獣人世界大戦⑰〜悪の花道
●悪とはなにか
「悪って何かしらァ? 法治国家なら単純よねェ。法律を
故意的に犯す人はわかりやすく社会的に悪だわァ。でも、それって本当に悪かしらねェ?」
殺人鬼 の顔に笑みが刻まれる。ニタリ、僅かばかりの悪意の笑み。
「事情があってやむにやまれず、とかあるでショウ? だから法を犯した人は社会的に悪で犯罪者だけど、決して悪そのものとイコールではないわァ。まあ、アタシの持論だけどォ」
闇の社会に生きるソレが肩を震わせて笑う。さも愉快だと言うように。
「でねェ、ちょっと愉しい依頼が来てるのよォ。出来ればアタシが行きたいくらいだわァ」
さくっと語られた状況は以下の通り。
クロックワーク・ヴィクトリア最高司令官プロフェッサー・モリアーティが、狂気艦隊を率いて凍結海を越え、イガルカ方面に進軍している。これを止めるにはモリアーティと戦うしかないが、モリアーティの身体から放たれる【ポーシュボス・フェノメノン】の性質が非常に厄介極まれる、と。
「ポーシュボス・フェノメノンって生命の【善の心】に寄生するのよォ。寄生されるとソレも、ポーシュボス・フェノメノンになっちゃうんですってェ。モリアーティはねェ【邪悪ナる者】だから平気みたいなのよォ――つまりぃ、わかるでショウ?」
悪になれ、と悪は唆す。囁く。甘言だ。たまには我慢しなくってもいいんじゃナイ? なんて。
「猟兵っていつから正義の味方だったかしらァ? 善の心を持った人だけなのォ? 悪党が悪党を語るなァんてそれこそ凶悪にシャバいからやりたくないんだけどォ、敢えて言うわァ――法を犯す? だからナァニ? 悪いことだって知識としては勿論、知ってるわァ。でも、アタシは悪いことだとは微塵も思ってないのォ。そうでショウ?」
コレは、ただ生きているだけだ、と言う。
倫理観が破綻していようが、コレはただ食事を楽しむように、趣味を楽しむように、何かを愛するかのように、息するように悪を成す。
「奪いたいから奪う。欲しいから奪う。殺したいから殺す。刺したいから刺す。撃ちたいから撃つ。弄りたいから弄ぶ。弱者から搾取するし、強きを裏切り、貶めるわァ。騙したいから騙すのよォ。それを悪いことだと知識としては知ってても、悪いことをしたとは心から思ってないのォ。罪悪感なんてないわァ」
殺人鬼とは、ただ、そう在るだけだ、と。
「生きたいように生きて、愉しみたいように愉しんてるだけよォ――気に入らないから止める、でもいいんじゃナイ? ネェ、普段の我慢は今日は止めちゃいまショ? 思いっきり邪悪に堕ちてェ……愉しんじゃいまショ?」
なるーん
おはこんちばんは、なるーんです。
受付はタグにてお知らせします!
悪いことをしながら、悪いことだと思わないくらいが邪悪。
悪いことだと自覚しながら、悪いことをしているのは小悪党。
そんな訳で皆様の悪逆ロープレ見てみたい!って欲に素直になりました。
ただの悪など生温い、邪悪に堕ちた狂人のほどを。
ただお色気なのは流します!苦手なんです!グロは歓迎!!
あとOPはこうですが犯罪行為は推奨しません。
寧ろダメ、絶対。OK?
以下、プレイングボーナス。
プレイングボーナス:善の心を全く持たない『邪悪ナる者』になる/ポーシュボス化してでも正気を手放さず戦う。
尚、プレボ後者の場合でも台詞とかはプレイング通りな感じで記載します。
よろしくお願いいたします!
第1章 ボス戦
『プロフェッサー・モリアーティ』
|
POW : 狂気砲弾
【ポーシュボス・フェノメノン】を宿した【艦隊の砲弾や機銃弾】を射出する。[艦隊の砲弾や機銃弾]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD : プロフェッサーズ・クエスチョン
対象への質問と共に、【自身の肉体】から【ポーシュボス・フェノメノン】を召喚する。満足な答えを得るまで、ポーシュボス・フェノメノンは対象を【ポーシュボス化】で攻撃する。
WIZ : 『小惑星の力学』
戦場全体に【流星の如く降るポーシュボス・フェノメノン】を発生させる。レベル分後まで、敵は【ポーシュボス化】の攻撃を、味方は【ポーシュボス化している部位】の回復を受け続ける。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
デボラ・メンデス
◎▲
ああ、獣人戦線に戻ってきてよかった
あんな
化物、今まで食べたことないもの
おっといけない、食べる前にまず前足を合わせて…
いただきます
弱肉強食衝動を解放し食欲に身を委ねることで善の心をなくして戦闘を行う。
「古式共喰戦」を発動して接近、モリアーティに噛みつき喰らう。
生きてようが人型だろうが関係なく
雑食性歯牙で噛みつき【捕食・魔喰・大食い・早食い】で強引に食べていく。
敵の攻撃や噛みつきで傷を負おうが【激痛耐性】任せに喰らい続ける。
ワタシ、食事は好き嫌いせず全部残さず食べる派だから。
『邪悪ナる者』?ワタシは食うのが好きなだけだぞ。
だから
お前を『いただきます』だ。
●弱肉強食に善悪など無し
善とは何か。悪とは何か。
人間が社会性を身に着けたがために存在するこれら概念。
はてさて自然界にはそれらは在るかといえば、否だろう。
自然界においては個の生存、種の繁栄が全てであり、それらを支える本能こそが何においても正しい。
弱肉強食、生命の循環――
そこに倫理などない。そこに善し悪しはない。それがただ当然で、ただひとつの正解だ。
「ああ、獣人戦線に戻ってきてよかった。あんな
化物、今まで食べたことないもの」
戦場を飛びかうポーシュボス・フェノメノン、そしてモリアーティを視界に留めたデボラ・メンデス(雑食系羊・f43439)は心の底から悦びを覚えた。
未知の珍味に出会う度、心は歓喜に震え、躍動する。嗚呼、食べたい食べたい食べたい!
肉食に魅入られし羊の心を支配するのは抑えがたき
食欲、そこに善の心などあるものか!
それは単純な本能、命を育むための最も単純で抗いがたい欲求だ。
「おっといけない、食べる前にまず前足を合わせて……いただきます」
ぽむっと手を合わせてご挨拶をするのは、ただの礼儀。美味しく頂くための儀式だ。
僅かに残った理性はそこまで。人型よりただ羊の姿に転ずれば、目の前の獲物たちは晩餐だ。
黄金の鎧からところどころはみ出る触手のようなもの、鎧もタルトのように食べれるかもしれない。
――嗚呼、なんて、美味しそう!
「ワタシ、食事は好き嫌いせず全部残さず食べる派だから」
羊は食欲のままに自分をスルーするポーシュボス・フェノメノンに喰らいつく!
硬い木の皮すら食いちぎる歯は噛みついた箇所から肉を食んで、まずは一匹、ゴチソウサマデシタ。
「ふむ、確かに食欲に善悪などない。まさか邪悪ナる者にならずとも、たかが獣一匹の食欲を前にポーシュボス・フェノメノンが退けられるとは――だが、これならばどうかな?」
次々に羊に喰らわれるポーシュボス・フェノメノン。
さながら肉食獣のそれのように最も原始的で、最も凄惨な食事を繰り広げながら
食欲の獣はモリアーティに迫りくる。
モリアーティは痛みによってそれを払おうと機銃弾を放つが、無駄なこと。
耐えがたい欲求は苦痛を上回る。機銃弾がその身をかすめても、貫いても獣は止まらない。ただ食らい続ける。
「『邪悪ナる者』? ワタシは食うのが好きなだけだぞ。だから――」
迫る――迫る、迫る迫る迫る! 目前に迫った
食欲の獣が、がぱり、口を開いて。
「
お前を『いただきます』だ」
モリアーティに食らいついた!
鎧を食み、
触手を食み、舌に広がる
化物の絶妙さ。
今だかつて味わったことのない、極上の邪悪ナる者、そのお味は如何?
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
「1人殺せば悪人だが、戦争で100万人殺せば英雄だ」と言った奴がいる
「善と悪は視点の違いでしかない」と言った奴がいる
つまりどういう事かというと
多くのオブリビオンを倒してきた俺は無辜の民からすれば善人かもしれないが
連中からしてみればどうしようもない悪になるのだろう
尤も「それがどうした」とも思うのだが
善悪が見方によって決まるなら、俺は俺が正しいと信じる道を進むのみだ
利剣を抜いて砲弾をステップで躱し、機銃弾を刀で弾きながらダッシュでモリアーティの元へ接近
――己を疑わないというのも、それはそれで悪に繋がる可能性はあるのだろうが
それでも迷わないと心に決めている。澪式・奥義【無念】の連続攻撃を叩き込む
●善悪の尺度
ときに善悪の尺度は柔軟に変化する。
時代の流れ、状況、立場――例えば平時であれば悪とされるものも、戦時であればそれは善となる。
「1人殺せば悪人だが、戦争で100万人殺せば英雄だ、と言った奴がいる」
前提として人殺しは悪だ。平時であれば尚更、ただ一人殺しただけでも悪となる。
それがどうだ。戦争で百万人の敵を屠れば、例え殺人鬼でもそれはたちまち英雄だ。
その行為が命を摘みたい、殺したいという欲のままであっても、味方にとっては
英雄なのだ。
「善と悪は視点の違いでしかない、と言った奴がいる」
――そう、味方にとっては。ならば、敵にとっては?
「多くのオブリビオンを倒してきた俺は無辜の民からすれば善人かもしれないが、お前たちからしてみればどうしようもない悪になるのだろう」
嗚呼、善悪などなんと曖昧なことか!
戦場に立ち、愛刀を静かに抜刀する夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は百戦錬磨の猟兵だ。
無辜の民にとって、そして世界にとって、彼は紛れもなく善であり正義であり救世主だろう。
しかし、そう、世界の敵にとっての彼は、多くの同胞を屠ってきた悪であり邪悪であり殺害者だ。
「なるほど。それが君の応えかね? それとも在り方と言うべきか」
「さてな。俺は俺が正しいと信じる道を進むのみだ」
対峙するモリアーティは努めて冷静を装い、接近してくる鏡介に砲弾や機銃弾を浴びせる。
敢えて問わずともポーシュボス・フェノメノンが鏡介に寄生しないこと、それが全ての答えであるにも関わらず。
「己を疑わないというのも、それはそれで悪に繋がる可能性はあるのだろうが」
通り過ぎるだけのポーシュボス・フェノメノンなど煩わしいだけの風のようなものだ。
いちいち構うことなく、戦場を駆ける鏡介。砲弾を軽やかに避け、機銃弾はその愛刀でいなし。
「それでも迷わないと、心に決めている」
決意を口に。愛刀より繰り出す澪式・奥義【無念】の連続攻撃をモリアーティに叩きこむ!
――僅かの迷いなく、速く鋭く繰り出される太刀筋は、まるで夜空を駆ける一条の流星の如く煌き、ただ
闇を切り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
エドワルダ・ウッドストック
◎▲
戦場での善悪は、個人の認識に拠る面が大きいですわね。
平時の殺人鬼、戦時の英雄とは多くの世界で語られると聞きますもの。
なので、ええ。
今この戦場ではモリアーティをぶっ殺したいという殺意で満ち溢れてますわっ!
善の心? 知った事じゃありませんわよーっ!
貴方たちに虐げられて苦しめられて殺されて尊厳を奪われた獣人たちがどれだけいると思ってやがりますのと怒り散らかして邪魔をするポーシュボスをナイフで斬り捨てて踏み潰して殴り飛ばしてモリアーティの眼前へ。
いましたわね! キルッ! ユーッ! ナウッ!
殺すと宣言した時にはもう引き金は引いているのですわ!
逃がしませんし射出する暇も与えません死に様を見せなさいっ!
●殺意とは悪か
「戦場での善悪は、個人の認識に拠る面が大きいですわね。平時の殺人鬼、戦時の英雄とは多くの世界で語られると聞きますもの」
エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)もまた善悪の尺度をそう解釈する者。
それは紛れもなく善悪の在り方のひとつ。そもそも本来、善悪の尺度などそれくらい曖昧なものだ。
法治国家においての法は、万人が平和に暮らすため、ひとつの尺度として共通のものを明示しただけにすぎない。
「なので、ええ」
エドワルダの長い髪が、ポーシュボス・フェノメノンが通り過ぎる風によって靡く。
此度もまたポーシュボス・フェノメノンがやり過ごされたことに、モリアーティは目を見張った。
猟兵は世界の救世主、在り方としては善である筈だと――モリアーティはそう思っていたのだから。
「今! この戦場では! 貴方をぶっ殺したいという殺意で! 満ち溢れてますわっ!」
そう完全に邪悪なる者にならなくても、善の心さえなければいい。殺意とは悪か? 善か?
――否、只の心の在り方だ! 其処に善悪などあるものか。
次々と襲い来るポーシュボス・フェノメノンをエドワルダはナイフで斬り捨て。
「善の心? 知った事じゃありませんわよーっ!」
墜ちたソレをぐしゃり踏み潰しながら、更に通り過ぎようとするソレを殴り飛ばして!
「貴方たちに虐げられて! 苦しめられて! 殺されて! 尊厳を奪われた獣人たちがどれだけいると思ってやがりますの!!」
エドワルダの心を支配するのは純粋なる怒りだ、純粋なる殺意だ。
心より溢れる激情に身を任せ、ただ嵐のように暴力を振るう。力を振るう。
――許せない許せない許せない許せない!!
ポーシュボスの返り血じみたものにその身を汚しても、エドワルダは止まらない。
だからなんだ。だからどうした。なりふりなど構っていられるものか、目の前に殺したい奴がいるのだから!
エドワルダの歩んだ道に、ポーシュボスの遺骸が積み重なる。
血塗られた花道の果てに
殺害対象に――
「いましたわね!? キルッ! ユーッ! ナウッ!」
エドワルダはライフルの引き金を引いた!!
黄金鎧は砕かれて、対象の身体は蜂の巣の如く。それでも止まらない。まだ、まだまだまだ!
「まだですわ、まだ撃ち足りませんわ! 逃がしませんし射出する暇も与えません!」
――眼球がとぶ、肉片がとぶ、指がとぶ。まだだ、まだ足りない。全然足りない。怒りも殺意もおさまらない!
「――死に様を、見せなさいっ!」
――尊厳を奪われた仲間たちはもっともっとひどかった。お前だけまともに散ることなどゆるさない。
大成功
🔵🔵🔵
●最後はやっぱり食欲が制する
それは果たして食欲か、それとも食に対する好奇心か。
建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)がちょことんと戦場に舞い降りた。
小学生女子のお姿、相変わらずお可愛らしい。
「じゃあ、Tekeli-li〜♪ やってみたいって言ったらみんなダメって言ってた【躍り喰い】やってみよー♪」
――おぅ、莉々ちゃん、なんですと?
「お・ど・り・ぐ・い」
きゃるんと可愛く、語尾はきっとハートマーク。
いずれにしろそこに善悪はない。だって心から湧き出す感情のまま素直に振る舞っているだけだから!
この間、食べた女の子は自ら取り込まれてしまったようなものだから、踊り喰いにはノーカウントかな?
目の前の
ワルワルは既に虫の息っぽいけれど、まだ生きてるからイケルね、うん!
ワルワルの身体から放たれる
血肉は元気だし!
――躍り喰いってさ、命に対する尊厳破壊っぽいところ、ちょっとあるよね。
まあ、とにかく莉々ちゃんの踊り食いパーティいってみよー!
「いっただっきまーす♪」
莉々ちゃん、まずは一匹血肉をむんずと捕まえまして、喰らいつく!
力持ちの莉々ちゃんにひとたび捕獲されてしまえば、寄生を試みようとする血肉は哀れビチビチ暴れることしかできず、がぶりがぶり喰らわれて餌食となった。
ゲームであればぴろりん★ なんてSEがあるだろう。莉々ちゃん、戦闘能力アップ。
「よぅし、まだまだ食べれるぞ!」
一匹食べればまたアップ。二匹食べればまたまたアップ――の無限ループ。
放たれっぱなしの血肉の数だけ莉々ちゃんが喰らう量は増え、莉々ちゃんは喰らえば喰らうほど戦闘能力アップするのだから、さもありなん。
人型でお口周りを汚して喰らう様は凄絶だ。更に莉々ちゃんは小さい女の子の姿なので余計。
「そろそろ化けたままじゃあ食べにくいかなぁ……えいっ!」
どろり、たちまちその姿が溶解すれば広がるのは黒い黒い水溜まり。
得体のしれないそれが血肉を捕獲し、喰らいながらモリアーティにずぞぞぞぞと迫る。
――
Tekeli-li言ってたし、もう、コズミックホラーさながらだね!
「ひぃいいっ」
猟兵とは善なるものだと信じていたモリアーティ。
欲や在り方、感情の持ち方ひとつですっかり対策されて参っていたところに、未知のタールにうっかり悲鳴。
砲弾や機関銃を怒涛に浴びせかけるが、そもそも水溜まりの莉々ちゃんには効果なし。
なんなら喰らっていくうちにあがった戦闘能力をフル活用して、砲弾ひとつをバインと弾いてみせた。
モリアーティの足が片方、弾かれた砲弾ではじけ飛ぶ。
ずるりずるり、地を這うワルワルと地をすべるように迫る脅威。
――ならば、当然、莉々ちゃんの方がはやいわけで。
「これくらい強くなれば大丈夫かな? いただきまーす!」
声音だけは可愛く、されど喰い方は極めて凶悪に。
ゆっくりゆっくり、恐怖を与えるかのように、その身に取り込んでいく。
やめ、やめろ! なんて藻掻けるくらいにまだ元気なら――今際の際に教えてくれるかも? なんて思って。
「ぷろふぇっさー教えて、悪ってなあに? 知性があって言葉が通じても、やっぱり分かんないものは分かんないんだ」
莉々ちゃんひとつ聞いてみた。善悪の定義は曖昧すぎてわからないのだ。
さて、教授はなんと答えたか――
「ふーん、そっかー」
案外、善悪という曖昧な定義で人をはかろうとした傲慢で無知な自分こそ邪悪、とか教授は答えたかもしれないけれど。
「ごちそうさまでした! はーおなかいっぱい♪」
実際のそれは、ちょこんと人型に戻ってご機嫌に笑う、
無垢な邪悪のみぞ知る。
建依・莉々
じゃあ、Tekeli-li〜♪ やってみたいって言ったらみんなダメって言ってた、「躍り喰い」やってみよー♪ 周辺の「血肉」に手当たり次第喰らいついて、戦闘力アップ! 上がった戦闘力でさらに喰らいついて、戦闘力無限アップ!! 化けてちゃやりにくいから、じゃぼんと拡がって足下から喰らいつきます♪ どのくらい強くなれるかな〜? 溜めに溜めた力を込めて、最後にぷろふぇっさーに喰らいつこう♪
知性があって言葉が通じても、やっぱり分かんないものは分かんないよね? だから、ぷろふぇっさー教えて、悪ってなあに?
●最後はやっぱり食欲が制する
それは果たして食欲か、それとも食に対する好奇心か。
建依・莉々(ブラックタールのどろんバケラー・f42718)がちょことんと戦場に舞い降りた。
小学生女子のお姿、相変わらずお可愛らしい。
「じゃあ、Tekeli-li〜♪ やってみたいって言ったらみんなダメって言ってた【躍り喰い】やってみよー♪」
――おぅ、莉々ちゃん、なんですと?
「お・ど・り・ぐ・い」
きゃるんと可愛く、語尾はきっとハートマーク。
いずれにしろそこに善悪はない。だって心から湧き出す感情のまま素直に振る舞っているだけだから!
この間、食べた女の子は自ら取り込まれてしまったようなものだから、踊り喰いにはノーカウントかな?
目の前の
ワルワルは既に虫の息っぽいけれど、まだ生きてるからイケルね、うん!
ワルワルの身体から放たれる
血肉は元気だし!
――躍り喰いってさ、命に対する尊厳破壊っぽいところ、ちょっとあるよね。
まあ、とにかく莉々ちゃんの踊り食いパーティいってみよー!
「いっただっきまーす♪」
莉々ちゃん、まずは一匹血肉をむんずと捕まえまして、喰らいつく!
力持ちの莉々ちゃんにひとたび捕獲されてしまえば、寄生を試みようとする血肉は哀れビチビチ暴れることしかできず、がぶりがぶり喰らわれて餌食となった。
ゲームであればぴろりん★ なんてSEがあるだろう。莉々ちゃん、戦闘能力アップ。
「よぅし、まだまだ食べれるぞ!」
一匹食べればまたアップ。二匹食べればまたまたアップ――の無限ループ。
放たれっぱなしの血肉の数だけ莉々ちゃんが喰らう量は増え、莉々ちゃんは喰らえば喰らうほど戦闘能力アップするのだから、さもありなん。
人型でお口周りを汚して喰らう様は凄絶だ。更に莉々ちゃんは小さい女の子の姿なので余計。
「そろそろ化けたままじゃあ食べにくいかなぁ……えいっ!」
どろり、たちまちその姿が溶解すれば広がるのは黒い黒い水溜まり。
得体のしれないそれが血肉を捕獲し、喰らいながらモリアーティにずぞぞぞぞと迫る。
――
Tekeli-li言ってたし、もう、コズミックホラーさながらだね!
「ひぃいいっ」
猟兵とは善なるものだと信じていたモリアーティ。
欲や在り方、感情の持ち方ひとつですっかり対策されて参っていたところに、未知のタールにうっかり悲鳴。
砲弾や機関銃を怒涛に浴びせかけるが、そもそも水溜まりの莉々ちゃんには効果なし。
なんなら喰らっていくうちにあがった戦闘能力をフル活用して、砲弾ひとつをバインと弾いてみせた。
モリアーティの足が片方、弾かれた砲弾ではじけ飛ぶ。
ずるりずるり、地を這うワルワルと地をすべるように迫る脅威。
――ならば、当然、莉々ちゃんの方がはやいわけで。
「これくらい強くなれば大丈夫かな? いただきまーす!」
声音だけは可愛く、されど喰い方は極めて凶悪に。
ゆっくりゆっくり、恐怖を与えるかのように、その身に取り込んでいく。
やめ、やめろ! なんて藻掻けるくらいにまだ元気なら――今際の際に教えてくれるかも? なんて思って。
「ぷろふぇっさー教えて、悪ってなあに? 知性があって言葉が通じても、やっぱり分かんないものは分かんないんだ」
莉々ちゃんひとつ聞いてみた。善悪の定義は曖昧すぎてわからないのだ。
さて、教授はなんと答えたか――
「ふーん、そっかー」
案外、善悪という曖昧な定義で人をはかろうとした傲慢で無知な自分こそ邪悪、とか教授は答えたかもしれないけれど。
「ごちそうさまでした! はーおなかいっぱい♪」
実際のそれは、ちょこんと人型に戻ってご機嫌に笑う、
無垢な邪悪のみぞ知る。
大成功
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