獣人世界大戦⑫〜醜悪なるデジャ・ヴュ
――獣人戦線。
ユーラシア大陸北部を縦断するウラル山脈の遠景に、耳を塞いでも意味がないほどの轟音が響き渡る。山を踏み砕き進むのはゾルダートグラード総統、その名に違わぬ『ギガンティック』だ。
「さあ機械兵士の諸君、吾輩に続け! ウラル山脈が如き、諸君が行軍しやすいよう、丁寧に平らにしながら進んでくれるわ!」
ただただ巨大なライフルをその手に携え、見目幼き総統は歩み続ける。その目的はただ一つ――『はじまりの猟兵』の奪取である。
●もう一人の魔女
「皆々方お揃いでござるな」
グリモアベース。揺らぎ続ける空間に集った猟兵たちへ向けて、コゲンタ・ロウゲツ(狐花・f39068)はぺこりと頭を下げた。覆面の隙間から除く瞳には、隠しきれない戸惑いが揺れている。
「此度の『獣人戦線』の戦については、繰り返し説明するまでもないでござろう。しかし、かの『幼女総統』とはいったい……?」
予兆に見えた彼女の言葉を一つ一つ確かめるように手繰りながら、忍びはふうむと首を捻る。
魔女。
メイガス。
聞き覚えのある名称も然ることながら、彼女――ギガンティックは紛れもなく『エンドテイカー』の魔力を帯びている。それはコゲンタらエンドブレイカーにとっては、見過ごすことのできない既視感であった。
「とかく、これ以上の進撃を許すわけには参らぬ。急ぎ獣人戦線へ向かい、ぎがんてぃっくを止めて下され」
ご武運を、と結んだ少年の掌で、狐花のグリモアが輝き出す。世界の破滅を防ぐべく猟兵たちが向かうのは、獣人戦線・ウラル山脈――幼女総統の足下だ。
月夜野サクラ
お世話になります月夜野です。
以下、シナリオの補足となります。
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●概要
・戦争シナリオにつき、1章で完結となります。
・個別リプレイを想定しておりますが、組み合わせた方が面白くなりそうだな、という場合はまとめてリプレイにする可能性があります。指定の同行者の方以外との連携がNGの場合は、その旨をプレイング内でお知らせください(ソロ描写希望、など)。
・受付状況等をお知らせする場合がございますので、マスターページとシナリオ上部のタグも合わせて御確認を頂けますと幸いです。
●プレイングボーナス
超超巨大砲の砲撃に対処する。
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※ご注意※
完結することを優先して進めるため、書ける範囲での採用・執筆となります。
全採用は難しい場合がございますので、予めご了承いただけますと幸いです。
それでは、ご参加を心よりお待ちしております!
第1章 ボス戦
『幼女総統「ギガンティック」』
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POW : 幼女キーック!!!!
単純で重い【幼女キック】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 超超巨大ビィーム!!!!
【超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』】から、レベル×5mの直線上に【超超巨大ビーム】を放出する。【魔力】を消費し続ければ、放出を持続可能。
WIZ : 斯様な結末、吾輩は断じて認めない!!!!
全身に【終焉を巻き戻す「エンドテイカーの魔力」】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【巻き戻されてゆく時間の流れ】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
👑11
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マウザー・ハイネン
なぜこの世界に魔女…幼女で狼耳尻尾…?
一般的な魔女のサイズの基準が姫様なのかバルバ魔女の姉妹か新たな謎が増えましたが、とんでもない事をしようとするなら阻止しませんと。
とにかく全力で走り砲撃を避け続けます。
防ぐは無理、躱すか逸らさねば。
星霊クリン達を召喚して氷塊を生成しつつ、砲の向きや引き金を引くタイミングを見切り攻めのタイミングを見計らいましょう。
十分氷塊作成したらUC起動、氷塊を素材に創られた狼型巨大ゴーレムに襲いかか…サイズ差的にじゃれつきでしょうか。
特に手元を狙い妨害できれば、砲撃の連射に狂いが生じるはず。
その隙に近づいて氷の魔法を纏わせた槍で貫き凍てつかせます。
※アドリブ絡み等お任せ

ウルザ・ルーナマリア
めちゃくちゃでけーな!?
え、まだ大人の魔女じゃない?
…大人になったら雲より高くなるのかな。
とにかくこんなの歩き回ってたら世界が大変な事になる。
絶対食い止めるぜ!
超巨大砲はもうどうしようもねー!
全力で山とか地形の影に隠れて逃げ回り姿を隠しつつ近づいてみる。
魔力は凍らせられないけどあの指なら…
もし川とか地下水道があるなら泳いで気づかれないように距離詰めれるかもしれないから積極的に使う。
近づけたらUC起動し指を狙って銛ぶん投げて命中したら凍気を周囲に放射!
構造自体が普通のライフルなら指が凍ったりしたら上手く撃てなくなる筈。
後はこの獣王斧槍叩きつけて少しでもダメージ与えてやるぜ!
※アドリブ絡み等お任せ
「なぜこの世界に魔女……しかも幼女で、狼耳尻尾……?」
いつもと変わらぬ無表情にわずかに訝る色を載せ、マウザー・ハイネンは首を捻った。見上げる先には山野を踏み砕いて往く巨大な幼女――総統『ギガンティック』の巨躯がある。これに対し、ひゃあと呆けた声を上げたのはウルザ・ルーナマリアである。
「めちゃくちゃでけーな!? しかも、まだ大人の魔女じゃない?」
「一般的な魔女のサイズの基準が
此華咲夜若津姫なのか、バルバ魔女の姉妹か……いえ、考えるのは後回しですね」
この期に及んで新たな謎が湧き出すとは、知ったつもりでいた世界もまだまだ奥深い。だが今は、目の前の魔女の進撃を阻止することが先決だ。
「とんでもないことをしようとするなら、阻止しませんと――行きますよ」
「えっ!? あっ! 待ってよ!」
氷花の如き横顔で告げ、マウザーは傍らのバルバには一瞥もくれぬまま動き出す。ウルザもまたその背を追って、荒涼とした山地を駆け出した。
(あれが大人になったら、雲より高くなるのかな)
いや、だめだ。あれを好きに歩き回らせておいたら、彼女が大人になる前にこの世界が大変なことになってしまう。頭に浮かんだ考えをブンブンと振り払って、少年は蒼海のトライデントを握り締めた。
「絶対食い止めるぜ!」
とにかく、まずは攻撃の届く範囲まで近づかなければ始まらない。岩肌を蹴って走りながら、マウザーはアイスブルーの瞳を細めた。
「……あれを防ぐは無理、ですね」
超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』のビームは、まともに喰らえば対抗のしようがない。となると躱すか逸らすかだが、それとてこちらの思い通りというわけにはいかないだろう。
(「砲の向きや引き金を引くタイミングさえ見誤らなければ……」)
その巨体ゆえ、ギガンティックの動きにはどうしても多少のラグが出る。それをしっかりと見極めれば、比較的安全に近づくことができるはずだ。すいすいとビームの間を縫っていくマウザーを見つめて、ウルザは意気込む。
「よーしおれも、岩とかの陰に隠れて――えっ!?」
不意に、世界が翳った。かと思うと、巨大な軍靴が見上げる天を覆い、こちらに向かって落ちてくる。ぎゃあ、と叫んで退避すると、幼女の踵は隠れ蓑の岩をいとも容易く踏み砕いた。
「あんなのもうどうしようもねーじゃん!」
「そう言っている限り好機は訪れませんよ」
弟分の泣き言にぴしゃりと返して、マウザーは肩に載せた星霊に目配せする。ウルザの六分の一もあるかないかの小さなシロクマはこくりと頷くと、無数の氷塊を呼び寄せた。それらはまるで意思を持つかのように一所に収束し、一体の巨大な
氷獣を模っていく。
「この大きさでは、じゃれつく程度がせいぜいかもしれませんが」
銃を持つ手元を集中的に狙えば、砲撃にも狂いが生じるはず。巨大な氷熊を飛びつかせて、マウザーはちらりとウルザを振り返った。分かっていますね、というようなその視線にはっとして、シーバルバの少年は敵の手元を振り仰ぐ。
(「魔力は凍らせられないけど、あの指だけなら
……!」)
狙いを定めて振り被る銛が、ライフルの引き金に掛かる幼女の指へ突き刺さる。それは彼女にとって、小さな棘のようなものに過ぎないかもしれないけれど――。
「きっちり止めてやるぜ!」
ウルザの意思に呼応して、銛の先端から凍てつく冷気が迸る。決して長くは保つまいが、一矢浴びせるには十分な時間だ。
「ウルザ」
「おう!」
阿吽の呼吸で貫くのは、氷気を纏う二振りの槍。確かに一瞬動きを止めた大いなる幼女は、冷えた手元を一瞥し、煩わしげに眉をひそめた。
大成功
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ププ・プイッコ
でっかいニンゲンでち…!
お耳あるからピュアリィでち?
…ようじょ?ようじょってなんでち~!?
でも!戦わなきゃいけないのは
あたちにもわかるでちっ
ぴゃって隠れたおやまがなくなったでち…!
吃驚でしっぽがぼわぼわになるけど
負けないでち!
ぴかっとした砲撃で地面に空いた穴に
身を隠して近づくでちっ
他の猟兵が攻撃したチャンスに
えいやっととびだして…
こわいけど
ラズワルドサマとだって
ププはいっしょに戦ったんでち
ププも勇者サマになるんでち…
え~い!
あたちの攻撃を受けるでち~!
「で……でっかいニンゲンでち……!」
それは幼く小さなチッタニアンにとって、あまりにも巨大な存在だった。一見すると木の枝か
指揮棒のような剣を片手に握り締め、ププ・プイッコは戦慄する。
「お耳あるからピュアリィでち? ようじょ? ようじょってなんでち~!?」
勇者ラズワルドに憧れて森を飛び出したチッタニアンには、まだ知らないことが多過ぎる。
だが、あれこれ考えるのは後回しだ――ププは臆病な兄たちとは違う。どこに出ても恥ずかしくない、勇敢なチッタニアンの剣士なのだから。
右手の剣で幼女の巨体をびしりと指し、バルバの少女は若草色の瞳を輝かせた。
「とにかく! 戦わなきゃいけないのは、あたちにもわかるでちっ。そこのようじょ! あたちが相手でち――ぴゃあ!?」
一歩踏み出す度に世界を翳らせる軍靴が、彼女を目掛けて
落ちてくる。慌てて山の陰に隠れたところ、轟音と共に岩が砕けた。幸い、ププの周囲は難を逃れたようだけれども――。
「お……おやまがなくなったでち……」
ふさふさとした長い尻尾は、驚きのあまり普段の三倍ほどに膨らんでいた。小さな心臓はどきどきとうるさいほどに跳ねているが、ここで引き下がるわけにはいかない。
(「こわいけど――こわいけど、ラズワルドサマとだって、ププはいっしょに戦ったんでち
……!」)
あの日、押し寄せるエリクシルの軍勢を前にして、毅然と立つ勇者の傍らに並んだことは忘れない。本当は恐がりで、まだ何もかもが覚束ない自分を、憬れの人が『小さな勇者』と呼んでくれたことも。
(「だから、ププも勇者サマになるんでち
……!」)
こんなところで、怖気づいてはいられない。大きさだけで言うならば、大魔女だってびっくりするほど大きかったではないか。
えいやと岩陰から飛び出して、ププは再び剣を振り上げた。
「負けないでち!」
巨大なライフルが火を噴いて、地面が削れ、抉られていく。その穴を塹壕代わりにして、ププは巨大な幼女の足元へ走り寄る。あの時と同じだ――彼女は決して、独りではない。何十人、何百人という猟兵たちがこの瞬間を共有しているのだと思うと、小さな腕には力が湧いてくる。
「え~い! あたちの攻撃を受けるでち~!」
仲間の猟兵たちの攻撃に合わせて、飛び出した先は幼女の眼前。甲冑のような帽子を短い左手でしっかり押さえ、ププは剣を一閃する。その切っ先が纏う勇気の光はあらゆる物質を突き通し、絶望の終焉を砕くのだ。
大成功
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龍・月華
【心情】
ふぅむ、妾の前で随分とでかい顔をしてくれる小娘よな
じゃが、魔女の幼体というのは気になる話じゃな
おぬしの力、妾のものにさせてもらおうか
【戦闘】
UCを発動してエンドテイカーの魔力を登録させてもらう
超超巨大砲の攻撃、全て妨害させてもらおう
いかに強力な攻撃であっても、撃つ前に戻れば意味はない
「ふむふむ、中々に面白いものよな」
こちらも「仙術」で攻撃させてもらうとしようか
じゃが、この力を持っている者同士であれば、攻撃力の高さなど問題ではない
勝利を諦めないことが肝要であろう
妾は想い人に会うため、猟兵になり、多元世界を旅する身
「根気強さ」「情熱」で勝てると思うな!
「悪のカリスマ」で威圧
「ふぅむ。妾の前で随分とでかい顔をしてくれる小娘よな」
物理的にも、そうでなくとも。
ぱらりと開いた円月の扇で口許を覆い、龍・月華は真紅の眼差しを上空へと滑らせる。そこには、超大国ゾルダートグラード『総統』ギガンティックの規格外の巨体が聳えていた。
実にでかい、と繰り返して、月華は続けた。
「じゃが、魔女の幼体というのは気になる話じゃな。……おぬしの力、妾のものにさせてもらおうか」
制服のスカートから覗く金毛妖狐の長い尾は、敵のユーベルコードを記録する。望まぬ
終焉を巻き戻してやり直す『エンドテイカー』の力があれば、超超巨大砲の攻撃とて怖れることはない。
扇を一振り構えて、娘は呵々と笑った。
「いかに強力な攻撃であっても、撃つ前に戻れば意味はなかろう。ふむふむ、中々に面白いものよな!」
彼女が撃てば月華が戻し、月華が仕掛ければ彼女が戻す。凡そ果てのない応酬だ。エンドテイカーの力を持つ者同士が正面切ってぶつかり合えば、こうなることは見えていた。それは即ち、この戦場において、攻撃力の高さなどは問題でないということでもある。
「ここに於いては力など無意味。何よりも肝要なるは、勝利を諦めないことであろう?」
たった一人、心に想う人のため、再び巡り合うその日のために猟兵となり、多元世界を渡る彼女の辞書に『諦める』という言葉はない。くつりと不敵に口角を上げ、妖狐は高らかに、そしてどこまでも傲慢に告げた。
「根気強さと情熱で、妾に勝てると思うな!」
かつては悪逆非道の限りを尽くし、残虐無比で知られた女。そのカリスマは大国の総統にも引けを取ることはない。勝利を欲し、何をおいても手に入れんとする貪欲さも、また然りである。
大成功
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アンゼリカ・レンブラント
ギガンティックメイガス……
発見から20年近く経って乗り手らしき者と会うとはな
少々感慨はあるが戦闘に集中だ
元より体躯の違いを恐れることもなければ利用することもないさ
真向勝負!さぁ幼女総統、女の太さの比べ合いといこうか
第六感を、そして長年の勝負勘を全開にして最大限敵の動きを把握
攻撃を掻い潜りつつダッシュで間合いを詰めていくよ
武器を投げつける→武器に乗って飛ぶことも活用し
懐に飛び込んでいこうか
飛び込む際に幼女キックが迫れば――
《クラッシュ成功!》無敵の体で迫る巨脚を逆に弾き、
至近距離に辿り着こう
さぁて間合いが詰まればね
後は離れると思うなよお嬢ちゃん
武器巨大化を発動し
相手の体格に負けないサイズの創世の斧剣を構築
何度も叩き込みダメージを重ねていこう
お姉さんの無敵の体は疑念を感じた時その力を失う
圧倒的体格差はその疑念を感じるに十分だろうか?
――否。お前さんの銀髪に金色の瞳、そしてエンドテイカーの力
これほど気合いが滾る相手もそうそういない
屈することはないのさ!
覇気全開にした必殺の一撃で勝利を掴み取るよ
「ギガンティックメイガス……か」
ウラル山脈に吹きつける冷たく乾いた風に、蜂蜜色の長い金糸が泳いでいた。岩肌を踏み締めて一人立ち、アンゼリカ・レンブラントは遠い記憶を手繰り寄せる。三塔戒律マギラントの下層に横たわる、巨大な骸にも似た
知識の鎧――その発見から実に二十年近くの時が経とうとしている今、その乗り手と思しき人物と相見えることになろうとは、事実は小説よりも奇なりというが本当らしい。
「……感慨はあるが、気を散らしている場合ではないな」
よそ見をしながら戦えるほど、生易しい相手ではないことは一目瞭然だ。よしとグローブの拳を打ち合わせて、娘は告げる。
「真向勝負! さぁ幼女総統、女の太さの比べ合いといこうか!」
昔から、どちらかといえば小柄な方だ。元より体躯の違いを利用することもないし、まして怖れることもない。いつだって彼女は鍛え抜いたその身一つを以て、自分より遥かに大きな敵を打ち砕いてきたのである。
空気の震え一つすらも感じ取れるほどに、精神を、感覚を限界まで研ぎ澄ませる。抉れるほどに力強く地を蹴り飛び出した先で、少女は青く輝く大剣を投擲した。サーフブレイドの要領でそれに飛び乗れば、幼女総統『ギガンティック』の塔の如き巨体がぐんぐん近づいてくる。ブーツの足元へ接近するその姿を捕えたか、軍帽の下に輝く金の瞳がぎろりと動いた。
往く手を阻むすべてのものを踏み砕く黒いヒールは広く地上に影を落とし、少女の頭上を翳らせる。しかし――。
「なんの!」
彼女にはすべてを跳ね返す鋼の肉体がある。そしてその無敵を彼女自身が疑わない限り、それは真実、無敵なのだ。
「!」
羽虫も同然の小さきものを踏み潰せずに、ギガンティックに動揺が走る。そのわずかの隙に巨体の前方へ回り込み、アンゼリカは剣を振り被る。
「後は離れると思うなよ、お嬢ちゃん」
間合いが詰まれば、あとは力較べ。その手の得物を巨大化し、一見すると乱雑に、けれど洗練された太刀筋で、何度も何度も叩き込んでいく。体格で敵わない相手には手数で勝負、定石中の定石だ。
(「お姉さんの無敵の体は、疑念を感じた時その力を失う」)
そう。
一度でも自信が揺るげば最期、彼女の身体は瞬く間に圧し潰されて跡形もなくなってしまうだろう。だがアリと人間にも等しいこの圧倒的な体格差を目の当たりにしても、アンゼリカは揺らがない。それどころかその身体には、尽きることのない勇気が、闘志が、沸沸と込み上げてくるばかりだ。
「銀髪。金色の瞳。そしてエンドテイカーの力! これほど気合いが滾る相手もそうはいないよ!」
怖気づくことも、屈することもない。ただその忌むべき力を挫くために、アンゼリカは巨大な敵に立ち向かう。気合一閃、高らかな鬨の声と共に叩きつけた刃と覇気は、幼き魔女の足に真一文字の傷を穿った。
大成功
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エルシェ・ノン
わーあ、こんなところでエンドテイカーの魔女に遭遇するとは思ってなかったなあ
故郷にある専用
甲冑って、マギラントの下層にあったやつ?
マギラントの下層領域というと、今の家族に縁があるとことでね
無視できないじゃん、無視できないじゃん、無視できないじゃん!
―なんて、子供みたいに地団太踏んでる場合じゃくって
自分に出来る事を考える
馬鹿みたいにぶっ放されるビームに物理的に対抗できる手段は殆ど持ち合わせちゃいない
でもビームはビーム、直線状に放たれるんだろ
なら間合いさえ十分なら見切れないこともない
あとはなるべく気取られないよう物陰に身を潜め、息を顰める
幸い
敵は大きい
こちとら射程にだけは自信があるんだ
おいで、ヒューピー
召喚するのは一番の相棒である眠りの星霊
要は撃たせなきゃいい
完全に寝落ちさせられなくっても構わない
僅かでも隙を生じさせられたら誰かの好機に繋がるだろうし、他の星霊を召喚する余地だって生まれる
ねえ、ギガンティック
君はどうしてこんな処にいるの?
僕達の物語はまだ続いているのかい…?
「わーあ、でっかい……」
彼女が一歩踏み出すたびに、世界は弾け、震撼する。
天へ突き立つ幼女の巨体を仰ぎ、エルシェ・ノンは茫然と呟いた。あまりにも捻りのない感想だが、この光景を目の当たりにして他に何を言えばいいのか分からなかった。
「こんなところでエンドテイカーの魔女に遭遇するとは思ってなかったなあ」
故郷にある吾輩専用の甲冑メイガスがあれば更に万全だが、なあに恐れるには足らぬ。
世界を渡る猟兵たちの誰もが視た兆しの中で、鈴のように、雷鳴のように吼えた少女の声が反響する。可憐なる巨躯とその言葉が一つの線となってつながったとき、脳裏に去来したのは『三塔戒律』マギラントの地下に横たわる巨大な
知識の鎧のことだった。
「……あの辺は、今の家族に縁があるとことでね」
元々、それほど深く首を突っ込む予定はなかった。
エンドブレイカーとして、猟兵として、やるべきことはやるにせよだ。
だが、そんなことを聞かされてしまったら――。
「無視できないじゃん。無視できないじゃん、無視できないじゃん!」
あんな一人ではどうしようもないものを目の前にしても、退くという選択肢が出てこない。騎士然とした出で立ちとは裏腹、白銀の甲冑の踵を子どものように踏み鳴らしてひとしきり憤り、男はすうと息を吸い込んだ。
(「……なんて、地団太踏んでる場合じゃなくって」)
落ち着いて考えろ、と、胸の内で繰り返す。既に大勢の猟兵たちがこの戦場に集っているとはいえ、彼らは統率の取れた軍隊ではないし、敵はあまりにも巨大だ。あの規格外の銃から放たれるビームの射程はまともに向き合うのが馬鹿らしくなるほど広く、少なくとも自分は物理的に対抗できる手段を持ち合わせていない。
(「でも、ビーム――ビームはビーム、だろ?」)
ビーム。即ち、光線。
ユーラシアの広大な大地を貫く光の一直線。ならばいかに射程は長くとも、向きさえ見切れば横方向に避けることは可能なはず。
仮定をいちいち検算している時間はない。あちらからすれば虫けらほどの身ではあるが、それでも細心の注意を払って距離を詰めていく。岩陰に身を潜めて、エルシェは青薔薇の剣に手を掛けた。
「おいで、ヒューピー」
細身の剣をタクトのように一振りすれば、呼ぶ声に応えて白い羊の姿をした星霊が一匹、ぴょこぴょこと飛び跳ね顕現する。眠りの星霊ヒュプノス、『ヒューピー』――長い冒険の日々を共に過ごしてきた、エルシェの一番の相棒だ。
「射程にだけは自信があるんだ」
半径約200キロは、美貌の術士の腕の中。そして幸いにして、的は十二分に大きい。
「要は撃たせなきゃいいってことだろう?」
完全に眠りに落とすことは叶わなくとも、わずかでも隙を生じさせることができればそれでいい。一人一人の力は小さく、ばらばらでも、そこにある好機に好機をつなぎ、終焉を仕留める――それが彼ら、エンドブレイカーのやり方だ。
剣を一振り、空を駆けていく羊の背中越しに狼の少女を見て、エルシェは努めて静かに問い掛ける。
「ねえ、ギガンティック。君はどうしてこんなところにいるの? 僕達の物語は――」
まだ、続いているのかい。
真っ直ぐにいずこかを目指し、歩む少女は答えない。だが見つめる男の胸には、確信めいた何かがあった。彼らの歩んだ道は物語の大いなる序章に過ぎず、謎多き世界の冒険はまだ始まったばかりなのだ――と。
大成功
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