世紀末猟兵「HIBEDU」伝!!!
「我らの国を作る為!さあ立ち上がるのだ、同胞たちよ!」
仮面だらけの怪人が、気炎燃やして嘯けば。
「オオォォーッ!」
「「「ヒャッハー
!!」」」
爆弾頭の怪人と、筋肉アルパカ集団が、何やら妙なテンションで答えた。
ソレに対し満足げに頷いた汽車怪人は……そばにある珍妙なメカを叩き、告げる。
「苦心して敷いた超技術の【陣】と、この特殊メカにより、我らは“キ”を操る事に成功した!」
その苦労やるや、と割と本当にきつかったらしく、皆が皆して男泣きしている。
暑苦しい。
「――これで貧弱な者等をマッスル&ヒャッハー化し、気に入らぬ者共を斬り裂き、消し飛ばせる!爆破も出来る!救世主にもなれる!……我らの国を作れるのだぁ!!」
「「「「「ヒャッハッハー
!!」」」」」
絵面だけ見れば間の抜けた様子でも、かなり恐ろしい計画を立てていたらしい。
その計画とは……!
「さあ、全てのキマイラ、全てのバーチャルキャラクター、全てのヒーローマスクに、全てのテレビウムよ刮目せよ――これが【HIDEBU】計画だぁ!!」
……何かどこかで聞いたことありませんソレ?
「バシッと突いて、女子供だろうが忽ち『ヒデブ』させてやる。奴らの驚く顔が目に浮かぶようだ! ――ってあら?ちょっと待てメカが、まてなんか変……」
●
「……と言う訳でキマイラフューチャーで事件だよ。傍目から見れば阿呆臭いけれど、洒落にはならない」
若干微妙な顔をしながら、ホロデバイスより疑似ARで敵の姿を映し出しつつ、フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)は告げた。
確かに名前だけならばお馬鹿な計画と言っても全く過言ではあるまい。
……が、しかし。
「何せ“キ”を纏ったまま、良く分からない武術で突かれたら、内側から爆散するんだからね」
誰かが唾をのむ音がした。
即ち放置すると大量虐殺をゆるす事となってしまう。
また殴ったり突くだけじゃなく……。
「手刀や指でバラバラに斬り裂いたり、また特殊な光塊で細胞諸共消滅させる事すら可能だとか」
その残虐性に『猟兵でも大丈夫なのか』と、不安の声すら上がり始めた。
……その不安を解消する要素を、フロッシュは三つ告げる。
「でも今がチャンスだよ。理由はまず機械が故障したという事。これによりアタシ達も『同じことが限定的に可能』となるみたい」
つまり驚異の殺人拳を、自分達もその場限りで行使できるらしい。
ユーベルコードや技能を活かせば、喰らい付いて行けるだろう。
「二つ目はアタシ達猟兵の特性だね。真の姿があるし、生命体の埒外だから突き切れないようで即死は絶対に無い。……けど大ダメージは覚悟して」
つまり受けたら戦闘不能は免れない、という事か。
ならば普通に防御するのは、少し避けた方が良いかもしれない。
「三つめはそもそも奴等は元々そこまで強くない。“キ”のお陰で強くなってるだけだから、戦闘タイプの猟兵なら軽く翻弄できるよ」
――ただし汽車怪人はそこそこ強いから、それだけは念頭に置いて。
とフロッシュは真剣な顔で念を押す。
そして幾つかの画像をスライドさせた後で、〆の言葉を口にする。
「ヒデブとかソレは正直よく分からないけど――残虐非道を行うならコッチも容赦なく畳みかけて、ブッ潰せ。……それじゃあ健闘を祈るよ」
青空
世紀末救世主伝説開幕!……という冗談はさて置き。
新たなシナリオ開幕です!
内容は集団戦・ボス戦・強ボス戦の流れ。
戦って、戦って、戦いまくり、相手を完全にノックアウトさせちゃいましょう!
またこのシナリオは特殊で、皆さんの戦闘スタイルに+あの某暗殺拳や殺人拳の要素が加わってきます。
なので組み分けとして、
〇必須項目。
【神】――北の拳を使いたい方(爆裂)。
【聖】――南の拳を使いたい方(斬撃)。
【皇】――元の拳を使いたい方(消滅)。
……をお願いします。
尚集団戦は相手のみ関わりますが、ボス・強ボス戦は皆さんも関わって来ます。
受けたい方のみ【▼】をご記載くださいませ。
(見た目が酷い事になる&変な絶叫アリなので要注意。ですがそれのみです、勿論死亡なんかしません――次の章やラスト、最短なら次の瞬間にケロッと復活します)
……悪党達に墓標は要りません、さあ遠慮なく倒しちゃいましょう!
第1章 集団戦
『量産怪人アルパカマッスルブラザーズ』
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POW : ポージング
自身の【逞しい肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : ポージング
自身の【躍動する肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : ポージング
自身の【洗練された肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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ネーヤ・ティオモ
【神】
はぁ…はぁ……なんでわたし…みすぼらしい服装で強制労働みたいなことをしてるんでしょう…?
子供はそういう偽装をすればばれにくいと…どなたかが言っておられたようですが…
そんなに体は丈夫な方じゃないので流石にこれは堪えます…
と、そこに見覚えのある人影が…あなたは謎の超聖人さん…!
ですが…なんかいつもと雰囲気が違うような…白いロングヘアーになってますね
あの、構えもいつもと違う感じですし…
「流れに逆らえば飲み込まれる。故にここは激流に身をまかせ同化する…」
と、仰っしゃりながら堂々と怪人集団の中へ…!
だ、大丈夫なのでしょうか…!?
〇
「オラ、とっとと働けぇ!!」
「もっと早く動きやがれっ!」
「トロクサしてんなよぉ!」
……可愛らしい頭部と、物凄いマッスルからは想像もつかない――様でいて何故だかしっくりくる荒い言葉をぶつけながら。
何処で捕えて来たのか集められたキマイラやバーチャルキャラクター達を従え、重苦しい滑車を引かせていた。
――何かが乗っているのだが、何かは分からない。とにかく重い物と言うのは分かる。
これもまた彼らの計画であり、見たまま『マッスル化増進計画』。
要するに無理やりトレーニングさせて、老若男女問わずムキムキにしてしまおう、という事なのだろう。地味に恐ろしい計画である。
そしてついて行けなかったモノは当然……。
「はぁ……はぁ……!」
そんな中。
……何故こんな事をしているのでしょう? と紛れた一人の猟兵――ネーヤ・ティオモ(ころんだ先の杖・f13967)はボロ布仕立てのような服装で滑車を引きつつ、思考する。
曰く【このような偽装をすれば子供ならバレにくい】という事で、ならばと着替えて潜入したネーヤ。
人質が居るため皆迂闊に動けず……結果、そのまま労働させられているらしい。
(さ、流石に応えます……!)
元より直接戦闘には向かず、体そのものも丈夫じゃない彼女だ。
隙を窺っても何処で踏み切るべきか、見定め損ねていた。
――更に不幸は重なるもので。
「おらそこ! サボってんじゃねえぞぉ!」
「ひゃうっ!?」
思考作業に傾いた所為で疎かになった所を、アルパカ怪人の一人に目を付けられてしまい、彼女の元へずんずん歩いてくる。
放つ圧力たるや、筋肉の塊が向かって来るようだ。いや実際そうなのだが。
それでも己で見るのと、伝え聞くのとでは、感じる暑苦しさが圧倒的に違う。
「キを手に入れた俺達の前で、堂々サボりとは良い度胸だ!」
そう言って、そのごつごつした拳が振り上げられた。
他のキマイラ達は庇おうともせず――というか唐突過ぎて動けておらず、ただネーヤとマッスルを見やるのみ。
「そういやまだ試してなかったんだ。さあ……栄えある第一号となってもらおうか!」
とうとうネーヤ目掛け、その丸太の様な大腕が振り下ろされた。
「――命とは投げ捨てるもの……!」
「へ?」
正にその時だった。
いやに物騒な事を言いながら、ブスリと奇妙な音がし、アルパカ怪人の動きが止まったのだ。
そして、次の瞬間。
「ヘニャトッ!」
妙な声を上げながら絞った雑巾みたいになり、次いで内側から大爆発を起こす。
オブリビオン故にか、散った亡骸も瞬く間に消えてゆき、後には静寂が走る。
周りの者達は呆気に取られているが、しかし、ネーヤだけは直感していた。
見覚えのある人影に、思わず希望の笑みがこぼれる。
来てくれたのだ――。
「あなたは、謎の超聖人さん……!」
――名乗りそのまま、【謎の超聖人】が――。
来てくれた……のだが。
(あ、アレ? 何時もと雰囲気が違うような……あと、こんな白いロングヘアーでしたっけ……?)
前見た時と少し、と言うか明らかに違うその超聖人は、宛ら『こんな病人がいて堪るか』とツッコミが入りそうな雰囲気を湛えていた。
何故だかは分からない。だがそんな雰囲気を持っているのだ。
「な、なんだあいつは!?」
「構わねえやっちまえ!!」
「「「ヒャッハアァァァァ!! 新鮮なマッスルだあぁぁ
!!!」」」
されどオブリビオン達はそれを知らない。違和感など持たず突撃して来た。
棍棒を振り回すようにポーズを取り、銃を構えるかの様にポーズを取り、ちょくちょく肉体を誇示しながら突っ込んでくるアルパカ怪人達。
「…………」
正しく“毛玉と肉の津波”と言っても過言ではないそれに対し、超聖人は静かに構えを取る。
その構えまで何時もとは違い、“柔らかく美しい”とそんな語が良く似合っていた。
「流れに逆らえば、飲み込まれる。故に此処は身をまかせ同化する……!」
「ち、超聖人さん!?」
ネーヤの制止も空しく、再びそんな事を言いながら、恐れることなく津波の中へ突っ込んでいく。
そして何時の間にやら中央に陣取っていた彼が、静かに座り込み、特徴的なポーズからビームを放って見せる。
……一瞬の静寂。
「アァルパカン!」
「ケダマッ!」
「モモフーラ!」
それが嘘のように騒がしく、一匹目が爆発した。
それを合図にしたかの様に次から次へと爆散し、怪人達は骸の海へ還っていく。
無双級の実力を見せた彼はしかし、気負う事も無くその背中を一般人達に、そしてネーヤに見せていた。
「だ、大丈夫そう……ですね」
そのまま暴れ続ける彼は、途中でまた座り込んでからビームを放ったりしつつ、アルパカ軍団の肉の壁に亀裂を入れていた。
(これなら、人質の皆さんを逃がせる……!)
超聖人の活躍でネーヤもまた調子が戻って来たらしく、声をかけて猟兵だという事を示し、避難誘導し始める。
ネーヤの、そして何より超聖人の活躍により、舞台は完璧に整った。
此処から――反撃開始の狼煙が上がる。
大成功
🔵🔵🔵
空見・空白
【皇】
無辜の人々をマッスル化したり襲うだなんて、見過ごせません
…それはそれとして、爆破、斬撃。普段、弟が死ぬ原因ですが
消滅で死ぬのはなかなか覚えがございません。
後学の為、試させて頂きましょう
と、しゃべれない人形はそう思いつつ
UC【手】を発動
複数の【手】に纏った光で残像を刻みながら早業で
怪人達を光で包みこみ消滅させます
周囲へ被害を出さずに敵を後片もなく消せる……これは良い
【手】の怪力で怪人を掴み拘束、
今度はすこしずつ末端から消滅させ経過観察を…
は、いけません。私、甚振る趣味はございません
催眠術を使用し問いかけます
痛いですか? 助かりたいですか?
と、返答次第ですが、サっと消滅させて次へ移りましょう
「く、クソ……折角、マッスル化計画の為にかき集めた人質が!」
「こうなったら俺達のマッスルを見せつけつつ、『HIDEBU』させて行くしかないな!」
「異論はなし! とっとと捕まえてやるぜヒャッハー!!」
五回に一回ぐらいに多様な事を叫びつつ、アルパカ怪人達は少し慌てた様子で散らばった人質を追おうとしていた。
当然先まで引かせていた、謎の滑車を引っ張らせるつもりだろう。
脱落者から葬ろうとするのにも、以前変わりはあるまい。
――と。
「な、なんだテメェは!!」
そんな彼等の前へ一人の猟兵が進み出た。
「…………」
一言も話さないその女性は、180㎝メートルはあろう長身を持ち、変わらぬ圧力を放つアルパカとも堂々正面から張り合っている。
そんな彼女――ミレナリィドールの空見・空白(人形・f14889)は真っ直ぐに彼らを見やり、ただ一つの義憤を抱いていた。
その思いを筆に乗せ、アルパカたちへと突きつける。
『無辜の人々をマッスル化したり襲うなどと……そんな行い、見過ごせません』
「なんだと!?」
「勝手なこと言いやがって……俺達の崇高な理念が理解できねえようだな!」
「むしゃくしゃしてるんでな、ブッ殺してやるぜ!!」
超え高々に叫びつつ、ダブルバイセップスやサイドチェストなどを行いながら、空白へとアルパカ怪人達の群れが殺到していく。
対する彼女は静かに仁王立ちし、両腕を広げて掌を腰の高さで止めた。彼女もまた構えを取ったらしい。
(爆破に、斬撃は普段弟が死ぬ原因ともなっていますが、消滅は覚えが無いですね)
……傍らで何やら洒落にならない、そして初見ではまずフリーズするだろう事を考えつつ、“後学の為に溜めさせて頂きましょう”と光塊を生成する。
「ヒャッハー! 隙だらけだぜえぇ!!」
そして、思い切り胸を反らしたポージングで飛び込んで来たアルパカ怪人を睨み――。
「…………」
「ヤイアイアァァ!」
作り出した光の塊が、丸で持ち上げられるかのような起動を描いて吸い込まれていったではないか。
“キ”の籠った一撃はやはり強烈で、またもや奇妙な断末魔を最後に、瞬く間に消滅させていった。
「なんだ!? 何もねえのに……いや光はあったが何が起こった!?」
「ぺ、ペテン師だ! どうせ何かタネがあるんだ、ブッ叩けばぼろが出る!」
叫ぶアルパカ怪人達の言葉は、実のところ半分当たっていた。
そう、タネはあるのだ――見えざる邪神の怪力腕を呼び出す、ユーベルコード【手】というタネが。
だが半分は外れであり、コレはペテンでも何でもなく、彼女自身の力によるもの。ブッ叩こうがボロなど出る訳が無い。
「カワバーァ!」
「エノキ!」
「ヨリッモダサ!!」
オマケに複数本呼び出せるそれに、モヒカン相当のアルパカ怪人達では手も足も出る訳が無く、次から次へと光塊を叩き付けられては包み込まれ、消滅していく。
周囲へと何ら被害を出すことも無く、綺麗さっぱりなくなる様を見て、空白は気に入ったのか何処か満足げに頷いていた。
(これは良い……しかし、もう少しサンプルを……)
「ヒャイッ!?」
思うが早いか【手】を使って数体の怪人を捕縛、そのまま拘束し光塊を作り出す。
そのまま足の末端から消滅させようと――。
(――は…………いけません)
「アッチャッチャマー!」
そこで我に返り、普通に消し飛ばした空白。どうも拷問じみた方法で経過観察しようとしたらしいが……元々いたぶる趣味などない彼女だ。
何よりやり方が違うだけで、虐殺しようとしたアルパカ達と似たり寄ったりになってしまう――それでは意味が無い。
「た、助けてくれぇ!」
最後の一体を見やりつつ、空白は催眠術を使用し問いかけた。
『痛いですか?』
「当然だろぉ!?」
『助かりたいですか?』
「な……も、勿論だ!」
『では心を入れ替えますか?』
「当たり前だぜ!」
『それではマッスルの布教をやめてくださいね』
「えっ、なんで??」
『…………』
「ヤッパー!!」
どうあがいても変わらなそうだと、さっさと消滅させる。
自分の生死よりマッスルが大事なのは、ヒャッハーと言っていて尚逞しいというべきだろうか。
ともあれ。
ここら一体の怪人を始末した空白は、遠くに蠢く肉の波――アルパカ怪人達を見やった。
まだまだ数はいるのだ。すぐさま、次に移る必要がある。
「…………」
と……もう一度光の球を作り出し、彼女は駆け出していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
敷島・初瀬
テーレッテー(BGM)
「火炎放射器が無いこれでは消毒出来ないであります!」
みんな大好き火炎放射器が手元に無いので直接殴り合うであります。
【南】
南の無音拳でアルパカの背後に音もなく回り込み両手両足を手刀で切りつけ動きを封じ、指で相手の胸に7つの傷を一個ずつ打ち込んで見るであります。
止めは7つの星の脇のあの場所に目いっぱい“キ”を込めた一撃を撃ち込んで止めを刺そうと試みるであります、殺った後は火炎瓶で焼いて消毒を忘れないであります。
「何本目で死ぬかな~」
良い笑顔でサクサク行くであります。
(アドリブ、絡み大歓迎であります)
さて一方。
別箇所でもまたアルパカ怪人達が屯し、一般のキマイラフューチャー市民達を襲おうとしていた。
当然ながらマッスル化計画の、その第一歩の礎として組み込む為に、だ。
……されども、しかし。
今は何故だかその任務を放り出して、一目散に逃げている始末。
一体何があったというのだろうか。
「くそぉ! 一体何なんだ、何が起こったんだ!!」
「知るかっ!! とにかく逃げろ!」
「あんなの相手にしてられるか……武器を取りに行かねぇと!」
無駄に綺麗なフォームで筋肉を躍動させ、指をピッと揃えて叫び合いながらに遁走を続ける。
先に猟兵達から見えた軍団からしてみても……どうも、人数が少ない様に思えた。
つまり襲撃を受けたのだろう。
が、一体何が起こったのか。そして誰の仕業なのか。
「見えたぞ! 俺達の武器が」
ドドド……と、オノマトペでも付きそうな勢いで煙を上げるアルパカ一行。
猛進の甲斐あってか彼等にとっての武器が目と鼻の先に見えた様子。
それは剣、ではなく銃、でも無く爆弾――じゃあ勿論なく。
「これさえあれば百人マッスル!」
「新鮮なプロテインだぜぇ!」
「「「プロテイン、ヒャッハー
!!」」」
小瓶の様な物に入った、たんぱく質。呼んだ通りのプロテインであった。
今更飲んでどうするんだろうか……。
だがそれでもアルパカ怪人達にとっては恵みの雨にも等しく、意気揚々と小瓶を手に取った。
「見ていろ反逆者共!コレで微塵にして――ヤバッキケーン!」
「ヤ、ヤバッキ!?」
いきなり妙な叫び声を上げたアルパカ怪人に驚き、もう一体が振り向いた……刹那、横に線が走ったかと思うとコマ切れになって消えて行く。
あっと言う間の出来事であり、彼等は数秒何の反応も取れない。
「ちょっと待って何が起こってゴメンナサシァ!!」
「は? いや何で誤ってモウシワケゴジャラマ!」
ましてや対抗することも出来ず、次から次へと斬り裂かれていくではないか。
オマケに何かしらの音すらしない。
凪の内から斬撃が打ち込まれ、彼等を葬って行くのだ。
「ど、どうなってやがんだ!」
大振りでその丸太の様な腕を振り回し、ついでにポージングしながら辺りを見回せば――いた。
「今この手に、火炎放射は無いのであります」
ポニーテール上にまとめた黒髪をなびかせる、戦場傭兵・敷島初瀬(フリーの傭兵・f04289)の姿が。
「つまり消毒出来ないという事……これは素手で相手するしかないのであります!」
彼女もまた“キ”の力を活かし、アルパカ達を斬り裂く方向で戦っている様子。
その余裕綽綽な態度に、アルパカ怪人は劣勢も忘れていきり立った。
「なぁにが消毒だ、俺達は汚物じゃあない! 立派なマッスルなんだぜ!!」
「ふざけたこと抜かしやがった罰にクタバレやぁ!!」
上下に分かれてビシッとポーズを決めながら跳躍した彼らを見やり、初瀬はニヤリ縁で見せる。
そして次の瞬間には、全く音を立てずに通り過ぎ、声も無く斬り裂いた。
「「トテモヨイアジー!!」」
「ふっ……」
これぞ正しく暗殺術。無音の裂拳に違いない。
「て、てめぇこのや」
「さて仕上げと行くであります」
「なにぃ……ぎゃぱ!?」
とうとう動く間もなく、背後にスルリ回り込まれて両手足を斬り裂かれる。
「何本目で死ぬかな~?」
言うが早いか、とても良い笑顔で七回、どこかで見た事あるような星の並びを模して突きいれて行く。
痛みよりもその早業と、“キ”の力によりアルパカ怪人は全く動けない。
「コレでトドメであります!」
「や、ヤメロォ!? なんかそこは嫌な予感が
……!!」
そしてその脇――妙に、それも脂汗が出るほどに嫌な予感を発する個所へ、遠慮なく初瀬は突きを叩き込む。
ソレでとどめを刺されたアルパカの末路は勿論――。
「オダイジャネー!!」
一気に力が広がって、格子状に斬り裂かれ、断末魔を上げる最後となった。
「最後は勿論消毒であります!」
そして。
依然消えない骸に向けて火炎瓶を投げつけつつ、初瀬は向こうを見やる。
……まだまだ敵はいる様だ。
ならば遠慮せず、どんどん切って焼いて行った方が良いだろう。
そう確信し――再び音もなく消え、駆け出して行った。
大成功
🔵🔵🔵
夜神・静流
【神】
ジョインジョインシズルゥ
デデデデザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー
何故か素手で戦わねばならないような気がしますが問題ありません。剣が無ければ戦えぬような者を、当家では剣士とは呼びませんから。
夜神流剣術と癒しの力を元にした、苦痛を与えずに命を奪う有情の柔拳にてお相手しましょう。
使用技能はダッシュ・残像・忍び足・見切り・暗殺・先制攻撃・2回攻撃・グラップル・医術・優しさ・祈り。
素早く、そして静かに移動しながら次々に敵を突いていきます。
「我が拳は迅にして静。いざ参ります」
「夜神有情拳。せめて苦しまずに、静かにお眠りなさい」
哀れ、遠慮なく斬り裂かれたアルパカ怪人達であったが……それはまだ一部だ。
逃げているアルパカは彼等だけではない。
別方向へと逃れている者達も当然存在する。
そして運が良かったのか、未だ一人の猟兵とも出会ってはいなかった。
――しかもその手にはプロテインすらある。
一体どうやって生かすのか謎のままではあるものの、目に見えて士気が上がっているのは確かだった。
……強さも圧力もそんなに変わってはいないが、それはともかくとして。
「コレで奴らに一泡吹かせてやれるって寸法だ」
「ヒャハハ、よーっし俺が一番槍を務めるぜ!」
どこぞのヒーローにも似た、片腕をピーンと伸ばし片腕をグイッと曲げる、これまた筋肉の目立つマッスルポーズで返答しあうアルパカ怪人達。
「だが用心するに越したことは無いだろ?」
いいながら腕組みをするようにポーズを変え、そのままのけぞる一人の言葉を聞き、アルパカ怪人達はあくどい笑みを浮かべた。
「よーっし、ならばまずは人質だ! 近辺の奴等を残さず回収するぞ!」
「勿論だぜ兄弟! さあお楽しみタイムと洒落込もうかぁ……!」
そのまま声を聴き分けながら、気配のする方向へとドタバタ走り始めるアルパカ怪人達。
……と、正にその時だった。
“ジョインジョインシズルゥ”
なんかちょっと電子的な、何かを選んだような音が聞こえたのだ。
「なんだよ、誰かなんか言ったか?」
「俺は何も言ってねぇよ!」
「そりゃオレも……って、なんだぁ!?」
互いに聞き合いそれでも答えを出そうとした彼等だったものの……悩む暇も与えずに、一瞬光が現れる。
そこから更に出現したのは、一人の女性だった。
“ザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー”
「何故だか素手で戦わねばならない気がしますが……問題はありません」
またもや電子音と共に一歩踏み出し、それに合わせて斬り揃えられた黒髪が揺れる。――猟兵の一人、夜神静流(退魔剣士の末裔・f05903)は静かに面を上げ、アルパカ怪人達を見据えた。
どういう訳か、50秒たらずで決着が付きそうな気配がある。
全く覆らないという、確信が戦場に渦巻いている。
「剣が無ければ忽ち戦闘不能となる未熟者を、当家では剣士とは呼びませんから」
「何言ってやがるこの女ぁ
……!!」
「喋くってる間があると思うなよ? 捕えて滑車を引かせてやるぜぇ」
「そしてマッスルになるが良いわ!」
だが漂う空気を掴むことも出来ない内に、先へ進んで行く。
半ば自分に語り掛けている静流の言葉ではあったが、いきなり邪魔されたマッスルな怪人達にそんなことは関係ない。
それぞれ斧――の様な掌を振りかぶり。
また棍棒――の様な両腕を振り回して。
バイク――の如き迫力を持って突進してくる。
「我が拳は、迅にして静……いざ参ります――!」
静流もまたその一言を強く口にし、ダッシュした……と思えば既に残像を映し彼らの間を通り抜けている。
「え? あ、な……」
「どういうことだ!」
そんなアルパカ怪人達の困惑に、しかし静流は構う事なく。
「夜神の剣術と、癒しの力を合わせた、有情なる柔拳……」
淡々と呟きつつも、振り下ろしていた片方の手刀をゆっくりと引き戻す。
誰も居ない虚空目掛け、恰も鋭く突き刺していたかのような、そんな緩慢さと気迫を持って。
「せめて苦痛を知らぬまま、静かに息絶えなさい」
「な、なんだ体が……!」
グニリと関節が逆方向に曲がっていくが、彼等の顔に苦痛は無い。
そして事態の異常さをすべて受け止める前に――。
「コパナ!」
「セニョーォ!」
「チッチャ……!」
バカッ!! と体が爆ぜ飛び、真っ赤な花火と化して消えていく。
どうやらあの一瞬で、静流は“キ”を手に纏い、先にも告げた剣術と癒しの力を合わせて撃ち込んだ様子。
まるで病人に見えない病人が使いそうな、しかし何処か違う優しき拳を持って、戦場を制したのだ。
「――どうやらあと少しのようですね」
そして、ワラワラいた筈のアルパカ怪人達だったが、一時的とはいえ胸囲の力を使えるようになったからか。
その数は一気に、そして驚異的な速さで減っていた。
最早三分の一も居まい。
なればこそ容赦不要と……静流は再び構え、アルパカ集団を狙うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
テリブル・カトラリー
【神】
何がどうなってこうなったのかは分からないが…
大量虐殺等、到底見過ごせるものではない。
ブースターで自身を吹き飛ばし、怪人アルパカへ接近。
キなるものを纏ったドリル付きの戦争腕を怪力で振るい、
突き刺す。ドリルはまだ回転させない。
とりあえずは、キなるものがどういう力からみる必要がある。
とはいえ倒せなかったら困る。故にドリルだ。
ドリルを突き刺した状態で怪人が爆破するかどうか観察。
爆散すれば良し。しなくとも回転し、抉り倒す。
面妖な…しかし、使えるならば、使おう。
確認がとれ次第、
ダッシュで怪人達へ突っ込み、ドリルを回転させて集団を掻き分け、
キを纏ったもう片方の手で素早く(早業)軽く怪人達を殴りつけ爆破
浅杜守・虚露
【神】
【グラップル】【恫喝】【怪力】【覚悟】【気合】を使用。
アルパカの集団の前に立ち頭に被る笠を脱いでため息。
「なんともどこかで聞いたような輩が揃っとるのう。まぁ元気なんはええがのう…」
目をカッと見開きオーラを展開膨れ上がった筋肉で僧衣が弾け飛び上半身が露わになる。
「お前さんらに受けられるか?わしが全身全霊の拳を!?……天に滅っせい!!」
気合いと共にオーラの奔流と共に掌を突き出していく。
こんな感じでええんかの?
「セッポローン!!」
ズバーン、と爆発して散ってゆくアルパカ怪人の姿は、余りにも濃いからか既に見慣れた光景となり始めている。
またも遠慮なく、そして止むことなく爆裂が続く中。その中心に立っているのは、一人のウォーマシンだった。
「いったい、何がどうなってこうなったのか……」
3つドリルの付いた巨大な腕――この戦いに備えて換装した【戦争腕】をだらりと下げながら、テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は片手で頭を押さえる。
攻撃してくるかと思えば割とマッスルポーズだし。
突き刺せば爆発するし。
しかも何でか向こうは懲りずにずっと突進してくるしで――これでは確かに呟きたくなっても仕方なかろう。
本当に謎なのだから。
……とは言え大量虐殺など許してはならないと、見過ごせない悪事への憤りは以前健在。故に惑うことなどありはしない。
「良くもブラザーをやりやがったなぁ! こいつを食らいな!!」
いいながら両腕とも曲げ、しかし片方は上に、片方は下にする独特なポージングで迫りくるアルパカ怪人。
加えヒャッハー! と景気良く叫びながら、後ろからも微妙に違う決めポーズで続いてくる。
「フン……!」
対し、テリブルの行動は努めて冷静だ。
ブースターで恰も己を吹き飛ばしている様な速度を叩き出し、そのまま【戦争腕】の比類なき一撃を“キ”を持って叩きつける。
最初こそ面妖なこの力に戸惑い、試しつつ吹き飛ばして行っていた。
だが効果が保証された今、突き出す拳に迷いはない。
ズブリ――ドリルで穿たれたアルパカ怪人は一瞬ばかり硬直。
「ノイヤァ!!?」
そしてお決まりの様に爆発四散して、消えていく。
見届ける間もなく一発、もう一発とテリブルは重ね、残り少ない集団をカチ割ってみせる。
次にダッシュで後方に下がり固まっていた集団をドリルの猛回転でかき分けると、もう片方の手を目にも止まらぬ早業で振るう。
「ハァァッ
……!!」
「「「アブババババババ
!?」」」
マシンガンもかくやと殴りつけられたアルパカ怪人達は、半分ほどは断末魔も無く消えていき。
「デバァ!!」
「オデビー!」
「イカニジ!」
もう半分は奇妙な断末魔と共に消し潰された。
今ので集団の半数以上が骸の海へと帰った様子――最早、最後の一押しを待つばかり。
アルパカ達の暑苦しさも、王お嬢際の悪さも天井知らずに跳ね上がっていく。
そしてなけなしの知略もここで発動。
まだ残っている人質達を少数となった機動力を活かし、捕えるべく動き始める。
「マッスルを高ぶらせろぉ!! こんな奴等に負けてんじゃねぇええ!」
「わ、うわああ!!」
「……こっちに来た!」
「やめてぇっ!?」
「「ナイス、ナイスマッスルヒャッハー
!!!」」
「なんとも……まあ、どこかで聞いたような輩が揃っとるのう……?」
――されど、人質達の元へと、アルパカ怪人達がたどり着くことは無い。
まだ双方ともに危なげない、充分な距離を保ったまま。中間の位置へと一人の猟兵が現れ、彼等の進路を遮ったからだ。
虎の様な腕を持ち上げ、被っていた笠を脱ぎ捨てつつ――浅杜守・虚露(浅間雲山居士・f06081)は大柄な体で立ち塞がる。
「まあ元気なんはええがの……限度ってもんが、流石にあるじゃろうが」
呆れの感情を隠す事すらなく、そう告げてみせる僧衣の猟兵。
見て分かるほどの迫力を湛えている故に、普通の人間でなくとも一歩引いてしまうだろうが――追い詰められ且つ頭に血が上っているアルパカ怪人達は無謀にも引かない。
「邪魔するんじゃねえぇ!」
「俺たちの国を作るんだよ、その為にはマッスル!マッスルが必要なんだ!」
「貧弱共に慈悲は無い、残さずムキムキにしてやるぜっ」
「……そうかい……」
1つ溜息を吐きながら、虚露は頬を浅く掻いた。
その姿に気負いなど無く、ただただ自然体。
これから戦うようには……とても見えないぐらいに。
「ならば仕方ない」
だがそれも此処まで。
僅かばかりの静寂が切れ目となったが如く、虚露が顔を伏せ――カッ! と目を見開いて闘気を解放。
その勢いでオーラが展開され、筋肉すら膨れ上がり、バリバリと僧衣が弾け飛んでいく。
「な、あ……」
「あ、足がうごか……!」
「何でだぁ
……!?」
圧巻と言える程の途轍もない迫力が、声なき一括となってアルパカ怪人達の脚を尽く止めていくではないか。
最早蛇に睨まれた蛙。否、牛虎に睨まれたアルパカだ。
一歩、また一歩と虚露は詰め寄り……少しばかりまだ離れた位置で、牙を剥いて声を飛ばす。
「そのつもりだったとはいえ、よもや動きが完全に止まるとはのぅ」
口調こそ何時も通りではあれど、含んでいる圧力が尋常ではない。
潰してしまいそうな力と反比例するかのように、拳構えるまで静寂のまま。
「お前さんらに受けられるか?わしが全身全霊の拳を
……!?」
虚露の言葉に応じるが如く、ギチイッ……と、全身の筋肉がうなりを上げる。
そして――
「――天に、滅っせいっ!!」
怒声一括。剛拳絶倒。
突っ張りの一撃が、情け容赦なく炸裂する。
「なんじゃありゃあぁ!?」
鍛え上げられた怪力が空を破裂させ、気合が可視化したようなオーラが拳を伝い、撃滅の奔流がアルパカ達へと襲い掛かった。
地を削り、天を裂き、一匹の獣よろしく呑み込んでいく。
……耐えることなどできはしない。
「カオッ!!」
「グズブ!」
「ゼッパァァ!」
忽ち宙に飛ばされたアルパカ達は、最早分かり切ったように爆裂の連鎖を引き起こし、奔流が収まる頃には――とうとう影も形も無くなった。
重労働すら嘘のように、綺麗さっぱり消え去っていた。
1つ深く息を吐いた虚露は、慣れぬ“キ”を感じつつ独り言ちる。
「こんな感じでええんかの?」
先までの鬼はもはやおらず、其処に居るのは一人の穏やかなキマイラのみ。
かくして――この珍事は、ようやく終息を見たのだった。
「ふふふ……どうやら奴等では相手にならんらしいな?」
故に。
戦いは次のステージへと、待ったも無く進んで行く。
意味深な笑みを漏らしながら、またもや一人の怪人が姿を現したのだから。
「やはり奴等では相手にならんか!」
メカが壊れて一緒に焦っていた様子など今は昔。
猟兵が頑張り、アルパカ怪人が身体を張ったお陰で、“キ”の力が確かなモノだと気が付いた様子。
かなり自信満々だ。
「マッスル化など第一段階。この俺様が、第一含め第二段階をも成就して見せようではないか!」
そして拳を突き上げ、その恐ろしい計画の第二段階を超え高々に叫んで見せる――!
「そう、【リア充爆破計画】を!!」
――空っ風が吹いた。
「……なあもしかしてだが」
「……いえ、十中八九そうでしょう」
そこで二人とも気が付き、顔を見合わせる。
どうやら見た目や技の残酷さと違って、中身はお馬鹿なモノらしいと。
だが“キ”がある故に――油断ならないという厄介さを持つと!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『リア充どもは爆発しろ怪人』
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POW : リア充は爆破する!
予め【リア充への爆破予告を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : リア充は爆破する!!
【リア充爆破大作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : リア充は爆破する!!!
単純で重い【嫉妬の感情を込めて】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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「ハハハハハ! どうだ猟兵、この俺様の速さは!」
バカバカしい計画を口にすれど……しかし相手はボス級オブリビオン。
途轍もない敏捷性を発揮し、分身したかのような武術を見せつけてくる。
やはりと言うべきか、計画の残念さと相反する、残酷さは健在の様だ。
「先のやり取りで大体わかった。――次は貴様らを無様に散らせてやるとしよう!」
分身しているとしか思えない。
それほどまでの早業再度ステップで猟兵達を囲みながら、爆弾怪人は高らかに笑う。
「さあ! リア充爆破の為の生贄となるが良い……キサマラの爆裂を、切断を、消滅を持ってな!」
物凄く欲張りな事を言いながら。
……そしてこの後リア充憎しと長々ゲンナリする語ってから。
漸く――戦闘が、始まる……!!
ネーヤ・ティオモ
…お話、長かったですね…ちゃんと最後まで聞きましたけど。
動機は身勝手この上ないですが、この動き…ほ、本物がどれか見分けがつかないぐらいです
“キ”がよくわからない私ですら、さっきの怪人たちとは、執念も、強さも…次元の違うものを感じられます…!
で、ですが…わたしには頼れる超聖人さんが居ますから!
超聖人さんよろしくおねがいしま――
…
……あ、あれ?こんな黒髪でしたっけ…?しかもなんか…目つきが心なしか悪いような…?
…で、ですが、ご自身を「天才」と自称なさって、さっき以上に自信満々ですし…!
きっと、大丈夫なはずです!…たぶん…。
(苦戦・うわらば展開OKです)
“リア充爆破計画”
それって一体先の【マッスル化計画】とどんな繋がりがあるんだ? と、猛烈なツッコミ受けそうなことを言いながら、呆れるほど猛烈にサイドステップする爆弾頭の怪人。
証拠として活かせそうな一応終わっている話もまた、リア充憎しと語っていただけのため、真相のほどは分からない。
しかも、また爆弾怪人は熱弁し始めていた。目の前に猟兵達が居るというのに。
そして漸く話(二度目)が終わり。
(お、お話長かったですね……お弁当がどうとか、マッスル化すれば結局とか……)
意図的に聞き逃し、戦闘態勢を整えていた猟兵も多い中――ネーヤ・ティオモは意外や意外。ちゃんと最後まで話を聞いていた。
そして聞いていたからこそ、胸の内に義憤が湧き上がってくる。意見を叩き付けずにはいられない。
「おかしいですよ、その動機……!」
「なにぃ!? 俺様の一体どこがおかしいという!」
「だって身勝手この上ないじゃないですか!」
ご尤もだった。
「リア充共も身勝手だ! こんな俺様が居るというのに人目も憚らずいちゃいちゃいちゃいちゃ、いちゃ―――」
「い、いちゃ?」
そこで止まった爆弾怪人の動きを不思議に思い、ネーヤがオウム返しした……その時を見計らったかのように、彼は叫ぶ。
「クアアァァァ! 許せねぇ! 俺様の受けた悲しみに比べれば奴らが爆発するなど些事っ!」
「大事ですよっ!」
言ってることが無茶苦茶すぎて、ネーヤの口調も自然と強くなる。許しては置けない、との気持ちがより一層湧き上がる。
……だが、それは怪人の方とて同じ事。
「ならば始めは貴様からだ――奴等では相手にならなかったが、俺様は違う!」
もうさっき言った事をまた言いながら、ステップ速度を引き上げた。
その言い分こそ何だかフラグっぽいが、“キ”の類をまだよく解していない筈のネーヤにすら、その強さと次元の違いがひしひしと伝わってくる。
何よりオブリビオンと化しても、更に妙な技術を身に着けてまでリア充を爆破しようとする、その執念が凄まじい。――簡単に勝てる相手ではあるまい。
(で、ですが……わたしの方にも強い味方が、超聖人さんが居るんです!)
だからこそ。背後に控えていた、琉麗で繊細な動きを持つ超聖人の方を振り向く。
「超聖人さん、お願いしま――す?」
「フフ、よかろう……!」
確り答えた超聖人(?)にしかし、ネーヤは思わず首をかしげる。
何せ髪の毛が黒い――さっきまで白かったのに。
あと眼付がなんか悪い――さっきまで割と優しかったのに。
“こんな人でしたっけ?”と、そう考えざるを得ないが、そこ以外は非常によく似ているのだ。
「あ、あの~超聖人さん?」
「ん~? なぁに心配無用、俺は万人をもしのぐ天才だ!」
しかもなんか凄く自信満々である。
「なにぃ! 天才だと!?」
「ああ。もう一度言ってやろう……そう! 俺は天才なのだ!」
自称する程、本当に自信満々である。
「な、なる程……!」
その自信にネーヤも当てられたらしく、きっと大丈夫なはず、と強く頷いた。
刹那――戦いが始まる……!
「来るが良い、超聖人! リア充爆破の糧としてやろう!」
「良かろう……俺の力をためす実験材料となるが良いわ!」
何故かどっちも悪役みたいな事を言いながら、しかし飛ぶ拳は凄まじいの一言。
天才と称するだけあり、爆弾怪人のサイドステップについて行っている。
「とぅあぁ!!」
「ハハハァ!!」
連発される拳が度々ぶつかり合い、『リア充は爆破する!!!』との宣言と共に放たれた一撃を、超聖人は華麗に避けて三角跳び。
そのまま放たれる連続蹴りを、爆弾怪人はサイドステップで避ける。
やはり先までの動きは健在。髪の色とか目つきが違うだけだったのだ。
「爆破しがいがあるではないか!」
「いやまったく、暴力は最高だ!」
どっちが正義なのと言いたくなる言葉の応酬をしながら、拳劇は続いていく。
だがしかし。爆弾怪人がもう一度地面を、“キ”を込めた鉄拳によって爆破した瞬間……思わぬ事態に発展する。
「何か変だと思っていた! 貴様だな、超聖人の要になっているのは!」
「ええっ!?」
なんとネーヤの後ろに、爆弾怪人が回り込んでいたのだ。
そう。原理は不明だがこの【超聖人】もユーベルコードの一つであり、ピンチに際し召喚するだけなのだが……ネーヤと繋がりがあるのもまた事実。
倒して消えるかは割と疑わしいものの、生憎と爆弾怪人はそこまで考えていない。
故に行動は速く。
「フン!」
「あうっ!?」
何とか直撃こそ避けたものの、背中に怪人の“キ”の一突きを食らってしまった。
しかも何が起きたか体が動かず……超聖人に抱えられていなければ、確実なもう二撃目を食らっていたところだった。
しかし防御すら危ないなら、普通に命中すればどうなるかは自明の理。
万事休す――!
「心配するな、俺は天才だと言っただろう?」
「超聖人、さん…………うっ?」
此方も言うが早いかトン、と彼女の体を一突きした超聖人。
すると。
「あ――体が軽い……!」
なんと、すぐ体が動く様になっているではないか。しかも元気まで湧いてくる。
「す、凄いです!」
「ハハハ!! 当然だぁ」
「ぐぬぬ、リア充ぶりおってぇ……爆破してくれる!!」
仮にも男女のやり取りだからか、勝手に決めつけ嫉妬の炎を燃やすと、爆弾怪人が突っ込んでくる。
だが今度のネーヤに恐れも緊張も無い。
何せ天才たる、超聖人が居るのだから。
もう何も恐れることなどない。
「これでもう、貴方の事は怖くないです!」
超聖人と共にネーヤは爆弾怪人を見据える。
「――あ゛ん」
そして一度、ちょっとお腹から体が膨れて、元に戻る。
「「えっ?」」
なんか妙な声が聞こえた、と二人が振り返った時にはもう遅く。
「ぁあーっ!? あぁぁーっ! あ゛ぁぁん!」
そして同じように、脈動するように、小さくも膨れ縮みを繰り返し――。
「――マァンムアァァン!!」
いっそ清々しいぐらいボォーン! と、ネーヤは爆発四散した。
そして戦場に流れる一瞬の静寂。
「……あら、間違ったかなぁ?」
「言っとる場合かぁ!!」
「全くその通りで――ウワラバァ!!」
超聖人もまた同じく亀裂っぽい光が走ったと思うと、ビキビキ音をたてバガァン! と大爆発。
正に因果応報。
「何がともあれリア充爆破成功だ! よし次ブヘベヘヘアァ!?」
……なんとまあ怪人も、爆発こそしないが後から打撃が追い付き転がって行き。
戦い始めは、確りダメージこそ与えれど、何とも言えない空気で終わるのだった。
「……ひ、酷いです……色々と――がくり」
ちなみにネーヤの安否はというと。
煤だらけで普通にバタンキューしており、手元には“はんにんはちょうせいじん”とメッセージを描いていたとか、いないとか……。
苦戦
🔵🔴🔴
ナイ・デス
【南】?
【地形の利用】で、地縛鎖を大地に刺して
陣と、キの力を、より強く、受け取ろうと思った、だけなのですが
……なぜでしょう。子供は、これ……?
頭に流れ込む、何かが……!
マフラーをターバンのように頭に巻いて
早業サイドステップしてる敵の動きを【第六感】で読み取り
【忍び足ダッシュ】で近付いて
【鎧無視攻撃】筋肉の鎧とか無視して
【医術】で正確に急所を狙い
【暗殺】足に刃を突き刺す
【恐怖を与える】
【▼】
攻撃受けたら【激痛耐性】と【生まれながらの光】で次の瞬間にはケロッと元通り再生
訂正、少し疲れたので
【2回攻撃】もう一度
【傷口をえぐる】同じとこ刺し
【生命力吸収】
ここまで、身体が勝手に、動きました!これが、キ?
「ハハハハハハ! 俺様のスピードについてこられるかっ!?」
未だに爆速でサイドステップしながら、無駄に凛々しい大声で叫ぶ爆弾怪人。
(迂闊には跳び出せないですね)
それを少々離れた場所より見やる、陰が一つ。
白髪をなびかせ、静かに移動するナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、先に起きた戦闘模様を反芻していた。
(先の戦い……“キ”なる力は、思った以上に驚異的な様です)
猟兵達が扱っていた“キ”。
それを怪人が使った際の脅威度。
……既に一人脅威にさらされ、そのダメージから一旦後方へ下がった以上、威力含めて事前情報通りとみて良いだろう。
なればこそ慎重に行かねばなるまい。
――爆弾頭の怪人の所為どうかは怪しい、というか『止めを刺したのは彼ではなかろう』が、それは一旦さておいて。
「やはり奴等では相手にならん程度の力で、俺様に勝てる通りなど……無いという事かっ!!」
猟兵達の間を縫いながら時折拳を繰り出しては、彼等に武器防御や回避を強制させている。
よっぽど気に入っているのか、それとも自信がそこまであるのか――またさっきと似たような事を言いながらに、爆弾怪人は腕を広げたまま駆け回り続ける。
そのスピードは未だ衰えず。
……仮に、後ろから襲っても返り討ちに合う可能性は否定できない。
(――そう言えば、“キ”を操るための仕掛けは、メカ以外にもありましたね)
そこでナイは事前に得ていた情報の内、“陣”と呼ばれる物が敷かれていたことを思い出す。
メカの力だけでなく、張り巡らされた人より力を放っているのなら、上手く利用できるかもしれないだろう。
地形とは、逆らわず最大限利用する物。力の源と一端とくれば使わない手は無い。
(ならさっそく……!)
ジャラリ、【地縛鎖】を取り出すと同時にナイは地へとそれを突き刺し、“キ”の力をより強く受け取ろうと、魔力と情報を吸い上げるその力を起動させた。
刹那。
「な、何ですかコレは……!」
頭の中に流れ込む、強烈なイメージ。
――子供ならばこれをしろ。――少年ならばこれをしろ。
……そんなまったくもって訳の分からない言葉が、そのまま具現化したかのような映像が、内の中を駆け巡る。
毒の様な物ではなく、害になるものでもない。
だがしかし、その力は確実にナイが考えていた作戦とは違う、斜め上な行動をとらせてきた。
「……ん!」
まずマフラーを頭に、まるでターバンのように巻き。
更に隠す事が利点の筈の短剣を、そのまま取り出し。
そのまま爆弾頭の怪人へと駆け出してゆく。
「猟兵共よぉ! 俺様の野望の糧となれぇ!!」
よりサイドステップの速度を上げ、分身どころか壁を作っている爆弾怪人の動きを――第六感の驚異的な読みにて【ここに来るだろう】位置へ正確に先回りする。
その動きは静かで速く。
持ち得た医療の知識が、人体の急所を正確に狙う動作へ……筋肉の鎧をものともしない弱所への刺突へと繋げていく。
「ハハハハハ―――ハグッ!?」
暗殺者よろしくなその一刀は見事に爆弾怪人の脚へ突き刺さり、彼の自慢であるスピードを封じる一手を打っていた。
何時そこまで来ていた? というか何でターバン?
信じられない事実からか――爆弾頭の脳裏へ戦慄が走り、恐怖が湧きあがる。
特にターバンが、ターバンが一番彼へ恐怖を与えていた。
「貴様ァアアァァ!!」
「うぐ
……!?」
恐れをかき消す形で繰り出された手刀は鋭さこそなかったが、とても重い。
ナイはターバンの余りを靡かせつつ、しかし己の体の異変を悟る。
ビキビキと体に走る僅かな痛みが……身体中を進んでゆくのだ。
「ふふふ。恐ろしい技術であったが、所詮この程度よ!」
「何をしたんです!」
「特別に教えてやろう――貴様の命があと10秒だという事をな!」
「な……!」
驚愕に目を見開く白髪のターバンのガ――ではなく、ナイ。
「い、いやそんな10秒だなんて、まさか……!」
「10秒が嫌か?」
「当たり前でしょう!」
「ならば――ハゥッ!!」
「え」
爆弾怪人の手が複雑な軌跡を描いたかと思うと、ナイの体に複数の横線が走る。
瞬間。
「ヤ――ヤロレォアァァー!」
体が、ズレたかズレないかの前に爆散し、ナイの姿は完全に見えなくなった。
先までの事例に鑑みれば……もう戦闘などできまい。
「ハハハ、これこそ“キ” の力。歯向かうなど笑止だぁ!」
「ていっ」
「ハグホグハァ!?」
そして普通に復活して普通にナイフを、別の脚に突き刺す。
かと思えば、先ほどの傷にもう一度突き刺し、傷口を抉る。
ぐりぐり、ぐりぐり、執拗に。
「イダダダダダダ!?」
「せいっ」
そして叫び声をあげる前に確りと生命力を頂いて、その活力のままに遁走した。
「ギャンバス!?」
叫び声追い付き。痛みでのたうち回る爆弾怪人。
そんな事していれば当然隙だらけ。恨み骨髄と他の猟兵達に吹っ飛ばされる。
――此処まで僅か10秒であった。
「危なかった……疲れましたね」
実は先までの驚きは、ナイの演技だったのだ。
爆散しても死にはしないことは知っているし、実例も……予想外の形ではあったものの見ることが出来た。
オマケに時間まで指定してくれたり、フラグ回収も分かり易過ぎたのだから、後はユーベルコード『生まれながらの光』で回復すればこの通りである。
激痛に耐性があったのも、どういう原理化五体満足で居られる現状、功を奏したと言えるだろう。
……とはいえ流石に未知の力である“キ”が相手。傷は治っているが、ダメージ自体は大きく疲労も激しい。少し休息をとる必要があるだろう。
「し、しかし此処まで勝手に体が動きました――おまけにターバンとは一体……?」
己に力を貸してくれた謎の声と、思わぬ力を思い返しながら。
それでも、もし何かあった際に動けるようにと、ナイは片膝を立てて座り込むのだった。
「――ターバンこそ最強とは、どういう……」
終ぞ惑わせてくるターバンが頭から離れないまま。
……ターバンとは、一体何なのだろうか……。
大成功
🔵🔵🔵
夜神・静流
【神】
「その拳、受け流してみせましょう」
見切り・視力・第六感・残像を使用して連続攻撃を回避した上で、早業・カウンター・グラップルを使用してカウンターを仕掛けます。
連撃が途切れたら当身投げ(発生1F)からダッシュ・残像技能で追いかけて連撃を見舞います。
最後は祈り・衝撃波技能を使い、正座した状態で左右に衝撃波を放つ。
「せめて奥義で葬りましょう……」
敷島・初瀬
「【リア充爆破計画】まさか同じこと考えていたでありますか!」
ドサクサ紛れにリア充共をヒデブやアベシしようと思ってたであります、3日後に爆発するように突けば自分がやったとばれない筈!
【聖】【▼】(ひどい目はご褒美であります)
志しを同じくする同志といえど他の猟兵が見てるのでこいつには消えてもらうしかないであります。
今回は水鳥の様に宙を舞い切り裂こうと試みるであります、相手を強敵と認めたのか頭上から究極奥義を繰り出すであります。
(アドリブ、絡み大歓迎であります)
「く、くそう……まさかあんな存在が居たとは
……!!」
恐ろしい。実に怖ろしくてたまらない。
ブルブルと身を震わせる爆弾怪人の動きが、明らかに鈍っている。
圧倒していたとはいえ初戦では割と思いっ切り打撃をくらわされ、次は思わぬターバン攻撃とナイフ攻撃を受けた。
流石にダメージがあるのだろう。
再び始めたサイドステップにも何処かキレがない。これはチャンスだ。
「諦めてなるモノか――リア充爆破計画は狂わないのだっ!」
執念未だ消えず。かのターバンでもこればかりは影響を与えられないのか。
拳を握り締めた爆弾頭の怪人が、次から次へ突撃して打撃を食らわせようとする。
“キ”纏う打撃を猟兵皆しっかり避けてから……うち一人、夜神静流が一歩前に出た。
充実した気力が“キ”の力と合わさり、一層迫力を湛えている。
その体捌き、依然として美しく、また洗練されている柔の拳――有情なる一手を齎す構えだ。
「身勝手な理由で、幸せを掴んだ方々の邪魔など――させません!」
「またそれか! リア充共の方がよほど身勝手だと……! いやっ、やはり分かり合えぬのだ――ならば、実力で突き進むのみ!!」
両腕を高く構え……サイドステップしている為段々と増えるシュールな絵面を作りつつ……爆弾頭の怪人は次の標的を静流に定める。
対し、彼女もまた両の指を上に向け、掌を敵へ向け、滑らかに足を動かし待ち構える。
「リア充爆破を確固としたものとする……“キ”を纏いし俺様の拳を受けよ!」
「ならばその拳……夜神の武を持って、受け流して見せましょう……!」
そして僅かながらの間隙の後に――次なる勝負が幕を開けた。
「フンフンフンフンフンフンフン!!!」
空気を裂いて繰り出される豪快な拳を、最小限の動きで的確に静流は避けていく。
どれだか大雑把な拳で有ろうと、“キ”を纏った一撃ならば侮れない。
故に己の視力を用い、第六感を信じ、見切り続けている。
また縮地法にも似たステップで、超単距離を移動し残像を空撃ちさせる、確実な回避方も交えていく。
「流石に、簡単には捕えられんようだな……奴等では相手にならんだけの――」
「せいっ!」
「ことはゲフゥ!? ――なんてな!」
本当に気に入ったらしいその言葉の最中に、静流は容赦なくカウンターを打つ。
だが敵のそれも残像であり、背後に回られ。
「ええ、そうでしょうね!」
「なにぃグハァ!」
更に踏み込んで組み付くと、体勢をずらさせて思い切り徒手空拳を叩き込んだ。
流るる水の如き自然な繋ぎで繰り出される体術。
既に奴の挙動を、彼女は見切っているのだ。これ位造作も無かろう。
「フンフンフンフンフンンウゥ!!」
「くぅ
……!!」
それでも燃えあがる執念で執拗に乱舞を繰り出してくる怪人。
今度の拳は爆撃の影響かとても速く、本人も動けなかろう代わりに対処が難しい。
せめて僅かでも途切れてくれれば。
「!? ……ま、まだ……っ!」
だがそうなる前に、静流の読みが僅かにずれる。だが対処しようと手を伸ばす。
どうなる……!
「まさか【リア充爆破計画】とは――同じことを考えていたとは驚きであります!」
「なに!? ―――くぉっ!!」
だがそのピンチを、横から割り込んだ鋭い掌が救い出す。
招待は敷島初瀬……だが今使っている技は、先の無音なる暗殺術とはまた違う様子。
ニヤリと笑うその雰囲気も、気配を殺そう、殺そうとしていた物とはやはり別者だった。
「しかしながら自分は猟兵。お前はオブリビオン……志こそ同志とは言え、討つことに変わりはないのであります!!」
「くぅ……同志を打たねばならんとは。コレもリア充が幅を利かせている所為か!」
割と本気で残念らしく、爆弾頭の怪人の声には悲痛なものが宿っている。
その感情を押し殺すように、そして三度襲ってきた猟兵達を躱すように、自慢の爆速サイドステップを開始する。
集団をすり抜けながらも、せめて己の手で決着を付けようと、初瀬の周囲をより多くめぐる形で動き続けていた。
「ふ……!」
ニヤリと笑む彼女の内心。
其処にあったのは、やはり爆弾怪人と同じ物――。
(ドサクサ紛れにリア充共をヒデブやアベシしようと思ってたであります……まさかそれを怪人もやろうとしていたとは!)
全然違った。
というか仮にも一般人相手に、何をやろうとしていたのだろうか。
今もチラッ、チラッとリア充らしきカップル達に目が向いている。
やっぱり諦めきれないらしい。
(“キ”の力ならば、3日後に爆発するように突けば――そう、自分がやったとばれない筈!)
バレなくても普通にダメ、というかヤバい事を考えながら。
初瀬は爆弾怪人の動きを見切ろうと構えを少しづつずらしてゆく。
他の猟兵の目が無かったら……もしかすると彼に味方していたのかもしれない。
理由はどうあれ、互いに熱い心を持っているのだから。
――理由はどうあれ。
「ォオオォォオッ……!」
だが色々と複雑な理由に反し、その動きは華麗で優雅だ。
まるで水面に踊る水鳥の如く――時に滑らかに手を動かし。
「シャオゥッ!!」
「ぐうっ!?」
時に羽ばたく力強さを体現して、広く指で斬り裂いていく。
「まだまだぁ!!」
「此方とてまだであります!」
二連繰り出される拳を、細かい足さばきで腕も使わずにすり抜け、そのまま腕を振るい斬撃を穿つ。
後ろを向いたままふりきられたキックを飛んで避けると、宙返りしながらまた斬り刻む。
指を使った素早い斬撃は、だからこそ隙などほぼ見えなかろう。
「くぅあああ!」
爆弾怪人は致命傷こそ避けれど、防戦に傾かざるを得ない。
やはり足にダメージがあるのだ。
そうして大振りになった拳を避け……その隙を、初瀬は逃さなかった。
「受けるがよい、であります――これぞ究極奥義っ!」
そのままジャンプし、なんと手を使って二段ジャンプするという荒業を疲労。
更には空中で回転しつつも両腕を広げ。
宛ら飛翔する水鳥の如く、その華麗な姿を模した必殺の拳を繰り出さんと迫る。
「白き翼を……喰らうであります!! とぅあー!」
それは、見る者を魅了する、比類なきモーション。
爆弾怪人は美しきそれを、ただ見据えるのみ――!
「せいやぁ!!」
「え゛」
――な訳もなく普通に、跳び上がった隙を狙って指を縦一閃した。
同志だからこそ決着を! と意気込んでいたのだから、当然と言えば当然かもしれない。
「オオォオロァアァァァーー!」
両腕を広げたポーズのまま叫ぶ初瀬は、しかし何の変化も無い。
不発だったのだろうか。
……そう思われた、次の瞬間。
「オォヨォォオオォォ
……!!」
叫び声そのままに、何と背中から裂けて行くではないか。
一体どんな斬撃を放てばそうなるのか。
しかしそれを解明する暇などもう既になく。
「ビビビボボボベババァァアーアーアァァ!?」
滅茶苦茶長く叫んだあと、哀れ真っ二つとなって地上に落下した。
しかも背から故に、その勢いは止まっておらず爆弾怪人を……。
「いでええぇぇ?!」
見事に手刀が捉えていた。
勢いついてるのだし分かり切ってるだろうに。
――何で後ろから吹っ飛ぶような攻撃をしたのだろうか、コイツは。
「し、しかし同志よ……己の意思は受け継いだぁ!!」
だが折れない。ともすれば涙ぐましき、受け継ぎの儀にも見えるようにこぶしを突き上げた。
「ならば速やかに終わらせましょう」
「あっ」
――そこで爆弾怪人は静流のことを忘れていたのを思い出した。
というか、先ほどからずっとすきを窺っていた事すら頭から飛んでいたらしい、
あっさり懐に入られ。
「はぁぁぁぁぁっ!」
「ばらぶばさらがばげほふ!?」
ボコスカバキボカと思いっ切りボコボコにされていく。
「こ、この女ぁ!」
「甘い」
再び発動しようとした連撃も、彼女の前では最早ただの隙作りだ。
簡単に避けられ、いつ投げたかもわからない――たったワンフレームで繰り出されたかのような早業で爆弾怪人は投げられる。
「ハッ!」
「ちょぉぉ!?」
まるで神の如き当身では終わらず、残像を残してものすごい勢いで追いかけてくる。
其処から始まるのは止めどない連撃。
ガードも反撃も許さぬ、とばかりにコンボがバシバシ決まっていく。
「吹き飛びなさい!」
「いえー、思い切りフキトベ―であります……」
静流が思い切り衝撃波で突き上げる中、足元から初瀬の声も聞こえる。
自転車のタイヤ痕みたいなものが刻まれた、ぼろぼろの状態の彼女の声援を受け、奥義を繰り出さんと静流は正座し始めた。
――さっき真っ二つになった様に見えたが気にしてはいけない。
「せめて奥義で葬りましょう……」
静流もまた数多の現象を受け入れ、どこかで見たような形に両の腕を構えた。
祈りの念が、確りと伝わってくる。
そして落ちてくる爆弾怪人に今、夜神の奥義が炸裂する――!
「ハァーッ!」
「チナアアアァァァ!!!」
「危なぁぁぁ!?」
放たれたのは痛烈なビーム。
左右に放たれたその拳(?)は怪人を貫通し、ついでに初瀬の上ギリギリを通り、何の破壊跡も残さないまま消えていく。
「ぐ、お……ガハマハマぁ! ――ってなんじゃこりゃぁ!?」
身体が数か所破裂し、その爆発してからも痛みが無かったらしく、漸く自覚して身体中を抑えてる。
足も方も、胴体もすでにボロボロである。
勝機は既に――どちらに傾いたか、自明の理だ。
「一旦引きますよ、初瀬さん」
「お、お願いするであります……!」
他の猟兵の足止めもお陰で簡単になっている。
その隙に静流は初瀬を抱え、そのまま範囲外に逃れるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ビスマス・テルマール
【神】
何だか世紀末でヒャッハーな事に巻き込まれてる一般人の方々が悲惨でならないんですが
こんな悲しい事はさっさと終わらせましょうか
●POW
残像をオーラ防御でコーティングし、実体のある残像を生成しつつ、それを盾にして第六感と見切りも活用して動きに注意し攻撃を回避
当たりそうなのも、手持ちの武装にオーラ防御を纏わせ、武器受けで受け流しながら翻弄
そうしつつ早業でUCを発動
悲しみをありったけ攻撃に乗せ
山河焼きバーガー型爆弾剣を拳に装着
鎧砕きと鎧無視攻撃と捨て身の一撃を込め、オーラ防御と残像を合わせた、実体のある残像をウツセミの術の如く置いて、ダッシュと早業で一撃離脱
貴方はもう食べている
天に滅せよ!
【OK】
「何故だ……何故俺様が此処まで追いつめられるのだ……“キ”の力を手に入れた俺様がぁ
……!!」
既にフラグっぽいことをしゃべりながらフラフラ立ち上がる、爆弾頭の怪人。
お決まりのセリフを言う余裕すらないらしい。
そんな既に敗北が決まった様な怪人を見ながら、微妙な心境を抱いているのはクリスタリアンの猟兵、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)だ。
名前の通りな“ビスマス結晶”を思い起こさせる、宝石の様な肌で光を返しつつ……さらり、薄青の髪を揺らし思考する。
(何というかこう、こんな世紀末でヒャッハーな事に巻き込まれてる、一般人の方々が悲惨でならないんですが……)
しかもその中身はマッスル化だったり、またリア充爆破だったりと、今の所どいつもこいつも外道ではあっても……掲げられそうな覇道には、全く届かなかろう。
オマケにこの用意周到さに反して、中身はかなりテキトーで空っぽと来た。
……もう悲惨以外の何物でもあるまい。
故に。
「――こんな哀しい事は、手早くさっさと終わらせてしまいましょう」
宣言するが早いか、ビスマスは未だ片手で頭を抱えている、爆弾怪人の元へと一気に駆けだす。
彼も気が付き……最初とは比べるべくも無くとも、しかして未だに高い速力を見せて詰め寄って来た。
「こうなれば――1人でも多く道連れにするのみよっ!!」
突き出された“キ”帯びる拳は、爆速でビスマスへ命中。
何と余りにあっけなく、声も無くビスマスは爆裂した。
「ハハハ! なんだ身を挺する必要も――」
「どこを見ているんですか、此方ですよ!」
「な……にぃ!?」
だが喜んだのもつかの間。後ろから声が聞こえたかと思うと、其処には無事なままのビスマスの姿が。
自信たっぷりに笑みを浮かべ、爆弾怪人を見据えている。
「くそ、面妖な技を――だがリア充への怨念が俺様の力となる……まだ止まらんぞぉ!!」
繰り出される拳はしかし、彼女の残像を貫くのみ。
かと思えば命中し爆発四散
だがまたも声は後ろから掛けられ、其処にはビスマスが居る。
「どうなっている……どうなっているんだぁ!?」
キレはそのままに段々と焦り始めた爆弾怪人。
もしや彼女は不死身なのか? まさか、ターバンの化身なのか。
無論そんな訳はなく、きちんとしたカラクリが存在する。
(上手く行きましたね。オーラ併用の、仮初の分身の術が!)
実は残像にオーラ防御を併用することで “実態ある残像” を生み出し、それを盾として攻撃させ……敵のクセを見切る肯定に組み込んでいたのだ。
またその分身を出す肯定もただ盾にするだけでなく、ビスマスの冴え渡る第六感でタイミングを合わせる事により――先の様なビックリドッキリな行いすら可能としていた。
「くぅ、くぅぅ……!! 何という妙技か……まるで見切れない、何が起こっているっ!?」
だが勿怪の幸い、或いは驚異の悪運。
適当に振るった筈の“キ”の拳が、斜め後方に居たビスマスへ迫る。
「なんの!」
されど彼女もさる者だ。【なめろうフォースセイバー】と“キ”の混合で引き揚げた力により、【ディメイション・チョップスティック】を併用して受け流す。
――本来ならここで気付かれる可能性すらあったが、それに合わせて残像が爆裂したため、爆弾怪人は依然として翻弄されてばかり。
「貴様を爆破する――リア充は爆破する――これは決定事項なのだぁっ!!」
此処で怪人が賭けに出た。
敢えて強く宣言することにより、己の中の力と“キ”を無意識的に高め始めたのだ。
呼応し、爆破のエネルギーがドンドンと強まっていく。
これを受けてはひとたまりもあるまい。
「ならば!」
『Namerou Hearts Sangayaki Baga!』
早業でカードをセットしたビスマスの方から、謎の音声が聞こえてくる。
そして瞬く間に鎧装が換装されたかと思えば……その拳には、一つの武器が付いていた。
「これが『山河焼きバーガー』鎧装――そして、その剣です!」
色々とぶっ飛んだ敵相手ならば、此方もまたぶっ飛んだ武器を用意すべきと、呼応するようにビスマスは剣を構えてみせる。
爆弾剣の放つ輝きは、爆弾怪人のエネルギーに勝るとも劣らない。
……理不尽にも巻き込まれた一般人達の、そして彼らを想うビスマスの悲しみをのせ――ありったけの力で突撃。
「はああぁぁぁぁっ!!」
「ぜえぇぇぇぇぇっ!!」
同時に怪人もまたその拳を突き出して突進し――交錯。
捨て身にも近い一撃は、だからこそビスマスの体を爆弾怪人の拳が捉える結果を作る。
だがしかし、本人はまたもや……怪人のはるか後方に陣取っていた。
「またこれか――しかし、この程度で俺様は終わらんぞ!」
「いえ、もう終わっています――貴方はもう、食べている」
「な、なんだとぉ!? ――って、こ、これはぁ!!」
正しくそれは宣言通り。
怪人の顔面には既に、山河焼きバーガー型の爆弾が埋め込まれており。
同時に体の中を、“キ”の奔流が突き抜ける。
「そ、そんな……この俺様が……リア充爆破計画を前にして――こんな所で……!」
慌てふためき振り向こうとする怪人へと、ビスマスは振り向かず、ただ背中を見せてこう告げる。
「――天に滅せよ!!」
「こんな、所でぇぇぇぇ――アァブェッシャアアァァァァ!?」
限界まで膨れ上がったその爆弾頭から勢いよく閃光が飛び散ったかと思えば、体がボコボコと脈動し関節をあらぬ方向へと曲げ…………刹那、バーガー爆弾合わせて爆裂。
爆弾頭の怪人を、骸の海へと消し去って行く。
数多の猟兵を残酷に(見た目だけ)葬って来た怪人は――此処で、何を成すでもなく潰えたのだった。
「ふぅ……これで、終わり」
余韻に浸るかのように、ビスマスはポツリ呟いた。
「ほぉ? どうやら奴までやられたらしい――これは即ち、我の出番か!!」
「……では、ありませんね」
その呟きを否定するかの如く、最後の敵が現れる。
汽車の様な体と頭を持つ、そしてこの事件の首謀者で有ろう。
――仁王立ちのまま構えた最強の怪人が……!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『機関車怪人』
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POW : トレイン・フリーク
【時刻表】【鉄道模型】【鉄道写真】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 出発進行!
自身の身長の2倍の【蒸気機関車】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : アクシデントクラッシュ
対象の攻撃を軽減する【高速走行モード】に変身しつつ、【煙を噴き上げながらの体当たり】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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集団で滑車を引かせ、襲い掛かって来たアルパカ怪人達。
速さに物を言わせて、囲い込み攻めていた爆弾頭の怪人。
そんな彼等とはまた違う、別種の構えを汽車怪人は取っている。
――そう。
仁王立ちし、両腕を高く掲げどっしり構えた、見たままパワー型らしき構えで。
「マッスル化計画、そしてリア充爆破計画、その果てにある物――それが我の計画だ」
表情変わらぬその面で、ニヤリと笑んだらしい怪人が、身体中にあふれる程の“キ”を帯びつつ睥睨してくる。
「知りたいか? ……では冥途の土産に教えてやろう」
そして早速何か怪しげな事を言いながら。
高所から見下ろしたままに、告げてきた。
「マッスル化し、リア充を爆破され、残るものは何なのか―――そう!鉄道への憧れだ!!」
……今なんて言いました?
「筋力を鍛えなければ避けられ、リア充になれば爆ぜ飛ばされる。ならば最後に選ぶのは浪漫であろう? いいやそうに違いない――故に我が計画は絶対!!」
もう何と言えばよかろうか。
やはりキマイラフューチャーと言った方が良いのか。
「付いてこれぬ者は殺すまでよ。そしてその先に居る我の姿を、人々はきっと湛えるであろう!!」
残酷なだけで妙にずれているのは変わりないらしく。
「さあ来るが良い猟兵達よ。……貴様らの血肉を持って、我が計画は完遂するのだぁ!!」
最後まで何処か微妙なまま、しかし途轍もない力を持った怪人との、決戦が。
今、始まる――!!
ネーヤ・ティオモ
【聖?】
何というか…否応無しに覇者と表現したくなるような凄みがあります…!
目の当たりにしていると、気迫だけで…あ、脚の震えが止まらないです…
ですが…わたしも幼くとも猟兵。
人々にその拳が向く前に…あなたを超え、止めて見せます!
先達に習い、ターバンを巻いて気合と覚悟を決め
奥の手…【豊穣の加護】(代償:お任せ)を自分に使い、【護身用短剣】を構え立ち向かいます。
超強化し、回復し続ける特殊体質にすることで“キ”のダメージを不完全にします…!
そして止めを刺した、と油断している相手の太腿をぐさーっとして離脱です。
…あれだけ強そうだと爆発寸前まで行きそうですし…一回受けるだけで済めばよいのですが…ううっ
【▼】
敷島・初瀬
「なんて可哀想な奴であります、、、」
機関車怪人を可哀想な人を見る目で見つめ、哀しみを知るであります、ついでに前回の戦いの負傷で頭に鉄仮面被ってるであります。
【神】【▼】(どんとこい)
哀しみを知ってあの奥義が使えるようになった気がするので流派【神】を身に着けるであります。
死闘を繰り広げた怪人、なぶり殺しにしたアルパカ達、強敵(とも)の幻影を引き連れその技を叩き込んでいくであります、隙を見つければ仮面から含み針も出して卑劣さもアピールするであります。
「トーマス、天へ帰る時が来たのだ」
(アドリブ、絡み大歓迎です)
汽車。それは鋼鉄の塊。
汽車。それは熱帯びる大質量。
「我が計画を阻むのならば――よかろう、全霊を持って打ち砕くのみ!!」
目的はどうあれ、そんな威風堂々足る存在が意思も怪人となり、加えて“キ”という行為の力すら身に着けている。
そして個体そのものの、力量や強さもあるのだろう。
故にか、汽車怪人より感じるプレッシャーは――先までの怪人達の非ではない。
気を抜けば一瞬で吹き飛ばされそうだ。
……並大抵でなくとも自然と道を開けてしまうだろう、威圧感さえ湛えていた。
(気迫だけで…あ、脚の震えが止まらないです……!)
そんな目の当たりにするだけで体が固まり、否応無しに【覇者】と表現したくなるような凄みを、ネーヤ・ティオモは感じ取っている。
まして、先の大ダメージな黒焦げ状態から復帰したばかりだ。
心身へ叩き込まれる圧力は計り知れない。
――されども彼女も、幼かろうともまた猟兵。オブリビオンを駆逐する戦士だ。
怯えっぱなしでは居られぬと活を入れ敵を見据える。
「そんな計画、成就なんてさせません!」
「ほう? 我が拳の覇道を……鉄道へのロマンを遮るというか!」
「はい……人々にその拳が向く前に、あなたを超え、止めて見せます!」
「面白い!!」
その巨大な喝破にも似た声に合わせ、只でさえ大きい汽車怪人の、更に二倍はありそうな蒸気機関車の幻影すら具現化して見える。
だがそれに負けて堪るかと、先達の知恵を借りてネーヤは布を取り出し――ターバンのように頭へ巻いた。
“キ”の影響なのかそれとも切り替えた故か、気合と覚悟が決まった様子。
「――哀しい……でありますな」
そしてこちらもまたダメージから回復し、別方向からゆっくり歩み寄ってくる敷島初瀬の姿があった。
……何故か鉄仮面をかぶったままに。矢鱈と名前を呼ばせようとする雰囲気が、そして中々にワルな空気を纏ったまま――しかし抱いた心情はまるで清らか。
「そして、なんとも……可哀想な奴であります」
汽車怪人に向けられしその瞳は、悲しみに濡れている。
トンデモない力を使ってまで行おうとした、もう一周回って壮大なその残念計画に対して……そうでもしないと貫き通せない程、苦難にまみれた道なのかと察し。
強い、深い、哀しみを知ったらしい。
――怪人の計画が余りに斜め上過ぎて、そちらに目が行ったのかもしれない。
しかして怪我の功名だ。何せその哀しみが、彼女に力を与えているのだから。
「哀しみを知った今こそ……使えるようになった気がする、あの奥義で貴様を葬るであります!」
大分根拠が不安なものの、その構えは対・アルパカ怪人とも、対・爆弾怪人とも違う構えだ。斬り裂くのではなく、爆裂させるあの構え……!
「ほう? 哀しいと来たか……可哀想と来たか――ふん、同情など要らぬわ!! 故に貴様は此処で粉微塵としてくれよう!」
ネーヤに目が向いていた汽車怪人も、彼女の哀しみを感じ取った雰囲気を知った、その上でそう言ってみせる。
両の腕を広げて大上段に掲た、その構えを崩さぬままに。
まるで荒野の決闘が如く――閑散とした空間が刹那的に作り出される。
並ぶネーヤと初瀬。
対峙する汽車怪人。
一陣の風が吹き抜けた、その瞬間……最後の戦いの幕が下ろされた。
「ハアッ!!」
仕掛けたのは初瀬だ。刃物の様に構えた左手の指を、順に握って拳へ変え、迫る。
対する汽車怪人は仁王立ちのまま静かに拳を引き絞る。
「カアアァァァァァァッ!!」
そして気配を一気に膨れ上がらせたかと思うと、闘気含みし“キ”の奔流を勢いよく叩き付けてくる。
ネーヤは間一髪転がって避け、何やら刃物を取り出しつつ準備を開始しだした。
そして初瀬は――なんと、分身したかのような特異な動きで躱したではないか。
「むぅ
……!?」
その一瞬で先ずどちらを攻めるべきか、どちらが厄介なのかを察した汽車怪人は――初瀬の方へと突撃してく。
ターバンは勿論怖い。何故か走らないがターバンだから怖い。
しかし今の初瀬もそれに並ぶほど……否、超えても可笑しくない程の脅威となり得る。そう感じたのだ。
「絶せよ!!」
可視化するほど濃密な“キ”を携え、吹き上がる大量の蒸気を斬り裂き、灰燼齎す拳が初瀬へ叩き付けられる。だが、それもまた異質な残像を残して背後へ回る。
怪人は無言で蹴りを連ねるも、それはやはり回避され、衝撃波が建造物の残骸を打ち砕くのみ。完全に初瀬の独壇場だ。
「それだけにあらず――強敵(とも)達の力が、自分を確と支えてくれるであります
……!!」
突如として構えが変わり、その背後にはアルパカ怪人達や爆弾怪人の姿が見えた。
かつて干戈交えた敵同士、しかし今は“とも”と呼べる大切な存在。
……にしては遠慮なくぶった切っていたり、仲間にぶっ飛ばされるのを応援していた気もするが、そんな記憶など些事だ。
「せええええい!!」
そして拳から広がる、あたり一帯を震撼させるほどの大爆発が、汽車怪人を真っ芯で捉えた。
「ぐぉ……! く、これが哀しみの力か――だが!」
侮れぬ力に汽車怪人もまた、更なる“キ”の力を持って迎え撃たんと両の腕を広げた。叩き潰す体勢だ。
「ふぅん!!」
初瀬も対抗。筋肉を見せつけるかの様な、美しきポージングで迎え撃つ……!
「ゲフン!」
「あ、当たった」
……そして普通にブッ叩かれた。
考えてみればアルパカは【終始ポージングのみ】で攻撃らしい事はしなかったのだし、その技を借りれば当然ながら……。
「だが好都合よ! 情け容赦など無用っ!!」
思わぬ命中に一瞬素に戻った汽車怪人は、されど切り替えも速くもう一打叩き込もうとしてきた。
これに耐えきれても、恐らく“キ”の力が流し込まれてしまう。ピンチか――。
「せぇぇいっ!」
「ぬぐおっ!?」
其処へ隙を見つけて、ネーヤが飛び込み足を突き刺した。
入り込むチャンスがなかなか見つけられなかった様子だが、だからこそ少し注意をそらすことが出来、確り助けに飛び込めたのだろう。
そして彼女の脚は、彼女自身でも驚くほどスムーズに動いている。
それこそ勇気をターバンがくれたかの様に。……しかし好調なのは其処まで。
流石に敵の方が一枚上手であり、無言で放たれた拳が命中してしまったのだ。
「中々であった。だが我は止まれん――さらばだ」
初瀬の方へ向かわんと、汽車怪人は身を翻す。
――その瞬間。
突如として彼の太ももに、絵にも言われぬ激痛が走ったではないか。
「ぐ、が……なにぃ
……!!」
「まだです……っ!」
正体は驚く事にネーヤだ。でも、先ほど拳を受けてしまった筈では……?
実は彼女、【豊穣の加護(ホウジョウノカゴ)】と呼ばれるユーベルコードを行使し、超回復する特異体質へと一時的に変わったのだ。それで“キ”の影響を不完全なものとし、ダメージを抑えたのである。
――しかし代償付きの離れ業だ。そうなる前に離脱するべく、ネーヤはより一層力を込めて抉り引き抜く。
「ぐお……ぉぉ――甘いっ!!」
「なんと!」
それでもと汽車怪人が手を伸ばし……咄嗟に体を傾け、迫って来ていた初瀬の攻撃を受け止めた。
完璧なタイミング故に止まるしかない初瀬。
が、その鉄仮面から含み針が飛び、怪人へ見事突き刺ささる。
「そんなものまで、あるのか!!」
「勝てば良いのでありますよ、最終的に!」
強いだけではない、卑劣さを存分に見せつけ、警戒させようと目論みニヤリ笑う。
その隙にネーヤも確り離脱しただろう。
「さあ、トーマス……天へ、帰る時が来たのだ」
何処となく別の汽車を思い浮かべそうな、そんな単語を口にしつつ、初瀬の腕が残像を残して静かに閃く。
後は奥義を打ち込むのみだ。
――いや、撃ち込むのみな筈だった。
汽車怪人が痛みに驚き、初穂の腕を放していれば。まだしっかり握っていなければ……!
「あぐぅ……!」
そしてネーヤもまた代償として呪縛を受けてしまい、動きが格段に鈍い。
決定的なその間隙を、怪人が逃すはずも無かった。
しかして2人も中々のモノ。
「せいやぁ!」
「もう一度
……!!」
手刀が幾度となく命中し、また短剣が足元を執拗に抉る。――その束の間にビビビビッ、と何かを叩く音もする。
途端、初瀬の腕から血が流れだし、ネーヤの体も脈動しては強引に何かを抑え込む。
「まだ、は……こちらのセリフでなぁ!!」
そして怒声と共に引き絞られた拳が、両者へ向かって徐に放たれた。
「ハァァアアァァァァァァァァ!!」
「わばばば!?」
「はぶぶっ!!」
何発かは喰らいながらも、ユーベルコードと哀しみの奥義で致命的な傷を裂けて行く二人。
其処で漸く隙を見出し、後方へ飛びしさった。そして互いに振り向き確認し合う。
「同時に行けるでありますか?」
「は、はい! 体は重いですがまだ何とか!」
大丈夫だと答え頷こうとしたネーヤ。
――だがしかし、その目を驚愕に見開いていく。
「は、初瀬さん……何で背中向けて抱き着いて!?」
「何故いきなり……ってネーヤも!」
「あ、あれ、あれ!?」
一体どういう訳かお互いの背に手を回し、思いっ切り抱き合っているのだ。
そんな彼女達へ汽車怪人は徐に詰め寄ると、静かに指で額を突く。
「良く戦った者達への情けだ。痛み無く、また別々ではなく共に行くがよい――先までの力を見て我もまた一つ学んだのだよ」
そう呟き、進歩を喜ぶ怪人の言葉は、既に二人の耳に入っていない。
「あ、あぁ、あぁぁぶぶうぅぅ!」
「へ、えへ、えべええぇぇぇぇ!」
痛みも無いまま未知の感覚に戸惑い、また互いの体を折らんばかりに抱きしめ合い続ける2人。遂に、不気味なまでに、全く音が聞こえなくなった。
そしてそれを合図としたかの様に――。
「はつ、つせさぼぉぉぉぉぉぉぅ!?」
「ネッ、ネーヤバアアァァァァッ!?」
ぶくっと体が少しばかり膨れ、ボボオオオン!! と一気に爆裂。
ネーヤも初瀬も、同じタイミングで煙の向こうへ消えて行った。
「すまんな。――我が鉄道の道は、止まれんのだよ
……!!」
「何カッコつけてるんでありますか」
「二回も爆発させて、許しません!」
「え? なぜじゃぐへああぁぁ!?」
……とまあ最後っ屁で思いっ切り殴り飛ばされ、切刻まれ、汽車怪人はこれまでの怪人宜しく格好良く決める事をゆるされぬまま、思い切り転がって行く。
オマケとばかりに拳圧と投刃が、ド派手なエフェクトを上げてぶつかる。
上がる悲鳴。
「酷い目に合ったであります――奥義が続いている間に離脱であります!」
「私もあと少しなら……早く逃げましょう……!」
ともあれキッチリ攻撃を決め、二人は離脱したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
【聖】
●POW
トリニティ・チルドナメロウを攻撃力重視で発動
残像にオーラ防御と属性攻撃(凍結)をコーティングし『殴ったら凍結する実体分身』を生成し見切りと第六感と盾受けを併用し、受け流し罠にハメつつ翻弄
冷凍クロマグロソードをディメイション・チョップスティック(パイルバンカーモード)に連結させ拳に接続
攻撃に属性攻撃(水餃子)と鎧無視攻撃を込め2回攻撃と早業で一撃離脱しつつ、水餃子の様なしなりを持つ鋭い凍結した斬撃を
捌ききれない攻撃はオーラ防御と激痛耐性と覚悟で受け、カウンターと捨て身の一撃、そして攻撃時の技能と攻撃方法を合わせて
飛翔なめろう水餃子っ!な斬撃で相討ち覚悟で一か八かを狙います
【OK】
テリブル・カトラリー
【神】
素人が安易に使っていい技術ではないな、これは。
そう言いながら指がなくなった戦争腕を外す
これか?キで強化しようとしたんだがな…うまくいかず爆発した!
腕を普通の腕に換装し直し、外した腕を怪人に投げ、ダッシュ
直後、怪人に当る前に腕をキで爆裂
戦闘知識から対象の移動箇所を見切り
ブースターで自身を吹き飛ばし対象に向かってジャンプ
超高熱の機械刀で属性攻撃。(鎧無視攻撃、鎧砕き)
【聖】【加殺髪】発動。密かに素早く早業で忍ばせた髪で
対象の四肢を切断。防御力を強められたら分からなかったが、
事前の属性攻撃から状態異常力か攻撃力を重視するとみた故な
握りしめた拳を思い切り振りかぶり、怪人の顔面を怪力で殴り飛ばす。
「まだだ、まだ終わるものか……鉄道のロマンを天下に布くまで、我はが止まることなどあってはならない!」
全身よりこれでもかと蒸気を大噴出させ、先までの戦闘で負った傷をまるで無いものとしたが如く、特大の気迫を持って汽車怪人は立ち上がる。
退いてはならない、退く訳にはいかない。
媚びる行いは言語道断で、己の波動を顧みるなどする気も無い。
ただ只管に“キ”の力を持って蹂躙せんとする、覇者を目指すモノの姿がそこにはあった。
……だがその果てにあるのは、望まぬ趣旨の広がりと、沿えぬ者の大虐殺。
許してはいけない。
許されない。
そしてそれ以上に―――。
「素人が安易に使っていい技術ではないな、コレは」
少し離れた位置で“核心”を捉えて呟くテリブル・カトラリーが、指部分が抉れたように吹き飛び消え失せていた【戦争腕】を外していた。
先の集団戦でも猛威を振るったその腕は、無惨一歩手前まで損壊している。
……これは怪人達の攻撃を受けたからではなく、“キ”の力を使って強化しようとして、失敗した為だ。
(いや、まさか上手く行かずに爆発するとは。敵のみならず自分にも、例え第三者が居なくとも……危険なものらしい)
リスクが御御気ならば使う手を変えるほかあるまい。
と、そう考えつつ既に通常の腕を換装したテリブルが見据える先で、汽車怪人は先にも見た【巨大機関車の幻影】を纏い直ししている。
健在とは言い難くとも、しかして強敵に変わりはない。ならば確実な方を選んだほうが良かろう。
そしてテリブルはそう思うが早いか、外した【戦争腕】を振りかぶると。
「ふん!!」
見たまま予想通り、思い切り汽車怪人へと投げつけた。
砲弾の如き勢いでかっ飛ぶその腕はしかし、距離があったからか怪人に易々対応され、受け止めるべく手を掲げられる。
「甘いわ。この程度に翻弄されるほど、我も愚かではない!」
一括しながら手に“キ”を溜めて受け止めた――と、思われたその瞬間だった。
何の前触れも無く、テリブルの【戦争腕】が大音響を上げて爆裂したのだ。
「ぬぅ!?」
これは流石に予想できなかった汽車怪人、だが勘でテリブルがダッシュしてきている事には気が付き、咄嗟に左斜め後方へ跳ぶ。
直に下がらなければ、この煙幕は逆にテリブル本人の妨げとなる筈。
故、迎え撃つべく汽車怪人は体を傾ける……。
「甘いのはそちらだ」
だが彼女の方が一歩上手だった。
ブースターを一気に吹かして、恰も己が吹き飛ばされているかのような勢いで、前方へとジャンプし詰め寄って来たのだから。
そしてその手には、超高熱の機械刀が既に握られている。
灼熱の属性を帯びたその刀身が、弧を描いて汽車怪人へと迫る――!
「否、此処で止まる我ではない!」
「む……!」
それは当たる寸前に、何処からともなく出現した光塊の剣で受け止められた。
爆裂や斬撃だけではなく、消滅を齎す光をも“キ”は現出させられると、其処でテリブルは思い出した。
……爆弾怪人が使ってこなかった所為も合わさり、虚を突く形になったらしい。
「ゼェッ! セイッハッ!!」
「―――」
猛烈な勢いで振り回される白光と、赤熱した朱き烈光が二合、三合、四合、五合と瞬く間に打ち合わされ、異質なる閃きを辺りへ散らした。
だが実体無き消滅の剣は、テリブルの機械刀を着実に削っていく。
果たして……とうとう中央を削り取られ、刀身が宙を舞う。
「これで、終いだっ!」
最早成す術も無く、振り下ろされる剣を見つめたテリブル。
……その体が、突如として“躍動”。
手に持った柄側の刀を傾けて光塊を受け流し、跳んだ刃身を殴るようにして撃ち放った。
あまりに早い切り替えに怪人は対応しきれない。鎧の様な体にもかかわらず、更にテリブルが折れた刀を振るい、幾重にも切り傷を刻んだ。
「まだ終わらぬよ――ズェエェェイッ!!」
されども技後硬直の、ほんの少しの隙は出来てしまう。
それを逃すものなどいない。
『ただ拳を撃ち込むのみ』。決めた汽車怪人のオーラが膨れ上がり、“キ”を携えし巨大な拳がテリブルへ迫る……!!
「させません!」
其処へ一つの影が、捨て身の覚悟で割り込んできた。
その影の招待はクリスタリアン。
大手を広げて立ちはだかる、ビスマス・テルマール。
躱しようの無いその一撃に、軌跡も何も起こる訳無く、ドォン! と真正面からモロに拳が命中する。
ビスマスは耐えきれず哀れ、砕け散ってしまった。……余りにもあっけなく。
「な、何だこれはぁ!?」
――そう、見たままの通りに事が進んでいたのなら。
何とどういう訳か、汽車怪人の拳が“凍り付いて”いるのだ。
光塊で消滅させるものの、凍結した事実に変わりはない。
「当然、それぐらいは予測済みですよ!」
声がした先に居た、本物のビスマスは……何時もと姿が違っている。
【冷やし孫茶のバリア】を張って。【冷製なめろう水餃子型の鎧装】を装備し。
【冷凍クロマグロソード】を手に握る。
ユーベルコード『トリニティ・チルドナメロウ』により完全武装しているのだ。
「面妖な技を……!」
【時刻表】を背後に表示し、【鉄道模型】を周囲に巡らせ、【鉄道写真】がオーラの様によぎる。
“キ”の力も合わさり倍以上の力を付与し、同質の技で汽車怪人もまた迎え撃つ。
「ぬん! ぬぅん! ぬおおおおおっ!!」
武装諸共には開戦と迫るその拳でビスマスを殴り続け。そのビスマスは砕け散り体が凍り付く。
それを振り払うべく一瞬足を止めれば――。
「せっ、はっ!!」
“パイルバンカーモード”へ移行した【ディメイション・チョップスティック】装備の拳を素早く振るい、Vの字や二の字の斬撃を瞬く間に刻んでいく。
先のオーラ分身を見てカラクリを解いていたからこそ汽車怪人は驚きを隠せない。
盾に利用するだけならば砕いてやれたのに。
――そして、氷属性を強く纏っていたと、気が付いた時にはもう遅く。
「とべっ、水餃子!!」
「うがあああぁ!?」
三度目の接近から離脱し様に、凍結した斬撃を撃ち放たれ、対処も出来ずに体を刻まれる。
撓りあるそれは単なる防御では寧ろ逆効果。
寧ろ身体へ鞭うつように、斬られる範囲を増やすだけであった。
「ふざけるな……ふざけるなぁ!!」
氷の分身など知った事か。
汽車怪人の一撃が地を砕き、鉄道を模した巨大な奔流が周囲へと一気に放たれる。
幾重にも分身を残し盾にして、凍結した部分を砕きビスマスは対抗する。
一見危ういその状況に反し……鎧下の口元に浮かぶのは“笑み”。
――もう既に、決着はついている――
「……どこを見ている、怪人」
暗殺者の如く忍び寄り、その奔流の中ですら怯まずたどり着いた、テリブルの一手を皮切りとして。
フィナーレへの道が一気に、切り開かれようとしているのだから。
「なにを――!!」
「…………」
『加殺髪(カサツシ)』。
鋼鉄製にもかかわらず、伸縮自在かつ己の意思通りに動く“髪”を呻らせ、怒鳴り振り向こうとする怪人へ一閃。
それを慌ててのけ反り避けるも、時すでに遅く更に四閃。
防御力特化ならばいざ知らず……攻撃力を求めた汽車怪人に、その切断技を防ぐ手立てなどない。
結果派手にスパークしながら、その四肢がきれいに吹き飛んでいく。
「う、腕が……足が!? ――だがっ!!」
何という執念。なんという情念。
恐ろしいまでの熱意が汽車怪人を支え、光塊で手足を作るという荒業に打って出させた。
消滅を常に放つその四肢が地を焼き、定まらぬままに空を斬り裂いて光拳が飛ぶ。
対し、テリブルの行動は冷静沈着だった。
しっかり握りしめた拳へ“キ”を注ぎ込み、軽く体を捻って拳を避け――。
「はあああぁぁぁっ!!」
「うげああぁぁぁ!?」
見事なまでのカウンターを顔面へと叩き込んだ。
殴り飛ばされた怪人は放物線どころか一直線を描き、彼方まで消えんばかりの勢いで宙を滑ってゆく。
その先に居るのは――濃密な冷気を湛え、【冷凍クロマグロソード】を備えた腕を広げる、ビスマス。
汽車怪人は否応なく、飛ばされた地点で待ち受ける結果を悟り……。
「無様で終わるものかっ! 否……終われる、ものかあああぁぁぁ!!」
だからこそ最後に気炎を放ち、体勢を入れ替えその拳を振りかぶり、逆にビスマスへ突っ込んでいく形をとる。
ほぼ捨て身の攻撃は、背水の陣故の恐ろしさを吹きつけてきた。
生中な一撃では……恐らくまた逆転されてしまう。
「であるのなら此方もまた、捨て身で行くのみです!!」
ならばと言じ、目を伏せ、なんと彼女も怪人目掛けて躊躇いなく飛び出す。
凍結の蒼光が。消滅の白光が。
「奥義・浪漫鉄道切斬破あぁっ!」
「奥義・飛翔なめろう水餃子っ!」
刹那に交錯……奥義同士が、激突する――!!
「―――」
「―――」
不気味なまでに静かで、硬直する程に穏やかな空気が、二人の間を支配した。
奥義を打ったそのままの格好で、ビスマスも、汽車怪人も、ピタリと止まっている。
風に吹かれ、瓦礫転がり髪が揺れ……まるでそれが影響したかの様に……。
「う――!」
ビスマスが片膝をつき、粗く息を吐いて。
「……ビスマス」
テリブルが顔を伏せた――瞬間。
「バ、バカな……こんなバカな、事がアアァァァ
……!!?」
「――見事」
汽車怪人の体に亀裂が走り、どちらの奥義が勝利したのかを、悠然と物語る。
ビスマスの力が打ち勝ったのだ。
「……フ、フフ……バカな事ではなかったか。我が弱かった、それだけの事……」
何かを察し、納得したように怪人は呟き、その亀裂を寧ろ広げるように己の体を斬り裂いて見せる。
「故に、こう叫ばせて貰おう!!」
天を仰いで拳を突き上げ、雲の切れ間から刺した光を受けながら、最後の一言を高らかに告げた。
「我が生涯に――ヒィィィィベエェェドゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「「…………」」
そして告げる前にズガボオオオォォオンッ! と非時はど派手に爆裂して消えた。
まあ“キ”の力がこもった一撃を二度もくらっていれば、そして例外が無いならどうなるかなど自明の理であり……。
「因果応報、でしょうかね?」
「ああ……かも、しれないな」
……結局最後の最後まで格好付かぬまま、此度の戦は猟兵達の勝利に終わったのであった。
〇
後日。
集まった猟兵達総出で、此度の謎能力に纏わる『陣』や『メカ』の尽くを破壊して周り、傷ついたキマイラフューチャーの住人達へ簡単なアフターケアも行って……漸く事件は終息を見た。
敵のみ――かどうかはさて置き、凄惨な結果をもたらした謎の力、“キ”。
理由はどうあれ、一途に願いをかなえようとした、オブリビオン達。
その存在は忘れられていくのだろう。
だがそれでも尚、記憶に残るものは一つある。
それは、彼等を解放した猟兵達……ヒーロー、いや救世主の存在。
また出会う事もあるだろう。
願わくばその事件にもあわず、残虐など程遠く……後、健やかに過ごせるのが理想だ。
しかしもし、万が一何かが起こったのならば。
記憶の中の彼らを呼べば、きっと駆けつけてきてくれる筈だ。
……理不尽あるオブリビオンを、下し葬る頼もしき猟兵達が。
きっと。
――世紀末猟兵「HIBEDO」伝・完―――
大成功
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