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帝都櫻大戰⑭〜商店街で買ってきて

作者：聖山　葵

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「サクラミラージュの世界で大きな戦いが起きてるのはもう皆さんご存じだと思いますが――」
　そう前置きするということはこれからフェリクス・フォルクエイン（人間の天馬聖騎士・f00171）が話すのもそれに関連したものなのだろう。
「カクリヨファンタズムには、遥か昔に幻朧桜が骸の海を通じて漂着しているのだそうです」
　この桜の下では「『諸悪の根源』の滅殺を可能にする儀式」を執り行うことができるらしいのだが、正確な内容と手順は東方親分『山本五郎左衛門』だけが知っているのだとか。
「当然、敵からすると放置してはおけない訳で……この儀式の力を危惧した幻朧帝によって、妖怪親分滅殺の為にエンシェント・レヰス『イザナミ』が幽世に送り込まれてくるらしいんですよ」
　余程儀式を行って欲しくないと見えるが、カクリヨファンタズムにおける幻朧桜の群生地「幻朧桜の丘」に、東方親分『山本五郎左衛門』はもう既に巨大なお花見の宴席をしつらえているのだそう。
「なんでもこれは東方親分『山本五郎左衛門』だけが知る『諸悪の根源の滅殺を可能にする儀式』だそうで、強力なユーベルコードの使い手が宴席に集まれば集まるほど儀式は力を増すらしんいです」
　厳粛な呪術祭儀から明らかな酒盛りまで沢山の手順があるようだが、どれも大事な儀式であることに変わりはない。
「皆さんに参加していただくのもこの儀式の一つとなります」
　夕暮れの商店街、夕飯の総菜などを売っているそこへ足を運び買い食いしたり宴席で食べる物を購入して山本親分の元へ戻り、購入して来た物と宴席にある物を飲み食いする。
「宴用の料理を買い足してくるだけのただの宴席のような気もしますが、これが儀式なんです」
　買って来たばかりのアツアツの揚げ物を頬張りながら夕暮れの花見と言うのも乙なモノかもしれない。
「今回は荒事も一切ありませんので、声をお掛けいただければ僕たちも顔を出しますが」
　フェリクスたちを刺そうかどうかも含めて君たちの自由だ。

第1章 日常 『夕暮れの商店街』

POW   :    お肉屋さんで揚げたてのコロッケを買う SPD   :    パン屋さんで値引きされたパンを購入して食べる WIZ   :    惣菜屋さんで量り売りのお惣菜を買う 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「わ、色々ある」
　肉屋のガラス戸の向こうはオレンジ色に染まっていた。揚げ物の並ぶガラスケースを覗き込んで栗花落・澪（泡沫の花・f03165）は歓声をあげた。真っ先にコロッケに目が留まったのは、澪がコロッケを好むからで、横にずれる視線はクリームコロッケの所でまた止まる。
「これください。あ、中に色々入ってるアレンジ系もあるんだ。これと……これ、それから」
　いくつかの揚げ物を示してゆけば、はいはいと頷いた肉屋のおばさんが紙の袋に湯気の立つ揚げたてのものを入れてゆく。そうして清算を終えて澪はお肉屋さんを後にし、更にお総菜屋さんも梯子。
「色々買ったね。春巻きも美味しいだろうし……あ、あとはサラダ系も欲しいかな」
　買い忘れに気づいたように声をあげて足を止めれば、不満そうに視線を向けるのは買い物の途中で召喚した金蓮花の精霊だ。
「ごめんって、ハレンも好きなもの好きなだけ食べていいから。拗ねないでよもぉー」
　荷物持ちさせられているのが不満なのか、ここからさらに澪が追加で買うつもりだと判明したからか。苦笑しつつ澪は金蓮花の精霊ハレンを宥め。
「皆で食べるなら好き嫌いがある事も考えて、葉物とそうじゃないもの……二種類ずつくらいあれば充分かな」
　何軒目かの総菜屋さんで量り売りのパックに詰めたのは先の言の通りサラダだった。
「ささ、どうぞご自由な席にだにゃ」
　そうして満足行くまで買い物をしてたどり着いた宴席には東方親分『山本五郎左衛門』が待っていて。
「あろがとう。フェリクスさんも良かったらご一緒にどうぞ」
　席を勧められた澪は腰を下ろしつつフェリクスを誘い。
「そうですか？　ではお言葉に甘えて」
「比較的僕の好きに偏っちゃったけど……」
　近くに座ったフェリクスに購入してきた揚げ物や総菜を広げて見せると良かったら食べてねと促し。
「ハレンもね」
　金蓮花の精霊にも勧めたことで宴は始まる。
「いただきます、はむ」
　さくりと齧るとまだ温かな中身が口の中に出てきて澪の顔は自然と綻ぶ。
（今は戦争中で、これも大事な儀式の一環）
　それは澪も理解はしていることだ。はらりはらり落ちてくる花弁すらオレンジに染まる景色の中、金蓮花の精霊ハレンも何か齧ったのかざくりと音がして。
（わかってはいても……桜ってやっぱり綺麗で、儚くて、なんか心が休まる気がするよね）
　少しだけ熱のこもった息をほうと澪は吐き出し、もう一口クリームコロッケを齧るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「山本親分様、この度はお招き頂き有難う御座いますわ」
　転送されて儀式の会場へとたどり着いた艶守・娃羽（豊饒の使徒・娃・f22781）がまずしたのは、東方親分『山本五郎左衛門さんもとごろうざえもん』への挨拶だった。
「いやいや先日は儂の方こそ命拾いさせて貰ったにゃあ。それにしても団体さんだにゃあ」
　総勢九名、【豊饒の使徒】の面々を山本五郎左衛門が出迎えることとなったのは、買い出しの出発前に娃羽が挨拶することを望んだからだが。
「サクラミラージュで戦争が起きたと思ったら、故郷が襲われてますの！？」
　と説明を聞いた時に驚いた絢潟・瑶暖（豊饒の使徒・瑶・f36018）もその一人。
「大変な状況は変わらないけど、前線での交戦じゃないんだねぇ？」
「封印では無くて滅殺の儀式なのね？　『封じている桜に力を注いで滅ぼせる状態まで弱める』っていうことなのかしら？」
　物珍しそうに甘露島・てこの（豊饒の使徒・甘・f24503）が幻朧桜の咲き誇る儀式場を見回す中、華表・愛彩（豊饒の使徒・華・f39249）もまた幻朧桜や敷物などに視線を落として何やら考え込み。
「この時期にお花見が出来るのも凄いでぇす」
　幻朧桜を見上げて立ち尽くすリュニエ・グラトネリーア（豊饒の使徒・饗・f36929）の頭にハラハラ降りてきた花びらが載る。秋だというのにこの景色はまさに幻朧桜が群生しているからにほかならず。
「買い出しにまで行って貰って申し訳ないにゃあ」
「いえ、こういう形で協力出来るのは有難いです」
　恐縮する山本五郎左衛門へ頭を振るのは、鞠丘・月麻（豊饒の使徒・月・f13599）。
「宴の形式で行う儀式は多いですが、買い出しまで含まれるのは珍しゅう御座いますね」
　とも豊雛院・叶葉（豊饒の使徒・叶・f05905）はしつつ、その山本五郎左衛門へと声をかけ。
「儀式であれば、避けた方が良い品等も御座いましょう」
　買ってきてはダメなものはないかという旨の質問をすれば、特にそう言った品はないという。
「他に気にかけておくことはありませんかぁ？」
「時間くらいかにゃあ？」
　一応夕暮れと言うのが儀式の条件のひとつであるようで、遅くなりすぎて日没を過ぎてしまってはダメらしい。確認する夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）に山本五郎左衛門は答え。
「では、のんびりしすぎもよろしくないかと。買い出しからの宴席でしたら、人数が多い方が良いですねぇ。折角ですし、皆で参りしょう」
「ん、了解なんだよ」
　るこるが促すと鞠丘・麻陽（豊饒の使徒・陽・f13598）がこれに応じて。
「それでは、行って参りますわね」
　娃羽は山本五郎左衛門に頭を下げ他の【豊饒の使徒】の面々へ続いた。
「この後の買い物と宴会が故郷の為になると言うのなら……私も何とか出来ることをしてみますの」
「そこまで気負う必要もないような気もするけど、買い出しが儀式っていうのも凄いわね」
　ぞろぞろと幻朧桜の群生地を離れ一行の進む先に見えるのは、夕焼けに染まった商店街。近づくにつれておいしそうな匂いが漂って来るのは夕飯の買い物に来るお客の為に様々な商品をそれぞれのお店が用意しているからだろう。軒先を借りるように屋台を出しているところもあり、そう言ったお店は屋外にあることもあって匂いがひときわ強く。
「色々あるね。折角だし、楽しむんだよ」
「ですね。折角ですし、楽しむのです」
　目で楽しみ、鼻で楽しむ。何を購入してくるかも自由なのだから、儀式を愉しむ催しだとするのならある意味この買い物もまた醍醐味の一つであるのかもしれない。
「買い出しに於いては、洋風の食物は他の皆様の方が詳しゅう御座いましょう」
　と一歩引いて叶葉は最初の内は仲間たちがいくつかのお店で料理を購入するのを眺めていて。
「野外の宴会でしたら、サンドイッチ等も欲しいですね」
　そう言って月麻はパン屋へ入ってゆく。焼き立てのパンの香りが漂う店内でトングととレイを持ちやがて足を止めたのは店内の一角。
「サンドイッチはこの棚の様ですけれど……あちらの食パンやコッペパン等を買っておいて、他で購入した揚げ物を挟んで食べたりしても良さそうです」
　店内を往復してトレイを月麻が山盛りにしていったのは、言うまでもない。
「あと、きなこのかかった揚げコッペは外せないです」
「お、お買い上げありがとうございます」
　追加でパンを盛る姿を見るとレジの店員が若干顔を引きつらせ。
「お花見用の揚げ物なら、やっぱりお肉でぇす」
「お花見なら、おむすびとかも有った方が良いかな、だよ？」
　リュニエがお肉屋さんへ突撃してゆく一方で首を傾げた麻陽は周囲を見回すがおにぎり専門店は見つけられなかったらしい。比較的最近出てきた気がするしと仕方なく他のお店を探せばお弁当屋さんが視界の端にあって。
「宴会でしたら、飲物も足りなくなりそうですわ。ソフトドリンクを何種類かと、一応成人も混ざっておりますから度数の低いアルコール類も少し用意しておきますわね」
　思い思いに仲間たちが買い物を始めている中、娃羽は断りを入れてから酒屋へと入ってゆく。店内にはずらりと並ぶ酒瓶の他にもおつまみやお酒を割るためのミネラルウォーターなどが陳列されていいて、勿論ソフトドリンクの並ぶ一角もあり。
（妖怪さん達用に、普通の日本酒も用意しておいた方が良さそうかしら？　少なくとも、山本親分様は呑まれるでしょうし）
　順に見ていた時だった。
「いらっしゃい。何をお求めだね？」
「宴会をするので飲み物を購入に参りましたの」
　背中にかかった店主の声に娃羽は振り返り、いくらかの事情を説明する。振り返る際に若干窮屈そうに見えたのは娃羽の発育が良いからであろうか。
「……有るかはわかりませんが」
　とした上でまたたび酒等が置いてあるかなどを尋ねると、そこは流石この世界の商店街にある酒屋と言うべきか、在庫があるそうで娃羽は結構な量のお酒を含む飲み物を購入し。
「では収納しておきますねぇ」
　購入した品々を運ぶ役を担当するるこるは店の前に積まれたモノを浮遊する6基の宝玉FTSを用い亜空間倉庫へ収納してゆく。酒屋の店主はぽかんと口を開けその光景を眺めていたが、【豊饒の使徒】の面々のお買い物はまだ終わらない。
「お花見なら、スイーツ類も欲しいよねぇ。一般的な桜の季節じゃないから、『桜スイーツ』とかは無さそうだけど、お団子や桜餅、羊羹とかの和菓子系なら、結構手に入りそうかなぁ」
　商店街に立ち並ぶ店の中から和菓子屋さんを見つけたてこのは足を止めると行って来るねぇとそのお店の中へ消え。
「シベリアとかどら焼き、たい焼きも美味しいよねぇ。あそこならたい焼きは焼き立てが手に入りそうかな？」
　大量の紙袋を抱えて出てきたかと思えば、視線は少し先にあったたい焼き屋の屋台へ既に向いていて。
「これ、もらえるかしら？　それとこれも、これも」
　愛彩が向かったのは鮮魚店。漁師のまかない飯と書かれたコーナーに並んでいた総菜系、主に海鮮系のフライを購入し。
「魚介のクリーム系のコロッケもあったけど」
「天麩羅や焼き魚等色々御座いますね。妖怪の皆様に呑まれる方が多いのであれば、かき揚げ等を多めにしましょうか」
　流石に普通のコロッケはなく、リュニエが入っていったお肉屋さんにも寄ろうと思う一方で叶葉も同じ鮮魚店で総菜を購入し始めており。
「はぁい、これ全部ですねぇ」
　荷物持ちのるこるは大忙しである。
「おーい、揚げ物追加できるかぁ？」
　結構な量の総菜が売れて補充の必要に駆られたお店の方もまた。
「あちらのようですわね」
　そうして食材や食べ物を売る店が賑わっている中、一人別方向へと進むのは、瑶暖だった。
「お花見の買い出しでしたら、食物や飲物以外に、ごみ袋や紙食器、割り箸とかの用意も必要ですの」
　買い出しで増えた飲食物の分まで用意されているかわからず、余っても持ち帰れば無駄にならないという判断からであって。
「私もいっしょに行ってもいい？」
　そう申し出たのは、麻陽。　
「お茶漬け海苔が欲しかったんだよ」
「それなら乾物屋や鮮魚店でも置いているのではありませんの？」
「そうかもしれないんだよ、だけど」
　皆が購入した荷物を運ぶのはるこるだ。
「確かにそうですわね」
　複数人数で向かうことになるなら、大差はなく。こうして商店街をあちこち回った【豊饒の使徒】の一行は宴会用の品々を購入して幻朧桜の群生地へ戻ってくることとなる。
「買い出しを終えて帰りましたし、後は宴会ですねぇ」
「ええ、宴に御座いますね」
「宴会と儀式ですの」
　荷物を取り出す準備をするるこるの言に幾人かが応じ、揃って祈りを捧げ。
「「『肉体若年固定』『超発育適応体質』『超増量適応体質』『無限近似の胃袋』。全ては女神より賜りし『豊饒の使徒』の性質の顕現なり」」
　儀式に臨む態勢を整えたのちに、一行は初めて料理へ手をつけることとなる。
「宴でぇす」
　ずらっと並ぶ食べ物を前にリュニエが嬉しそうに声をあげる。目の前に置かれた唐揚げはお肉はメインでぇすからとお肉屋さんをはしごしてリュニエ自身が確保したものだ。そんな唐揚げに混じってフライドチキンも並んでいるのはコンビニに置かれているホットスナックに近い物を求めた結果なのだろう。
「凄い食べっぷりだにゃあ」
　ほぼ幾らでも食べられるようになった【豊饒の使徒】の面々の手が止まることは、あまりない。
「羽目を外し過ぎずに、ゆるりと楽しみましょうや」
　と叶葉はある程度の自重はしていたし。
「折角ですから何かお話しましょうですの」
　瑶暖を始め他の宴の参加者に話しかける者も居たので、全員がただ延々食べているという訳ではなく。
「元々の体型も体型だし、結構みんな揃って目立ちそうかな？」
　いくらか料理を口に運んで嚥下したところで愛彩が周囲を見回せば、確かにいくつも視線を感じて。
「この人数で大食いしてたら、それ自体がショーみたいに出来るかもしれないんだよ」
　と言う麻陽の言葉通りであったというべきか。
「皆で沢山食べて楽しみましょぉ」
　上機嫌で近くの参加者にリュニエは唐揚げの入った容器を勧め。
「綺麗ですねぇ」
　成人したてで不慣れな分、お酒の注がれた器は軽く口をつけるに留めたるこるは夕日に染まる幻朧桜を眺めながら丸い形の揚げ物へ箸を伸ばす。
「そうですね、あちらの揚げコッペはおススメなのです」
　歓談の中、月麻は自身の購入して来たパンを示し。
「このような時間も良いものですわね」
　ゆっくりと桜を愛でながら娃羽は透明な液体の入った小さな器を傾ける。視界の中には幻朧桜だぇではなく思い思いに参加者との交流をはかり料理を楽しむ【豊饒の使徒】の面々が居て、儀式でもある宴はもう少し続きそうでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「おっ買い物♪おっ買い物♪」
　夕暮れの商店街に笹乃葉・きなこ（キマイラの戦巫女・f03265）の声と足が弾む。もし誰かに聞かれたなら、うんと頷いた上でこう言っただろう。
「これも儀式だからしかたねーんだ♪」
　実際、商店街での買い物が儀式に盛り込まれているのだから不可避であり、やむを得ないということは紛れもない事実だ。
「そんじゃぁ、さっそく現実の範囲内で持てる分持っていこうかなぁー？」
　何をどの店で買うか。きなこはおいしそうな匂いを漂わせてくるいくつものお店を見回し。
「……あれも美味しそうだけど」
　同じ頃、キメリア・モルテスティア（危険地帯のシルバートラベラー・f44531）は屋台に積まれた商品を眺めていた。
「やっぱりお肉なら焼鳥ね。バリエーションも豊かだし、塩ならさっぱりタレならこってりで好きな楽しみ方ができるのよね」
　いくつもの店を見て回り、どんなものを食べたいか考えて出た結論がそれらしい。直近で炭火に焼かれるいい匂いがしていたから、という訳でもないとは思われる。
「メンチカツもいいねー」
　とお肉屋さんの方で揚げたてのソレを眺めた時ぽつりと零してもいたのだ。焼鳥は最初に購入するモノに過ぎず。
（野菜はやっぱり生春巻きで食べるのがが美味しいね）
　試食のコーナーで一口サイズの生春巻きをぱくり。
（飲み物も買って良いかな。お酒飲みたいなー）
　あちらこちらと寄るたびに荷物は増えて。
「チリソースが癖になっちゃうのよね」
　荷物だけでなく購入したモノのいくつかはこの時点でキメリアのお腹に収まったようでもあった、もっとも。
「あ、このコロッケうめぇ」
　きなこもきなこでコロッケ買って片手かじりながら買い物をしていたので、よくある光景なのかもしれない。
「大体どれくらい買えばいいかなぁ？　……えっと、道中のオラがつまみ食いする分も考えて7個かなぁ？」
　宴会の時になくなったら困るしなとつまみ食い分は一つと己に制限し精肉店で注文を終えると、商品を受け取ってお店の外へ。
「あとはー、酒一升瓶とかー用意しておくべかぁ？　大将とかどんな銘柄呑むんだろう？」
　ふらり歩く先で酒屋を目にすればガラス越しに店内を見つめてうーんと唸って。
「あとは……フライ系をもっと買ってこ。同じもの大量だとつまんねーし」
　酒を買って外に出ると、コロッケの包みを見てから視界に入った総菜屋へ近寄って追加の注文。
「奇術を見せてやるべ」
　荷物が増えてもユーベルコードがあればへっちゃらで、持ち切れない分を不可視の生体エネルギーで掴んで花見の会場へ向かおうとすれば。
「サラダ買うの忘れるところだったべ」
　あっと声をあげたきなこは来た道を引き返す。
「ただいま」
「お帰りなすってにゃ」
　その一方できなこより一足早くキメリアは儀式の行われる幻朧桜の群生地に戻ってきていた。
「色々買っちゃった！　ちょっと買いすぎちゃったから少し山本さんにお裾分けするよ」
「ありがとうにゃ」
　そうしておすそ分けに礼を言われつつ開いている場所に腰を下ろせば、オレンジに染まった幻朧桜が秋の風に騒めいた。
「カクリヨファンタズムの桜は綺麗だね。何だか浄化される気分」
　危険地帯ばっかじゃなくてたまにはこういうのもいいかもねと胸中で呟きながら、買ってきた品を広げ、酒を注いだガラスの器が夕日に輝く。
「それと、儀式の準備がてら良い気分転換ができた気がするよ」
　商店街での買い物も思い出し、少しだけ口元を綻ばせたキメリアが器に口を付けた。夕日は宴を見守りながらゆっくりと沈んでゆき。猟兵らが参加し、楽しんだことでこの儀式も完成を見たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年09月20日