●
“告ぐ”
そう滔々と“
イティハーサ”は、語る。
『諦めよ、三十六世界。“生命”は疾うに終わったものである』
低く詰めた聞こえは落ち着きを孕み、遥か高みより言葉を下して。
『儂はイティハーサ――“世界を創造するもの”』
王には収まらぬようなその言葉は圧倒的にも見え、“世界を創造するのに未来は不要”と断ち切る言葉を添えて幻朧帝は告げていた。
●
「まぁさ、言い方は自由だと思うワケ。なんてゆーかぁ、言論の自由的な」
“第三戦線、はっじまっるよー”なんて危機感の薄そうな言葉と共にひらひらと手を振る都嘴・梓(
嘯笑罪・f42753)がいつもと変わらぬ微笑みを湛えて猟兵を出迎え手にしたのは概要の書かれた紙らしい。
「——で、“他人の意思”がねぇと世界も作れない老い耄れに言われっぱなしってのも癪じゃん? なら、ご期待通り世界も期待しちゃう“
俺たち”がアッパーでもキメてやるってのはどうよ」
挑発的に笑った梓が花色に輝かせた瞳で指を鳴らすと髪をかき上げ両眼をさらしていた。
「あの幻朧帝イティハーサは、エンシェント・レヰス“神王サンサーラ”と融合し、その“意志”を獲得しました。そして創造したのが侵略新世界“サンサーラナラーカ”です」
元々圧倒的な威光を有していた神王サンサーラの力により、より広がり続ける“
広大無辺の無限地獄は当然の如く強大。
「——更に、何を思ったのか
当該は侵略新世界を完全に満たした“骸の海”の中から強力なオブリビオン――と称した、“相対した猟兵の過去の姿”そのものを嗾けてくるようでして……」
梓曰く、外見や思考こそ完全に“
相対した猟兵”ですが、その戦闘能力は現行の自分に等しいという。つまり、この“過去の自分”をどうにかして倒すなり消滅させるなりしない限り、幻朧帝に攻撃が届くことはない
「今を愛し、未来を望むからこそ過去を越え
過去に縋るものを叩き切る――……そんなプランはいかがでしょう?」
にこりと笑う梓の瞳はいつの間にか常の黒色。ふぅと吐き出された白煙に名残るウッドの香り棚引かせ
扉が開かれる。
「どうか、ご武運を」
皆川皐月
お世話になっております、皆川皐月です。
昨日を越え今日を生き明日を見ろ。
●注意:こちら一章のみの『帝都櫻大戰』の戦争シナリオです。
●プレイングボーナス:自身の「過去の姿」を描写し、これに打ち勝つ/過去の自分の性格や思考の裏をかく。
●その他
複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】がオススメです。
通常プレで団体は2名組までの受付です。2名以上はオバロであると流れにくいです。
IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすく助かります。
マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございますので、良ければご活用ください。
ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
最後までご閲覧下さりありがとうございました。
第1章 ボス戦
『イティハーサ・サンサーラ』
|
POW : 天矢『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【大焦熱地獄の炎を纏った天羽々矢】で包囲攻撃する。
SPD : 神鷹『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内を【神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気】で覆い、[神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気]に触れた敵から【生命力や意志の熱】を吸収する。
WIZ : 骸眼『サンサーラナラーカ』
【神王サンサーラの力を再現した姿】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【完全性】に比例し、[完全性]が損なわれると急速に弱体化する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
現れる過去の自分とやらは、アレしかねぇ
暗殺者“null”…無感情で冷酷非道、任務とあらば誰でも殺す暗殺者だ
(※nullの容姿は陽太真の姿イラスト参照)
奴は暗殺者だ
常に俺の背後を、死角を取ろうと動く
ならば俺自身も「オーラ防御」で護りを固めて大やけど覚悟で挑む
「高速詠唱、言いくるめ」+指定UCでアスモデウス召喚
nullが俺の背後を取った瞬間、俺とnull、そして幻朧帝を巻き込むように「属性攻撃(炎)、範囲攻撃」の獄炎を吐くよう命じる
少しでも傷を負えば完全性とやらは損なわれるはず
その隙を狙って二槍伸長「ランスチャージ、暗殺」でnullと幻朧帝、双方の喉元を貫いてやらあ!
●その過去の名は、
“null”
それは実は文字列ではなく0に等しく0以下である――……分かりやすく言えば“なきもの”を指す“表現”。
今、森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)の眼前には幻朧帝を守るように立つ足音を弔い影さえ持たなかった影の住民の貌を見た。
無貌。
白。
白紙の貌に一対の透明な殺意で満たした海色の眸。
息を潜め
任務遂行することを至上とし、感情を弔い誰彼に刃向けることへの躊躇いなど幻朧帝の存在同様、土に埋め葬ったもの。
「……だろう、なぁ」
陽太は分かっていた。
己の過去が来るというのならば、必ず“
奴”が来ると分かっていた。
だからこそ、迷わない。
「(知ってる。俺は――いや、俺なら!)」
必ず
背後か死角を取る!
「——想像通りで助かるぜ」
『!』
『……ほう。随分と余裕があるな……影は常に、貴様の後ろに在るぞ』
朗々と響く幻朧帝の言葉と同時にnullが動き、叩き込まれる一撃をギリギリで陽太は淡く輝く防御膜——オーラ防御で受け流す。
一撃が重いのは承知済みだし、踏み込む前に覚悟は決めた。——育ての親がいるこの世界を傷つけさせる気は毛頭無く、まして幻朧帝を――ひいてはサンサーラも、自身の影も野放しにする気はない。
「お前は、“腹を決める”——って、したことないよな」
『……?』
「“人”は、覚悟を……腹を決めたら、心構えが変わるんだぜ。知らないよな、“俺”はそんなこと」
陽太は零ではなくなった。育ての親の優しさが、愛が、零を一にしてくれたから——!
言葉を交わす合間も間断無き攻撃繰り出すnullによって陽太は小傷を負い、手足の一部のように振り回される槍撃がとうとうオーラ防御を貫き頬を掠め切り裂いた。
「っ、」
『——、』
『諦めよ、第六の猟兵よ……我らはこれより——』
——世界侵略へと繰り出す。
その言葉を幻朧帝が紡ぐより早く陽太が紡ぎきった言葉が召喚陣を織り上げ、轟々と豪奢に輝く召喚陣から出でた悪魔 アモデウスが咆哮する!
UC—悪魔召喚 アモデウス—!!
「アモデウス!」
『相分かった』
爆ぜ散る火花が一瞬を稼ぎ、陽太が苛烈なnullの槍撃から逃れる隙を生むも、未だ完全性失わぬ幻朧帝と焼け爛れて尚速さ失わぬnullが陽太の背を——!
「——言ったよな、“俺”は“俺”がよく分かってる……って!」
恐れるな。
虎穴に入らねば得られぬ砡を手にしたくば踏み込め。
「アモデウス!!! 来い!!!」
『——よかろう』
召喚の折、密やかに陽太はアモデウスへと伝えていた。“俺”ごと燃やせ——と、ただ淡々と。
面白い趣向だと嗤う悪魔を言いくるめ現へと呼び出し敢えて背を向け幻朧帝へ飛び込めば案の定引っかかったnullごと陽太を巻き込みアモデウスは涯なき獄焔を吐いた。
更に上乗せした陽太の炎がダメ押しの一撃を叩き込む!!
『……、』
『——っ、おのれ
!!!!!!!!!!!!』
『我は“お前”を焼いた。いささか変わった趣向であったな』
焼却された完全性に絶叫する幻朧帝を。こと切れかけのnullと、nullとの戦いでついた傷だけの陽太と、嗤い消えたアモデウスと。
「……はは、あぁ……たしかに“俺”か。なら!!」
来るなと譫言のように囁いた存在亡き者の聲は仮面の下。
漣面の気合と共に捻じ込まれた陽太の双槍が幻朧帝とnull、二人の喉を正確に穿つ。
成功
🔵🔵🔴
山吹・夕凪
◎
過去の私と、今の私は心が違う
進み続けた強さが今の私の心の芯
骸の海より浮かぶ私は、妖刀に呑まれ、操られ、ただ悲嘆のままにひとを斬る姿
あの時は自らの力では乗り越えられなかったけれど
今は私だけの力で
敵も私なら互いに心眼で肉体のみならず、気や感情の流れから機先を伺い、動きを読みあう事となる
けれど、過去の私は悲嘆に染まるが故にその気、心は読みやすい
一方、明鏡止水に至った私の澄み渡る心境は読みづらいもの
互いに同じUC『円転自在・幽韻』で斬撃を交わし合い、心眼で見切った上で身躱し、速度を奪い続けていきましょう
過去の己を打ち払えば、もはや私の姿は真白き迅雷
幻朧帝の冷気を破邪の剣気で退けながら駆け馳せ、一閃を
●咲くは花
あるところに、少女がいました。
凶刃に呑まれ、喰われ、好き勝手に悪辣なる殺戮に手を染めさせられた少女が、おりました。
——あぁ。
「(あぁ、)」
山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は知っている。
目の前の“自身”が手にしているのは所謂憑き刀——妖刀の一種、だと。それも血に飢えた、まるで御伽噺に語られるよりもっともっと悲惨な人斬り刀であると。
「……そう、でしょう。そう、」
夕凪もまた、分かっていた。
骸の海より引き摺り出される己が、妖刀に呑まれた悲嘆に浸りきり斬ることを以上とするよう糸吊り人形にされていた己であろう、と。
『……ぁ、あ』
「(……可哀そう、いいえ。あれはただ、悲嘆にくれている癖に——)」
夕凪の目が備に気の流れを目で追い、無表情ながら夕凪を伺う過去——……否、傀儡の目を見た。
その硝子玉めいた目が追っている。
ずっと。
ずっと、夕凪を“裡”を追い続けている。
「(来る——!)」
『——あなた、かわいそう』
抜き打つような傀儡の一刀を鍔で受け流し、浅く息を吐いた夕凪はわらった。
あの時、一人では越えられなかった全てが
そこにある。
少女の形からは考えられぬ強靭な一撃の重みは妖刀のものであり、抜き打ち顎を掬うような——いや、喉という人体の急所を狙う一撃も、妖刀は分かっていてやっているのだ。
人体とは、高々喉を突いた程度では死に切れない。結局は出血によるダメージとショックで人は死ぬ。
まして猟兵という強靭な肉体となった夕凪であれば致命傷というより“危ないですね”と掠める程度で躱し、首を浅く切られる程度に止めていただろう。
「(……計算ずく、ですか。引けば攻め入り、攻め入れば引く。まるで私の手を読んでいる——ような素振り)」
焦りを誘発し夕凪を崩さんとする妖刀の思惑を、猟兵たる夕凪は戦いの最中小傷を作りながら見抜いていた。
例えば——夕凪がか弱き駆け出しの猟兵ならば騙され、逆に妖刀に出し抜かれていたかもしれない。だが、夕凪は対妖刀戦における
プロフェッショナル——!
「(……アレは、心が澄んでいない。怯え、恐怖、畏怖……沢山の昏きものに支配され、前さえ見えていない)」
刀とは、本来心澄ませ使うべきもの。
そう——あくまで刀とは“物”だ。
その力に魅了されてはならず、ましてその力に憑かれてはならず。使い手は、芯の通った玉鋼と同様に清らに正しく在らねばならぬもの。
「……違えた道を正しましょう。あなたは私。私はあなた。しかして其は過去なり」
いつか聞き、見た詩のように。
影とは踏み越え伸ばす——!
「“あなた”に、止まらぬ刃の鼓動を——」
抜き打たれた刃が閃く色を、傀儡は見た。
鮮烈に、頭痛むほど強く記憶に在るはずで“無い”色。
「届けましょう」
UC—
円転自在・幽韻—!!
『——!』
悲鳴なんてなかった。
わずかなタイミングのズレと夕凪の目が読み切った傀儡の一瞬の隙を白き一閃が駆け抜け、骸の海へ全てを沈めたのだ。
『しかし、凍れ。冷たき眠りにつくがよい』
夕凪が耐性立て直す一瞬に神鷹羽搏かせた幻朧帝はほんの一瞬信じた勝利に酔った。酔ってしまった。
土に沈んでいた幻朧帝は真の白雷を知らず、己を問い超えた妖刀使いを知らなかったことは、“憐れ”という他に無いだろう。
全てを知った顔の無知蒙昧なるその男を襲った白雷——破邪の力で邪なる吹雪切り払った夕凪——が、天を衝く鮮烈な一刀を以て過去に縋る
ものを割り切った。
——一つ。
しいて一つ指摘するのなら、糸吊り人形とイティハーサに共通し、夕凪だけが持つものとは“心の芯”。
明日を望み待ち、信じる心。
振り返りばかりするものには、決して持ちえぬ光であった。
大成功
🔵🔵🔵
天代・ころね
過去って事は出てくるのは通学路で自警団してた時の私、
ま、この時はまだ自分が想像もできないくらいの暴力と残虐があった事を知らない時だったね
というわけで【かわいい】動きで無害を装いつつ近づいて、微塵の躊躇も無い【暴力】と【残虐ファイト】で殴ってさっさと骸の海にしずめるんだよ
あとは【ダッシュ】で近づいて斧を装備して【武器を投げつける】事でUCグラウンドクラッシャーで攻撃するよ。
こういうひねくれた攻撃はまっすぐ突っ込めば逆に当たらない!……と思う
結局何が言いたいんだかわかんないけど、こうやって突撃されるのが一番困ると見た!
●放課後通学路
火花が散る。
幼い少女が持つにはあまりに凶悪な、ただ“暴力”を具現したような斧どうしが激しくぶつかり合うのは、幾度目だろう?
「——えーい!!」
ドォン! と地の割れるような音を天代・ころね(通学路の自警団・f23060)のユーベルコード グラウンドクラッシャーが大地を揺るがせる。
『……幼きものよな』
見下ろすような幻朧帝の聲に一瞬気を取られると同時に、ころねは腹を押え言葉なく歯を食いしばっていた。
「っ……!」
『……』
掠めた一撃の痛みに、涙を呑みながらころねは思う。
“あの頃”はまだこんなことなんて知らなかったんだ——……と、ま自警団を称し通学路で“何か”と相対していたあの頃を、遠い昔のことのように。
「(ちがう)」
きっと、あの時の自分が相対していたのはこんなことに対してだけではなかったのかもしれない。
たった一人で頑張ることも。
ただ、自分が世界の裏側を知らなかったことも。
「(わたし、は)」
まもりたかった。
わけのわからない、絵にかいたような怖いものは絵より酷いことをして平気でいのちをこわすんだ。
誰も答えてくれなくてよかったなんて、うそだ。
「わたしは!!!」
冷静じゃないなんて、ころねが一番分かっている。親に泣かれた時だって、ほんの一瞬心に芽生えた上手く言葉にできない悔しさのような申し訳なさのような、全部全部がないまぜのめちゃくちゃな気持ちは“むずかしい”から見ないフリをしたと、分かっている。
「わたしは!正義の魔法使いだから!!!」
『わたしが正義だよ!!お前じゃないもん!!』
ころねの言葉を遮るように叫んだ偽のころねが金色の瞳を吊り上げようと、ころねには関係ない。
そして力任せの感覚勝負でころねが斧を振り上げれば、ふたたび偽のころねも斧を振り上げる!
既に幾度もぶつかり合い、ころね気に入りのコスプレ衣装の裾はほつれスカートの一部が避けてしまった。
きっと常なら気にしていただろう、だが今は譲れないものがある。
——半歩の違いで飛ぶように踏み込んだころねが偽物の首を叩き切っていた。
『!』
「やぁぁぁぁあああああ!!!」
踏み込み切り落とすように振りぬいた斧の勢い殺さず回転交えて投げつけた音のぐるんと遠心力に従いまわる。
まわる。まわるまわる。
連綿の気合の声に幻朧帝が気を取られた隙は、ころねをダッシュさせるには十分すぎた。
「ひねくれた攻撃には! まっすぐ!!」
逆手に取られるのではなく、取る!
ダンッ! と踏みしめ振り上げたころねの拳が、猟兵としての力めいっぱいに幻朧帝を殴り飛ばしていた。
成功
🔵🔵🔴
香良洲・巽
◎
過去に縋るもの、
歴史ある世界は過去の積み重ねなのかもしれないが
…まぁいい、今に存在してるオレには
世界を創造する老い耄れを
理解する必要性なんてナイしな
猟兵として出来ることをするだけだ
過去の姿に相対するのは
鏡写しにでもされてるようで
自分の意志が無いから
見えない未来を否定するだけなんじゃ?
直ぐには殴れないヤツを煽ったところで仕方もない
UC煉獄を纏った鉄塊剣を構えたならば
過去と現在に境界があるとするなら
己にとっての其れはきっと地獄の両腕
自らの手だけで望むモノを掴めると信じているなら
──思い上がりもいいところだが
底のソコにいても未だ
燃やせるものは残っているンでね
オレは過去に立ち止まるつもりはない
●影伸ばすほど煌めく地獄へ
凡才では誰も救えぬ。
平らかなる眼持たねば、何も守れぬ。
“おまえに、なにができる”
香良洲・巽(Krähe・f40978)も己にそう問うたことは無くないが、それは年相応の淡い染みにもにた
一年程度の疑問にすぎなかった。
淡い思春期も過ぎ去り成人した身の上だからこそ見える新たなる世界に、突如立ちはだかった歴史を名乗る者。
奇想天外にもほどがあると、一笑に付せればよかった。
だがいつだって世界は残酷で、面倒ごとばかり“
俺たち”に押し付ける。
“
イティハーサ”を、巽はどこか凪いだ目で見つめていた。
大地も歴史も凸凹あればこその美しく、その凹凸の中には常に勝者と敗者がいる。歴史とは、その全てをあらゆる角度で見守るものではなかったのだろうか?
悲しいことに
この歴史という足跡は二足歩行で歩くうえ随分と高所から話すと皮肉るように笑ったグリモア猟兵の言葉を脳裏で反芻し、巽もまた表情変えずに睨み付けるに止めていた。
「(——世界を創造する老い耄れ。なんだ、理解する必要性なんて)」
“一片たりともないじゃないか”
『諦めよ、貴様らは——』
「……俺は、猟兵としてできることをするだけだ」
世界が救ってくれというのならば、その聲に応え手中の刃を振り下ろすに限る。
・
・
・
『 ——!!』
「(……動きが、見えすぎじゃねぇか?)」
仰け反り交わす過去からの一撃は、今の巽から見ればあまりに拙く見えて仕方がない。
腕あればこそ、猟兵として今一対の腕に宿る地獄と共にいくつもの戦場駆け抜けた巽の目には筋肉の動きがよくよく見えてしまっていっそ笑ってしまいたい。
それでも絶えず得物揮い続ける過去の間合いと攻撃を見切り、最大回数振りぬいたとことで思い切り蹴り飛ばせば転がり受け身取った過去が巽を睨み上げる。
「(
こんなもんか)」
数合打ち合い、決定打ないままただ影——否、イティハーサが骸の海より拾い上げた“腕が人のまま”の
巽を、とうとう腕の地獄も鮮やかに斧揮う
巽が捉えた。
「……はは。過去を写して戦わせるなんて、それこそ——」
“見えない未来への否定をするだけなんじゃ?”
なんて。
「——過去とは、積み重ねてきたものだ」
一撃。
「意志の伴わぬ一撃は、“甘い”」
二撃。
携えた斧めいた鉄塊剣は“叩き下ろすこと”に特化している。まるで怒りに掲げた拳を叩きつけるように。
『……おのれ、』
「生憎、オレは
底で学びもせず思い上がったままのお前に負けるほど——弱くない」
唸りを上げよ、土中より遥か下層にある謳われし
ものよ。
UC—
煉獄—!!
「まだ、燃やせるものは残ってるンでね」
ぶん、と振り払うように巽が鉄塊剣を収めた後には何も残っていなかった。
大成功
🔵🔵🔵

ユリッド・ミラベル
◎
『過去の姿』
外見年齢:6~7歳程度
服装:白シャツ・黒のクロスタイ・スラックス・革靴
UC(アリスナイト・イマジネイション)で創造した【戦闘鎧】を纏い、アリスランスを所持
『過去の姿』は力が覚醒した時の姿
生き延びる為に力を求め、次に気がついた時には
目の前に「両親だったナニカ」が居た
今思えば、あの頃は絶望しか見えていなかったな。
UCで『過去の姿』と飛んでくる【矢】に対処。
射撃を撃ち込みつつ、距離を詰めて【足払い】を仕掛けて体勢を崩す。
アリスランスで追撃と防御(扱う際の動きと風圧で攻撃(+炎)を退ける想定)
『イティハーサ・サンサーラ』への追撃を【咄嗟の一撃】として、アリスランスを【投擲】出来ないか?
●“ハート”を射止める
洗濯された白いシャツは糊が行き届き、パリッとしているのが見目からよく分かる。
胸元のクロスタイは黒く艶めき、プレスされたスラックスは皺が見当たらない、
大人めいた服に袖を通すのは相対した“過去”。
幼くあるにも関わらず、相対したユリッド・ミラベル(紅茶色の右耳折れ・f22442)に怯む素振りもなく、しゃんと背筋を伸ばし、じっとユリッドを睨め付ける姿は背丈とアンバランスなほど洗練されているように見えた。
「(あ、)」
その姿に思わず息を呑んだのは、何故か。
既に概要は耳にし理解していたはずなのに、質量伴うその姿を目にしたが瞬間、紡ぐはずだった言葉を空気に溶かし、無意識に愛用の
アリスランスをユリッドが握ると同時に戦いの火蓋は落とされた。
「ぐ
、……!」
『……』
突貫する槍をギリギリで受け流せば、ぐっと過去の眉間に皺が寄る。
言葉なんて無かった。
まるで
あの時の自分が生き延びるため、我武者羅に力を求めたのと同じように。
息を吐く。
「(オレは、)」
前を見る。
「(…‥あの時っ!)」
前へ踏み出す!
それができればまだ戦えると自身へ言い聞かせ、ユリッドは力まで年不相応の過去と闘い続ける。
過去の後ろでわらう
イティハーサに負けじと鋭さを以って!
UC —
紅茶兎の舞踏—!!
雨の如く降り注ぐはずだった矢へ告げる別れの言葉は、機関銃の銃口より硝煙のにおいと共に。
「—— Step,Turn,Shot for you.」
足を払い引き倒した幼い額へ、銃口の口付けは餞のように。
『まだ終わらぬぞ』
「分かってるさ、アンタらが狙うなら“今”なんだろう?だから——」
“一番いい一発は、もう投げた”
そう笑ったユリッドを認識したイティハーサ・サンサーラの胸に、深々とアリスランスが突き立っていた。
向かうのは“絶望のその先”と目覚めたあの時、選んだのだから。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
(過去
全軍撤退の為の
生贄として、碌な支給も無く生身でキャバリアと戦う事を強いられ、全滅した部隊
自分だけが 、
猟兵として
蘇った)
思い出した瞬間、膝から崩れ落ちる
涙が溢れ止まらない
俺の後ろには陽炎の群れ
俺の眼前には生前の俺
──その後ろに、同じ改造銃を持った部隊の仲間たちがいる
過去への懺悔と、猟兵として警鈴を鳴らす敵対心が鬩ぎ合う
本来死すべきは
俺の方で
彼らは、生きて帰るべきなのに
彼らを待つ人々の元へ
還してやらなければならなかったのに
俺は、
無能な隊長だ……
そして今もまた……
銃を支えに立ち上がり、足元から炎を噴き上げる
〝今も彼らを待っている人々〟を守らなければならない
仲間を踏み躙って得る勝利など反吐が出る
そういう男だ、
お前は
敵陣を一点突破
先陣を切る陽炎達と相打ちになった敵部隊の屍を担ぎ、盾にして後続が更に突き進む
こちらは同じ事を返されても怯まない
敵部隊の隊長を、諸悪の根源を
何もかもを焼き尽くすまで、もう俺達は……止まれない
●例えばその
過去に名をつけるのならば、
巡る廻るめぐる。
あの惨劇が嵐のようにイーブン・ノルスピッシュ(
死を焚べて灯る鬼火・f40080)の脳を焼き歯がガチガチと鳴る。頬滑る涙は熱く、声にならぬ言葉はただ呻き声として空気に放たれただけ。
決して、忘れてはいけなかったのに。
己の裡に捺された
焼印だったというのに。
「(俺は、)」
一体
何を忘れていたかなんて。
目の前に突きつけられた
骸の海より引き出されしものが示していた。
——その作戦は、聞くもあまりに悍ましく口にするのも酷く憚られるべきものであったと思う。
だが“緊急”、“戦争”その火急を免罪符に振り翳し下された最も浅はかな指令であることだけは、間違いなかった。
“
全軍撤退”
“時間稼ぎの
殿を順次投入せよ”
その指示に皆みな従う中、隊長たるイーブンは周囲に抗うような足取りで部隊を率い
碌な支給もなく——正確には、対
人装備で殿として送り出されていた。この世は“
クロムキャバリア”であるにも関わらず。
部隊の誰もが絶望と死を友に、遥か高みより下された指令に抗うすべもなく土を踏んだのだ。
強いられた役目はただ命を以っての時間稼ぎ。キャバリアと生身の部隊の戦いは酷いもので、敵軍はただ弄ぶようにイーブンの部隊を踏み潰し蹂躙する。出来る作戦が在ったのか——……?
鉄の臭いだけが満たす戦場に響き渡る絶叫と肉の潰れる音に、イーブンはただ臍を噛んだことを忘れていない。
そしてフラッシュバックする記憶は今も鮮明で、握りしめた改造銃の感触が隊員の聲を鮮やかにさせる。
『隊長』
『あの塔へ行け!!多少の時間は俺が、』
『████を、』
「——、そうだ」
隊員の信頼を、愛を、想いを、託された全てが
猟兵として
蘇ったイーブンの後ろにあった。
相対する
イティハーサがどんなつもりかなどとは関係ない。
「そうだ、
お前たちはいつだって……」
理不尽。
イーブンの目の前に立つ生前の己はそれに抗えなかった姿だ。
率いる部隊の仲間は、愛する妻のもとに還してやれなかった者。守るべき子の元へ還してやれなかった者。愛された親元へ還してやれなかった者。知った顔ばかりが並んでいるが、それは今のイーブンの背も同様。
違いがあるとすれば、イーブンが
猟兵であることのみ。
『諦めよ、
猟兵よ。縋るな、三十六世界よ——』
イティハーサの朗々とした言葉に、イーブンは眩暈さえ覚えそうになっていた。何せ世界と共に在ったはずの歴史はまるで一人で生きてきたような顔で世界を蹴り飛ばさんとするその蛮行を、止めねばならない。
「俺は、
無能な隊長だ……」
頽れた膝を叱責する。
歴史も世界もダメになるのならば、それは世界に殉じた己の部隊員をもう一度踏みにじられるということ——!
唸る。
胸に沸き起こる敵対心を糧に、過去への後悔を抱いて。
唸る。
本来死すべき己に、未だ付き従ってくれる部隊員を率いて。
「仲間を踏み躙って得る勝利など反吐が出る。——そういう男だ、
お前は!!」
先陣を切るイーブンの背の陽炎たち。相打ちになった相対する部隊の屍を担ぎ盾に、さらに進む!
「踏み込め! 突破するぞ!!!」
UC—
元型衝動【憎悪】—!!
たとえ同じそれが迫ろうと、イーブンは気迫で勝った。
越えようという気概。そして背負う部隊員の想いが足を突き動かす!
倒すべきは部隊の隊長——過去の己! そしてそれを使った
イティハーサなのだから!!
砂煙が晴れた先、立っていたのはイーブンただ一人。
「……何もかも焼き尽くすまで、もう俺たちは——止まれない」
大成功
🔵🔵🔵