●自然ほぼそのままの山に百獣族の一団が挑む
「この山に住まう妖精よ! 聞こえるか!」
よく通る大きな声が山に鳴り響き、山彦となって木霊した。
「我々は百獣族・獣騎ガーゴイルの者だ!
この山に伝わる聖宝玉エギン・ビウィドは、我ら百獣族が信仰する神の骸である!
その所有権を主張するものである! 通されたし!」
「あははははは」
人気のない山の中に明るい笑い声が響いた。
「そんなこと言われて渡すやついる?」
見れば近くの木の枝に少女が腰かけていた。赤い髪と瞳の、浅黒い肌で山吹色のワンピースを着た少女だ。
大きな瞳で呼び掛けた百獣族を見下ろして、そしてこう言った。
「けど、あんた達が試練を受けて認められたら、ここを通してあげてもいいよ! そういう決まりだからねっ。
試練の内容は……」
少し間を置いてから、言った。
「なんかエモいもの見せて」
●試練への誘い
リュートの音色が響いた。いつものことだが、それにまったく意味はない。
アノルルイ・ブラエニオンはこう続ける。
「バハムートキャバリア世界で何やら聖遺物がピンチなのだ」
要約するにもやり方があるというものだ。
「聖遺物……。
それは滅びし神々の欠片。
強大な魔法の力を秘め、持つ者に栄華と破滅をもたらすと言う……。
時として円卓の騎士も探索するというこれだが、とりあえず今は騎士は関係ない。
重要なのはこれを百獣族が物にしようとしているという事だ。
百獣族は聖遺物が、かれらの信仰する神の骸であるとして奪い取ろうとしているのだ。
ご存じの通り百獣族はオブリビオン。かれらが力を付ける事態は避けねばならない。
それで、問題となっている聖遺物だが……。
『聖宝玉エギン・ビウィド』という、木の杖にはまった緑の宝玉なのだが、強力な精霊を呼び出す力を持つという話だ。
これはグワイリファン山に住まう妖精達が守っているのだが……。
妖精達の里に行くためには、試練を受け、認められる結果を出されなばならない。
その試練と言うのが……」
「なんかエモいもの見せて」
吟遊詩人かく語りき。
「妖精の言うことか? どうなっているのだこの世界?」
しかしそう言うアノルルイも異世界で牛丼やラーメンやカレーを食べ歩くエルフである。他人の事は言えない。
「ともかく、どんなものがエモいのかと言えば……広い意味で感動するものであれば何でも良さげだな。
具体的には『可愛い仕草』だとか、『騎士道を説く』だとか、『俺のバハムートキャバリアについて一時間語る』とかだ。
キマイラフューチャーの、ラビットバニーと戦った時のようにやればいいだろうか。知ってるか? ラビットバニー」
もう五年前の出来事である。
「道も険しいので注意しろよ!
そして無事妖精の里にたどり着いたら、聖遺物を守るに値するかどうかでまた試練を受けることになる。
絶対楽しんでやってるよな!
それで試練の内容は、今度は実技だ。
だが内容は実技であれば何でも良い! 剣技や歌唱のような技能でも、お気にのユーベルコードぶつけてみるとかでもいい。人造竜騎の操縦技術を見せたいとかであれば、言えば向こうは岩石の巨人を召喚してくれるので、それと模擬戦を行うことになる。
つまり……二回の試練があって、一回目は面接で、二回目は実技試験と思ってもらえれば良いだろう」
エモさを測る面接と実技試験。
「そしてそれらをパスして聖遺物の守り手として認められたら、一足遅く妖精の試練をパスした(正々堂々と試練を受けるのだこいつら……)百獣族が里までやってくる。そして聖遺物の所有権をかけて正々堂々決闘を挑んでくるぞ。だがこちらは聖遺物を使わせてもらってもよいようなのでぶっちゃけ有利だ!」
百獣族の『正々堂々』は自分達が不利になる疑惑がある。
「ただし聖遺物は栄華と破滅をもたらすと言われるもの。取り扱いには注意が必要だ。
さて……必要なのはこんな所かな!」
そこまで言い終わると、アノルルイは高らかに角笛を吹き鳴らした。
デイヴィッド
ハーイ! デイヴデース!
・聖遺物の護り手採用試験。
第一章・面接。
第二章・実技試験。
第三章・現場での業務。
となっております。えっ試験後に業務?
ノリと勢い重視のシナリオです。
細かいことは各章の始めに書きます。
第1章 冒険
『険しい路を往く』
|
POW : 己の力を信じて突き進む。
SPD : 周囲を警戒しつつ慎重に進む。
WIZ : 気配を探りつつ安全を確保し進む。
|
グワイリファン山はほぼ自然そのままの山だ。草木が生い茂り、傾斜の激しい坂道がほとんどとなっている。
険しい道のりだが、妖精の里に近いとグリモア猟兵が指定したポイントまで進まなくてはならない。
※険しい山道を行き、妖精を呼び出して試練に挑みます。
試験内容「エモいもの見せて」は、自分自身の、あるいは装備品のエモい所を見せて、必要なら解説します。
なお妖精のエモい基準はラビットバニー級。
具体的には「可愛さ、男らしさ、面白さ、血だらけで立ち上がる様子、突然のパンチラ、イケメンの壁ドン、水を吐き出すフグなど、SNSで映えるもの全般(当時のシナリオリプレイの一つより抜粋)」などが一例です。折角なのであなたのこだわりの人造竜騎を見せてみるのも良いのではないでしょうか。
剣技・音楽など技術・技能・ユーベルコードを伴うものでもよいですが、第二章の試練の内用なのでストックがなければ温存した方が良いです。
ティエン・ファン
エモいもの、ねぇ。
どうせ後で見てもらうことになりそうだし、まずは相棒を紹介させてもらおうかな?
というわけで、指定ポイントまでも相棒たる『蚩尤』に乗ってちゃちゃっと飛んでいくとして、到着したら彼のプレゼンをしないとだね!
『蚩尤』は私が
出身世界で偶然出会ったキャバリアで、いつ、どこで、どんな技術で造られたかはさっぱりわからないよ!
名前も出会った場所から借りてる仮のものだったりするよ!
特徴的な武装は両腕と一体になってるインパクトパイル!杭打機のように対象に衝撃波を打ち込む機構で、主に必殺技として使ってるよ!
でっかいシリンダーがガションガションと動く様はそれだけで超カッコいいよね!
巨大な質量の、黒地に所々に配置された赤が映える威容が、大型スラスターから火を吹いて飛んでいた。
『蚩尤』にとっては、方向さえ気にしていれば、険しい道など何の困難でもなかった。fooの機動制御は優秀だ。バランスを崩して倒れるなどということもないし、岩に足をぶつけても傷一つない。何せ発動しているユーベルコードは蚩尤閃身撃、地形に激突してのダメージも完全に無効化する。
傾斜のきつい露出した岩肌も、蚩尤にとっては舗装された道と大差なかった。
ティエン・ファンは、そんなわけで妖精の里が近いとされるポイントに難なく到着した。
コクピットを開き、妖精に呼び掛けると、旋風が巻き起こり、木々を揺らしたと思えば蚩尤の足元に少女の姿を認めた。
赤毛に浅黒い肌……ティエンと少し雰囲気が似ていた……の少女は蚩尤のコクピットにいるティエンを見上げ、言った。
「こんにちは、聖遺物の探索かな! あたし達の里に行きたいなら、試練を受けなきゃいけないよ!」
「待って。私は聖遺物を取りに来たわけじゃないよ。百獣族から守りに来たんだ!」
まず誤解を解こうとする。
「たとえそうだとしても、試練は受けなきゃならないよ!」
すぐ返答が返ってきた。試練を受けさせるのが第一の目的だと思ってるのかもしれない。
「ってことで、なんかエモいもの見せて」
「わかった。それじゃ、相棒を紹介させてもらおうかな?
相棒っていうのは、もちろん私が乗ってるこの子のこと。
名前は蚩尤!
私が
出身世界で偶然出会ったキャバリアで、いつ、どこで、どんな技術で造られたかはさっぱりわからないよ!
名前も出会った場所から借りてる仮のものだったりするよ!」
紹介なのに情報が少ない。
「シユウ? へー、斬新な響きだね」
しかし、その名前の響きはこの世界の妖精にとっては珍しく感じたのだった。
「これって
人造竜騎? なんだかあたしの知ってるやつのどれとも似てないね」
「これはこの世界の人造竜騎とは違うものなんだ。
サイキックキャバリアっていう分類だよ!」
「それって、別の世界から来たってこと?
別の世界にもキャバリアがあるんだ?」
バハムートキャバリアという世界を新たに知った猟兵みたいなことを言う妖精。
ティエンはシルバーレインで出会った不思議なキャバリアの紹介を続ける。
「特徴的な武装は両腕と一体になってるインパクトパイル! 杭打機のように対象に衝撃波を打ち込む機構で、主に必殺技として使ってるよ!」
ティエンは実際にインパクトパイルを稼働させて見せる。妖精はまじまじとそれを見ていた。
「じゃあさ、ちょっとそこの岩砕いてみてよ!」
山の妖精なのにそういうことは気にしないようだ。
「オッケー!」
丁度よくそこにあった巨大な岩にティエンは向き直ると、コクピットを閉じる。
そして身構えると、一瞬の内に打ち込まれたインパクトパイルが、岩を粉々に粉砕した。
「おお~~!」
妖精は目を輝かせて拍手している。
「どう、このでっかいシリンダーがガションガションと動く様! 超カッコよくない?」
「超カッコよかった~!」
ティエンの問いかけに妖精はノリよく答える。
「ひたすらパワフルだよね! なんかこう、力の権化って感じがするよね!」
こことは違う世界においては『戦の神』とされる蚩尤の名を冠するそのキャバリアの性質は、妖精には大いに伝わったようだ。
「動く時に出る音がたまんないよね、特にインパクトパイル打つときの金属っぽい音とかね! あたしもう蕩けそう! 抱きしめてッ!」
「蚩尤で?! つぶれるよ!」
「もしくは愛人にして!」
「正妻いるの前提?! もしかして私のこと?! たしかに相棒とは言ったけど! 言ったけど!
それで試練の結果はどうなの?」
「エモいッッ! 合格! おめでとう~! 一名様ごあんな~い!」
はしゃいでいる。
これもう試練でも何でもない気がする。
かくしてティエン、妖精の里へと至る。
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
我が名はニコリネ!
なんかイイものがあると聞いてこの地へ来た!
そなたはこの森に住むと聞く変な妖精さんか!
――なんて
ンフフ、これやってみたかったのよねー
堂々胸を張って名乗り、私のエモをお見せしましょ
はい!!
私のお店の看板猫、マネギちゃん!!
白くてフワフワ、むっちりボディとまろやかな表情がチャームポイントなの
SNSでも猫は一大ジャンルを確立する人気者だし、この子は更に翼付き!
可愛いおててで福を招いてくれる筈なんだけど
いつも香箱座りで手が隠れて、いつもお昼寝してて、大繁盛にはしてくれない
でも単身東京に来た私といつも一緒に居てくれる
それだけで大助かりよ!!
獅子の子を太陽に掲げるぐらい雄大にお披露目するわ
ニコリネ・ユーリカは人里離れた山奥を行く。その先を翼をつけた白いふくよかな猫がふよふよと飛んで先導していた。
ニコリネの視界にはここまで踏破してきた山々の景色が広がっていた。足元こそ安定してはいなかったが、そこから見える木々の葉は鮮やかな赤に染まり、鮮烈だ。空気も澄んでいて気温も涼しく、道は険しくとも登山にはうってつけの日であった。
秋深し。
さて花屋がこんな山奥まで来たのは、もちろん販路の拡大が目的と言うわけではない。
なので目的を果たそうと、なんとか安定して立てる足場に立ち、大きく息を吸い込んで、言った。
「我が名はニコリネ!
なんかイイものがあると聞いてこの地へ来た!」
「は~い栗をご所望かな? それともキノコ?
イイものありまっせ~」
ニコリネの堂々たる(それでいてフワッとした)名乗りに答えて少女の姿をした妖精がフレンドリーに現れた。
山の幸を求めに来たと思われている。
なんかイイものとか言うからだ。
「──そなたはこの森に住むと聞く変な妖精さんか!」
「そうですワタスが変な妖精です」
ニコリネに問われて妖精は事もあろうに手を叩いて変な踊りを始めた。
「変な妖精~だかっら変な妖精~
変な妖精~だかっら変な妖精~
だっふん打
!!!!!!!!」
そして足元にあった石に拳を打ち付け粉々にした。
「「イエーイ☆」」
そしてハイタッチするニコリネと妖精。
きっと深い意味はないのだろう。
「さーてやりたかったこともやったし試練受けるわね試練!」
「よし来た! エモいもの見せて~の」
流れるように話を進めていく二人。
意気投合している。
「はい!!
私のお店の看板猫、マネギちゃん!!」
ニコリネが両手で抱えて突きつけるは同行する白いウイングキャットである。
「白くてフワフワ、むっちりボディとまろやかな表情がチャームポイントなの。
SNSでも猫は一大ジャンルを確立する人気者だし、この子は更に翼付き!」
「にゃぁぁ~~ん」
マネギは自分の事を言われているのをわかっているように鳴いた。
目を細めたり開けたりして、妖精(顔の前に付き出されている)を見ている。
ニコリネは続けた。
「可愛いおててで福を招いてくれる筈なんだけど、いつも香箱座りで手が隠れて、いつもお昼寝してて、大繁盛にはしてくれない……。
でも単身東京に来た私といつも一緒に居てくれる、それだけで大助かりよ!!」
愛を込めて語った、ニコリネが両手を伸ばし天高く掲げるマネギに光が降り注いでいる気がした。
「……うん!」
妖精は笑顔で力強くうなづく。
「飼い主に愛された猫が可愛くないわけがない!
目を細めたその表情は、あたし達の本能に刻まれた安らぎの姿そのものだ。
その色、その毛並み、これこそは太古の昔より約束された安楽を授けるもの!
あたし達が生きるのに必要なものを摂取できるに違いない!
そして飼い主さん、愛を感じるアピールをどうもありがとう。
その愛こそが、何よりもエモいッッ!」
妖精はどこからともなく取り出した鐘を4・4・3のリズムで鳴らした。それは歌の審査で上手かった時に鳴らす鳴らし方だ。
「あたし達の里にご招待!」
「ありがとう! 猫は定期的に補給してね!」
「にゃ~ん」
こうしてニコリネはノリノリで妖精の里への入場を果たし、マネギを掲げたまま小躍りして進んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ユキムラ・ゴルティエ
エモいもの、か。
俺、半妖精で右目は普通の目なんだけど、いつもは眼帯で隠してる左目は妖精眼なんだよな。色も右目とは違う。ほら。(眼帯を外して左目を見せる)
右目の色は父親譲りで左目の色は母親譲り。こういうのでいいのか、エモいって。種族の違う父と母の愛の結晶として分かりやすく見た目に影響が出ているって感じで。
ついでに妖精眼を見た妖精の精神を操ることで妖精に地方領主の一人息子だった父と人間嫌いだった妖精の母が結ばれるまでの一大感動巨編な騎士道物語兼ラブストーリーの幻影を見せる。(他世界で言うところの映画みたいに)
それも踏まえて二人の息子である俺を見れば、まあ、感動するやつは感動するんじゃねえかな。多分。
ユキムラ・ゴルティエは足元に注意を払い、安定した足場を目ざとく見つけては歩みを進める。正真正銘の円卓の騎士である彼にとっては、このような探索も務めの一つであると言えた。
すでに地上は遠く、今彼のいる場所からは遥か下界が遠くまで見渡せた。雲が近いと感じる。
一瞬、その風景に目を楽しませると、そろそろ予定していた地点に到達したのか確認する意味も込めて、この山の妖精に呼び掛けた。
すると風が巻き起こって周囲の木々を揺らした。
「こんにちは、いい探索日和だね!」
頭上から声をかけられた。
そこには、赤毛の少女の姿をした妖精が、木の枝に腰かけていた。
妖精はユキムラの眼前にひらりと舞い降りて、言った。
「さて、あたし達の里には試練を受けなきゃ入れることはできないよ! 試練を受ける?」
「その前に。探索じゃない。百獣族から護りに来た」
ユキムラは騎士という立場もあって、自らが聖遺物を手に入れようとして来たわけではないと説明する。
「わかった! で、試練を受ける?」
やはり試練が目的のように見える。
見事に手段と逆転している。
「勿論、そのつもりだ」
かくしてエモいものを見せることになった騎士、ユキムラ・ゴルティエの挑戦が始まった。
彼は妖精の試練開始の報せを受けると、左目の眼帯を外した。
「俺が見せるのは、この目だ」
眼帯の下から現れたのは、もとから露になっていた灰色の右目とは違う、鮮やかな赤色の瞳だった。
「オッドアイ? それだけじゃ今時珍しくもなんともないよ」
「左目が
妖精眼、と言ってもか?」
「おっなんか背景あんの? 続けて続けて」
妖精は食いついてきた。
「俺は人間の父親と妖精の母から生れた半妖精。右目の色は父親譲り、左目は母親譲りなんだ」
「へえ、どおりで異種族っぽい割に親しみが持てる見た目だと思ったよ」
と言いつつ異世界からの来訪者と何度か意気投合しているこの妖精である。
ユキムラは続けた。
「種族を越えた恋愛だったから、俺が生まれるまではいくつもの障害があって、その度に乗り越えてきた……。
よければその一部始終を見せようか」
「見たい見たい! でもどうやって?」
「俺の左目をじっと見るんだ……」
言われて、妖精はユキムラの鮮やかな赤い目を覗き込む。
顔を近づけるのに遠慮する様子もない。
すると、妖精は突如として周囲の空気が変わったのを感じた。
かつての出来事……。
地方領主の一人息子が、妖精の乙女と出会った。
乙女は、人間嫌いだったが…………
(何これ!?)
突如として妖精はユキムラの語りを聞くとともに、一人の妖精の乙女の姿を見た……風景も、知らない場所のようだった。ユキムラの姿もいつの間にか見えなくなっていた。なのに声だけは聞こえる。
それもやがて聞こえなくなり、知らない妖精の乙女の挙動が視界に映り続ける。
やがて乙女は一人の男性と出会い、そこから二人を主人公とした騎士道物語兼ラブストーリーが展開される。
一大感動巨編と言えるほどの仕上がりとなったその光景は、ユキムラがユーベルコード『妖精の籠絡』を使うことで妖精の精神を操ることで見せている、ユキムラ・プロデュースの幻影動画だった。
妖精はその一部始終を、様々に表情を変えながら見入った。……なおユキムラからはその表情は丸見えである。
「どうだった?」
幻影が最後に『fin.』の文字を映し出し、ユーベルコードを解除して妖精を
現に返し、聞いた。
妖精は大きく開けた瞳を潤ませ、頬を紅潮させていた。やがて、両目から涙がほろりと落ちた。
もうそれだけで感想を聞くまでもなかったが、にもかかわらず妖精は言葉を発した。
「妖精大原則ひとーーーつ!」
突然の大声がユキムラに真っ正面からぶつけられる。
「妖精は、すべからくロマンチックな存在でなければならない
!!!!!
種族の垣根を越えて結ばれた二人の物語を……それも自分の両親のなれそめを堂々と語られて……エモいと感じないものは妖精じゃない
!!!!」
カランカラーン! カランカラーン!
妖精はどこからともなく取り出した鐘を力の限り振りまくる。
それは福引きで使うやつだ(前のリプレイで出てきた鐘とは別物)。
そしてひとしき振ったあとに天を仰ぎ、涙をぬぐった。
「ありがとう。すごくエモかった。
妖精の里まで案内するよ」
そう言って振り向いた。顔はうつむいている。
「あ……あのさ……。
……手、つないでも、いいかな?」
顔を真っ赤にして、うつむいたまま手を伸ばしてきた。
急にロマンチックな事をしたくなったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン(サポート)
C’est du soutien, ok.
一人称:オレ
二人称:相手の名前+さん呼び、敵相手の時のみ呼び捨て
口調:粗野で柄が悪い
■行動
信心深いため、戦う前に【祈り】を捧げる事は忘れない
敵の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないままの行動はしない
連携相手がいるならば相手のフォローへ、居ないなら全力で敵をシバきに行く
戦場によっては屋内でも空が飛べるタイプの魔導バイクを乗り回す
「公序良俗に反することはしてねえぞ」と言うし実際にそうするタイプ
■攻撃
主武器:リングスラッシャーと影業
近距離攻撃が不得意なので敵とは距離を取って戦う
アドリブ連帯歓迎
黑いカソックを来て、サングラスをかけた大柄な男が、ほぼ垂直の岩肌を登攀していた……一見アンバランスで野外活動には不向きと思われる格好ではあったが、猟兵の装束であれば、機能性とデザインの両立がなされているのは当然のことであり、鋭い岩に裾や袖が引っ掛かるなどということは当然なく、
草の種ひとつ付着していない。
そして山の高みまで登った彼、ギュスターヴ・ベルトランは、ここにきた目的を果たすべく、拡声器を使って虚空に向かって声を張り上げた。
「喜びな! 福音を伝える者が来たぜ!」
彼は聖職者だった。聖職者で──柄が悪かった。
果たして風が周囲の木々を揺らすと、いつの間にか、彼の近くに赤毛の少女の姿をした、この山の妖精が姿を現していた。
「福音? 何それ。聖遺物を取りに来たとか、護りに来たとかじゃないの?」
「後者は目的の一つだな、だがオレは常に伝道を第一に考えている」
「伝道って?」
「平たく言えば神の教えを説くってことよ」
「神? ああ、バハムートね」
この世界において、人間の信仰対象はバハムートである。
「いや……バハムートじゃねぇ。オレの神は唯一にして全能の存在。この世界にはまだ伝わっちゃいないだろうがな」
「……ああ、異世界から来たの? 異世界じゃバハムートじゃない神を崇めてるのね。そこは違うんだ。
でも今重要なのはそこじゃない。
聖遺物を護りたいなら、里に入るための試練を受けないとならないよ!」
「試練? 上等だ。いかなる試練も信仰によって乗り越えて見せるぜ!」
「よし、じゃあ……なんかエモいもの見せてよ」
試練の内容は明かされた。
信仰者ギュスターヴの信仰が試される……信仰か?
「エモいもの? そんなもんは神様に決まってんだろう! 神様以上にエモいものは存在しねえ! 聖なるかな! 聖なるかな! ミゼレーレ・メイ・デウス!」
信仰告白だった。
「どうだ!」
「どうだじゃない! エモいもの見せてって言ってるの!」
「神を試してはならない!」
「ならない! じゃなくて!」
平行線だった。
「確かにな……神の奇跡は人の行動を通して現れる。
信じなければ救われない。だからオレは、信じろって言い続けるのみだ!」
「伝道とやらは今はいいから! エモいもの見せてよ!」
「そこまで言うなら……仕方がねえ」
ギュスターヴは両手を組んで敬虔な姿勢をとった。
「――天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。御国がきますように」
主の祈りを唱え、そして、
「
人類進化:到達!」
続いて呼ばれた名は、彼が生れた世界の名であり、そしてその世界の人類が個を維持したままで到達した、知的生命体の進化の果て、到達点の名でもある。
その名に秘されし力はギュスターヴの身体に変異をもたらした。その大きさは体高5mまで大きくなり、見た目もまた変化していた。流麗な、人の姿を模した、人にあらざる何かの姿に……。
「この姿は……人造竜騎じゃない。まさか」
妖精はその姿に見覚えこそなかったが、直感でそれが何の姿なのかに思い至った。
「妖精獣騎。太古の昔に失われた変身能力によって妖精が変形したという……」
妖精族は獣騎への変身能力を失って久しいという。
だが猟兵ならば、ユーベルコードによってその力を行使することができる……『妖精獣騎の帰還』という名の力によって。
「神の奇跡はみだりに人に見せるものじゃねぇ……これはただのユーベルコードだ」
妖精獣騎へと変じたギュスターヴが言った。
「だがそれも、神の奇跡の現れ……ま、信仰の話はいい。ともかく、どうだこの姿は。妖精さん方の神というのとは少し違うかもしれないが、よく見るがいいぜ」
「ポーズとって! 格好いいやつ!」
「え? ああ……」
「もっと腕伸ばしてみて! 半身立ちになって!」
この妖精、メカフェチである。
現在ではレアな妖精獣騎を目の当たりにしては、感動しないわけがなかった。
ギュスターヴは言われるままに様々なポーズをとって、その度に妖精の黄色い声や熱い視線を受け、満足したらようやく、試練合格のお墨付きを貰うに至ったのだ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『剣よ、誇り高くあれ』
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POW : 正面からぶつかる
SPD : 剣技にて応じる
WIZ : 騎士道を見せる
|
グワイリファン山の妖精の里は、人気のない山奥に似つかわしくないほどに、文化的だった。
美しい彫刻がなされた木造建築の館が何軒も建ち並び、妖精達はそこで暮らしていた。
周囲は葉を繁らせた木々に囲まれ、道の近くには小川が流れ、館のテラスからは遥か遠くまで見渡せる。美しい里だった。
特筆すべきは、館の一つには人造竜騎が複数体、安置されていた事だ。案内してきた妖精はその理由について、こう語った。
「かつて、人間と百獣族との間で戦いがあった頃……人間はここに人造竜騎とその乗り手を住まわせ、あたし達が百獣族に味方しないよう見張った。
だが戦いが終わり、人間がその行いに悔いると、自らの生活圏に人造竜騎を持ち帰ることを良しとしなかった。そんなわけで、ここにはその時の人造竜騎が放置されているんだ……」
遠い目をしていた。少女のような見た目でも、悠久の時を生きると言われる妖精だけのことはあった。
「……って、お婆ちゃんが言ってた」
伝聞だった。
猟兵達は、里の広場へと通される。
ここで、聖遺物の護り手として相応しいかどうか見定めるため、また試練があるのだという。
周囲は妖精の集団で埋め尽くされていた。皆、少女の姿をしている。この全員が不老不死の山の妖精、聖宝玉の乙女達だ。
「はい! というわけで」
猟兵達を案内してきた妖精が、引き続きこの試練も司るようだ。
「なんかエモいことやって」
……それが試練の内容だった。
【解説】
一章との違いは、「技能またはユーベルコードを伴うこと、または技能にない何らかの技術(お菓子作りとか?)」を見せることです。
剣技やキャバリアの戦闘技術など攻撃対象が必要な場合は、妖精が召喚した岩石の巨人を相手にします。生身サイズ・キャバリアサイズの二種類があります。
とはいえ、そこまで厳密な決まりでもないので、一章と同じ感覚で参加していただいてよいです。
ユキムラ・ゴルティエ
どうしたものか…そうだな…。
今から俺は記憶喪失になる。
なので…その俺と、何かをしてくれ。
世のご婦人片が夢中になっている物語では記憶喪失は定番だと聞いた。
エモいことがなんなのか審査できるあなたたちなら『妖精の里に迷い込んだ記憶喪失の騎士』という素材を上手い具合に料理できると思う。
『妖精の里に迷い込んだ記憶喪失の騎士』との遣り取りがエモくなかった場合は失格でいい。では、後は任せた。
(自分のUCで自分の記憶を消す。かろうじて自分は騎士だったのではないかという推測はできる。記憶を失っているので普段しがちなリアリストめいた振る舞いや道化染みた態度なども取らない。根は真面目なので理想の騎士のように振舞う)
最初に試練を受けるのはユキムラ・ゴルティエだ。
彼は広場に立ち、「エモいこと」を見せることになっている妖精を前にしてしばし思案する。
そして言った。
「今から俺は記憶喪失になる」
「記憶喪失?」
妖精はオウム返しにする。
「……それって言葉のあやだよね? 何か特殊な力を使うわけではなく」
「いや。今からユーベルコードを使って本当に記憶を失う」
「そんなことして大丈夫なの?!」
「効果はそのうち切れるから問題はない。なので、記憶喪失になった俺と……何かをしてくれ」
「……何でもいいの?」
ユキムラは頷く。
「俺が知る限り、世のご婦人方が夢中になっている物語では記憶喪失は定番だと聞いた。
エモいことがなんなのか審査できるあなたたちなら『妖精の里に迷い込んだ記憶喪失の騎士』という素材を上手い具合に料理できると思う」
「妖精の里に迷いこんだ記憶喪失の騎士、か……ちょっと待ってて!」
妖精はユキムラを制止して、何人かの妖精を呼び、何やら打ち合わせを始めた。
「……うん、やっぱりこれだよね」
「合ってるのかな……アドリブが多くなりそうだけど……」
「それはそれで楽しくない?」
などと、真剣に何やら話し合ったかと思うと、審査役の妖精は再びユキムラに向き直った。
「最初に約束してくれる? 記憶を失っても、『これはお芝居だ』ってことを忘れないようにして」
「それだけを覚えておくのか? ……書き置きでもしておけば何とかなると思う」
「本気で決闘とかされると危ないからさ」
「決闘するのか?」
「それは後のお楽しみ」
かくして妖精達の企みに身を任せることになった騎士ユキムラの運命は如何に。
後は任せた、といって空中に魔方陣を描けば、そこから現れた悪戯妖精がユキムラ自身の記憶を奪って、意地悪そうな笑い声を残して逃げる。
ユキムラは茫然自失とした──
「……大丈夫ですか?」
目の前に、見知らぬ女がいた。
「ここはグワイリファン山の妖精の里。なぜこちらに?」
「……乙女よ、失礼ながら私にはその問いに答える術がない。何も覚えていないのだ」
その騎士は、そう語った。
「どうぞこちらにお越しくださいませ」
騎士は、妖精の導きに従って少し歩くと、一瞬の間に周囲は家具や寝具を備えた慎ましい一室になっていた。
「お困りでしょう。記憶が戻るまで、ここで過ごしてはいかがですか」
そうして騎士は妖精の乙女と、しばらく暮らすことになった。月日はまたたく間に過ぎた。
やがて、その部屋に誰かが訪ねて来た。
「探したぞ、こんな所で生きているとはな!」
それは黒づくめの装束を纏い剣を下げた、騎士風の男だった。
黒い男は騎士を見て剣を抜く。その前に、妖精の乙女が立ちはだかる。
「何をなさるのですか!」
「妖精よ、その男を庇う必要はないぞ。その男の父親は、この里を滅ぼして聖遺物を奪うつもりなのだからなあ!」
「何を言うのです!」
「知らぬのか? その男はこの辺り一帯を納める領主の長男でありながら父の行いに異を唱えているのだ。それゆえに薬を盛って処理したはずであったが……殺し損ねてしまったようだ!
身内の恥は削がねばならん。私は不出来な兄を粛正しに来たのだよ! 我が家の事に立ち入り無用!」
「乙女よ、どうか退いていて欲しい」
騎士はそこで立ち上がり、寝台に立て掛けてあった自らの剣を抜いた。
「どうやらこの男と私は、浅からぬ因縁があるようだ」
「何? もしや記憶が無いのか? 腹違いの弟の顔を忘れるとは……だがその命ある限り私が跡を継ぐには邪魔な存在。何せ貴様は不思議と民からは好かれるからな……ここでその命を摘んでおくとしよう!」
黒い男がそう言って剣を掲げ呪文を唱えると、床を破って大地から岩石の巨人が現れた。
騎士の2倍ほどのある巨体が襲いかかるが、騎士は驚くべき早さで剣を抜き、すれ違い様に巨人の胴を払い抜けると、巨人は一瞬でばらばらになった。
「挑むのならば、己の剣の腕で挑むがいい!」
「おのれ、猪口才な!」
騎士と黒い男は切り結ぶが、一瞬にして黒い男は剣を落とし、後ずさる。
「ええい忌ま忌ましい剣の腕よ……このままで済むと思うな!」
黒い男は捨て台詞とともに逃げ去っていった。
しばし、場を静寂が支配する。
やがて騎士が言った。
「乙女よ。世話になった。私は行かねばならない。我が父がかような悪逆非道を為すというならば私は命を投げうってでも止める所存」
「いけません、危険すぎます!」
「止めてくれるな。今度は私がそなたらを助ける番だ。恩を返すことこそが、今の私の悲願」
「行かないで!」
妖精の乙女は大きな声で止めた。その背中は、悲哀を物語っていた。
「あなたを……愛してしまったのです……」
艶のある視線を騎士に向け、懇願する乙女の姿。それは、あまりに悲痛な叫びであった。
「それでも行くと言うならば、わたくしを連れて行って!
聖遺物を使ってでも……あなたの力になります……。
あなたの悲願を、わたくしにも手伝わせて」
「ならば乙女よ……どうか共に来て欲しい」
騎士は乙女の手を取る。
そして二人は、うなづいて共に歩き出した。
「……思ったんだけど、これ」
「どうした?」
「あたし達が試されてるよね?」
記憶が戻ったユキムラに妖精が聞いた。
先程までの展開は、妖精達が魔法でキャストに変身したり、風景を変えたりして演出していた『劇団・山の妖精』による、数分で打ち合わせしただけの即興劇であった。
「だが俺も参加していたぞ」
記憶を失った騎士の言動は、記憶を失ったユキムラがすべてアドリブで行ったものだった。
「でもあたし達があらすじも演出もしてるわけだし。
だから、この試練が合格かどうかは、あんたが決めて」
「……………………俺が?」
自分が受けた試練の合否を自分が決めることになったユキムラの心中やいかに。
「さあ、記憶を失った騎士が、正義の心を燃やして巨悪に立ち向かう姿。主人公と共に戦う決意をしたヒロイン。お家騒動。種族を越えた恋愛……この辺はちょっとあんたの父さん母さんの話に引きずられちゃった感はあるけど……エモかった?」
現実主義的な視点で見るならば、ユキムラの返答は──
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
緑に囲まれて、小川があって、素敵な所にお住まいなのね
どんな植物が生えているかじっくり見て回りたいところだけど、先ずは試練!
ご注文がエモいものなら、お届けするのが花屋よ
さぁお手を拝借!
妖精さんと向き合って両[手をつな]ぎ、軽く揺らしてはじめー!
歌に合わせてお互いの手をパチンと合わせたり、交差したりするの
はい、せっせっせーの!! よいよいよい!!!
見るだけじゃなく体験したら、楽しいって分かって貰える筈
一万尺で流れを掴んだら、二万尺は変化をつけて、三万尺から高速化!
二人でやり遂げるパフォーマンスに一体感と達成感を味わった後は
私達きっと良いお友達になってる
という事で
私も聖遺物の護り手に加えて下さーい!
ニコリネ・ユーリカが試練を受ける番になった。彼女は里の美しさを目にして、テンションが上がっていた。特にどんな植物が生えているのかは花屋としては知っておきたいところだった。だが、まずは試練だ。
「じゃあエモいことするわね!
さぁお手を拝借!」
「?」
審査役の妖精は、ニコリネに言われるままに手を差し出すと、ニコリネは正面からお互いの両手を繋いだ。
「なんだか、あったかいね……」
頬を紅潮させる妖精。
既に気持ちが合格に傾いている気がする。
「今から歌に合わせてお互いの手をパチンと合わせたり、交差したりするの。
じゃあ、やってみましょ!
はい、せっせっせーの!! よいよいよい!!!」
妖精はニコリネがやったように手を動かして、歌に合わせて手を合わせたり交差したりする。
最初はぎこちなかった妖精もだんだん慣れてきて、歌を口ずさんだりもしてきだした。
「じゃあここから、だんだん変化をつけていきましょ!」
歌の一音ごとに手の形を変えていく「二万尺」。
ニコリネはリードして妖精に動きを合わせられるように教えていく。
それは少し難しかったが。
「……できた!」
「おめでとう! 覚えるの早いわね!」
出来た時、妖精は表情豊かに喜びを表した。
「じゃあここからは、どんどん早くしていくわよ!」
「うん!」
さらに複雑さを増し、速く動く「三万尺」。
妖精はニコリネの教えたように動き、ニコリネがリードしてどんどん早く手を動かしていく。
だんだん分かってきた妖精は、ニコリネが早くなっても付いていって、最終的には周りから見ると『バトル漫画のパンチの応酬』みたいな早さで手を動かすようになっていた。
「「ランラランランランランランランランラランランランランランランラランランランランランランランランランランランヘイ!」」
そして最後まで歌い終わって、一連の動作を終えた。
「私達、光速を越えたんじゃない!?」
「きっとそうだよ!」
二人ではしゃぎ合う。
周囲から見れば、まるで旧くから仲のいい友達同士のようで微笑ましい。
それはそうと最終的には驚くべき早さで動きを合わせていて、ギャラリーの妖精達の度肝を抜きまくっていた。
「ね、お願いしていい?」
ここでニコリネは言う。妖精は笑顔でそれに応じる。
「なになに?」
「私も聖遺物の護り手に加えて下さーい!」
「おっけー!」
ものすごい軽いノリで承認された。
もう試練なんて取り決めはどこかに吹っ飛んでいっちゃったかのようだ。いやそもそも、最初からお遊びだったような気も……。
さておき、この手遊び歌は実はユーベルコード「Fingerplay」。
一緒にせっせっせを行った対象に頼み事ができ、高速化することでさらに成功率が増す。決してノリと勢いだけで合格させたわけではなかった……多分。
「じゃあ、よろしくね! ニコりゅん!」
勝手にあだ名をつけられた。距離感が近い。
『月』を意味するluneという言葉にちなんでいると後で知ることになるが、妖精達の間で使われている言語という訳ではないらしい。何の影響?
大成功
🔵🔵🔵
ティエン・ファン
おー、これはなかなかに美しい建築物!
建築様式はこの世界の一般的なやつなのかな?
あ、写真撮っても大丈夫?(スマホ取り出しつつ)
っと、何かエモいことだったね!
良いもの見たし、こっちもお返しをしないと!
というわけでまずはこの除霊建築学・模型作成で、今見た建物のミニチュアを作るよ!
細部に至るまでしっかり作り込んでるからよく確認してみてね!
そしてこの術で、次は私の世界のエモい建造物も見てもらうよ!
というわけで、大きめに黒部ダムのミニチュアを作るよ!
これは私の生まれ育った国で一番有名なダムだよ!
ウイングのついたアーチ式の堤体が特徴的!カッコいいよね!
当時の土建技術の粋、少しでも感じてもらえたら嬉しいなぁ。
「おー、これはなかなかに美しい建築物!」
ティエン・ファンは、自分の番が回ってくるまで周囲を勝手に観光していた。
「キャメロット城なんかとも違う感じだねー」
建物は、この世界における人間の文化とはまた違う感じがした。植物や星空などの自然、または神話や伝承を元にしたと思われるレリーフや装飾が柱や壁画に見られる。見た目の美しさや、古くからの知識を後世に伝えることに重点が置かれているように見えるものの、山奥にいるにもかかわらず中にいて寒さを感じないなど、住み心地も良さそうだった。
「あ、写真撮っても大丈夫?」
スマホを取り出しつつ、物珍しさからティエンを案内している妖精(試練を受けさせている妖精とは別の妖精)に聞いてみる。
「あー、採れる所はあったと思うよ、場所はうまく説明できないけど。でも掘るもの持ってるの?」
「え? 掘るもの?」
「
辰砂でしょ?」
「え?」
「え?」
ツッコミ辛いマジボケが返ってきた。
「ティエン・ファン! 前へ! あれ?
ティエーン、どこいったー」
「あっほら、呼んでるよ!」
「はいはい、今行く!」
呼ばれたのでティエンはあわてて走っていき、広場の真ん中で集まっている妖精達の注目を浴びる。
「ティエンです、除霊建築士やってます! この里の建物は凄くいいね。さっきも見せてもらって感動してたんだ! だからまずはお返しとしてひとつ見せるね!」
元気よく言ってから、ティエンは広場の何もない所に向かい、意識を集中させる。
ユーベルコードが発動され、数秒後、そこには……何かが現れていた。
妖精達が息を飲む。彼女達にはそれが何なのかすぐにわかった。
それは、この里にある酒場のミニチュアだった。
「こ、これってドライグウィルフ館?」
「凄い……中のテーブルやカウンター、絵画に至るまで再現してる」
「良い仕事してますなぁ~」
寄ってきては好き勝手に眺めたり覗きこんだりする妖精達。玄人ぶったりしてる奴もいる。
それは内部まで極めて精巧な造りだった。見たり触れたりした建造物のミニチュア模型を極めて精巧に作るユーベルコード、除霊建築学・模型作成による成果である。
「これが私が専門にしてる除霊建築学の応用だよ!」
妖精達がしばらく見たのを確認するとティエンは言った。
「それじゃ、次は私の世界のエモい建造物も見てもらうよ!」
再びユーベルコードを発動させる。
そうして出来たのは、広場の三分の一ほどを埋め尽くす、山間に横たわり緑深き湖をせき止める、巨大な堤防。
それは完成すると雄大に放水し、空中に虹をかけた。水は建築物ではないので造りは荒く、地面に溜まらずに霧散して消える。
「これは『黒部ダム』。私の生まれ育った国で一番有名なダムだよ! 比較用に、人一人のサイズはこのくらいなんだ!」
ティエンは説明すると、ダムの展望台の部分に人間の模型を作る。
妖精達は目を丸くした。
「嘘でしょ!?」
「そんなにでっかいの!!!」
「どうやって作ったの? なんのために?」
ティエンは黒部ダムがいかにして苦難の果てに作られたのか、それが当時の国にとってどれほどの意味を持っていたか、について語って聞かせた。
異世界の事ゆえ妖精達には想像もつかない事も多かったが、
「とにかく物凄い」
ということは伝わった。
「スケールでっか……」
「かっこいいね……」
「ティエンの世界の人達はこれほどのものまで作れるのか……」
その、ウイングのついたアーチ式の堤体の格好よさも、自然と人工物のダイナミックな融合も、波乱に満ちた完成に至るまでの経緯も、作られたものの精巧さも、すべてが「エモかった」。
「当時の土建技術の粋、少しでも感じてもらえたら嬉しいなぁって思うよ」
建築に携わる者として、ティエンは誇らしく語る。
これに対して妖精達は、言葉も失ってただただ見いったり、逆に饒舌になってティエンに質問責めをしたりしていた。
それは充実した、異文化交流のひとときだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『獣騎ガーゴイル』
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POW : ゴールドロックアーマー
【全身を覆う装甲】を凝縮し、任意の身体部位ひとつの攻撃力・防御力を5倍にする。ただし他の部位の防御力は0になる。
SPD : ガーゴイルストーム
【地面】から、戦場全体に「敵味方を識別する【岩の嵐】」を放ち、ダメージと【出血】の状態異常を与える。
WIZ : ガーゴイルボム
自身の身体部位を切断し、(レベル×切断部位数)m半径内の全てを爆破する【ガーゴイル型爆弾】に変換する。
👑11
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無事、妖精の試練を突破した猟兵達の前には、人一人分はありそうな長さの木の杖にはまった、力強い紅の光を放つ宝玉があった。
試練を与えた妖精がその杖を持ち、一行に説明をする。
「おめでとう! 皆は聖遺物の護り手として認められた。これから聖遺物を護るために聖遺物の力を使うのは、騎士道に反することじゃない。
聖遺物、聖宝玉エギン・ビウィドは強力な精霊、『薔薇の精』を呼び出す。戦いでは役に立ってくれるだろう……でも気をつけて! 薔薇の精は……
キャラが濃いから」
反応も待たず妖精は「エギン・ビウィド」の名を高らかに叫んだ。
すると、宝玉から光の弾が放たれ、それは近くの地面に埋まった。そこから植物が芽吹いたかと思うと、瞬く間に凄まじい勢いで成長し、茎と葉と蔦が広がって紅い薔薇の花が無数に咲いた。その中に人間が収まるサイズの花があり、それは優美な動きで開くと、中から人の姿が現れた……それはミケランジェロの絵画みたくやたら肉付きが良い、彫りの深い顔立ちの男性で、花に覆われていない部分は何も身に付けていないようだった。
「嗚呼……僕を呼んだのだね……」
艶のありすぎるベースの声が余韻を持って語った。
「初めて見る顔も多い……。
新しい護り手なのか……いつぞやのように、聖遺物を狙う者がまた現れたのだね……。
僕は聖宝玉の護り手に従おう……フゥーッ」
言い終わると、薔薇の花弁を撒き散らしてポーズをとった。
身体の光が当たる部分と影になってる部分の陰影が凄い。
「それが聖遺物か!」
場の雰囲気にそぐわない声が響いた。
妖精達は一斉に声がした方を見る。そこには、
百獣族、ガーゴイル達の姿があった。
「どうして?! 試練を突破しなければここに来ることは出来ないはず!」
「この百獣族さんたちチョーエモいの」
「は?!」
良く見ると百獣族は妖精を伴っている。
猟兵達が里に入った後、入れ替わりで入山の試練を与える役になった妖精だった。
「フッ、我らとて武芸しか能がないわけではない。紹介しよう、我らが誇る精鋭、ガーゴイルエンターテイナーだ!」
岩のような肌に悪魔のような凶悪な顔、それにコミカルな付け髭をつけたガーゴイルが二人、軽快な音楽に乗せて躍り出てきた。
二人のガーゴイルは手を腰の所で上下させながら歩き回り、それから一人が果物を投げてもう一人がそれを爪に刺すなどの芸を披露したり、滑稽に失敗したりした。
他のガーゴイル達とかれらを案内してきた妖精はそれを見て笑い転げる。
「は、反則よ! 百獣族がそんな!」
猟兵達を案内した妖精は言った。しかし半笑いだ。
「何を言う! 何も騎士道に反してなどいない! 百獣族とて余興も嗜みだ!」
ガーゴイルは楽しそうに言った。
「さあ! その聖遺物をかけて我らと勝負せよ! 護り手達に決闘を申し込むぞ!
決闘の手段は無論──」
ガーゴイルはそこで言葉を区切り、体高5mの
獣騎形態に変形した。
「──互いの武勇によってだ!」
「皆! この里に人造竜騎があるわ。
それを使えば大きさの不利は打ち消せるはず……」
妖精は猟兵達に説明をする。
「相手も試練を受けて入ってきた以上、あたし達は中立よ。そもそも、百獣族と戦えるほどの力なんてもとからないんだけど……。
聖遺物をよろしく頼んだよ!」
【状況説明】
・集団戦ですが獣騎ガーゴイルは「同じ人数で」挑んできます。
なお、人数には「薔薇の精」も含みます。薔薇の精は、プレイングに応じて防御や攻撃をサポートします。必要ない場合は、「精霊なし」等と記載してください。
・人造竜騎を借りることが可能です。機種はバハムートキャバリア、武装はエレメンタルキャノン(遠)とライトブレイド(近)です。借りずに生身で戦うことも、もちろん自前の機体で戦うこともできます。
・里から少し離れた所で戦うため、里への被害の心配は要りません。
ネッド・アロナックス(サポート)
めずらしい そざいはある?
なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!
(※セリフはひらがな+カタカナ+空白で話します)
探し物や調べ物は楽しくて得意だよ
"くらげほうき"や"ゆきソリ"で空を飛んだり泳いだりしてヒトや物も運ぶよ
戦闘はサポートに回ることが多いかな
手強い敵は基本隠れながら隙を作って逃げる!
"クリーピングコイン"で物をひっかけて飛ばしたり
"しろくじら"の歌で余所見をさせたりね
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
よろしくおねがいします!
仲佐・衣吹(サポート)
キレイなもの、カワイイもの、ぶち壊そうなんて許さないんだから
バトルだって芸術よ。美しく戦いなさい!
お相手するはアタシことネイル
美術好きな女性人格よ
口調はいわゆる女言葉かしら
身のこなしが一番軽いみたいで
接近戦より距離をとってダガーで戦うのが好きよ
よく使う手は
外套を投げつけて囮や目暗ましからの一撃
ルーンソードで戦ってる途中で手放して虚を突き、袖口から隠し武器としてダガー
光属性を付けたルーンカルテを落としといて、タイミングを見て目潰しフラッシュ
こんなところかしらね
アイテムやユーベルコードはお好きに選んでくれていいわ
使えるものは全部使って、華麗に美しく戦いましょ!
「にげられない こまった」
ネッド・アロナックスは困っていた……いつものように素材を集めるために依頼を受けていたら、なぜかバハムートキャバリアの聖遺物を護るために百獣族と決闘をする破目になってしまったからだ。
「こうなったらこの状況を楽しみましょ!」
そう諭すのは仲佐・衣吹のネイル人格。二人は同僚の間柄だった……衣吹自身の覚悟はもう定まっている。妖精の里は美しい地であり、聖遺物を護る妖精達との絆のために戦いたいと思っていた。
「心配はないよ、二人とも……」
そして今、二人の近くには存在感のありすぎる存在がいた。
薔薇の花弁を周囲に舞わせながらポーズをとっている、やたらと肉付きが良く彫りの深い顔の男……と、その周囲に咲き乱れる薔薇。聖遺物、聖宝玉エギン・ビウィドの力により呼び出された薔薇の精である。
「二人のことはこの僕が、守ってみせるよ」
そう言って歯を見せて笑う。
浮世離れした、濃すぎるほどに芸術的な風貌。この味方にの参戦に、二人はいかなる心境であろうか。
「……こちらは
人造竜騎を使わせて貰うわ!」
衣吹は決闘相手であるガーゴイルに向けて言う。ガーゴイルはそれを承諾し、妖精の里に眠っている、遥かな過去に人間が持ち込んだというバハムートキャバリアを借り受けるべくその場を後にした。
「おれは いいよ」
一方ネッドはその場に残り、衣吹の背を見送った。
はるか過去の兵器とはいえ、バハムートキャバリアは問題なく動作した。妖精の里の大きな館より飛び立ったそれは、すでに獣騎形態になっているガーゴイルを見つけると、衣吹は相手の誘導に従って里から離れた、山中の広げた場所に移動した。ネッドと薔薇の精、それから決闘を見届けようとする里の妖精達の何人かがそれを追う。
「では準備は良いか?」
ガーゴイルが聞いた。正々堂々と戦おうという構えである。戦闘に参加するのは三体だ。
「いつでもいいわよ」
「おれも」
「僕も構わないよ……」
「では、いざ尋常に……勝負!」
三体の獣騎ガーゴイルは空中に飛び上がるや否や散開し、三方から猟兵と薔薇の精を囲む陣形をとる。
程なくして地面が隆起したと思うと、岩の嵐が降り注いできた。
二体がユーベルコードで起こしたものだ。そして、残り一体は左腕を切り離し、周辺一帯を吹き飛ばすガーゴイル型爆弾に変換して飛ばす。
岩の嵐で敵の目を眩ませ、本命の爆弾で吹き飛ばすという戦法だった。
──だが。
「……なぜ爆発の音が聞こえん?」
岩の嵐に伴われた土埃で猟兵達の様子は見えないものの、爆発の音はガーゴイルにも聞こえるはずである。
代わりに薔薇の花弁が舞い散り、周辺に広がった。
その鮮やかな色彩の中に、煙のような、なびく白影がある。
正確に言えばそれは、空中を漂う
海月の姿だった。
「しゃしゅつする こうげきは さえぎれば むりょくかできる」
ネッドは語る。
その身体に傷はない。ネッドと衣吹のキャバリアは、薔薇の精が展開した幾重にも巻かれた蔦の壁に覆われ、岩の嵐を完全に遮断していた。そしてガーゴイル型爆弾は地中より伸びた蔦に絡み付かれ、有効範囲外に留められていた。
「僕が抱擁したものは……誰にも傷つけさせないよ」
薔薇の精はポーズを取りつつ勝ち誇る。これにより敵のユーベルコードの弱点を実証したことで、
なびく白影が現れた。
どこからともなく現れた海月たちはガーゴイル達を触手の刺胞で刺していた。それはユーベルコードを封じる効力を持つ。
「そして くらげかさに こめた ユーベルコードは ひとつじゃない」
なびく白影は、事前に
深海の記憶によって「くらげかさ」に籠められたユーベルコードの一つだった。深海の記憶により籠められたユーベルコードは、二種類ずつ発射できる。そしてもう一つは、ネッド自身に作用した。
ネッドは790km/hの速度で空中に跳び出す。
海月に良く似た姿のネッドだが、その動きは猫に似た俊敏さで(時速790km/hで跳躍するものが猫に似ていると言えればだが)ガーゴイルの一体の身体のあちこちに触れる。するとガーゴイルは地面へと墜落した。
「ねこの いたずら」
猫の悪戯──猫魔力を纏って高速で跳び回り、触れた物品や対象の装備を破壊、あるいは使用不能にする。ネッドはこれを用いてガーゴイルの翼を使用不能にして、ついでに装甲を何ヵ所か破壊した。
ネッドは次の目標へと向かって跳躍する。
その時には、空中には異様な光景が広がっていた。
空を、無数のバハムートキャバリアが飛び交っていたのだ。その数、16機。
「いつの間に増援を?!」
「多勢に無勢とは卑怯なり! 加勢するぞ!」
戦闘に参加していないガーゴイルが騒ぎ出す。
「慌てないの、これは残像よ……そして」
バハムートキャバリアのうちの一機の中で衣吹が言った。程なくして、すべての機体が闇のオーラに全身が包まれる。
「これでもう何機いるかもわからないでしょう」
空を飛び交うバハムートキャバリア達は、全てが黒い影になり、それぞれの位置を把握することが困難になった。
そして、ガーゴイル達に向かい無数の手裏剣が降り注ぐ。
ソード・ミラージュにより召喚された残像分身が、本体と共に黒影剣、そして同時に使用できる手裏剣投げを一斉に行ったのだ。手裏剣もキャバリアに合わせてサイズを拡大されている。
この時にはネッドによってもう一体が地上に落とされており、空中からの手裏剣の連発を受けて二体は戦闘不能となった。
その時には残像分身は全て消えていたが、残るガーゴイルには衣吹機の姿は把握できていない。
黒影剣で位置を解り難くした上、バハムートキャバリアの機動性を活かし、死角に回り込んでいたからだ。
そして発射されたエレメンタルキャノンの一撃が、残るガーゴイルの胴体を貫いた──。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティエン・ファン
おっと、なんか情報量が多いな?
えーと、昔の少女漫画風なのが薔薇の精で、ヒゲのダンスなパフォーマーが百獣族のガーゴイルで……
えーと、まあいいや!とりあえず本番のバトルだね!
それじゃ私は『蚩尤』と一緒にやらせてもらうね!
この世界の百獣族ってオブリビオンは基本的に正々堂々戦ってくれるから、あんまり搦手を気にせずに済むのが良いよね!
こっちは別に策を練ったって良いんだろうけど、真っ向からお相手をさせてもらうよ!
どうやら任意の部位を固くて強くできるみたいだから、そこを避けるように蚩尤衝撃杭をぶち込むのが正攻法、なんだろうけど……
やっぱり正面から押し通りたいよね!
あ、薔薇の精さんは自由にやってもらう方向で!
「おっと、なんか情報量が多いな?
えーと、昔の少女漫画風なのが薔薇の精で、ヒゲのダンスなパフォーマーが百獣族のガーゴイルで……?」
「それであたし達はグワイリファン山の妖精。護るものは聖遺物の聖宝玉エギン・ビウィドで、あんたはティエン・ファン、除霊建築士で、乗ってるキャバリアはサイキックキャバリアの蚩尤、特徴的な武装は両腕と一体になってるインパクトパイル、杭打機のように対象に衝撃波を打ち込む機構で、主に必殺技として使ってるんだよ」
「いや、自分と蚩尤のことはさすがにわかってるよ……っていうか全部覚えてたんだ?」
などとティエン・ファンと妖精との間でやり取りがあったのが決闘の直前。
それにしても今回の一件は全陣営濃いメンツばっかりで情報量が多い。一体誰のせいだ?
さらに薔薇の精からも軽い打診があった。
「僕は後方からのサポートが良さそうだ。
君の素敵なボディの相棒に脚光を浴びさせるといい……」
わざわざ言い終わってから目を細めてキメ顔になる。
薔薇の精には自由にさせることにして、蚩尤に乗り込んだティエンは二体の獣騎ガーゴイルと向かい合う。
「用意はできたか?」
「いつでもいいよ!」
「よし、ならばいざ尋常に……勝負!」
宣言とともに二体のガーゴイルは空中へと舞い上がる。
ティエンは蚩尤を前進させ一気に距離を詰めようとする。ガーゴイルはそれに気づくと、二体がかりで太く頑強な腕を上段から叩きつけにかかる。
蚩尤は初撃を避け、二度目を腕で止めた。重厚な金属と鉱物の塊がぶつかり合い、火花を散らして音が轟く。
蚩尤も白兵戦ならばと拳で応戦し、大技を狙いたい所ではあったが、ガーゴイルは素早く上空へと逃れるため、なかなか攻撃を当てることができない。
だが、突如としてガーゴイルが続けざまに転倒した。
地面から薔薇の精が蔦を伸ばし、着地した瞬間を狙ってガーゴイル二体の脚に巻き付いたのである。それは凄まじい力で獣騎の巨体を引摺り、二体を雁字搦めにした。
「今だ、お嬢さん」
薔薇の精は、二体纏めて片付けられるように二体を結び付けた。
「おのれ、これで終わりではないぞ!」
だがガーゴイル達はそれで終わらなかった。全身を蔦に絡み付かれながらも立ち上がると、二体が互いに背中合わせになって、身を屈め、左腕で前方を覆うようにした。
「我らが守り、崩せるか!」
その左腕の装甲は、見るからに堅牢に見えた。
だが。
「正面から押し通るよ! インパクトパイル、セット!」
ティエンは蚩尤にインパクトパイルを作動させ、必殺の一撃の構えをとる。
「いっけええええええええええええ!」
蚩尤の拳の一撃がガーゴイルの一体の左腕の甲に直撃し、衝撃で周囲を凄まじい風圧が凪ぎ払った。
──左腕は、微動だにしなかった。
その時までは。
インパクトパイルが衝撃波を打ち込むと、さらに高い轟音が響き渡り、周囲に土埃が舞い上がった。
それでもガーゴイルは体勢を崩さない。
左腕の装甲は、なおも健在だった。
「………………見事」
しかし、勝負は着いていた。
ガーゴイルは一言、相手を称えると、左腕以外の全身の装甲をバラバラに崩壊させ、崩れ落ちた。
二体同時に、である。
蚩尤の必殺の一撃、蚩尤衝撃杭により伝わった衝撃は、「ガーゴイルの全身に伝わった」。ガーゴイルの防御ユーベルコード、ゴールドロックアーマーは任意の身体部位ひとつの攻撃力・防御力を5倍にする代わりに、他の部位の防御力は0になる。つまり、一部分で攻撃を防げても、伝わる衝撃は他のすべての部位を崩壊させる。それは完全に背中合わせになっていたもう一機にも同じことが言えた。
衝撃を伝える蚩尤衝撃杭に対しては、ガーゴイル達の守りは相性が悪かったのだ。
「その生き様、確かに見届けたよ」
しかし最後まで正々堂々と戦ったガーゴイル達に対し、ティエンは蚩尤のコクピットの中で健闘を称えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ユキムラ・ゴルティエ
普段と違って如何にもな騎士様を演じられて結構楽しかったから合格ってことで。無理言ってすまん。
その分、護り手としては微力を尽くそう。(いつも通り生身)
妖精眼から放つ光で敵の攻撃を止めて、こちらは怪力を込めて敵を叩き割り。ついでに魔力吸収で敵を弱らせる。
俺に正面から見られている限りは攻撃ができないと気づいた敵が俺の側面や背面を取ろうとしてくるはずだから、それは薔薇の妖精に妨害させる。妨害で敵の動きが鈍れば攻撃を身かわしで回避したり武器受けで防御し、再度見つめて動きを止められる。
それを繰り返し、いずれ魔力が尽きて防御の弱まった敵の装甲を砕く。敵から奪った魔力を込めた魔力撃で。
悪いな。これが俺の武だ。
(自らの)試練の結果が合格と告げた時、妖精達ははしゃいだり手を叩いたりして喜んだものだった。
そんな妖精達に向かって、ユキムラはこう言ったのだった。
「無理を言ってすまん。その分、護り手としては微力を尽くそう」
「微かしか力を貸さないってどういう事?」
「……そういう意味じゃない、これは自分の力を謙遜した言い方だ」
わざとボケて言ってるのか本当にわかってないのかわからない妖精の返答にユキムラは説明する。
「謙遜してるって自覚があるなら自信の顕れなんだから謙遜する意味ないよね」
「それは誤解だ、謙遜しているからといって自信があるとは限らない……って言うかそんなことはどうだっていいだろう」
などというやり取りがあったのは決戦の場に赴く前。今、妖精達は決闘に応じるユキムラの姿を見守っている。
そして傍らには薔薇の精が。
「半妖精の騎士よ……君の望むままに僕は答えよう……。
僕は君のために何をすれば良い……?」
濃い顔が慈愛に満ち過ぎた微笑みを向ける。
「それじゃ
、…………」
ユキムラは通常テンションでそれに答える。
少しの打ち合わせが行われた。
「待たせたな……」
「用意はいいようだな」
決闘相手に向き直るユキムラに対するのは、二体のガーゴイルだ。
獣騎に変形したガーゴイル達に対し、ユキムラは生身。
ガーゴイルはそれを見下ろす形になる。
「では、いざ尋常に……勝負!」
一体が先手必勝とばかりにユキムラを叩き潰そうと、腕を振り上げる。
だが先手必勝を狙ったのはガーゴイルばかりではなかった。
ユキムラは左目の眼帯を外し、
妖精眼を顕にして、その目でガーゴイル二体を視界に納め、凝視していた。それ自体は、攻撃ではなかったが。
……ガーゴイルは、振り上げた腕を振り下ろせなかった。
何が起こったのかガーゴイルには理解できない。その停止が隙を作り、ユキムラは攻撃の機会を得る。
身体ごとぶつかるような、ポールアックスの一撃。ガーゴイルは回避しきれず腕で受ける。
その間に側面に向かったもう一体が拳を振り上げていた。ユキムラは着地すると、そちらに視線を向ける。
それだけで、ガーゴイルは攻撃の動作が止まった。
「その眼……! まさか、何かの術を使っているのか?!」
ガーゴイルは怪しみ、ユキムラの視線を外そうとする。
だが、上空に逃れようとしたその身は、無数の刺が生えた幾重もの蔦に阻まれた。
「何だ、これは?!」
「君達はすでに籠の鳥さ……」
周囲には薔薇の精が伸ばした蔦が生い茂っており、頑丈で時には自ら絡み付きにいくそれはガーゴイル達の移動を阻害する。
「さすがに気づいたようだな。だが……」
ユキムラは視界に二体を収めつつ、得物を構えて近づく。その視線はユーベルコード・停止の魔眼光。
妖精眼から浴びた者が攻撃行動を取れなくなる魔眼光を放ち、正面からの全ての攻撃を無効化する。
「正面から挑む以上は、決して俺に勝てない」
「そして……僕は君達をもう離さないよ」
流れるように言葉を次ぐ薔薇の精。当然のごとく薔薇が舞い散ってポーズをとっていた。
ユキムラの取る戦法は打ち合わせの時にわかっていたため、薔薇の精はそれに合わせて動いている。
「くっ、そんなやり方は騎士道への愚弄ではないのか!」
ガーゴイルは苦し紛れに抗議するが、
「俺は正面から正々堂々と挑んでいるが?」
ユキムラは平然と言う。
相手に正面からぶつかるのは、正面からの攻撃を無効化するため。
正面から正々堂々と搦め手を使うこの騎士のことを……
人は、「円卓の面汚し」と呼んだとか呼ばないとか。
「だがその術も無限に使い続けられはすまい! それまで耐えきればよいだけの話!」
ガーゴイルは地面を踏み締め、半身になって防御体勢を取った。
「果たして……耐えきれるかな」
攻撃のできないガーゴイルに対し、ユキムラは苛烈にポールアックスで攻撃を加える。
ガーゴイルはユーベルコードを発動し、左腕の防御力を五倍化させた。他の部分に当たれば致命傷となるが、卓越した技巧で、時にはもう一体に庇われながら攻撃をいなし続けた。
「その程度何のことはない! さあもっと気合いを入れて打ち込んでくるがいい!」
「そうか? その必要はないようだが?」
「何……? はっ!」
ガーゴイルは左腕の装甲に、亀裂が入っているのに気づいた。
「馬鹿な……効果が切れた? 早すぎる」
「それはいつもより早いだろう」
「何……!」
ユキムラのポールアックスには魔力吸収の力がある。
何度も攻め続けたことによって、ガーゴイルのユーベルコードを維持するのに必要な魔力を吸収されていき、必要な量が不足した。そして魔力を吸収していたユキムラは、ユーベルコードを維持し続けられる。
「武器に何の仕込みもないと思っていたのか」
騎士とは思えぬ言い様。
まさしく面汚しだった。
そして吸収した魔力は攻撃に転化される。
振るわれた、会心の魔力撃が稲妻のごとく空を裂いた。
唸りをあげるポールアックスの刃が、その重量を発揮してガーゴイルの腕を粉々に砕く。
最大の防具にして武器を失ったガーゴイルは、あえなく次の刃に沈んだ。
ユキムラの優位はその後も揺るがず、残る一体もなす術もなく同じように葬り去られた。
ガーゴイル達は……その戦いを決して称えはしなかったが。
そんなことは、ユキムラは構わなかった。
「悪いな。これが俺の武だ。
円卓最弱である俺が勝つにはこれぐらいはやらないといけないのさ」
最弱を自称し搦め手を駆使する円卓の面汚し。
彼はそう望み、そう在り、そう示した。
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
流石は花姿も香気も抜群の存在感を誇る薔薇
美しいが過ぎるわね
お花の他は何も身に着けてない様なので
ヘルメットとHANSをお衣裳に付け足し
二人で営業車に乗り込んでゴー!
敵機めがけてアクセルべた踏み
敵の攻撃はスピードとハンドリングで回避するか往なしつつ
装甲が特定部位に凝縮されるまでふんばるっ
攻撃力と防御力が強化される様だけど
機体のバランス、躰の使い方は変わる筈
その立ち回りを観察し、防御力が弱まった部分へ突撃ー!
加速した車輛の重量を叩きつけ、同時に薔薇の精さんにも攻撃して貰うの
あなた達のヒゲダン芸、正直「すごいな」って思ったわ
同じ試練を乗り越えた者として敬意を払いつつ
それでも譲れない矜持を、ぶつける!!
土煙を上げて──
決闘の場に、四輪自動車が到着した。
ここは舗装などろくにされていない山の中だ。
だというのに、ニコリネ・ユーリカは普段、移動販売車として使っているFloral Fallalを、凄まじいスピードと運転技巧をもってこの場に運転してきた。
逆にこの人に公道を走らせちゃいけないのかもしれない。
「お待たせ!」
ドアを勢いよく開け閉めしてニコリネは決闘相手であるガーゴイルと、共闘者の薔薇の精の前に姿を現す。
「それが貴公の武器か。異存はない! では始めるとしよう」
ガーゴイルはもう残り二人だけになっていた。かれらは、ガーゴイルエンターテイナーとして一行の前に芸を披露した者達だった。
「いや、ちょっと待ってね。はい!」
ニコリネはヘルメットと頭部前傾抑制装置を薔薇の精に手渡すと、車の助手席に乗るように促す。
「僕もあれに乗るのかい……?」
それは覚悟が要った。
だが無言の圧力とかその場の勢いとか色々あって、薔薇の精は素直に助手席に収まった。
「君は……花を愛してくれているのだね」
車内に入りシートに腰かけると、蕩けたような声で、薔薇の精は言った。
車内に染み込んだ、花の香りをかぎとったためだ。花屋の移動販売車の中は、異世界の薔薇の精にとっても居心地のよい空間だった。
「お花から直接そう言われるなんて、お褒めにあずかり恐悦至極! ちょっと待ってね」
運転席に入ったニコリネは薔薇の精に感謝を示してから、今度は窓を開けてガーゴイル達に声をかけた。
「決闘の前に、あなた達に言っておきたいことがあるの!」
「何だ!」間髪を入れずガーゴイルは次を促した。
「あなた達のヒゲダン芸、正直『すごいな』って思ったわ! それだけは伝えておきたくて!」
「…………フ。人間にもユーモアが解る者がいるとはな。貴公との出会いを神に感謝する!」
「さあ、言いたいことは言ったわ! いつでも行けるわよ!」
「よろしい、いざ尋常に……勝負!」
ガーゴイルの宣言とともにニコリネは車内に顔を引っ込める。
「お待たせ。さあ最高速で
特攻みまーす!」
エンジンが爆音を轟かせて回る。
戸惑わずにアクセルをベタ踏みしていた。
驚くべき加速。重圧が二人にのしかかる。ニコリネは、ものともせず前傾姿勢でハンドルを握る。
瞬く間に速度警戒音が鳴り出し、それをニコリネは耳に心地よく感じながら、敵へと真っ直ぐに突っ込む。
ガーゴイルは慌てて上空へ逃れるが、爆速で通りすぎた車に攻撃を加えることはできない。
山の中を、狂気じみたハンドリングで駆け回り再び敵へと向かう。
だが敵は上空へと逃れている。だというのに構わず、ニコリネはFloral Fallalを走らせる。
突如として車の前方の地面が、隆起した。
よく見れば、根がびっしりと張っているのがわかる。薔薇の精が根をはわせ、地面ごと隆起させたのだ。車内にいる薔薇の精だが、車内からでも周辺に生えた薔薇を思うままに操ることができる。
猛スピードで空中へと飛び出したFloral Fallalに度肝を抜かれるが、ガーゴイルは左腕の装甲を強化して捌き、直撃を免れた。
「避けたか……だがここからが本番だ」
車内を薔薇の花弁でいっぱいにさせながら(揺れると身に纏っている蔓から落ちる)薔薇の精は、その力を振るい始める。
地面からおびただしい量の蔓が伸び、葉が広がり、花が咲いて、周囲を埋め尽くすほどに成長していく。
そうして周囲は、薔薇で出来た迷宮と化した。
薔薇の花弁を巻き上げながら、Floral Fallalが爆走する。
迷宮は生きているように形を変え、道を作り、Floral Fallalを弾丸とするための弾道を作る。薔薇の棘も、Floral Fallalのタイヤを傷つけることは不思議となかった。
だが自在に伸びる蔓の棘はガーゴイルの足を容赦なく絡め取り、瞬く間に薔薇の道がガーゴイルへと伸びる。
するとガーゴイルはFloral Fallalに対して構えた。
「強化した腕で、そこ以外への衝撃をいなそうというのね……なら!」
ニコリネは真っ直ぐガーゴイルに向かってFloral Fallalを突進させるが途中で急に曲がりコースアウトした。
ガーゴイルは、強化した腕でFloral Fallalを横から叩くことで避けつつ反撃しようとしたが、それは空振りに終わる。
そしてコースアウトしたFloral Fallalはしばし空中に放り出される。
ほどなくして、「壁に着地」。
斜め上に向かって走った。
湾曲した壁をしばらく走るとガーゴイルの側面に出る。
道が自由に変えられるため、あらゆる方角から突撃することが可能になっていた。
道は途中で途切れている。勢いのまま再び空中へと飛び出し、横からガーゴイルに衝突。
ガーゴイルは吹き飛ばされ、衝撃で言葉も残さないままに空中分解する。
Floral Fallalも衝突の衝撃を受け、落下するが、網のように編まれた薔薇の蔓がそれを受け止め、ショックを吸収する。
だが、動きが止まったその一瞬に、もう一体が急襲した。
上空から、強化し重量感のある金鎚のような右腕を、勢いをつけ振り下ろしてくる。
それに対し、窓から幾条かの蔓が伸びて放射状に広がり、ガーゴイルに向かって収縮した。
蔓がガーゴイルの全身に絡み付くと、ニコリネはFloral Fallalを急発進させる。
すぐさま蔓は真っ直ぐに伸びるが、強靭なため切れない。ガーゴイルは道にぶつけられ、引き摺られる。
しばらく引き摺り回した後、薔薇の精が巨大な柱状の薔薇を生成し、硬く密集したその柱の直前でニコリネは急カーブ、凄まじい勢いでガーゴイルを柱に叩き付けた。
その衝撃は、ユーベルコードで腕以外の場所が脆くなっていたガーゴイルの全身を爆散させるのに充分だった。
敵の無力化を確認したニコリネは、車を止め、車外に出る。
薔薇の花弁が雪崩のごとく流れ出た。
いくつもの部分に分離されたガーゴイル達は、もはや言葉も発さなかった。
決闘の結末は無惨だったが、これも本気で戦ったが故。
ニコリネとガーゴイル達が、互いに譲れない矜持をぶつけ合ったがゆえの、壮絶さだった。
ニコリネは彼等の戦いに、また試練に対する真っ直ぐな姿勢に敬意を表し、しばし黙祷した。
ガーゴイル達の全滅をもって、聖遺物、聖宝玉エギン・ビウィドを巡る戦いは幕を閉じた──。
「ありがとう、聖宝玉を護ってくれて! あんた達、今日からここで暮らしなよ! きっと毎日が楽しいよ! そうするといい! そうするべきだー!」
熱狂する妖精だったが、そんなわけにもいかない。
「ま、あんた達にはあんた達の事情があるよね……。
あたし達はたまーに、旅人を拐かすとかして、外の世界について知る機会を得てる」
さらりと不穏なことを言った。しかし妖精らしいと言えばらしい。
「みんな好きなんだ、外の世界の情報を知るの。
だからいつ来てくれても大歓迎だし……。
もしかしたら、拐いにいくこともあるかもね」
ここはあんまり人間社会に迷惑かけるなと念を押しておくべきだろうか。
聖遺物の護り手なのだから、善良な存在のはずなのだが。
「……ともかく、ありがとう。
あんた達、最高にエモかったよ!」
かくして、グワイリファン山に平和は戻り、
猟兵達はこの地に新たな絆を結んだ。
大成功
🔵🔵🔵