命は苦しみ尽きていく
グリモアベースの片隅。
グリモア猟兵のムルヘルベル・アーキロギアは、小さな身体にそぐわぬ書物を読み耽っている。やがて猟兵が一人また一人と集まると、ちらりと
片眼鏡越しに目線を上げた。
「うむ、集まってくれたようだな。ではワガハイから説明を行おう」
立ち上がると同時に安楽椅子は無数の紙片に変じ、書物に吸い込まれるように同化した。
「今回は早速、新たに見つかった世界――バハムートキャバリアへ赴いてもらうことになる」
閉じた書物を再び開くと、何も書かれていない紙面からグリモアの光が溢れ、立方体が泡のように沸き上がる。
音もなく宙に浮かぶ
立方体が数倍の大きさに拡大すると、ある一面を猟兵に向け静止。
さながらプロジェクター映像のように、中世ヨーロッパめいた城と平原の風景が映し出された。
「念の為、世界そのものについて触れておこう。
名から分かる通り、この世界では
人造竜騎と呼ばれる5mほどの機動兵器が運用されておる。
クロムキャバリアの同名の機動兵器との違いは……
殲禍炎剣がないために空を飛べることか。まあ、詳細については流石に省く。話を世界そのものに戻すのである」
立方体が回転し、別の面を向け停止した。新たに映されたのは獣じみた鋼の異形。
「そして、これがこの世界のオブリビオン、
獣騎。厳密にはその姿に変形した
百獣族である。
神を信仰し力を尊び、自らを神に選ばれた強者と任じた者たち。彼らは決闘を以て王の座を奪い合って
いた」
ムルヘルベルは猟兵らを、特に世界の事情について詳しくなさそうな者を一瞥した。
「百獣族は"戦士としては"公明正大であったが、人類は脆弱ゆえにそれ以前の家畜じみて侮られ虐げられていた。
……ゆえに彼らは堂々たる百獣族の弱みに漬け込み、信義に悖る無差別殺戮でその尽くを殺し、殺し、殺した。
騙欺を以て隙を誘い、たかが弱者と侮ったところを
掩襲し、決闘の定めに違背した。徹底的に、無慈悲に」
……立方体が再び城の情景を映す。
「今の彼らはその蛮行を悔い、百獣族の鎮魂を願い騎士道を重んじるようになった。そういう世界だ」
彼は猟兵の反応を待たずに続ける。
「
百獣族の全てが現生人類を怨んでいるわけではない。が、此度の相手はある意味典型例だ。
過去の蛮行に怒り、嘆き、憎むが故に……その咎は子々孫々にもあるとし、恐るべき〈呪い〉をかけた」
立方体の面が切り替わる。映し出されたのは岩の如き堅牢な獣騎。
「これがその首魁、『獣騎トロウル』。個体としての名は「メジルクレー」と云うようだ。
かつては「赫焉」の通り名でも恐れられたらしい。名の由来は、ようは血達磨であるな。
如何なる攻撃でも止まることなく、血みどろになっても突き進み敵を殺し、返り血で全身を染め、立つ」
岩の肌を持つトロウルは不死身じみたユーベルコードと凄まじい突進力を得意とする種族だ。
この個体……メジルクレーは特に防御力に秀で、肉斬骨断の如き勇猛果敢で決闘を繰り広げていたのである。
「トロウルの呪いにより、ある村の民が苦しんでおる。どうも、トロウルにとどめを刺した者は複数いたようでな、その者らが開墾し先祖となった共同体であるらしい」
張本人が死に、血が混じろうとも――いや、その手で拓かれた土地に住むだけで怨むに足る。
少なくとも敵はそう考えている。ゆえに呪ったのだ。男も女も、老いも若きも区別なく。
「ワガハイは既に一度直接村に赴いて具合を確かめてきた。実はオヌシらが踏破すべき土地も、同様の呪いに蝕まれておるのでな。村の者たちが気の毒であったし、オヌシらの冒険に役立てばと思ったのであるが――」
ムルヘルベルは嘆息し、頭を振った。
「あれは赫
怨の呪いと呼ばれておる。原理そのものはシンプルな呪い返しの類だ。
問題は、与えられる苦痛が呪われた者の過去に由来すること。ただし、その者「が」与えた苦痛を与えるのだ」
呪詛に通じるムルヘルベルは専門的な見地を含め、説明する。
「苦痛とは戦で与えたものに限らぬ。たとえば食材にするために魚の身を捌き、臓腑を引き抜いたとしよう。
それすらもが苦痛にカウントされる。無論、そのまま臓腑が引っこ抜けてしまうわけではないが……」
与えられる苦痛は与えた苦痛とイコールではなく、呪詛封じなどによってある程度減衰は出来る、と彼は語る。
「しかしだ。何一つ食さず、草木も踏まず、虫も殺さず生きてきた者などこの世におるのか?
霊験あらたかな神獣ならばいざ知らず……否、それでさえ悪性のものを滅していたのであれば対象内である」
常人が耐えられる苦痛ではない。ムルヘルベルの渋い表情からして、現状の酸鼻たる有様は想像できた。
「敵は呪いで満たされた土地を抜けた先に陣を敷き、人類側の挑戦者がやってくるのを待っておる。
この陣そのものが呪いを強化し維持する仕組みを兼ねておるのだが、完全な根絶には術者の抹殺は不可避だ」
立方体が別の面を向けた。新たに表示されたのは『獣騎ゴブリン』の姿だ。
「呪いの地を踏破したら、次は此奴らがオヌシらを阻むであろう。あるじのもとへ辿り着かせぬために。
なにせ捨て身を尊ぶ戦士の配下だ、恐れも躊躇もなく、むしろ怒りと誇りを以て挑んでくるであろう。
ゴブリンの護りを突破しさえすれば、トロウルとの決闘と相成る。彼奴を滅ぼせば、仕事は完了だ」
ムルヘルベルは縮小した立方体を掌の上で弄ぶ。
「バハムートキャバリアの人類は、過去の過ちを「鋼の咎」とし、ある種の反面教師に生かしてきた。
彼奴らの物言いが全く的外れというわけでもない。先人の罪はその者が死ねば消え去るものでもないゆえな。
少なくとも討たれた側は……いわんやその当事者の残骸ともなれば、忘れろという方が無茶であろう」
だが、「はいそうですか」とこれほど残酷な呪いの横行を認める道理も、ない。
「
"よい戦争"や"悪い平和"など、未だかつて一度も存在しない。
雷雨の空に凧を揚げた命知らずの言葉であるが……ここで彼らの主張の是非善悪については論うまい。
少なくとも敵はオヌシらを、聖なる決闘を行うに足る強者とみなし、堂々と正面から迎え撃つということだけだ」
立方体を再び光らせ、彼は思い出すように言った。
「そうそう。この世界では、クロムキャバリアのように気軽に人造竜騎が貸し出されておるわけではない。
つまり乗り込むつもりであるなら……まあ、オヌシらでなんとかせねばならんのだ。そこは留意してくれ」
立方体の光が強まり、ムルヘルベルは本を閉じた。
「オヌシらの健闘を祈る」
転移術式が開始される。新たな世界での始まりの戦いに向けて。
唐揚げ
新世界実装おめでとうございます。ピーナッツバターです。
冒険→集団戦→ボス戦の3章仕立てで、当方の新世界最初のシナリオをお届けします。
色々と複雑な背景を持つ世界ですから、心情寄りだと雰囲気を楽しめるかもしれません。
1章では「赫怨の呪い」で満ちた穢れた大地を踏破することになります。
この土地は完全に汚染されており、踏み込んだ者は「過去に誰かに与えた苦痛」が一気に自分に返ってくるのです。それは「魚の肝を取り除く」だとか「子供の頃に戯れで虫を踏み潰した」とか、そういうレベルですら「苦痛」にカウントされます。皆さんは日常的に戦闘してると思うのでさらにヤバいですね。呪われた人が強ければ強いほど与えた苦痛も量・質ともにアップするわけですから、ある意味戦士の呪いらしいとも言えます。
呪詛を跳ね返したり土地を浄化したり、あるいは凄まじい苦痛を浴びつつも無理やり突破したり。やり方は様々です。
戦場に到達すると、ボスを守る集団敵が文字通り肉の壁となって立ちはだかります。
敵は猟兵を強者と認めて古式ゆかしい決闘の作法に則りますが、わりと囲んで棒で叩くようなやり方も(騙し討ちとかでなければ)アリみたいです。一対一でなければいけないわけではありません。
しかし猟兵の皆さんは別にルールを守る必要はないので、どんなやり方であれ殲滅すれば突破出来ます。
まあ、その場合はものすごい罵詈雑言と呪いの言葉が投げかけられるでしょうが、そういうのをやりたい方は可能という感じです。
最後のボス戦は正々堂々とした決闘感がさらに強まります。
敵はあらゆる攻撃をなるべく避けずに最短距離で突っ込むか防御して耐えたうえで突っ込むかする単純パワータイプです。
これもやっぱり騙し討ちなど卑劣な方法で叩きのめそうが、別にペナルティは一切ないので自由です。
何かしら問答をしようとすれば、敵は自身の憎悪と怒りの根源について語ることでしょう。説得とか呪いの是非を指摘して解除してもらうとかは無理なので、殺すしかありません。お好みでプレイングしてください。
第1章 冒険
『呪われし大地』
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POW : 気合と根性で呪いの汚染に耐える
SPD : 最短経路で呪いの地を突破する
WIZ : 聖遺物を用いて土地に染み付いた呪いを弱める
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辺り一面、地平線の彼方までもが汚染されているように思えた。
当然ながらこの汚染は、トロウルが座する陣地を中心に放射状に広がる。ゆえに直線経路を迂回したり、空高くから強襲すればよいというものではない。
足を踏み入れたものは凄まじい苦痛に襲われ、それでもなお無理矢理に踏破しようとすれば術者の二つ名を模倣するが如く、苦痛に耐えきれず肉体が裂けて血みどろとなるだろう。霊体や精神体であるなら、超常的な肉体がバラバラに裂け不可逆の傷を負うかもしれない。この呪い自体は決して傷を与えないが、肉体と魂そのものが己を害することは、通常の病毒でも稀にあるものだ。
時折、汚染され膝を突く人造竜騎の残骸が猟兵を出迎えることがある。言わずもがな、何処かの騎士がトロウルを討たんとし、そして騎体よりも先に操者が朽ちたのだ。
果たして何人の騎士が、汚染された荒野に挑み斃れたのであろうか? 彼らは鋼の咎を抱き、騎士たらんとして死んだに違いない。あるじを失った人造竜騎は、眼だけを彼方に向け睨んでいるように見えた。
カタリナ・エスペランサ
今更ね
力を振るう事の責任など百も承知
まして自分が与えた痛み
如きと知って怯む筈が無いでしょう
《
矜持を示す+負けん気》を《呪詛耐性+激痛耐性》として《落ち着き・継戦能力》を維持
【第一神権】で成功させる行動は呪いの《浄化》よ
被害者も後で治療したいし、徒歩だと時間が勿体ないから翼で飛んでいくけれど……
《風を操る+衝撃波+属性攻撃》、一つ羽搏くたびに大地の呪いを《薙ぎ払い》捻じ伏せながら進むわ
……当事者なんて誰も居なくなった後に、滅ぼされた側だけが蘇るなんてね
元が高潔な戦士なら猶更、復讐なんて名目の八つ当たりは加害者も被害者も不憫だわ
私が来た以上、速やかに終わらせるとしましょう
●獣は死に、悪魔は去った
ゴウ――カタリナ・エスペランサの翼が、澱んだ大気を力強く打つ。そのたびに金色の髪が波打ち、彼女は前へ前へと飛翔する。羽ばたきの起こした風の流れを視覚でなく触覚で感じ取り、一刻を惜しんで敵地を目指す。
否。此処が既に敵地なのだ。カタリナはそれを痛覚で思い知っている。
呼吸する度に肺腑の隅々まで呪いが浸透し、血液に乗って全身へ巡る。対呪詛の守りで心身を鎧い、並行して周辺の大気と土地そのものを浄化しながらの飛翔。並の呪いであれば、おそらく最初の羽ばたきで視界内の呪いは吹き飛び、荒れ果てた褐色の荒野が顔を覗かせていただろう。
(「気に入らないね」)
カタリナは平然とした顔の裏で、想像を絶する苦痛に耐えた。合理性で言えば、この場で平静を保つことに大した意味はない。呪いは言ってしまえば自動的なものであり、この戦場をなんらかの手段で敵が見物し、悦に浸っているわけではないからだ。
だがカタリナにとっては意味がある。このような呪いに、痛み
如きに屈して怯むなど、その
矜持が許さない。たとえそうすることで呪いを和らげられるとしても、絶対に受け入れられなかった。カタリナがカタリナとして戦うからには、その一線は了承出来ない。呆れるほど強固な
自我。
しかし、強情はむしろ不利に働く。呼吸だけでも致命的になりかねない濃密な呪いを、最短最速で進むというのは――たとえ事態の速やかな解決という前提があるとしても――浄化速度が呪いの侵食に対して圧倒的に追いつかず、不要な苦痛を味わうことになる。
「……ッ!」
カタリナの目尻から血の涙が溢れた。味わう痛みはなんとも形容しがたく、体性痛や疝痛ともまた異なる。心臓の鼓動、呼吸、唾液の嚥下、瞬き、筋肉の収縮、関節の駆動……生命活動の全てが苦痛のトリガーに変わったかのような地獄。肉体と脳は当然速やかな苦痛からの逃避を要求する。つまり生命活動の停止。これはカタリナの弱さではなく、物質的に存在する以上不可避の生理的反射だ。
彼女は、それを強引に捻じ伏せる……捻じ伏せている。苦痛を凌駕するほどに燃えるのは、怒り。
「最早その当事者がいなくても、復讐
せずにはいられない。哀れだよ、本当に」
斯様な呪いに苦しめられる無辜の民は無論、そのような呪いを振りまかざるを得なくなってしまった戦士をも、彼女は哀れみ、そして怒った。……何に対して?
呪いを解き放った百獣族への怒り。それは無論ある。
彼らの誇りを踏み躙った卑劣なる過去の人類への憤懣。仕方ないこととは言え、軽蔑じみた怒りは、ある。
全ては既に終わっていて、仕方ないと嘆き、切り替えるしかない。死者はそうもいかない。ならば誰が悪い? 獣か、人か、あるいは世界の機構そのものか。カタリナはその全てに平等に怒りを燃やす。
奥歯を砕けそうなほどに噛み締め、彼女はなおも力強く飛翔した。
成功
🔵🔵🔴
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
バハムートキャバリア!
騎士道の世界とは聞いたが先人の過ちを繰り返さんがための戒めとはな…あんまりだろ…!
これより行くは呪われた地…子供の時に読んだ騎士道物語にもそのような話があったな…
騎士道の権化ベルト・ラムバルドは怯むことなく進むのだ!行くぞ!
キャバリア操縦し空中機動で空を駆け抜ける!
UCを発動しカリスマオーラを纏いながら呪いを遠ざけてみせる…
…ぐぅうう…それでも痛いッ!!!
御守りを握りしめて呪詛耐性で痛みに耐えてやる…
なんも悪いことしてないのに…いやしたかも…クソ…理不尽な呪いだ…
それでも踏ん張って突き進んでみせる…私は騎士で…男の子だ…!
こ…呼吸を…ひっひっふ~ひっひっふ~…
●何を以て悪とするか
「ひっひっふ~、ひっひっふ~……」
ベルト・ラムバルドは脂汗を拳で拭い、何故かラマーズ法で苦痛を和らげようと試みていた。当然あまり意味はない。そもそもラマーズ法は出産の苦痛を和らげるための専門技術であって、苦痛全般に効く魔法の呼吸ではないのである。
では彼はいつものように(というのも彼の誇りに関わりそうだが)コミカルにおどけているのだろうか――違う。ようはそんなてんで見当違いの対処法に縋るほど、ベルトは切羽詰まっているのだ。
藁にも縋る思い、とはまさにこのことか。ベルトはふつふつと溢れ出す汗を、再び拳で拭う。分厚い手袋がなければ、爪が掌に食い込み血まみれになっていたはずだ。それは避けたかった。理由は千切れそうなほど握りしめた
御守りである。
「ぐ、ぅうう……ッ!」
ベルトは歯の隙間から火傷しそうなほどの熱の籠もった苦悶を漏らした。険しい渓谷のような深い眉間の皺を汗が滝のように流れ、鬱陶しい。彼を支えるのは呪い道具に籠められた愛する女の思慕か? 呪詛を退ける大きな支えにはなっている。しかし違う。
ベルトを支えるもっとも大きく在るもの、それは騎士としての矜持だ。彼の愛情が矮小なのではなく、巨大な愛情に比してなお、己を騎士たらんとする誓いは重くより礎となって根ざしているのだから。
「……先人の、過ちを繰り返さないがための、鋼の咎、か……!」
声を発するたびに、頭蓋が砕け爆ぜたような気がした。目の神経が苦痛という
信号に耐えきれず血走っている。視界は霞み、入力された情報を正しく処理できていない。朦朧とする意識に混ざり合うのは、幼い頃に親しんだ騎士道物語だった。
「――……あんまりだろ
……!!」
堪え、耐え、ようやく吐き出した一言は怒りでも殺意でもない。嘆きである。
拭い去れない過ちを犯した先祖の罪を贖うため、騎士たることを誓った現行人類。
今の世代には何一つ咎はなく、しかし無縁とは言い難いがゆえにこのような呪いを浴びている、無辜の村民たち。
そして――これほどの呪いを生み出したほどに、やるせない憎悪に突き動かされた百獣族。
「理不尽だな……ああ、私はそんなに悪いことをしたか!? したかもしれんな!」
ベルトはやけっぱちになって叫んだ。
「なあ、百獣族よ! 今生きる人々はそんなに罪深いか!? こんなに苦しめるほどに憎いか!」
行き場のない思いがコクピットに虚しく反響する。
「クソ、本当に理不尽だ……この呪いも、何もかも……!」
騎士は膝を突かぬ。ベルトは恐れることも怯むこともなく、噛み締め、踏ん張り、まっすぐに空を駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵
オリビア・アンチェイン
※アドリブ・絡み歓迎
洗脳下であったとはいえ、サイバーザナドゥで企業の私兵として何人も殺してきた
猟兵としての経験が皆無でも、そんな悍ましい過去を持っていれば……はは
ああ、きっと、気が狂いそうなくらいの痛みが襲うのだろうね
でも、構わない
それが私の罪だから
私の意思ではなかった、なんて言い訳をするつもりもない
この苦痛を抱えて、最短で、最速で、一直線に
せめてこれからは――この血塗られた手を、猟兵として、世界のために、誰かのために振るいたい
その覚悟と意志で苦痛を抑え込んで、運動機能の【リミッター解除】で全力で駆け抜けよう
●ドゥ・ニンジャ・ドリーム・オブ・アトウンメント?
オリビア・アンチェインの
義体化率は実に99%。脳の一部すらも機械に置換した彼女は、しかし高度義体化サイボーグが陥りがちな
自己定義の喪失に陥ることはない。
そんな逃避は許されない――オリビアはそう考える。
かつて
企業の尖兵として殺戮の風を吹かせ、無数の死を振りまき、夥しい屍を積み上げた過去。
自我を奪う洗脳下にあったとしても、オリビアは現在と過去を分かつつもりはなく、全てが己の罪であると受け止めていた。ゆえに、自我を亡失するはずがないのだ。この年若く見える義体そのものが、
罪業の証なのだから。
覚悟と執念があった。オリビアは間違いなく、強い
精神の持ち主だ。
だが、それがこの呪いを減衰することに繋がるかと言えば、無論否。
「――が……ッ!!」
最初から抑え込み耐えるつもりでいた。その上でなお、オリビアは何もかもを投げ出して痴れ狂い、この痛みと苦しみを消し去りたかった。たった一瞬とてそう考えてしまうほどに、彼女を襲った苦痛は凄まじかった。
「い、たい……痛い、痛い、痛い
……!!」
理知的な仮面は崩れ、最短かつ最速で抜けるはずの膝は崩れ落ちた。継戦能力を高めるために脳内に埋め込まれた痛覚抑制システムが起動し、網膜投影された無数のエラーメッセージが消えては新たに増えていく。本能が自我亡失という死の可能性を感じて怯え、記憶映像を想起し対策手段を弾き出そうとする――
走馬灯である。
これほどか。
これほどの死を、痛みを、苦しみを、己は振りまいてきたのか。
覚悟していなかったはずはない。
備えていなかったはずはない。
ただ単純に、予想を越えていただけの話。
「……は、は」
少女めいたニンジャは力なく笑った。
「気が狂いそう、だよ……いや、入力情報で頭が狂う方が先かな」
オリビアは震えながら立ち上がった。オーバーヒートする脳をクールダウンするため、滝のような汗がかんばせを流れ落ちる。その胸は平坦だった。
「ダメだ、足を止めちゃいけない……私は、猟兵、なんだ……!」
苦痛は消えていない。網膜映像はひっきりなしのアラートで埋まり、脳波システムは今にもイカれそうだ。
それでも、シルビアは立った。立ち上がった! そして自らの意思で苦痛を抑え込み、歩き出した。
なんたる想像を絶する精神力であろうか。身体を動かすだけでも驚嘆に値する。そして、二歩。足元にポタポタと汗の滴がこぼれ落ちる。
「この、苦痛を……私は……忘れない、捨て去りもしない……これは、私の、罪なんだ……」
三歩。四歩目はより早く。五、六、七……歩みは疾走に変わった。やがてそれは飛翔するような、繋がれざる風へと変わる……!
成功
🔵🔵🔴
ヴィクトリア・ヘスペリス
アドリブ捏造歓迎
SPDで行動
この世界に戻って早々
まだ身体は馴染まないけれど休んでる暇は無いわね
マイト・ナインを飛翔形態に変形して空中機動で滑空し突破するわ
狂気耐性で苦痛に耐えながら赫怨の呪いを越えてみせる!
ええ、幾度となく戦ってきた騎士だもの
沢山傷ついて、傷つけてきたわ
初めの決闘で百獣族を討った日の事も
大きな戦で数えきれない獣騎を倒した事も忘れた事は無い
そういう戦の呪詛が返って来るのでしょう……でもね
そんな狂気に今までずっと晒されてきたのよ、私
アリスラビリンスでの経験に感謝ね
右も左も分からずオウガに怯え続け
心も身体も何度も痛い目に遭ったあの恐怖
それに比べて、何が出るか予想出来るだけマシなのよ!
●それは、美しくも恐ろしく
麗しの故郷――そう呼ぶには、ヴィクトリア・ヘスペリスが
異郷で過ごした時間は長すぎた。
猟兵として、適合者として。生き延びるために変質した肉体と精神は、それゆえにこの世界に由来する呪いとなんらかの
競合を生じた。
「ああ――ッ!」
ヴィクトリアはマイト・ナインのコクピットで悲鳴を漏らした。
狂気。苦痛という情報は脳にとって有害であり、精神を冒す。ゆえに当然の防衛反応として、肉体はその情報を
見なかったことにしようとする。しかし、神経を通じて与えられた情報を好きに取捨選択出来る生物など存在しない。ならば認識する脳そのものが
わからなくなってしまえばいい。痛覚に対する防衛反応としての狂気は、そのようにして沸き上がる。冒涜的な邪神が与える狂気とはまた異なる逃避。厳密に言えば、狂気への耐性で防ぎきれるものではない。
「……ええ、ええ。そうね。もう忘れることなんて有り得ない」
ヴィクトリアは眦から溢れたものを拭い、自嘲めいた笑みを浮かべた。
「何も忘れるはずがないわ。忘れられるわけがない――忘れるわけには、いかないもの」
神隠しによって稀人となり、来る日も来る日も死の恐怖に晒され続けた。
右も左もわからず、いつどこからオウガが襲ってくるのかもわからない日常。肉体も精神も、ヴィクトリアという個は徹底的に甚振られ、辱められ、弄ばれ、打ち捨てられ、彷徨ってきた。
今はその忌まわしい記憶が、ヴィクトリアを支えていた。苦痛という情報そのものは耐え難いほどに強烈だが、しかし
何が来るかはわかっている。
わかっているならば、少なくとも覚悟は出来る。
暗がりを恐れ身を丸める必要も、
曲がり角の向こうに人食いの化け物がいる可能性に震え上がる必要も
後ろに這い寄る得体の知れない音に怯える必要もない。
「この、苦しみが……痛みが、
鋼の騎士の咎であるというなら……!」
忘れてはならないものだ。
生きることは苦しみ痛みを味わうこと。命は始まった瞬間に死に向かって歩き始めている――それでも、ヴィクトリアは生き延びてきた。生きて、故郷の土を踏んだ。ならば今さら、留まる理由は……ない!
「アリスラビリンスに飛ばされたのは、ある意味幸運だったのかしら、ね……」
華奢な首を脂汗でぐっしょりと濡らし、しかしヴィクトリアは己を強いて微笑み、飛翔し続ける。
大成功
🔵🔵🔵
ウルル・マーナガルム
(猟兵活動と、UDC組織での業務、鍛錬を兼ねた趣味の狩猟も含めると、それなり以上のキル数に達する)
ボクは拷問を耐える訓練を受けてるし、スナイパーには何週間も飲まず食わずで標的を狙い続ける集中力が求められる
じぃじも言ってた
バッドコンディションの時でも力を発揮できてこそ一人前の軍人なんだから
ライフルを装備したオレルスに搭乗
機体制御はAIに任せて、狙撃用の銃型照準器を握る
まだ攻撃はしない
狙撃する時と同じように歌を呟いて、集中する
死神の後継者なら、やってみせなくちゃ
私がやらなきゃ、仲間が、守るべき人たちが死んじゃうかもしれない
私が守るんだ
昔、じぃじがそうしたように
●
狙撃手の掟
「……鞍なき馬に跨がりて、我らは疾く駆け出さん」
ウルル・マーナガルムはお決まりのフレーズを呟く……いや、というよりも、唱える。狙撃手として"仕事"する時と同じように、ルーティンをなぞることで、肉体と精神を最適な状態にセットアップする。
「しかして、剣を掲げ……戦うべし」
機体はウルルの状態と無関係に、AI制御によって着実に進む。敵集団の確認と同時に、即座にスナイプ出来るようにゆっくりと。
時折荒野に出現する同行者たちのスピードに比べれば、はるかにゆっくりだ。狙撃手が誰より先に戦場に入るなどあってはならないことだが、しかし狙撃手は誰よりも先に敵を見つけねばならない。その矛盾を、「何もしない」ことで達成するのが狙撃手だ。何時間、何日、何週間……そういう桁の違う時間を伏せ、横たわり、あるいは息を殺して潜む。たった一瞬のチャンスのために。飲まず、食わず、糞尿を垂れ流し、限界まで睡眠を押さえつけ、環境そのものになる――
耐えるという「作業」に関して、狙撃手の右に出る者は、おそらく人類には存在しない。
そういった意味では、ウルルはこの状況にまさにうってつけの"兵士"だった。
対拷問訓練による、苦痛という入力情報をいかに捌き凌ぐかのマインドセット。
狙撃手として獲物を確実に捉える、想像を絶するほどの集中力。
戦場に100%の力を発揮できる幸運など確実にありえず、むしろ10%の能力で任務を遂行できるようになるのが軍人。
ウルルは敬愛する
祖父の教えを反芻する。意識するとか模範にするというレベルではない、
死神に
なるのだ。ウルル・マーナガルムという
個を、最適な
軍人に作り変えていく。
「……
私がやらなきゃ」
気が遠くなるほどの痛みと苦しみがウルルを襲っていた。
耐えられるということは、与えられる苦痛が0になったり、淡雪のように消え去ることを意味しない。
凌げるということは、気が狂いそうな膨大な時間に何も感じないことを意味しない。
「
私が、守るんだ」
呪いはそこにある。ウルルは反吐が出そうなほどの、脳が焼けて爆ぜて目玉が膨らみ爆ぜそうな絶え間ない苦痛に晒され続けている。
その上で、彼女は耐える。微動だにせず、敵の襲来を淡々と待つ。
それはもはや、少女の形に成型された兵器のようだった。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
赫怨の呪いですか。
各地でオブリビオンをしばき倒している我々からすると、致命的ですね。
正直、呪いは専門外ですが…
なんとか対処を考えないとですね。
呪いというのがなんなのか、正直あまり理解できてはいません。
ですが、誰か意志を受けて、何かを害する力だということはわかります。
意志の力。
即ちサイキックの同類項。
であれば、サイキックエナジーで干渉できない道理はありません。
ということで、全身からサイキックエナジーを放出。
コクピット内にキックエナジーを充満させ、呪いの介入を妨害します。
苦し紛れですが、多少は呪いの影響を緩和できるはずです。
そのままサイキックウィングで飛翔し、敵の元へ向かいます。
●死へ向かうこと
苦痛を齎す呪いは紛れもなく負の思念であり、であればエリー・マイヤーが生み出したサイキックエナジーは正の思念である。
真っ向から対立する二つの力が、見えないままに拮抗しあい、ひとまずエリーの目論見は達成された。呪いはその介入を大きく阻害され、翻って齎されるはずの苦痛は大きく緩和された。
緩和されたうえで、なお飛翔の断念を脳裏によぎらせるほどに強烈だった。
「……なる、ほど」
呪いとはなんなのか、専門家でないエリーにはピンとこない。"そういう力"という漠然とした理解はある。味わい、身に沁みて改めて、
これがあってはならない害悪だということは確信できた。
サイキックウィングの顕現を維持し、飛翔を続ける。それがどれだけイレギュラーなことかは、エリーにしかわからないだろう。サイキックエナジーの制御は、本来彼女にとって呼吸と同レベルの生理反応だ。常人で言うなら、心臓を意識的に鼓動させる人間などいないのと同じ。あえて意志力でサイキックウィングを出し続ける必要など、
本来は有り得ない。
つまり、それだけの害意が、エリーに敵へ向かうことを――この場に残り、呪いを浴びてなお敵を倒そうとする「行為」を辞めさせようとしていた。
想像を絶する苦痛から逃れたいと、脳が、全身が悲鳴を上げて否定していたのだ。
ならば、エリーはなぜその防衛反応に抗い、敵地を目指すのか。彼女自身も疑問に思った。
「こんな苦しみは、できれば味わいたくないもの、ですが」
淡々と語る女の額を、滝のような汗が伝う。呼吸は早まり、心臓の拍動が全身を巡る。収縮する血管の微細な音すらも鼓膜が拾い上げて鬱陶しかった。
「……
これを味わわされている方が、私以外にもいるというのは……受け入れがたい、ですね」
なんとなく、エリーは呪いというものの一端を理解したように感じた。
それはつまり、正負の違いでしかない。サイキックエナジーと同じ、意思の力。
敵を、憎むものを苦しめ、痛めつけ、死に至らしめる力――ならば、死という結末に向かい歩む生とは、コインの表と裏のようなものだ。
少しだけ。
ほんの少しだけ、終わることのないような苦痛が和らいだように思えた。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリス・セイルハート
…っく、身体が、潰れそう…引き裂かれそう…です。
これが『赫怨の呪い』…!
ですが…これほどの呪いならばこそ…私が、私達が、祓わねば…!
かの百獣族を打倒し呪いを祓う、その意志を誓いとして騎士道の誓いを発動。
更にZephyrZoneへ祈りを捧げ【浄化】の精霊力を励起、周囲の呪いの一時的な抑制を試みます。
その上で、領域の踏破を。
…!
これは…先んじて踏破を試みた騎士様の…。
…助勢間に合わず、申し訳ありません…。御身の弔い、今この場にては叶わぬことも、お詫びするより他になく。
せめて、貴方様の御遺志は、確と遂げてみせますゆえ…!
改めてかの百獣族の打倒を誓いつつ、更に歩んで参ります。
●世界の中でただ一人
騎士道とは矛盾だ。鎮魂のための正しき戦を誓い、民草を守ろうとする――それはつまり、ラブリス・セイルハートが嫌う戦に飛び込まねばならないということであり……たとえそれがどれだけ必要なことであれ……結果的にラブリスを苦悩させる。痛みを味わわせる。
「……っく、あ、ぁぁ……っ!!?」
この呪いは、円卓の騎士の責務が凝り固まってラブリスを襲ったかのようだった。こんなものを民草に味わわせるわけにはいかない。まさに今苦しめられている者たちを、救わねばならない。誇りと義心が叫ぶ。一方で、年相応の穏やかな少女としての部分は、こんなものから逃げたいと叫ぶ。これ以上、こんな苦しみなど味わいたくないと。
「身体、が……っ、潰れ、ちゃう……引き裂か、れ……ッ!!」
あまりの苦痛は、ラブリスに五体が引き裂けるような幻肢痛を与える。比喩として間違っていないほどの内的なダメージが与えられているのだ。涙を浮かべ、奥歯を食いしばり、しかし彼女はタイタニアキャバリアを動かす。
祈りが呪いを抑制し、誓いが肉体を動かす。執念とすら言えた。受け継いだものがラブリスを支える――あるいは、正の呪いめいて。
その矢先、彼女は出くわした。
「これ、は――」
"それ"は臣従を誓う騎士めいて、恭しく片膝を突いている――否、そのように見える姿勢で朽ち果てていた。
かつては輝かしい白亜の装甲も、呪いに冒された今は病んだ動脈血の如く淀み、薄汚れている。コクピットは解放され、中は膿のような有様だ。おそらくは堆積する「何か」が、かつての騎士の残骸。
「…………助勢、間に合わず申し訳ありません」
ラブリスは縋るように俯き、言った。
「御身の弔い、今この場にて叶わぬこともお詫びするより他になく――」
すらすらと騎士としての言葉は生まれる。一方で、少女は思う。
(「私も、こんな風になってしまうの?」)
恐怖。一度巣食ったそれは拭い難い――いや、違う。最初からそれは少女の中にある。ラブリスはいつだって戦が恐ろしかった。そして今も。
「……せめて、貴方様のご遺志は、必ずやセイルハート家の名に賭けて……!」
健気な誓いの言葉は、少女が己を戒め縛るための呪いに思えた。少なくともそれは、彼女に立ち向かう力を与える――今は。
大成功
🔵🔵🔵

シャルロッテ・ヴェイロン
(ホワイトラビットを【操縦】しエントリー)
まあね、今回見つかった世界にもキャバリアが普通に存在するのですか――まあ、微妙に違うようですが(【世界知識・戦闘知識】)。
それにしても、「”よい戦争”や”悪い平和”など存在しない」ですか。確かに言われてみれば、今までの戦争で戦ってきたフォーミュラや有力敵にも、それぞれの言い分があったように思えましたね。
――って、この呪い、キャバリア越しでもきついですね。では早速UCで強化(状態異常力重点)。【(各種)耐性・オーラ防御】でこらえつつ、【ダッシュ】で強行突破しちゃいましょう(【限界突破・リミッター解除】)。
※アドリブ・連携歓迎
●理解できるが認められないもの
オブリビオンとは世界の絶対敵であり、猟兵にとって完全に共存しえるものではない。あのアスリートたちでさえ、なにかしらの勝負事があって初めて均衡が望めるのだ。お互いにそれなりの距離を保ってそれなりに融和する――というのは、はたして本当に出来ることなのか?
バハムートキャバリアにおいては、現状は否だ。百獣族はかつて滅びた死者そのものであり、死者の言い分を認めてしまえば生者が生きる理由がなくなる……辛く苦しい生をあえて行う理由が。鋼の咎を拭い去り、鎮魂のために騎士道を誓った人類の反省さえもが、「死ねばよいのだから」という理屈で無になる。ゆえに認められない。
「……なんて、今までの敵の言い分まで斟酌してるときりがないですね」
ホワイトラビットを駆るシャルロッテ・ヴェイロンは、凄まじい呪いに顔を顰め嘆息した。
納得できるものも、そうでないものもあったが、なんの主義も主張もなしに破滅を齎そうとするものは、案外に少なかったように思う。
ある種の生存競争のような様相を呈したものもあれば、歪んだ愛が根源にあるような邪神もいた。
その一つ一つをつぶさに精査して、話し合い、是非を決めているようでは、残念ながら猟兵の戦いはいずれ後手に回る。現状でさえグリモアという規格外の超物質があって、ようやく対等たりえるのだ。
「わたしらしくないことを考えちゃうのも、呪いのせいです、かね……っ」
咳き込むと血が混じった。病毒に脅かされているわけではなく、外側から流し込まれる苦痛に臓器が異変を生じているのだ。己が痛めつけられ傷つけられていると、肉体が誤認している。シャルロッテは懊悩を意識的に外へ切り離し、ただこの領域を突破することだけを頭に思い描いた。
白兎はその意のままに駆ける。終わりのない戦の先を目指すかのごとく――。
大成功
🔵🔵🔵
グラン・ボーン
苦痛か
耐えるしかないな
(キャバリアを超える体躯の巨人
身長も高いが、その肉の圧力が彼をさらに大きく見せている)
さんざん相手をぶん殴ったり、関節を破壊してきたが、俺だって同じ事される覚悟で戦ってきたんだ
やってやるさ
(呼吸を整える
大きく吸い、ゆっくり吐き出す
呼気とともに丹田に気をためチャクラを回す
それを全身に巡らせる
その気の流れを螺旋回転させる
螺旋力によって生まれた力で激痛に耐える)
激痛の中浮かぶのは、自分に倒されたやつらの死体の道
首がねじれたり、関節が別方向に曲がっている
そいつらの顔が全部自分の顔に見えた
さすが俺の技だ、いてぇ
(痛みはあるが、それが自分のすごさだと思って耐えながら進む)
●屍の道
グラン・ボーンは愚直に真っ直ぐ進む。彼は何か祈祷であるとか、術式であるとか、あるいは超自然的な防護で己を鎧うこともなかった。
強いて言うなら呼吸法によって気を巡らせ、丹田に凝縮したチャクラを経絡に回しているが、なんとかいう大層な魔術や神の奇跡というほどのものでもない。鍛錬と克己によって辿り着ける範囲の「技術」だ。
つまりこの男は、それ
だけで耐え、歩いている。
「はは」
あまつさえ笑っていた。緊張の過負荷で頭の血管がいくつか切れ、まるで戦傷の如く――あるいは返り血めいて――血の雫に顔を汚され凄絶に笑うさまは、鬼だ。巨人というよりも鬼神に等しい。呪いを振りまく元凶と断定されてもおかしくないほどに、凶々しい。
彼は何をもって笑っているのか。
それは愉悦でも皮肉でもなく、称賛だった。
これほどの激痛を齎す呪い。さぞやすさまじい憎悪、そして戦士としても一流なのだろう。腕が鳴る。キャバリアをすら超越する巨体は戦いへの期待でみしみしと軋み、今すぐにでも獣どもと殺し合いたくて心臓が脈動していた。
そこに慚愧であるとか、憐憫、後悔、悲嘆の類はない。そのようなセンチメントは、グランには無縁だ。彼はとうに、己が傷つけるならば己もまたそのようにされるという当然の事実を受け入れ、そして覚悟している。いまさら何を煩わされることがあるというのか。
「さすが俺の技だ、いてぇ……」
グランは己の後ろに続く死体の道を幻視した。それは関節を破壊され、あるいは胸郭がへし折れて陥没している。破壊。純然たる破壊。
納得して死んだ者がいた。
最期には情けなく喚いた者もいた。
むしろ死を望んでいた者も。
「へへへ……」
関係はない。結局は、勝った己が"すごい"のだ。
この苦痛は、グランからしてみれば勲章のようなものだった。不思議にも阻むための呪いが、さらに耐え進むための活力を齎していたのである。
大成功
🔵🔵🔵
葉隠・香
この世界の作法は聖なる決闘…つまり天☆才カードデュエリストたるボクの出番ってわけだねッ!
まあ、ボクレベルのデュエリストならこんな戦いお茶の子さいさいなんだけど…。(呪いの土地に一歩踏み入れる。その瞬間、なんか色々苦痛がくる)
ぴぎゃあああッ
!?!???
何コレ、ここまでヤバいなんて聞いてないッ!?無理ムリ絶対ムリィィーーーッ!?
ふ、ふふん、フィールドが呪われてるならフィールドを上書きすればいいのさ。
手札から【迷宮の森‐バグフォレスト‐】発動ッ!
呪われまくった土地に生命満ちあふれた森を生やしたよ。
迷路を踏破しなきゃだけどあんなヤバい土地を歩くよりマシだよね。
(ちなみに大分迷った)
【アドリブ歓迎】
●天☆才カードデュエリストの誤算と当然の結末
かなり珍妙な小動物が猛スピードでタンクローリーに激突したような鳴き声が響いた。それは珍獣……ではなく、葉隠・香の上げた悲鳴(多分)である。
「な、何コレ!? ヤバいヤバいヤバい! ここまでヤバいなんて聞いてないッ!」
現代ではコンプラ的なあれこれで絶えて久しい、往年のバラエティ番組で体当たり系のロケをやらされるおもしろ芸人みたいな感じのいいリアクションだった。多分15年ぐらい前にタイムスリップしてその手のバラエティ番組出たら、レギュラーコーナーぐらいは任されそうである。猟兵よりそっちのが向いてんではなかろうか(カードデュエリストという大前提はもうこの際置いとく)。
……冗談はさておき、香が(色々と)ナメていたことは確かである。グリモア猟兵の忠告はちゃんと聞いたほうがいい。彼女は何度目かぐらいに自戒した。おそらく次の冒険までには忘れているだろう。
「無理だ、ムリ絶対無理! ……いやでもちょっとだけ」
ちょい。香は呪いと呪いでないエリアの境界線で、ちょびっとだけ呪いエリアにつま先を入れてみた。激痛!
「やっぱり無理ムリ絶対ムリィィーッ!?!」
ありましたよねこういうの。熱湯なんとかみたいな。無理なら無理で帰ればいいものを、わざわざ期待されているリアクションをやるあたり筋金入りだ。猟兵として? NO。カードデュエリストとして? NO。芸人としてである。
だが、そう。一応香はカードデュエリストなのだ! 一応!
メインジョブな気もするけど、一応そうなのだ! 今のところカードデュエリスト要素はないが、ここから出てくる! はずだ!
「……ふ、ふふん、それならフィールドを上書きすればいいのさ! ドロー!」
香はカードを引いた。
「手札から
迷宮の森を発動ッ!」
ドンッ☆ 見よ、彼女の周囲に芽吹き、急速に成長していく森を!
「これなら呪いの中を歩くよりマシのはず。さっすが天☆才カードデュエリストのボクだね!」
香は意気揚々と森の中に踏み込んだ。
「あっ痛い!? 薄らいだけどこれけっこう……痛い痛い痛いリアルタイムに侵食されてる!? っていうかここどこォー!?」
迷った上にリアルタイムアタック状態になり、逆に苦しんだという。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
白きパイロットスーツを身に纏い、
鋼の超人を駆って呪われた地を進む
生きとし生けるものは、なにかを殺し、喰らわねばならぬ
それすらも罪と呼ぶのなら、その罰を受け入れ、乗り越えてみせよう
状態異常を弾き返す力はあるが、敢えて真っ向から呪いを受ける
猟兵として無数の戦場を駆け抜け――いや、それ以前から闇の世界で生き抜くために数え切れないほど殺してきた
百度狂死しても飽き足らぬ苦痛を、【気合い】と【根性】で捻じ伏せる
戦うと決めたのだから、如何なる苦難があろうと貫き通し、やり遂げる
過去を踏み躙ったのなら、
勝者の責務を果たさねばならない
未来へ向かって進まねばならないのだ
●原罪
生命活動に犠牲は必要不可欠。何かを得ることは何かを奪うことであり、そこに善悪はない。生物の当然の活動すらも、この呪いは罪と断じて苛むのだ。
「……いいでしょう」
オリヴィア・ローゼンタールは猟兵として以前に、神を尊ぶ聖職者として呪いに相対した。
ある宗教において、人はその生誕の時点で罪を背負うとされる。ゆえに全ての魂は平等に罪深く、悔い改めることで救済の道は開かれるのだと。全てが平等に罪深いのだからこそ、全ての罪もまたいずれ許されるのだと。
百獣族はそのような神学的論争を望んでいようか――否。これはより根源的な争い。すなわち、生存競争だ。
ただしそれは、自然界において起きうる競争とは違う。
オブリビオンとは死者であり、過去であり、残骸。奴らの存在は破滅とイコールであり、犠牲
だけを生じる。罪を弾劾する者たちは、その実罪人よりも悪性である。たとえその主張に如何なる同情の余地があろうとも。
「――……っは、く……ッ!」
オリヴィアは鋼の超人の只中で、歯を食いしばり地平線を睨んだ。
敵。敵がそこにいる。救うべき者たちを救うために討つべき死者が。
幾百狂死しても足りぬ、凄絶な苦痛。オリヴィアの眦を、聖痕じみた血の涙がこぼれ落ち、純白のパイロットスーツを穢した。
「……これが、私達に対する罰であると、言うのなら……」
弾き返そうと思えば――その全ては不可能であろうが――出来る。だがオリヴィアはあえて受けた。減衰できるものすらも、その心身で真っ向から。
「……乗り越えることで、示してみせます。私達の、
生を……ッ!!」
生きるために犠牲を払わずにいられる生物など、存在しない。それはもはや生きているとは言えないもの、あるいは神に類するものだ。
オリヴィアは違う。
生者であり、過去を踏みにじり未来を求めるものであり、今の時点で全ての死者に対する勝者である。
そこには義務がある。踏破したが故に進み続けるという、執念という名の
義務が。
成功
🔵🔵🔴
エドゥアルト・ルーデル
ヒャッハー頭ねじ切っておもちゃにしてやるぜェ!
うおっスゲェ勢いで呪いが飛んでる気がする!なんなら特定の誰かさんからも飛んで来てる気がするでござるね!ヤバいね!
知った事ではないわ!呪いとは状態異常であり自由に
叫べば自由に返送できるんでござるよ、これぞ天の意無視する無法、天意無法!自由とはそういう事さ!
なので返して今すぐ殺す!全員殺す!現地まで到底待てぬわ!まあ呪い返しした所で死にはしないでござろうが…
拙者は趣味で気ままに赴いて気ままに戦うセカンドライフ謳歌中でござれば!ギャヒッ
地の底から這い来たヌケ作と戦いてぇ以外に無いわ!さあスキップしながら踏破しようぜ!ヤンパンパパンルラルラ…
●どこの王子様?
「うおっ、すげえ呪い……拙者に対するラブレターかな?」
エドゥアルト・ルーデルはドバドバ血の涙を流し、なんなら口の端からもキツネの
生物みたいな感じで血を流し、だがいつも通りだった。どうやればこいつのペースを崩せるんだろう。天地開闢からやり直すしかないのかな?
「ヤバいでござるわよ! なんて苦しんでいられるかァーッ!!」
エドゥアルト、自分で言って自分でキレた! 無からエネルギーを引き出したらもうこいつ単体で世界なんじゃないか? んっあれつい最近そんなようなオブリビオン倒したばっかでは??
「現地まで到底待てぬわ、呪い返して今すぐ殺す! 全員殺す!!」
なぜかエドゥアルトはビリビリ服を破きながら(本当に何故?)ブチギレた裁判官みたいなツラで猛進! なお、ダメージはばっちり食らっており、めちゃくちゃ苦しんでいた。その上でキレている。なんだこいつ本当に怖い。
「呪いが回ったか……」
そして死んだ。
えっ死んだ!?
「死んでいられるかァーッ!!」
復活! 執念だ! あまりにも
自由すぎる!
「戦いてェ~……地の底から這い来たヌケサクどもと殺しあいてェ~~~!!」
とにかく前に進もうとする執念はばっちりであり、苦しみをはねのけるモチベーションも十分だった。はたしてこいつは本当に人類の味方なんだろうか? ここで呪いに飲まれて滅びたほうがいいのではないだろうか?
獣騎が案外なんとかしてくれるかもしれない。いややっぱりダメかもしれない。とりあえず死んだかのように倒れたり倒れなかったりしつつ、エドゥアルトは頑張って踏破したのである。誰かこいつを止めてくれ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『獣騎ゴブリン』
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POW : ゴブリンアックス
【ゴブリンに伝わる呪文】を唱えて投擲した【斧】がレベル×100m半径内で最も【知力】の強い対象を自動追尾・自動攻撃する。
SPD : ゴブリントラップ
【獣騎の装甲】を一定量消費し、触れた対象を切断する【超振動ワイヤー】か、触れた攻撃を無効化する【ゴブリン網】を、足元に設置する。
WIZ : フライングゴブリン
【ゴブリン族の血】に宿る【先祖の魂】を自身に憑依させ、レベル×5km/hの飛翔能力と【爆発】を放つ能力を得る。
👑11
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「来たか、猟兵」
一体のゴブリンが呟いた。
「この世界の外より来たりし戦士ども。赫怨の呪いは止められぬ。止めさせぬ!
我らには正当なる復讐の権利あり。
然して、貴様らにもまた押し通る権利がある!」
一体、また一体――否、変形したその姿は「騎」と呼称すべきか。
「ゆえに我らは聖なる戦いの法に依りて、貴様らを阻む! 通りたくばこの身を砕いてみせよ!
かつてこの世界の人どもが、卑劣にも我らを皆殺しにしたように。
死者を踏み躙るがいい!」
鬨の声が、呪われた血を揺るがした。
同胞の骨によって築かれた陣地から、無数のゴブリンが飛び出し、猟兵へと戦を仕掛けてくる。
正当な戦に則り、その捨て身の挑戦を受けるか。
あるいは無法に則り、卑劣に残虐に粉砕し殲滅するか。
いずれにせよ、戦いは避けられない。
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
なんとか突破できた…そして百獣族か!
…いいだろう!騎士ベルト・ラムバルドが相手だ!貴様等を打ち倒してやる!行くぞ!!!
キャバリア操縦し突撃!
二刀の剣を抜き振るい飛び交う敵群を鎧砕きと鎧無視攻撃で一刀両断してゆく!
速いな!数も多い!ぬぉ…爆破も仕掛けてくるのか!?
くそ…騎士道の権化を舐めるなよ!
私は貴様等とは違う世界から来た!
鋼鉄の騎士道が新風を巻き起こしてみせる!
UC発動しカリスマオーラ纏いて瞬間思考力と窮地の閃きで敵の行動を先読みして
我が愛機の高性能を駆使して敵を返り討ちにしてみせる!
すまないな…!
だがな…貴様等の怨念に倒される訳にはいかんのよ…!
●騎士たる所以
ベルト・ラムバルドは大きく、肺いっぱいに空気を吸った。瞬間的に込み上げた躊躇や迷い、百獣族への憐憫、あるいは対話の可能性への希望……そういったものを、まとめて籠め、吐き出す。
「――……いいだろう! 騎士ベルト・ラムバルドが相手だ!!」
堂々たる叫び。獣騎のうち数機が、それに反応し武器を掲げた。その仕草には敬意があった。殺し合う間柄で、しかし相手のパーソナリティや信念を理解し重んじる、矛盾した礼節が。
「貴様らを打ち倒してやる! さあ、行くぞ!!」
ゴウ! パロメデスの
外套が波打ち、推力が質量を前へ押し出す。地面からおよそ1メートルほどの高さを猛スピードで滑空、左右のマニピュレータに構えるは光と実体の双剣。先頭の獣騎との相対距離が、あっという間に縮まる――そして、接敵!
「騎士ラムバルド! 戦士クレアルカングがお相手仕る!!」
最先鋒のゴブリンは戦国時代の武将じみて名乗りを上げ、アックスを両手に握り振り上げた。相対距離10メートル程度まで迫った瞬間、騎体は斜めに加速し飛び上がる。ユーベルコードによる速度増加か。
「うぅるぁああ!!」
獣の雄叫びが大気を震わせた。装甲をビリビリと震わせる咆哮は、コクピットのベルトにすら皮膚を震わせる錯覚を与える。鏃を描くような鋭角の軌道で、斧が降る!
「とても前哨戦とは……思えんなっ!!」
ベルトは左の西洋剣を掲げ、斧刃でなく柄にぶつける形で受けた。重い! 直撃を避けてなお、機体が押し込まれかねないほどの圧力。それは単なる出力の問題ではない、鬼気迫るほどの……!
「だが、貰ったぞ!」
右の光剣が扇を描いた。輝きが獣騎の胴体を横に通り抜けた直後、ガラスのような切断面が露わになる。獣騎は一撃で両断されたのだ。
「見事なり……!」
称賛の言葉は爆炎に飲まれた。ベルトは外套を翻し、獣騎の残滓を振り払うように90度反転した。左方向から二騎目!
「我はグロンリオスズ! 受けよこの一撃ぃ!」
斧の利点である重量と遠心力を活かした、横薙ぎ。再び西洋剣で受け、光剣の刺突で仕留めるか――否。ベルトの瞬間思考力は、敵の狙いを先読みした。右方向へ迂回……つまり今のベルトから見ると、背後を取った三騎目がいる!
「挟撃か!」
「欺騙に斃れし我が先祖よ! このウドヴァクトにお力を!」
背後の獣騎を異様なオーラが鎧い、突き出された両掌に火の元素が陽炎となり凝縮された。未来予知めいて、ベルトは爆炎が己を飲み込む風景を幻視する。前の斧に対処すれば爆発攻撃、背後に対処すれば今度は己が両断される。如何にして凌ぐか!?
「……
鋼鉄の騎士道を、ナメるなよ!」
ベルトは90度で留めかけた旋回を、むしろ逆に加速した。
「「何
……!」」
ギィン! と、重々しい金属音が響いた。左の西洋剣の鋒が、斧の重心を掠めるように弾いたのである。ベルトは180度まで回転した瞬間、そのまま西洋剣を手放した。質量はまっすぐに擲たれた……爆破の魔力を放とうとするウドヴァクトめがけ!
「なんと!?」
グロンリオスズは、驚愕と光刃を同時に味わった。ベルトは再び推力を発生させ、串刺しになったウドヴァクトを逆袈裟に斬り上げ、西洋剣を回収。そこで一回転を終えた。爆発が外套をバサバサとはためかせた。
「……すまないな」
ベルトは瞑想的に呟いた。
「だが、貴様らの怨念に倒されるわけにはいかんのよ……私は、騎士なのだから!」
新たな敵が迫る。ベルトはあらゆる懊悩を捨て、再び風となった!
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
復讐に足る理由がある。
そのことは理解できますし、同情もしますが…
人を害することに、正当性などありません。
少なくとも、私はそれを正当だとは認めません。
故に止めます。
【念動シールド】を前方に展開しつつ、サイキックウィングで飛翔。
真正面から突進して、すれ違いざまにフォースセイバーで斬りつけます。
そのまま速度を緩めることなく直進し、通り過ぎたら弧を描いて反転。
再度敵に向けて突進して、ヒットアンドアウェイを繰り返します。
投げてきた斧は、基本無視ですかね。
正面なら弾けますし、背面なら振り切れるでしょう。
側面のは当たる可能性もありますが…
危なそうなのだけ、羽搏いて回避するか、剣で切り払うかで対処しましょう。
●あっけない幕切れ
グラインダーじみて高速回転する斧が、甲高く空気を切り裂き飛来。まもなく念動力の盾に正面から激突し、超自然的な火花で大気を灼く。さらに二つ、三つ、四つ!
「正面から堂々と来るだけは、ありますね……」
サイキックキャバリア「アレクサンドラ」コクピット内、エリー・マイヤーが無表情に呟いた。積層展開した念動シールドが一枚砕け、二枚砕け、三枚目を突破される前に超常の翼が広がった。頭上スレスレを劈く斧をくぐり抜け、アレクサンドラは一気に前へ飛ぶ!
「何……!」
ゴブリンの魔導戦士・シレビルムが最後に見たのは、猛スピードで迫る残像だった。通り抜けた斧が楕円軌道を描いて背後から襲いかかった時には、アレクサンドラはシレビルムの遥か後方。
フォースセイバーで両断された獣騎は爆炎に消えた。
「次」
エリーは弧を描き反転。左右と上から迫る斧を再び回避し、二体目の獣騎に挑む。確かグルイバークと名乗っていたか。ゴブリンの習性なのか、それとも百獣族というものがそうなのか、敵は己の名を叫び、ある者は己がいかなる無惨な死に様を辿ったかを語り、正当なる復讐の下にエリーを阻んだ。
「ぬう! 聖なる決闘の相手に足る実力、これが猟兵……!」
エリーは称賛の言葉を淡々と受け流す。獣騎の斧槍を踊るように回避し、腰部をフォースセイバーで切断。斬撃を終えたところへ斧が飛来!
「次から次へと。私の知性を認めてもらえてるんですかね」
二本のうち右からの斧は剣で払う。背後に回り込んだものはサイキックウィングをさらに拡大し、加速することで振り切ろうとする。斧は執念深く迫る。籠められた呪文が他のものと違うのか? エリーはさらにサイキックエナジーを振り絞る。サイキックウィングが限界まで延び、羽ばたく……!
「我が一撃、止められるかぁ!!」
正面にゴブリンが出現した。否、ここで術者が自ら仕留めることまで織り込んでのセットプレーか? 念動シールドを……間に合わない!
エリーは軽く舌打ちを漏らし、フォースセイバーをかざした。ヂヂィイ! 重い衝撃がアレクサンドラを揺るがす。背後からの斧を抜かりなく横へブーストすることで回避。回転斧をキャッチした獣騎は地面を跳ぶ稲妻じみたジグザグ軌道で追従。
「さぞや名高き戦士と見た! 名乗れ、猟兵よ!」
「
騎士道には縁がありません」
「ならば知れ! これこそイークルキ自慢の斧術よ!」
ゴブリン改め斧使いのイークルキは長柄と投斧を巧みに操り、
猿じみた軽く重い連打を繰り出す。繰り出す、繰り出す! エリーは後方へ推力を得ながら辛うじて受け流し続ける。その刃には重みがある。積年の復讐。憤怒が。あって然るべき憎悪が。エリーは目を閉じ、一瞬に満たぬ刹那の間に思索を巡らせた。
そして全てを切り捨てた。理解し、同情した上で、それらを全て無視した。
「貰った!!」
「いえ、私の勝ちです」
空気が爆ぜた。サイキックエナジーの瞬間的な炸裂にサイキックウィングが散り、再び生じる。粉雪のようなサイキックエナジーの粒が、貫かれた獣騎を彩る。星空の如く。念動シールドを一点に集めての突撃。ヒットアンドアウェイを可能とする機動力を攻撃に転じれば、この程度の芸当は容易い。
「どんな理由があろうと、誰かを害することを「正しい行い」には出来ませんよ」
エリーはその言葉が己に当てはまることを理解したうえで言い捨て、次の敵へ飛んだ。たとえ絶対の正義でなくとも、同じように間違ったものをこの手で止めるために。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリス・セイルハート
そ、その通り…です。
貴方様方の復讐を願う心は、至極正当なるもの…ですが。
苦しむ民を見過ごすことなど、わ、私には、できません…!
セイルハート家が騎士ラブリス、円卓の騎士が一人として、その決闘、お受けします…!
真っ向から勝負を挑みますが…流石に多勢が相手では不利は否めません。
ですので渦巻く冷風を発動、冷気で相手の動きを鈍らせつつ戦って参ります。
基本はTempesterを振るって交戦。
【なぎ払い】に【風を操る】ことで風圧を上乗せして敵を【吹き飛ばし】、包囲される状況を避けつつ、あわよくば強化した風圧で敵の罠も吹き飛ばせればと。
…怒りを受け止め、その上にて祓う。
それもまた、きっと、騎士の務め…。
●苦痛よりなお苦しきもの
人は合理性だけでは生きられない。心という、人と獣とを分かつモノは、美しく気高く……しかしそれゆえに余分な苦しみを増やしもする。
たとえばそれは後ろめたさだ。
(「なんて――強く、激しい怒りと憎悪
……!」)
ラブリス・セイルハートは呑まれかけた。騎士であるにも関わらず?
……むしろ逆だ。騎士だからこそ呑まれかけたのだ。
この世界で生まれ育ち、先祖が犯した鋼の咎の愚かしさ、虚しさを他の猟兵より知るからこそ。
ある意味で当事者であるがゆえに、理解と同情、憐憫と罪の意識を抱いてしまう。
ならば彼女は弱者だろうか? 倒すべき敵に同情し剣を鈍らせてしまう、騎士道の風上にも置けぬセイルハート家の面汚しと謗られるべきだろうか?
否。
何故なら――少なくともセイルハート家の教えでは――騎士は
そう在らねばならないのだ。
「……貴方様がたの、復讐を願う心は……至極、正当なるもの……です」
ラブリスはキャバリア諸共棒立ちのまま呟いた。
「首級を差し出すつもりになったか、円卓の騎士よ! ならば覚悟ォ!!」
斧を振り上げゴブリンが迫る! 一度戦場に立ったからにはこれは卑劣と言われるはずもない! むしろ怯え臆したならば慈悲深いとすら言える介錯の一撃――しかし!
斧槍が、甲高い金属音を立てて断頭の一撃を拒んだ。
「ぬう!?」
「……だからといって、苦しみ嘆く民を見過ごせるわけが、ありません……!」
ラブリスは細剣の柄を強く握りしめた。コクピットに風が渦巻き、外套を翻す。彼女は己に纏わりつく迷想を振り払うため、強く意思を発露した。キャバリアが応え、獣騎もろとも斧を押し退ける!
「セイルハート家当代、ラブリス! 王なき円卓の信念に剣を捧げし騎士の末席として、その決闘をお受けします!」
竜巻が荒れ狂った。のけぞった獣騎は吹き飛ばされ、しかし地面に柄を突きたて削りながら堪える。
「セイルハートの末裔か! よかろう、ならばこのイアナルヴがその命を戴く!」
獣騎は名乗りとともに虚空を爪弾くように片手を伸ばし、引いた。ラブリスは即座に狙いを判断し、風に乗って垂直に飛翔! 直後、キャバリアの存在した場所を極細ワイヤーが切断した!
「我が仕込みを見抜いたか、出来る……!」
「風よ!」
ラブリスの叫びに世界が応えた。爆裂した風がキャバリアを斜めに降らせ、大地を削る斧撃の重みを高める。地鳴りめいた轟音とともに、イアナルヴの右半身は抉れ、吹き飛んだ。
「無念……!」
狂おしいほどの嘆きの断末魔を振り捨て、ラブリスは土煙を睨む。
風が煙を払う。キャバリアをも捕らえる大型の網だ!
「は、ぁあああっ!」
斧槍を烈風が薄い膜のように取り巻き、一回転しながらの斬撃によって無数の風刃となって荒れた。投網はズタズタに切り裂かれる。地面が極低温に霜を張り、舞うような跳躍からの着地で罅割れ砕ける。
「双子獣騎・ゾーズィー!」
「同じく片割れゾルクゾク!」
「「参る!」」
挟まれた。側面を取った二騎が鏡合わせのような完璧な動きで仕掛ける。ラブリスはあえて足を止め、斧槍を回転させる。
「動かないで……くださいっ!!」
石突が刺さった地面から、放射状に空気が凍りついた。十重二十重に張り巡らされたワイヤーの結界は裂け、双騎もまた吹き飛ぶ!
「「うおおおっ!?」」
「貴方様がたの怒りは、怨嗟は、切り捨てなどしません……!」
ラブリスは左のゾーズィーが地面に落ちるより早く、槍矛で貫いた。
「その全てを受け止め、そして打ち破り進みます! それが、
騎士の――務めっ!!」
左足を大きく後ろへ下げ、振り返りながらゾルクゾクに斧を……叩きつける! 断末魔が響き、双騎は爆発した。
大成功
🔵🔵🔵
傀儡遠・累
んー、呪いとかそう言うの正直よくわかんないけどさぁ、何だか刺激的な予感がするねぇ。
折角だからと戦いに役立ててみたいのが、『超改変捕食(ツゴウヨクナル)』って名前にしたこの技。
私が使う鮫や刃物とかで、敵を喰らって体を破壊する。
あ、それだけじゃなくてこっちが重要なんだけど、『存在』を奪う事も可能でね、(猟兵以外の)他者の認識を歪めて、『存在』を奪われた対象がどういう存在だったかって言うのが分からなくなるんだよねー。それで乱闘起こすのがプランB。どう?
ちょっとでも手を加えるとすぐ崩壊する……脆いなぁ。
(○アドリブ、連携可。また、痛みに対し悦びを覚える特殊な子です。)
カタリナ・エスペランサ
《礼儀作法+騎士道》
戦士の誇りを掲げるのであれば望んで無碍にする気も無いわね
此方も解呪を急ぐ身、可能な限りとは添えるけれど
リリー・ユーフォリア(※本名)の名の下、子孫に負わされる先祖の咎を否定するわ
無辜に害為すを討つべく押し通る――異論がある者は掛かって来なさい
《聞き耳・瞬間記憶》
相手の名乗り等は全て記憶に刻む
まず相手の足元に触れぬよう飛翔し垂直方向に一閃、【天国と地獄の番人】蒼雷起動
相手を片端から引き寄せる事でUCのトラップから引き剥がすわ
《戦闘知識+第六感+心眼》動きを見極め攻撃を躱しつつ
相対速度も上乗せして《早業+怪力+装甲破壊+貫通攻撃+功夫》
射程内の全て、正面から打ち砕き進みましょう
オリビア・アンチェイン
※アドリブ・絡み歓迎
彼らが、百獣族。
復讐の為に蘇りし者達。
卑劣に、無情に、無惨に滅ぼされた――その憎悪は、当然のものだろうね。
ああ、きっと。私がかつて手をかけた人々も。
だと、しても。
それは、今を生きる人への暴虐を許す理由には、ならない。
先の路で心身とも悲鳴を上げていても、膝を折る理由にはならない。
罪を贖う為に、この引き金を卑劣に、無情に引こう。
UCを発動し、長距離狙撃形態へ。
戦線のやや後ろに立ち――正々堂々戦う者へ、横槍を入れて狙撃して仕留める。
未だ私は力不足、確実に撃ち抜かせてもらうよ。
それに――こういうやり方の方が、手慣れていてね。
亡者よ、私を恨むといい。
それを受けて尚、私は彼らを撃つ。
●誰かが背負わねばならない
怒涛という言葉の概念を物質化し、獣という形に凝り固めたような暴威だった。
仲間が斃れ滅ぶたび、その怒りをさらなる糧とし獣騎は吼え猛る。雄叫びに塗り固められたのは憤怒と憎悪、かつて人類が犯した拭いきれぬ罪業に対する、あって当然の感情。
その全てを真っ向から受け止めるかの如く、カタリナ・エスペランサは堂々と、むしろ悪目立ちするほどに翼を広げ、天を戴いた。
「アタシは――いいえ、今はこう名乗りましょう」
カタリナは大きく息を吸い込んだ。
「我が名はリリー・ユーフォリア! 聴きなさい、獣ども!」
朗々たる名乗りが戦場に轟いた。
「子々孫々に咎を負わせ、その報いを与えんとするあなた達の業を、私は否定するわ。
如何なる理由があろうとも、無辜の民に害為すモノを私は認めない。ゆえにあなた達の首魁を討つべく、
戦場を押し通る……!」
カタリナ……あるいはリリーの周囲を、何体もの獣騎が取り囲む。包囲網の形成をわかった上で、彼女は名乗る。それが戦場のならわし――否。
「異論があるならば、かかってきなさい。尽く討ち滅ぼすのみ!」
「よくぞ吠えた、戦士ユーフォリア!」
包囲網の正面に立つゴブリンが叫び返した。
「ならば同胞たちに代わり、まずこのクロイルヴィオザが一の太刀を――」
正々堂々たる名乗りには、相応の礼儀を以て。
殺し合う敵同士だからこそ、最後の一線として矛盾した礼節がある。カタリナあるいはリリーは、その名を、包囲網から歩み出る姿を正面から見返し、刻み込んだ。
破裂音とともにこめかみが爆ぜ、傾いた姿も含め。
「な、」
戸惑いの呻きは、おそらくリリーと敵とで重なっていたはずだ。撃たれた獣騎は言わずもがな、戦場にあってリリーは唖然とした。
「これは、貴様の謀では……!」
ないのだな、という言葉は二度目の破裂音に呑まれた。頭部が消し飛び、横倒しになった獣騎は爆発する。屍は遺りすらしない。
「狙撃だ!」
何者かが叫んだ。その言葉を肯定するかのように、三度目の破裂音。一体のゴブリンが額の中心を撃ち抜かれ死んだ。
「何処からだ!?」
「おのれ、卑劣な……!」
「戦士の名乗りを穢すとは!」
獣騎たちは怒り狂った。リリーは憤怒の渦の中、飛来した弾丸を辿りその者を認識した――少女めいた猟兵の姿を。
彼女の名は、オリビア・アンチェインと言った。
少女めいているというのは、しかし左肩から先だけは別だ。なぜなら左腕を
剥離したオリビアは、代わりに物々しい粒子砲を
義体に接続しているからである。
「亡者たちよ、私を怨むといい」
オリビアは祈るように呟き、四発目の弾丸を装填した。彼女は己を認識し、目を見張るリリーを……カタリナを、その視線を、多くの感情が同時に溢れ出した表情を認識している。彼女がいかに正当な決闘の下に戦おうとしていたのかも。
オリビアは、その上でそれを踏み躙った。
猟兵としての力不足。
戦士としての適性。
個人としての才覚と経験量。
理由は複数あるし、そのどれもが同じ割合で存在する。もしカタリナがオリビアめがけ猛スピードで接近し、痛罵し、そしてその理由を問うたならば、淡々と無表情で説明しただろう。申し訳無さそうにすることも、逆に嘲ったり皮肉ることもなく。
(「解っている。これは敵にとっても、味方にとっても恥ずべき行いだ」)
空気を破裂させ、砲弾が跳んだ。また一体、獣騎が風穴を穿たれ爆発した。堂々と戦う者をあえて狙った横槍は、オリビアの意図通り
一撃必殺を次々に達成する。
(「卑劣に、無情に、無惨に滅ぼされた彼らにとって、こんな行いは憎悪を掻き立てるだけだ。彼らの無念を強める行為だ」)
五発目が装填される。エネルギーが駆け巡り、砲身で螺旋を描いて加速した。オリビアは思念のトリガを引く。破裂音。誇り高き獣騎が滅びる。
(「……私がかつて手をかけた人々も、同じだったはずだ。私は――」)
オリビアは表情を変えず、六発目を装填した。
カタリナは彼女の鉄面皮を睨んでいる暇はなかった。新たな混乱が生じていたからだ。
「脆いなぁ。脆すぎるよ」
ぐぱりと巨大な鮫が
生まれた。傀儡遠・累 の足元から生じた鮫は大口を開け、獣騎を呑み込む。累の接近と攻撃に気付いた節すらない。オリビアの狙撃のせいか? ……否。
「ブレエトクス! 貴様血迷ったか!?」
今しがた喰われたゴブリンの名を、別のゴブリンが呼んだ。
「何を言っている、ギギジェレマ! 貴様こそ……!」
また別のゴブリンが叫んだ。たちまち両者は斧を向け、同胞を睨み、ぶつけ合った。バッファローが角を叩きつけ合うように。
「混乱に紛れ、同胞を手に掛けるなど! 許せぬ!」
「誇りなき戦士に絆されたか……!」
累はその隣を悠然と歩く。死を克服した肉体から赤黒く汚れた刃物が爆ぜるように噴き出した。
「ぎゃあああ!?」
悲鳴。累は獲物を手にかけたことよりも、肉体を切り裂いた刃物の齎す痛みに酔いしれた。
「ちょっと
存在を奪っただけで、これかぁ。呪いは悪くないけどねぇ!」
悦楽の笑みを浮かべ、ケタケタと笑い、病んだ地を堂々と闊歩し、死を振りまく。誇りなど欠片もない死を。存在を簒奪し、味方と味方を誤認させ、誉れも何も遺さずに朽ちゆく死を。狂った少女がばら撒く。
(「――違う」)
カタリナは、あるいはリリーは思った。
何に対する「違う」なのか、彼女は自分で考えた。自分はオリビアのように卑劣な手段を講ずることなどない、という意味だろうか?
あるいは、累のように悦楽に狂い、誇りも道もなく、オブリビオンとの戦いを衝動の発散に利用したりしない、という意味だろうか?
どちらも違うように思えた。何故なら、リリーは、カタリナは、それが必要ならオリビアのような卑劣な――だが合理的な――攻撃を躊躇しないからだ。事実、これまで何処かの戦場でそうしてきたはずだ。恥も外聞もない吸血鬼や、邪神や、あるいは同じような悍ましいモノには、相応しい末路をくれてやったはずだ。
その闘争に高揚が、達成感がなかったはずはない。戦いを楽しんだことなど一度や二度ではない。驕慢を砕かれ泣き喚く敵を侮蔑し、見下し、笑い飛ばして滅ぼしたことが一度もないとでも?
それが「間違っている」とでも?
否。カタリナは脳裏によぎった思考を否定した。オリビアも、累も、やり方の違いはあれど間違ってなどいない。むしろ正しい。
呪いに苦しむ人々を一刻も早く救うためなら。既に話は聞いているはずだ。敵の首魁を滅ぼしさえすれば、呪いは消える。名乗りを上げる必要など、ない。そんなことを求められてはいない。
リリーは羽ばたき、飛んだ。混沌じみた死のあぶくを飛び越え、前へ。新たな獣騎が立ちはだかる。
「我が名はウォルザンプ! ここは通さぬぞ、リリー・ユーフォリア!」
「いいや、押し通る!」
一瞬の交錯。張り巡らされたトラップを垂直方向へ飛翔し回避したカタリナは、万物を滅ぼす蒼い稲妻をほとばしらせた。その名を、武を、無念を、感嘆のまなざしを、最期を、全て刻み込み見届けながら。
「疾い……!」
断末魔の代わりの呻きは稲妻に滅ぼされた。リリーはすでに飛んでいた。すれ違いざまに長柄斧の達人ポスガザムを両断し、吹き飛ばし、無刀の戦士クァザンクと激しい格闘を繰り広げ、打ち砕く。破裂音。新たな死。けたたましい笑い声。新たな死。
(「私は」)
リリーは、カタリナは、噴出する感情の奔流に惑った。猟兵は一枚岩ではない。己は軍隊に属した覚えも、正義の味方になった覚えも、何かの組織を構成し率いているわけでもない。オリビアのあの鉄面皮には名状しがたい感情が確かにあった。僵尸と成り果てた少女の
あの異能は、狂い壊れるに至るほどの恐怖の代償だ。そもそも百獣族は今を生きる無辜の民を、手前勝手な理屈で害する邪悪だ。否定すべき残骸だ。己はそれを滅ぼすために来たはずだ。
なら、どうすればいい? 今すぐオリビアに、累に、あるいは他に似たような手段を講じようとする猟兵を一人ひとり説き伏せ、力で叩きのめし、誇りには誇りで応じるべしと説いて回るか? 無駄だ。不可能だ。そもそも不要だ。敵と味方を間違えてはならぬ。彼女たちは誤っていない。己が絶対の正義でもない。敵の事情を斟酌する必要など、ない。では己が間違っているのか? 断じて否。間違ってなどいない。カタリナは、リリーは、断言できる。それほどの自負がなければ呪いを突破することなど不可能だった。ならば。
「――あ」
リリー・ユーフォリアはありとあらゆる感情を腹の底で練り上げ、一つの
声にした。それはすなわち怒りだ。
「ああああああッッ!!」
何に対する怒りだろうか。
卑劣な真似をせざるを得ない弱さに対して?
それとも、狂い壊れてしまった恐怖の根源に対し?
あるいは百獣族の誇りを踏み躙った鋼の咎へ?
「ああああああ――!!!」
ポルド。スヴィンゼク。キセノズスア。名を刻み、打ち倒す。倒す。倒す、倒す! 獣騎を滅ぼし前へ。怒りを燃やし前へ! 何もかもを焼き尽くし、前へ……!
「…………すまない」
その背中を後方から見つめ、オリビアは小さく漏らした。それは誰に対する謝罪なのか、何を反省してのものなのか。オリビア自身にも確と断言は出来ない。出来るわけがなかった。
「アハハ、痛い痛い! アッハハハァ――!」
壊れた少女は破滅の渦の中で踊った。それは空虚にも思えた。
女たちはただ、己に出来ることを為すしかなかった。もしかするとリリーの怒りの根源は、そうするしかない己の弱さに向いていたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ヘスペリス
その正しき怒り、我が烈義と鎮魂と慙悔を以て罷り通らせてもらおう!
戦の作法に則って騎士形態のマイト・ナインで立ち向かう
斬撃波で牽制しつつ盾受けしながら間合いを詰めて
捨て身の一刀両断でぶち当たる
国家代表たる騎士の戦いで恥知らずな真似など出来ようか!
そう簡単に勝たせてもらえる様な相手では無い
しばらくは一進一退の攻防が続くだろうが捨て身の打ち込みはきっと突破口をこじ開けられる筈
狙いは敵が斧を投げる瞬間
こちらもユーベルコードを発動して一気に加速!
最初は急旋回し音速に近い速度で攻撃を引き付けて
ある程度距離が離れた所で飛翔形態に変形し急加速!
超音速で急接近しこの身をぶち当て貫通攻撃を試みる!
これで仕舞いよ!
●鎮魂の祈り
バハムートキャバリアの騎士道とは、すなわち祈りである。
父祖の過ちによって滅びた獣たちの無念が晴れ、怒りと怨みを鎮めどうかその魂よ安らかなれと祈るための贖罪であり反面教師。それは所詮、生者の理屈でしかない――本来、死者がわざわざ反論を述べること自体が「有り得ない」ことだとしても。
「鋼の咎の犠牲となりし汝らの怒りは正しく、また我らは憎悪されるに足る咎人なり」
その都合の良さを自覚したうえで、彼女は決然と対峙した。
「されど我、シュロイツ王国王位継承者にして、王立黒鳥騎士団が筆頭騎士、ヴィクトリア・ヘスペリスは罷り通るのみ。
先祖の行いへの慚愧と無辜の民を傷つけられし義烈を以て、汝らに鎮魂の滅びを齎さん!」
「よくぞ吠えた騎士ヘスペリス! 相手に取って不足なし!」
ドウ! 壮絶な戦闘でめくれあがった岩の塊を砕き、獣騎が跳んだ!
「我が名はイグルヴの氏族が豪傑、ドルストロイコ! 推して参る!」
ひときわ体格に秀でるゴブリンは名乗りを上げ、分厚い斧を振り上げ一気呵成に下ろした。ヴィクトリアは空気の層を盾の前に生じ、見えざる壁との二段構えにて……受ける! 破裂した空気と凄まじい金属衝突音が重なり轟く!
「ぬう! 前のめりに受け勢いを削いだか! 出来る!」
「ぜぇ――あぁああっ!!」
裂帛の気合いとともに、シールドバッシュで護りを崩しての一刀両断。仕損じればカウンターで己が死ぬ捨て身の一撃。ドルストロイコは後ろへ飛び退きすぐさまカウンターを繰り出そうとしたが、しかしバックステップした時には胴体が真っ二つになっていた。
「黒鳥筆頭、名にし負うだけはある……! 同胞よ、先に還るぞ!」
「次だ!」
ヴィクトリアは鬼気迫る声で叫び、突き進んだ。相対距離20メートル、新たな獣騎が三体!
「イグルヴの三面鬼とは我らのこと! 長兄ポブロスズ!」
「同じく次兄ズレアグズ!」
「末弟ガリウルズ!」
他の獣騎と比べても瓜二つ……否、この場合は三つというべきか……の三騎は同時に斧を担いだ。担ぐように振りかぶった!
「「「受けよ我ら受け継ぎし、変幻自在のこの斧撃!」」」
投擲! 高速回転する手斧は魔力で遠隔制御されているかの如く、複雑な軌道を描き三方向から同時に飛来! ヴィクトリアは……おお、回避失敗! 左右と下から抉るように迫った斧が、マイト・ナインを斬裂した!
そして、そのシルエットは蜃気楼の如く掻き消えた。それは事実陽炎の見せた幻。黄金の影である。
「「「何!? 残像!」」」
「敵ながら、大した連携ね――けど!」
声は背後。三面鬼は振り返り長柄の斧による白兵戦に打って出ようとしたが、その時にはすでに勝負はついていた。
ゴウ――遅れてベイパーコーンの起こした衝撃波が荒れ狂い、飛翔形態の一撃離脱で貫かれた騎体はバラバラに四散する。
「これで、仕舞いよ」
「「「疾い
……!」」」
爆炎は同時に生じた。マイト・ナインは後ろを振り返ることなく、地面スレスレを飛ぶ。ただ全身全霊で戦い討ち滅ぼす、それこそが己の鎮魂であり慰撫なのだと示すように!
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
恥を知りなさいッ!ゴブリンなのにむやみやたら人を襲わないなどとはッ!
気が付いたら全身血でびっちゃびちゃだったでござるので餌代わりに流体金属君にあげつついでに融合でござるよ!
という訳で頭部に流体金属を押し当てて合体だァ!拙者は人間をやめるぞ!WRYYYYYY!!!
この拙者を前にしたらお前らなんぞ貧弱貧弱ゥ!
斧を飛ばす程度では無駄無駄無駄無駄ァッ!革新者と化した拙者は金属にして流体の特性を合わせ持つ…つまり貴様らの攻撃なんぞ全部通り抜けて効かねぇって事でござるよこのマヌケがァ!
ドタマカチ割ってやる!鉄拳ラッシュでA&Wまでぶっ飛ばしてやりますぞ!ゴブリンとして心をまっすぐにしてくるのですねッ!
●こいつだけ何か
世界観が違う
「恥を知りなさいッ! ゴブリンなのに無闇矢鱈人を襲わないなどとはッ!」
エドゥアルト・ルーデルは何故か全身血まみれでいきなりキレた。言いがかりにも程がある!
「その変形機構のよくわからん身体をボコボコにされて骸の海で反省してくるのですねッ! WRYYYYYY!」
虹色のスペクトルを放つ流体金属の仮面を被り人間をやめた(もともとやめているとしか思えない)エドゥアルトは、腕とか顔とかから血管で出来た異様な触手をうねうねさせるメタル怪
生物に変身した! コワイ! あとキモイ!
「なんだこいつは! 絶対に騎士でも戦士でもない!」
「間違いなく
百獣族の仲間でもない!」
「他の世界からの侵略者なんじゃないのか!?」
最後はある意味あっている。だが別に不意打ちとかはせず正面から堂々とキモい動きで近づいてくるので、ゴブリンの皆さんは罵ればいいのか戦士の作法で相手すればいいのかわからず混乱した! こんな
不具合ある?
「貧弱! 貧弱ゥ!」
「「「グワーッ!」」」
斧を投げても弾かれる! 何故ならメタルだから! しかもそれは金属でありながら流体であり、柔らかくも硬い! ある斧は胴体を切り裂いたはずがぬるりとキモく通り抜けてしまい、またある斧はぶにょんとキモい手応えで弾かれてしまいとにかくキモかった!
「バカナー!?」
「柔ラカイトイウコトハ、ダイヤモンドヨリモ壊レニクイトイウコトデゴザル……!」
突き出した両腕がバッカルコーンめいて裂けた! 鋭利な槍となった腕がゴブリンの頭部を貫通!
「「「アバーッ!」」」
哀れ、戦士の誇りもへったくれもあったもんじゃないゴブリンの群れは爆発四散!
「ドタマカチ割ってやるでござる! あ、もう死んでたでござるね。何を死んでおるのでござるかゴブリナイト君
!!!!!!!11!!1 もっと気合を入れて戦うでござるよゴンザレス君!!!!111」
わけのわからないことを叫びながら、拳が無数に見える
突きの連打を繰り出し破砕破砕破砕!
「こ、こんなやつにやられるために蘇ったわけでは……アバーッ!」
残念ながら、
黒髭を相手にした時点で運命は決まっていた。
可哀想……。
大成功
🔵🔵🔵

シャルロッテ・ヴェイロン
(引き続き、ホワイトラビットを【操縦】中)
まあね、今更オブリビオンの言い分を聞いたって仕方ありませんが。
それはさておき、相手は【決闘】を望んでいるようですし(【世界知識・戦闘知識】)、アイサツは必須ですね?では早速――「ドーモ、
百獣族の皆さん、AliceCVです」。
で、アイサツ直後に戦闘ロボ系のキャラを召喚して【弾幕】を浴びせちゃいましょうか(【先制攻撃・一斉発射・制圧射撃】)。あとは敵の攻撃モーションを【見切り、残像】が付くくらいの【ダッシュ】で接近し、片っ端から【切断】していきましょう――え、卑怯?「オブリビオンに慈悲はない」と決めてますので(ぇ)。
※アドリブ・連携歓迎
●ノー・マーシー・フォー・オブリビオン
「ドーモ、
百獣族の皆さん。AliceCVです」
シャルロッテ・ヴェイロンはキャバリアの両手を合わせ、オジギした。
たとえ殺し合う間柄でも……否、だからこそアイサツは実際大事。礼儀が殺し合いを神聖なる決闘たらしめる。その奥ゆかしいマナーを失する者は、獣にすら劣る卑劣で汚い忍びの如き愚者として
村八分されるだろう。このことは古事記にも記されているが、そもそもバハムートキャバリアに古事記があるのかはわからない。
というわけで、ゴブリンの皆さんも戦いをやめ、両手を合わせオジギした。
「「「ドーモ、AliceCV=サン。我々はゴブリンです。あなた達の突破を阻」」」
「ザッケンナコラー!」
その時である! シャルロッテは周囲に01召喚された
戦闘ロボ風の下僕と並んで武装展開! オジギ中のゴブリンめがけ弾幕を張った!
「「「グワーッ
!?」」」
ナムアミダブツ! 神聖なるアイサツ中のアンブッシュにゴブリンは為す術なし! スイスチーズめいて全身が穴だらけになり爆発四散!
「な、なんと卑劣な!? アイサツの礼儀はいかに、AliceCV=サン!」
「悪いですがオブリビオン相手にいまさら慈悲はないんですよね、え」
スパーン! ハヤイ! 切断攻撃命中!
「おのれ、おのれ卑怯者! 呪われ……サヨナラ!」
ゴブリンは爆発四散した。おお、なんたるバハムートすら目を背けるであろうスゴイ・シツレイか……ナムアミダブツ……!
大成功
🔵🔵🔵
グラン・ボーン
獣騎ってやつか
ようやく面白くなってきたな
(キャバリアサイズということで、気持ちよく殴れそうな相手だ
人間サイズの相手だと、ローキックがメインになるが、獣騎相手ならハイキックも使えそうだ)
俺は、巨人拳のグラン・ボーン
俺を倒せるやつはいるか?
(大声を上げ戦場のど真ん中に行く)
まずは好きにさせてやる
存分にかかってこい
(両腕を顔の前に構えるグラン
巨人拳金剛の構え
鍛えた肉体とオーラ防御によってその強度は鋼以上だ
無数の斧に打たれても耐えきる)
今度はこっちの番だ
(サイズが同じなら関節技もやりやすい
腕や足、背骨をへし折る
投げれば受け身の取れない投げで頭から落ちている斧に落とす)
どんどん行くぜ
覚悟しな
●巨人の決斗
大地が揺れる。巨人が一歩を踏みしめるごとに、その質量に――いや、むしろはち切れんばかりの筋肉に充実した暴力と、今にも飛びかかりそうなほどの獰猛な闘志を恐れおののくかの如く。
「俺は、巨人拳のグラン・ボーン」
大気もまた震える。音波という振動ではない、大気にもやはり恐怖という感情が実はあり、地の底から響くような声に、充満した戦意に怯えていると錯覚しかねないほど恐ろしいのだ。
「俺を斃せる奴は、いるか!!」
問いかけは咆哮となり、巨人は地面を砕いて駆け出した。もはやロケットスタートの勢いは爆裂というのが適切で、爆ぜ砕けた地面の飛沫が後ろに噴煙を生じる。巨躯は獣騎から見れば、その速度と威圧感のあまりに二倍にも三倍にも膨れ上がって見えただろう。
そしてグランは、獣の如く敵に飛びかかり殺しに殺したか――否。彼はあえて敵陣中央に飛び込みながらも、まずは獣のしたいようにさせた。
「好きにさせてやる! 存分に、かかってこい!!」
仁王立ちとは、この男のことを云うのだろう。巨人と比べれば、古今東西にそのように比喩され、あるいはそう名乗った歴々はただの棒立ちと言い直すべきだ。筋肉の要塞。ゴブリンの群れは呑まれかけ、その事実を塗り潰す咆哮をあげ、斧で、拳で、ある者は牙を剥いて、文字通りの獣となった。
波濤のような暴力だった。
地面は衝撃に耐えきれず亀裂を生じ、砕け、陥没した。噴煙が裂け目から生じ、5mあまりの巨体を隠した……おお、なんたることか。もうもうと立ち込める土煙の中から現れたその身体は……無傷に等しい! もはやこれは不壊! 金剛の構えとはまさに名の如しか!
「今度はこちらの番だ。来るならまだまだ来い!!」
グランは仕掛けた。
やられた分だけやり返すかの如く、殺し、壊し、捻り、裂き、投げ、破壊する。
たった一体で、憎悪も怒りも何もかもを凌駕する、荒れ狂う力そのものとなって!
大成功
🔵🔵🔵
葉隠・香
ひ、ヒドい目にあった…。だけどここまで来たら後は大丈夫ッ!
聖なる戦いの法だっけ?いいよ。正面から堂々と叩き潰してあげるよッ!
カードデュエリストたるものルールを守って楽しくデュエルッ!
ゴブリンッ!
決闘開始の宣言をしてッ!
ボクのターン、ドローッ!
ボクは手札から「妖虫 血染め大蠍」を召喚ッ!バトルッ!獣騎ゴブリンを粉砕ッ!
ふふん、ざっとこんなもの…ゲゲッ!?残りのゴブリンが空飛び始めたッ!?
なら「インセクトマン」を召喚。魔法カード「ジェットアーマー」を装備。更に魔法カード「大繁殖」を発動ッ!
これぞ【武装昆虫大繁殖コンボ】ッ!
さあ行け、ゴブリン軍団を迎え討てッ!
【アドリブ歓迎】
●確かに
決闘の
法には則っているが何かが違う
自分で生成した森の中で遭難しかけ、遭難したせいで呪いが再び侵食し、呪いのせいでさらに探索が遅れ……葉隠・香は本末転倒に陥ったような気がしないでもないが、とりあえず脱出は出来た。おかげで戦場に駆けつけたのがやや遅れたものの。
「まったくヒドい目に……って、もうあちこちで戦いが始まってる!?」
これではいけない。すぐに先遣の猟兵に追いつかねば!
香は急いで駆け出す……だがその行く手にゴブリンだ!
「娘よ、我らは誇り高きゴブリンの氏族の戦士なり!」
「たとえ年若い子供であろうと、戦士ならば通すわけにはいかぬ」
「それでもなお、押し通ろうとするならば……」
香はにやりと笑った。
「言われるまでもないね。カードデュエリストたるもの、ルールを守って楽しくデュエルだからねッ!」
ゴブリンたちは顔を見合わせた。
「カードデュエリスト……?」
「正々堂々はともかく、楽しく……?」
「何か我々とは別のものを指してないか?」
間違ってはいない。
間違ってはいないのだが……何かズレている気がする!
しかし、どこがズレてるのかが指摘しづらい。あと、指摘するのもなんか野暮に思える。ゴブリンたちは反応に困った。
「さあ!
決闘開始の宣言をしてッ!」
「……よくわからんが、戦うつもりならばとにかく構わん!」
「然り! というわけで開始の宣言は貴様に任せたぞイソナルヴァ」
「我か!? デ……
決闘開始ィイイイッ!!」
そんなわけでお互いぶつかりあう!
「というわけでボクのターン、ドロー!」
香は空中に出現したフィールドに手札をプレイした!
「現われよ、「妖虫・血染め大蠍」! 獣騎ゴブリンを粉☆砕ッ!」
返り血で全身を染め上げた凶々しい
武装昆虫がゴブリンに攻撃を仕掛ける。だが!
「回避しろ!」
「空から仕掛ければよい!」
大蠍の巨大な尾の一撃は回避されてしまった。空中に浮遊したことでダメージ無効のスポットルールなのだ!
「ゲゲッ!? な、なら……「インセクトマン」を召喚ッ! そして、魔法カード「ジェットアーマー」を装備!
そこに速攻魔法カード「大繁殖」を発動!
武装昆虫の本領発揮を見せてやる! 行けーっ!」
ねずみ算式に増殖した武装昆虫が、両肩のキャノンで対空砲火の弾幕を張る!
獣騎ゴブリンの群れは、空中に浮かんだことで釣瓶打ちになり次々に撃破されていった……!
大成功
🔵🔵🔵
ウルル・マーナガルム
キミ達にどんな思想や大義があったって、
死神の前に立つのなら容赦はしないよ
弾薬節約の為にも近接格闘戦を主軸に
手持ちのライフルをパージ、腰部にマウントしてた対戦車ナイフを構える
対人戦闘術は、人型をしたキャバリア戦でも十分通じる
足元の罠を警戒して直接敵機に飛びかかる
頭部バルカン砲と併せて、装甲の薄くなった部分を突いて攻撃
更に他の敵の方へ突き飛ばして体勢を崩させたり、組み付いたまま盾にしたり、臨機応変に行こう
ヴァイキングみたいに荒々しい
北方辺境の騎士達のように、叫ぶ
叩き壊せ!
そうされない為に!
その戦いの為の槍の穂先、そうあれかしと望まれたのが
私なんだ!
●死神は荒野を征く
切り離されたライフルが土煙を上げた。その時、既にウルル・マーナガルムの駆る
機体は対戦車ナイフを保持し、加速。足裏のブースターから燃料を噴射し、前に向かって斜めにスライドするような形で跳んだ。
「疾い!」
獣騎ゴブリン、個体名をブラズロウドとする敵は予想以上のスピードに怯んだ。接近を誘発し、地面に生成したワイヤーをハードルめいて張り出し拘束、あるいは自らのスピードで自分から罠に突っ込むように絞め殺す……というプランは、ウルルの判断速度とオレルスの機体性能で空振りに終わる。投斧を振りかぶった時、手首をバルカン砲が撃ち抜いた。
KBAM! 関節部への頭部射撃の狙いは正確。手首から先が斧を握りしめたまま脱落。機体の重量変化によろめいた獣騎を左手で抑え、のけぞった首の関節部にナイフを滑らせる。人間で言えば鎖骨に当たる位置を、ナイフは縦に引き裂いた。いくら装甲が堅くとも、脆弱な地点を串刺しにして適切な角度で「解体」すれば無関係だ。最硬であるはずのダイヤモンドが、衝撃で脆く崩れ去るように。
「おのれ、よくも同胞を! 次はこのドリエクニクスが相手だ!」
怒り猛るゴブリンが長柄の斧を両手で構え、捨て身の突撃をかけた。オレルスはナイフを引き抜き、爆発寸前の獣騎をそちらに向け突き飛ばす。
「ぬおっ!?」
同胞の死体を捨て石めいて利用され、ドリエクニクスは怯んだ。騎体は爆発。炎を切り裂いてオレルスが飛び出し、ドリエクニクスに組み付いた。密着した状態では、
長柄武器はむしろ不利だ。
「き、貴様……!」
「
これも卑劣かな?
私にはどうでもいいけどね」
ウルルはドリエクニクスが斧を捨て機体を引き剥がそうとするよりも先に、柔術のような巧みな機体制御でバランスを崩させ、さらに確実に拘束する。魔法じみて騎体の前後を入れ替えさせられたドリエクニクスは、味方に向かって盾のように己をせり出すこととなる。
「や、やれ! 我もろとも、この敵をォ!」
オレルスは背中を蹴り飛ばした。長柄の斧、あるいは投斧が叩き込まれ、ドリエクニクスの騎体は無惨に爆発する。炎を切り裂いてナイフが奔った!
「し、死神かこいつは!?」
あるゴブリンの叫びは、断末魔になった。オレルスは死体を振り捨てさらに前へ。淡々と。
「
叩き壊せ!」
しかして、機体を駆る少女は叫ぶ。三十年戦争の騎士が如く。
戦争とは常に、己が
そうされないために始まる。その武力の睨み合いが最新の平和を生んだ。ならば、平和のためには武器が必要だ――矛盾にも思えるかもしれないが、今の人類にはそれが限界だ。
そして、そのためにそうあれかしと望まれ、願われ、祈りのもとに鋳造された
兵器こそが、ウルルという女だった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
鋼のゴブリン……群れるところは私の識るそれと同じですが、戦士としての誇りがあるようですね
飛翔し、放たれる爆発
一発一発の威力は低くとも、全身に組み付かれた状態で一斉に自爆でもされたらヘラクレスでも流石に堪えるだろう
【ダッシュ】、【ジャンプ】、鋼の巨躯に見合わぬ俊敏さで爆発攻撃を躱す
空飛ぶ鋼の群れ――まるでステュムパーロスの鳥のよう
いいだろう、そちらが飛ぶのなら、こちらは射落とそう
虚空より顕現するは【巨神射殺す星辰の強弓】
ヘラクレスの【怪力】を以って弦を引き絞り、狙いを定め――解き放つ!
防御を打ち砕く願いが込められた矢は、空間さえも引き裂かんばかりの勢いで鋼のゴブリンを撃ち抜いていく(貫通攻撃)
●鋼の半神
爆発。爆発。爆発!
遠隔起爆式の術式、あるいは我が身そのものを弾丸に変えた自爆攻撃、あるいは斧を叩きつけるのと同時に起爆……ゴブリンの攻撃は多岐に渡るが、共通するのは素早く、勇猛果敢で、そして死を恐れないことだ。それは
死者であるからではない、この戦に彼らなりの大義があり、自分たちの正当性を心の底から信じ、また貫く覚悟がある。つまりは拠って立つものが強固であるからこそ。
愛国心という人間だけに許された誇りが、万を超える屍を積み重ねたかの如く。それは獣と貶めるにはあまりに誇り高く、されど人と称えるにはあまりにも野蛮だった。
陥没し焼け焦げた荒野を、
鋼の半神は韋駄天の如く駆ける。爆炎がすぐ背後で生じ、背中を、肩を焦がした。オリヴィア・ローゼンタールは後ろを振り返らない。振り返る必要がないからだ。
「まるでステュムパーロスの鳥のよう……ならば!」
ヘラクレスの掌、虚空から集まった光が巨大な弓を編む。キャバリアであることを差し引いても、弓弦の幅はあまりに長く、その張りたるやとても一機で引き絞れるようには思えない。いわんや、高速で飛翔し間断なく爆発攻撃を仕掛けるゴブリンの群れを相手に、強弓を引き絞って狙いをつける暇などあろうか?
その無謀を、鋼の機体は馬鹿げた機体出力によって強引にねじ伏せる。メキメキと異様な音を発しながら関節部が軋み、生まれた圧力の高さに踵が地面を罅割させた。不変の強弓が、その在りようを純粋な力によって捻じ曲げられ、弓から楕円じみた形へと変わる……凝縮された破壊力は、勇猛なるゴブリンの群れをして戦慄させた!
「いかん、避けろ!」
兵の指揮に一日の長のある古強者、ガネムジアロが呼びかけた。その時には何もかもが遅い。地面を踏みしめ、スピードを殺しきれず滑りながらも、半神は狙いを定めている!
「不死暴虐の巨神すらも射殺す星辰の一矢、受けてみるか!」
オリヴィアは朗々と叫んだ。機体を通じ、彼女自身の両腕にも想像を絶する負荷がかかっている。白いスーツに覆われた両腕は張り裂けんばかりに筋肉を隆起させ、こめかみの青筋が脈動した。
「は――あぁあああっ!!」
力が解き放たれた。超常の矢は純粋なる暴力によって飛翔する。極限まで張り詰めた力は、「強力である」という単純なロジックによって空間すらも引き裂かんばかりに飛び、分かれ、そして鋼の獣騎を撃ち抜く。爆発、爆発、爆発――ただしそれは敵が四散し消え去る末期の輝き!
たちまちのうちに敵を殲滅したオリヴィアは、堂々たる歩みで死の陣営へと足を踏み入れた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『獣騎トロウル』
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POW : ツインアームハンマー
【岩の弾丸】を浴びせつつ対象に接近し、【両腕振り回し】で攻撃する。同時に、敵の攻撃は【腕】でパリイ可能になる。
SPD : トロウル無敵装甲
狙った対象1体を殺すか凶器「【左腕に装着したロックスピア(岩槍)】」を手放すまで不死となり、対象への殺傷力と追跡力も3倍になる。
WIZ : ハイパーナックル
【棘の生えたハンマー状の右腕】が命中した敵の【背骨】を叩き割る。高所から攻撃する程命中率上昇。
👑11
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「そうか。同胞を再び滅ぼし、此処まで来たか」
獣騎トロウル、あるいは個体名・赫焉のメジルクレー。
5mを超える巨体が猟兵を睨む。そこに憎悪はない。むしろ愉しげですらある。
「おれが憎むのは、あくまでこのおれの心臓を戦でもなしに止めた、忌まわしい人間どもだ。
貴様らとの戦いは、ただただ楽しみだったぐらいだよ。なにせ今度こそ誉れある戦いが出来るのだからな」
無辜の民を父祖の罪で呪い苦しめ、今なお穢れを広める獣騎とは思えない爽やかさだった。
敵の中で憎悪と戦いの高揚は完全に切り離されており、ゆえに猟兵に怨恨を向ける所以はない。
しかし、きっぱりと完全に分けられているからこそ、その怨みは深い。混じり合うことなどないほどに。
「罪深き人類には、苦しみ悶え絶望しのたうち回って醜く死ぬ以外の最期は認められん。
だがそんなことは、おれと貴様らには関係あるまい……と言っても、貴様らはそれを止めに来たわけだが」
トロウルは前傾姿勢を取った。
「まあいい。それはそれだ。おれはおれなりに、この場での戦を愉しませてもらう」
これほどまでに己の憎悪を憎悪として別離させた者に、その行いの無益さを理解させることなど出来るのだろうか?
エリー・マイヤー
誉れある戦い、ですか。
何をもって誉れとするのかは知りませんが…
ようするに、アナタは騎士ではなく、戦士だったということですね。
なら、弱い者いじめにも納得です。
まぁ、どうでもいいことですね。
お仕事お仕事。
サイキックエナジーを放出して【念動ルーム】を構築。
敵と、敵の放つ岩の弾丸を、念動力で縛り付けて減速させます。
そのままサイキックウィングで敵に向けて飛翔し、自機を加速。
敵が減速されてまごついている間に、フォースセイバーで斬りつけます。
両腕を振り回して、攻撃を弾いてカウンターを叩き込む…
マトモに相手をしたら、厄介な戦法だったのでしょうね。
スローモーションになってしまうと、台無しですが。
●役目
音の壁を破り、巨大な岩が二倍に膨れ上がった。実際に、そんな非現実的現象は起きていない。スピードと質量、そして籠められた殺意がそういう錯覚をさせるのだ。無論、スピードは現実そのままである。並のキャバリアであれば回避できず、防御しようとしても圧殺されている。
エリー・マイヤーはサイキックエナジーを放出、見えない念動力の箱……いや、領域を作り出した。トラップされた岩は、まるで粘液の海に飛び込んだかの如くゆったりとしたスピードで動き続ける。逆に静止していたエリー=アレクサンドラが、残像を刻むほどのスピードで加速した。背後の空気が爆裂し、真空波じみた衝撃が吹き荒れる!
「ハハァ!」
トロウルは快哉とも驚愕ともつかぬ笑い声を上げ、迎え撃った。本体は念動領域の完全なトラップを辛うじて逃れている。そして、減速されたとしても振り回される両腕の破壊力は受けるだけでも危険だ!
――ヂッ!
高速回転するグラインダーに、鋼鉄の塊がぶつかったような音。火花が散り、アレクサンドラは反動で横方向へ吹き飛んだ。トロウルは地面を砕くほどの踏み込みで追う。フォースセイバーが下からのアッパーカットを……防ぐ!
「小賢しいですね」
エリーは再び念動ルームを展開しようとした。ゴウ! 大地の表面をめくりあげる程のスピードで、拳が迫った。粘ついた低速の縛りが絡め取る……それでもなお、重い! 衝撃!
「……マトモに相手をしたくないですね、この威力、は……」
右腕! アレクサンドラはフォースセイバーを腕そのものに叩きつけた。再び火花が二騎を照らす。獣とキャバリアは睨み合った。
「随分余裕そうだな、お前ら猟兵は騎士どもとは違うか!」
「そういうアナタこそ、騎士ではなく戦士でしょうに」
ドウ! 衝撃波が生じ、両者は飛び離れた。エリーは三度ユーベルコードを発動、今度こそトロウルを捕らえる。光の翼を広げ加速!
「弱い者いじめをするアナタの言葉など、私にとっては――どうでもいいことですよ」
「……ぐ
……!!」
声はトロウルの背後、彼方から届いた。斬撃は一瞬。スローモーションの世界で防ぎようのない太刀筋が巨体を深く抉る。
「誉れがどうとか、理解できないしする気もありません。アナタの憎悪も何もかも」
振り返ったアレクサンドラからは、冷たく、微かな、だが確かな怒気がみなぎっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
でかいな…!だが…今まで彼奴より巨大で強大な敵と戦ってきたはずなのに…
百獣族の怨念か?それとも罪の意識だと?怯むな私!騎士道を示し決闘で倒すしかない!
トロウルの戦士!私はベルト・ラムバルド!異世界より来た騎士が貴様と相手する!行くぞ!
キャバリア操縦し突撃
空中機動で岩の弾丸と両腕の攻撃を回避し剣を振るい攻撃!
…剣を弾かれた!?強い!だがこちらにはまだ槍がある!
サークランサーを振るい敵目掛けて串刺し攻撃だ!
あの太い腕に少しでも刺さればいい!
UCを発動し零距離で巨大荷電粒子ビームを放ち鎧無視攻撃で敵を打ち貫いてやる!
見たかい…!
これは魔法でなく私の世界の人を殺す為の科学技術だ…畜生め…!
●巨躯
ベルト・ラムバルドの目には、トロウルの騎体が何倍にも大きく見えた。錯覚であることはわかる。だが、それほどの威圧感だ。オブリビオン・フォーミュラと戦い、遥かに強大なオブリビオンをも滅ぼしてきたはずの黒騎士は、何故いまさらこのような獣騎に気圧されるのか?
(「百獣族の怨念? それとも、罪の意識? いや、私は――!」)
ベルトはこの世界の人間ではない。しかし、騎士を名乗りその道を邁進しようとするがゆえに、先祖の咎を己の生き様で贖おうとする人類の気持ちは痛いほどよく分かる。共感が己にも罪悪感を抱かせ、そして敵に対する後ろめたさを生じたか?
敵はあれほど、憎悪と戦意を切り分けているのに?
「……そうか」
ベルトは顎を流れ落ちた汗を拭い、呟いた。
「私としたことが、ごちゃごちゃと余計なことを考えすぎていたらしい……」
「ほう」
トロウルの目が細まる。
「それに比べれば、あらゆる意味で貴様はシンプルだ。
戦いの理由は憎悪だけ、そしてこの場においてはそれすらもない。
剣の切れ味を決めるのは、重さではなく速さと鋭さ……今の私では鈍る、だろうな」
ベルトは大きく息を吸った。
「ゆえに、トロウルの戦士メジルクレーよ!」
朗々たる大音声が大気を震わせる。
「私はベルト・ラムバルド! 異世界より来た騎士が、貴様に騎士道を示し討ち滅ぼしてくれる!」
「貴様に、奴らの犯した鋼の咎はなんら関係あるまい。それでもか?」
「……因縁がどうだの、そんなことは本当は、私にはどうでもいいんだ」
彼は不敵に笑った。
「そうだ、私の騎士道は私の中にある。貴様らの事情など――
知ったことではないさ!」
「……上等!!」
直後、巨大な岩の弾丸が猛スピードで迫った!
その宣言は敵に投げつける手袋であり、彼の心身を絡め取ろうとしていた懊悩という名の重荷を拭い去る儀式だった。
ベルトの動きは驚くほど軽やかだった。岩の弾丸を踊るように回避し、二段構えで接近するメジルクレーを迎え撃つ! 撃尺の間合い、剣と拳がぶつかりあった!
「ぐ――うううッ!」
重い。ゴブリンの攻撃も凄まじかったが、段違いだ。ビリビリと機体を揺るがす振動はベルトの両腕を通じ、彼に奥歯を噛み締めさせた。腹の底に沈めた信念すらも砕けそうなほどの、積年の憎悪と殺意。奴の全身に返り血じみて染み込んだ無念が、声なき怨嗟めいて騎士を試した。
「う……おぉおおおっ!!」
裂帛の気合いを迸らせ、サークランサーを振るう。ずしんとぬかるんだ地面を踏み、キャバリアが重々しく関節部から火花を散らした。振り回される両腕がその装甲を凹ませるよりも、巨大槍の穂先が突き刺さるほうが……速い!
「ぬ、う!!」
巨躯。遠心力。速度。質量。細まった鋒にその全てが乗り、ベルトはこめかみに青筋を立てるほど力み……押し返す! ギ、ギ、ギギギ……踏みしめた地面がひび割れ、くるぶしまで沈んだ。拮抗は趨勢の逆転へ……トロウルの巨体が、たたらを踏む!
「何
……!?」
「見せてやる――私の世界の咎を!」
凝縮されたエネルギーが巨大槍を光らせた。
「誇り高き獣よ、知れ!
人類はな、自分たち同士で殺し合うために
科学技術まで使うのさ……!」
荷電粒子の光線が、巨体を貫いた。凄まじい熱量が吹き荒れ、巨体を吹き飛ばす!
「うおおおおおッ!?」
「……だがな、それでも誰かを守り救うことが出来る。それが、私にとっての騎士道なんだよ……!」
トロウルの背中が地面に叩きつけられ、ガリガリと地面を削り吹き飛ぶ。それでもなお、ベルトは、その騎体は、両の足で大地を踏みしめていた。礎となるものは憎悪でも殺意でもなく、誇りと愛なのだ!
大成功
🔵🔵🔵

シャルロッテ・ヴェイロン
(引き続き、ホワイトラビットを【操縦】中)
まあね、いろいろ御託を並べてはいるようですが、私には単なる亡者の八つ当たりにしか聞こえませんが。
というわけで――ドーモ、AliceCVです。あなたからのアイサツは省略します。どうせすぐに骸の海に送り返されますからね(【挑発・注目を集める】)。
で、怒り狂ったところでニューロンを【ハッキング】しちゃいましょう。いくら無敵装甲で覆われてたって内側からの攻撃は防ぎきれないでしょう(【精神攻撃・データ攻撃・精神汚染】)。で、武器を手放したところでニューロンを焼き切ってやりましょうか――ああ、介錯が必要なら首【切断】しちゃいますよ?
※アドリブ・連携歓迎
●ブレイクダウン・ザ・ニューロン
「ドーモ、AliceCVです」
「ドーモ、AlicvCV=サン。メジルクレーです」
シャルロッテ・ヴェイロンとトロウルはタタミ20枚距離で向かい合い、オジギした。それはこれから殺し合う猟兵とオブリビオンとは思えぬほどに奥ゆかしく、礼節に満ち溢れたアイサツだった。
しかし、
だからこそトロウルは応えた。彼はどれほど野卑であれ誇り高き獣騎であり、サイバーニンジャめいて奥ゆかしい存在なのだから。
「あなたからのアイサツは省略するつもりでしたが、アイサツをする程度のカラテはありましたか」
シャルロッテはあえて横柄に振る舞った。
「どうせすぐに骸の海に送り返されるだけなのに、そんなに現世にしがみつきたいんですか? まあ、せいぜい数十秒の違いですよ」
「言ってくれるじゃねえか!! イヤーッ!」
トロウルは憤怒を剥き出し、殺戮バッファロー武装鉄道めいた時速666kmのスピードで突撃しようとする……だがその時だ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
突然シャルロッテがカラテシャウトを発すると、突撃しようとしたトロウルは両手で頭を抱え膝を突いた。これは一体!? サイキックエナジーを使ったネンリキのたぐいであろうか? 否!
「あなたのニューロンポートはがら空きですよ。このままニューロンを焼き切り、オタッシャ重点です!」
「グワーッ!」
ゴウランガ! シャルロッテはユーベルコードで敵のニューロンにハッキングを仕掛けたのである。なんたる相手がサイバーザナドゥを埋め込んだサイバーグでなかろうとも強制的に生体LAN端子めいた超自然のセキュリティホールを出現させニューロンを破壊する血も涙もないユーベルコードか!
「イ、イヤーッ!」
「グワーッ!」
だがトロウルはさらなる憤怒で強引に動き、シャルロッテの機体を吹き飛ばした。シャルロッテは地面を削りながらカラテ応酬!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
ニューロン攻撃を浴びながらとは思えぬカラテのぶつかり合い。しかしそのカラテラリーもシャルロッテが上回る。そしてチョップが……!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
入った! 痛烈な一撃を受け、トロウルは肩口から血を噴き出し悶え苦しんだ……!
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
いや拙者は回しに来ただけだけど?貴様もそうでござろう?
一目見て思ったんでござるよねこいつは回すやつだって!両腕が回ったか…NT
でもちゃんと作法に則って欲しい…もっと手首を丸くしろ!
という訳で今から更生しても構いませんねッ!レッツ暴行!全身を【ドット絵】に!イヤッフー!
これは見ての通り拙者の身体をペラペラに変えるUCッ!
今の拙者は身体がぺらっぺらでござるので弾丸が飛んでこようが隙間をすり抜けする事ができるッ!
更に相手が接近してきたら外装の隙間から内部に潜り込み破壊工作でござるよ!
手首や関節に手榴弾(ドット絵)仕込んで爆破しようぜ!地べたのたうち回ってね!
よし今日もよく回したな!貴様も早く寝ろよ!
●猟兵が回ったか……
「決闘? よくわからんでござるね。拙者は回しにきただけでござるが?」
「……ん?」
エドゥアルト・ルーデルはわけのわからないことを言い出した。いつものことだが。
「回す? 何の話だ貴様……?」
「貴様もそうでござろう? 拙者にはわかるでござる。貴様は回すやつのはず! ならちゃんと作法に則るでござるよ!!」
「何を言って」
「恥を知りなさいッ! 回しの作法を無視するとはッ!!」
エドゥアルトは突然キレた(数分ぶり二回目)。だがトロウルは構わず突撃! そして激突した……だが!
「こ、これは!?」
「イヤッフー!」
エドゥアルト、無傷! なんだかかなり危険な感じの声を上げ、ジャンプ! その理由は全身をドット絵に変え、ペラッペラの
二次元になったのである! 血が出てないからダメ。
「バカめが! 今のこの拙者ならば、貴様の装甲の隙間から内部に潜り込む程度ベイビー・サブミッションでござるよォーッ!」
エドゥアルトは片手を突き上げた姿勢で掌にキノコではなく手榴弾を握り、宣言した通り体内へ! この戦法、敵がやるやつじゃない? あとこの二次元存在に変わって隙間に入るってやつ、イヤッフーとか言う奴じゃなくてヘアァァ!って叫びながら回転斬りする奴がやったのじゃない!? いや何かわからんけど!
「レッツ暴行! マンマミーア!」
KA-BOOM! 各部に設置した手榴弾が一気に爆発!
「グワーッ!?」
体内に設置された爆弾を回避する? 不可能だ! トロウルは爆風にまみれ、くるくるとワルツるを踊るように回転した。
「よし、今日もよく回したな!」
エドゥアルトは謎の達成感に額の汗を拭った。
トロウルが回ったか……。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリス・セイルハート
…かつての人類の罪。その一翼を担う者の末裔たる以上、私に貴方様の怨みを否定する権利はありません。
私にできることはただ二つ。
円卓の騎士として正々堂々、貴方様を打ち倒すこと。
其を以て、民を蝕む呪いを祓うこと…!
名乗りを上げて戦闘開始。
【風を操る】ことで機体に気流を纏う【オーラ防御】を展開、相手の槍が直撃しないよう防御を。
攻撃はTempesterを振るい、起こす風で以て相手の【体勢を崩す】ことを狙っていこうかと。
相手の隙、或いは大振りの攻撃を繰り出すと見た処に、突穿つ突風による一撃を。
狙うは彼の左腕の付け根。腕を落としUC解除を狙います。
…苦しむ人々に安寧を。
それが、セイルハート家代々の願い…!
●安寧の日々は遠く
真なる騎士道に報いはない。
そもそも
この世界の騎士道はそれ自体が贖罪であり、鎮魂の祈り。ゆえにどれほど誇りを以て道を貫けど――いや、むしろ道を邁進すればするほど、騎士らしい栄華は遠のく。
もっとも、そのような清貧のままに人の営みが機能するはずもない。現実に騎士は領地を得て人々を支配し、営みを作り上げる。それは騎士が邪悪な陰謀でそうしたとかではなく、理性ある文明を築き上げる上で避けて通れぬ仕組みだ。騎士道とはすなわち、人が
再び獣に堕すことのないよう決められた、枷である。
ゆえに、ラブリス・セイルハートは苦しんだ。
「ぐ、っぅ
……!!」
気流の鎧を貫通した
岩槍が、機体を大きく揺らす。ラブリスは突き立てた剣を支えに耐え、反撃に打って出た。
斧槍の刃を横薙ぎに振るう。360度回転しながらの踏み込みは、しかし中途で止まった――否、止められたのだ。トロウルもまた大股で一歩を踏み込み、ポールウェポンのリーチを殺した。脇腹を半ば近くまで抉り、しかしそれ以上振り抜くことが出来ない……不死の呪いを頼りにした、前のめりな防御。
「止まったな」
ラブリスは死の錯覚に襲われた。敵の得物が長柄でなければ、それはおそらく現実になっていただろう。代わりに竜騎に叩きつけられたのは、岩じみた剛腕の殴打。
「――ぁあああっ!!」
凄まじい衝撃に気流の鎧が乱れ、竜騎は血を嘗めた。トロウルは脇腹に突き刺さったままの斧槍を引き抜き、ぐるりと回転させ投擲。矛が機体の真横に突き刺さった。
「セイルハートの騎士よ」
トロウルはゆっくりと踏み出した。
「貴様はさっき言ったな。一族の末裔である以上、おれの怨みを否定する権利はないと」
「……そうです」
ラブリスは苦労して機体を起こした。
「セイルハート家もまた、人類の罪の一翼を担う者。ならば、その血を継ぐ私は――」
「ならば何故、民だけを例外にしようとする?」
「……え」
斧槍にかけられた手が止まった。
「貴様が父祖の罪を、その罪業に対する怨恨を否定しないのであれば、子々孫々に対するこのおれの、おれ達の憎悪もまた否定することは出来まい」
トロウルの巨体が少しずつ近づく。
「それが何故、この場における決闘に繋がる? 貴様はなんのためにおれを滅ぼそうというのだ?」
「……それ、は……」
「よもや、
百獣族の怨恨は是とし、その上で民草は守ろうなどと、都合の良い戯言を抜かすのではなかろうな」
「……」
「それは、貴様ら人類が犯した咎と何が違う? 人類繁栄のためなどと抜かし、我らの誇りを貶めたことと何が違う!!」
「……!!」
ラブリスは怯んだ。生半な反論を赦さぬ威圧感だった。
「貴様がその罪から来る怨恨を是とし、その上でなお我が憎悪の企みを阻むするならば、貴様の成すべきはなんだ」
「……わたし、は」
円卓の騎士として、正々堂々と敵を打ち倒す。そして呪いを祓う――ならば正々堂々とは?
「私、は……!」
名乗りを上げ、正面からぶつかる? それを以て堂々とすべきか? 否。
……否!
「……私は! 貴方様のその行いを否定します!」
トロウルが足を止めた。
「貴方様のその憎悪も、怨みも、正しいもの――けれど、私はその全てを踏み越え、過去として捻じ伏せます。
苦しむ人々に安寧を――その代々受け継いできた願いを、この私自身が叶えたいから!」
巨躯が霞んだ。大地が砕け、あらゆる風を吹き飛ばす暴威の嵐が飛びかかる。
嵐は、嗤っていた!
「……貫き、ます!!」
ラブリスは正面から撃ち合った。防御を捨てた超音速の一撃は、不死の岩槍を払い、怨恨の獣に拭えぬ一撃を齎す!
大成功
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ヴィクトリア・ヘスペリス
赫焉のメジルクレー、相手に不足なし!
騎士道的に名乗り返し騎士形態のマイト・ナインで青眼に構え相対
捨て身で切り込み敵の岩槍を叩き落さんと突撃する!
成る程、目にも止まらぬ変幻自在の槍捌きか。ならば!
盾受けとシールドバッシュを織り交ぜユーベルコード発動
一斉分身と共に音速で斬撃波を撒き散らし攪乱
この距離なら長物は振り回せまい、メジルクレー
槍の間合いの懐に入って岩槍を持つ手を一刀両断
これで不死では無くなるだろう⋯⋯覚悟!
手首を返して逆袈裟にVの字を描き本体を斬る!
貴殿の怒りはごもっともだが
それが現世に無法を齎す道理にはならない!
その怒りと憎しみを今断たん――
我が烈義と鎮魂と慙悔を以て罷り通らせてもらう!
●然るに生は辛く
盾と矛が打ち合う。火花が散る。散った炎の幼子が霞み消えるよりも早く、音を超える二体の騎兵が次の一撃を繰り出し合う。
「赫焉のメジルクレー……! 名にし負うだけは、あるわね!」
ヴィクトリア・ヘスペリスは反動を歯を噛み締めて堪えた。叩き割られた左腕を強引に繋げ直すという荒業で再び不死の呪いを得た獣騎は、獰猛な笑い声を上げシールドバッシュを受け切る。根を張ったが如き踏みとどまりで後退を拒絶したトロウルが、盾ごとマイト・ナインを打ち砕かんばかりの凄まじい一撃を見舞った。
(長柄相手に懐へ入って斬り裂く――なんてこと、出来るなら苦労しないわよね!)
放射状に散った分身たちが、本体をも巻き込む覚悟で砲撃戦の用意を整えた――ゴウ! 岩盤をめくりあげるほどの暴風が荒れた。トロウルの一線が起こした単純な衝撃波だ。無数の岩塊が分身を散弾じみて打ち抜き、消し去る。間合いの懐へ潜り込もうとしたマイト・ナインを、右の剛腕がカウンターした。寸前で逆噴射して勢いを殺していなければ、今頃ヴィクトリアは死んでいる。もっとも無傷でもないのだが。
「――ッ!!」
吹き飛ばされた機体を猛烈な重力が襲う。ヴィクトリアは音速の代償ともいえる過負荷に耐え、
意識喪失の末路を否定する。
「愉しいな!!」
トロウルは呵々と笑い、ほとんど相対距離を離すことなく追従していた。そこには怒りがある。あまりにも強く激しい怒りは、もはや獣という存在の根幹にまで凝り固まってしまっているのだ。己の誇りを否定され、そして正当なる決闘でなしに朽ち果てた過去は、そこまで重く苦しいものだというのか。ヴィクトリアは呑まれかけた。冷静沈着に、論戦のつもりで構えていたならば、そのままコクピットを砕かれ死んでいただろう。
「……何が愉しいものか!!」
ゆえにヴィクトリアは、
烈しい祈りを以て跳ね除けた。再びの逆噴射で反動を殺し、盾を掲げ岩槍を受け止める。
「貴殿の怒りは尤もなれど、現世で無法を冒す道理にはならない!」
「道理など知ったことか! ならばどうする騎士よ、ならば如何にする!?」
「無論……初めに名乗ったとおりに、するまでよ!」
背部スラスターが炎を膨らませた。機体は拮抗……いや、押し返す。ヴィクトリアが、マイト・ナインが!
「ぬ……」
「その怒りを、憎しみを! 我が烈義と鎮魂と懺悔を以て――」
斬撃がV字を描いた。
「私たちは、
現在を罷り通らせてもらうわ」
現在は過去を踏みしめて在る。斜めに駆け抜け飛び越えたその姿は、まるで犠牲を踏みしめ生きる人類の業そのものであり、そしてどこか美しかった。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
道理を説いたところで、それはただの言葉だ
彼のような――否、我らのような手合いにとって、そんなものに意味はない
力を以って相手の道理を捻じ伏せ、罷り通るのみ
それが生きるということ、勝利するということだ!
互いに【鉄壁】の装甲と【怪力】を誇る重戦士
半端な小技は不要
全身全霊を以って真っ向から殴り合う
漲る【覇気】を燃料としてヘラクレスは駆動
【気合い】、【根性】、【負けん気】、次々に炉に焚べて、鋼の拳を叩き込む
トロウルが膝を突かば、虚空より【
極煌雷霆剣】を召喚
紫電を纏い、雷鳴を轟かせる、極煌の神剣
誇るがいい
この一撃を受けるのは、貴様が最初だ
次元破砕雷霆を解き放つ
●勝利と敗北の方程式
ゴン、ゴン、ゴンゴンゴンゴン!!
天地開闢の神話を是とするならば、世界を創りたまうた神の御業は斯くの如き槌音を響かせていたのやもしれぬ。
岩の拳と鋼神の掌が打ち合うたび、天地は己らが再びの創造――つまり現在の破壊に脅かされるのではないかと慄いた。震え、怯えた。質量と質量の激突はそれほどの衝撃を伴っていた。
「おおおおおおッ!!」
オリヴィア・ローゼンタールは裂帛の気合いを上げ、その覇気を炉の薪として燃やす。いわば命そのものが燃料だ。トロウルとヘラクレスは奇しくも重装甲・大怪力の合いの子同士。ならばあらゆる道理を捨て、ただ肉体言語のみにて
語り合う。オリヴィアの選択はもっとも辛く、苦しく、しかしそれゆえに有効だった。最後に決め手となるものが心根であるならば、およそ負けるつもりはなかったし、負けるとも思えなかった。
「ふ、は……ははは、ははは!!」
トロウルは嗤っていた。
愉快である。しかしそこにはぞっとするほどの、えづくほどの憎悪がある。己に向けられていなくとも、人類であらば震えを起こし、どうしてそこまでの恨みを抱くのかと不思議に思うほどの殺意が。
「そうだ――そうだ!! おれを阻み否定するならば、正論。言い訳・道徳、糞食らえよ!!」
トロウルは無限に思える打ち合いの中で叫んだ。それはオリヴィアに語って聞かせるものではなく、生物が全力を出すために上げる
咆哮のようなものだ。
「貴様らは
過去を踏み潰し、躙り、なおも醜く生きるという! そこに正義だの、道理だの、在るものか! 在るはずもなし!」
「オオオオオオ――!!」
「ゆえにこそ、我が試みを阻まんとするならば
……!!」
激突、激突、激突! 空間そのものが砕けようかという破滅の連打が、頂点めがけ駆け上がる! いずれかの屈する時が……近い!
「ただその拳にて、押し通るがいい!!」
最大・最強・最硬の拳を両者が鏡合わせのように振りかぶり――そして、炸裂させた!
空気が爆ぜ、大地がクレーターのように抉れた。
「ぐは……ッ!!」
膝を突いたのは獣だった。その時、血みどろの鋼神は文字通り次元をも破砕する雷霆を構える。雷を鍛え上げたが如き極煌の剣を。
「誇るがいい」
オリヴィアは傲然と言った。然り、生きるとは勝利の繰り返し。何かを犠牲にし踏み越えるとは、すなわち敗北を押し付け滅ぼす残酷の連続。そこに憐憫や躊躇などあってはならぬ。それが彼女なりの礼儀だった。
「この一撃を受けるのは――貴様が、最初だ!」
紫電纏う血脈の一撃が、雷鳴をも後において駆け抜けた。
大地は文字通りに引き裂け、空の彼方まで煌めきが届く――!
大成功
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カタリナ・エスペランサ
呪いの荒野に挑んで斃れた現代の騎士たちが居た事は知っているかしら
戦う事も無く殺し、当事者以外も殺す
意趣返しだとしても……仇敵と同じ悪辣に堕ちては、それこそ戦士たる矜持の敗北よ
説得のつもりでも、まして貶す気も無いわ
それでも飽き足りない程の怒りがある事は私だって知っているから
これはただ私の通すべき筋
リリー・ユーフォリアの名の下、この決闘を以て貴方の復讐に終止符を打ちましょう
大剣振るう真の姿にオーバーロード、【泡沫の幻想侵攻】起動し加速
知覚内の動きには《戦闘知識》、知覚外の狙いには《第六感》を働かせ《心眼》先読みを欠かさず
立体的《空中戦》で体格差を補い《身かわし・受け流し》
《早業+怪力》を超重力《属性攻撃》で更に強化して攻め立てるわ
リスクも承知でこのUCを選んだのは岩槍を確実に落とす為
好機を見極め《集中力+瞬間思考力+ハッキング》夢幻の霧による存在確率操作で攻撃をすり抜け
《捨て身の一撃+カウンター+切断+武器落とし》不死を解除、とどめの斬撃で葬りましょう
遺す言葉があれば預かるわ。どんなものでも
●命は苦しみ尽きていく
カタリナ・エスペランサ、あるいはリリー・ユーフォリア。
その名は、彼女にとってはどちらも重い意味を持つ。しかしそんなものは、憎悪と殺意に狂ったオブリビオンにとって何の意味もない。
理解は出来る。誇りや、それに類する強い思いを籠める気持ちは同感もしよう。しかし告げたところで、それだけだ。咽び泣いて戦いをやめるだとか、感服して矛を収めるなどということはない。なぜならとうに戦いの火蓋は切って落とされ、そんなことは戦いをやめる理由にならないのだから。
同じように、カタリナあるいはリリーもまた、百獣族の、メジルクレーの怒りと殺意に、その行為に理解を示した。
どれほど万事を尽くそうと、相手を殺し、滅ぼし、踏み躙り八つ裂きにしても足りないほどの怒り。覚えがある。同意できる。同感する。共感し理解できる。納得すら。
「それでも聞くわ。私は、アタシは、聞かねばならない」
リリーは問いかけた。
「この呪いを終わらせるため、誇りのために斃れた
現代の騎士たちが居た。
私はその骸が、無惨に晒されているのを見て、そして乗り越えてきた。
……戦うこともなく散っていった者たちのことを、あなたは知っている」
「無論」
メジルクレーは鮫じみて笑った。
「
それがどうした。彼奴らは騎士道を名乗り、自ずから挑み、そして死んだのだ。
それが卑劣と? 否。貴様らのようにこの場に辿り着けていないなら、
それまでだったということだ。
意趣返しのつもりなどない。おれはただ、おれの誇りを穢した者どもの末裔が苦しみ狂い死ねば、それでよい」
「…………そうね」
リリーは長く息を吐いた。奴の物言いは、やはり理解できた。
もとより説得したり、あるいは貶したり揶揄するつもりもなかった。むしろ奴の言う通りだ。騎士たちは騎士たちの為すべきことを為すために挑み、死んだのだ。辿り着けなかったのは、ひとえにその力量の不足がゆえ。挑まなければ、彼らは呪われることもなかった。言ってしまえば自業自得。
「だとしても」
リリーは大剣を手に、決然と敵を睨んだ。
「あなたは、自ら戦士たる矜持に敗北した。
己を仇敵と同じ悪辣に堕し、そして
残骸に成り果てた。
……だから、私は筋を通す。怒りも殺意もなく、猟兵としてね」
夢幻の霧があたりを覆った。うつつと虚構はその境目を曖昧にし、生と死は極限まで近くなる。ふと、彼女は自分が生者らしく振る舞えているか疑問に思った。魔神のかけらを纏い、その力のもとに残骸を殺し続ける己は、もしかするととっくに彼らの領域に足を踏み入れているのかもしれないと。
「そうだ。結局われらは、戦い続けるほかになし」
メジルクレーという大山が動いた。
「おれが怒り憤るは、奴らが我々を殺したことに非ず!!」
巨躯が、迸るように進んだ!
交錯は一瞬だ。
まるで馬上槍を構えた騎士たちが、疾走の果てにぶつかり合うが如く。
幾手もの手段を空想し、読み、読まれたのを読み――布石の末に、練り上げた一撃が撃ち合う。
轟音が響いた。
岩槍よりも遥かに疾く。大剣が、その矛を、柄を、手にした腕すらも、肩まで一撃で真っ二つにし――そして、砕いた!
「ぬう、おおお!!」
メジルクレーは残る腕を振るった。攻撃は
すり抜けた。確率操作による存在の歪曲。リリーは必殺の間合いに在る。
「遺す言葉は?」
「あるはずもなし」
メジルクレーは莞爾と笑った。剣が迸った。
……彼がこれほど悪辣な呪いを振りまいた理由が、リリーにはわかる。
そも、獣どもは殺されたことに怒ったわけではない。
卑劣な方法で殺されたことを怒ったのだ。
生きるからには殺すのは当然だ。命は苦しみ尽きていく。奪い喰らい潰し壊し砕き競い裂き割り呑み潰し啜り貪る。生命活動は全て誰かから何かを奪うようにして出来ている。ただ存在するだけで時間という概念を消費していくように。
苦しみとは生命活動のもっとも根源的な代償であり、必然的なコストだ。あるいは呪いでもってそれを伝えようとしたのだろうか?
これが、貴様らの業であると。
これをこそ、思い知れと。
もはや、答えはわからぬ。メジルクレーは滅んだ。リリーが、猟兵たちが滅ぼした。そして呪いは終わった。だが生命の痛みは残る。彼女たちが勝利のために散らした犠牲と、勝利のために散った生命と、呪いに苦しめられた人々の心身に刻まれた痛みと恐怖とが、残る。それが勝利の結果だ。
リリーは――カタリナは、呪いの苦痛が終わったことに安堵し、そして打ちひしがれるように立ち尽くした。命が鼓動を刻んでいることの無情と喜びを味わい、噛みしめるように。
それは悲しくもあり、空虚にも思えた。そう思えることこそが生者の特権である。振り返り帰途についた時、彼女は微笑んでいた――己は紛れもなく生者であり、そして生きることを誇れるのだと、今もまた確かめることが出来たから。
大成功
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