帝都櫻大戰㉔〜黄泉の住人を乗り越えて
●白き櫻の監獄
――幻朧帝イティハーサは新世界を創造する。
それは悪しき模造品、生命を愛した神の櫻の楽園を冒涜するかのような櫻の地獄『サクラタルタロス』。
美しい櫻の咲き誇るその世界に生命は存在しない。咲き乱れる桜花の下には地表を埋め尽くすほどのおぞましき冥府の蛆獣が無数に蠢いており、異物たる生命の侵入を察知した瞬間排除すべく襲い掛かってくる。
愛と死の女神の楽園を元に歪なる新世界を創造せし幻朧帝は、舞い散る白き櫻に囲まれ異なる世界を侵略するその時を待っている。
グリモアベース。
「帝都櫻大戰もいい加減大詰めだけど、アタシも予知を拾ったから力を貸してくれないかい」
集まった猟兵たちを前に、円谷・澄江(血華咲かせて・f38642)という黒い毛並みの時計ウサギが予知の内容を語り始める。
「今回相手してもらうのはイザナミの力を有する幻朧帝イティハーサだ。ヤツがいるのはエンシェント・レヰス『イザナミ』と融合する事で創造したサクラタルタロス……天も地も櫻が咲き乱れる見た目だけなら美しい、侵略新世界さ」
だが当然碌でもない世界だと澄江は吐き捨てるように語る。
「綺麗なのは見た目だけ、そこには生命が存在せず桜の下には冥府の蛆獣が地を覆い尽くす程いる上に世界そのものが生命に牙を剝いているような地獄のような世界。どう考えてもイザナミへの当てつけとしか思えない世界で幻朧帝に近づくだけで一苦労だろう」
厄介なのは冥府の蛆獣だと黒兎は語る。
「一匹一匹が異常に硬くて強い上に津波のような勢いで猟兵に襲い掛かってくる。まともにやりあったら勝ち目はないだろうね。だからどうにかやり過ごすか……いっそ冥府の蛆獣自体を足場にして進むのもいいかもしれないね。キャバリアでも問題なく足場にできる位の頑丈さはあるみたいだし。そしてそっちを突破しようとしている間も幻朧帝はこちらに攻撃を仕掛けてくる。着弾地点に死桜花の嵐を巻き起こして冥府の蛆獣を寄生させる矢を放ったり、傍らを飛んでる神鷹に羽ばたかせて吸ったら冥府の蛆獣に変えてしまう白き櫻の花弁を放ったり、周囲を生命を拒む世界に変えたり……どれも厄介だが、きっと突破口はある筈だよ」
そう澄江は説明を終えると、木製の懐中時計のグリモアを取り出して。
「幻朧帝はまあ言ってる事がロクデナシの上に、倒し損ねたらサクラタルタロスは他の世界に侵略を開始して大変なことになるだろうね。残り時間も少ないが、幻朧帝の野望を完璧に砕き、再復活の目も完全に断ち切るために全力で挑んで欲しい」
それじゃ頼んだよ、と澄江が告げればグリモアが光り輝き、猟兵達を
櫻の地獄へと転送したのだった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
なんとも色々ありそうですが頑張りましょう。
このシナリオは侵略新世界『サクラタルタロス』で『イティハーサ・イザナミ』と戦うシナリオとなります。
この侵略新世界は一切の生命が存在せず、地上を頑丈で攻撃力も高い『冥府の蛆獣』が埋め尽くしています。
蛆獣達は乗り込んできた猟兵を異分子として察知して波濤のごとく襲いかかり排除にかかって来るため、上手く対処するか蛆獣を足場にして迅速に幻朧帝だけに攻撃を仕掛けるのが必要があります。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス:押し寄せる「冥府の蛆獣」に対処する/「冥府の蛆獣」を足場にして幻朧帝に肉薄する。
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それではご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『イティハーサ・イザナミ』
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POW : 天矢『サクラタルタロス』
【射た矢が突き刺さった地点】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【冥府の蛆獣による寄生】の状態異常を与える【真白き死桜花の嵐】を放つ。
SPD : 神鷹『サクラタルタロス』
【神鷹の羽ばたきと共に白い花弁】を噴出し、吸引した全員を【冥府の蛆獣】化し、レベル秒間操る。使用者が製作した【世界の住人たる証】を装備した者は無効。
WIZ : 骸眼『サクラタルタロス』
レベルm半径内を【生命を拒む世界】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【死をもたらすための力】が強化され、【生を長引かせようとする力】が弱体化される。
👑11
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陽環・柳火
「テメェの顔を見るのもこれで終いにしてぇところだな」
アームドフォートを装着した状態で【空中機動】によって飛んでゆく
「行くぜ、『紅蓮獅子大火輪』!!」
更には『絶晶フォーム』で氷の力も纏う。【属性攻撃】による冷気で蛆獣達を凍らせてぶち砕き、死桜花の嵐やそれを発生させる矢は【浄化】【破魔】の力を込めた炎を発射し焼き尽くす
「テメェにゃ、奪った力に対してのリスペクトも何も感じられねえんだよ。自分の弱さを認め、力を貸してくれる相手への敬意を忘れなかったフォーミュラだっていたが、そっちの方が骨があったぜ?」
肉薄できたら炎の力と氷の力を込めて拳やクローでぶっ叩きまくる
その他連携アドリブお任せ
●紅蓮獅子大火輪
最高速度
サクラタルタロスーー薄紅の桜花よりも更に白い、白骨のような花弁が舞い散る静かな世界。
その世界へ降り立った猟兵は、ただならぬ気配を纏う老爺の姿を見る。
幻朧帝イティハーサーーエンシェントレヰス『イザナミ』と融合したオブリビオンを超越する存在は、神鷹を傍らに猟兵達をただ静かに見下ろす。
「テメェの顔を見るのもこれで終いにしてぇところだな」
啖呵を切るのは陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)、この帝都櫻対戰で多くの戦いを乗り越えてきた彼女は、諸悪の根源を鋭く睨みつける。
幻朧帝は何も応えず、ただ静かに猟兵を見ている。
――さざめく音。葉擦れのような、落葉を掘り返すような音が周囲一帯の地面から響き、直後冥府の蛆獣の大群が桜と地の影から湧き出して、猟兵達を排除にかかる。
生を拒絶するこの世界を体現したようなこの世界の住人は非常に頑強かつ殺傷力も高い。呑み込まれれば死、あるのみ。
背に巨大な獅子型車輪を背負ったアームドフォート『紅蓮獅子大火輪』より炎を噴出し、蛆獣の波濤を飛び越える。
同族を足場に蛆獣達は積み重なり空中の柳火を呑み込まんとするが、
「行くぜ、『紅蓮獅子大火輪』!!」
更に柳火はユーベルコード【絶晶フォーム】を起動する。
紅蓮獅子大火輪に紅蓮のパーツと
氷河期の女王の絶晶のパーツが生えていき、最終的に柳火の三倍程度の火炎と氷晶の鎧を合わせた『紅蓮獅子大火輪・絶晶フォーム』へと変身する。
炎と氷の双方を兼ね備えた究極の形態――それにより纏う氷の力を蛆獣にぶつければ、冷気は蛆獣を凍らせ動きが鈍っていく。
そして蛆獣の壁が崩れた瞬間、イティハーサの矢が飛来する。命中地点の周囲に死桜花の花弁をばら撒き猟兵を蛆獣に変えてしまうユーベルコードーーされどその矢は読んでいる。
冷気から転じて紅蓮の火炎を矢に真っ向からぶつける。清らかなる力を帯びた紅蓮の炎は悪しき矢と桜花を焼却し、
「テメェにゃ、奪った力に対してのリスペクトも何も感じられねえんだよ」
その隙に柳火はイティハーサへと急接近、
「自分の弱さを認め、力を貸してくれる相手への敬意を忘れなかったフォーミュラだっていたが、そっちの方が骨があったぜ?」
幻朧帝が矢を番える前に、左右のクローに火焔と凍気を纏わせて
連打、骨ばった枯れ木の如きイティハーサの体が焼け焦げ凍てつき温度差も合わせダメージが刻まれていく。
そこに冥府の蛆獣が柳火の後方から襲い掛かり、軽い舌打ちと共に紅蓮獅子大火輪の機動力で空へと逃れる。
見下ろせば軽く首を振り再び矢を番える幻朧帝の姿、初撃は決めたがまだ倒し切るには攻撃を重ねる必要があるだろう。
心残りはあるが今はここが限界、後続の猟兵に託しつつ、柳火は冥府の蛆獣の追撃を躱し続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
臥待・月紬
【アドリブ・連携歓迎】
世界を造って侵略兵器とする力……。
なんかもうスケールが滅茶苦茶で気が遠くなるッス。
だけど、あの爺さんが幻朧帝を名乗る以上、一発入れなきゃ気が済まない!
化術で巨大茶釜に変身し、高速回転開始!
そのまま飛翔してイティハーサ目掛けて突撃を仕掛ける!
冥府の蛆獣の攻撃は回転で弾き、受け流すことで加速する力に変える。
白い花弁は、回転で作り出した気流で吹き散らしを狙う。
最悪、蛆獣化を食らっても咄嗟の操作が効かないくらい、勢いをつけて体当たりしてやるッス!
あんたが
獣人戦線の幻朧帝と同一人物でも別人でも関係なし!
どっちみち不倶戴天の侵略者!問答無用ッス!
●化け狸の怒りは恐ろしい
転送されてきた臥待・月紬(超級新兵(自称)化け狸・f40122)が見たのは仄かに青白い死の桜の咲き乱れる世界。
冥府の蛆獣が襲い掛かる中を火の玉の勢いで飛び込んでいく火車の妖怪の背を見ながら、これだけの世界を創り出した幻朧帝イティハーサの姿を視界に捉えた。
(「世界を造って侵略兵器とする力……なんかもうスケールが滅茶苦茶で気が遠くなるッス」)
だけど、
「あの爺さんが幻朧帝を名乗る以上、一発入れなきゃ気が済まない!」
彼女の
故郷世界を荒らしまわる超大国が一つである幻朧帝国の主君とされているのは『幻朧帝』だ。
今冥府の蛆獣の向こうにいる『幻朧帝』との詳細な繋がりは不明だが、この諸悪の根源がそれを名乗るなら加減するつもりはない。
怒りに燃える新たな侵入者を察知した冥府の蛆獣が月紬へと一気に押し寄せてくるが、化け狸はお気に入りの葉っぱを取り出しユーベルコードを起動、周囲にどろんと煙を立ち込めさせる。
冥府の蛆獣たちはその煙さえも喰らうかのような勢いで襲い掛かってくるが、煙の中から巨大な茶釜が高速回転しながら突然飛び出してきて、蛆獣の津波を飛び越えていく。
「いつもより余計に回ってやるッス!」
月紬が【爆転茶釜トルネード】のユーベルコードにより化術で変化した巨大茶釜はそのまま空中を飛翔しつつ襲い掛かる蛆獣の頑丈な表皮と火花を散らす勢いで接触、高速スピンの勢いで己の体を空へと弾きながら幻朧帝へと突っ込んでいく。
突撃してくる巨大茶釜に幻朧帝の傍らの神鷹が啼いてばさりと羽ばたき、白き桜花の花弁を月紬に放つ。
それを吸引すれば冥府の蛆獣の仲間入り、幻朧帝の操られるままとなってしまう厄介な攻撃である。
されど巨大茶釜の回転速度は周囲に気流を巻き起こしており、白き花弁の群れは茶釜に触れることなくその周囲へと弾かれていく。
仮に蛆獣化されたとしても完全にトップスピードに乗った茶釜を止める為の咄嗟の操作も難しいだろうと考えながら、月紬は叫ぶ。
「あんたが
獣人戦線の幻朧帝と同一人物でも別人でも関係なし!」
限界の速度、回転、勢いを更に増した巨大茶釜は左目を見開いた幻朧帝へと突撃して、
「どっちみち不倶戴天の侵略者! 問答無用ッス!」
巨大茶釜の重量と速度、更に回転力を乗せた渾身の突撃が、イティハーサを吹き飛ばした。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
帝さんの思い通りにはさせません
命と未来を守り抜きましょう
ミラクルキャンディをぱくり
蛆獣さん達の攻撃を
びよーんと伸びたり縮んだりして
躱していきます
頃合いを見て体を丸めてボールのようになって
蛆獣さん達の体当たりや突撃の勢いも借りて
群れの上を盛大にぼよよんと跳ねて
帝さんへ向かって行きます
その間も口笛を吹いて
風の魔力を操作し
勢いよく風を吹かせて
白い花弁を吹き飛ばしています
間合いに入りましたら
びよーんと体や四肢、尻尾を伸ばして
弾力を活かした連続パンチやキック、
投げ技を喰らわせたり
ぐるぐる巻きにして締め上げたりして
帝さんを倒します
戦闘後に竪琴を起動し
桜にまつわる歌曲を演奏して
帝さんへの鎮魂曲とします
海で静かにお休みされますように
●のびーる猫の猛攻
巨大茶釜がかっ飛んで幻朧帝を弾き飛ばし、その間にも新たな猟兵はこの桜の地獄へと転送されてくる。
「帝さんの思い通りにはさせません。命と未来を守り抜きましょう」
桜の枝に飛び乗った箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は緑瞳を瞬かせ、バッグから取り出したミラクルキャンディをぱくりと口に含み、ユーベルコードを起動する。
妖精猫であろうがこの世界の異物には変わりなく、無数の冥府の蛆獣は桜の枝を一気に登り仄々を呑み込まんと襲い掛かる。
上の方からも別の枝に隠れていた冥府の蛆獣達が落下してくる。全方位が敵、絶体絶命の窮地であるが、仄々の体が一気に伸びて別の枝を掴めば一気に縮んで窮地から高速で脱出する。
一瞬ぎゅっと縮み、再び伸びればなんと八頭身、人間大サイズの猫獣人の美丈夫となっている。
数で攻めてくる冥府の蛆獣達の攻撃を伸縮を繰り返し桜の枝を利用して襲撃を躱しつつ、見定めるは幻朧帝の姿。
空から襲い掛かる茶釜が幻朧帝を大きく跳ね飛ばし、それを頃合いとみて仄々はくるりと丸まって桜の枝から弾んで落ちた。
落下地点には殺意漲らせた冥府の蛆獣、魔力を乗せた口笛を軽く吹いて突風を吹かせて落下ポイントを微調整しつつ、黒きボールを喰らわんと突進してくる蛆獣の頭を足場にぼよよんと高く空へと跳ねた。
蛆獣の突進で高々と打ち上げられた仄々を別の蛆獣が噛みつこうとして、更に体勢を立て直したイティハーサの神鷹が白き桜花を羽ばたきで吹き付けてくるが、風の魔力で突風を起こし上手く攻撃を凌ぎきる。
突進攻撃の勢いを加算しつつ、蛆獣を足場に数度高く跳ねれば幻朧帝は目の前だ。
間合いに捉えた瞬間にボールが黒猫の美丈夫の形に戻り、手足をびよーんと伸ばして弾力の反動を利用した強烈な連撃を繰り出した。
パンチやキック、弾力をフルに活用した仄々の攻撃は強烈、いいのを顎に貰ってふらついた所でびよんと伸びた仄々の体が白き老爺の体にぐるぐると巻き付いて締め上げる。
そこに置き去りにされていた冥府の蛆獣が飛びかかって来る。
締め上げながらも冷静に、仄々は手近な桜の枝を伸ばした尻尾でぐるぐると巻いて、自身の体をぎゅっと縮めて冥府の蛆獣の追撃を躱しつつ幻朧帝ごと急加速。
そして最高速度に達した瞬間、ぐるぐる巻きの拘束を外し空高くへと投げ飛ばした。
(「倒し切るにはもうちょっと、でしょうか」)
もう少し追撃を叩き込めていれば倒せたかもしれないが、蛆獣の妨害もあってこれ以上は難しかっただろう。
あの幻朧帝への桜の鎮魂曲を奏でる――彼が海で静かに眠れる時を祈るのはもう少し後になりそうだ。
伸縮自在の体で冥府の蛆獣の猛攻を凌ぎつつ、びよんびよん跳ね回りながら八頭身の黒猫の楽士はそんな事を考えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵

ヒカル・チャランコフ
【安地】
諸々ご自由に
白いものがチラチラ舞って…、そンだけなの
なーんにも起きねぇその上で
這いつくばって、舐めとるように、あるものありったけ
…そんだけ
-
蛆獣にも挨拶はかかさねーよ?
オレいい子だからー♪
「よ~ぉ、
兄弟! 」
作戦は簡単よ、オレが蛆獣を食う
その間に相棒がジジイにブチかます!
「食うは生者の特権よ? 悪食王決定戦と参りましょうか!?」
ひれ伏せよ、ダボハゼ共が!
UC発動するぜ
掴んでぶん回して引き千切って、食って食って食って
オレの地獄の光景が、ジジイの思う理想郷
「認めねぇから、オレはこんなっ…!」
喰らえ、進め、絶対だ!
「塗りかえてやる!!」
テメェらをも喰らって王成りしたらぁ!
エルンスト・ノルテ
【安地】
諸々ご自由に
-
蛆獣を殺すという意味かと思ったが…
…ヒカルのあの状態は長く持たない、覚悟に応えねばな
斧槍で己の指を小さく切る、悪食は俺の斧槍もそうだから
UCを発動
花に嵐の例えもあるよな
矢に、花に、力纏った斧槍の旋風《範囲攻撃》で対応を
無理矢理ヒカルの押し開いた軍勢の間
千切られた蛆獣の上でも、ヒカルの巨体の上でも
踏んで、駆けて最短と見えるルートを取って、幻朧帝まで
見て御覧なさいな、あの形振り構わぬ若者の様
後進に道譲るが帝の最期にすべき英断というもの
去るのは我々ではない
「貴方であるべきです、幻朧帝」
高く跳んで、その胸目掛け、斧槍で穿つべく
●老いたる帝の去るべき時
蛆獣の波濤、舞い散る青白い桜花と猟兵達の猛攻が│櫻の冥府《死の世界》を戦いに彩っていく。
「花に嵐の例えもあるよな」
幻朧帝を討つべくこの世界へと転送されてきたエルンスト・ノルテ(遊子・f42026)は、この戦の光景にそう呟いた。
そして桜や冥府の蛆獣はいないがこの風景によく似た印象の場所を、ヒカル・チャランコフ(巡ル光リ・f41938)は知っている。
「白いものがチラチラ舞って……、そンだけなの」
死へと導くしろいもの。櫻、雪、チラチラ舞って、降り積もる――ただそれだけの景色。
何も起きない、単調で過酷な日々を生き抜いてきたガムゴム人の│人類遺跡《原風景》はこの死の世界に比べれば生命が存在し、生き延びている者がいるという点では異なるけれど、
「なーんにも起きねぇその上で、這いつくばって、舐めとるように、あるものありったけ……」
そんだけ、と平坦な声で呟く青髪のガムゴム人にも、冥府の蛆獣は襲いかかってくる。
(「蛆獣を殺すという意味かと思ったが……」)
エルンストはそうちらりと考えたが、眼前に広がる光景を見てそれは無理だと即座に判断する。
目に見える範囲で既に手一杯、それだけではなく戦場の外からこの場所を中心に押し寄せてくる蛆獣の数は数えようと考えただけで頭痛がする。
この新世界そのものが猟兵の敵である、その事実を肌で感じながら愛用の斧槍『Schlarg』を悍ましき冥府の蛆獣に向けて構える。
「よ~ぉ、
兄弟o! 」
自分はいい子だから、と蛆獣にも楽しげに挨拶を欠かさないヒカル。この世界の住人は当然なにも返さず無言のままに襲いかかってくるが、
「……しゃーねーわ。王成りの御成りってなぁ!! ひれ伏せよ、ダボハゼ共が!」
ヒカルはユーベルコード【Stygiomedusa gigantea】を起動、すると次の瞬間彼の身体は四肢をだらんと垂らしながら中天へと浮遊、亡霊のようにゆらめく巨体へと変身する。
「食うは生者の特権よ? 悪食王決定戦と参りましょうか!?」
そして、向かってくる蛆獣に喰らいつく。黄泉戸喫ではないだろうが構わずに巨体の四肢で掴み、齧り付いて雑にぶん回し他の蛆獣に叩きつける。
――二人の作戦はシンプル、ヒカルが冥府の蛆獣を喰らい血路を拓き、その間にエルンストが幻朧帝にブチかますというもの。
怯めば追撃、両腕でがっしり掴んで左右に引きちぎり外殻の内側を食い千切り――さながら地獄の光景、睥睨する幻朧帝にしてみれば理想郷なのかもしれない。
「認めねぇから、オレはこんなっ……!」
それを否定する。悲壮な声で叫びながら抗うヒカルは蛆獣共を引き裂き振り回しながら屍を積み重ね前に進んでいく。
――彼の戦いは長く持たないだろう、とエルンストは思考する。深海捕食者の遺伝子に覚醒しての変身は毎秒寿命を削られ非常に負担が大きい。この死の世界の性質もあって長期戦は望めない。
そんな戦い方を選んだ相棒の想いに応えるべく、城砦騎士の男は切り開かれた冥府の蛆獣の残骸の路を最高速度で駆け抜けていく。
「喰らえ、進め、絶対だ!」
返り血か自身の血でか、血塗れとなったヒカルの言葉に後押しされつつ、イティハーサを真っ向から見据えるエルンストに向けて、天矢が放たれた。
着弾地点の周囲に死桜花の嵐を巻き起こし冥府の蛆獣を猟兵に寄生させる恐るべき矢、それを前にエルンストは禍つ蛇の鋭き舌先で指を小さく切りユーベルコード【Then, silence.】を起動して、血液を代償に変化した斧槍で旋風のように振り回す。
(「悪食は俺の斧槍もそうだから」)
矢が、花が、消失を招くものと化した斧槍が纏う力に喰われたかのように形を消して、視界が拓けていく。
死桜花の嵐の発生を防ぎ、頑丈な桜の枝やぶん投げられた蛆獣の残骸を路として、最短距離で駆けるエルンストの先には諸悪の根源たる幻朧帝の驚嘆した顔。
捕食者として冥府の蛆獣と大立ち回りを続けるガムゴム人は、必死に城砦騎士の背と己が切り開いた路を守り続けていて。
「
テメェらをも喰らって王成りしたらぁ!」
そう叫ぶ声を背に聞きながら、エルンストは到達までのほんの僅かなで幻朧帝に語りかける。
「見て御覧なさいな、あの形振り構わぬ若者の様」
「塗りかえてやる!!」
欲深く、白き何も無い世界を塗りつぶすかのようなガムゴム人の声、おそらくはこの幻朧帝にはない熱量。
「後進に道譲るが帝の最期にすべき英断というもの」
滞り淀む水、歪み、眼前の諸悪の根源はまさにそのような
遺物で。
「――去るのは我々ではない。貴方であるべきです、幻朧帝」
終焉を破壊する者の禍つ蛇の舌先が、イティハーサの胸を貫いた。
「もう、二度と会うことはない」
『――見事』
消失を招くものと化したハルバードに穿たれた幻朧帝はそれだけ言葉を発し、先に放ちし矢と同じように崩れ消失していく。
猟兵達の猛攻により、櫻の地獄の幻朧帝は終に討たれたのだ。
鎮魂の竪琴の音色が響く中、任務を成し遂げた猟兵達は侵略新世界サクラタルタロスを脱してグリモアベースへと帰還したのだった。
大成功
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