アンコールはいらない
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「よぉ、来てくれてありがとうよ。早速だがサイキックハーツ世界の事件を予知してな。
手前らの力が必要だ、いっちょよろしく頼むぜ」
月形・千影(Bathory’s Embrace・f42476)は自らの呼びかけに応じた猟兵にそう礼を述べると、自らの見た予知を語り始めた。
「行って欲しいのは北海道は札幌、
八軒。新興住宅の建ち並ぶそこの一角に壮大な廃墟群があるんだが――ここについ先日、突如「異形の建築物」が出現した」
複数の高層ビルが融合したかのようなそこは、かつてサイキックハーツ世界にあり、そしてダークネスによって失われたブレイズゲート「慈眼城」によく似ているのだと千影は言った。
「問題は、ここが正確には「ブレイズゲートじゃねえ」ってこった。ただ単に、この札幌の街に「慈眼城」……紛らわしいな、こっちは「八軒慈眼城」とでも呼ぶか――が現れた。そして、ブレイズゲートじゃねえからこそ中にいる
ダークネスは分割存在にもならなけりゃあ、外にも出てこれる。実際、俺の見た予知じゃあ外に出てきた
ダークネスが近郊に住む住人を襲っていやがった」
11月半ば。北海道ではちらほらと雪も降り出し、もう少し経てば雪に閉ざされる時期も近いというころである。
予知の中で近郊の住人を襲っていたのは「殺人ドクター」と呼ばれる六六六人衆番外の医師。獲物とする患者を物色して捕らえ、『手術』と称した拷問によって、苦痛の悲鳴を引き出し切った後に殺害するのが手口だ。彼らが近隣の住民を襲うその光景は、今から現地に向かえば阻止することが叶うだろう。まずは八軒慈眼城の外に出てきた彼ら殺人ドクターを排除して欲しいというのがグリモア猟兵からの頼みだ。
「そして八軒慈眼城の中にいるのはソロモンの悪魔フュルフュール。殺人ドクターたちと同じく、分割存在にはなっちゃいないが、集団で現れる。こいつら集団の敵はどちらも一体から三体程度で行動してるから、はち合わせた時には気をつけろ」
そして、と千影は憂い顔で言う。
「慈眼城というからには、最深部にはあの女がいる。ブレイズゲート「慈眼城」の主だったあの女――
ダークネス「聖女ガラシャ」がな」
聖女ガラシャ。慈眼城を出現させ、ダークネスたちの拠点を築こうとする事件を起こす、戦国時代の姫の姿をした羅刹。
「細川ガラシャは本名細川
珠。細川忠興との結婚前の名前を明智珠、細川ガラシャってのは本能寺の変を起こした明智光秀の娘だ。そしてサイキックハーツ世界では、明智光秀と恐らく同一人物だったらしい「天海大僧正」ってのが慈眼城の裏にいたっていう話もあるな?」
……まあ、今回の予知では「天海大僧正」の存在は引っかからなかった。だからそいつまで出て来ることはないだろう、そう千影は言う。これは、「聖女ガラシャ」による単独犯行である、と。
「まあ、
手前らにやってほしいのは三つ。「八軒慈眼城」の外に出て来てる「殺人ドクター」の集団をぶちのめすことと、「八軒慈眼城」内部にいる「フュルフュール」の集団をぶちのめすこと。そんで最深部にいる「聖女ガラシャ」をぶちのめすことだ。こう言っちまえば単純だろ」
そういうと、千影はアイアンメイデンを取り出した、扉が開けば、そこに棘はなく転移の門が広がっている。
じゃあな、頑張って来てくれよ、
猟兵。
そして、アイアンメイデンの内側から光が放たれた――。
遊津
遊津です。サイキックハーツのシナリオをお届けします。
第一章第二章集団戦、第三章ボス戦の三章シナリオとなっております。
「★注意★」
マスターの巨大ロボットへの知識が滅茶苦茶なため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。
「一章 戦場について」
場所はサイキックハーツ世界の札幌、八軒となります。
一章の戦場は「八軒慈眼城」の外となり、集合住宅などがある住宅地です。
オブリビオンがエスパーを襲い出す前に現地に到着できたため、現地住人のエスパーは
灼滅者が助けに来てくれたものと思い大人しく屋内に避難しています。避難指示などをプレイングに書く必要はありません。(エスパーはユーベルコード相当の攻撃でしか傷ついたり死ぬことはありません)
曇天ですが昼間であるため太陽の光は差しており、暗闇ではありません。
戦闘に使えそうなものは住宅地にあるものなら何でもありますが、何かを利用する場合には「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してください。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
時間との勝負となる為、事前の準備行動は行うことができません。
何らかの準備行動を行いたい場合(「体の“パフォーマンス”を良くしておく」など)、戦闘行動と並行して行う事となります。
「一章 集団敵 殺人ドクターについて」
治療に訪れた患者を殺害する、六六六人衆番外の医師達です。表向き普通の医師として過ごしながら獲物とする患者を物色して捕らえ、『手術』と称した拷問によって、苦痛の悲鳴を引き出し切った後に殺害します。
今回は八軒慈眼城から溢れ出し、「患者」を求めてうろついています。
猟兵一人につき一~三体現れます。猟兵がチームを組むなどして増えた場合は敵も増える可能性があります。
オブリビオンのレベルは猟兵のレベルと同じものになります。ご注意ください。
猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで戦った場合でも、彼らは手にしたメスなどで攻撃してきます。ただし、ユーベルコード、或いはプレイング状況によってはユーベルコードを使わせないといったリプレイになる場合もあります。あくまでもユーベルコードを使わないだけでは棒立ちのやられっぱなしにはならないという意味です。
「二章 集団敵 フュルフュール」
ソロモンの悪魔の女武者です。大昔は氷の魔術を操る強大な指揮官でしたが、ブレイズゲートの影響で分裂弱体化してしまい、オブリビオン化した現在でもその状態で出現しています。
詳細は二章の追記にて。
「三章 ボス敵 聖女ガラシャ」
無数の建物が融合した「慈眼城」を出現させ、ダークネス達の拠点を築こうとする事件を起こす、戦国時代の姫姿の羅刹です。
詳細は二章の追記にて。
当シナリオのプレイング受付開始は、11/18(月)朝8:31~となります。
上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『殺人ドクター』
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POW : 切断手術
【手術用メス】が命中した対象を切断する。攻撃前に「【これより手術を開始する】」と宣告すれば命中率上昇、しなければ低下。
SPD : メス・レイン
戦場にレベル×5本の【手術用メス】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【生命力に溢れた】対象を優先して攻撃する。
WIZ : 緊急縫合手術
【手術用の縫合糸】が命中した敵の部位ひとつを捕縛し、引き寄せる。
👑11
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アハト・アリスズナンバー
遊津マスターにおまかせします。かっこいいアハト・アリスズナンバーをお願いします!
「私の手が必要ならば、お貸しします」
無表情、無感情に見える、死んでも次の自分が即座に故郷から転送される量産型フラスコチャイルドです。
一人称は「私」、口調は誰に対しても「です、ます、でしょうか」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的には手が必要なら貸す、といったスタイルでユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず突撃します。
ただ、アリスが関連してる場合は積極的に手を貸します。
その他の部分はマスターさんにお任せします
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「これが今の札幌。……寒いですね、思ったよりも。サイキックハーツという世界だからでしょうか、それともオブリビオンが出現させたという「慈眼城」のせい?」
アハト・アリスズナンバー(これが私だから・f28285)は、札幌市八軒の市街地に降り立ってぶるりと震える。実際のところこの日のサイキックハーツ世界札幌の気温は他の世界に存在する「札幌」の気温とそう変わらない。それでもアハトがこの地を格別「寒い」と感じたのは、――寒いのだ。既に北海道は。本州以南がどんなに「令和ちゃん!令和ちゃんねえおかしい!日本には四季ってものがあってね!?」って感じのめっちゃくちゃな気温変化をしていようが、北海道は11月ともなれば順調に日々寒くなっている。そんなわけで、その日の札幌・八軒は普通に寒かった。
「まあ、多少の寒さで機動に問題が出る装備をしてはいませんが……接敵する前に、「八軒慈眼城」なるものが見えればいいのですが……あ、あれでしょうかね」
ぐるりとあたりを見渡すアハト。
ダークネス出現によってエスパーたちが屋外に避難し引きこもった住宅街からは、高層ビルをでたらめに継ぎ合わせたような建築物、「慈眼城」の先端が見えた。
「最深奥部にいるという
ダークネス「聖女ガラシャ」のことは気になりますが……まずは、目の前の敵を片づけるべき、でしょうね」
今にも雪の降り出してきそうな灰色の空の下。まだ乾いたアスファルトの上を返り血でぼたぼたと濡らしながら、血濡れの手術着を纏った
ダークネス六六六人衆番外「殺人ドクター」が一体、アハトに近づいてくる。片手にはメス、もう片方の手にはチェーンソー。
被害者を
手術する気概に満ちた姿だ。
(グリモア猟兵の方は今の時点で被害者は出ていないと言っていましたね、ならば、あの血は実際の被害者のものではなく、オブリビオンの肉体に付属しているものと見て問題ないはず)
「ならば戦闘を開始しましょう」
アリスズナンバーが使用するために最適化されたアリスランス「アリスズナンバーランス」を片手に、殺人ドクターの胸を穿ち抜かんとするアハト。白衣の殺人者は手術用マスクの下からくぐもった声を漏らす。
『こ、こここ、これより手術を開始、すすすするるるるるぅぅぅぅぅ――』
引き攣れた宣告と共に手術用メスが複数投擲される。一つ目は頭を捻って避け、二つ目のメスが踏み込みを邪魔するように足元へ突き刺さる。三つ目のメスを避けようしたところで、アハトの脇腹に鋭い痛みが走った。派手に投げられた三本のメスに遅れて素早く投げられた四本目のメスが掠めたのだ。
「最初の投擲は囮、ですか……小癪な真似をしますね、ですが、どうです……!」
アハトのアリスズナンバーランスは殺人ドクターの胸を貫いている。しかしそれを受けてなお、狂気の医者はマスクの下でくふくふと笑ってみせた。
『しゅ、しゅ、しゅしゅしゅ手術開始ししししししし死し』
アハトの胸から鮮血が噴き出した。殺人ドクターの手にしたチェーンソーの刃が、脇腹から骨を切断して心臓まで届いている。アハトの槍は殺人ドクターの胸筋に締め付けられ、抜くことができない。
「しまっ……」
『ししししししゅ手術完了ぉぉぉぉぉぉ!!』
アハトを
殺害し、狂喜にむせぶ殺人ドクター。しかし、死んだはずのアハトの手がその首を掴む。
「……っ痛い、ですね……死ぬじゃない、ですか……!」
刹那、アハトの肉体が殺人ドクターごと爆散する。血飛沫と肉塊、そして炎が飛び散る路上に、上半身を吹き飛ばされて下半身だけでふらふらとそれでも立っている殺人医。その背中から――
「何ですか、まだ動いてるんですか。こっちは死んだっていうのに、しぶといですね」
傷一つないアハトがその下半身を蹴り崩し、どしゃりと斃れた肉塊に槍を突き立てる。
――自身が瀕死になることで敵を道連れに自爆し、別個体の「自分」を呼び出すユーベルコード【オウカ・コード】。
アハト自身のものも含めた血の海に沈んだ殺人医を一瞥し、消えゆくそれを確認すると、アハトは八軒慈眼城のある方向へと歩き出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
こっちの世界も冷え込む時期は同じなんだな
共通点が多いのも縁ではあるし、ダークネスの陰謀止めてやらねえと
何かと似た空気はあるし、これがうちの世界のオブリビオンを止めるヒントになるかもしれねえもんな
【戦闘】
殺人ドクターと聞いてはいたが、治す気は一切ねえな、こいつ
600何人衆って殺人集団なら、さもありなんか
手術用メスを「心眼」「見切り」で回避しつつ、複数の敵を近くに巻き込むように近接戦闘を挑む
UCで作った炎のエネルギーを「残像」として利用し、かく乱させる
後はUCの「グラップル」を叩き込んで倒していくだけだ
札幌の街と言えば、こっちの世界でも昔大きな戦いがあったな
つくづく大ごとと縁のある場所だぜ
●
「うぉ寒っむ……こっちの世界も、冷え込む時期は同じなんだな」
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は転移してくるなり己の身を出迎えた北風の冷たさに身を震わせ、はあ、と両手に息を吐きかける。
「
うちの世界と共通点の多いのも縁ではあるし、ダークネスの陰謀、止めてやらねえとな」
魎夜の出身であるシルバーレイン世界と、このサイキックハーツ世界では何かと通じるものがある、と彼は思っていた。もしかしたらこの世界で起きたこの事件が、シルバーレイン世界のオブリビオンを止めるヒントになるかもしれない、そう考えてやってきたのだ。
「札幌の住宅街か。札幌と言えば、
こっちの世界でも昔大きな戦いがあったな。つくづく大ごとと縁のある場所だぜ」
札幌はシルバーレイン世界、サイキックハーツ世界、そしてUDCアース世界においても二百万人を超える人口を有する大都市だ。日本三大、四大都市までであれば他の都市が挙げられるが、五本の指にくらいは入る政令指定都市である。ゴーストとダークネスの違いはあれど、日本で大きな事件を起こそうとするなら候補に選ばれてもおかしくない都市なのだ。とはいえ、
二つの世界で過去に起きた大きな「戦争」といえる大事件には、必ずこの札幌の街があげられる。何らかの因縁があるのか、そうでないのかは――魎夜では及ばぬ、大いなる意志ぞ知る、というものだろうか。
さて、そんな大都市である札幌の中でも少し中央から外れた八軒は今は静まり返っている。既に「八軒慈眼城」から溢れ出したダークネス「殺人ドクター」がうろついている中、エスパーたちは屋内に避難し引きこもっている。彼らは信じて待っている、
灼滅者たちが必ずやってきて、自分たちを助けてくれるのだと。
「俺は
灼滅者じゃあねえが、その信頼には応えてやらねえとな……さて、おいでなすった」
住宅街の合間から見える巨大な建築物、八軒慈眼城を目指して歩いて行った魎夜は、目の前に血まみれの手術服を纏った医師姿のダークネス「殺人ドクター」を発見する。全く同じ姿の医師たちが三体ほど、冷たく乾いたアスファルトの上にぼたぼたと血を零しながら歩いていた。
(先手必勝だ――
起動――!)
大声をあげて気づかれないよう無言でイグニッションカードを掲げると、魎夜の体が武装状態になる。そのまま【
太陽のエアライド】を発動させて、速度マッハ5以上の速度で熱き魂を宿した炎に包まれた拳を繰り出し、一体の殺人ドクターの胸を貫く。不意打ちに対応できなかったその一体は心臓を拳で穿たれ、燃え上がって灰となって一瞬で消滅した。それで魎夜の存在に気づいた二体の殺人医はその場にメスの雨を――二体の同時使用により、正確には1550本ものメスを降り注がせる。それを魎夜はマッハ5の拳の軌跡で残した燃え盛る太陽のごときエネルギーを使用し、時には長き過酷な旅の中で会得した心の目に頼って躱す。多少の傷を負うも、銀誓館学園の能力者として歴戦の戦いを繰り広げてきた魎夜である、この程度の痛みならばいつだって受けてきた。今更大したものではない。
(っ、殺人ドクター、とは聞いちゃいたが、治す気は一切ねえな、こいつら……まあ、六百何人衆だかっていう殺人集団なら、さもありなんってやつか……!)
そう胸中で毒づきながら、そのまま初撃で作り上げた燃えるエネルギーの軌跡を利用し、魎夜は高熱の拳を殺人ドクターたちに叩き込んでいくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ネーラ・ユールニールス
まあ。羅刹の姫にソロモン悪魔、666人衆…賑やかですわね
この手術刀の雨は厄介だけれど
私の血を効率よく使えそうね
少し痛くても堪えましょう
それでもやられてばかりはいないわよ
オーラ防御と見切りで致命傷は避ける
ビアンクルを傘型の盾に武器変形して
敵のメスを受け流す
そしてそのまま突進するように接近
近距離の射程に敵を捕捉したらUCで攻撃
さあ
先程の傷のお礼をしましょう
流血は霧状になり敵の目や耳へ侵入し毒を撒く
他の血を短刀のように変え敵を裂く
ビアンクルを槍に戻し突き刺す
ごめんねドクター
淫魔の小娘は殿方を翻弄する修練も積みたいの
幸い、あなたも私も血が好きみたい
良かったわドクター
あなたは大人
小娘の鍛錬に付き合ってね
●
「羅刹の姫にソロモンの悪魔、六六六人衆……賑やかなことですわね」
ネーラ・ユールニールス(淫らな薄荷・f44242)は札幌・八軒の住宅街に降り立ち、出会うだろう敵のことを想ってくすくすと笑う。ネーラはダークネス、淫魔である。
灼滅者になることもできずに闇落ちした女のダークネス人格であり、そのまま肉体の主導権を握った――あるいは押し付けられた、或いは移行された彼女は、けれどダークネスが
灼滅者たちと激戦を繰り広げていた最中も淫魔のダークネスによく見られたように戦いを望みはせず――そして、猟兵として覚醒した。ゆえに、彼女はブレイズゲートに近づくようなこともなかった。これほどに多種のダークネス種族と同時に敵対するのは彼女にとって珍しいことでもある。
もっとも、この「八軒慈眼城」はグリモア猟兵が説明した通りにブレイズゲートではなく。だからこそダークネスたちは集団で現れども分割存在ではなく、そして一部は「八軒慈眼城」の外に彷徨い出て来る。今、ネーラの視界の向こうにいる、手術着を返り血で染め上げた二体の「殺人ドクター」のように。
猟兵たちが予知よりも早くこの場所に到着できたからであろう、犠牲者は出ていない。エスパーたちは
灼滅者の助けが来ることを信じて、屋内に引きこもり避難している。ならば、ネーラがたとえ
灼滅者ではないとしても、その信頼に応えて屋外をうろつくダークネスを倒すのが筋というもの。
殺人ドクターたちはネーラの姿を認めるや否や、同時にメスの雨を降らせてくる。合計一三三〇本のメスがネーラの体に降り注ぐ。人であったなら、否、エスパーであってもそれは死んでしまう傷であっただろう。だが、ネーラはダークネスである。自らの身にオーラの防護膜を纏い、そして踊るような動きで急所を避け、多少の傷の痛みには耐えながら、鋏の形で持ち歩いている武器「ビアンクル」を傘の形に変形させて受け流す。そのまま一体の殺人ドクターに突進し、傘の先端で殺人医の目を潰すようにして、己のユーベルコードを発動させた。
【
華は裂くほどに紅く】。メスの雨を受けて流れ出した自らの血を霧状に変化させてドクターたちのむき出しの目や耳から這入りこんで毒を撒き散らす。あるいは血を刃に変えて斬り裂き、「ビアンクル」をそのまま槍に戻して潰した目から脳を穿ち抜く。
一体の殺人ドクターはそれで斃れ、血だまりの中で消滅していく。もう一体、まだ槍の一撃を受けていない方は耳目から入り込んだ毒に自らの顔を掻き裂いて苦しみ、また血の刃によって傷ついているが――まだ、斃れてはいない。まだ、死んではいない。
ネーラはそちらの殺人ドクターに対し、蠱惑的な笑みを浮かべて告げる。
「ごめんね、ドクター。淫魔の小娘は殿方を翻弄する修練も積みたいの――幸い、あなたも私も血が好きみたい。良かったわ、ドクター」
――あなたは大人。だから。
「小娘の鍛練に、つきあってね?」
花がほころぶような笑顔で、ネーラは六六六人衆に死を告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
九段下・鈴音
遊津マスターにおまかせします。かっこいい九段下・鈴音をお願いします!
『この力を使ってくりゃれ』
『妾が護ってやる。安心せい』
自分よりも他者を優先する性格。
ユーベルコードや技能はどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
性格上他の猟兵をかばうことはあっても、迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エログロはNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
「さて……妾がこの町に着く前に、大体の露払いは終わっておるようじゃな」
九段下・鈴音(黒桔梗・f01929)は札幌・八軒の住宅街に降り立ち、そこここに残る戦いの痕跡を見てそう言った。
既に他の猟兵によって、グリモア猟兵が告げた「八軒慈眼城」の外にうろつき出てきている
ダークネスはあらかた掃討されているようだ。エスパーたちは
灼滅者たちが自分たちを助けてくれることを信じて屋内に避難しており、ふと見やった団地ではカーテンの隙間から年端も行かぬ少年が鈴音をじっと見つめていることに気づいた。
鈴音は少年に手を振り返し、そのまま彼に酷い戦いを見せぬように立ち去る。正確には鈴音は猟兵であって
灼滅者ではないが、この世界のエスパーたちにとってみれば自分たちを助けてくれる者は皆
灼滅者と言っていいような認識である。それをわざわざ訂正することもあるまい。
「さて、もし妾以外のものたちによって外に彷徨い出た
ダークネスがすべて倒されているならそれもよし。妾が先に「八軒慈眼城」とやらの中に一番乗りしてみるのも悪くはあるまいよ」
そう言って、鈴音は住宅街の空に見えるつぎはぎの高層建築物「八軒慈眼城」を目指して歩いてゆく。しかしやや歩みを進めて、鈴音は自分の目論見が達成できそうにないことを悟って眉根を寄せた。もう慈眼城も近くなった頃合いの場所に、まだ殺人ドクターが一体うろうろと
被害者を探して
彷徨いているのが見えたのである。
「ふぅむ。では残敵掃討、と参るかの」
先手必勝、と鈴音は妖刀「竜胆」を抜き、ユーベルコード【
妖刀錬成】によって百四十四にまで複製する。そして念動力によってバラバラに操りながら、まだ鈴音に気づいていない殺人ドクターに対してその半分を突撃させた。全身をバラバラに動く妖刀によって刻まれ、絶叫をあげた殺人ドクターはようやく鈴音に気づき、震える手を上にあげる。途端、降り注いでくるメスの雨。
「おっと、やるのう!これでどうかえ?」
頭上から落下してくる七二〇のメスを、妖刀を操作し防ぐ鈴音。自らの身に纏ったオーラの防護膜によってその肌に傷がつくことはない。メスの雨をやり過ごし、再び鈴音は百四十四の妖刀をすべて殺人ドクターへとぶつけた。
バラバラに動く妖刀が殺人ドクターの振るう肉塊解体用チェーンソーを止め、そのままその両腕を斬り落とす。叫ぶ殺人ドクターに、鈴音は言った。
「おぬし、自分に殺された
患者がそうやって泣き叫んだ時に殺すのをやめたか? やめておらんじゃろ。だからの、妾もやめぬよ」
そのまま妖刀は殺人ドクターをバラバラの肉塊に変える。血の海の中で肉塊はしゅうしゅうと融け、塵へと還っていく。それを横目に、鈴音は当初の予定通り「八軒慈眼城」の中へと入っていくのであった。
「妾が一番乗りじゃ、ぶい」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フュルフュール』
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POW : 螺穿槍
【回転】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD : 吹雪呪
戦場全体に【猛烈な吹雪】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【装備への氷属性付与】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 氷鎧輪
全身を【溶けない氷の塊】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
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ついに札幌の住宅街に出現した「八軒慈眼城」の中に足を踏み入れた猟兵たち。
その中はつぎはぎの高層建築物に見える外観に違わず、その床はさまざまな建築様式がモザイク状になっている。
それでも基礎は盤石であるようで、多少の荒い動きを見せても揺らぐ様子はなかった。
さて、その中にはソロモンの悪魔「フュルフュール」が跋扈している、そうグリモア猟兵は言った。
入り口付近にはいないようだが、ここから最深奥――最上階に向けて進んでいけば、彼女らに会うのは必至。
猟兵達は警戒を怠らず、「八軒慈眼城」の中を進んでゆくのであった。
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第二章 「ソロモンの悪魔「フュルフュール」」が 現れました。
おめでとうございます。猟兵たちの活躍により、札幌市八軒の住宅街に跋扈していた
オブリビオンはすべて倒されました。
そして、外部に漏れだしていた
オブリビオンを駆逐したことにより、「八軒慈眼城」への内部に侵入することが可能になりました。
以下に詳細を記します。
「★注意★」
マスターの巨大ロボットに対する知識がめちゃくちゃなため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。
「戦場について」
戦場となる「八軒慈眼城」は高層ビルやマンションなどがでたらめに継ぎ合わされた建築物です。簡易な迷宮のようになっています。グリモア猟兵の予知では最深奥、すなわち最上階にボス「聖女ガラシャ」がおり、彼女に会うためには階段を見つけて上の階へと昇っていくことが必要になります。
「八軒慈眼城」内は窓から外部の光が差し込んできており、また、炎や人工物によらない光源によって内部は照らされています。太陽の光が差し込んできており、暗闇ではない状態です。
エスパーたちこの世界の一般市民は存在しません。
戦闘に使えそうなものはビルなどの中にあるものなら何でもありますが、何かを利用する場合には「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してください。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
接敵までに時間の猶予があるため、事前の準備行動を行うことができます。(例として準備体操により「体の“パフォーマンス”を良くしておく」など)。ただし、八軒慈眼城の外に出るような行動(例:八軒市街へ出て何か食べものを買ってきておなかを満たすなど)は行えません。当該するプレイングが書いてあった場合、描写は省かれることになります。
「集団敵 「フュルフュール」 について」
ソロモンの悪魔の女武者です。大昔は氷の魔術を操る強大な指揮官でしたが、ブレイズゲートの影響で分裂弱体化してしまい、オブリビオン化した現在でもその状態で出現しています。
八軒に出現した「八軒慈眼城」はブレイズゲートではありませんが、分割存在になったままオブリビオン化し、そのまま集団で襲い掛かってきます。
猟兵一人につき一体~三体と戦うことになります。何体と接敵するかはプレイングやユーベルコード次第ですが、猟兵がチームを組むなどして増えた場合、彼女らの数も増えます。
猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで戦おうとした場合でも、彼女らは手にした槍や吹雪の魔法で攻撃してきますが、ユーベルコード、或いはプレイング状況によってはユーベルコードを使わせないといったリプレイになる場合もあります。あくまでもユーベルコードを使わないだけでは棒立ちのやられっぱなしにはならないという意味です。
当シナリオのプレイング受付開始は、この追記が公開され次第即時となります。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
それでは、「八軒慈眼城」内部に巣食う敵を倒し、最深奥を目指してください。
九段下・鈴音
遊津マスターにおまかせします。かっこいい九段下・鈴音をお願いします!
『この力を使ってくりゃれ』
『妾が護ってやる。安心せい』
自分よりも他者を優先する性格。
ユーベルコードや技能はどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
性格上他の猟兵をかばうことはあっても、迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エログロはNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
「ふっふっふー、一番乗りは気持ちがいいのう」
「八軒慈眼城」に真っ先に乗り込んだ鈴音は鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌さでつぎはぎの床を歩いていた。やはり誰も踏破者のいない新雪に足跡をつけるのは格別の感情がある。まあ、乗り込んだのは鈴音が一番と言っても、八軒慈眼城の内部には既に
ダークネスが存在しているのだが。
「ふむ、というわけで第一城人発見じゃの。さてどうしたものか」
鈴音の視線の先には戦国時代めいた兜をかぶり甲冑を身に着けたソロモンの悪魔「フュルフュール」が二体歩いている。哨戒兵といったところだろうか、しかし未だ鈴音に気がついた様子はない。
鈴音は高速で思考を回転させる。事前にグリモア猟兵より教えられていたフュルフュールの行動パターンを分析すれば、鈴音の側から攻撃を仕掛ければ恐らく「無敵化」のユーベルコードによって防がれてしまうだろう。そして相手は二体。不意打ちが効いたとしても鈴音のユーベルコードは多数を相手取るには力を分散させる必要があるものだ。ならばどうすればよいのか。
しかしそこは鈴音も歴戦の猟兵だ。猟兵として目覚めてからの時間が長いという事は、自分自身の戦いの経験を問わず、さまざまな情報が入ってくるということ。そう、例えば大規模な戦争の中で現れる「攻略難易度が高い強敵」に対する情報もそうである。今でこそ対処方法は多岐に渡ってはいるが、猟兵がそれぞれの世界の戦争を体験するまだ初めの頃は、「無敵化」の能力を使おうとして逆に不利になることがままあった。それは――……。
(――相手が必ず先制攻撃のユーベルコードを使ってくるとき、であったのぅ!)
ならばそれらの敵に倣って、鈴音も先制してユーベルコードを使ってやればよい!幸い相手は鈴音には気づいておらず、そして鈴音より先に確実にユーベルコードを使えるほどの強敵ではないのだから!
【フォックスファイア】。一四五に分散した狐火の炎を、掌の上に集めて凝縮する。火、焔を越えて高濃度の燃焼エネルギーとなったそれを、片方のフュルフュールにぶつける。未だ鈴音に気づいてもいなかったその一体は、狐火が元となった高度濃縮された燃焼エネルギーを受けて燃え上がり、瞬く間に灰となって消えた。相棒が焼き殺されたことに気づいたもう片方のフュルフュールがユーベルコードを使用し、全身を溶けない氷の塊に変えて「あらゆる攻撃に対しほぼ無敵の状態」へと変化する。鈴音は新たに呼び出した一四五の狐火を以て猛攻を仕掛けるが、さすがにその全てが弾き返される。
「やはりこうなったか。ならばそうよな、古き知識の次は新しき技術を試してみるのが筋というものよのう」
鈴音は妖刀「竜胆」を構える。そこに狐火の炎を纏わせる。鈴音が何をしていようと、フュルフュールは動けない。「自身は全く動けない」というのが無敵化ユーベルコードの無敵の恩寵の代償であるからだ。だからこそ、鈴音は無限の時間を得る。フュルフュールが動くために無敵化を解いた瞬間、鈴音のフォックスファイアによって焼き尽くすことが可能であるからだ。フュルフュールにとってみれば、これは無限の拷問にも等しき時間。
「のう、妾ら猟兵が世界移動能力を持ち、新たな世界のユーベルコードならずとも新たに発見された技能を得られること。それが妾たち猟兵とそなたらとの強さの違いとは思わぬか?」
――まあ、稀に世界を移動できるオブリビオンもおることはおるが。何と言うておったかの、あのはじまりの猟兵どのは……。
そう言葉を紡ぎながら、鈴音はその身の力を焔を纏う妖刀に注ぎ込む。そして、動けぬフュルフュールの凍った胸を、「無敵化」しているはずのその心臓を、――まっすぐに貫いた。
信じられない、という表情をするフュルフュール。彼女が表情を「動かした」ことで、その無敵化の能力は解けている。そのまま鈴音は心臓に突き刺した妖刀を薙ぎ払い。胴を真っ二つに斬り裂き、返す刀で首を斬る。
「ふむ、その兜、その甲冑。武装としては悪くないが、胸と首とを防御しておらぬようでは意味がない。せめて喉輪の一つもはめておくべきであったな?」
そうして妖刀に纏わりついた狐火が首を斬られた女悪魔を焼き尽くしていく。女悪魔が死んでいくその刹那、鈴音は目を細めて彼女に語り掛ける。
「そなたの考えておることはわかっておるよ。「無敵化していたのに、何故?」であろう? そのユーベルコードと根を同じくするものは妾たち猟兵は割と初めの頃から使えたものでな。弱点もわかっておるのよ」
『あらゆる攻撃に対し「ほぼ」無敵になるが、自身は全く動けない。』それがこの体系のユーベルコードの長所と短所。ほぼ無敵、という事は有効になる攻撃もあるということ。
「あえて言うならば「力溜め」「エネルギー充填」「貫通攻撃」「鎧無視攻撃」「属性攻撃」程度は使わせてもらったかの? わかったか? 妾が「無敵化」したそなたに対して何をしたのかを。――「無敵貫通」じゃよ」
鎧無視攻撃技能の「鎧」を「無敵化した状態」に適用させれば無敵状態に対しても攻撃が届くようになる。その
論理を有効とさせるために、それだけの力を妖刀に込めた。そして「貫通攻撃」を「無敵貫通攻撃」にするために、「属性攻撃」を合わせて「無敵貫通属性」を与えた。机上の言葉で言うならば、そうなるだろう。
しかしそれをこの場で思いついて実行に移し、「有効である」と世界の法則に判定させるだけの「説得力」を与えたのは鈴音の実力だ。同じ技能を持っていたものが同じようにしたとして、二度同じ攻撃が通用するかはわからない。そんなものは、これは、密室のチェーンロックを一度切断し、ガムテープで無限に伸ばすことで「誰でも入れるが」「密室である」という状態を成り立たせるような――いわば、「屁理屈」だ。
屁理屈であっても、それを鈴音は実行し、そしてその行動は認められた。
だからこそ、鈴音の刀は女悪魔の無敵化に対して例外となるに至った。
ただそれだけの話である。
「さて、では先に進ませてもらうとしようかの」
女悪魔を倒し、彼女らが来た方向を行けば、上階への階段はほどなくして見つかった。
「ふっふー、さて、このまま順調に行きたいものじゃ」
そんな空恐ろしいことを嘯きながら、鈴音は階段を上がってゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ネーラ・ユールニールス
日本のムシャ風の鎧ね、素敵
ボスも日本のお姫様風らしいから?
魔力増強してオーラ防御、風を操って受け流す
それでも悪魔の吹雪は完全に防げはしないけれど
少しはマシになるわね
私の操る風に乗せて歌唱、歌を届けましょう
これは北欧の歌よ
吹雪に似合うでしょう
この歌に認識阻害の罠を仕掛ける
距離の見誤り、音の位置の間違い
ささやかなものよ
戦闘中には致命的だけれど
UCを使い、時計の針を撃ち込みましょう
針で怯んだ敵に近づき鎖で絞め上げる
鞭のように打っても良いわね、あなた獣の悪魔なのでしょう?
認識のあやふやな敵の反撃を躱し、時計と、槍化したビアンクルで突き刺し仕留める
お戻りなさい
骸の海でもブレイズゲートトでも
お好きな方に
●
「へえ、日本のムシャ風の鎧なのね。素敵」
襲い来るソロモンの女悪魔「フュルフュール」三体からの連続の槍による刺突攻撃を踊るようなステップで躱し、ネーラはそう嘯いた。
「この城の
要も日本のお姫様風らしいから? お似合いだわ。金髪の姫には白馬の騎士が。黒髪の姫には甲冑の女ムシャが、ええ、お似合い」
更に突き込まれる多段の槍撃を、ネーラは自らのうちに眠る魔力を高めて自らの纏うサイキックガードの上からオーラを重ね、防御を厚くすることで防ぎ、更に建物の中に風を起こし、それを操って受け流す。
槍が通用しないことにしびれを切らした女悪魔たちは、ユーベルコードを操って吹雪を発生させる。女武者たちの槍と甲冑が氷の属性を帯び、硬く強く、鋭利になる。
城の中に吹きすさぶ猛吹雪を操る風によって散らしながら、その風に乗せてネーラは歌い出した。吹雪の中で歌う黒いドレスの女淫魔の姿は、なまめかしく同時に近寄りがたい。
「どう……? これは北欧の歌。吹雪に似合うでしょう……?」
そう呟いたあとは、ふたたび歌うことを再開する。その歌に仕掛けられているのは、罠。
その音を聞いたものが距離を見誤り、立ち位置を見間違うような、そんな認識阻害の罠が、喉も裂けよとばかりに響き渡る絶唱の中に込められている。それはかつて大魔術を操ったソロモンの女悪魔からしてみればほんの些細な魔法、けれど一瞬一秒の判断の間違いが命取りとなる戦闘の中にあっては致命的なものだ。
(――そろそろかしら)
毒のような罠が敵の中に浸透したのを見て取り、己のユーベルコードを展開させるネーラ。
【
時の鎖は赤日を断つ】。彼女の手の中の小ぶりな懐中時計、終末時計「イルタンルスカ」に刻まれた12のアワーマークが浮き上がって針となり、女武者たちに向かって飛翔する。
「この時計、時よりもあなた達を刻みたいって」
針が撃ち込まれた女武者に、時計の鎖がじゃらんと音を立てて長く太く巨大化し、その身に巻き付いて締め上げ、締め上げて、ついには女悪魔の体をぶちゃりと弾けさせる。血と肉塊、内臓と脳漿があたりに散らばり、ネーラの白い肌を赤く汚した。
「まずは一体。次は鞭のように打ってみましょうか――あなたたち、獣の悪魔なのでしょう?」
フュルフュールはその鹿角の兜が示すとおりに、悪魔学では翼の生えた鹿の姿、或いは炎の蛇の尾を持つ有翼の鹿として描かれる。それを理解した上での悪意ある囁きであったが、それを侮辱ととらえた女悪魔たちは槍を構えてネーラに直接突きかかってきた。……彼女の仕掛けた罠の中で、あやふやになった認識のまま。それを躱すのはネーラにとってはもはや児戯に等しい。残された二体の女悪魔のうち、片方の一体の槍撃を時計の鎖で受け止めて、時計の針を撃ち込み、そしてもう一体の悪魔には「ビアンクル」を槍に変えて頭蓋に突き刺して仕留める。甲高い絶叫と共に、再び血の華が戦場に散り。針を撃ち込まれた三体目の女悪魔は強かに巨大な、とても巨大な姿となった鎖で打ち据えられて潰れる。吹雪の白に染められた慈眼城のフロアは、あっという間に血の赤に染め変えられた。
「――お戻りなさい、ブレイズゲートでも、骸の海にでも、お好きな方に」
ブレイズゲートは時を経て、それを構成するサイキックエナジーが2028年には尽きるという。たった四年の歳月を分割存在としてさまよい続けるのか、それともオブリビオンらしく骸の海へと沈むのか。どちらにしても未来のない選択肢を突きつけながら、ネーラは上階に進む階段を探して歩き始めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
さて、ここからは八軒慈眼城の探索だ
話を聞く限りだと、慈眼城自体のコピーみたいなものってことだが、ブレイズゲートってのもオブリビオン化するのか?
うちの世界じゃ世界結界もオブリビオン化してた位だし不思議じゃねえが……
【戦闘】
慈眼城って肩書にふさわしい相手が出てきたな
自身が分裂しちまったってことは哀れだが、槍術も氷の鎧も侮れたもんじゃねえ
ただ、俺を凍らせるには不足だぜ
「寒冷耐性」で耐えつつ、「天候操作」で戦場の吹雪を吹き散らす
同時に回転動力炉による「高速詠唱」でチャージし、「全力魔法」の「電撃」のUCを放つ
「指揮官としてのあんただったらもう少し苦戦していたのかもな」
●
「さて、張り切って入ってきたはいいが…」
八軒慈眼城内部。既にいくつかの階段を見つけて上ってきた魎夜は、更に上階、最深奥に進む階段を探しながら、この建築物について思考を巡らせていた。
(話を聞く限りだと、ブレイズゲート「慈眼城」のコピーっていう感じだが……ここは、ブレイズゲートにはなってねえって言ってたな)
元々のブレイズゲート「慈眼城」はかつて大阪と京都に跨る天王山、天王山トンネルの直上、山中深くに存在していたという。しかしこのブレイズゲートは主であった「聖女ガラシャ」とは異なるダークネスの儀式によって失われたと聞いている。
「ブレイズゲートってのもオブリビオン化するのか……? うちの世界じゃ世界結界もオブリビオン化してたくらいだし、不思議じゃあねえが……」
そんな魎夜の思考を断ち切るように、目の前に槍が突き出される。本能的なバックステップで躱し、目の前の敵をあらためれば、鹿角の兜に甲冑姿、槍を手にした女武者。ソロモンの悪魔「フュルフュール」が二体存在していた。
「おっと、慈眼城って肩書に相応しい相手が出てきたな……!」
肩をすくめてみせる魎夜に向かって槍を振るう女悪魔の顔は、どちらも寸分たがわず同じ。さもありなん、彼女らは分割存在である。
(自身が分裂しちまったってことは哀れだが――この槍術、侮れたもんじゃねえ)
既に魎夜のイグニッションは完了している。回転動力炉が唸りを上げ、手甲に覆われた手で握る炎を象った魔剣で槍をいなし、弾き返していく。すぐに魎夜の力量を見て取った女悪魔は、ユーベルコードを発動させる。魎夜のいたフロアが凍える純白に染まり、猛烈な吹雪が発生して。女悪魔たちの槍と甲冑は氷によって強化される。
「ははっ、さすがはソロモンの悪魔。槍だけじゃなく氷を操る術も上々と来た……だが」
――俺を凍らせるには、ちょいとばかし不足だぜ!
伊達や酔狂で冬の北海道にTシャツと上に羽織った銀誓館学園の学生服だけで乗り込む魎夜ではない。寒所冷所には耐性がある。そしてそのまま
嵐の王の力によってこの八軒慈眼城内の天候を操作し、吹き荒れる吹雪を強風によって吹き散らす。
(さて、そろそろいいか……!)
ユーベルコードのチャージ源である回転動力炉は魎夜がイグニッションを済ませてから既に回転し続け、マニシャを回している。準備は整った。
「さあ待たせたな、これでも食らいやがれ!!」
【
致命電光】。八軒慈眼城の中に稲光が輝き。雷が落ちる。回転動力炉のチャージに魎夜の全力を乗せた雷が二体のソロモンの悪魔を直撃し――彼女らは、一瞬で消し炭と化して消えた。
「はぁっ、はー……さすがに、全力で使うとキッツイな、相変わらず……!」
俺もまだまだ修練が足りねえか、とつぶやくと、魎夜はそこで適当な柱を背にして座り込み、心身の回復を図るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミルディア・ディスティン(サポート)
「サポート?請われれば頑張るのにゃ!」
UDCでメカニックして生計を立ててるのにゃ。
『俺が傭兵で出撃して少し足しにしてるがな?』
※自己催眠でお人好しで好戦的な男性人格に切り替わりますがデータは変わりません。
ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。むしろ積極的に助ける方です。
記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。
●
「にゃぁぁぁ……そ、そろそろ頂上が近づいてきたのにゃ……」
ミルディア・ディスティン(UDCの不可思議メカニック・f04581)は札幌市八軒に出現した建造物「八軒慈眼城」の内部から、窓の外を見てそう言うと、ぶるりと背筋を振るわせた。運良くここまで敵に鉢合わせることなく建物を上ってきたが、最深部には慈眼城の主「聖女ガラシャ」が存在する。彼女を守るためにも、このフロアに敵がいないという事はないだろう――そう思って用心しつつ通路を歩くミルディアの背中を、先ほどとは種類の違う寒気が走り抜けた。
「にゃあっ!?」
頭を庇って地面に伏せれば、彼女の頭のあった場所を槍が突き抜けていく。――敵だ。気づかなかったらどうなっていたかと、もう一度身をぶるり振るわせて。背負っていたクランケヴァッフェを起動させる。ぞるり、UDCの肉体から作られたいくつもの触腕がソロモンの女悪魔「フュルフュール」を捕らえ、突き出される槍を受け止める。
女悪魔は触腕から無理矢理に槍を引き抜くと、そのままその槍を大きく頭上で回転させて超加速する。突き出された槍に対処する術を、ミルディアは何一つ持っていなかった。そのまま大きく吹き飛ばされ、メカニックの命であるクランケヴァッフェを腹に抱え込みかばうようにして壁に叩きつけられる、と――。
「ぁ、がっ」
一瞬であった。様々な建築物がつぎはぎになった慈眼城の中、建築途中の部位から突き出した鉄骨が、彼女の後頭部に突き刺さり、口へと貫通させて――ミルディアは絶命する。そのままクランケヴァッフェを背負ったままでいたらそれは防げたであろう。慎重にここまで進んできたミルディアがこの事態を予期していなかったはずがない、ならば、何故。けれど女悪魔は、そんなことは考えない。ただ、外界からの敵を排除したとして元の警邏のコースに戻る。そうして女悪魔がミルディアの「遺体」に完全に背を向けた瞬間であった。
「やれやれ。世話を焼かせるな」
女悪魔の背後から低い声がした。そこから聞こえてはいけない声であった。フュルフュールが身を翻すよりもずっと早く、ふた回り以上も太くなったクランケヴァッフェの触腕が女悪魔の槍を弾き落させ、彼女の体を締め上げる。
女悪魔の目に入ったのは、ミルディアの「遺体」の傍らに立ち、クランケヴァッフェを操る騎士の格好をした男とも女ともつかない何者か。ミルディアが瀕死、あるいは死亡すると自動的に発動するユーベルコード【ご
主人さまの
加護】。それによって現れた護衛騎士はミルディアの「遺体」から鉄骨を引き抜くと、噴き出す血に濡れるのも構わずその場に横たえる。
「……やれ」
護衛騎士がそう言ってぐ、と突き出した手を握りしめる。同時、クランケヴァッフェの触腕は強力な力で女悪魔を締め付け、甲冑と兜がばきばきと砕け、それに守られていない生身の部分が臓物と血飛沫を弾けさせながらぱんと弾けた。
その血がミルディアにかからないようマントを掲げた護衛騎士は、敵の殲滅が完了したのを見届けるとクランケヴァッフェを扱い、器用にミルディアの傷を治していく。傷痕も残らないほどの丁寧な、そして異界の技術を応用した治療。蘇生の電撃を浴びせると、止まっていたミルディアの心臓は動き始める。
「あまり、無理をするなよ」
そう言って護衛の騎士はミルディアの頭を撫でる。
――数十分後。血だまりの中で、ミルディアの意識は回復する。
「ぁ……あたし、また死んじゃってたのにゃ……? ご主人様が助けてくれたのにゃ……?」
再びクランケヴァッフェを背負って、見つけた階段を上るミルディア。
そこから先には、千畳敷の畳が広がっている。奥の奥には、ましろいヴェールをかぶりロザリオを握りしめた羅刹の姫君「聖女ガラシャ」が座して待っていた――。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『聖女ガラシャ』
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POW : 紅蓮聖歌
【「あらゆる敗者に救いの手を」】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【攻撃不能】の状態異常を与える。
SPD : 慈眼断罪旋
【車輪型殲術道具「断罪輪」】を高速回転し続ける事で、威力増加・回転武器受け・レベル×5km/hでの飛翔を可能とする。
WIZ : 慈眼城降臨
レベル×1体の【ダークネス集団「慈眼衆」】を召喚する。[ダークネス集団「慈眼衆」]は【複合】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
👑11
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「いらっしゃったのですね、
灼滅者のみなさま。いいえ、猟兵のかたがたでしょうか」
ロザリオを手にした羅刹の姫君、「聖女ガラシャ」は麗しいかんばせでにこりと最深奥に辿り着いた猟兵たちに微笑みかける。
「天王山より遠く離れた北の地にふたたび慈眼城を建て、今の世を迷えるダークネスたちを庇護しようと思っておりましたが……悪いことはできないものですね」
ならば、ならば。わたくしの夫のしたことは悪事ではないのでしょうか。わたくしを愛するあまりに植木職人まで手打ちにしたのは嫉妬の大罪にほかならないというのに。幾十人もの首を斬った刀に、三十六歌仙に擬えた銘をつけるなどと、傲慢の罪ではないのでしょうか。
学のあるものならば、それが彼女の夫である細川忠興のことだとわかっただろうか。
細川ガラシャは、史実によれば非業の死を遂げた女だ。けれどサイキックハーツ世界においてはその人生のどれほどがダークネスの分割支配によって捻じ曲げられているのかはわからない。わかるのは、この世界においてガラシャは歴史に語られる細川屋敷では死なず。どこかの時点で闇落ちし、「聖女ガラシャ」たるダークネスとしてその後を生き抜いて、そしてどこかの時点でブレイズゲートで分割存在となり――
そして、ブレイズゲート「慈眼城」ごと、異種のダークネスによって失われたということ。
「たとえオブリビオンとなろうとも、わたくしは慈眼城を作ります。それが今もまだ迷えるダークネスの魂を癒す拠点になるのですから」
「八軒慈眼城」に札幌、北海道中のダークネスを集めるのだと、聖女ガラシャは落ち着いた口調で言う。
けれど、「八軒慈眼城」はブレイズゲートではない。単なる建造物であって、内部のダークネスを分裂弱体化する力も出られなくする力も持ってはいない。
ならば、「八軒慈眼城」にダークネスを集めるという事は、この地にダークネスの混成軍の一大基地を作ることに他ならない……!
「ええ、そうです」
「それでもわたくしはそれを成したいと思います。それがみなさまがたの意思に反するというのなら、またわたくしを灼滅するよりほかにないでしょう」
「勿論、黙って灼滅されるつもりはございません」
聖女ガラシャはそういって、敵対を告げる眼差しを猟兵たちに注いだ。
――彼女の望みを、叶えるわけにはいかない。「八軒慈眼城」を、彼女もろとも消し去らなければ――!
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第三章 「聖女ガラシャ」が 現れました。
おめでとうございます。猟兵たちは札幌市の住宅街に出現した「八軒慈眼城」の最上階へ到達しました。
そして、最深奥、最上階にいた
ダークネス「聖女ガラシャ」と対面しました。
彼女の目的は「八軒慈眼城」にダークネスを集めること。それは、到底見過ごせるものではありません。
彼女との敵対は避けられません。
以下に詳細を記します。
「★注意★」
マスターの巨大ロボットに対する知識がめちゃくちゃなため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。
「戦場について」
戦場は「八軒慈眼城」最上階、広大な畳敷きのフロア一つまるごとになります。
窓から外部の光が差し込んできており、また、炎や人工物によらない光源によって内部は照らされています。太陽の光が差し込んできており、暗闇ではない状態です。
エスパーたちこの世界の一般市民は存在しません。
戦闘に使えそうなものは和室の中にあるものなら何でもありますが、何かを利用する場合には「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してください。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
既に接敵を行っているため、事前の準備行動は行うことができません。(例:「体の“パフォーマンス”を良くしておく」など)
準備行動を行う場合は、戦闘と並行して行う事となります。
「ボス敵 聖女ガラシャについて」
羅刹の姫君です。ダークネスが分割統治し歪められてきた歴史の中で史実に知られているどこまでが本当だったかはわかりませんが、少なくともダークネスとなっている以上は史実通りには死んでいないことは確かです。
今回札幌市・八軒に「八軒慈眼城」を出現させた理由も、「八軒慈眼城」にダークネス達の拠点を築こうとするためです。(「八軒慈眼城」は彼女を倒せば時間差で猟兵が脱出し終えたころに消滅します)
しかし、「八軒慈眼城」はブレイズゲートではないため、純粋にダークネスたちの混成軍の基地となってしまいます。
それを防ぐためにも、聖女ガラシャは討たねばなりません。
彼女のユーベルコードの「レベル」は猟兵の「レベル」と同等のものとなります。また、猟兵がチームを組むなどして複数で彼女と相対した場合、もっともレベルの高い者の「レベル」が適用されます。
猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで戦おうとした場合でも、彼女は殲術道具「断罪輪」等を用いて攻撃してきますが、ユーベルコードの内容やプレイング内容によっては、ユーベルコードを使わせないといったリプレイになる場合もあります。あくまでもユーベルコードを使わないだけでは棒立ちのやられっぱなしにはならないという意味です。
当シナリオのプレイング受付開始は、この追記が公開され次第即時となります。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
それでは、聖女ガラシャを倒し、この八軒の地の「慈眼城」を消滅させてください。
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。
アームドフォードを使用する場合はイラストからイメージをしてもらえれば
ユーベルコードは指定した物か公開しているものを使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
●
札幌は八軒に出現した「八軒慈眼城」の最上階、畳の間に、聖女ガラシャは座す。
問答――否、ガラシャの口上であろうか、が終わったあと、いの一番に斬りかかったのは、陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)だった。
(こいつに次の句を継がせちゃあならねえ――ここまで待ったのも、するべきじゃあなかった!)
柳火は正確にガラシャの能力の危険性を察知していた。ガラシャの持つ能力は、「歌」であると。
南蛮渡来より来た伴天連の宣教師たちの言葉を受け入れ、切支丹となった細川ガラシャ。戦国武将の妻が「ガラシャ」――Gratia、ラテン語で恩寵や神の恵みを意味する洗礼名を持っていたということは、サイキックハーツ世界でダークネスたちの分割統治時代にあっても消しきれない「史実」として残っている。そして、他のアース系世界でもそれは同様であろう。UDCアースからかつて去来した妖怪たちが住むカクリヨファンタズム住まいの柳火であれば、より近いものとして知っているだろうか。
ガラシャを戦国の女として見た時の特異性が「切支丹である」ということ。切支丹と聞いて他の戦国の女たちと区別できることは、少なくとも柳火が思い至ったことは、「彼女が聖歌を知っている、それをユーベルコードにしている」という可能性があるという事!
事実、ガラシャのユーベルコード【紅蓮聖歌】は主張を込めて歌う事で範囲内の敵すべてに状態異常を与えるものだ。その有効範囲たるや、半径160メートル。この畳敷きの最上階をまるまる飲み込む広さであり、そして与える状態異常は「攻撃禁止」。ひとたび彼女に歌わせたが最後、この戦場にいる誰もが彼女に対して、否、誰に対しても攻撃することができなくなる。
(俺のユーベルコードで歌を「切断」できるか……!? いや、駄目だ!「できるか」と考えた時点で弱体化しちまってる!なら他に……いや、考えても仕方がねえ!)
「俺がやるべきこたぁ、攻め続けるのみよ!――食らいやがれッ、【
無辺斬り】――!!」
完全無敵も広大無辺も関係なく。そこに「いる」なら必ず刃は届く。そんなシンプルな柳火の意志が生み出したユーベルコード、【
無辺斬り】。無敵存在や到達不能対象を切断できる斬撃。
愛刀である「名刀「マタタビ丸」」から、柳火のその「絶対の意志」を以て繰り出された斬撃は、ガラシャに確かに刻み込まれた。
血飛沫が、畳の間を汚す――。
成功
🔵🔵🔴
九段下・鈴音
遊津マスターにおまかせします。かっこいい九段下・鈴音をお願いします!
『この力を使ってくりゃれ』
『妾が護ってやる。安心せい』
自分よりも他者を優先する性格。
ユーベルコードや技能はどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
性格上他の猟兵をかばうことはあっても、迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エログロはNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
聖女ガラシャの肩から迸った血飛沫が、畳を汚す。一番槍を果たした他の猟兵に次いで、駆け出したのは鈴音であった。鈴音は気づいていた。この雅やかなる畳の間に仕掛けられたガラシャの敵意の糸に。
それは、ガラシャの歌ではない。それは、ガラシャの慈眼城を作り出すために慈眼衆を呼び出す能力でもない。
最初から目に入っていた。畳の間の一番奥に座したガラシャのその背後で
はじめから高速で回転し続けていたそれは――殲術道具「断罪輪」。
果たして、鈴音にそれを見て名が理解できていたどうかはわからない。だが、己の陣地が「
敵」に踏み入られ、それでもガラシャは微笑みを崩さずに
話し続けていた。意味があるかどうかもわからない、夫との昔話まで持ち出して。自分の目的を明かしてまで。それに意味を見出すとすれば――「時間稼ぎ」でしかない。それと、彼女の背後で回転し続けるものの存在に気がついたとき、鈴音は走り出さずにいられなかった。
(「あれ」が、回転し続ける時間に応じて妾たちを薙ぎ払ってしまえるものだったなら――道理がゆく。なれば、妾は「あれ」を止めねばならぬ……!)
実際の所、「それ」――聖女ガラシャの隠し玉は、鈴音の思っていた「もの」とは少し違っていた。だが、高速回転を行っていたそれが、ガラシャのユーベルコードに不可欠なものであったのは間違いなく。
「はああああああっ!!」
ガラシャの背後の断罪輪を斬り裂かんとした鈴音の妖刀「竜胆」の一撃は、回転する車輪そのものによって阻まれる。ならば、とガラシャ本体のほうに
鋒を向けた時には、女羅刹はその涼やかな笑顔のまま、ふわりと浮き上がり、鈴音とは真逆の場所へと瞬間的に――実際には、時速七三〇キロの速さで移動していた。そのまま彼女の懐から小型の断罪輪が放たれる。ギン、ガン、ガギンと金属同士がぶつかる音が鳴る。断罪輪を竜胆でもって叩き落とした鈴音の顔に、一筋の汗が流れる。
(く、このユーベルコード……妾のものとは、相性が悪いか
……!?)
飛翔によって距離を取り、投擲武器たる断罪輪で遠距離攻撃を放ってくる聖女ガラシャ。対して鈴音のそれは、相手が近ければ近いほどよいというもの。当たってしまえば相性自体は悪くない。だが、ガラシャが飛翔能力を得た今となっては、近づくことを考えなければならない!
「……いや、そうじゃの。ならばこうよ。ガラシャとやら、しばし
鬼事とゆこうぞ」
鈴音は唇を釣りあげ笑う。そうして竜胆を腰の鞘に納刀し、ガラシャへと向かって駆け出した。
「ふふ。その様子だとわたくしの飛距離にはついて来られない様子ですね?」
鈴音から逃げ切れることを確信したガラシャが涙袋を頬で押し上げる。しかしその余裕の笑みは、涼やかな微笑みは。一瞬の後に驚愕に目を見開いて崩れることになった。
「見えるか、この剣閃……聖女ガラシャ、捉えたり!」
襲い来る断罪輪をすべて自身の肉体で受け止め、身を裂かれる激痛に耐えながら、鈴音は
ガラシャに肉薄して竜胆を抜刀する。
【
九段下式抜刀術】。だが、それだけではない。鈴音が高速移動で逃げ回るガラシャに追いつけたのは、その首にかかった「ベロシティ・チョーカー」の宝石に込められた魔力による、「一瞬だけ素早く移動できる」能力によるもの。
そして鈴音の【
九段下式抜刀術】は、肉薄してこそ最大の結果を引き出せる。すなわち、ゼロ秒攻撃。断罪輪に対しての自動反撃を行わなかったのは、ガラシャを逃がさぬための目くらまし。
しゃきん、と竜胆が鞘に納刀される。
聖女ガラシャの胸元は大きく斬り裂かれ、鈴音の頬を朱が染めた。
大成功
🔵🔵🔵
ネーラ・ユールニールス
ああ
麗しい羅刹ね
でも貴女の悲嘆も夫の悪業にも
勿論その悲願にも
御免なさい、興味は無いわ
私の故郷は北欧だから貴女の思う神はよく知ってる
愛してはいないけどね…
オーラ防御を張り武器変形でビアンクルをハルバードに
風を操り声を届かせて
私に意識を向かせ視線を誘導
魔力増強して誘惑と精神汚染をもたらす声でUC詠唱
ねえ
貴女も配下の方もこの姿ご存知でしょう
優しき天の使い
戦うために命を捨てるなんて神の教えに背くわ
天使の眼差しと抱擁に浸って?
天使に意識を奪われるガラシャ、慈眼衆の隙を逃さず攻撃
ハルバードを横薙ぎして配下を斬り捨て
ガラシャには槍で正面から突くわ
さすがに脇腹を貫くなんて
貴女の愛した神の子の真似は皮肉だもの
●
「ああ、想像していた通り。麗しい羅刹ね、黒髪の、この国のお姫様」
ネーラは他の猟兵の攻撃により立て続けに傷を負った聖女ガラシャへと向かってゆっくりと歩み寄り、その頬に触れようかという近さまで手を伸ばす。
「でも貴女の悲嘆も夫の悪業にも、勿論その悲願にも。――御免なさい、興味は無いわ」
「理解を得ようとは、思っていません」
厳しい表情になるガラシャの睨むような眼差しを正面から受け止めて、ネーラは歌うように言葉を続ける。
「私の故郷は北欧だから。貴女の思う神は良く知ってる」
――愛しては、いないけどね。
「神はわたくしの胸の中におわします。何度棄教せよと言われたかわかりませんもの。あなたが愛していなかろうと、関係もありません」
きっぱりとネーラに告げると、ガラシャは斬り裂かれた胸元から扇を取り出した、それでもってぴしゃりとネーラを指せば、その場に狼頭のスサノオに、僧兵姿の、槍を構えた、刀を構えた、金髪の、赤毛の、異国の容貌の羅刹たち、慈眼衆らが召喚される――その数たるや、ざっと一三八体はいようか。彼らはそれぞれがさまざまな武器を手に手に、ネーラに襲い掛かる。
「ふぅん、そう。彼らによってこの城も建てられたのかしら? お姫様」
慈眼衆たちの刀の斬撃を、槍の突きを、長刀の薙ぎ払いを、ありとあらゆる攻撃をダークネスが身に纏うサイキックガードの上に重ねたオーラの防御膜で防ぎ、「ビアンクル」を鋏形態からハルバードへと変形させていなす。畳の間に風を引き起こし、それを操って拡声器代わりにすると、淫魔の力を込めた誘惑と精神汚染の魔性がこもった声でネーラは詠唱を始める。
「来たれ理想よ 抱擁よ――心蕩かす慈愛の笑みは ほら、目の前に」
……ねえ。
貴女も、配下の方々も。
この姿、ご存知でしょう?
ネーラは、淫魔らしく殊更淫蕩に笑ってみせた。なぜなら。
――【
その天使の白翼は絡まる蛇】。
彼女のユーベルコードは、輝く天使を呼び出すものであったからだ。
「優しき天の使い。戦うために命を捨てるなんて……神の教えに背くわ」
魅惑的に輝く天使に目を奪われる慈眼衆たち。ガラシャもまたそれに目を奪われる。
「不遜な……不敬な……畏れ多くも主の御使いを自らのしもべにしようなどと、なんて、不遜な……!」
そう怒りに染まった震える声を喉の奥から絞り出しながらも、ガラシャは天使から目を離せない。そうしている間にも、【
その天使の白翼は絡まる蛇】によって呼び出された天使は蠱惑的なまなざしによってガラシャを、慈眼衆たちを灼いていく。信仰に身を捧げた者たちにとって、その姿は怒りを呼び起こすも決して目をそらせるものではない。特に、この場では。
意識を奪われた隙を突かれて、慈眼衆たちがネーラのハルバードの前に倒れていく。目の前で軽やかに踊るようにハルバードを振るう女淫魔によって同胞を虐殺されていくその様を知っていながら、慈眼衆たちもガラシャも、天使の姿に気をとられて満足な反撃ができない――そうして、ネーラはガラシャの護衛の慈眼衆たちを斬り捨てると、ガラシャを正面から貫いた。
「か、はっ……」
開いた唇から紅く染まった呼気を吐き出すガラシャに、ネーラは笑って言った。
「……さすがに脇腹を貫くなんて真似事はしないわ?」
貴女の愛した神の子の真似は、皮肉だもの――。
大成功
🔵🔵🔵
飯綱・杏子(サポート)
ジビエ
食材がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の
食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが
マナーっす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
どんなに癖のある
肉でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす
悪魔だから
毒は利かないっす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす
あと
八つ裂きにされても死なないっす
シナリオの傾向によっては、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
●
「で、わたしはアナタを狩ればいいんすね? 大体わかりました、聖女ガラシャさん」
飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)はそう言うと、巨大な
肉叩き「
万能猟理器具」を手にガラシャへと襲い掛かる。
「んー聖女。神、信仰っすか。ちょいと毒があるっすかね」
杏子は悪魔だ。
食道楽の悪魔。そんな彼女がこの札幌の地、八軒に現れた「八軒慈眼城」に足を踏み入れた理由といえば、
忘れられた食材を喰らうためだ。ジビエ食材を喰らうためにやってきた。しかしどうにもここまで喰らってきた食材といえば、どんなに血抜きをしても血なまぐささが取り切れなかったり可食部が少なかったりと物足りない。それでも食べられれば食べるのが杏子の矜持。そしてヒト型の食材を料理する時には、自分自身がヒト型を取るのを辞めるのが彼女の
作法であった。
そんなわけで、この「八軒慈眼城」の外で調達してきた血なまぐさい肉をひとかじりして。杏子は全身の細胞を活性化させて戦闘力を増加させ、作法にのっとってニンゲンの姿を取るのをやめる。そこにいたのは、ただただ一体の人喰いのバケモノである。
「ま、悪魔なんでわたしに毒は効かないっすよ。ちょっと酔っちゃっておイタしちゃうかもしんねーすけど、そこは猟兵としての活動の範囲っす」
聖女ガラシャにとって――とうの昔、きっと細川屋敷で死んだとされるよりも前にニンゲンをやめてダークネスとなった彼女にとっても、杏子は理非の通用しないバケモノであった。だから彼女は悲鳴のように喉を張り上げる。響くのは歌だ。その歌には、この「八軒慈眼城」の最上階まるまるひとつを飲み込んでそこにいる敵すべてに「攻撃禁止」の状態異常を与える効果がある。
……だが。
杏子には、何の効果も与えなかった。彼女はこの八軒にやって来た時から貯蔵していたダークネスの肉を喰らいながら、バケモノの複数の腕一つ一つに
肉叩きを、
猟理鋏を、外殻や装甲を剥がすための
鱗取りを、そして最もわかりやすい調理器具にして猟理道具たる包丁を握り、ガラシャを食わんとしていく。
「攻撃」禁止? 杏子にそんなものが効果があるものか。杏子はただ、目の前のヒト型の食材を「調理して」「食事」しようとしているだけだ。杏子に――
バケモノがニンゲンを喰らうのに、「攻撃」の意志など必要ない。
これならばまだ、杏子が階下で出会った女悪魔のユーベルコードによって無敵化できた方がガラシャにとっては幸運だっただろう。とはいえ、杏子はその無敵化ユーベルコードを使う悪魔でさえ調理して食らい尽くしてきたのであるが。
理非の通じない相手に、ガラシャの理性は通用せず。信仰は彼女を助けない。だから動くことのできない彼女に、杏子はバケモノのままで、にんまりと笑って言った。
「それじゃあ、いただきまぁす」
成功
🔵🔵🔴
暗都・魎夜
【心情】
同じような身の上のダークネスたちの駆け込み場所を作ることが目的だったわけか
放置は出来ないが、気持ちは分からんではねえわな
「人と共調を選んだダークネスもいるって話だが、そういうわけには行かねえのか?」
【戦闘】
投降を呼びかけた上で決裂なら戦闘
そのカリスマぶりも戦闘力も、紛れもなく一流だな
全力で来な、でなきゃ俺には勝てねえ
「(誰何の言葉に)通りすがりの能力者さ、覚えておきな!」
「天候操作」「召喚術」で召喚した水鏡を用いて「空中機動」
「見切り」で攻撃を回避しつつ「リミッター解除」して「斬撃波」
俺が迷うことで傷つく人がいるなら、俺が剣を振るう方がマシさ
せめてあんたのために祈らせてもらうぜ、聖女様
●
「なるほどな。同じような身の上のダークネスたちの駆け込み寺を作ることが目的だったわけか」
この「八軒慈眼城」を放置しておくことは、ここにダークネスの混成軍の一大基地を作る事と同じ。
けっして捨て置くことは出来ない。けれども。
(……気持ちは、わからんでもねぇわな)
魎夜はそう思う。サイキックハーツ世界は、既に
灼滅者たちによって全人類が「エスパー」に進化している。「エスパー」は闇堕ちせず、もはや新しいダークネスはこれから生まれてこない。それは――魎夜の生まれたシルバーレイン世界に、少しだけ似ていた。
だからこそ。魎夜はここに来てまだガラシャに手を差し伸べようとする。
「人と共存することを選んだダークネスもいるって話だが、そういうわけにはいかないのか?」
魎夜の問いかけに、ガラシャは悲しげに目を伏せた。
「わたくしがまだただのダークネスであったならば、わたくしだけならばそれもまた選べた道でしょう。ですがわたくしはすでに分割存在と化し、そして灼滅されオブリビオンとなった身です。――オブリビオンは、あなた方の敵。そしてわたくしはわたくしの名にかけて、今もさまよえるダークネスたちを放っておくことは出来ないのです」
ですからこのお話は、これで終わりにいたしましょう。
戦国の女に相応しく、ガラシャはきっぱりとそう魎夜の手を跳ね除けた。そして懐から車輪型の殲術道具「断罪輪」を幾つも取り出し、魎夜へと放ってくる。それを炎を模した魔剣「滅びの業火」で撃ち落とす。その間に、ガラシャはユーベルコードによって得た飛翔力を以て瞬間的に魎夜の対局の位置に移動する。
(この心根も、カリスマぶりも――戦闘力も、紛れなく一流だな……!)
「全力で来な、でなきゃ俺には勝てねえぜ!」
「ええ、参ります……!」
既にガラシャは他の猟兵との戦闘によって傷ついている。それでも畳の間の巨大な断罪輪は回り続け、彼女に力を送る。魎夜から常に最も遠い位置を保ちながら、ガラシャは遠距離で断罪輪を放ち続ける。だが――
(ああ。駄目だな。それじゃあ全然駄目だ)
「雨よ、嵐の王の為に道を作りな!」
魎夜はユーベルコードを発動する。この「八軒慈眼城」の外に雨を降らせ、畳敷きの屋内へと雨粒を呼び寄せる。そうして出来た水鏡を用い【
鏡雨転身】によって断罪輪から逃れるために異空間へと逃れ――そして、ガラシャの目の前へと転移する。
「!」
ガラシャの手から放たれる幾つもの断罪輪。それを見切るために魎夜は限界を超える。毛細血管が切れたことによって右目から血の涙を流しながら、「滅びの業火」を振るって断罪輪を叩き落とし、そしてその刃はガラシャの心臓を貫いた。
――勝負は、決した。
「――見事でした。
灼滅者ならぬ猟兵の方。お名前を伺っても?」
「……通りすがりの、能力者さ。覚えておきな」
「ええ、お強いお方。覚えておきましょう……ふふ、このわたくしは、もう消えるのですが」
血の海に横たわる羅刹の姫は、可笑しそうに笑いながら消滅の痛みに眉根を寄せる。
「あなたは、わたくしに道を示しながらも、剣を振るう事を迷わなかった。それにだけは、お礼を申し上げます」
ガラシャの言葉に、魎夜は消えゆく彼女の傍らにどっかと座り込み、その目を真っ直ぐに見つめて口を開く。
「俺が迷うことで傷つく人がいるなら、俺が剣を振るう方がましさ。……せめてあんたのために祈らせてもらうぜ、聖女様」
……そして魎夜は、聖女ガラシャだったものが全て骸の海へと帰るまで、その骸の傍らから離れようとはしなかった。
脱出した猟兵たちの前で、「八軒慈眼城」は消滅していく。
静かな新興住宅街のエスパーたちも、これで安心して外に出て来ることができるだろう。
「ああ、雪だ」
天から降る冷たい白い六花を見つけて、猟兵の誰かが言った。
札幌、八軒の地に起きた事件は、こうして解決したのである――。
大成功
🔵🔵🔵