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少女の肚の中には宇宙が広がっている

作者：にゃあら

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●遠くて近い君の願い
　女の子の心には奈落と楽園が詰まっている。その所以を暴こうとしてボクは、あの娘の身体の中身を確かめようと試みたんだ。きっとボクは夢見ていたに違いないし、おそらく、あの娘の有無に関係なくずっとずっと独りぼっちだったんだ。いや、勿論、ボクはこの独りぼっちを嫌いになんてなれないし、それが当たり前と思えるほどにはボクは成長しすぎたんだ。ふと、あの娘だった『もの』のお腹の中に手を入れてみる。こんなにも生温いなんて聞いていない。熱いのか、冷たいのかと、期待していたと謂うのに――こんなものかと、ボクの頭の中だけが広がっていく。あのさ、教えてくれないかな。ボクはどうして『こんなふう』になっちゃったのかな。ねえ、ボクを『どこか別の場所』に攫ってくれはしないだろうか。まったくいきなりな遭遇だ、まったく偶然のようなみちびきだ。頭蓋の内側は愈々コスモスのように、お花が咲いた宇宙そら色か……。
　――誰が隣にいようとも、盲目だったら意味などない。

●グリモアベース
「神は――特に、邪神と称されている連中は――貴様等が想定している以上に『テキトウ』なものだ。ただの少年が少女を観察しようとした結果、莫迦みたいに誘われる程度には。ああ、久方振りに『偶発的』な予知だ。何が呼ばれるのかと問われれば、さて、人間らしさとフリークスらしさの混血、とでも表現すべきか？」
　グリモア猟兵、ロバート・ブレイズは笑みをこぼす。この男が『笑っている』時点でロクでもない予知なのに変わりはない。気を引き締めると宜しいか。
「少年が少女を観察する際に行ったのは『中身を見る』事だ。少年は如何やら邪神の存在など知らずに『望んで』しまったのだろう。それを打ち倒すのは勿論だが、召喚された邪神を『迎えに』別の強力な邪神が現れる可能性も高い。十分に気を付け給え」
　グリモアが輝いて。
「嗚呼、貴様等。最近の邪神はヒトサマにお優しい、甘ったるくて、度し難い故。絆されぬよう注意せよ。世間知らずどもに現実を叩きつけてやれ」

第1章 ボス戦 『としでんせつ・はるちゃんさま』

POW   :    いきなりテラフォーミングけいかく 【裸足の爪先】から、対象の【「ここじゃないどこかへ行きたい」】という願いを叶える【一万Kケルビンの核融合の熱】を創造する。［一万Kケルビンの核融合の熱］をうまく使わないと願いは叶わない。 SPD   :    みちびいてグランドクロス 【お別れの言葉】を向けた対象に、【一億Vボルトの局所的落雷】でダメージを与える。命中率が高い。 WIZ   :    はるのよのゆめ 【一兆光年外宇宙電波】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【分子結合崩壊】の状態異常を与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　女の子のお腹の中から「こんにちは」、初めましてのご挨拶をすっ飛ばしての召喚。嗚呼、こんなことを口にしてはいけないが、可愛いから可愛いが生じるなんて損失なくて宜しい。茫然と、茫洋と、途轍もない突拍子のなさでポロリとこぼれた計画性は誰が為の一万ケルビンか。触れた瞬間に煌めいて、導かれるが儘に妄想を振り撒く。
　――誰が何を謂ったって、誰が何を罵ったって、あの未確認飛行物体は『わたし』のものだ。この目でしっかりと見たのだから、この耳でしっかりと聞いたのだから、ここではない『どこか』に攫ってやらねばならない。そこの男の子に言ってたんだけど、崩壊しちゃった？　裸足のお姫様なんて裸の王様が霞むくらいには愚かじゃないか。愚かなくらいが愛らしいって？　度し難い奴め――。
　迷惑をかけて何が悪い、希薄な記憶の糸を手繰って、知らない人に辿り着く。グランドクロスに盃を――素面なクセに眩んでいるとは、チリチリとやいてくれる。死なせてしまった。死なせてしまった。呼吸をしている時点で気付くべきだった。気付いたところで考えやしない。


　情熱的なまでの盲目だ、彼方の光の寿命を知りたい。
　コイン一枚で購入可能な宇宙なんぞは、果たして、喜べるほどの広大さを有しているのか否か。茫然としたところで、呆然とされたところで、この脳内成人男性だけは殺す事が出来ない。強烈なホワホワとした感覚にやられてしまった刹那の内、さて「僕」はいったい何を覗き込んでしまったのか。何とかしてみせようと、片付けてしまおうと、考えた結果が膨張だ。いつまで経っても終われない神様の偶然に、嗚呼、眩暈のような溜息をこぼす。
　いい加減にしてくれないかな。僕は確かに弱虫で、ビビりで、ひどく慎重なところがあるけど、こんなことをされたら考える事だって難しくなるんだよね。齢いくつになっても男の子は男の子だ。月見て跳ねるなんて、刎ねようとするなんて、他殺癖も良いところと宣ってしまえ。で、そんなに夢見がちな少女をしてさ、僕を油断させる予定なんだよねぇ……。なんだか腹が立ってきた。所以は何処を探しても見つからないが、おそらく、同族嫌悪を泥塗れにしたかのような衝動だ。導くのはヘッドショットの為だけで結構、都市伝説だろうと未確認飛行物体だろうと現実ゲームだったら落とせるのだ。
　――不愉快なまでの一億Vだ。
　――墓穴を掘るよりも前にダムダムを叩け。
　――叩くようにして避けると宜しい。
　やり込みゲーマーを舐めるなよ、頭の中お花畑……。内心、冷や汗たっぷりだ。もしも避けられなかったら今頃、兎の丸焼きになっていたに違いない。だが、それは最早ない。アサルトライフルの顎は開かれ、只、あの女の腸にもご馳走してやる程度の沙汰だ。
　――キミ、バグプロトコルよりは正直者らしいねぇ。
　世間知らずに弾丸をあげよう。

成功 🔵​🔵​🔴​

　自然的なのか超自然的なのか、問いかけてみたところで、真実を塗り潰したかのような人工からの色だ。まるで人が無理やり混ぜて作った代物で、成程、幼子にとっては良質な玩具に等しい。異物が添えられようとお構いなしに撹拌し、掬いあげるサマは、何処か昔懐かしの『なにか』を彷彿とさせる。やあ、おキヌさんだ。部屋で担当ノリコに無理難題を吹っかけて過ごしたかったけど、子どもの事件は放っておけなくってさ。皿の上の水飴を毒物だと騙る所業なんぞ、嗚呼、無意味だと知っているのにこの反芻だ。……ま、おキヌさんにも色々あるんだよ。門限を定めようと、お叱りを受けようと、彼等彼女等にとっては日常でしかない。送り狼の前で堂々と「転んじゃった」なんて謂うのもどうかと思うけどさ。
　とはいえ、保護してさよならは難しそうだ。星が揃っているのか、シナプスが狂っているのかは最早、致命的な沙汰ではない。なんとなく……あの子に近いものを感じるし、いいさ。最新のゲーム機なんてものは持っていないけれども、好きなアニメの話にも付いていけそうにないけれども――おいで、いっしょにあそぼう。誰かさんの代わりに転んでくれた達磨さん、立ち上がろうと懸命になってもオツムの上、キラキラ回ってちゃあ同じ事か。
　やあやあ、おキヌさんだよ。君の名前は……？　名前を聞いたところで笑ってくれるだけか。どこから来たのかな。指差し応えてくれたってお空の上じゃあ意味などない。もうお終いかい、つれないねぇ。人見知りには視えないが、きっと、何かしらの事情があるのだろう。お別れの言の葉が届けられるよりも先に呼吸の仕方を教えてやると宜しい。鳧鐘――金色を断つようにして、その夕方を忘却へと引き摺り落とす――さようならを忘れて。
　そもそもここは地球だけど、たとえ空気がない宇宙だったとしても、酸素のない臓腑の中だったとしても、おキヌさんの《声》には関係ないのさ。さあさあ、キミは飽きる事なんてないだろうし、本当に暗くなるまで遊ぼうか。
　気が済むまでの鬼ごっこだ。鬼ごっこの途中で目が眩んだのなら此方のもの。少年の手を掴んで、引っ張って、転ばないように回収しておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　仄かな笑みの裏側には猫が隠されているのだろうか。
　それとも、猫など最初から無く、笑みだけが泳いでいたのか。
　傷口を抉ったところにドードーの生き血、注ぐように濡らせ。
　地獄の釜に投げ込まれたひとつひとつの要素が狂った茶会の代わりとして踊り出す、お盛んな擽りの具合に眩暈を覚えたのはきっと紫煙の所為に違いない。偶然通りかかったハギスも吃驚なこの始末だ。無様、無様と嘆きながら、鳴きながら、マイクの形を確かめる。は～ぁ、参ったねこりゃ。うすっぺらいシケモクよりも湿気っている。これじゃあ幾ら整えたって死体は綺麗になれもしない。いやぁ……ガキの癖に発想がさ？　いや、ガキだからこその発想ってやつ？　手前の腹でも掻っ捌けよオラァ。そんなの、痛いに決まっているじゃないか。だから別の人でやったんだ。だから可愛い子相手にやったんだ。それに、僕のお腹の中じゃあ綺麗なものなんて出来ないでしょ。……女だろうと男だろうと、人の身体の中にあるのは肉と骨と臓器だけよ。死んだ直後の肉体も生温いに決まってるじゃない。常識人めいた埒外様ご来訪、ほうほうと嗤って魅せたのは神か佛か。まぁウサギちゃんはお花でも出てきｓ……。何処から取り出したのかチェーンソー、今宵は誰の魂を狙っている。何言ってるの？　出てくるわけないでしょ。塩漬けにでもしてやれよ無表情。……おっとやめてチェーンソーなんてちょっと愛が錆臭いってか……。兎にも角にも肉を断つなら神の魂を絶つと宜しい。……などというのは此処まで、仕事をしましょうか。ええ、お仕事、しましょ。キレイなのは何処の部位だったのかモンストロルム、耳栓するには丁度いい舞台だ。
　悪ぃンですがワタシ、電波を聞く趣味が無いうえ、こう見えてクラシック派なので。猿の真似をするのがお上手じゃないか猟兵、言うつもりもないし聞くつもりもないし、理解する気だってミリともない。灯の色も命の色も、最早「ワタシ」の舌の上。ねぇお嬢サン、花弁の靴で舞踏会はいかが？　まったく素敵なお誘いだが、一度、断ってみようかしらと世間知らずは囀る。そうですかお嬢サン、夢のような王子様なら用意して差し上げますよ。まあ、それなら是非！　今ならチェーンソーの華麗なステップ付き――でしょう、ウサギサン？　昼寝をしている獣はいない。良い手札、持ってるじゃない。
　思考を――脳髄を――蕩かし『歌』うことすら忘却の彼方。ハッピーを極めたお姫様に靄が掛かる。いや、正確には『掛かった』のは煙幕だ。何でもない日を祝う為には何かしらを携えて往かねばならない。そう、先程から見え隠れしているチェーンソーだ。兎は人よりも速いのだから像を残せるに決まっている。お別れの言の葉を唱えようとしたって口裂けだ。何度も何度も口の花を裂かせてやると好い。あら、お別れが早まったようね。舌を滑らせるなんて上手い事を謂うわ。正体を隠してしまうほどの猫の目だ。もう、暴いてしまったから如何しようもない。
　別れるからこそ出会いは殊更に美しい。
　でも残念――じゃあ、今度こそ、さようなら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　校舎の屋上、開放されているなんて夢みたいだ。
　夢みたいだと解放されて、徐々に徐々に狭まっていく。
　――施錠されているのが正解だ。
　かくれんぼの為に酷使された公園が腐敗した魚のように横たわっている。一緒に横たわっている『もの』は鮮度抜群で、これから腐敗していくお友達なのだろう。蠢くようにして這入り込んだ蟲の群れが、バグの群れが意地汚くもプリプリとした身を狙っている。可愛い女の子の中身をわざわざ暴こうだなんて、とんだ特定班もいたものだわ。お砂糖とスパイスと、何か素敵な承認欲求くらいしか詰まっていないわよ？　肚の中で腹を抱えた蟲の一匹が頭を傾げる。……ま、こいつを回収するのはぷれみの仕事じゃないわ。的外れもいいところだと、プレイングミスが招いた事だと、勝手に喚いてくれたら結構か。
　そういうわけで――灯油を散らかしている余裕など夜にもなく――『おひさしぶりね』暁月眠春。いま一兆光年外宇宙電波を完全無視してあなたの設定のうないに直接話しかけています。おお、精神感応の類だろうか。テレパシーの類だろうか。いいや、そんな上等な『もの』ではない。冒涜的なほどの埒外が、今まさに、行使されているというワケだ。残念ながらぷれみの身体に分子結合なんてまったく関係ないわ。口にすることなすこと悉く確定ロールの牙からは逃れられない運命だろうか。#00FFFFサーバーはどこかに物理的に存在するかもしれないけど、少なくとも、ここじゃないどこかよ。病的な色だけが勝っている。あの娘の脳内は愈々、天啓とやらに焼かれて終いそうだ。……残念ながら崩壊するのはそっちのほう！　ひどい猟兵だ。如何してこうも空が見えないのだろう。
　あなたは神様に選ばれた宇宙の化身なんかじゃない。たとえば、ただの親に捨てられた子供で。たとえば、ただの皆に馴染めない女子で。たとえば、ただの頭の足りない人殺しで。たとえば――キラキラと笑っていた何者かが、暗い、暗い、影を落とす。何処か平凡なそのサマこそ彼女らしさとでも言うべきか――そうね、いつかのあたしみたいなもの。
　ベントラー？　ベントラー？
　あなたに宇宙が聴こえなくなるまで、宇宙を歌えなくなるまで。
　……どんな言葉が必要だっけか。どんな手振りが必要だっけか。
　世知辛くてつまらないキャラ設定を付与してあげる。
「普通の女の子に戻って、12年前の過去まで帰りなさい」
　過去だ。いつまで経っても過去なのだ。
　――あなたに、あの子を思い出されたら困るのよ。
　今はまだ、ね。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 集団戦 『沼男のなり損ない』

POW   :    模造 自身の【構成する泥の肉体】を代償に、1〜12体の【敵対者の姿を模した泥人形】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。 SPD   :    雷撃 【分厚い手】を向けた対象に、【二連続で降り注ぐ雷】でダメージを与える。命中率が高い。 WIZ   :    汚辱 【溶けた脚】から、戦場全体に「敵味方を識別する【底なし沼を生み出す泥の津波】」を放ち、ダメージと【じわじわと体が泥に変わり同族化する呪い】の状態異常を与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　宇宙を泥だと仮定した場合、人間も泥で在ると考えられた。ぼたぼたと、隕石よりも緩やかだが、しかし、確実な着地とやらをやり遂げる。そう、彼等はやってのけたのだ。彼等は泥で在ると同時に人間で在る事を『身をもって』証明したのだ。雷に打たれずとも二足で進む、這い進むサマは圧巻としか謂いようがない！　内臓だって泥みたいなものだろう？
　だが、嗚呼、哀れな彼等はお迎えすべき『神』がいない事を理解出来ずにいる。あっちへフラフラ、こっちへフラフラ、そうしてようやく猟兵達に気が付いた。神を隠したな？　神隠しだ！　そんな言の葉を叫びたそうに、ぬったりと、圧をかけてくる。
　君達は泥の壁を排除し、迎えに来るだろう別の邪神を叩かねばならない。




　思考をした。自分は本当に自分なのかと、自問自答した。
　その結果がこの中途半端だ。
　宇宙に憧れを抱いてしまったスワンプマンの舌。
　強い味を欲するように……！
　長ったらしい口上に意味を求めた時点で此方の敗北だ、泥にやられた咽喉からの発生など、発声など、燻り狂ったモンスターの咆哮よりも拙いか。携えたカバンの中身は確かに人を殺す為の夢でいっぱい。しかし、まあ、それを堂々と人前で晒してしまうとは如何様な愚かさか。私達が隠したとでも思ってるのかしら。私達が食べちゃったとでも思ってるのかしら。違うわ、屠ったのよ。現実こそが御伽噺よりも奇と異えた。もう存在すらしないの。もう生まれてもこないの。だから探しても無駄よ。まったくドードーよりも濡れているとは始末に負えない。追いかけても追いかけても、尚、彼等は泥の団子から脱却できないのだ。わぁ、すっごぉい！　きったねぇ。間違ってないけど間違えたわ。失笑するのか嗤笑するのか選択権は猟兵にある。ありがたい事にこの世の中、虐められる側か虐める側、そのふたつしか赦されていない。大体こういう奴らって被害者面一級二級保持してる系の……。のっぺらぼう故の面の厚さか。そんなに大事なら腸の奥底にでもしまっとけよ。一生懸命探したって、一所懸命弄ったって、何処かの女の子みたいに、臓物になんてなれない。……梓、なかなかやるじゃない。あなたとの戦闘ダンス、自由に動けてやりやすいわ。猟兵ふたりが動けば動くほど、踊れば踊るほど、神が不機嫌な貌になっていく。――お褒めに預かり恐悦至極。では、関係ないワタシたちは関係ない顔でもしましょうか。嗤えよ嗤え、何事もなかったかの如くに。血に塗れた微笑みこそ至上の宝に違いない……。ふふ……そうね。敵の都合なんて、敵のお腹の中なんて、トランプ一枚みたいに関係ないもの……。誰の為の頁なのかと問われたら娘の為と囁くが好い。たとえ消滅がぶつかっても狩りを全うして魅せよ。
　地震、雷、火事、オウガ――蹂躙する超自然も傾いて終えば脅威半減か。それにしても、また落雷？　この世界の敵ってみんな『こう』なの？　兎の穴に嵌まって抜け出せない素人みたいな状況だ。私の世界に比べると一辺倒ね……。趣味の悪いホルモンパーティも鬼がいなけりゃ只の勿体ないだけの儀式か。親切なお人形さんにお土産を持たせよ。十分ですって。それ『も』そう……。パイナップルケーキは如何？　かくれんぼは愈々台無し。
　人を指差してならぬなら手を向けよ、さすれば救われたき者として憐れまれ――それこそご冗談。パイナップルケーキを切り分ける前に食べようとしてくれたお礼だ、嗾けてやった犬の餌と見做すが宜しい。カワイソウに。折角です慈悲を……きっとお前たちのカミサマはワタシの腹の中、掻っ捌いても何もない。生憎、なんでもショウカ出来る質でして……。嘘など通じない。そりゃそうだ。本当の事だって通じないのだから……。お利口さんなのは梓の犬だけみたいよ。良いわ、相手はちっとも相応しくない泥屑だけど。こんな可愛い子が一緒なら躍ってあげる――勿論、飽きたらそこで終わりよ。合わせた鏡めいて獣性を知れ、刎ね殺されるよりはマシだろう。
　ごめんなさいね、もう飽きていたの。
　――拍手だって聞こえない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　皺だらけの脳髄だけは如何しても模倣し難かった。
　熱にやられてすぐに溶けるのなら、無いも有るも同じと解せよう。
　――羨望の眼差しか、或いは喉から手が出るほどに。
　泥だらけの童は何を望んで、何を欲して、好きな子の前で騒ぎ出すのか。綺麗な綺麗な団子状をあえて穢すだなんて、崩すだなんて、オマエにはまったく理解が出来ない。いいや、むしろ、その矛盾した感情こそがオマエにとっての憧れなのかもしれない。何方にしても君、いくら『好き』だからって人を害したらダメだろう。ついついちょっかいを掛けてしまったあの娘はもういない。いなかったとしても尚、臓物を弄るような冒涜が楽しくて愉しくて仕方がないなんて――雷に打たれて終うよりも早く、神の怒りを浴びたいと謂うのか。
　探しても無駄だって事くらい、掬ったって残らない事くらい、君にだって解っているくせに。齢七つほどの泥人形が真っ暗くも、雲っているかの如くに、ぐちゃぐちゃと迫ってきた。迫ってきたところで何も視えなければ、何も聞こえなければ意味などない。君、その格好は、真似事のようなものは、俺に対しての嫌がらせか何かなのかよ。電子ノイズに囲まれたスワンプマン、如何して泥の中で躓いたのかも把握出来やしない。もう十分だ。俺は普通の大学生で、君はよくある『七不思議』のひとつに過ぎない。異物として見做されたのなら『らしく』振る舞うのがセオリーだ。まさか、憧れて憧れて、焦がれての中途半端で、満足出来るほどの化け物じゃあないんだろう――仕込み番傘の花の色、朗読するには口が不可欠か。
　変幻自在は俺の得意分野でね、そう簡単に真似されると困るんだよ、お前……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ひつじの出番はなくなった。
　メェメェと何かを訴えているが、ギリギリ、そういう沙汰ではないらしい。
　――生温さと生臭さの中、ハギスを想ったのは宇宙の仕業か。
　ひどく傾いているのは塔の所為だろうか、或いは、足元を掬われそうになっていた所為か。神の怒りに触れたのか、深淵の慈悲に甘えたのか、如何にかして抜け出したオマエは軽度の立ち眩みに出会った。いったい如何して、なんとなくで、女の子の中身を暴こうとしたのだろう。いったい如何して、興味本位だけで、人を殺す事が出来たのだろう。いや、勿論、加害者である少年だって、神様に唆されただけの『犠牲者』に過ぎない事くらいは解っている。これはオマエの脳内に、ふんわりと現れた純粋な疑問であり。今更、元に戻す事すらも困難な人の有り様だと思うワケだ――常人に『畏れを正しく』だなんて中々に『酷』な事だとは思わないか――とにかく、ですね。私は皆さんのサポートに回りますから。
　大波――泥の悪夢――が刹那の内に顕現し、改めて、オマエを溺死させようと嗤い出す。違う。彼等の狙いは溺死などではない。溺死よりも、死よりも、おぞましい『同族の作り方』のひとつだ。あの波に呑まれてはいけないと、あの泥に触れてはいけないと、誰かさんからの忠告を受ける。だが、躱す必要などない。受ける覚悟も必要ない。何故なのかと問われたならば――泥の悉くが『燃え尽きた』からだ。
　底が有ろうと無かろうと彼にとっては材でしかなかった。堂々と槍を構え、炎を手繰っているその戦士は可愛い我が子を護るかの如く、大いに埒外性を揮って魅せる。愈々熱は泥人形へと到達し、嗚呼、思考実験の奴隷はカラカラと乾く破目となった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　悠々自適な生活も犬に喰われたらおしまいだ。
　忙しない日々に誰かの声、今朝はひどい転倒だった。
　首を落とされたスッポンは血の気が抜けて良い具合だ。テキトウにスライスされた満月も軽くなっての満面の笑みだ。寿命を延ばすも何も既に伸びきった死骸ではないか、それを未だに欲している少年の未来や如何に――やれやれ、おキヌさんだよ。星の子に続いて泥人形とはね……近いのやら遠いのやら。いやらしいのはまったく、それこそ人の子の真似がお上手なところか。駄々をこねるところとか、お母さんお父さんを探しているところとか。ま、そんなことはどうでもいい。……まだ気配においは消えていない。たとえ、邪魔するつもりがなかったとしても、十分お前たちは邪魔だから、おキヌさんは容赦なんかしないよ。耳も眼も聖痕も、誰が視たって本物なのだから、そう簡単には終わらせる事なんて出来ない。
　とはいえ――泥にまみれるのも、泥にされるのも、遠慮したいんだよねぇ。木乃伊取りが木乃伊になるなんてのは探索者だけのエンディングでよろしい。汚れを落とすのも、記憶を消去するのも面倒だし、何より――ノリコが嬉々として追ってきそうだ。浮かぶ事だって泳ぐ事だって、まあ、出来なくはないけれども。わざわざそんな『見せつけるような』事はしたくない。それじゃあ……こんなのはどうかな。狼の手も借りたいと謂うのなら、せめて『舌』くらいは使わせてあげるよ。六呂私は神――勝絶君は人。命令は絶対ではない。だが、命令が、彼等の望みであったならば如何に。君たちにとってここは現世の夢だ。なり損ないではなくしてあげよう。雷に打たれたかのような衝撃、神が鳴いてくれた。
　溶けた脚が津波となり、溶けた腕が泥濘となり、自らを飲み込んでいくならば。何れは五体溶けてなくなり、果てには、なり損なう事すらも『ない』か。死んだ星が散り散りになるように、宇宙が沈黙するように……そのまま常世で夢を見続けなさい。
　最も友好的な死に何を贈るべきか。
　――声が届くとは思えない。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 ボス戦 『ねがうほし』

POW   :    スーパーキラキラ 【100万Kケルビンの星屑】を散布し、最大レベル㎡の【超新星残骸】を描く。［超新星残骸］内の味方は回復、敵はダメージを受け続ける。 SPD   :    ワタシみたいな友だち 【マイナス23.5等級の光】が命中した敵に、「【星になりたい】」という激しい衝動を付与する。 WIZ   :    星の願いを 視界内の任意の対象全てに【願いを込めた銀河宇宙線】を放ち、物質組成を改竄して【自身と同じ存在になるようにと重力崩壊】状態にする。対象が多いと時間がかかる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　人々の願いが成就する際、いったい何が犠牲とされるのだろう。
　答えは……そう、応えてくれたのは、きっと宇宙そのものだ。
　――星そのものだ。
　星は人々の願いを叶えた後、ひとり、息絶える事しか出来ない。
　孤独死したのだから星は人々に忘れ去られ、故に、過去となって蘇る。
　――今度は私の番。私の番だから、皆、仲良くしてね。
　お迎えに来たのだ。お友達を迎えに来たのだ。
　でも、如何してだろう。私の事を友達として『見てくれそうな』子は。
　返事なんてしてくれない。
　なんだか悲しくなってきた。
　悲しくなってきたから、もう、お友達を作るしかない。

　世間知らずの化け物は加減も何もわからない。


　機械仕掛けの白髪がコスモスの花の色を知る。玉虫色の中心で何を揮うのかと訊かれたら趣味嗜好だ。鋭利と呼ばれる美的なセンスを踊らせると宜しい。
　――咀嚼の仕方が問題だ。
　錆びついた歯車を元に戻す為の方法は数多と在るが、果たして、それを行う勇気が彼女には有るのか。何処までも何処までも、彼方までもキラキラとさせる、この、刺すかのような無貌に、或いは無謀に、猟兵は眩暈を覚える他になかった。いったい如何して彼女はそんなにも盲目で異られるのか。いったい如何して彼女はそんなにも無垢で異られるのか。いいや、自覚がないのはオマエも同じなのではないか猟兵よ。真面目に向き合おうとしている時点でオマエも似たような埒外と謂えた。よくわかりませんが、ええ、拙者は骨の髄まで剣士でござります故！　たとえ相手が化け物だろうと、宇宙だろうと、斬り伏せて魅せるであります。正々堂々と勝負したい。勝負をしたいと思ったところで目眩ましだ。嗚呼、マシン。マシンだと謂うのに何故、星になりたくて仕方ないのか。
　光あれと唱えたのは上位の存在だったか、解除の必要など欠片もない。
　強烈な衝動にやられても尚、抗い難い狂気に晒されても尚、空回りの中にオマエは在った。こんな場所で立ち止まってなどいられない。こんな地の底で燻ってなどいられない。無銘を握り締めて、愈々、拙者こそが『剣士の一番星』になるであります、と――宇宙に、星に、臓腑が存在するのだとしたら、きっと邪神とやらも少女と同じか。拙者の勝ちであります、綺麗なまま斃れるのが慈悲でございましょう。お友達と思っていたのは星だけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ゴルゴーの血を鯨飲して、肉を馬食して、静けさを身に宿す。
　登った滝の数も、人だった頃の心も、残されていると謂うのに。
　――邪な神は悉くを無視してくれた。
　頭を垂れて、五体を投げて、底なし沼へと落ちていくかの如き無様だ。曖昧なのはきっと記憶などではなく存在で、嗚呼、祈られなければ泡沫と溶けていく虚の輪郭。定める為の努力として、改める為の気力として、埒外の生命としての活動を続ける他にないと謂うワケだ。そうです、私は――私のようなものは――あなた様にとって、さぞ、甘露な友なのでございましょう。傍らでゆっくりと顎を開いている白蛇、彼はオマエの目隠しのように、じっと星の末路とやらを睨めつけた。もう、疲れているのではありませんか。もう、望む事にすら頭を抱えたくなっているのではありませんか。舌を鳴らしたところで、絶望を流したところで、白痴な女の子には関係がない。臓腑の生温さや生臭さに関して謂えば、ええ、あなた様のよく知っての通りでございます。願いを籠めている合間に、鬼の居ぬ間に、選択しておけ。
　一体何者なのかと自問自答し幾日、似た者同士だと思ったが故の行動だ。立て板に水なんて諺がある儘に、護符、この捕縛を逃れる事など出来ない。星に願いを――神が神に縋ったって意味などない。あなた様は私と同じく『知らない』のでございます。私とあなた様の違いは『ひとつ』だけ。あなた様は『知ろう』と『する』事すらも知らなかったのでございます。知恵の実を齧れなかった子供達へ、如何か、安らかな宙の味を……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　揃いもしない星辰に精神的な死を匂わせる、臭ってきた本物の死に吐き気を催したところで、何を今更と嘯笑わらう他にない。齎されたキラキラに、弄ばれたギラギラに、嗚呼、手垢塗れの幻想が脳内あふれて仕方ないのか。……星ね。なら、星の概念を教えてくれる？　クエスチョンを投げ掛けたとして、ハテナを叩きつけたとして、真実、それに答えなど有り得ない。幾らなんでも『これ』じゃあオコサマの癇癪としか描写出来ないじゃないか。初めから言の葉にしている通り、少女の肚の中には臓物しか広がっていない。んー……残念！　俺も女の子にはロマンティックめにしてあげたいこともあるけどぉ、バケモノには、オブリビオンにはそーゆーサービスはできないってゆーか？　セルフサービスすらも拒絶するとは如何様なお店か。お見せしたところで伽藍洞だ、傷ましい胃袋には体液だけの地獄が相応と知れ――やだ……ウチのウサギちゃん、賢すぎ？　誰かの願いが叶ったとして、対価に星が消滅したなんて誰も証明できやしない。だって、そうでしょう？　自称したって、喚いたって、あなただって実際の星ではないのよね？　根こそぎアイデンティティを喪失した気分だ。貌もないクセに随分な『確信』だこと。コトコトと煮込まれたコスモスの汁気――真っ暗い魔っ昏い、当たり前のようなもの。
　その顔、梓だって分かってるでしょ？　分かっているからこその、その科白なんでしょ？　まぁ、どんな回答を貰ったとしても、応答をされたとしても、私達はあなたの友達でも『おんなじ』でもない。だって私達は猟兵で、あなたはオブリビオン。それが現実、いい加減、狂気とやらから醒めたらどうなの……？　孤独死したって宣うならばサッサと黄泉へと還るべきだ。たった一度でも同列と分かち合った経験があるからこそ、謂えることなのでは？　生憎ロマンチストもフリークスも求めてないの。アリラビの住民でさえ、彼等でさえ、夢じゃなく、確かにそこに生きているのよ……。疲弊を口にするのは結構だが狼よ、大きな神の前で演じるとは不遜とも謂える。嘘吐きと勘違いの相手は疲れますね、ウサギちゃんもそう思いませんか。ワタシの休暇がお前らのようなものの所為ですぐ星になってしまうというのに！　あぁ、無惨。お前ら爆発させても、超新星爆発させても晴れないこの鬱憤ったら……！　芬々たる沙汰だ。いっそサタンにでも堕ちてしまいたい……！　梓も鬱憤が溜まってるのね。まるで他人事みたいだ。他人事だったみたいだ。
　折角です。死に際の一番の輝きで、星のような絶命で、ぜひ叶えてください、ワタシの休暇申請受理……！　星も雷も神も似たようなものだと時計の針が回り始めた。たとえ衝動的に流されてしまいたくても、誰が如何して『それ』を終いだと片付ける事が出来た。そんなに焦がれるならあなたが『本物の星』になれば良い。そんなに憧れるならあなたが『次のあなた』になれば良い。私……？　勿論、そんなのご免よ。酔っ払って兎の穴に落ちるのはもうたくさんだ。さ、梓……食べちゃって。
　食べ易い大きさに揃えてくれた。優しい優しいウサギサンも愈々大変激おこと謂うワケだ。これはもうワタシの胃へ逃げ込んで、胃酸にバイバイするしかないかと。どっぷりと頭を隠すと宜しい。お尻がまる見えだって？　直に消化される……。
　気遣い上手だ。ハリガネムシの亜種として振る舞ってやれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　富士山のてっぺんから転がり落ちた命の数々について、嗚呼、如何して宇宙が知っているのか。コスモスの貌が開いたかの如く賽の河原、ガラガラと崩してくる鬼の沙汰と謂ったら畜生。……おキヌさんだ。まったく、影を落としたかのような、闇で覆ったかのような顔色だ。色とりどりだった精神も人々の祈りの所為で大災害である。少しだけだとしても、ほんの僅かな時間だけだとしても、友だちには名乗らないとね。お友達になってくれるの？　それなら、あなたもきっと私になれる筈よ。意思の疎通については見ての通りだ。出来ていそうで欠片も出来てはいない。……こっちの話さ、気にしないでおくれ。そうとも躓いてしまったのだ。少女はきっと嘘を吐けない性格で、度し難いほどに盲目だ。
　キミは……おキヌさんの、狼さんの、ありえた未来かもしれないね。昔々、山の中にいた頃ならともかく、昔々、お腹を空かせていた頃ならともかく、今は――その手はとれないなあ。悪魔を証明するかのような沙汰だ、まさか、この辞典には言の葉すらも載っていないのか。キミは地上で瞬くには眩しすぎるし、宇宙で笑うには純粋すぎる。そろそろおうちへ、骸の海へおかえり。願いが叶ったからと謂って、真に、人間が幸せになる事など最早ない。
　光は音よりも速いという。神は狼よりも輝かしいという。でも、おキヌさんの《声》は――埒外性は――猟兵としての『もの』であり、何より、正確に言えば音ではない。咽喉や腹ではなく《舌》から発するんだよ。それこそ、少女の肚の中に星々が溜まっているかの如く。そう、具現というよりも概念……？　言葉遊びは苦手だとオマエは宣ってくれたが、その実、美味しそうな汁気ではないか。光より遅いとも限らないし、光がすり抜けるとも限らない。オノマトペで戯れるオコサマのように付き合ってやるのも楽しいだろうか。
　星は巡り廻り、命を産み、死を迎える――それ即ち神に等しい――信仰と呼ばれる星の明るさも何れは失せると謂うワケだ。言葉遊びも《声》にすれば、嗚々、いったい幾つの呪詛がこぼれる。……下無またね。ロンギヌスは語り手だったと改めよ。
　――少女の肚の中には宇宙が広がっている。
　宇宙は果てしなく死に絶え、無茶の代償を払った。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2024年08月28日