●イースターの国へようこそ!
それは喜びの色、楽しい色――しあわせの色。
緑の茂みからぴょこりと顔をのぞかせるのは、うさぎ。茂みから飛び出したうさぎはお洒落なチョッキを着ていて、ここの住民のようだ。
住民たちに出会えば、楽し気に挨拶をしてくれる。いらっしゃい、ようこそ! たのしんでいって!
そんな風に歓迎ムード。
木々の上では鳥たちが歌い始めれば、花々も目覚めて共に歌い始める。
優しくて楽しくあざやかな世界――ここはイースターの国。
でもその鮮やかさは、その色は心暖かくなるようなやわらかな色。
「イースターの国……とっても、ポップで楽しそうなところね……」
カルディア・アミュレットはくるりと辺りを見回して、本当に楽しそうな世界と笑む。
通りがかりのうさぎ家族がぺこりとお辞儀すればカルディアたちもぺこりとお辞儀を返す。
今日ここにきたのは、イースターハントを皆と楽しむために。
「なにやらとってもかわいい世界~ですね」
ココ・ロロは何もかもがかわいいと視線巡らせて。その視線を森の友達たちが追いかけてきょろきょろ。今にも飛び出していきそうだけれど、今は我慢といったところ。
「ふふー、はじめてイースターたのしみです!」
はじめてなんだ、とノヴァ・フォルモントはココへ紡いで。ならいっぱい楽しまないとねと笑いかける。
旅の吟遊詩人であるノヴァもこの国は初めて。
「みんな、無事にたまごは隠せたかしら……?」
「ああ、しっかり隠してきた」
橙屋の皆と過ごせたら幸いと、ルテア・ステルンベルギアもまた見聞を広めるべく。
しかしルテアよりも、妖精キルシュのほうがはやくはやくと、楽しみ一杯といった様子。
そしてゲニウス・サガレンもばっちり隠してきたと笑顔だ。
「この世界も探検すべき場所が沢山ありそうだが……まずはイースターハントだな!」
そろそろ開始かなというゲニウスにそうねとカルディアは頷く。
「……どんなところに隠したのか、みつけるのが楽しみ……ね」
カルディアは笑み零して、けどとひとつ注意。
「住民に聞いたところ……モンスターも潜んでいる森、みたいだから」
たまごを隠した時は静かだったけれど、何があるかはわからない。
むしろ隠している間に出会わなかったのは幸いなことだったのだろう。
「……えっ、モンスターもいる……のですか? わわわ……こわくないとよいのですけど……」
ココは気をつけますと耳をぴこり。
「怪我をしないように、怪我をさせないように気をつけましょうね」
そう言ってカルディアは、準備はよさそう? と皆に確認して、改めて。
「それでは……」
カルディアは炎の精霊を呼ぶ。炎の精霊は張り切った様子で任せてと大きく頷いて。
「イースターハント、よーい……どん」
その言葉と同時に打ちあがる花火がスタートの合図。
皆が違う方向に散らばっていくのをカルディアは見送って、そしてゆっくりと歩み始めた。
●オレンジ色のたまご
「わわ、ごめんなさい! あなたの卵をとるきはなくて……」
隠すのに良さそうな場所、と覗いた茂み。そこでたまごを守っていた風トカゲをびっくりさせてしまい、カルディアは宥めつつそっと離れた。
茂みはだめそう、と他に良さそうな場所を探せば――カラフルな木があった。
綿あめみたいなもふもふの、パステルカラーの葉っぱでイースターの国ならではのものなのだろう。
ここにとカルディアはその木の上にそっと隠す。
そしてその傍にはきりと――その瞳はもこもこできりっとしているようには見えないかもしれないけれど――羽耳兎のアムがしっかりと見張りに。
というのもカルディアがここにしようとそっと置いたなら、にょろりと動く蛇がそれを飲みこまんと狙っていたのだ。
「蛇さんごめんなさい、これはだめなの」
よそにいってねとカルディアは追い払って。もしかしたらまたきちゃうかも――と思ったら見張りをかってでたのがアムなのだ。
アムはしばし、しっかりとたまごの番人をしていた。そしてその耳がぴくり。
「えへへ、たまご~たまご~どこでしょ~」
と、楽しい声の主はココ。森の友達とたまご探しぼうけーんです! と足取りも軽く。
森はココにとってなじみ深いものだけれど、この森は故郷の森とは違う森。なんだかうきうきしてしまう。
どこにあるとおもいます? とココは友達へと尋ねる。
すると、友達はくるりと見回してそれぞれ思うままに動き始めた。
ネズミの友達は、気になる花の中へ飛び込んで。リスの友達は木々の上をひょいひょいと飛び回る。
「ふむふむ。あっちの木のところがあやしいですか? それから草の方ー……はっ、バラバラに行っちゃだめですよっ」
あっちへこっちへ、おいかけているとココはとある木のそばへと友達が集っていくのに気づいた。
「んむむ……これはー……?」
そこへ近づいてみると、友達たちの視線の先に羽耳兎。はっとココは気付く。そしてその傍には。
「あっ! お宝はっけーんです!」
けれどそこにはちょっと手が届かなくて。ココは友達に頼んでとってもらう。そして、しっかり見張りの役目をおえたアム。アムへ、いっしょにいきましょう! とココはお誘いを。
手にしたたまごはオレンジ色で、白兎の柄が描かれていて。
「えへへ、これはだれのでしょうね? ふふ―、答え合わせもたのしみです!」 誰のたまごか――思い浮かべる姿はあるけれど、答え合わせの時を楽しみに。
●オリーブ色のたまご
オリーブ色のたまご――その隠し主、ルテアは妖精のキルシュと共にどこにしようかと良さげな場所を探していた。
キルシュはオリーブ色に雪の結晶柄のそれを抱いてふわふわ。
落としかけたなら、ルテアがキャッチして私が持つと告げる。その言葉にちょっと残念そうだけれど、落としてはいけないのもわかるとキルシュは隠し場所を探すのに専念を。
「隠すのなら木の上や、草むらの中が定番だろうか……鳥の巣に紛れ込んでいるのも見つけ難そうかな」
よさそうな巣は周囲にあるだろうかとキルシュに尋ねればくるくると周囲を見回って。そしてここ! と見つけた巣を示した。
「なるほど、良さそうな場所だな」
少し探せば見つかるような。でも、ちょっと頑張らないと――もしかしたら手が届かないかもしれない。
その巣はすでに巣立ちのあとなのか、使われている様子はなかった
ルテアはたまごを置いて迷惑をかけることもなさそうだとこの場所に決めて、オリーブ色のたまごがそうっとおいた。
完全に隠れてしまうと見つからないかもしれない。だからちょっとだけ、顔をのぞかせるようなバランスで。
そのたまごは見つけてもらうのを、待っていた。
「みんなのたまご……どこに隠れているのかしらね? 木の上……? 草むらのなか……岩陰……」
カルディアは思いつく場所を指折り数えていく。そして、いろんな所を探して――ちょこんと顔をのぞかせるオリーブ色を見つけた。
「みつけた……。これは、だれのたまごかしら?」
それは巣の中にあってちょこんと見える色しかわからない。けれどモンスターのたまごではないと一目見てわかるもの。
「手が届くかしら?」
手が届かなくても、精霊たちの力を借りれば届きそう。
でもひとまず、自分の手で届くか試してみたくて。カルディアはぴょんとジャンプ。しかし、それは届かなくて。
アム、とお願いしそうになったけどそうだったと思いだす。アムは今、大切なお役目中なのだと。
カルディアは精霊たちにお願いして、そのたまごを手に運んでもらう。
オリーブ色に雪の結晶模様は――彼ね、とカルディアは笑み浮かべた。
●おひさま色のたまご
「かくすといえば土の中~!」
と、ふかふか柔らかな土を見つけ、ここがよさそうです! とココは掘ろうとしたのだけれど。
「……は、見つからなくなっちゃいそうですね」
土の中はやめておきましょうとその場所をあきらめる。おすすめの場所はあります? と友達たちに聞くけれど、ここもそこもとたくさんおすすめがあるわけで。
「お花畑やお花の近くなら、かわいくまぎれられる……でしょうか?」
それならあっちにと友達たち告げる。そちらについていけば、かわいいらしい花がいっぱい。
そこは小さな花畑。友達はその中に飛び込んで、花の蜜を味わったりと楽し気だ。
「わわ、ここにしましょう!」
どこにかくれるのがいちばんいいかなぁと見回せば、カラフルな花がふんわりこんもり集っている場所がいくつかある。
「ちょっぴりかくれんぼさせてくださいね」
その花達の中にそっと隠すのは、おひさま色のたまご。そのたまごには肉球がひとつふたつ。それがココの印だ。
花達の中に隠れたたまごはじっと待っている。
広がる花々は風に揺れて――この場所を見つけたのはノヴァだった。
「花畑……」
この中にかくれていそうだなと、ゆっくり足元に注意して歩むノヴァ。
隠すならきっと目立つ場所。となれば、カラフルな花が集う場所が何か所か。
そのひとつに近づいてそっと花々の中を見ればまぁるいものがみえて手を伸ばしてれば。
「っ! 気付かずに申し訳ない、君のたまごを採るつもりはないよ」
ぽぽっと小さな炎がその指を追い払うように。そこにいたのは火吹きとかげ。ちいさな体で自分のたまごを守る様に威嚇して鳴き声もあげていた。
「まさか本物のモンスターの卵だったとは」
こちらの意思が通じるかはわからないが出来るだけ穏便に済ませたい。ノヴァがそっと離れると、威嚇の声はおさまって無事に離れることができた。
ノヴァはそっと息吐いて、気持ち新たにまたたまごさがし。
あんな風に花の中にしっかりかくれているものもいるのだなと思いながら次は慎重に花の中を覗く。
「今度は、隠されたたまごに間違いなさそうだ」
中に何が入っているのだろうと、ワクワクと心躍らせながらノヴァは花のなかからそれを手にとった。
おひさま色に肉球のたまご。これはきっと――と笑み浮かんでいた。
たまごの隠し主は想像できる。けれど中身は何だろうか。それは開けてのお楽しみかとそっとしまって皆のもとへ。
●瑠璃色のたまご
「さて、何処に隠そうかな……簡単に見つからず、難しすぎない場所か」
改めて考えてみると、なかなか難しいなとノヴァは考えながら歩む。
こうして歩んでいればきっといい場所が――と、視線巡らせたらぽっかりとくらい色が木にあった。
なんだろうと、よくよく見れば。
「木の洞か」
そちらに近づいて、なんとなくたまごを置いてみる。すると、そこにあるのがしっくりといった体。
「サイズ感もなんだかぴったりだ」
まるで最初からこのたまごのためにあったような場所。ここにしようとノヴァは決める。
瑠璃色のたまごは星と月が描かれて。そこでゆるりと過ごしているかのようだった。
「アーーイムソーーーリーーーー!」
と、洞に隠れたたまごの足元にズシャアと勢いよく滑り込むように倒れたのはゲニウスだった。
ゲニウスはそのまま動かず――つまりそれは
奥義 真・活殺自在。
「……大丈夫、そうだな?」
間違えたたまごを拾いかけ、その親と思しき巨大鶏に追いかけられていたのだがどうやら巣に戻った様子。
海蛍閃光弾をお見舞いする事態ならなくて良かったと一息つきながら立ち上がれば――。
「テッテレー!」
つい効果音を自分で叫んでしまった、と言いながら洞に隠れた瑠璃色に星と月のたまごに手を伸ばそうとする。
しかし、先程のこともあるから――いや、間違いないとは思うのだけれども。
「隠す側としては簡単に見つかれたくないが、見つからないものも困る、誤って踏みつぶされても困る……」
やっぱりどう考えてもイースターエッグだな! とゲニウスはそれを手にとる。
「おお! 何歳になっても、何かを見つけるというのは楽しいものだね」
さて、これはどなたのと見つめる。
きっと彼のだ、とゲニウスもまた答え合わせすべく、皆の元へ。
●ネイビーブルーのたまご
どこに隠そうか――ゲニウスは森の中を散策しながら考えていた。
定番だと思われる隠し場所をいくつか思い浮かべて、そして閃く。
「みんな目線より下に隠すだろうから、私は上だ!」
ゲニウスの視線は上へ。上といっても、目線よりも少し上くらい。
それくらいの位置に良い場所はないだろうかと視線巡らせながら歩いていれば、こんもりと生い茂った樹があった。その葉の色は楽し気に様々なパステルカラー。
自分より少し大きいくらいの、半円状のように生い茂るその樹木は枝葉が細かく分かれている。たまごがひっかけやすそうだな、とまず目についた。
それに細かく生い茂る葉が、良い目隠しにもなっている。
「ここにしよう。あとは……どこにのせるか」
あまり安定のしない所において落ちてしまっては残念極まりない。
ゲニウスは落ちないように乗せ方を何度か調整して、よしと頷く。
こんもりとした樹の上の方――葉の色とは違うネイビーブルー。白い波線模様の入ったそれは海を思わせるもの。
ゲニウスはそれを隠した後、離れて。振り返って。大丈夫そうだと確認して皆の元へ。
そして、たまごさがしが始まって――しかしまだ、ネイビーブルーのたまごは隠れたままだ。
しかし、そのたまごへと近づく者がひとり。
アリスラビリンスは初めて訪れた場所だということに改めて気づいて、ルテアは周囲を見回す。
この世界にある木々は様々な形で興味深い所。
どんなイースターエッグが見られるのか、ルテアも楽しみだと視線巡らせる。
一体どんな着飾った殻なのだろうと、其々の中身も想像する。カルディア殿のはどんなからだろうか……なんて。
そう考えながら探していると――楽し気な色の中にそれよりもっと濃く深い色が見えた気がした。
それはまぁるい形の樹。パステルカラーの中に、自分の目線より少し高い場所にあったのは。
「……なんと、木々の間で海を見つけられるとは」
ルテアが手を伸ばしてとったのは波模様のネイビーブルーのたまご。
潮騒でも聞こえてきそうだと零せばキルシュがそのたまごにそっと耳をよせる。
何か聞こえてきそうな、そんな気がして。
●たまごの中には
たまご見つけてそれぞれ出発場所に戻ってくる。
五人そろえば、その手にあるたまごに目がいくもので。
自分のイースターエッグが誰の手にわたったのかはわかる。そして五つ揃うと――それぞれ誰が作ったのかもわかるものだ。
「答えあわせしなくても、もう誰のかわかっちゃうわね」
カルディアはふふとそれぞれの手にあるたまごを見て微笑む。そして今あけていい? とカルディアはルテアへと尋ねた。
このオリーブ色の雪の結晶のたまごはあなたよね、と。
「どうぞ。私も……いいかな?」
ルテアもネイビーブルーに白い波模様のたまごを持って、ゲニウスへ。
「もちろん! 私も一緒に……つまり」
「みんな一緒に、かな?」
と、ノヴァも頷く。ゲニウスの手にあるたまごは瑠璃色に星と月。そのイメージを抱くのはこの中ではノヴァだけだ。
ノヴァも、おひさま色に肉球柄のたまごを持って、ココへと笑いかける。ココももちろんです! とオレンジ色に白兎の踊るたまごを掲げてみせた。
「ふわふわの中にかくれてました! それに」
と、ココはアムを見る。しっかりまもっていたのですよね、と。
アムはばっちり、というように胸を張る。カルディアは見張りの役目を終えたアムにありがとうと労いを。
「じゃあせーの、で」
カルディアは合図を決めて――五人で声を重ねる。
皆で一緒に、たまごをかぱっと。わるのはちょっともったいないけど、その中にあるものは気になるから。
「わぁ! きれい!」
ココの手にあるのは、燈を灯す小さな魔法石。カルディアのようなそのプレゼントにココはありがとうとふにゃと笑む。そして友達たちが見せて見せてと掌に。それに割ったたまごの殻をかぶって友達たちもお気に入りのよう。
その友達たちの姿模したクッキーが手の上にあるノヴァ。
食べるのがもったいないと言いながら、そっくりだねとココに笑いかけてノヴァはありがとうと紡ぐ。
そしてノヴァのたまご見つけたゲニウスもおおっ! と声あげる。
「七色にきらめいて……金平糖か! これは食べるのが勿体ない」
小さな瓶に詰められた七色にきらめく金平糖。ゲニウスはそれを振ってみせる。
そしてルテアの手にあった貝殻を模したチョコレートをキルシュが抱え上げていく。確かにこの中には海があったというように。
それにもう一つ。
「貝殻……なんだかひんやりしている」
「それは深海から浜辺に打ち上げられた水底貝だ」
触れると深海のひんやりした温度が伝わるから、ひんやりという感想はあっている、と説明をするゲニウス。
そんな貝があるのだな、と頷くルテアにみて、とカルディアは自分の手を見せる。
「ぴったり、ありがとう。あとで美味しくいただくね」
その指には、指輪キャンディ。そしてもうひとつは硝子細工のウサギ。
そのウサギにはアムが興味を示している様子。
たまごをみつけて、それを割れば贈物。それぞれ送り主の心見えるような、そんな贈物だ。
そして不思議なことに――われたたまごの小さな欠片が地に落ちれば、そこから同じ色した花が咲いていく。
それにステアが気づいて。不思議だけれど、心あったかくなるような。そんな気持ち。
しかしたまごを見つけて終わりではないのだ。
だってここはイースターの国。まだまだ遊ぶ時間はいっぱい残っているから。今度は五人で――イースターの国の冒険のはじまり。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴