カタカタカタ。無機質なタイピング音が、狭い部屋の中で響く。
パソコンの画面には、何やら小難しいウィンドウの数々。そしてそのパソコンからいくつも伸びたコードは、室内に置かれた大きな機材に繋がれていた。
パソコンから漏れる音は、バーチャルキャラクター向けのラジオ放送。軽快なトークが繰り広げられる中で、微かにノイズが入っている。
そしてそのノイズが徐々に大きくなっていくのが分かった。
『それでは……ッ……ーナーに……ッ……しょう!』
恐らく『次のコーナーに参りましょう』とでも言ったのだろうその台詞は、ノイズでほとんど聞き取れなくなっていた。
ラジオの中でシーンが変わった瞬間、パソコンの前の影は最後に一つキーを押す。次の瞬間、音質が一気にクリアになった。
ニヤリと笑ったその人物――否。二頭身のトナカイが、奇妙な箱状の機械に接続されたマイクに向かって、唐突に口を開く。
「全国のバーチャル女子のみんな~、こんばんは~!」
●
「最近、キマイラフューチャー世界で奇妙なラジオが流れているらしいんだ」
クラム・ドグマ(黒い読書家・f03711)は不思議そうに眉をひそめて話し始める。
「ラジオの番組自体はこの世界で多くのバーチャルキャラクターに愛されているものなんだけどね。誰も気付かないうちに電波をジャックされているという話なんだ」
相当ナチュラルな流れなのか、今までそれに気付く者はいなかったらしい。可笑しな事態が露見したのは、ここ最近の事だ。
「何でも、その放送を聞いたバーチャルキャラクターの女の子たちが、数人程失踪しているらしい」
加えて、キマイラフューチャー世界の一部でトナカイの姿をしたバーチャルキャラクターが多く確認されているという情報も入ってきている。クラムはこれらに何かしらの関連がある考えていた。
「まず君達には、このラジオについて調べて欲しい」
詳しく調べれば、これらにどんな関連があるのかが分かる筈だ。実際にラジオ局に行ったり、放送中の電波を解析するのも一つの手だろうか。
「番組自体は夜に放送されているから、解析を行うならそのタイミングだろうね」
何はともあれ、現状で実害が出ていないとはいえあまり時間をかけすぎるのでは何が起こるか分からない。なるべく早い解決が求められる。
「くれぐれも油断はしないようにね」
そう告げ、クラムは転移の準備を始めた。
くらげ屋
初めまして、或いはお久しぶりです。くらげ屋です。
ここまでオープニングを読んで頂きありがとうございます。ここから簡単にではありますが、各章の説明をさせていただきます。
●第一章【冒険】
ジャックされたラジオの謎を解き明かしていただきます。
ある程度手掛かりを掴めたらクリアとなります。
●第二章【冒険】
ラジオのジャックの阻止です。何かしらのアクションによってジャックを止める事が出来ればクリアとなります。
尚、プレイングによってはここで更に詳しい情報を得る事も出来るかと思います。
●第三章【ボス戦】
ラジオジャックの犯人との対戦です。割と変態な奴ですので、しっかり懲らしめてやりましょう。
(注)
くらげ屋はプレイングに記載が無くともアドリブや他のキャラクターとの絡みを行います。
文字数が限られていますので、それらがOKだという方はその事を記載しなくても構いません。
もしNGだという方はプレイングの最初に「×」と記載していただければそのようにリプレイを書きますので、お願いします(どちらかのみがNGだという方については「ア×」もしくは「か×」のようにお願いします)。
長くなりましたが、以上になります。
皆さんのご活躍を期待しています。
第1章 冒険
『ねらわれたラジオ』
|
POW : ラジオ局へ向かい原因を探る
SPD : 電波を解析して怪しい点がないかを調べる
WIZ : 放送をよく聞き、その内容やかすかに聞こえるノイズなどから手がかりを探す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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夜の街、静かな一室。スイッチを入れたラジオから、今日もその陽気な声が響く。
『さあ今日もこの時間がやってまいりました! いや~、この番組もなかなか反響があるみたいでしてね。今日も一人僕の元へ来てくれましたよ。勿論、彼女もハーレムの一人になってもらいましたけどね。あはは!
……え? 私もハーレムになりたいけど、どこに行けば分からないって? 大丈夫。君の心に聞けば、絶対に分かるはずですよ。
さて、それじゃあ今夜も始めていきましょうか。この時間は、わたくし都南・佳がお送りいたします!』
エメラ・アーヴェスピア
キマイラフューチャーにしては…他の世界のような事件ね
少し気になるし依頼を受けるわ
…所で謎?何を明かせばいいのかしら、トナカイとの関連性…?
犯人が違う可能性もあるし、止めるべきはラジオとそれに関した失踪の方よね?
…私はジャック阻止の下準備と考えておこうかしら
そちら方面を調べるのは他の同僚さんに任せるわ
局に足を運んで【情報収集】よ
一番調べたいのはジャックの手段ね
物理的に機械を接続しているのか、電脳を経由しているのか
前者は【失せ物探し】、後者は【ハッキング】で探してみましょう
単純に出力強化での乗っ取りなら探知する為の機械を【メカニック】で製作、設置よ
他にも関係のありそうな情報は集めておきましょうか
「キマイラフューチャーにしては……他の世界のような事件ね」
無表情のまま小さく呟くエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)。情報収集の為に、彼女はラジオ局に直接足を運んでいた。
「一番知りたいのはジャックの手段ね」
物理的に機械を接続しているのか、あるいは電脳を経由したそれかもしれない。ひとまず前者を怪しんだ彼女は、それらしき機械を探してみるが。
「うーん……怪しい機械はないわね」
そこにあったのは、ラジオ放送には必須の機材のみ。怪しげな機械のような物は見当たらなかった。
それならば、とエメラは工具セットを取り出し、いとも容易く新しい機械を作ってしまう。それはどうやら、電波の場所を探知する為の物であるようだ。
適当な場所に設置し、エメラは操作を始める。電波の解析を待っている間、彼女は依頼に潮て考えていた。
(他の猟兵達はどうかしら?)
ラジオとトナカイとの関連性等については他の猟兵に任せていた彼女。心配を胸に抱きつつ解析を待っていれば、それは間もなく終わったようで。
解析結果を確認するエメラ。それによれば、具体的な位置までは分からないものの、この近辺からであることは間違いないようだった。
「これなら発信源が特定できるまでそう時間はかからないでしょうね」
すぐに機械を片付け、エメラはラジオ局を後にした。
成功
🔵🔵🔴
アスカ・ユークレース
ラジオの電波を解析
【ハッキング】【情報収集】の応用で
私自身が囮になって失踪先を突き止めます
バーチャルキャラクターの女子、条件は揃ってる筈
他の猟兵が追いやすいように
予め私の体に盗聴器や発信器を付けておきます
余力があれば……解析結果のメモなんかも残せたらいいですね
それにしても…何故女子バーチャルキャラクター限定?
シリル・シリウス
仲間たちの失踪事件・・・?
お姉ちゃんにも何かあったら・・・うぅ、放っておけないです・・・
怖いけど・・・助けに行かなきゃ・・・です・・・!
行動【WIZ】
とりあえず放送を聴いてみる事にします・・・
僕もバーチャルキャラクターなので囮くらいなら出来るかも・・・です・・・
男でも効果あるかは知りませんが、成功すれば、皆さんを犯人の所まで誘導する事も出来る筈です・・・!
もし僕の挙動がおかしくなってたら・・・その、何とかフォローお願いします・・・
ピンキー・タイフーン
フッフッフー☆ナルホドー。
ラジオの中にノイズ!これは電脳の奇術師ピンキーちゃんの出番デスねー?
イェーガーとして発進が遅れてしまいましたがここで頑張って、再生数を稼ぐデス! くっふっふー!!!
とにかくまずは情報集めデスね。
ノイズなんて言うちんけなマジック、このワタシが暴いてみせマス。
もし分が悪くなったらUCでドローン呼んで生放送開始!
【フラッシュ団☆Ch.特別編! ピンキーの生でイっちゃうハッキングSHOW☆】
を放送開始して皆の応援の力でこのハッキングを成功させたいです!
もし失敗したら……かわいく媚び打ってゴマカシマショー!! HAHA☆
ベ、別にハジメテだからってきんちょーしてナイデースよっ!?
「フッフッフー☆ナルホドー。ラジオの中にノイズ! これは電脳の奇術師ピンキーちゃんの出番デスねー?」
ピンキー・タイフーン(プログラムの寄術士・f14825)は楽し気にそう口にする。月夜に照らされ、ラジオ局の壁面に背を預けながら、彼女は自身の頭に流れて来るラジオをよく聞いてみる。
「しかし……随分と趣味の悪いラジオデスねー」
内容的にはありきたりで特段面白い訳ではない。むしろ無駄に陽気な声色で自分の気分のままに話されるそれは、不快ですらある。
しかも不思議な事に、自分の脳内が直接侵されていくような感覚さえ覚えている。これを好き好んで聞くようなリスナーはいるのだろうか。
「これ以上聞いていると頭がおかしくなりそうデース。ここはみんなの力を借りて……」
動画撮影用のドローンを放ち、ピンキーは生放送を開始する。
『フラッシュ団☆Ch.特別編! ピンキーの生でイっちゃうハッキングSHOW☆』
高らかにタイトルをコールすれば、すぐにコメントがいっぱいになる。僅かににじみ出る緊張を隠しつつ軽く雑談を交えながら、先程とは別の意味で頭がおかしくなりそうな放送を進める。
そして場が温まってきた頃、ピンキーは、さて、と小さく呟く。目に見えない電波を指先で弄ってみせると、彼女はしめたとでも言わんばかりの表情になった。
『ラジオをお聞きのみなさーん! 聞こえマスかー?』
さて、ピンキーが電波をジャックするより少し前の話。シリル・シリウス(バーチャルキャラクターのウィザード・f08436)は、同じバーチャルキャラクターである姉を思い不安の念を胸に抱く。
「仲間たちの失踪事件……? お姉ちゃんにも何かあったら……うぅ、放っておけないです……」
普段様々な場面で姉に助けられているシリル。涙目になりながら、彼は夜空の下で歩みを進める。
「怖いけど……助けに行かなきゃ……です……!」
「私も一緒ですから、そう心配しなくても大丈夫ですよ。早く助けに行きましょうね」
シリルの隣を歩くアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は、彼を勇気づけるように優しく声をかける。そして頭に流れて来るラジオを聴きながら彼女は思案する。
「それにしても……何故女子バーチャルキャラクター限定?」
「言われてみれば確かに……男の僕でも効果はあるんでしょうか?」
口元に手をやり呟くシリル。何でもないように発せられたその言葉に、アスカは思わず目を見開いた。
「え!? シリルは女の子じゃないんですか!?」
「は、はい……よく間違えられますけど……」
おどおどと返すが、彼の可愛らしい恰好を見ればそれも仕方ないだろう。
「なるほど、これが世にいう『男の娘』というものなのですね」
ほうと感心して見せるアスカ。勿論彼女の知識はネットで得た物なので、その真偽は定かではないが。
それから彼女は唐突に顔をしかめる。
「しかし、なかなか不快ですね。音全てがノイズと言ってもいいくらい……」
鬱陶し気なアスカの言葉に、シリルは首を傾げる。確かにつまらないラジオではあったが、聞くに堪えないという程ではない。そこまで嫌そうな表情をする意味が、彼にはよくわからなかったのだ。
詳しく話を聞こうとアスカの方を見たシリルは、彼女の様子に声を上げる。
「あ、アスカさん!? どうしたんですか!?」
驚くシリルに返す声は無い。虚ろな目になり、見当違いな方向に向かっていくアスカ。必死に体を揺すってみるが、彼女の足は止まらない。
力づくで止めようと、シリルが【グッドナイス・ブレイヴァー】を発動させようとした、その時だった。
『ラジオをお聞きのみなさーん! 聞こえマスかー?』
先程までのラジオが切り替わり、唐突に別の音声が頭に響く。それをスイッチにアスカの足が止まり、目をパチクリとさせる。
「あれ……私、何を……?」
「よ、よかった……戻ってくれました……」
ほっと胸をなでおろすシリル。何のことか分からず辺りを見回すアスカの視線は、ある一点で止まった。
「あれ、もしかして……」
アスカの視線の先には、一軒の小屋。そしてその窓からは大きな機械が見えた。恐らくアレがラジオをジャックしていた装置だろう。
アスカの体には予め盗聴器と発信機が付いている。他の猟兵達が到着するまでそう時間はかからないはずだ。
小さく頷き合ったアスカとシリルは、小屋に足を踏み入れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『コンコン機械の故障を直せ!』
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POW : 斜め45度チョップ!機械は殴れば直るって聞いたぞ!
SPD : 機械を分解して故障している箇所を探そう!
WIZ : 最近この機械の近くで不審者を見なかった?聞き込み調査で原因解明だ!
👑11
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都南・佳は小屋を離れていた。自分のラジオを他の誰かにジャックされているとは露知らず、無事に放送が終わったものだと勘違いしながら。
「さーて、今日は誰か来てるかなぁっと。……お、いるいる!」
虚ろな瞳の少女に近づく佳。にやにやと歪めた目を少女に合わせる。次の瞬間、少女の体は粗いドットに変わり、再び形を作った時には二頭身のトナカイの姿になっていた。
顔を赤らめピタリと体を寄せる少女――既にその面影を残してはいないが――を抱き寄せ、佳はガハハと大きく笑った。
「さあ! もっと僕のトナカイハーレムを増やすぞー!」
小屋の中は無人。ラジオジャックの犯人はどこかに出かけているのだろうか。
犯人の代わりに、その中には大きな機械。マイクなどもそこに置いてある辺り、ジャックに使われたと見て間違いない。
恐らくそれは、元は別の用途で使われていた物で、意図的な故障によって全く別の為に使われてしまったようだった。
更なる被害を防ぐ為には、これを修理する必要があろう。
ピンキー・タイフーン
WIZ
なるほどデス!
これは事件の香りがしマース
ピンキーちゃんがスパッと解決するデスよー?
ま・ず・はー!!!
聞き込み調査です!! 最近この辺で怪しいものを……
え、え!? 私?!
この超絶可愛い美少女キューティーマジシャンのどこが怪しいんですかキマイラフューチャー界隈もっと怪しいのがいるデスよ!?
え、言動とか
??????
ら、らちが明かないです、こうなったら次の人には世界知識で常識的な言葉で聞いてみまショー!
「あ、あのぉ、機械が―。壊れちゃっててー。あたしー。原因の長さしろって言われちゃったんですけどぉ―、なにかしりませんかぁ~><」
完璧です。誰に!?とか聞かれたら適当に第六感で誤魔化すデスよ!!!
シリル・シリウス
同行のお二方のおかげで何とか目的地までたどり着けましたが・・・
聞き込み調査はちょっと怖いですが・・・頑張ります!
行動【WIZ】
『この辺で”変わったもの”を見かけませんでしたか?』と書かれた看板をぶら下げた【グッドナイス・ブレイヴァー】を召喚して企画番組のようにカメラの前で答えてもらう形で聞き込みしてみたいとおもいます。
あっ・・・リアルタイム配信もする予定なので、現地にいない視聴者コメントでの情報提供も期待できるかも・・・です。
「なるほどデス! これは事件の香りがしマース」
ピンキー・タイフーン(プログラムの寄術士・f14825)は状況を確認しつつ呟く。笑顔を絶やさず、愉快に納得する彼女。
それとは対照的に怯えた様子で瞳を揺らすのはシリル・シリウス(バーチャルキャラクターのウィザード・f08436)。
「同行のお二方のおかげで何とか目的地までたどり着けましたが……」
これからどうしようか。そんな思いを胸に抱けば、ピンキーはそれを読み取ったように指を一つ立てる。
「ま・ず・はー!!! 聞き込み調査です!!」
「……え!?」
とんでもないスピード感に置いて行かれているシリル。彼に構わず、行ってきマース! とピンキーは小屋を飛び出していく。
残されたシリルは、震える拳をぎゅっと握りしめ、ぽつりと呟いた。
「聞き込み調査、ですか……ちょっと怖いですが、僕も頑張ります!」
それからシリルは、ピンキーの後を追って小屋を後にした。
ピンキーは、道で見つけた一人の男に話しかけていた。
「あのぉ、最近この辺で怪しいものを見かけませんデシター?」
「怪しいもの? それなら俺の目の前にいるけどな」
ガッハッハと大きく笑う男性。最初意味が分からなかったピンキーも、ようやくそれが彼女自身を指しているのだと気づいて。
「え、え!? 私?! この超絶可愛い美少女キューティーマジシャンのどこが怪しいんですかキマイラフューチャー界隈もっと怪しいのがいるデスよ!?」
早口に捲し立てるピンキーに「そういうところだよ!」と、男性は腹を抱えて更に笑う。
流石に怒った様子のピンキー。らちが明かない、と呆れ交じりに見切りをつけ、今度はもっとちゃんとしていそうな人に声をかける。
「あ、あのぉ、機械がー。壊れちゃっててー。あたしー。原因の調査しろって言われちゃったんですけどぉー、なにかしりませんかぁ~?」
可愛らしく、間延びした声で尋ねるピンキー。立ち止まったその人は、今度は笑う事もせず、ふむと考え込む。
「機械が? ……ああそういえば、関係があるのか分からないけど、妙な話を聞いた事があったな」
「妙な話デス……ですかぁ?」
元の口調に戻りそうになるのをぐっと堪え、ピンキーは更に聞く。
「そうそう。同じような機材がいくつか壊されたらしいって。どんな意味があったのかまでは分からないけどね」
それは恐らく、今回の事件に使用するために試していたのだろう。それで上手くいったのが小屋の中の機械。上手くいかなかったのが話のそれという事。
「ありがとうございマシタ!」
明るい笑顔を向け、ピンキーは別の人のところへ行くのだった。
一方のシリルは、撮影用ドローンを浮遊させ歩いていた。ドローンには、『この辺で”変わったもの”を見かけませんでしたか?』という看板をぶら下がっていた。
それを見つけたのだろう。一人の少年がシリルの前にやってきた。
「ねえねえ! これって今撮影してるの!?」
「そ、そうです……変わったもの、何か見ましたか……?」
元気の良い少年に若干押され気味のシリル。尋ねてみれば、少年は大きく首を縦に振る。
「見たよ! 何か、変な鹿みたいな奴! 後、可愛い女の子も!」
「鹿と女の子、ですか……」
呟きつつ配信画面を見てみると、いくつかそれに関連するようなコメントが見られた。
『そういえば、俺も前に似たようなの見たな』
『でも多分アレは鹿じゃなくてトナカイだったゾ』
『一緒にいた女の子、いつの間にかトナカイの姿になってたけど……』
次々に流れて来るコメント。まとめてみれば、トナカイと少女だったはずがいつの間にかトナカイ二匹になっている、という認識か。この辺りも事件に関係している情報なのだろう。
少年とコメントの情報を整理したシリルは小さく頭を下げ、別のところへ向かっていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
…ここかしら
なるほど、これでジャックしていた訳ね
とりあえず原因は分かったけれど…未だに犯人が分かっていないのよね…
判っているのは…名前?例のジャック番組で名乗っていればそれ位かしら
とりあえず、これをどうにかしましょうか
…しかしこれ、どうも改造じゃなくて故障で用途を変える…また無駄に遠回りしているわね
とりあえず直せばいいのよね?完全に私の得意分野よ
何処が壊れているか【情報収集】して【メカニック】で修理、と
それと選択肢は狭いけど犯人の情報を探すわよ
何もないようなら最悪『ここに始まるは我が戦場』をカメラを起動した缶の状態で一つだけ隠すように置いて
戻ってくるまで外で張り込みましょう
※アドリブ・絡み歓迎
アスカ・ユークレース
あ、危なかった……!もしかしたら私もあんなトナカイに……!考えただけで寒気が……
!や、トナカイ自体は好きですけど、それとこれとは別というか……
【SPD】
とりあえず【ハッキング】してあちこち弄ってみますかね?
【情報収集】していくうちに故障の原因とか解決策とか見つかるでしょうし。
アドリブ歓迎
辰神・明
【POW】
(事前に姉人格への交代を済ませて)
機械をブン殴って直す機会があるって!聞いたから!(わくわく)
なんか、すげぇ色々あるケド……殴ってみりゃ、ドコが悪いかわかるだろ!
そんなワケでユーベルコードとか無しに
【第六感】を使って気になった部分にこう、べしーんって!
反応が無さそうなら、別の場所を叩いてみたらどうなんだろうなー?
その辺も情報収集しつつ、色々な場所を叩いて確かめてみる
……力加減はちゃんとしないと、後でメイに怒られるし
おーい、なーおーれーよー(べしんべしん)
アタシの叩き方が悪いってのー?(叩き過ぎたらいけないので、時折様子見)
叩いて直ったら、珍しく大喜びするかも?ホントに直るんだ?
「……ここかしら」
小屋の扉を開け、中に足を踏み入れたエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)。そこにあった大きな機械を見て、ふむと頷く。
「なるほど、これでジャックしていた訳ね」
頷くその横で、アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は窓の外を見ながらほっと胸をなで下ろす。
「あ、危なかった……! もしかしたら私もあんなトナカイに……! 考えただけで寒気が……」
偶然にも彼女は、バーチャルキャラクターの少女がトナカイに姿を変えるところを通くから目撃していたのだ。残念ながら犯人の姿をはっきりと視認する事は叶わなかったが。
「ん? アンタはトナカイ嫌いなのか?」
アスカの言葉を聞いた辰神・明(双星・f00192)が首を傾げれば、アスカは困ったように眉を顰める。
「や、トナカイ自体は好きですけど、それとこれとは別というか……」
「ふーん。まあいいや」
そう返す明。彼女の視線は大きな機械に向いていた。
普段は妹のメイに体を預けている明。そんな彼女が人格を交代したのは、機械を殴って直すというチャンスがあったからだった。
「なんか、すげぇ色々あるケド……殴ってみりゃ、ドコが悪いかわかるだろ!」
誰に向けるでもなく口にする明。彼女が気になった場所を適当に殴ってみる。
「えいっ!」
「あ! ちょ、ちょっと!」
明の奇行にアスカは思わず声を上げる。しかしそれを聞かない明は、顎に手をやり思考する。
「うーん、何も反応が無い……おーい、なーおーれーよー」
バシンバシン、と今度は別の方向から数回叩いてみる。若干機械の様子が変わったように感じたのは気のせいか。
そんな明を見てはぁと溜息をつくエメラ。
「そんな適当に殴って直る訳無いでしょう。アスカさん、お願いできるかしら?」
「あ、はい! じゃあ始めますね」
元気に返事をしたアスカは、すぐにハッキングを始める。何処がおかしいのか、何によって故障したのか。虚空に浮かぶウィンドウに情報が映し出されていく。
それを見つつ修理をするエメラ。器用に道具を動かし、テキパキと修理を進めていく。
「……しかしこれ、どうも改造じゃなくて故障で用途を変える……また無駄に遠回りしているわね」
「それが犯人さんにとって一番やりやすい方法だったんでしょうね」
エメラの呟きに、アスカはそう返答した。
やがて作業が終わったのか、一息つく。だが、まだ機械が完全に直った訳ではない。この状態ではまだ電波のジャックに使えるだろう。
エメラは明に、機械の一点を指して、
「ここを思い切り叩くのよ」
「え、良いのか?」
どこかワクワクした表情の明。アスカも同調するように首肯する。
「ええ。そこを強く殴れば完全に直るでしょうから」
「よし、じゃあいくぞ……そいや!」
ガコンッ、と硬い音。アスカがウインドウを見れば、ちゃんと直ったようだった。
「おお、すごい! 叩くと本当に直るんだ!」
瞳をキラキラと輝かせ感動する。明の胸は大きな喜びで満ちていた。
アスカも達成感を思わせる表情。一方エメラは、【ここに始まるは我が戦場】で缶のような機械を一つ出していた。
「これを隠して、犯人が戻ってくるのを外で待ちましょう」
そう言うと、なるべく見つかりにくい場所に機械を隠す。カメラによって外でも小屋の中の様子を窺えるのだ。
三人は外に出て張り込みを始める。トナカイが小屋に入ってきたのは、それから間もなくの事だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『敏腕ハッカー・都南・佳』
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POW : セクシー格闘家系トナカイ娘召喚
【ハッキングで認知を変えたバーチャル女子】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : となのーずビーム
【赤い鼻から発射されるビーム】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 超絶ウルトラ必殺ハッキングッ!!
【愛用ハッキングマシン】から【認知を書き換えるプログラム】を放ち、【認知障害】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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一人。いや、一匹と言うべきか。眼鏡を掛けたトナカイ――都南・佳は小屋に入る。
機械を操作しようとした時、その様子が変わっていることに気付いた。
「な、何でだ!?」
大げさに驚く佳。直後、後ろから聞こえてきた数人の足音を聞き、振り返る。
そこに居たのは猟兵達。その表情から、彼等が機械を直してしまったのだと感づいた。
「こ、このー! 僕のトナカイハーレム計画を邪魔するなー!」
佳の怒りに満ちた叫びが辺りに響き渡った。
エメラ・アーヴェスピア
…本当にトナカイが犯人なのね…
それに同僚さんの話で考えると…失踪した人達の行方も
…やりましょうか
小屋に居る間に『出撃の時だ我が精兵達よ』、出てきた所を一斉射
…今回兵は囮、多数に囲まれた貴方がとりそうな行動はそう多くないわ
呼んだ子、多分失踪者よね?
ハッキングで変化したのなら【ハッキング】で戻すまで…!
まずは相手のハック経路を「切断」するわよ、『CODE:Ripper』
そして変化した所を戻して兵を使って後方へ下がらせる
できれば切断前に『CODE:Chaser』で逆ハック
他の失踪者の情報を回収したいわ
兵がハックされた時はハッキング対決よ
同僚さん、こちらの事は任せて存分に戦いなさい
※アドリブ・絡み歓迎
シリル・シリウス
こ・・・これが僕たちの仲間たちに悪い事しているトナ怪人・・・!
仲間たちの為にも悪事を止めないと
・・・!!
とにかく、仲間たちで好き勝手するのはやめてください・・・!そして、元の姿に戻してください
・・・!!
トナカイグラフィックはそれで可愛いですけど・・・。
行動【WIZ】
【ウィザード・ミサイル】で応戦・・・です。
『属性攻撃』で火力上げて、『迷彩』で回避されにくいように・・・
出来るなら、バレない様にハッキングマシンそのものに攻撃して相手の攻撃自体を封じ込めてみたいです・・・
ピンキー・タイフーン
なーーーーーにがトナカイハーレムデス。
そんなにトナカイハーレムが見たいなら、今からハトだしちゃるから自分の認知を書き換えてトナカイが飛び込んでくるかのように脳内補完を実現でもして遊んでるがいいデス! 名案デース。
それじゃあいってみまショー! こちらの帽子、種も仕掛けもございまセーン!!!
ウェルカムトゥーピジョン!
レッツゴートナカイ天国!!!!
とっつげーーーーーーーきっデーーーーーッス
!!!!!!
これで変態トナカイの説得はパーペキだと私のシックスセンスがささやいていマース
!!!!!!!!!!!!!
(普通に認知をゆがめられてしまった場合そういう説得が成功した体であさっての方向にピジョン・アサルト)
カーニンヒェン・ボーゲン
技の概要上とはいえ、認知、認知と繰り返されますと、些か落ち着きませんな…。
歳を重ねたが故なのでしょうか。
事実、一介のジジイでありますが遅れ馳せながら助太刀させて頂きたく。
オブリビオンとはいえ、罪状は改めておきたいところです。
聞くところによると、女性キャラクターの姿を上書きして我が物にしようとしておられる、と。
この内容に間違いはございませんか?
では、難解な機材も独自の手法で手中に納めてしまわれる凄腕ハッカーとは…。
など、聞き及んだ内容をまとめがてら鎌をかけてみたいです。
どうあれ、調べはついておりますからね。
このジジイめは土壇場で逃げられぬよう、
『UC:手足』を用いて包囲して成り行きを見守ります。
「こ……これが僕たちの仲間たちに悪い事しているトナ怪人……!」
小屋の中で怒る佳を前に、シリル・シリウス(バーチャルキャラクターのウィザード・f08436)が目を見開く。その瞳には、勝手な都合で仲間の姿を変えてしまったトナカイへの確かな憤りが浮かんでいた。
シリルの言葉に、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)も続ける。
「……本当にトナカイが犯人なのね……」
信じられないとでも言いたげなその表情。だがそれはすぐに敵を倒さんという確固たる決意に変わった。
その様子を見ていた佳は、どうにも怒りが収まらないようで。
「もう! せっかく認知を変えた女の子たちのトナカイハーレムが出来るはずだったのに! どうして邪魔をするんだよう!」
「なーーーーーにがトナカイハーレムデス」
長く溜息をつきながら返したピンキー・タイフーン(プログラムの寄術士・f14825)。頭に乗せた小さなシルクハットを手にする。
「そんなにトナカイハーレムが見たいなら、今からハトだしちゃるから自分の認知を書き換えてトナカイが飛び込んでくるかのように脳内補完を実現でもして遊んでるがいいデス!」
名案デース。と自分で納得しつつ、まるで手品師の如くシルクハットを軽やかに操る。
「ウェルカムトゥーピジョン! レッツゴートナカイ天国
!!!!」
言うと同時、シルクハットから十数の白鳩のホログラムが飛び立つ。
ピンキーの言葉を聞いた佳は、それは明暗だとばかりに小屋から飛び出した。手に持った小さな機械は、認知を変える為の物だろうか。
「みんなトナカイになれー!」
「今よ。やりなさい!」
緊張の張った台詞はエメラ。手を振り上げると同時、彼女の背後に立つ三十もの魔導蒸気兵が佳に向かって一斉に襲い掛かる。
「な、何をするんだ! ……くそっ。おいで、僕の女の子たち!」
その叫びに呼応するように現れたのは数体のトナカイだ。何処か虚ろな瞳をしたそれらを目にしたエメラは、ふむと思考する。
「あれ、多分認知を変えられた失踪者よね?」
「恐らく、そうでしょうな」
エメラの声に同意したカーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)。彼の瞳はどこか寂しそうで。
「しかし、認知、認知と繰り返されますと、些か落ち着きませんな……歳を重ねたが故なのでしょうか」
確かにカーニンヒェン自身長く歳を重ねた自覚はあったが、誰かが言っているのを聞くのはまた別なのだ。
自らの老いから目を背けるように小さく被りを振るカーニンヒェンは、それより、と呼び出されたトナカイに目を向ける。
「あの子たちを何とか元の姿に戻してあげたいものですが……」
とはいえ、彼にそれを為す術は無い。考え込むカーニンヒェンの横でエメラは、
「私があの機械を壊すわ。そうすれば何かが変わることでしょう」
「じゃ、じゃあ……ボクは後ろから、応援します」
遠慮がちなシリルの声に頷いた彼等は、それぞれ持ち場に向かった。
「佳どの。聞くところによると、女性キャラクターの姿を上書きして我が物にしようとしておられる、と。この内容に間違いはございませんか?」
尋ねるカーニンヒェン。彼が召喚した幾つもの機体が佳とトナカイ達を取り囲んでいた。
カーニンヒェンの言葉にニヤリと口を歪めた佳は、大きく首肯して見せた。
「そうだよ。僕はたくさんの女の子に愛されたかったしね! トナカイの姿にしたのは、その方が可愛いからさ!」
「成る程、そうですか。それでは……」
「これを喰らって夢から醒めるといいわ!」
電脳空間を通じて佳の元へ届いたエメラの斬撃が、その小さな装置を的確に切断する。
「な、何!?」
思わず声を上げて驚く佳。彼の周囲では、トナカイの体がポリゴンに変わり、数秒後には可愛らしいバーチャルキャラクターの姿になっていた。
「そ、そんな……僕のトナカイハーレムが……」
よたよたと一人の少女に近づく佳だが、少女の目はまるでゴミでも見るよう。
「ちょっと、キモい! こっち来ないでよ!」
後ずさる少女を前に、佳はがっくりと膝から崩れ落ちる。彼に追い打ちをかけるように、或いは留めを指すように、シリルの【ウィザード・ミサイル】が彼を襲った。
「しっかり反省してください!」
より火力が増した炎の矢が直撃し、大きな爆発が起こった――。
あれからラジオ局のセキュリティは強化され、以降トナカイの噂を聞く事は無くなったという。
大成功
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