●王笏、再び
サクラミラージュの動乱は続く。
カタストロフを防ぐため奮戦する猟兵達に、ヴェルタール・バトラー(ウォーマシンの鎧装騎兵・f05099)は新たな戦場を示した。
「【第一戦線】、此度の敵は、『カルロス・グリード』でございます」
元々は、『グリードオーシャン』のオブリビオン・フォーミュラだった存在だ。
かねてよりサクラミラージュで暗躍していたカルロスは、各地に潜ませていた海賊船型秘密基地『
カルロスの錨』を、一斉に出港させた。
「この特殊な海賊船は、備えられた飛翔能力を生かし、上空から帝都に侵入してまいります。船内は、幻朧戦線がこれまで造り出した、数多の影朧兵器が積載され、それはもう、武器庫の様相でございます」
カルロスの目的は、破壊。兵器を用いた無差別攻撃によって、サクラミラージュの大地の崩壊を目論んでいるのだ。
「全ては、幻朧帝の復活のため。カルロスがここまで準備を整えてきたのです、目的の成就は、世界や猟兵にとって見過ごす事の出来ない災いの訪れを意味することでしょう」
しかし、敵戦力の全てを相手している余裕はない。
そこで、艦隊を率いるカルロス・グリードに、船上で直接対決を挑むのだ。
「幻朧戦線将校となったカルロスは、『サクラミラージュ』の力を具現化しております。改良型影朧甲冑『王笏甲冑』を操縦し、超高速戦を仕掛けて参ります」
更に、敵のユーベルコードは、こちらの先手を打つ。
甲冑と絶対先制に対抗する術を用意しなければ、カルロスを破る事は叶わないだろう。
「『カルロスの錨』を相手にするより、ただ一体を相手取る方が容易いと、そう前向きに捉えるのが吉かと。ではガツンと一発、カルロスの目も覚めるような打撃を浴びせてやるといたしましょう」
そしてヴェルタールは、桜見下ろす空の艦上へと、猟兵達を送り出すのであった。
七尾マサムネ
こちらは『帝都櫻大戰』シナリオの1つです。一章で完結します。
敵は、カルロス・グリード一体です。分身体ではありますが、その実力は当然あなどれません。
●プレイングボーナス
敵の先制攻撃ユーベルコードと「王笏甲冑」による戦闘力強化に対処する。
それでは、皆さまのご参加、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『カルロス・グリード』
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POW : 王笏光線銃
【影朧甲冑「王笏甲冑」の持つ光線銃】に【デモノイド細胞】を注ぎ込み変形させる。変形後の[影朧甲冑「王笏甲冑」の持つ光線銃]による攻撃は、【肉体変異】の状態異常を追加で与える。
SPD : 幻朧戦線のエースパイロット
自身が操縦する【影朧甲冑「王笏甲冑」】の【回避力】と【命中力】を増強する。
WIZ : 影朧甲冑軍団
【海賊船型秘密基地『カルロスの錨』】からレベル×6体の【影朧甲冑】を召喚する。[影朧甲冑]は弱いが、破壊されるまで敵を自動追尾・自動攻撃する。
👑11
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メルガシェラ・トヴェナク
ああ、こちらでも戦争の時期が来ましたね
戦争は好きです、食べていいものばかりだから
今回は飛空艦の上での戦いなんですね
空は飛べるけれど、そちらに逃げなくても大丈夫そう
捕食ナノマシンの群体として、足元を捕食して艦内に逃げることで先制攻撃を避けますね
そのまま艦内の兵器や船員を食べ尽くしてもいいけれど、それは後にしましょう
どうやらごはんを増やしてくれるみたいですから
たくさんの甲冑さん
こんなに数が多いなら、多いほど強力になるこの技でいただきますね
前菜を頂いたら次はメインですね
捕食で増殖した捕食性ナノマシンを広げて、全方向から捕食を狙います
本体の一部を艦内に送り、兵器を捕食して増殖させ、不意打ちも狙いますね
グリモア猟兵による世界転移を受けたメルガシェラ・トヴェナク(スノウ・ドロップ・f13880)が真っ先に体感したのは、戦場色の空気だった。
「ああ、こちらでも戦争の時期が来ましたね」
戦争は好きだ。なぜなら、
「食べていいものばかりだから」
メルガシェラは、感知する。ここが遥か空、飛空する海賊船の上であることを。
ちらり、向けた視線の先には、肩を並べる雲。
「空は飛べるけれど、そちらに逃げなくても大丈夫そう」
「来たか、六番目の猟兵よ」
待ち構えていたのは、カルロス・グリード。サクラミラージュに相応しき服装に身を包んでいる。
「我が前に立ったからには相応の覚悟があるのだろう。容赦はせんぞ」
そして、カルロスは、『王笏甲冑』を纏った。同時に、艦各部から射出される影朧甲冑。
瞬時に、構築された自動甲冑軍団とともに、カルロスはメルガシェラへと一斉攻撃を仕掛けた。
カルロス機以外は大した戦力ではない。しかし戦いとは数。一度に押し寄せられれば、蹂躙の運命は避けられぬ。
しかし。
甲冑群に押し潰される寸前、メルガシェラは落下した。
否、捕食ナノマシンの群体として、自身の足元部分を捕食。海賊船内に退避を遂げたのだ。
敵の先制をしのいだメルガシェラは、船内を見回した。
メカニズムの塊。搭載された兵器や、船員達をこのまま食べ尽くしてもいいかもしれない。
しかし、それは後回し。なぜなら、
「どうやらごはんを増やしてくれるみたいですから」
メルガシェラは、再び艦上に復帰した。標的を見失った影朧甲冑達の背中を眺める。どこか、うっとりとした表情で。
「たくさんの甲冑さん……こんなに数が多いなら、この技でいただきますね」
メルガシェラは、上品に口元に手を添えると、吐息をこぼした。それは、捕食性ナノマシン。特性は、敵が多いほどに威力を上昇させる、というもの。
その条件を、影朧甲冑達は、十二分に叶えてくれた。
数は力……その力をわが物に転ずると、敵群を食らい尽くしていくメルガシェラ。
「前菜は頂きました。次はメインですね」
王笏甲冑を、優雅に振り返るメルガシェラ。
「我が影朧甲冑共を喰らい、力を増したというのか」
カルロスが指摘した瞬間、機体の足元から、ナノマシンが襲い掛かった。ひそかに船内の兵器を喰らって増殖した一団だ。
不意打ちにより、態勢を崩した王笏甲冑の装甲が、喰らわれる。メルガシェラが大増殖させたナノマシン群の食欲に、呑みこまれて。
大成功
🔵🔵🔵
フィーナ・シェフィールド
大地を破壊するなんて…この世界を、生きる人たちを守るため。
「貴方を倒します!いざ、尋常に勝負!」
とは言え、1対1での勝負、とはいきませんか。
まずは影朧甲冑を蹴散らしましょう。
シュッツエンゲルにモーントシャインのオーラを纏わせ強化して攻撃を受け流しながら、同じくオーラを纏った脚でカウンターの蹴りで反撃。
囲まれないよう空中も含めた立体的な動きで移動しつつ、1体ずつ迅速に破壊していきます。
「次は貴方です!」
最後の一体をカルロスの方へ蹴り飛ばしつつ、その死角からの踏み込みで【聖なる破魔の一撃】を放ちます。
仮に外れても、聖印によって強化された次の一撃、必殺の後ろ回し蹴りをカルロスに向けて叩き込みます!
『カルロスの錨』。
その船上で、フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は、世界の破壊者と対峙していた。
禍々しさと高貴さを同時にたたえた『王笏甲冑』にて武装した、カルロス・グリードと。
束の間、まぶたを閉じたフィーナの心には、怒りが渦巻く。
(「サクラミラージュの大地を破壊するなんて………この世界を、生きる人たちを守るため」)
開眼は、決意とともに。
「貴方を倒します! いざ、尋常に勝負!」
「尋常に、か。あいにくと我もオブリビオンなのでな」
王笏甲冑が身じろぎすると、『カルロスの錨』の各所から、影朧甲冑が相次いで出撃した。
数えるのもおっくうになるほどの影が、フィーナを圧し潰そうと迫りくる。
「1対1での勝負、とはいきませんか」
ならば、まずはカルロスとの相対に水を刺す、影朧甲冑どもを蹴散らす!
フィーナは、中空にシュッツエンゲルを舞い踊らせた。その数は多くとも、敵群には及ばぬか。ゆえに量より質。
モーントシャインのオーラを纏わせることで、バリアを発現。拡張された防御範囲と硬度で数的不利に抗うと、敵群の執拗な攻撃に耐えていく。そして。
輝く一閃、月光のオーラを纏った脚によるカウンターが、敵機を破砕した。
飛び散る火花が、反撃開始の合図。
機動力では、翼持つフィーナが上。地上のみならず空中までも戦場とするフィーナの立体的な挙動に、敵機は、まるで追随できぬ。
一体、また一体と破壊され、船上に鋼の破片が降り積もる。
「さあ、次は貴方です!」
ラスト一体の残骸を、カルロスの顔面へと蹴り飛ばしつつ、フィーナが前進した。
ほかならぬ味方が足かせとなり、カルロスの視界を塞ぐ。その隙に羽ばたき、死角へと回り込んだフィーナが、渾身を放つ。
【
聖なる破魔の一撃】!
溢れる黄金の輝きが、王笏甲冑を、そしてサクラミラージュの空までをも照らす。
「我が野望、その程度の光で打ち消せるものか」
渾身をこめたフィーナの一撃を、王笏甲冑は、すんでのところでかわした。王笏専用機の高性能ゆえに為せる業だろう。
しかし、フィーナは、一度で諦めも、許しもしなかった。
「何……!」
刻まれた聖印により強化された二撃目。威力を一層増した、フィーナ必殺の後ろ回し蹴り!
それを喰らった王笏甲冑は、叩きつけられた衝撃を殺しきれず、高くバウンドしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
カルロスの錨か……。全てに対処するのは不可能とはいえ、もう少し潰しておくべきだったな……
ま、過ぎたことを悔やんでも仕方ない。ここでカルロスを倒してしまえば帳尻は合うからな
神刀の封印を解除。神気を纏う事で身体能力を強化してカルロス達と相対
影朧甲冑の数が多くとも、一度にかかってこれる数は限度がある
敵同士を壁にする形で動き回り、折を見てすれ違いざまに神刀で一撃斬りつけていく
一撃では倒せないのは分かっている。これは仕込みだ。十分な回数だけ甲冑に攻撃をしたなら廻・肆の秘剣【黒衝閃】を発動
甲冑達に刻んだ傷跡を範囲として敵たちを攻撃
ダメージを受ければカルロスの甲冑も速度は落ちるな?ここから斬り込んでいこう
空進む船の上。夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は、敵地へ乗り込んでいた。
「『カルロスの錨』か……全てに対処するのは不可能とはいえ、もう少し潰しておくべきだったな……」
「六番目の猟兵よ、己の無力を悔やむならば、戦の舞台から疾く降りるがいい」
鏡介に、カルロスが告げる。影朧甲冑の研究成果、『王笏甲冑』を纏って。
「聞けない提案だな。ま、仕方がない。ここでカルロスを倒してしまえば帳尻は合うからな」
甲冑に閉じこもる敵を討つべく、鏡介は、神刀の封印を解いた。
この時を待ち焦がれていた、とでもいうように、溢れ出した神気が船上を駆け抜ける。それを制御、収束させ、自らを包む。
相手が甲冑を纏うのならば、こちらも神気という名の鎧を用いるまで。
「確かに、数多の戦を潜り抜けてきたその実力は確かなもの。ゆえに、こちらも容赦はない」
王笏甲冑が、腕を掲げた。
『カルロスの錨』の各部が展開し、格納されていた兵力……影朧甲冑の群れが出現する。
船を埋め尽くすほどの数。
単騎での戦力は、指揮官機たる王笏甲冑に遠く及ばない。それでも、数は脅威だ。
「ゆけ」
王の命令が、甲冑を進撃させる。
しかし、その足音の数も、鏡介の戦意を揺らがせることはできない。
「いくら数が多くとも」
一度に攻めかかってこられる数には、限度がある。
船上=戦場を駆け回る鏡介。実際、敵が、一気に攻めてくることはなかった。攻める事自体が叶わない。お互いの躯体そのものが、障害になっているからだ。自動追尾機能が、仇となったか。
殺到する敵を、壁として利用。動きの中に隙を見出し、すれ違いざま、神刀で胴を薙ぎ払う。
一撃で仕留められずとも構わない。これは布石だ。
攻め込んでくる甲冑達に、次々と刀傷を刻んだ後、鏡介は、本領を発揮した。
「砕き散らせ、黒の剛撃――廻・肆の秘剣【黒衝閃】」
突き立つ神刀。
装甲に刻まれた傷跡が、起爆剤となる。
甲冑達を、一斉に、黒が染め上げた。傷を起点として噴出した、黒き神気の炸裂。それが影朧甲冑達を破壊へと導く。
『壁』の崩壊により、鏡介の視界が開けた。今こそ敵の首魁を狙う時。
王笏甲冑にも、損傷が刻まれている。神刀を構え直した鏡介は、果敢に斬り込んだ。
損傷し、減速した敵ならば、捕まえられぬはずは……ない!
「我の速度域に入り込んでこようとは……!」
神刀と王鎧、火花散らす中、王笏甲冑が、呪詛にも似た言葉を吐き出した。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
カルロスしつこい
しかもまた何か変なの付けてるし
ここで決着つけてあげよう
船上に降りたら幅広の大剣にした灯る陽光のオーラでオーラ防御
そのままざっと周囲を見渡し情報収集してダッシュ
船上は広いといっても砲台や段差があるから悪路走行でスピード落とさず、それらを盾にし、逃げ足、見切り、武器受けも駆使して召喚された影朧甲冑の攻撃を躱してこ!
見晴らしよい大砲の上へとジャンプし影朧達とカルロスの位置確認
ん、【華雲領域】
甲冑を光で射て、外れた分はわたしの戦闘力強化に回そう
そして灯る陽光を槍状に変化させ、カルロス目掛け怪力で一直線に槍投げる
案外と長らく戦って来たけどここが年貢の納め時
もうでて来ないで?
『カルロスの錨』。
恥ずかしげもなく主の名を冠した飛行型海賊船に舞い降りていく木元・杏(お揃いたぬき・f16565)は、主そのひとに直接意見を述べた。
「カルロスしつこい」
船の上で待つ、『王笏』の眉間にしわが寄った……かどうかはわからない。なぜなら、既にその身は『王笏甲冑』の内。
「しかもまた何か変なの付けてるし。ここで決着つけてあげよう」
「変なの……だと……」
しゅたっ、と戦場に降り立つなり、杏は剣をかざした。
『灯る陽光』は、杏の意志を絶妙に汲んで幅広の大剣となると、オーラを宿した。
居並ぶ『影朧甲冑』達は、早くも杏の迎撃態勢を整えていた。これぞ先制攻撃の極み。
ざっと戦場たる船上を見渡し、その構造配置を把握しつつ、杏はダッシュ。
備えられた砲台や段差が、杏の加速を妨害する。しかし、悪路走行の技を駆使して、減速回避、むしろそれらを盾としてお借り。
迫りくる影朧甲冑の魔手を、逃げ、見切り、あるいは大剣で受け流し、カルロスの元へと前進続行。
対する影朧甲冑達にも、迷いはなかった。全自動で侵入者……杏を倒すだけの簡単なお仕事。
「けれど、言うは易し」
たんっ、と床蹴り、跳躍。着地点として選んだのは、見晴らしのよい大砲の上。
「ん、【華雲領域】」
地上に舞う花は桜。
されど今、杏のいる戦場に舞う花は、一種類にとどまらぬ。
なんなら気候や季節も問わずに躍って、甲冑達を惑わせる。華の舞の中、駆け抜けるは、白銀の光。
1体、また1体と、銀光に打ちぬかれ、機能を停止していく。
「六番目の猟兵よ、この物量にはかなうまい」
カルロスの言うとおり、敵の数はやたらに多い。四方八方へと放たれた光のほとんどは、敵へと命中したが、僅かながら、船そのものを灼くものもあった。
杏は、敵が殺到してきた砲台に別れを告げて、光の着弾ポイントへとジャンプ。その領域で戦えば、杏の戦闘力は増強される。
並みいる甲冑を穿ち、薙ぎ払いながら、進む杏。やがてその先に、特注の甲冑を捉える。王笏甲冑だ。
いよいよ、怪力の出番。
灯る陽光を槍状に変化させると、甲冑の中身たるカルロス目掛け、一直線に投擲!
とっさに盾にした影朧甲冑を貫き、見事、王笏甲冑へと突き立った。
「案外と長らく戦って来たけどここが年貢の納め時」
しゅたっ。
再び着地した杏は、槍を引き抜こうと抗う王笏甲冑を見つめて、忌憚ないご意見を口にした。
「……もうでて来ないで?」
大成功
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ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
幻朧桜を女神に捧げて、一緒に花見でもするのかい?
まったく、余計な仕事を増やさないでほしいもんだ。
さて、まずは光線銃の攻撃を防がないとね。
速度で上回られてたら避けるのは難しいし斧で光線を防ごうか。
まあ最悪急所に当たらなければ、多少肉体変異したところで困るほど整った体はしてないしね。
攻撃を防いだら【万喰閃光】を発動。
光線銃と、ついでに足元の船や積んである影朧兵器からエネルギーを吸収して、
閃光に変えて放出して攻撃するよ。
相手の動きが速いんだったら、避けられないほど広範囲に攻撃したらいいよね。
こっちも忙しいんでね。
横槍を入れてくるような輩にはさっさと消えてもらおうか。
様々なユーベルコードによる傷を抱えた『王笏甲冑』と最後に対峙したのは、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)だった。
「幻朧桜を女神に捧げて、一緒に花見でもするのかい? まったく、余計な仕事を増やさないでほしいもんだ」
カルロスの目的を揶揄してみせるペト。
「まあ、本当の目的までぺらぺらと喋ってはくれないか。仮にもオブリビオン・フォーミュラだったわけだし」
「六番目の猟兵よ。我が悲願が叶えば、ここで一々語る労苦も不要」
要するに邪魔をするな、ということだ。
もっとも、カルロスとて、猟兵が身を引く事などない事くらい百も承知。
ゆえに、開戦する。
王笏甲冑が構えた光線銃は、一瞬で変形を終えていた。いや、それは変化、変身というべきものであったかもしれない。デモノイド細胞などというものによる変異なのだから。
完成とともに迸った光線が、標的を狙う。
標的……ペトは、これを防ぐのは不可能と割り切った。
盾とした斧とぶつかり合った光線が、まばゆい飛沫を上げる。これがペトに直撃していたならば、変異は避けられなかったであろうが、
「最悪急所に当たらなければ、多少肉体変異したところで困るほど整った体はしてないしね」
キマイラならではの割り切り。あっけらかん、と告げると、斧を振るって光の残滓を振り払った。
「今度はこっちの番」
ペトの元に、エネルギーが集中し始める。
「多少力を高めたところで……?」
王笏甲冑が、小首をかしげるような動作を見せた。
ペトのエネルギーが上昇していくのに反して、『カルロスの錨』の高度が低下し始めたように見えたからだ。
船主たるカルロスには、それ以上の異変が理解できたらしい。
「船のみならず、搭載された兵器群のエネルギーまでも簒奪しているのか?」
それは、王笏甲冑も例外ではなかった。
危険を感じたカルロスが、再び仕掛ける。最大の能力は、鎧とは思えぬその速度。
しかしペトは、光速で対応した。
ペトから放出された閃光が、周囲の構造物ごと、全てを呑みこんだ。相手の動きが速いのならば、避けられないほど広範囲に攻撃したらいい、という思想の元に。
王笏甲冑の装甲にひび割れが生まれ、駆け抜け、砕ける。内なるカルロスの顔を晒すほどに。
「おのれ、我が王笏甲冑を破るとは……!」
「こっちも忙しいんでね。横槍を入れてくるような輩にはさっさと消えてもらおうか」
甲冑ごと光の向こうに消えゆくカルロスに、ペトニアロトゥシカがそう告げたのだった。
大成功
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