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死がふたりを分かつまで

#サイキックハーツ #トンチキシナリオ


●リア充、ことごとく爆発せよ
 ――憎い。
 幸せそうにしている、全ての人類が憎い。
 家族、恋人、友人、それら全ての幸せを奪い去ったらば、どんなにか心地良いことだろう。

 ――味わいたい。
 この平和な世界をかき乱してでも、人類が不幸に苦しむさまを見たい。
 人の不幸は蜜の味と言うが、きっとそれは事実なのだろう。

 さあ、征こう、同志たちよ。
 人々から笑顔を、幸福を、根こそぎ奪い我らが糧となさん!

●トンチキシナリオです
「俺が出た」
 グリモアベースの一角で、ニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)があからさまに苦々しい顔をしながら、集まった猟兵たちに向けてそう告げた。
「……申し訳無い、サイキックハーツ世界で起きる事件の予知だ。皆も知る所の『真の姿がオブリビオンとして出現する』現象に、俺が巻き込まれたという話でな」
 ニコはすぐいつもの生真面目さを取り戻して、予知の説明に入る。
灼滅者スレイヤーやエスパーが生きる、基本的に平和になった此の世界では、結婚式を挙げて永遠の愛を誓う人々が日々誕生している。だが、其れを良しとしない輩が一致団結して、そんな幸福を奪い去ろうと目論んでいるのだ」
 猟兵たちの中にも、心に決めた大切な人の存在があったり、既に生涯の君と巡り会って幸福な時を過ごしながら日々戦う者も居るだろう。
 それを真っ向から否定しようという輩だ、捨て置く訳には行かない。

「俺の真の姿を模したオブリビオン――種族はソロモンの悪魔なのだが、其奴は利害が一致した強力なオブリビオンと手を組み、手始めに結婚式場を襲撃することだろう」
 中空にホロビジョンを展開させたニコは、一枚目のビジョンに張り付いた笑顔をした黒衣の男性を映し出した。
「此奴は『スマイルイーター』と呼ばれた六六六人衆、密室を作り出しサイキック爆弾を仕掛け、幸せな人々の笑顔を奪う許されざる輩にて」
 とあるエスパー同士のささやかながら幸せな結婚式が催される式場を密室にした上で、サイキック爆弾を起爆させて大惨事を起こそうとしているのだという。
「丁度、披露宴で新郎新婦がお色直しをして再入場するタイミングを狙って乱入する腹づもりらしいが、其処へ俺が皆を転移させる。披露宴の余興に見せかける勢いで迎撃を頼みたいのだが、良いだろうか」
 何やら、だんだん話が怪しくなってきたが、大丈夫だろうか?
「出来るだけ穏便に――というのは難しいやも知れないが、皆が上手く立ち回ってくれれば、列席者はオブリビオンの襲撃だという事に終始気付かず済ませられるやも知れぬ」
 披露宴に列席している人々は、いい感じに酔いが回っている者も居るだろう。あるいは、幼い子供にとってはヒーローショーか何かと勘違いする可能性も見込める。
 とにかく、相手のシリアスに付き合う必要は一切無いと、ニコは断言してみせた。

「次の説明に移ろう。披露宴を無事守り抜いたら、第一段階が失敗した時に備えて黒幕が――ううむ、まあ、要するに俺の真の姿なのだが。其奴が潜伏させていた大量のオブリビオンが式場の外で暴れ回るので、其れを迎撃して貰いたい」
 次にホロビジョンを展開させた先には、季節はずれのサンタクロースが映し出されていた。外見こそパッと見た感じサンタクロースなのだが、目つきは胡乱で、手にしているのはプレゼントボックスの代わりにダイナマイトという有様だった。
「其の名も『288位クリスマス爆破男』、口癖は『リア充、爆発しろ!』でな」
 オイオイオイオイ本当に大丈夫かこの依頼!? 雲行きが本当に怪しいぞ!?
「クリスマスイブが近くなる程分裂体を増やす特性を持つが、今は丁度夏も近い。オフシーズンということだ、サクッと蹴散らして来て貰えれば構わないと思う」
 しかも説明がざっくりだ! 本当にそれでいいんですか!?

 そして最後にニコがビジョンを展開して映し出したのは、何度かニコ自身披露したことがある割と露出度が高い真の姿をした、全くの別個体こと『狂った時を刻む者』だった。
大規模魔術サバトにより、人々のずっと続くはずだった幸福な『時間』を奪い去る事で、生じた絶望と喪失感を糧に力を増す存在として確認された。能力自体は時空を操る凶悪な存在に見えるが、今回はリア充を憎む只の痴れ者だ。全力でしばき倒して欲しい」
 本当に勘弁して欲しい、という顔でそうとだけ説明すると、ニコは全てのホロビジョンを纏めて消去した。依頼に関しての情報は、以上だと言わんばかりに。

「何だか、私情に巻き込んでしまうようで本当に心苦しいのだが……」
 虹色の星形のグリモアを輝かせながら、ニコは転移の準備を始める。
「皆が油断なく立ち回ってくれさえすれば、きっとスムーズに解決する事だろう。そう気負わず、人々の幸福を守るべく、気持ち良く戦って来て貰えれば幸いだ」
 開いたゲートの先には、華やかな結婚式場の景色が広がっていた。

 さあ、いざ、最高の茶番劇を演じようではないか――!


かやぬま
 サイキックハーツですね! そしてトンチキシナリオですね!
 仕事依頼が久々という皆様も、お気軽にウェルカムです!
 という訳でかやぬまです、よろしくお願い致します。

●章構成
 第1章:ボス戦『スマイルイーター』
 とある結婚式場の披露宴に乱入し、人々の笑顔を奪う事件を起こそうとします。
 折角の披露宴を台無しにするのも何なので、出来れば穏便に、可能ならば披露宴の余興に見せかける勢いで、コメディタッチでプレイングを書いていただいて全然問題ございません。

 第2章:集団戦『288位クリスマス爆破男』
 スマイルイーターを退けた後、式場の外で暴れ出しますので、次はこちらの対処をお願いします。
 リア充な猟兵さん相手には特に気合いが入るようですが、戦闘能力は変わりません。ボコりましょう。

 第3章:ボス戦『狂った時を刻む者』
 外見だけはどう見てもニコの真の姿ですが、中身は全くの別物です。伴侶もいません。ぼっちです。
 今回はネタ要員として登場しますので、遠慮なく叩きのめしてやって下さい。詳細は断章にて。

●プレイング受付について
 全編通して、第六猟兵初心者の方でも慣れた方でも、どなたでも楽しめるようにと考えております。
 ただ、恐れ入りますが、毎度のことながらプレイングの受付期間は設けさせて下さい。
 断章を投稿した上で、受付期間をタグとMSページに記載しますので、期間内の送信をお願い致します。
 また、プレイング作成前にMSページのご案内にも一度お目通しいただけますと幸いです。

 最後になりますが、基本的にトンチキシナリオになる予定なので、そこだけお覚悟をお願い致します。
 それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております! かやぬまも頑張ります!
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第1章 ボス戦 『スマイルイーター』

POW   :    微笑みの殺人
【「幸せへの憎悪」に満ちた笑顔】を披露した指定の全対象に【彼の前から逃げ出したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    殺しに笑いを
戦場内に「ルール:【幸せであってはならない】」を宣言し、違反者を【脱出不能の特殊空間『密室』】に閉じ込める。敵味方に公平なルールなら威力強化。
WIZ   :    微笑みと共に消ゆ
【遠隔操作装置】を使い、予め設置しておいた【殺人サイキック爆弾】を起爆する。同時に何個でも、どんな遠距離からでも起爆可能。
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●笑顔を奪う者、襲来……?
 都内某所、七月某日、晴れ。大安吉日。
 梅雨明けの宣言が出て間もない晴天に恵まれ、とある結婚式場での披露宴もつつがなく進行していた。今は新郎新婦がお色直しのために中座しており、列席者同士での歓談の最中だ。
 程良く酒が回りご機嫌な者が居れば、美味しい食事に舌鼓を打つ者も居る。一家で招待された親族の小さな子供は、そろそろ退屈してきた頃合いかも知れない。
 そんな中、会場の扉がゆっくりと開いたものだから、列席者は皆視線を向ける。いよいよ新郎新婦のお出ましかと、新婦のドレスの色は果たして何色かと――。

『ご列席の皆さん、お楽しみいただけていますか? これより、余興を始めます』

 整った顔立ちをした、糸目の男性の姿だけがそこにはあった。
「誰……?」
「飛び入りのゲストか何か?」
 人々は小声で何事かと言葉を交わす中、男性――復活ダークネスことオブリビオン『スマイルイーター』は、張り付いた笑顔のままで、とんでもないことを言い出した。
『この宴会場には、僕があらかじめ設置した殺人サイキック爆弾が複数存在します』
「またまたぁ」
「宝探しゲームか何か?」
『ほら、その幸せそうな笑顔が――気に入りませんね』
 スマイルイーターの笑顔は、幸せへの憎悪に満ちている。
 けれども、会場の誰もが、それにはまだ気付かない。
『逃げ場などありませんよ、この宴会場は僕の力で密室に――』

 ――バアァァァン!!!

 そこで空気を読まずに宴会場の扉を蹴破る勢いでなだれ込むのが、転移を受けた猟兵たちである! 密室殺人なんてやらせるかよォォン!
 幸い、宴会場のエスパーたちはスマイルイーターの言動を真に受けていない。今のうちに、新郎新婦が戻ってくる前に、この物騒な輩にご退場願おう!

●補足
 基本的にコメディタッチで話が進みますが、プレイング内容次第ではシリアスに戦うことも可能です。皆様なりにやりやすい戦い方でスマイルイーターの妨害をしまくって下さい。灼滅するというよりは、最終的に会場から追い出せればひとまず成功です。
 なお、爆弾が仕掛けてあるという話は事実なので、WIZのユーベルコードで戦う方はそちらの対処をプレイングに織り込んでいただけるとプレイングボーナスが加わります。
浅間・千星
【千曲・花近(f43966)】

力を授かって初依頼だが、緊張はない
幸せなひと時に水を差す無粋な輩にはご退場願おうか!

まず参列者を怖がらせないようにする
花近と並び、
「宝探しか……面白い。受けて立とう」
奴のセリフに返し、いつものように自信満々に笑んで参列者たちを安心させよう

遠隔爆弾は、『七不思議奇譚「君影草のまぼろし」』を語って召喚した、わたしの最愛…ウサパペの形を模した都市伝説に探させよう
中座だからケーキはもうない? 主役がいない高砂も爆破しても仕方ない
なら客席はやばいな
ウサパペ、テーブルクロスの下を見てきてくれ
わたしはウサパペの後に着いて、爆弾を見つけ次第、魔法の箒で掃いて奴にぶつけてやる


千曲・花近
【浅間・千星(f43966)】

幸せな結婚式を台無しにはさせない!
俺も実践って意味では初心者。でも、できる限りのことはする
よ!

「皆さんはその場でご覧ください!」
って、参列の皆さんににっこり笑って落ち着いてもらう

幸せであってはならない。のか
披露宴で民謡歌って、みんなにはその場違いっぷりにキョトンとしてもらおう
そうしたら俺もショボンだし、参列者たちもあまり幸せじゃない
千星ちゃんとウサパペが爆弾を探してる間、『サウンドウェーブ・ビブラート』で民謡歌って彼と対峙!
ほらー、こんな席で民謡なんて場違いすぎて、白けちゃってるじゃんー。みんなポカーンだよー
だけど、攻撃で彼を扉のことまで追い立てられれば御の字だ



●星が瞬き、唄が響く
 灼滅者スレイヤー、千曲・花近(信濃の花唄い・f43966)。
 エクスブレイン、浅間・千星(Stern des himmels・f43876)。
 送り出す者と戦う者とで明確に立ち位置が異なっていた二人は今、数奇な巡り合わせの果てに、同じ猟兵として並び立っている。
 眼前には、宴会場の扉。この扉を押し開ければ、そこはもう――戦場だ。

「力を授かって初の依頼だが、緊張はない」
 千星の自信満々な笑みは、往時と変わらぬ頼もしいもので。
「うん、幸せな結婚式を台無しにはさせない!」
 意気込む花近の明朗さも、懐かしいまでに変わらぬものだ。
「俺も、実践って意味では初心者。でも、できる限りのことはするよ!」
「幸せなひと時に水を差す無粋な輩には、ご退場願おうか!」
 二人は顔を見合わせ一度大きく頷くと、それを合図として、同時に扉を押し開けた。

『僕の力で密室に――んん?』
 かつて大型客船ひとつを丸ごと密室に仕立て上げたスマイルイーターが、まさにドヤ顔で披露宴に参加している人々を恐怖のどん底に叩き落とそうとしたその時だった。
 普通に扉が開いたものだから、その時点で既に台無しである。ざまあないね!
「密室が何だって? お兄さん!」
「あはははは、普通に追加の飛び入りさん来てるし!」
 会場は変な方向に盛り上がり始めた。いいぞ! 出だしは好調だ!
 花近と千星は並び立ち、この調子で参列者たちを怖がらせないようにと宴会場へ同時に足を踏み入れた。
「宝探しか……面白い、受けて立とう」
『いやその、僕は本当に爆弾を仕掛けていて』
「皆さんはその場でご覧ください!」
『ちょ、ちょっと!?』
 千星は自信にあふれた笑みを参列者たちに向け、これは本当の宝探しゲームなのだと錯覚させることに成功する。湧き起こる拍手! さらに花近が朗らかな笑顔で注目を促したものだから、場の空気は完全に猟兵二人が掌握したと言っても良かった。つよい。

 千星は右手を掲げると、かつてウサギのパペットを右手に嵌めていた時のような動きを取った。千星が心を込めて縫い上げた、物言わぬぬいだった、ウサパペ。それが今【七不思議奇譚「君影草のまぼろし」ナナフシギキタンキミカゲソウノマボロシ】の力で、語り部たる千星の最愛の存在として顕現し――うわあ何かわちゃわちゃ出てきたぞ!? かわいいですね!
「君の影を待つ。そのまぼろしを見た者は、囚われたまま帰らない――けれど」
 かつて灼滅者が退治した都市伝説『君影草のまぼろし』は、今や立派な七不思議使いとなった千星が従え、大量のウサパペを模した都市伝説を召喚せしめるに至った。数がランダムなのはご愛敬、今回に関しては特に手数は多ければ多いほど良いからだ。
「きゃあ、かわいい!」
「こっちにおいで~!」
 千星がウサパペを召喚したのは、会場に仕掛けられたというサイキック爆弾を見つけ出すため。会場中にちょこまかと散らせて、あちらこちらを捜索させ始めた。
 そんな様子も愛らしく、参列者たちからは大好評の声があちこちで上がる。
「中座だからウェディングケーキはもうない?」
 忙しなく行き来するウサパペから、情報を収集する千星。
「主役がいない高砂も、爆破しても仕方ない……」
 ふうむと考えた千星は、やはり客席が狙われていると判断を下す。
「ウサパペ、テーブルクロスの下を見てきてくれ」
 的確に指示を下すと、列席者たちにキャッキャと見守られながら、ウサパペたちが各テーブルの周りに集まっていった。

 一方の花近は、スピーチに使用されるマイクのそばに立ち、いかにもこれから一曲披露しますと言わんばかりに発声練習をしていた。十秒もあれば、十分だった。
『き、君たち……! 僕の華麗なるリア充爆破計画を邪魔するつもりか!』
 アッ、リア充爆破って言った。闇堕ちならぬギャグ堕ち確定の瞬間であった。ごめんて。
「幸せであってはならない、のか」
 花近は、心なしかしょんもりとした表情で言った。歌でみんなを笑顔にするのが何よりも幸せだと感じる花近にとって、この状況はなかなかに難しいものであった。
 こうしている間にも、別働隊の千星が頑張ってサイキック爆弾を捜索してくれている。スマイルイーターにそれを妨害されないためにも、ここは男を見せる時!
「……ミュージック、スタート!」
 意を決した花近は、スレイヤーカードから魔法のように中棹三味線――銘を『春告』という――を取り出し構えると、べべべんと音を奏で始めた。

 ――ナンジャラホイ♪ ヨイヨイヨイ♪

 響き渡るのは、信州小諸を愛する心を乗せた、はちゃめちゃに伸びが良い声の民謡。
「……?」
「な、何この……何?」
『……えっ』
 披露宴で一曲歌うのは定番ではあるが、民謡をチョイスする者はそうそういない。花近としてはその場違いっぷりに皆がキョトンとなるのを、敢えて狙ったのだ。
(「民謡がウケないのは俺もショボンだけど、参列者たちもあまり幸せじゃなければ」)
 スマイルイーターの『密室』は、永遠に完成しないということになるではないか!
 しかも、花近の歌には強い力が込められている。民謡にはしっかりと【サウンドウェーブ・ビブラート】の効果が発揮され、列席者には見えずとも、スマイルイーターにはバッチリ音波攻撃が効いていたのだ。
『く、この……伸びの良い歌声に気圧される……っ!』
 呆気に取られ、すっかりポカーンとなった会場の雰囲気の中、花近は頑張った。唄いきったのだ。スマイルイーターは扉の近くにまで追い立てられていた。頑張った!
「ほ、ほらー! こんな席で民謡なんて場違いすぎて、白けちゃってるじゃんー」
『き、君……自分でやっていて悲しくはないのかな……?』
 悲しいに決まってる。本当は、メインジャンルの民謡で場を沸かせられれば最高だった。けれど今は敢えて場を白けさせる不幸にする時だから。

「待たせた、千曲! 上手く避けてくれ!」

 その時、千星の鋭い声が飛んだ。
「千星ちゃん!」
 段取り通り! 爆弾を発見した千星は、ウサパペが示す爆弾を、魔法の箒を器用に扱いシュッと掃いてスマイルイーター目がけてシューーーッ!
『あわわわわわ!? 民謡に気を取られていたら起爆させるのを忘れていたなんてそんな』
 説明ありがとうございます! そして喰らえ、自分が仕掛けた爆弾を!
 実際に爆発しちゃうと危ないからね、砲丸を喰らったと思って下さい。
 勢いのままに、その場にくずおれるスマイルイーター。しばらくは立ち上がれないことだろう。

「あ、あの……もしかして、千曲・花近さん……ですか?」
「およ?」
 いつの間にか、列席者の一人と思われる、若い女性が一人花近のそばまで来ていた。
「J-POPも歌ってたりしますよね? じ、実は……ファンです……」
 もじもじとしながらも、思いがけぬ場面で出会った推しに勇気を出して思いを伝えに来たのだろう。女性は花近の顔をなかなか直視できないまま、しかし確かにファン宣言をしたのだ。
「わ、ありがとう! 場違いな歌になっちゃってごめんね~」
「いえっ……! 本場の民謡もすごかった……ですっ……!」
 そんなやり取りを見ていた他の人々からも、あたたかい拍手が起きる。
「おねえちゃん、うさぎさんのおにんぎょう、みせて!」
「こら! すみません、とっても可愛かったから気に入っちゃったみたいで……」
 千星の近くには、愛らしく着飾った幼い少女が立っていた。すぐに母親と思しき女性が引き止めに来たが、千星はぬいポーチから元祖ウサパペを大事そうに取り出すと、かつてのように右手に嵌める。
「こんにちは、お嬢さん」
 芝居がかった口調でウサパペを喋らせれば、少女は大喜び。母親も笑顔になる。
(「これが、戦って守る――ということなんだな」)
 灼滅者や猟兵と肩を並べて戦えることを実感した千星は、感慨深げにあたたかい雰囲気に包まれた宴会場を見回した。

 リア充爆破計画、早くも頓挫しそうですけど、大丈夫?
 諦めるなら今のうちですよ、オブリビオンの皆さん!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琶咲・輝乃
本当に、密室が好きだね
スマイルイーター

逃げ場のない客船でそれをやって、灼滅されたのに懲りないなぁ

さぁ、このくだらない余興を喜劇へと変えようか

で、肝心の爆弾だけど―――
ぜっっったい嫌らしいところに隠しているよね?
子供の近くとかお年寄りの近くとか諸々

その辺りを重点的に追憶の記録者で情報収集
当たりをつけたら神羅刃で回収して
スマイルイーターに爆弾諸共ぶつけよう

エスパーの誰かが持っている物品だったら
しっかりと説明してから投げるよ

子供には美味しいお菓子などで交換という形で納得してもらおう

エスパー達には
ボクは顔の右半分を覆うお面を身に着けた和装の人で
扇を使って舞っているように見えるだろうね

アドリブ
連携歓迎


スイート・シュガーボックス
ハッピィィィィィウエディィィィィィング!!!!!
結婚おめでとうううううッ!!!
(予め召喚した【苺眼の極上ケーキ竜】を乗せた台車を押して飛び入り乱入入場するミミック)
腕によりをかけて作ったケーキのドラゴンをお届けだよッ!
しかもただのケーキじゃない。何とビームを吐く。
(スマイルイーターにレインボーなエクトプラズムブレス)

さて、余興って体でケーキ竜がスマイルイーターと戯れてる間に『不思議なティーポット』でお客に飲み物を淹れつつ、注意深くサイキック爆弾を探し、発見しだい錬金術パワーで分解しちゃうよッ!

役目を終えて動かなくなったケーキ竜は、ナイフで切り分けお客達に配っていくよッ!


【アドリブ歓迎】



●守られるべき幸せ空間
 宴会場の扉の前で、和装の少女が佇んでいた。その顔面の右半分は面で覆われているものの、それも含めてどこか神秘的で美しい少女だった。
 琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・f43836)――ダークネスが世界の支配者であった頃から戦い続けてきた、歴戦の灼滅者スレイヤーでもある。
「本当に、密室が好きだね、スマイルイーター」
 輝乃は思い出す。オブリビオンとして蘇る前の、六六六人衆であった頃のスマイルイーターの最期を。
「逃げ場のない客船でそれをやって、灼滅されたのに懲りないなぁ」
 報告書での見聞きでしかないが、その最期は命乞いをするという無様さであったとか。
 わざわざ骸の海から蘇ってまで、恥を晒しに来るとは驚いた、と言うべきか。
「さぁ、このくだらない余興を喜劇へと変えようk」
「ハッピィィィィィウエディィィィィィング!!!!!」
 バァァァァァン!!! 輝乃が仰々しく扉を開けようとしたまさにその瞬間、何かでっかいドラゴンっぽい形をしたフワフワクリームケーキを乗せた台車が爆走し、宴会場の扉をぶち開けた。
 これはスイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)さんの仕業なんですが、手の代わりにリボンを巧みに動かして台車を押して、宴会場に突撃するたぁ大したものです。
 ケーキの正体は、あらかじめ召喚された【苺眼の極上ケーキ竜ストロベリーアイズデリシャスケーキドラゴン】なんですけど、突撃お前の披露宴しても全然型崩れしないのってすごくね? と思う訳です。

『こ、今度は何ですか!? 何なんですか!?』
「キャーッ、すっごいケーキが来たわよーっ!」

 披露宴の場は、色々な意味で大盛り上がり。輝乃は開け放たれたままの扉の間をそっと通り抜けながら、苦笑いしつつ周囲を見回せば、人々はすっかり笑顔になっていた。
(「これなら、エスパーの皆には何の心配もかけずに済ませられそうだね」)
 輝乃が安堵する間にも、スイートのテンションはまだぶち上がる! 会場もそれにつられて盛り上がる!
「結婚おめでとうううううッ!!!」
「「「イエアアアアアア!!!」」」
『ちょっと待ちなさい! 何勝手に盛り上がってるんですか! 爆破しますよ!?』
 宴会場を恐怖のどん底に陥れてやろうと思っていたはずのスマイルイーターにとって、この流れは完全によろしくない。かくなる上はと爆弾の起動を匂わせる。
「おおっと、君には腕によりをかけて作ったケーキのドラゴンをお届けだよッ!」
『せ、精巧な作りをしている……爆破したくなりますねぇ……』
「しかもただのケーキじゃない、何とビームを吐く」
『ンギエエエエエエ!!?』
 フワフワクリームケーキのドラゴンの口から、虹色のエクトプラズムブレスが放たれ、スマイルイーターを直撃した。絵面としては非常に楽しそうだが、立派なユーベルコードによる攻撃なので、実は結構痛い。スマイルイーターは顔を覆ってのたうち回る。
「すごいケーキだね……」
 これには輝乃も興味津々で、精巧に作られた苺眼の極上ケーキ竜を間近で見る。見つつ、これが今まさにスマイルイーターを牽制してくれていることも理解していたから、本題である爆弾探しに早速取りかかる。
(「で、肝心の爆弾だけど――」)
 輝乃の視線は、新郎新婦の親族が集まるテーブルへと。
「ぜっっったい、嫌らしいところに隠しているよね?」
 まだ小さな子供や、年配者が集まる場所でもある、親族席が一番怪しい。けれどもいきなりテーブルへと突撃して爆弾探し、というのもいささか無粋であろうと、輝乃は所持する七不思議のひとつ「追憶の記録者」を用いて、慎重に情報の収集にあたった。

 追憶。
 まだ誰も居ない宴会場で、せっせと爆弾を仕込むスマイルイーターの姿。
 テーブルクロスをめくった奥、テーブルの足元であったり。テーブルの上に置かれた花瓶の中に小型の爆弾を落としたり。うーん、変な方向で努力しちゃうんだなー。
 笑ってはいけない。彼は割と本気で爆弾を爆破させるつもりで頑張っているのだから。

 爆弾の在処を大体把握した輝乃は、最優先で守らねばならないと判断した子供や年配者が集まっている親族席へと、盛り上がった雰囲気を壊さないようにそっと近付いた。
「ご歓談中失礼するね、宝探しゲームの景品のひとつが、このテーブルの花瓶らしいんだ」
「ええっ!? ホント?」
「当たりじゃないの、良かったねぇ」
 親族席の人々は、輝乃の言葉に大喜びだ。ここは何としても、穏便に花瓶を回収しなければならない。
「それで相談なんだけど、見ての通り、宝探しゲームを主催しているあの黒服のお兄さんは今ちょっと忙しくてね」
 スマイルイーターは、エクトプラズムブレスを喰らい続けて床でのたうち回っている。
「良ければ、このテーブルの代表として代わりにボクが花瓶を持っていこうと思うんだ。もちろん、代わりの品は用意するから」
「ハァイ、美味しい紅茶はいかがかな?」
 そこへ、絶妙のタイミングでスイートが「不思議なティーポット」を使って、香り高い紅茶を次々と振る舞い始めたのだ。
「お代わり自由、しかもこの後はあのドラゴンケーキを切り分けて会場のみんなにお配りしちゃうよッ!」
「わああ、ケーキだって!」
「それじゃあ、花瓶の件はお願いしようかねぇ」
 割とあっさり承諾してもらえて、安堵する輝乃。早速テーブルの上に置かれた花瓶を手に取ると、ようやくエクトプラズムブレスから解放されたスマイルイーターを見た。
『ううう……よくも有無を言わせず好き勝手してくれましたね……』
「悪いけど、まだまだこちらの手番だからね!」
 そう宣言するや、輝乃は手にした花瓶を【神薙刃シンラジン】に乗せて、よろよろと立ち上がったスマイルイーター目がけて投げつける!
 しかし、列席者たちの目には、輝乃がそんな物騒なことをしているようには決して見えず、ただまるで扇を使って舞を披露しているかのように見えたことだろう。
 花瓶はと言えば、スマイルイーターが間一髪のところで受け止めたのだが、完全に持て余しているようだった。何うろたえてるんじゃい、お前が始めた物語だろうが!

「さあさ、極上のケーキ竜だからね! 美味しく召し上がって欲しいなッ!」
「余興に使えて、しかも食べられるだなんて、すっごいですねー!」
 スマイルイーターを余興というていで牽制するという大役を終えた、今はもうただ美味しいだけのケーキと化したケーキ竜を、ナイフで器用に切り分けていくスイート。このミミック……器用さが尋常じゃない……!
 先程の親族席にも、約束通り美味しいケーキが供せられ、列席者たちはこれまた美味しい紅茶と一緒に幸せなひと時を過ごす。ねえねえスマイルイーターさん、今どんな気持ち?

(「テーブルの下に、ちょちょっと潜り込んで……」)

 スイートは、人々が極上のケーキと紅茶に魅了されている隙を見て、あるテーブルの下にこっそり潜り込んだ。テーブルクロスの中に吸い込まれていくミミックというすごい絵面を、幸いにして誰にも見られずに済んで本当に良かったです。
(「あった!」)
 予想通り、というべきか。人々の足元近く、テーブルの脚に爆弾が括りつけられていた。スイートは巧みな錬金術を駆使して、ひっそりこっそりと爆弾を解体してみせた。これで、まず二つは爆弾を無力化出来たという訳だ。
 次なる爆弾を探すべく、お代わりはいかが? と各テーブルを回りながら、スイートはサイキック爆弾の気配を探る。
『待って? もしかして君たち、僕が仕掛けた爆弾を一つ一つ解除してない?』
宝探しゲーム・・・・・・だからね、当然のことだとは思わないかい?」
『くっ……かくなる上は、一斉に起爆させて』
「それやったらどうなるか、分かって言ってるのかな?」
 ずびしッ! 輝乃が扇をスマイルイーターの顔面すれすれに突きつけた! 圧!
『何かみんなケーキ食べながら幸せそうな顔して……あああ、憎らしいなあ……』
 あくまでも張り付いた笑顔は崩さぬまま、しかし声音はひどく悔しそうなスマイルイーター。人生ってままならないものですね! ざまあないですね!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イヴ・エルフィンストーン
ニコさんが闇堕ち!?
あっ、いえ、今は違うんですよね
ソロモンの悪魔はイヴ達魔法使いの宿敵です
頑張って倒しましょう!

武蔵坂学園で見た事があります
行事でいつも爆発しろーって叫んでいた方々
ダークネスにも広まっていたなんてすごいです
スマイルイーターさんまで入団を…(誤解

突入前に18歳変身!
そこまでです
悪い人はマジカルプリンセス・イヴが許しませんっ!
あ、あの、それと恋愛でお悩みでしたらイヴが占います
UCで精神世界にお邪魔しますね

イヴの出張占いの館へようこそ!
何にお困りなのでしょう?
ええっと恋愛運は…ごめんなさい、悪いです
今日は全体的に最悪の運勢です…
…ダメージを受けていらっしゃるのですか?
す、すみません!


ヘスティア・イクテュス
本人じゃなくて同じ姿のオブリビオンね…
なら鴻鈞道人のときより余裕余裕、頑張ってきましょうか!

因みに参加直前に『R…B…R…B…6年放置してた装備の整備さえ終わっていたら…』
という送り先不明の迷惑メールが届いたのだけど…


扉を蹴破りながら一言
お宝って言ったか!!宇宙海賊だ!ゴラァ!!手ぇ上げろ!!とレーヴァティを持って突入
無論遠隔起動装置は『ハッキングにジャミング』と封じさせて貰うわ
どんな遠距離にあっても遠隔装置の電波が届かなきゃね…

おぅ兄ちゃん、その手に持っとるもんがお宝の鍵やろ札束ザクザク宝箱渡してもらうで…と笑顔でE.O.Sで頬をペチペチと寸劇
なお意味はこのまま続けるなら分かるわね?(脅迫)



●アメとムチ戦法かと思ったらそうでもなかった件
「ニコさんが闇堕ち!?」
 一大事だとばかりに、イヴ・エルフィンストーン(灼滅者の魔法使い・f43984)が思わず声を上げる。そしてすぐに、諸々の事情を把握して、慌てて言い直した。
「あっ、いえ、今は違うんですよね」
「本人じゃなくて、同じ姿のオブリビオンね……」
 今回の事件の黒幕について、再確認するように呟くのはヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)。
「なら鴻鈞道人の時より余裕余裕、頑張ってきましょうか!」
 ヘスティアがかなり昔の話を持ち出せば、イヴは懐かしむようにもっと昔の話をする。
「ソロモンの悪魔は、イヴ達魔法使いの宿敵です。頑張って倒しましょう!」
 灼滅者スレイヤーにとって、宿敵とは看過し難い存在。他のダークネス種族よりもどうしても優先順位は上がるというもの。イヴはむん、と気合いを入れた。

「因みに、転移を受ける直前に送り先不明のこんな迷惑メールが届いたのだけど……」
 ヘスティアが、スマートフォンを取り出すとイヴに画面を見せる。どれどれとイヴが覗き込めば、こんな文字列が並んでいた。

『R……B……R……B……』
『六年放置してた装備の整備さえ終わっていたら……』

 どう見ても怪文書です、本当にありがとうございましたとヘスティアがスマホをしまおうとした時、イヴが弾かれたように手を打ち、声を上げた。
「! 武蔵坂学園で見た事があります、行事でいつも『爆発しろー』って叫んでいた方々」
「ちょっと待って、それじゃこのメールの送り主って……」
「どなたかは分かりませんが、きっとそれは……RB団の方からのメールだと思います!」
 イヴさんの推理が冴える! ヘスティアに送られたメールの主は、果たして敵か味方か、今回の作戦に間に合わなくてむしろ良かったのか、それとも最強の助っ人たり得たのか。これもうわかんねえな状態である。
「でも、だとしたらその……RB団? っていうのは、まさに今回の敵たちじゃない」
「はい、ダークネスにも広まっていたなんてすごいです」
 すごいねえ。こわいねえ。
「スマイルイーターさんまで入団を……」
 ヤバいねえ。あながち誤解ではないかも知れないねえ。どうしますか、二人とも!

「じゃあ、わたしが扉を蹴破って突入するから」
「あっ、その前に18歳変身エイティーン使ってもいいですか?」
 そう言うと同時に、イヴの身体がキラキラ光って18歳の姿になる。うおお懐かしい! みんなのホロスコーププリンセス・イヴさんじゃないか!
「防具に左右されずにESPが使えるなんて、猟兵イェーガーの技能って便利ですね!」
「あら可愛い……大人びた姿も良かったけど、そのお年頃の姿も良いわね」
 ヘスティアは変身したイヴに素直な称賛を送りつつ、いよいよ宴会場の扉の前に立った。

『何を悠長なことを言っているのかな? 宝探しだなんて――』
「お宝って言ったか!! 宇宙海賊だ!! ゴラァ!! 手ぇ上げろ!!」
「そこまでです! 悪い人はマジカルプリンセス・イヴが許しません!!」
 まさにカオス! 披露宴の場は次から次へと披露される余興に盛り上がり、二人を拍手で迎え入れた。ヘスティアの手にはレーヴァティが握られているが、これも列席者から見れば小道具のひとつに過ぎないのだろう。きっといい味を出しているに違いない。
『も、もうあなたたちのペースには乗せられませんよ! 有無を言わせず爆弾を起爆させ』
「できるもんならやってみろってんだオラァン!! ほらさっさと手ぇ上げろって!!」
『!? ど、どうして爆弾が起爆しないんです……!?』
 実はマジモンのビームライフルを背中に押し当てられたスマイルイーター、事が思惑通りに行かない困惑のままに、おずおずと両手を上げた。
(「遠隔操作装置なんてモノ使うから悪いのよ、ハッキングとジャミングで完封だわ」)
 いくつ、どこに、どう仕掛けられていようとも。
 遠隔操作装置なんていう『電子機器』を使った時点で、電子の申し子たるヘスティアの手により、そもそも電波が届かぬようにさせられるのは自明の理だった。

 大人しく両手を上げたスマイルイーターの背からレーヴァティを外す代わりに、ヘスティアはE.O.Sエネルギーオプティクスソードを持ち出し、ビームの刀身を敢えて出さずに柄の部分だけでスマイルイーターの両頬を交互にペチペチやり出した。
「おぅ兄ちゃん、その手に持っとるモンがお宝の鍵やろ?」
『ち、違……これは、あなたたちを拷問するための立派な……』
 ぺちーーーん! ひときわ大きな音を立てて、笑顔の青年の頬が打たれる!
『あうッ』
「そういうのを聞いとるんとちゃうんや、札束がたんまり入った宝箱、渡してもらうで」
 宴会場は、すっかり笑いに包まれていた。完全な寸劇を、人々は心から楽しんでいる。
 ヘスティアはこっそりと【海賊女王の絶対王権キョウハク】を発動させ、ただの脅迫おどしではない、それに従わねばならないという感情を喰らわせていたのだ。ねえねえ、どうしてこんなおっかないユーベルコード持ってるんですか?

『うう……ッ』
 張り付いた笑顔のまま、半ば涙目になりつつあるスマイルイーターは目線を逸らす。
 その先には、ぎゅっと両手を握りしめて、ことの経緯を見守っていたイヴの姿が!
『た、助けて』
「分かりました、恋愛でお悩みなんですね! このマジカルプリンセス・イヴにお任せ下さい!」
『……えっ?』
 そっかー、エイティーン状態の時はマジカルプリンセスになるんですね! かわヨ!
 イヴが両手を胸の前で祈るように組むと、分身精神体シャドウペルソナが召喚され、あっという間にスマイルイーターの精神世界にダイブしていった。

 ――何だか、ありもしない宝物を出せと脅されて、ひどく疲弊していた気がする。
 ――いや、待て? 恋愛相談がどうとか何とか。

『……ハッ!?』
「気がつかれましたね? イヴの出張占いの館へようこそ!」
 ここがどこかは、分からない。
 ただ分かるのは、眼前に齢18くらいの乙女が、キラキラしたオーラを纏って、何やら仰々しいテーブルと水晶玉を用意して、ニコニコ笑っていることくらいだ。
「何にお困りなのでしょう?」
 占い師……悩みを相談……。
 言われてみれば、相談したいことはあるといえばあった。
『……結婚式だなんて、幸せにあふれていて、妬ましいったらない』
「ふむふむ、人の幸せを素直に喜べないんですね」
 突如現れた謎の占い師ことマジカルプリンセス・イヴは、ううむと水晶玉を覗く。
「では、スマイルイーターさんにもいい出会いがあるかどうかを占ってみましょう!」
『ええっ!? この状況からでも出会えるチャンスがあるんですか!?』
「むむむ……」
 何やら難しい顔で、水晶玉を凝視するイヴ。つられてスマイルイーターも、身を乗り出してその様子をうかがってしまう。
 しばらくして、イヴは険しい表情で顔を上げ、スマイルイーターを見た。
「ええっと、恋愛運は……ごめんなさい、悪いです」
『悪いんですか!!』
「他に何か良いことがあればと思ったんですが……今日は全体的に最悪の運勢です……」
 申し訳なさそうに、しかし率直に占いの結果を伝えるイヴ。
 占い師たるもの、結果には忠実であるべきだ。嘘偽りを伝えてその場を気慰みでしのいだとしても、本当にその人のためにはならないのだから。
 スマイルイーターはそもそもオブリビオンであり、敵であり、そこまで気を払うべき相手ではなかったかも知れない。けれどもイヴは誇り高き魔法使いだ。占い相手に貴賤なし!
「あ、あの……もしかして、ダメージを受けていらっしゃるのですか?」
『……みんな幸せそうにしていて憎らしい上に、僕自身の運勢も最悪だなんて……』
「す、すみません!」
 主にメンタルにダメージを与えることは、スマイルイーターを退ける大きな一歩ではあったけれど、イヴさんはとても優しいお嬢さんなので、つい謝ってしまうのでした。

「ほらほら、いつまでボサッとしてんねん! さっさとお宝出せや!」
『うわああああ、現実に戻ってきてもまだ脅迫が続いているううう!』

 オラつくヘスティアの姿を、あらあらまあまあという顔で見守るイヴ。
 スマイルイーターの張り付いた笑顔は、果たしていつまで保つのだろうか――!?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

淳・周
あー懐かしいヤツ!
しっかしRB団もどきとは随分こう…大丈夫か?
まあ久しぶりの全力での戦いだ、気合い入れていくぞ!

転移したらスマイルイーターに宣言。
「出たなRB団! だが、正義のヒーローはここにいるぞ!」
ヒーローショーイメージで装着!とか叫んでUC起動、ヒロイックな烈火の外装をアタシの周囲の大気から生成して装着!
世にRBの栄えた試しなし、いざ!と一気に仕掛ける。
逃げたい感情に抗うのがヒーロー、ついでに10年前に倒したアンタに今更怯える訳ねえだろ!
列席している人達を狙う暇や爆弾起爆させる隙も与えぬよう、ぶん殴って退場させてやろう!
…退場前には子供の方に決めポーズ取るのも忘れず!

※カオスその他大歓迎



●十年来の再戦
 かつて、ダークネスであった頃のスマイルイーターは、沖縄県那覇市の国際通り周辺で一般人を虐殺するという事件を引き起こしていた、最悪の六六六人衆であった。
 沖縄各地に仕掛けた爆弾を起爆させると脅して灼滅者スレイヤーたちの凌いでいたものの、全ての爆弾の位置を特定され、その脅しも通用しなくなった。
 スマイルイーターは豪華客船を密室にして沖縄からの脱出を試みた。しかし、間一髪のところでそれを察知し、死闘の末に彼を灼滅したという顛末が記録に残されている。

 ――淳・周(赤き暴風・f44008)。
 スマイルイーターの沖縄脱出を、事前に予見した灼滅者である。

「あー、懐かしいヤツ!」
 周はグリモアベースでスマイルイーターの姿をビジョンで見た時、こう叫んだという。
 浅からぬ因縁を持つ相手だ、当然の反応だろう。
「しっかしRB団もどきとは随分こう……その、大丈夫か?」
 そして、スマイルイーターの現状を聞いた周は、率直な感想を漏らした訳だ。無理もない、当時は『ゴッドセブン』の一角として強力無比な力を誇り、灼滅するにあたっても幾多の重傷者を出しながらの辛勝であったことを思い出せば、この温度差は風邪を引くレベルというもの。
「ま、まあ久しぶりの全力での戦いだ、気合い入れていくぞ!」
 周は文字通り燃える炎の血をたぎらせながら、意気揚々と転移を受ける。
 ……それにしても、武蔵坂学園出身の皆さんには、RB団ってそんなに有名なんですかね?

 披露宴の会場では、すっかりギャグ堕ちしたスマイルイーターのお兄さんが、がっくりと膝をついたまま、しばらく立ち上がれずにいた。
『う、うう……運勢最悪、何をやってもダメ……』
 確かに、占いの結果は正しいのかも知れない。念入りに仕掛けた爆弾はかつてのように忌々しい灼滅者――いや、もっとタチの悪い猟兵イェーガーたちにことごとく解除され、無効化された。
 人々の笑顔を恐怖に歪めさせ、幸せな空気をぶち壊すのが本懐だったのに、やることなすこと猟兵たちのせいで『余興』とみなされ、むしろ空気は良くなっていくばかり。
 もうね、ガッカリですよ。これでもかつては豪華客船ひとつを丸ごと密室にした男、結婚式場の一つや二つ余裕ですよと思っていたのに、人生がままならなさすぎる。
『お兄さん、疲れちゃった?』
『大丈夫? 何か食べる?』
 遂には人々から心配される始末。スマイルイーターはあまりの屈辱に顔を上げると、気持ち悪いくらいの笑顔で言い放った。
『いいえ、ご心配には及びません。僕はこの程度では挫けません。何故なら――』
「出たなRB団! だが、正義のヒーローはここにいるぞ!!」
『うっそ、まだ居たんです!?』
 さすがにもう猟兵の邪魔だても打ち止めだろうと思っていたところに、転移を受けて突撃してきた周の声と姿に、素っ頓狂な声を上げるスマイルイーター。いつから猟兵たちのターンが終了したと錯覚していた?

「装・着! 派手に燃えて行くぜぇっ!」

 ヒーローショーさながらの雰囲気全開で、周が宴会場の幸せオーラをふんだんに含んだ大気から、【紅炎装纏オーバーヒート】の力で烈火の如き真紅の外装「神無月」をがっしゃんと身にまとった! 変身シーンが嫌いなエスパーなんて居ません! またしても会場は大盛り上がりだ!
「世にRB団の栄えた試しなし、いざ!」
『くっ……確かに、こういった役回りは最終的に倒されるのがお約束、ですがッ!』
 スマイルイーターは笑う。嗤う。
 幸せそうにしているあなたたちが憎いと。
 蜘蛛の子を散らすように、逃げ出してしまえばいいと。
 そうして、戻ってきた新郎新婦は、誰もいない披露宴で呆然とすれば良いのだと。
「ハッ……逃げたいっていう感情に抗うのが、ヒーローってもんだろ……?」
 足が勝手に後ろへと下がりそうになるのを、精神力ひとつで踏ん張りこらえる周。
 赤い瞳が捉えるのは、骸の海より生じた、過去の残滓。

「ついでに、十年前に倒したアンタなんかに、今更怯える訳ねえだろ!!」

 うおおおおっ! と、ヒロイック全開な周の言動に、会場は大いに沸き立つ!
 周はむしろ地を蹴って思い切り前進し、人々を狙う隙も、爆弾を起爆させる暇も、一切を与えぬ勢いで――スマイルイーターの笑顔に強烈な拳の一撃をぶちかました!
『か……はッ』
 扉に強かに叩きつけられ、そのままずり落ちるスマイルイーターを背に、周は腕を振るって残心を決めた。
「おねえちゃん、超かっけー!!」
 子供の声が飛べば、そちらの方へと決めポーズを取るのも忘れない。
 いつだって、正義の味方は勝って終わるのがお約束だからね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギルフォード・アドレウス
よいしょっと!は〜いちょっと通りますよ〜。
はい、おはこんばんちわ〜
(ケンカキックで扉蹴破ってエントリー)

……おうなんだぁ?見せもんじゃねぇぞ??

あー、悪いな皆。あのバカ|《スマイルイーター》俺の知り合いというか連れなんだ。いやーほんとすまねぇ!なんせこういう場所だからテンションが上がってしまったらしくてな?今、黙らせるから待っててな?

良いかチビっ子〜。あんな大人になっちゃダメだぞ〜

ルールは「幸せであってはならない」らしい
俺が幸せじゃなきゃ良いんだろ取り敢えず

……仕事とはいえ、こんなところに呼び出された挙げ句、ニヤついた顔面の変人を相手にしろってぇ?幸せ感じるかぁ??嘘だろ

まあ、既にボコボコにされてるかもだし。相手の言い分なんかは聞かんで良いだろ、めんどくせぇ

勢い付けて右ストレート|《焔のパンチ》で吹っ飛ばすか。場外に出せば良いんだろ?

まぁ、ぶった斬ったって良いんだろうが……配慮だ配慮。子供も居るし



●さらば、全然愛しくないスマイルイーターよ
 新郎新婦が、さすがにそろそろお色直しを終えて披露宴の会場に戻ろうというタイミングが近付いてきた。
 よもやまさか、想定外の『余興』で自分たちの知らぬ間に場が盛り上がっているだなんて知るよしもない新郎新婦は、少々待たせてしまったかと思いながら、介添人に付き添われて宴会場へと向かっていた。

「よいしょっと! は~い、ちょっと通りますよ~」
「……? 今、誰か宴会場の方に走って行かなかった?」
「いや……気のせいだと思うけど……」

 自分たちより一足先に駆け抜けていく人影を、見たような、見てないような。
 まあいいかという結論になり、新郎新婦は歩を進め続けた。割と鋼のメンタルなのか、それとも幸せすぎてそれどころではなかったのか、どっちなんでしょうね。

「おっと危ねぇ、もう新郎新婦が来ちまうのか」
 姿の主ことギルフォード・アドレウス(終末機巧エンド・オブ・マキナ・f41395)は、軽やかに廊下を駆ける。これはさっさと決着ケリをつけないといけない、ということで、ギルフォードは駆ける勢いに任せて――地を蹴った。
「はい、おはこんばんちは~~~」
 ドバァン!!! ほとんど飛び蹴りに近いダイナミックケンカキックを宴会場の扉にぶちかますと、勢いよくエントリーするギルフォード! 面倒見が良くて実はフォロー体質なギルフォードさんじゃないか! ウェルカム!
『な……何なんですか!? もう僕のライフはゼロに近いんですよ……!?』
「あぁ? だったら何だ、背中におぶって連れ帰って欲しいってか」
『だっ! 誰がそんな……!』
 何というか、色々な意味で満身創痍のスマイルイーター、最後の意地で食らいつく。
 ギルフォードは、そんな自分たちのやり取りを期待の眼差しで見つめる列席者たちに向けて、シッシッと犬を追い払うかの如き仕草を取った。
「……おうなんだぁ? 見せもんじゃねぇぞ??」
『ま……全くです! 確かに僕は幸福な笑顔を歪ませに来たはずなのに、こんな』
「いやあんたは黙ってろ」
『痛い!?』
 どさくさに紛れてギルフォードの言葉に乗り本来の目的を思い出そうとしていたスマイルイーターの頭部をアイアンクローよろしく引っ掴んで、ギルフォードは無理やりスマイルイーターの頭を人々に向けて下げさせた。強制オジギだ!

「あー、悪いな皆。このバカスマイルイーター、俺の知り合いというか連れなんだ」
 突如登場した身元引受人! そういう展開にするのか! なるほど!
「いやーほんとすまねぇ! なんせこういう場所だからテンションが上がってしまったらしくてな? 今、黙らせるから待っててな?」
『ちょっ……待っ……どういう……!』
 ギルフォードが、自分に出来る全力の愛想笑いでその場を取り繕う間にも、押さえ込んだスマイルイーターは頭を上げようと抵抗するものだから、それをねじ伏せるのも一苦労だ。
「おにいちゃんたち、お友だちだったの?」
「めちゃくちゃ楽しかった!」
「マジか。良いかチビっ子~、こんな大人にだけはなっちゃダメだからな~」
『ぐぎぎぎぎ!』

 子供たちの純真無垢な眼差しがちょっと痛い。ギルフォードの言葉は、割とマジで心からのものであった。健やかであれ……真っ直ぐに育て……みたいな……。
「おう、とりあえず『俺が幸せであってはならない』って話だろ?」
 スマイルイーターに顔を近づけて、ギルフォードが低い声音で問う。
『す……少なくとも、そのルールを破った者は密室へご招待、です』

 ――がんっ!

 ギルフォードが、スマイルイーターの頭部をふかふかの絨毯にめり込ませんばかりの勢いで打ち付けて、土下座のポーズを取らせたのだ。
「いやあ、すまなかったマジで! 今連れ出すからさ! ほらこの通りだから!」
 その絵面は、無礼を働いた友人を申し訳なさそうに撤去させようと奮戦する好青年そのものだった。会場からは笑いと拍手が送られる。お笑いのノリか何かに見えたようだ。
「……仕事とはいえ、こんなところに呼び出された挙げ句、ニヤついた顔面の変人を相手にしろってぇ? 幸せ感じるかぁ? ウッソだろあんた」
『ぼ、僕は……』
「そういうのめんどくせぇから良いんだよ、聞くまでもねえ」
 最早、相手の言い分を聞いたりなんだりする頃合いではなかった。何をどう言おうが、スマイルイーターがしたことは、結果的に人々には好評であったとしても許されるものではない。何もかも、猟兵たちの取りなしによって好転したことなのだから。
 最後の仕上げをするのは、自分だ。
 そう腹を括ったギルフォードは、スマイルイーターの顔を上げさせると、今度はその首根っこを掴んで引きずり始めた。そう――出口の方へ! 遂にご退場願う時だ!
『あっ、ちょっと、まだ僕はリア充を一人も爆破してないんですよ……!?』
「あーあーはいはい、続きは外で聞くわ。皆、新婦のドレスの色当て、忘れんなよー」
「おう! 兄ちゃんたち、面白かったぞー!」
「ありがとうねー!」
「ばいばーーーい!」
 列席したエスパーたちからめちゃくちゃ幸せそうに送られて、ギルフォードはスマイルイーターを引きずって、空いた片手を振りながら宴会場を後にしたのだった。

 爽やかなブルーのドレスを身にまとった新婦が、新郎と介添人と共に、野郎二人と入れ違うように宴会場へと入っていく。
「さてと、落とし前はつけさせてもらうぜ」
『ま、待った! 僕の負けだ、認めよう! だから、命だけは……』
「あの会場で、問答無用であんたをぶった斬っても良かったのに、そうしなかったのは何故だと思う? 配慮だよ配慮、子供も居たしな」
『……! 僕にこんなことをしろと指示した者の情報も、全部言う!』
「あー……悪ぃ、それは大体知ってるんだわ」
『えっ?』
 ポイッと、興味を失ったかのようにスマイルイーターを放り出すギルフォード。

「だから、あんたはここで終わりだろうよ」

 再び、ギルフォードが地を蹴って――助走をつけた強烈な右ストレート焔のパンチがスマイルイーターの引きつった笑顔に炸裂した!
『ああああああぁぁぁぁぁ……』
 断末魔めいた悲鳴と共に、会場のはるか外へと吹っ飛ばされるスマイルイーター。これでもう、会場に舞い戻ってどうこうすることはないだろう。
「いやさぁ……これだけでも疲れるのに、まだリア充爆破がどうとか言うやつが残ってるんだろ? 勘弁して欲しい訳よ、ホント」
 ぼやきつつも、結婚式場の外に出るギルフォード。
 次なる刺客を、迎え撃つために――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『288位クリスマス爆破男』

POW   :    「リア充爆発しろ」
【連続ダイナマイト投擲】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    クリスマスダイナマイト
自身の身体部位を切断し、(レベル×切断部位数)m半径内の全てを爆破する【リア充爆殺ダイナマイト】に変換する。
WIZ   :    俺達はぼっちじゃない
【新たなクリスマス爆破男】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●クリスマスじゃなくたって、人々はラブラブするものなんじゃよ
『スマイルイーターがやられたようだな……』
『フフフ……奴は四天王の中でも最弱……』
『猟兵ごときに負けるとはRB団の面汚しよ……』
 何やら好き勝手言い放題の連中が居ると思ったら、結婚式場の外にある庭園で、ダイナマイトを手にした禍々しい気配を纏ったサンタクロースが――めっちゃいっぱいいるではないか。何この地獄絵図。早く何とかしないと。大体四天王って何、設定した覚えないよ?
『とにかく、猟兵たちを誘い出すことには成功したわい』
『数の暴力に訴えれば、例えオフシーズンで全盛期の力が出せないワシらにも勝機はある』
『生前のワシらは、最大数千体にも分裂できたものじゃが……』
『とにもかくにも、復活したからには、いつだって成すべきことは一つ!』

『『『リア充、爆発しろ!』』』

 庭園中に、ろくでもねえ合唱が響く。場所を弁えないあたり本当にタチが悪い。
 クリスマス爆破男一体一体の力は、幸いそう強くはない。まとめて蹴散らしてしまえば、スマイルイーターの時ほど苦労はしないだろう。
 今回は、周囲の人々への被害などは考慮せず、存分に戦うことが出来る広さがある。容赦なく全滅させ、一刻も早くこのろくでもねえ事件の黒幕をとっちめなければ。

 なお、カップルやご夫婦など、いわゆるリア充状態でのご参加をいただいた場合、そうでない方と比べてやや攻撃が過激になる演出がございますが、戦闘難易度自体は変わらないので安心してお好きなようにご参加いただければと思います。
 逆に、我こそは真なるRB団! という方の挑戦も歓迎致します。勝手に戦え!
ヘスティア・イクテュス
見事に負けフラグ…!!大丈夫?大概の猟兵のUC範囲とか召喚数100超えてるんだけど…本当に数の暴力で勝てる?
後ツッコむのも野暮だけどこの後出てくるの考えても残り四天王1人どこよ?

とりあえず本当の数の暴力をということでプチヘス部隊召喚!【集団戦術】
そっちがダイナマイトならとティターニアで飛び空中戦ダイナマイトを躱しつつ撃ち落としつつ上空からビームとマイクロミサイルの『一斉発射』の『範囲攻撃』でと『爆破』

そんな赤い服装目立って狙ってって言ってるようなものね…
全く…復活早々リア充爆破って…



●ん? 今数の暴力で勝つって言った?
 それは、まるで都会の喧噪から隔離してくれるかのような緑の庭。
 結婚式場の外に設けられたガーデンは、そこに居るだけで非日常を感じさせてくれる。
『『『リア充、爆発しろ!』』』
 残念な合唱さえ響き渡らなければ、憩いの場としてもぴったりだったのに。ダイナマイトを手にした悪人面のサンタクロース姿をした男たちが、群れをなして四方八方から飛び出してくるものだから、たまったものではない。
『囲んで爆破すれば解決じゃわい、グッフッフ』
『邪魔する輩は、ことごとく爆破してくれるわ』
『全盛期とまでは行かずとも、どん底の六月を越えた今、ワシらは負ける気がせん!』
 ワイワイと大騒ぎするクリスマス爆破男たち。無駄に結束力が強くて困る。
(「見事に負けフラグ……!!」)
 そんなクリスマス爆破男たちの様子を、庭園の植え込みの陰からそっと窺っていたヘスティア・イクテュスは、率直な感想を脳内に浮かべた。
(「大丈夫!? 大概の猟兵のユーベルコード範囲とか召喚数とか、ゆうに百超えてるんだけど……本当に数の暴力で勝てるって思ってるの!?」)
 ヘスティアの考える通りだった。覚醒したての猟兵ならばいざ知らず、 依頼を一度でも引き受ければその力量は一気に跳ね上がる時代となった。メタな話をすれば、サイキックハーツ大戦などがあった時代のこの世界の灼滅者たちのカンストは96レベルだったが、第六猟兵のカンストは現時点で156レベルだ。レベル依存の召喚系ユーベルコードなどの結果は、考えるまでもない。
(「後、ツッコむのも野暮だけど、この後出てくるのを考えても、四天王の残り一人どこよ!?」)
 五人揃って四天王ネタはあるが、三人で四天王をほざくとはどういう了見か。
 そらヘッスもツッコみたくなるだろう。しょうがない。

「まあいいわ、本当の・・・数の暴力っていうのを教えてあげましょう」

 ガサッと敢えて音を立てながら、植え込みからその姿を見せるヘスティア。それを見たクリスマス爆破男たちは見つけた獲物に色めきだった。
『女子供と言えども、リア充ならば容赦せん!』
『リア充、爆発しろっ!』
 これ、ヘッスが「わたしはリア充ではありません」と自己申告した場合はどうなったんでしょうね。スンッと着席して、どうぞお通り下さいと黒幕の元へ案内してくれたりしたんでしょうか。ちょっと興味あります。
「【プチヘス部隊Pプチヘスブタイ・パイレーツ】、出番よ!」
「「「ヘッス~~~」」」
 ヘスティア自身を模した二頭身ロボが総勢百四十九体、わっちゃわっちゃと召喚される! どことなく顔が生意気だ! あと何かみんな空飛んでる!
『ムムッ!? 仲間とワイワイする様子、まさしくクリスマスパーティを彷彿とさせる!』
『やはりリア充か、爆発しろ!!』
 もはや何を見てもリア充に思考を直結させてしまうのだろう、クリスマス爆破男たちはヘスティアたち目がけてダイナマイトをぼんぼこ投げつけてきた。
「そっちがダイナマイトなら……」
 背負ったジェットパック「ティターニア」で天高く舞い上がると、ヘスティアは空を行き交うプチヘスたちと共に、飛来するダイナマイトを華麗に躱してみせる。
「こっちはビームとミサイルじゃい!」
 空中で陣形を組み、ダイナマイトをことごとく撃ち落としたヘスティアたちは、お返しとばかりに上空からビームを放ち、追い打ちのマイクロミサイル投下で、地上でワイワイ騒いでいるクリスマス爆破男たちを逆に爆破してやったのだ。うーんこれは大空襲。
『ぬおおおおお!?』
『まだじゃ! 人々に嫉妬の心がある限り、ワシらは不滅……ッ!』
『リア充……爆発しろッ……!』
 何か分かりやすい捨て台詞と共に、次々と爆発四散していくクリスマス爆破男たち。
「そんな赤い服装、目立ってしょうがないわ……狙ってって言ってるようなものね……」
 大きなため息を吐きながら、ヘスティアはプチヘスを従えたまま、地上へと降り立つ。
「全く……復活早々『リア充爆破』って……」
 何が楽しいのか、正直さっぱり分からん。
 またしても湧いて出てきて相手をさせられるより前に、さっさと撤退を決めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月影・木乃葉
松明丸に背を掴まれて、そのまま空を飛び【空中機動】
上からRB花火を投下し『爆破』、爆炎に紛れてボクも地面に落ちると着替えを…

…そのペアルック貴方達自身もリア充と認定しました
ダークネスが復活したと言うなら封印されていた服を身にまとい今、RB活動を再開いたしましょう…!
わぁ~封印した後一切手を付けてないのにそのまま着れるぅ…

煙花火目潰しに点火!まずは視界を防ぎましょう!
ロケット花火空中機動による牽制を入れつつ
ダイナマイトにはリンゴ爆弾にて『爆破』相殺

下ばかり気を取られていいんですか?
分離した松明丸から花火玉の投下の一撃を



●アイツが……帰ってきた……!
 スペースシップワールドの超技術によるハイレベルな爆撃により、一度は一掃されたかに見えたクリスマス爆破男たちであったが――。
『燃え上がれ、嫉妬の心!』
『ワシらは何度でも蘇るんじゃ!』
『リア充、爆発しろ!』
 別に魂が肉体を凌駕した訳ではなく、単に別の個体がうじゃうじゃと湧いてきただけの話である。集団戦だからね、来てくれた猟兵さんの分だけちゃんと登場するよ!
 そんなクリスマス爆破男たちが、次なる獲物を血眼で探し求めている様子を、上空から見下ろす影が一つ。一人と一羽――月影・木乃葉(人育ちの仁狼・f43890)と、彼が使役する七不思議「松明丸」だ!
「……」
 木乃葉は松明丸に背中を掴まれた状態で空を飛んでいた。故に、クリスマス爆破男たちにはまだ気付かれていない。事実上の奇襲攻撃で、懐からどうやって隠し持っていたか分からないくらいの数のリンゴ爆弾やらロケット花火やらの「RB花火」を次々と地上目がけて投下し、いきなりクリスマス爆破男たちを逆に爆破してやったのだ!

『な、何じゃあああ!?』
『このワシらが爆破されるとは!』
『ば、爆炎の向こうに誰か居るッ』

 さすがギャグ要員、多少の爆破は何ともないぜ! 黒焦げになりながら、突然の爆撃により巻き起こった炎の向こうに、木乃葉の姿を見出だすクリスマス爆破男たち。
 地上に降りた木乃葉の姿は、武蔵坂学園高校夏服から、どこかで見た装いに変じていた。

「……そのペアルック、貴方達自身もリア充と認定しました」

 ぎらり。
 赤い頭巾レッドフード越しに、木乃葉の瞳が妖しく光る!
『な……誰がリア充だと!?』
『まさか……ワシら!?』
『ウッソじゃろ!? し、しかし確かにワシらは同じ服を着ている……ッ』
 まさかのリア充逆判定に、流石のクリスマス爆破男たちも動揺を隠せない。
「ダークネスが復活したと言うなら、封印されていた服を身にまとい、今こそRB活動を再開いたしましょう……!」
 人狼の耳を隠さぬ赤い頭巾に燦然と輝く『RB』の文字!
 同じく真っ赤なケープにスカート、白いブラウスにエプロン!
 これは……これは間違いない、武蔵坂学園にこの人ありと謳われた、RB団の一員こと月影・木乃葉だ……!
(「わぁ~~~封印した後、一切手を付けてないのにそのまま着れるぅ……」)
 数年後の自分はぐんっと背が伸びるはずなのに、これどういうこと? などとちょっぴり思いつつ、身体にジャストフィットするRB団の正装に身を引き締める木乃葉。
 スカートの裾をつまんで仰々しく一礼すると、明確な爆破の意志を示す。
『り、リア充を爆破するのは他ならぬワシらの役目!』
『ワシらの真似事など、百年早いわ!』
『真の爆破というものを見せてくれる、若僧めッ!』
 そう言うや、クリスマス爆破男たちは大量のダイナマイトをありったけ木乃葉目がけて投げつけ始める! 何という高速投擲! どうする、木乃葉!?
(「まずは、視界を遮りましょう!」)
 動じることなく、木乃葉は煙花火に点火し、もうもうと立ちのぼる煙で目眩ましをする。
(「次に、ロケット花火による牽制を入れつつ……」)
 数年のブランクをまるで感じさせない、流れるような戦闘スタイルの構築。まさに、身体が覚えているというべきか。木乃葉の中でエンジンが暖まっていき、次に何をすべきかが最早考えずとも把握出来た。
「ダイナマイトには、リンゴ爆弾をぶつけます!」
 気がつけば、木乃葉の両手には導火線に火がついたリンゴ型の爆弾が。
 それをぽいぽいぽーいと投げつければ、あっという間にダイナマイトとぶつかり合い、両者の間で爆破相殺されるではないか! 何と熾烈な爆破合戦か!

『クッ……爆破の技術は本物のようじゃな……』
『悔しいが、認めざるを得んわい』
『じゃが、ワシらを相手に一人でどこまで粘れるかな!?』
 再びダイナマイトを手に取って、第二波を浴びせかけようとするクリスマス爆破男たち。
 だが、RB頭巾ちゃんこと木乃葉は動じることなく、いっそ不敵に笑んだ。
「下ばかりに気を取られて、いいんですか?」

 ――どぉん! どん! どかぁん!

 何と、先程まで木乃葉を持ち上げていた松明丸による、上空からの攻撃が始まった。
 真っ赤に燃える炎の鳥の怪異は、花火玉を次々と投下して木乃葉を援護する。完全に不意討ちを喰らう形となったクリスマス爆破男たちは、次々と爆散していった。
「僕がリア充と認定した以上は、決して逃がしませんよ……フフフ」
 際限なく生み出されるリンゴ爆弾を手にしながら、RB魂を燃やす木乃葉であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイート・シュガーボックス
カモーン、ディオちゃんッ!
「呼ばれて飛び出てジャジャーン!ウチ参☆上!」
(ミミックの箱から飛び出る幻惑神機『ディオニュソス』男の娘形態)

「ウチの神器『豊穣葡萄』を庭園に展開し〜、酒気を散布し〜、うりゃ【幻惑が紡ぐ、呑めや歌えやどんちゃん騒ぎ】ッ!」
ディオちゃんの力でこの場を大宴会世界に変えて皆の意識を塗り替えるよ。
嫉妬?RB団?
い〜や違う、今日は目出度い結婚式!皆は祝福の宴会をしに来たのさ!

『キッチンカー』で超級料理人の本領発揮さ。『極上食材』を使い、和洋中にフレンチ等のご馳走を作っていくよ。
「お酒もウチの豊穣葡萄で好きなの飲み放題♪」

それじゃ2人の前途を祝して、かんぱ〜い!


【アドリブ歓迎】



●ハッピーハッピーハーッピー♪
 爆破による爆破、まさに血で血を洗う戦いが続く。
 クリスマス爆破男は、爆破された分だけ植え込みの中から次々と補充されるかのように飛び出してくる。集団戦って怖い! これでオフシーズンだというのだからもっと怖い!
「これでクリスマスイブが間近だったとしたら、どうなってたんだろうね……?」
 スイート・シュガーボックスが率直な疑問を呈せば、クリスマス爆破男たちは悔しげに拳を振るわせながら、ご丁寧に答えてくれた。
『それはもう……なあ! 街中を闊歩するリア充共を一掃する大爆発をだなあ……!』
『最盛期のワシらの数はこんなものではないぞい!』
『リア充爆破をッ! 一心不乱の大爆発をッ!』
 何というか、こう、リア充を爆破するためだけに生まれてきちゃったダークネスなんだなって……再確認させられるというか、ね……。
 復活ダークネス――オブリビオンとなってなおその運命さだめからは逃れられないのかと思うと、スイートはちょっぴりやってみたいことを思いついてしまった。

「カモーン、ディオちゃんッ!」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! ウチ、参☆上!」

 スイートがお菓子の箱でもある自らの蓋を開ければ、そこから飛び出したのは相棒ズッ友である幻惑神機ディオニュソスことディオちゃんだ! 見た目はギャル、だが男だ!
『何じゃ……!? 不思議な箱とギャルの組み合わせじゃと……?』
『リア充か! リア充じゃな!? ちょっと爆発していくか!?』
 こ、こいつら……何かにつけてリア充認定してこようとしてきやがる……!
 それをいなすように、ディオちゃんは神器「豊穣葡萄」をずらりと中空に並べ、庭園中に配置していく。すると、庭園中に酒気が散布され始め、ワイワイ騒いでいたクリスマス爆破男たちの赤ら顔がますます赤くなっていくではないか。
「うりゃ、【幻惑が紡ぐ、呑めや歌えやどんちゃん騒ぎイリュージョン・オブ・ドンチャンパーティー】ッ!」
 見よ、この大宴会世界と化した結婚式場の庭園を!
 あれだけ爆破だ爆破だと息巻いていたクリスマス爆破男たちが、ダイナマイトをビールジョッキに持ち替えて、何か雰囲気に呑まれるままに乾杯の音頭を待っていた。
「嫉妬? RB団? い~や違う、今日は目出度い結婚式!」
『『『うい~~~~~~っす!』』』
「そう、皆は祝福の宴会をしに来たのさ!」
『『『おい~~~~~~っす!』』』
 ディオちゃんの力ですっかり塗り替えられた世界で、クリスマス爆破男たちは戦いだの何だのをすっかり忘れ、完全に宴会を楽しむモードに突入していた。効いてるゥ!
「それじゃ、二人の前途を祝して! かんぱ~~~い!」
『『『かんぱ~~~~~い!!』』』
 カカカカーン! クリスマス爆破男たちが、手にしたビールジョッキを片っ端から打ち合わせて乾杯をし、ゴッゴッと一気に飲み干していく。やたら絵になる光景だった。

「宴会だからね、もちろん料理も出すよ!」
 スイート所有の大型キッチンカーの設備は、一流レストランの厨房に引けを取らない。ここに超級料理人でもあるスイートが入り、無尽蔵に取り出せる極上食材を用いて次々と絶品料理を和洋中問わず生み出せば、ディオちゃんが手際良くクリスマス爆破男――いや、今や完全に知られざる列席者の一員となった季節はずれのサンタクロースたちに振る舞っていく。
『美味……! 宴の席に相応しい美味さじゃ!』
『頬が落ちるとはまさにこのこと……絶妙な味の濃さで酒が進むのう』
「おっとぉ~? 飲んじゃう? ウチの豊穣葡萄にかかれば、好きなの飲み放題だよ♪」
 料理に合わせて、クリスマス爆破男たちのリクエスト通りに様々な種類のお酒を振る舞いながら、ディオちゃんは庭園中を駆け回る。その姿はめっちゃ活き活きしていた。
「俺もがんばらないと、だね」
 キッチンカーの中ではスイートがせっせと料理を作り続けていた。超級料理人の本領発揮である、これだけ美味しいと言われて食べてもらえると、誰が相手でも嬉しいものだ。

『わ~~~っはっはっはっは! 麦茶だコレ!』
『結婚式が、こんなにも素晴らしいものだったとはのう……!』

 後に、この時の記憶をほんのりと覚えていたクリスマス爆破男はこう述べたという。
『尊厳破壊とは、ある意味、こういうことを言うんじゃなって……』
 入ってる入ってる、確実にダメージ入ってますよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

イヴ・エルフィンストーン
スマイルイーターさん
RB団ではそんなに序列が低いのですか…
六六六人衆さえやめてくだされば
ちょっと彼女ができそうですものね

オフシーズンなのですか?
南半球に行くのが吉と出ています!
いえ、でも爆発は良くないです

今は高校生の姿ですが
確かにイヴの本名は蜂イヴと申しますし
実は子どももいますし
素敵なお友達がたくさんいて
本業の占い師もやりがいのあるお仕事で
猟兵の力でいろんな世界に行けて
そこで楽しい方々との出会いもあって
毎日がハピハピハッピーかもしれませんが
爆発すると全部なくなってしまいます
なので爆発はできません…

悪いサンタさんはお家に帰りましょうね!
全力魔法でUC発動です
この方々のお家はどちらなのでしょう…?



●見よ、これが真のリア充だ
 クリスマス爆破男たちが、庭園に設けられた噴水で順番に顔を洗っていた。何してんの。
『うう……飲み過ぎたわい……』
『何故ワシらは飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをしていたんじゃ……うっ頭が』
『思い出そうとすると死にそうになる! さっさと酔いを覚ますんじゃ!』
 顔を洗った程度で酔いが覚めるのかという疑問はさて置き、努力は認めてあげたい。その命ある限り、リア充を爆破しようという意志は尽きないのだから。

 イヴ・エルフィンストーンは、そんなクリスマス爆破男たちを律儀に見守っていた。不意討ちで一網打尽にすることだってできただろうに、決してそれをしなかった。
「スマイルイーターさん、RB団ではそんなに序列が低いのですか……」
 むしろ、先程相手取ったスマイルイーターに思いを馳せるまである! 優しい!
「六六六人衆さえやめてくだされば、ちょっと彼女ができそうですものね」
 割と正論だった。よくよく見れば端正な顔立ちをしていたスマイルイーターだ、あの笑顔が清らかな感情からのものに変わったならば、普通にモテる好青年になったろう。

『……今、スマイルイーターの話をしたか? お嬢ちゃん』
『奴はRB団を名乗りながらイケメンでもあった……一回、爆発させておくべきじゃった』
『なぁに、軽いあいさつ程度の爆破よ。仲間割れでも何でもないわい』
 良くも悪くもすっかり元の調子を取り戻したクリスマス爆破男たちが、イヴの言葉を聞きつけて集まってきた。ちょっとちょっと、イヴさんに気安く話しかけないでくれる?
「そうなんですか! 仲が悪い訳でないなら、良かったです」
 しかしイヴさん、手をポンと合わせて嬉しそうに答える。女神かな? 女神だな!
「それで、皆さんは今オフシーズンなのですか?」
『うむ……どん底は脱したが、いまだ本調子ではないのう』
『お嬢ちゃんに、ワシらの全盛期の恐ろしさを見せてあげたかったわい』
「そうですか! それなら、南半球に行くのが吉と出ています!」
 素直ピュアなやり取り――! そうですね、リア充爆破の舞台は何も日本に限られた訳ではないですからね! オーストラリアとかそっちの方に行って、現地に適応することも一つの手段じゃないですか! 今すぐ荷物をまとめて行って来いお前ら!
『なるほど、お嬢ちゃんは占い師か……しかもその精度は高いと見た』
『今まで幾多のリア充たちの道行きを占ったんじゃろうなぁ……爆発、するか?』
「いえ、でも爆発は良くないです」
 隙あらば爆破に持ち込もうとするクリスマス爆破男たちの言葉を、イヴはすかさずお断りする。そして、衝撃の事実をクリスマス爆破男たちに突きつけたのだ――!

「今は高校生の姿エイティーンですが、確かにイヴの本名はすがり・イヴと申しますし、実は子どももいますし、素敵なお友達がたくさんいて、本業の占い師もやりがいのあるお仕事で、猟兵の力でいろんな世界に行けて、そこで楽しい方々との出会いもあって、毎日がハピハピハッピーかもしれませんが、爆発すると全部なくなってしまいます」
『……?』
『な……』
『あ……』
「なので、爆発は……できません……」

 イヴは、見事に言い切った。己がいかにリア充であるかを、これでもかと見せつけた。
 そして、丁重に爆発をお断りした。これほどまでに見事な爆破拒否があったろうか!?
 これにはクリスマス爆破男たちも言葉を失う。見事なまでの絶句であった。何というか、ここまでハピハピハッピーな現状を正直に打ち明けられると、いっそ素直に祝福したくなると言うか……もしかして、まだ酔いが覚めていないのでは……?
『お嬢ちゃん……悪いが、ワシらはお嬢ちゃんのようなリア充を爆破するために……』
『許してくれとは言わん……だがッ……!』
 震える手で、ダイナマイトを取り出すクリスマス爆破男たち。そこにリア充が居るならば、どんなに可憐なお嬢さん相手でも、爆破するのが存在意義なのだから!
 イヴは残念そうに首を横に振った。そして、両の腕をスッと広げた。
「……分かりました、悪いサンタさんはお家に帰りましょうね!」
 イヴにはイヴの、守るべきHappinessがある。争い事は極力避けたいが、相手がその気ならば、致し方なし。広げた両腕を、身体の前で思い切り打ち合わせ、叫んだ。

「お引き取りください! 【エメラルドストーム】!」

 それは、誰もが知るお伽噺。翠色の竜巻に乗って不思議な国へと飛ばされながらも、元居た世界へと帰ろうとする少女の物語。そこから着想を得た優しいユーベルコードは、クリスマス爆破男たちをまとめて巻き上げて、ここではないどこかへとあっという間に転移させていく。
「この方々のお家は、どちらなのでしょうね……?」
 彼らがまっとうなサンタクロースに分類されるのだとしたら、きっとフィンランドあたりになると思われるんですが、もしかしたらブレイズゲート送りかも知れません。
 ともあれ、穏当に退去していただけて良かったです! まだお代わりがあるけどネ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・千星
【星海の花】
一難去ってまた一難
ここは無粋ダークネスの見本市か?
まぁでも式場外だからな、好都合だ

クリスマス爆破男、UCで仲間を呼ぶのか…なるほどね
ならばこっちは今一度『君影草のまぼろし』でウサp…いや、ここで呼び出すのは、(思い出補正でクソカッケェ)わたしの婚約者の幻影だ
数には数で勝負!
お願い、あの無粋なオブリビオンを攻撃してくれ!
…でもなんか…すごく恥ずかしいなこれっ…!

わ、本人アンカーきた!!
こ、この幻影の都市伝説は、かくかくしかじかで…!
ってアンカー何そのUCっ!! 呼び出した方も追随するな! ……本人も幻影も、絶対に楽しんでるだろ!!(顔真っ赤

花近はそんな目でこっちを見るなぁ…!


千曲・花近
【星海の花】
クリスマス爆破男さんは、出てくる季節が早すぎるんだよぉ
それに俺と千星ちゃん、カップルじゃありませんー。相棒ですー。謂わばソロ参戦ー。残念でしたぁ(煽るスタイル

UCで爆破男さん、増えちゃうのかぁ
なら、この増えたオーディエンスに俺の歌を聞いてもらおう! 『春嵐』でみんな吹っ飛ばす勢い!
爆弾もその場で爆破させて爆破男さんにダメージ与えよう

あ、アンカーさんやっほぉー!
こっちは歴戦の魔法使いでもあるアンカーさんが加わったからね、怖いものなしだ!(おんぶに抱っこ宣言

しかしなんで、千星ちゃん照れ散らかしてるんだろ
片思いしてんのかなっ?(鈍々のニブなので二人が付き合ってることに気がついていない


アンカー・バールフリット
【星海の花】
むむ、あれはクリスマス爆破男……に襲われている千星!
おのれダークネス!
復活したと思ったらいきなり世界一の美少女を襲うとは!
だがこの私が駆け付けたからにはその目論見は完膚なきまでに打ち砕いて見せる!

……千星がサイキックを!?
しかもあの時やその時の最高にクールなうえに想い出補正で美化された私が次々と……!(照れ)
くっ、これが千星が求める理想のアンカーなのか!
だがリアルアンカーとして後れを取るわけにはいかない!
私こそがアンカーなのだから!

見せてやろう、本当の愛というものを!
喰らえ! 黄金の左ストレート!
フェロプタ・アングリフ(フィアンセ・ストライク)!(花近君がいるのでドイツ語で言った)



●爆破させる間も与えぬ程に、リア充――!
 クリスマス爆破男たちは、みんな仲良くお家に帰りましたとさ――で済めば良かったのだが、残念ながらそうは行かなかった。植え込みの中から次々と新たなるクリスマス爆破男たちが飛び出してくる!
「一難去ってまた一難、ここは無粋ダークネスの見本市か?」
「クリスマス爆破男さんは、出てくる季節が早すぎるんだよぉ」
 浅間・千星が肩をすくめながらそう言えば、千曲・花近もぷぅと頬を膨らませた。
「まぁでも、式場外だからな。好都合と言えば好都合だ」
 る気満々で身構える千星と、ぽややんと並び立つ花近を見比べたクリスマス爆破男たちは、即座にダイナマイトを手にしてこちらも臨戦態勢だ。
『年頃の男女二人が並べばそれはもうリア充なんじゃ! 爆発しろ!』
「ばっ、馬鹿を言うな! わたしと千曲はそういう仲では……」
『そういう言い訳がましい所がまたリア充! 許さん! 爆破じゃ!』
「違いますぅー。俺と千星ちゃん、カップルじゃありませんー。相棒ですぅー。謂わばソロ参戦ー。残念でしたぁー」
 わざと語尾を伸ばす口調で、煽るようにクリスマス爆破男たちへと言い放つ花近。落ち着いて内容を精査すれば、ごくごく真っ当な事実だけを述べているのだが、花近さんの煽りスキルが妙に高いので、敵さんはものの見事に乗せられてしまう訳で。
『こ、こ、小生意気な若僧め! 塵も残さず爆破してやらねばならんようじゃな!』
『たとえ今が夏真っ盛りでも、増えてみせよう、ワシらクリスマス爆破男よ……!』
 頭に血が上ったクリスマス爆破男たちは、一人が二人に、二人が四人にという勢いでどんどこ分裂体を生み出していく。このままだと合体してキングなんとかになりそう。

「どうする千曲、相手は仲間を呼び出したぞ!?」
「うーん、増えちゃうんだねぇ……そうだ!」

 あっという間に庭園いっぱいに増えていくクリスマス爆破男たちを見た千星は思わず花近の方を見たが、花近はといえばまるで動じずに、披露宴の会場でも活躍した「銘『春告』」をじゃっと構えて、悪戯っぽく笑ってみせた。
「せっかく増えたなら、このオーディエンスに俺の歌を聞いてもらおう!」
「なっ……!?」
『この状況で歌うじゃと!? やっぱりリア充じゃないか!』
『爆破じゃ爆破! ワシらは断じて聞く耳持たんぞ!?』
 ワイワイ騒ぐクリスマス爆破男たちのわめき声を、むしろ聞かないのは花近の方だ。

「さぁさ皆様のお手を拝借――拝借できずとも、唄わせていただきますっ!」

 べべべん! べべん! べん!
 激しくかき鳴らされる三味線の演奏に乗せて、花近の圧倒的な熱唱が問答無用で始まった。薄紅色の桜の花弁が、発せられた破壊音波に乗ってクリスマス爆破男たちを襲う!
『ぐ、ぐわああああ!? 何だ、この……ものすごい歌は……!?』
『ギャアッ!! だ、ダイナマイトが勝手に……ッ』
 ユーベルコード、【八重桜三味線・花嵐ヤエザクラシャミセン・ハナアラシ】。花近が歌い続けることで、その勢いは増していくばかり。逃れることなど出来はしない!
 クリスマス爆破男たちが手にしていたダイナマイトが、破壊音波を浴びて次々とその場で起爆するものだから、ダメージはそのままクリスマス爆破男たちに向かっていく。
 花近に先手を取られたものの、今の千星は黙ってそれを見ているだけではない。負けじと自らも一歩踏み出して、片手を顔の前にかざしつつもう片方の手を高々と掲げる。まるでジョジョ立ちめいたポージングだ! いやだってバトルスタイルが中二ヒロイックだっていうから!
「同じユーベルコードでは芸がない? フッ……わたしを甘く見るなよ!」
 今再びの【七不思議奇譚「君影草のまぼろし」ナナフシギキタンキミカゲソウノマボロシ】により、ウサパペ軍団が召喚されるかと思いきや。
「数には数で勝負! 今ここに喚び出すのは、わたしの婚約者の幻影だ!」
 何たることか、茶色の髪に蒼い瞳が凜々しい、黒き魔法使いの軍勢が、千星の呼び声に応えるように次々と飛来してくるではないか! 元々イケメンだったのが、千星の思い出補正でクッソかっけえ立ち居振る舞いをしながら、華麗にクリスマス爆破男たちに迫る!
「お願い、あの無粋なオブリビオンを攻撃してくれ!」
 召喚されたイケメン魔法使い軍団は、勿論だと言わんばかりに魔法の箒で空を自在に駆けながら、手にしたウィザードロッドで次々とクリスマス爆破男たちを殴りつけていく。
『やはりリア充ではないか! 許すまじ! ぐわー痛い! 殴られた!』
『婚約者じゃと!? 二人仲良く爆発させてやるわい! ギャー殴られた!』
(「……喚んだはいいが、なんか……すごく恥ずかしいなこれっ……!」)
 愛の力がユーベルコードの力を増幅させているようで、効果は抜群。花近の歌と合わせて見事にクリスマス爆破男たちを倒していくのだが、千星の胸中はちょっと複雑だった。

「むむ、あれはクリスマス爆破男……に襲われている千星!」
 ここでね、颯爽登場するんですよ、千星さんの婚約者ことアンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・f43884)さんご本人がね……!
「おのれダークネス! 復活したと思ったらいきなり世界一の美少女を襲うとは!」
 そして開幕惚気である。自ら爆破されに来たのかな? いやいや、そんなはずは。
「だがこの私が駆け付けたからには、その目論見は完膚なきまでに打ち砕いて見せる!」
 そうそう、灼滅者がダークネスに負ける道理なんてないのだ。え? 今はオブリビオン? うるせえこっちは猟兵じゃい! そして何より、婚約者の危機に駆け付けたヒーローじゃい! もう勝ち確BGMが流れてる頃合いなんじゃい!
「千星!!」
「わ、本人アンカーきた!!」
「あ、アンカーさんやっほぉー!」
 アンカーの呼びかけに、千星は顔を真っ赤にしてギョッとなり、花近は勝ったなガハハ的に手を振る。花近的には『歴戦の魔法使いでもあるアンカーさんが加わったからには、怖いものなしだ!』と、かつて積み上げた信頼から来るおんぶに抱っこ宣言を決めるのだが、千星としてはよりによってこの場面を見られたのは非常に、その、恥ずかしい。

「……千星がサイキックを!?」
「あ、いや、その、こ、この幻影の都市伝説は、かくかくしかじかで……!」
 先程から勇敢にもボコボコとクリスマス爆破男たちをぶん殴り続けているイケメン魔法使い軍団は、言い逃れのしようがない程アンカーであった。
「彼らは……あの時やその時の、最高にクールなうえに想い出補正で美化された私……それが次々と……!」
 アンカーは、素直に照れた。他ならぬ最愛の人の中で、自分はこんなにもイケメンだったとは。こんなん見せられて照れない人類おる? おらんてマジで。
「くっ、これが千星が求める、理想の『アンカー・バールフリット』なのか!」
「いや、その、あの」
「だが、リアルアンカーとして後れを取るわけにはいかない!!」
「アンカー……!」
「私が、私こそが……アンカーなのだから!!」
 ヤバい。
 これはヤバい。
 自分で召喚しておいて何だけれど、幻影のアンカーたちはめっちゃ理想の婚約者で、見た目だけでなく声までイケボなものだから、正直良い意味でいたたまれなかった。
 だが――どうだ。
 眼前に立つ、本物の破壊力と来たら! やはり本物は違う……!
 照れ散らかす千星の手を一瞬だけ握り、すぐに戻ると約束するかのように、本物のアンカーはクリスマス爆破男たちの方へと駆け出していく。

 それは、愛の助走。
 左の拳を固め、全力でそれを無粋なるオブリビオンに叩きつけるために。
「見せてやろう、本当の愛というものを!」
 その拳に――左手の薬指に嵌められた白金の婚約指輪が、キラリと光る。
『うおおおおおおお! 来い、リア充め! 爆破してくれるわああああッ!!』
「やれるものならば、やってみるが良い! 喰らえ! 黄金の左ストレート!」
 クリスマス爆破男が振り上げたダイナマイトを、一瞬だけ身を低くして躱したアンカーが、あっという間に懐に潜り込むと、がら空きの顔面目がけて――ぶちかました!

「もはや私の命は私だけのものではない! これが私の誓いの一撃と知れ――【フェロプタ・アングリフフィアンセ・ストライク】!」
『ぶっふぉおおおおおおおお!!!??』

 ものすごい勢いで吹っ飛び、星になるクリスマス爆破男。ちなみに、ユーベルコード名をドイツ語に変換したのは、花近へのアンカーなりの配慮であった。
「すっごいねえ、アンカーさん!」
「それほどでもない」
「……」
 アンカーの強烈な一撃に、素直に感嘆の言葉をかける花近と、顔を覆う千星。
「しかしなんで、千星ちゃん照れ散らかしてるんだろ」
「……」
「……」
 え? 待って? 花近さん、まさか……。
「片思いしてんのかなっ?」
 気付いてない……だと……!? ニブニブのニブにも程がないかい!?
 千星は顔を覆ったまま。そんな姿もまた愛おしいと、温かく見守るアンカーだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

淳・周
出やがったな!夏場が一番弱ってる偽サンタ!
…眷属以下まで弱ってないようだが、RBは滅ぼされるのが世の定め。
さっさとぶっ倒すぞ!

如月構えUC起動、熱い演奏響かせて音波と火炎旋風で一気に吹っ飛ばす!
次から次に新しいのが出てくるだろうがその度にUC起動、連続で奏で反響させて戦場をガンガン加熱していくぞ!
テンション上がれば更に速度も威力も上がっていく、大量に出てこようが知ったこっちゃねえ!
上手くやれれば手に持ってるダイナマイトが自然発火するかもなー。まあしなくても火炎旋風ぶつけて燃やすんだが。
とはいえ勝利に油断しそうな時が最大の隙、徹底的に響かせ討ち漏らしないようにするぞ!

※アドリブ絡みカオス等お任せ



●赤き暴風、唸る
「出やがったな! 夏場が一番弱ってる偽サンタ!」
『な、な……まるでワシらの特性を知り尽くしているかのようなその口ぶりは……!?』
『灼滅者か! 灼滅者じゃな!? ならばおぬしもリア充確定ッ!』
『一つ爆発していくが良いッ!』
 威勢良く庭園に姿を見せた淳・周を、クリスマス爆破男たちが囲む。灼滅者ならどうせみんなリア充なんだろそうなんだろという風潮、あながち間違っていないと思います。
「……眷属以下まで弱ってないようだが、RBは滅ぼされるのが世の定め」
 割とかわいそうなことをおっしゃりますが、実際その通りなので仕方がないですね。
「さっさとぶっ倒すぞ!」
『あの屈辱の六月を乗り越えた今のワシらに恐れるものはない! 行くぞぉ!』
『うおおおお! リア充、爆発しろぉ!』
 何か、こう、暑苦しい戦いの幕が切って落とされちゃった感じがしますね……?

 周が構えた武器は「如月」の銘持つ和風デザインのギターだった。弦を押さえ、ジャッとかき鳴らした瞬間、それ・・は起動した。
 ――【灼魂響乱ソウルビート】!
 魂に直接響かせる如月による演奏が庭園中を揺らし、反響し熱量を上げる音波と、灼熱の火炎旋風が、ダイナマイトを掲げたクリスマス爆破男たちをまとめて吹っ飛ばす!
 第一波で蹴散らした分だけ、植え込みの中から補充されるかのように湧いてくる新手にも怯むことなく、周は演奏を続ける。それにより、攻撃の勢いはどんどん増していく。
「オラオラ、テンション上げてくぞ! 付いてこれっか!?」
『く、くそっ……炎が邪魔で、ダイナマイトが投げつけられんわい!』
『囲め! 数で攻めるんじゃ! 必ずどこかで死角が出来るはず――』
 クリスマス爆破男たちは、次々と分裂体を増やして、何とか周を爆破しようと試みる。だが、今や周の周囲は完全に燃え盛る炎と音波によって攻防一体の障壁が形成され、クリスマス爆破男たちが近寄る余地などありはしなかった。
(「上手くやれれば、手に持ってるダイナマイトが自然発火するかもなー」)
 渦巻く炎の中心で、不敵に笑みながら様子をうかがう周。果たして、目論見通りにクリスマス爆破男たちの一部では、不用意に近付きすぎたせいでダイナマイトが勝手に爆発し、自爆する者も見受けられた。

『い……いかん! こやつとワシらでは相性が悪すぎる!』
『戦略的撤退をすべき時か……!?』
「だーれが、逃がすって!?」

 クリスマス爆破男たちが、じりじりと後退し始めたのを見とがめた周。そうはさせじと、操る火炎の旋風を全方位に飛ばし、クリスマス爆破男たちを逃すまいと灼熱地獄へと導いていく!
(「とはいえ、勝利に油断しそうな時が最大の隙」)
 流石は歴戦の灼滅者、周は最後の最後まで油断することはなかった。演奏のテンションが最高潮に達しようとしたその時、今までで最大の火力を叩き出し、討ち漏らしなど許さぬという勢いで、クリスマス爆破男たちを逆に爆破し返してやったのだ。
『お、おのれ……! ワシらが爆破されるなど、屈辱の極み……ッ!』
『この燃え上がるビート……間違いない、リア充の波動! グワーッ!』
 クリスマス爆破男たちは、皆口々に好き勝手言いながら爆発四散していく。
 けれど、決めつけはいけない。
 一見幸せそうに見えて、実はそうではない人だって、たくさんいるのだから。
 周は『どこにでもいる正義のヒーロー』として充実した日々を送っているのだろうけれど、もしかしたら、心のどこかで何かを求めているのかも知れないし。
 その辺どうなんでしょうと、問うのはあまりにも無粋というもの。燃える炎の中でギターをかき鳴らす周さんは、少なくとも、とっても活き活きして見えるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギルフォード・アドレウス
すぅぅぅ〜……はぁぁぁ〜ため息混じりの深呼吸

あのさあれだよ。サンタ服ってさ、頭のオカシイ人しか着ちゃいけないみたいな制約…?いや法令か…?があるんか??

強い既視感があるんだよな、ほらあれだよ去年見たことあんだよ、まさかまだゲームの中に居るんか俺は…いや、んなこたぁ無い筈だ。
さっき変なのをぶっ飛ばして来たわけだし

……これがこの世界の常識なのか? いやソレは駄目だ。俺は勿論、皆が可哀想だ。許されざる着眼点は排除しなくちゃいかん

ん……おっとぉ、目の前の趣味の悪いチンチクリン共が俺を可哀想な者を見るような目で見てるぞ、と
……これはダメだ

悪かったよ。喋ってないと集中出来なくてさ、よく言われる。

……1秒でも速く、一人でも多く、お前等を殺せる様に善処するよ

ダイナマイト投擲に対しては、光の障壁で防御。躱すってんなら身体を光に変換すればまず当たらんだろ
俺は射程が有って無い様な物だし、遠距離投げながら、急接近して刎ねても良い訳だ

独り身なのは否定しないが…一緒にされると俺死んじゃう

【アドリブ歓迎】



●イケメンが独り身だっていいじゃない
『我らッ、クリスマス爆破男ッ!』
『そこにリア充ある限り! 何度でも蘇るのじゃ!』
 うわあ。これだけ蹴散らされてなお、植え込みの中からわらわらと出てくる出てくる。
 これにはギルフォード・アドレウスも思わず片手で乱暴に顔を覆ってしまう。指と指の間からチラと前方に視線をやれば、そこには間違いなく、ダイナマイトを手にしたイカれたサンタクロース野郎共が群れをなしている訳で。現実からは逃れられなかった。
「すぅぅぅ~~~……はぁぁぁ~~~……」
 何かを諦めたかのように顔から手を離すと、ギルフォードはクソデカため息交じりの深呼吸で、冷静さを保とうと努力した。頑張っててえらい。
『む? 一見フードで隠れてはいるが、おぬし中々のイケメンじゃな?』
『どうじゃ、挨拶代わりに軽く爆発していかんか』
『遠慮は要らんわい! ささ、もちっと踏み込んで間合いに入って』
 ダイナマイトを手に、隙あらば爆破を試みるクリスマス爆破男たちの微塵も嬉しくないお誘いを後ずさりでお断りすると、ギルフォードは逆にこう言い出した。

「あのさあれだよ。サンタ服ってさ、頭のオカシイ人しか着ちゃいけないみたいな制約……? いや法令か……? があんのか?」

 心の底から問いただすギルフォードは、脳内ではっきりと思い出していた。
「強い既視感があるんだよな、ほらあれだよ去年見たことあんだよ、まさかまだゲームの中に居るんか俺は……いや、んなこたぁ無い筈だ」
 今はもう夏で、先程は披露宴の会場で、豪快な茶番劇を繰り広げつつ、張り付いた笑顔の爆破大好きマンを成敗してきたばっかりで。

 まさか、クリスマスシーズンのイベントクエスト開催中のゲーム世界に居る訳がない。
 だが、あの時相手取ったバグプロトコルを想起させて仕方が無いのだ、この連中は――!

「……これがこの世界の常識なのか? いやソレは駄目だ。俺は勿論、皆が可哀想だ」
 今度は勝手によろめきながら、ギルフォードは葛藤する。自らの裡に生じてしまった、危険な偏見に対してだ。機鍵を杖代わりにして、ようやく立っていられる状態にまで追い込まれながら、ギルフォードはギッと歯を食いしばり首を横に振った。
「あああ駄目だ、許されざる着眼点は排除しなくちゃいかん」
 そこで初めて、こちらを何やら心配そうな目で見ているクリスマス爆破男たちと視線がかち合った。
「ん……おっとぉ、目の前の趣味の悪いチンチクリン共が、俺を可哀想な者を見るような目で見てるぞ、と」
 実際、クリスマス爆破男たちは、何だか申し訳なさそうな顔をしていた。
『おぬし……何か悩みでもあるのか?』
『まさか……イケメンでありながら彼女の一人も居らぬとか……』
『ワシらに爆破される資格すらない……のか……?』
(「……これは、ダメだ」)
 色恋沙汰に首を突っ込まれるのはまっぴら御免だが、勝手に哀れまれるのはそれを超えて腹立たしいものがある。相手が相手だけに、余計に、ホラ、アレですよ。

 ――さっさと終わりにしよう。
 ギルフォードが出した結論は、こうであった。

「悪かったよ。喋ってないと集中出来なくてさ、よく言われる」
 もう、機鍵を杖にしなくても、立っていられる。
 ざり、と庭園にしっかりと足を着け、ギルフォードは笑った。
「……一秒でも速く、一人でも多く、お前等を殺せる様に善処するよ」

 臨戦態勢に入ったギルフォードを見たクリスマス爆破男たちも、その手にダイナマイトを構えて次々と着火、投擲態勢に入る!
『やはりイケメンは許しておけん! 将来のリア充候補じゃからな!』
『いいや、実は既にリア充やも知れん! リア充、爆発しろッ!』
『喰らえぃ、ワシらのダイナマイッ!』
「だああああ、うるっせえ!!」
 ものすごい量のダイナマイトを一気に投げつけられたギルフォードは、しかし動じることなく機鍵「ライセンス」を居合の体勢から抜き放ち、終末機巧「破局カタストロフィ」の権能で光の障壁を展開させ、そのことごとくを防いでみせた。
 ダイナマイトの爆発は、そのまま光の中へと収束していき、庭園に被害を及ぼすこともない。こと光を操ることに関しては、他の追随を許さないのだ。
「何だ、当たらなきゃどうってこたぁないじゃねえの」
『おのれ……ッ!』
 視界には、いくらでも居るクリスマス爆破男たち。斬り放題だ。ギルフォードは機鍵を目にも留まらぬ速さで一閃し、あっという間に斬り伏せた。それを、粛々と繰り返すのみ。
(「俺は射程が有って無い様な物だし、遠距離投げながら、急接近して刎ねても良い訳だ」)
 まさに緩急自在、一体一体斬る手間だけを抜きにすれば、まさにギルフォードの独壇場であった。
「独り身なのは否定しないが……」
『その面で独り身だと!?』
『ワシらを騙そうとしても無駄じゃぞ!』
『もしやおぬし、性格に何らかの欠陥が……!?』
「うるせえっつってんだろ! お前等と一緒にされると俺が死んじゃうから止めて!」
 ワアワアと騒ぐクリスマス爆破男たちに、止めろバカ一緒にするなと夢中で機鍵を振るい続けるギルフォード。
 時にダイナマイトを弾き返して逆に爆破してやったり、時に自らの身体を光に変換させて透過したダイナマイトを反対側に居たクリスマス爆破男にぶつけてやったりと、何やかやで大暴れしているうちに、いつの間にか庭園に立つのはギルフォードただ一人となっていた。

「……あー、疲れた……」

 これでまだ黒幕が控えているっていうんだから、困っちゃいますよね。
 全ての鬱憤をぶつけてやれる時が近いと思えば、何とかなりますかね?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂った時を刻む者』

POW   :    其の夢を奪い去る
【時空を捻じ曲げる能力 】を解放し、戦場の敵全員の【大切な人の存在可能性】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
SPD   :    其の世界を塗り替える
指定地点からレベルm半径内を【突如として大切な人を失った世界線 】に変える。内部にいる者は活力(体温・燃料等)を激しく消耗する。
WIZ   :    其の心を踏み躙る
【胸元に埋め込まれた紅玉 】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【大切な人を失った絶望と喪失感】の状態異常を与える【時計の文字盤を模した魔法陣】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●時空歪めし者の目的は
『スマイルイーター、クリスマス爆破男……皆、我と心を一つにする同志であったが……』
 ゆらり、と。その男は猟兵たちの眼前に突如姿を現し、低い声で呟いた。
『流石は猟兵、というべきか。此処まで辿り着かれる前に爆破されてしまえと思っていたのだが、そう簡単には行かなかったようだな』
 今回の事件の予知をしたグリモア猟兵の真の姿を模した紛い物――『狂った時を刻む者』は、赤い瞳を爛々と光らせながら、猟兵たちを睨めつけた。

『我は、幸福な時間を生きる者を憎む』
 それが何故かは、分からない。きっと、そういう風に生まれた存在だからだ。
『我は、憎むが故に幸福な時間を奪う』
 しかし、行動自体はシンプルで分かりやすい。
『貴様等猟兵にも、幸福なる者が多い――我にとっては、格好の獲物だ』
 淡々と語り続ける狂った時を刻む者は、ほんの少しだけ、口角を上げた。

『端的に言おう――リア充、ことごとく爆発しろ』

 結局そっちに落ち着くんかい! いや、事前に知らされてはいたけれども!
 狂った時を刻む者は、時空を操る能力を持つソロモンの悪魔。大規模魔術サバトにより、人々の「ずっと続くはずだった幸福な時間」を、突然の死別という形で奪い去り、分かたれた両者から生じる絶望と喪失感で自らの勢力を増す特性を持つ。
 猟兵たちにも、その脅威が襲いかかることになるだろう。だが、愛の力なりRBの力なりで、どうにか堪えて人様に迷惑をかける悪い輩を退治しなければ。

●補足
 今回の事件における諸悪の根源がこいつです。遠慮なくボコして下さい。
 ユーベルコードが割とシリアス寄りですが、ギャグ時空に変換しても良し、真面目に受けてヒロイックに乗り越えても良し、皆様のやりやすいようにお任せ致します。
 繰り返しになりますが、狂った時を刻む者とグリモア猟兵とは何の関係もありませんので、何の躊躇もなくやっつけていただければスカッとします。人様の結婚式を台無しにしようとしたのはギルティですからね……何卒よろしくお願いします……!
イヴ・エルフィンストーン
ニコさ…いえ
狂った時をお刻みの方…!
そんな悲しい事をしてはだめです
詠唱のお邪魔をしてしまいましょう

ええっと、普通に倒してもいいのですか?
でもやっぱりこういう時は
灼滅者のイヴが出てきてしまいます
そうです、まず説得からです
説得したら考え直していただけるかもしれません!

誰かの幸せが憎いのは
あなたがハッピーではないからですね?
ではイヴの魔法をお見せします
UCで今日のラッキーアイテムを召喚です!

…あら?
このお店イヴもよく行きます
星羽珈琲店のギフトカード3万円分…?
すごく具体的なものが出てきたのですが
何かお心当たりなどはありますか?

とはいえ占いの結果ですので
プレゼントしちゃいます
ご自由に使ってくださいね!



●ラストバトルの開幕はギフトカードと共に
 時間とは、本来誰にでも平等に刻まれ、ただ淡々とあるべきものであろう。
 だが、このオブリビオン――『狂った時を刻む者』は、自らの我欲のみでそれを乱し、悪用し、無辜の人々を不幸に陥れることで自らの勢力を強化する。
『猟兵共よ、ことごとく不幸であれ。そして我が糧となるが良い』
 ただならぬ光を帯びた赤い瞳を、まるで手始めにと言わんばかりにイヴ・エルフィンストーンへと向けながら、狂った時を刻む者は胸元に埋め込まれた紅玉に触れた。
「ニコさ……いえ、狂った時をお刻みの方……!」
『何故そこで我が名が妙に丁寧になる? さては貴様、育ちが良いな?』
 イヴがオブリビオンに向かって呼びかけると、ご丁寧に反応が返ってきた。その間は集中が途切れるのか、自然と詠唱が止まり、魔法陣の展開も一時中断される。
『貴様のような、如何にも大切に育てられたかのような者を犠牲にするのは心地良い。生じる不幸はきっと甘美で、我が力としても申し分が無かろうからな』
「そんな……! そんな悲しい事をしてはだめです!」
 何なら、向こうから喋ってくるまである。さてはこいつ、口数が多いな?
 ということでイヴは、詠唱の邪魔をしてしまおうという結論に至った。

(「ええっと、ニコさんは『普通に倒していい』とおっしゃっていましたが……」)
 むしろそうしてくれと言わんばかりだった、眼鏡のグリモア猟兵のことを思い出す。
(「でもやっぱりこういう時は、灼滅者のイヴが出てきてしまいます」)
 どれだけ別個体で何の関係もないと言われても、かつてのニコを知る灼滅者たちからすれば、眼前のオブリビオンは『闇堕ちしたニコ・ベルクシュタイン』に見えてしまう訳で。
「――そうです、まず説得からです」
 闇堕ちした灼滅者の魂に呼びかけ、元の人格を引き戻すというのはある種のお約束。
「説得したら、考え直していただけるかもしれません!」
 一縷の望みをかけて、イヴは狂った時を刻む者に向き直ったのだった。

「誰かの幸せが憎いのは、あなたがハッピーではないからですね?」
『む……? 異な事を言う、我は不幸を喰らう者だが、我自身の幸福など考えた事も無い』
「なら、きっとそういうことなのです! イヴの魔法をご覧に入れる時ですね!」
 魔法使いは、人々を幸せにする使命を帯びている。
 世界は、きっとそういう風にできているのだ。
 イヴもまたその例に違わず、たくさんの人を笑顔にしたい一心をユーベルコードにまで昇華させた【ウィッチクラフトイヴ・アレンジ】で、眼前の――よりによって、オブリビオンにとっての『ラッキーアイテム』を創造せんと、胸の前で両手を組んだ。
「今日のラッキーアイテムを召喚です!」
『……待て、誰のラッキーアイテムを召喚する……だと?』
 かなりの大きさに拡張した、凶悪な効果を持つ時計の文字盤を模した魔法陣を背負ったオブリビオンが、それをイヴ目がけて放つのを中断してまで尋ねた。
「……あら?」
 大きくもなく、小さくもなく。
 それ・・は、イヴの掌中に収まるサイズのものであった。
「このお店、イヴもよく行きます」
『何だ、何が出たというのだ。勿体振らずに早く教えろ』
 かなり大人げない姿勢で、狂った時を刻む者がずいとイヴに近付いた。その眼前に差し出されたのは、上質な紙で出来たチケットのようなものが、合計なんと六十枚。

「星羽珈琲店のギフトカード、合計三万円分……?」
『!!!』
「すごく具体的なものが出てきたのですが、何かお心当たりなどはありますか?」
『……ッ』

 巷で人気の星羽珈琲店で使用できるドリンクチケット、一枚あたり五百円分が、何と三万円分わっちゃりとイヴの手の中に現れたのだ。
 素で『何故これが出てきたのか分からない』イヴさんvs心当たりがありすぎて言葉に出来ない狂った時を刻む者! 二人の間の時はしばし止まったかのような錯覚に囚われる!
「とはいえ、占いの結果ですので、プレゼントしちゃいます」
『何だと!?』
 にっこり笑顔でギフトカードの束をそっくりそのまま狂った時を刻む者に差し出すイヴに、差し出された側は素っ頓狂な声を上げて挙動不審に陥った。
「ご自由に使ってくださいね!」
『い、いやいやいやいや少し待て娘よ、三万円分だぞ!? 幾ら我が密やかに贔屓にしている店のギフトカードだからと言って、ハイ有難うございますとすんなり受け取れる額では無い!』
「で、でも、せっかくのラッキーアイテムですので……受け取ってもらえないと……」
 オブリビオンの遠慮というなかなか見られない挙動に、イヴは困ってしまう。変な意地を張られて受け取ってもらえないと、双方アンハッピーなのだ。
(『此処で星羽のギフトカードなど不要! と全部地面に叩きつけてしまえば、この娘は勝手に落ち込んで不幸になる……』)
 狂った時を刻む者の拳が強く握られ、手が震え出す。
(『だが……正直、このギフトカードは、最近オブリビオンとしての活動に精を出していたが故にすっかり足が遠のいていた星羽に行くための重要な資金源となる……ッ!』)
 何葛藤してるんだよお前! 悪役のプライドはないのか!? 多分なさそう!
 遂に、何かを心に決めた風に、狂った時を刻む者はイヴを真っ直ぐに見て、告げた。

『娘よ、半分だ』
「……えっ?」
『三万円分もあるなら、二人で一万五千円分ずつ分けようでは無いか』
「で、でもこれは……」
『貴様もよく行く店だと申していたな? ならば我と貴様は同志である。同志の申し出を無碍には出来ぬが、全額頂戴するには些か額が多すぎる。貴様にも半分残すが故に、共に星羽を楽しもうではないか』
「ニコさん……っ!」
『違う! 我は狂った時を刻む者だ!』
「狂った時をお刻みの方! ギフトカードの有効期限には気をつけてくださいね!」
 オブリビオンとイヴで、三十枚ずつギフトカードを分け合って、その場はお開きとなった。「さっそく新作のふらぺっちを飲んで参ります」と最寄りの店舗に駆けていくイヴを、狂った時を刻む者はただじっと見送っていた。

『……最近、本当にご無沙汰になってしまっていたな……』

 オブリビオンにも行きつけのカフェとかあるんだ……という状況であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイート・シュガーボックス
結婚式を台無しになんてさせないぞ。いこう、ディオちゃんッ!
「覚悟しろ、狂時っちッ!」

狂時さん(狂った時を刻む者の略)にもお菓子をお届けだ!
…ッ!?狂時さんがユーベルコードを発動した。
…ッ!??狂時さんがいなくなったあああッ!?
「狂時っちぃぃぃッ!?」
(説明しよう。お菓子で笑顔にしたいスイートにとって、お菓子を届けようとした狂時さんが大切な者認定されたのである)

…あ、戻ってきた。
すかさず【悪心砕く思い出の味】ッ!
これは、『お母さんからのバレンタインチョコ』ッ!
幼い頃のリア充だの何だの気にしなかった、ただただ嬉しかった思い出の味だねッ!
(オブリビオンの脳裏を駆け巡る存在しない記憶)


【アドリブ歓迎】



●歪んだ心を癒すものは
「ここまで守り抜いた結婚式、最後の最後で台無しになんてさせないぞ。いこう、ディオちゃんッ!」
「覚悟しろ、狂時っちッ!」
『くるとき……っち……?』
 スイート・シュガーボックスとその相棒ズッ友ことディオニュソスが揃って飛び出す。狂った時を刻む者は、何というか……その、多分自分に向けて言われているんだろうなーと思いつつも、『くるときっち』なる単語にどうにも確信が持てず、ディオちゃんの言葉を鸚鵡返しにしてしまった。何たる間抜けな状態であろうか。
『い、一応確認するが……今、貴様等は我に向けて言葉を放ったのか……?』
「そうだとも! 狂時くるときさんにもお菓子をお届けするべく、やって来たのさ!」
『狂時さん』
「いいじゃんいいじゃん、呼びやすいしこっちの方がいいっしょ? 狂時っち!」
『其れは、まあ、確かに……我も自身の名が些か呼びにくかろうとは思っていたが』
 オブリビオンが、恐る恐るという様子でスイートとディオちゃんに尋ねれば、さらに愛称が増えた。ぶっちゃけた話をすると、地の文的にはこの愛称、結構書きやすいです。サンキュースイートさん、サンキューディオちゃん……。

「という訳で、狂時さんにもお菓子をお届けだ!」
『知らない人から軽々しくお菓子を貰ってはならぬとの親の教えだ! 断るッ!』

 親御さん居たんだ……というツッコミをスイートとディオちゃんが同時に入れようとしたその瞬間、狂った時を刻む者は――その場からかき消えた・・・・・・・・・・
「……ッ!?」
 お菓子のプレゼントをお断りされたことも多少なりともショックではあったが、それ以上に、眼前の狂時さんが普通に消えてしまったことが、スイートにとっては何よりの衝撃であった。
「狂時さんがいなくなったあああッ!?」
「狂時っちぃぃぃッ!?」
 これにはディオちゃんも一緒に取り乱す。周囲の空気はだんだんと冷気を帯び始め、謎の喪失感がスイートとディオちゃんを襲う! ああそうか、なるほどね、スイートさん的には『お菓子でみんなを笑顔にしたい』という願いの対象に狂時さんを認定したから、ディオちゃんよりも優先して『大切な人』扱いで『失われた』という訳ですね!

(『えっ、何? てっきりあの二人のうちどちらかが消え失せるかと思ったのに、何故我が消される世界線になる訳?』)
 多分、時空が歪んだどこかの空間で、狂時っちは狂時っちでぐるぐる目をしていた。なまじっか時空を操れるものだから、辛うじて生存出来ているのだろう。そういうことで一つよろしゅう頼んます。
(『取り敢えず、先程のユーベルコードは無かったことにして・・・・・・・・・、別の方法で挑まねば』)
 狂時さん、上手く使えばチート級の能力を、多分今ひとつ使いこなせていないのかも知れない。さも当然のように『時空を捻じ曲げて』スイートがお菓子を差し出す直前の時間軸に自らを回帰させ、猟兵たちの元へと何とか戻ってきたのだった。
「……あ、戻ってきた」
「狂時っち~~~! 心配したよぉ~~~!」
「今度こそ受け取ってもらうよッ! 【悪心砕く思い出の味ノスタルジーハートブレイカー】ッ!」
 死ぬかと思ったというような顔で再び姿を現した狂時さんを、ディオちゃんが嬉々としてすかさず羽交い締めにする。体格差? 何とかなるなる!
 そこへ絶妙な連携プレーで、スイートが超常の力で取り出したお菓子の袋を狂時っちの胸元に押し付けたのだった。申し訳程度に止まっていた上着らしきもののあたりにねじ込む形となり、狂時さんに(強制的に)渡された訳である。
『なッ……こ、このお菓子は……』
 ディオちゃんとスイートに挟まれるような状態で、狂時さんはおっかなびっくり、ねじ込まれたお菓子を手に取り、まじまじと見つめた。普通の悪役だったら問答無用で投げ捨てるだろうに、こいつさては物を無碍に出来ない性格だな?
「これは『お母さんからのバレンタインチョコ』ッ!」
『母親からの……バレンタイン、チョコレート……だと?』
「そう、幼い頃の、リア充だの何だの気にしなかった、ただただ嬉しかった思い出の味だねッ!」
『バレンタイン……我が母……うっ頭が……!』
 その時、狂時っちの脳裏を存在しない記憶が駆け巡る――!

 何か、こう……言われてみればそういう思い出のひとつもあったような……なかったような……でも確かにこうしてチョコレートは手元に存在している訳で……?
 狂時さんの目が再びぐるぐるし始める。大変だ! 混乱しているぞ!
「狂時さん」
 スイートが、そんな狂った時を刻む者に、穏やかに語りかけた。
「これでもまだ、リア充が憎いとか思う?」
「狂時っちさ~、とりま一個食べてみなよ~! 絶対美味しいって!」
 スイートの優しい問いかけと、ディオちゃんの押しに負けて、狂時っちはおずおずとチョコレートを一粒、口に運ぶ。母の教えはどうなってんだ。まあいいか!
『……美味い』
 狂時さんは、ただ一言、そう呟いた。
『あるはずのない記憶だが……こんなにも胸が温かくなったのは、初めてだ……』
 まるで、憑き物が落ちたかのような顔で、そう言うものだから。
 スイートとディオちゃんは、イエーイとハイタッチで狂時っちの心が穏やかになったのを喜ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

淳・周
あ、ニコじゃねえか…別人?
まああの禍々しさに言動、碌でもねえ奴だろう!
幸福な時間を奪うとか冗談じゃねえし。
LHじゃねえ本番の戦い、容赦なく行くぞ!

本命は火炎纏わせた拳、影の荊で捕縛しぶん殴るぞ!
あの胸の紅玉が起点か。ならUC起動、伸縮する影の荊の群れを襲い掛からせ捕縛、俯せに引き倒す!
剣とか魔法で阻んでくるだろうが影の荊の数で強引に押し切りつつアタシ自身も突っ込んで蹴りとか叩き込み詠唱時間を削ってやろう!
…今更こんな絶望に止まる訳がないだろう。
だってアタシは正義のヒーロー、だからな!
分かったなら骸の海に還っとけ!と拳ブチ込む!

…そもそもリア充な意味での大切な人いたことねえしなー。

※ギャグOK



●正義のヒーローは挫けない
『ハッ……すっかりチョコレートに魅了されてしまっていた! 一生の不覚!』
 狂時さんこと狂った時を刻む者は、口の端にチョコレートをつけたまま、両の手で頬を張った。彼なりの気合いの入れ方なのだろう。口の端にチョコついてますけど。
「あ、ニコじゃねえか」
『其れは死ぬ程言われるのだが、我はニコなどという名前では無い』
「あー……別人? いやそうか、ニコ本人がそう言ってたもんな!」
 淳・周は、狂った時を刻む者の姿があまりにも旧知に似通っていたものだから、思わず気軽に声を掛けてしまったが、落ち着いて考えればグリモアベースで最初に事情は聞かされていたなあと思い出す。
「それにしても、見れば見る程似てるあたりがまた……こう……」
 周の知る『ニコ・ベルクシュタイン』が、もしも闇堕ちをしたならば、きっとこうなるのだろう。その見立て自体は間違っていない。それが事態をややこしくさせた。
『そうか、そうか。貴様が言うニコという輩は――やはり、リア充を憎むのか?』
「とんでもねえな、RBどころか可愛い伴侶と幸せに過ごしてるっての」
『はああああ!!? 我と同じ顔でリア充!!? 許されざるわ!!』
「あーその禍々しいオーラに言動、碌でもねえ奴認定して良さそうだな!」
 ニコ・ベルクシュタインという人物について、周が知る限りを正直に話すと、途端に文字通り目の色を変えて激昂するオブリビオン。これには周もお手上げである。
「幸福な時間を奪うとか、冗談じゃねえし」
 そんなことをする権利が、一体どこの誰にあると言うのか。
 誰にもある訳がないし、そもそもそんなことは周自身が許さない。

「ライブハウスじゃねえ本番の戦い、容赦なく行くぞ!」
『ライブハウス……朝着替え……ウッ頭が』
「よっしゃ! 先手いただきィ!」

 周の気合いが入った台詞に、存在しないはずの記憶を刺激されて勝手に頭を抱えた狂った時を刻む者相手に、周は容赦なく魔法陣を展開させる暇も許さず急接近する!
『しまっ……』
「平伏せ!」
 周の足元に伸びた影が、無数の茨の形を取って、四方八方から狂った時を刻む者に襲い掛かる。手足に絡み付き捕縛したかと思えば――。
「そしてひしゃげろ!!」
『ぐあ……ッ!』
 胸元の紅玉が、凶悪なる効果を持つ魔法陣を展開する起点となるならば、そもそもその行為自体を妨害してやれば良い。
 影の茨は半ば強引に、狂った時を刻む者をうつ伏せに引き倒した。これならば、紅玉に触れて小細工を働くことは出来まい。
『おのれ……! これが、猟兵の力という事かッ!』
 しかし、狂った時を刻む者もただでは転ばない。両腕にあらん限りの力を込めて僅かに身を起こすと、赤い瞳で周を射抜くように睨み、虚空に禍々しい淀んだ赤色をした剣を大量に浮かべた。
『死ね』
「……ッ」
 直球の呪詛の言葉を合図とし、大量の剣が一斉に周目がけて放たれる!
 だが、周はそれに怯むどころか、むしろ剣の群れに突撃していく勢いでオブリビオンに迫った! 周の露払いをするかのように、影の茨が次々と剣を叩き落としていくのだ!
「……っぶねえ、だろうが!」
 まるで、茨の中から飛び出すように、周が一気にオブリビオンに迫ると、勢いに任せてその身を跳ね上げるように蹴り飛ばした。
『ぐ、はっ……』
 狂った時を刻む者の身体が、宙に浮き上がる。
 完全ではないものの、広がった魔法陣が、やむを得ないとばかりに放たれる。

 ――守りたかったものを守れなかった気分はどうだ、ヒーロー?
 ――これから守りたいものさえも、その手をすり抜けていく気分はどうだ?

「……黙れよ」
 周は、それだけ言うと、拳を固めた。その拳は、瞬く間に真っ赤な炎に包まれる!
「今更だ、今更そんな・・・絶望に止まる訳が、ないだろう」
 狂った時を刻む者は、完全に見誤ったのだ。淳・周という女が抱く、信念の強さを。
「だってアタシは――正義のヒーロー、だからな!」
『馬鹿な、絶望を踏み越えた・・・・・だと……!?』
 紅蓮の女は、ニィと笑った。

「分かったなら、骸の海に還っとけ!!」

 思い切って間合いに踏み込んだ周の燃える拳が、狂った時を刻む者の顔面を見事に捉えた瞬間だった。あまりにも綺麗に入りすぎて、数メートルは吹き飛ばされるオブリビオン。
「……そもそも、リア充な意味での『大切な人』、いたことねえしなー」
 そう何気なく呟いて、数度バウンドしてからようやく地面に転がった狂った時を刻む者に背を向けた周。その呟きを、耳敏く聞いていた狂った時を刻む者が、気力を振り絞って半身を起こした。
「何だ何だ、まだやんのか?」
『……いや、貴様がノットリア充だと知って、少々安堵しただけだ……』
「もっかいぶっ飛ばすぞ!?」

 この後、宣言通りもう一度助走をつけての燃える右ストレートが炸裂したそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェル・オオヤマ
SPD
・心境
拙者も昔は爆破スイッチ片手にリア充爆発しろ!と叫んで依頼に乗り込んだ時もあった…だが今は違う!(手を握り締める効果音)
元の世界ケルベロスブレイドにいる恋人とはいつでも会えれるしネ!
今日の拙者は"恋人や夫婦が死に別れるなんて悲しい出来事は絶対認めない明王"だよ!

・戦闘
マテリアルロッドを構えて空中戦で攻撃を回避しつつ急接近!
[我竜・理力爆破]を発動!ロッドの先端を叩き付けて風と炎の魔力を一気にぶち込み…逆時計回りに捻じれて爆破ッ!
【大切な人を失った絶望と喪失感】?
そりゃあ恋人とは常に会いたいさ!でも今会えないからって永遠の別れってワケじゃないからね!


他キャラとの連携・アドリブ歓迎



●爆破する側が爆破される気分はどうだい
 蹴られ殴られ中々のダメージを負った狂った時を刻む者は、ここで一度一呼吸置かねばと、眼前の猟兵――フェル・オオヤマ(氷焔操る紅の竜姫士・f40802)に対して、不自然なまでの間合いを取った。
『次なる猟兵か……先ず、貴様に一つ問わねばならぬ事がある』
「む? 何かな?」
 単なる時間稼ぎか、はたまた狂った時を刻む者の純粋な興味か。意図は掴めなかったが、取り敢えずフェルは素直に話を聞くことにした。
『――汝は、リア充なりや?』
 低く響くオブリビオンの問いを聞いたフェルは、ほんの少しだけ俯いて、拳を固めた。

「拙者も昔は爆破スイッチ片手に『リア充爆発しろ!』と叫んで依頼に乗り込んだ時もあった……」
『――では』
「だが、今は違う!」
『ギュッ』

 何だ今の、最後に入った効果音的な合いの手は!? ねえ何なの!?
元の世界ケルベロスブレイドにいる恋人とは、いつでも会えるしネ!」
『此の、裏切り者めがあああああ!!!』
 何ということか、フェルはこともあろうに元RB団でありながら、恋人が出来て足抜けをした、いわば叛逆者だったのだ――! これには狂時さんも激おこですよ!
 だが、世間一般の視点からすれば、それは極めてめでたいことであり、祝福されるべきことでもある。オブリビオンが勝手に怒ってるだけなので無視していい。
「今日の拙者は『恋人や夫婦が死に別れるなんて悲しい出来事は絶対認めない明王』だよ!」
『それはそれで思想が強いのでは無いか!? 大丈夫か!?』
「大丈夫! ポジティブ方面の明王だからきっとセーフセーフ!」
『クッ……此の侭では普通に押し負ける、こうなったら実力行使あるのみ!』
 あああ、絶対認めない明王を出されてしまったばっかりに、狂った時を刻む者が暴力に訴えてしまった! 割と既定路線だけどこうなったら戦うしかないですね!

 人ならざる者らしい姿というべきか、狂った時を刻む者はその身から禍々しい色の剣を二振り引きずり出すと、フェルに相対する。
『貴様……かつてはリア充を爆破したというその誇りは、一体何処へ捨て去った……!』
「うん、その、アレは若気の至りっていうべきなのかな……?」
『キエエエエエエ!(猿叫)』
 出会う時さえ違っていたら、手に手を取ってリア充を爆破する同志になれたやも知れぬというのに、何たることか。そう言わんばかりに、双剣を振るい猛然と襲い掛かってくる狂った時を刻む者。
 嫌ですよそんな同志、もう卒業したんですからと返すように、フェルは華麗なバク宙で双剣の連撃から逃れ、着地と同時に深くしゃがみ込んだ。
 その手に握られていたのは、銀色の宝石の装飾が施された長杖マテリアルロッド

「――ふ、っ!」

 限界まで落とした重心は、身体を一気に跳ね上げて、オブリビオンとの間合いを詰める為。
 まるで瞬間移動でもしたかのようなフェルの急接近に、狂った時を刻む者は、魔法陣を広げる猶予さえ与えられなかった。
 辛うじて、咄嗟に眼前で双剣を交差させて攻撃に備えるが、果たしてその程度の防御態勢が、これから放たれる一撃にどれだけ有効だというのだろうか?
「見様見真似だが……」
 全力で振りかぶられた「銀の星」は、まるで流星のように光る尾を引いて振り下ろされた。
「【我竜・理力爆破ラーニングアーツ・フォースブレイク】ッ!!」
『がッ……!』
 マテリアルロッドの先端を、防御などまるで無視するかの如く叩きつけ、インパクトの瞬間に風と炎の魔力を一気にぶち込んで、反時計回りに捻って爆破してやったのだ。
 狂った時を刻む者に対して、反時計回りの攻撃を叩き込むというのは、相当皮肉が効いていて実に良いと思います。最後に爆破というのも芸術点が高いです。

「『大切な人を失った絶望と喪失感』? そりゃあ恋人とは常に会いたいさ!」
 後方に跳び退り、再びオブリビオンと間合いを取ったフェルは、高らかに告げる。
「でも、今会えないからって、永遠の別れってワケじゃないからね!」
 豪快に爆破され、地に伏していた狂った時を刻む者が、震える声で反駁した。
『だが……貴様等が生きている限り、必ず我が見せる死別の未来は訪れるのだぞ……!?』
 それを聞いたフェルは、マテリアルロッドを軽く肩に担いで、笑ってみせた。
「その時はその時さ、ただその瞬間まで――悔いのないように、二人の時間を大切にしてみせる!」
 全く動じない様子のフェルを見たオブリビオンは、しばし呆然とした後――薄く笑った。
『そうか、そうか……我を相手に、時を語るか』
 邪悪な色を宿した双眸は未だ健在、倒しきるにはあとひと息必要そうではあるが。
『今度は、貴様が言う『恋人』と共に相見える事を期待しよう。揃って爆破してくれる』
「えっ!? 思う存分イチャラブしてる所を見たいって!? 任せておきたまえ!」
 流石は恋人や夫婦が死に別れるなんて絶対認めない明王、心身共に強靱であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琶咲・輝乃
まったく………
昔からRB(リア充爆発しろ)団と似たようなダークネスは偶に居たけど

その顔でそんな事を言っているのは不愉快だしツッコミどころ満載だから
さっさと倒そう

ボクから大切な人を奪う?
………へぇ、いい度胸だね?
何度も死線を潜ってきた “あの人” がボクを置いていくなんてあり得ない
しかも、この情勢下なら尚更

だから―――知り合いに似た顔で最悪の気分にしてくれた分、しっかりと殴らせてね?(超☆いい笑顔)

早業で右腕を鬼神変で龍の腕化させつつ
Aranea sericoの力でローラダッシュをしつつ魔法陣と紅玉を殴る

逃がさないし、逃がすつもりもない
大人しく灼滅されてよねっ!


アドリブ
連携歓迎



●許されざる者
 最初こそ猟兵に甘やかされていた狂った時を刻む者だったが、いよいよ本格的な攻勢に晒され、負傷も多くなってきた。流石にこれ以上の被害を被るのは避けたいと、撤退も視野に入れ始めたその時だった。
「まったく……」
 やれやれ、といった口調で、じりと後退しようとしていたオブリビオンを牽制したのは、琶咲・輝乃であった。
「昔からRBリア充爆発しろ団と似たようなダークネスは偶に居たけど」
 いや、口調だけではない。輝乃は、明らかに呆れた顔をしていた。
その顔・・・でそんな事を言っているのは不愉快だしツッコミどころ満載だから」
『な、何か……気に障った、か……?』
「障りまくりだね、だからさっさと倒そうと思うよ」
『ヒッ』
 輝乃のただならぬ殺気に、元々弱りかけていた狂った時を刻む者は思わず怖じ気付く。だが、すぐに輝乃の不機嫌の理由に思い至ったか、オブリビオンは一転して笑みを零した。
『そうか……成程な、貴様はニコ・ベルクシュタインを知っているのか』
「……」
 これ以上語ることはないとばかりに、沈黙で返す輝乃を見て、狂った時を刻む者は両腕を大きく広げ、ならばと持てる力を一気に解放した。

「! これは……」
『貴様にも『大切な人』が居るのだとしたら、地の果てまでも追いかけて其奴を葬ってくれよう――我には、其れが出来るだけの力が有ると知れ』
「……ふぅん」

 時空が歪む、というのは、こういうことを言うのかと。
 輝乃は、酷く醒めた心地で自分を襲う感覚と対峙していた。
 恐怖はない。
 悲しみもない。
 ただ、確信だけがあった。
「ボクから『大切な人』を奪う?」
『そうとも、我が力からは何人たりとも逃れられな――』
「……へぇ、いい度胸だね?・・・・・・・
 この場を支配し、圧倒するのは――恐るべきことに、輝乃の圧であった。
「何度も死線を潜ってきた『あの人』が、ボクを置いていくなんてあり得ない」
『何だ……何なのだ、貴様……ッ!?』
「しかも、この情勢下なら尚更」
 輝乃が一歩踏み出せば、狂った時を刻む者は一歩後ずさる。
 そうして、輝乃はオブリビオンの顔を見上げて、ニッコリとめっちゃいい笑顔をした。

「だから――知り合いに似た顔で最悪の気分にしてくれた分、しっかりと殴らせてね?」
『待って、怖い』
「待たない☆」

 そこからは、信じられない程の早業であった。狂った時を刻む者の『時空を歪める能力』さえも圧倒し、輝乃は右腕をユーベルコード【鬼神変キジンヘン】で龍の腕に異形巨大化させると、ミサンガ「Aranea serico」の力で猛然とオブリビオンへ接近し、宣言通り躊躇なく展開された魔法陣と紅玉をぶち抜かん勢いで殴りつけたのだ。
『……ッ!!』
 あまりの衝撃に、呻き声一つ出せない狂った時を刻む者は、勢いに負けて地面に転がった。その無様ささえも――輝乃にとっては許し難い姿であるとも知らずに。

 あり得ない。
 あの人が、あたしを置いていくなんて、絶対にあり得ない。
 雨が降るたび、いつでも会える。
 いい年してニンジンが大嫌いだと公言して憚らない、あの人に――。

『がはっ……く、くそ……』
「逃がさないし、逃がすつもりもない」
『貴様、は……ああ、身体中もだが、頭が痛い……貴様、ッ……』
「恨み言を聞く慈悲もない、大人しく灼滅されてよねっ!!」

 ――琶咲・・
 あるはずのない記憶に、頭が痛む。
 きっと、己に向けられるこの怒りは、至極真っ当なものなのだろうという、根拠のない感情が湧き起こる。それは、己がオブリビオンだからとか、それ以前の問題で。
 己は過去の残滓。
 眼前の娘は現在いまを生きる猟兵。
 決して交わることのない存在同士でありながら、こうも強い怒りをぶつけられるのは。

『はは、は……』
 狂った時を刻む者は、輝乃が良く知る顔で、血にまみれて薄ら笑う。
『良いだろう、気が済むまで死合おうでは無いか』
「――上等」
 輝乃は、再び身構え、何度でも致命の一撃を喰らわせてやるとばかりに睨めつけた。
「これ以上、知り合いを愚弄されるのは御免だからね!」
 龍の巨腕と、時を刻む双剣とが、ぶつかり合った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンカー・バールフリット
【星海の花】

ついに現れたな、事件の黒幕!
上半身半裸で中世系近接武器とか世紀末を演出したようだが残念だったな!
武蔵坂学園にどれほど親兄弟親類縁者を虐殺された設定の灼滅者がいると思う?
貴様は森を焼かれたエルフの人数を数えたことがあるのか?
私は既に『突如として大切な人を失った世界線』に生きているし大切な人を失ってしまったと悔恨する黄金イベントも経験済み、それでお互いの大切さを思い知り将来を誓い合った未来の嫁がいるのだ!
ぼっち童貞の侘しい妄想ごときものの数ではない!
受けてみろ!
これが約束された勝者の二人リア充だ!

千星を抱きしめてUC発動。
千星の瞳を見つめながら顔を寄せて微笑む「キスするよ」サインにOKサインをもらったら右手に恋人繋ぎしてそのまま優しくキス、千星の【コズミック・デス・サークル】を発動して攻撃!

千星、僕は決して千星を1人になんてしないからね
絶対にこの手を離さない
これからも僕は千星とずっと一緒だよ
綺麗だよ、千星
愛してる
可愛い笑顔をよく見せて
千星の唇やわらかいな
以下アドリブで文字数


浅間・千星
【星海の花】

わたしが知ってるこの姿をした彼(PHのニコ君)は恋人と幸せに過ごしているはずだが……キミは独りなのか?
しかし動機が陰険すぎるぞ……!

彼のUCを喰らったら、
過去、アンカーが闇落ちした事実を予知で見た当時の記憶が蘇るだろう
生きた心地のしないあの時間、わたしは自分の立場を恨んだり、自分を責めたりした
そして、辿り着いた
わたしも灼滅者であればいいのに!
そしたら、わたしが――!
無力感で抉られそうな胸を抑えて倒れそうになるけど、彼の存在を確かめて
「……わたしの心の傷を、よくも抉ってくれたな……?」
と、真の姿(淡い虹色の髪に銀の瞳、機械式の天使の翼を持つ者)に変化
『狂った時を刻む者』。……知り合いに姿形が似てるとて、……キミは絶対に許さないからな!」
とUC発動させて、周囲を星々が輝く真空の宇宙空間にかえる
「だからぼっちなんだよ、キミは!!」

アンカーがUCを使う間、花近にはあっち向いててもらう
いいよって言うまで、こっちみるな?

キスするって言われたら頷いて
……もう、なんとかなれーッ!


千曲・花近
【星海の花】

(PHのニコくん)恋人いるんだー(鈍い)
……まぁそうだよね、かっこいいもん、恋人いるよね

だけど、人の幸せを無かった世界線に変えるのは、流石に過激すぎるって!!

……彼女がいない世界はきっと、桜が咲かない春
世界から桜が消えたなら、俺は春に何を見上げるんだろう
どんな花のほころびに目を細め、どんな色の花を愛し、なんの涙を受け止めるんだろう
と、左手をそっと差し出した時、見えるんだ
彼女さんが作ってくれたビーズの指輪が
それが薬指にはまっていることを確認し、
「なんだ、桜は咲くじゃん。……だったら俺、全然頑張れるよ!」
いい機会だからね、真の姿(着物に羽織りのキラキラ民謡歌手モード)に変身
披露宴でも使ったUCだけど、威力はすごいよ!
ではではー、祝い唄を歌わせていただきます!
歌の波動でこの空間と狂った時を刻む者さんを攻撃するよ!
「桜が笑う限り、俺は歌えるよ!」

千星ちゃんにあっち向いてって言われたら
はーいって応じる
耳は塞いでおいた方がいい?

アンカーさん、千星ちゃん。もういい?
え、まだなのー。長いー



●愛は花開く
 狂った時を刻む者は、ここまでの猟兵たちの猛攻により、かなりの痛手を負っていた。
 痛む身体はさて置くとしても、リア充を憎む己をたしなめる言動の方が、オブリビオンにとっては割とボディブローのようにジワジワと効いていたとか何とか。
『何故だ……自らがリア充であり幸福であるというならば、我に敵対する理由も分かるが』
 狂った時を刻む者は、心底分からないという口ぶりで呟く。
『特に己に決まった相手が居らずとも、他人の幸福を祝福出来る等……信じ難い……!』
 性根がねじ曲がっていることを自ら明かしていくスタイルで、狂った時を刻む者は強い視線を己の前に立ちはだかった二人の猟兵たちに向けた。

「わたしが知ってるこの姿をした『彼』は、恋人と幸せに過ごしているはずだが……」
『なん、だと……?』
「えっ? ニコくん、恋人いるんだー」
 浅間・千星が狂った時を刻む者に向けて純粋な疑問を投げかけると、ニコ・ベルクシュタインとは全くの別個体である彼は初めて聞く衝撃的な情報に狼狽え、すぐそばに居た千曲・花近が巻き込まれるような形で『初めて知った』と打ち明ける。鈍い……! あまりにも鈍い……! でも確かに花近さんに正式にご挨拶とかした訳でもなかったから仕方が無いのかな……!?
「……まぁそうだよね、かっこいいもん、恋人いるよね」
『我と同じ面をしてリア充……我と同じ面をしてリア充……』
「そうか、キミは独りなのか……」
 ほんわかとした口調で納得する花近と、憐れみを滲ませる口調で狂った時を刻む者を見る千星に、半ば壊れた機械のように同じ台詞を繰り返しブツブツと呟く狂時さん。

『やはり許せぬ! 許されざる! リア充は爆発するべきだと改めて確信したッ!』

 あああ、どこまで行ってもオブリビオン。そしてソロモンの悪魔。
 本質が『他人の幸福を奪い、自らの勢力を増す』存在である以上、逃れられないのか。
「ど、動機が陰湿すぎるぞ……!」
「ホントだよ、人の幸せを無かった世界線に変えるのは、流石に過激すぎるって!!」
 千星と花近が至極真っ当な訴えをする中、世界は容赦なく色を変えていく――。

 もしも。
 もしもだよ、『彼女』がいない世界、というものを考えてみたとしたらさ。
 それはきっと、桜が咲かない春――なんだと思う。
 世界から桜が消えたなら、俺は、春に何を見上げるんだろう?
 どんな花のほころびに目を細め、どんな色の花を愛し、なんの涙を受け止めるんだろう?
 失意によるものか、それとも別の要因か、急激に身体中の力を奪われていく感覚に囚われながら、花近はそれでも左手をそっと空へと差し伸べる。
「……っ」
 手作りの、ビーズの指輪が、確かに己が指に嵌まっていた。
 左手の、薬指に。
 彼女が、手ずから作ってくれた、大切な指輪がある。
「なんだ、桜は咲くじゃん」
 色を失った世界で、それだけが、確かないろを持っていた。ブルーグリーンと紫の中に、一粒だけの桜色。
「……だったら俺、全然頑張れるよ!」
 伸ばした指先を、グッと握りしめる。その動きに呼応するかのように、ビーズの指輪がキラリと光り、生じた色彩はあっという間に花近の身体を包み込み――その姿を、花近の真の姿へと変じさせたのだった。
 着物に羽織りを組み合わせた、キラキラの民謡歌手モード! 懐かしい!

『……む?』
 狂った時を刻む者は、確かに奪ったはずの『幸福』が取り戻される気配を感じ、花近の方を見た。そして、僅かに眉をひそめた。
『まあ、いい。貴様一人で何が出来るというのだ』
 オブリビオンはまだ知らない。己が僅かな綻びだと断じたものが、後に大いなる脅威となることを――。

 わたしは、視た。
 アンカーが、闇堕ちした事実を、予知で視た。
 悪夢のよう――いや、悪夢そのものだった。
 嘘であって欲しいとどんなに思っても、他ならぬ己が視たものは、絶対。
 その事実に、どれだけ打ちのめされたことか。
 生きた心地のしない、ただ無事の生還を待つことしか出来ない、あの時間。
 わたしは、恨んだ。自分の立場を。
 わたしは、責めた。自分の無力を。
 辿り着く先は必然であったかも知れない。

 ――わたしも灼滅者であればいいのに! そしたら、わたしが――!

 ぽっかりと、胸に穴が開いたような感覚。
 それを必死に埋めようとするかの如く、胸元を押さえる千星。
 足がよろめく。何とか堪える。けれども、いつまで保つか。

「ついに現れたな、事件の黒幕!」
「! アンカー!?」
 不意に、頭上から声が降ってきたものだから、千星は弾かれたように顔を上げた。
 空飛ぶ箒に横乗りになって華麗に宙を舞うのは、紛れもない、愛しのアンカー・バールフリットだ!
『小賢しい、時間差で現れるとは……!』
 狂った時を刻む者が忌々しげに言うのも気にせず、アンカーはオブリビオンに言う。
「上半身半裸で中世系近接武器とか世紀末を演出したようだが、残念だったな! 武蔵坂学園にどれほど親兄弟親類縁者を虐殺された設定の灼滅者がいると思う? 貴様は森を焼かれたエルフの人数を数えたことがあるのか?」
『割とメタな発言で畳みかけるのは止めるのだ! 事実陳列罪をご存知で無い!?』
 ぐうの音も出ない程の事実を並べ立てられて、またしても存在しない記憶が蘇る狂時さん。貴様からも大切な人を奪ってやろうかと、能力を発動しようとしたその時だった。
「私は既に『突如として大切な人を失った世界線』に生きているし、大切な人を失ってしまったと悔恨する黄金イベントも経験済み、それでお互いの大切さを思い知り将来を誓い合った未来の嫁がいるのだ! ぼっち○○の侘しい妄想ごとき、ものの数ではない!!」
『どッ……!!』
 能力を完封されたことは、まあ、しょうがないとは思う。リア充であることをこれでもかと教え込まれたことも、まあ、罪状がひとつ増えた程度に思えばいい。だが、ぼっち○○はさすがにそこまで言われる覚えはないレベルであった。
『どうしてそんな酷いことを其処までずけずけと並べ立てられるのだ! 人の心とか無いのか!』
「それを貴様が言うのか、笑わせる! ……ははぁん、さては図星だな?」
『ぐぬぬぬぬぬ!!!』
 これはもうダメだ、口喧嘩でアンカーさんには絶対に勝てない。狂時さんぐぬぬ状態。
 その隙を突いて、メンタルに相当なダメージを負った千星の元に舞い降りたアンカーは、愛しい婚約者の震える手をそっと握りしめた。
「千星、僕はここに居るよ」
「アンカー……!」
 鼻の奥がツンとなり、目頭が熱くなる。でも、泣くのはきっと今じゃない。
 今はむしろ――いつものように、笑ってみせなければ。
「……わたしの心の傷を、よくも抉ってくれたな……?」
 アンカーに手を握られたまま、千星の姿もまた花近と同じく変貌していく。髪は淡い虹色に、瞳は銀色に変じ、背には機械仕掛けの天使の翼が一対生じたのだ。
 二人は手に手を取って、狂った時を刻む者へと向き直った。

「あ、あー、テステス、オッケーかな?」
 そこへ、発声練習を十分に終えた真の姿をした花近が、マイクを握りしめてこれまた狂った時を刻む者の方を向いた。
「ニコさんにはまだ聴かせてなかったけど、本気の民謡の威力はすごいんだよ!」
『我はニコではないと何度言えば!』
「ではではー、祝い唄を歌わせていただきます!」
 祝福の歌。どんな妨害を受けようと、そこにある幸せは誰にも奪えないということを示す、力強く聴くものの心を震わせる、花近の本気の歌声だ。
 それは、狂った時を刻む者が発生させた時空の歪みさえ超えて、本体に直接ダメージを与えるに至る!
『其の……耳障りな歌を……止めろッ……!』
「えー、ひどいなあ。桜が笑う限り、俺は歌えるし、負けたりもしないのに」
 すっかり調子と自信を取り戻した花近はニッコニコで応戦する。そこへ、千星から声がかけられた。
「その、何だ。千曲、わたしが『いいよ』って言うまで、こっちを見るな?」
「? うん、わかったー。じゃあ、任せるね」
 素直オブ素直! 花近さんは言われるがままに千星とアンカーから目を逸らす!

「……準備は整った、いつでも……」
「千星」
 千星の言葉を待たず、アンカーは千星の身体を、まるで壊れ物を扱うように大切に抱き締めた。そして、力強く狂った時を刻む者に向けて宣言する!
「受けてみろ! これが約束された勝者の二人リア充だ!」
『何!? これ以上何を見せつけるつもりだと言うのだ!?』
 明らかに動揺する狂った時を刻む者を尻目に、アンカーは千星の銀の瞳を見つめながら顔を寄せる。そして優しく微笑めば、それは『キスするよ』のサインであると、言葉が無くとも十分に伝わった。え? これユーベルコードの効果? こんな状況にベストマッチするユーベルコードがあるんですか!?
(「ええい、もう……なんとかなれーッ!」)
 千星の目蓋がそっと伏せられる。受諾のサインに他ならなかった。右手を恋人繋ぎで指と指を絡め合わせ、そのまま優しく唇を重ね――。
『オイイイイイイイ!?』
 あっこいつ間違いなく○○だわ、と思わせてくれるリアクションを見せる狂った時を刻む者を尻目に、しばし互いの唇を味わった後、ほんの僅か顔を離して、千星は視線だけを狂った時を刻む者に向けた。
「『狂った時を刻む者』……知り合いに姿形が似てるとて、……キミは絶対に許さないからな!」
 右手は婚約者アンカーと繋いだまま、左手をオブリビオンに向けて突き出して、千星は今こそユーベルコードを発動させる!

「わたしは千の星を統べる者……悪いが、今回ばかりはキミを見守ってはくれないんだ」
 その名を【コズミック・デス・サークル】! 今度は千星が己の世界にオブリビオンを引きずり込む番だ!
「人の不幸を糧にしなければ自分が幸福になれないなんて、だからぼっちなんだよ、キミは!!」
『余計なお世話だ!! 誰も羨ましいだなんて一言も……ウッ……』
 しかし千星のユーベルコードは確実に効いている。その証拠に、狂った時を刻む者は嗚咽を漏らしながら膝をついているではないか。いや、効いたのはむしろ言葉の刃かも知れない。

「千星、僕は決して千星を一人になんてしないからね」
「な、何を急に……」
「絶対にこの手を離さない」
「それは……もちろん、離されたら困る」
「綺麗だよ、千星。愛してる」
「……わ、わ、わたしも、アンカーのこと……」
「ふふ、可愛い笑顔をよく見せて――ん」
「――!!」
「千星の唇は、いつだって柔らかいな」
「ちょっ! 何度キスすれば気が済むんだ!?」

 我々は何を見せられているのか? まごうかたないイチャラブです。
「アンカーさん、千星ちゃん、もういい?」
 流石に痺れを切らした花近が、律儀に目を逸らしたまま尋ねるが、ご覧の通り完全に二人の世界に突入してしまっているのでお返事がございませんで。
「え。まだなのー。長いー」
 うーんと唸る花近の視界に、チラリと見えたのは、息も絶え絶えな狂った時を刻む者。
「あれ、アンカーさんと千星ちゃんからも攻撃されたの? そろそろ死んじゃう?」
『メンタルは既に死んでいるも同然よ……いっそ止めを刺して欲しい位だ……』
「ありゃあ、でも俺、知り合いのそっくりさんを殴るなんてできないよー」
 花近はそう言ってふにゃりと笑う。花が咲いたような笑みだった。
『……幸福そうだな、爆発してしまえ』
 どこか知り合いに似た顔をしたオブリビオンは、どこかで見た淡い笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ギルフォード・アドレウス
……よぉ、クソ野郎
あんたで良いんだな?このどんちゃん騒ぎの黒幕は

んにしても、真の姿とやらがコレかぁ。意味が「本人の本質」とかだったら大変だな。立ち悪いったらありゃしねぇ、俺なら死にたくなるね

なぁ…リア充云々は取り敢えず置いといてだ…。何があんたをそうさせるんだ? なぁに興味が有るだけだ。消す前に聞いとかなきゃ損だろ??

同情出来る内容だとしても、眼鏡掛けた奴さんが困ってるんだと、さ。俺があんたを殺す理由はそれで充分だ

んじゃ、ボチボチやりますか。

UCは常時発動、対応する技能はフル活用でやりますか。フェイント、不意打ち何でも有りで。
足元凍らせたり、冷気かと思わせ火炎飛ばしたり。斬霊刀で攻撃を受け、わざと上に飛ばしたりジャグリング

体温奪うって言っても右手日輪で体温調節は可能なんだよな
ああ、後あれだ。俺、世話になった人や恩人は居るけど、大切な人って枠は無いんだわ
珍しいか? 俺、弱く無いからさ、そんなん要らねぇんだわ

俺の隣を歩く人間を俺は認めねぇ
俺は選んでんだ、もう

【アドリブ歓迎】



●withは要らない
 他人の幸福を妬む者に対する最大の攻撃は、自身が幸福であり続けることなのだろう。
 その点では、狂った時を刻む者なるソロモンの悪魔は、既に息も絶え絶えであった。
『おのれ……散々リア充ぶりを見せつけてくれおって……!』
「……よぉ、クソ野郎」
 そんなオブリビオンの前に一人姿を見せたのは、ギルフォード・アドレウスだった。
「あんたで良いんだな? このどんちゃん騒ぎの黒幕は」
『……ふ、ふはは、然様! リア充を爆破し、不幸のどん底に叩き落とさんと目論んだのは我よ! さすれば、リア充も多い灼滅者をおびき寄せ、一網打尽に出来ると考えたというのに……』
 ギルフォードの冷静な問いに、聞かれていないことまで饒舌に語る狂った時を刻む者。回答に関しては「あっそう」の一言で流してしまう無体を発揮しつつ、ギルフォードはまるで品定めをするかのように狂った時を刻む者の姿を上から下まで眺めた。
「んにしても、真の姿とやらがコレかぁ。意味が『本人の本質』とかだったら大変だな」

 ――止めるのだ! 其れだけは断じて違う!

 あっこれは堪りかねて後方からグリモア猟兵が全力で否定した声だ! ごめんねうるさくて!
「ハハッ、タチ悪いったらありゃしねぇ、俺なら死にたくなるね」
 真の姿そのものは、確かに『本人の本質』を体現するものなのだろう。
 けれど、ここサイキックハーツ世界で滲み出す猟兵の真の姿は、別個体だとある種の証明が立っている。首を括ったりする程絶望しなくても良さそうではあった。
「なぁ……リア充云々は取り敢えず置いといてだ……」
『何だ』
「何があんたをそうさせるんだ? なぁに、興味が有るだけだ」
『愚問だな、我は他者の不幸を糧にして強くなる悪魔。その本能に従っているまで』
「あー……消す前に聞いとかなきゃ損だとは思ったんだが、はぁ……」
 狂った時を刻む者に問うたギルフォードだったが、返ってきた答えは想定の範囲内。思わずため息が出てしまうのも無理からぬことだった。
「同情出来る内容だとしても、眼鏡掛けたやっこさんが困ってるんだと、さ」
 戦場の後方で、グリモア猟兵が、首がもげそうな勢いで頷いていた。
「俺があんたを殺す理由は、それで充分だ」
 何やかやでギルフォードさんって面倒見がいいね!? ありがとうございます!!

「――んじゃ、ボチボチやりますか」
『良いだろう――どうせなら、貴様も道連れにしてくれる』

 一気に全身に殺気を纏った猟兵とオブリビオンは、言い終わると同時に激突した。

(「出来ることはフル活用でやりますか、フェイント不意打ち何でも有りで」)
 世界を「大切な人を失った状態」に捻じ曲げる力そのものも脅威ではあるが、それに加えて、狂った時を刻む者は体内から取り出す双剣でも攻撃を繰り出してくる。
 息をするように発動させた【氷炎双舞ヒョウエンソウブ】の効果で、剣戟を喰らわせるべく踏み込んでくる足元を凍らせたり、それにより中途半端になった双剣の軌道を余裕の武器受けで逸らしたり。
『小賢しい!』
 足元の氷に剣を突き立て強引に割って自由を取り戻し、今度は跳躍で襲い掛かる狂った時を刻む者に対し、対空の火炎放射を浴びせかければ、咄嗟に身を捩ってギリギリの回避をされるも、攻め手が徐々に狭まってくる焦りを感じたのか、オブリビオンはギルフォードから一定の間合いを取り始めた。
「何とでもどーぞ、勝ちゃあいいんだよ、こういうのは」
『……今度は、我が問おう』
「あぁ?」
 地を蹴って、狂った時を刻む者が今度は地面すれすれを滑空するように迫ってきた。

『汝は、リア充なりや?』
「いーや、全然」

 ――が、きィん!!

 禍々しい赤黒の双剣を、白刃「亜覇刀アハト」でがっちり受け止めると、そのままオブリビオンの身体を上空にかち上げる!
『やるな! だが、非リアであるということは、話し合いの余地がありそうだ!』
「俺にはねぇんだけど……」
 やれやれ、と息を吐きながら、ギルフォードは平然とした顔で・・・・・・・狂った時を刻む者を見た。
 オブリビオンのユーベルコードの効果範囲内では、体温などの急激な低下が起こると事前に聞かされていたが、ギルフォードはまるでそれを感じなかったのだ。
(「体温奪うって言っても、右手日輪で体温調整は可能だからいいんだけどさ」)
『……? 貴様、何故平然としていられる?』
 ようやく異変に気付いたオブリビオンが、愚直に問う。
 ギルフォードは、目深に被ったフード越しに狂った時を刻む者を見た。
「ああ、あれだ。俺、世話になった人や恩人は居るけど『大切な人』って枠は無いんだわ」
『……何だと? そのような存在がこの世にあろう筈が無い……!』
 はっきりと己の有りようを伝えたギルフォードに、オブリビオンは驚愕するも。
「珍しいか? 俺、弱く無いからさ――そんなん要らねぇんだわ」

 強がりでもない。
 はったりでもない。
 嘘偽りのない、ギルフォードの生きざまの話であった。

『馬鹿な……! 真に孤独で立ち続けられる者等、我は知らぬ……!』
「あんたが知らねぇだけだ、俺の隣を歩く人間を、俺は認めねぇ」
 双剣が迫る。何度だって受け止め、弾き返す。
「俺は選んでんだ、もう」

 ――人生という旅くらい、一人でも出来ると。

「だからさ、相手が悪かったと思って諦めろよ。あんたは、俺から何も奪えねぇ」
『……ッ』
 白刃が左手で握られ、冷気を纏い、狂った時を刻む者の胸元の紅玉に叩きつけられた。
 ここまでダメージが蓄積していたのだろう、その一撃は致命となった。紅玉は砕け、それと同時に、狂った時を刻む者の身体がその形を保てなくなっていった。
『おのれ……いつか……我は、また……』
 最期にそうとだけ言い残すと、オブリビオンは完全に骸の海へと還っていったのだ。

「はぁ~~~~~~~~、マジで疲れた」
 何というか、相手をするのが疲れる相手ばかりだったから、クソデカため息も出るというもの。これはグリモア猟兵にしっかり労ってもらわなければ割に合わないレベルだ。
 ともあれ、結婚式場を襲ったリア充爆破を目論む輩の陰謀はここに潰えた。
 全ての幸福な人々に、これからも幸有らんことを。
 そして、一人で立っていられる人々には、いつまでもその強さが有らんことを。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年08月20日


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#サイキックハーツ
#トンチキシナリオ


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ニコ・ベルクシュタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト