●
ガラガラガラ、荷馬車が行く――供も連れずに。
ガラガラガラ、夜道を行く――たいまつひとつ。
ガラガラガラ、声も無く――ひっそりと。
ガラガラガラ。
「待ってろ、今、お父ちゃんが美味しいもの持って帰るからな……!」
ガラガラガラ、ガラガラガラ、ガラガラガラ。
男と馬の往くその背を、見つめる瞳がひのふのみ。
●
「暖かい料理を囲んで家族団らん。貴方たちもそういったものに憧れるのでしょうか?」
ここは総ての可能性や因果が集まる場所「グリモアベース」、その一角に設けられた作戦会議室。その一室に入ってくるなり、痩躯の少年ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)はこう切り出した。
「あまり僕には家族の好い思い出がないのでそういった感情は理解し難いのですが」
そう前置きして。
「ダークセイヴァー世界の一角、そこで賊に襲われる男の姿が視えました。男が牽いている荷馬車には鶏が数羽乗せられているようでして、どうやら家には彼を待つ家族が居るようですね」
それだけなら、取り立ててグリモア猟兵が召集を掛けるような事態ではない。オブリビオンに支配され、闇に閉ざされた世界。それがダークセイヴァー。明日への希望も失い、荒廃した土地にわずかな糧を得て人々は細々と日々の命をつないでいる。
そんな、正に暗黒の世と言うべき世界であるからして。
心苦しいことではあるが、これもまた……ある意味では「取るに足らない出来事」の一つ。
そう訝る貴方たちの目線に気が付いたのか、ジョルジュはその身に埋め込まれたガジェットの一つ「万象映す翡翠」を起動して、彼の視た予知を共有する。そこに映るのは華美な服を着た怪人らしき姿。だが、その仔細は黒い靄に覆われて窺い知ることができない。
「男を襲撃しようとしているのは人間の賊ではありますが、その背後にはオブリビオンの姿があるようです。支配者階級であるオブリビオンに取り入って、好い目を見ようとする者も、どこにでもいるものですね」
賊の背後にいるオブリビオンの情報を入手し、無辜の民を暴虐するその悪行を討つのが今回の目的だと、彼は告げる。
ジョルジュが視た未来は、そう遠い先の話ではない。急ぎ、ダークセイヴァー世界へ向かわなければ。
「帰るべき暖かい家庭があるのであれば、それは護られるべきなのでしょう。ぜひ、貴方たちの力で、闇夜を照らしてあげて欲しい」
そう最後に告げて、グリモア猟兵は異界への門を開き、貴方たちを誘う。
かもねぎ
初めまして、かもねぎと申します。皆様と一緒に第六猟兵の世界を作り上げていくことを楽しみにしております。
私自身も初のマスターということで緊張していますが、文章の特徴や雰囲気を知ってもらえればという思いで筆を執りました。
ダークな世界観のシナリオになると思いますが、気軽に皆さまご参加いただければな……と願っています。よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『野盗から行商を守り抜け!』
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POW : 自らの拳で抵抗。力づくで野盗を撃退する
SPD : 三十六計なんとやら。素早くその場を去る
WIZ : 野盗に交渉するなりしてスマートに修羅場を切り抜ける
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阿紫花・スミコ
「あ、どうも。旅の者だけど道に迷っちゃってさ、君の村まででいいからさ、連れてってくれない?」
気さくに話しかけて、同行を申し出る。(優しさ、コミュ力、言いくるめ)
断られれば、まあ、距離を開けて見守るかな。(追跡、暗視、視力)
「ちなみにボクは強いけど、それでもやるのかい?」
人間相手に人形を使うまでもないかな。ヒートロッドを蒸気エンジンで強化。ワイヤーギアも使って、スピードで敵を翻弄しながら攻撃っと。(ダッシュ、属性攻撃、フェイント)
逃げるようなら追撃はしない。ただし、援軍などあるかもしれないので、警戒は怠らない。
「弱い者いじめは性にあわないんだけどなー・・・しょうがないなぁー」
「あ、どうも。こんにちは。旅の者だけど道に迷っちゃってさ」
声を掛けたのがむくつけき男であれば、もしくは刻が宵も更けた頃であったなら、道を急ぐ父親が足を止める道理はなかっただろう。
だが、濡羽色の艶やかな少女が朝露に濡れた草を踏んで穏やかな声音で気さくに話しかけてきたとあれば……如何に警戒心に満ちた男であっても、家に残してきた家族を想っては声に耳を傾けてしまったのはやむを得ないだろう。
もしくは、彼女が傍らに携えた大きなトランクを目にして、足元の悪い道中の苦労にいささかの同情心を覚えたのかもしれない。
「君の村まででいいからさ、連れてってくれない?」
そんな男の様子を見つつ、にこやかに笑いかけながら阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は馬の手綱を引く父親に話しかける。
初めは警戒した様子を隠そうともせず、ややもすれば突き放した様子で足早に歩きながら返事を返す男であったが、次第にその表情もほぐれ、旅の連れが出来た気安さからか身の上話などをスミコに語りながら荒れたガレ道を進むのだった。
その彼が語るには、故郷には9歳になる息子がおり、いまは男手ひとつでその子を育てているのだとか。この周辺の地はとある新興のオブリビオンに支配されており、労働力を徴発して贅の限りを尽くしているのだとか。
男が訥々と語るオブリビオンによる支配の実態を改めて実感し、スミコは眉を顰めたのだった。
2人が話す話し声を耳にして、遠巻きに様子を窺っていた気配のいくつかがそっと離れていった。
成功
🔵🔵🔴
ヨド・カルディヤ
肉親、と括るならば。わたくしも好感は欠片もございませんが。
家族、と広げるならば。その重みも、愛しさも、胸の内に確かに。
誰かのこれを護るため。
そう知って立ち上がれぬほど、耄碌はしておらぬつもりにございます。
介入後、言葉にて解決を図る方がおられるなら、まずは成り行きに注目を。
力尽くが必要となれば、改めて行動に。
(これ見よがしに【ブラッド・ガイスト】。刻印を巨大な咢へ。尚向かってくるならば、覚悟を持てと重圧込めて。技能:覚悟)
それでも、貴方方はまだ人の身。
命までは奪いたくありません。が、心は折らせていただきたく。
(寸止め、あるいは死に至らぬ程度に傷を刻む。恐怖心を煽るための攻撃。技能:戦闘知識)
ベル・オーキィ
世界を滅ぼすなんて大言壮語しておいて!やってることは鶏泥棒!
意、味、が、分かりません!!私を怒らせたいなら大成功ですけどね!!
私の行動は《荷馬車と賊との合間に陣取り【『古樹を断ち割るもの』の怒り】の落雷で賊を撹乱する》こと!
行く先が稲光で真っ白になっているのを見れば、奴らも足を止めるはず!その隙にお父さんには距離を稼いでもらいます!
他の猟兵が襲撃をかけるうえでも、敵の行動を制限することは有効でしょう!!
【『古樹を断ち割るもの』の怒り】の射程は10m!お父さんの荷馬車を巻き込まないよう要注意です!
私自身は物陰に隠れて敵に見つからないよう努め、万が一の際は【全力魔法】で牽制しながら撤退します!
アルバ・ファルチェ
こういったスマートじゃないやり方、僕は好みじゃないな。
帰りを待つ人が居るのであれば、僕はそれをサポートしよう。
守るのはこう見えて得意なんだ…【盾の騎士】の血脈だからね。
さて…僕は攻撃はあまり得意じゃないからね、守る方に集中させて貰うよ。
男性>荷馬車>馬の優先で守るよ…男性が無事なのも当然だけど、荷物も馬も大事だものね。
攻撃が通じなくて諦めてくれればいいけど…そう簡単には行かないかな?
『ねぇ、君たち不毛だと思わない?
こんなことするよりさ、可愛子ちゃんとお話する方が建設的だってば。
僕と一緒に探しに行かない?』
あ、近くに年齢問わず女性がいたらウィンクを送っておくね☆
「――ちょっとアンタら、誰に断ってこの道通ってんの?」
夕闇迫り、ざわざわと風が鳴く頃。伴連れとなった一行に声を掛けるのは、風体
確かならず目深にフードを被った見るからに怪しい集団……その数は10ほどだろう
か。
それだけであれば極ありふれた野盗の一団と言えたのであろうが。なるほど、そ
の足首には鈍く紫色に光る魔力を帯びたアンクレットがあるのを見れば、彼らがオ
ブリビオンに魂を売った者共であることは一目瞭然だった。
気が付けば、めいめいに剣やナイフ、手斧などを手にした野盗にすっかり荷車は
囲まれてしまっている。
「聞いてんのかねぇ?それとも声も出ないですかぁ?」
ナイフを見せびらかすように手のひらに叩き付けながら、リーダー格と思しき悪
党が見上げるように父親を脅しつける。父親は血糊の落ち切らないナイフを見て声
もなく、馬だけが「ブルル」と低く唸る。
「話が通じねぇかなぁ??命が惜しかったら持ってるもん全部置いてけって言って
んだよ。そこの娘も!」
父親が返事を返さないことに焦れたのか、悪党がナイフを翳して切りかかろうと
したその刹那。
「こういったスマートじゃないやり方、僕は好みじゃないな」
アルバ・ファルチェ(人狼のパラディン・f03401)が流れるような動きで父親と
悪党の間に割って入ると、駆け付けた勢いもそのままにメイスを悪党の鳩尾に叩き
付ける。
攻撃は得手ではないと自負するアルバではあったが、それはオブリビオンを相手
に取る猟兵としての基準あってのもの。しっかと過たずに急所を撃つその一撃は、
悪党のソフトレザーをへこませ、その下の胸骨を砕く。
――ぐぅ、と蛙の鳴くような声が漏れ、悪党の手からナイフが滑り落ちる。
そして、そのまま膝から崩れ落ちるように倒れ伏す。
「さて、まだやるかい?やるなら、【盾の騎士】の血脈に連なるこの僕がお相手しよう」
銀の毛並を風に聳やかせ、アルバは野盗たちを睨みつける。
力量の差は明らかだった……それでも。
「だからってイモ引ける訳があるかよぉ!」
頭領を失った野盗たちは、戦意を失うどころか益々いきり立って一行へ詰め寄る
。その怒声に応じてか、足首に宿る禍々しい紫の光がその輝きを一層強くする。お
そらくは、呪いと祝福。オブリビオンに魂を譲り渡す代わりに、尋常ならぬ力を得
る禁じられし邪法の業。
そこに、この場には似つかわしくない貴婦人然とした老齢の女性が現れる。
「覚悟あるならば、見せていただきましょう。家族を護る親の姿を見て立ち上がら
ぬほど、このわたくし、耄碌してはおりませんよ」
その名はヨド・カルディヤ(ヒドゥンブラッド・f02363)。
ダンピールでありながら、人に寄り添い、寄る辺なき子らへ手を差し伸べる高潔
な女性。そんな彼女が、魔性の血を燃やし、【ブラッド・ガイスト】を発動する。
それは巨大な……人の身などものの一口で飲み込んでしまうほどの禍々しき咢。
皺と共に彼女に刻まれた力の一端を目にして、幾人かは腰を抜かし、幾人かは武
器を放り出して我先にと逃げ出していく。
「そちらが刃を収めるのなら、命までは奪いません。疾くと去りなさい」
言葉穏やかに語りかけるヨドの口調とは裏腹に、そこには有無を言わせぬ無言の
圧力があった。
――趨勢は決した。だが、諦められぬ男が一人。
「クソッタレ、それならせめて馬だけでも……!」
アルバの一撃で昏倒していたリーダー格の悪党が、痛む胸を押さえながら先を急
ぐ荷馬車に追い縋ろうとする。その伸ばした手の先に。
「喝して抉れ! ヤガより疾き、見えざる斧刃よ!」
騒動からは一歩離れ、事の成り行きを見守っていたベル・オーキィ(騒乱魔道士
の弟子・f08838)が放った【『古樹を断ち割るもの』の怒り】がまばゆい光と轟音
を伴って炸裂する。
彼女の技、「騒乱魔法」は術者の「怒り」を自然に伝えることで天変地異を起こす、彼女の家に古くより伝わる技能。人の身でありながらオブリビオンに媚び諂う悪党どもの行状に怒髪天を衝く勢いであった彼女の怒りは頂点に達していた。
いつしか日も暮れ、宵闇が迫っていた。だが、ベルによって呼び起こされた稲光は辺りを昼日中のようにまばゆく、白く塗りつぶす。
焦げ臭い、灼けた空気がやがて掻き消えて悪党の視界が戻る頃には……父親と荷馬車は、その影も見えぬ遥か先へと歩みを進めている。襲撃が失敗に終わったことを悟った悪党は、漸く観念したのであった。
猟兵たちの活躍によって、父親と荷馬車は護られたのだ。
「みんな、お疲れさま。見目麗しいだけじゃなく腕も確かとは、心強いね」
首尾が上々に終わったことを確認すると、アルバは武器を収めてベルとヨドにウインクと共に賞賛を送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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●
ガラガラと車輪を軋ませて、荷馬車はなおも往く。先ほどまで周囲に感じられた気配はなく、野党たちの脅威は去ったことを窺わせる。
「そう言えば、男手ひとつで息子さんを育てているって言ったね。どうして故郷を離れていたのかな?」
道中、すこし気安くなったのだろうか。父親に並んで歩く猟兵のひとりが、ふと頭をよぎった疑問を投げかける。
このご時世にまだ年端も行かない子供を一人家に残して、危険は無いのか――と。
「俺も好きであの子を置いてきたわけじゃ無い。それもこれも全部、オブリビオンの支配のせいなんだ」
彼が語るには、この地域を治めるオブリビオン「悦楽卿・パラダイスロスト」は己の欲望を実現するために支配地から働き手となる大人を徴発する。
その一方で……ごく稀に。
気まぐれのように徴発した者を解放することがあるという。
それは大抵一人か二人であり、僅かばかりの褒美を渡されてオブリビオンの居城から放逐されるのだ。
「――つまり、それが今回は俺だったという訳だ」
残してきた息子に、寒さが厳しくなる前に滋養があるものを食べさせたい。
時期は年の瀬、聖夜祭も近い。だから、褒美には鶏を。
帰ったら、この鶏をつぶして、温かいスープとローストチキンを作って息子と食べたい。
そんな父親の顔をして、男は久方ぶりに会うであろう息子の様子を思い浮かべて胸の丈を吐き出すのであった。
●
「いやぁ実に、じつに麗しい親子の愛!そんなお涙ちょうだいな姿を見せられたら、私も感謝感激雨アラレですよぅ!」
何もなかったはずの空間がぐにゃり――と歪み、ハイトーンで妙に癇に障る調子で話す声が聞こえたのはまさにその時。
「つかの間の郷愁に浸りましたか?幸せな家庭を夢見ましたか?おとうさんと呼ぶ声を思い浮かべましたかぁ!?」
ならば。その幻想を抱いたまま絶頂の縁で死んで行けと。
――虚空から現れたオブリビオン、悦楽卿・パラダイスロストは宣告する。
気づけば音もなく、腐臭を漂わせた死人が主の命に応えて荷馬車を、猟兵を十重二十重に包囲する。
辺りには絶望と死の気配。
「脆弱な人間どもの絶望する表情、最ッ高ですよねぇ!もっと、モット魅せてください!」
支配者へ捧げられる生贄を、煌々と篝火が照らす。
アルバ・ファルチェ
さぁて、お次は亡霊かい?
なかなか賑やかな事で。
パーティーは楽しめなきゃダメだろう?
危険はお帰り願おうか。
言っておくけど僕は双子の兄のセラと女性、後はしょうがないから害のない男性も入れてあげようか…とにかくその辺にしか優しくないから、覚悟願うよ。
セラが一緒なら頼もしい。
僕は武器で攻撃を受けつつ、セラが攻撃に集中しやすいよう援護するよ。
…あ、もちろん他に仲間がいても援護するよ?
でもセラを最優先。
万が一でもセラにダメージを与えたら…切り刻んで、すり潰して、粉々にしてやるから…フフフ。
…え?思うだけだよ、僕は攻撃不得意だから。
多分ね、フフ。
あ、今回も女性が居たら労いと賞賛と…投げキッスも良いかなぁ。
セラータ・ファルチェ
双子の弟、アルバと協力して行動する。
現れたオブリビオンを鋭く睨付けて低く唸る。
「いよいよ、黒幕の登場のようだ。」
味方が攻撃をしている間に10秒間集中し、千里眼射ちを発動させる。
可能なら篝火を持っている腕を狙う。
「その火、うざったい。」
その他の行動は味方を援護射撃にて援護(特にアルバ)。
「お前、アルバに何してくれてんの?」
敵からの攻撃は武器受けでダメージ軽減・もしくは回避する。
阿紫花・スミコ
「一難さってまた一難か・・・あれは・・・オブリビオンか?」
スミコが静かにつぶやく。
「野党どもは猟兵たちにお任せしちゃったけど、今度はさすがに高見の見物とはいかないか
・・・。」
スーツケースに手をかけるスミコ。
「おじさん・・・ボクをたすけてくれてありがとう。とってもうれしかった。だから、その恩返しをするね。」
スーツケースからからくり人形「ダグザ」が現れる。
「おじさんは、無事に息子さんのところへ返してあげる・・・だから、安心して。」
おじさんを守りつつの戦闘になる。からくり人形「ダグザ」によって、命中率重視で、確実に目の前の脅威を各個撃破していく。
周囲に猟兵がいるようなので、できれば協力を仰ぎたい。
蘆原・結太
待っている息子さんのためにも、そんな酷いことをさせる訳にはいきませんよね。
しっかり、守り切ってみせます!
お父さんと荷馬車の近くに飛び込んで、できるだけお父さんに近寄らせないように、
【鈴蘭の嵐】で亡者達を攻撃します。
そのあとは、他の皆さんの様子を見て行動します。
攻撃の手が足りないようだったらその手伝いを。
足りているようだったら亡者達を引き付けて、皆さんがより攻撃しやすいように動きます。
もしお父さんが攻撃されたら、攻撃とお父さんの間に割り込むようにして防ぎます。
ベル・オーキィ
臭い!くさあい!流行り病に侵された村と同じ匂い!死の匂いです!!
こんな奴らと一緒にいたら鼻が曲がります!さっさと蹴散らしましょう!
私の行動は《【『泥土に浮かぶもの』の怒り】で『篝火を持つ亡者』の身動きを封じ、仲間たちの手助けをする》こと!
敵の足を止めれば戦闘が有利になることは言うまでもありません!
さらに、奴らは「篝火」を武器にしている様子!雨風で悪影響を及ぼせるかもしれませんね!!
ユーベルコード使用時は『篝火からの炎』が届かない距離を保つことに注意!
もし敵に危険な動きがあれば、前線の仲間たちに叫んで知らせます!声の大きさには自信がありますから!!
草間・半蔵
すごくいやな声だ。いやな言葉だ。
腹のそこからふつふつとわきたつような。
思い通りには絶対にさせない…!
ぎゅっと剣に力を込める。
身を屈め懐に飛び込んで斬りつけ。影を踏んで避けられるようなら、予測できないようにしてやる。
ブレイズフレイムを敵の足元に飛ばしつつ剣にもまとわせる。より強い光で篝火の影を上書きするように。赤く赤くたくさん燃やす!
あとは篝火を持つ腕を斬りつけたり力強く胴をなぎ払ったり。
「見えないなら教えてやる…、その先の未来は死だ!」
●
それは異様な光景だった。パチパチと爆ぜる篝火のほかに物音はなく、幾重にも寄せるさざ波の様ににじりよるその足取りには息遣いも意思も、ましてや生者の気配は感じられず。屍人形は主の命のままに、新たな肉を己らが同胞に加えんと一行へ、また一歩じわりと歩みを進める。
「ここまでか……済まない」
帰りを待つ息子の顔を思い浮かべては、観念したように父親が呟く。
無理もない。
この世界、ダークセイヴァーにおいてヴァンパイアを筆頭とするオブリビオンの脅威は絶対。人々は過去の亡霊、失われた神々たるオブリビオンに対抗する術など、何一つ持たない。
――時折気まぐれの様に現れる、奇跡の業を以って闇夜を払う者のそれ以外は。
他の世界であれば猟兵、この世界では勇者または英雄と称される者たち。特異な超常能力「ユーベルコ―ド」をその身に宿し、オブリビオンに果敢に立ち向かう者たちが。
この場には、居た――。
●
「ボクも今回ばかりはさすがに高見の見物とはいかないか。でも、大丈夫。おじさんは、無事に息子さんのところへ返してあげる……だから、安心して」
馬車の荷台にトランクと並び、座りながら阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は呟いた。幸いなことにオブリビオンにとっても猟兵の存在は認知されておらず、スミコは「やや風変りな服装の少女」と思われているようだった。
チラリと木立の影から見えたのは共にこの場に転移してきた猟兵の姿か。彼らが反撃の機を窺っていることを察して、それならば。
「おじさん……ボクを助けてくれてありがとう。とってもうれしかった。だから、その恩返しをするね」
ヒラリと音もなく荷馬車の荷台から飛び降りると、茶色い革張りのスーツケースの錠を解き、その本質を露にする。
それは、からくり人形「ダグザ」。ケルト神話の最高神の名を冠するその人形は、彼女の分身。
●
虫の知らせとでも言うべきだろうか。不穏な予兆を感じ、野盗を退けてからもベル・オーキィ(騒乱魔道士の弟子・f08838)は遠巻きに一行の様子を観察していた。そして、その予感は現実となる。虚空から現れたオブリビオンとその配下の屍人形が、気付けば荷馬車を包囲している。
「臭い!くさあい!流行り病に侵された村と同じ匂い!死の匂いです!!こんな奴らと一緒にいたら鼻が曲がります!さっさと蹴散らしましょう!」
鼻をハンケチで抑えながら、そう彼女は決意を新たにする。口調こそ血気盛んなのは、彼女が騒乱魔法の使い手であることを考えれば無理のないことであったが、一方でその視線は冷静に状況を見据えていた。
油断か、慢心か、それとも単なる戯れか。
何にしてもオブリビオンは屍人形に全てを任せ、自分は高みの見物を洒落込む算段に見えた。そうであれば、付け入るスキはある。この場には頼りになる仲間が、猟兵が居る。そう信じ、彼女は機会を待つ。
――そして、機は、熟した。
互いに手を伸ばせば触れる、その距離まであと一歩という正にその時である。
「驟りて弛め! 毒蛇を運ぶ、黒き車軸よ!」
ベルの力ある言葉に応えて、遥か上空から黒雲と共に小さな嵐が訪れ、立っているのもやっとな程の暴力的な風と叩きつけるような雨が亡者どもの足を留める。その声は、同時にオブリビオンに対する反撃の烽火そのものであった。
●
ベルが呼び起こした風と共に、亡者たちと父親の間に割って入る影が二つ。
蘆原・結太(白翼の盾・f00893)と草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)である。そのいずれも、ややもすると死の匂いがむせ返る程に立ち込めたこの場には相応しくないかもしれぬ。それほどまでに、彼らは若い。
だが、その実力は疑うべくもなく確かなもの。
「ここでオブリビオンの好き勝手にさせる訳にはいきません。お父さん、僕たちがしっかり守り切ってみせますから!」
絶望と不安に苛まれる父親の目をしっかりと見つめて鼓舞しながら、蘆原は手にした武器を鈴蘭の花びらへと転じさせる。彼のユーベルコ―ドは武器を鈴蘭の花びらへと変化させ、自身の周囲を舞わせることで全周囲攻撃を可能とするもの。敵に囲まれたこの状況は、彼の能力を発揮する最上の舞台であった。
それは、草間に取っても同様である。彼は身の丈ほどの巨大な剣「鉄塊剣」を振りかぶり、敢えて蘆原とはタイミングを半拍ずらして敵のさ中に飛び込む。
「影を見て動きを予測するなら、その影ごと全て燃やし尽くしてやる」
乱舞という単語が正に相応しいほどの力強く、一方で華麗な剣戟。草間がその手にした剣を一振りするごとに、彼自身の身から、刀身から、地獄の業火が迸り亡者の群れを焼き尽くしていく。戦場は煌々と赤く燃えていたが、それは亡者の掲げる昏き火ではなく、オブリビオンに抗う人々の意思の炎であった。
――ややあって。
辺りには肉の焦げる音と、それを打ち消すほどの鈴蘭の芳香。死の匂いはこの場には無い。少年たちは互いの実力を認め、視線を交わして残りの亡者へ向かう。
●
猟兵の連携は見事であった。敵を引き付け、攪乱し、混乱に乗じて殲滅する。基本戦術を忠実に、確実に遂行する……その繰り返しが目的達成に繋がると信じて。
一方で、それは悦楽卿・パラダイスロストにとっても同様。
元よりオブリビオンにとって亡者は手駒であり単なる使い捨ての道具。足りなくなれば領地から手ごろな人間を調達して生みだせば良い。なれば、いくら亡者を切り伏せられたとしてもその心は些かの痛痒も感じることは無く。
「なかなか魅せてくれますねぇ☆イイ感じですよ!……でも、そうやって前ばっかり見ていると後ろから足を掬っちゃうよぉ?」
単純だが圧倒的な物量で猟兵を釘付けにする一方で、僅かな数の亡者が篝火を捨て、密やかに、だが確実に父親と荷馬車へ迫っていた。
――しかし。
「必ず、おじさんは無事に送り届けるから。安心して!」
そこには全てからおじさんを護るという強い意志を胸に、立塞がる大小二つの影があった。それは、スミコとダグザ。彼女らは戦況に踊らされず、冷徹に亡者の動きを見ていた。破壊と再生を司る、その神格を体現した巨大な棍棒は無慈悲に亡者を討つ。
「ボクの人形が、そんな仕掛けを見逃すと思ったのかい?」
●
趨勢は決した。猟兵たちの働きによって、荷馬車へ近づく亡者たちはそのことごとくが討たれた。あとは、この場の騒ぎを呼び起こした元凶、パラダイスロストとその周囲の供連れが残るのみ。
そこへ、アルバ・ファルチェ(人狼のパラディン・f03401)とセラータ・ファルチェ(人狼のパラディン・f03368)の双子が一糸乱れぬ連携で肉薄する。
「いよいよ、黒幕の登場のようだ」
「そうだね、セラ。賑やかなのは良い事だけど、楽しめないパーティは好くないね。彼らにはお帰り願おうか」
そう声を交わしながら、まずはアルバが。バスタードソードを両手で薙ぎ払い、近衛たる亡者たちの体勢を崩す。
攻撃が得手ではないアルバではあるが、思い切った飛び込みが出来るのは……兄が必ず自分に続くと信じているから。
「その火、うざったい」
アルバが切り開いた間隙を縫って、次々と矢が亡者に突き立つ。それはセラータが千里眼射ちで放ったもの。その全てが必殺の威力を備え、確実に、敵の急所を穿つ。
亡者が能力を発動するにはその手にした篝火が重要そうだと見極めれば、一方的な遠距離から矢継ぎ早に攻撃を加え、腐り切った腕はその猛攻に耐え切れずに千切れ飛ぶ。
兄からの援護射撃を受け、アルバは終にパラダイスロストの下へたどり着く。
「これで追い詰めたよ。ジャッジメント・クルセイド!」
パラダイスロストへ向き直り、指差して断罪すれば天からの光がオブリビオンへ向かう。過たず、裁きの光が敵を討つかと誰もが思った刹那、最後に残っていた亡者が身を挺してパラダイスロストを庇う。
「やってくれましたねぇ。このショーは愉しめませんよぉ……」
苛立ちを隠そうともせず、パラダイスロストは歯噛みしてアルバを、他の猟兵を睨みつける。オブリビオンに従い、その身を護る亡者はその全てが猟兵によって倒された。
残るは……悦楽卿・パラダイスロスト、ただ一体のみ。
この期に及んでひと際高く哄笑したかと思うと、これまでとは比較にならない程の殺気がオブリビオンから猟兵たちに叩きつけられる。
「五体満足で生き残れるとは思わないことですねぇ。みんな、この私の玩具にして差し上げますよ!」
最後の戦いの火蓋が、切って落とされた。
大成功
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第3章 ボス戦
『悦楽卿・パラダイスロスト』
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POW : プレゼント、プレゼントですよぉぉぉぉ?
【水飴の鞭 】【砂糖菓子の杭】【飴玉の弾丸】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : あーあー、こーわしたこーわしたっ!
対象のユーベルコードに対し【相手にとって守るべき民衆の幻影 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : 大人しく死ぬわけないでしょぉぉぉぉ!?
自身が戦闘で瀕死になると【無数の飴が集まってできた数十mの巨人 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑17
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それは異様、異形、異貌。従者を失った悦楽卿・パラダイスロストは、それでもなお、己が優位を疑わずに猟兵へ向かう。
「ちょっと、イラっとしましたけど。泣いて跪いて許しを請うなら、まぁだ赦してあげないこともないですよぉぉ!この私は海の様に広い心をもっていますからねぇ!」
羽虫が如き人間の所業など取るに足らぬと、繰り返す。
ヨド・カルディヤ
いいえ、いいえ。
とても。そう、とても愉しいショーにございますよ。
貴方の終わりを看て取れるなど、この上ない娯楽かと存じます。
――これほどまでの愚物、わたくしも中々お目にかかったことがございませんので。
もはや、問答は無用。
今や彼の身を穿つためのみに、この老身はありますれば。
(『rugăciune』、祈りを込めた刻印に鮮血を与え、ばら撒かせる。それを媒体に、【紅き世】を発動)
――染まり広がる紅は、貴方を蝕み喰らう悪食だと知りなさい。
(多量出血を一切厭わず、倒れ伏すその時まで、力を高め攻撃を繰り出し続ける。技能:捨て身の一撃・覚悟・2回攻撃)
阿紫花・スミコ
「お前が元凶ってことだね」
人形とともに戦闘態勢に入るスミコ.まずはどんな敵かをよく観察しよう。焦りは禁物だ。スピードを生かして、ヒットアンドウェイ。焦らずともいつか攻撃のチャンスがめぐってくるはずだ。
攻撃のチャンスが巡ってくれば大技を繰り出す。
からくり人形を回転させ、ダグザの棍棒の連続攻撃を喰らわせてやる…!
「力があれば何をやってもいいと思っているんだろう?だが、お前がやられる立場でも同じことが言えるのかな?・・・ボクが見極めてあげるよ!」
アルバ・ファルチェ
家族の絆を断ち切ろうなんて笑えない、笑えないなぁ。
ショーが愉しめないのは、その悪趣味のせいだろう?
だからその悪趣味ごと、闇へと返してあげよう。
基本的に武器受けを駆使して防御主体で行動を。
ユーベルコードを封じられるのは困るから、それに関しては受けるというより切り捨てる方向で。
相殺に関しては、同時に攻撃すれば両方には対処できず片方は通るとか…そんな考えは楽観的すぎるかな。
でも試してみるのは悪くないかもしれないね。
巨人が現れれば僕が対処しよう。
盾の騎士の誓いにかけ、ここは通さない。
こんな不利な状況、血が滾るね。
…本体を倒せばこいつも消えるだろう…だから、皆は瀕死の本体にトドメ、宜しくね?
セラータ・ファルチェ
安心しろ、悪趣味なお前を楽しませるつもりは毛頭無い。
せいぜい、絶望して消え失せろ
基本的に攻撃主体でアルバと対になるように行動する。
お前からのプレゼントなどお断りだ。
プレゼントは武器受けせずに回避行動を
壊したからなんだ、幻を現実と見間違えるほど落ちぶれてはいないっ!
攻撃を相殺されたなら、その直後、敵が再び立て直す前に矢を穿ってしまえばいい。
大人しくなくてもいいが、一人で死ね
アルが止めている間に千里眼射ちを放ち、立て続けにバスタードソードで攻撃を仕掛ける。
●
「いいえ、いいえ。とても。そう、とても愉しいショーにございますよ。貴方の終わりを看て取れるなど、この上ない娯楽かと存じます」
――これほどまでの愚物、わたくしも中々お目にかかったことがございませんので。
そう内心に滾る怒りを込めてヨド・カルディヤ(ヒドゥンブラッド・f02363)はキッと眼光鋭くパラダイスロストを見返す。自身もヴァンパイアを父に持つヨドは、それでも尚、愛すべき子らを踏みにじるオブリビオンを赦すことはできないと断罪する。
「rugăciune――美しきを毒へ。頼もしきを獄へ。わたくしは、穢れに満ちているゆえに」
穢れに塗れたこの身なればこそ、穢れそのものを体現した所業を見逃すことは出来ぬと。決死の覚悟を込めて祈りと共に血を捧げれば、紅の霧となりて辺りを一面染め抜いて……パラダイスロストへ纏わりつくとその動きを封じ、力を奪おうとする。
「あぁなたもご同類ですかぁ?そんな、くだらない人間の味方なんてしないで面白おかしく行きましょうよ!」
周囲を隈なく覆う霧を跳躍して躱しながら、そうパラダイスロストは嘯く。
その誘惑を。
「冗談でございましょう?」
心外とばかりにヨドは切り捨てて、追撃を放つ。
上に隙を作ったのは囮、その目論見通りパラダイスロストは身をよじるも躱し切ること能わず、赤き呪詛の霧がオブリビオンを蝕み喰らう。
●
「この程度、なぁんてことはないけど。でも、ダカラって痛くなかった訳でもないし、癪に障りますねえ!そんな悪い子にはプレゼント、プレゼントですよぉぉぉぉ?」
血霧に覆われて少なからずダメージを負ったか、顏の無い異貌が醜悪な怒りに染められたような……そんな錯覚を思わせるほどに一転して低い声音でそう宣うと、パラダイスロストは猟兵から反転して父親へ向かって艶やかに透き通った水あめの鞭、色とりどりのマジパンで作られた杭、大小さまざまな飴玉の弾丸を放つ。
それは、猟兵ならぬ身であればその一つ一つが致命傷に足る攻撃。
――だが、この場には。
「盾の騎士の血にかけて、護ってみせるよ」
黒く陰りある月の毛並みを持つ誇り高きアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が居た。電光石火の動きで父親を庇うと、四方八方から飛来する杭と弾丸を、頭上に掲げた白銀の盾で叩き落す。
「やりますねぇ。でも、私の攻撃はまだ終わっていません!」
しなやかに畝る水あめの鞭は粘液質でありながら絡みつくように重く、盾を掲げたアルバの死角からその腕を絡め取らんと迫りくる。
しかし――。
「その魂胆は見えているよ」
ユーベルコ―ドを封じようとするその手は喰わぬと、アルバは冷静にその鞭を手にしたバスタードソードで切り捨てる。
そして出来た間隙を縫って、セラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)が放った矢がお返しとばかりにパラダイスロストを襲う。
「大人しくなくてもいいが、一人で死ね」
楽しませるつもりなど毛頭ない。ここで倒れるのはお前ひとりだと、そう言下にパラダイスロストの戯言をねじ伏せ、紅を引き裂いて風を切って矢尻が煌めく。
苛立ちに任せた全力の攻撃だったからこそ、為ればこそ、その隙も大きなものとなる。両の手を大きく広げて術式を発動したパラダイスロストは、刹那、反応が僅かに遅れる。迫りくる矢に反応してバックステップを刻もうとするが、その挙動を更に先読みして放たれた矢は深々とその太腿に突き刺さる。
●
「お前が元凶ってことだね」
おじさんを苦しめるオブリビオンは赦さないと。短い道中ではあったが思う所があったのか阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、その人形「ダグザ」を臨戦態勢に構えたままにスピードのギアを一段階上げる。
彼女のスピードはこの場において群を抜いていた。
その彼女が、縦横無尽に戦場を駆ける。飛び、跳ね、虚実織り交ぜて翻弄する。それはただ一つの目的――人形遣いである彼女の奥義とも言える一撃「スピニング・スイープ」を討つべき敵、パラダイスロストへ叩き込むその為だけに。
味方の猟兵がオブリビオンの動きを封じ、攻撃を受け止め、体勢を崩した。
然あれば、それはこの機を以って他ならず。
「力があれば何をやってもいいと思っているんだろう?だが、お前がやられる立場でも同じことが言えるのかな?……ボクが見極めてあげるよ!」
――ギギ、ギギギ、ガチガチガチ!
歯車がかみ合い、唸りを上げ、主の意に応えて限界を超えて回転する。
「これで決まりだ!!」
遠心力を乗せた超重量級の棍棒の一撃が、強かにパラダイスロストの胴を薙ぐ。
「――ぐぅっ!」
さしものオブリビオンもこの一撃を受けては常頃の嘲るような口調を保つこともできず、体表から飴細工の破片を無数に散らしては土煙を上げて横薙ぎに吹き飛ばされる。
それでもまだ立ち上がったのは、流石支配者たる悪逆の主と言うべきか。しかし、その脚は僅かに震え、少なくないダメージが蓄積されていることを物語っていた。
大成功
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アルバ・ファルチェ
道化にはお似合いの滑稽な姿だね
そのまま喜劇の主人公として消えてくれないかな?
そうすれば皆笑顔になれるだろう…お前の嘲りを含んだ偽りの笑顔じゃなく、心からの笑顔でね
セラもだけど、頼もしい女性陣も居るようだし僕は防御に専念しようかな
ほら、事ある毎に思惑を邪魔してるのは僕だよ
まずは僕を潰してみたらどうだい?
…まぁ、道化の技如きにやられる僕ではないけれど
…なんて安い挑発でも余裕が無いなら乗ってくれないかな
あとは…セラなら僕が狙うタイミング、わかるかな?
他の人達にも伝わるといいけど
『大技の後は無防備になる』
…狙い目はそこだよね
武器や盾で受ける、見切る…僕の持てる全てで耐えるから、ちゃんと倒して頂戴ね?
阿紫花・スミコ
「く・・・まだ、倒れないのか!」
スピニング・スイーブ・・・これで決まるはずだった。一度見せた技を奴に再び通用するだろうか・・・焦りの色を見せるスミコ。
考えろ、考えるんだ・・・
「飴
・・・?」
スミコの脳裏に熱で溶けて落ちる飴細工が浮かぶ。相手が飴でできているなら、熱でなんとかならないものか。
ガジェット「ヒートロッド」を取り出すスミコ。
ユーベルコード「スチームブラスト」、ヒートロッドの蒸気機関もフル活動させ、周囲に蒸気の渦を巻き起こす。蒸気の熱で奴の体(もしくは飴の巨人たちの体)を溶かすことはできないだろうか、倒せないにしてもその動きを少しでも鈍らせることはできないものか・・・試してみる価値はある!
セラータ・ファルチェ
往生際が悪いな
此の世にお前が楽しめることなどもう無いのだから、さっさと彼の世へ向え
彼の家族団欒の時間が減ってしまうだろう
アルが防御に専念するなら俺は攻撃に専念する
ただ、女性陣が狙われるなら武器受けで防御しよう
俺も盾の騎士の一人だからな
他者の不幸を喜ぶ道化に盾の騎士が負けるわけにはいかないだろう?
アルとタイミングを合わせて攻撃
もちろん周りを観察して味方との連携もする
隙を狙って零距離射撃
……Arrivederci
●
――轟!と大気震わせて。
ダグザが放った棍はバキリ、とパラダイスロストの腰骨に当たる飴を確かに砕いた。それはこの場における最良の一手であった。
尚もパラダイスロストが動きを止めないのは、偏にオブリビオンとして、支配者としての彼の意地の為せる業であったか。
「く……まだ、倒れないのか!」
必殺の一撃を受けてなお立ち上がるパラダイスロストの姿を見て、スミコは歯噛みする。
それに相対して、飴細工の王は怒気を隠そうともせず叫ぶ。
先刻までの余裕は雲散霧消し、口調は荒く、併して己が勝利を信じているかのように。
「ばあぁぁかですかぁ!?あの程度の攻撃で、この私が大人しく死ぬわけないでしょぉぉぉぉ!?」
――否、それは自分の敗北を想像することが出来ない奢り高ぶった心か。
パラダイスロストが虹色のマントを翻して投げ捨てると、それは無数の飴細工に変じて彼の周囲を幾筋もの帯となって覆う。同時に、パキ、パキとこれまでの攻撃で飛び散った飴の破片が吸い寄せられるように帯に絡みつき、渦となって魔力が奔流する。激しい邪気の流れが収まると、そこには見上げる程に巨大な飴の巨人がそびえていた。
●
無様だね、と内心でアルバは冷笑して語気を荒げるパラダイスロストを見遣る。
「道化にはお似合いの滑稽な姿だね。道化なら道化らしく、最後まで僕たち観客を楽しませてよ」
娯楽を与えるための道化なら、偽りの笑顔ではなく心からの笑顔を与えて見せろ。そのためには暴虐の王はここで討たれるのが筋書きだと。
パラダイスロストの十八番を奪ってアルバは敵を挑発する。
お前程度の技に砕ける守りではないと誇示するように、改めて聖盾「Scudo di Orgoglio」を掲げると、篝火に照らされて銀の輝きが一層の眩さを増す。
「そこまで!ソコまで言うなら貴様から、血ぃ祭りに上げてやりますよおぉぉ!!」
本来であれば、挑発に乗るようなパラダイスロストではない。その思考は怜悧・冷徹。口調とは裏腹に残忍な意思を秘め、嗜虐的に民を甚振るのがその本質。
だが、供連れの亡者を失ったことが、身に纏わりつく血煙が、太腿を貫いた矢の一撃が。そして何より……胴にいまだに響く重い衝撃が。
過去に無い焦燥を以って、過去の亡霊「オブリビオン」に迫る。その焦りが、パラダイスロストの思考をかき乱した。
定石であれば、狙うべきは守勢に長けたアルバではない。地力であれば猟兵たちよりもパラダイスロストが勝る。それならば、先ずは矛を折り、攻撃の芽を潰してから緩やかに嬲るのが本来の彼の在り方だ。
だが、敵は、下賤な民の反逆は赦さぬと。
――道を、踏み外した。
二度は防がせはせぬとばかりに、巨人は手にした大岩ほどもある「ロリポップ」を振りかぶってアルバを圧殺しようと振り下ろす。同時に、パラダイスロストは無数の飴の弾丸を、あたかも壁のように密に、華と咲かせる。
それは死角なく対象を襲う飴の檻。ダークセイヴァーのこの地を治めるオブリビオンが、支配者たる所以である絶対的な力。
その全てをアルバは、紫蒼の盾の二つ名の誇りに懸けて凌ぎきる。
火花散り、空気を震わせ、周囲の全てを吹き飛ばすパラダイスロストの猛攻を受けて、尚、アルバは両の足で大地を踏みしめて立っていた。
――ほら、分かっているよね?
そう意思を込めて浮かべた笑みに、応える影が二つ。
●
スピニング・スイーブを受けて立ち上がった者は、これまでに居なかった。
今回もこの技で倒し切る、その自信はあった。
その予想を裏切られて。スミコは内心の焦りを押し殺し、意識を切り替えて次善の策を練っていた。こちらの想像以上にオブリビオンの飴は固く、護りは堅い。なんとかならないものか。そう思案を巡らす彼女の脳裏に、閃くものがあった。
「飴……、飴?」
相手が飴でできているなら、熱でなんとかならないものか。そう判断してからの彼女の動きは素早かった。袂からガジェット「ヒートロッド」を取り出すと、アルバが生み出した隙を逃さずに蒸気機関をフル稼働し、蒸気の渦で飴の巨人を、そしてパラダイスロストに飲みこもうとする。
「くらえ!スチームブラスト!!」
一寸先が陽炎で揺らめくような、猛烈な熱が、飴細工の身体を舐めるように溶かしていく。巨人の脚がどろりと溶けて傾ぎ、オブリビオンの胸元に、鈍く光る漆黒の砂糖細工が見えた。
●
「他者の不幸を喜ぶ道化に盾の騎士が負けるわけにはいかないだろう?」
セラータもまた、蒼蒼の盾たる矜持を胸にオブリビオンの下へ駆けた。
最愛の弟が目線を引きつけ、信頼できる仲間が敵の護りを崩した。
この隙を他に、パラダイスロストを討つ機は無いと覚悟を決め、一足飛びにオブリビオンの懐に飛び込む。
「――や、やめろ!こんな処でこの私が倒れるはずが……!」
虚勢を剥ぎ取られて無防備な姿を晒した虚飾の王は、迫るセラータにこう命乞いして。
「往生際が悪いな。此の世にお前が楽しめることなどもう無いのだから、さっさと彼の世へ向え」
キリリと引き絞られた弓から放たれた矢は、むき出しとなったパラダイスロストの核を粉々に砕くのであった。
……Arrivederci。
万感込めたその言葉は、せめてもの手向け。
猟兵たちの手によって、この地を支配する悦楽卿・パラダイスロストは討たれた。
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気が付けば、辺りは次第に明るくなり、木立の合間からは穏やかに大地を照らす陽光が見えかくれする。主たるパラダイスロストが力を失った事を受けてか、亡者たちもその悉くが白い灰となって風に消えてゆく。
死闘を終えた猟兵たちの足元を、朝露がしっとりと、優しく濡らす。
緊張の糸が切れたかのように「ほぅ」と父親が安堵の息を漏らし、馬が嘶いた。
遠くからは朝を告げる鶏が鬨の声を上げる。夜が、明ける。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2018年12月24日
宿敵
『悦楽卿・パラダイスロスト』
を撃破!
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