『義弟』の品定め!ホラー映画風ドッキリwithピヨピヨ
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「しかし、足を運んだ甲斐があったな」
「ねー!花火綺麗だったねー!」
ファリシアと蝶子の二人は花火の余韻に浸りつつ買って来た飲み物のペットボトルを傾け寛いでいた。
夏と言う事で二人はキャンプ場に小旅行に来ていた。ここは滞在先のコテージの居間だ。
「ここは蝶子の方が綺麗だよって言うべきところなんだろうな」
「もー、カミサマもお世辞が上手くなったねー! そんなモテモテだと蝶子嫉妬しちゃうー!!」
二人っきりだし夫婦だし問題ないかと理論武装したファリシアはいちゃつこうとキザな台詞を語り掛ける。
対して蝶子は完全にイチャラブバカップルのアホっぽい乱痴気騒ぎ状態だった。
これはこれで楽しそうな妻でいいと思いながらもファリシアはよりムードを出そうと言葉を続けようとして……。
「ん?何の音だろうな」
ふいに外で聞こえる物音。
ガタゴト、と何かがコテージの外に居る……。
「誰かがいるのか?」
「酔っちゃった人が吐いてるとかぁ?」
だが蝶子は祭りの余韻でアッパラパーになってるので気にしない!
完全にホラー映画の最初の犠牲者系のバカップルのギャルであった。
「それならそれでいいのだけどな。いや吐かれても困るか」
気になったファリシアはそっと様子を見に行くが……。
「誰もいない」
そっと覗いた先には誰もおらず怪しいものも何もなかった。
「もーカミサマったら気にし過ぎだよー。そんなホラー映画みたいな事オフじゃ起きないってばー」
「そうだな、今は良いか」
蝶子はぽてぽてとふらつくような足つきでファリシアの元までいくと腕をとって来る。
もっと話をしたいのだろう。
ファリシアも、いないものを気にしても仕方がないと居間のソファーに戻る。
「ほらほら、一緒に夏の納涼。ホラー映画を見よ」
「ホラー映画に気が昂っていたのかもしれないな」
だが、二人がテレビの電源を入れると、それは始まったのだ。
――ザ、ザザッ。
「わ、あるよねー、こう演出。借りてきたのってこんな本格的なのだったっけ?」
「ん?まだ挿れてないが?」
「え?」
ファリシアが機器にディスクを入れようとしていると、映ったテレビに身体を固める蝶子。
顔を上げてファリシアも確認すれば、画面にはノイズが走り、そして中から突然学生風の男の顔がアップに……。
「ぎゃああああ出たああああ!!」
「うおっ、蝶子?!」
大袈裟に驚いた蝶子がファリシアに引っ付いてきた。
その蝶子の動きに驚くと同時に嬉しくも感じたファリシアであるが、そうと言ってばかりもいられない。
何故なら画面の中に怨霊のようなものが映ったと思えば、テレビの横においてあったオブジェが一人でに浮き始めたのだ。
いやそれだけではない、部屋の中の適度に大き目の物がとにかく浮遊してファリシアと蝶子を取り囲み始めたのだ。
「これはまた……」
「きゃあああああ!きゃああーーー!カミさま助けてーーーっ!!」
一体何が起きているのか分からない。
分からないが、ファリシアは抱き着いて来た蝶子の感触に神としての威厳的にも表面上取り繕って堂々と立ち振る舞うのを決めた。
「ふん」
大人げなくユーベルコードを使って風を操りポルターガイストを跳ね飛ばす。
そしてぽんぽんと蝶子の頭を撫でてから、安心するようにと声をかける。
「嫁さんも守れないような男のつもりはないんでね」
「ふえっ……」
怪奇現象はまだ続いているし何も解決していないように思えるものの、蝶子は目の前にある惚れた男の格好つけた顔に元気を貰った。
「行けー! やっちゃえー! 二人の共同作業ー!!」
元気になった蝶子は男を見せた旦那を囃し立て始める。
なお共同作業と言っているが蝶子は別に何もしない!
「嫁さんの応援を貰ったら頑張らない訳にはいかないだろ」
とはいえファリシアには十分。
背中に庇った蝶子の存在に大人げなくパワーアップし全力で怪奇現象にユーベルコードをぶちかます。
「やったーぁ!」
「……少し、やり過ぎたか」
十分過ぎたようで浮いていたものは見事に粉砕されていたのだった。
「……ん?」
そしてちらっと窓の外に見えたものに、ファリシアは微妙そうな表情で空を仰ぐ。
「結局何だったんだろうねー?」
「これ、意外と蝶子の兄貴かピヨピヨあたりの仕業なのかもな」
ツンツン、とファリシアの腕に身体を寄せながら残骸を指で突いている蝶子にファリシアは疲れた声で答える。
さっき見えたのは見間違いでなければホッケーマスク被った蝶子のUDCのビハインドだった。
そしてコテージの惨状を見てやばいと思ったらしく乗って去っていったのはファリシアが想像したヒヨコっぽいがダチョウサイズの生き物だった。
「ま、まぁ無事に解決はしたしな」
「そーね!ほら、ホラー映画見ましょ!」
「この状況で見るのか……図太いな」
どうも身内の悪戯だったのを察したが、言わぬが花。
そのままバカップルを再開する二人であったのだった。
成功
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