帝都櫻大戰④~よもつひらさかへようこそ!
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アノネ。
結婚シヨフッテ、言ハレタノ。
デモ、船ニ女ハ乗レナヒカラツテ、袋ニ入ツタノ。
嘘ダツタノ。
全部、ゼンブ、嘘ダツタノ。
――どうせ売る女なんだ、落としちまえ!!
ヤメテ。
触ラナイデ。
落トサナイデ、ヤメテ、死ニタクナヒ、モウ死シニタクナヒ、イヤダ、
モウ落チルノハ、イヤダ、
――ダカラ。
一緒ニ行コウ? コノ、よもつひらさかヘ……
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「――サクラミラージュも一枚岩ではない」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は寂しげに言う。
其れは人間を理解しきっていない存在が、人間に少々失望してしまった時の表情なのだが、果たして其れを理解出来る猟兵は何人いるだろうか。
「玉もいれば屑もいる、というだけの話なのだが……いや、まあ良い。“彼女ら”の生前から死を語るより、先に今起こっている事を話すべきであろうな。帝都各所に“逢魔が辻”という場所があるのは知っているか?」
影朧が湧きだす場所の事をそう呼ぶそうだ、とヴィズは語る。其処は必ずしも辻という訳ではないのだが、今回は帝都東部にある四辻なのだという。
「幻朧帝の影響だろう。逢魔が辻が暴走し、“黄泉の国”じみた様相になってしまった。アレだ。蛆が生えた女がいるとか、岩で塞ぐとかそういう奴だ。地形も酷いものでな。もとは中央を最深とした坂道だったのだが、今は血と泥、そして蛆の這う腐海になっておる。蛆たちはお前達の肉体を腐敗させ得る力を持っている、心してかかれ」
地形自体は同じなので、作戦に利用できるならばするとよい、とヴィズは頷く。
――そうして、何処か寂しげに視線を逸らした。
「今回の影朧はね、死にたくなかった女たちだ。騙されて、袋に入れられて、詰めたのがばれそうになったからと海に捨てられた。皮肉よな、そんな我らが今度は坂を下り、彼女らを斃すのだ。――救われぬ女たちよ。……ねえお前達、これはあたしのたわごとだが……」
袋の中だけは覗いてやってくれるな。
魔女はそうとだけいうと、黙々とグリモアの扉を開いた。
key
こんにちは、keyです。
とんでもねー話もあったもんだ。
●目的
「黄泉路の影朧を鎮めよう」
●戦争シナリオ
今回のシナリオは1章で終わる「戦争シナリオ」です。
お誘い合わせの方以外は、基本的にお一人ずつの描写になります。
●プレイングボーナス!
「影朧の『黄泉変異』に対処する」
「元の街の地形を利用する」
●戦場、敵
戦場は帝都東部の四辻となります。此処は元々“逢魔が辻”と呼ばれ、影朧がよく出没するポイントでした。
しかし今回の戦乱で逢魔が辻が暴走し、現在では血と泥と蛆の海となっています。(大体踏み込むと膝くらいまで埋まります)
地形としては簡単で、中央を最深とした下り坂な感じです。
敵もこれに伴い、『黄泉変異』と呼ばれる変化をきたしています。
今回は蛆が袋と腕に群がった影朧です。蛆に噛まれると腐敗ダメージを受けます。腐ります。(地形の蛆も同じ力を持っています)
●プレイング受付
オープニング公開され次第プレイング受付開始です。
〆切はタグ・マスターページ・Xにて適宜お知らせ致します。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『南京袋の女たち』
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POW : イヤ! ヤメテッ!
【爪や噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャーッ!
【激しい悲鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ヤメテッ! サワラナイデッ!
全身を【南京袋】で覆い、自身が敵から受けた【怪我と心の傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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神臣・薙人
死にたくなかった
その気持ちは私にも分かる気がします
生にしがみ付いたからこそ
私はここにこうしているのですから
到着後すぐに血風紅桜使用
集めた桜花に乗って飛翔状態で戦います
耳に届く音や肌に感じる空気の動き等で相手の位置を把握
袋の中にだけは絶対に目を向けません
…男に見られるのは彼女らも苦痛でしょうから
腐海に触れないよう高度を保ち
掌から桜花を飛ばします
叶うならば相手が腐海の底へ行くように
下り坂へ向かう位置から攻撃
傷付いた個体がいればとどめを刺すようにします
南京袋が動く気配がすれば
桜花を飛ばすか白燐蟲をけしかけ
体を包む事を妨害
一緒には行けませんが
苦しみを長引かせたくないのです
蛆虫に噛まれた場合は桜花で治療
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神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は桜の精だ。かつてシルバーレインで致命傷を負い、其の際に神隠しに遭って――気付けば頭に桜を掲げていた。
だから、彼女らの『死にたくない』という気持ちが判る気がする、と其の瞼を伏せた。生にしがみ付いたからこそ、彼も、そして彼女らも、この地獄のような場所にいる。
「ヤメテッ……ヤメテ! 触ラナイデ!」
「大丈夫です、絶対に目は向けません」
安心させるように薙人は言いながら、掌から無数の桜を召喚する。桜吹雪の上に乗り、足を確認すれば、僅かに腐敗が始まっていた。どうやら此処の蛆は素早いらしい。
ちくり、と掻き毟りたくなるような肉の痛みに耐えながら、召喚した桜花で傷を癒す。
「貴方がたと一緒に行くことは出来ません。――ですが、苦しみを長引かせたくもない」
だから、終わりにしましょう。貴方がたの苦しみも、この戦いも。
薙人は桜花の風をけしかける。地獄を駆け抜ける一条の光の如く。耳と気配だけで南京袋を被ろうとする
其れの位置を探り、決して目は向けぬようにしながら白燐蟲と共に桜花が飛ぶ。
「キャッ!? イヤッ! イヤ!!」
「……ッ、大丈夫、……大丈夫、ですから」
非情になったつもりでも、非情になりきれない。
其れが薙人の良さであり、弱点でもあった。桜花に包まれ刻まれる女たちの悲鳴に痛むように表情を歪め、しかし蛆と血に満ちた大地に降りることもできず、静かに女たちを骸の海へと還す事しか出来ない。
――癒す為に。斃す為に。
桜花は狂い咲いて旋風を巻き起こし、女たちを骸の海へ帰していく。
「ワタシタチハ、倖セニナリタカツタダケナノニ……」
そんな嘆くような声が、いやに耳についた。
大成功
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大鷲・鼎
…さぞ無念だったでしょう。しかし、より多くを死へと誘う以上は止める他ありませんね。
…ええ、その尊厳は守りますよ。それが礼儀でしょう。
閃電機関を常時稼働させ、体表を常に高電圧で覆い、寄ってくる蛆を片っ端から焼いて当面の安全を確保。念の為ガスマスクもしておきましょう。
視界を広く保ち、爪や噛みつき攻撃は予兆が見えた時点で回避から強襲脚へと繋げましょうか。破砕よりも焼く事を重点としましょう。
恨んでくれても良い…手荒ですが私にはこれが精一杯。それでも、どうか安らかに。
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極めて大鷲・鼎(試製三號・f43179)は冷静だった。
あらかじめ己に埋め込まれた閃電機関を稼働させ、体表を高電圧で覆う。黄泉路へ踏み入った鼎に何も知らずに這い寄った蛆が、ジュッ、と灰も残さず焼かれて消えた。
「さぞ無念だったでしょう。しかし、より多くを死へと誘う以上は止める他ありません。――……尊厳は守ります。其れが礼儀でしょう」
ガスマスク越しに語り掛けた言葉は、果たして女たちに届いたのかどうか。女たちは或いは這いずり、或いは穴から足を出して駆け回り、鼎へと接敵する。
「イヤ! イヤ! 死ニタクナヒ!」
「助ケテ! 帰シテ! ワタシタチヲ売ラナヒデ!」
「もう大丈夫です。――本当ですよ。でも、少し手荒になります。恨んでくれても構いません、其れでも私は祈りましょう」
女たちが接近する。鼎は其の手と南京袋を見て素早く跳躍する。
「――安らかにと」
女たちの腕が宙を掻く。其れは或いは助けてと伸ばされた手だったのかもしれない。
鼎は攻撃の手こそ躱したが、助けを求める手を心中で取った。
だから、この一撃に容赦などしない。其の瞬間出せるだけの最大の電撃を纏い、まさしくいかづちとなった鼎は、急降下して女たちへと蹴りを見舞う。
轟音とともに、血と泥の大地に穴が開く。血と泥はすぐさまに押し寄せてしまうが、女たちはそうはいかなかった。悲鳴を上げる暇もない。南京袋はあっという間に燃え尽きて――鼎は静かに目を閉じた。
其の中身が燃え尽きたのも判っていたから。……見ない、と決めていたから。
大成功
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夜刀神・鏡介
世界が統一されていると言っても、そこに住む人々の心までが一つになっている訳じゃない
当然といえば当然だが……まあ、辛いもんだな
神刀の封印を解除して、即座に廻・弐の秘剣【金翼閃】を発動
ひとまず周辺の血と泥、蛆達を纏めて吹き飛ばしてから斬撃痕に飛び移り
その後もできるだけ地に足をつけないように、斬撃痕などを足場に女たちの元へと移動
心情的な都合もあるが、単純に動きづらいし負傷する訳にはいかないしな
空気の震えなどから叫び声の予兆を感じ取り。音を切り裂き、そして踏み込み一刀両断
済まないなどとは言わない。世の中にはどうしようもない事だってある
だが……それでも。だからこそ、できるだけの事はやるさ
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世界が統一されているといっても、其処に住む人々の心までが一つになっている訳じゃない。
だからこそ世界には諍いと争いが絶えないのだから。
「当然といえば当然だが――まあ、辛いもんだな」
神刀の封印を解きながら、憂うように夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は呟いた。黄泉路の泥が其の靴先に触れる前に鏡介は跳躍し、斬撃を立て続けに放つ。其の狙いは中央から這い来る女たちではなく、血と泥に覆われた大地だ。
――廻・弐の秘剣【金翼閃】。
其の斬撃は女たちを押し留めるだけでなく、まるで煌めく翼のような金色の斬撃の跡を残した。這い上がろうとする蛆たちが、光の粒になって消えていく。
足場ともなる其の“翼”に飛び乗った鏡介は、同じように斬撃を飛ばし、其の跡に飛び移りながら女たちへと自ら接敵する。
「すまないなどとは言わない。世の中にはどうしようもない事だってある」
「ア、ア――!! キ」
女たちが怯え、キャアと
絹を裂くような悲鳴を上げる。
周囲を無差別に打ちのめす其の音波さえ鏡介は
斬り裂いた。斬り分けた空気の振動の間を駆け抜けて、神刀を一閃する。
「いや、」
女たちは呟いた。其れが末期の言葉であった。
南京袋ごと両断され、蛆に塗れた哀れな肉体が青黒い塵となって爆発するように霧散する。
「……其れでも。だからこそ。出来るだけの事はやるさ。じゃなきゃあんた達に顔向け出来ない」
大成功
🔵🔵🔵

陽環・柳火
「チッ、胸糞悪い話だ」
だが、手は緩めないし、一思いに片づけるのがせめてもの温情だとは思う
「さて、行くぜお前ら!」
護符を飛ばして足場にして【空中軌道】で足元の地形硬貨を無視しつつ、UCで星霊バルカンを召喚し、炎の【属性攻撃】【弾幕】でウジを焼き払い、特化させる技能は【浄化】、蛆に食われたり穢されている部分をできるだけ綺麗にしてあげたい
「これが俺にできる限りの餞だ」
そう言って炎を纏わせた刀で【切断】し、一気に仕留める
「少しでもマシな姿であの世へ行けるといいな」
それが死者を運ぶ妖怪、火車として思うところかな
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「チッ、胸糞悪い話だ」
陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)は舌打ちをして、黄泉さながらとなった四辻を見詰める。其の底の方では、袋のようなものが蠢いているのが見える。あれが女たちだろう。
一切手を緩めるつもりはない。いっそ一思いに片付けてしまう方が、せめてもの温情だろう。
「さて。――行くぜお前ら!」
懐から取り出した護符を中空へ投げ、柳火は護符を足場に駆け出した。
「来やがれ、星霊『バルカン』!」
柳火がそう命ずると、其れは昏い空から滲むように現れる。
9体の星霊たちは炎を吐く。弾幕のように展開された炎は蛆を容赦なく焼き、泥と血に染まった大地を乾かしていく。
「ギャッ!? イヤ!」
「ヤメテ! 殺サナイデ!」
「……悪ィな。てめぇらはもう死んでるんだ。せめて綺麗な身体であっちに送ってやるからよ」
「キャアアアア!!」
南京袋が炎に包まれる。だが其れは殺す為の焔ではなく、浄化の焔だ。蛆が其の身体からぽろぽろと剥がれていく。青黒いまだらな模様がはだから消えていく。
「ア……? 痛ク、ナイ……?」
「そうだ。少しでもマシな姿であの世へ行けると良いな」
「ア……」
ありがとう、と言おうとしたのか。
其れとも、南京袋の中で泣いていたのか。
女たちは静かに、星霊の炎に焼かれて消えていく。
――柳火は火車の側面を持つ。死者を冥界へ送ると言われる東方妖怪である。
ゆえに、死者へ思う所はあるのだろう。更に護符を投げて足場にすると、次々と南京袋を浄化の炎で包み込んでいくのだった。
大成功
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瞳ヶ丘・だたら
蟠れば膿み、膿めば腐り、腐れば落ちる。
肉も果実も人間もそんなものだ。厭になるほど条理だろう。
人型戦車にて腐海を進む。少々手狭だが問題ない。
這い上る蛆たちの影響はユーベルコードによって逆利用しようか。
こちらが坂の上方に位置しているのなら、それ自体が有利な環境だ。
わざわざ手を差し伸べられる距離に下れば、その爪に縋り付かれかねない。
強化された機関砲の雨と火炎放射器にて蛆ごと一掃すべきだと判断した。
……あれはヒトではなく、袋だと思うことにする。
血と蛆と悲歎だけが詰まった袋。であれば処理するのが、やはり条理だ。
全く、世界というのはどうも直視に堪えない。覗かれたくないのはお互い様、か。
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がしゃん、と骨が触れ合う音がする。
其れは
人型戦車だ。蛆がたかろうとも動じぬ。血と泥の辻を躊躇いなく進む。其の上に座して、瞳ヶ丘・だたら(ギークでフリークな単眼妖怪・f28543)はとっくりと黄泉路を見詰めていた。
「蟠れば膿み、膿めば腐り、腐れば落ちる。肉も果実も、人間もそんなものだ。厭になるほど条理だろう」
蛆は懸命に
人型戦車に噛み付いているようだが、だたらのユーベルコードによって腐敗の悪影響を受けることはない。寧ろ蛆が絡み付けば絡み付くほど、噛み付けば噛み付くほど、
人型戦車の強度と防御力は増していくのだ。
「ふむ。こちらは上方、“袋”は下か。ならば此処が既に地形的有利だな」
わざわざ手を差し伸べようとは思わない。掴まれて這い上がられるのは御免だ。ならば、とだたらは火炎放射器を構え、機関砲を設置すると自動発射にレバーを合わせる。
其処からは、もう女たちの悲鳴しか聞こえない。
助けてと言われる。助けない。
熱いと言われる。念入りに焼いてやる。
だたらは南京袋たちを“袋”だと思う事にした。血と蛆と、悲嘆だけが詰まった袋。ならば処理するしかあるまいよ。
だたらの瞳を隠す布に描かれた単眼だけが、無感情に、じい、と焼かれゆく女たちを見ていた。
そうして粗方の掃除が終わったころ、大地が鳴動する。だたらが周囲を見回すと、坂の上方から徐々に元のサクラミラージュの景色が見えるようになっていた。
だが、良かったと手放しには思えなかった。
「全く――」
目元を覆う布を整えながら、だたらは疲れたように呟いた。
「世界というのはどうも直視に堪えない。……覗かれたくないのはお互い様、か」
だたらもまた、覗かれたくないのだ。其の瞳、特に今など――其処にどんな感情が載っているかなんて。
大成功
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