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帝都櫻大戰㉕〜骸の海に揺蕩たゆたう幻朧

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第三戦線 #幻朧帝イティハーサ #神王サンサーラ


●第三戦線
 決戦の時。
 数多の戦いを経て、初雪崎・識(翠炎の探求者・f44092)は、いよいよ幻朧帝との直接対決が始まったことを、猟兵達に告げた。
「この戦いの元凶、『幻朧帝イティハーサ』は、エンシェント・レヰス達と融合して、いくつもの侵略新世界を創造し始めたよ。みんなに向かって欲しいのは『神王サンサーラ』との融合によって創られた世界」
 その名は、『サンサーラナラーカ』。
 サンサーラの圧倒的な威光により、とめどなき拡大を続ける『広大無辺の無限地獄』である。

「骸の海そのものだっていう幻朧帝イティハーサは、サンサーラと合体して、『イティハーサ・サンサーラ』に進化してしまった。しかも、骸の海の具現化だっていうサンサーラナラーカじゃ、まともに戦う事もままならない」
 識の言う通り、この侵略新世界は、既に骸の海によって満たされている。世界への進入は、骸の海に足を踏み入れる事と同義である。
「向こうの世界に溢れる骸の海は、猟兵の心と体も、もの凄い速さで侵蝕してくるよ。でも、そんな中にも勝機が……たぶん、たった一つの勝機が、あるんだ」
 骸の海の影響は、もう一つある。猟兵は、自身の『真の姿』を強制的に引きずり出されることとなるのだ。
 これこそ、識の語る勝機。骸の海がもたらす強烈な苦痛と狂気に抗いながら、真の姿の全力を発揮して、骸の海そのものたる幻朧帝に立ち向かうしかない。

「真の姿になっても、オブリビオンすら超越した幻朧帝に、敵うかはわからない……けど、『サンサーラナラーカ』を放っておけば、この戦いが終わっても、また新たな侵略が始まるはず。ここでなんとか食い止めよう」
 識は、猟兵達の覚悟を確かめると、グリモアの力を引き出す。
 過去という呪いに満ちた、骸の海への扉が開かれる。


七尾マサムネ
 こちらは『帝都櫻大戰』【第三戦線】のシナリオです。1章のみで完結します。
 遂に、幻朧帝との決戦です。

●プレイングボーナス
 苦痛と狂気に耐え、真の姿を晒して戦う。
 ※プレイングに、大まかでもいいので『真の姿』の描写・説明をお書きください。

 それでは、皆さまのご参加、お待ちしております……!
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第1章 ボス戦 『イティハーサ・サンサーラ』

POW   :    天矢『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【大焦熱地獄の炎を纏った天羽々矢】で包囲攻撃する。
SPD   :    神鷹『サンサーラナラーカ』
レベルm半径内を【神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気】で覆い、[神鷹の羽ばたきと共に八寒地獄の冷気]に触れた敵から【生命力や意志の熱】を吸収する。
WIZ   :    骸眼『サンサーラナラーカ』
【神王サンサーラの力を再現した姿】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【完全性】に比例し、[完全性]が損なわれると急速に弱体化する。
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山吹・夕凪
広がり続ける光の無限地獄
あまりにも寂しく、悲しく、新しき可能性のない世界
それを否定する為なら、骸の海に飛び込むことも厭いません
元より、死地にて閃くが刃なれば、怯むことも動じることもなく

ただ私の名の通り、凪いだる心境で骸の海――過去からの苦痛と狂気を受け入れます
ああ、きっとこれも誰かの壊れた祈りなのでしょう
きっと潰れた心臓で愛を詠う悲鳴だったのです

それを糧に未来を求める心で限界突破し真の姿へ
髪は色を変じて夜のように艶やかな黒
背には雪のように白い鶴の翼を

神鷹と競うように羽ばたき、迫る冷気は破邪を宿した剣で払い活路を開き
急所を見抜く心眼の元、ただ静かにUC一閃

世界を紡ぐという傲慢な罪
裁かせて頂きます



 広がり続ける、光の無限地獄。
 成長とは無縁。あまりにも寂しく、悲しく、新しき可能性のない世界。
「それを否定する為なら、骸の海に飛び込むことも厭いません」
 山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は、決意とともに、グリモアの導きに身を任せた。
 光の先、待っていたのは、歪められた神光であった。
「来たか、第六猟兵よ」
 サンサーラの後光を従えし幻朧帝。帝と王の合一、イティハーサ・サンサーラ。
 だが、その威容……否、異様か……を、しかと見据えている余裕はなかった。
 過去が押し寄せてくる。
 夕凪の存在、そしてそれを形作る経験と時間さえも侵食する苦痛。過去は、失われたもの達の無念の叫びばかりを発し、精神を蝕んでいく。
 過去とは、幸いすらも内包するものであるはず。
 されど、イティハーサの創り出した世界には幸いの在り処などなく、悔恨、無念、呪詛、後悔……過去の持つ負の側面のみが肥大化しているかのよう。
 しかし、夕凪の心は凪いでいた。
「元より、死地にて閃くが刃なれば、怯むことも動じることもなく」
 我が名は、夕凪。
 凪いだる心境で骸の海――過去からの苦痛と狂気を受け入れていく。
「ああ、きっとこれも誰かの壊れた祈りなのでしょう。きっと潰れた心臓で愛を詠う悲鳴だったのです」
 過去の奔流達からの洗礼を受けながら、夕凪の姿が変じていく。
 未来を希求する心が、夕凪を規定する限界という壁を破る。
 髪に宿る色は、夜が如く艶やかな黒へ。
 背には、雪のように白き鶴の翼が。
「生命など、儂が求める世界においては異物にして遺物。滅ぼせ、神鷹」
 イティハーサの命を受け、羽ばたく神鷹に、夕凪もまた応じた。共に翼持つもの同士が、虚空にて競う。
 羽ばたきとともに溢れ出す冷気。八寒地獄が、空間に満ちる過去とともに、襲い来る。夕凪は、空中で神鷹と交錯しつつ、破邪宿せし剣で、冷気を打ち破った。
 刃閃くたびに、夕凪の意志の力は、いっそう熱量を高める。
 創世者へと向けた黒刀、心眼にて見抜いた急所へと、ただ静かに。
 天地救う神の刃。ユーベルコードの輝きが、黒刀を退魔神器へと導く。
「世界を紡ぐという傲慢な罪。裁かせて頂きます」
 救世を成し遂げるべく。
 夕凪が、神討つ刃にて、イティハーサを貫いた。
「生命風情が、この儂を討とうというのか……」
 呪詛をこぼす神化幻朧帝の身を、罪咎裁きし瑠璃色の炎が焼いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
・真の姿
巨大な呪いの青金剛石の中に浮かぶ、ボロボロになった少女。
望まぬ不幸をまきちらすことに、無意識に涙を流しています。

・行動
持ち主全てに不幸をもたらし、最期に呪詛の言葉を投げかけられた記憶にさいなまれながら、ゆがんだ笑みを浮かべます。
「その過去から逃れられないのなら…」
ユーベルコード【錬成カミヤドリ】。
自分の分身の青金剛石を151個宙に浮かべて、躯の海そのものを呪いつくす。

「良いわよ、躯の海、お前もすべて呪われてしまえ」

[狂気耐性][環境耐性]で耐え、[結界術]+[オーラ防御]でできる限り時間を稼ぎつつ、侵食される前に呪いの青金剛石の分身の群れでひっかきまわしてあげるわ。



 強制創世された新世界。
 骸の海で満ちたその場所は、来訪者であるヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)を、容赦なく蝕んでいた。
 持ち主全てに不幸をもたらし、最期に、呪詛の言葉を投げかけられた記憶。
 骸の海に揺蕩う忌まわしき過去……イティハーサの言葉を借りるなら『歴史』というべきなのだろうか?……が、ヴィオレッタに押し寄せる。
 それは、心、魂のみならず、ヤドリガミとしての仮初の肉体さえもさいなんでいく。
「生命あるものがこの世界に存在する事など叶わぬ。過去に全てをゆだねるのだ」
 静かに響くのは、白き王、幻朧帝イティハーサの声だった。サンサーラを吸収した今は、その名をも冠し、このサンサーラナラーカの王を気取っている。
 だが、イティハーサの傲慢な願いは、叶わなかった。
 ヴィオレッタの顔に浮かぶのは、苦悶でも悔恨でもなく……歪んだ、しかし、確かな笑みだったからだ。
「その過去から逃れられないのなら……」
 ヴィオレッタの内より放たれた呪いの念が、輝きとなって、歪んだ世界を彩る。
 自らの分身たる青金剛石。宙に浮かんだ151個が、あまねく呪いの力を放つ。骸の海そのものを呪い尽くさんと。
 そして、青金剛石達の中心には、ヴィオレッタ。ただし、巨大なる呪いの青金剛石の中に浮かぶその少女は、ボロボロの姿で、涙を流していた。
 望まぬ不幸を撒き散らす事に耐えられず、ただ、無意識に。
 このままならば、無慈悲な世界に押し潰され、自らも過去の一部、ヴィオレッタを呪い死んでいった者達と同じ運命をたどることだろう。
 そして、引導を渡さんと、イティハーサは神鷹を放った。
「さらばだ、『第六猟兵』よ」
 その羽ばたきは、八寒地獄の冷気で世界を包みこみ、ヴィオレッタ達を冷気の牢獄に閉じ込めようとしてくる。
「さあ、命ある者よ、過去と成れ。さすれば苦痛から解放される。我が新世界にて……」
「良いわよ、骸の海、お前もすべて呪われてしまえ」
 イティハーサの囁きを断ち切るように。
 押し寄せる冷気が、押し返された。ヴィオレッタから放出されたオーラが、過去を打ち払い、寄せ付けない。
 過去の侵食は阻まれ、それどころか、反対に押し返されていく。
 ヴィオレッタの意志を受け、呪いの青金剛石の分身達が、踊り狂う。
 それは、神鷹を追い払い、骸の海を押しのける。
 やがて、イティハーサの元へと到達すると、その力と空虚な野望をかき乱してやったのだった。存分に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
アドリブ・連携OK
真の姿:金眼の赤い竜人

過去があるからこそ今がある
だから俺は過去を否定しない、むしろ大事なもののひとつだと思っている
だけどその過去が牙を剥いてくることは許せないからオブリビオンは絶対に滅ぼそうと思っているし
過去の集合体という現象にすぎない骸の海が意思を持つことも許せないので幻朧帝も滅ぼす対象だ

俺は強情だからね
滅ぼそうと決めたら滅ぼすまで止まらないのさ
骸の海による苦痛がなんだ、狂気がなんだ
幻朧帝からの攻撃なんて骸の海そのものに攻撃されてるから気を回す暇が無いし
とにかく俺の意地(重要)と鍛えた激痛耐性&狂気耐性で耐えながら青風装甲を発動して幻朧皇の懐に飛び込み、大剣を突き立ててやる



 グリモアの導きの先、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)を待ち受けていたのは、溢れんばかりの過去だった。
 骸の海に満ちた『サンサーラナラーカ』。
 その主にして、自身も同質の存在であるイティハーサ・サンサーラは、既にサンディの目前に浮かんでいる。
 しかし、サンディとの距離は、千里も軽く離れているかのように、遠く感じられた。
 両者を隔てているのは、世界そのもの。骸の海に含まれる濃密な過去が、壁のように存在するかのようだ。
 骸の海そのものである幻朧帝は、涼しい顔。
 一方、猟兵とはいえ、今を生きる命、サンディにとっては、その苦痛と狂気は耐えがたいものであった。
 有象無象の過去とともに、自らの過去もまた、押し寄せる。
 だが、諦めぬのも、また猟兵。
「過去があるからこそ今がある。だから俺は過去を否定しない、むしろ大事なもののひとつだと思っている」
 イティハーサの影響によるものか、過去は、幸いな思い出の一かけらも無い呪いとなって、サンディを蝕む。
「だけど」
 サンディの身体が、輝きを帯びるのを、イティハーサも見ただろう。
「その過去が牙を剥いてくることは許せない。オブリビオンは絶対に滅ぼす」
 幻朧帝からすれば、とるに足らない、ちっぽけなはずのサンディの瞳は、世界をも竦ませる金色へと転じる。
「それに、過去の集合体という現象にすぎない骸の海が意思を持つなんて、許してなるものか。お前の事だ、幻朧帝」
 金色の瞳持つ、赤き竜人。
 それが、それこそが、サンディの真なる姿!
「命ある者が過去に抗おうというのか。その愚かさすら理解できぬのか」
「俺は強情だからね」
 無感情に響くイティハーサの声に対し、サンディの声は、熱量を伴って返された。
「滅ぼそうと決めたら滅ぼすまで止まらないのさ。骸の海による苦痛がなんだ、狂気がなんだ」
 サンディの意志をかき消すように、イティハーサは、後光を放った。
 大焦熱地獄産の炎の矢が、無数に射かけられる。その全てが、サンディを滅するという、ただ一つの結末に向かって飛来する。
 サンディは、諦めた。天矢の対処を。目下、骸の海そのものからの攻撃中。単純に、気を回す暇が無い。
 ゆえに、耐える。備えた耐性を発揮し、瑠璃色の旋風を纏って。あとは意地。これ重要。
「つまらぬ生命のあがきなど見るに堪えぬ」
「ひとの意地を侮らない方がいいと思うな」
 サンディは、超速にて幻朧帝の懐に飛び込み、大剣を突き立てた。
 竜人の膂力、そして、ありったけの意志力をこめた一撃を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
最初はサクラミラージュの問題だと思っていたら、多くの世界を巻き込む戦いになり
今となっては全世界の危機……だ。イティハーサは必ず倒さなければ

その決意によって骸の海の侵蝕に抗い、そして真の姿を解放(IC参照)
とはいえ長時間は保たないだろうし、短期決戦を仕掛ける

神刀を抜き、神気の力を纏う事で身体能力を強化
包囲攻撃を仕掛けてくる天羽々矢はには、此方に向かってくるものだけを斬撃波で弾き飛ばし
最短距離を最速で駆け抜けイティハーサの元へと踏み込んで、澪式・奥義【無念】による連続攻撃

剣戟の勢いで矢を弾き、攻撃と攻撃の合間に生まれる僅かな隙間で立ち位置を調整しながら、五回連続攻撃を確実に叩き込む



 思えば遠くへ来たものだ。
 夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は、決戦世界サンサーラナラーカ、骸の海の成分に呑みこまれながらも、思いを馳せていた。
 最初は、サクラミラージュ世界のみの問題だと思っていたが、やがてそれは、数多の世界を巻き込む戦いへと発展した。
「それで今となっては全世界の危機……だ。必ず倒さなければ」
 幻朧帝。サンサーラと融合し、新世界まで創造した、元凶を。
 しかし、鏡介の前進を、過去が妨げた。苦痛、呪詛、狂気……そうしたものの複合体が、鏡介を未来ではなく過去……オブリビオンへと導く。
 だが、骸の海の侵食が、押し返された。鏡介の決意が、停滞を望む過去に抗い、そして、自らの戦う力へと転化していくのだ。
 黒き瞳が、太陽を宿したように、燃え上がる。
 黒き髪は、神力を帯びたかの如く、白へと染め上げられる。
 真の姿の解放だ。
 骸の海の中にも、未来を望む意志があるのか? それとも、数多の世界達が、イティハーサの世界の否定、オブリビオンの駆逐を希求しているのか。
 いずれにせよ、鏡介の勇姿に、骸の海を構成する過去が震えたように、思われた。
「とはいえ長時間は保たないだろうし」
 鏡介が神刀を抜くと、少しばかり、圧が減じた。
 真なる力によって増幅された神気が、執拗にまとわりついていた、古びた呪いを振り払ったのだ。
 纏いし神なる気は、まがりなりにも創造神というべき存在へと、鏡介を近づける。
「最早新たな猟兵は生まれぬ。『第六猟兵』よ、汝らが最後の猟兵となるのだ」
 イティハーサは、サンサーラの威光を存分に発揮した。
 神に神の力を乗算した、超・神罰。大焦熱地獄より来る、無数の矢。神の傲慢さを顕現させた天羽々矢が、鏡介の滅殺をはかった。
 全てを相手どる事など不可能。もとより、鏡介もそれは狙っていない。此方に向かってくるものだけを、斬撃波で弾き飛ばし、愚直に前進する。
 恐れはない。ただ、最短を最速で駆け抜け、最大を浴びせるべく、イティハーサの元へと踏み込む。
「サクラミラージュに生を受けたものとして……この剣で紕いを断つ。即ち――澪式・奥義【無念】」
 鏡介が、必殺を始めた。
 剣戟の勢いで矢を弾くと、幻朧帝を薙ぎ払い、斬り上げ、兜割り、そして刺突を浴びせる。
 攻撃と攻撃を繋ぐ、僅かな間隙ごとに立ち位置を変え、敵を全方位から封殺する。
 そして、必殺の完結。
 無念無想の太刀が、イティハーサという傲慢なる存在を斬り裂いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オニバス・ビロウ
躯の海に引き摺り出されたと思えば…髪が長ぇのがわかる
真の姿若造の頃だな、これ
つーか喋り方も当時に引っ張られてるな

納得したなら後は対策を取る
オレの恋しい人が持ってた桜鈴を鳴らして【狂気耐性】と【呪詛耐性】を高める
他の痛みと苦痛は【覚悟】で耐えるだけ
確かにすげえ痛いし苦しいが動くことは出来る…委細問題なし!

お誂え向きに真の姿晒してるし、我が故郷の守護神であり我ら一族の盟友の力を借りる
熱を纏った矢は斬り捨てる
斬り捨てた矢が邪魔だが【悪路走破】する雪手亡に乗り、ただ敵のみを捕らえてまっすぐ斬りに行く

他世界に…楓と一緒に過ごす我が故郷に侵略なんざさせねえよ
大人しく引っ込んでやがれ!



 オニバス・ビロウ(花冠・f19687)が、ここが『サンサーラナラーカ』なる新世界であると認識したと同時、自身の変化をも感じとることとなった。
「骸の海に引き摺り出されたかと思えば……髪が長ぇ。……真の姿若造の頃だな、これ」
 変容した天狐の髪に触れながら、呟くオニバス。
「つーか喋り方も当時に引っ張られてるな」
 とりあえず納得した。であれば、あとは、後は対策を取るまで。
 帝と王の融合。イティハーサ・サンサーラが、オニバスの前に浮遊している。
 事態を了解したオニバスを、次に襲ったのは、重圧だった。狂気と苦痛が、否応なしに流れ込んでくる。
「力を貸してくれ、オレの恋しい人
 オニバスに名を呼ばれた桜鈴が、音を鳴らす。
 それは広大な世界に比べれば、ちっぽけな音量であったけれど、苦痛が不思議と和らいだ。狂気と呪詛の圧が、緩んでいる。
 襲い来る痛みと苦しみが、ゼロになったわけではない。だが、残りの分は、オニバス自身の精神力……覚悟で耐えれば何という事はない。
「確かにすげえ痛いし苦しいが動くことは出来る……委細問題なし!」
「それが真の姿か。しかし、骸の海そのものである儂に届くものではない」
 イティハーサが、傲然と言い放つ。
 しかし、その声色は空虚で、オニバスの決意を揺るがすには、全く足りなかった。
「ちょうど、お誂え向きに真の姿晒してるし」
 オニバスは、自身の故郷の守護神にして、一族の盟友たる存在の力を借り受けた。
 天狐の加護により、真の姿は、無敵体としての性質をオニバスに一層強く発揮させる。
「不屈だと。だが、その心を折れば二度と立ち上がる事も出来まい」
 イティハーサが、神王の権能を振るった。
 無数の矢が、白き虚無の帝を中心に、円陣を形成する。大焦熱地獄の炎が、矢となって、オニバスへと殺到する。
 だが、どれだけ熱量をもとうとも、意志の力を感じない矢など、オニバスにとって斬り捨てるに容易いものであった。
「斬り捨てた矢が邪魔だな」
 こともなげにそういうと、オニバスは、千里駆ける白馬にまたがった。
 その疾走は、炎矢の残滓を振りきり、ただ敵のみを捕らえて、まっすぐに刃を届けに行く。
 先送りの痛みも熱も、未来を勝ち得てこそ。
「他世界に……楓と一緒に過ごす我が故郷に侵略なんざさせねえよ。大人しく引っ込んでやがれ!」
 遍く矢の大群を斬り捨てたオニバスは、虚しき創世神へと、神滅の一撃を浴びせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・明莉
真の姿:瞳が青になる以外は表立った変化は無し
冷静だが力が全てという思想に囚われる

骸の海とは何か
猟兵になり短い時間で最初に芽生えた疑問
恐らく皆そうなんだろう
降り立てば瞬時に広がる、「力」への狂おしい渇望とそれに抗おうと正気を求める苦痛
オブリビオンとはこうして生まれるのなら、その存在はやはり歪な物であるが故、己の欲には真っ直ぐなのだろう

だからこそ真の姿が引きずり出されるなら皮肉だな、幻朧帝
自ら害虫を体内に取り込んだようなモンだ

炎の矢はオーラ防御、火炎耐性と大刀「激震」を振るう衝撃波で打ち払い
隠れてないで出てこい、幻朧帝
アンタの膨大な力しか興味はない
気配察知で幻朧帝を感じ取りそれのみを叩き潰す



 骸の海とは何か?
 それこそが、木元・明莉(蒼蓮華・f43993)が猟兵になってほどなく、最初に芽生えた疑問であった。
「恐らく皆そうなんだろう」
 六番目の猟兵のみならず、それに至るまでの数多の猟兵達もまた、その疑問に直面したかもしれない。
 サンサーラナラーカ。
 急造新世界へ降り立つなり、瞬時に広がる『力』への狂おしいまでの渇望と、それに抗おうと正気を求める苦痛が明莉を襲った。
「オブリビオンとはこうして生まれるのなら、その存在はやはり歪な物であるが故、己の欲には真っ直ぐなのだろう」
 世界を守るために生まれながら、オブリビオンへと堕し、世界へ仇為すことを選んだ過去の猟兵達が、それを証明している。
「だからこそ真の姿が引きずり出されるなら皮肉だな、幻朧帝。自ら害虫を体内に取り込んだようなモンだ」
 神王を掌握したイティハーサへと臆することなく告げる明莉もまた、真の姿を体現していた。
 青に転じた瞳は、幻朧帝の本質までも射抜くかのよう。
「そのような矮小な真の姿があろうとは。六番目の猟兵、或いはこれまでで一番の失敗作であったかもしれぬ」
 響くイティハーサの声に、明莉を揶揄する色はなかった。ただ、純然たる事実であると、淡々と言葉を連ねているだけに過ぎない。
 しかし、明莉の最たる変化は、内においてこそ生じていた。
 思考は、不純物を含まぬ氷のように冷え、冴えている。だが、一方で、『力こそ全て』という偏った思想に囚われてもいた。
「生命あるものよ。等しく過去となり、骸の海の一部となるがよい」
 神なる矢が、無数となって、明莉を滅殺にかかった。
 しかし、大焦熱地獄を具現する矢に、明莉は己の持てる耐性を駆使して、抗った。
 大刀『激震』を、振るう。
 明莉に殺到していた矢の群れは、まるで消しゴムをかけられたように、綺麗に消失した。
 しかし、イティハーサの姿は、燃ゆる天羽々矢が織り成す地獄陣、そして骸の海の向こう。
「隠れてないで出てこい、幻朧帝。アンタの膨大な力しか興味はない」
 イティハーサが、明莉の挑発に応えることはない。
「サンサーラとの融合で意志を得たとか聞いたが……意志があるなら、気配も当然あるはずだ」
 明莉が、まぶたを閉じる。
 なおも押し寄せる苦痛と狂気。その中に、わずかに異なる気配……サンサーラの神気を察知した明莉は、開眼した。
 違和感の中心へと飛び込むと、大剣にありったけの力を注いで、巨大なる元凶……幻朧帝のみを叩き潰したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
【Ahnenerbe】
カカカ、持論に自信があるなら生命など無視しとけば良いんだよ。
なのに執拗に滅ぼそうとする。
生命が憎いのか怖いのか知らねえが襲ってくるから……滅びる事になるんだぜ?

各種『オド』を活性化して骸の海を防ぎつつもそれを侵食しようとする刺激を糧に【真の姿】に。(真の姿は異形の魔神的な姿JC参照)

この姿になるのも久しぶりか。冥土の土産だ。魔神の力、刮目しな。

イチカのUC発動に合わせて絶奈と連携して攻撃。相乗効果を狙おう。

【魔神断斬】
八寒地獄の冷気ごと斬撃波で自称創造主を真っ二つに斬り裂こう。

サヨナラだ。幻朧帝。骸の海過去の具現化というなら大人しく引っ込んでな。


イチカ・バーチカ
【Ahnenerbe】

勝負してくるなら、受けるしかないわね。
可能性に賭けるわ!

(真の姿)
勝利の可能性を捨てきれないギャンブル狂。
電脳が吐くエラーが大量の半透明カードになり
日輪のようになったものを背負う。

【イカサマ】で【賭け試合】を補助。
「あなたの技、賭けて勝負しましょ!」って言ったら
私も神鷹を出して攻撃すると思うでしょ?
私も神鷹を持つなんて、言ってないわ。
あなたの神鷹の羽ばたきを
そのまま私の『サンサーラナラーカ』の起点にする!
あなたも、あなたの神鷹も、私の敵。
こちらを攻撃するつもりで出した八寒地獄で、自分たちも冷めると良いわ。

私の手札はここまでだけど、
絶奈さんとバジルさんの手番は、これからよ!


霧島・絶奈
【Ahnenerbe】で連携

◆心情
『世界』へ挑まんと謳うなら、苦痛と狂気は肩を並べるべき戦友でしょう
其れの無い闘争など在り得ませんよ

幻朧帝はブラフで相手を勝負から降ろすのがお好みの様ですけれど…
役不足も良い所ですね

◆行動
異端の神の似姿たる<真の姿を開放>

バーチカさんに呼応し【範囲攻撃】する『DIABOLOS LANCER=Replica』で【二回攻撃】
骸の海に満たされた世界なれば、空間総てが地形です
私自身が届かなくとも仲間の刃を届かせられれば僥倖
バジルさん、任せましたよ

更に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】し援護

負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



 サンサーラナラーカ。
 神王サンサーラの力を転用した急ごしらえの世界で、イチカ・バーチカ(酩酊する射倖心ノルカソルカ・f40796)は向き合っていた。
 この世界の主にして、サクラミラージュを襲う危機の元凶、幻朧帝と、骸の海の力と。
「勝負してくるなら、受けるしかないわね。可能性に賭けるわ!」
 ピンチこそスリルの源、逆転の予兆。イチカのギャンブル魂が燃え上がる。
 霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は、そんな頼もしき仲間達とともに、襲い来る過去からの苦痛と狂気の波と戦っていた。
「『世界』へ挑まんと謳うなら、もとより苦痛と狂気は肩を並べるべき戦友でしょう。其れの無い闘争など在り得ませんよ」
 絶奈は、創造神イティハーサを嘲笑する色を、言葉に織り込んだ。
 そう、ここに集った者達の中に、幻朧帝に恐れをなすものなどいない。アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)もまた、この耐えがたい苦痛の波の中でも、不屈であった。
「カカカ、持論に自信があるなら生命など最初っから無視しとけば良いんだよ」
 イティハーサを笑うアレクサンドル。
「なのに執拗に滅ぼそうとする。生命が憎いのか怖いのか知らねえが襲ってくるから……滅びる事になるんだぜ?」
「滅びなど恐れぬ。なぜなら儂は過去であり、過去は不滅だからだ」
 イティハーサは答えた。
 禅問答……いや、これは単なる他者の否定に過ぎない。
「ただの駄々っ子にしか見えねえぜ、幻朧帝」
 イティハーサへの否定の証明として、アレクサンドルは、抗った。
 魔力耐性、状態異常耐性、肉体強化……『オド』達の力を総動員して、骸の海の奔流に対抗する。
 しかしそれでもなお、骸の海とは執拗なものであった。ほんのわずかな綻びからも、アレクサンドルに辿り着くと、その身を侵食し始める。
「全く厄介だな骸の海」
 なぜ世界からオブリビオンが尽きないのか、その答えの一端を垣間見た気がした。
 だが、その刺激は、アレクサンドル達に眠る力をも揺り起こす。
「滅びよ生命よ猟兵よ。骸の海にて等しくオブリビオンとなり『歴史』となれ」
 イティハーサの戯言とともに、イチカ達を襲う過去の奔流が、激しさを増した。
 だがそれは、イチカの内に眠ったり既に目覚めていたりしていた勝負心を、いっそう激しく燃え上がらせる種火だ。
 現出したのは、どのような窮地に追い込まれようとも、勝利の可能性を捨てきれない、勝利を信じる心と常に共にある……ギャンブル狂。
 レプリカントの証、電脳がエラーを吐く。それは、具現化ともに大量の半透明カードへと成形され、イチカの背で日輪の形を構築した。ギャンブルの神が如く。
「真の姿か」
「幻朧帝はブラフで相手を勝負から降ろすのがお好みの様ですけれど……役不足も良い所ですね」
 猟兵の変容を目の当たりにしたイティハーサへと、絶奈は、不敵な笑み1つ。
 自らも骸の海を受け入れると、真の姿を解放した。
 それは、異端の神の似姿。『天の恩寵にして裁きの鉄槌を齎す者』。
「2人に後れを取るわけにはいかねえな」
 神の降臨に、アレクサンドルも続く。
 好青年、といって差し支えなかったその姿は、災禍齎す異形の魔神へと変貌を遂げていた。
「この姿になるのも久しぶりか。冥土の土産だ。魔神の力、刮目しな」
 手指を動かし、魔神態の感覚を再確認したアレクサンドルは、イティハーサを睨み、狂暴に笑った。
「さあ、そのユーベルコード。どちらが上手に使えるか、賭けない?」
 背にした札の後輪を回転させながら、イチカが、そんな誘いを持ち掛けた。
 狂気を狂気で制したイチカへ、イティハーサからの回答はなかった。ただ、ユーベルコードが来ただけだ。
 幻朧帝の元を離れ、神鷹が羽ばたく。
 八寒地獄の冷気が、速やかに辺りを支配する。生命から、命と意志を簒奪するために。
「さあ、まがい物の力、見せてみるが良い」
 イティハーサの声に、しかし、イチカは冷気を発する……ことはなかった。
 ただ、笑みを返しただけだ。
「『あなたの技、賭けて勝負しましょ!』って言ったら、普通、私も神鷹を出して攻撃すると思うでしょ?」
 けれど、
「私も神鷹を持つなんて、言ってないわ」
 イチカは言う。
 つまりこれは、イカサマだ。
「あなたの神鷹の羽ばたきを、そのまま私の『サンサーラナラーカ』の起点にする!」
 何を言っているのか? イティハーサの困惑が、骸の海を通して伝わった。
 しかし、直後に起きた現象が、否応なしに理解を強制した。
 イチカに吹き付けていた冷気が、イティハーサ達をも白く染め始めたのだ。
「あなたも、あなたの神鷹も、私の敵。こちらを攻撃するつもりで出した八寒地獄で、自分たちも冷めると良いわ」
 思わぬ反転に襲われる幻朧帝に、勝ち誇るイチカ。
「私の手札はここまでだけど、絶奈さんとバジルさんの手番は、これからよ!」
 道を空けるイチカに、絶奈達は、即座に呼応した。今や味方となった冷気を伴い、連携してイティハーサに立ち向かう。
 絶奈が手を掲げた天上。骸の海を割り裂いて、巨大構造物が飛来する。それは輝ける槍。
 巨大なる召喚槍だ。いや、その本質は、槍の形をした全く別の何かである。
 絶奈の神命を受けた『DIABOLOS LANCER=Replica』は、一度ならず、二度までも、イティハーサへと襲い掛かった。
 一撃目はイティハーサを貫き、しかしもう一撃は、虚空を薙いで、海に突き立った。
「ならば儂も神の力にて応えよう。真なる神の力を以て」
 イティハーサは、サンサーラに化身した。
 骸の海をつかむと、オーラに変換して、絶奈へと浴びせかける。神の威光は、世界の果てまでも標的を照らし、滅するものだ。
 絶奈とて、それから逃れる事は出来ない。だが、各種耐性とオーラの守りが、濃密さを増した狂気を軽減する。
 同時に、敵の波動を生命力として転化し、自らの負傷を補填した。
「まがいものの神の力では、一度で儂を仕留める事は出来ぬ」
「残念なのはそちらでは?」
 傲慢なる帝に、異端の神が微笑んだ。
「骸の海に満たされた世界なれば、空間総てが地形です」
 絶奈の言葉に、イティハーサは己の世界の変化を悟った。
 いつの間にか、天候とは無縁であった虚空世界に、雨が降っている。
 それは、銀の雨。味方を強化し、癒す領域を、先ほどの槍は展開していたのだ。
「私自身が届かなくとも仲間の刃を届かせられれば僥倖。バジルさん、任せましたよ」
 イティハーサの完全性を損なうように、全域へと展開した衝撃波の連打を浴びせつつ、絶奈がアレクサンドルを送り出す。
 だが、その場にとどめられたイティハーサの代わりに、飛翔するものがいた。神鷹だ。
 イチカの冷気を浴び、絶奈の衝撃波を受けながらも、神鷹の忠誠が失われる事はなかった。
 羽ばたきは執拗に冷気を吐き出し、アレクサンドルの周囲に、地獄の濃度を上げていく。
 だが、多少なりとも相殺された冷気世界の中を翔け、アレクサンドルは、その両手に力を凝縮した。
 サンサーラと融合したイティハーサは巨大。だとしても、魔神アレクサンドルには、些細な事でしかない。
 巨大なる斬撃波を、振り下ろす。八寒地獄の冷気ごと、自称創造主を、真っ二つに斬り裂く!
「サヨナラだ。幻朧帝。骸の海過去の具現化というなら大人しく引っ込んでな」
 幻朧帝は、身体をよろめかせながら、アレクサンドル達を侮った事の間違いを悟った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

やり口が醜悪で怒りしかない
我慢できず相棒に溢す

「元々骸の海は死者の尊厳破壊が酷いのに…
更に好き勝手で我欲を満たす奴なんか千回滅びろ!だ」

気色ばむ俺に相棒は泰然自若
言葉と共に小気味よく背を叩かれ落ち着けた
「ん。絶対護る!終わらせよう!」
拳を合わせ臆さず骸の海へ!

全技能防御も蟲達の献身もある
けど身体も精神もバラバラに砕け散る感覚
前は後ろ、横は上
未来は閉ざされ過去が嘲り…
よろけて大波に呑まれたその時
俺達は真の姿と全盛の能力者としての力を取り戻した

「待っていた!」
すかさず起動しUC護の誓いを詠唱!

元々真の姿を解放できるこの力を
本当に真の姿を得た状態で使うと更に威力も上がる!

あれからも研鑽を重ねた能力者にして
この地獄に自ら立つ猟兵として俺達が負うのは
今危機にある全ての世界の全ての人達!
相棒の声に応じて
「力なき者の盾となる!」

全力で戦いを挑もう
これを望んだはずもないサンサーラの無念をも晴らす為にも
絶対に打ち砕く!

「俺達の真の姿を引き出したのが貴様の敗因だ、幻朧帝!散れ!」


凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と

例え敵うか分からなくても
そこで膝を付く事も
立ち止まる事も絶対にしない
諦めずに全力で戦って
「俺達は世界を護る」

当然、敵のやり口には俺も怒りが収まらない
だが、だからこそ冷静に敵を見据え前へ進むんだ
此処で倒せば終わりなんだと、時人の背中を叩きながら
「終わらせる為に、いくぞ」
落ち着いた相棒と拳を合わせて骸の海へ踏み込むよ

踏み込むと同時、身を引き裂くような痛みが走り
痛みが精神を直接磨り潰し
その苦痛で開いた隙へ、滑り込もうとする狂気を感じる

だけど骸の波に呑まれて真の姿が引き出されれば
成長した大人の全盛期の能力者としての姿と力が
そして今までの経験の全てが俺達を支えてくれる
「こっちの番だな、時人!」

そのまま相棒と共に護の誓いを使用
真の姿を更に強化する事で
能力者として、そして猟兵として
全ての力を以て、二人で誓いを叫ぶ
「護るべきを護り」

どれだけ敵が強大だろうと
諦めずに戦い続けてきた俺達のこの拳は
そして世界を護る誓いは、必ず敵に届くから
「俺達の全力を味わって…此処で眠れ。幻朧帝!」



 この先、待ち受けるのは、骸の海で満ち満ちたる侵略新世界。
 葛城・時人(光望護花・f35294)は、神王サンサーラをも呑みこみ、新たな世界を創り上げた幻朧帝への怒りを、相棒へと溢していた。
「元々骸の海は死者の尊厳破壊が酷いのに……更に好き勝手で我欲を満たす奴なんか千回滅びろ! だ」
 怒りのアクセルを踏み込み、気色ばむ時人とは反対に、相棒は泰然自若としていた。
 しかし、相棒……凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)とて、思い自体は同じであった。むしろ、内包された激情の度合いは、時人より上かもしれない。
 それでも、陸井は、相棒の為、世界の為に、それを押し殺した。
「当然、敵のやり口には俺も怒りが収まらない」
 だが、と、陸井は諭し続ける。
「だからこそ冷静に敵を見据え前へ進むんだ。此処で倒せば終わりなんだ」
 例え敵うか分からなくても、そこで膝を付く事も、立ち止まる事も絶対にしない。
 最後まで……勝利を収めるまで、諦めずに全力で戦って、
「俺達は世界を護る」
 陸井は、言葉と共に、小気味よく時人の背を叩いた。
 泰然自若な相棒に活を入れられた事で、時人の昂りは、ようやく落ち着きを得られたようだ。
「ん。そうだね、絶対護る! 終わらせよう!」
「ああ。終わらせる為に、いくぞ」
 相棒と拳を合わせて、時人と陸井は、骸の海へ踏み込んだのだ。

 いったん晴れやかさを取り戻したはずの時人が、渋面に戻るのに、時間はさほどかからなかった。
 陸井達が新世界へと足を踏み入れると同時、身を引き裂くような痛みが襲ったからだ。
 その痛みは、肉体を侵食するだけでは飽き足らず、陸井達の精神までも、直接磨り潰しにかかった。
 骸の海は、周到にして執念深かった。苦痛はきっかけを作る鍵でしかない。こじ開けた隙から、強引に滑り込もうとする狂気を、陸井は感じた。
 もちろん、時人達とて、世界の脅威には十分備えてきたつもりだ。全技能防御も、蟲達の献身もある。
 だが、それでもなお、骸の海の圧は次元が違っていた。身体はもちろん、精神すらもバラバラに砕け散る感覚が、時人達を容赦なく襲う。
 通常の生物の生存など許さぬ世界。前は後ろ、横は上。未来は閉ざされ、過去が嘲り……。
 自らの立脚点を見失い、たまらず時人がよろけ、過去の大波に呑まれたその時。
 時人達に味方したのは、一体何であっただろうか? 過去に抗う事をやめぬ猟兵に、奇跡が微笑んだとでもいうのだろうか。
「…………」
 イティハーサに従う神鷹が、さえずった。主に警告するように。
 帝の脅威となるもの、その正体。過去の奔流を振り払い現れた時人達は、真の姿と全盛の能力者としての力を取り戻していた。
 陸井もまた、成長した大人の全盛期の能力者としての姿と力を、解放していた。
 それだけではない。今までの経験の全てが、陸井達を支えてくれる。
 敵として立ちはだかるのが過去ならば、その背を押すのもまた過去!
 これまでの重圧がウソのように、身が軽い。力に満ちた今の陸井達ならば、イティハーサとも戦える!
「こっちの番だな、時人!」
「この時を待っていた!」
 応えた時人の心身に、いっそう力が充溢する。
「団是にかけて!」
 すかさず起動したユーベルコードが、時人の存在を、より強靭に変えた。
 元々、真の姿の解放を行うこの力だ。現在の、真の姿を得た状態で行使した事により、更に効力は増大していた。
「『あれ』からも研鑽を重ねた能力者にして、この地獄に自ら立つ猟兵として俺達が負うのは、今危機にある全ての世界の全ての人達!」
 時人の決意が、未来を照らすその力が、骸の海をも竦ませる。
 真の姿を更に強化するユーベルコード同士が、共振し合っている。陸井は相棒とともに、能力者として、そして猟兵として、全ての力を以て、誓いを叫ぶ。
「護るべきを護り」
「力なき者の盾となる!」
 ぴたり、と骸の海が蠢動が停滞した。
 いや、時人達の決意が盾となり、狂気を押し返しているのだ。
 時人は、周囲の景色を見渡す。大地と呼ぶべきものはない。空は自由の象徴ではなく、虚空に過ぎない。
「こんな世界を、こんな運命を望んだはずもないサンサーラの無念をも晴らす為にも、絶対に打ち砕く!」
 陸井とともに、幻朧帝へと挑みかかる時人。
 そこに押し寄せるのは、冷気。神鷹の羽ばたきから生まれた、八寒地獄の猛威だ。
 イティハーサがどのような世界を作り出そうとも、そのどこにも生命の居場所はない。だから時人達はそれを否定する。全身全霊を以て!
「汝らも過去という名の塵となれ」
 イティハーサ・サンサーラの威光が、陸井に向けられる。
 世界が、燃えた。大焦熱地獄が、陸井の周囲に顕現する。まるで小世界が生み出されたように。
 罪人を罰する儀式場。燃え盛る焔は矢の形を得て、陸井に牙を剥いた。
 圧倒的な物量、狩りと呼ぶにはあまりに過酷、天罰というにはあまりに苛烈。
 だが、どれだけ敵が強大だろうと、陸井の心をくじく事は敵わなかった。
 ここまでも諦めずに戦い続けてきた陸井達のこの拳、そして世界を護る誓いは、必ず敵に届くと、そう信じているからだ。
 全てを護るという誓いは、陸井の姿をより一層堅固に、強靭なものへと導いた。限界などないように。
 冷気と熱気。時人達をそれぞれに襲っていた地獄は、ほかならぬ時人達の決意によって、跳ねのけられた。
 冷気のヴェールを、熱気のオーラを破り、陸井達が、再びイティハーサの前に姿を現す。
 時人の姿は白く凍てつき、陸井の姿は黒く焦げ付いてはいたけれど、『護る』という意志には一片の曇りもない。
「これだけの絶望を浴びて、なお屈せぬとは」
 イティハーサが、陸井達に向けたまなざしは、理解不能の色に揺らいでいた。
 猟兵が、帝と王の合一に、抗う事などできようはずもないのに。
 だが、ここに陸井達が健在な事実こそが、イティハーサを否定している。
 そして陸井は、時人と視線を交わし、頷いた。今こそ決着の時だ。
「俺達の真の姿を引き出したのが貴様の敗因だ! 散れ!」
「俺達の全力を味わって……此処で眠れ」
「「幻朧帝!!」」
 時人と陸井の決意をこめた叫びが、拳が、偽りの創世神へと突き刺さる。
 2人の力が、幻朧帝の全てを打ち砕いた。

 そして舞い散る光の粒の中、2人は聞いた。サンサーラの声を。
 自らの解放への喜びと、この場に集った猟兵全てへの感謝を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月25日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト