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秋の山とドラゴンと

#アックス&ウィザーズ #ノベル #猟兵達の秋祭り2024

叢雲・凪



月杜・屠



レイチェル・ノースロップ



フェトナ・ミルドアレア



四宮・かごめ



オリビア・アンチェイン




「いや、これは絶景でござるな」
 どこかで鳥が囀っていた。アクス&ウィザーズの世界の山々に生える木々も色鮮やかに葉を染めて実りの季節を体現している。
「されど、あの実り豊かな秋の山の何処かには民草が足を踏み入れるのを阻む悪しきドラゴンが存在すると」
 さぞ難儀していることでござろうなと、四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)は口に出し。
「そんな悪しきドラゴンを成敗するために我々が立ち上がったのでござるが――」
「Oh、強者故の傲慢と言うやつかしらね。隠す気ナッシングデース」
 件のドラゴンが付けたと思しき痕跡にレイチェル・ノースロップ(ニンジャネーム「スワローテイル」・f16433)は呆れ交じりの視線を巨木に向けた。ただ、発言者の忍んでいないカウガールルックを見たなら、ドラゴンもお前がいうなと思ったかもしれないが。
「大きい」
 大型野生動物ではありえない大きさの爪痕はマーキングなのか通った時についたモノであるのか。
「この爪の大きさならきっと食いでがあるんじゃないかな?」
 どこかズレた感想を漏らすのは、赤黒のパーカーに身を包む叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)だ。いや、調理担当としては至極真っ当な発言かもしれない。
「ドラゴンの方から目印を残してくれているならちょうどいいわ。これを追うわよ」
 引率役の月杜・屠(滅殺くノ一・f01931)が痕跡を追うことを提案すれば反対意見は何処からも出ず。
「あ」
 捜索開始から十数分後、痕跡を残すドラゴンを忍ばないタイプのニンジャが追って山野を進んでいればいずれかか双方が相手の発見に至るのは自明の理だった。
「オァアアァアアアァァァッ!」
 覆い茂る木々に紛れ込むような緑のドラゴンは縄張りに踏み込んだ者への怒りも顕わに咆哮する。
「見つかっちゃいましたね」
 フェトナ・ミルドアレア(しなやか忍者・f40966)も隠密じゃない堂々としたタイプの忍の一人ではある。だからドラゴンから見つかってしまったことに驚きはないが。
「これがドラゴン、まるで御伽噺だね」
 その容貌、存在はサイボーグのサイバーニンジャであるオリビア・アンチェイン(サイボーグニンジャ・f44605)からすると非現実的にも見えたのかもしれない、ただ。
「とはいえ実在する生命が相手なら、なんとでもなるはずだ」
 恐れるような存在という訳でもない。左腕を切り離すとアームド・メガ・プラズマ・カノンへと換装。
「――さぁて、やってみせておくれよ、先輩方」
「って、流れ的に今のはそのまま勇ましく向かってゆく流れじゃないの?」
「構文にするなら『ドラゴンだと?!』もいるんじゃないかな?」
 オリビアのリアクションにザワザワし出すが。
「私はまだまだ経験不足だからね、皆の立ち回りを勉強させてもらうよ」
 と言われてしまえばそれまでであった。それより何より、既にドラゴンは旅団「影乃忍群」の面々を認識しているのだ。
「グルルル」
 相手は多勢、傲慢であったドラゴン=サンも不用意に襲いかかるほどウカツではないのか唸りつつ様子を窺う。
「ドーモ はじめまして ジンライ……」
 ドラゴン=サンの視線を浴びつつガッショウした凪は瞑目し。
「フォックスです」
 今一度見開いた妖狐の瞳には地獄めいた赤黒のスパークが灯る。直後であった。
「ハヤイ!」
 このドラゴンは言語を有さないようだった、故にまるでそう言ったかの様に周囲が感じたに過ぎない。地面を蹴るや雷めいた速さで凪が牽制すれば反応してドラゴン=サンは退いた。ただの牽制にも拘わらず避けねばと思わせるモノがあったのであろう。その退いて空いた筈の距離を凪は一気に詰め肉薄す。
「イヤッー!」
「ゴアーッ」
 至近距離に踏み込んで急所目け繰り出されたカラテのワザマエはドラゴン=サンに回避を許さなかった。あまりの威力に殴り飛ばされたドラゴンは何本も立木を折りながら吹っ飛ぶと山の斜面を転がり始め。
「こう、いきなり飛ばし過ぎではござらんか?」
「追いましょうっ!」
 ドラゴンの行方を目で追ったかごめが唸れば、フェトナはドラゴンが転がり落ちて行った斜面を駆け下りてゆく。
「逃がしませんよ~! はあっ!」
「ゴガアッ」
 そうしてあっという間に追いついたかと思えば側面に回り込んで殴りつけることで転がる軌道を修正し。
「見えたでござる! せいやッ!」
 転がる拍子に一瞬比較的柔らかい腹部が見えた瞬間にかごめが手裏剣を投擲する。
「グガアアアッ」
 狙いたがわず腹に手裏剣が突き立ったドラゴンは苦痛の咆哮を上げ。
「グギャエッ」
 暴れ出そうとするドラゴンの顔面を屠が火遁=ジツで焼いて怯ませ。
「オー、これはワタシも負けていられまセン!」
 感嘆の声をあげたレイチェルはまるで扇のようにクナイを広げる。そのどれもが痺れ薬や眠り薬を塗布され、濡れていた。濡れている。
「ちょっと待ちなさい」
 屠が止めなければ、そのままレイチェルはシャウトと共に手にしたそれを投げ放っていたことだろう。
「待つ? ホワイ?」
 首を傾げるレイチェルであったが、ドラゴンが再び動き出してないのを確認してから屠は指を一本立てる。
「確認だけど、狩ったドラゴンはその後掻っ捌いて調理するのよ?」
「そのとおりデース。BBQ楽しみデース」
 ドラゴンが一方的に攻撃されている現状、レイチェルには狩猟後の調理の時間も近いように思えていたのかもしれない。テンションは高めで。
「それを使った場合、そのお肉に薬が回ってることになるけど?」
「オウ?!」
 高かったテンションのまま屠の指摘にレイチェルは自分の持つクナイを見て固まった。
「……ワタシも負けていられまセン!」
 短い沈黙。とは言え流石にクナイは自重するらしく、仕切り直しとばかりにザンテツブレードを構えるとドラゴンへ襲い掛かり。
「イヤーッ!」
「ゴアーッ」
 レイチェルのカラテを受けドラゴンは狩猟ゲーめいたワザマエで尻尾を切り落とされた。
「武器は?!」
「実は解体用デース!」
 それでも構えたのは思ったよりも一方的な展開にそのまま調理へ流れ込めるのではとも思ったのかもしれない。
「グギャアアアッ」
「回避+2で影も踏ませまセーン」
 流石に尻尾を失えば痛みと共にドラゴンは激高し叩きつけてくるドラゴンの腕をレイチェルは無駄に長い距離の前転で回避し。ドラゴンの前肢は無駄に地面を叩くに終わる。凹んだ地面を見れば威力の方は申し分なかった、しかし。
「注意不足は良くないね……いや、これは見せ場を作って貰ったと思うべきかな」
「ゴアアアッ?!」
 余程怒り心頭であったのだろう、レイチェルばかりを追いかけてオリビアからアームド・メガ・プラズマ・カノンを向けられていたことにも気づかなかったドラゴンは後方からの援護射撃が横腹に直撃してもんどりを打つ。巻き込まれた樹木がドラゴンの体重の一部を支えきれずにへし折れ。
「フェトナ、あっち側デース!」
「わかりましたっ!」
「ッギャエエエエッ」
 それでも絶命に至らず上体を起こしたドラゴンへレイチェルの指示に応じたフェトナが前肢の肘を狙った一撃を叩き込むと肘を砕かれたドラゴンはへし折れた樹木を下敷きに仰向けでひっくり返る。
「グゴアアアアッ?!」
 いつの間に仕掛けられていたのかドラゴンの自重で更に罠が起動し。
「好機にござるな、にんにん」
 柔らかい腹部を晒すドラゴンを視界におさめ、かごめはひょいひょい気軽に立木へ上るとこれ見よがしに鉈を振りかぶる。
「ゴオオオッ」
 首をもたげたドラゴンもかごめが仕掛けてくるのを疑わず、睨んで唸るもかごめからするとコレが狙いであった。
「トドメはお任せしたでござるよ」
 ドラゴンにとっての不幸は言語を介さなかったことであろう。理解できていればかごめの言葉を組んで視覚外からエントリーして来た人影に他の面々の動きにも気づけたかもしれないのだから。いや、気づけたところでどうにかなっただろうか。
「獲物は罠でまともに動けまセーン! このまま畳みかけるのデスヨー!」
「これ以上暴れさせて山を荒らすのも良くないからね。引き続きの援護射撃は任せておくれよ、先輩方」
 仲間を促しつつレイチェルもドラゴンへ肉薄し、請け負うオリビアは左腕アームド・メガ・プラズマ・カノンをドラゴンへ向ける。詰みであった。
「水遁――」
「ギャッ、グエッ」
 後ろ足の片方に、ジツが脇腹には援護の砲撃が、と次々に影乃忍群の面々の攻撃が命中してゆき傷を増やしてゆく。
「イヤッー!」
「ゴアーッ!」
 そうして最後に凪のカラテによって首を刎ねられたドラゴン=サンの胴体は血を吹き出しながら崩れ落ちる。おお、クビキリ。かくして悪しきドラゴンは「影乃忍群」の面々によって狩猟されたのだった。
「という訳で、狩ったばかりのドラゴンを掻っ捌いて調理するわけだけど」
「それがしは主にお米を炊くでござる」
 忍者刀を抜いた屠の視線を受け、かごめは宣言する。なにを言わんとするかを察したようだ。
「で、炊飯でござるが……竹炭を放り込んでおけば遠赤外線効果やらなんやらで仕上がりふっくらふわっふわでござる。たぶん」
 察す方は察しておいて、炊飯の方はジッサイ、ファジー。
「ちょちょいのちょいで、にんにんにん!」
 と思わせて凄まじい速さで米を研ぎ、水を注ぎ、さりげなく竹炭を放り込んで飯盒の蓋を閉じる。
「狩りの後はお肉の準備です~!」
「とりあえずは、こんな感じかしらね?」
「オウ、もう始まってマース!」
 そうしてかごめがお米の準備をしている中、もはや食肉という認識のドラゴンの身体の方に集まる者が三人。様子を見に来たフェトナが見つけたのは、吊るされたドラゴンの体を早くも掻っ捌いている屠と片手にザンテツブレード、もう一方の手にマイBBQソースを持ったレイチェルの姿。
「お~! 皆さん凄い手際ですっ」
「ワタシはこの部位を貰いマース!」
 フェトナが屠のワザマエに歓声を上げる一方でレイチェルも屠が刃を入れていない部分に取り掛かり始め。レイチェル自慢のザンテツブレードは硬いドラゴンの鱗ごと肉を斬り裂き肉塊を切り出すと、更にこれをグリルにのせるのに最適な大きさへ切り分けてゆく。
「こちらの人手は十分そうですし、調理は皆さんにお任せして、僕は食べられる場所や食器等の準備をしていきますね~!」
 そこまで見ればもう手もいらないと見たフェトナはドラゴンの側から離れてゆき。
「月杜さん、お肉ください」
 逆に凪は屠の元に出向くと一声かけて。
「これぐらいでいい?」
「おぉ、ありがとう」
 一塊の肉を受け取ると少し離れ嬉々として調理へ取り掛かる。
「イヤッー!」
 なんということか、食材に向き合っても凪は狩猟の時同様に緊張を崩さない。カラテシャウトと共に繰り出した手刀が肉塊をあっという間にタタキにしてゆく。
「イヤッー!」
 更にそこへとれたての山菜を投入。
「混ぜる前に肉団子にしてもう一回やり直したなんてことはなかった。いいね?」
「ハイ」
 アッハイと答えそうなところをそう答えたのに満足したのか凪は手早く作った肉団子を焼いて秋の味覚「つくね」を作り上げていった。尚、つくねを焼くのに使った火は火遁で肉を焼いていた屠から貰った火種が元である。
「あっという間にできてゆくね」
 ただただ手は出さず見物人に徹しているのは、オリビアだ。全身ほぼ機械で料理の必要性が無く、調理技術は皆無な自身が迂闊に調理に関われば台無しになる自覚があるからこそただ眺めていた訳だが。
「運ぶのを手伝って貰ってもいい?」
 壁の花ならぬ立木の隣人と化して突っ立っていたへオリビアと屠は声をかけ。
「なるほど、それぐらいなら手伝えそうだよ」
 引率役の何もしないことで負い目を作らないようにと言う気遣いへ頭を下げたオリビアは出来上がった料理の運搬を手伝うべく木の側を離れる。
「古きBBQソースは酢・塩・胡椒だけのものでシタ。アレもいいものデスが、今の物はそこから進化を遂げてマース!」
 そうしてオリビアがレイチェルの近くを通った時のこと。
「ケチャップにウスターソース! そして、砂糖! ブラウンシュガーを使うところもあればハチミツを入れるところもありマース!」
 地域やご家庭によって幾通りものアレンジがあるというようなことを説明してからレイチェルはソースボトルを掲げる。
「そんな色々を食べ比べて見て他所に負けないと断言するのがこのマイソースデース!」
 これ見よがしに見せてから焼いた肉へソースをつけ。
「デリシャス!」
 ひと切れの肉を口に入れてそしゃく、自賛の言葉を口にして。
「お待ちかねの食事ですっ」
 そうしてご飯の準備まで済めば並んだ料理を味わう時間となる訳だが。
「やはりジビエのお肉は味が濃くてパンチがありますね~! そこにふわっふわのごはんです~! これは合わないはずがないですっ」
 早速フェトナが肉を食べ感想を言うやすぐさまご飯を頬張る一方でオリビアは全く料理に箸を付けておらず。
「実は私はあまり量は食べられなくてね。美味しいところを肴に呑ませてもらうよ」
 理由を視線で尋ねられると肩を竦め酒杯を示して見せる。
「ジビエ料理とくれば、やはりアルコールだ。バイオペッパーをケモ・リキュールに漬け込んだ胡椒の辛味が味わえる酒を持ってきたよ」
 それが今見せているモノなのだろう。
「大丈夫、ややカラフルな見た目だが害はないよ。度数は高めだけどね」
「お酒羨ましい~……もいずれ飲んでみたいですっ」
 くすりと笑んだオリビアはフェトナから酒杯に向けられた視線を当人からの言葉で取り違えていたことに気づき。
「ああ、未成年の子にはサイバー・コークを用意しておいた。ややクセはあるが、ジビエに添えるなら丁度いいんじゃないかな」
 未成年のくだりで視線を向けた先で凪がちょうど料理を一口食べ、全身に電流が走ったかのように震えていた。
「うまいぞぉぉおおおおお!!!」
 口から迸るカラテビーム。余程美味しかったのかそこからものすごい勢いで食べ始め。
「うう、お腹いっぱいデース」
「腹八分でござる。にんにん」
 他の面々も約一人を除きそれなりに箸は進んだ筈であったが。
「あの巨体を考えれば相当な肉の量になるのは解っていたことだがね。食べきるのは……うん、任せた」
 まだまだ残る肉の量を見てオリビアはそれらの処分を仲間に委ねるも六人から一人辞退して残り五人で食べられる分量にも限度がある。
「それなりに残ったわね。無駄にするわけにもいかないわ」
「あっ、燻製づくりなら手伝いますよ~!」
 やがて食事の時間も終わりに近づき、残った肉の量を確認して屠が燻製づくりを始めようとすれば、目に止めたフェトナが駆けよって余った肉まで適切に処理されることとなり。「影乃忍群」一行のドラゴン討伐はこうして幕を閉じたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年11月25日


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