●暗闇に紛れて
月のない静かな秋の夜であった。舞い散る幻朧桜もその姿は闇に溶け、殊更に肌寒さを感じさせる。
帝都から少し離れた農村地帯、暗闇に紛れてゆらゆらと動く影が六つ。
『刈りたい……うおぉ……』
『刈らねばならぬ……』
闇夜に相応しい黒尽くめの忍装束を身に纏い、手には鎌が握られていた。忍びの影朧たち。
しかし、その足取りは覚束なくあまりにも儚い。とても忍びの仕事など果たせそうにない有様であった。
おそらく自分たちはそう遠くないうちに消えてしまう。彼らは焦っていた。
過去のことなどとうに捨てたのに。忘れ去っていたのに。今になって思い出してしまうとは。
『最後に我らは為さねばならぬ、これだけは!』
強い衝動にかられ舗装もされてない田舎道、いや畦道をただ「未練」を求めて彷徨い歩く。
『この村もダメか。この辺りは終わりだ』
『我らの故郷もとうに……どこへ行けば良いのだ?』
六人は同郷であるようだ。
『もはや我らは望みを果たせずに尽きるのか!』
一人が地に伏せ悔しげに土を握る。
『命運尽きたか……』
空を仰ぎ涙を流す者もいた。
『まだだ! 諦めてはならぬ! 弟たちよ!』
兄弟だった。
おそらく長男だろう男が激をとばす。
『必ずやどこかにあるはず! たわわに実った黄金の稲穂の海が!!』
彼らの未練、それは『稲刈り』ーー。
忍びになる以前は農民だったのだろう。
丹精込めて育てた米稲が黄金に色づき頭を垂れる姿。待ちにまった光景である。
それを刈り取り、束ね、稲架に掛けて天日干しをする。さらに脱穀や選別、俵つめなどの作業もあるのだが。とにかく。
稲刈り、収穫をしてこその米農家なのである。
『しかし今年は猛暑でいずこも早まっている様子』
『あの山を越えれば、ある! きっと、たぶん、あったらいいな』
半ば諦めつつ山越えを決意した六人であった。
●新米だいすき!
「収穫の秋ですネ☆」
皆さん新米で作ったおにぎりいかがデスカ?
グリモア猟兵の恋澄・クララ(コズミック綺羅星・f01432)はお皿に盛られたおにぎりを猟兵たちに配って回る。ふんわり握られた新米のおにぎりは塩だけでも驚くほど美味い。
「というわけデ、サクラミラージュに影朧が現れる予知が得られまシタ。彼らは忍者ですが『稲刈り』に強い未練を持っていマス。とはいえもう残された時間はそう多くはないデショウ」
影朧たちは稲刈りができる田んぼを求めて山道を歩いているらしい。焦りのためか少々攻撃的になっているので、まずはこれを落ち着かせたい。こちらから仕掛ければ立ち向かってくるはずだ。
「稲刈りができる田んぼデスガ、ちょうど良い場所を見つけましたのデ、戦闘後は山中にある神社の鳥居をくぐって移動していただきマス」
移動先は人手不足で困っている農村。まさに稲刈りシーズン真っ盛りなので、どの田んぼも見事な稲穂がたわわに実り、刈られるのをいまかいまかと待っている。
田んぼはかなりの広さだが、影朧たちは物凄い速さで稲を刈っていくので、朝から始めて夕方にはすべて刈り終わるだろう。
昼時には農民が素朴ではあるが食事も用意してくれるそうだ。
猟兵たちだが、こちらは落ち穂拾いをしたり、稲を束ねたり、竹を切り稲架を組んで天日干しをしたり、稲刈り以外の作業を手伝うことになる。
稲束をすべて天日干しにしたら終了だ。
「農民にとって大切な収穫作業、どうか彼らの望みを叶えてあげてくだサイ」
OHAGI
初めまして、こんにちは。
『OHAGI』と申します。
こちらは帝都櫻大戰の戦後シナリオとなります。
稲刈りの季節となり、かつて農民であった記憶を思い出した忍び兄弟六人。しかし稲刈りをしたくともすでにどこも終わってしまっています。
絶望にも似た想いを抱えた彼らの元へ向かい、未練を果たせてあげて下さい。
●1章 戦闘パート。
忍者六人。弱体化しています。個体で戦力差はありません。鎌を持っていますが大事な農具なので武器にはしません。
闇夜の山道で彼らを説得(物理)して下さい。ひとけのない場所でそれなりの広さがあるので、地形などは考慮しなくても大丈夫です。こちらが仕掛ければ立ち向かって来ます。
●2章 日常パート。
のどかで近代化されていない昔ながらの日本の農村。到着時は朝です。
秋晴れで自然豊かな里山、黄金色の田んぼ。
稲刈りはオートのようなものなので、それ以外のお手伝いをお願いします。
お昼には農村の方たちが素朴ながら食事を用意してくれます。忍者兄弟も昼休憩しますので、彼らとお話をしてみても良いかもしれませんね。
飛び入り、複数人での参加も歓迎します。必ず同行者名(ID)やグループ名をプレイング一行目に明記して下さい。
オープニング公開からプレイングを募集します。
2章は断章を挟んでの募集になります。
皆さんのご参加をお待ちしております!
第1章 ボス戦
『大忍『無顔』』
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POW : 忍法・螺旋転撃
自分の体を【高速回転】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【出血】の状態異常を与える。
SPD : 忍法・螺旋風撃
【手裏剣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【螺旋の斬風】」を放ち、ダメージと【出血】の状態異常を与える。
WIZ : 忍法・螺旋衝撃
【刀の切っ先や印を結んだ手】を向けた対象に、【螺旋状の衝撃波】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「詩乃美・紫乃舞」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦
称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。
複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!
●あの坂を登れば
忍び六人兄弟はお互いを支え励まし合いながら、ひたすら闇夜の山道を登っていた。
『あの坂を登れば……稲穂が見える』
『そうだ、きっとこの先には』
「何もないがな」
唐突に否定の言葉を投げられた影朧たちは、弱りながらも忍者らしく素早く周囲を警戒する。
『何者だ!』
彼らの背後、山道の真中にそれは佇んでいた。美しきミレナリィドールの少年、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)。立ち姿も芸術品の如く人を惑わせる魅力を漂わせている。
「君たちに名乗る必要も感じないが、まあ雇われ兵というやつだ」
両手には複数の精霊銃をくるくるとジャグリングしながら視線は、忍び六人の一挙手一投足を捉えている。
『悲願を達成するまでは、この身朽ちるわけにはいかぬのだ! 邪魔だてするなら斬る』
忍びの一人がシェーラへと印を結んだ手を向け螺旋状の衝撃波を放つ。
「ーー|彩色銃技・華燭之典《アトラクティブガンアーツ・フルバースト》」
シェーラはスライディングでこれを躱し、精霊銃から放たれる精霊を纏った弾丸が相手の腕を撃ち貫く。弾丸にはマヒ効果が付与されていた。
弾丸をもろに受けた忍びは堪らず倒れ伏した。
『三郎!』
どうやら三男らしい。
「まともに言葉を交わす余裕もないとは」
溜息とともに体勢を整えるシェーラ。
「まずは話を聞かざるを得ない程度に『落ち着いて』もらうとするか」
残る兄弟は五人。
成功
🔵🔵🔴
水心子・真峰(サポート)
水心子真峰、推参
さて、真剣勝負といこうか
太刀のヤドリガミだ
本体は佩いているが抜刀することはない
戦うときは錬成カミヤドリの一振りか
脇差静柄(抜かない/鞘が超硬質)や茶室刀を使うぞ
正面きっての勝負が好みだが、試合ではないからな
乱舞させた複製刀で撹乱、目や足を斬り付け隙ができたところを死角から貫く、束にしたものを周囲で高速回転させ近付いてきた者から殴りつける
相手の頭上や後ろに密かに回り込ませた複製刀で奇襲、残像で目眩まし背後から斬る、なんて手を使う
まあ最後は大体直接斬るがな
それと外来語が苦手だ
氏名や猟兵用語以外は大体平仮名表記になってしまうらしい
なうでやんぐな最近の文化も勉強中だ
「戦闘不能にすればいいのかな?」
宝玉を思わせる髪と瞳が宝石のような少女。太刀を佩いてはいるが抜く様子はない。
「とにもかくにも、水心子真峰、推して参る」
太刀に手を添え対する五人を見据えると、水心子・真峰(ヤドリガミの剣豪・f05970)は自らの本体『太刀・水心子真峰』を数多に複製し周囲へ展開する。
『この二郎、弟の仇を討たん!』
仇と言ってもマヒして動けないだけなのだが。
倒れた三郎を庇うように立ち塞がり、巨大な手裏剣を回転させると、螺旋の斬風が唸りをあげ戦場全体に吹き荒れた。木々は切り刻まれ木の葉や木っ端が嵐のように舞い上がる。
複製刀と木っ端がぶつかるたび高い音を立てる。
それらを斬風ごと念動力でもって複数の複製刀を操りなぎ払っていく真峰。
「正々堂々と正面から勝負したいところだが、そうもいかないのが残念だ」
背後からもう一人の忍びが手裏剣を振りかざし襲いかかってきた。しかし手裏剣は空振りして地面に突き刺さる。
「残像も見抜けないとはな」
本当に残念だ。できるなら一対一で真剣勝負をしたかったんだがな。
周囲に展開された複製刀は視界内だけではなかった。真峰に対する二人の死角からそれぞれ斬撃が放たれる。
『二郎兄ィ……』
『ああ、五郎よ、無念』
ばたりばたりと二人の兄弟は倒れた。
見下ろしながら真峰。
「一応、峰打ちなんだが」
残るは三人。
成功
🔵🔵🔴
柳・依月(サポート)
俺は柳依月、UDCアースの大学生だ。……だが、実は人間じゃない。妖怪だ。それでも俺は人間が好きで人間と共にある。彼らの日常を守る為、てのが俺の戦う理由になるのかな。
戦闘時は基本仕込み番傘での近接戦だが、中長距離や支援に回る時などは呪髪糸や禍魂による呪いなんかも使用する。
非戦闘なら情報収集が得意だ。主にネットだが、聞き込みとかもする。【化術】も得意だからな。
以下PL
ギャグ系の状況でもノリはいい方です。
UCは指定した物をどれでも使用し(詠唱ご自由に)、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
「二郎に三郎と五郎、であってるか?」
倒れている三人を指して兄弟残り三人に確認するのは、番傘を片手に和洋折衷の装いの青年、柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)。
「全員黒尽くめの忍装束、顔も見えない動きも同じときたもんだ。よく間違えずに識別できるな」
『我らでも時々、間違える』
「なんだよそりゃあ」
なんと会話が成り立っている!
三対一。人数はこちらが上。ジリジリと間合いを取りながらではあるが忍びたちは会話に応じていた。もちろん隙あらばと狙ってはいるようだが。
「ちなみに君は一郎? 四郎かな? 六郎?」
『さてな。知る必要などなかろう。見分けがつかないのならば』
それもそうだ! と依月はカラリと笑い。
「では俺は誰だと思う?」
『なに?』
番傘を手にした青年の姿はなく、向かい合うのは彼らと同じ黒い忍装束姿の男。そして素早く姿をくらますと暗闇に溶ける。
『化け術か!』
ーー今宵は闇夜、さぁて、見つけられるかな?
忍びたちは咄嗟に周囲の気配を探る。そして彼らは気付くのだ。自分たちの身体に絡み付く何かに。
『こ、これは?』
『蜘蛛の巣? いや呪髪か!』
そう、依月はただ話をしていたわけではなかった。
コミュ力の会話で意識をそらせ認識阻害を用いながら密かに罠を仕掛けていたのだ。
呪髪糸を蜘蛛の巣の如く放つ『|呪髪糸操術:絡新婦《ジュハッシソウジュツ・ジョロウグモ》』は獲物を捕えて生命力を奪う。
しかも暗闇であればその威力は3倍。
『しまった……力が抜けていく……』
膝をつき地に伏す兄弟二人。
かろうじて一人だけが倒れるのをこらえている。
「君が長男、一郎だろう?」
元の装いに戻り番傘を差す依月。
最後の一人は頷いた。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・カガミ(サポート)
『よろしくね。』
人間のシンフォニア×サウンドソルジャー、20歳の女です。
普段の口調は「年相応の少女口調(あたし、~くん、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
踊り子兼歌姫なので歌ったり踊ったりすることが大好きです。
明るく好奇心旺盛な性格で、自慢の歌と踊りで旅費を稼ぎながら世界を回っています。
戦闘では歌や踊りを使っての援護に回ることが多く、ユーベルコードもそれに準じた使い方をします。
描写NGはありませんので、あらゆる用途で使って頂いて大丈夫です。
ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
相手が強いのなら、削れる機会は逃さず、相手に隙は見せず、
長期戦を覚悟して着実に狙うのがいいわね。
勿論、隙があれば見逃したくないけど。
見切ったり足には自信があるけど、過信せずに落ち着いて戦況を見極めるわ。
行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
(他に仕留めたい人がいればその手助け)
台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎
カグヤ・モンデンキント(サポート)
モンデンキント級植民艦3番艦カグヤに宿ったヤドリガミですわ。
女性に年齢を聞くものではなくてよ。
まずは地球型惑星を破壊できる規模の主砲であるユーベルコード「ジャッジメント・クルセイド」を放ちますわ。
あるいは周囲から慌てて止められ、仕方なしに別のユーベルコードを使いますわね。
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は致しませんわ。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします。
筒石・トオル(サポート)
「邪魔をしないでくれるかな」
「油断大敵ってね」
「ここは任せて」
正面切って戦うよりも、敵の動きを封じたり、属性防御を固めて盾や囮となったり、味方が倒し切れなかった敵にトドメを刺して確実に倒すなど、味方の安全性を高めるように動く。
ユーベルコード使用はお任せ。
使用しない場合は、熱線銃での援護射撃を主に行う。
人見知りではあるが人嫌いではないし、味方が傷付くのは凄く嫌。
戦うのも本当は好きではないが、誰かを守る為には戦う。
もふもふに弱い。敵がもふもふだと気が緩みがちになるが、仕事はきちんと行う……ホントだよ?
「出遅れたかしら。影朧は六人と聞いてたけど、残りは一人?」
丸いサングラスをクイッとあげてみせるラムダ・ツァオ(影・f00001)。黒い瞳に最後の一人となった忍びが映る。
『ッ、増援が来たか……だが諦めぬぞ。我らが悲願を叶えるまでは』
武器を構え抗戦の体勢をとる一郎。一撃でも喰らえば終わりであろう、それほどまでに弱っていながら彼の足元はしかりと地面を踏みしめる。
背後に倒れている弟たちを庇うように。
「これはまだ話が通ってないとみていいかしら」
「聞く耳もってなさそう」
ラムダの隣でメガネを指で直しながら黒髪の少年、筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)が呟く。
「いったん無力化するしかないみたい?」
踊り子姿のステラ・カガミ(踊り子兼歌姫・f14046)が二人の後ろから様子をうかがう。
「仕方ないわ。トドメにならないよう気をつけないとだわね」
黒刀を逆手にラムダが大地を蹴った。早業とダッシュで瞬時に一郎の背後をとる。
『弟たちに手出しはさせぬ!』
一郎は手裏剣を回転させ、周囲に螺旋の斬風を放とうとしたが、すんでのところで動きが止まった。
「大技は隙が大きいんだよね」
ラムダの後方から、トオルがメガネを光を点滅させていた。相手に催眠をかけ動きを封じる『ヒプノシスリストラクション』を発動させたのだ。
「ーー映せ」
ラムダは黒刀を眼前に構え刀身に一郎を投影する。ゆらり。何もない暗闇から黒い忍び装束の集団が姿を現し一郎を取り囲む。
ひいふうみい。五体の幻影が一郎に襲いかかる。
『お前は……二郎? 三郎、何故だ!』
そうか、あなたにとって大切な存在は彼らなのね。ラムダは目を細める。
彼女が用いたのは『|幻影少女《ヴィジョン・アリス》』。刀身に映した対象が「愛おしい」と思うものを幻影とし戦わせるユーベルコード。
幻とわかっていながらも一郎の攻撃の手は鈍る。いつなんどきも我ら六人兄弟は一緒だったのだ。
村が滅んだ時も、過酷な修行の中にあっても、無謀な任務を科された時も、お互いを励ましあい支え合って来たのだ。影朧となってからもその絆は途絶えなかった。
一郎はついに膝をつき涙を流した。
『たとえ幻影であっても、お前たちを手にかけることなど俺には出来ぬ』
ラムダは無言で幻影を消し去った。
『我らは消え去り、未練も果たせず終わる。無念であるがこの身が影朧である以上、望むことが間違いであった』
さめざめと泣きながら弱りに弱った一郎は今にも消え去りそうである。
「ちょっと待って! あたしたちはその『未練』を叶えるお手伝いをしにきたのよ」
ふわりと銀色のツインテールを揺らし、ステラは手にした扇を開いた。
「まずは眠って傷を癒やしてね」
ステラが小声で囁くような子守唄を口ずさむと、一郎をはじめ忍び兄弟たちは微睡みやがて眠り始めた。
眠りとともに負傷を回復させる『マザーズウィスパー』。これでとりあえずは六人兄弟も動けるようになるだろう。
「だからね、この山を越えても稲刈りが終わってない田んぼはないの」
朝焼けが山道を照らしていた。
その言葉に目覚めた影朧たちは絶望した。
「続きを聞け。そのため僕らは『稲刈りがまだ済んでいない農村』を探して見つけた」
『なんと!? まだそのような場所が!』
『我らの願いは叶うのか……?』
「はい、これからその場所へ案内しますので」
柔らかな微笑みを浮かべる艷やかな長い黒髪に十二単という平安人の如き姿の女性が現れた。
「カグヤと申します」
カグヤ・モンデンキント(天体娘・f31348)、その正体は惑星型宇宙船のヤドリガミであったりするのだが、それはそれ。
「それでは、これより私の|ドローン《使い》が道案内しますので、ついてきてくださいましね」
「Malbona Kodo : ducent dudek ok.」
空に向かってカグヤが唱えると、羽根の生えた兎がふわりと登場。
『|Pli amuzaj amikoj《プリ・アムーザイ・アミーコイ》』隠密道案内役ドローンである。
兎ドローンは森の道なき道を飛ぶ。兄弟と猟兵もこれに続いて歩くこと少し。
神社へと続く細い参道、そして古めかしい鳥居が現れた。
「こちら鳥居をくぐって移動いたします。まあいわゆる時空ゲートでございます」
カグヤが登場してからいきなりSFになった感はあるが、案内役として相応しくもある。
『鳥居は異界の門ともいうしな』
『信じるしかなかろう』
戸惑いながらも忍び六人兄弟は猟兵とともに鳥居を抜けた。
彼らの眼前に広がるのはーー。
朝陽を浴びてひときわ黄金色に輝く一面の稲穂の海であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 日常
『この善き日に』
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POW : 全力で楽しむ
SPD : 静かに楽しむ
WIZ : 優雅に楽しむ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●稲刈り衆、おおいに励む
農村は山に囲まれたいわゆる盆地の里山で、稲穂が揺れる黄金色の棚田は収穫されるのを今か今かと待っている。何反あるだろうか。棚田ゆえの登り降りもある。すべてを刈ろうとすればそれなりの重労働であろう。
到着する頃には日も昇り、朝餉の時間となっていた。村人たちが食事を用意して出迎えてくれる。おにぎりと漬物に汁物であったが、夜通し歩いてきた者たちには、空腹を満たし疲れを癒やすありがたいもてなしだった。
さて、助っ人たちの元に集まった農民は高齢者や杖をついた怪我人など、なるほど人手不足というのも頷ける。
「これ以上収穫を遅らせることもできず困っておりました。これはこれは、鎌まで持参してくださるとは。手入れの行き届いた良い刃ですな」
『さすがご老輩はお目が高い。稲刈りは我ら兄弟の得意とするところ。ここは任せてゆるりとなさるが良い』
『馳走になった。ひと心地ついたところで参るとするか。これまた見事な実の詰まった穂である』
『我らが領分。すべて刈り取ってみせようぞ!』
影朧兄弟たちは今までにないほどに活き活きとしている。
お互いに頷くと忍びの素早さはそのままに、目にも止まらぬ速さで彼方此方の田んぼへと散開していった。
残された猟兵たちであるがーー。
忍び兄弟はものすごいスピードで、それぞれの田んぼで稲を刈っては一束ごとに置いていく。それを稲束にまとめて天日干しするのが猟兵の仕事というわけだ。
竹林で竹を切り、稲束を掛けるための稲架を組む者も必要であろう。
担当して手早く終わらせたいところである。
「勝手がわからぬ向きもあるでしょう。ワシらも動ける者は作業がてら手ほどきいたします」
「お天道様が真上に来ましたらば、昼餉をお持ちしますでな。こちらにお越しください。山の幸をご用意させてもらいます」
料理に覚えのある者は食事の用意を手伝うのも良いかもしれない。
忍び六人兄弟の稲刈りはもう始まっている。猟兵たちも各作業へと向かうのだった。
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?
ジビエ|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
どんなに癖のある|肉《ジビエ》でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす
悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす
あと|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす
シナリオの傾向によっては、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
徳川・家光(サポート)
基本的に、必要性が無い限りあまり目立たないようにしています。でも頼られると嫌と言えず、人前に出ることにめちゃくちゃなれているので、必要になればそこそこの「コミュ力」技能でそつなく対応します。
土木系の力仕事は「羅刹大伽藍」、スピード勝負なら騎乗技能+名馬「火産霊丸」を召喚し、活用します。
異世界の文化が好きで、自分なりに色々調べており詳しいのですが、ときどき基本的な知識が抜けていたりします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
荒事じゃなければ折角の機会だし楽しませてもらうわ。
ただ、人手が必要なら積極的に手伝うわよ。
とはいっても力仕事はあまり自信がないけど、
細かい作業なら役立てると思うわ。
あと、目新しいものがあれば積極的に味わったり体験したり、接したいわね。
行動指針としては以下の3通りが主。
1.誰かの手伝い・手助けを申し出る。
2.目新しいものを探す。(特にA&Wにない物品)
3.美味しいモノ(特にフルーツが好み)を探す
台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎
日留部・由穏(サポート)
「由穏と申します。
これでも太陽神の生まれです。
いかなる世界であれ、オブリビオンの影に未来を曇らされる人々がいるのならば、私が手を出さない道理はありませんね。
太陽は、照らすべき者のために存在するのですから。」
好き:芸術全般、各世界の学習、人々の観察
使命:人々の明るい未来を守る
【発言】ご隠居神さま、敬語、優しい、いつも穏やかな笑み、怒りや恨みや後悔の感情が乏しく時に人を理解しきれないこともある、自らの負傷を気にしない
【日常行動】その世界の人々の話を聞くのを好みます。例え怨みや怒りの言葉であっても、穏やかに詳しく伺い、学び、可能な限り癒そうとします。
心地よい陽だまりが、全ての人を暖めますように。
「ねえ、もう刈った稲が積み上がってるわよ? あの兄弟ほんっとに稲刈りしたかったのね」
棚田をぐるりと見渡してラムダ・ツァオ(影・f00001)が唖然としている。暴走した彼らを止めた一人である彼女は、忍び兄弟のこの働きぶりには合点せざるを得ない。
「由穏と申します。陽射しも暖かくて良い天気ですね。ええと、私たちはあの稲を束ねれば良いのでしょうか。となると人手がもう少し欲しいところですね」
作業着に白衣姿の日留部・由穏(暁天緋転・f16866)は挨拶を交わすとおもむろにスマートフォンを取り出す。ここは近代化されていない里山の農村である。村人も物珍しそうに文明の利器を見ている。
「担当者です、突然すみませんが、力を貸してください……、と、メール送信」
「メール? どこに?」
ラムダが尋ねる。
「はい『|UDC「国境なき犬団」《ドッグズウィズアウトボーダーズ》』です。さっそく助っ犬が到着したようですね」
助っ人ならぬ助っ犬9頭が傍らに出現した。
『要請を受けまして「国境なき犬団」救援に参りました。いかような内容で?』
しかも人語を話す。
「犬さんたちには式神使いの能力をお貸しします。まずは折り紙で式神を……」
由穏が折り紙で鶴を折ると鶴はたちまち羽ばたき始め。複数の折り鶴を折りながら状況を助っ犬たちに説明する。
そして由穏は稲束をひと束分を手に取ると藁で手早く束ねて見せ、次に藁の束を助っ犬の身体に結びつけていく。
「いいかい? 犬さんたちは刈り取った稲をひと束くわえる。そして式神の鶴たちが藁をくちばしで取りこれを束ねる。稲束を積んだらまた稲を束ねる。この繰り返しをそれぞれの田んぼで行ってもらいたい」
『承知いたしました! それでは我々は任務に取り掛かります』
国境なき犬団と折り鶴は、各々の棚田に分かれて走って(飛んで)いった。
「うーん、有能なワンちゃんたちね」
助っ犬に感心すると、それじゃ私もひと働きしようかしら、とラムダは外套を脱ぎ褐色の肌が露わになる。少々露出は高めだがラフで身軽な格好だ。
「一肌脱ぎましょうってね。『|危肌一髪《ダイ・ハード》』って程じゃないけど。早業にはちょっと自信あるのよね。兄弟たちの速度に合わせて稲を束ねて積めばいいんでしょ。ついでに落ち穂拾い? もやっておくわよ」
丸いサングラスの奥でウインクすると、ラムダも畦道をショートカットしながら駆けていった。
「僕は稲架の手伝いをしようかな」
犬とラムダを見送って、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は竹を取るための竹林へと足を向ける。
「では私も稲束作りは犬さんに任せて、稲架を準備しましょうか……おや、もしや上様?」
共に向かう道ながら、由穏は彼がサムライエンパイアの将軍であることに気づいた。
「ええ、農家が困ってると聞いたもので。決して山の幸に釣られたわけじゃないですよ?」
一応お忍びなのでと上様。夜には帰らないといけませんし、頑張って終わらせましょう。
竹林に入ると農民のアドバイスに従って、良さそうな竹を切っていく。
「結構な本数になりますね。運ぶのはどうしましょう」
余分な枝を鉈で落としながら由穏は運ぶ方法を思案していた。
「その件については問題ないですよ。僕に任せてください」
にっこり微笑む家光。
その時である。竹林の奥からズザザーッと大きな音がしたかと思えば、木の葉や草にまみれた銀髪の女性がのっしと現れた。
「竹取りっすか精が出るっすね。わたしっすか? 飯綱・杏子っすよ。昼食の準備を手伝いにきたっす。人数多いっすからね」
飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)は言いながら首を振って頭の葉っぱを落とす。
よく見ると両手には山で狩ったと思われるイノシシとキジが。
「ジビエ料理は得意なんで、楽しみにしててもらっていいっすよー」
杏子は獲物を引きずりながら山を下りていった。
「――豪勢な昼餉になりそうだね」
「楽しみ、ですね」
彼女の後ろ姿が見えなくなると、由穏と家光は多くを語らず作業に戻った。
必要な竹を取り終えたところで、上様こと家光は左手にはめられた篭手「羅刹伽藍手」に念を込めた。篭手は眩い光を放ち変形しながら巨大化していく。みるみる家光を包み込むと身の丈二倍程の甲冑ロボとなった。
『|羅刹大伽藍《ラセツダイガラン》』である。
「というわけで力仕事は僕が請け負います。支柱用の竹は由穏さんお願いしても?」
「了解です。これが噂の羅刹大伽藍ですか」
竹をわら縄で縛ってまとめながら由穏は甲冑ロボをなるほどと見上げる。
二人で稲架用の竹を運び下りた頃には、田んぼの稲穂は全て刈られて、ほとんど束ね終わっていた。
太陽もちょうど真上である。
「お昼ごはんの時間っすよー! 全員集合っす!」
杏子が村の集会所前で皆に呼びかけた。
村の集会所にはずらりと料理が並べられていた。「これぞ田舎料理」と言える品々だ。
きのこ鍋、焼きおにぎり、里芋や茄子や豆腐の田楽、イノシシとキジの炭火串焼き、川魚の佃煮、根菜の煮物、梅干しと沢庵、デザートは柿。
「どうっすか? 真っ当な料理っすよ」
えっへんと胸を張る杏子。ゲテモノでもなんでもござれな彼女にとっては至極『真っ当』なラインナップである。
さておき、いただきますと手を合わせ食べ始める。
「このデンガクってのは初めて食べたわね。甘じょっぱくて美味しいわ」
ラムダが美味しそうに田楽を頬張る。
「イノシシにキジの炭火焼きですか。ワイルドですね。塩味でお肉の味がダイレクトに」
田舎料理というよりジビエ料理ですね、と肉にかぶりつく上様。山の幸にはかわりない。
「この柿は種があるのですね。柿は種がないものが主流だと思っていました」
現代日本をベースに活動している由穏にとっては逆に種のある柿は珍しいらしい。
影朧兄弟もそれぞれに料理を味わっているようだ。
『焼きおにぎり、母ちゃんが作ってくれた』
『あれは味噌が香ばしくてな』
『弁当は竹皮の包みだった』
『そういや、きのこも山に採りに行ったな』
かつての故郷の記憶が、素朴で懐かしい料理と共に甦っていく。
『稲刈りしたあとの飯は、美味かった……』
『ああ、美味いな』
刈り終わった田を眺めて呟く姿にはある種の清々しさと喜びが溢れていた。
『さて、稲架を組んで天日干しせねばな』
昼飯が終わればもうひと仕事が待っている。
稲架を組む作業は、六人兄弟と猟兵たちにより早々に終わった。次は稲束の天日干しだ。
これはまたなかなかの重労働であった。
稲束を担ぎ稲架へ掛けていくのだが、なにせ稲束の量が多い。稲束を運び持ち上げかぶせて掛ける。日が傾く前に終わらさねばならない。
そこで活躍したのが、黙々と稲束を運ぶ犬団と、力仕事は任せろの『羅刹大伽藍』であった。実際このような作業に『羅刹大伽藍』はうってつけとも言えた。
運ばれてきた稲束を忍び兄弟と猟兵がせっせと天日干ししていく。ラムダの早業は目を見張る速さでこれには村人も感謝しきり。
「これ、天日干しが終わってもまだ仕事はあるんですよね?」
稲架に稲束を掛けながら由穏が村人に話しかける。
「んですな。乾燥させたら稲架から稲揚げして脱穀に籾摺り。んで俵詰めですかな」
「人手が足りないようであれば、また僕も手伝いに来ますよ」
家光の言葉に笑顔でラムダと由穏も頷く。
そんな光景をぶち壊すかのように現れたのは。
「ふっふっふ。その心配はいらないっすよ!」
両手を腰に杏子が不敵な笑いを浮かべて立っていた。
「どういう意味ですか?」
「まんまっすよ」
ちょいちょいと手招きする杏子についてやって来たのは村の集会所。の敷地にある機小屋。
「「「はあぁ?!」」」
そして皆ことごとく驚いた。
機小屋に鎮座ましましているのは、脱穀・籾摺り・精米マシンであった。何故ここにある!?
「わたしが召喚した『|エクストリーム調理道具《エクストリーム・クックウェア》』っす!」
――脱穀機は調理道具だった!?
「収穫したての稲穂をどうしても料理したくて格闘してたんっす。なんかいい具合の調理道具がないもんかとアレコレ召喚して、最後に出たのがコレだったんっす」
わたしも使えるのかと疑問に思ったっすが、
兵糧作りと武器変形と応用力と欲望開放と錬金術で、この通り。全自動マシンになったっす。
そんなのアリなのか!?
「乾燥させたらあとはコレで一発っす」
「いずれにせよ、農村の人たちは助かるんですし、この際これで良しとしましょう」
ね? と上様。
かくして昔ながらの農村に|超機械《オーパーツ》が導入されるに至った。
稲掛けも済み棚田にはずらりと稲架が段々に並ぶ。
「これでお稲荷さんに新穀を奉納する収穫祭を行なえます」
村長らしき老人が有り難い有り難いと拝む。
秋祭りもしくは収穫祭。今年の収穫に感謝し安寧を願う、農村にとっては大切な祭りだ。
この村には昔ながらの祭り行事が今も残っている。そよぐ秋風が冷たくなってきた。
秋草が枯れる畦道に佇み、稲刈りを終えた里山の風景を眺める、忍び六人兄弟の影朧の姿があった。
彼らの未練であった『稲刈り』の悲願は達成された。それも六人が揃って。
太陽はだいぶ傾き西の山並みにもうすぐ沈むだろう。夕日は眩しい黄金色から鮮やかな橙色へと変わっていく。
長男の一郎が兄弟たちの顔を一人ひとり見ては目を細める。日が暮れる――
『わざ終えて 山に落陽 共に帰らん』
彼らは、沈む太陽の光に溶けて消えた。
「(この世界の太陽もまた人を導くのだろうか)」
別世界から迷い込んだ旧き太陽神である由穏は彼らが共に溶けた日の光に思いを巡らせ。
「僕たちも帰りましょう」
家光が振り向き、ラムダや杏子も首肯する。
村人たちに挨拶を終えると、草むらからピョンと小狐が飛び出した。
『ついてこい』とでも言うようにたびたび振り返りながら彼らを山道へ導いていく。もとより来た道、帰り道である。
彼が案内し辿り着いたのは神社の鳥居。お社の前には狐像。稲荷神社は稲作の神様とも言われている。
鳥居をくぐれば、幻朧桜が咲き乱れる山の中。――あれは一体どこの世界だったのか。
日が沈む。小さな疑問を胸に足早に帰還する猟兵たちであった。
成功
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