帝都櫻大戰⑥〜帝都護りし繖と成りて
「出港せよ。サクラミラージュに進撃する時だ」
冷静なる下知はされど彼が支配する総てへ速やかに伝達された。
影彩の軍服より伸ばされし白手袋の指先が、真直ぐ目標へと示される。
幻朧戦線将校『カルロス・グリード』を名乗る存在が大戦の始まりを告げ、事態は動く。
号令に轟音と業震が揃い踏み出現したのは、かの地を破壊せんとする侵略の群れだった。
船と云うには強剛で、賊と謂うにはあまりに統率の取れた大軍が全貌を明らかにする。
暴かれし猛威の名は海賊船型秘密基地『
カルロスの錨』
最早戦艦と呼べる巨大な兇器が脅威を振るわんが為正しく――飛び立った。
一斉に飛翔する様は未知なる恐怖たらんとし間も無くの蹂躙を告げるが如く。
各地より集結する戦艦軍団は帝都を覆い尽くさんとばかりに自らを主張せり。
「無差別テロルの劫火にて、幻朧帝を封ずる地は間も無く灰燼と化すだろう」
数多くの『影朧兵器』で近代化改修を施された戦艦軍団の砲塔共が照準を定める。
『王笏』の旗印を掲げし膨大で強固な塊達は大空を制し日常を異常へと塗り替えた。
嗚呼、それこそは。
狂い舞う幻朧桜の花弁を纏いし雄大な姿に刹那、心奪われる程に。
だがすぐに幻想だったと理解する。
「な、なんだ……あれは!」
帝都で誰かが叫んだ。それは身なりの良い紳士だったかもしれない。
友人と歩いていた学生だったかもしれない。子を連れた、家族の誰かかもしれない。
皆一様に空中からの侵入物を見上げ驚愕と不安の声を募らせていく。
何故なら否が応でも理解してしまうからだ。
それは『兵器』である証の砲口が、自分達が居る地へと向けられているのに気付いたから。
禍々しき大口径から、燐火の輝きが徐々に強まっていくのも――認識できた。
「六番目の猟兵達よ、世界を破壊する力今こそみせようぞ」
カルロスの無慈悲なる宣戦布告が合図だった。
櫻花幻朧界を焼き尽くさんとする焔が、放たれる。
●劫火豪雨ノ防衛戦
「皆、大変なのよ! 帝都が!」
慌てた様子のリルリトル・ハンプティング(ダンプディング・f21196)が猟兵達に呼びかける。
「サクラミラージュって実は幻朧帝を封じていた? お墓?? ……だったのよ!」
緊張気味に卵帽子を抑えながらも、現状を知らせる為に一生懸命言葉を続けた。
それから意を決して手を差し出せば、卵に似たグリモアは少女とは裏腹に穏やかな輝きを伴い顕現する。
「『幻朧帝イティハーサ』は蘇ろうとしているのよ! それだって阻止しないといけないけれど」
今現在脅威は四方八方で発生し対応するべき問題は一つではない。
そう、大戦は既に始まっているのだ。
「わたしがお願いしたいのは幻朧戦線将校『カルロス・グリード』よ!」
数多の飛翔する海賊船を率いし将校は、その圧倒的戦力を以て世界を幻朧桜から引き剝がすのだと云う。
幻朧帝の復活がカルロスにどのような利をもたらすのか現時点では不明だ。
だからと言って、サクラミラージュの破壊を目論むのなら止めねばならない。
「と言っても、転送するのはカルロスが居る所じゃないの。此処でお任せするのは、防衛なのよ!」
カルロスが率いる空飛ぶ戦艦軍団は一個ではない。一体どれ程の数が潜んでいたのだろうか。
更にその船団には、幻朧戦線がこれまで造り出した数多くの影朧兵器が積み込まれているのだ。
世界を破壊する兵器の『素材』として。
「すっごく強そうな砲台から蒐集された影朧の群れが射出されちゃうのよ、それでその一部が見えたの!」
曰く、今回転送先で放たれる影朧は火を操る蝶の姿をしているそうだ。
その翅は周囲の感情に呼応し燃え盛り、群れを成せば大火と成って全てを焼き尽くす猛威と化す。
「火の雨が帝都に降り注いじゃったら大変なのよ、だからわたし達が皆を守る傘になりましょう!」
未だ人の多い帝都中心部迄は来ていないが、奴等は今すぐにでも無差別攻撃を始めるだろう。
彼等は世界そのものを壊そうとしているのだから。
「あのね、その蝶は強い想いに惹かれて集まる性質があるみたいなの。だから」
猟兵として大戦に挑むのならば、意思は一つ。
櫻花幻朧界を救う、その為の強さは破壊者達に決して劣りはしない。
「絶対守る、とか敵は必ず倒す! って強く思えば引き付けられるんじゃないかしら」
例え相手が其の感情で燃え上がろうとも、より強い力で捻じ伏せれば良いだけの事だ。
狂える影朧の群れを排除しつつ、敵艦を撃破する。そんな難題だって、猟兵なら必ずやり遂げられる。
だから安心して送り出せるのよと、リルリトルは微笑んだ。
「さぁ、行きましょう! 世界が割れてしまう前に!」
グリモアの卵が花開き、世界を幻朧桜が乱れ舞う戦場へと変えていく。
あきか
お世話になります、あきかです。
久しぶりの戦争ですがんばります。
●執筆について
プレイング受付開始のご案内はマスターページやタグにて行っています。
お手数ですが確認をお願いします。
●シナリオについて
戦闘シナリオになります。戦艦から放たれる敵の迎撃&防衛する集団戦です。
カルロスとは戦わないシナリオですご注意ください。
世界を破壊せんとする火蝶の雨からサクラミラージュを護りましょう。
ただメインは敵の撃破です。攻撃>防衛で敵を蹴散らしましょう。
攻撃は最大の防御だと思います。
なお一般人はそれなりに居ますが皆ちゃんと避難します。
●プレイングボーナス
『砲塔から放たれる影朧を迎撃する』とボーナスが付きます。
第1章 集団戦
『燐火蝶』
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POW : 灼熱飛舞
【ヒラヒラ舞い飛びながら炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 翅翼火光
【炎の翅から放たれた光】が命中した対象を燃やす。放たれた【蒼白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 蝶蝶怪火
レベル×1個の【蝶の姿をした焦熱】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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不快な鳴動が戦火を解き放つ。
『
カルロスの錨』から射出されたのは蒼白い焔の群れだった。
数多の蝶が燐火を纏い、まるで訓練された兵隊のように列を成し目的地へ飛翔する。
一頭単体だけでも恐るべき炎の雨粒であるだろう。だが、それだけではない。
真直ぐ飛び往く集団のは都を貫かんとする一本の巨大な火矢の如く。
畝る隊列は業火の奔流となって辺り一帯を焦土にせんと襲い掛かる。
このままではカルロスが宣言した通りの結果が焙り出される事だろう。
人々の悲鳴が聞こえる、避難せよとの怒号が飛び交う。
帝都の民は皆侵略者達から逃れるべく駆け出していく。
迫る破壊者から身を引き、逃げていく。
それならば。
怯え惑う波に逆らい、理不尽な暴威に立ち向かうのは誰なのか。
シノギ・リンダリンダリンダ
王笏。そうですか、また姿を現すのですね私の前に
何度奪っても、何度倒しても、何度略奪しても、何度蹂躙しても
だったらもう、今回するまでです
蹂躙と略奪は、海賊の華です
大声は出さない。悪態もつかない
静かにただ深々と、怒りを燃やす。サクラミラージュがどうとかは別にいい。王笏が目の前に現れた状況に、怒りを募らせる
【感染拡大、穢れ略奪】を発動
己の溜め込んだ呪詛を、毒素を開放し、霧として散布
敵にしか効果はないので一般人は安心してください
敵には、呪詛と毒の恒常的なダメージと、そしてその身を混乱させる呪詛を。同士討ちで燃やし合っててください
この蝶は略奪もしません
そうですね、あの大きな船なんて、素敵じゃないですか?
●宜候、為らば此度も
狂乱の花弁はらんだ風を連れ、力無き者達が逃げ去る疎らな波の中で。
ひとり、球体関節の脚を包んだ靴音を響かせ敵へと歩む者が居る。
「王笏」
呟きは喧騒より小さく、されど何より強い意志を携えて。
シノギ・リンダリンダリンダ(
強欲の溟海・f03214)は先を見据えた。
「そうですか、また姿を現すのですね私の前に」
天を仰ぐ。嘗ては同じ
目線で居たのに。
私の海を荒らした愚者が、再び“強欲”のシノギが前に現れると云うのなら。
「何度奪っても、何度倒しても、何度略奪しても、何度蹂躙しても」
今回も教える迄だ。本当の侵略とは何か。誰が、やるのかを。
「蹂躙と略奪は、海賊の華です」
宝箱に詰めた宝飾の如き眼差しが、飛翔する巨大な宝庫を捉える。
砲撃の閃光よりも熾烈な感情をその身に内包しながら。
射出された兵器達は着弾直前、突然一斉に舵を切った。
向かう先に自らが発するより大きな音は無い。だが蝶は次々『賞金首』へと飛んで行く。
狙うは桁違いの額か、否。青白い焔を伴いシノギへ集う群れは感じていた。
大声は出さない。悪態もつかない。
静かにただ深々と、幾年海賊船と共に在ったドールが胸中に有るものは――激しい怒り。
この地がどうとかは別にいい。溟海を荒らすのは、王笏が目の前に現れた状況だ。
募らせる激情は周囲の恐怖を凌駕する。無論、影朧へと焼べられ瞬時に劫火の大軍を創り出す。
蝶の姿をした焦熱が『
カルロスの錨』を隠し空を覆う。
空気を殺し尚煌めく怪火の包囲は周辺を蒼彩に染め、刹那海中を連想させた。
是が全てを焼き尽くす業火か。悪を招く破壊の暴力か。
こんなものか、これがお前の力か。
「もっとです。もっと」
瞬間、空気が一変する。
海賊を呑み込みかけた青炎の大波は突如不気味に歪み飛散した。
統率の取れた動きが霧散し、故障した玩具の如く蝶は乱舞する。
既に、シノギの攻撃は成されていた。
溜め込んだ呪詛と毒素を開放し、散布された霧は等しく影朧に感染し総てを蝕む。
恒常的な痛みに判断能力を失い混乱する様は制御不能の大炎上を齎した。
区別不能からの同士討ちによる破滅の閃光が、各所で鮮やかに煌く。
「なんて素敵な、我がお宝。ねぇ、そう思いませんか?」
発動させた呪詛毒機関が在る個所に触れながら狂人は視線を近場に逸らす。
其処に逃げ遅れた一般人が居るのは、とうに気付いていた。
「敵にしか効果はないので安心してください」
一時感情を抑え告げ、悲鳴滲む返事伴い脱兎の如く駆け出す背を見送る。
再び見上げた先では蝶達が燃え滓と化して墜ちる光景が広がっていた。
「この蝶は略奪もしません」
散り逝く消炭を踏み越え、海賊団の船長は胸中の感情に再度火を灯す。
「そうですね、あの大きな船なんて、素敵じゃないですか?」
奪い、倒し、略奪し、蹂躙するならばあれが良い。
海賊船だと云うのなら、王笏の旗を毟り獲ってみせようか。
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
カルロスの奴は各地で隠れて様々な悪巧みをしていたようだが
こうなった以上は本人も表立って動かざるを得ない、ってところか
奴はいずれ叩きに行くが……まずは防衛戦から、だな
敵が上空から来るのだから、一応高所に陣取る事にする。建物の屋根とかだな
その場で神刀を構えて、廻・弐の秘剣【金翼閃】
金色の斬撃波を降り注ぐ燐火蝶に向けて放つ事で攻撃
更に斬撃波が飛んだ軌跡に残る痕は敵の接近を阻むし、俺はそれを足場として利用できる
それを足場に一気に上空へと駆け上がり。適宜UCを使用する事で追加の足場を確保しながら、蝶の元に踏み込んで、一匹ずつ確実に斬っていく
一匹たりとも通さない。という決意を持って事に当たろう
●金刃翔ける神乃鳥
神秘浪漫の薫り高き帝都に不釣合な臭いが漂い出す。
嗚呼それは、己の世界を燃やさんとする砲煙だ。度し難い者共の確定的な害意だ。
擬洋風の緑青屋根に降り立つ夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)が双眸を僅かに歪める。
「カルロスの奴は各地で隠れて様々な悪巧みをしていたようだが」
冷静に落とす独白は重みを滲ませた。
当たり前の日常が今、侵略者達に壊されようとしている。
「こうなった以上は本人も表立って動かざるを得ない、ってところか」
狂い咲く幻朧桜が乱れ散る現状はいよいよ大戦が本格的に開始された証なのだろう。
元凶の一つが、見上げる空に存在している。
「奴はいずれ叩きに行くが……まずは防衛戦から、だな」
平穏な日々を過ごす人達に対する、理不尽な蹂躙。
先ず何より止めねばならない惨劇はもう眼前に迫っている。
内から湧き出る衝動の儘、剣豪は封施す鞘に納められし刀へ手をかけた。
高所を足場としたのは上空から来る敵に一番近い所だから。
柄を握り締め神刀を引き抜く。構えし切っ先は唯真直ぐに、狙いは違えない。
「神刀解放」
喚び声に無仭は呼応する。舞い落ちる花弁達に僅か、金色が混じった。
戦艦から撃ち出された兵弾は隊列を成し、建物を住民ごと焼き尽くさんとする悪魔の手と化した。
その、伸ばされし燐火の掌へ。
「煌めき舞え、金色の翼――廻・弐の秘剣【金翼閃】」
放たれたのは音速を超える黄金の斬撃派。
瞬く間も無く影朧の群れを斬り刻み、青白き炎を神器の彩で塗り替えていく。
残されたのは煌めく翼のような斬撃痕のみ。
唐突な攻撃に他の蝶列がひと時乱れたが、すぐ立て直して攻勢に転じる。
もうこの時点で影朧達は全ての意識を鏡介へと向けていた。
何よりも強い意志が、自分等を燃え上がらせる糧があの屋根上に居る。
纏う炎を膨らませ群れは飛び込んでいく……だが。
「無駄だな」
既に猟兵しか目に入っていない兵共は次々と遺されし秘剣の斬痕に刻まれた。
神刀と怪奇人間が創り出す奇跡が消えぬ限り、接近は阻まれる。
更に。
「俺はそれを足場として利用できる」
宣言と同時に緑青の地を蹴った。装束に映える硬い靴底が次に踏み締めたのは金の羽翼。
周囲の敵達は振り向く僅かな時間すらなかった。再びの神速撃に圧倒され散っていく。
そうして追加された新たな足場を確保し、道を貫く一刀が上空へと駆け上がる。
数多の火蝶が渦を巻こうと、炎の翅から放たれた光の雨を降らそうとも。
煌く一閃は神々しさすら伺える輝きを以て、一匹ずつ確実に打破していく。
大空に広がる金翼の軌跡は、天翔ける神鳥を描くようだった。
粗方を斬り終え、別の屋根へと一時降り立つ。
僅かに受けた蒼い炎の残滓を払い、鏡介が残りを確認する。
総ては問題なく、固い決意を抱く己へと向かってきていた。
「一匹たりとも通さない」
折れる事無き想いを込めて、ただ前へと。
森羅万象の悉くを斬る刃を構え直し、蝶の元に踏み込んだ。
成功
🔵🔵🔴
国栖ヶ谷・鈴鹿
あきかマスターにおまかせします。かっこいい国栖ヶ谷・鈴鹿をお願いします!
◎
ハイカラさんの天才発明家&パテシエイルの多才なパーラーメイド。
お手製の二挺銃の扱いと、小回りの利くフロヲトバイの紅路夢、空鯨型航空巡航艇ヨナ、ワンオフのスーパーキャバリア阿穹羅と、守護稲荷きこやんの護法術、ハイカラさんの後光のパワーを駆使した、発明と天性の才能を武器に明るくも自信に溢れた心持ちで挑みます。
◎艦隊決戦発動!
ヨナ、噴水の強化で延焼を防いで、UC超弩級艦隊決戦!
砲撃、噴進弾、機銃掃射!オブリビヲンを迎撃!
直掩隊は対空雷撃部隊を援護!
目標はカルロスアンカー艦隊!
帝都を踏み躙ることやらせない!
ここで迎え撃つよ!
●アンコオルよりもジイニアスと叫び給え
各地より集結せし海賊船型秘密基地は帝都上空を航行していた。
奴等が降り撒く火弾の雨は幻朧帝封ずる地に赤き終焉を灯し始める。
炎と喧噪の熱気が街並みに募る中を、熱光の噴流で加速する赤銅のボデーが駆け抜けていく。
先進的なテクノロジヰを詰め込んだフロヲトバイに跨るは、特級のパーラーメイド。
「さぁ、ぼくも頑張らないとね!」
声を張り上げ国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ
乙女・f23254)は笑みを深めた。
小回りの利く紅路夢で路地を突き進み、人々の頭上を飛び越える。
縦横無尽に乗り熟す彼女は各地に散る影朧を帝都への強き想いで惹きつけ集め続けていた。
量が増え、燃ゆる翅翼から放たれた光が多くなると云うのならば。
「きこやん!」
喚び名に応じ、手入れされた極上の髪間からするんと顔出す大稲荷狐が口を開け操縦桿を銜え込む。
一旦守護獣に舵を任せ、お手製の二挺銃を構えると上半身を捻り後ろを狙う。
可憐なメイドさんがブチ噛ます双式機関銃掃射は瞬く間に追手の数を減らしていった。
ブーストをかけ、今度は天を目指し駆け上がる。
遮蔽物が無い空中で四方から来る襲撃者は、突如頭上から来たレーザーに撃墜された。
更に高度を上げた鈴鹿の傍へ、大きなソラクヂラが悠然と泳ぎ寄り添う。
その背に可愛らしい建物と先程の射撃を行ったワンオフのスーパーキャバリアを乗せながら。
「ヨナ、噴水の強化で延焼を防いで!」
名を呼ばれた航空巡航艇は大輪飾る煙突から勢い良く潮を吹き、大地に恵みの雨を降らせる。
火を消し虹を創る光景を横目に天才発明家は阿穹羅の隣に降り立った。
貌を上げ次に紫の目を向ける先では王笏旗が迫り来ている。
あれが存在し続ける事が帝都を踏み躙ることになるのならば、これ以上は。
「やらせない! ここで迎え撃つよ!」
決意の声をトリガーに、ハイカラさんの後光が煌めいた。
輝きは幻朧桜を巻き込む嵐を招き花弁のカーテンが彼女と周辺を一時覆い隠す。
「総員、第一種戦闘配置! これより艦隊決戦を開始する!」
花囲いより解き放たれ、顕現されたのは超弩級のUC。
それは世界を護りたい願いが創り出す、超高度に戦略を組まれた決戦艦隊だった。
「砲撃、噴進弾、機銃掃射! オブリビヲンを迎撃!」
乙女の号令に搭載された各砲口が照準を定め轟音激しく撃ち放たれる。
薬莢撒き散らす連続猛射が影朧の群れを薙ぎ払い、追撃弾が爆散させた。
そして一際目立つ大口径の一門が雷光を集め真直ぐに敵船へと向けられる。
「直掩隊は対空雷撃部隊を援護!」
させまいと敵船から新たな兵が発射されるも護衛機や阿穹羅の援護射撃に阻まれた。
その間に充填は完了し、鈴鹿はとびっきりの表情で口を開く。
「目標はカルロスアンカー艦隊!」
轟雷の一撃が、最前の一隻をブチ抜いた。
まだ発動時間は残っている。さぁこれからだ、もう一度。
地上では人々が守護艦隊を見上げ喝采を送っていた。
成功
🔵🔵🔴
山吹・夕凪
未だにカルロスは愛しき姫君の姿を求め、世界を巡るのですね
美しいとも、愚かしいとも言えるその姿
けれど、世界に爪痕を刻む行いだけは見過ごせません
まして『王笏』が『桜花』を焼き散らすという皮肉など
確かに、それもひとつの愛の証であっとしても
相対するのは世界を焼く火の蝶
その輝きは美しくも、禍々しさをも憶えてしまいます
轟然と飛ぶ火矢、列を成して火の驟雨と奔流
此処に迫られれば焦土は免れないというのなら、守るべき一線に至るまでに堕とすのみ
凍結攻撃を乗せた風を操る術にて、霜降りる程に冷たき逆風を乗せて蝶たちの動きを一時拘束
翅の自由を奪い、破邪を宿したUCの一撃を
火の災厄を払い、『さいわい』救う氷の花よ、咲き誇れ
●災歪浄める不香の花
夢見鳥が災いを其の身に灯し、蒼白の悪夢を連れ飛んでくる。
大火を誘う一頭が帝都の日常へと触れる寸前、飛来せし鋭き氷雪刃に貫かれた。
ばらばらに成った炎翅は忽ち凍結し、消え逝く氷の欠片として落ちていく。
儚き細雪と舞い戻る飛花を山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は差し出す手で受けとめた。
「未だにカルロスは愛しき姫君の姿を求め、世界を巡るのですね」
炎熱高まる戦場に訪れた白雪の娘が空を仰ぐ。
ひらひらと舞い降る影朧の群れは吉兆であればどれ程佳き光景だった事だろう。
だが奴等は花弁を、帝都を焼き尽さんとしている。
燃える程が、想いの様に。
「美しいとも、愚かしいとも言えるその姿。……けれど、世界に爪痕を刻む行いだけは見過ごせません」
この大地はもう帝を封ずる墓ではなく、平和を生きる人達の世界だ。
彼の願いを成就させる為の糧にする事等出来はしない。
「まして『王笏』が『桜花』を焼き散らすという皮肉など」
投擲刃を懐に仕舞い、広げた掌に纏わる残滓を見つめ少女は呟く。
「確かに、それもひとつの愛の証であっとしても」
優しく、そっと繊指を折り包み込んだ。
変らず相対するのは世界を焼く火の蝶達。
轟然と飛ぶ火矢、列を成して火の驟雨と奔流を齎さんとする苛烈な情景は感情を揺さぶった。
「やはりその輝きは美しくも、禍々しさをも憶えてしまいます」
あの焔は、世界を壊す劫火だ。猟兵が戦わねば、この世界に暮らす者達の故郷が失われる。
否、もっとだ。前を向いて歩む人々すら嘲笑うように焼滅させるだろう。
サクラミラージュを、理不尽が蹂躙した火葬場にしてはならない。
「此処に迫られれば焦土は免れないというのなら、守るべき一線に至るまでに堕とすのみ」
方針を決める口元に、指先はするりと腰元に触れた。
白き袂が滑り払われ、現れた艶妖秘めし鞘を指先でなぞり上げていく。
やがて、濡れたかのように艶やかな黒を称える一口の柄へと到達する。
「氷花も風も、私の心の儘に詠い給え」
唱えし術は妖刀より刃の由来へと伝わり行使され、凍て付く風を呼び込む。
炎気満ちる大気に流れ始めた鮮明な涼は未だ前座に過ぎないだろう。
翅翼火光の蒼白散る中で唯一穢れ無き雪色を誇る剣士の髪が乱れ舞う頃、それは吹き荒む寒嵐と化した。
霜降りる程に冷たき逆風が周辺の、天を翔ける蝶々を絡め獲り一時的に拘束していく。
反撃の光放つ残党も順次捕らえ翅の自由を奪いし時こそが勝機。
嫋やかなる大和撫子は、氷の花を纏った黒刀『涙切』を引き抜いた。
構えは凛と、洗練された一振りに破邪を宿して技を放つ。
「火の災厄を払い、『さいわい』救う氷の花よ、咲き誇れ」
願い込めた夕凪の一閃が『桜花』を乗せて、『王笏』が望む未来への一手を斬り飛ばした。
花が咲く。燐火を没し熱を鎮めた帝都に氷の花びらが満ち溢れる。
雪彩乙女の周囲に焦臭さはもう存在しない。
清められ、香り無き透明な花園が広がっていた。
成功
🔵🔵🔴
リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
強い想いに惹かれて集まる性質がある……
……
あ、確かに…?
俺が強く守ろうって思うより、お兄さんを乗せた方が早そうだね
お兄さん。お兄さんがこの船団を倒しきれば、助かる人がいっぱいいて、その人たちがみんなお兄さんに感謝して子孫ダイダイ死屍累々(違)に至るまでお兄さんの行動を語り継いでくれるよ
等と色々おだてつつも自分は灯り木にて制圧射撃準備
常に周囲の地形を意識して、遮蔽を取り移動しながら撃つことが標準。お兄さんは突っ込んでくだろうから、少し引いて様子を見ながら援護射撃する
淡々と静かに攻撃していく感じ
おだてが足りなさそうなら途中で声は適当にかける
ほら、歴史に名を刻むチャンスだよ
夏目・晴夜
リュカさんf02586と
グリモア猟兵さん曰く、この蝶は強い想いに惹かれて集まる性質があるそうですよ
守る、とか
倒す、とか
ハレルヤを褒めるぞ、とか
ハレルヤを褒めて褒めて褒めまくるぞ、とか
…つまり、ハレルヤの活躍が伝記となり、絵本となり、親から子へ語り継がれ
生まれてくる赤子の名にはハレルヤと同じ漢字が一文字受け継がれていくようになる
そんな未来が待っているという訳ですね、リュカさん!
よし、早くいきましょう
『喰う幸福』の高速移動で駆け巡りながら
妖刀にて直接、あるいは斬撃から呪詛の衝撃波を放射して
蝶を片っ端から斬り落として参ります
攻撃が届かない範囲の蝶は気にしません
確実にリュカさんが撃ち抜くでしょうからね
●姓名判断は両方吉でした(sub:喰らい砕く星牙)
「リュカさん」
遮蔽物に身を寄せ、敵情視察を行うリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が振り向いた。
そして――見なきゃよかったとほんの少し後悔する。
夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が暗色の怨念宿す手で何かを鷲掴みながら戻ってきていた。
いやもう解ってる。今ターゲットにしてる燐火蝶だ。じたばたしてる。
このお兄さん素手(手袋有り)でいったよ……なんて感情は、一切顔には出ない。
上記全て通常運転です。
「グリモア猟兵さん曰く、この蝶は強い想いに惹かれて集まる性質があるそうですよ」
熱いか何て疑問はナンセンスだ、何かするなら握り潰すと圧をかけるに留める。
唯見せて伝えたい為だけの
サンプルに何の興味は無い。
「強い想いに惹かれて集まる性質がある……」
相方も同じか弾倉の点検がてら思い耽る。
「守る、とか」
……。
「倒す、とか」
……(結局
握り潰してる……)
「ハレルヤを褒めるぞ、とか」
……?
「ハレルヤを褒めて褒めて褒めまくるぞ、とか」
「あ、確かに……?」
流れ変わってきたが方向性は問題ないらしい。
(俺が強く守ろうって思うより、お兄さんを乗せた方が早そうだね)
集団戦用に多く用意したマガジンの準備を終え、打算的な考えも瞬時に弾き出して。
よしと、リュカが顔を上げる。
「お兄さん。お兄さんがこの船団を倒しきれば、助かる人がいっぱいいて、その人たちがみんなお兄さんに感謝して子孫ダイダイ死屍累々(違)に至るまでお兄さんの行動を語り継いでくれるよ」
淡々と一気に言い切った。
明後日所か遥か未来の提案に晴夜は白手袋の指を顎に添え、かなりシリアスな雰囲気出して考え込む。
と思ったら即納得した様子で顔を上げて。
「……つまり、ハレルヤの活躍が伝記となり、絵本となり、親から子へ語り継がれ、生まれてくる赤子の名にはハレルヤと同じ漢字が一文字受け継がれていくようになる。そんな未来が待っているという訳ですね、リュカさん!」
返答もえらい長く遥か彼方方面へ飛んでった。
見開く眼は架空のン百年くらい先を幻視している。なんかこう、夏目家の子孫とか。
――あなた、この子達の名前は『晴炎』と『蒼夜』でどうかしら。
――ああ、素敵だね!
「ちょっと待って下さい。何か混ざってません?」
「まあ、そうじゃない?」
絶妙なタイミングで言葉が交わされたが多分旅人は長台詞の答えを述べたと思われる。
このやり取りすら互いに一切の表情筋活動が見られないがそれは些末な事だ。
「……よし、早くいきましょう」
迷子になりかけた本題へ強引に戻ってくれました。
上空より燃ゆる翅翼の光雨と、地上から硝煙振り撒く対空射撃が交差する。
攻撃の合間影朧達は猟兵を探すも、蒼の傭兵は予め把握した周囲の地形を上手く利用し潜伏し続けた。
意識して遮蔽を取り、常に移動しながら撃つ事で撹乱させ敵の統率を崩す。
そうして群れから逸れるものなら気を付けるといい。
狼が駆けて来る。斬、と引き裂く音を鈍間と笑う。悪食は既に
幸福だ。
「このハレルヤが残さず食べて差し上げます」
勿論此の妖刀も。まだ未だ足りぬと抜き身が嗤う。怨念喰いたくてもう空腹だ。
引き続き鳴き止まぬ灯り木の制圧射撃が的共から自由を奪い、隊列は潰される。
絶え間ない逆さ豪雨の中をしかし不夜狼だけは縦横無尽に駆け巡り捕食し続けた。
直接、あるいは斬撃から呪詛の衝撃波を放射し迅速に蝶を片っ端から斬り落とす。
一頭も逃さぬ様子を覗いていたリュカだが、一瞬の違和感に気付いて即時照準を変更する。
スコープ越しで漸く捉えた先、シリウスの方角から蒼白い炎の大矢が飛来していた。
お兄さんと呼び掛けても、何故か晴夜は気にせず近くの影朧だけを斬り続ける。
未だ妖剣士が届く範囲の脅威ではない。だが、それでも。
(俺が、しっかりしなきゃ)
彼と旅して一体何度思ったか。それも即行切り替え狙撃手はとっておきの弾丸を夜明けに託した。
蒸気が噴出し、銃口に魔力が集う。
「……星よ、力を、祈りを砕け」
放たれた流星は燐火よりも遥かに鮮明で、果て無く鮮やかな蒼光を連れて連星を目指す。
それは人狼の頭上を越え、世界を壊す術を跡形も無く打ち破った。
無言で傍に来たリュカの大変何か言いたげな視線を、大変晴々とした無表情で返す。
「確実にリュカさんが撃ち抜くでしょうからね」
矢張り気付いてた事に抗議しかけたが、それより先に軍帽からはみ出る立派な耳がひくりと動く。
二人が同時に向く先で大量の御馳走が集結し渦を巻いていた。
「リュカさん、最後はあれにしませんかそうしますね」
提案と決定に間は無かった。言われた方は一つ、深い息を吐く。
「……お兄さんは突っ込んでくだろうから」
好きにしていいとのニュアンスを込めたら、問題なく伝わったらしい。
ただそう、何となく。気紛れだったか、おだてが足りなそうと思ったか。
「ほら、歴史に名を刻むチャンスだよ」
縁長き、勝手知ったる間柄。彼の燃料を適当に差し出せば、紫石英の虹彩が煌めいた。
面様こそ大きな動きは無かったが、大火球を生まんとする軍勢へ向かう速度がより加速した気がする。
リロード急ぎ援護の準備。銃口向け、確りと構えて。
「お兄さん。食べやすくしてあげよう」
喰う幸福な狼は奔り抜ける。火蝶の炎色を凌駕する妖刀の暗色を身に纏い乍ら。
援護射撃に圧倒され身動き取れない塊を御身に映した悪食の牙が、怨念を滴らせる。
接敵即、晴夜は飛び掛かった。内から溢れる獰猛さを隠しもせず真っ二つに咬み切って。
着地即、返す刀の衝撃刃で残骸すらも貪り尽くす。
「このハレルヤも、妖刀も、何時でも何でも食べ尽くせる程度には常に空腹ですので」
そう告げた顔は乱れ舞う幻朧桜花弁に隠れ、形相迄伺えなかった。
小物は完食した。ならば次は、あの撃ち落し甲斐ありそうな天空の大物だろうか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
高天原・光明
帝都に平和と安寧を取り戻す。一介の狩人が抱くには大それた願いかもしれないが、全霊を以て成し遂げてみせよう。これ以上、奴らの好きにさせてなるものか。
見通しの良いビルの屋上から蝶たちに〈先制攻撃〉だ。鍛えた〈狩猟〉の腕で、霊力を籠めた〈破魔〉の矢弾を放って撃ち落とそう。敵艦を捕捉したら【UC:彼方より飛来せし彗星】(POW)を発動だ。この世界を守る決意と共にありったけの霊力を〈振り絞り〉、全てを懸けて放とう。一射で装甲を穿ち、二射で構造を両断、三射で船体を〈解体〉してやるさ。
たとえ戦艦が相手だろうと、俺の矢は決して獲物を逃さない。帝都を火の海になどさせやしないさ。
(アドリブ連携等々歓迎)
●志ヲ遂ゲ、我等ノ敵ヲ射落トスベシ
帝都に聳え立つ、眺望用の高層建築物屋上にて独りの學徒兵が配置につく。
かちりと着こなす軍服の襟を、高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)は改めて正した。
己が知る世界は狂い始め、謀略が姿を現し暴力が日常へ侵略している。
靡くオリーブ色の外套に触れた花弁は、かように荒ぶるものであったか。
眼下に広がり響き渡るのは人々の恐怖と悲鳴であったか。
違う。奴等に塗り替えられたのだ。
琥珀の双ツ目が見据える先に飛ぶ、禍々しき海賊船もその一つ。
この大戦には多くの猟兵と、帝都桜學府の學徒達も戦っている事だろう。
同期達は今制圧された桜學府本部で奮闘している筈。
成らば自分は、此処で何をすべきか。
「帝都に平和と安寧を取り戻す」
成し遂げたい想いは皆同じ。総てがサクラミラージュを救う事と信じ、何であろうと立ち向かう。
「一介の狩人が抱くには大それた願いかもしれないが、全霊を以て成し遂げてみせよう」
数多の獣と影朧を射貫いた半弓を握りしめ。足踏み後、眼光鋭く燃やす闘志を敵に向ける。
「これ以上、奴らの好きにさせてなるものか」
先ずはあの我が物顔で我等の空を飛ぶ侵略者達を射ち落す。
光明の強き意思に反応して上下より火光を纏った蝶達が飛んでくる。
始めはこの兵器共を滅ぼさねばならないだろう。
それに此奴等を纏めて打破すれば、猟兵は此処だと主張し誘い込める。
狩猟者は鍛えた腕の先で矢を矧ぐ。弓弦を引きながら番えた葦矢に霊力を籠めた。
待ち構えていたのだ、先手は此方が取っている。
ヒラヒラ焔揺らし迫る影朧が攻撃する前に、破魔を宿した矢弾を放って撃ち落とした。
一度等では到底足りぬ。次を矢継ぎに構え直し別方角の群れを射ち払う。
灼熱飛舞ごと貫いて、派手に誘爆させれば船が一隻此方にやってきた。
射程圏内。敵艦を捕捉し、鏃の先を一切の揺れ無く巨大的へ向け狙い定める。
息を吸い、精神を研ぎ澄ました。彼の周囲に渦巻く風が生まれ、桜花の欠片が流れ舞う。
この世界を守る決意と共にありったけの霊力を振り絞り、会と成す。
刹那、紅き煌めきが身を走り抜けた。
「全てを懸けて放とう――」
指を離し解き放つ、一射入魂の一撃は彼方より飛来せし彗星と化して侵略基地の装甲を穿ち征く。
大穴が開いた海賊船は体制を崩し其れでも反撃の砲口を向けた。
「たとえ戦艦が相手だろうと、俺の矢は決して獲物を逃さない」
相手より早く二射を撃ち影朧弾ごと『
カルロスの錨』の構造を両断する。
大破する戦艦が状況把握始める前に、終いの矢が箒星を描いた。
「帝都を火の海になどさせやしないさ」
三射で解体された船体が崩れ落ち、地へ到達する前に花嵐と混ざり消えて逝く。
まだ、終わりじゃない。大戦は是より更に苛烈を極めるだろう。
光明は箙から新たな矢を引き抜いた。次の得物へ、足りないのなら射続けるだけだ。
全霊を以て貫く志を為終えるまで。
成功
🔵🔵🔴

アレクシス・ミラ
…今を生きる者達だけでなく、過去から生まれた者達にも無慈悲で残酷な脅威
その火の雨を…この地に降らせはしない
鎧を『白夜・竜騎士形態』へ変化させ空へ翔ぶ
…たとえこの櫻花の世界が儚き仮初だったとしても
この世界で生きる人々は、魂達の廻りは
確かに此処に在ったんだ
これ以上彼らを怯えさせるものか
彼らの明日を、世界を破壊させるものか!
人々の、世界の盾となる
不行不屈の覚悟と意志を以て立ちはだかろう
僕に引きつけられてくれば
盾からオーラ防御『閃壁』を展開し、水属性を張り巡らせ
焔を受け止めてみせる…!
…周囲諸共焼き尽くす焔の衝撃が襲おうとも
後ろには守るべきひとが…救うべき世界が在る
絶対に退かない!
耐え続けながら狙うは反撃の一口…脅威を僕に向けさせる事で他の守りが薄くなる瞬間
その瞬間を見切れば
【天聖光陣】展開
大地からの反撃が如く、光の柱で戦艦を撃ち抜いてみせる!
影朧達の勢いが弱まれば盾で押し返そう
…これ以上破壊を齎す兵器とならぬように
兇器たる船を沈め
狂える影朧を鎮めよう
剣に浄化の光を収束
光の柱と同時に…解き祓う!
〇騎士が護るものは
櫻花幻朧界が、タナトスの帷に包まれようとしている。
帝都の彼方此方から悲鳴と逃げ惑う足音の合奏が望まれぬ不協和音として響いていた。
荒れゆく街並みの片隅で避難者の忘れ物だろうか。小さなぬいぐるみが落ちている。
飛来した影朧兵器が、誰かの大切な物ごと全て焼却すべく降らせた破滅の雨を。
アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)が白銀の大盾と騎士剣で防ぎ、敵ごと薙ぎ払った。
一度剣を収め、足元の柔らかな迷子を一旦懐に保護してから天を仰ぐ。
侵寇する招かざる船は世界の一切を滅ぼすと宣告してきた。
日々を普段通りに過ごし往く人達を、救える筈の傷付いた影朧達ですら巻き込んで。
「……今を生きる者達だけでなく、過去から生まれた者達にも無慈悲で残酷な脅威」
先程葬った蝶達が花屑と消え去るのを摯実な眼差しで見送った。
侵略者は構わず次の
兵士を撃ち放つだろう。一方的な願いの糧として。
「その火の雨を……この地に降らせはしない」
熱誠を胸に、金の装飾に彩られた籠手で胸元のペンダントに触れ意識を集中する。
「
換装、
竜騎士形態!」
主のオーダーに応え架空元素固定式複合アーマーシステム『白夜』が起動した。
聖光の加護授かりし鎧に飛翼と増幅の装甲を追加搭載させ、騎士は大空へ翔ぶ。
花弁満ちる空間を高速で突き抜け、目標到達点にてウィングをホバー状態へ。
近き目線の先に平穏を穢す害意の塊が、人々から明日を奪う暴力を以て存在している。
「……たとえこの櫻花の世界が儚き仮初だったとしても」
幻朧帝の埋葬が始まりでも、既に多くの生命にとってこの地は別の意義を持つ。
「この世界で生きる人々は、魂達の廻りは。確かに此処に在ったんだ」
彼等の為にもアレクシスは立ち塞がる。サクラミラージュを背に、海賊船の行く手を阻む。
「これ以上彼らを怯えさせるものか。彼らの明日を、世界を破壊させるものか!」
人々の、世界の盾となる。
不行不屈の覚悟と意志を以て立ちはだかる騎士に惹かれた燐火蝶が引きつけられていく。
大火の軍勢が大挙し来襲するも一人の盾は怖れる事無く己を構える。
美しい装飾を縁取る気高き十字に燐光が閃き、瞬時にしてアレクシスの眼前に奇跡を描いた。
それは瑞々しい水属性のオーラで創り上げ、硬き志を具現化する壁と成って広く張り巡る。
「焔を受け止めてみせる……!」
舞い飛ぶ灼熱が、青白い炎の暴雨を。否、最早小型弾道弾の一斉発射が赤き一等星に降り注ぐ。
衝撃は周囲の大気が弾ける程激しいものだった。騎士の意思へ重い一撃が守護全体から伝わり軋む。
奥歯を嚙み締めた。だがそれだけだ。此処で引く等と云う選択肢は元から無い。
(周囲諸共焼き尽くす焔の衝撃が襲おうとも、後ろには守るべきひとが……救うべき世界が在る)
焔を呑み込む水壁が沸騰するのは敵が齎す痛みか。それとも、彼の燃え上がる決意か。
「絶対に退かない!」
不退転の誓いを叫ぶ。呼応する『閃壁』はより輝きを増し強固な城壁を築いていく。
不撓の精神が折れぬ限り護りは続けられる。勿論、防戦だけで終わる筈も無い。
耐え続けながら狙うは反撃の一口。
(脅威を僕に向けさせる事で他の守りが薄くなる、その瞬間を見切れば)
盾を支える手が強く、強く握り込まれる。見極めるのだ、その時を――刹那。
数多の凶星を受け続けても尚澄み渡る防壁の向こうで、敵船が動く。
押し切れると判断した戦艦が、全ての砲口をアレクシスへと向けた。
敵が注意を一人の猟兵だけに向けている。
此処が、好機!
「払暁の聖光を今此処に!」
天高らかに唱えた騎士の言葉が、金の明星を喚んで地へと流れ落ちた。
地形へ融けた瞬間、鮮やかな光陣が花開き次々と展開され耀きを募らせる。
金色の夜明けが、運命を切り開く。
「仇なす者には裁きの光を!」
大地からの反撃が如く、生じる光の柱が一斉に立ち昇り海賊船の一つを見事打ち抜いた。
崩れ落ちる一隻を背景に、統率を失った火蝶達の勢いが弱まっていく。
徐々に盾で押し返しながらパラディンは再び騎士の剣を鞘から引き抜いた。
「……これ以上破壊を齎す兵器とならぬように」
兇器たる船を沈めた。眼前の彼等もまた、斃さねばならない。
しかし彼等は蒐集され兵器として造られてしまった者達であるのならば。
(今こそ、狂える影朧を鎮めよう)
願いを込め、構えし赤星に暁光の煌めきが満ちていく。
時同じく地へ描かれた光陣が再び輝き光を湛えた。
「暁星の盟約には加護の光を与えん!」
宣言共に、アレクシスは水の防壁を解除した。
隔たりが消え、幻朧桜花弁舞う空に残された彼等をひととき眼に焼き付けて。
「――解き祓う!」
一拍後、放たれし光の柱と浄化の光を収束した一閃が十字に奔ったのは同時であった。
火の気無き地へ降り立つアレクシスに、小さな声が呼び掛ける。
振り向く先の不安げな幼子へと歩み寄り、目線を合わせた。
守り切った小さな宝物を差し出すと大きな笑顔と感謝が返って来る。
見送り、騎士は次の戦地へと足を向けた。
未だ護るべきものがあるのなら、彼は残酷な運命に抗い続ける。
誰かが安らぎの先に迎える、夜明けの為にも。
●雨上がりに平穏を願う
猟兵達は火雨の脅威を退け、焦土の悪夢を防ぎ切った。
止まない雨は無いと云う。ならば、其れ迄降り注ぐ苦しみは如何するのか。
答えは今、彼等が示した。
猟兵達は戦い続ける。理不尽を、脅威を防ぐ
守護として。
大成功
🔵🔵🔵