モフィンクスの冒険・ラムネ菓子は夢の中
幻武・極
【モフィンクスの冒険】
第7.5話 モフィンクスサマー・in2022?-EX
アルダワののんびりモフモフゆるキャラ災魔のモフィンクスの1匹がちょこっとやる気を出し……夢の世界へと足を踏み入れてしまいました。
そして、夢の世界の散歩はまだまだ続きます。
モフィンクスが飛び込んだ次の夢は、
UDCアースの夏祭りを楽しむグリモア猟兵の頭の上でした。
両者の間に気まずい空気が流れます。
それもその筈、モフィンクスとしては災魔の敵である猟兵と単独で遭遇してしまい、そしてグリモア猟兵としてもこの楽しい夏祭りの雰囲気を壊したくないという思いから戦闘は避けたいと思った筈です。
そこで、ここは一時休戦ということで1匹と1人は夏祭りを楽しむことにしたのでした。
モフィンクスとUDCアースの夏祭りを楽しんでください。
夢の中なので言葉が通じたりなどはご自由にどうぞ。
今回は執筆していたら長くなってしまったMS様の為に3000文字まで用意してありますが、区切りのいいところで区切っていただいて構いません。
オムニバス形式で続けていくノベル企画になりますので、納品後にタグで#モフィンクスの冒険 と付けてください。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
アルダワ地下迷宮の災魔モフィンクス。その一匹が群れから外れ、小さな足でてってと走る。ちょこっとのやる気を携えて、モフィンクスは冒険へ向かうよう。
踏みしめる一歩一歩は小さくも、ちょこっとのやる気はいっぱいの期待に溢れて、モフィンクスのゆるっとした顔にはどこか堂々としたものが浮かんでいるみたい。
ああ、だけれど…何故だか、少し眠たくなってきちゃった。群れを飛び出し一匹旅──この先の旅路は長いのだからと、心置きなく一休み。さっそくウトウト舟を漕ぎ、足を踏み入れるのは夢の中。
ウトウト、フワフワ。
沈むように落っこちて、綿雲の夢はパッと広がる。雲一つない晴れの夜空と、真ん丸のお月様。おや、ここは空の上?けれど足元に広がるのは、ピカピカ光って連なる灯り。
ひゅうっと落っこちて、もふっと着地しモフィンクス。はてさて、ここはどこだろう?
ぐっと周囲を見渡せば、電柱に吊られる提灯の列に、丈夫そうな布の屋根がカラフルに立ち並ぶ。行き交う人間もカラフルな装いで、どこかのスピーカーから聞こえてくるのは、とっても賑やかな祭り囃子。モフィンクスは夢の中──されどここでは、夏祭りの真っ最中。
賑やかな喧騒につられたら、モフィンクスも楽しくなるもの。浮かれてその場で足踏みすれば…おやおや?なんだかモフィンクスの足元の、その感触には不思議と違和感があるもよう。地面といえば堅いもの。けれどこの地面は、なんだか──ふかふかしているような?
首を傾げるモフィンクス。ゆったり、もっふり。そうしていれば、ふかふかした毛並みの手が両脇から飛び出して、そうっとモフィンクスを持ち上げて。モフィンクスの視線はそのまますうっと下がって──おや、祭りがよく見える。かと思ったらくるんとひっくり返されて、金色の目と視線が重なって。
モフィンクスの細いおめめと金色の目が瞼をぱちぱち。
「うわーっ!」
モフィンクスに驚いて大きな声をあげるのは、グリモア猟兵の布都御魂・アヤメ。なんと、ふかふかは地面じゃなくて、キマイラ少年の頭の上。モフィンクスはめいっぱい驚いて、アヤメも降ってきたアルダワの災魔に大慌て。
アヤメの両手は勢い余って空へ掲げられ、モフィンクスは花火のようにぽんっと空へ打ち上がる。そうして、ひゅーっと落っこちるけれど、モフィンクスはモフモフ災魔。コンクリなんてへっちゃらだ。くるんと空中で宙返り、小さな足でバッチリ着地を決めていく。
そうして向き合う一匹と一人。一触即発にはまだ遠くても、間にはどこか気まずい緊張感が漂うもの。
モフィンクスにしてみれば、一匹で猟兵と遭遇なんて、流石にちょっぴり都合が悪い。そしてアヤメからしてみれば、目の前にいるのは災魔といえど温厚そうなモフモフ。周囲はお祭りの真っ最中だし、こんなところでうっかり戦ってしまえば、楽しい祭りは台無しだ。
「…あれ?お祭り?」
ボクはどこからどうして、お祭りに来たんだっけ。アヤメが首を傾げれば、今度はモフィンクスがおや、と心の声を上げる。
ここはあなたの夢の中でしょう?聞こえる言葉にアヤメはまたびっくり!夢の中なら災魔と猟兵だって、心が通じ合うみたい。
夏祭りの夢の中…一匹と一人は互いにそっと手を差し出す。
「一時休戦…って、どうかな?」
モフィンクスがひとつ大きく頷くと、一匹と一人は手を重ね握手を交わす。様子をうかがう足元は、けれど徐々にスキップになって。災魔だなんて猟兵だなんて、ちょっぴり忘れて夏祭りに向かってゆく。
楽しい屋台巡りの始まり、始まり──さっそく突撃するのは、フワフワ綿飴の屋台。モフィンクスの体もありそうな虹色にモフっと頭を突っ込めば、わあ、甘くて美味しい!モフィンクスの顔にぺったりついた綿飴に、アヤメは思わず吹き出しちゃった。
あっという間に平らげて、次に目に付くのは、ぷっくりツヤツヤりんご飴。パリパリの飴に齧りつけば、シャクシャクりんごのじゅわっと果汁が甘酸っぱい。
そうして次に、しょっぱいものが欲しくなれば、熱々タコ焼きにツルツル焼きそば。ソースで口周りをいっぱいに汚してしまうのは無礼講。…また甘いものが欲しくなってきちゃった!
今度は甘くて香ばしいベビーカステラの屋台へ向かってみれば…モフィンクス型のカステラだ!ころころ小さくて可愛いモフィンクスのカステラは、温かくて素朴な甘さ。夢の中って、不思議だね。
そうしていつの間にか、甘いもしょっぱいも、お腹いっぱい。
使い捨て容器と箸をゴミ箱にギュウギュウ詰めたら、次は何を楽しもうか。ヨーヨー釣りに金魚掬い、型抜きにくじ引き。色んな屋台に目移りしながら並んで進めば、モフィンクスがあっと飛び出した。飛び出してった小さな足が止まったのは、射的の景品のてっぺんに並ぶ、モフィンクスのぬいぐるみ!
「ようっし!」
アヤメは勇んでコルクガンを構えると、台に体を乗せて狙いを定める。射撃の技能こそ持ち合わせてはないけれど、ここは戦場ではなくお祭り会場。百発百中が勝つのではなくて、楽しんだものが勝つものだ。
けれど夏祭りの射的はいつだって無情なもの。大きく外れたり惜しいところに当たったりを繰り返し、あっという間にコルクの残弾は空っぽ。がっくり肩を落とすアヤメに、ならばと今度はモフィンクスが参戦する。
ちっちゃな手でコルクガンを器用に構えれば、モフィンクスも歴戦のスナイパー。その堂々として怯まぬ姿に感化されれば、アヤメも再びコルクガンへ手を伸ばす。隣同士に並んでみれば、災魔と猟兵はなりゆきの共闘としゃれこむばかり。
…はてさて、そうして、勝敗は?
「残念だったねー」
即興タッグの報酬は、二つの小さな袋菓子。夢の中だけど、そうそう全部が上手く行くとはいかないみたい。
成り行きまかせに祭りを巡って、ようやくちょっと一休み。祭りの裏の隅っこに座り込み、取り出すのは射的の隣で買った瓶ラムネ。ポンポンと栓を開けて、袋菓子もバリっと開けば小粒のラムネがころん、ころん。
「かんぱい!」
カチンと瓶をぶつけたら、シュワシュワのラムネだって楽しそう。射的の大物は討伐ならずでも、仲良く分け合う報酬は甘くてシュワシュワ美味しいものだ。
そうしてひと息、見上げる空にドンと響いて明るい花が咲き開く。
「あ…花火だよ!」
アヤメの声は次々に打ち上がる花火の音に掻き消えて。一匹と一人は高々と打ち上がる花を見上げる。散っては咲いて、散っては咲いて。夏祭りの大輪は夢の夜空を彩ってゆく。
「ふあ…なんだか眠い…よ…」
終わらぬ大輪の夢は、連なる花火の音に遠ざかり。アヤメが丸くなって眠りはじめれば、とたんに景色はくにゃりと崩れてゆく。
どうやらそろそろ、時間切れみたい。モフィンクスもウトウト微睡み目を閉じる。ああ、楽しかった。次のお散歩はどこへ行こう?
また明日も、どこかの世界で楽しい冒険がモフィンクスを待っている。
成功
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