獣人世界大戦⑧~ゼロワン・カンフーマスター
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「ああ、来てくれてありがとな。獣人前線の世界で起きてる戦争、「獣人世界大戦」のことはもう知ってるか? 早速だが行ってもらいてえところがある」
月形・千影(Bathory’s Embrace・f42476)は自らの呼びかけに応えた猟兵にそう礼を述べると、自らの見た予知を説明し始める。
「獣人前線の「人民租界」には
須弥山型都市……一つの山を改造した仙術サイバー都市が多数存在している。そこに「有頂天道人」っつーコンキスタドールが同時に現れて、同時制圧した。ここまでの意味はわかるな?」
コンキスタドール「有頂天道人」の肉体は「サイバー化」と「渾沌化」、二つのまるで異なる異形を有している、機械化義体の膂力と速度で繰り出す「サイバネ殺法」の使い手である。そして更には「渾沌化」のもたらす「自在に変化する肉体」をも余すところなく使いこなし、恐るべき
功夫を駆使するのだという。
「
手前らにやってほしいのは、この
須弥山型都市の山頂にある「
有頂天天蓋」へ行って、有頂天道人をぶちのめすことだ。こいつの持ってる二つの異形、「サイバー化」と「渾沌化」を利用した功夫殺法に対処すれば、攻略難易度は格段に下がる。待ち受ける超強敵を真っ正面から撃破できるぜ」
有頂天道人は機械化義体によってカンフー技を放ち敵を「undefined」によって継続ダメージを与えるサイバネ殺法、サイバー化した肉体と渾沌化した肉体を組み合わせた独自の「サイバー渾沌拳」、毎秒一回着弾地点から半径一メートル以内の全てを消滅させるという禁断の技「渾沌波動拳」という三つのユーベルコードを駆使して戦うという。
「有頂天道人はこの獣人前線だけじゃねえ、グリードオーシャンでいうところの「コンキスタドール」にしてサクラミラージュの根深いところとも関わりがあるみてえだ。そんでもって封神武侠界で
猟兵たちに痛い目見せた「渾沌」の力を使う。まあこのあたりを本人に問いただしても吐きゃしねえだろうが、放っといちゃおけねえってのだけはヒシヒシ伝わってくるぜ」
現地への転移は俺が受け持つからよ、と千影が言う。彼のグリモアと一体化したアイアンメイデンが開き、中には転送通路が広がっていた。
「それじゃあな。いっちょふざけた野郎をぶちのめしてきてくれよ、
猟兵?」
遊津
遊津です。獣人前線の戦争シナリオをお届けします。
ボス戦一章構成となっております。
当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
※プレイングボーナス:敵の「サイバー化」と「渾沌化」を利用した功夫殺法に対処する。
「★注意★」
敵はカンフーマスターですが、マスターはリアル格闘技に詳しくありません。なのでリアルな格闘技の技名を使用したプレイングに完全には対処できない可能性があります。あらかじめご了承ください。
「戦場について」
ド派手なネオンサイン輝く
須弥山型都市の山頂……
有頂天天蓋なる場所です。ネオンサインに彩られた山の頂と考えていただいて結構です。
太陽光が差す屋外であり、暗闇ではありません。拓けた無人の場所で有頂天道人は猟兵を待ち構えている為、戦闘の邪魔をするものは何もありませんが、同時に戦場に何もないため戦場にあるものを利用することも難しいでしょう。それでも何かを利用する場合、「何を」「どうやって使うか」明記していただけたら指定されたものがあったことにします。
同時に開けた場所であるため、大規模攻撃を行うことも空中戦を行うことも邪魔されることなく可能です。
「コンキスタドール「有頂天道人」について」
人民租界のマフィアを率いるサイバーカンフーマスターです。予兆によるとコンキスタドールであり、サクラミラージュとも関係が深いようですが、プレイングで何か聞いても何も答えることはないか、はぐらかします。
猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで攻撃した場合でも攻撃は行ってきます。
当シナリオのプレイング受付開始は、このシナリオが公開され次第即時となります。
シナリオの公開時間によっては上記タグやマスターページに受付中の表記がないことがありますが、公開されていればプレイングを送って下さって構いません。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
また、送られてきたプレイングの数によっては全員採用をお約束できない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『有頂天道人』
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POW : サイバネ殺法 undefined cyberne
【機械化義体でカンフー技】を放ち、命中した敵を【undefined】に包み継続ダメージを与える。自身が【中国拳法の構えを】していると威力アップ。
SPD : サイバー渾沌拳 undefined kungfu
【サイバー化した肉体】と【渾沌化した肉体】を組み合わせた独自の技能「【サイバー渾沌拳】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ : 渾沌波動弾 undefined aura
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【undefined】を放つ。発動後は中止不能。
👑11
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夜刀神・鏡介
身体の義体化と渾沌化……
どうも相反するように思えるが、それを使いこなすだけの実力を持ち合わせているという事か
利剣を抜いて、弐の型【朧月:周】の構え(指定技能:見切り+受け流し、心眼、早業、瞬間思考力、カウンター)
格闘ならば敵の攻撃手段は近接のみ……と思い込むのは危険だろう。2つの異形でその辺りを補っている可能性もある
どうあれ相手の出方が分からない今、下手に仕掛けるのは難しい
完全初見の渾沌拳とは言っても、受けに専念すればある程度は凌げるだろう。まずは防御を固めて動きを見定める
どうやら奴は、渾沌化した肉体を使う際、ほんの僅かに動きが鈍るようだ
尤も、そこを突くのも用意ではないが。狙わせてもらおうか
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『カカッ、来たか、猟兵よ。待っていたぞ』
須弥山型都市の山頂、
有頂天天蓋。有頂天道人はひときわ高い小鑓の上で猟兵を待ち受けていた。
はじめにたどり着いたのは、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。利剣【清祓】は既に彼の手の中、鞘からは抜き放たれている。
「あなたに問いたいことはいくつもあるが、きっとあなたは答えないのだろう。ならば刃を交わすのみ。――勝負だ、有頂天道人」
『カカッ、よくわかっている!そうやすやすとこちらの手の内を晒す気はない。では、こちらからゆくぞ』
その瞬間に、鏡介の視界から有頂天道人は消えた。否、それはサイバー化による超超高速運動。電脳が計算式から答えをはじき出すその速度で、鏡介の背後へと降り立ち、そして雄たけびを上げる。それはまるで、鏡介に『己は此処に居るぞ』と教えるかのように。
『――ィイィィヤァアアアアアッ!!』
声と共に放たれた回し蹴りを、鏡介は見切って利剣で受け流す。無論、電脳の思考速度で放たれた高速の蹴打を「見る」ことなど不可能だ。眼球は何の情報も映し出しはしないし、故に脳にも情報は送られない。それから筋肉を動かす信号を送って攻撃を避けることなど不可能の領域。――鏡介の構え【
弐の型【
朧月:周】】によって、自身に放たれた攻撃をこちらも同じ「思考速度の速さで」自動的に受け流したに過ぎない。それはつまり体に無理矢理身に着けた究極の「反射神経」の賜物。鏡介の、何千何万回という同じ動作の繰り返し、反復動作の鍛練あってこそ成し得たものである。
『カカ、今のを躱すか。その頭、柘榴と割れるかと思っておったがそうでもない。やはりここまでくる猟兵というもの技は、練られている!』
有頂天道人の声は心なしか嬉しそうであった。その声と同時に叩き込まれる突きをいなしながら、鏡介は少しずつ有頂天道人から距離を取る。
(身体の義体化と渾沌化……どうも相反するように思えるが、それを使いこなすだけの実力を持ち合わせているということか……ッ!)
ひたすら利剣によって攻撃を流す受けの形に回りながら格闘の距離、至近距離から少しずつ距離を取っていく鏡介だったが、勿論それが最善の策だと思っているわけではない。攻撃手段が近接のみだと思い込むのは危険が過ぎると気づいている。二つの異形を使いこなす敵が、射程という格闘戦の弱点を補っている可能性には最初から思い至っているからだ。それでも今は、防御を固めて有頂天道人の動きを見定める必要があった。
(どうあれ下手に仕掛けるのは――くそ、本当に難しいな……!)
「カカカッ!どうだ、そろそろ反撃の時ではないのか!来ないのならばさらに詰めるまでだぞ!」
有頂天道人の、虎の上半身が大きく膨れ上がったように見えた。いや、見えたのではない。質量を無視する「渾沌化」によって、実際に肉体を膨れさせたのだ。そこから放たれる、虎の――ひとつひとつが鋼の弾丸と同じ硬さを有した、毛針の一斉射撃!
「く……!」
広範囲の攻撃には刀一振りだけでは弾き返せないのを鏡介は理解する。しかし同時に、鏡介は光明を得た。
どのみち無傷で帰れるとは思っていない。返せる範囲の鋼鉄の毛針だけを受け流し、それ以外の攻撃は甘んじて受ける。鋼鉄の針は鏡介の急所以外を刺し貫いた。
(今の違和感。恐らく奴は、サイバー化の攻撃と渾沌化の攻撃を切り替える時に、ほんの僅かだが動きが鈍る――尤も、そこを突くのも容易ではないだろうが)
「狙わせてもらおうか……!」
『カカ!攻めてくる気になったか、猟兵よ!』
鏡介は大地を蹴る。空中に飛んだということは、つまりそこから着地するまでにできる動きは限られるということだ。その隙を見逃す有頂天道人であろうか、いや、ない!
ゆえに有頂天道人は動いた。毛をぶわりと逆立てさせ、渾沌化した肉体によって巨大に膨れ上がる。そこからサイバー化した肉体によって繰り出される高速の拳が鏡介の腹を突き破るまで――そこに、有頂天道人にも意識しない僅かな隙、動きの鈍化が起こる。それを鏡介は見越していた。だからこそ動きの限られる「飛ぶ」という行動をした――最初から、空中で体を捻るつもりで飛んだのだ。これまでの何万回もの鍛錬と、そして実戦で培われた勝負勘。鏡介の体はねじれて落下する。鏡介の肉体は有頂天道人の拳を躱し、真っ直ぐに突き出された利剣がクロスカウンターの如くに道人の腕の腱を切り裂く!
地面に着地するとすぐに体勢を立て直し、鏡介は利剣を有頂天道人へと向ける。
「俺の無様な挑発に乗ってくれて助かったよ。観察の時間は終わった」
『……カカッ!!』
冷徹に徹してそう告げる鏡介へと、有頂天道人は獰猛な笑みを返すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
ここで貴方を倒さないといけないね…!
と敵の動きに注意しながら戦闘態勢に入る
これが機械化した力か…!
サイバー化に対する対策は常に衝撃波を纏ったオーラ防御で防御しながらクイックドロウの要領で音響弾で反撃
まさに渾沌…か!
渾沌化に対しては視力で敵の動きを見ながら推力移動で回避しながら衝撃波を纏った矢弾の雨を放つ
IT'S SHOWTIME!騎士の王…アリオス!
UCを発動してアリオスを呼び出す
アリオスは未来視で敵の動きを見て神速移動で敵の背後に回り込み条理貫通撃を放ち攻撃する
ごらぁ!吹き飛べ!
私も神罰を纏った拳で敵を殴り飛ばした
まだまだ油断出来ないね!
私は拳を構えてアリオスと共に敵を睨みつけた
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「第一の戦線、その中でも貴方が一番の難敵とみた。ならば私は、なんとしてもここで貴方を倒さないといけないね……!」
エリュファシオン・アルティウス(“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)は有頂天道人へそう言葉を投げかける。言の葉を紡ぎながらも、有頂天道人の動きから彼女が目を離すことはない。
『カカッ、どうだろうな? 誰が一番の難敵であるかは終わってみなければわからん。そも――』
――ここで俺がおぬしを殺してしまえば、おぬしの戦いは此処で終わりであろう?
「……っ!!」
見ていた。エリュファシオンは確かに有頂天道人から目を離さなかった。だというのに、既に有頂天道人は今、エリュファシオンの前から背後にいて。そしてかろうじて貫手であると認識できる攻撃でもって彼女の心の像を抉ろうとしていた。
(速い――!これが、機械化義体の力か……!)
それは思考速度と同じ速さで動くことを可能とするサイバー化した肉体による移動。その高速移動は、如何にエリュファシオンのユーベルコード級に磨き抜かれた視力であってしても「目で追う」ことはもはや不可能だ。眼球が動く速さよりも思考速度の方が速いのだから。心臓を貫かれる直前、有頂天道人の貫手はバヂリという音と共に弾き返される。こういうこともあろうかと、道人に話しかける前からエリュファシオンは衝撃波を纏った防護膜によって自身の体を覆っていた。それがなければ、いかに生命の埒外であるがゆえに死があるのかどうかも不明な猟兵と言えど、心臓を抉られていたのは想像に難くない。そのまま反射的に手にしていたシャドウ・ガンナイフを有頂天道人のいる方向へと向け。音響弾を放つ。
『ふぅむ、鉛弾か。銀の弾丸でなくていいのか?』
そう嘯きながら、有頂天道人はその弾丸を避けもしなかった。その肉の身がゴム風船ででもあるかの如く伸びて、弾丸は
有頂天道人の体に空いた穴から抜けていく。
「私はヴァンパイアハンターでもなければ、人狼狩りでもないのでね?」
(なんて非常識な体だ……まさに渾沌、か……!)
『カカッ、道理!おぬしらは猟兵であるからな!故に油断は出来ん!』
再びサイバー化した肉体による思考速度の高速移動によって、有頂天道人はエリュファシオンにそのままぶつかってくる――エリュファシオンは瞬間、何が起きたのかわからなかった。
「っくあああっ
……!?」
自分の体が、大地に伏せている。確かに思考速度の高速によってぶつかれば、トラックに撥ねられたよりも凄惨な事態になるだろう。だが、それだけではない。敵の動きを見ることかなわない。移動など、回避などできなかった。今の攻撃の正体が、わからない!
『カカッ、理解できぬか? 理解できぬなら仕方がない。理解できぬままに、死ね』
「……そうは、いかない――“IT'S SHOWTIME!騎士の王……アリオス!”」
エリュファシオンはユーベルコードを発動させる。それは騎士王を呼ぶ力。獅子の仮面をつけた赤髪の王。白銀の鎧に身を包み、聖剣と聖盾を携えた、騎士の中の王アリオス!
『ほう、それがおぬしの騎士というわけか。ならばともども死ぬがいい』
再び襲い来る高速移動。だが騎士王アリオスには未来視の力がある。有頂天道人の思考能力の速さの動きは見えずとも、このままでいれば自分がどうなるかの未来だけはありありと見える。騎士王アリオスはエリュファシオンを抱きかかえ、思考速度を超える速度――神速でもって有頂天道人よりも早く、その背後へと回り込む。
『カカ、それでどうする? このまま延々と『相手の背後を取り続ける』遊びでも続けるか? 俺はそれも可能であるがな――つまらん。くだらん。敵の背後を取れたことで喜ぶなど、三流以下のやることよ』
騎士王アリオスは有頂天道人の挑発には乗らない。エリュファシオンをその胸に抱いたまま、聖剣から条理を貫通する攻撃を放ち、論理的に有頂天道人を斬ろうとする。エリュファシオンは騎士王アリオスに抱かれたままでシャドウ・ガンナイフから矢弾を雨霰の如く降り注がせて援護射撃とした。この弾丸の雨を避けながら、尚もアリオスの条理貫通攻撃を避けることなど不可能。――条理とはすなわち、物事がそうならなければならないという筋道。避ける、防ぐ、という真っ当な行動そのものを貫通して、騎士王の刃は有頂天道人を貫く!
『ほほう、なるほどなるほど?』
斬られながらも有頂天道人はにやりと笑う。どうやら騎士王アリオスの条理貫通撃には興味を抱いたらしい。
「ごらぁ!吹き飛べ!」
続いてアリオスの腕の中から飛び出してきたエリュファシオンの、神罰を纏った拳が有頂天道人の横っ面を確かに張り飛ばす――そちらはまた、ゴムのように伸びた渾沌化の肉体によって丸め込まれてしまったが。
(アリオスの力なら渾沌化の攻撃透過も条理貫通によってキャンセルすることは可能、だけど――)
「まだまだ油断できないね!」
一発、まともにこの手で殴ってやらないと気が済まない、気がする。
エリュファシオンは拳を構え、アリオスと共に有頂天道人を睨みつけるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メイティナ・ヴァーンフォルカ
【戦闘開始です】
おう、やろうぜメイティナさん!
私と裕士は戦闘態勢をとる
【こういう動きするクソゲーやり込んでいるので…】
渾沌化に対しては心眼と気配感知で敵の腕や足の動きを見ながら剣でシャドウパリィして攻撃を弾く(怪力を使用する)
これが数の暴力だぜ!
裕士が素早く凍結攻撃のエネルギー弾を放ち攻撃(弾道計算もしている)
【動きは速いですが何とかなります】
サイバー化に対しては心眼で敵の動きを見ながら推力移動で回避しながら剣でシャドウパリィする
【星の龍…アステール!】
星の龍に変身して敵の懐に飛び込んで星導拳で殴り飛ばした
天誅ぅぅぅ!
指定UCの効果でUCクレセント・スラッシャー・天誅を発動して敵を蹴り飛ばした
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神は
須弥山型都市山頂、
有頂天天蓋へと降り立った。
メイティナ・ヴァーンフォルカ(狂人と勘違いされた神がクソゲーハンターとなる話・f41948)である。その隣には謎の男・裕士が彼女を守るように立っている。
[さぁ、戦闘開始です]
「おう、やろうぜメイティナさん!」
『カカ、血気盛んなことで結構。それでははじめるとしようか!』
二人の前に背を見せて立っていた有頂天道人が笑い声をあげる。そして、消えた。
――さて。メイティナは普段喋らない。会話は基本的に文字が書かれた看板でする。だが、この戦いにおいて看板を掲げるだとか、看板に文字を書くだとか、そんな暇は発生しない。真っ当な人間ならば普通の戦いの最中にそんなことをしていたら死ぬ。生命の埒外である猟兵であっても、片手に看板を片手にペンを持って文字を書いている状態では攻撃も防御もできやしない。それを可能としているのはメイティナの力がゆえであるが、今回に限って言えば――看板を使う意思疎通は行われなかった。メイティナの言葉は裕士の脳内に直接注ぎ込まれた。
なぜならば。単純に有頂天道人がそうでもしなければいけない強敵であったからに他ならない。
有頂天道人のサイバー化した機械化義体は、思考速度――ニューロンと同じ速さの移動を可能とする。有頂天道人はその超超高速でもって、真っ直ぐにメイティナを狙った。メイティナと裕士、二人の組み合わせの上で要を担っているのがメイティナの方であるとその慧眼ですぐに見抜いたからである。以下に神たるメイティナであろうと、同じスピードの世界の上に立たなければ目で見て躱すことは不可能だ。だからメイティナは心の眼に頼った。極限まで洗練された未来予知、あるいは気配感知に近い。推力移動によって回避し、手にしていた「終断神剣 アナザー・ベイン」を振るう。
[動きは速いですが何とかなります]
渾沌化の能力によって鋼鉄化していた有頂天道人の貫手がアナザー・べインによって弾かれる。
――例えば。一般的な人間――地球人類の成人男性であれば、停止しているトラックに自らぶつかっていった程度では特に傷も負わない。トラックが停止しているからだ。これがトラックが高速で動いていれば動いているほど、ぶつかった時の衝撃は致死のものになる。握手の速度で手がぶつかっても手が破壊されないのは、両者の手の動きがゆっくりだからだ。思考速度の高速で振るわれた有頂天道人の貫手は、心臓を抉り出す銃弾よりも早かった、それをシャドウパリィで振り弾くことが可能だったのは、メイティナの持っている神としての剛力によるものが大きい。
すぐさま有頂天道人は全身の肉体を液体金属のような状態に変え、蛇のように襲い掛かってくる。裕士は凍結の魔力を纏わせた弾道計算済みのエネルギー弾を放って阻害する。
「オラァ!!これが数の暴力だぜ!!」
だが、エネルギー弾を強かに浴びせられた有頂天道人の肉体は凍り付きながらも大波のように二人を飲み込もうとする、メイティナは腕も足もない有頂天道人の肉体に向かってではなく、地面に剣を叩きつけてその衝撃でその場から離脱する。
[大丈夫です。こういう動きするクソゲーやり込んでいるので……]
[ですが]
[あの状態では剣も弾丸も無意味。攻撃をかわすことは出来ますが、有効打は与えられません]
[なので]
[殴り飛ばせる状態になりましょう――“星の龍…アステール!”]
メイティナは己のユーベルコード【
星導覚醒・星龍アステール】を発動させる。
超越した力と速度を持つ黄金の龍のオーラを纏った姿、翼の生えた星龍形態に変身し、渾沌化の力で不定形の肉体となった有頂天道人へとぶつかっていくと、星導拳によってその不定形の肉体を殴り飛ばす。
そして、【
星導覚醒・星龍アステール】の力はそれだけではない、隣に従える男・裕士にそのままユーベルコードを使用させる。そのユーベルコードの名は【クレセント・スラッシャー・
天誅】。クソゲーをやりまくった結果裕士が身に着けたユーベルコード、速度マッハ5.0以上の極音速蹴りと迫真の防御無視アッパー。速度マッハ5.0以上の極音速蹴りは思考速度の速さに追いつき、有頂天道人を思い切り蹴り飛ばす!!
「天……誅ぅぅぅ!」
須弥山型都市の山中に、裕士のその雄叫びが響き渡ったのであった。
大成功
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バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎
サイバーであり渾沌でありカンフーでもあるコンキスタドール!
情報多積載であります!
それでいて不具合なく使いこなすとは、実に恐るべき功夫デスネー!
デスガ、ワタシも負けてはおりマセーン!
メイドでありサイボーグでありソルジャーでもある猟兵!
いざ、参りマース!
有頂天に先制攻撃は無いようなので、こちらから先手を打ちマショー!
滑走靴による空中機動から強襲を仕掛けマース!
「六式武装展開、炎の番!」
如何に優れた中国拳法といえど、粘着性の炎は捌き切れないと見込んでのファイアー!
対空カンフー技に被弾しないよう警戒して、滑空回避運動をしながらじっくり焼却しマース!
サイバネ殺法、破れたり! であります!
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須弥山型都市山頂、
有頂天天蓋。
強敵・難敵のいるところ、戦いのあるところ、乞われたのならば奴は――その女はやってくる!!
すなわち、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)である!
「いざ、いざいざいざ参りマース!!――六式武装展開、炎の番!」
陸海空対応型滑走靴によって空中を滑り、バルタンは有頂天道人へ、挨拶もなく仕掛ける!!今日日ネオサイタマのニンジャであってもアイサツは欠かさないというのに!
展開するは内蔵兵器の【
火炎放射器】、特別調合された粘着性を持つ火焔が有頂天道人を襲う!
『カカ、よくわかっておる!俺を殺そうと思うならば、真っ向にやりあうは不利であるとな!』
以下に中国拳法を修めた有頂天道人と雖も、粘着性の炎を捌ききれないと見込んでの
火炎放射であった。事実有頂天道人の全身は粘つく炎に纏わりつかれ、その炎を消し止められないままだ。消し止められないまま――炎に焼かれながら、しかし涼しい顔で仆歩の構えを取る。
『イィィィヤアアアアアアアアッ!!』
有頂天道人の裂帛と共に、その姿は消えた――否、否否否!サイボーグであるバルタンの高度演算デバイスは捉えていた。それは、思考速度と同じ超超高速での移動!サイバー化による機械化義体の身であるからこそ可能な行動、そしてその手の掌底は中国拳法のそれ!バルタンの高度演算デバイスは答えを導き出す、これを喰らえば【undefined】が発動すると!だからこそ、滑走靴によって滑空回避し計算できる敵の攻撃の効果範囲外へと逃れる!
「ふむ、サイバーであり渾沌でありカンフーでもあるコンキスタドール!その御身、実に情報過積載であります!それを不具合なく使いこなすとは、実に恐るべき功夫デスネー!」
『カカッ、打たせてくれなかった身で何を言うか』
「そう、ワタシも負けてはおりマセーン!メイドでもありサイボーグでもありソルジャーでもある猟兵!……ですが、一言単純な疑問を口にしても?」
――ワタシのユーベルコード【
火炎放射器】は、間違いなくアナタに先制した。アナタはその速度を以てなお、先制攻撃を行ってこなかったのデス。
「我々猟兵に思わせぶりな予兆をみせたのですから、難敵強敵だと思っていましたが、もしかしてアナタ自身の実力はこの戦争において……大したこと、ないのデハ?」
『カッ、カカカカカカッ!!』
有頂天道人の哄笑と共に、殺気が膨れ上がる。だがバルタンは臆しない、なぜなら相手のその反応こそが、バルタンに答えを告げているにも等しいのだから!
「ならば先に告げておきましょう、――「サイバネ殺法、破れたり!」であります!」
再びバルタンの【
火炎放射器】が火を噴いた。粘着性の炎は有頂天道人を飲み込み、じっくりと焼却していく。炎の塊と化した思考速度で動く有頂天道人の蹴打が、バルタンへと放たれた――!
大成功
🔵🔵🔵
紡刈・縫助
うわっ、やべー虎だ!
でもまあ壁が高けりゃ高いほど乗り越えたくなっちゃうもんスよね!男としては!
コンコン狐の大軍隊!最大量でドーン!!
登場と同時に全員で豪炎噴射!
広がれ広がれ~!一回で消されねーようにバラバラに走れ~!
そんで火を噴いたりして攻撃しな!オレも翻扇で吹っ飛ばしたり焔紅葉で後押しするぜ!
ってやっててもマー最後にはみんな消されちゃうかもな!
でもそれが狙い目ってやつなんスよ!
実はここまで指揮してたオレは、オレが化術で変化させてた狐!
オレ自身は空気に化けて上空にいたのさあ!最初の炎は攻撃兼目くらましだったってわけっスよ!
勝ちを確信した瞬間が一番の隙!金秋玄雲に乗って殴る!と見せかけて燃やす!
●
(うっわ、うわうわ、やべー虎だ!)
紡刈・縫助(金狐照天・f17182)は有頂天道人の前に姿を見せぬまま、その強力さを本能で感じ取る。
だが縫助もまた猟兵である。勝ち目のない戦いを挑まないつもりならそもそもこの場所には来ていないし、内心ではこう考えているのだ。
(でもまあ、壁が高けりゃ高いほど乗り越えたくなっちゃうもんスよね!男としては!)
「さあて、そんじゃーぐだぐだした挨拶は抜きにして、“湧いて出た出た、狐の乱!”っとぉ!」
【
コンコン狐の大軍隊!】。十万体のキツネの霊が
有頂天天蓋に現れ、そして登場と同時に有頂天道人に向かって業炎を噴射する。
『カカッ、狐が来たか!
虎の威を
狩るか? 面白い!』
「広がれ広がれ~!!一回で消されねーようにバラバラに走れ~!!」
縫助は城をも吹き飛ばすという強風を吹かせる
翻扇を仰いで狐たちの撒き散らした炎を煽り、火花を炎と化す
焔紅葉を用いてさらに炎の渦を作り出す。
『ふうむ、こうも狐が多いと厄介。ならばこうだ』
有頂天道人は炎の中で両手を合わせ、そして手首と手首を合わせ――気を練る。練り上げられたのは渾沌波動弾、
有頂天天蓋に【undefined】が放たれる。こうなってはもう止まらない、着弾地点から【undefined】は半径1メートル以内の全てを侵蝕し、キツネの霊は毎秒ごと放たれるに【undefined】によって消えていく――。
『逃げぬのか? 全力で逃げればおぬしだけなら助からんこともあるまい。渾沌波動弾は百秒間は俺の意思をもってしても消せんぞ』
「アハハッ!そういうわけにもいかないんでね、
オレはこのまま消えるよ」
そう言って縫助の姿が【undefined】に飲み込まれて消滅していく。有頂天道人はつまらなさそうに背を向けた。
『下らん。所詮はただの狐であったか』
しかし、その上空から何かの――殺気すら放たぬ何かの存在を感じ、有頂天道人は身を固める。
光速よりも早く金箔の散った黒雲、
金秋玄雲が飛来し、有頂天道人の身に一撃を加える――否、その身に突き刺さったのは拳ではない。縫助の放った炎だ。
カラクリはこうである。最初から有頂天道人に襲い掛かった縫助は本物ではなく、化術によって変化させていた呼び出したキツネの霊の一体であった。走り回って炎を噴いていたキツネが、実は十万体でなく九万九千九百九十九体だったとしても見誤って仕方がない。本物の縫助といえば、空気に化けて上空にいた。百秒間、渾沌波動弾が【undefined】を放ち続けてもまだ届かない上空に!
「勝ちを確信した瞬間こそが一番の隙ってね!」
『カカッ、下らんといったのは取り消そう』
金秋玄雲に乗った縫助の前で、有頂天道人は炎に巻かれながら凄惨な笑みを浮かべた――。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
さて、難敵だね
よくもまぁ「サイバー化」と「渾沌化」って方向性の違う強化二つを安定させられるもんだ
大した功夫だな
剛と柔、二つの体質の使い分けが脅威だ
卓越した功夫でその切り替えのタイミングを掴ませないのがポイントなのだろう
刀を柔らかく握り、全身をしなやかに脱力した「猫柳」の構えで守勢に回る
サイバネ殺法を柔らかく、混沌化に対してはしなやかな剣捌きで【受け流し】に徹する
狙う【見切り】は二つの強化から放たれる技の切り替えの一瞬
そこにサイバー化と混沌化、その境目の正中線を目掛けて全力唐竹割を【覇気、切断、早業】で振り下ろしに行こう
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「……さて、難敵だな」
神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は愛刀「銀河一文字」を手に、ゆらりと有頂天道人の前へと現れた。
「よくもまぁ「サイバー化」と「渾沌化」なんて方向性の違う強化二つを安定させられるもんだ。大した功夫だな」
『カカッ、千年修行を積み神仙の境地へ到れば如何な異形と雖も身に馴染むというものよ。ではゆくぞ、若造!』
恭二郎の前で、有頂天道人の姿が「消えた」。否、消えてはいない。刹那の後に、渾沌化によって鋼鉄と化した有頂天道人の貫手が恭二郎の心の臓を穿ち抜かんと襲い来る。それはサイバー化による機械化義体の肉体によってようやく可能となった、思考速度の速さで動く事を可能とする超超高速の移動。そこから放たれる鋼鉄の貫手を、恭二郎はしかし銀河一文字を柔らかく握って全身をしなやかに脱力させた【
猫柳】の構えによって受け流す。有頂天道人のサイバー化による膂力での思考速度移動に対しては柔らかく。渾沌化によって次々に形状・材質を変えて本質を見切らせない手足から来る貫手、掌底、蹴打をしなやかな剣捌きで受け流し続ける恭二郎。
(「剛」の「サイバー化」と「柔」の「渾沌化」。二つの体質の使い分けが脅威、卓越した功夫でその切り替えのタイミングを掴ませないのがポイントなのだろうと思っていたが――使い分けなんてものじゃない、同時に使っている……!)
恭二郎は有頂天道人への脅威度を見直す。狙いすましていた技の「切り替え」はこのままでは起こらない。切り替えることなく、有頂天道人が同時に二つの異形を使用しているからだ。
「ならば、無理矢理にでも勝機を作り出すまでッ!」
幾度も刀によって受け流し続けるうちに、攻撃自体のパターンは読めていた。だからこそ、自分が一番「喰らっても致命傷ではない」と判断した掌底を敢えて受ける。血飛沫が飛び散り、渾沌化した鋼の掌底が――恭二郎の腹を突き破る。
恭二郎はその有頂天道人の手を飲み込んだ腹部に、全身の
風桜子を一点集中させる!
『ヌゥ
……!!』
風桜子の力によって有頂天道人の腕は腹部の傷そのものにがっちりと拘束され、恭二郎の体から抜けなくなる。ぼたぼたと地面が恭二郎の血で汚れるが、そんなものは双方構いもしていない。
「――サイバー化による超高速移動は、封じたぞ。ならばどうする?」
『無論、もうひとつの力を用いるまでよ』
有頂天道人の肉体がばらりとほどける。虎獣人の姿を形作っていた理が、渾沌化の力によって一瞬消え、そしてトカゲの尻尾切りのように恭二郎の腹にめり込んで取れなくなっていた腕を切り離し、新たな腕を生やす。そうして再び思考速度での超高速移動を行うために脚部をサイバー化する――その瞬間こそが、本当に恭二郎が狙っていた刹那であった。
サイバー化と渾沌化の境目の正中線が、そこに出来ていた。覇道を行くものの覇気を纏った銀河一文字が、その正中線を真っ直ぐに斬り下ろす――有頂天道人の肉体ごと、真っ二つに!!
『カカッ、見事だ』
「まだやるかい?」
『いいや。
この俺はさすがにここまでだ。他の
須弥山型都市を制圧している
別の俺に後を託そう』
そういって、真っ二つに切り離された有頂天道人の肉体は自らの渾沌に飲まれて消えていく。
「すべて、すべて解放するさ。全部のお前さんを斃してな」
そう言って、恭二郎は銀河一文字の血を払うと、
有頂天天蓋から立ち去ってゆくのであった。
大成功
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