3
Meets.

#バハムートキャバリア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#バハムートキャバリア


0




 「兄さん姉さん方ー! ちょっと聞いてくんね!?」

 見えちゃったんだなー、いっつあにゅーわーるど!
 はしゃいだ様子で、そう切り出したのはヒカル・チャランコフ(巡ル光リ・f41938)だ。席のひとつを引いて、すとんと座ると、カムカムといいながら周囲の猟兵たちを手招きする。
 「見たところ、なかなか、古風っぽいトコでしてぇ。オレ、キマフュー民なんで? オレから見て、なんスけどー。家とか、石? レンガ? ああいうの積んで作ってるタイプ! ヤバくないっすか!?」
 手で屋根だの壁だのゼスチャーしながらの説明はまぁいいとして、それの何がヤバイのか。いいだろそれは、の空気感は一切読まずに、ヒカルはペラペラと話を続けていく。
 「で、それよりもヤバイのあって。なんかっスね、爪とかすげぇ尖りまくった、ロボットみたいなヤツが『決闘じゃー!』張り切ってるの見て、オレ! ソイツがマジ、シャレなんねーレベルでゴツくてぇ、コイツ暴れたらヤベェなって」

 そう、これが本題。
 これが現地の住人や、当のロボットめいた何かが《|百獣族《バルバロイ》》と呼び、そう名乗るオブリビオンであると説明して、コイツをどうにかして欲しいのだと頼む、そこまではよかったのだけれども。
 ヒカルが自分の後頭部を搔きながら、言う。

 「ただね、コイツがいつ『どやどやどーやどやどーや』言いにくるとかぁ、分んないんスよね。……あの、分からねぇっていうかぁ……予兆って巻き戻しとかできねーから? 『え? なんて? もっかい言って?』出来ねーし? 聞いたこともねぇ単語とか時間、急にアレコレ言われても、覚え切れなくて、オレー」
 テヘペロでやんすーと、全く反省の色はなしに、ウィンクひとつ。
 「で、も! ノエなんとか言ってたなーって。んだもんで、オレも事前調査やりまして? それが《ノエシス》っつー遺跡らしくて。ついでに、その遺跡の近所の街ってのも場所わかったんスよ」
 宣戦布告するならその街だろって思うんスよねぇ。なんたって――。
 そこで、ヒカルは言葉を切った。

 件の遺跡はかつて地竜の一族の住まう地であったといわれる場所――そこで何が起き、どうなったか。ともあれ今を生きる人々はその直上に街を構えることは避け、その地を遺跡と扱い、整え、少しはなれた場所で生活を営んでいる。

 「……いや、まぁ、そりゃいいや。だから、兎に角、《ノエマ》って街が近所にあって。そこで街ブラしつつ、待機してもらいたいんスよねー。場所はいいんスけど、今度はいつ決闘、が分らないから。日時聞いてもらわないといけなくて。オレの見立て、宣戦布告が来るのは間違いないんで! 信じて! マジマジ!
  ちな、その《ノエマ》って|街《とこ》、従業員何人よ? っつう、でけぇ鍛冶屋があって、それが有名な街らしいっすよ」
 戦争の何のもあったし、たまにはプロに武器の手入れしてもらうとか、いいんじゃないすか? と、ヒカルは、自分のガトリング銃の銃身をトントン、と叩く。
 「住民の側にも、騎士さんって人らがいて、オブリビオンとやり合ってるらしいンすよ。これまたゴッツイ鎧? ロボ? 着込んで。
  そういうの《|人造竜騎《キャバリア》》っつーらしいんすけど。
  その上、剣から魔法からキャノン砲まで幅広くお使いらしくて? そういう|世界《トコ》の鍛冶屋さんだから、どんな武器の人でも大丈夫じゃねーかな」
 買うにせよ、修繕を頼むにせよ、と言ったヒカルは更に続ける。

 「街の人ら、気のいい親切な人らみたいなんでー。頼んだら《|人造竜騎《キャバリア》》てやつも、借りれるかもしれないスよ? 貴重品らしいんでそれなりの態度ってのいるかもしんねーけど。ぎゃはは!」

 どこに笑う要素があったかは猟兵たちには分らなかったものの、用件は分かった。
 幾人かが席から立ち上がる。

 「お、いいっスか!? ご協力感謝ー! そんじゃ、ま、行きますか!」

 散歩にでも行こうかという気楽さで。
 にこりと笑って立ち上がるヒカルの手の内、グリモアがその輝きを増していく。


紫践
 はじめまして、バハムートキャバリア。
 生きとったんかワレ、紫践と申します。

 『正義と公正の|原理により、弱者が《New worid order》強者から守られる世界』を掲げる、その手に消えぬ――そんなことはさて置き、お散歩のお誘いです。

 ●バハムートキャバリアについて
 清く正しく正々堂々! をmottoの住民が、
 清く正しく呪い暴れるオブリビオンと対峙している中世ファンタジックな世界です。
 しかしこれはあなたに、常に清く正しく潔くあれと要求するものではありません。
 あなたの目的、あなたの理念、当地の事情、当地の性質。
 全てを加味し、その結果導かれた《あなたの行動》を大切に参りましょう。

 ●Meets.
 一章:噂の工房見学。
 二章:挨拶は大事。こ……古文書にもそう書かれている。
 三章:やるっきゃ|騎士《ナイト》。

 ●人造竜騎の使用について
 三章は《戦闘》となります。

 Case1:武器・ジョブで人造竜騎が確認できる方。
  問題なく人造竜騎を十全にご使用頂けます。
 Case2:人造竜騎の武器・ジョブの用意がない方。
  一・二章で住人から人造竜騎を借り受けることに成功している場合、ご希望ならば人造竜騎を纏い戦闘頂けます。
  この場合、ご指定の形状の人造竜騎を纏い、お持ちの武器、UCで戦うことが可能です。
  人造竜騎の能力を使用する際は、武器・ジョブが人造竜騎である方に比べて、性能が落ちます点にご留意下さい。

 以上です。ヨロシクお願いします。
17




第1章 日常 『竜騎鍛冶師の工房』

POW   :    新しい武装を考え、作ってもらう

SPD   :    破損した箇所を修復してもらう

WIZ   :    魔法的な加工を施してもらう

イラスト:十姉妹

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ■アタラクシア領《ノエマ》

 街の端に至ったあなた達の目に留まる最初のものは、工業の街にこれ程が必要かと違和感すら覚えるほど堅牢で高いその城壁であろう。いくつの石煉瓦の詰まれたものか、途方もなく高く途切れない壁には上へ至るための階段が斜めと這う場所も見受けられる。

 送り届けられた裏路地から大通りへと出れば、壁の無骨さから一転する印象。色とりどりのサンシェードは、石畳の道の脇を華やかに飾り、決して華美ではないが、清潔な身なりの住人たちが、呼び込み、呼び込まれ談笑する姿。カートにならぶ瑞々しい野菜や果物の屋台に、菓子を売る出店。一見で分かる安定して豊かな街の光景がそこにあった。あなた達も住人と同じように、並ぶ飲食店、衣料店、雑貨店などとウィンドウショッピングを楽しめば、ひときわ目を引くのは、金属加工品――それは鍋包丁やカトラリーの専門店から、農具、或いは武器屋まで多岐に渡る――を扱う店舗の多さ。中には卸し専門か、荷馬車の止まり、商店主と忙しく話しながら紙を捲り荷箱を確認する者や、ひと時を水を飲んだり、エサを食むのに忙しい馬、箱を荷馬車に積む労働者、といった光景もあちこちに見受ける。
 活気に当てられて、楽しく迷う街中。あなたはどこへ向かったものだろう。
 飯屋で食事を取った際、或いは公園で居合わせたご老人や子供達と交わした挨拶、はたまた街角のジューススタンドでフルーツを絞ってもらう間、人々に聞いた《ノエマ》とは――。

 《アタラクシア》は、この世界にあっては大きな国のひとつといえる。国土という意味でも、威勢という意味でも。抱えるエポケー山脈が豊かな資源――木材、石材、鉱物を、人類に提供しているからだ。人類が信仰を持たなかった時代から今に至るまで、尽きることなく。始めは怯え隠れ住んだ、天然の要塞たる山々で、力を蓄えた人類はやがて出立するのだ。そうして行く先々に生まれた街や村々を、山々のもうひとつの恵みたる大河ピュロンが結んでいる。
 なかでも誉れ高いのが、大河上流、採掘の街《アパシア》。そして下流、鍛冶の街《ノエマ》――これこそはアタラクシアの名より古く存在し、人類による人類の為の神産みを支えた拠点のひとつであり、《双子街》と呼ばれるものである。
 そして、このようにして連綿と紡がれた歴史、《円卓》の謳う《騎士道》に生きるこの世界で、今なお、このアタラクシアは、双子都市は、その価値をいや増すのだ。我らが神たる|人造竜騎《キャバリア》とそれを駆る騎士たちを支えるものとして。

 ――と、まあ以上がここまでの街ブラ、もとい、情報収集であなたの得た街の来歴のようなものである。わが街びいきはよいことであろう。はたしてここが、この世界において住人の言うほどの規模の国か、街かは今のあなたには判断がつかなかったものの、だ。
 見ない顔だねの言葉に旅の者だと返したならば、誰もが歓迎の言葉であなたを迎え、胸を張り街を紹介し、あなたがよい品物に巡りあえます様にと微笑んで祈ってくれた。
 街の住人たちは、実にそのような人々である。親切さと誇り高さは充分に理解出来た。
 ついでに、おすすめの宿や店なども紹介してくれる商魂もある。街の人々の話ではこちらは居住区や、交易の者を向かえる商業区画なのだ。
 そして、紹介されるものがもうひとつ。
 この街の要――工房の類の立ち並ぶという区画への道順を説明したあと、婦人は微笑んだ。
 「あなた、いい時にきたわ。今、《|人造竜騎《キャバリア》》が数騎工房に届いているのよ。アタラクシアのお城で古い区画が見つかってね。そこに収めおかれていたらしいの」
 私も拝観させて頂いたのよ、ありがたいことだわ、とあなたの頼んだ品物を手渡しながら。
 至るところで聞いた話。ぜひ工房へいってみなさい、という勧め。これが今、この街の一番のニュースであった。

 それらの言葉に背中を押され、向かった先。
 立ち並ぶ工房、そこかしこ、伸びる煙突が煙上げている。これまでよりは少し荒っぽい言葉も飛び交うのが聞こえ、ただ必要のみであちらこちらと伸ばされた道を行けば、熱された金属の言われぬ匂いと、金属を打つ音があなたを包む。
 あらゆる金属加工品を作る大小の工房の立ち並ぶそこで、けれど、あなたは目的の工房をすぐに見つけることが出来た――他の工房と一線を画すその規模の為に。

 「こんにちは」
 見習いだろうか。工房前を掃いていたまだ少年と呼べそうな若者が、あなたを認め、しっかり仕事に汚れた前掛けも誇らしげに挨拶をする。
 「人造竜騎を拝観に来られたのですか? それとも武――」
 彼の目がキラキラとあなたの得物へと向けられ、言葉が止まる。
 「うわぁ、すごい! みたことのない意匠ですね! どの国からお越しに? 他の街ではこのような武器が今流行しているのですか?」
 あなたの周りをクルクルと、武器だけでない。あなたの風貌全部、彼の興味の対象のようであって。
 「こらっ」
 その少年の頭にぽかり、と落とされる拳。
 「申し訳ございません。失礼致しました」
 丁寧に頭を下げる、こちらは実に鍛冶屋向きと期待を裏切らぬ体格の良い青年だ。
 「いった。あ、すみません。失礼致しました」
 自分の頭をさすりながら頭を下げた少年は、改めて笑顔をあなたに向ける。

 「ようこそ、竜騎鍛冶師の工房《エネルゲイア》へ!」

 武器をお探しですか? それとも修繕を? 竜騎鍛冶師の工房なれば、勿論魔法武器のご相談も受けておりますよ!
 愛想よく、滑らかな少年の口上。青年も、遠慮なくどうぞ、と付け加え、私は仕事のありますのですみませんと丁寧に詫びて、先立って中へと戻っていく。職人街であっても、変わらず明るく開放的。誰もを歓迎するその姿勢。招かれるまま、あなたは足を踏み入れる。
 「もちろん、先ほど言った人造竜騎の拝観も出来ますよ! こちらで修繕中でして! お城から人造竜騎の警護の騎士様が来られてますから、まずは騎士様にお声掛け下さいね、すごく格好よくていい方々なんですよ~! 」
 多くの職人の行きかう中を、店舗兼事務所という建物へと案内しながら、少年の口は止まらず、そうして……目はあなたの武器に注がれたままだ。
 「そ、それと。あのう……よかったら、お客様の武器のこと、お聞かせ願えませんか!」
 あなたの前に回りこんだ少年が、興奮に頬を赤らめ勢い込んで強請る。
 「俺、将来は武器を作りたいんです! だから! いっぱい勉強しないといけなくて!」

 さて、どうしようか?
 ともかくも、このままでは少年に二つ目の拳が振り下ろされかねない。
 少年に連れられるというより、あなたが彼を連れるようにして――まずは、受付たるその建物へと入っていく。

 ■MSより
 ようこそ、ノエマの街へ。そして、工房《エネルゲイア》へ。
 こちらで出来る事はPSWに準拠致します。どうぞあなたの大切な武器を慈しんで、或いは新たに加えてくださいませ。
 追加として以下の行動が可能となります。

 ・大いに自分の武器語りをする
 あなたとあなたの武器の《|出会い《Meets》》や、心に残った戦闘などを少年に聞かせてあげて下さい。

 ・人造竜騎を拝観する
 人造の神がおわします。見学や、警護する騎士への交渉が可能です。
 借り受ける方法は色々あるかと思います。
 一番簡単なものは騎士に《正々堂々》と実力を示す模擬戦となります。
 この場合は、《交渉》にプラスして《戦闘》のプレイングもご用意下さい。

 《注意事項》
 ・武器を修繕する
 ・武器を作成する
 これはリプレイ上だけとなり、実際のアイテムとして反映は出来ません。ご了承下さい。
 
 以上です、ヨロシクお願い致します。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…広い街…賑やかだったな…
だが…この|騎士道《バハムートキャバリア》の世界にも敵がいる…
それを討ち倒す為にも…さぁ行くぞ…私は処刑人…!

元気な子だな……私の武器…?
この鉄塊剣は…私の相棒だね…それに妖刀に…鎖の鞭に拷問器具に…
今は持ってないけど他の剣や宝貝に斧…機関銃や鉄球にバットもあるよ…
それとこの地獄の炎…

人造竜騎…見てもいいかな…?

あれが人造竜騎…
百獣族を滅ぼした血塗られた鋼の竜騎士…
敵を討ち滅ぼす為に生まれたもの…私達処刑人と同じかもしれない…

人造竜騎の武器も見せてもらっていい…?
それと…ついでに触ってもいいかな…?

【巨人力】の怪力を用いて人造竜騎用の大剣を振るってみよう…



 ●
 彼女の歩くのに合わせて、腰元、カチリカチリと小さな音を立てるものがある。

 幾重も腰に巻かれ、それぞれに用途のあるベルトのうちのひとつには、小さな革のポーチの取り付けられたものもあって。そこには、この世界での『最初の戦利品』が収められている。フルーツ果汁の使われているという切り飴たちだ。
 (……賑やかだったな)
 飴が欲しかったとか、そういうわけではないのだけれど。
 浴びた商業都市の洗礼、ひと時のやり取りを思い出し、仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)は、ふわり淡く口の端をあげた。

 (たのしい人たち、……明るい、世界)

 ――ああ、だけれども。
 立ち並ぶ工房、多くが武器鍛冶を掲げるその有様。
 この街、この|騎士道の世界《バハムートキャバリア》もまた、これほどに《武器》を必要としている世界なのだ。 
 
 知らず、止めた足。
 漆黒の髪をかき上げ、流して、ふ、と短く息を吐く。
 (きかせて、)
 この世界を覆うもの――討つべき敵を。

 処刑人――私こそは、《|想い《うらみ》》を引き受けるものなのだから。
 
 ●
 少年は、ベルトに下げていた棘の鉄球のついた《鉄の鎖》に目を留めたらしかった。
 「こちらは護身……威嚇の為のものなのですか!」
 少年のワクワクと見上げてくる顔ときたら。思わず此方も笑みを浮かべてしまうような。
 (元気な子だな……)
 ポット少年は――彼が自己紹介してくれた――先ほどの兄弟子のお説教もどこ吹く風といった感じで夢を語り、問いかけてくる。初めてあう大人にも屈託のないのは、この職場、彼の気質もあるのだろうけれど、きっと……子供を《子供》でいさせてくれる場所なのだろうと、胸が温かくなる。
 「どうしてそう思うの……?」
 「お客様、お綺麗だから! 悪いやつが見て怖がるようにかなって! でも、それなら……短剣などは如何ですか? そちらでは重たくないですか?」
 言うもの次第ではぞわりと背を駆けるもののありそうな賛辞も、少年にあっては名推理の結果のつもり。
 ――何故、この人がこの武器を持たねばならないのか?
 推理に自信があるのか、胸を張る様。そしてやはりこの街の子か、逞しい商魂。仇死原は口元に手を添え隠すと、ふふ、と小さな笑い声の抑え切れない。
 「私は重たく思わない……。|鉄の鎖《こ れ》は、そう、携帯用……?」
 そう応える仇死原が口元から手を下ろしたなら、その手には既に柄が握られている――《|鉄の乙女《拷 問 具》》に、そのまま金属の棒を取ってつけたような巨大な剣。
 「この鉄塊剣が……私の相棒だね……」
 「っ!?」
 あんぐりと口を開けたポット少年が鉄の塊と仇死原の間で視線を何度も往復させている。物質のこのような取り出しは多くの猟兵の可能なところではあるのだけれども、さて。ポット少年は剣が突然現れたことに驚いているのか、その鉄塊剣を軽々掲げてみせる仇死原に驚いているものか。
 一方、平時、どことなくおっとりとしたところのある仇死原は、少年の様子に気付かぬまま。
 「……それに妖刀に……拷問機具に……」
 応援してあげたい、期待に応えてあげたい――つまり、子供が子供らしく夢抱いてあれるようにと、次々と今召喚できる相棒たちを繰り出している。
 最初こそ面食らったポット少年も、その目はどんどんと力を増し、真剣なものとなっていく。紹介の合間に「はいっ」と元気に返事し、せめて意匠、サイズ感、覚えられるものは見て覚えようと一生懸命だ。
 「今は持ってないけど他の剣や宝貝に斧……機関銃や鉄球にバットもあるよ……」
そう述べて少年を見遣れば、彼は前掛けのポケットから雑紙と木炭を取り出して必死に単語を書き付けている。

 今、出せるもの――他にあったかしら? あぁ、そうだ、もうひとつ。

 敢えて《鉄の鎖》、その鉄球の棘にプツリ刺す、人差し指。
 「それと、この地獄の炎……」
 指先で、今は小さな炎を躍らせてから、おっとりさんは気がつくのだ。これは金属を打って作れる武器ではないことに。
 「わぁ! お客様は魔法もお使いなのですね!」
 大丈夫だった模様。いいなぁ、僕も魔法使えたらなぁと子供らしく漏らしてから、あ! と大声、もう切り替えたか、跳ねるようにして。くるっと仇死原の前に回る。ポット少年は興奮と喜びのまま、にっこり笑う。
 「貴重なお時間をありがとうございます! とっても、べんきょうになりましたっ!」
 お礼をしっかり述べてから、ぺこり、頭を垂れる少年――その向こうに、他より人の集まる建物が見える。
 「どういたしまして……お役に立てたかな?」
 「はいっ! 武器とは固定……かん、ねん? に囚われてはいけないと学びました!」
 「よかった。ところで、あちらは……?」
 言葉を切って、少年の向こうを指差せば、ポット少年がああ、と大人びた風な声色で一丁前に頷いた。

 「あちらに今、《|人造竜騎《キャバリア》》が届いてまして!」
 
 ●
 入り口、警備の騎士たちに、挨拶をすれば、驚くほどすんなりと入室は許可された。

 「あれが《人造竜騎》……」
 
 かつて、人々は空を仰ぎ乞うた。夢見た。応えるものはないと知っていても。
 大空から舞い降りるもの、人類の守護者――イマジナリーは、そしてファクトゥアリティとなった。

 《バハムートキャバリア》が、そこに立っている。

 白金の鎧は、魔道具とみえるランプの光を受けて暖色のベールを纏い、柔らかに輝く。
 そこへ一歩。
 (百獣族を滅ぼした血塗られた鋼の竜騎士……)
 また一歩。
 (敵を討ち滅ぼす為に生まれたもの……)
 仇死原とて背の高い方ではあるが、《人造竜騎》は5メートルはあるだろうか。ここからでは遠く小さい頭部を見上げ――宝石のよう、硬質で冷たい瞳と目を合わす。
 (私達、同じかもしれない……)

 「お望みであればお近くまでどうぞ――《人造竜騎》は全ての民の為に在るのですから」
 様子を見て取った騎士が微笑み、招く。

 触れる手のひら、寄せる額の拾う、冷たい金属の温度が心地よい。
 「こんにちは、《| 人 造 竜 騎 《バハムートキャバリア》》」
 自身でない誰かの《想い》を引き受けて、代わり血を浴び戦場に立ち続けるもの。
 共に戦う刻はもう間もなくだ。

 ――その為に|処刑人《わたし》はここに来た、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
武器作りホープって感じかな?
武器の事…。
精霊術士だから、杖とか、光の剣とかは使うけどね。

あ、でも…。
人造竜騎とは違うけど、似たような子ならわたしもいるよ?
物言わぬ鋼の騎士…。でも、ずっと一緒に駆け抜けてきた大切な相棒が。
う、うーん、さすがにここで呼ぶわけには…。
たとえば、人造竜騎が駐機できるスペースがあればいけるけど。
スペースがあるのなら呼び出すよ。

おいで、レゼール・ブルー・リーゼ。
たまにはサイキックキャバリアっぽいところを見せてあげないとね。

形状というか、成り立ちは違うけど、まぁ、何かの刺激にはなるんじゃないかな?

一通り見てもらったら、わたしもみせてもらおうかな。
人造竜騎には興味があるしね。



 ●
 「武器作りホープって感じかな?」
 武器を見せて欲しい、なんて、本来ならばかなり不躾な要請だ。それは主が命を託し、命を掛ける器なのだから。この少年が鍛冶職人であるなら兎も角も、今はまだ。それに、多分だけれど、こういう場所の若手などは、武器を預かった職人の成す一連を見て学ぶのではないかと思う。持ち主の許可など得ずに、だ。勿論、それを責めるつもりなんてない。技術は、そのように継承されていくものだろうと、それは、誰にとっても《暗黙》の。

 だからこそ、少年の正直で素直な申し出は、くすぐったい。
 《正々堂々》のお願いに、シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は、にこりと微笑んだ。その微笑に力を貰った少年は益々勢い込む。
 「まずはそうなれることを目標にしておりますっ!」
 返るのは、うんうん、と力強い頷きと元気な声。
 継いで言葉を発したのは――何かの素材か、魔力を感じさせるジオードの覗く箱を抱えた通りがかりの青年職人だ。一連の聞こえたのだろう、『おう、期待してるぞ。早いとこ頼む、これ重てぇんだから』なんて声を掛けるものだから、周囲を行きかう他の客や職人達の間に朗らかな笑いが起こる。

 この地、この場所。
 下の者を見守る温かいその空気感が、己も三姉妹の長女であるシルには好ましかった。
 
 ●
 そうねぇ、武器……と、零すシルが、軽く握りこんだ左手から、スライドさせるように右手を引くならば――両利きといえなくもないが、彼女、基本は左利きなのだ――そこに一筋の光は《剣》となって。
 「わぁ! 魔法でございますか?」
 光の剣を見、がばっと顔を上げた少年の目の輝きは、シルの招いた光を映した、という以上の輝きで。
 「私は、精霊術士なの。だから、光の剣や杖を扱うこともあるし……」
 「……精霊、術士……?」
 ぽつり、とその言葉は少年口の中で留まって、シルには届かない。一方のシルは、周囲を確認している。彼がそれを望むなら、見せてあげてもよいと思ったから。
 「ずっと一緒に駆け抜けてきた大切な相棒も、いるわ」
 そう、己の力の具現化とはまた違う、大切な相棒。
 「どのような?」
 精霊術士という聞きなれぬワードも頭から飛んだ少年が、ワクワクとこちらをみるから困ってしまう。
 「見せてあげるのは大丈夫だよ。でも、うーん……」
 ちょっと待って、と両手を広げて少年を宥めながら苦笑い。
 ここは《|人造竜騎《バハムートキャバリア》》の為の竜騎鍛冶の工房だ。いまだ実物は見ていないが、かなり大きいものだとは街歩きで聞き及んでいる。実際、ここまで工房を見学して、竜騎工房とは、一般に想起される武器工房とは違い、まるで小さな村のようだというのがシルの感想だった。今いる地点、工房内の交差点に当たるこの広場だって道幅だけ、広さだけでいうなら、相棒を招くには充分な。けれど、何せ往来が多い。職人に、拝観客に、あちらの鎧の彫金も見事な二人組は交代に向かう噂の当地の騎士だろうか。
 「《人造竜騎》を一時的に駐騎させる様な場所はある?」
 それを聞いて飛び上がったのは少年だ。まさか、まさかお客様は……。
 「円卓の騎士さまでいらっしゃいましたか!?」
 違うよ、の言葉と伸ばした腕は、広場の人払いに走る少年に届かなかった。

 「どうぞ!!!」
 離れた場所から元気良く手を振る少年と、何事かと見守る人々。
 (え、ここで……?)
 過った思いは一瞬。だけれど、そう、別に何を秘する、何を臆する必要があるだろう。

 「おいで、レゼール・ブルー・リーゼ」
 信頼を音にした密やかなシルの呼び声に応えるもの。
 ずしりと地を揺らし、彼女のそばへと寄り添い、立つ、青く煌く輝き。
 曇りなきその輝きを受けて巻き起こるものはしかし、そう、予想できたこと。強いどよめきだ。誰もが、これは《人造竜騎》でないことを直感で気がついている――だとすれば、これはなんだ?
 小柄なシルの横で、物言わぬ鋼の騎士は、言葉の代わり、その圧倒的な存在感で挨拶をするから。友として、相棒として、自分たちが何をしにきたのかを伝えるのはシルの役目。
 「はじめまして、皆さん!」
 笑顔――母の教え、この土地柄、相棒、全てに信を寄せて浮かべる笑顔だ。シルは声を張り上げ、それから優雅にお辞儀をしてみせた。どよめきの止まぬ人々に向けて。
 「私はシル・ウィンディア。そして、こちらはレゼール・ブルー・リーゼ。私のサイキックキャバリアです」
 キャバリアの響きに、増すざわめき。
 「わたしたち……、遠いところから来たんです。遠い、遠いところから。皆さんの……お手伝いが出来たらって!」
 その堂々とした名乗りに、最初にシルの前に立ったのは、先ほど見かけた二人の騎士だ。
 「ようこそ、ノエマへ。ようこそ、アタラクシアへ。歓迎いたします、シル嬢。我々の困難に、心強いお申し出、有り難く存じます」
 恭しく淑女へ向けるべき礼を示し、名乗る騎士が浮かべるものは、シルと同じく笑顔だ。ホッと、胸を撫で下ろす。
 「こちらは、新たに見つかった《人造竜騎》ということではなく?」
 「違う国ではないんです。わたし達、遠い世界、から参りました」
 気になるのだろう。騎士の問いに、だけれど全てをここで語るには長い。簡潔、今はそれを答えとする。
 なるほど、と少し考え込む騎士の思うところはなんだろう? それでも顔を上げた時には、彼はこういった。
 「|人 造 竜 騎《バハムートキャバリア》は天より人類の守護者として舞い降りたもの――こちらは、まるで晴れ渡る空の、そのままお姿を得て降りてきてくださったようですね」
 相棒を称えるその言葉の嬉しくて、シルがはい、と元気に返す。その騎士の後ろから、ひょこりと覗く、紅潮した――。
 「近くで見ていいんだよ」
 シルとレゼール・ブルー・リーゼを往復しながらみる少年の顔ときたら。思わず噴出してしまう。
 「いいのですか!」
 ありがとうございますの御礼が早いか、駆けだすのが早いか。クルクルとレゼール・ブルー・リーゼの周りで忙しい少年の姿とあははとあがる周囲の笑い声。他にも気になられる方がいらっしゃるのならどうぞ、とシルは言葉を加える。先の言葉を、信じて欲しいからだ。
 人々が、どよめきを感嘆の声にかえ、丁寧に礼をいい、眩しげに相棒を見上げる姿。

 誠意には、誠意が返る。この世界こそは――。
 「……バハムートキャバリア」
 知らず零した言葉を騎士が拾う。
 「えぇ、あなたさまの到着を人造竜騎も祝福されるでしょう。もしお時間の許すならば、是非」
 あちらに、と騎士の差し出す手が示す方向。ひときわ大きなその建物。その言葉に、シルの瞳の輝きも増す――好奇心旺盛なのは、実のところ、少年だけではないのだ。

 「はい! みなさんが落ち着いたら、是非!」

 相棒の青の如くに、澄み渡る青空の下、何度でも咲く笑顔。
 それは、もうひとつの《はじめまして》を楽しみにして。

成功 🔵​🔵​🔴​

空桐・清導
POW
アドリブ・連携大歓迎

変身していない状態で現われる
「うん。活気があるな!国民に活力があるってことは
良い国だと分かるぜ!」
果物なんかを買って食べながら工房へと向かう

少年の挨拶を笑顔で見る
「良い工房だな、少年!オレは空桐清導!
ヒーローだ!…おっと、スーパー騎士とも言えるな!
…ん?鎧かい?フフフ。今見せよう!超変身!!」
ベルトに光が灯って輝くと真紅の鎧ブレイザインを纏う
「これがオレの鎧!超鋼真紅だ!かっこいいだろう!
コイツはオレが多くの人からもらったアイテムを元に
親友が造りあげてくれた最高にして最強の鎧なんだぜ!」
楽しげに少年と話す

「もっと話を聞きたいかい?
ハハハ!良いだろう!何から話そうか!」



 ●
 受付までの道すがら――食べな? 笑顔で少年に差し出す紙袋には、青林檎がひとつ。
 つやと、それにこの小ぶりのサイズ感に引かれて先ほど生鮮市場で購入したものだ。市場は、いうなら、|美味しくて《・・・・・》、楽しかった。これから年末へと向かうからだろう、商店主達の意気込みが何せ凄かったのだ。10売るために1差し出す、なんだかんだと続いたお味見攻勢。この街は物だけが豊かなのではないと知れる、気風よいそのあり方。
 そんな訳で、案外お腹の膨れてしまったので、口直し、食後のデザートのつもりで買った林檎だったのだけれど。
 遠慮する少年に、いいんだいいんだと後押しして。だってさ、と付け加えるのは。
 「結構酸っぱいんだ、これ。俺も2個はいらねぇ。しくじったわ」
 平然と。そう、堂々と正直に。
 それから、再び自分の林檎に齧り付く空桐・清導(ブレイザイン・f28542)に、ありがとうございますと返す少年はくすくす笑いをこらえ切れない。
 「なんだよ、少年」
 「だって、お客様。こちらは、サラダ用の林檎でございますから」
 「えぇ? サラダ用?」
 薄切りにして、ヨーグルトのソースもいいけれど、レッドペッパーの効いた香辛料を降りかけて食べることもある、と説明しながら、それを分っている少年も、何故か、がぶりと林檎に噛みついた。
 「……すっぱ~い!!」
 その心持の優しさが、胸を満たす。
 二人顔を見合わせ笑いあう、もうすっかり友達みたいにして。

 ●
 受付を済ませた空桐が、建物を出、さて噂の人造竜騎でも拝みにいこうかと思った時だ。
 「あの! お客様!」
 後ろから掛かる声、先ほどの少年だ。
 「おう、少年。道案内ありがとうな」
 「ポットと申します! あの、あの、本日は武器をご購入ですか?」
 空桐の今の出で立ちは、肌寒い季節に似合いの厚手の、それでいて動きやすそうな赤のジャケット――アタラクシアにパーカーという概念がないので少年はそれをジャケットと判断した――にインナー、ベルトにデニムとラフな格好だ。武器など持ち合わせているように見えぬから、拝観者か。
 なれば、武器も見てもらいたい、と、ポットは考えたのだ。そのタイミングはお客様が《用事》を済ませる前、であるべきだ。
 「お客様は旅の方でしょう? 最近では色々……、ほら、ハグレ者の騎士崩れのごーとー事件なども聞こえておりますよ! 折角ノエマに、エネルゲイアへいらしたのですから、是非っ」
 強盗事件のところが、どうにも、幼い少年から聞くと、現実味の薄くて可愛く聞こえるが、しかし。よくねぇな、と空桐は思う。その言葉の代わりに頷きと共に、改めて。
 「良い工房だな、ポット少年! オレは空桐清導!」
 少年にきちんと向き直り微笑んで。その子の遥か後ろに、過剰の防壁。立ち並ぶ武器工房と上がる煙、|武器《それ》によって、益々栄えるという|この街《ノエマ》――よくねぇな、この循環、と内心でもう一度。でも、だからこそ、ここへこようかと、空桐はそんな気になったのだ。
 だって、俺は――。

 「ヒーローだ!」

 え?
 ポカンと見上げてくるポット少年に、うむと、一度頷き、さらに畳み掛ける。
 「……おっと、スーパー騎士とも言えるな!!」
 うん、こちらの方が、|薄氷に立つ世界《バハムートキャバリア》では通りがいいかもしれない。
 「えぇぇぇ! 騎士様でいらっしゃいましたか!? 僕、えっと……」
 丁度、ポット少年の思う騎士像を体現した存在が、白銀の鎧に重厚なマントの彼らが通りかかった。空桐の名乗りに、足を止め、こちらを見ている。彼らとラフな出で立ちの空桐を交互に見て、ポット少年は結論した。
 「騎士様だって、お休みの日は鎧は着込みませんよね! すみません、僕」
 「……ん? 鎧かい?」
 フフフ、笑って、少年の頭をくしゃり、撫でてあげる。
 望むものが、求めるものがいるなら応えるのがヒーローなれば!
 空桐のその意志を感じ、ベルトのバックルは、今、力強くも暖かな光を湛え始め――

 「今見せよう!超 変 身!!」

 ――瞬間の閃光。
 思わず腕で目を庇うようにしたのは、ポット少年だけではない。それから、ハッと、少年は大丈夫かと騎士達が、周囲の者達が、腕を下ろし見たその先に、立っている。
 この場所にいるものには慣れ親しんだ色。融かし、焼き、鍛えるための紅蓮の炎、その化身のようにして。

 「これがオレの鎧! |超鋼真紅《ブレイザイン》だ!」

 「ふおぉおおおお!!」
 リアルで『ふぉおお』なんて科白、初めて聞いた。でも、子供って、本当にそうなんです。ポット少年の心からの感嘆に、格好いいだろう? と聞く空桐の、腰に手を当て堂々と立つそのポーズもまたヒーロー然として。
 お傍によっても? と聞く少年に頷いて、兜をはずし脇に抱え。
 「どこで誂えたのですか? このように身に添う形の鎧は初めて拝見しました!」
 感激するだけでなく、学びに変えていくように、観察を欠かさぬ少年が好ましい。
 コイツはな、と、見上げる空に思い出すのは、これまでに結んだ縁。
 「オレが多くの人からもらったアイテムを元に、親友が造りあげてくれた最高にして最強の鎧なんだぜ!」
 いまや、少年だけではない。こんにちは、と笑顔で挨拶をしてくる騎士や、少年と同じく好奇心尾さえ切れぬ職人たちを前にして。口々のご挨拶と矢継ぎ早の質問と。
 そうとも、まずはお互いを知るところから。

 「ハハハ!良いだろう!何から話そうか!」 

 はじめまして、バハムートキャバリア。
 さぁここから語らいましょう、これまでの縁が紡いだ鎧が導くのは、あらたな《出会い》を物語だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【調和の絆】で参加

騎士道は本人にとって正道でも他人には迷惑にしかならない時もある。まあ子孫代々呪いのごとく受け継がれるのは皮肉だねえ。まあ、律も私も慣れない世界だから様子見だ。

武器鍛治を目指す男の子か。預かっている幼い子がよぎる。歓迎ありがとうね。私は竜騎士だ。竜に乗ることを考慮してランスと槍を使ってる。

このランスは私の気の高まりに応じて赤熱するんだよ。すごいだろ?まあところどころかけているからねえ。修繕してもらえると嬉しい。ポットというのか。夢は追い続けてこそ価値がある。頑張るんだよ。

人造竜騎か。私は基本竜にのるが、人間のように動くキャバリアには興味がある。見学させてもらっていいかい?


真宮・律
【調和の絆】で参加

まあ、俺は傭兵だから騎士道みたいな正々堂々とした信条は良くわからないんだが、過去の重い罪を代々受け継ぐのも難儀だな。俺たち家族は戦う力があるが、罪の無い一般人も復讐の標的にされるとはなんとも。

好奇心で向上心ある子は好きだぞ。娘もそういう子だし、少年と同じ年頃の子もいるしな。使い込んだ愛用のグレプスキュルという両手剣をみせる。まあ、手入れはしているが刃欠けとかしてるだろうから手入れしてくれると。

人造竜騎も興味ある。交渉だな。決闘の前に実際にみてみたい。知り合いにキャバリア乗りがいてな。なるほど、良くできている。



 ●
 それは、《護る》ために。

 「どう見る?」
 壮年の男性――真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)の言葉に、横を歩く彼の妻は、いい街だと思うよ、と薄く微笑む。
 明るく社交的な人々、豊かな街。先ほど寄った宿下の酒場の――昼は定食屋のようにした――下働きの女の子だって、忙しく大変そうではあったけれど、その顔には労苦ではなく、充実を浮かべていた。
 「何も考えずにデートするだけなら、ね?」
 続く真宮・響(赫灼の炎・f00434)の言葉に、律も釣られて僅か口の端を上げる。

 聞いた来歴、触れる新世界。
 正々堂々とあれ、と。その結果の、ここまでだけなら、まるで夢のようによく出来た街と人々。
 「騎士道というやつの賜物かね、俺には良く判らんが」
 「そんなの、振りかざす本人は気持ちいいかもしれないけどさ。……周りはたまんないってことも、あるんじゃない」
 愛する夫は彼は傭兵だ。戦場に立つものには色々いるけども、あぁ騎士様、そんな|生き方《たたかい》をしてきたわけではないということは、響が誰より知っている。
 そして聞き及んだ話が事実だというのならば、この世界、人類の歴史だって、そう――。

 「人類の守護者、か」

 開かれた大きな鉄扉、上部に掲げられた看板の古めかしさが、伝統を湛えている。
 「エネルゲイア、ここだね」
 拝んでみようよ、その守護者様ってやつ!
 くるり、身を返して律を見上げる響の、恋する少女だった時と何一つ変わらぬ軽やかな所作と見上げる笑顔に、参ったね、とは律の心の中でだけ。ひとつ頷きを返し、そして、ふたり連れ立って。

 ●
 「傭兵、でいらっしゃいますか」
 案内を買って出てくれた少年――ポットは愛らしい少年だった。真っ直ぐに夢を語り、おねだりをして。それで、律と響、思わず顔を見合わせくすくすと笑ってしまう。今日は他の大人の家族とお留守番となっている可愛いわが子たちの顔が思い浮かんだのだ。
 「や、やはり、武器は大事なものでございますから! あの、勿論秘密の保持はしっかりと、しているのですよ? あちらが修繕の工房でして」
 少年が、そこで自分の出すぎた願いに思い至り、慌ててそういうから、違うよ、笑ったんじゃないからと思わず響も慌てて両手を振って。そこに律が言葉を加える。
 「向上心のある子は好きだよ」
 衒いなく言うその様に、かっこいい……と、大人を感じて、ぽわわと律を見上げる少年に、そうでしょうと、こちらも心の中で響が頷く。
 「奏……娘も君みたいなタイプでね」
 「あら、それは律もじゃない? 好奇心旺盛!」
 やりとりに笑顔向けるの少年の、ほんの少しの陰りを見落とさなかったのは、目の届く範囲だけでも、手の届く範囲だけでも、もう二度と大事を喪わないと誓う二人だからだ。
 「ポットのご家族は? やはりここで働いているのか?」
 世界の違うから、子供が労働力となっている世界というものに、今更思うところはない。この街でみた子供達は少なくとも今のところは、虐待、うばわれるものとは見えなかった。文明の度からいって、その段階だというだけの。
 「あの……ここから少し離れたところに村があって、僕……。その、此方には今、住み込みで!」

 どうしても、武器鍛冶に、なりたいんです。

 罪の巡り、煮詰まる世界の、困ったような少年の笑顔。もうこれ以上は聞く必要はあるまい。
 「……そうか。それで、武器だったな」
 お見せしようか、と、律が鞘から抜いて見せるのは両刃剣。
 「それが大事なものを護る術だと思うなら、必ず、叶えるんだよ」
 夢を追い続けなさい、と、響が掲げるのはランスだ。
 途端、破顔して、わぁと二人に寄るポット少年に、小さく安堵の息を吐く律が、その銘を告げる。
 「クレプスキュル、いい剣だろう?」
 「珍しいお色にございますね! 赤がね色!」
 「赤が珍しいなら、これは?」
 いたずら気に微笑んだ響が、心を伝えるならば、応えて淡く赤熱してみせるランス。
 「魔法ですか?」
 「ううん、この子はドラゴンだ――心があるから応えてくれる。私は竜騎士だ。この子や槍を携えて、竜を駆って戦うんだ」
 今はほの温かいだけだから、触っても大丈夫だよ、と、ポールを握らせてあげ、それを共に支えて。

 そこからひとしきり、少年のねだるままに、この相棒達との武勇伝を、これがどう振るわれたのかを語って聞かせたならば。
 「さてそろそろ、人造竜騎を見に行こうか」
 律の言葉に、はい、沢山有難うございました! と、少年が頭を下げる。
 「まだ用事はあるよ? 手入れはしてるつもりだけどね、たまにはプロの手入れもいいさ。この子達も喜ぶだろう」
 響が修繕を申しつければ、兄弟子を呼んで参りますと両手を握り、意気込む少年。
 「僕が仕事を取ってきましたって、ちゃんと言うんだぞ」
 律がその頭をくしゃりと撫でた――。

 ●
 両脇に騎士を携えて、威風堂々と|人類の守護者《キャバリア》は立つ。
 既に修繕を終えたというこのひと柱は、人の下に舞い降りるための翼を広げ、今は力強く、地を踏んで。
 「見事なものだ」
 友人の駆るキャバリアも、最初に目にした時は、驚いたものだったけども。覗く関節部の機構、宝玉の数々、その配置は決して装飾だけではないことは見て取れた。力を伝えるその一連。
 「よく出来ている」
 先ほどまでの少年のよう、好奇心を瞳に湛える夫の感嘆に同意しながら。それでも響は一歩あった律との距離をつめて寄り添う。
 「だけど、すこし、冷たく感じる」
 この地の騎士道とは、人類の守護者と共に成した事を忘れぬ為の――。
 「鎧、だからかな」
 見知らぬ金属の、その冷たい光沢に目をやって。

 それは、護るために。
 かつては人を。そして、今は奪い、得たものを。
 もう二度と|護る《うしなわぬ》ために。

 「鎧だからこそ、駆る者の――その内に宿る魂の、大事なんじゃないか」
 築いたものの一瞬で瓦解する、その恐怖は十分すぎるほど、知っている。残すことの無念、残されることの辛さ。そのどちらをも。それでも、奇跡は本当にあって――律が、今また触れることの出来る響の頬に手をやるならば、それはすべらかで温かいから。

 ●
 申し出、そして翌日。澄み渡る冬の日差しの下――。
 よく手入れのされた赤銅の剣は、晴天に煌き、今、鞘へ戻る。
 倒れこんだ騎士に手を差し出す律と、駆け寄る響。祝福と賞賛の歓声をあげる人々の間を、冷たくも爽やかに駆け抜けるもの。

 風は謳う――青空と人々の間を。
 バハムートの翼が新たな風に《出会う》、この|瞬間《とき》を、祝福して。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『決闘の宣誓』

POW   :    真正面から受けて立つ、と意思表示する

SPD   :    決闘の条件について、相手としっかり打ち合わせする

WIZ   :    宣誓の場で決まったことをもとに、当日の作戦を練る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●
 小さな家は、置かれ続けてきた。何代も変わることなく、常に。
 ここに何かある、というわけではない――そうとも、一切を許さなかったのだから。
 冬の冷たい風に、立ち枯れの草たちがカサカサと音を立てて、頭を垂れるだけの場所。その|草原《くさはら》の外れに、祈りの家は建っている。

 「日も落ちてまいりました。そろそろ……」
 |翡翠《ぎょく》の埋め込まれた金杯を、恭しく抱き祈りを捧げていた少女の半歩後ろで、騎士は言う。
 「はい」
 少女――聖杯の乙女は、しかし振り返ることなく目を伏せたまま。本日の終わりに、今一度、ステムをもつ細い指に、祈りを篭めた。冷え切り、もはや感覚の感じられぬその指に。
 「どうぞ、安らかなる眠りを――」

 「貴様がそれを言うのか? 人の子よ」

 突然の声。騎士が乙女を庇い前へ出る、その触れ合った衝動で、杯は乙女の手から転がり落ちた。
 同時、地面が激しい振動を始める。耐え切れず地に伏せた少女の手を騎士が取ったその時、杯の転がった先の地面が、ドン、と、土を吹き上げた――乙女を庇うマントに、鎧の背に、自身に。振り落ちてくる土くれの収まりを感じ、騎士が慌てて振り返ったその先。

 「|百獣族《バルバロイ》っ……!?」

 まだ夜と言い切れぬ、冬独特の濃くも透明度の高い暗い夕暮れに、浮かび上がる大きな緑光の珠。
 聞いてはいた、知ってはいた。そのような存在がいることを。しかし、バルバロイと呼んだ騎士も、その後ろの乙女も、出会うことは初めてであった。
 祈りだった、祈っていた――どうか許されますように。だから。
 だが何世代もが繋いだ祈りの果てに、遂に堂々とした金属質の巨躯は現れる。あまりに大きなその爪が、繊細に、つまみ眺めているものが金杯だと知れたのは、その爛々とした緑の単眼に照らされているから。

 この|聖遺物《ゴブレット》こそは、唯一残る|この地《ノエシス》に於ける人類勝利の証であり、単眼の百獣族にとっては、彼の|王国《ノエシス》の最後の残滓である。

 人の背丈の何倍が、一歩前へ。抜かれた騎士の剣に、痴れ者が決闘の流儀も知らぬかと百獣賊は嘲り笑う。騎士の後ろには構えるでも怯えるでもなく、ただ単眼と見つめあう、乙女。
 「……此度の無礼はこの金杯の、変わらぬ輝きに免じようぞ。代わり、先触れせよ、人の子よ。夜を駆け伝えよ」
 明朝、我は決闘の宣誓を行う、と。百獣族が金杯を掲げ、弾かれたように騎士は乙女の手を取り、駆け出した――百獣族がその背に吼える。

 先触れよ、先触れせよ。

 「我が名はノストス。地竜《ドレイク》のノストスが、偽りの|天竜《かみ》の血を受けに参ると――!!」

 ●MSより
 今は遺跡のノエシスより、今は鍛冶の街ノエマへお客様がお見えになります。

 この場面で出来る事はPSWに準拠致します。
 つまり、必ずしも《百獣族:ノストス》と会話をする必要はございません。
 また、まだ戦闘を行う場面ではないことには、ご留意下さい。
 これはあなたの行動に制限をかけるものではなく、ただ、相応の結果となりますということです。

 《人造竜騎》の借り受けも引き続き行えます。

 以上です、ヨロシクお願い致します。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…敵か!
…だが…この世界の百獣族は無闇に人を襲わないはず…!
少女を護る為に…さぁ行くぞ…!私は…処刑人!

地獄の炎纏い【ブレイズフレイム】を発動
少女と敵の間に駆け付け挟まり
少女を庇いながら鉄塊剣を抜き振るい敵を威圧しよう

大丈夫…怖かった?後ろに下がっていて…私が奴と話をつける…
百獣族よ!
聞け!我が名はアンナ!|常闇の世界《ダークセイヴァー》より来た処刑人が娘也ッ!
貴様との決闘…このアンナが相手するッ!

人造竜騎は…必要ない!
この身一つで数多の世界を渡ってきた!
貴様等を再び討ち倒し…その首を貰い受ける!貴様も覚悟するがいい…私は…処刑人だッ!

処刑人の覚悟と矜持を示そう…!



 ●
 『なにもないのよ? 本当に』
 口の端にあげた単語に返るのは、人造竜騎の話を聞いた時とはうって変わった、ほんの少しの怪訝と忌避感のようなもの。

 仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)は、夕暮れに向かう冬空の下、歩をほんの少しと早めた。
 『祈りの家があるわ。そこをお訪ねなさいな――気をつけてね』
 バゲットのサンドイッチを受け取り仕舞った仇死原の手を、わざわざともう一度取って。そのふくよかで柔らかく、暖かかった手の温度も、今は寒風に攫われて残っていない――あの時の老婦人の顔。彼女らは、遺跡、とか、何もない場所、だとか呼んで、決して土地の名を口にしないようだった。

 それほどまでに、無かったことにしたいのだろうか。
 それとも、名を与えれば再び生を得るとでも思っているのだろうか。

 結局のところ、呼ぼうが呼ぶまいが――百獣族の宣告は避けられぬ。しかし、いつノエマに来るものかは判然としない、と聞いていた。だからこそ、というか。今日のところは、もう昼過ぎであるからどうも来ないかもしれないと思ったのだ。……正々堂々と夜に、まぁ、事情次第でないことはないかもしれないのだけれど――この世界に触れてみて、なんとなく、それはないように思えたから。

 それならば、見にいこうかと思った。
 |人が尊厳を勝ち取った《・・・・・・・・・・》という、その場所を。

 ●
 草原にぽつりと建つ漆喰の白、遠い奥には冬の残照の名残が川面を煌かせるだけの。あぁ木の一本すらもないのかとその寂しい風景に近づきゆけば、やがて遠くに人影が見えた。あの家には魂を天上に運ぶという数名とそれに仕える騎士が住んでいるのだと言っていたから、きっと。
 それで家ではなく、二人を目指して、仇死原が向きなおったその時だ。

 地を揺らし、突如あがった土柱――まさか、そんな。

 (……敵か!)
 一気駆け出す仇死原の目が土柱近くの様子の伺えぬ土煙を、それから、家の戸の開くのを順にその目で確認する。容赦なく降りかかる土砂は気にならずとも、先ほどまでの人影、見えぬ土煙――じわり湧き上がる焦り。
 (……だが)
 今は信じるしかあるまい、百獣族とは形式を重んじ無闇に人を襲わないというあの話。夜の混じり冷えこむ風に流れる土煙に、先んじてみえてくるのは、中空に浮かぶ緑の光球だ。

 迫る夜に、咆哮に、呪いに――乙女の手を取りながらも、若き騎士の足の震えを知ったのは、すれ違う瞬間、|炎の揺らめき《ブレイズフレイム》が彼らを照らしたからだ。
 駆け出そうという二人と|百獣族《ノストス》の間で。遂に到着した仇死原は、炎を纏ったまま、そのゆっくりと鉄塊剣の柄を手にする。百獣族の視線を奪うようにして。
 「駄目ですっ……!!」
 乙女が騎士に反発し、すれ違った仇死原を振り返る。振り返って膝下しか見えぬようなノストスの巨体、その前に立つ細身の女性。自分と、騎士だけなら――わたくし達そういうお役目であったと。だが他者の存在を認めて、はじめて、乙女の中で今起きている事態に現実味が湧いたのかもしれない。今起きている事態が、これから何を齎そうというものなのか。いや、と上がる掠れた悲鳴。膨れ上がる恐怖の中で、それでも、彼女は案じた、仇死原を。

 強い子。乙女に大丈夫、とそう声を掛けることが出来たなら。
 「……私が話をつける」
 振り向くことはしない、ただ、行け、と彼女にしては幾分語気の強いそれは、騎士を叱咤する為に。手を引く乙女だけではない、後方の家にはまだ、他のものたちもいるのだから。
 「感謝しますっ!」
 いやいや、という乙女を、ついに両腕に抱えて、騎士の走り去るまで。

 百獣族は、くつくつと、笑うばかりだった。

 「礼儀正しい、という話……」
 本当のようだ。そういう仇死原の声には抑揚のあまりないから、それは賞賛か皮肉か、それとも単なる感想か分らない。
 「充分に死に怯え、悔やむ時間が必要と思わんか? その行いの贖い――我が同胞の魂の慰めとして。だが、貴様が即座の死を望むというなら叶えてやらんでもないぞ」
 我らは人らと違いて寛大で誇り高きゆえ、と、既に展開された武器――纏う炎に爪を伸ばし、ひときわ大きくノストスは嗤う。その挑発の一切を、切り裂く術は、今は剣でも炎でもなく。

 「百獣族よ!
  聞け! 我が名はアンナ! |常闇の世界《ダークセイヴァー》より来た処刑人が娘也ッ!
  貴様との決闘……このアンナが相手するッ!」

 宣誓を受けるばかりと、誰が決めた?
 炎は爪を弾いて。声を張り、堂々と名乗り。申し込むのだ、決闘を!

 「人造竜騎は……必要ない!
  この身一つで数多の世界を渡ってきた!
  貴様等を再び討ち倒し…その首を貰い受ける! 覚悟するがいい……私は……処刑人だッ!」

 血を、命を、燃やして、常闇をも照らしてきたその輝きを身に纏い、遂に鉄塊剣を抜き、仇死原が掲げものは、処刑人の矜持と誇り。

 だから、もう百獣族は笑ってはいない。

 「――この決闘の宣誓、受けようぞ。処刑人の娘、アンナ。
  その炎で照らすがいい、この寂しい平原を――かつて、ここにはまだ眠るばかりの赤子たちがおり、父母がおり、腰の曲がった祖父母のいて――我らの神がおわしたのだ」

 決しようではないか。
 真に処断されるべき、罪深きものたちはどちらであるか。

 ――我が名は地竜のノストス、人の罪を断罪するものなり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【調和の絆】で参加

まあ、不意に襲撃しないところは立派というか。まあ過去の因縁と後悔はそう簡単に解消されるものじゃない。命もかかわってるとなるとね。ここは外部の者が介入させてもらおうか。

ノストス。アンタの果たしたい願いはすごくよくわかる。アタシも一度律を目の前で殺され、息子の瞬の故郷の人々の死体をみた。娘の星羅の家族が殺される事を阻止できなかった。居場所を奪われ、一族を殺された。・・・でもその恨みを今ここに住んでる人達に向けるのは筋違いだ。

ああ、主張はお互い平行線だろう。私と律もその決闘の挑戦、受けよう。お互い武人として全力で戦おうじゃないか。勝ったものが正義。そうだろう?


真宮・律
【調和の絆】で参加

不意に集団で襲撃しないところは褒めてやってもいい。堂々と礼儀を尽くして戦いを挑むところもいいな。

まあ、俺も傭兵だし、家族置いて一度死んだし、瞬の生まれた故郷の人たちも星羅の家族も理不尽に殺された。ノストス、アンタの果たしたい恨みもわかる。

でもな、ここはもう今を生きる住民がいるんだ。今更過去の残影が立ち入る理由はないんだ。

まあ、ノストスの相応の覚悟と誓いをもって一人出向いてきた訳で。戦士として思う所あるな。その決闘、受けよう。俺も響も譲れない。刃を交えてどちらの意思が勝つかきめよう。手加減は無しだ。いいな?



 ●
 ノエシスの遺跡、祈りの家から戻った人々が伝えた報は人造竜騎の守護騎士たち、アタラクシアの騎士に伝えられ、彼らは一夜の内に街全域へと指示を下ろした。

 |明日《みょうじつ》、全ての住人は一歩も家から出ぬように、と。

 カラリ、カランカラと石畳を転がるのは、シェードの為の支柱だろうか。今日も使うと表に置かれていたものはそのままに、人だけが突然消えてしまった。それはうち捨てられたゴーストタウンとはまた違う、意図された静寂。隠しきれぬ今を生きる命。
 冬空の澄み渡れば澄み渡るだけ、その下に広がるこの街の|作られた秘匿《・・・・・・》は、その生への切実さは、なんだか奇妙に胸に迫った。

 転がる木の棒を拾い上げる。ここに今営まれる生活の為の、小さな支柱。
 真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は、それから妻を――真宮・響(赫灼の炎・f00434)を振り返った。
 「行こうか」
 「持っていくのか?」
 「借りるだけさ」
 心強いだろ、そういって男の子が振り回して遊ぶようにして、棒を扱いながら微笑む律の少し向こう。目を引くのは、近隣の建物に隠れきらぬその巨体、人造竜騎だ。
 律の拝領したものではない、戦うためでもなく、宣誓を受ける為の。
 彼の者の襲来が裂けられぬのならば、それは、せめて生活からは遠い場所でなければならない。住民達の憩い、語らう、芝生と花壇の大公園に、駆る騎士をまだ持たぬ人造竜騎は、|力なき人々を護るために《・・・・・・・・・・・》立てられている。

 果たして、アタラクシアの騎士達の目論見どおり、あがる土柱と地を割る轟音。
 一瞬の目配せ。どちらが前でもなく共に、律と響は駆け出した。

 ●
 着いた時、アタラクシアの騎士団から一名が、どうも既に決闘の宣誓を交し合ったようであった。
 聞いていた通り――。

 「堂々と礼儀を尽くして戦いを挑むところは褒めてやってもいい」
 (……そうだね、不意に襲撃しないところは立派というか)
 律の声掛けに、横の響は言葉にはせず同意して。
 騎士たちは、新たな人造竜騎の駆り手とその妻――ここでは|相棒《バディ》と呼ぶほうがいいだろうか、二人の登場に、礼をしめし、場を譲る。
 人の守護神――人造竜騎を背負い、百獣族、ノストスと対面となるその場所を。
 「人が随分偉くなったものだ」
 律の評価を揶揄して、ノストスがはははと笑う声は、思ったよりもカラリとしている。正々堂々、対戦者に敬意を示すとは、どちらかが相手に|謙《へりくだ》るということではないのだから、ノストスはそれをよしとしているようだった。
 (人を見下してるとは聞いたけど、……会話は、出来るということか)
 響は、思う。

 それでもまあ、決闘におけるルール、決めるべきを決めるべく、宣誓の場はあるのだから。三者が名を交し合い、律が二人組であることや、人造竜騎を駆るものの一人――使うかはともかく――であることなど、確認して、取り交わして。

 「……ノストス、アンタの果たしたい恨みもわかる」
 切り出したのは響だった。緑の単眼をじと見据えて逸らさない、妻のその横顔をちらり見て。脳裏にフラッシュバックする、様々の――。
 愛する人を目の前で殺された。愛する人を残し力尽きた。子の故郷、人々の死体とその滅び。これらを経てもなお、娘の家族が殺される事だって阻止できなかった。居場所を奪われ、一族を殺されつづけた――失意と絶望という言葉などでは、いい尽くせぬ過去。

 「……勝負の見えた決闘とはいえ、決するまでは対等と扱う……が、驕るなよ、人ども」
 低く、落ち着いた声は一音一音に怒気を滲ませる。カチカチと世話しなく鳴る爪は、ノストスの衝動を、百獣族の、決闘の、誇りが辛うじて押さえ込む音だ。
 怯む響ではなかったけれど、それでも、律が一歩前にでて。
 「同情などしていない、ただ、俺も|一度死に《・・・・》、|そして今《・・・・》、|お前の前に立っている《・・・・・・・・・・》。……事実を述べただけだ」
 置かれた状況だけでいうなら、律とノストスは鏡のような存在かもしれなかった。
 「……」
 結局のところ、具体的な何かを話したわけではない。でも、ノストスには、それで充分だった。怒気を解き、は、と零す短い吐息。
 「それならば、お前たち。この哀れな地竜の一匹の、決意を甘んじて受けようとは思わんか?」
 お前にそれが許されて、我に許されぬ道理のあるのか、と。これは多分、人の持つ情のようなものを嘲って、律の額に迫る爪。
 それを先ほど拾った木の棒――人のささやかな日常の為の小さな支柱で律が弾くなら、言葉で継ぐのは響だ。
 「その恨みを今ここに住んでる人達に向けるのは筋違いだ」
 きっぱりと言い放つ。
 「都合のいい」
 鼻で笑い、ノストスは爪を引っ込めた。
 「どうしたって、俺達は人間で、お前は百獣賊だからな」
 肩を竦めて、律も薄く笑いを返すなら、ノストスが再びはははと大きく笑う。それの収まるのを待って、響が付け加えた。
 「そしてアタシたちは猟兵で、アンタはオブリビオンだ」
 アンタ達の《正々堂々》、強い光の落とす暗い影を断ち切るために――きっと外部の者、別の|理《ことわり》と、縁を持ちこむ者が必要なのだと、決意を瞳に宿して。

 「なるほど。相容れぬわけだ」
 なれば、今日この場で定めた宣誓の通りに、決闘で。

 「決着をつけようぞ」

 そうして残ったものこそが、正義となる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
百獣族の人がこちらに来たんだね。
天竜の地、そして金杯を取り返しに来たってことだね。

ノストスさん初めまして。
あなたの怒りをわかるとはいわない。
そんな言葉で落ち着くものでもないこともわかるから。

だから、あなたの怒りをわたしは受け止める。
…名乗ってなかったね。
異世界の精霊術士、シル・ウィンディアです。
ここであったも何かの縁。
わたしがあなたの情念を受け止めるよ。
…決闘でね。

だから、その決闘受けますよ。
正々堂々と…。
あ、今のうちに言うけど、わたしは精霊術士。つまり魔法使いの系統だから魔法を使わせてもらうからね。
そこのところはご承知おきをっ!

それじゃ、決闘の場でまた会いましょうね。



 ●
 あはは、あははと腹を抱えて、それは嗤う。
 他におらぬか、我らが杯を満たすもの――血を以って罪を贖うもの。
 どうせ、避けられぬ死の先か後かなら、勇気あるものは我ノストスの全力を受けて死んだと、その名誉をもって逝けと。

 大公園に辿りついた時、シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)が見た光景というのは、そのようであった。

 大きくて、強くて、そして、敗れ去った|過去《もの》が息を吹き返して。
 ノストスが笑えば笑うほど、力を誇示すれば誇示するだけ、その対面に据えられた、動かぬ人造竜騎とのコントラストは際立っている。……古い場所にあったと言っていた。ああ、もしかしたらこの人造竜騎こそは、本当に当時、その裡に人を宿してノストスの縁者を殺して回ったのかもしれないのだ。名乗りなど、宣誓などなく、突然に。血に濡れ、全てを奪って――だって、それは、捨て置かれた|人類には生存戦争だった《・・・・・・・・・・・》。

 だから?
 そして今更の、人の騎士道が、その大罪に対して何の贖いになろうか。
 あはは、あははと、金杯を掲げ、それを嗤い、人の世を呪い。

 それでも、|彼《ノストス》は決闘を選ぶのだ――蹂躙ではなく。

 ●
 「ノストスさん初めまして」

 「……その小さき身で我が前に立ったことに敬意を表しよう、人の子よ」
 哄笑こそ収めたものの、可笑しくてたまらないとでもいうように。
 「ははは、首が疲れんか。ふむ」
 《|百獣賊《バルバロイ》》の形態とは、彼らの神が選ばれた者に授けた力の具現であるからして、それを解くならば、シルの前に立つのは、一見、人とそうは変わらぬ立ち姿、バルバとしてのノエシスである。
 首や腕は薄い褐色の鱗肌であり、赤い長髪に縁取られた顔には、縦に黒く瞳孔の入るヒスイの瞳が爛々として。そうして、男は太いトカゲのような尾でもって、ピシと地面を打った。

 「お前が我が決闘を受けるというか」
 地竜としての姿をあらわとしても、ノストスの背の丈は2mはあるだろうか。
 「……」
 先ほどまでのコントラストが、嗤い声が、いま自分をしげしげと興味深げに観察する目が、シルの中で、綯い交ぜとなり、知らず目を伏せて。

 (あなたの怒りをわかるとはいわない。
  そんな言葉で落ち着くものでもないこともわかるから)

 「わたしが止める」
 瞼を上げ、シルはノストスを見据えた。
 「……名乗ってなかったね。異世界の精霊術士、シル・ウィンディアです」
 怒りを、或いは、哀しみを――あなたの情念をわたしが引き受ける。ここで、止めてみせる。
 言葉に乗せぬ決意は微笑みに変えて、シルが名乗るならば。
 「ほう、異世界の。この地に何の義理のあるかしらんが……、貴様が贖うと?」
 「えぇ、ここであったのも何かの縁」
 でしょ? と、笑顔のシルの、薄青の髪が風にさらりと揺れる。
 「それに他の誰かの為じゃない――あなたのために、わたしが止める」

 一層強い寒風の吹きぬける間、蒼と碧の瞳がぶつかり合って。

 「お前のような小さき者がどうやって?」
 風の後には、先までのように嘲笑うようにして、ノストスが問うから、シルも失礼な男とむくれてみせる。決闘を持ち出したのはそちらでしょう、と。
 「決闘、受けますよ。……正々堂々ね!
  あ、今のうちに言うけど。わたしは精霊術士。つまり魔法使いの系統だから魔法を使わせてもらうからね」
 そこのところはご承知おきをっ! そう明るく言い切ったシルに、よかろうと返すノストスは、手を掲げ、その指の先、長く黒い爪を示す。
 「貴様の血も、我が同胞の慰めに加えてやろう」

 そうして、あはは、あははと、男は嗤うのだ。

 ――それじゃ、決闘の場でまた会いましょうね。
 さようならは笑顔で。
 踵を返し、公園を去るシルの表情は、風に遊ぶ薄青の髪に隠れ、いま、伺い知ることは出来ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獣騎ドレイク』

POW   :    竜爪猛襲脚
【強靭な脚力を活かした目にも止まらぬ爪撃】で装甲を破り、【鞭のような靭やかさを持つ竜の尻尾】でダウンさせ、【急所を狙い澄ました突き刺し】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD   :    変竜裂破
回避力5倍の【獣の如き俊敏なる地竜】形態か、攻撃対象数5倍の【拳士】形態に変形し、レベル×100km/hで飛翔する。
WIZ   :    翼刃閃
【退化した竜翼を象った肘の翼刃】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【真空波】を射出できる。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠サブリナ・カッツェンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●|慈悲と赦しの欠如《no mercy》

 ゆるさないという方法でしか、ゆるしを請えない滑稽なわたしたち。
シル・ウィンディア
ふふ、小さいからって何もできない。
そんなことじゃ勝てないよ、あなたは。
…まぁ、わたしも負けるつもりはさらっさらないけどっ!

レゼール・ブルー・リーゼに搭乗。
背中の大型スラスターの推力移動で空中機動を行って空中戦を。
相手に突進する形で左手のビームセイバーで切断して斬り抜けるね。
離脱しつつ詠唱を開始。

相手のUCは切断だから、狙ってくるとしたら機動力を奪うかな?
それなら…。
背中のスラスターが破損したら破棄して、右手のロングビームライフルの推力器で無理やり相手の方へ向いて、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストを撃つよ!

…これがわたしの全力。
限界突破の全力魔法の力を遠慮せずにもってけーーっ!!



 ●仰ぎ見る空の青さは同じでも
 加速する、加速する、加速する。
 大気の喜びがそのまま生命を得たようにして、レゼール・ブルー・リーゼがそのサーベルを左手にしっかりと握る。突き出し、全身を矢のように向かうは大地。迫り来る矢を見据える緑光の単眼は、交差させた腕に溜めた力を、インパクトのタイミングにあわせ解き放つ。

 空から舞い降りるものと、それを受け止める大地と。
 
 轟音。上がる土煙は一直線に。衝撃を逃がすため太い尾で、大地に深い溝を刻みつけながら、ずり下がるノストスに対し、同じく衝撃を受け流すように空へ舞い戻るレゼール・ブルー・リーゼ。
 ひたむきに切り結ぶ、正々堂々の力比べ。ノストスは必滅の相手であるという使命を見失うわけではないけれど、身の内に広がっていく透明感――闘いの《純粋》に。シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は、愛機の中、知らず口の端に弧を浮かべる。
 
 ――始まりの笑顔は、そうではなかった。
 小さいだなんていわせない。
 『そんなことじゃ勝てないよ、あなたは』
 負ける気はさらさらないといった時、うまく笑顔に載せられていただろうか?
 決闘に篭めた|決意《ねがい》を。

 宣誓の別れ際。叶うならその場で虐殺を尽くしたかったのかもしれないノストスの、けれど決闘を選んであはは、あははと狂ったような、あの笑い声。彼の望みは看過できない、巡る因果に今を生きる誰を責めることも許しはしない。だけど、でも……。笑顔を復讐と狂気で塗りつぶして、彼に終わって欲しくなかった。

 だから、全力。正々堂々の闘いを。全てを削り落とす、その純粋を願って――。

 それから、何合、切り結んだろう。
 空と大地は交わることは決してない、彼方に引かれる地平線こそはその証で在る。それでも、雨がそうであるように、雪がそうであるように、日差しがそうであるように、切り離されてなどいないから。世界はその全てを抱えて一つであるから。

 「いまっ!」
 「させるかっ!」
 揺らいだとみえたノストスに追撃をかけて追った先、彼の爪がそれを嫌して、虚しく空を斬って――。
 「っ!」
 いまや大気と融け合い交ざりあって空の申し子であるような、レゼール・ブルー・リーゼの翼を、遂にノストスの真空刃が捉える。
 はははと笑うノストスの、声色は単純な喜色に満ちていた――フェイントは技術であるから、うまくいって子供のように。……多分、こういうことを望んでいたのだ。だが、その屈託ない笑い声が、酷く胸を突いて、シルは顔を瞬間、歪ませる。だから、瞬きをひとつ。

 笑顔を浮かべろ、辛い時こそ。

 「まだだよっ!」
 真空刃で壊れた背中のスラスターは破棄してしまえ。もう頼れぬならば少しでも軽やかにある為に。同時右手のロングビームライフルの推力器を解き放つ。ビームが虚しく地面を撃つとしても、その反動を頼みに、まだ落ちない。堕ちないで。

  空の申し子で居続けて頂戴、レゼール・ブルー・リーゼ。力を貸して!
  |わたし《・・・》の全力を届けるためにっ!
 
 詠唱はそして叶う。
 炎に、水に、風に、暁の光と宵の闇と――そして大地に捧ぐ祈りが、空に|在るべき《ほし》形を結んで。

 「六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ!」

 持って、逝け。
 全身全霊ではない。己の限界をも突破して放たれる巨大な魔力砲撃は、貴方への手向けに、と。

 それで、絶望と悲嘆に血塗れた|足元《かこ》ではなく。
 ノストスは、懐かしくも、新しい、どこまでも澄んだ青い空を仰ぎ見て――。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
夫の律(f 38364)と盟友の麗奈(f44908)と参加

(箒で飛んできた盟友をみて目を丸くする)え?ノエマと遺跡を見たいからきた?まあ、確かにすごいところだね、そこ。箒は降りた方がいいよ。上空から叩き落とされるからね。

キャバリアは使い慣れないからね、生身で戦った方がいい。律が接近戦引き受けてくれるので私と麗奈で肘の翼の対処をしよう。単独だから薙ぎ払う軌道は読みやすい。【残像】【迷彩】【心眼】で攻撃を回避。真空波のダメージは【回復力】【オーラ防御】で軽減。

律の負担もあるし、麗奈の安全もあるからね。攻撃は手加減しないよ。全力の光焔の槍で攻撃!!

手加減無しといったからね。こちらも譲れない!!


真宮・律
妻の響(f 00434)と親友の麗奈(f 44908)と参加

リーチも長い、動きも早い、手数も多いと。さすが1人で乗り込んでくるだけあるな。(後ろから箒で飛んできた麗奈をみて)まあ、確かにここは麗奈さんがすきそうだな。とりあえず地上に降りて響と共に後ろへ。

この連続攻撃は1人で引き受けた方がいいな。キャバリア使わない方がうごきやすい。

火雷の意志発動。【残像】【迷彩】【瞬間思考力】【勝負勘】【心眼】をフル活用して攻撃全部喰らわないように気をつける。ダメージは【オーラ防御】【回復力】で凌ぐ。

さすがに強いな。でもこちらも意地がある。【限界突破】で【切断】!!全力で剣を振り抜く!!


神城・麗奈
盟友の響(f00434)と親友の律(f38364)と参加

古き遺跡の町。興味があってね。遅まきながらきたらすでに戦場に響と律が赴いたときいてね。箒でかけつけてきた。(思わず箒からおりる)危ない。叩き落とされるところだった。

私は近接戦は無理だね。律、前衛引き受けてくれてありがとう。リーチがながい攻撃だが大きいのが単独で空とんでれば軌道はある程度読める。

もちろん、不意に真空波が届く可能性があるので、【身かわし】【魔力防御】【回復力】【オーラ防御】で身の安全をはかる。

でかいのでヤドリギ刺し放題だね!!【高速詠唱】でソーン・オブ・ミストルティン!!響と律の援護をする!!



 ●きっとそれが必要だった。
 「話が違うのではないか」

 その対象のないというのに切り裂くようにしてノストスの爪が|空《くう》を横薙ぎすれば、応えて現れる真空刃は――赤銅色の大剣と、赤熱し冬の冷え切った空気を揺らめかす槍を構える二人、対峙する真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)と真宮・響(赫灼の炎・f00434)の頭上を越えていく。

 「麗奈さん!?」
 「降りて、箒から!」
 律と響が口々に、同時に。
 真空刃の軌跡を追い、仰ぎ見る空に浮かぶ箒は、軽やかに刃の間を抜けて。危なかった、なんて口では言いながら、すとんと降り立ち、箒をついて、にこり。
 「二人がいるって聞いて」
 新たなる参戦者――神城・麗奈(天籟の氷華・f44908)は、あっけらかんとそう告げた。

 なんだってここにと庇うように寄り添った響が問えば、街の見物にと神城。それは、まぁ、彼女の好みそうな世界、彼女の好みそうな街ではあるのだけれど、よりにもよって、今。
 頭の痛いことと、その言葉は飲みこんで。そう、頭を抱える暇はない――律がノストスに向き直る。この事態を、彼はどう評価する? 決闘を認めぬとどこかに、地中にでも逃げ隠れされたならやっかいなことになる。

 「貴様ら人間は変わらんのだな。わらわらと群れて、誇りもなにもなくっ! 宣誓を汚すか!」
 一方で、この奇妙な乱入と派生したこの僅かの間は、ノストスにとっては、思いがけぬ貴重な時間となった。先までの闘いの傷こそ癒せぬでも。気に食わぬ風を装い尾を振り、軽く跳ねて足の、体の痛みを、状態を、確認する。あまりに苛烈だった先の一戦。
 (地竜や拳士の形態は、最早取れぬな……)

 実のところはその意味で苛々とするノストスと対照的に、そうとは知らぬ律は、敢えて作る薄ら笑いでいう。
 「生憎、俺たちは《騎士さま》じゃあ、ないんでな」
 気を引かねばならない、どのような謗りを受けようとも。
 「傭兵だ」
 それは卑下ではなく、宣言。ノストスの結論に関わらず、我々はお前を討つと。その律の横に、響が再び並び立つ。
 「お前が、ノエマの、この世界を今生きる人を殺してまわるというのなら」
 止めるだけだと槍を突き出して。
 (さて、うまく煽れたものだろうか?)

 「誇りもなく、手段も選ばんと。よかろう、それでこそだ。
  あの時と同じ、そのような貴様達を殺してこそっ――!」
 どうせ殺せるだけ殺すつもりだ、ニンゲン共を。まだ、闘える。殺せる。殺してやる。
 「|同胞《はらから》の魂も慰められようぞ!!」

 言うが早いか、姿勢を縮めたノストスがまるで地の上を滑る砲弾のようにして、爪を前に、錐揉み飛んで来るのだから、三人散開せざるを得ない。
 いや、違う。何せ急に来た神城もいて、打ち合わせも何もなかったけれど、どの道この形になっていただろう。息の合った者たちの、信頼の形とは――。

 ノストスの巨躯に見合わぬ圧倒的なスピードと、巨躯だからこその|間合い《リーチ》の掛け合わせ。一撃でもまともに喰らったならば先はないと思わせる爪撃。
 (一人でも、為せるというだけはある)
 対面して請け負うのは前衛を務める律だ。普段以上、でなければとても適わぬ相手。積み上げてきた傭兵としての技量の鋭さを雷と例えるなら、決して屈せぬ心持を炎のように盛んにして。纏う炎雷のオーラが可能にするのは、今振り下ろされた爪を紙一重と体を横に交わすだけの視力であり、剣であえて土を薙いで土煙といえるだけの土を巻きあげる力でありそれを迷彩のようにする工夫であり、そして。

 爪、それをいなす律、正に腹を横に向けたからこそ、腹を貫かんと襲う鞭の如くに振るわれる、ノストスの尾。
 (――待ってました!)
 胸の裡でいうのは勿論ノストス――ではない。その口は高速に詠唱をする、神城だ。律のしっかりと注意を引いたからこそ再び空に舞い戻れた神城には、律のたてた土煙のあろうとも状況が|神の視点《俯瞰》で見られるのだ。そして機を逃さず、冬の雪に代わり、地上へ降り注ぐヤドリギの枝。
 (律、前衛、ありがとう)
 尾に絡みつき、地に縫いとめてその動きを捕縛する。意識の外からの、思いがけぬ拘束。
 「こんなものっ……!」
 そう、振り払えるだろう、ノストスは。だけど動きをとめたこの一瞬。
 「そこだっ!」
 飛び上がった竜騎士は、槍を左の翼――だったものへ押し当て、貫けず、だが。
 赤熱する槍、金属と見えるそれは匂いだけは肉の焼けるようであって。
 「全力だ、取っときな!」
 ブレイズランスの周りに輪と浮かぶ、5本の槍が今同じ場所を穿って、遂にそこへ穴を開ける――!

 振り払われ、どっと鈍い音と共に転がる妻を、駆け寄った律が抱え起こして。その時、僅かに体を揺らしたノストスを見るから、神城が|上から《・・・》ものをいう。
 「あなた、許してやろうって気には、ならないの?」
 神城は知らないだろう。ノストスが自分を見逃す気にならないかと真宮夫妻に問うたことは。
 「ふざけるなっ……!」
 「情ってものが、わかるなら」
 「じゃあ、貴様らは許したか! 情を知りながら、寄ってたかって、年端も行かぬものから、立てぬものまで全部っ……!」
 「……何故、人をそこまで追い詰めた?」
 そう零す律はもう響の肩を抱いてはいないから、槍の穂先がノストスを指して。
 「力に……、あんたたちが誇りだ、名誉だ、神だとかに酔ってる間。人は生にしがみついたの、どれ程みっともなくても、卑怯でも、浅ましくとも、惨めでも」

 何が切っ掛けかなんて、今更。
 殺すために殺すことと、生きるために殺すことのどちらが許されるということもないだろう。
 それでも、きっと。これが、たったひとつ、道を分けた何か。

 うるさい、うるさい、うるさいと、子供のように喚き散らして、ノストスが腕を振るならば、残った右翼は真空刃を乱造して。
 「殺してやるっ……!!!」
 だから、ヤドリギの枝が氷結して関節を止めるなら、律が大剣で胴を抜き、くの字に曲がるボディの脇を響の槍が穿つ。
 身に、心に、血を流しても、明日を生きるために。

 我々には|闘うより他に《No Mercy》最早道はないから――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…何も言うまい
…私は貴様を屠る為にここへ来たのだ!
処刑人として再び葬り去る為に…死と救済を齎す為に…!
さぁ行くぞ…我が名はアンナ!処刑人が娘也!

【ゲヘナ・フレイム】を発動、地獄の炎を身に纏い
鉄塊剣を抜き振るい敵と相手しよう

ダッシュで戦場を駆け抜けジャンプで飛翔
敵の爪攻撃を経験による気配感知と心眼で回避し鉄塊剣を振るい
装甲破壊と鎧砕きで敵の尻尾を部位破壊で切り落とそう

貴様等が過去に…
嬲り殺しにされた事は…身につまされる話だ…私の世界もそうだった…
だが私は処刑人だ…過去となり仇名す者となった貴様等を屠るのだ…
理不尽か?理不尽だな…だから…闇へ帰れッ!

鉄塊剣を胸深くに突き刺してやろう…!



 ●
 先には炎に照らされ美しい光沢であった獣騎表面は砂塵にくすみ輝きを失い、幾筋も傷の入り、へこみ、一部は欠けてすらいる。最早尾の力だけで己を支えぬものとみえ、常に足を大地に下ろして、荒い息遣いに呼応し揺れる肩。人の何倍もの巨躯であるのに、そうと感じられないほど――。
 「……っ」
 開きかけた唇は、言葉を吐く代わり、小さく短く息を吸い、縫いとめる。それでも止めぬとぎらつく単眼は告げているから、掛けるべき言葉などきっとなくて、言うべき言葉がただ在るだけ。

 「……約束どおり、ここへきた」

 抜く鉄塊剣の切先は、その緑光を指し。
 そして柄は、ぶわりとあがる、極炎の球の中央を指す――仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)は、声を張り上げた。

 「……我が名はアンナ! 処刑人が娘也!」

 ●ひとこと、それだけをつたえたくて。
 あの時と同じに、容赦なく翳り、暮れゆく冬の日に。
 振り下ろされる爪の強撃は、ここまできてなお、これほどの力かと。覚悟の分だけ纏う炎の加護ある身なれど、まともに鉄塊で受けたならば、腕に痺れを感じるほど。ならば、と飛翔すら可能となっている身体能力、押し潰さんばかりの力の分も膝を曲げ、それをバネに飛び上がる。爪の中を剣が滑り、擦れる二つの間に火花の飛んで、切り上げた剣はノストスの胸部を裂き、一筋を描いた。
 ぐらりと|傾《かし》ぐノストスは、背を地に着ける屈辱を甘んじる形で、股の内からしなやかにその尾を振り上げ、紅球へと振り下ろし――。
 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ」
 振り抜かれた鉄塊。切り離された尾の行き先を、仇死原の目が追う。太さと重さの分だけ充分に地面を揺らして。冬に凍える硬い大地へ突き刺さるそれは、ボロボロと土くれとなって、主に先んじて還っていく――彼の大事だったもの達の元へ。
 「貴様等が過去に……」
 何も言うまいと、だけど。
 苦悶の声を上げ、爪を土に立てて虚しく搔きながら、立つ意志を示すも、それを簡単には実現できぬほどに、限界を迎えているノストス。もう充分だろうと言えたなら。
 彼の境遇は、仇死原にとって、彼女の世界にあっても、珍しい光景ではない。
 《ありふれた悲劇》を前に、今地に伏せているのはノストスで、諦めろと蠢く爪の一つを切り落とすのは仇死原だ。だから、先の言葉を継ぐのは、止めた。代わりに言葉に出来たのは。
 「理不尽だな」
 「理不尽な、ものかっ……」
 仇死原を薙ごうとノストスは反対の腕を振るけども、爪は炎を揺らめかすだけ。余裕を持って跳び下がる仇死原の前で、どうにか、ノストスがその勢いで、体を横とし、膝をつく。それを、ただ、見ていた。一族の、それを名誉というのか誇りというのか、知らないけれど。このような決闘を選んで、独り、立ち上がる姿を。
 「……何故?」
 「なぜ? 獣騎たる俺は一族の為にと……、俺だけだ。俺だけが、誇りなど、と言う、安寧の中で、死んで」
 
 ――それで、どうなった? 残された子らは、親は? 獣騎すら適わぬと知った時の絶望は如何ほどだったか、俺が彼らの|希望《こころ》を殺して、人が彼らの肉体を殺したのだ。

 「だから、俺も二度、死ぬ、べきだ――道理が、通ってい、る、だろう」
 今日向かい合った全ての結果、再びの死を前に全てを剥がされ思い至った、これがノストスの真実だ。真っ直ぐ立つことすら覚束ないで、酔っているかように、ケタケタと彼は笑う。
 「……いいや、理不尽だ」
 ここでかつておきたことも、今日起きたことも、ノストスが他に許しを請う方法を知らなかったことも。今更何一つも変えられない、変えさせるわけにはいかないことも、全部。
 「誇りなんて、誇りなどっ……」
 仇死腹は小さく頭を振るだけ。あははと笑いながら、爪をギリギリと音のするほどに握りこむ、ノストスに。誉れをこそという彼に、それ以上を言わせるわけにはいかないから、柄を両手でしっかりと。瞬間、閉じた瞼の裏。

  なぜ、こんなおはなしをきいて。
  なぜ、こんなことをひきうけないといけないの?

 暗い世界で、なお暗い目をした少女が問う。

 「わたしは処刑人だっ……!」
 理不尽。
 だからこそ、処刑人はいるのだ。再び葬り去る為に。死と――救済を齎す為に。

 見開いた目。
 飛び上がって、引いた諸手、突くようにして振り下ろす鉄塊はノストスの胸を今度こそ貫いた。彼の還るべき大地と、彼を結びつけるようにして。
 解ける獣騎。
 伸ばされた腕は、冬の夜照らす仇死原の極炎に何を見出してのものだっただろう。

 まるで誰かの手をとるような、とってもらうような優しさで――それもすぐに、地に落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月30日


挿絵イラスト