掠めるドスの切っ先に、痛みに顔を歪めても笑みは歪めない。
「最後に大怪我するのは…………どっちかな」
そう言いながらもしばし交戦の後。不意にフラッとグルナは蹌踉めき、中身が飛び出たソファーの縁に崩れ倒れ込む。受け続けた傷は浅くない。
「は、はは、儂等に楯突いた愚か者めが!」
組長が勝利を確信しゲラゲラと笑い声を上げた。
だがその瞬間。
『――ッガァ!?』
『ナムサン……!』
戦闘終了を認識したと同時にヤクザ達がその全身から血を噴き出し、一斉にその場に倒れ伏せたのだ。
「勝てば解除するよねぇ」
――代わりに。やれやれと身を起こしたのはグルナ。
「どう、オジサンの演技もなかなかでしょう」
血に濡れた顔を拭って尚も笑みを讃えた彼の姿に。最早組長も若頭も一転して諸手を挙げ、降参の意思を示していたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『天耳の工学者』未丘・春真』
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POW : 宸碧玉
自身と武装を【光学迷彩結界】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[光学迷彩結界]に触れた敵からは【視力と戦闘意欲】を奪う。
SPD : 国士無双
レベルm半径内に【火風水地電氷毒樹鋼光闇無の十二属性の鉱石】を放ち、命中した敵から【ダメージと共に運と活動エネルギー】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 天衣無縫
自身の【機械内耳に仕込まれた音響兵器システム】から【脳を揺さぶる程の超高周波音】を放出し、戦場内全ての【生物に大ダメージを与え一時的に聴力と発音】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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事務所は半壊し、頼りの『先生』方はあっさりと殲滅されられた。
失禁寸前の組長はそれでも腰を抜かす前に猟兵達に声を投げかけていた。
「わ、わかった……降参だ。
商品の工場が目当て……なんだな?」
若頭に支えられながらも組長はついてこいと告げる。同時に何度も何度も命乞いの言葉を口にしながら。
着いたのは鉄の扉。流石に猟兵達でも簡単に破れそうにないそれは、組長の義腕から伸びた端子とドア側の端子が接続される事でゆっくりとその入口を開く。
「儂が出来るのはここまでだ。下はメガコーポから寄越された『管理者』がいる」
それだけ告げて組長は手下を連れてその場から逃げ出した。
敢えて追う必要も無いだろう。最早メガコーポと組んだ悪事は出来まい。恐怖心と言う意味でも、メガコーポをこうして裏切るような行為をした上でも。
青白く薄暗い光はサイバー世界らしさを感じさせる。
音の響きやすい鉄階段を降りていけば、下には自動化された工場の全景が浮かび上がって見えた。
然程広い訳でも無いが、タブレットシートに梱包されたクスリは普段であればコンベアに運ばれて出荷され、闇の売人を通じて一般市民達の手に渡る事なのだろう。
しかし、工場の稼働は止まっている。
最下層、機械群設置階まで降りた先。山と積まれた在庫を忙しなく運ぶ自動運搬機械を見つめる一人の男。
『ああ、在庫の運び出しは間に合わなかった、か。上でドンパチやってた音が消えてからそこそこ経つしね』
振り返った男は猟兵達を送り出した男にどこか似ていた。身内、と告げていたか。
『未丘・春真。この施設の管理を任されて――いた、が正しくなるかな。君達のお陰で』
光薄い碧の瞳はぼんやりと猟兵達を見つめ、そして両手に銃を構えて大きく溜息一つ。
『俺は少しでも多くの在庫を出荷させる職務があってね。つまりは時間稼ぎ』
そう告げると春真は銃口を天井に向け、引き金を絞る。タンと一発放たれた銃弾は、照明の一つを撃ち抜いて辺りが僅かに暗くなった。
『明るいのは好きじゃない。うるさいのも好きじゃ無いけど……』
ちらと男は目を向けたのはドラッグの詰まった箱。
『まぁ、キメてしまえば気にならないか。本当はこれ以上、俺は俺を失いたくないけどさ』
使えば身も心も骸の海に蝕まれるが、一時的に全ての身体能力も精神もアゲるブツ。
――改めて、最初に猟兵達はこう告げられたのを思い出す。
※※※
「最悪、其処に有るドラッグをキメてかかってくるだろうな。頭のネジがすっ飛ぶ代わりに集中力や運動神経がマシマシになるみたいでな――ユーベルコードの威力も反応速度も増してくるだろう」
ついでに――と相手の特性を柘良はもう一言二言告げる。
「彼は、超聴覚の持ち主。視覚は無きに等しいが『音』で物を見る。戦う際にはそれだけ覚えておけ」
そして、嗚呼と思い出した様に。
「テメェらもそのドラッグをキメたら多分一時的なパワーアップは可能だろうぜ。ま、骸の海入りだ……
肉体と
精神が汚染に耐えられる自信あんなら試す事を俺様は止めねぇ」
ただし、オブリビオンになってはくれるなよ――。
※※※
――と。
『今の俺の最期の仕事だ――付き合っておくれよ、猟兵』
メガコーポの尖兵たる消耗品だと己を自覚しながら、しかし従うしか無いオブリビオンは笑ってそう告げた。
建依・莉々
アドリブ連携ウェルカムです
「こーがくめーさい? おー、ほんとに分からないや♪ ふふふ、化かし合いの勝負、受けて立つ!」
そもそもブラックタールの視聴嗅覚がどうなっているのか分からないけど。化かし合いなら、どろんバケラーに一日の長アリです。ここはミミック作戦でいきましょう!
まずは施設破壊を兼ねてドラッグ箱を潰しておきます。そして、タイミングを見計らい生き残った?ドラッグ箱に化け、待ち構えます。箱に触れたら肉球スタンプを未丘サンにペタン。あとは視聴嗅覚関係なく、引き寄せ→猫パンチのコンボ連続でダメージを与えます。んー、ヤクザさんとどっちが丈夫かな?
「む、おいしくない。天然物ならおいしかった?」
ぬるりとそのネコは液体と化し、一人の少女に形を変えた。
『――おや、ネコは液体とは本当だったのかな? いや……君は何者だ?』
建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)の姿を前に、春真は笑みを浮かべつつもどこか眉を潜めた。
「んー、うちゅうじん、かも?」
その返答は間違っていない。スペースシップワールドに存在する宇宙生物の一種たるブラックタールはこの世界では基本的に存在しない生命体だ。故に。
『成る程。スライム状生物か何かかな? 俺の聴力では君の形を旨く認識出来ないや……参ったな』
この男は音で物を視ると、似た顔の男は言っていた。蝙蝠などの様に音の反響が彼の目の代わり、なのだが。それも相手が固形物の場合に限る。莉々は偶然にもその弱点を突いていた。液状の身は音の反響が異なる。文字通り掴み所の無い身であった。
『果たして、俺の光学迷彩は君の視覚から逃れられるものなのかな――』
「こーがくめーさい?」
春真は己の身を莉々の視界から消した。ユーベルコードの域にある光の屈折は視覚聴覚嗅覚全ての感知を不可能にするもの。どこに行ったものかと莉々はキョロキョロ周囲を見回した。
「おー、ほんとに分からないや♪」
だが、彼女は驚いたり動揺はしない。化かし合いならどろんバケラーだって負けていないのだ。
「ふふふ、化かし合いの勝負、受けて立つ!」
見えぬ相手に指突きつけて宣戦布告したところで横合いから弾丸が二発飛んで来て莉々の身に強かにめり込んだ。
(『はは、化かし合いか……騙し合いじゃなくて?』)
そんな彼女に囁く様に、しかし出所の分からない声が届く。ていっと身体にめり込んだ弾を輩出した莉々は、ふふっと笑みを浮かべながら駆け出した。
「ここは……ミミック作戦でいきましょう!」
その先にあるのは、工場で作られ出荷されつつある
薬の箱……!
(『……!!』)
続け様に後方から銃弾だけが放たれるも、莉々のタールの身に当たった所で然程のダメージに至らず。
「うりゃっ!!」
積み上げられた箱を蹴り飛ばし薙ぎ倒す莉々。運搬用メカは次々と崩れた箱の下敷きになり煙を吐いて動かなくなる。そもそも春真はこの出荷が済むまでの時間稼ぎに立ち塞がったのだ。慌てた様に弾丸だけが飛んでくるも、その程度で怯む莉々ではない。
ドタンバタンと暴れる音がひとしお収まると、そこには崩れて散乱した箱の数々と、辛うじて無事であった箱の山。
(『さっきの少女は……? 消え、た?』)
音も立てずに春真は身を消したまま残った箱に向けて近付き、中身の無事を確かめるべくその上部に手を触れた。
その時――。
「んー、にゃーお♪」
てしっと触れた手に莉々の猫パンチが炸裂した。見えずとも触れた相手なら大体の位置の予測は付く。
『……!?』
無論、光学迷彩結界に触れたからには莉々の視力と戦闘意欲は削がれる。だがそれしきで諦める彼女では無い。
「逃がさないよー!」
先程触れたと同時に春真に貼り付けた肉球🐾スタンプ。後は莉々が手招きすれば見える見えないに関わらずに引き寄せられ、そこに彼女の怪力から繰り出される必殺猫パンチが再び放たれるのだ。
『がぁっ!?』
「んー、ヤクザさんとどっちが丈夫かな?」
まるで猫が捉えた小動物を弄ぶかの様に。莉々の攻撃は彼女が飽きを見せるその時まで続くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
グルナ・エタンセル
オジサンは変な薬には頼らないようにしてるんだ。
こわーい結末、沢山見てきたからね。
鮫剣を抜いて応戦するけど、当たる気はしないね。
しかし、お薬キメて更に加速してくるとは……。
悲しき中間管理職。
中間でも管理職だから責任があるんだよねぇ。うん。
ま、オジサンはヒラだけどね。
更にUCなんか使われたら、オジサンじゃ、何も見えないし、何も感じられないかもね。
意欲も元々低いし。
でも、
鮫剣はどうかな。
戦闘意欲なんてないんだよね、食欲だけだ。
向こうの攻撃方向から居る場所は推定。
範囲を広げ、銃弾も何も気にせず食い散らかし、本体も狙う。
さ、好きなだけ食べるといいよ――でも寿命は、少し手加減してほしいかな?
運び出されていく
薬の箱。運搬ロボットが高く積み上げたそれをグルナ・エタンセル(soldat・f36653)が思い切り蹴り飛ばせば面白いくらいに雪崩れていき、下敷きになったロボットがエラー音を吐き出した。
「オジサンは変な薬には頼らないようにしてるんだ。こわーい結末、沢山見てきたからね」
『それはそれは。健全な生き方が出来るなんてこの世界じゃ珍しい方だ』
白衣の科学者は本気か皮肉かそう言って微笑んだ。既にその手には件の薬が充填されたシリンジが1本。
『トぶんだって、この薬。まぁ理性が多少犠牲にはなるらしいけど』
既に猟兵の攻撃を身に受けた春真は仕方ないと言いながらも、生身残る首元に容赦無く針を突き立て注入を開始し。カランと空の注射器を床に捨てた。
(「当たる気はしないし、薬キメて加速してくるんでしょ、このお兄さん」)
あれ、詰んでない?なんて悠長な思考をしている場合じゃないのに。グルナは鮫剣を構えてその攻撃に備えた。
『――さて、かかって来る? 折角だ、効果を試す機会なんざ滅多に無い』
銃を握ったまま春真は来いと示す。好戦的にでもなって来ているのか。
ならばユーベルコードを使われる前にとグルナは男に向かって斬りかかってみる。捕食対象を見つけた貪欲な剣は素早い銃撃に横殴りに衝撃を受け、鉄の四肢を食らうに至らず。
「やっぱり早くなってるんじゃない? 運動速度も反応速度も」
『はは、そうらしい。尤も逃げ足まで早くなった所で仕方ない』
足止めだと最初に言っていた。彼が逃げるとすれば、この山の様な商品在庫が全部出荷出来たその時なのだろう。それまでは交戦を長引かせ、あわよくば撃退しての時間稼ぎが目的と。
「悲しき中間管理職。中間でも管理職だから責任があるんだよねぇ。うん」
『わかったような口を』
「ま、オジサンはヒラだけどね」
割とピンチの筈なのにヘラヘラと笑うそのグルナの姿はある意味異様に思えたか。
『やはり、アンタは殺しておこう。今の俺なら出来る、だろう?』
そう不敵な笑みを最後に、春真の姿が視界から消えた。光学迷彩結界による感知不可。グルナでは何も見せず何も感じられない。そもそも戦う意欲も低いのはさて置くとして。――良くこんな所来たなと思う程に。
構えて周囲を窺っていると、更に視界が突然狭く暗く感じられた。向こうの結界に触れられたのか。
「でも、
鮫剣はどうかな」
戦闘意欲がマイナスぶっちぎりかけているグルナと違い、鮫剣は最初から最後まで食欲のみに忠実に貪欲だ。それは戦闘意欲とはまた違う意欲。戦いは手段でしか無いのだ。
「さ、好きなだけ食べるといいよ――」
そこに飛んでくる銃弾は音も無く。だが急所を守りながらもその方向は確かに把握した。
捕食モードに変じた鮫剣が幾重もの牙を広げた。範囲を大きく広げ、まるで大津波の様に銃弾すら飲み込む様に――見えぬ敵のいる方向を大きくガブリと食らい付く!!
『……グアァァァッッ
!!??』
ガリ、と大きな顎が何か硬いモノを噛み砕く音と共に、床に血の雫が落ちる。
姿を現した科学者の身体には大きく噛み付き裂かれた後がただ残り、青ざめた表情が見て取れたか。
「――もう一度行こうか。でも寿命は、もう少し手加減してほしいかな?」
何とも言えぬ倦怠感を覚えながらも、グルナは再び鮫剣をけしかけ、食欲のままに委ねさせた。
大成功
🔵🔵🔵
六道・橘
【宿世】
使わないわよ
學府の上の言いなりだった少女時代じゃあるまいし
彷は使わないでしょ
素でデタラメスペックを叩き出した双子のお兄様
薬なんて不純物は不要よね
14歳の姿に変わる
この頃と同じわたしはただ斬るだけよ
道は彷がつけてくれる
一撃目は彷を斬り
後はお望み通り彷を盾にして鉱石を喰らわぬように立ち回る
胸が痛まないのかって?
痛いわよ
だから一刻も早くあなたを殺さなくちゃ
わたしの大事な寵姫が死んでしまう前にね
追い込めば追加の薬に手を出すでしょう
そこを狙い一刀両断
最後は自分ごと腹を貫いて終わりよ
※
(火つけ)
非人道的な薬物投与なんて孤児のわたしに打って付け
學府のよからぬ輩を全て粛正してれてたの、もう知ってるから
比良坂・彷
【宿世】
きっちゃん、まさかアレを使うんじゃァないだろうねぇ
ええ?そんな事強いる上が居たんだぁ
今世はもう橘が上だよ
初手
一九字牌をぶちまけ鉱石相殺
かつ足払いからの「天衣無謀」での叩き下ろし
あはっ!麻雀は14枚であがるのよ、二つ足りない小牌はあがり放棄
アンタに勝ち目はねぇのよ
最優先は橘の盾、攻撃は全て引き受ける
てか、俺しか狙う気になんないでしょ?そういうUCだし
技が麻雀絡みなのは身内のおにーさんへの憧れ?
それともアンタも打つの?
血反吐つきの煙草を燻らせ、天衣無謀での殴打と蹴打
暗闇にさせぬよう電灯狙いの射撃は手首をぶったたき阻止
※
煙草の火ィ頂戴
14歳の橘はやっぱ可愛いや
俺の内側の教祖様がそう言ってるー
「きっちゃん、まさか
アレを使うんじゃァないだろうねぇ」
「使わないわよ。學府の上の言いなりだった少女時代じゃあるまいし」
――と言うか。なんでここにいるの。
そう言いたげな六道・橘(
逸脱の熱情・f22796)の冷たい視線に射抜かれながらも、比良坂・彷(天上随花・f32708)はわざとらしく肩を竦めて驚いた表情を作って見せた。
「ええ? そんな事強いる上が居たんだぁ」
「と言うか、彷は使わないでしょ」
疑問形ですら無くバッサリと橘は告げた。この"双子のお兄様"は素でデタラメスペックを叩き出す、薬なんて不純物なぞ不要。そうでしょ?と視線で問いかければ。
「はは、どうだか」
ヤニの香りを遺した吐息が一つ。
「今世はもう橘が上だよ」
「どうだか」
そんなやり取りを白衣の男は邪魔しない。その間すら時間稼ぎだと踏んでいるらしく。しかし嫌でも聞こえるその会話に、二人の心臓が奏でる音に、どこか羨ましげに春真は微笑んだ。
『仲が良いのだね。随分と穏やかな心音で、敵を前にしていると思えない』
それと――フフッと春真は銃の先で橘と彷をそれぞれ示し、不思議そうに問う。
『そしてどこか似ているな君達。息遣いか脈動か――まぁ辛うじて区別は付くけど』
銃口が上を向き、灯りを撃ち抜けば更に僅かに室内が薄暗くなり、代わりに春真の周囲に輝く鉱石達が浮かび上がった。
相手が戦闘態勢に入ったと見た橘もまた、己の真を曝け出す。背中を流れる黒き髪。拾四の頃の自分。彷が初めて見初めた頃の橘。
『幼き姿で俺に勝つと?』
「ええ、この頃と同じ――わたしはただ斬るだけよ」
それに。道は彷がつけてくれる。わざわざ言葉交わさずとも、兄がどう動くなんて識ってるから。
次の瞬間、前に飛び出た彷が礫の如く牌を放った。一九字牌は春真が差し向けた鉱石達とぶつかり合い相殺され――ただし彷の放った一索のみが雀の様にどれとも対を作らずに白衣の男の胴を突き抜けた。
「
国士無双と言うには一枚足りないね?」
更に至近距離まで近付いた彷は足払いを加えて姿勢を崩した所に雀牌の入った鞄を思い切り叩き下ろし、白衣の男を殴打する。
『っぐ……!』
「あはっ! 麻雀は14枚であがるのよ、二つ足りない小牌はあがり放棄」
――アンタに勝ち目はねぇのよ、と挑発台詞をくれてやれば。温厚そうに見えた科学者がギリと歯を鳴らし、近くにあった薬のシリンジに手を伸ばすと生肌残る首に突き刺した。
『……っざけんな、クソガキ。その羽根毟るぞ』
「ちゃぁんと俺見て殴ってよ!? ああ見えないんだっけアンタ!!」
破産教唆の効果は覿面だと彷はほくそ笑む。
殺意は自分に全て向かう。多少、鉱石が運や生命力を削ごうとも、己の役目は盾が故。
「ええ、お望み通り」
そして橘は後ろより彷に一太刀だけ浴びせる。紅く血が咲いて間も無く、彼女はその刃を春真に向けて続け様に斬り付けるのだ。
『容赦ないお嬢だな――ほら、心拍数が上がって今にも潰れそうだ』
「ええ、胸が痛むわ、痛いわよ」
だからこそ、一刻も早く殺すのだと橘はその瞳を輝かせ、長い髪を振り乱しながらも容赦無く斬り付ける。
『じゃあ俺も殺してやるよ、お前の大好きな存在を! そっちのクソガキを!』
そうすればこの娘は悲しみに胸を潰して死んでしまいそうだから。いや、それ以前に彷の
挑発が彼しか狙う気を否応なしに起こさせるのだ。
最優先は橘の盾になる事。攻撃は全て引き受ける。決して
彼女に傷一つ付けさせない。
「にしても、技が麻雀絡みなのは身内のおにーさんへの憧れ? それともアンタも打つの?」
咥え煙草は既に血反吐の鉄の味。それでも口から落とす事なく、橘を庇いながらも気力を振り絞って天衣無謀を叩き付け、足元を掬う様に蹴りを叩き込む。
天衣無縫、
宸碧玉、そして
国士無双――どれも役満の聞き慣れた響き。純粋な疑問。
『――……考案は俺、名付けは……弟』
身内、の一言に一瞬眉を上げ、一瞬の思案の後にポツリと一言だけ絞り出し。春真は更に電灯を撃ち抜かんと銃口を天井に向けるも、彷に手首を思い切り殴打されて阻止される。明後日の方向に響く跳弾音。
「成る程? でも弟ならこっちも負けてないかな」
ね?と彷が笑ったその後ろより。橘は刃を手に鉱石の隙間より飛び掛かり、追加の薬に手を伸ばしていた春真の機械腕を肉の如く一刀両断せしめた。
『――っ!!?』
「痛みを感じない鋼の四肢はラクね。でも此処は流石に生身、でしょう?」
振り返りながら橘は己の身を貫いた。内臓の隙間を縫って突き抜けた切っ先は、男の腹部を貫き。
『……君達もきょうだい、か……成る程ね……』
どこか似た理由はそこかと納得した上で見事だと小さく告げ。
事切れた白衣の科学者はそのまま骸の海へと消え去った。
大人の姿に戻った橘は、マッチを軽く擦ると咥えた煙草に火を点けた。
「火ィ頂戴」
「ん――」
フィルタ越しに息をして、赤く灯った煙草の先を彷の一本の先に寄せれば熱が伝わり灯火は二つに増える。
「14歳の橘はやっぱ可愛いや」
「何寝言云ってるのよ」
呆れた、と肩を竦めながら橘は彷の目を見つめた。
俺の内側の教祖様がそう言ってる――彼の瞳はそんな事を告げており。
「……非人道的な薬物投与なんて孤児のわたしに打って付け」
もう一本擦っていたマッチの炎は、目の前で大きく燃え上がる炎と化して行った。工場も在庫の薬も何もかもが紅蓮に呑まれて消えて行く。
(「學府のよからぬ輩を全て粛正してれてたの、もう知ってるから」)
行こう、と橘が促し、彷はやれやれと頷いて、
崩れ落ちて行く地下工場。階段が崩れ落ちる前戻った地上階より、二人は炎の海を見下ろした。
ここもいずれ、更地になって地上げされるのだろうが、それはまた別の話。
大成功
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