ここは、キマイラフューチャーのバチクソでっかいウォータースライダー前。
夏休み、というワードにかこつけて大騒ぎしようと集まった陽の遊び人達だらけ。
「えっと、夏の配信です……でゅふ、見えてます? 見えてますよね?」
「本日の番組はァ!! 夏休みスペシャル兎尻大合戦!!! ふわふわキュ~ティな~!」
そこらじゅうでカメラが周り、個人から企業まで意味分からねえ数の配信がブン流れていそう。
突然、洗濯機のような渦を巻き起こしながらハッピーに大回転するプールから水柱が上がる。
プールから飛び出してくるのは、もちろんオブリビオン。
スイカの頭のムキムキマッチョマン。
ブーメランパンツが筋骨隆々の肉体を――。
「たぁぁぁぁ~~~! 次元斬です
!!!!」
瞬殺である。
「ぎゃああああああ! 一撃でッ! 頭がッ!」
叫び声と共に赤いスプラッシュを上げながら、怪人夏っぽい丸い頭の男は討伐されたのだった。
「……これで良かったんでしょうか?
むしろ、水着で来る必要は――? いえ、作戦。作戦ですっ!
任務完了、帰還しましょう!」
ひょい、とピンクのサングラスを指で跳ね上げる、美しい紫色の兎騎士が1人。
ルナは爽やかな笑顔で長い耳を掻き上げる。
空には燦々と輝く太陽。
それに打ち勝つほどのキラキラを放つ、レジェンダリーかつフル強化されたサイコーに
廃な水着が輝いている。
ナウでおしゃれでハイな水着を身に着けた、カワイイ英雄兎さんを放って置くほどこの世界は甘くないのだ。
「ヘイ、彼女! 今配信してるんだけどさァ!
こっち、こっち見て手ぇ振ってくれねえかなァ!」
ヤギな角に金髪、真っ赤な派手な海パンのアニキ。
ケータイをルナに向けながら大声をあげてくる。
「っ……! 陽の気を感じますっ……あ、アウェイです……」
「すっげーオシャレだよねぇ? カラフルだし、キラキラもすっげーセンスだし? どちゃカッコ良いし?
しかも敵もズバーッとやっちゃうしさ! お尻! お尻いいね~~!
毛並みのコントラストも尻尾の可愛さもグッドって感じでさァ!」
ぐ……ぐいぐい来ますッ……でも、こう……悪い気はしない、というか……?
「なぁ~! 皆~! このコ、カワイイよな~~!!」
「うおおおお~~~!!!」
「すっげーコメントも来てるぜ、うさぎのねーちゃん! サイコーだなー!! ウェーーイ!」
陽!!
ど、どうしたら……! しかし、騎士は民の声に応えるものです!
やらなければ……!
「うぇ、うぇーい!」
満面の笑みッ!
「うおおおおお
!!!!!」
大歓声が爆発する。
既にルナの周りは人だかり、ファッションショーばりにカメラが向いている。
「あの、みなさん、これは……」
「あー、ええと。 拙者は好き好きウサギキマイラちゃんねるの、配信、を……」
「うおー!! 俺は撮ってるだけだぜ!
ハッピーでビビットなカラーが、パープルブラックな毛並みにバチバチにカワイイぜ!
俺とデートしようぜ!」
その瞬間。
ふわふわの羊な雰囲気の女性に、ナンパしてきた犬耳の兄貴が殴り飛ばされた。
「犬ぴっぴ、浮気は駄目だからね!!
えへへ、でも、うさぎちゃんカワイイね! 一緒に写真撮って?」
羊な雰囲気の女性が自撮り棒を伸ばし、ルナと自分を画角に入れる。
「うぇ! うぇえええい!」
周囲の集団のピースを真似て精一杯ポーズを取れば、大歓声で何の音も聞こえないレベル。
楽しげな撮影会。
ちょっとテンションの上がってきたルナ。
悪くないですっ……!
しかし――送迎の猟兵は、水遊びが何より大好きなのである。
「勇者の翼、只今参上!!!
ギルマス、迎えに来たぜ!!!」
ウォータースライダーの上に生まれた積乱雲が、鳥の形になってプールに突っ込んでくる。
ゲリラとか言ってられない、なんかもう爆発的な豪雨と共に。
暴風と豪雨がルナを襲う!
というか、水着を襲う!!
カメラマンが何人も風圧で吹き飛ばされ、水に流されちりぢりになっていく中。
好き好きウサギキマイラちゃんねるの彼だけが耐えている。
「もう少し! もう少しでござる!!!」
「あっ、ちょっと!? ちょっと駄目ですっ、あっ、あっ! +99の防護点なのにーーッ」
水着ってのは吹けば飛ぶんだ。
「最高の兎尻コンテスト、金賞はこんな所に!!!
ふわふわ、曲線、大きさ……そして水着のヒモ痕……!
紫のプリティヒップですぞ、視聴者の皆さアアアアアア!!!」
彼もまた、吹き飛んでいった。
「あめさん……来てとは言いました。でも、ですね?」
「おう、来たぜ!! ふわふわだから大丈夫だろ、オレもAGI下がるから着てないし」
ルナは両手を使い胸とヒップを隠しながら、流れるプールへと旅立ったSSR水着を見つめているのであった。
「お? 何かキマフュでバズってるみたいだぜ、ギルマスの尻。ほら、今トレンドで流れてきた」
「ほぁーーーッ」
成功
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