【敵の姿】戦場のヤケアト・一
「……『戦場帰りの亡霊』、か」
人相を見て区切・終(飢餓文学・f42796)は渋面を作った。
「蛇隊って知ってるか? 匙部長が居た、異能力者による部隊だ。このほかにも、前線において異能力者による部隊が居たらしい。……この『戦場帰りの亡霊』――黒武者・徹は、その部隊の出身らしい。せっかく生きて帰ってこれたっつーのに、なんでこんな危ないことをしているんだか」
国粋革新会――国家転覆を狙っている組織に何故入っているのか。次いで、もう一人の戦地帰りの人間の写真を見る。軒・ミヂカ、彼もまた復員してきた人員であるが、こちらは一般的な兵卒であった。しかし、部隊長が死亡した際の臨時であるとはいえ、その役割を務めたこともあるらしく、さらには地上からの人さらいの元締めなんだとか。
「……こっちもこっちで厄介なことをしているらしいな。……さて、どこから攻略していくか、だが」
どのみち、両者ともに厄介なことに違いはない――どのように牙城を崩していくか、考えるべきである。
●
「そういうわけで、なにはともあれ『四天王』の身辺調査だね。とはいえ、特に黒武者・徹と軒・ミヂカ――この二名の情報は極めて少ない。どう調べるか、どうアプローチするか、というところから頼みたい」
匙・当適は真剣な眼差しでフクロウ達を見てそう発した。
「この二人は、復員してきた元兵卒だ。武力方面でも相当強いらしいから、ひとまず交戦は避けるように。力は合同で攻め入る時にとっておきたい。調べ方は……そうだな、人の噂を聞いても良いし、本人達の足取りを探してみても良い」
黒武者は噂によるとアナグラ内のスラムでうろついていることが多く、軒は居酒屋で度々姿が見られるという。いずれも、油断ならぬ相手だから注意するよう――匙は皆を心配の眼差しで見ていた。
tk
tkです。ボス決めのシナリオとなります!
このシナリオにおいては【1】と【4】が集計対象になります。
プレイングにて相手にしたい対象を数字にて記載してください!
皆様の自由な発想のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
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江田島・榛名
※アドリブ、連携歓迎
なら、人の噂をたどってみるでありますかね。
食堂とかで仲良くなった人達の中でも、そういうのに精通していて口が堅い人間を選んで声をかけるであります。どこの世界でもそういう奴ってのはいるしねぇ
必要なら情報料としては金でも払うか、なにか奢るか……ま、そこらは向こうに任すでありますよ。
探る相手は【1】で。
――『戦場帰りの亡霊』。
アナグラのスラムにしばしば包帯まみれの男の姿が見られると聞いて、江田島・榛名(強化人間のガンスリンガー・f43668)は周辺をうろつく。痩せた子供達がしばしば石を投げてくるのをひょいひょいと避けて、やあ君たちと声をかければ逆に驚かれる。まったく、大人をからかうくらいならからかい返されるくらいは想像しておかないと。
「このあたりに、幽霊が出るって話とか聞いたことない?」
「ウロなら沢山出るけどなぁ」
「あ! それならアレだ、せ、せんじょーがえりの……」
「『戦場帰りの亡霊』?」
「そう、それ! 大人達がみんな怖がっていたよ。いつ何するか分からないって言ってたからさ」
「何するか分からない……?」
●
「うええ!? あの男ね。不気味ったらないよ」
スラムで酒を飲んでいた男は、うぃーとのんだくれながら情報料を喜んで受け取ったあと、『戦場帰りの亡霊』の名を出せば酔いがさめたようだった。
「ツナギ着た女の護衛してるかと思えばショバ代取りのそばにいたり、人さらいの現場に居るっつー話も聞く。……正体は知らないよ、でもウロじゃないのは確かだね。国粋革新会だっけ? 連中の護衛役みたいなモンだと思うんだけどさ、喧嘩売った仲間がいんのよ」
そいつらどうなったと思う? ボコボコにしてやられたんだ。でも、相手の返り血だけじゃなくて、自分の血で汚れていて……。
「あんなの気が狂ってるとしか思えない、自分が怪我をするのも構わずやってくるんだ。自殺するような戦い方するって言ってたよ」
だから思い出したくもないね――眉をひそめて、また酒をあおって酔おうとしている。
「自殺するような戦い方――」
自爆的な行動を取る、と匙部長から耳にしている。そしてそれは事実のようだ、と今しがた、確認がとれた。
これは――注意するべき相手だろう。
情報を持ち帰るために、江田島は足を対策部の方へと向けた。
……誰かの視線がする。
鋭い視線が。
――今は、まだ、刃を交わす時ではない。
大成功
🔵🔵🔵
鷹奈部・庸一
【1】
……戦場帰りの亡霊。
俺と同じではないか。
一度、お目にかけたい物だ。何処の部隊の生き残りだ。もし海ならば、俺が知っている事もあるかもしれないな。
……あの空の生き残りというのなら、もし。
アナグラのスラムの中を、鷹奈部・庸一(空に散るはずだった命・f43545)は歩く。
……『戦場帰りの亡霊』。俺と同じではないか。
胸中は共感と、会いたさに焦がれて進む。鷹奈部のすがたもまた、『戦場帰りの亡霊』そのもので――人々は、彼を遠巻きに、少しおそれた様子で眺めていた。
●
白い人影が見えた。カーキ色の上着を肩にかけて、白い髪の毛に包帯まみれのすがた。人相は合っている。
「――……何か用か」
視線に気づいたのか、その男は煩わしそうに視線を鷹奈部へとやる。
「……『戦場帰りの亡霊』……いや、黒武者・徹だろうか」
名を呼ばれ、男――黒武者は眉をひそめた。
「フクロウか。戦う気ならば――」
「……今は。ひとりの復員兵として会話をさせてほしい」
そう言うと、身構えようとした相手は警戒をわずかに解く。
「……部隊はどこだったんだ。海か、空か、陸か」
「陸だ」
「では、俺とは違うんだな」
短い会話が続いていく。……黒武者はあくまで警戒を解かないが、鷹奈部には一切の害意がなかった。
「多くの同胞が死んでいった。――お前は……あの戦争の報復をしたいのか? それとも、何か別の目的が? 例えば――」
死に場所を求めている、だとか。
黒武者は深く深くため息をつく。
「そうだとして……どうするんだ? 止めにでも来たか」
「止めたい、という気持ちは、あるには、ある。でも――」
分かるんだ、その気持ちが。俺だって、特攻隊だったから。死にきれなかったから――。
「――」
目線を彷徨わせる、そして。
「だとするのならば。戦いの場では……気持ちよく死ねるようにしてくれ」
では、と去る相手の背を見る。引き留めようか迷って、今は、まだその時ではないから。
拾った命を無為にすることは――しかし、おのれがどうしてその願望を止められよう――?
背は小さくなっていく。止めるべき時の言葉を、考えながら。
大成功
🔵🔵🔵
夢洲・鐡次
【4】
元一兵卒という事でしたら、自分も同じであります
それで奴めの気持ちが理解るかどうかは別でしょうが
むしろ臨時とはいえ隊長の務めを果たした事があるというのは、こう、なんというか……嫉妬を感じます
それくらいの能がありながら人さらいの元締めを務めるのは、正直度し難いまであります
ともあれ、軒の事をを知りたい所であります
情報収集と言っても……自分の如き凡愚に大層務まるものでは
とはいえ居酒屋で姿を見たという話はあります。幸いにも自分は酒は弱くはないので、後を追いつつ話を皆に伺いましょう
まぁ酔漢の話がどこまで真面であるかは図りかねるものですが
――――よもや
件の部隊長も“奴が殺した”んじゃあ、あるまいのぅ?
アナグラの歓楽街、居酒屋で存外簡単に軒・ミヂカの姿は見つかった。
へらへらと軽薄に笑う男の姿は、人相と一致する。夢洲・鐡次(戦禍の忘形見・f43542)はその姿を確認し、接近した。
「んんー? んん……フクロウさんかな?」
酒気を帯びながらもふよふよと言う男は、夢洲に目線をやる。
「一杯いる? ……毒でも入ってるかもね」
ハハ! と笑ってみせる姿は、胡乱でありながら、いつでも手元の酒瓶で殴れるという殺意も同居していて、奇妙な男であった。
「貴殿のことを知りたく、参りました」
「おじさんのことが知りたい~? また酔狂な子が来たねぇ。あ! 酒の席だからそりゃ酔狂か!」
コリャ一本とられた! とまた笑う男、ちゃらんぽらんに見えて、とうてい部隊長を務めたこともあるように見えないが――。
さて、どこまで情報は絞り出せるか。周辺から殺気がする。……周りに護衛が居るらしい。
●
「で、何を聞きたいのさ」
「……人さらいをしていると聞きました。また、元部隊長だとも」
「人さらい? いやぁ、ちょっとアナグラに興味がある子達を連れていってるだけさ――なんて言ったところで、言い訳にしかならないか!」
事実だよ、あっさりと認める。
「さらった先で何を――」
「それは秘密。おじさんを捕まえて聞き出してみせてよ」
「……」
内緒、と言いたげに軒は人差し指を口の前にやる。……では。
「部隊長を務めた、というのは本当でありますか?」
「事実! ……ま、臨時だけどね、部隊がほとんど壊滅しちゃったから、その時一番階級が高いおじさんが順当に繰り上がっただけさ」
「――よもや――」
「ありもしない想像をするのはやめてよね。ぼくは仲間を撃つほど落ちぶれちゃいなかった」
想像した言葉を、低い声で遮られる、そこには多少の安堵があったが、引っかかることが、ひとつ。
「……過去形、でありますか」
その言葉に、軒は笑顔を消した。
「今はね、色々とどうでもいいんだ。だから、ぼくはぼくの好きなようにやっている」
大成功
🔵🔵🔵
蔵務・夏蓮
【4】よ。他にも探りたい人はいるけど
自分は地上の喫茶でお世話になっている身
地上から人をさらうなら、いつかオーナーが被害にあうかもしれない
さらわれるのが周りの誰かであっても、オーナーは胸を痛めるでしょうし
軒・ミヂカに関して居酒屋周辺で
聞き込み
いつ来るのか、どこから来てどこへ行くのか、共に飲む相手はいるか、何を話していたか
どんな些細な事でもいい
拒否されても、判断力が落ちているから畳み掛ける
お金も握らせておこうかしら
情報の有無に関わらず、最後に理解不能だろう要求をして自分の痕跡を消す
強欲の海の、空の味を答えて
とはいえ痕跡を消せる対象は要求した相手だけ
だからあらかじめ【変装】しておくわ
おのれは地上の喫茶でオーナーの世話になっている身。
地上から人をさらうのであれば、オーナーか、或いは客が被害に遭うかもしれない――知っている人達の悲しい顔は見たくない。
蔵務・夏蓮(眩む鳥・f43565)はシンプルな動機でフクロウとして働く。
蔵務が居酒屋にたどり着いた頃には、軒・ミヂカは残念ながら酒を飲んで去ったあとのようだったが、店員曰く、軒が来た時にはいつも多くの警備が居て他の客が避けるほどだという。
――今は私ひとりだし、何かあったら助けを呼べないかもしれないから、幸いだったかも。
フクロウと悟られないように変装をしながら、軒のことを調べていく。
●
「軒さんねぇ。おっかない人だよ」
居酒屋の店主は、軒の話を聞いて渋面を作る。
「あら、優しい人だと聞いたけれども」
「表面上はね。でも、ありゃ世界の全部でも憎んでるんじゃないかってくらいおっかないよ。酒の席でも、自分の気に入らないことがあると、酔っていてもスーッと醒めちまう。こちとら顔色伺いに必死さ」
「気に入らないこと……って何かしら」
「自分の昔のことを話題にされるとそりゃもう……なんだい? 軒さん、金払いが良いから部下にでもなりたいのかい?」
「そ……そう! お金がないから、部下になるのってどうやってなるのかしら」
これは良い情報を聞けたかもしれない、食いつくようにする。
「強さを示せればそれでいいのさ、最近はフクロウも仲間にしたいって言っていたよ。対策部が邪魔なんだとさ」
成程――所謂スパイを作りたい、といったところか。
「ありがとう。ねえ――強欲の海の、空の味を答えて」
「は? そりゃどういう――」
店主は一度呆けた顔になり、今までの会話の記憶は曖昧になり、消えていく。
……良い情報が聞けたかもしれない、蔵務はその場をあとにした。
大成功
🔵🔵🔵