獣人世界大戦④~春眠、暁月を願わず
●第一戦線
ロシアの首都・サンクトペテルブルク。
この地を攻略すべく、クロックワーク・ヴィクトリアの新生『狂気艦隊』が海を渡っている。
「今回の戦いは宇宙的海戦よ!」
花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)は、びしっと指先を地図に突きつけた。
海戦は理解できるが、宇宙という単語は似つかわしくない。しかし彼女がそう語ったのには理由がある。
「この海戦を制さなければ、クロックワーク・ヴィクトリア軍の大陸侵攻が阻止できないのよ。でもね、この狂気艦隊は強力な『UDCアースの邪神』の守護を受けているみたいなの!」
つまり、これを撃破しない限り艦隊を沈めることはできない。
相手は宇宙の力を操る邪神であり、此度はただ姿を見せるだけで深刻な狂気を誘発するほどの危険なものとなっている。具体的に語るならば『ここではないどこかへ行きたい』あるいは『宇宙の彼方に消えてしまいたい』といった宇宙オカルト狂気が与えられるようだ。
「そんなわけで宇宙的な海戦ってことなの。みんな、心して討伐に挑みましょう!」
禰々子は自分の得物であるバス停を強く握り、応援と信頼を込めた言葉を仲間たちに送った。
●ほしのよのゆめ
「はるちゃんさまは、ずっときみのおともだち。むずかしいことはテラフォーミングしてあげる」
ふわふわとした微笑みを浮かべ、少女のかたちをした邪神は遠くを見つめる。
通称『はるちゃんさま』は、何処か焦点の合っていないようなラズベリー色の瞳をぱちぱちと瞬かせた。
「うちゅうはずっとよるだから、あさはこないの」
だいじょうぶ、こわくないから。
ほしのいんせきだってくだけてちって、きらきらひかってきれいなの。
ねえ、ねえ、だからあそぼう。たくさん、たくさん、あそんであげる。
そんなことを虚空に向かって語りかける少女のようなものは、誰かを待ち続けているかのようだが――。
今の彼女は邪神として、狂気艦隊に加護を与えるだけの存在となっていた。
犬塚ひなこ
こちらは『獣人世界大戦』
④サンクトペテルブルク沖海戦、艦隊に潜む邪神のシナリオです。
●👿『としでんせつ・はるちゃんさま』
天真爛漫な少女……のように見える都市伝説的な邪神。
学生のような見た目からは普通の女の子に思えますが、OPのようなことをずっと語るだけで会話が噛み合いません。常に狂気を齎すオーラを放っているので油断は禁物です。
●プレイングボーナス
『邪神のもたらす狂気に耐えて戦う』
邪神は「ここではないどこかへ行きたい」あるいは「宇宙の彼方に消えてしまいたい」といった空虚な思いを皆様に与えてきます。その狂気めいた感情に抵抗しながら戦って倒してください。
第1章 ボス戦
『としでんせつ・はるちゃんさま』
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POW : いきなりテラフォーミングけいかく
【裸足の爪先】から、対象の【「ここじゃないどこかへ行きたい」】という願いを叶える【一万Kの核融合の熱】を創造する。[一万Kの核融合の熱]をうまく使わないと願いは叶わない。
SPD : みちびいてグランドクロス
【お別れの言葉】を向けた対象に、【一億Vの局所的落雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : はるのよのゆめ
【一兆光年外宇宙電波】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【分子結合崩壊】の状態異常を与える。
👑11
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エドワルダ・ウッドストック
◎
宇宙的邪神、はるちゃんさま。
恐るべき脅威ですわね……されど、屈する訳にはいきませんの。
狂気艦隊を沈めるため、気炎万丈に参りますわ!
狂気のオーラには単純に気力を振り絞って耐えますわ。
こういった手合いには、泥臭く気合と根性が適切だと経験しておりますの。
しかし、核融合の熱だの分子結合崩壊だの、とんでもないですわね……!
艦内設備を遮蔽に用いて、反撃の機会を伺い……お別れの言葉を待ちますわ。
何故なら、それだけが対処できる攻撃ですもの!
みちびいてグランドクロスに併せてUC発動!
わたくし自身が稲妻になることで、局所的落雷を辿って敵の懐へ飛び込み殴りかかりますわ!
勝手なテラフォーミングなど、やめなさいっ!
コッペリウス・ソムヌス
狂気艦隊に、宇宙的海戦…
不思議な単語を多く聞くなぁ
UDCアースの邪神を
とりあえず相手取れば良さそうかな
カミサマ同士であそぼうか
ここではないどこかへ…は、旅行的な意味合いかな
帰る場所を持ってるから、
ヒトはそんな気持ちを抱くのかと思ってた
此処も何処かもオレからしてみれば大差ないし
足元に影ある其れが、オレにとっての居場所だなぁ
飛ばせるようなら飛ばしてもいいよ
いま目の前のキミと遊んでる行為が
今あるオレにとっては此処だから
遊びを途中でやめずに戻ってはくるし
UC陽炎の燃える頁も手に取って
願いを叶える熱を創造するの、
太陽同士のようで興味深いよね
暁月を願わない春の眠り、もう暫し続けようか
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
やや、はるちゃんさまとは何やらシンパシーを感じる名前なのでっす!
ここではないどこか、宇宙の彼方、でっすかー。
中々に不思議な感覚なのでっす!
どこに行こうと藍ちゃんくんは藍ちゃんくん!
藍ちゃんくんある所、藍ちゃんくんのステージでっすので!
狂気耐性で耐えつつも、藍ちゃんくんだけでは抱かない空虚な感覚さえも楽しんじゃいましょう!
歌のインスピレーションにしちゃうのでっす!
宇宙の彼方であろうとも、宇宙の彼方からであろうとも歌は響くのでっす!
一万Kの核融合の熱よりもなお熱い藍ちゃんくんの愛と希望の世界にはるちゃんさまを核融合ごと包み込み、藍ちゃんくんに届かないようにしちゃうのでっす!
オニバス・ビロウ
【アドリブ◎】
宇宙はずっと夜、か
ならば俺が返す言葉は…『ごらん、やがてとばりが晴れるよ』
守護者の白服にかけて
力を持たぬ無辜の民の守護が己の天命である故に、俺は望んでこの地に来ている
仔狐と揃いの白の
赫灼は霊的防護が齎されているし、
魔除けの桜鈴も花桃に預けて…うん、そうやって戯れに遊ぼうとするのは止めような
…ともあれ花桃の守護は万全である
俺の方?守るべきものがある守護者は無敵だが?
…んん、いや、戯れはともかく
神の狂気が闇に伝播するのであるならば、陽の光をぶつけるが必定
全て崩れよと歌う声とて、光を崩すことなど出来ぬ
覚悟せよ。その歌声も、その首も。ただ刎落すのみである
●宇宙の香りはラズベリー
――宇宙的邪神。
彼女を示すに相応しい言葉は何とも奇妙なものだ。エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は目の前の敵に相対しながら、その姿をしかと瞳に映した。
「……はるちゃんさま」
その名を呼ぶと、少女の姿をした邪神は瞼を幾度か瞬かせる。
茫洋としたラズベリー色の瞳には何も映っていないかのように思えた。しかし、それは彼女が宿す宇宙の力を示している証でもあるのだろう。エドワルダは身構え、警戒を強める。
「恐るべき脅威ですわね……されど、屈する訳にはいきませんの」
狂気艦隊を沈めるため。
どれほどの相手であっても、この戦いに勝つことが猟兵としての役目であり使命だ。同様に戦場に訪れていた紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は元気よくいつもの言葉を紡ぐ。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
「はるちゃんさまだよ」
「やや、はるちゃんさまとは何やらシンパシーを感じる名前なのでっす!」
「宇宙はずっと夜、か」
藍が邪神に笑みを向ける中、オニバス・ビロウ(花冠・f19687)は先程に聞いた言葉を思い返す。
確かに考えようによってはそうだ。
夜が明けることを厭っているゆえにあのようなことを語るのだろうか。邪神としての考えはわからないが、オニバスにとっては明けない夜の方が問題だ。
それならば自分が返す言葉は、と考えたオニバスはそっと告げる。
「――『ごらん、やがてとばりが晴れるよ』」
「…………」
すると、はるちゃんさまは無言のままオニバスを見つめてきた。その視線の意味まではわからないが何かしら反応を返してきたことは間違いない。
コッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)も敵を見つめ、なるほどね、と言葉にする。
「狂気艦隊に、宇宙的海戦……不思議な単語を多く聞くなぁ」
UDCアースの邪神が関与しているならばコッペリウスとしても興味が尽きないもの。とりあえず相手取れば勝機も見えてくるだろう。なんせ相手はひとり。こちらは仲間がいるからだ。
「カミサマ同士であそぼうか」
「気炎万丈に参りますわ!」
コッペリウスとエドワルダは其々の思いを言の葉に変え、攻勢に入っていく。
されど二人共、此処に訪れた時点で狂気が齎されていることを知っていた。それは――。
ここではない、どこかへ。
消えてしまいたい。
××で、どこかへ行ってしまえば、きっと。
自分のものではないような、それでいて裡から溢れ出てくるような奇妙な感情だ。それがはるちゃんさまから狂気のオーラとして常に放たれ続けている。
「こんな、もの……」
エドワルダは溢れ出る思いを抑えるべく、気力を振り絞って耐える。ここではない場所へ行ってしまうというのは比喩的なものであり、命を捨てるに相応しいことだろう。或いは良くても戦場放棄か。
そのようなことはこの場においてあってはいけない。
同じくして藍とコッペリウスも不思議な感覚と対峙していた。
「ここではないどこか、宇宙の彼方、でっすかー。中々に不思議な感覚なのでっす!」
「……旅行的な意味合いかな。それとも、」
帰る場所を持っているからヒトはそんな気持ちを抱くのかと思っていた。されどコッペリウスからすれば此処も何処かも大差ないもの。だったら、とコッペリウスは口を開く。
「足元に影ある其れが、オレにとっての居場所だなぁ」
それならば少しは対抗できるはず。
仲間たちが其々の思いを持って対抗している中、オニバスも心を強く持っていた。
――
守護者の白服にかけて。
力を持たぬ無辜の民の守護が己の天命である故に、己は望んでこの地に来ている。そのためにこのような狂気に屈するはずがない。それに仔狐と揃いの白の赫灼は霊的防護が齎されている。
魔除けの桜鈴も花桃に預けてあり――。
「……うん、そうやって戯れに遊ぼうとするのは止めような」
そっと告げたオニバスは頭を振ってみせた。ともあれ花桃の守護は万全であることは間違いない。
オニバス自身も抜かりはない。
「守るべきものがある守護者は無敵だが? ……んん、いや、戯れはともかく」
こうやって冗談めかして咳払いをするには十全だ。
誰も狂気に押し潰されていないことを確かめ、オニバスは周囲を見渡す。
コッペリウスははるちゃんさまを見つめ、ふわりと笑ってみせた。戦闘を放棄してしまいそうな感覚だがそれに抗うことが出来るのも猟兵であり神。
「飛ばせるようなら飛ばしてもいいよ」
「うちゅうへひとっとび、する?」
「いま目の前のキミと遊んでる行為が、今あるオレにとっては此処だから」
「どこかにいっちゃえばわすれられるよ」
はるちゃんさまはコッペリウスに言葉を返しているようだが、会話としては成り立っていない。そういった存在なのだろうと察しながら、エドワルダは更に気力を振り絞る。
「抗うのはなかなか……ですが、こういった手合いには泥臭く気合と根性が適切だと経験しておりますの」
「おわかれする?」
するとはるちゃんさまは手を差し向け、局所的落雷をエドワルダへと放った。宇宙的な力を行使するものであるからか、核融合の熱や分子結合崩壊などの攻撃手段も豊富らしい。
「とんでもないですわね……!」
落雷を既のところで避けたエドワルダは反撃に入る。
艦内設備を遮蔽に用いて次の一手のために立ち回り、そして――。次のお別れの言葉が来れば僥倖。
「さよなら、ね」
「来ましたわね。それだけの予備動作があれば――!」
グランドクロスを思わせる力に対し、エドワルダは裁きの馴鹿を解き放った。
自分自身が稲妻になることで局所的落雷を辿り、敵の懐へ飛び込む狙いだ。それと同時にコッペリウスが陽炎を生み出し、ひといきに解放した。
「遊びを途中でやめずに戻ってはくるし、ほら」
更に燃える頁を手に取れば願いを叶える熱が創造される。核融合の熱と太陽。似たもの、もとい同じものようで興味深いとコッペリウスは感じていた。
「暁月を願わない春の眠り、もう暫し続けようか」
「勝手なテラフォーミングなど、やめなさいっ!」
コッペリウスの陽炎。そして、凛々しく耀くトナカイとなったエドワルダの雷光放つ一撃。綴られし文字と描かれる雷撃の放物線。ふたつの力が重なった瞬間、邪神の周囲に激しい熱と光が巡った。
「どこに行こうと藍ちゃんくんは藍ちゃんくん!」
そこに生まれた好機を掴み取った藍は遥か空を超え、彼方まで届く歌声を紡ぎ出す。
周辺を自身が作り出した世界に変えた藍は高らかに宣言していく。
「藍ちゃんくんある所、藍ちゃんくんのステージでっすので!」
自分だけでは抱かない空虚な感覚さえも楽しんで、舞台の一部としていく藍。この狂気もまた歌のインスピレーションにしてしまえばいい。
「宇宙の彼方であろうとも、宇宙の彼方からであろうとも歌は響くのでっす!」
もしも誰かを探しているのなら。
そのとき、藍の中にふとした思いが浮かんだ。狂気を伝播して少女の思いが混在したのだろうか。その答え合わせはできないが、藍は声を届かせるために歌い続ける。
一万Kの核融合の熱よりもなお、強くて熱い藍ちゃんくんの愛と希望の世界。それははるちゃんさまを核融合ごと包み込み、強い力となって弾けた。
「まだまだ歌うのでっす!」
「頼もしいな」
仲間の力を見遣り、オニバスは静かに笑む。
神の狂気が闇に伝播するのであるならば、あのように陽の光をぶつけるが必定。敵の力以上の光を、夜を晴らせる程の輝きは此処にある。オニバスは敵に刃先を差し向け、凛とした声を紡いだ。
「全て崩れよと歌う声とて、光を崩すことなど出来ぬ」
――覚悟せよ。
その歌声も、その首も。ただ刎落すのみである。
オニバスの一閃が邪神を鋭く切り裂いた。闇夜を照らす一撃に重なるのは歌声と雷撃、そして陽炎。
激しく迸った猟兵たちの力は邪神を打ち破るものへと変わっていった。
此処ではない、何処かへ。
もしかすればそれは邪神になった少女が抱く思いそのものだったのかもしれない。不思議な感覚を抱いた猟兵だったが、藍やオニバスはもちろん、エドワルダやコッペリウスも決して攻撃の手は止めなかった。
激しい力の衝突はどちらかが――否、邪神が倒れ伏すまで続いていく。
大成功
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朱赫七・カムイ
⛩神櫻
サヨ、大丈夫かい?
噫…イザナを邪神に近づけたくない神斬NGが出たからな
それより、きみは邪神の気に弱い
無茶はしないでおくれ
私が必ず守ってみせる
宇宙とは未知の域だ
語る言葉が理解不能なのもまた、意味があるように思えてしまう、が
これも狂気の成せる技か
此処ではないどこかへ──何処かとは
何処なのだろう
私の居場所は、サヨの隣にあって
守るべき地があり、人がいる
思い返せば空虚は埋まる
其れを放棄し何処かへ、など行けはしない
私は神なのだから
狂気を振り切るように放つ神罰
──桜守ノ契
思い切り、斬撃波と共に薙ぎ
齎す厄を両断する
てらふぉーみんぐ、などさせないよ
宇宙の彼方になど消えてたまるか
私はまだまだこれからなのだ!
誘名・櫻宵
🌸神櫻
こんな所にも邪神がいるなんてね!
おじいちゃんをお留守番にしてよかったわ
…大丈夫よ、カムイ
少し頭痛がするくらいだから平気
この世の摂理に囚われぬ、きらきらした自由な金平糖みたい
何を言っているかはわからないけれど、カムイ!まともに受けちゃだめ
宇宙……なんて
想像したこともなかった
星屑のように消えてしまえば──きっと悩む事も苦しむこともないのでしょう
狂気とは願望に似て、身を委ねる揺籃のようでもある
けれど
私には宇宙の藻屑になってる暇なんてない
狂気をも喰らい咲き
超える
狂気になんて負けてられない
疾く駆け、生命喰らい桜と咲かせる仙術を重ね放つ、絶華
傷口を抉るように蹂躙し、斬る
私の行きたい所は私が決めるわ
●彼方と此方
きえてしまいたい。
どこか、ここではないところへ。
くるしい、さびしい、だれか。だれか――。
はたとして顔を上げたのは、静かな狂気が胸を衝いたゆえ。
「サヨ、大丈夫かい?」
朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)の顔を覗き込む。大丈夫よ、と答えた櫻宵は狂気の中に自分の過去の思いが混ざっていたことを秘めた。
「少し頭痛がするくらいだから平気。ありがとう、カムイ。だけどこんな所にも邪神がいるなんてね!」
おじいちゃんをお留守番にしてよかったと語った櫻宵は気丈に振る舞う。
過去から想起されていた感情の波。あれは既に終わったことであり、今はカムイが傍にいる。大丈夫、平気だという言葉は本物だ。
「噫……イザナを邪神に近づけたくない神斬NGが出たからな」
邪神の気に弱い、愛する者を守りたい。
その思いはカムイも神斬も同じ。カムイは櫻宵の傍に付き、優しく告げる。
「無茶はしないでおくれ。私が必ず守ってみせるからね」
「えぇ……。それにしてもあの子、まるでこの世の摂理に囚われぬ、きらきらした自由な金平糖みたい」
狂気のオーラに耐えながら櫻宵は強く身構えた。
先程から邪神、通称はるちゃんさまは「だいじょうぶ、こわくない」「いっしょにどこかへ」「さがしてあげる」といった言葉を虚空に向けていた。
宇宙とは未知の域。
語る言葉が理解不能なのもまた、意味があるように思えてしまうが――。
「これも狂気の成せる技か」
カムイは考える。
此処ではないどこかへ。その何処かとは一体、何処なのだろう。
気を抜けば自分が抱く本当の思いだと錯覚してしまいそうだ。されどカムイは思考を止めぬことで対抗する。
「私の居場所は……」
「何を言っているかはわからないけれど、カムイ! まともに受けちゃだめ」
「噫、気はしっかり持っているよ、サヨ」
櫻宵からの呼び掛けにカムイがしかと返事をした。
居場所とは大切の隣にあるもの。守るべき地があり、人がいる。それを思い返せば空虚は埋まるものだ。
其れを放棄し何処かへ、など行けはしない。そう――。
「私は神なのだから」
「宇宙……なんて、想像したこともなかったわ」
カムイの宣言に心強さを覚えながら、櫻宵ははるちゃんさまの姿を見つめた。彼女がもたらしてくる狂気のように、たとえば星屑のように消えてしまえば。
きっと悩む事も苦しむこともなく永遠の無とも呼べる場所にいられる。
狂気とは願望に似て、身を委ねる揺籃のようでもある、けれど。
「私には宇宙の藻屑になってる暇なんてないの」
傍らに立ってくれているカムイを想い、櫻宵は地を蹴った。はるちゃんさまの裸足の爪先もまた、とん、と床を蹴り上げた。核融合の熱が櫻宵とカムイに迫ったが、どちらも怯みはしない。
狂気を振り切るように放つ神罰はカムイのもの。
――桜守ノ契。
――絶華。
櫻宵も同時に剣戟を繰り出し、斬撃波と共に薙ぎ払う。齎す厄を両断して、狂気をも喰らい咲かせて超える。
消えてしまいたい、なんて思いには負けていられない。重なり合った攻撃と思いは邪神を切り裂き、その力を一気に削り取っていった。
「だめ、だめ。まだ、か……ち……に、か、ほ……ゃ――」
はるちゃんさまは途切れ途切れの声で何かを語った。だが、それは此処にいない誰かに向けられたものだ。
きっと彼女にも何かがあったに違いないが、だからといって手加減はできない。
「てらふぉーみんぐ、などさせないよ」
宇宙の彼方になど消えてたまるか。それは此処に――櫻宵の隣に居られないということ。
それに、と付け加えたカムイは未来を想う。
「私はまだまだこれからなのだ!」
「私の行きたい所は私が……いえ、私達が決めるわ」
刹那、疾く駆けたカムイと櫻宵が邪神を再び貫いた。あ、という短い言葉を落とした邪神はその場に膝をつく。
桜と咲かせる仙術は狂気を絶ち、朱桜の花弁がひらりと宙に舞った。
そして、狂気艦隊の加護がまたひとつ消える。
宇宙的海戦は幕を閉じ、クロックワーク・ヴィクトリアの侵攻が防がれていく。
此処であかつきが願われずとも、何れ朝が来る。それが世界の理であり――希望が消えない証だ。
大成功
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